特許第6768292号(P6768292)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6768292トレッドモールド及びタイヤモールド装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6768292
(24)【登録日】2020年9月25日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】トレッドモールド及びタイヤモールド装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/02 20060101AFI20201005BHJP
   B29C 35/02 20060101ALI20201005BHJP
   B29L 30/00 20060101ALN20201005BHJP
【FI】
   B29C33/02
   B29C35/02
   B29L30:00
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-247338(P2015-247338)
(22)【出願日】2015年12月18日
(65)【公開番号】特開2017-109433(P2017-109433A)
(43)【公開日】2017年6月22日
【審査請求日】2018年10月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】茨木 大介
【審査官】 山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭63−148413(JP,U)
【文献】 特開2007−269005(JP,A)
【文献】 特開2010−149401(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00−33/76
B29C 35/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
型閉め状態時にタイヤを成形するための閉空間を内部に形成するために、タイヤ周方向に沿って環状に並列され、タイヤ径方向の内側面がタイヤのトレッド部に接触するトレッドモールドであって、
前記トレッドモールドは、タイヤ周方向の端部に配置される端面部を備え、
前記端面部は、タイヤ径方向の内側に、隣接されるトレッドモールドの端面部と型閉め状態時に接触する接触面を備え、
前記接触面は、タイヤ周方向で凹凸となるように、凹凸面状に形成され、
前記端面部は、タイヤ径方向の外側に、隣接されるトレッドモールドの端面部と型閉め状態時に離間する離間面をさらに備え、
前記トレッドモールドは、前記接触面が前記離間面に対して不動となるように、一つの部材で構成され
前記離間面は、タイヤ幅方向の全長に亘って、前記接触面よりもタイヤ周方向の内側に配置される、トレッドモールド。
【請求項2】
前記離間面は、一つ又は複数の平坦面のみから成る、請求項に記載のトレッドモールド。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のトレッドモールドを複数備えるタイヤモールド装置であって、
前記トレッドモールドがタイヤ径方向の内側に装着され、前記トレッドモールドと共にタイヤ径方向に移動する複数のモールドベースを備え、
前記離間面のタイヤ径方向の外側部は、型閉め状態時に、隣接する前記モールドベースのタイヤ周方向の端部におけるタイヤ径方向の内側部よりも、タイヤ周方向の内側に配置される、タイヤモールド装置。
【請求項4】
型閉め状態時にタイヤを成形するための閉空間を内部に形成するために、タイヤ周方向に沿って環状に並列され、タイヤ径方向の内側面がタイヤのトレッド部に接触するトレッドモールドを、複数備え、
前記トレッドモールドは、タイヤ周方向の端部に配置される端面部を備え、
前記端面部は、タイヤ径方向の内側に、隣接されるトレッドモールドの端面部と型閉め状態時に接触する接触面を備え、
前記接触面は、タイヤ周方向で凹凸となるように、凹凸面状に形成され、
前記端面部は、タイヤ径方向の外側に、隣接されるトレッドモールドの端面部と型閉め状態時に離間する離間面をさらに備え、
前記トレッドモールドは、前記接触面が前記離間面に対して不動となるように、一つの部材で構成される、タイヤモールド装置であって、
前記トレッドモールドがタイヤ径方向の内側に装着され、前記トレッドモールドと共にタイヤ径方向に移動する複数のモールドベースを備え、
前記離間面のタイヤ径方向の外側部は、型閉め状態時に、隣接する前記モールドベースのタイヤ周方向の端部におけるタイヤ径方向の内側部よりも、タイヤ周方向の内側に配置され、
前記離間面のタイヤ径方向の外側部は、前記モールドベースのタイヤ周方向の端部におけるタイヤ径方向の内側部よりも、タイヤ周方向の内側に配置される、タイヤモールド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤのトレッド部に接触するトレッドモールドに関し、また、当該トレッドモールドを複数備えるタイヤモールド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤのモールドとして、タイヤ径方向の内側面がタイヤのトレッド部に接触するトレッドモールドが、知られている(例えば、特許文献1)。そして、タイヤ径方向の内側面は、タイヤのトレッド部に溝を形成するための突起部を複数備えている。
【0003】
ところで、特許文献1に係るトレッドモールドにおいては、タイヤ周方向の端部に配置される端面部は、タイヤ径方向の内側面に設けられる突起部に対応して、凹凸面状に形成されている。これにより、トレッドモールドの製作工数が増高していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−341806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、課題は、製作の容易化を図ることができるトレッドモールド及びタイヤモールド装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
トレッドモールドは、型閉め状態時にタイヤを成形するための閉空間を内部に形成するために、タイヤ周方向に沿って環状に並列され、タイヤ径方向の内側面がタイヤのトレッド部に接触するトレッドモールドであって、タイヤ周方向の端部に配置される端面部を備え、前記端面部は、タイヤ径方向の内側に、隣接されるトレッドモールドの端面部と型閉め状態時に接触する接触面を備え、前記接触面は、タイヤ周方向で凹凸となるように、凹凸面状に形成され、前記端面部は、タイヤ径方向の外側に、隣接されるトレッドモールドの端面部と型閉め状態時に離間する離間面をさらに備える。
【0007】
また、トレッドモールドにおいては、前記離間面は、タイヤ幅方向の全長に亘って、前記接触面よりもタイヤ周方向の内側に配置される、という構成でもよい。
【0008】
また、トレッドモールドにおいては、前記離間面は、一つ又は複数の平坦面のみから成る、という構成でもよい。
【0009】
また、タイヤモールド装置は、複数の前記トレッドモールドと、前記トレッドモールドがタイヤ径方向の内側に装着され、前記トレッドモールドと共にタイヤ径方向に移動する複数のモールドベースと、を備え、前記離間面のタイヤ径方向の外側部は、型閉め状態時に、隣接する前記モールドベースのタイヤ周方向の端部におけるタイヤ径方向の内側部よりも、タイヤ周方向の内側に配置される、という構成でもよい。
【0010】
また、タイヤモールド装置においては、前記離間面のタイヤ径方向の外側部は、前記モールドベースのタイヤ周方向の端部におけるタイヤ径方向の内側部よりも、タイヤ周方向の内側に配置される、という構成でもよい。
【発明の効果】
【0011】
以上の如く、トレッドモールド及びタイヤモールド装置は、製作の容易化を図ることができる、という優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、空気入りタイヤのタイヤ子午面における要部断面図である。
図2図2は、一実施形態に係るタイヤモールド装置の型開き状態を示す模式図であって、全体斜視図である。
図3図3は、同実施形態に係るタイヤモールド装置の型開き状態を示す要部図であって、セクターを示す平面図である。
図4図4は、同実施形態に係るタイヤモールド装置の型開き状態を示す要部図であって、タイヤ子午面における断面図である。
図5図5は、同実施形態に係るタイヤモールド装置の型閉め状態を示す要部図であって、セクターを示す平面図である。
図6図6は、同実施形態に係るタイヤモールド装置の型閉め状態を示す要部図であって、タイヤ子午面における断面図である。
図7図7は、同実施形態に係るトレッドモールドの全体正面図(タイヤ径方向視図)である。
図8図8は、同実施形態に係るトレッドモールドの要部斜視図である。
図9図9は、同実施形態に係るセクターの全体側面図(タイヤ周方向視図)である。
図10図10は、同実施形態に係るセクターの全体平面図(タイヤ幅方向視図)である。
図11図11は、同実施形態に係るセクターの全体平面図(タイヤ幅方向視図)である。
図12図12は、同実施形態に係るセクターの全体平面図(タイヤ幅方向視図)である。
図13図13は、同実施形態に係るセクターの全体平面図(タイヤ幅方向視図)である。
図14図14は、同実施形態に係るセクターの全体平面図(タイヤ幅方向視図)である。
図15図15は、同実施形態に係るタイヤモールド装置の型開き状態を示す要部図であって、タイヤ径方向視図である。
図16図16は、同実施形態に係るタイヤモールド装置の型開き状態を示す要部図であって、タイヤ幅方向視図である。
図17図17は、同実施形態に係るタイヤモールド装置の型閉め状態を示す要部図であって、タイヤ径方向視図である。
図18図18は、同実施形態に係るタイヤモールド装置の型閉め状態を示す要部図であって、タイヤ幅方向視図である。
図19図19は、同実施形態に係るタイヤモールド装置の型閉め状態を示す要部図であって、タイヤ幅方向視図である。
図20図20は、他の実施形態に係るタイヤモールド装置の型閉め状態を示す要部図であって、タイヤ幅方向視図である。
図21図21は、さらに他の実施形態に係るタイヤモールド装置の型開き状態を示す要部図であって、タイヤ径方向視図である。
図22図22は、同実施形態に係るタイヤモールド装置の型閉め状態を示す要部図であって、タイヤ径方向視図である。
図23図23は、さらに他の実施形態に係るトレッドモールドの要部斜視図である。
図24図24は、さらに他の実施形態に係るセクターの全体側面図(タイヤ周方向視図)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、タイヤモールド装置における一実施形態について、図1図19を参酌して説明する。なお、各図(図20図24も同様)において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面の間での寸法比も、必ずしも一致していない。
【0014】
まず、タイヤモールド装置の各構成を説明するのに先立って、タイヤモールド装置で製造される空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」ともいう)について説明する。図1に示すように、タイヤ10は、ビードを有する一対のビード部11と、各ビード部11からタイヤ径方向D2の外側に延びるサイドウォール部12と、一対のサイドウォール部12のタイヤ径方向D2の外端部に連接され、トレッド面を構成するトレッド部13とを備えている。
【0015】
図1(以下の図も同様)において、第1の方向D1は、タイヤ幅方向D1であり、第2の方向D2は、タイヤ10の直径方向であるタイヤ径方向D2であり、第3の方向D3は、タイヤ回転軸X1(図2参照)周りの方向であるタイヤ周方向D3である。なお、図1において、タイヤ径方向D2のうち、紙面と平行であるタイヤ径方向D2は、上下方向である。
【0016】
また、タイヤ赤道面S1は、タイヤ回転軸X1に直交する面で且つタイヤ幅方向D1の中心に位置する面である。そして、タイヤ子午面は、タイヤ回転軸X1を含む面で且つタイヤ赤道面S1と直交する面である。
【0017】
図2図6に示すように、本実施形態に係るタイヤモールド装置1は、タイヤ幅方向D1で離間する一対のサイドプレート2,2と、タイヤ周方向D3に沿って並列される複数のセクター3とを備えている。本実施形態においては、タイヤモールド装置1は、未加硫タイヤを加硫することで加硫タイヤを成形するタイヤ加硫装置としている。
【0018】
サイドプレート2は、タイヤ幅方向D1の内側面がタイヤ10のサイドウォール部12に接触するサイドモールド21と、タイヤ10のビード部11が嵌合されるビードモールド22とを備えている。また、セクター3は、タイヤ径方向D2の内側面41がタイヤ10のトレッド部13に接触するトレッドモールド4と、トレッドモールド4がタイヤ径方向D2の内側に装着され、トレッドモールド4と共に一体となってタイヤ径方向D2に移動するモールドベース5とを備えている。
【0019】
一対のサイドモールド21,21は、タイヤモールド装置1の内部にセットされるタイヤ10に対して、タイヤ幅方向D1に離間して配置されている。また、複数のセクター3(トレッドモールド4及びモールドベース5)は、一対のサイドモールド21,21のタイヤ径方向D2の外側に配置され、且つ、タイヤモールド装置1の内部にセットされるタイヤ10に対して、タイヤ周方向D3に沿って環状に並列されている。
【0020】
そして、一方のサイドモールド21は、他方のサイドモールド21に対して、タイヤ幅方向D1で接離可能であり、また、複数のセクター3(トレッドモールド4及びモールドベース5)は、サイドモールド21に対して、タイヤ径方向D2で接離可能である。これにより、タイヤモールド装置1は、図2図4に示すような型開き状態と、図5及び図6に示すような型閉め状態とに切り替えられる。
【0021】
タイヤモールド装置1は、型開き状態時に、サイドプレート2(サイドモールド21)とセクター3(トレッドモールド4)とが離間しているため、タイヤ10の出し入れを可能にする。また、タイヤモールド装置1は、型閉め状態時に、サイドプレート2(サイドモールド21)とセクター3(トレッドモールド4)とが加圧接触しているため、タイヤ10を成形するための閉空間(キャビネット)を内部に形成している。
【0022】
なお、サイドモールド21及びトレッドモールド4は、型閉め状態時に、接触し合う接部21a,42をそれぞれ備えている。そして、サイドモールド21の接部21aは、タイヤ径方向D2の外側に配置されている。また、トレッドモールド4の接部42,42は、タイヤ径方向D2の内側で且つタイヤ幅方向D1の両側に配置されている。
【0023】
図7及び図8に示すように、トレッドモールド4は、分離不能な一つの部材からなり、一つの材質から形成されている。例えば、トレッドモールド4は、金属で形成されており、本実施形態においては、アルミニウムで形成されている。
【0024】
トレッドモールド4は、タイヤ周方向D3の端部に配置される端面部43,43を備えている。そして、端面部43は、型閉め状態時に、隣接されるトレッドモールド4の端面部43と接触する接触面44と、型閉め状態時に、隣接されるトレッドモールド4の端面部43と離間する離間面45とを備えている。
【0025】
接触面44は、端面部43におけるタイヤ径方向D2の内側に配置されている。そして、接触面44は、タイヤ周方向D3で凹凸となるように、凹凸面状に形成されている。即ち、接触面44は、タイヤ径方向D2視(図7参照)で、凹凸状に形成されている。
【0026】
そして、内側面41は、例えば、タイヤ10のトレッド部13に溝(周溝、横溝、サイプ等)を形成するために、突起部を備えており、接触面44は、内側面41の突起部に対応して、凹凸面状に形成されている。なお、接触面44は、タイヤ径方向D2の寸法が30mm以上あることが好ましい。
【0027】
離間面45は、端面部43におけるタイヤ径方向D2の外側に配置されている。そして、離間面45は、タイヤ幅方向D1の全長に亘って、接触面44よりもタイヤ周方向D3の内側に配置されている。換言すると、離間面45は、タイヤ径方向D2視(図7参照)において、接触面44とタイヤ周方向D3で離間しており、接触面44に対してタイヤ周方向D3の内側に配置されている。
【0028】
本実施形態においては、離間面45は、一つの平坦面のみから構成されている。そして、離間面45は、タイヤ幅方向D1の全長に亘って、接触面44のタイヤ周方向D3の最内側の位置よりもタイヤ周方向D3の内側に配置されている。
【0029】
なお、接触面44と離間面45の位置関係において、タイヤ周方向D3の内側は、当該トレッドモールド4におけるタイヤ周方向D3の内側、即ち、当該トレッドモールド4におけるタイヤ周方向D3の中央側をいう。反対に、接触面44と離間面45の位置関係において、タイヤ周方向D3の外側は、当該トレッドモールド4におけるタイヤ周方向D3の外側、即ち、当該トレッドモールド4におけるタイヤ周方向D3の端部側をいう。
【0030】
図9図14に示すように、トレッドモールド4は、モールドベース5に対して着脱可能に構成されている。そして、トレッドモールド4は、例えば、固定部材(ボルト等)により、モールドベース5に固定されている。
【0031】
なお、タイヤモールド装置1が異なる形状のタイヤ10を製造する際には、そのタイヤ10に応じたトレッドモールド4が、モールドベース5に装着される。即ち、トレッドモールド4は、製造するタイヤ10の形状に応じて、取り替えられるのに対して、モールドベース5は、製造するタイヤ10の形状に関わらず、同じである。
【0032】
ところで、端面部43(接触面44)の位置や形状は、内側面41に設けられる突起部の位置に、対応している。したがって、トレッドモールド4のタイヤ周方向D3の長さは、それぞれ異なっている。これにより、図10図14に示すように、モールドベース5に対する端面部43(接触面44及び離間面45)の位置は、それぞれ異なっている。
【0033】
そして、各トレッドモールド4のタイヤ周方向D3の中心は、装着されているモールドベース5のタイヤ周方向D3の中心と、タイヤ周方向D3でずれている。なお、型閉め状態時に、複数のトレッドモールド4で形成される環状の中心と、複数のモールドベース5で形成される環状の中心とは、タイヤ回転軸X1で一致している。
【0034】
ここで、本実施形態に係るタイヤモールド装置1で採用している、トレッドモールド4とモールドベース5との位置関係について、図10図14を参酌して説明する。
【0035】
図10図14において、1点鎖線S2は、型閉め状態時におけるモールドベース5の端部51(具体的には、端部51のタイヤ径方向D2の内端部)を含むタイヤ子午面(以下、「第1タイヤ子午面」という)S2である。また、1点鎖線S3は、型閉め状態時における隣接されるモールドベース5の端部51(具体的には、端部51のタイヤ径方向D2の内端部)を含むタイヤ子午面(以下、「第2タイヤ子午面」という)S3である。
【0036】
なお、以下、トレッドモールド4とモールドベース5との位置関係において、タイヤ周方向D3の内側は、当該セクター3におけるタイヤ周方向D3の内側(中央側)をいう。反対に、トレッドモールド4とモールドベース5との位置関係において、タイヤ周方向D3の外側は、当該セクター3におけるタイヤ周方向D3の外側(端部側)をいう。
【0037】
図10及び図11に係るセクター3においては、離間面45は、モールドベース5のタイヤ周方向D3の端部51よりも、タイヤ周方向D3の外側(図10及び図11における右側)に配置されている。即ち、接触面44は、第1タイヤ子午面S2よりも、タイヤ周方向D3の外側(図10及び図11における右側)に配置されている。
【0038】
なお、図10及び図11に係る離間面45は、第2タイヤ子午面S3に対して、タイヤ周方向D3の内側(図10及び図11における左側)に配置されている。即ち、図10及び図11に係る離間面45は、タイヤ周方向D3において、第1タイヤ子午面S2と第2タイヤ子午面S3との間に配置されている。
【0039】
また、図10及び図11に係るセクター3においては、接触面44は、モールドベース5のタイヤ周方向D3の端部51よりも、タイヤ周方向D3の外側(図10及び図11における右側)に配置されている。即ち、接触面44は、第1タイヤ子午面S2よりも、タイヤ周方向D3の外側(図10及び図11における右側)に配置されている。
【0040】
なお、図10に係る接触面44は、第2タイヤ子午面S3よりも、タイヤ周方向D3の外側(図10における右側)に配置されている。また、図11に係る接触面44は、第2タイヤ子午面S3に対して、タイヤ周方向D3の内側(図11における左側)に配置されている。即ち、図11に係る接触面44は、タイヤ周方向D3において、第1タイヤ子午面S2と第2タイヤ子午面S3との間に配置されている。
【0041】
また、図12図14に係るセクター3においては、離間面45は、モールドベース5のタイヤ周方向D3の端部51よりも、タイヤ周方向D3の内側(図12図14における左側)に配置されている。即ち、離間面54は、第1タイヤ子午面S2よりも、タイヤ周方向D3の内側(図12図14における左側)に配置されている。
【0042】
また、図12及び図13に係るセクター3においては、接触面44は、モールドベース5のタイヤ周方向D3の端部51よりも、タイヤ周方向D3の外側(図12及び図13における右側)に配置されている。即ち、接触面44は、第1タイヤ子午面S2よりも、タイヤ周方向D3の外側(図12及び図13における右側)に配置されている。
【0043】
なお、図12に係る接触面44は、第2タイヤ子午面S3よりも、タイヤ周方向D3の外側(図12における右側)に配置されている。また、図13に係る接触面44は、第2タイヤ子午面S3に対して、タイヤ周方向D3の内側(図13における左側)に配置されている。即ち、図13に係る接触面44は、タイヤ周方向D3において、第1タイヤ子午面S2と第2タイヤ子午面S3との間に配置されている。
【0044】
また、図14に係るセクター3においては、接触面44は、モールドベース5のタイヤ周方向D3の端部51よりも、タイヤ周方向D3の内側(図14における左側)に配置されている。即ち、接触面44は、第1タイヤ子午面S2よりも、タイヤ周方向D3の内側(図14における左側)に配置されている。したがって、図14に係る接触面44は、タイヤ周方向D3において、第1タイヤ子午面S2と離間面45との間に配置されている。
【0045】
本実施形態に係るタイヤモールド装置1の構成については以上の通りであり、次に、本実施形態に係るタイヤモールド装置1の動作について、図15図19を参酌して説明する。
【0046】
図15及び図16に示すように、型開き状態においては、隣接するトレッドモールド4,4の端面部43,43は、離間している。即ち、隣接する端面部43,43の接触面44,44は、離間している。そして、型開き状態から型閉め状態に切り替えるために、セクター3がタイヤ径方向D2の内側に移動することで、隣接する端面部43,43の接触面44,44は、接近する。
【0047】
そして、図17及び図18に示すように、型閉め状態においては、隣接する端面部43,43の接触面44,44は、加圧接触している。これにより、複数のトレッドモールド4は、サイドモールド21等と協働することで、タイヤ10を成形するための閉空間(キャビネット)を内部に形成する。それに対して、型閉め状態においても、隣接する端面部43,43の離間面45,45は、離間している。これにより、離間面45は、隣接する端面部43,43同士の密着性に影響しないことになる。
【0048】
また、型閉め状態において、隣接するトレッドモールド4,4の接触面44,44が接触しているのに対して、隣接するモールドベース5,5の端部51,51は、離間している。したがって、隣接するセクター3,3においては、型閉め状態時に、接触面44,44のみが接触するため、接触面44,44同士の密着性を向上させることができる。
【0049】
ところで、型閉め状態が繰り返される際に、図19に示すように、隣り合うトレッドモールド4,4同士がタイヤ径方向D2で接触する位置が少し変化する場合がある。それに対して、離間面45が、タイヤ幅方向D1の全長に亘って、接触面44よりもタイヤ周方向D3の内側に配置されているため、斯かる場合でも、一方のトレッドモールド4の接触面44と他方のトレッドモールド4の離間面45とが接触することを抑制することができる。したがって、隣接する接触面44,44同士を確実に密着させることができる。
【0050】
また、離間面45が、隣接されるモールドベース5のタイヤ周方向D3の端部51よりも、タイヤ周方向D3の内側に配置されているため、斯かる場合でも、一方のセクター3のトレッドモールド4における離間面45と他方のセクター3のモールドベース5における端部51とが接触することを抑制することができる。したがって、隣接する接触面44,44同士を確実に密着させることができる。
【0051】
このような構成により、接触面44においては、高い加工精度が要求されるのに対して、離間面45においては、それほど高い加工精度が要求されない。したがって、トレッドモールド4の製造方法においては、まず、端面部43に対して、切削等の加工により、離間面45を形成する。その後、切削及び研磨等の加工により、接触面44を形成する。これにより、高い加工精度を必要とする領域を接触面44だけにすることができるため、トレッドモールド4の製作の容易化を図ることができる。
【0052】
以上より、本実施形態に係るトレッドモールド4は、型閉め状態時にタイヤ10を成形するための閉空間を内部に形成するために、タイヤ周方向D3に沿って環状に並列され、タイヤ径方向D2の内側面41がタイヤ10のトレッド部13に接触するトレッドモールド4であって、タイヤ周方向D3の端部に配置される端面部43を備え、前記端面部43は、タイヤ径方向D2の内側に、隣接されるトレッドモールド4の端面部43と型閉め状態時に接触する接触面44を備え、前記接触面44は、タイヤ周方向D3で凹凸となるように、凹凸面状に形成され、前記端面部43は、タイヤ径方向D2の外側に、隣接されるトレッドモールド4の端面部43と型閉め状態時に離間する離間面45をさらに備える。
【0053】
斯かる構成によれば、接触面44は、端面部43のタイヤ径方向D2の内側に配置され、型閉め状態時に、隣接されるトレッドモールド4の端面部43と接触する。そして、接触面44が、タイヤ周方向D3で凹凸となるように、凹凸面状に形成されているため、例えば、タイヤ径方向D2の内側面41に設けられる突起部に対応して、接触面44を形成することができる。
【0054】
また、離間面45は、端面部43のタイヤ径方向D2の外側に配置され、型閉め状態時に、隣接されるトレッドモールド4の端面部43と離間する。したがって、例えば、接触面44においては、高い加工精度が要求されるのに対して、離間面45においては、それほど高い加工精度が要求されない。その結果、トレッドモールド4の製作の容易化を図ることができる。
【0055】
また、本実施形態に係るトレッドモールド4においては、前記離間面45は、タイヤ幅方向D1の全長に亘って、前記接触面44よりもタイヤ周方向D3の内側に配置される、という構成である。
【0056】
斯かる構成によれば、離間面45は、タイヤ幅方向D1の全長に亘って、接触面44よりもタイヤ周方向D3の内側に配置されている。これにより、型閉め状態が繰り返される際に、隣り合うトレッドモールド4,4同士がタイヤ径方向D2で接触する位置が少し変化した場合でも、一方のトレッドモールド4の接触面44と他方のトレッドモールド4の離間面45とが接触することを抑制することができる。したがって、型閉め状態時における接触面44,44同士の密着性を維持することができる。
【0057】
また、本実施形態に係るトレッドモールド4においては、前記離間面45は、一つ又は複数の平坦面(本実施形態では、一つの平坦面)のみから成る、という構成である。
【0058】
斯かる構成によれば、離間面45が、一つ又は複数の平坦面(本実施形態では、一つの平坦面)のみから構成されているため、例えば、離間面45の製作をさらに容易にすることができる。これにより、トレッドモールド4の製作の容易化をさらに図ることができる。
【0059】
また、本実施形態に係るタイヤモールド装置1は、複数の前記トレッドモールド4と、前記トレッドモールド4がタイヤ径方向D2の内側に装着され、前記トレッドモールド4と共にタイヤ径方向D2に移動する複数のモールドベース5と、を備え、前記離間面45のタイヤ径方向D2の外側部は、型閉め状態時に、隣接する前記モールドベース5のタイヤ周方向D3の端部51におけるタイヤ径方向D2の内側部よりも、タイヤ周方向D3の内側に配置される。
【0060】
斯かる構成によれば、離間面45のタイヤ径方向D2の外側部は、隣接するモールドベース5のタイヤ周方向D3の端部51におけるタイヤ径方向D2の内側部よりも、タイヤ周方向D3の内側に配置されている。これにより、型閉め状態が繰り返される際に、隣り合うトレッドモールド4,4同士がタイヤ径方向D2で接触する位置が少し変化した場合でも、一方のトレッドモールド4の離間面45と他方のトレッドモールド4を装着するモールドベース5の端部51が接触することを抑制することができる。
【0061】
具体的には、一方の離間面45のタイヤ径方向D2の外側部と他方のモールドベース5の端部51におけるタイヤ径方向D2の内側部が接触することを抑制することができる。したがって、型閉め状態時における接触面44,44同士の密着性を維持することができる。
【0062】
また、本実施形態に係るタイヤモールド装置1においては、前記離間面45のタイヤ径方向D2の外側部は、前記モールドベース5のタイヤ周方向D3の端部51におけるタイヤ径方向D2の内側部よりも、タイヤ周方向D3の内側に配置される、という構成である。
【0063】
斯かる構成によれば、離間面45のタイヤ径方向D2の外側部は、モールドベース5のタイヤ周方向D3の端部51におけるタイヤ径方向D2の内側部よりも、タイヤ周方向D3の内側に配置されている。これにより、型閉め状態が繰り返される際に、隣り合うトレッドモールド4,4同士がタイヤ径方向D2で接触する位置が少し変化した場合でも、一方のトレッドモールド4の離間面45と他方のトレッドモールド4を装着するモールドベース5の端部51が接触することを確実に防止することができる。
【0064】
具体的には、一方の離間面45のタイヤ径方向D2の外側部と他方のモールドベース5の端部51におけるタイヤ径方向D2の内側部が接触することを確実に防止することができる。したがって、型閉め状態時における接触面44,44同士の密着性を確実に維持することができる。
【0065】
なお、トレッドモールド及びタイヤモールド装置は、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものではない。また、トレッドモールド及びタイヤモールド装置は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に一つ又は複数選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0066】
上記実施形態に係るタイヤモールド装置1においては、離間面45の全体が、モールドベース5のタイヤ周方向D3の端部51よりも、タイヤ周方向D3の内側に配置されている、という構成である。しかしながら、タイヤモールド装置は、斯かる構成に限られない。例えば、離間面45は、モールドベース5のタイヤ周方向D3の端部51よりも、タイヤ周方向D3の外側に配置されている、という構成でもよい。
【0067】
また、例えば、図20に示すように、タイヤモールド装置1においては、離間面45のタイヤ径方向D2の外側部のみが、モールドベース5のタイヤ周方向D3の端部51よりも、タイヤ周方向D3の内側に配置される、という構成でもよい。図20に係る離間面45は、タイヤ径方向D2の外側に向かうにつれて、タイヤ周方向D3の内側に向かうように配置されている。
【0068】
また、上記実施形態に係るトレッドモールド4においては、離間面45は、タイヤ幅方向D1の全長に亘って、接触面44よりもタイヤ周方向D3の内側に配置されている、という構成である。しかしながら、トレッドモールドは、斯かる構成に限られない。例えば、図21及び図22に示すように、離間面45の一部(図21における破線部分)が、接触面44よりもタイヤ周方向D3の内側に配置されている、という構成でもよい。
【0069】
斯かる構成によれば、例えば、端面部43の接触面44を有する部分の強度を高めることができるため、トレッドモールド4の強度を高めることができる。なお、図21及び図22に係るトレッドモールド4においては、離間面45は、タイヤ幅方向D1の全長に亘って、接触面44のタイヤ周方向D3の最外側の位置よりもタイヤ周方向D3の内側に配置されている。
【0070】
そして、図21に示すように、型開き状態においては、隣接するトレッドモールド4,4の端面部43,43は、離間している。即ち、隣接する端面部43,43の接触面44,44は、離間している。そして、図22に示すように、型閉め状態においては、隣接する端面部43,43の接触面44,44は、接触している一方、隣接する端面部43,43の離間面45,45は、離間している。
【0071】
また、上記実施形態に係るトレッドモールド4においては、離間面45は、一つの平坦面のみから成る、という構成である。しかしながら、トレッドモールドは、斯かる構成に限られない。例えば、離間面45は、タイヤ周方向D3で凹凸となるように、凹凸面状に形成されてもよく、また、図23に示すように、離間面45は、複数の平坦面から成る、という構成でもよい。
【0072】
また、上記実施形態に係るタイヤモールド装置1においては、セクター3は、トレッドモールド4と一つのモールドベース5とを備える、という構成である。しかしながら、タイヤモールド装置は、斯かる構成に限られない。例えば、図24に示すように、セクター3は、トレッドモールド4と二つのモールドベース5,6とを備える、という構成でもよい。
【0073】
図24に係るセクター3においては、トレッドモールド4は、第1モールドベース6のタイヤ径方向D2の内側に装着され、第1モールドベース6は、第2モールドベース5のタイヤ径方向D2の内側に装着されている。なお、第1モールドベース6は、トレッドモールド4を着脱可能であり、第2モールドベース5は、第1モールドベース6を着脱可能である。
【0074】
そして、例えば、第1モールドベース6は、トレッドモールド4を補強するために、トレッドモールド4よりも硬い材質で形成されている。また、例えば、トレッドモールド4は、製造するタイヤ10の形状に応じて、取り替えられるのに対して、第2モールドベース5は、製造するタイヤ10の形状に関わらず、同じである。そして、第1モールドベース6は、製造するタイヤ10の形状に応じて、取り替えられたり、製造するタイヤ10の形状に関わらず、同じであったりする。
【0075】
また、上記実施形態に係るタイヤモールド装置1においては、接触面44は、モールドベース5のタイヤ周方向D3の端部51よりも、タイヤ周方向D3の外側に配置されている、という構成である。しかしながら、タイヤモールド装置は、斯かる構成に限られない。例えば、接触面44は、モールドベース5のタイヤ周方向D3の端部51よりも、タイヤ周方向D3の内側に配置されている、という構成でもよい。
【0076】
また、上記実施形態に係るタイヤモールド装置1においては、トレッドモールド4のタイヤ周方向D3の長さは、それぞれ異なっている、という構成である。しかしながら、タイヤモールド装置は、斯かる構成に限られない。
【0077】
例えば、トレッドモールド4のタイヤ周方向D3の長さは、少なくとも一つの他のトレッドモールド4のタイヤ周方向D3の長さと、同じである、という構成でもよい。また、例えば、トレッドモールド4のタイヤ周方向D3の長さは、全て同じであり、各トレッドモールド4のタイヤ周方向D3の中心は、装着されているモールドベース5のタイヤ周方向D3の中心と、タイヤ周方向D3で一致している、という構成でもよい。
【符号の説明】
【0078】
1…タイヤモールド装置、2…サイドプレート、3…セクター、4…トレッドモールド、5…モールドベース、6…モールドベース、10…空気入りタイヤ、11…ビード部、12…サイドウォール部、13…トレッド部、21…サイドモールド、21a…接部、22…ビードモールド、41…内側面、42…接部、43…端面部、44…接触面、45…離間面、51…端部、D1…タイヤ幅方向、D2…タイヤ径方向、D3…タイヤ周方向、S1…タイヤ赤道面、S2…タイヤ子午面、S3…タイヤ子午面、X1…タイヤ回転軸
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