(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
弁室及び弁口が設けられた弁本体と、リフト量に応じて前記弁口を流れる冷媒の流量を変化させる弁体とを備え、前記弁室内に、冷媒中の気泡を細分化する消音部材が配在されている流量調整弁であって、
前記消音部材が、前記弁体に摺動自在に外挿され、
前記弁体のリフト量が0より大きい予め決められたリフト量以下のときは、前記弁口が前記消音部材によって包囲されるとともに、前記弁体のリフト量に応じて、前記弁体と前記弁口との間の隙間を調整することで前記弁口を流れる冷媒の流量を変化させるようになっており、
前記弁体のリフト量が0より大きい予め決められたリフト量を超えたときに、前記消音部材は前記弁体とともに移動せしめられ、前記弁室における前記弁口の周りに前記消音部材を介さない流路が形成されるようになっていることを特徴とする流量調整弁。
前記弁体のリフト量が0より大きい予め決められたリフト量を超えたときに、前記流路の幅が大きくなるようにされていることを特徴とする請求項1に記載の流量調整弁。
前記消音部材は、前記弁体のリフト量が予め決められた騒音発生リフト量までは、前記弁口を包囲するように配在され、前記弁体のリフト量が前記騒音発生リフト量を超えたときに、前記弁体とともに移動せしめられ、前記消音部材の下端部側に前記流路が形成されるようになっていることを特徴とする請求項1又は2に記載の流量調整弁。
前記弁体の外周に、前記消音部材を移動させるべく前記消音部材と係合する鍔状係止部が設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の流量調整弁。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0029】
[第1実施形態]
図1は、本発明に係る流量調整弁の第1実施形態を示す全体断面図、
図2は、本発明に係る流量調整弁の第1実施形態における主要部を示す要部断面図であり、
図2(A)は全閉状態、
図2(B)は弁開度が小さい状態、
図2(C)は全開状態を示す図である。
【0030】
図示実施形態の流量調整弁1は、例えばヒートポンプ式冷暖房システム等において冷媒流量を調整するために使用される電動弁であり、前述した従来の流量調整弁と同様に、基本的には、流体(冷媒)が導入導出される弁室15及び該弁室15に開口する弁座14付き弁口13を有する弁本体10と、弁座14からのリフト量に応じて弁口13を流れる流体の流量を変化させる弁体20とを備えており、弁本体10の上端部に固定された鍔状部材19(に形成された段差部)には、有蓋円筒状のキャン40の下端部が突き合わせ溶接により密封接合されている。キャン40の内周には、所定の間隙をあけてロータ45が配在され、該ロータ45を回転駆動すべく前記キャン40(の円筒状部分)の外周には、ヨーク51、ボビン52、ステータコイル53、及び樹脂モールドカバー54等からなるステータ50が外嵌されており、前記ロータ45とステータ50とでステッピングモータが構成される。
【0031】
また、当該流量調整弁1には、ロータ45の回転を利用して前記弁体20を前記弁座14に接離又は近接離間させる駆動機構が設けられている。この駆動機構は、弁本体10にその下端部41bが圧入固定されるとともに、弁体20(の弁軸部25)が摺動自在に内挿された筒状のガイドブッシュ41の外周に形成された固定ねじ部(雄ねじ部)41aと、ガイドブッシュ41の外周に配在された下方開口の筒状の弁軸ホルダ42の内周に形成されて前記固定ねじ部41aに螺合せしめられた移動ねじ部(雌ねじ部)42aとからなるねじ送り機構で構成されている。弁軸ホルダ42とロータ45とは、弁軸ホルダ42の上部突部にかしめ固定された支持リング44を介して一体的に連結されている。
【0032】
ガイドブッシュ41には、ガイドブッシュ41(弁本体10)に対する弁軸ホルダ42(ロータ45)の移動を制限するストッパ機構の一方を構成する下ストッパ体(固定ストッパ)41Aが固着され、弁軸ホルダ42には、前記ストッパ機構の他方を構成する上ストッパ体(移動ストッパ)42Aが固着されている。
【0033】
また、弁軸ホルダ42の天井部42b中央に形成された挿通穴に、弁体20(の弁軸部25)の上端部が挿通せしめられ、その挿通穴から突出した部分に、プッシュナット43が固着(圧入固定)されるとともに、弁体20(の弁軸部25に設けられた段差部)と弁軸ホルダ42(の天井部42b)との間には、弁体20を常時下方(閉弁方向)に付勢する圧縮コイルばね46が介装されている。
【0034】
なお、弁軸ホルダ42の天井部42
b上には、ねじ送り機構を構成する固定ねじ部41aと移動ねじ部42aとの螺合が外れたとき、再螺合し易くするためのコイルばねからなる復帰ばね47が配在されている。
【0035】
また、図示実施形態では、弁本体10における弁室15の一側部に、導管継手11Aが接続される流入口11が設けられ、その底部に、導管継手12Aが接続されるとともに、逆立円錐台面からなる弁座14及び円筒面からなる弁口(オリフィス)13を持つ流出口12が設けられており、流体(冷媒)は、双方向(流入口11から流出口12に向かう方向と、流出口12から流入口11に向かう方向との双方向)に流されるようになっている。
【0036】
また、弁体20は、中心軸線O方向に延びて前記ガイドブッシュ41に内挿される弁軸部25を有するとともに、その弁軸部25の下端部に、弁座14に着座する着座面部22と、該着座面部22の下側(先端側)に連なる、該着座面部22よりテーパ角(弁体20の中心軸線Oとの交差角)が小さい円錐テーパ面部23とを持つ段付き逆立円錐台状の弁体部21が一体的に形成されており、前記ロータ45の回転量を制御して弁座14に対する弁体20のリフト量L(弁開度)を変化させることにより、流体(冷媒)の通過流量を調整するようになっている。本実施形態では、弁体20のリフト量Lが0の状態では、弁体20の弁体部21(の着座面部22)が弁座14に着座して弁口13が閉じられた全閉状態とされ、その全閉状態からリフト量Lが大きくなるに従って、弁体20の弁体部21(の着座面部22)が弁座14から離れて弁口13が開かれ、弁口13に流れ込む流体の流量が次第に増加し、リフト量Lが最大リフト量Lmaxになると、弁体20の弁体部21(の着座面部22)が弁座14から最も離れ、弁口13に流れ込む流体の流量が最大となる全開状態をとるとともに、その全開状態からリフト量Lが小さくなるに従って、弁口13に流れ込む流体の流量が次第に減少するように、各部の寸法形状が設定されている。
【0037】
また、弁軸部25の下端(ないしは、弁体部21の上端)外周には、後述する消音部材30の蓋体35と係合する鍔状係止部24が突設されている。
【0038】
上記構成に加えて、本実施形態では、前記弁室15における前記弁体20の外側に、弁室15内に流れ込む流体中の気泡を細分化する、有蓋短円筒状の消音部材30が配在されている。
【0039】
前記消音部材30は、
図1及び
図2とともに
図3を参照すればよく分かるように、その側部に流体中の気泡を細分化するための複数の横孔からなる細孔32が形成された、前記弁体20の弁体部21及び弁軸部25より大径の筒状体31と、筒状体31の上部開口を封止するとともに、前記弁体20の弁軸部25が摺動自在に嵌挿される筒状嵌挿部36が上側に向けて突設された蓋体35とが一体に成形されて構成されている。ここで、本実施形態では、筒状体31の(軸線O方向における)高さは、全閉状態(弁体20のリフト量Lが0の状態)における弁室15の底面15aから弁体20に設けられた鍔状係止部24までの高さより(後述する騒音発生リフト量Laだけ)大きくなるように設定されている。
【0040】
なお、図示例では、前記細孔32が、筒状体31の側部の同一円周上に略等角度間隔をあけて形成されているが、前記細孔32の形成位置は適宜に変更できることは当然である。例えば、前記細孔32を、筒状体31の側部の同一円周上に不均一な角度間隔をあけて形成してもよいし、筒状体31の側部に上下方向に複数列で形成してもよい。また、ここでは、消音部材30として、蓋体35付き筒状体31の側部に細孔32を形成したものを採用しているが、弁室15内に流れ込む流体中の気泡を細分化できれば、例えば、当該消音部材30自体を多孔体で形成してもよいし、当該消音部材30自体をフィルタとして機能する網状部材等で形成してもよいし、当該消音部材30の筒状体31等にフィルタとして機能する網状部材等を貼り付けたものを使用してもよい。
【0041】
前記消音部材30は、蓋体35に設けられた筒状嵌挿部36に弁体20の弁軸部25を嵌挿させるようにして弁体20(の弁軸部25)に摺動自在に外挿されている。
【0042】
また、消音部材30の蓋体35の上面と弁本体10における弁室15の天井面15bとの間には、消音部材30を下方(弁本体10における弁室15の底面15a側)に付勢する圧縮コイルばね(付勢部材)34が縮装されている。
【0043】
このような構成とされた流量調整弁1においては、
図2(A)に示される如くの全閉状態(弁体20のリフト量Lが0の状態)において、圧縮コイルばね34により消音部材30(の下端部)が弁室15の底面15aに圧接され、弁本体10に形成された弁口13が弁体20に外挿された消音部材30によって包囲されている。このとき、弁体20の鍔状係止部24(の上面)と消音部材30の蓋体35(の下面)とは、軸線O方向(弁体20の移動方向)で騒音発生リフト量Laだけ離れて位置せしめられている。
【0044】
なお、前記騒音発生リフト量Laは、流体(冷媒)通過時における騒音(流体通過音)が発生しやすい流量に対応する弁体20のリフト量Lであり、実験等に基づき予め決めることができる。
【0045】
この全閉状態において、弁体20を上昇させると、
図2(B)に示される如くに、前記騒音発生リフト量Laまでは(言い換えれば、弁口13に流れ込む流体の流量が予め決められた騒音発生流量までは)(小開度状態)、消音部材30(の下端部)が圧縮コイルばね34により弁室15の底面15aに圧接されたままで(すなわち、弁口13が消音部材30によって包囲されたままで)、弁体20の弁軸部25が消音部材30の筒状嵌挿部36内を摺動するようにして弁体20が移動せしめられ、弁体20の弁体部21(の着座面部22)が弁座14から離れて弁口13が開口せしめられるとともに、弁口13に流れ込む流体の流量が次第に大きくなる。このとき、流入口11から弁室15に流れ込んだ流体は、消音部材30の筒状体31の細孔32を通過し、その消音部材30によって流体中の気泡が分解されて細分化された状態で、弁口13(流出口12)を通過するので、小開度領域(騒音が発生しやすい領域)において、流体(冷媒)通過時の騒音が確実に低減される。
【0046】
弁体20を騒音発生リフト量Laまで上昇させた後、当該弁体20をさらに上昇させると、
図2(C)に示される如くに、弁体20の鍔状係止部24が消音部材30の蓋体35と係合し、消音部材30は、圧縮コイルばね34の付勢力に抗して弁体20とともに(一体に)移動(上昇)せしめられ、消音部材30(の筒状体31)の下端部と弁室15の底面15aとの間に(軸線O方向の)幅Lb(=リフト量L−騒音発生リフト量La)の隙間(円環状の流路)が形成される。弁体20の上昇に伴って、前記流路の幅Lbは次第に大きくなるとともに、弁口13に流れ込む流体の流量も次第に大きくなる。なお、
図2(C)は、弁口13の全開状態を示しているので、最大リフト量Lmax−騒音発生リフト量Laに相当する幅Lbの流路が形成されている。このとき、流入口11から弁室15に流れ込んだ流体は、一部は、消音部材30の筒状体31の細孔32を通過し、その消音部材30によって流体中の気泡が分解されて細分化された状態で、弁口13(流出口12)を通過するものの、その大部分は、消音部材30(の筒状体31)の下端部(弁口13側端部)側に形成された流路を通過して、弁口13(流出口12)に直接流れ込むので、弁体20のリフト量Lが比較的大きい大開度領域(騒音が発生しにくい領域であって、流量を確保したい領域)において、圧力損失(圧損)が小さくなる。
【0047】
なお、
図2(C)に示される如くの全開状態(弁体20のリフト量Lが最大リフト量Lmaxの状態)から弁体20を下降させる場合にも、上記と同様の作用効果が得られることは言うまでも無い。
【0048】
このように、本実施形態の流量調整弁1では、消音部材30が、小開度領域(騒音が発生しやすい領域)においては(具体的には、弁体20のリフト量Lが騒音発生リフト量Laまでは)、弁口13を包囲するように弁室15内に配在されるとともに、大開度領域(騒音が発生しにくい領域)において弁口13に流れ込む流体の流量が大きくなると(具体的には、弁体20のリフト量Lが騒音発生リフト量Laを超えたときに)、弁室15における弁口13の周り(消音部材30の下端部側)に消音部材30を介さない所定幅Lb(所定流路面積)の流路が形成されるようになっており、その流路の幅Lbは、弁口13に流れ込む流体の流量が大きくなるに従って(ここでは、弁体20のリフト量Lが大きくなるに従って)大きくなるようにされているので、流体(冷媒)通過時における騒音を効果的に低減できるとともに、大開度領域における圧力損失が小さくなり、適正な冷媒流量を得ることができる。
【0049】
[第2実施形態]
図4は、本発明に係る流量調整弁の第2実施形態における主要部を示す要部断面図であり、
図4(A)は全閉状態、
図4(B)は弁開度が小さい状態、
図4(C)は全開状態を示す図である。
【0050】
本第2実施形態の流量調整弁2は、上記第1実施形態における流量調整弁1に対し、基本的に、消音部材30の構成が相違している。したがって、第1実施形態と同様の機能を有する構成については同様の符号を付してその詳細な説明は省略し、以下では、前記した相違点のみについて詳細に説明する。
【0051】
本実施形態の流量調整弁2では、消音部材30を構成する筒状体31と蓋体35とが別体に構成され、筒状体31は弁本体10に固定され、蓋体35のみが弁体20(の弁軸部25)に摺動自在に外挿されている。
【0052】
なお、図示例では、筒状体31が弁本体10と一体に成形されて当該弁本体10に固定されているが、例えば、筒状体31を、溶接、かしめ等により弁本体10に固定してもよいことは勿論である。
【0053】
また、ここでは、消音部材30の蓋体35の上面と弁本体10における弁室15の天井面15bとの間に介装された圧縮コイルばね34は、筒状体31の上部開口を閉じるように、蓋体35を下方(筒状体31の上端部側)に付勢している。
【0054】
このような構成とされた流量調整弁2においては、
図4(A)に示される如くの全閉状態(弁体20のリフト量Lが0の状態)において、圧縮コイルばね34により消音部材30の蓋体35が弁本体10に固定された筒状体31の上端部に圧接され、その蓋体35により筒状体31の上部開口が封止され、弁本体10に形成された弁口13が弁体20に外挿された蓋体35と弁本体10に固定された筒状体31とによって包囲される。このとき、弁体20の鍔状係止部24(の上面)と消音部材30の蓋体35(の下面)とは、軸線O方向(弁体20の移動方向)で予め決められた騒音発生リフト量Laだけ離れて位置せしめられている。
【0055】
この全閉状態において、弁体20を上昇させると、
図4(B)に示される如くに、前記騒音発生リフト量Laまでは(言い換えれば、弁口13に流れ込む流体の流量が予め決められた騒音発生流量までは)(小開度状態)、消音部材30の蓋体35が圧縮コイルばね34により筒状体31の上端部に圧接されたままで(すなわち、弁口13が消音部材30によって包囲されたままで)、弁体20の弁軸部25が消音部材30の筒状嵌挿部36内を摺動するようにして弁体20が移動せしめられ、弁体20の弁体部21(の着座面部22)が弁座14から離れて弁口13が開口せしめられるとともに、弁口13に流れ込む流体の流量が次第に大きくなる。このとき、流入口11から弁室15に流れ込んだ流体は、消音部材30の筒状体31の細孔32を通過し、その消音部材30によって流体中の気泡が分解されて細分化された状態で、弁口13(流出口12)を通過するので、小開度領域(騒音が発生しやすい領域)において、流体(冷媒)通過時の騒音が確実に低減される。
【0056】
弁体20を騒音発生リフト量Laまで上昇させた後、当該弁体20をさらに上昇させると、
図4(C)に示される如くに、弁体20の鍔状係止部24が消音部材30の蓋体35と係合し、蓋体35は、圧縮コイルばね34の付勢力に抗して弁体20とともに(一体に)移動(上昇)せしめられ、消音部材30の蓋体35と筒状体31の上端部との間に(軸線O方向の)幅Lb(=リフト量L−騒音発生リフト量La)の隙間(円環状の流路)が形成される。弁体20の上昇に伴って、前記流路の幅Lbは次第に大きくなるとともに、弁口13に流れ込む流体の流量も次第に大きくなる。なお、
図4(C)は、弁口13の全開状態を示しているので、最大リフト量Lmax−騒音発生リフト量Laに相当する幅Lbの流路が形成されている。このとき、流入口11から弁室15に流れ込んだ流体は、一部は、消音部材30の筒状体31の細孔32を通過し、その消音部材30によって流体中の気泡が分解されて細分化された状態で、弁口13(流出口12)を通過するものの、その大部分は、消音部材30の蓋体35と筒状体31との間に形成された流路を通過して、弁口13(流出口12)に直接流れ込むので、弁体20のリフト量Lが比較的大きい大開度領域(騒音が発生しにくい領域であって、流量を確保したい領域)において、圧力損失(圧損)が小さくなる。
【0057】
なお、
図4(C)に示される如くの全開状態(弁体20のリフト量Lが最大リフト量Lmaxの状態)から弁体20を下降させる場合にも、上記と同様の作用効果が得られることは言うまでも無い。
【0058】
このように、本実施形態の流量調整弁2でも、消音部材30が、小開度領域(騒音が発生しやすい領域)においては(具体的には、弁体20のリフト量Lが騒音発生リフト量Laまでは)、弁口13を包囲するように弁室15内に配在されるとともに、大開度領域(騒音が発生しにくい領域)において弁口13に流れ込む流体の流量が大きくなると(具体的には、弁体20のリフト量Lが騒音発生リフト量Laを超えたときに)、弁室15における弁口13の周り(消音部材30の蓋体35と筒状体31との間)に消音部材30を介さない所定幅Lb(所定流路面積)の流路が形成されるようになっており、その流路の幅Lbは、弁口13に流れ込む流体の流量が大きくなるに従って(ここでは、弁体20のリフト量Lが大きくなるに従って)大きくなるようにされているので、上記第1実施形態の流量調整弁1と同様の作用効果が得られる。
【0059】
なお、上記第2実施形態では、消音部材30を筒状体31と蓋体35とで分割するものとしたが、消音部材30の分割位置は適宜に変更できることは勿論である。例えば、筒状体31を下半部と上半部との2部品で構成し、筒状体31の上半部と蓋体35とを一体とし、筒状体31の下半部と上半部との間で当該消音部材30を分割するようにしてもよい。
【0060】
[第3実施形態]
図5は、本発明に係る流量調整弁の第3実施形態における主要部を示す要部断面図であり、
図5(A)は全閉状態、
図5(B)は弁開度が小さい状態、
図5(C)は全開状態を示す図である。
【0061】
本第3実施形態の流量調整弁3は、上記第2実施形態における流量調整弁2に対し、基本的に、弁口13を包囲する構成が相違している。したがって、第2実施形態と同様の機能を有する構成については同様の符号を付してその詳細な説明は省略し、以下では、前記した相違点のみについて詳細に説明する。
【0062】
本実施形態の流量調整弁3では、消音部材30を構成する筒状体31及び蓋体35のうちの蓋体35とそれを付勢する圧縮コイルばね34とが取り外され、流体中の気泡を細分化するための複数の横孔からなる細孔32が形成された短円筒状の筒状体31のみが弁本体10に固定されている。
【0063】
一方、弁体20の外周には、筒状体31の上部開口を閉じるべく径方向に向けて張り出す蓋形成部29が突設されている。この蓋形成部29は、全閉状態においてその下面が筒状体31の上端部と軸線O方向(上下方向)で所定の幅(ここでは、騒音発生リフト量Laに相当する幅)を有するように形成されるとともに、その外径は、筒状体31の内径と略同じに設定されている。そのため、弁体20が軸線O方向で移動するとき、蓋形成部29(の外周面)が筒状体31(の内周面)に摺動せしめられ、これにより、筒状体31の上部開口を閉じられるようになっている。
【0064】
なお、図示例では、構成を理解しやすくするために、弁体20に蓋形成部29を突設したが、例えば、蓋形成部29を省略し、弁体20の弁軸部25や弁体部21の一部の外径を筒状体31の内径と略同じに設定し、その弁軸部25や弁体部21の一部(の外周面)を筒状体31(の内周面)に摺動せしめるようにして、筒状体31の上部開口を閉じるようにしてもよいことは言うまでも無い。
【0065】
また、図示例では、弁体20の外周に蓋形成部29を一体的に形成したが、その蓋形成部29を、弁体20の弁体部21や弁軸部25と別体に構成して弁体20の外周に固定してもよいことは勿論である。
【0066】
また、図示例では、蓋形成部29の外径を筒状体31の内径と略同じに設定し、蓋形成部29の外周面を筒状体31の内周面に摺動させるようにしているが、例えば、
図6に示される如くに、蓋形成部29を筒状体31の外側まで延長し、且つ、その外端部分に円筒部を垂設してカップ状に形成し、蓋形成部29(の外端部分の円筒部)の内周面を筒状体31の外周面に摺動させるようにして、筒状体31の上部開口を閉じるようにしてもよいことは当然である。
【0067】
また、図示例では、蓋形成部29の上面が、全閉状態において筒状体31の上端部とほぼ同じ位置に位置するようにしているが、消音部材30(の筒状体31)を機能させるべき流量領域に応じて、蓋形成部29の上面と筒状体31の上端部の位置関係は適宜に変更でき、例えば、全閉状態において筒状体31の上端部を蓋形成部29の上面より上側に突出するように各部の寸法形状を設定してもよい。
【0068】
このような構成とされた流量調整弁3においては、
図5(A)に示される如くの全閉状態(弁体20のリフト量Lが0の状態)において、弁体20に設けられた蓋形成部29により筒状体31の上部開口が封止され、弁本体10に形成された弁口13が弁体20に設けられた蓋形成部29と弁本体10に固定された筒状体31とによって包囲される。このとき、弁体20の蓋形成部29の下面と消音部材30の筒状体31の上端部とは、所定の幅(ここでは、予め決められた騒音発生リフト量Laに相当する幅)を有している。
【0069】
この全閉状態において、弁体20を上昇させると、
図5(B)に示される如くに、前記騒音発生リフト量Laまでは(言い換えれば、弁口13に流れ込む流体の流量が予め決められた騒音発生流量までは)(小開度状態)、蓋形成部29(の外周面)が筒状体31(の内周面)に摺動せしめられ、蓋形成部29により筒状体31の上部開口が封止されたままで(すなわち、弁口13が消音部材30によって包囲されたままで)、弁体20が移動せしめられ、弁体20の弁体部21(の着座面部22)が弁座14から離れて弁口13が開口せしめられるとともに、弁口13に流れ込む流体の流量が次第に大きくなる。このとき、流入口11から弁室15に流れ込んだ流体は、消音部材30を構成する筒状体31の細孔32を通過し、その消音部材30によって流体中の気泡が分解されて細分化された状態で、弁口13(流出口12)を通過するので、小開度領域(騒音が発生しやすい領域)において、流体(冷媒)通過時の騒音が確実に低減される。
【0070】
弁体20を騒音発生リフト量Laまで上昇させた後、当該弁体20をさらに上昇させると、
図5(C)に示される如くに、蓋形成部29(の外周面)が筒状体31(の内周面)から離れて弁体20が移動(上昇)せしめられ、蓋形成部29の下端部と筒状体31の上端部との間に(軸線O方向の)幅Lb(=リフト量L−騒音発生リフト量La)の隙間(円環状の流路)が形成される。弁体20の上昇に伴って、前記流路の幅Lbは次第に大きくなるとともに、弁口13に流れ込む流体の流量も次第に大きくなる。なお、
図5(C)は、弁口13の全開状態を示しているので、最大リフト量Lmax−騒音発生リフト量Laに相当する幅Lbの流路が形成されている。このとき、流入口11から弁室15に流れ込んだ流体は、一部は、消音部材30を構成する筒状体31の細孔32を通過し、その消音部材30によって流体中の気泡が分解されて細分化された状態で、弁口13(流出口12)を通過するものの、その大部分は、弁体20の蓋形成部29と筒状体31との間に形成された流路を通過して、弁口13(流出口12)に直接流れ込むので、弁体20のリフト量Lが比較的大きい大開度領域(騒音が発生しにくい領域であって、流量を確保したい領域)において、圧力損失(圧損)が小さくなる。
【0071】
なお、
図5(C)に示される如くの全開状態(弁体20のリフト量Lが最大リフト量Lmaxの状態)から弁体20を下降させる場合にも、上記と同様の作用効果が得られることは言うまでも無い。
【0072】
このように、本実施形態の流量調整弁3でも、消音部材30が、小開度領域(騒音が発生しやすい領域)においては(具体的には、弁体20のリフト量Lが騒音発生リフト量Laまでは)、弁口13を包囲するように弁室15内に配在されるとともに、大開度領域(騒音が発生しにくい領域)において弁口13に流れ込む流体の流量が大きくなると(具体的には、弁体20のリフト量Lが騒音発生リフト量Laを超えたときに)、弁室15における弁口13の周り(弁体20の蓋形成部29と消音部材30を構成する筒状体31との間)に消音部材30を介さない所定幅Lb(所定流路面積)の流路が形成されるようになっており、その流路の幅Lbは、弁口13に流れ込む流体の流量が大きくなるに従って(ここでは、弁体20のリフト量Lが大きくなるに従って)大きくなるようにされているので、上記第2実施形態の流量調整弁2と同様の作用効果が得られる。
【0073】
また、本実施形態の流量調整弁3では、消音部材30の形状を簡素化でき、圧縮コイルばね34を省略して部品点数を削減できるとともに、弁体20の形状・構成を若干変更するだけで済むので、流量調整弁3の製造コストを抑えることもできる。
【0074】
なお、本発明は、様々なタイプの流量調整弁に採用し得ることは言うまでも無い。その一例としては、例えば、上記実施形態のように、弁体のリフト量が0のとき(弁体が最下降位置にあるとき)に、弁体が弁座に着座して流体の流れが遮断される閉弁タイプの電動弁、図示は省略するが、弁体が弁座に着座しつつ、弁体に設けられた連通穴や弁座に設けられたブリード溝等を介して所定量の通過流量が確保されるタイプの電動弁(いずれも弁体が弁座に接離する電動弁)、
図7(A)〜(C)に示される如くの、弁体のリフト量が0のとき(通常なら全閉状態となるとき)に、弁体と弁座との間に所定の大きさの間隙が形成されて所定量の通過流量が確保される閉弁レスタイプの電動弁(弁体が弁座に近接離間する電動弁)などが挙げられる。
【0075】
例えば、閉弁レスタイプの電動弁では、
図7(A)に示される如くに、弁体20のリフト量Lが0の状態において、所定量の通過流量が確保される状態(最小開度状態)とし、この状態から弁体20を上昇させると、
図7(B)に示される如くに、弁体20のリフト量Lが騒音発生リフト量Laの状態(小開度状態)において、弁体20の鍔状係止部24と消音部材30の蓋体35とを当接させ、この状態からさらに弁体20を上昇させると、
図7(C)に示される如くに、その弁体20の上昇に伴って、消音部材30が、圧縮コイルばね34の付勢力に抗して弁体20とともに移動(上昇)せしめられるようにしてもよい。
【0076】
また、本発明は、上述の実施形態で説明したような、ステータとロータとを有するステッピングモータ等を用いて弁体を昇降(移動)させて弁体のリフト量(弁開度)を任意に細かく調整する電動式の流量調整弁の他、例えばソレノイド等を用いた電磁式の流量調整(切換)弁にも採用し得ることは勿論である。