特許第6768270号(P6768270)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6768270ビオチン直接結合型タンパク質活性調節物質
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6768270
(24)【登録日】2020年9月25日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】ビオチン直接結合型タンパク質活性調節物質
(51)【国際特許分類】
   C12N 9/00 20060101AFI20201005BHJP
   C12N 9/14 20060101ALI20201005BHJP
   C07K 1/14 20060101ALI20201005BHJP
【FI】
   C12N9/00
   C12N9/14
   C07K1/14
【請求項の数】3
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-153233(P2015-153233)
(22)【出願日】2015年8月3日
(65)【公開番号】特開2017-31101(P2017-31101A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2018年7月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】507307374
【氏名又は名称】学校法人神戸学院
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日高 興士
(72)【発明者】
【氏名】津田 裕子
【審査官】 神谷 昌克
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−501341(JP,A)
【文献】 特表2007−521338(JP,A)
【文献】 国際公開第2003/018050(WO,A1)
【文献】 米国特許第06107489(US,A)
【文献】 国際公開第2013/116663(WO,A1)
【文献】 特表2011−509242(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02676962(EP,A1)
【文献】 特表2009−504596(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0241057(US,A1)
【文献】 特表2007−526254(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C12N
C07K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):
【化1】
[式(1)中、Rは、−NH、−OH、−COOH、−NH−NH、及び−N=C=Oからなる群より選択される少なくとも1種の反応性官能基を含む分子量が1000以下の酵素阻害剤又は生体内受容体リガンドの、−NH、−OH、−COOH、又は−NH−NHから1つの水素原子が除かれてなる、或いは−N=C=Oに水素原子が付加されてなる一価の基である。]
で表わされる化合物、又はその塩、水和物若しくは溶媒和物を含有し、
アビジン物質の作用により酵素又は生体内受容体の活性状態を制御することに用いるための、
タンパク質活性調節剤
【請求項2】
前記タンパク質活性調節物質の活性調節対象タンパク質の分子量が10kDa以上である、請求項に記載のタンパク質活性調節剤
【請求項3】
アビジン物質の作用により酵素又は生体内受容体の活性状態を制御する方法であって、下記工程(c)を含む方法
(c)請求項1又は2に記載のタンパク質活性調節剤と酵素又は生体内受容体との複合体と、アビジン物質とを接触させる工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビオチン直接結合型タンパク質活性調節物質、これを用いたタンパク質分離方法又は精製方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
アビジン−ビオチンキャッチ法は、特異的で強固なアビジンとビオチンとの非共有結合(解離定数;Kd〜10−15)を利用した、ペプチドホルモンの精製手法として、1976年に初めて報告された(非特許文献1)。以来、現在ではアビジンの代わりにストレプトアビジンが用いられ、またリンカー構造に様々な工夫がなされ、アフィニティー精製法の主要な一つとしてライフサイエンス分野において広く用いられるようになった(非特許文献2)。
【0003】
アビジン−ビオチンキャッチ法によるタンパク質精製は、例えば精製対象タンパク質がプロテアーゼである場合、典型的には次のようにして行われる。まず、プロテアーゼ阻害剤がリンカーを介してビオチンに結合してなる化合物を、アビジン修飾された担体に接触させることにより、両者を連結させる。そこへ、プロテアーゼを含む血液等の試料を接触させることにより、該試料中のプロテアーゼを、担体上のプロテアーゼ阻害剤に結合させる(図1の左側)。そして、担体から、変性剤、ビオチン、又はプロテアーゼ阻害剤を用いてプロテアーゼを溶出する。
【0004】
しかしながら、変性剤を用いて溶出すると、プロテアーゼは変性した状態で溶出されるので、その活性を測定することができない(図1の右側)。活性を回復させるべくリフォールディングするにしても、適切な条件を見出すためには、通常、多くの実験を要してしまうし、リフォールディング操作自体にも多くの手間を要する。また、プロテアーゼ阻害剤やビオチンで溶出する場合、プロテアーゼは、プロテアーゼ阻害剤と結合した状態で溶出されるので、その活性を測定することができない(図1の右側)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Hofmann, K. et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 73, 3516 (1976)
【非特許文献2】Sato, S. et al., Chem. Biol., 17, 616 (2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、プロテアーゼ等のタンパク質を、活性が保持された状態及び/又は他の分子が結合していない状態で、従来より簡便且つ効率的に精製することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は鋭意研究を進めた結果、タンパク質精製において、担体上のタンパク質活性調節物質(例えばプロテアーゼ阻害剤等)に結合した精製対象タンパク質(例えばプロテアーゼ等)を、従来用いられていたビオチンやタンパク質活性調節物質(例えばプロテアーゼ阻害剤等)ではなく、ビオチン直接結合型タンパク質活性調節物質を用いて溶出(分離)し、溶出された複合体(精製対象タンパク質とビオチン直接結合型タンパク質活性調節物質との複合体)にストレプトアビジン等を接触させることにより、通常であれば精製対象タンパク質、ビオチン直接結合型タンパク質活性調節物質、及びストレプトアビジンの3者の複合体が形成されると予想されるところ、驚くべきことに精製対象タンパク質を単体で(活性を保持した状態で)分離できることを見出した(図2)。本発明はこの知見に基づいてさらに研究を重ねた結果、完成されたものである。即ち、本発明は、下記の態様を包含する。
【0008】
項1. ビオチン、及び該ビオチンと直接共有結合しているタンパク質活性調節物質を含む化合物、又はその塩、水和物若しくは溶媒和物.
項2. 前記化合物が一般式(1):
【0009】
【化1】
【0010】
[式(1)中、Rは、タンパク質活性調節物質由来の基である.]
で表わされる化合物である、項1に記載の化合物、又はその塩、水和物若しくは溶媒和物.
項3. 前記タンパク質活性調節物質がプロテアーゼ阻害剤である、項1又は2に記載の化合物、又はその塩、水和物若しくは溶媒和物.
項4. 前記タンパク質活性調節物質がタンパク質ではない、項1〜3のいずれかに記載の化合物、又はその塩、水和物若しくは溶媒和物.
項5. 前記タンパク質活性調節物質の分子量が1000以下である、項1〜4のいずれかに記載の化合物、又はその塩、水和物若しくは溶媒和物.
項6. 前記タンパク質活性調節物質の活性調節対象タンパク質の分子量が10kDa以上である、項1〜5のいずれかに記載の化合物、又はその塩、水和物若しくは溶媒和物.
項7. 項1〜6のいずれかに記載の化合物、又はその塩、水和物若しくは溶媒和物を含有する、タンパク質と該タンパク質の活性調節物質との複合体からの該タンパク質分離剤.
項8. タンパク質と該タンパク質の活性調節物質との複合体から、該タンパク質を分離する方法であって、下記工程(a)及び(b)を含む方法:
(a)タンパク質と該タンパク質の活性調節物質との複合体と、項1〜6のいずれかに記載の化合物、又はその塩、水和物若しくは溶媒和物とを接触させる工程、及び
(b)工程(a)により得られる、項1〜6のいずれかに記載の化合物、又はその塩、水和物若しくは溶媒和物と、タンパク質との複合体を回収する工程.
項9. 項1〜6のいずれかに記載の化合物、又はその塩、水和物若しくは溶媒和物と、タンパク質との複合体.
項10. 項9に記載の複合体から、タンパク質を単体で分離する方法であって、下記工程(c)及び(d)を含む方法:
(c)項9に記載の複合体と、アビジン物質とを接触させる工程、及び
(d)工程(c)により得られるタンパク質を回収する工程.
項11. 項9に記載の複合体から、タンパク質を単体で分離し、得られたタンパク質の活性を測定する方法であって、下記工程(c)〜(e)を含む方法:
(c)項9に記載の複合体と、アビジン物質とを接触させる工程、
(d)工程(c)により得られるタンパク質を回収する工程、及び
(e)工程(d)により回収されたタンパク質の活性を測定する工程.
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、アビジンとビオチンとの非共有結合を利用して、プロテアーゼ等のタンパク質を、活性が保持された状態及び/又は他の分子が結合していない状態で、従来より簡便且つ効率的に精製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】アビジン−ビオチンキャッチ法による、従来のタンパク質精製方法の概略を示す。
図2】アビジン−ビオチンキャッチ法による、本発明のタンパク質精製方法の概略を示す。
図3】各ストレプトアビジンの添加量における、酵素活性の相対比率、及び阻害率を示す(実施例3)。縦軸は、酵素活性の相対比率、又は阻害率を示す。酵素活性の相対比率については、HIVプロテアーゼの非存在下で測定された酵素活性を0%、化合物1の非存在下で測定された酵素活性を100%とした。横軸は、ストレプトアビジンの添加量を化合物1に対する当量に換算した値を示す。
図4】蛍光基質添加後の、HIVプロテアーゼ活性を示す(実施例4)。縦軸は、EDANS基質断片由来の蛍光の相対強度を示す。横軸は、蛍光基質添加後の経過時間を示す。F1、F2、F3は、順に、1回目の溶出区分、2回目の溶出区分、3回目の溶出区分を示す。−SAはストレプトアビジン非添加の場合を示し、+SAはストレプトアビジン添加の場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.化合物、又はその塩、水和物若しくは溶媒和物
ビオチン、及び該ビオチンと直接共有結合しているタンパク質活性調節物質を含む化合物(本明細書において、「本発明の化合物」又は「ビオチン直接結合型タンパク質活性調節物質」と示すこともある。)、又はその塩、水和物若しくは溶媒和物について説明する。
【0014】
ビオチンは、アビジン物質と非共有結合できる限りにおいて特に限定されず、代表的には式(2):
【0015】
【化2】
【0016】
で表わされる化合物を例示することができる。また、ビオチンとしては、その他にも、式(2)で表される化合物の類似体、たとえばデスチオビオチン、3,4−ジアミノビオチン、2−イミノビオチン等が挙げられる。
【0017】
アビジン物質としては、アビジンと同程度或いはそれ以上の結合強度でビオチンと非共有結合可能な物質である限り特に限定されない。アビジン物質としては、例えばアビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジン、タマビジン等が挙げられる。
【0018】
タンパク質活性調節物質としては、タンパク質と可逆的に非共有結合してその活性を調節(活性化又は阻害)できる物質である限りにおいて特に限定されず、天然のものであっても、非天然のものであってもよい。タンパク質活性調節物質としては、例えばプロテアーゼ阻害剤、生体内受容体のリガンド等が挙げられる。
【0019】
ここで、限定的な解釈を望むものではないが、本発明において、タンパク質とビオチン直接結合型タンパク質活性調節物質との複合体にストレプトアビジン等を接触させることにより、通常であればタンパク質、ビオチン直接結合型タンパク質活性調節物質、及びストレプトアビジン等の3者の複合体が形成されると予想されるところ、予想外にもタンパク質を単体で分離できるのは、次のような原理(本明細書において、「本発明の原理」と示すこともある。)によるものと推測される。上記3者の複合体においては、タンパク質とストレプトアビジン等とを介在するビオチン直接結合型タンパク質活性調節物質の分子量が比較的小さく、このため、タンパク質とストレプトアビジン等との距離が近くなっており、タンパク質とストレプトアビジン等との間に大きい分子同士の反発力が生じると考えられる。その際、ストレプトアビジン等とビオチン直接結合型タンパク質活性調節物質との間の「ストレプトアビジン等−ビオチン間結合」の結合強度は極めて大きいため、この結合はそのまま保持される一方、タンパク質とビオチン直接結合型タンパク質活性調節物質との間の「精製対象タンパク質−タンパク質活性調節物質間結合」の結合強度は「ストレプトアビジン等−ビオチン間結合」の結合強度よりは弱いので、上記反発力により該結合が維持できなくなると考えられる。これにより、一旦は上記3者の複合体が形成されても、ビオチン直接結合型タンパク質活性調節物質とストレプトアビジン等との2者の複合体と、タンパク質とに分離されてしまうと考えられる。
【0020】
この本発明の原理の観点から、タンパク質活性調節物質の分子量の上限は、上記反発力を妨げることが無いよう、比較的小さいことが望ましく、例えば3000、好ましくは2000、より好ましくは1000、さらに好ましくは800である。
【0021】
また、タンパク質は比較的分子量が大きいので、上記本発明の原理の観点から、タンパク質活性調節物質自身はタンパク質ではないことが好ましい。
【0022】
タンパク質活性調節物質の分子量の下限は、特に限定されず、例えば100、好ましくは200、より好ましくは400、さらに好ましくは500である。
【0023】
上記本発明の原理において反発力を効率的に生じさせるという観点から、タンパク質活性調節物質は、一定以上の分子量のタンパク質を活性調節対象タンパク質とするものであることが好ましい。タンパク質活性調節物質の活性調節対象タンパク質の分子量は、例えば5kDa以上、好ましくは10〜200kDa、より好ましくは15〜100kDa、さらに好ましくは20〜50kDaである。
【0024】
プロテアーゼ阻害剤としては、例えばプロテアーゼの触媒アミノ酸残基と相互作用するものとして、アルデヒド、ケトン、ボロン酸エステル、アリルカルボン酸エステル、アリルスルホン、ジケト酸、ジケト酸エステル、ケトアミド、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸アミド、アシルスルホンアミド、スタチン、ノルスタチン、アミノヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシエチルアミン、ジフルオロメチルケトン、アミノホスホン酸、ジアミノヒドロキシブタン、ジアミノジヒドロキシブタン、ヒドロキシエチルヒドラジン、アミノエタン、アミジン、グアニジン、メルカプトプロパン酸、ヒドロキサム酸、アシルプロリン等の部分構造を含むペプチド性および非ペプチド性の化合物が挙げられる。
【0025】
プロテアーゼ阻害剤のより具体的な例としては、ロイペプチン、アンチパイン、キモスタチン、エラスタチナール、リスタチン、ポストスタチン、ペプスタチン、ペプスタノン、ヒドロキシペプスタチン、ホスホラミドン、ピリジノチン、ステフィマイシン、アマスタチン、アクチノニン、アルファメニン、ベスタチン、ベナルチン、エベラクトン、ホルメスチン、ロイヒスチン、ヒドロスタチン、メチルフェルベヌロン、プロベスチン、プロスタチン、ピリジノスタチン、ベナスタチン、ジオクタチン、ジプロチン、ジシクロチン、エポスタチン、フルオスタチン、ストレプトグリン、ベンジルリンゴ酸、ベラクチン、ヒスタチン、ピペラスタチン、EDDS、ホルオキシミチン、ヒスタジンなどの微生物を由来とする低分子化合物。カプトプリル、イミダプリル、エナラプリル、ベナゼプリル、アルガトロバン、ダビガトラン、リバロキサバン、エドキサバン、アピキサバン、サキナビル、リトナビル、インディナビル、ネルフィナビル、アンプレナビル、ロピナビル、アタザナビル、フォスアンプレナビル、ティプラナビル、ダルナビル、シタグリプチン、アログリプチン、ビルダグリプチン、サキサグリプチン、リナグリプチン、アナグリプチン、テネリグリプチン、アリスキレン、ボセプレビル、テラプレビル、シメプレビル、アスナプレビル、バニプレビル、パリタプレビル、シベレスタット等の合成低分子化合物が挙げられる。
【0026】
プロテアーゼ阻害剤の阻害対象であるプロテアーゼとしては、特に限定されないが、例えばアスパラギン酸プロテアーゼ、セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、スレオニンプロテアーゼ等が挙げられる。
【0027】
アスパラギン酸プロテアーゼとしては、例えばペプシン、レニン、カテプシンD、カテプシンE、ナプシン、βセクレターゼ、γセクレターゼ、シグナルペプチドペプチダーゼ、HIVプロテアーゼ、HTLVプロテアーゼ、NS3Aプロテアーゼ、プラスメプシン、サスパーゼ、キモシン等が挙げられる。
【0028】
セリンプロテアーゼとしては、例えばジペプチジルペプチダーゼ4、トリプシン、キモトリプシン、プラスミン、トロンビン、Xa因子などの血液凝固・線溶系および補体系やその制御系の各因子、好中球エラスターゼ、スブチリシン、フューリン、PACE4、PC2、PC7、ケキシン、ククミシン、ランチビオティックペプチダーゼ、テルミターゼ、アクロシン、カリクレイン、ウロキナーゼ、グランチーム、トリプターゼ、キマーゼ、カテプシンA、プロリルアミノペプチダーゼ、P型シグナルペプチダーゼ、前立腺特異抗原、HCMVプロテアーゼ、V8プロテアーゼ、プロテアーゼK等が挙げられる。
【0029】
システインプロテアーゼとしては、例えばカテプシンB、カテプシンH、カテプシンL、カテプシンS、カテプシンKなどのカテプシン類、レグメイン、アンジオテンシン変換酵素、ブレオマイシン加水分解酵素、カルパイン、カスパーゼ、ER-60、パパイン、コロナウイルス3CLプロテアーゼ、ファルシパイン、TEVプロテアーゼ、HRV3Cプロテアーゼ等が挙げられる。
【0030】
メタロプロテアーゼとしては、例えばADAM、マトリックスメタロプロテアーゼ、サーモシン、ネプリライシン、カルボキシペプチダーゼ、エンドセリン変換酵素、KELL抗原、骨形成因子-1、メプリン、セラリシン、PAPP、ミトコンドリアプロセッシングプロテアーゼ、インスリン分解酵素、アミノペプチダーゼ、プレニルプロテアーゼ等が挙げられる。
【0031】
スレオニンプロテアーゼとしては、例えばプロテアソーム、γグルタミルトランスフェラーゼ等が挙げられる。
【0032】
本発明の化合物は、ビオチン、及び該ビオチンと直接共有結合しているタンパク質活性調節物質を(部分構造として)含む。換言すれば、本発明の化合物は、ビオチン由来の基とタンパク質活性調節物質由来の基とが共有結合してなる部分構造を含み、他の部分構造を含んでいてもよい。本発明の化合物は、好ましくはビオチン、及び該ビオチンと直接共有結合しているタンパク質活性調節物質のみからなる。
【0033】
「直接共有結合」とは、ビオチン由来の基とタンパク質活性調節物質由来の基とがリンカー(例えば、主鎖上の原子数が3以上、好ましくは4以上、より好ましくは5以上、さらに好ましくは6以上の、置換されていてもよいアルキレン基又は置換されていてもよいヘテロアルキレン基等)を介さずに共有結合していることを意味する。
【0034】
「ビオチン由来の基」とは、ビオチンの一部の反応性官能基が変化してなる一価の基である限り特に限定されず、例えば以下の例が挙げられる。
【0035】
(例1)ビオチンから反応性官能基中の原子の全部又は一部が除かれてなる基(例えば、式(2)で表わされるビオチンから−OHが除かれてなる基)。
【0036】
(例2)ビオチンの反応性官能基が他の反応性官能基に置換され、さらに該他の反応性官能基中の原子の全部又は一部が除かれてなる基(例えば、式(2)で表わされるビオチンの−OHが−NH−NHに置換され、該−NH−NHから1つの水素原子が除かれて(−NH−NH−)なる基)。
【0037】
(例3)ビオチンの反応性官能基が他の反応性官能基(2重結合又は3重結合を含む)に置換され、さらに該他の反応性官能基に水素原子が付加されることにより形成される基(例えば、式(2)で表わされるビオチンの−OHが−N=C=Oに置換され、該−N=C=Oに水素原子が付加されて(−NH−C(=O)−)なる基)。
【0038】
ビオチン由来の基は、典型的には、式(2)で表わされるビオチンから水酸基が除かれてなる基である。
【0039】
「タンパク質活性調節物質由来の基」とは、タンパク質活性調節物質の一部の反応性官能基が変化してなる一価の基である限り特に限定されず、例えば以下の例が挙げられる。
【0040】
(例1)タンパク質活性調節物質から反応性官能基中の原子の全部又は一部が除かれてなる基(例えば、タンパク質活性調節物質の−NH、−OH、−COOHから1つの水素原子が除かれてなる基)。
【0041】
(例2)タンパク質活性調節物質の反応性官能基が他の反応性官能基に置換され、さらに該他の反応性官能基中の原子の全部又は一部が除かれてなる基(例えば、タンパク質活性調節物質の−OHが−NH−NHに置換され、該−NH−NHから1つの水素原子が除かれて(−NH−NH−)なる基)。
【0042】
(例3)タンパク質活性調節物質の反応性官能基(2重結合又は3重結合を含む)に水素原子が付加されることにより形成される基(例えば、タンパク質活性調節物質の−N=C=Oに水素原子が付加されて(−NH−C(=O)−)なる基)。
【0043】
(例4)タンパク質活性調節物質の反応性官能基が他の反応性官能基(2重結合又は3重結合を含む)に置換され、さらに該他の反応性官能基に水素原子が付加されることにより形成される基(例えば、タンパク質活性調節物質の−OHが−N=C=Oに置換され、該−N=C=Oに水素原子が付加されて(−NH−C(=O)−)なる基)。
【0044】
タンパク質活性調節物質由来の基は、典型的には、タンパク質活性調節物質から1つの水素が除かれてなる基である。
【0045】
タンパク質活性調節物質と共有結合を形成する、ビオチン上の部位は、本発明の化合物がアビジン物質と結合できる限りにおいて特に限定されず、ビオチンとアビジン物質との結合部位に関する公知の情報に基づいて、該結合部位とは離れた部位を適宜選択することができる。タンパク質活性調節物質と共有結合を形成する、ビオチン上の部位は、好ましくは式(2)で表わされるビオチンの−COOHである。
【0046】
ビオチンと共有結合を形成する、タンパク質活性調節物質上の部位は、本発明の化合物が、タンパク質活性調節物質の活性調節対象タンパク質と結合できる限りにおいて特に限定されず、例えばタンパク質活性調節物質と該物質の活性調節対象タンパク質との結合部位に関する公知の情報(例えば、蛋白質構造データバンク(PDB):http://www.rcsb.org)に基づいて、該結合部位とは離れた部位を適宜選択することができる。例えば、タンパク質活性調節物質がKNI-1293(プロテアーゼ阻害剤)である場合、式(3):
【0047】
【化3】
【0048】
で表わされるKNI-1293の−NHが好ましい。
【0049】
本発明の化合物のうち、一つの好ましい態様として、一般式(1):
【0050】
【化4】
【0051】
[式(1)中、Rは、タンパク質活性調節物質由来の基である.]
で表わされる化合物が挙げられる。
【0052】
本発明の化合物の塩としては、特に制限されるものではなく、酸性塩、塩基性塩のいずれも採用することができる。酸性塩の例としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩等が挙げられ、塩基性塩の例としては、ナトリウム、及びカリウムなどのアルカリ金属塩、並びにカルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。
【0053】
本発明の化合物の溶媒和物としては、一般式(1)で表される化合物又はその塩と、溶媒との溶媒和物である限り特に限定されない。溶媒としては、例えばエタノール、グリセロール、酢酸等が挙げられる。
【0054】
本発明の化合物は、公知の合成方法に従って又は準じて製造することができる。例えばタンパク質活性調節物質がアミノ基を有する場合であれば、該アミノ基とビオチンのカルボキシル基とを触媒の存在下で反応させてアミド結合を形成することにより、本発明の化合物を製造することができる。また、タンパク質活性調節物質がアミノ基を有しない場合であっても、例えば水酸基を有していれば、これを−NH−NHに置換してから、ビオチンのカルボキシル基と反応させればよい。さらに、タンパク質活性調節物質がカルボキシル基や水酸基を有していれば、これとビオチンのカルボキシル基とを縮合することにより、本発明の化合物を得ることもできる。これらの反応は、必要に応じて、反応性基を適当な保護基で保護してから行うこともできる。
【0055】
2.タンパク質分離剤
本発明は、本発明の化合物、又はその塩、水和物若しくは溶媒和物を含有する、タンパク質と該タンパク質の活性調節物質との複合体からの該タンパク質分離剤(本明細書において「本発明の分離剤」と示すこともある。)に関する。以下、これについて説明する。
【0056】
本発明の化合物は部分構造としてタンパク質活性調節物質を含むので、タンパク質と該タンパク質の活性調節物質の複合体に接触させることにより、該複合体のタンパク質活性調節物質と競合し、該複合体からタンパク質を分離することができる。分離したタンパク質は本発明の化合物と結合した状態となる。よって、本発明の分離剤は、試料中の特定タンパク質の精製を、例えば該タンパク質の活性調節物質が固定化された担体を用いて行う際に、該担体上のタンパク質活性調節物質と精製対象タンパク質との複合体から精製対象タンパク質を溶出(分離)する際の、溶出剤(分離剤)として有用である。
【0057】
分離対象である複合体を構成する「タンパク質」は、本発明の化合物中のタンパク質活性調節物質の活性調節対象タンパク質である。分離対象である複合体は、遊離した状態であってもよいが、担体に固定された状態であることが好ましい。
【0058】
本発明の分離剤は、本発明の化合物、又はその塩、水和物若しくは溶媒和物のみからなるものであってもよいが、緩衝剤、溶媒等の他の成分を有していてもよい。この場合、本発明の化合物、又はその塩、水和物若しくは溶媒和物の濃度は、特に制限されるものではないが、例えば1×10−10mоl/L〜1×10−5mоl/L、好ましくは1×10−8mоl/L〜1×10−6mоl/Lが挙げられる。
【0059】
溶媒としては、特に制限はなく、極性溶媒及び非極性溶媒のいずれも使用できる。
【0060】
極性溶媒としては、例えば、水、エーテル化合物(テトラヒドロフラン、アニソール、1,4−ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル等)、アルコール(メタノール、エタノール、アリルアルコール等)、エステル化合物(酢酸エチル等)、ケトン(アセトン等)、ハロゲン化炭化水素(ジクロロメタン、クロロホルム)、ジメチルスルホキシド、アミド系溶媒(N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルピロリドン等)等が挙げられる。
【0061】
非極性溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等の脂肪族有機溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族溶媒等が挙げられる。
【0062】
緩衝剤としては、特に制限はなく、例えばMES緩衝剤、HEPES緩衝剤、Tris緩衝剤、トリシン−水酸化ナトリウム緩衝剤、リン酸系緩衝剤、リン酸緩衝生理食塩水等が挙げられる。
【0063】
3.タンパク質分離方法、及び複合体
本発明は、本発明の化合物、又はその塩、水和物若しくは溶媒和物を用いて、タンパク質と該タンパク質の活性調節物質との複合体から該タンパク質を分離する方法(本明細書において「本発明の分離方法」と示すこともある)に関する。さらには、本発明は、本発明の分離方法によって得られる複合体(本発明の化合物、又はその塩、水和物若しくは溶媒和物とタンパク質との複合体)(本明細書において、「本発明の複合体」と示すこともある。)にも関する。以下、これらについて説明する。
【0064】
本発明の分離方法は、下記工程(a)及び(b)を含む:
(a)タンパク質と該タンパク質の活性調節物質との複合体と、本発明の化合物、又はその塩、水和物若しくは溶媒和物とを接触させる工程、及び
(b)工程(a)により得られる、本発明の化合物、又はその塩、水和物若しくは溶媒和物と、タンパク質との複合体を回収する工程。
【0065】
本発明の分離方法によれば、試料中の特定タンパク質の精製を、例えば該タンパク質の活性調節物質が固定化された担体を用いて行う際に、該担体上のタンパク質活性調節物質と精製対象タンパク質との複合体から精製対象タンパク質を溶出(分離)することができる。
【0066】
工程(a)における複合体を構成する「タンパク質」は、本発明の化合物中のタンパク質活性調節物質の活性調節対象タンパク質である。該タンパク質の活性調節物質との複合体である。該複合体は、遊離した状態であってもよいが、担体に固定された状態であることが好ましい。
【0067】
工程(a)における「接触」の態様は、特に限定されないが、例えば溶媒中で両者を共存させる態様、より具体的には、例えばタンパク質と該タンパク質の活性調節物質との複合体が固定された担体と、本発明の化合物、又はその塩、水和物若しくは溶媒和物とを、溶媒中で共存させる態様が挙げられる。この際に使用される溶媒としては、タンパク質の活性を損なわない限りにおいて特に制限されず、上記「2.タンパク質分離剤」で用いられ得る溶媒を採用することができる。また、溶媒に、他の成分(例えば、上記「2.タンパク質分離剤」で用いられ得る緩衝剤等)が加えられてもよい。
【0068】
工程(a)により、タンパク質と該タンパク質の活性調節物質との複合体と、本発明の化合物との競合が起こり、該複合体からタンパク質が分離される。分離したタンパク質は本発明の化合物と結合して複合体を形成している。
【0069】
工程(b)では、この複合体(本発明の複合体:本発明の化合物、又はその塩、水和物若しくは溶媒和物と、タンパク質との複合体)を回収する。回収手段は、特に限定されない。例えば、タンパク質と該タンパク質の活性調節物質との複合体が固定された担体と、本発明の化合物、又はその塩、水和物若しくは溶媒和物とを、溶媒中で共存させた場合であれば、遠心、ろ過等により担体を除去し、得られた溶液を回収すればよい。
【0070】
4.タンパク質を単体で分離する方法
本発明は、上記「3.タンパク質分離方法、及び複合体」で得られた本発明の複合体(本発明の化合物、又はその塩、水和物若しくは溶媒和物と、タンパク質との複合体)から、タンパク質を単体で分離する方法(本明細書において、「本発明の単体分離方法」と示すこともある。)に関する。以下、これについて説明する。
【0071】
本発明の単体分離方法は、下記工程(c)及び(d)を含む:
(c)本発明の複合体と、アビジン物質とを接触させる工程、及び
(d)工程(c)により得られるタンパク質を回収する工程。
【0072】
工程(c)で用いられるアビジン物質は、遊離した状態で用いてもよく、また磁気ビーズやセファロース等の担体に結合した状態で用いてもよい。
【0073】
工程(c)における「接触」の態様は、特に限定されないが、例えば溶媒中で両者を共存させる態様が挙げられる。この際に使用される溶媒としては、タンパク質の活性を損なわない限りにおいて特に制限されず、上記「2.タンパク質分離剤」で用いられ得る溶媒を採用することができる。また、溶媒に、他の成分(例えば、上記「2.タンパク質分離剤」で用いられ得る緩衝剤等)が加えられてもよい。また、
工程(c)における接触時間は、本発明の複合体からタンパク質が単体で分離できる程度の時間が確保される限りにおいて特に限定されない。接触時間は、例えば1〜30分間、好ましくは5〜20分間程度である。
【0074】
工程(c)により、上記本発明の原理における反発力が生じ、本発明の複合体から、タンパク質が単体で(即ち本発明の化合物やタンパク質活性調節物質等の他の分子が結合していない状態で)分離される。
【0075】
工程(d)では、この、単体で分離したタンパク質を回収する。回収手段は特に限定されない。例えば、工程(c)後の溶液をそのまま回収すればよい。
【0076】
工程(d)後、さらに工程(e):
(e)工程(d)により回収されたタンパク質の活性を測定する工程
により、単体で分離したタンパク質の活性を測定することもできる。
【0077】
活性測定の方法は、特に限定されず、回収されたタンパク質の種類に応じて、適切な方法を採用することができる。例えば、タンパク質がプロテアーゼである場合は、FRET基質を用いて、該基質の切断時に生じる蛍光を測定することにより、プロテアーゼ活性を測定することができる。
【実施例】
【0078】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0079】
実施例1:化合物1(ビオチン直接結合型プロテアーゼ阻害剤)の合成
化合物1(ビオチン直接結合型プロテアーゼ阻害剤(プロテアーゼ阻害剤=KNI-1293))を以下のスキームに従って合成した。
【0080】
【化5】
【0081】
D-(+)-biotin (26.9 mg, 0.11 mmol) を乾燥N,N-ジメチルホルムアミド (4 mL) に溶解し、-10℃で攪拌下、N-メチルモルホリン (12.1μL, 0.11 mmol)、クロロギ酸イソブチル (14.3μL, 0.11 mmol) を加えて30分間攪拌した。反応液にKNI-1293(Hidaka, K. et al., Bioorg. Med. Chem., 16, 10049 (2008))(68.3 mg, 0.10 mmol)、N-メチルモルホリン (11.0μL, 0.10 mmol)、乾燥N,N-ジメチルホルムアミド (1 mL) の混合溶液を加え、室温で終夜攪拌した。反応液を減圧濃縮し、残渣に10%クエン酸水溶液を加えて析出した固体を濾過し、得られた白色固体を5%炭酸水素ナトリウム水溶液、水で順に洗浄し、乾燥した。粗生成物を逆相カラムHPLCにより精製して白色粉末(化合物1)を得た (収率64%)。
【0082】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 9.67 (s, 1H), 8.20 (d, J = 8.9 Hz, 1H), 8.10 (d, J= 8.9 Hz, 1H), 7.42 - 7.34 (m, 2H), 7.32 - 7.10 (m, 8H), 7.07 - 6.99 (m, 1H), 6.44 (br. s., 1H), 6.36 (br. s., 1H), 5.28 (dd, J = 5.0, 8.9 Hz, 1H), 5.02 - 4.91 (m, 2H), 4.76 (s, 2H), 4.50 (d, J = 3.4 Hz, 1H), 4.45 - 4.34 (m, 2H), 4.31 (dd, J = 4.5, 7.8 Hz, 1H), 4.20 - 4.08 (m, 2H), 3.96 (d, J= 14.3 Hz, 1H), 3.16 - 3.08 (m, 2H), 3.05 (dd, J = 4.7, 16.0 Hz, 1H), 2.92 - 2.75 (m, 3H), 2.58 (d, J = 12.5 Hz, 1H), 2.26 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 2.12 - 2.03 (m, 6H), 1.32 - 1.57 (m, 12H); MS (ESI-TOF) m/z: calcd for C45H57N6O8S2[M + H]+ 873.367; found 873.361。
【0083】
参考例1:化合物2(ビオチンリンカー結合型プロテアーゼ阻害剤)の合成
化合物2(ビオチンリンカー結合型プロテアーゼ阻害剤(プロテアーゼ阻害剤=KNI-1293))を以下のスキームに従って合成した。
【0084】
【化6】
【0085】
(tert-ブトキシカルボニル)アミノカプロン酸 (0.745 g, 3.2 mmol) を乾燥N,N-ジメチルホルムアミド (10 mL) に溶解し、-10℃で攪拌下、N-メチルモルホリン (354μL, 3.2 mmol)、クロロギ酸イソブチル (418μL, 3.2 mmol) を加えて30分間攪拌した。反応液にKNI-1293(Hidaka, K. et al., Bioorg. Med. Chem., 16, 10049 (2008))(2.00 g, 2.9 mmol)、N-メチルモルホリン (322μL, 2.9 mmol)、乾燥N,N-ジメチルホルムアミド (5 mL) の混合溶液を加え、室温で終夜攪拌した。反応液を減圧濃縮し、残渣に10%クエン酸水溶液を加えて析出した固体を濾過し、固体を5%炭酸水素ナトリウム水溶液、水で順に洗浄し、乾燥した。得られた固体をメタノール (15 mL) に溶解し、1M 水酸化ナトリウム水溶液 (6 mL) を加えて室温で1時間攪拌した。反応液を減圧濃縮してメタノールを留去した後、クエン酸を加えてpH 3として析出した固体を濾過した。固体を水、ヘキサンで順に洗浄し、乾燥後、固体を得た。固体をトリフルオロ酢酸 (15 mL) に溶解し、室温で1時間攪拌した。反応液を減圧濃縮し、残渣にジエチルエーテルを加えて析出した固体を濾過して得た固体を5%炭酸水素ナトリウム水溶液、水で順に洗浄し、乾燥後、白色固体(アミノカプロン酸を1つ縮合した中間体)を得た (1.82 g, 収率82%)。MS (ESI-TOF) m/z: calcd for C41H54N5O7S [M + H]+ 760.374; found 760.372。
【0086】
(tert-ブトキシカルボニル)アミノカプロン酸 (0.502 g, 2.2 mmol) を乾燥N,N-ジメチルホルムアミド (10 mL) に溶解し、-10℃で攪拌下、N-メチルモルホリン (239μL, 2.2 mmol)、クロロギ酸イソブチル (282μL, 2.0 mmol) を加えて30分間攪拌した。反応液にアミノカプロン酸を1つ縮合した中間体 (1.50 g, 2.0 mmol)、乾燥N,N-ジメチルホルムアミド (7 mL) の混合溶液を加え、室温で終夜攪拌した。前述と同様に水酸化ナトリウム水溶液により後処理を行い、得られた固体をトリフルオロ酢酸 (10 mL) に溶解し、室温で1時間攪拌した。前述と同様に炭酸水素ナトリウム水溶液により後処理を行い、白色固体(アミノカプロン酸を2つ縮合した中間体)を得た (1.64 g, 収率95%)。MS (ESI-TOF) m/z: calcd for C47H65N6O8S [M + H]+ 873.458; found 873.458。
【0087】
(tert-ブトキシカルボニル)アミノカプロン酸 (0.433 g, 1.9 mmol) を乾燥N,N-ジメチルホルムアミド (10 mL) に溶解し、-10℃で攪拌下、N-メチルモルホリン (206μL, 1.9 mmol)、クロロギ酸イソブチル (243μL, 1.9 mmol) を加えて30分間攪拌した。反応液にアミノカプロン酸を2つ縮合した中間体 (1.50 g, 1.7 mmol)、乾燥N,N-ジメチルホルムアミド (6 mL) の混合溶液を加え、室温で終夜攪拌した。前述と同様に水酸化ナトリウム水溶液により後処理を行い、得られた固体をトリフルオロ酢酸 (10 mL) に溶解し、室温で1時間攪拌した。前述と同様に炭酸水素ナトリウム水溶液により後処理を行い、白色固体(アミノカプロン酸を3つ縮合した中間体)を得た (1.13 g, 収率68%)。MS (ESI-TOF) m/z: calcd for C53H76N7O9S [M + H]+ 986.542; found 986.540。
【0088】
(tert-ブトキシカルボニル)アミノカプロン酸 (0.352 g, 1.5 mmol) を乾燥N,N-ジメチルホルムアミド (10 mL) に溶解し、-10℃で攪拌下、N-メチルモルホリン (167μL, 1.5 mmol)、クロロギ酸イソブチル (197μL, 1.5 mmol) を加えて30分間攪拌した。反応液にアミノカプロン酸を3つ縮合した中間体 (1.00 g, 1.0 mmol)、乾燥N,N-ジメチルホルムアミド (7 mL) の混合溶液を加え、室温で終夜攪拌した。前述と同様に水酸化ナトリウム水溶液により後処理を行い、得られた固体をトリフルオロ酢酸 (6 mL) に溶解し、室温で35分間攪拌した。前述と同様に炭酸水素ナトリウム水溶液により後処理を行い、白色固体(アミノカプロン酸を4つ縮合した中間体)を得た (0.98 g, 収率88%)。MS (ESI-TOF) m/z: calcd for C59H87N8O10S [M + H]+ 1099.626; found 1099.628。
【0089】
D-(+)-biotin (214 mg, 0.87 mmol) を乾燥N,N-ジメチルホルムアミド (8 mL) に溶解し、-10℃で攪拌下、N-メチルモルホリン (96μL, 0.87 mmol)、クロロギ酸イソブチル (113μL, 0.87 mmol) を加えて30分間攪拌した。反応液にアミノカプロン酸を4つ縮合した中間体 (0.80 g, 0.73 mmol)、乾燥N,N-ジメチルホルムアミド (5 mL) の混合溶液を加え、室温で終夜攪拌した。反応液を減圧濃縮して残渣に10%クエン酸水溶液を加えて析出した固体を濾過し、固体を5%炭酸水素ナトリウム水溶液、水で順に洗浄し、乾燥した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (シリカゲル40 g, クロロホルム/メタノール) により精製し、次いで酢酸エチル/メタノールから再結晶を行い、淡橙白色固体(化合物2)を得た(0.69 g, 収率72%)。
【0090】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 9.68 (s, 1H), 8.21 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 8.11 (d, J= 8.8 Hz, 1H), 7.79 - 7.72 (m, 4H), 7.38 (d, J = 6.6 Hz, 2H), 7.33 - 7.09 (m, 8H), 7.09 - 6.99 (m, 1H), 6.44 (br. s., 1H), 6.38 (br. s., 1H), 5.35 - 5.23 (m, 1H), 5.02 - 4.90 (m, 2H), 4.77 (s, 1H), 4.51 (d, J = 3.5 Hz, 1H), 4.46 - 4.34 (m, 2H), 4.34 - 4.27 (m, 1H), 4.21 - 4.07 (m, 2H), 3.96 (d, J = 14.4 Hz, 1H), 3.15 - 3.05 (m, 2H), 3.05 - 2.94 (m, 9H), 2.93 - 2.75 (m, 3H), 2.58 (d, J = 12.6 Hz, 2H), 2.24 (t, J = 7.1 Hz, 2H), 1.96 - 2.17 (m, 14H), 1.18 - 1.58 (m, 34H); MS (ESI-TOF) m/z: calcd for C69H101N10O12S2[M + H]+ 1325.704; found 1325.702。
【0091】
実施例2:化合物3(ビオチン直接結合型プロテアーゼ阻害剤)の合成
化合物3(ビオチン直接結合型プロテアーゼ阻害剤(プロテアーゼ阻害剤=ペプスタチンA))を以下のスキームに従って合成した。
【0092】
【化7】
【0093】
ペプスタチンA (86 mg, 0.13 mmol) をN,N-ジメチルホルムアミド (3 mL) に溶解し、室温攪拌下、トリエチルアミン (44μL, 0.32 mmol) 、N-(tert-ブトキシカルボニル)ヒドラジド (18 mg, 0.14 mmol) 、ヘキサフルオロリン酸(ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリピロリジノホスホニウム(72 mg, 0.14 mmol) を加え、終夜攪拌した。反応液を減圧濃縮し、残渣に10%クエン酸水溶液を加えて析出した固体を濾過し、得られた白色固体を5%炭酸水素ナトリウム水溶液、水で順に洗浄し、乾燥して白色固体(123 mg) を得た。固体をトリフルオロ酢酸 (15 mL) に溶解し、室温で1時間攪拌した。反応液を減圧濃縮し、残渣にジエチルエーテルを加えて析出した固体を濾過して得た固体を5%炭酸水素ナトリウム水溶液、水で順に洗浄し、乾燥後、白色固体のペプスタチンAヒドラジド誘導体を得た (69 mg, 収率78%)。MS (ESI-TOF) m/z: calcd for C34H66N7O8[M + H]+ 700.497; found 700.486。
【0094】
D-(+)-biotin (29 mg, 0.12 mmol) を乾燥N,N-ジメチルホルムアミド (3 mL) に溶解し、-10℃で攪拌下、N-メチルモルホリン (13μL, 0.12 mmol)、クロロギ酸イソブチル (16μL, 0.12 mmol) を加えて30分間攪拌した。反応液にペプスタチンAヒドラジド誘導体 (63 mg, 0.09 mmol)、乾燥N,N-ジメチルホルムアミド (2 mL)を加え、室温で終夜攪拌した。反応液を減圧濃縮し、残渣に10%クエン酸水溶液を加えて析出した固体を濾過し、得られた白色固体を5%炭酸水素ナトリウム水溶液、水で順に洗浄し、乾燥した。粗生成物を逆相カラムHPLCにより精製して白色粉末(化合物3)を得た (39 mg, 収率46%)。
【0095】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 9.73 (d, J = 1.6 Hz, 1H), 9.67 (d, J = 1.6 Hz, 1H), 7.90 (d, J = 7.3 Hz, 1H), 7.80 (d, J = 8.9 Hz, 1H), 7.84 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.44 (d, J = 8.9 Hz, 1H), 7.48 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 6.44 (s, 1H), 6.38 (s, 1H), 4.90 (d, J = 5.1 Hz, 1H), 4.85 (d, J = 5.1 Hz, 1H), 4.34 - 4.09 (m, 5H), 3.88 - 3.77 (m, 4H), 3.09 (dd, J = 11.7, 6.9 Hz, 1H), 2.83 (dd, J = 12.4, 5.1 Hz, 1H), 2.62 - 2.55 (m, 1H), 2.15 - 1.89 (m, 11H), 1.63 - 1.17 (m, 13H), 0.90 - 0.79 (m, 30H); MS (ESI-TOF) m/z: calcd for C44H80N9O10[M + H]+ 926.574; found 926.571。
【0096】
参考例2:化合物4(ビオチンリンカー結合型プロテアーゼ阻害剤)の合成
化合物4(ビオチンリンカー結合型プロテアーゼ阻害剤(プロテアーゼ阻害剤=ペプスタチンA))を以下のスキームに従って合成した。
【0097】
【化8】
【0098】
ペプスタチンA (201 mg, 0.29 mmol) をN,N-ジメチルホルムアミド (4 mL) に溶解し、室温攪拌下、トリエチルアミン (122 μL, 0.89 mmol) 、N-(tert-ブトキシカルボニル)-1,2-ジアミノエタン (94 mg, 0.58 mmol) 、ヘキサフルオロリン酸(ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリピロリジノホスホニウム(304 mg, 0.58 mmol) を加え、終夜攪拌した。反応液を減圧濃縮し、残渣に10%クエン酸水溶液を加えて析出した固体を濾過し、得られた白色固体を5%炭酸水素ナトリウム水溶液、水で順に洗浄し、乾燥して白色固体(246 mg) を得た。固体をトリフルオロ酢酸 (4 mL) に溶解し、室温で1時間攪拌した。反応液を減圧濃縮し、残渣にジエチルエーテルを加えて析出した固体を濾過して得た固体を5%炭酸水素ナトリウム水溶液、水で順に洗浄し、乾燥後、白色固体のペプスタチンAアミノエチルアミン誘導体を得た (191 mg, 収率90%)。MS (ESI-TOF) m/z: calcd for C36H70N7O8[M + H]+ 728.528; found 728.535。
【0099】
(tert-ブトキシカルボニル)アミノカプロン酸 (86 mg, 0.37 mmol) を乾燥N,N-ジメチルホルムアミド (5 mL) に溶解し、-10℃で攪拌下、N-メチルモルホリン (41μL, 0.37 mmol)、クロロギ酸イソブチル (48μL, 0.37 mmol) を加えて40分間攪拌した。反応液にペプスタチンAアミノエチルアミン誘導体 (180 mg, 0.25 mmol)、乾燥N,N-ジメチルホルムアミド (10 mL) の混合溶液を加え、室温で終夜攪拌した。反応液を減圧濃縮し、残渣に10%クエン酸水溶液を加えて析出した固体を濾過し、固体を5%炭酸水素ナトリウム水溶液、水で順に洗浄し、乾燥した。得られた固体をメタノール (15 mL) に溶解し、1M 水酸化ナトリウム水溶液 (5.85 mL) を加えて室温で2時間攪拌した。反応液を減圧濃縮してメタノールを留去した後、クエン酸を加えてpH 3として析出した固体を濾過した。固体を水で洗浄し、乾燥後、固体を得た。固体をトリフルオロ酢酸 (4 mL) に溶解し、室温で1時間攪拌した。反応液を減圧濃縮し、残渣に5%炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて析出した固体を濾過し、水で洗浄して乾燥後、白色固体(アミノカプロン酸を1つ縮合した中間体)を得た (169 mg, 収率81%)。MS (ESI-TOF) m/z: calcd for C42H81N8O9[M + H]+ 841.612; found 841.610。
【0100】
(tert-ブトキシカルボニル)アミノカプロン酸 (139 mg, 0.6 mmol) を乾燥N,N-ジメチルホルムアミド (5 mL) に溶解し、-10℃で攪拌下、N-メチルモルホリン (66μL, 0.6 mmol)、クロロギ酸イソブチル (79μL, 0.6 mmol) を加えて30分間攪拌した。反応液にアミノカプロン酸を1つ縮合した中間体 (169 mg, 0.2 mmol)、乾燥N,N-ジメチルホルムアミド (15 mL) の混合溶液を加え、室温で終夜攪拌した。前述と同様に水酸化ナトリウム水溶液により後処理を行い、得られた固体をトリフルオロ酢酸 (4 mL) に溶解し、室温で1時間攪拌した。前述と同様に炭酸水素ナトリウム水溶液により後処理を行い、白色固体(アミノカプロン酸を2つ縮合した中間体)を得た (157 mg, 収率82%)。MS (ESI-TOF) m/z: calcd for C48H92N9O10[M + H]+ 954.696; found 954.693。
【0101】
(tert-ブトキシカルボニル)アミノカプロン酸 (113 mg, 0.49 mmol) を乾燥N,N-ジメチルホルムアミド (5 mL) に溶解し、-10℃で攪拌下、N-メチルモルホリン (54μL, 0.49 mmol)、クロロギ酸イソブチル (64μL, 0.49 mmol) を加えて30分間攪拌した。反応液にアミノカプロン酸を2つ縮合した中間体 (157 mg, 1.7 mmol)、乾燥N,N-ジメチルホルムアミド (13 mL) の混合溶液を加え、室温で終夜攪拌した。前述と同様に水酸化ナトリウム水溶液により後処理を行い、得られた固体をトリフルオロ酢酸 (6 mL) に溶解し、室温で1時間攪拌した。前述と同様に炭酸水素ナトリウム水溶液により後処理を行い、白色固体(アミノカプロン酸を3つ縮合した中間体)を得た (142 mg, 収率81%)。MS (ESI-TOF) m/z: calcd for C54H103N10O11[M + H]+ 1067.780; found 1067.783。
【0102】
(tert-ブトキシカルボニル)アミノカプロン酸 (92 mg, 0.40 mmol) を乾燥N,N-ジメチルホルムアミド (5 mL) に溶解し、-10℃で攪拌下、N-メチルモルホリン (44μL, 0.4 mmol)、クロロギ酸イソブチル (52μL, 0.4 mmol) を加えて30分間攪拌した。反応液にアミノカプロン酸を3つ縮合した中間体 (143 mg, 0.13 mmol)、乾燥N,N-ジメチルホルムアミド (10 mL) の混合溶液を加え、室温で終夜攪拌した。前述と同様に水酸化ナトリウム水溶液により後処理を行い、得られた固体をトリフルオロ酢酸 (8 mL) に溶解し、室温で1時間攪拌した。前述と同様に炭酸水素ナトリウム水溶液により後処理を行い、白色固体(アミノカプロン酸を4つ縮合した中間体)を得た (124 mg, 収率79%)。MS (ESI-TOF) m/z: calcd for C60H114N11O12[M + H]+ 1186.864; found 1180.867。
【0103】
D-(+)-biotin (36 mg, 0.15 mmol) を乾燥N,N-ジメチルホルムアミド (4 mL) に溶解し、-10℃で攪拌下、N-メチルモルホリン (16μL, 0.15 mmol)、クロロギ酸イソブチル (19μL, 0.15 mmol) を加えて30分間攪拌した。反応液にアミノカプロン酸を4つ縮合した中間体 (59 mg, 0.05 mmol)、乾燥N,N-ジメチルホルムアミド (5 mL) の混合溶液を加え、室温で終夜攪拌した。反応液を減圧濃縮して残渣に10%クエン酸水溶液を加えて析出した固体を濾過し、固体を5%炭酸水素ナトリウム水溶液、水で順に洗浄し、乾燥して白色固体(化合物4)を得た(43 mg, 収率61%)。粗生成物を逆相カラムHPLCにより精製して白色粉末を得た。
【0104】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.95 (d, J = 7.1 Hz, 1H), 7.86 - 7.69 (m, 7H), 7.49 (d, J= 8.6 Hz, 1H), 7.35 (d, J = 9.2 Hz, 1H), 6.54 (s, 1H), 6.37 (s, 1H), 4.87 - 4.84 (m, 2H), 4.33 - 4.09 (m, 5H), 3.74 - 3.83 (m, 4H), 3.17 - 2.93 (m, 13H), 2.82 (dd, J = 12.4, 5.1 Hz, 1H), 2.57 (d, J = 12.5 Hz, 1H), 2.15 - 1.88 (m, 19H), 1.16 - 1.56 (m, 37H), 0.88 - 0.77 (m, 30H); MS (ESI-TOF) m/z: calcd for C70H129N13O14[M + 2H]2+ 703.975; found 703.973。
【0105】
実施例3:ビオチン直接結合型プロテアーゼ阻害剤とプロテアーゼとの複合体からの、該プロテアーゼの単体での分離
ビオチン直接結合型プロテアーゼ阻害剤(化合物1)と、該阻害剤の阻害対象であるHIVプロテアーゼとを共存させた状態での該プロテアーゼの活性を、ストレプトアビジン濃度を変えて、測定した。ストレプトアビジン非存在下では化合物1とHIVプロテアーゼとが複合体を形成し、該プロテアーゼの活性は抑制される。ストレプトアビジンの添加により該複合体から該プロテアーゼが単体で分離されるのであれば、活性が回復するはずである。具体的には、以下のように行った。
【0106】
HIVプロテアーゼ基質 (DABCYL-Ser-Gln-Asn-Tyr-Pro-Ile-Val-Gln-EDANS)は文献(Matayoshi, E. D. et al., Science, 247, 954-958 (1990).)の記載に準じて化学合成した。リコンビナントHIV-1プロテアーゼは文献(Matayoshi, E. D. et al., Science, 247, 954-958 (1990).)に記載のものを用いた。
【0107】
96ウェルのプレートに55-65μLの200 mM 2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸 (MES)-水酸化ナトリウム緩衝液 (pH 5.5, 2 mM ジチオスレイトール, 2 mM エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、1M 塩化ナトリウムを含む)、5μLの100 nM化合物1/ジメチルスルホキシド溶液、および200 ng/mLリコンビナントHIV-1プロテアーゼ溶液を添加し、37℃で30秒間振とうした。 次いで、0-10μLの127μg/mLストレプトアビジン/MES緩衝液を加えて37℃で10分間振とうした。10μL の50 μM HIVプロテアーゼ基質を添加し、蛍光プレートリーダーを用いてEDANS基質断片由来の蛍光(励起355 nm/蛍光500 nm)を15分間測定した。測定値に基づいて、1秒間における相対蛍光強度の増加量を算出し、これを酵素活性(酵素活性(+化合物1))とした。HIVプロテアーゼの非存在下で測定された酵素活性を0%、化合物1の非存在下で測定された酵素活性(酵素活性(−化合物1))を100%として、下記式(1)に基づいて各ストレプトアビジンの添加量における酵素活性の相対比率を求めた。また、下記式(2)に基づいて、阻害率を算出した。
【0108】
【数1】
【0109】
【数2】
【0110】
結果を図3に示す。図3に示されるように、10当量のストレプトアビジン添加により、阻害率はほぼ消失し(<3%)、酵素活性はほぼ完全に回復した(>97%)。このことから、ストレプトアビジンの添加により、化合物1とHIVプロテアーゼとの複合体から該プロテアーゼが単体で分離されることが強く示唆された。
【0111】
実施例4:プロテアーゼ阻害剤とプロテアーゼとの複合体からの該プロテアーゼの分離、及び該分離により得られたビオチン直接結合型プロテアーゼ阻害剤とプロテアーゼとの複合体からの、該プロテアーゼの単体での分離
ビオチンリンカー結合型プロテアーゼ阻害剤(化合物2)が連結したビーズに、HIVプロテアーゼを結合させた。得られた複合体から、ビオチン直接結合型プロテアーゼ阻害剤(化合物1)を用いて溶出を行った。溶出液のHIVプロテアーゼ活性を、ストレプトアビジン存在下又は非存在下で測定した。化合物2とHIVプロテアーゼとの複合体から、化合物1によりHIVプロテアーゼが溶出(分離)され、さらに溶出液中の複合体(化合物1とHIVプロテアーゼとの複合体)から、ストレプトアビジンの添加によりHIVプロテアーゼが単体で分離されるのであれば、ストレプトアビジン存在下でHIVプロテアーゼ活性が見られるはずである。具体的には、以下のように行った。
【0112】
磁気ビーズ (Streptavidin MagSepharoseTM, GE Healthcare社)のスラリー50μL を1.5 mLチューブに取り出し、磁気ラックでビーズを回収してスラリーを除去した。ビーズを500μL のMES緩衝液 (pH5.5) で洗浄して回収し、500μL の50μM化合物2/MES溶液を加えて、室温で30分間振とうした(これにより、化合物2が磁気ビーズに連結する)。ビーズを回収後、500μL のMES緩衝液で3回洗浄した。113.9μL の0.52 mg/mLリコンビナントHIV-1プロテアーゼのDMEM(牛胎児血清を10%含む)溶液に186.1μL のMES緩衝液を混合した後、化合物2が連結した磁気ビーズと共に30分間振とうした。ビーズを回収後、500μL のMES緩衝液で3回洗浄した。回収したビーズに60μL の25 nM化合物1/MES溶液を加えて、室温で5分間振とうした後、溶出液を取り出した。溶出操作を計3回繰り返し、溶出区分1〜3とした。96ウェルのプレートに55または65μLの200 mM MES緩衝液、0または10μLの127μg/mLストレプトアビジン/MES緩衝液、および5μLのジメチルスルホキシドを添加し、 次いで各溶出区分を加え、37℃で10分間振とうした。10μL の50μM基質を添加し、蛍光プレートリーダーを用いてEDANS基質断片由来の蛍光(励起355 nm/蛍光500 nm)を15分間測定した。測定値に基づいて、1秒間における相対蛍光強度の増加量を算出した。
【0113】
測定開始から10分経過までの相対蛍光強度を図4に、1秒間における相対蛍光強度の増加量を表1に示す。図4及び表1中、F1、F2、F3は、順に、1回目の溶出区分、2回目の溶出区分、3回目の溶出区分を示し、RFUは相対蛍光強度を示し、−SAはストレプトアビジン非添加の場合を示し、+SAはストレプトアビジン添加の場合を示す。図4及び表1に示されるように、溶出液自身(−SA)はHIVプロテアーゼ活性を有しないが、ストレプトアビジン添加(+SA)により、蛍光基質の切断が検出され、溶出区分1(F1)は7.0 RFU/secの切断速度を示した。このことから、化合物2とHIVプロテアーゼとの複合体から、化合物1によりHIVプロテアーゼが溶出(分離)され、さらに溶出液中の複合体(化合物1とHIVプロテアーゼとの複合体)から、ストレプトアビジンの添加によりHIVプロテアーゼが単体で分離されることが強く示唆された。
【0114】
【表1】
図1
図2
図3
図4