特許第6768264号(P6768264)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6768264
(24)【登録日】2020年9月25日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】工作機械の案内機構および工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 1/26 20060101AFI20201005BHJP
   B23Q 1/38 20060101ALI20201005BHJP
   B23Q 1/01 20060101ALI20201005BHJP
【FI】
   B23Q1/26 A
   B23Q1/38 Z
   B23Q1/01 W
【請求項の数】7
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-88198(P2015-88198)
(22)【出願日】2015年4月23日
(65)【公開番号】特開2016-83763(P2016-83763A)
(43)【公開日】2016年5月19日
【審査請求日】2018年2月16日
(31)【優先権主張番号】特願2014-219652(P2014-219652)
(32)【優先日】2014年10月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】芝浦機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】多田 敦司
(72)【発明者】
【氏名】相良 誠
(72)【発明者】
【氏名】築地 輝顕
(72)【発明者】
【氏名】新井 貴雄
(72)【発明者】
【氏名】竹内 一弘
(72)【発明者】
【氏名】角田 俊
(72)【発明者】
【氏名】稲津 正人
(72)【発明者】
【氏名】石井 雄介
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕也
【審査官】 中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−239859(JP,A)
【文献】 特開2013−213545(JP,A)
【文献】 特開2005−308146(JP,A)
【文献】 米国特許第5104237(US,A)
【文献】 米国特許第3754799(US,A)
【文献】 米国特許第3355990(US,A)
【文献】 米国特許第3499690(US,A)
【文献】 実公昭49−001266(JP,Y1)
【文献】 特開昭64−002838(JP,A)
【文献】 特開平11−277350(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/075859(WO,A1)
【文献】 特開2012−254497(JP,A)
【文献】 特開2013−136108(JP,A)
【文献】 特開2014−206251(JP,A)
【文献】 特開昭62−028518(JP,A)
【文献】 西独国特許出願公告第1149591(DE,B)
【文献】 西独国特許出願公告第1220228(DE,B)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 1/00−1/76
B23Q 9/00−9/02
B23Q 11/00−13/00
B23Q 15/00−15/28
B23Q 17/00−23/00
F16C 29/00−31/06
F16C 32/00−32/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに相対移動する2部材を有する工作機械の案内機構であって、
前記2部材の間には、油静圧案内機構およびすべり案内機構が形成され、
前記油静圧案内機構は、外周をシールされた静圧室と、前記静圧室に潤滑油を供給する供給経路と、前記静圧室から潤滑油を回収する回収経路と、を有し、
前記静圧室は、環状溝を境に内側部分と外側部分とに区画され、前記外側部分の一部に前記環状溝から前記外周に至る径方向の連通溝が形成され、
前記供給経路は、前記静圧室の外周側に潤滑油を供給し、
前記回収経路は、前記静圧室の中心部から潤滑油を回収し、
前記外側部分は、前記連通溝を通して供給される前記供給経路からの潤滑油の圧力と同一の圧力に保持されることを特徴とする工作機械の案内機構。
【請求項2】
請求項1に記載した工作機械の案内機構において、
前記相対移動する2部材として、案内部材と前記案内部材に沿って相対移動可能な移動部材とを有し、
前記案内部材は、平滑な案内面を有し、
前記油静圧案内機構および前記すべり案内機構は、前記移動部材と前記案内面との間に形成されて前記案内面を共用していることを特徴とする工作機械の案内機構。
【請求項3】
請求項2に記載した工作機械の案内機構において、
前記移動部材は、前記案内面に対向する前記静圧室と、前記静圧室を包囲するシール部とを有し、
前記静圧室と前記案内面とにより前記油静圧案内機構が形成されていることを特徴とする工作機械の案内機構。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載した工作機械の案内機構において、
前記移動部材は、前記案内面に対向する摺動面と、前記摺動面に形成された給油溝とを有し、
前記摺動面と前記案内面とにより前記すべり案内機構が形成されることを特徴とする工作機械の案内機構。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載した工作機械の案内機構において、
前記すべり案内機構は、前記工作機械の内部に設置され、前記油静圧案内機構は、前記すべり案内機構の両端に固定されていることを特徴とする工作機械の案内機構。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載した工作機械の案内機構を備えていることを特徴とする工作機械。
【請求項7】
請求項6に記載した工作機械において、
固定側部材に対して水平方向に移動可能な移動側部材を有し、前記固定側部材と前記移動側部材との間には、水平方向に延びる荷重支持用案内機構と、前記荷重支持用案内機構を中心とした傾きに対抗する傾き防止用案内機構とを有することを特徴とする工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械の案内機構およびこれを備えた工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工作機械には、加工対象であるワークと加工用の工具とを任意の相対位置に移動させるために、様々な移動機構が用いられる。
例えば、ワークを載置するテーブルの支持構造あるいは工具を装着するヘッドの支持構造には、三次元移動を可能とするために、X軸、Y軸、Z軸の各軸に沿った直線移動機構が採用される。また、テーブルあるいはヘッドの向きを変えるために、回転移動機構が採用される。
【0003】
これらの移動機構は、相対移動する2部材(例えば案内部材とこれに沿って移動する移動部材)を有するとともに、これらの2部材を移動させる駆動機構と、移動方向あるいは移動軸線の精度(案内精度)を確保するための案内機構を有する。
このような案内機構では、案内精度が高いこと、つまり直線運動はなるべく直線に、回転運動はなるべく真円に、という幾何学的精度が求められる。さらに、案内機構においては、高負荷容量で、低摩擦であり、減衰性能(吸振性能)が高いことが求められる。
【0004】
近年、工作機械の案内機構には、油静圧案内機構が用いられている(特許文献1)。
油静圧案内機構では、一対の摺動面のうち一方に静圧室を形成し、この静圧室に潤滑油を供給し、その静圧により他方の摺動面との間で荷重伝達を行う。つまり、一対の摺動面には潤滑油が介在するだけであり、一対の摺動面どうしは非接触状態となるので、摺動抵抗を大幅に低減できる。
【0005】
一方、工作機械の案内機構としては、伝統的なすべり案内機構(動圧案内機構)が引き続き多用されている(特許文献2)。
すべり案内機構は、それぞれ平滑に形成された一対の摺動面の間に潤滑油を供給しつつ、各々を摺動させるものである。一対の摺動面は、潤滑油による潤滑がなされるものの、相互に固体接触が維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−58192号公報
【特許文献2】特開2008−238397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した油静圧案内機構は、静止時から移動時まで常に油膜が介在するため、高負荷荷重を支持でき、安定して低摩擦化できる。
ただし、油静圧案内機構は、油膜で浮上する構造上、減衰性能には限界がある。また、油膜を形成するための潤滑油を供給する供給装置と、潤滑油を回収する回収装置が必要である。とくに、従来の油静圧案内機構では、潤滑油を用いる関係から、空気を用いる空気静圧軸受のように外気に排出することができない。このため、静圧室に供給された潤滑油が、外周縁から案内機構の外部へ排出される構造とされる。とくに、油静圧案内機構では、排出される潤滑油の量がすべり案内に比べて膨大な量となるため、潤滑油を回収し、供給装置に戻す回収装置が必要である。従って、案内機構に付随する装置構成や配管類が複雑にならざるを得ない。
【0008】
一方、すべり案内機構は、一対の摺動面どうしのすべり案内であるため、案内精度および減衰性能が高くできるとともに、構造的に簡素という特長がある。しかし、すべり案内機構は、負荷容量が小さく、摩擦係数が大きく、とくに起動時や低速時の摩擦係数が増大するため、動作が円滑でなくなることがあり、位置決め精度に影響することがある。
【0009】
工作機械の動作の円滑化を図るべく、その案内機構を、従来型のすべり案内機構から、低摩擦性に優れた油静圧案内機構に置換することが考えられる。
しかし、従来のすべり案内機構を、単純に油静圧案内機構に置換しても、前述のような特長の相違により、所期の性能が得られない可能性がある。
【0010】
また、従来型のすべり案内機構と油静圧案内機構との併用ということも考えられる。
しかし、従来の油静圧案内機構では、その構造上、静圧室に供給された潤滑油が、外周縁から摺動構造の外部へと排出されることになる。
従って、すべり案内機構と油静圧案内機構とを併用した場合、外部に排出された潤滑油が、回収できずに溢れ出す可能性があり、溢れ出した潤滑油がすべり案内機構に達し、好ましくない影響を及ぼす可能性がある。
【0011】
本発明の目的は、高負荷で、低摩擦であり、かつ案内精度が高く、減衰性能が高い工作機械の案内機構および工作機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に先立って、本発明の発明者らは、潤滑油が外部へ溢れ出さない密閉式の油静圧案内機構を開発するに至った。
この密閉式の油静圧案内機構では、外周をシールして油静圧構造を密閉するとともに、従来は周囲から外部に排出していた潤滑油を全て回収して循環させる。従って、この密閉式の油静圧案内機構では、油静圧式の案内機構でありながら、潤滑油が外部へ溢れ出すことが防止できる。
【0013】
本発明は、この密閉式の油静圧案内機構を採用することで、すべり案内機構との併設を可能とし、これにより各々の特長を兼ね合わせて、高負荷、低摩擦、高精度、高減衰性の工作機械の案内機構を実現した。
具体的に、本発明の工作機械の案内機構は、以下のような構成を備える。
【0014】
本発明の工作機械の案内機構は、互いに相対移動する2部材を有する工作機械の案内機構であって、前記2部材の間には、油静圧案内機構およびすべり案内機構が形成され、前記油静圧案内機構は、外周がシールされた密閉式の静圧室と、前記静圧室に潤滑油を供給する供給経路と、前記静圧室から潤滑油を回収する回収経路と、を有し、前記静圧室は、環状溝を境に内側部分と外側部分とに区画され、前記外側部分の一部に前記環状溝から前記外周に至る径方向の連通溝が形成され、前記供給経路は、前記静圧室の外周側に潤滑油を供給し、前記回収経路は、前記静圧室の中心部から潤滑油を回収することを特徴とする。
【0019】
このような本発明において、油静圧案内機構は、静圧室の外周がシールされた密閉式の油静圧構造とされる。従って、本発明の油静圧案内機構においては、外周縁から外部へと潤滑油が溢れ出すことを防止し、あるいは最小限に抑制することができる。
従って、油静圧案内機構とすべり案内機構とを併設しても、油静圧案内機構から溢れ出した潤滑油が、すべり案内機構に好ましくない影響(異種の潤滑油が混合する等)を及ぼす可能性を解消できる。
【0020】
これにより、本発明の移動機構では、油静圧案内機構とすべり案内機構とを併設することが可能となる。そして、油静圧案内機構により高負荷容量および低摩擦性を確保するとともに、すべり案内機構により案内精度および減衰性能を確保することができる。その結果、高負荷容量で、低摩擦であり、かつ案内精度が高く、減衰性能が高い工作機械の案内機構を提供することができる。
【0021】
本発明において、油静圧案内機構は、静圧室に潤滑油を供給する供給経路を有するとともに、静圧室から潤滑油を回収する回収経路を有する流通式の油静圧構造とされる。
潤滑油は、供給経路から供給され、静圧室内を流通しつつ静圧を発生し、静圧室から回収経路へと回収される。
流通式の油静圧構造において、回収経路から回収された潤滑油を、供給経路に再利用することで、循環式の油静圧構造とすることができる。
本発明において、供給経路および回収経路は、相対移動する2部材自体に形成された通路や、これらに接続された配管を利用することができる。これらの供給経路および回収経路には、それぞれ潤滑油を駆動するポンプ、潤滑油を貯留するタンクなどを接続することができ、その途中に潤滑油の圧力や流量などの状態を検知する計器等を設置してもよい。
なお、回収経路においては、外部から密閉される配管に限らず、外気開放された経路、例えば樋などの従来の油静圧案内機構に利用されていた回収経路を用いることもできる。
【0022】
本発明において、互いに相対移動する2部材としては、工作機械の案内機構を構成するレールとスライダのセットなど、移動方向に沿って延びる案内部材と、これに沿って相対移動可能な移動部材との組み合わせ等が該当する。
なお、案内部材と移動部材との移動は相対的であり、例えば移動部材が工作機械に固定的に設置され、この移動部材に対して案内部材が移動するものでもよい。
【0023】
本発明において、供給経路は、静圧室の外周側に潤滑油を供給し、回収経路は、静圧室の中心部から潤滑油を回収する。
このような本発明では、供給経路からの潤滑油が静圧室の外周側に供給され、供給された潤滑油は静圧室を中心向きに流通し、静圧室の中心部に接続された回収経路から回収される。
このような潤滑油の中心回収を行うことで、油静圧案内機構としての潤滑油の流量を低減することができる。
【0024】
すなわち、従来の油静圧案内機構では、内側の静圧室(いわゆるリセス部)に所期の静圧を生じさせるために、静圧室の外周に沿って圧力保持部(いわゆるランド部)が形成される。そして、静圧室の潤滑油は、外周に沿った圧力保持部を経て外周から排出される。この際、外周に沿った圧力保持部は、その半径に比例して周長が長くなるため、圧力保持部を径方向に通過する際に所定の流速(内側の静圧室で所期の圧力が保持できる流速)を確保しようとすると、全体の流量は相当な大流量にならざるを得ない。
【0025】
このような大流量を供給するためには、供給装置において大容量が必要であり、配管径の拡大など、装置構成の大規模化が避けられない。
これに対し、本発明では、中心回収を行うために、圧力保持部は回収用の開口周辺に形成すればよく、その周長は格段に短くて済む。このため、潤滑油の流量を大幅に低減させることができ、潤滑油の供給装置、供給経路および回収経路を小型化、簡素化することができる。
【0026】
本発明の工作機械の案内機構において、前記相対移動する2部材として、案内部材と前記案内部材に沿って相対移動可能な移動部材とを有し、前記案内部材は、平滑な案内面を有し、前記油静圧案内機構および前記すべり案内機構は、前記移動部材と前記案内面との間に形成されて前記案内面を共用していることが望ましい。
【0027】
このような本発明では、前述した互いに相対移動する2部材の一方である移動部材に、油静圧案内機構およびすべり案内機構の主要な構造(静圧室や給油溝など)がまとめられ、2部材の他方である案内部材には案内面だけが形成されることになる。
つまり、油静圧案内機構およびすべり案内機構が、案内部材の案内面を共用するので、各機構にそれぞれ案内面を準備する構造に比べて簡略化することができ、移動機構全体として小型化することができる。
【0028】
また、油静圧案内機構およびすべり案内機構の主要な構造(静圧室や給油溝など)を、移動部材に集約させることができ、この点でも構造の簡略化が図れる。さらに、油静圧案内機構およびすべり案内機構を、案内面と対向する移動部材の表面に並べて設置することもでき、各機構による負荷分担も確実にできる。
【0029】
これらの案内部材および移動部材など、相対移動する2部材の長さは適宜設定すればよく、何れか一方が他方よりも長くてもよいし、同じ長さであってもよい。
本発明において、油静圧案内機構の主要な構造(油静圧構造を形成する静圧室など)およびすべり案内機構の主要な構造(給油溝など)は、基本的に何れも移動部材側に設置すればよい。ただし、これらのうち何れか一方を案内部材側に設置してもよい。
さらに、互いに相対移動する2部材としては、軸受部材とこの軸受部材に軸支されて回転する回転軸と、であってもよい。
【0030】
相対移動する2部材が、軸受部材と、この軸受部材に軸支されて回転する回転軸とである場合として、例えばスラスト軸受がある。スラスト軸受では、回転軸と軸受部材との間に、軸方向のスラスト荷重を受ける摺動面が形成される。そこで、この摺動面の回転軸側を案内部材とし、摺動面を平滑な案内面として形成し、軸受部材側の摺動面に油静圧案内機構およびすべり案内機構の主要な構造を形成することができる。
同じ構成で、回転軸側に静圧案内機構、すべり案内機構を組み込むこともできる。この場合、軸受側からロータリジョイントを介して回転側に、油静圧案内機構用の潤滑油およびすべり案内機構用の潤滑油を供給する等の構成を採用することができる。
【0031】
回転軸が固定され、その周囲の軸受部材が回転する構造の場合には、固定的な回転軸の摺動面に油静圧案内機構およびすべり案内機構の主要な構造を形成し、軸受部材側の摺動面を平滑な案内面とすることができる。
なお、本発明はラジアル軸受に適用することもできる。この場合、回転軸の外周面と軸受の内周面との間に、油静圧案内機構およびすべり案内機構を曲面状に形成することになる。
【0032】
本発明の工作機械の案内機構において、前記移動部材は、前記案内面に対向する前記静圧室と、前記静圧室を包囲するシール部とを有し、前記静圧室と前記案内面とにより前記油静圧案内機構が形成されていることが望ましい。
【0033】
このような本発明では、潤滑油が供給経路から静圧室内に供給され、静圧室の内面と案内面との間に油膜を形成し、油静圧案内機構として、案内部材を浮上支持させることができる。
この際、静圧室内の潤滑油は、供給経路から静圧室に供給され、静圧室内において案内部材からの荷重を支持するとともに、静圧室の外周側から内側向きに移動し、中心部の回収経路から全量が回収される。
そして、静圧室の外周においては、静圧室を包囲するシール部により、潤滑油はシール部よりも外側へ漏れ出すことがなく、これにより密閉式の油静圧案内機構を形成することができる。
【0034】
このような本発明では、前述した通り、静圧室の中心部に接続された回収経路により、潤滑油の中心回収を行うことで、潤滑油の流量を低減させることができ、潤滑油の供給装置、供給経路および回収経路を小型化、簡素化することができる。
【0035】
本発明において、静圧室としては、移動部材の表面に凹状に形成された所定深さ(数十ミクロン程度)の凹部が利用できる。
静圧室においては、静圧室に同心円状の等圧溝を形成して静圧室を内側と外側とに区画し、内側を圧力保持部(ランド)とし、外側を静圧室本体(リセス)とすることができる。内側の圧力保持部と外側の静圧室本体とが同じ深さでも、これらより深い等圧溝を形成することで、内側の圧力保持部によって静圧室本体における圧力保持効果を生じさせることができる。これにより、静圧室本体において、潤滑油の静圧による荷重負担を行うことができ、油静圧案内構造としての機能を得ることができる。
【0036】
静圧室の内周に、回収経路を包囲する深さの浅い圧力保持部(外側の静圧室本体より背の高いランド部)を形成することで、油静圧案内構造としての機能を得るようにしてもよい。
静圧室の平面形状は、例えば円形、楕円形あるいは長円形とすることができ、正方形や長方形などの矩形あるいは他の多角形状としてもよい。矩形や多角形とする場合も、各々の頂点は円弧状などとし、角張った部分を丸めることが望ましい。
【0037】
シール部としては、静圧室の周囲に沿って形成された静圧室の深さより深いシール溝と、このシール溝内に設置された環状のシール部材との組み合わせなどが利用できる。
シール部材としては、静圧室の底面と対向する案内部材の案内面とにそれぞれ密接することでシール性を確保するものが好ましく、静圧室の深さより高さが大きなエラストマ素材による成形品などが利用できる。例えば耐油性のOリング等も利用可能であるが、静圧室内の高圧に対応できかつ潤滑油の漏出を防止できるように、適宜リップシール等を追加することも有効である。
シール部の平面形状は、静圧室の輪郭に沿った形状とすればよく、静圧室に準じた円形、矩形あるいは他の形状とすることができる。
【0038】
本発明において、回収経路は、静圧室の中心部に連通されていればよく、静圧室の中心部の近傍であれば幾何学的中心でなくてもよい。
供給経路は、静圧室の回収経路よりも外周側に連通されていればよく、静圧室の外周近傍あるいはシール部のシール溝の内側などに連通させてもよい。この際、供給経路はシール溝の任意の位置に連通されていればよいが、周方向にむらができないように、シール部の複数箇所に連通させてもよい。
【0039】
本発明の工作機械の案内機構において、前記移動部材は、前記案内面に対向する摺動面と、前記摺動面に形成された給油溝とを有し、前記摺動面と前記案内面とにより前記すべり案内機構が形成されることが望ましい。
【0040】
このような本発明では、案内面と摺動面とですべり案内機構が形成され、この案内面と摺動面との間には、給油溝により潤滑油を供給することができ、すべり案内機構としての摺動性能を十分に確保することができる。
【0041】
この際、すべり案内機構の案内面と摺動面との間に供給される潤滑油は、油静圧案内機構に供給される潤滑油と同じ潤滑油であることが望ましい。
このようにすべり案内機構の潤滑油と油静圧案内機構の潤滑油とを同じものとすれば、油静圧案内機構から潤滑油の漏れ出しが生じて互いに混じることがあっても、同じ潤滑油なので問題が生じない。
【0042】
なお、本発明の工作機械の案内機構においては、油静圧案内機構の潤滑油とすべり案内機構の潤滑油が別のものであってもよい。この場合でも、基本的に油静圧案内機構は外周をシールされているため、異種の潤滑油の混合の問題を避けることができる。
例えば、外周をシールされているため、油静圧案内機構からの潤滑油の漏れ出しは僅かであり、すべり案内機構における潤滑油の混合の問題は十分許容できる。一方、油静圧案内機構は外周をシールされているため、すべり案内機構から漏れ出した潤滑油が油静圧案内機構の潤滑油に混合することが抑制される。
さらに、油静圧案内機構から油静圧用の潤滑油が漏れ出し、すべり案内機構の潤滑油に混合しても、すべり案内機構から排出される潤滑油は廃棄されることが一般的であり、問題はない。
【0043】
このように、すべり案内機構と油静圧案内機構とで同じ潤滑油を用いることで、供給経路を一部共用することもできる。ただし、すべり案内機構への潤滑油供給は、間欠的に比較的少量であるのに対し、油静圧案内機構への潤滑油供給は、連続的かつ比較的大流量であるため、実際に共用化できる部分は、潤滑油を貯留しておくタンクおよびその周辺程度に限られる。
なお、油静圧案内機構に供給された大量の潤滑油は回収経路から回収され、例えば供給タンクに戻され、静圧室から外部に漏れ出すことを防止されるが、すべり案内機構に供給された潤滑油は、少量であるため、供給タンクに回収する等はせず、別タンクに回収して廃棄するようにしてよい。
【0044】
本発明の工作機械の案内機構において、前記すべり案内機構は、前記工作機械の内部に設置され、前記油静圧案内機構は、前記すべり案内機構の両端に固定されていることが好ましい
【0045】
このような本発明では、工作機械の2つの部分が相対移動する際には、工作機械の内部のすべり案内機構およびその両端の油静圧案内機構がそれぞれ有効となり、各案内機構の性能を併せた案内性能を得ることができる。
さらに、工作機械の内部のすべり案内機構およびその両端の油静圧案内機構が、同じ案内部材を共用するように配置することもでき、このような共用により案内機構の構造を簡略化することができ、工作機械全体として小型化することができる。
【0046】
さらに、本発明の構成は、内部にすべり案内機構を有する既存の工作機械に対し、その両端に油静圧案内機構を外付けすることで、簡単に実現できる。
そして、すべり案内機構を有する既存の工作機械に、油静圧案内機構を追加することで、油静圧すべり併用式の案内機構を簡単に実現することができ、その結果、高負荷容量で、低摩擦であり、かつ案内精度が高く、減衰性能が高い工作機械の案内機構を提供することができる。
【0047】
本発明の工作機械は、前述した本発明の工作機械の案内機構を備えていることを特徴とする。
このような本発明では、前述した本発明の油静圧案内機構で述べた通りの効果を得ることができ、工作機械全体としての有効性を高めることができる。
【0048】
本発明の工作機械において、固定側部材に対して水平方向に移動可能な移動側部材を有し、前記固定側部材と前記移動側部材との間には、水平方向に延びる荷重支持用案内機構と、前記荷重支持用案内機構を中心とした傾きに対抗する傾き防止用案内機構とを有することを特徴とする工作機械。
【0049】
本発明において、固定側部材とは、移動側部材を移動自在に支持するものであり、例えば工作機械のクロスバーなどである。固定側部材は必ずしも固定的に設置されたものに限らず、他の部材に対して移動自在に設置されたものを含む。また、移動側部材としては、固定側部材に対して移動自在に支持されたものであり、例えば工作機械の主軸ヘッドなどである。
【0050】
既存の工作機械の一部では、荷重支持用案内機構により、主軸ヘッドが片持ち支持されている。このような主軸ヘッドが片持ち支持された構成においては、主軸ヘッドの重量によって支持構造に変形が生じ、主軸ヘッドに傾きや倒れが生じる。このような変形を防止あるいは補償するため、従来の工作機械では、傾き防止用案内機構が設置されている。
【0051】
本発明では、このような傾き防止用案内機構として、前述した本発明の、油静圧案内機構およびすべり案内機構を併用した構成、あるいは、傾き防止用案内機構の一部が油静圧案内機構とされ、かつ他の部分がすべり案内機構とされた構成とすることで、各々の機能を組み合わせた構成とすることで、荷重支持を行いつつ傾き防止を図り、この際に、高負荷容量で、低摩擦であり、かつ案内精度が高く、減衰性能が高くすることができる。
【発明の効果】
【0052】
本発明の工作機械の案内機構および工作機械によれば、すべり案内機構と油静圧案内機構とを併設することが可能となる。そして、油静圧案内機構により高負荷容量および低摩擦性を確保するとともに、すべり案内機構により案内精度および減衰性能を確保することができる。その結果、高負荷容量で、低摩擦であり、かつ案内精度が高く、減衰性能が高い工作機械の案内機構および工作機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】本発明の第1実施形態の装置全体を示す斜視図。
図2】前記第1実施形態における移動部材の配置を示す斜視図。
図3】前記第1実施形態の移動機構を示す分解斜視図。
図4】前記第1実施形態の移動部材に配置された油静圧案内機構およびすべり案内機構の要部を示す斜視図。
図5】前記第1実施形態の油静圧案内機構を示す断面図。
図6】前記第1実施形態のすべり案内機構を示す断面図。
図7】本発明に含まれない第2実施形態の移動部材に配置された油静圧案内機構およびすべり案内機構の要部を示す斜視図。
図8】前記第2実施形態の油静圧案内機構を示す断面図。
図9】本発明の第3実施形態の移動機構を示す分解斜視図。
図10】前記第3実施形態の移動部材に配置された油静圧案内機構およびすべり案内機構の要部を示す斜視図。
図11】本発明の第4実施形態の装置全体を示す斜視図。
図12】前記第4実施形態の移動機構の配置を示す断面図。
図13】前記第4実施形態の移動機構の変形例を示す分解斜視図。
図14】本発明の他の実施形態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0054】
〔第1実施形態〕
図1から図6には、本発明に基づく第1実施形態が示されている。
図1において、工作機械10は、X軸方向に延びる基台11を有し、基台11にはテーブル12が支持されている。基台11を挟んで両側には一対のコラム13が設置され、各々の上端にはY軸方向に延びるクロスバー14が設置されている。クロスバー14にはヘッド15が支持され、ヘッド15にはZ軸方向(鉛直方向)に延びるラム16が装着されている。
【0055】
テーブル12の上面には加工対象であるワーク19が固定される。ラム16の下端には主軸17が露出しており、この主軸17には加工用のツール18が装着される。
工作機械10においては、テーブル12をX軸方向に移動させるとともに、ヘッド15をY軸方向に、ラム16をZ軸方向に、それぞれ移動させることで、ワーク19に対してツール18を三次元で相対移動させることができ、これによりワーク19に任意の形状を加工することができる。
【0056】
このような三次元加工動作を行うために、工作機械10には、テーブル12を基台11に沿って移動させるX軸移動機構21と、ヘッド15をクロスバー14に沿って移動させるY軸移動機構22と、ヘッド15に対してラム16を移動させるZ軸移動機構23と、が設置されている。
これらのX軸移動機構21、Y軸移動機構22、Z軸移動機構23は、それぞれ移動部分(基台11に対するテーブル12など)を移動可能に支持するとともに、これらを所定の移動方向へ案内する案内機構と、移動部分を外部コマンドに基づいて駆動するモータ等を含む駆動機構を備えている。
【0057】
これらの移動機構21〜23のうち、ヘッド15とクロスバー14との間のY軸移動機構22には、Y軸方向に延びる複数の案内機構30(第1〜第6の案内機構30A〜30F、図2参照)が用いられている。
【0058】
図2にも示すように、クロスバー14は、ヘッド15が装着される側の上部に第1のレール141を有し、下部に第2のレール142を有する。ヘッド15は、上部に下向きの第1の溝部151を有し、下部のクロスバー14側に第2の溝部152を有する。
【0059】
ヘッド15に形成された第2の溝部152は、クロスバー14の第2のレール142に係合され、Z軸方向の荷重支持が行われるとともに、X軸方向の位置が規制されている。
ヘッド15に形成された第1の溝部151は、クロスバー14の第1のレール141に係合され、X軸方向の位置規制とともに、荷重支持する第2のレール142を中心としてヘッド15が自重により傾くことを規制している。
【0060】
第1の溝部151の内側には、第1のレール141をX軸方向に挟む第1および第2の移動部材31A,31Bが設置されている。これら第1および第2の移動部材31A,31Bは、第1のレール141を案内部材として、各々の間に本発明に基づく第1および第2の案内機構30A,30Bを構成する。
第2の溝部152の内側には、第2のレール142をX軸方向に挟む第3および第4の移動部材31C,31Dと、第2のレール142をZ軸方向に挟む第5および第6の移動部材31E,31Fが設置されている。これら第3〜第6の移動部材31C〜31Fは、第1のレール141を案内部材として、各々の間に本発明に基づく第3〜第6の案内機構30C〜30Fを構成する。
【0061】
〔案内機構30〕
図3において、案内機構30(第1〜第6の案内機構30A〜30F、図2参照)は、互いに相対移動する移動部材31(移動部材31A〜31F、図2参照)および案内部材である第1および第2のレール141,142を有する。
【0062】
移動部材31(第1〜第6の移動部材31A〜31F)は、案内機構30の相対移動方向に延びる部材であり、第1および第2の溝部151,152に沿ってヘッド15に固定された板材あるいはヘッド15の一部を利用して形成される。
移動部材31の両端には、第1および第2のレール141,142に対向する側に一段高い部分が形成され、その表面が平滑な平滑面49および摺動面51とされている。また、移動部材31は、自身の厚み方向と直交する方向に一対の側面を有する。
【0063】
第1および第2のレール141,142は、案内機構30の相対移動方向に延びる部材であり、クロスバー14に沿って固定された別部材あるいはクロスバー14の一部を利用して形成される。
第1および第2のレール141,142は、移動部材31に対向する側の表面が、全長にわたって平滑な案内面39とされている。
【0064】
これらの移動部材31と第1および第2のレール141,142は、移動部材31の両端の平滑面49および摺動面51が、第1および第2のレール141,142の案内面39と密接状態で配置されることで、案内機構30を構成する。
この際、平滑面49と案内面39との間には、油静圧案内機構40が形成され、摺動面51と案内面39との間には、すべり案内機構50が形成される。
【0065】
これらの摺動面51および平滑面49には、全面にわたって連続して、4フッ化エチレンなどの低摩擦性材料で形成されたシートが貼られている。
なお、油静圧案内機構40の外側の平滑面49を、摺動面51より低く切り下げ、案内面39に接触しない逃げ面としてもよい。
【0066】
油静圧案内機構40は、詳細は後述するが、外部から供給される加圧された潤滑油により、移動部材31に対して第1および第2のレール141,142を静圧浮上支持するものである。このための潤滑油を供給および回収するために、油静圧案内機構40には潤滑油供給装置60が接続されている。
【0067】
図3および図4に示すように、潤滑油供給装置60は、潤滑油を貯留するタンク61と、タンク61と油静圧案内機構40とを接続する供給配管63および回収配管64を有する。
供給配管63の途中には、通過する潤滑油を濾過するフィルタ65と、同潤滑油を加圧するポンプ62とが設置されている。
【0068】
これにより、潤滑油供給装置60は、タンク61に貯留されている潤滑油を、供給配管63から取り出し、フィルタ65で濾過したのちポンプ62で圧送し、油静圧案内機構40へと供給することができる。また、油静圧案内機構40からの潤滑油を、回収配管64で回収し、タンク61に戻すことができる。
【0069】
潤滑油供給装置60は、すべり案内機構50で使用される潤滑油の供給をも行う。
図3および図4において、潤滑油供給装置60は、潤滑油を貯留するタンク69と、タンク69とすべり案内機構50とを接続する供給配管66を有する。
供給配管66の途中には、通過する潤滑油を濾過するフィルタ68と、同潤滑油を適量ずつ間欠的に圧送するポンプ67とが設置されている。
【0070】
なお、すべり案内機構50に供給された潤滑油の排出経路として、移動部材31の側面の下方には、すべり案内機構50から排出された潤滑油を受ける回収樋55と、回収樋55で集められた潤滑油を貯留する廃油タンク56と、が設置される。排出経路には、適宜配管が用いられることもある。
【0071】
すなわち、本実施形態では、潤滑油供給装置60により、同じ種類の潤滑油が、油静圧案内機構40およびすべり案内機構50の両方に供給される。
ただし、すべり案内機構50での潤滑油の使用量は、油静圧案内機構40よりも十分に少なく、かつ供給が間欠的である。このような供給条件の相違に対応するために、すべり案内機構50への潤滑油供給経路と、油静圧案内機構40への潤滑油供給経路とは、完全に別系統とされている。
以下、本実施形態の油静圧案内機構40およびすべり案内機構50について説明する。
【0072】
〔油静圧案内機構40〕
図4および図5にも示すように、本実施形態において、油静圧案内機構40の平滑面49とすべり案内機構50の摺動面51とは連続した平面である。
すなわち、すべり案内機構50が形成される摺動面51の延長部分に、静圧室41などの構造を形成し、案内部材である第1および第2のレール141,142を対向させて案内面39で覆うことで、油静圧案内機構40が形成される。
【0073】
図4において、油静圧案内機構40は、平滑面49に凹状に形成された円形の静圧室41と、その周囲を環状に連続して包囲するシール部42とを有する。
静圧室41は、図3および図5では凹部として表されているが、案内機構30として組み立てられた際に、第1および第2のレール141,142の案内面39によって覆われて閉じた空間となる。
【0074】
シール部42の一部には、供給経路43の連通孔431が連通されている。
供給経路43には、前述した潤滑油供給装置60の供給配管63が接続され、この供給配管63を通して、加圧された潤滑油が静圧室41内に供給される。
【0075】
静圧室41の中心には、回収経路44の連通孔441が連通されている。
回収経路44には、前述した潤滑油供給装置60の回収配管64が接続され、この回収配管64を通して静圧室41からの潤滑油が回収される。
【0076】
図5にも示すように、静圧室41の底面には、中央に前述した回収経路44の連通孔441が連通されているとともに、その開口と同心で環状溝411が形成されている。
静圧室41の底面は、環状溝411を境に、内側部分412と、外側部分413とに区画されている。外側部分413の一部には、環状溝411からシール部42に至る径方向の連通溝414が形成されている。
【0077】
シール部42は、静圧室41の外周に沿って環状のシール溝421を有し、このシール溝421には耐油ゴム等のエラストマ成型品によるシール部材422が配置されている。シール溝421の一部には、シール部材422よりも内側(静圧室41側)に、供給経路43の連通孔431が連通されている。
【0078】
このような油静圧案内機構40では、加圧された潤滑油が、供給経路43から供給され、シール溝421から静圧室41内に流入し、静圧室41内を外側部分413から内側部分412へと移動し、連通孔441から回収経路44へと回収される。
この際、静圧室41内の潤滑油は、その静圧により案内面39を浮上支持し、これにより油静圧案内機構40としての機能が得られる。
一方、静圧室41内の潤滑油は、回収経路44から全量回収される。さらに、静圧室41の周囲がシール部42でシールされているため、潤滑油が外部に漏れ出すことが防止される。
【0079】
本実施形態において、静圧室41の厚み(内側部分412と案内面39との間隔)、つまり平滑面49に対する凹みの深さは、シール溝421や環状溝411に比べてごく浅く(数十ミクロン程度)形成されている。
さらに、内側部分412と外側部分413とは、同じ高さに設定されている。つまり、内側部分412における静圧室41の深さ(平滑面49に対する)は、外側部分413における深さと同じである。
【0080】
従って、案内機構30として組み立てられた状態では、静圧室41の外側部分413における厚み(外側部分413と案内面39との間隔)と、静圧室41の内側部分412における厚み(内側部分412と案内面39との間隔)とが同じとされている。
ただし、内側部分412と外側部分413との間には、環状溝411が形成され、この環状溝411は連通溝414でシール溝421に連通されている。このため、外側部分413においては、連通孔431を通して供給される供給経路43からの潤滑油の圧力と同一の圧力に保持される。
【0081】
このような設定により、静圧室41の外側部分413から内側部分412へと潤滑油が流れた際には、内側部分412がランド部または圧力保持部として作用する。
つまり、内側部分412の外側(環状溝411に面した領域)では、外側部分413と同じ圧力であるが、内側に向けて流れるに従って漸次圧力が下がり、回収経路44の連通孔441に至ると大気圧程度となる。
【0082】
このように、内側部分412がランド部または圧力保持部として作用することで、リセス部または静圧室本体である外側部分413に荷重支持用の静圧を確保することができる。
さらに、静圧室41内の潤滑油による静圧支持が、外周側にあって静圧室41のうち主に面積が大きい外側部分413で行われることになり、受圧領域面積を拡大できるとともに、流入したての高圧の潤滑油による効率的な静圧支持を行うことができる。
【0083】
〔すべり案内機構50〕
図4において、すべり案内機構50は、平滑な摺動面51を有する。摺動面51には、縦横に連続した給油溝52が形成されている。
図6にも示すように、給油溝52には給油経路53が連通され、給油経路53には、前述した潤滑油供給装置60の供給配管66が接続されている。
【0084】
すべり案内機構50では、摺動面51と案内面39とを接触させることで、案内部材である第1および第2のレール141,142を支持するとともに、摺動面51と案内面39との摺動により相対移動を許容する。
ここで、すべり案内機構50では、給油経路53に供給された潤滑油が、給油溝52により摺動面51の各部へと拡散されることで、摺動面51と案内面39との間の摺動抵抗および摩耗を軽減することができる。
【0085】
本実施形態のすべり案内機構50では、案内面39と摺動面51との間に供給される潤滑油は、油静圧案内機構40に供給される潤滑油と同じ潤滑油である。このため、油静圧案内機構40から潤滑油の漏れ出しが生じて互いに混じることがあっても、同じ潤滑油なので問題が生じない。
また、すべり案内機構50と油静圧案内機構40とで同じ潤滑油を用いるため、別体のタンク61,69ではなく、同じタンクを共用することもできる。
【0086】
〔第1実施形態の効果〕
以上に述べた第1実施形態によれば、油静圧案内機構40およびすべり案内機構50の説明で個々に述べた効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
本実施形態において、油静圧案内機構40は密閉式の油静圧案内機構であり、外周をシール部42でシールされるとともに、潤滑油は供給経路43から供給され、回収経路44から回収され、タンク61に循環される。
【0087】
従って、油静圧案内機構40においては、外周縁から外部へと潤滑油が溢れ出すことを防止し、あるいは最小限に抑制することができる。
さらに、油静圧案内機構40とすべり案内機構50とを併設しても、油静圧案内機構40から溢れ出した潤滑油が、すべり案内機構50に好ましくない影響を及ぼす可能性を解消できる。
【0088】
そして、油静圧案内機構40により高負荷加重および低摩擦性を確保するとともに、すべり案内機構50により案内精度および減衰性能を確保することができる。その結果、高負荷で、低摩擦であり、かつ案内精度が高く、減衰性能が高い工作機械の案内機構30を提供することができる。
【0089】
本実施形態では、前述した互いに相対移動する2部材の一方である移動部材31に、油静圧案内機構40およびすべり案内機構50の主要な構造(静圧室41や給油溝52など)がまとめられ、2部材の他方である第1および第2のレール141,142には案内面39だけが形成されている。
つまり、油静圧案内機構40およびすべり案内機構50が、案内部材である第1および第2のレール141,142の案内面39を共用するので、各機構にそれぞれ案内面を準備する構造に比べて簡略化することができ、案内機構30全体として小型化することができる。
【0090】
また、油静圧案内機構40およびすべり案内機構50の主要な構造(静圧室41や給油溝52など)を、移動部材31に集約させることができ、この点でも構造の簡略化が図れる。さらに、油静圧案内機構40およびすべり案内機構50を、案内面39と対向する移動部材31の表面に並べて設置するため、各機構による負荷分担も確実にできる。
【0091】
〔第2実施形態〕
図7および図8には、本発明に含まれない第2実施形態が示されている。
本実施形態は、前述した第1実施形態と同様な工作機械10に、本発明に基づく案内機構30を設置したものである。
本実施形態において、工作機械10、案内機構30、油静圧案内機構40およびすべり案内機構50の基本構成は共通であり、重複する説明は省略するとともに、相違する構成について、以下に説明する。
【0092】
前述した第1実施形態では、油静圧案内機構40の静圧室41が、環状溝411、内側部分412、外側部分413、連通溝414を有していた。そして、内側部分412および外側部分413が同じ深さでありながら、環状溝411および連通溝414がシール溝421に連通されることで、内側部分412が圧力保持部(ランド部)として機能し、外側部分413が静圧室本体(リセス部)として機能するようにしていた。
【0093】
本実施形態においては、環状溝411および連通溝414を省略し、外側部分413の深さを内側部分412よりも深く形成することにより、実際に内側部分412をランド(圧力保持部)とし、かつ外側部分413をリセス(静圧室本体)としている。
なお、本実施形態において、内側部分412の深さは前述した第1実施形態と同様な数十ミクロン程度であり、外側部分413の深さは、内側部分412よりも深い。
【0094】
前述した第1実施形態では、潤滑油供給装置60として、油静圧案内機構40に潤滑油を供給する経路および排出された潤滑油を回収する経路を設けるとともに、これとは別個に、すべり案内機構50に潤滑油を供給する経路を設けていた。
これに対し、本実施形態では、タンク61が共用され、油静圧案内機構40への供給配管63およびすべり案内機構50への供給配管66は同じタンク61に接続されている。
【0095】
このような本実施形態によれば、工作機械10、案内機構30、油静圧案内機構40およびすべり案内機構50の基本構成が前述した第1実施形態と共通であるため、これらによる効果は同様に得られる。
【0096】
さらに、本実施形態では、環状溝411および連通溝414が省略されているが、内側部分412および外側部分413の深さ設定により、前述した第1実施形態と同様に静圧荷重支持を行うことができ、油静圧案内機構40としての機能を得ることができる。
【0097】
さらに、潤滑油供給装置60では、油静圧案内機構40への潤滑油供給およびすべり案内機構50への潤滑油供給に同じタンク61を用いることで、装置構成を簡略化できる。このような場合でも、油静圧案内機構40およびすべり案内機構50で用いる潤滑油が同一であるため、機能的に不都合は生じない。
【0098】
〔第3実施形態〕
図9および図10には、本発明に基づく第3実施形態が示されている。
前述した第1実施形態および第2実施形態では、移動部材31の両端の表面に連続して摺動面51および平滑面49を設け、油静圧案内機構40およびすべり案内機構50を隣接して設置していた。
これに対し、本実施形態では、油静圧案内機構40およびすべり案内機構50が別体の部材に形成されている。
【0099】
図9および図10に示すように、本実施形態では、移動部材31にはすべり案内機構50が形成されているが、油静圧案内機構40は形成されていない。
一方、移動部材31の両端には、ブロック状の補助移動部材48が設置され、この補助移動部材48に油静圧案内機構40が形成されている。
【0100】
補助移動部材48は、移動部材31が設置された主軸ヘッド15(図2参照)の外面に設置され、主軸ヘッド15のフレームに強固に支持されている。
補助移動部材48の平滑面49は、移動部材31の摺動面51と同一面に配置されている。
補助移動部材48の平滑面49には静圧室41、シール部42が形成され、補助移動部材48の内部には供給経路43および回収経路44が形成されている。
これらの静圧室41、シール部42、供給経路43および回収経路44により、第1実施形態あるいは第2実施形態と同様な油静圧案内機構40が形成されている。
【0101】
このような本実施形態によれば、移動部材31に形成されたすべり案内機構50と補助移動部材48に油静圧案内機構40とが隣接して配置され、これらの油静圧案内機構40およびすべり案内機構50がともに案内部材である第1および第2のレール141,142の案内面39に対して案内されることで、前述した第1実施形態および第2実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0102】
さらに、本実施形態においては、油静圧案内機構40が、移動部材31とは別体の補助移動部材48に形成される。このため、すべり案内機構50だけが移動部材31に形成された既存の工作機械に、油静圧案内機構40を有する補助移動部材48を追加的に設置(いわゆるレトロフィット)することで、本発明を容易に実施することができる。そして、既存の工作機械を活用することができる。
【0103】
〔第4実施形態〕
図11および図12には、本発明に基づく第4実施形態が示されている。
図11において、本実施形態の工作機械10Sは、第1実施形態の工作機械10(図1参照)と同様に、主軸ヘッド15の上部に第1の溝部151Sを有し、第1の溝部151Sはクロスバー14の第1のレール141Sに係合されている。また、主軸ヘッド15の下部に第2の溝部152を有し、第2の溝部152はクロスバー14の第2のレール142に係合されている。
【0104】
図12において、第2の溝部152と第2のレール142との間には、荷重支持用の案内機構30T(案内機構30CT,30DT,30ET,30FT)が設置されている。
荷重支持用の案内機構30T(案内機構30CT,30DT,30ET,30FT)は、前述した第1実施形態の案内機構30(案内機構30C,30D,30E,30F)と同様な配置とされている。
【0105】
ただし、第1実施形態の案内機構30においては、案内機構30C,30D,30E,30Fが、それぞれの移動部材31C,31D,31E,31Fに、それぞれ油静圧案内機構40およびすべり案内機構50を備えていた。
これに対し、本実施形態の案内機構30Tにおいては、案内機構30CT,30DT,30ET,30FTが、それぞれの移動部材31CT,31DT,31ET,31FTに、すべり案内機構50のみを備えている。
【0106】
つまり、本実施形態においては、荷重支持用の案内機構30Tに油静圧案内機構40が用いられていない。
このようなすべり案内機構50のみを備えた移動部材31CT,31DT,31ET,31FTとしては、前述した第3実施形態における移動部材31(図9参照)と同様な構成とすればよい。
【0107】
一方、第1の溝部151Sと第1のレール141Sとの間には、主軸ヘッド15の傾き防止用の案内機構30Sが設置されている。
【0108】
第1のレール141Sには、案内面39Sが斜めに形成され、第1の溝部151Sの内側には案内面39Sと対向して移動部材31Sが設置されている。これらの案内面39Sおよび移動部材31Sにより、案内機構30Sが形成されている。
本実施形態において、案内機構30Sは、移動部材31Sに油静圧案内機構40のみを有する。
【0109】
主軸ヘッド15と第1のレール141Sとの間には、案内機構30Sに付属する案内機構30ASが形成されている。この案内機構30ASは、前述した第1実施形態の案内機構30Aと同様の配置とされ、垂直な案内面39Aに摺動する移動部材31ASを有する。
ただし、第1実施形態の案内機構30Aが、移動部材31Aに油静圧案内機構40およびすべり案内機構50を備えていたのに対し、本実施形態の案内機構30ASでは、移動部材31ASにはすべり案内機構50のみを備えている。
【0110】
このような本実施形態によれば、主軸ヘッド15の下部において、案内機構30Tにより主軸ヘッド15の自重をクロスバー14で支持することができる。また、主軸ヘッド15の上部において傾斜配置された案内機構30Sを有するため、この案内機構30Sにより主軸ヘッド15の自重による傾きモーメントを負担することができ、主軸ヘッド15の傾きを防止することができる。
【0111】
この際、傾き防止用の案内機構30Sは、案内面39Sおよび移動部材31Sの間が油静圧案内機構40とされているため、高負荷荷重とすることができる。一方、荷重支持用の案内機構30Tおよび案内機構30ASにはすべり案内機構50を用いるとしたので、従来の機構を転用することができる。
【0112】
なお、傾き防止用の案内機構30Sに用いる、油静圧案内機構40のみを有する移動部材31Sとしては、次のような構成とすることができる。
図13において、移動部材31Sは、両側の一段高い部分の表面が平滑面49とされ、それぞれには油静圧案内機構40が2セット形成されている。
油静圧案内機構40の各々の構成は、第1実施形態と同様であり、重複する説明は省略する。
このような案内機構30Sでは、移動部材31Sに計4セットの油静圧案内機構40を有し、案内部材である第1のレール141Sとの間で大荷重を負担することができる。
【0113】
〔他の実施形態〕
なお、本発明は、前述した各実施形態の構成に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形等は本発明に含まれる。
例えば、各部に設置する油静圧案内機構40の数や配置、寸法などは、実施にあたって適宜設定することができる。例えば、ひとつの案内機構30に、複数の油静圧案内機構40を並列配置してもよい。
【0114】
前記第4実施形態では、傾き防止用の案内機構30S(移動部材31S)が油静圧案内機構40のみを有し、荷重支持用の案内機構30Tおよび案内機構30ASがすべり案内機構50のみを有するとしたが、各々が油静圧案内機構40とすべり案内機構50とを併用するものであってもよい。
【0115】
前記各実施形態では、潤滑油供給装置60として、油静圧案内機構40に潤滑油を供給する経路および排出された潤滑油を回収する経路を設けるとともに、すべり案内機構50に潤滑油を供給する経路を設けていた。
ただし、すべり案内機構50として潤滑油の供給が必要なければ、このようなすべり案内機構50への給油機能を省略してもよい。例えば、油静圧案内機構40から漏れ出す潤滑油の量が、すべり案内機構50で必要な潤滑油量に相当する場合、油静圧案内機構40のシール部42の一部から潤滑油を流出させ、これをすべり案内機構50に供給するようにしてもよい。
【0116】
すべり案内機構50は、潤滑用および摩耗防止用に油静圧案内機構40と同じ潤滑油を用いるものに限らず、他の油脂類を利用し、あるいは摺動面51に固体潤滑材料を用いるものであってもよい。このような場合でも、シール部42により油静圧案内機構40からの潤滑油の漏出を防止できるため、漏出した潤滑油によりすべり案内機構50に不都合が生じることはない。
【0117】
前述した各実施形態では、案内部材である第1および第2のレール141,142に案内面39を設け、この案内面39を移動部材31の油静圧案内機構40およびすべり案内機構50で共用した。しかし、案内面39の共用は本発明に必須ではなく、案内部材に2列の案内面39を設け、それぞれを油静圧案内機構40用およびすべり案内機構50用として用いてもよい。
【0118】
あるいは、移動部材31に油静圧案内機構40およびすべり案内機構50をまとめることは必須ではなく、例えば、移動部材31に油静圧案内機構40と案内面(すべり案内用)とを設け、案内部材(前述した各実施形態の第1および第2のレール141,142)にすべり案内機構50と案内面(油静圧案内用)とを設けるようにしてもよい。
【0119】
前述した各実施形態の油静圧案内機構40では、供給経路43から静圧室41へと潤滑油を供給し、静圧室41から排出された潤滑油を回収経路44から回収し、タンク61に戻す循環式の油静圧構造を採用した。ただし、循環式に限らず、単なる流通式の油静圧構造としてもよい。例えば、回収経路44から回収した潤滑油をタンク61に戻さず、供給経路43から静圧室41に潤滑油を供給し、静圧室41で静圧を発生させた後、回収経路44で回収するだけとしてもよい。
【0120】
本発明には含まれないが、油静圧案内機構40としては、静圧室41に貯められた潤滑油の静圧を利用する封入式の油静圧構造としてもよい。この場合でも、静圧室41内の潤滑油の量および圧力を所定値に維持するために、供給経路43は設置することが必要であるが、回収経路44については省略することができる。
【0121】
前述した各実施形態では、一対のコラム13とクロスバー14による門型の支持構造を有する工作機械10において、クロスバー14とヘッド15とを相対移動させるY軸移動機構22に本発明を適用した例を説明した。しかし、本発明はこのような部位に限定されるものではなく、工作機械10の他の相対移動部分、例えばヘッド15とラム16とを相対移動させるZ軸移動機構23の案内機構、あるいは基台11とテーブル12とを相対移動させるX軸移動機構21の案内機構に適用してもよい。
【0122】
前述した図1において、X軸移動機構21としては、基台11の上面にテーブル12の荷重を主に受ける一対の案内機構を設け、これらの案内機構の間の凹状部分の垂直な内壁面に、基台11に対するテーブル12の移動方向を規制する案内機構を設けることがある。
図14に示すように、荷重支持用の案内機構30Wは、テーブル12の下面に案内部材31Wを有し、この案内部材31Wは、基台11の上面を案内面39Wとしている。また、移動方向規制用の案内機構30Gは、テーブル12の下面に形成された凸部の両側に一対の案内部材31Gを有し、これらの案内部材31Gは、基台11に形成された凹溝の一対の内側面を案内面39Gとしている。
【0123】
このうち、荷重受け用の案内機構30Wは、テーブル12の重量と加工するワーク19(図1参照)の重量を受ける程度であるので、すべり案内機構50を用いることができる。
一方、移動方向規制用の案内機構30Gは、前述したテーブル12やワーク19の重量に比べてずっと大きな切削力を水平方向に受けることがあり、すべり案内機構50では許容面圧を超えてしまう。このため、移動方向規制用の案内機構30Gには、油静圧案内機構40を用いることにより、高負荷への対応が可能となる。
このように、荷重受け用の案内機構30Wあるいは移動方向規制用の案内機構30Gなど、各部案内機構の要求条件に応じて油静圧案内機構40およびすべり案内機構50を使い分けるようにしてもよい。
【0124】
本発明は、前述したような直線移動に限らず、例えばロータリーテーブルの回転支持機構など、回転する部分の案内機構に適用してもよい。
本発明が適用される工作機械は、前述した工作機械10に限らず、本発明は、相対移動する2部材を有する様々な工作機械に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明は、加工対象であるワークと加工用の工具とを任意の相対位置に移動させる様々な工作機械の案内機構および工作機械に利用できる。
【符号の説明】
【0126】
10…工作機械、11…基台、12…テーブル、13…コラム、14…クロスバー、141,142…案内部材である第1および第2のレール、15…ヘッド、151,152…溝部、16…ラム、17…主軸、18…ツール、19…ワーク、21…X軸移動機構、22…Y軸移動機構、23…Z軸移動機構、30,30A〜30F,30S,30AS,30CT〜30FT,30G,30W…案内機構、31,31A〜31F,31S,31AS,31CT〜31FT,31G,31W…移動部材、39,39A〜39F,39S,39CT〜39FT,39G,39W…案内面、40…油静圧案内機構、41…静圧室、411…環状溝、412…内側部分、413…外側部分、414…連通溝、42…シール部、421…シール溝、422…シール部材、43…供給経路、431…連通孔、44…回収経路、441…連通孔、48…補助移動部材、49…平滑面、50…すべり案内機構、51…摺動面、52…給油溝、53…給油経路、55…回収樋、56…廃油タンク、60…潤滑油供給装置、61,69…タンク、62…ポンプ、63,66…供給配管、64…回収配管、65,68…フィルタ、67…ポンプ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14