(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリアミドイミド樹脂が、前記一般式(A)のRc及び樹脂末端の少なくとも1つにおいて、前記一般式(C4)、(C5)、(C6)、(C9)、又は(C10)で表される構造単位を含む、請求項1に記載のカラーフィルタ用着色樹脂組成物。
前記溶剤が、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含み、更に、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル及びジエチレングリコールモノメチルエーテルから選ばれる少なくとも1種の溶剤を含んでいても良い、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のカラーフィルタ用着色樹脂組成物。
透明基板と、当該透明基板上に設けられた着色層とを少なくとも備えるカラーフィルタであって、当該着色層の少なくとも1つが請求項1乃至11のいずれか一項に記載のカラーフィルタ用着色樹脂組成物の硬化物からなる着色層を有することを特徴とするカラーフィルタ。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係るカラーフィルタ用着色樹脂組成物、カラーフィルタ、及び表示装置について順に説明する。
なお、本発明において光には、可視及び非可視領域の波長の電磁波、さらには放射線が含まれ、放射線には、例えばマイクロ波、電子線が含まれる。具体的には、波長5μm以下の電磁波、及び電子線のことを言う。
本発明において(メタ)アクリルとは、アクリル及びメタクリルの各々を表し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの各々を表す。
本発明において有機基とは、炭素原子を1個以上有する基をいう。
また、本発明において固形分とは、着色樹脂組成物を構成する溶剤以外の全ての成分をいい、液状のモノマーであっても当該固形分に含まれるものとする。
【0031】
1.カラーフィルタ用着色樹脂組成物
本発明に係るカラーフィルタ用着色樹脂組成物は、色材と、分散剤と、下記一般式(A)で表される繰り返し単位を有するポリアミドイミド樹脂と、溶剤とを含有することを特徴とする。
【0032】
【化6】
(一般式(A)において、Raはそれぞれ独立に、2価の脂肪族ジイソシアネート類の残基を表し、Rbは、下記一般式(B1)、(B2)又は(B3)で表される構造単位であり、Rcは、下記一般式(C1)、(C2)、(C3)、(C4)、(C5)、(C6)、(C7)、(C8)、(C9)、又は(C10)で表される構造単位である。ポリアミドイミド樹脂中に存在する複数のRa、Rb及びRcは、それぞれ同一であっても異なっていても良い。Rbの少なくとも1つは下記一般式(B1)又は(B2)で表される構造単位であり、Rc及び樹脂末端の少なくとも1つにおいて酸性基を含む。nは繰り返し単位数を表し、1以上である。)
【0034】
【化8】
(一般式(B1)、(B2)、(B3)、(C1)、(C2)、(C3)、(C4)、(C5)、(C6)、(C7)、(C8)、(C9)、及び(C10)において、Rdはそれぞれ独立に、炭素数6〜20の置換基を有しても良い芳香族若しくは脂肪族トリカルボン酸残基又はテトラカルボン酸残基である。Reはそれぞれ独立に、アルコール化合物から水酸基を除いた残基を表す。)
【0035】
上記本発明のカラーフィルタ用着色樹脂組成物は、前記特定の繰り返し単位を有するポリアミドイミド樹脂をバインダー樹脂乃至アルカリ可溶性樹脂として用いることにより、輝度及びコントラストが向上した着色層を形成可能で、良好な現像性を有し且つ現像後の水染み発生が抑制されたカラーフィルタ用着色樹脂組成物であり、輝度及びコントラストが向上したカラーフィルタを優れた生産性で形成可能である。
【0036】
上記特定の組み合わせにより、上記のような効果を発揮する作用としては、未解明な部分もあるが以下のように推定される。
前記特定のポリアミドイミド樹脂は、前記一般式(A)で表される繰り返し単位に含まれる脂肪族ジイソシアネート由来のイソシアヌレート構造を含むことから、後述するような、カラーフィルタの製造に好適な溶剤に溶解性を有し、且つ、従来のアクリル系樹脂に比べてガラス転移温度が高めで、剛直であり、樹脂同士のパッキングが良好になって、成膜すると緻密な膜になると推定される。そのため、前記特定のポリアミドイミド樹脂をバインダー成分として用いて着色層を形成すると、着色層中の色材の動きが抑制されて、また酸素も浸入し難いため、色材の分解乃至酸化をより抑制でき、カラーフィルタ製造工程を経ても色材の退色が抑制されることにより、従来に比べて輝度が向上すると推定される。
また、前記特定のポリアミドイミド樹脂は、上記のような効果により、色材同士の凝集が抑制されることに加え、色材との相溶性が良好なため、従来に比べてコントラストも向上すると推定される。
更に、前記特定のポリアミドイミド樹脂は、脂肪族ジイソシアネート由来のイソシアヌレート構造を含むことから末端に酸性基を含み易く、且つアルカリ現像液に対する溶解性が高くて現像性に優れる一方で、上記のような構造的特徴により、膜が緻密で疎水性が強いため、現像後の水染み発生が抑制されると推定される。
【0037】
本発明のカラーフィルタ用着色樹脂組成物は、少なくとも色材と、分散剤と、前記一般式(A)で表される繰り返し単位を有するポリアミドイミド樹脂と、溶剤とを含有するものであり、本発明の効果が損なわれない限り、必要に応じて更にその他の成分を含有してもよいものである。その他の成分としては、例えば、前記特定のポリアミドイミド樹脂とは異なるその他のアルカリ可溶性樹脂、多官能モノマー、開始剤、その他の任意添加成分等が挙げられる。
以下、このような本発明のカラーフィルタ用着色樹脂組成物の各成分について、本発明に特徴的な前記一般式(A)で表される繰り返し単位を有するポリアミドイミド樹脂から順に詳細に説明する。
【0038】
[ポリアミドイミド樹脂]
本発明において用いられるポリアミドイミド樹脂は、前記一般式(A)で表される繰り返し単位を有するポリアミドイミド樹脂である。当該ポリアミドイミド樹脂は、バインダー樹脂として機能し、また、分子内に酸性基を含むことからアルカリ可溶性樹脂として機能する。
前記特定のポリアミドイミド樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
一般式(A)は、Raがそれぞれ独立に2価の脂肪族ジイソシアネート類の残基を表し、脂肪族構造を有するイソシアネートから合成されるイソシアヌレート型ポリイソシアネート構造単位を含み、且つ、Rbがそれぞれ独立にトリカルボン酸無水物又はテトラカルボン酸無水物の残基を含み、Rbの少なくとも1つがトリカルボン酸無水物の残基を含むものである。本発明において用いられるポリアミドイミド樹脂は、一般式(A)がこのような構造を有することから、後述するようなカラーフィルタに有用な汎用溶剤にも可溶である。
【0040】
Raはそれぞれ独立に、2価の脂肪族ジイソシアネート類の残基、すなわち、2価の脂肪族ジイソシアネート類から2つのイソシナネート基を除いた部分構造を表す。2価の脂肪族ジイソシアネート類としては、線状脂肪族ジイソシアネート類、環式脂肪族ジイソシアネート類が挙げられ、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(HTMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート(HTDI)、水添キシレンジイソシアネート(HXDI)、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)、水添ジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0041】
一般式(A)においては、前記2価の脂肪族ジイソシアネート類から合成されるイソシアヌレート型ポリイソシアネート構造単位を含み、前記ジイソシアネート類から合成されるイソシアヌレート型ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型トリイソシアネート(HDI3N)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型トリイソシアネート(HTMDI3N)、イソホロンジイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型トリイソシアネート(IPDI3N)、水添トリレンジイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型トリイソシアネート(HTDI3N)、水添キシレンジイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型トリイソシアネート(HXDI3N)、ノルボルナンジイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型トリイソシアネート(NBDI3N)、水添ジフェニルメタンジイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型トリイソシアネート(HMDI3N)等が挙げられる。これらは併用しても単独で用いても良い。
【0042】
一般式(A)において、Raは、中でもそれぞれ独立に、2価の環式脂肪族ジイソシアネート類の残基であることが、着色層の輝度をより向上し、且つ水染み発生を抑制する点から好ましい。Raは、中でも、イソホロンジイソシアネートの残基であることが、着色層の輝度をより向上し、且つ水染み発生を抑制する点から好ましい。
全Ra中の2価の環式脂肪族ジイソシアネート類の残基の含有率としては、Raを誘導する2価の脂肪族ジイソシアネートの質量を基準として、すなわち(Raを誘導する2価の環式脂肪族ジイソシアネートの合計量/Raを誘導する2価の脂肪族ジイソシアネート全量)が、50質量%〜80質量%であることが、着色層の輝度をより向上し、且つ水染み発生を抑制する点から好ましく、80質量%〜100質量%がより好ましく、100質量%が最も好ましい。
【0043】
一般式(A)において、Rbは、前記一般式(B1)、(B2)又は(B3)で表される構造単位であり、且つ、Rdはそれぞれ独立に、炭素数6〜20の置換基を有しても良い芳香族若しくは脂肪族トリカルボン酸残基又はテトラカルボン酸残基、すなわち、炭素数6〜20の置換基を有しても良い芳香族若しくは脂肪族トリカルボン酸又はテトラカルボン酸のカルボキシル基を除いた部分構造を表す。
炭素数6〜20の置換基を有しても良い芳香族若しくは脂肪族トリカルボン酸残基又はテトラカルボン酸残基は、それぞれ、炭素数6〜20の置換基を有しても良い芳香族若しくは脂肪族トリカルボン酸無水物又はテトラカルボン酸無水物とイソシアネート基との反応によって導入される。
【0044】
炭素数6〜20の置換基を有しても良い芳香族トリカルボン酸無水物としては、例えば、無水トリメリット酸、ナフタレン−1,2,4−トリカルボン酸無水物等が挙げられる。また、炭素数6〜20の置換基を有しても脂肪族トリカルボン酸無水物としては、線状脂肪族トリカルボン酸無水物、環式脂肪族トリカルボン酸無水物が挙げられ、例えば、プロパントリカルボン酸無水物、シクロヘキサントリカルボン酸無水物、メチルシクロヘキサントリカルボン酸無水物、シクロヘキセントリカルボン酸無水物、メチルシクロヘキセントリカルボン酸無水物等が挙げられる。トリカルボン酸無水物としては、1種又は2種以上混合して用いることが可能である。
前記シクロヘキサントリカルボン酸無水物としては、例えば、シクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸-3,4−無水物、シクロヘキサン−1,3,5−トリカルボン酸-3,5−無水物、シクロヘキサン−1,2,3−トリカルボン酸-2,3−無水物等が挙げられる。中でも、溶剤溶解性に優れるポリアミドイミド樹脂となり、且つ、着色層の輝度をより向上し、且つ水染み発生を抑制する点から、シクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸-3,4−無水物が好ましい。
【0045】
炭素数6〜20の置換基を有しても良い芳香族若しくは脂肪族テトラカルボン酸無水物としては、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノン−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、ジフェニルエーテル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、ベンセン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ビフェニル−3,3’4,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビフェニル−2,2’3,3’−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、デカヒドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、フェテントレン−1,3,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ベリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1一ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物等の分子内に芳香族基を有するテトラカルボン酸の無水物や、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物等が挙げられ、これらを1種又は2種以上を用いることが可能である。
【0046】
Rbは、前記一般式(B1)、(B2)又は(B3)で表される構造単位であり、少なくとも1つは前記一般式(B1)又は(B2)で表される構造単位である。本発明に用いられる前記一般式(A)で表される繰り返し単位を有するポリアミドイミド樹脂は、トリカルボン酸無水物とテトラカルボン酸無水物を混合して合成されても良いが、必ずトリカルボン酸無水物を用いて合成される。
テトラカルボン酸無水物(B3)とトリカルボン酸無水物(B1+B2)の配合割合(モル比)((B3)/(B1+B2))は、0〜2の割合であることが好ましく、更に0〜1の割合であることが好ましい。テトラカルボン酸無水物(B3)の配合割合がこの範囲を超えて大きい場合は、イミド結合の濃度が上昇し溶剤溶解性が必ずしも十分でなくなる場合がある。
【0047】
一般式(A)において、Rcは、前記一般式(C1)、(C2)、(C3)、(C4)、(C5)、(C6)、(C7)、(C8)、(C9)、又は(C10)で表される構造単位であり、且つ、Rdはそれぞれ独立に、炭素数6〜20の置換基を有しても良い芳香族若しくは脂肪族トリカルボン酸残基又はテトラカルボン酸残基である。炭素数6〜20の置換基を有しても良い芳香族若しくは脂肪族トリカルボン酸残基又はテトラカルボン酸残基は、前記と同様であって良いので、ここでの説明を省略する。
本発明において用いられるポリアミドイミド樹脂は、イソシアヌレート型ポリイソシアネートのRaと結合する末端側は、イソシアネート基が残存せず、得られるポリアミドイミド樹脂の安定性が良好である点から、Rcであることが好ましい。
本発明において用いられるポリアミドイミド樹脂は、分子中に酸性基を有し、アルカリ可溶性樹脂として機能する点から、Rc及び樹脂末端の少なくとも1つにおいて酸性基を含むものである。
【0048】
前記一般式(C4)、(C5)、(C6)、(C9)、又は(C10)で表される構造単位において、Reはそれぞれ独立に、アルコール化合物から水酸基を除いた残基を表す。前記ポリアミドイミド樹脂が、前記一般式(A)のRc及び樹脂末端の少なくとも1つにおいて、前記一般式(C4)、(C5)、(C6)、(C9)、又は(C10)で表される構造単位を含むこと、すなわちアルコール化合物から水酸基を除いた残基を含むこと(以後、アルコール化合物から水酸基を除いた残基を含むポリアミドイミド樹脂を「アルコール変性ポリアミドイミド樹脂」と呼称する場合がある)が、着色樹脂組成物の溶剤再溶解性に優れ、且つ現像時間がより短くなる点から好ましい。
なお、ここで溶剤再溶解性とは、一度乾燥した着色樹脂組成物の固形分が再度溶剤に溶解する性質をいい、カラーフィルタの製造工程においてはこのような性質を有する者が求められている。例えば、ダイコーターによる塗布を行う際にダイリップ先端に着色樹脂組成物が付着すると、乾燥によって固化物が発生するが、塗布が再開された際に固化物が着色樹脂組成物に溶解しやすくないと、ダイリップ上の固化物が一部剥離し、カラーフィルタの着色層に付着しやすく、異物欠陥の原因となる。特に、高輝度化のために着色樹脂組成物の色材濃度を高めた場合には、溶剤再溶解性が不足しやすく、カラーフィルタの製造工程の上記異物の発生による歩留まりの低下が問題となっていた。
【0049】
アルコール変性ポリアミドイミド樹脂は、後述するポリアミドイミド樹脂を生成した後、続いて、アルコール化合物をポリアミドイミド樹脂の酸無水物基とエステル化反応させることによって得られる。
アルコール化合物から水酸基を除いた残基を導入するためのアルコール化合物としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ベンジルアルコール等の炭素数が10以下のアルコール;2−メトキシエチルアルコール、2−エトキシエチルアルコール、1−メトキシ−2−プロピルアルコール、1−エトキシ−2−プロピルアルコール、3−メトキシ−1−ブチルアルコール、2−イソプロポキシエチルアルコール等のエーテル結合を含む炭素数が10以下のアルコール;3−ヒドロキシ−2−ブタノン等のケトン基を含む炭素数が10以下のアルコール;ヒドロキシイソ酪酸メチル等のようなエステル基を含む炭素数が10以下のアルコールが挙げられる。本発明において、炭素数10以下、更に炭素数5以下の一価アルコールを用いることが、着色樹脂組成物の溶剤再溶解性に優れ、且つ現像時間がより短くなる点から好ましい。
【0050】
本発明において用いられる前記一般式(A)で表される繰り返し単位を有するポリアミドイミド樹脂は、少なくとも、前記2価の脂肪族ジイソシアネート類から合成されるイソシアヌレート型ポリイソシアネートと、トリカルボン酸無水物とを反応させることにより得ることができる。
前記ポリイソシアネート中のイソシアネート基と前記トリカルボン酸無水物のカルボキシル基及び酸無水物部分とが反応すると、それぞれ、アミド及びイミドが形成され、本発明の樹脂はアミドイミド樹脂となる。また、前記ポリイソシアネートと前記トリカルボン酸無水物とを反応させる際に、前記トリカルボン酸無水物のカルボン酸成分(カルボキシル基及び酸無水物部分)を残すような割合で前記ポリイソシアネートと前記トリカルボン酸無水物とを反応させると、得られるポリアミドイミド樹脂は、Rc及び樹脂末端の少なくとも1つにおいて酸性基を含むようになる。
【0051】
前記2価の脂肪族ジイソシアネート類から合成されるイソシアヌレート型ポリイソシアネートと、トリカルボン酸無水物とを反応させて、本発明に用いられる前記一般式(A)で表される繰り返し単位を有するポリアミドイミド樹脂を得る際には、窒素原子及び硫黄原子のいずれも含まない極性溶剤中で反応させることが好ましい。窒素原子または硫黄原子を含有した極性溶剤が存在すると、環境上の問題が生じやすく、また、前記イソシアヌレート型ポリイソシアネートと、トリカルボン酸無水物との反応において、分子の成長が妨げられやすくなる。
本発明において、窒素原子及び硫黄原子のいずれも含まない極性溶剤は、非プロトン性溶剤であることがより好ましい。非プロトン性溶剤としては、例えば水酸基を有さないエーテル系、水酸基を有さないエステル系、水酸基を有さないケトン系等の溶剤が挙げられ、このうち水酸基を有さないエーテル系溶剤は、弱い極性を有し、前記2価の脂肪族ジイソシアネート類から合成されるイソシアヌレート型ポリイソシアネートと、トリカルボン酸無水物との反応において優れた反応場を提供する点から、特に好ましい。
このような水酸基を有さないエーテル系溶剤は、エチレングリコールジアルキルエーテル類;ポリエチレングリコールジアルキルエーテル類;エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;プロピレングリコールジアルキルエーテル類;ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル類;プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;モノアセテートモノアルキルエーテル類;あるいは低分子のエチレン−プロピレン共重合体の如き共重合ポリエーテルグリコールのジアルキルエーテルや、共重合ポリエーテルグリコールのモノアセテートモノアルキルエーテル類;あるいはこうしたポリエーテルグリコールのアルキルエステル類;ポリエーテルグリコールのモノアルキルエステルモノアルキルエーテル類などが挙げられ、具体的な溶剤としては、国際公報2015−008744号公報の段落0029を参照することができる。
中でも、沸点、溶解性、着色樹脂組成物とした場合の安定性の点から、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート中で、前記2価の脂肪族ジイソシアネート類から合成されるイソシアヌレート型ポリイソシアネートと、トリカルボン酸無水物とを反応させることが好ましい。
【0052】
本発明において用いられる前記一般式(A)で表される繰り返し単位を有するポリアミドイミド樹脂は、本発明の効果が損なわれない限り、前述のように更にテトラカルボン酸無水物を用いて反応することにより得ても良い。
また、本発明において用いられる前記一般式(A)で表される繰り返し単位を有するポリアミドイミド樹脂は、本発明の効果が損なわれない限り、2官能のジカルボン酸化合物、例えばアジピン酸、セバシン酸、フタル酸、フマル酸、マレイン酸及びこれらの酸無水物等を用いて反応することにより得ても良いし、更に、前記イソシアヌレート型ポリイソシアネートには該当しない、分子中に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネートを用いて反応することにより得ても良い。
前記イソシアヌレート型ポリイソシアネートには該当しない、分子中に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネートや、脂肪族及び芳香族イソシアネートの1種以上のビュレット体、脂肪族及び芳香族イソシアネートの1種以上と各種ポリオールとのウレタン化反応によって得られるアダクト体、芳香族イソシアネートのイソシアヌレート体、脂肪族及び芳香族イソシアネートの5量体以上の重合体等が挙げられる。
本発明において用いられる前記一般式(A)で表される繰り返し単位を有するポリアミドイミド樹脂の調製において、前記イソシアヌレート型ポリイソシアネートには該当しない、分子中に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネートが用いられる場合であっても、本発明の効果が損なわれない範囲で用いられるように調整する。前記イソシアヌレート型ポリイソシアネートには該当しない、分子中に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネートは、前記一般式(A)で表される繰り返し単位を有するポリアミドイミド樹脂の調製において用いられる全イソシアネート化合物の30質量%以下、更に20質量%以下、より更に10質量%以下で用いられることが好ましい。
中でも、前記一般式(A)で表される繰り返し単位を有するポリアミドイミド樹脂の調製において用いられる全イソシアネート化合物の100質量%が、前記2価の脂肪族ジイソシアネート類から合成されるイソシアヌレート型ポリイソシアネートであることが、着色層の輝度をより向上し、及び着色樹脂組成物の安定性の点から好ましい。
【0053】
本発明において用いられる前記一般式(A)で表される繰り返し単位を有するポリアミドイミド樹脂は、全イソシアネート化合物のイソシアネート基のモル数(N)とトリカルボン酸無水物及び/又はテトラカルボン酸無水物のカルボキシル基のモル数(M1)及び酸無水物基(カルボン酸2分子が分子内脱水縮合して得られた−CO−O−CO−基)のモル数(M2)が以下の式を満足させることが好ましい。3>((M1)+(M2))/(N))>1.1。特に好ましくは、2>((M1)+(M2))/(N))>1.2である。このとき、カルボキシル基のモル数(M1)と酸無水物基モル数(M2)の和が、イソシアネート基のモル数(N)より過剰となるように配合すると、反応系中の極性が高くなり反応が潤滑に進行する、イソシアネート基が残存せず、得られるポリアミドイミド樹脂の安定性が良好である、トリカルボン酸無水物等の残存量も少なく再結晶等の分離の問題も起こりにくい等の理由により好ましく、且つ、得られるポリアミドイミド樹脂は、Rc及び樹脂末端の少なくとも1つにおいて酸性基を含むようになる。
【0054】
イミド化反応は、溶剤中あるいは無溶剤中で、ポリイソシアネート化合物の1種類以上と、トリカルボン酸無水物の1種以上とを混合し、撹拌を行いながら昇温して行うことが好ましい。反応温度は、好ましくは50℃〜250℃の範囲、特に好ましくは70℃〜180℃の範囲である。このような反応温度にすることにより、反応速度が早くなり、且つ、副反応や分解等が起こりにくい効果を奏する。反応は、脱炭酸を伴いながら無水酸基とイソシアネート基がイミド基を形成する。反応の進行は、赤外スベクトルや、酸価、イソシアネート基の定量等の分析手段により追跡することができる。赤外スペクトルでは、イソシアネート基の特性吸収である2270cm
-1が反応とともに減少し、さらに1860cm
-1と850cm
-1に特性吸収を有する酸無水物基が減少する。一方、1780cm
-1と1720cm
-1にイミド基の吸収が増加する。反応は、目的とする酸価、粘度、分子量等を確認しながら、温度を下げて終了させても良い。しかしながら、経時の安定性等の面からイソシアネート基が消失するまで反応を続行させることがより好ましい。
【0055】
アルコール変性ポリアミドイミド樹脂を調製する際に原料として用いるポリアミドイミド樹脂は、上記方法で製造したものを用いることができるが、前記アルコール化合物との反応の際に、ウレタン化の副反応を抑制できるため、イソシアネート基が完全に消失しているものを用いることが好ましい。イソシアネート基の消失は、例えば赤外スペクトルにおいてイソシアネート基の特性吸収である2270cm
-1が消失していることで確認することができる。
【0056】
原料として用いるポリアミドイミド樹脂とアルコール化合物との反応は、ポリアミドイミド樹脂中の酸無水物基モル数(M3)と、アルコール化合物の水酸基のモル数(L)との比、L/M3=1〜5の範囲であることが、得られるポリアミドイミド樹脂の保存安定性が高くなるため好ましく、さらに、L/M3=1〜2の範囲であることが余剰アルコールの低減の観点からより好ましい。
なお、ポリアミドイミド樹脂中の酸無水物基のモル数(M3)は、前記トリカルボン酸無水物及びテトラカルボン酸無水物が、前記ポリイソシアネートとの反応で消費されるため、以下の方法で求めることができる。
(1)原料として用いるポリアミドイミド樹脂を、溶剤等で希釈し、KOH水溶液の滴定により酸価(a)を求める。
(2)ポリアミドイミド樹脂を溶剤等で希釈し、酸無水物基に過剰量のn−ブタノールを反応させた後、KOH水溶液の滴定により酸価(b)を求める。なお、(2)において、酸無水物基とn−ブタノールの反応は、117℃にて行うものとする。酸無水物の消失は赤外スペクトルにて、酸無水物基の特性吸収である1860cm
-1が完全に消滅したことで確認する。
(3)上記酸価(a)と酸価(b)の差より、本発明のポリアミドイミド樹脂(A1)中の酸無水物基の濃度を算出し、モル数(M3)に換算する。
【0057】
脱水エステル化反応は、溶剤中あるいは無溶剤中で、原料として用いるポリアミドイミド樹脂と、アルコール化合物の1種以上とを混合し、撹拌を行いながら昇温して行うことが好ましい。反応温度は、好ましくは50℃〜150℃の範囲、特に好ましくは70℃〜130℃の範囲である。このような反応温度にすることにより、反応速度が早くなり、且つ、副反応や分解等が起こりにくい効果を奏する。反応は、脱水反応を伴いながらエステル結合を形成する。反応の進行は、赤外スベクトルや、酸価、エステル結合の定量等の分析手段により追跡することができる。赤外スペクトルでは、酸無水物基の特性吸収である1860cm
-1と850cm
-1が反応とともに減少する。反応は、目的とする酸価、粘度、分子量等を確認しながら、温度を下げて終了させても良い。しかしながら、経時の安定性等の面から酸無水物基が消失するまで反応を続行させることがより好ましい。
【0058】
このようにして得られる本発明で用いられるポリアミドイミド樹脂は、イソシアヌレート型ポリイソシアネートのRaや、その他のポリイソシアネート化合物の残基と結合する末端側は、イソシアネート基が残存せず、得られるポリアミドイミド樹脂の安定性が良好である点から、Rcであることが好ましい。
【0059】
このようにして得られる本発明で用いられるポリアミドイミド樹脂は、例えば、以下のような一般式(A−1)で表される。
【0060】
【化9】
(一般式(A−1)において、Ra、Rb及びRcは、それぞれ独立に、一般式(A)と同様である。nは繰り返し単位数を表し、1以上である。)
【0061】
本発明で用いられるポリアミドイミド樹脂は、少なくとも前記一般式(A)で表される繰り返し単位を有するが、Rbには、前記イソシアヌレート型ポリイソシアネートには該当しない、分子中に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネートを用いて調製された場合に導入される繰り返し単位が、更に結合していても良い。
【0062】
また、本発明で用いられるポリアミドイミド樹脂は、少なくとも前記一般式(A)で表される繰り返し単位を有するが、更に、下記一般式(A’)で表されるような分岐構造を含む繰り返し単位を有していても良い。下記一般式(A’)の2つのRbには、それぞれ独立に、前記一般式(A)の繰り返し単位が結合していても良いし、下記一般式(A’)で表される繰り返し単位が結合していても良いし、前記イソシアヌレート型ポリイソシアネートには該当しない、分子中に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネートを用いて調製された場合に導入される繰り返し単位が結合していても良いし、下記一般式(A”)で合わされる末端構造が結合していても良い。
【0063】
【化10】
(一般式(A’)において、Ra及びRbは、それぞれ独立に、一般式(A)と同様である。n’は繰り返し単位数を表し、1以上である。)
【0064】
【化11】
(一般式(A”)において、Ra及びRcは、それぞれ独立に、一般式(A)と同様である。)
【0065】
本発明で用いられるポリアミドイミド樹脂の酸価は、90KOHmg/g以上であることが好ましく、更に110KOHmg/g以上であることが好ましく、より更に130KOHmg/g以上であることが好ましい。酸価が90KOHmg/g以上であれば、ポリアミドイミド樹脂の構造と相俟って現像性が良好になり、現像時間短縮効果が得られる。
一方、本発明で用いられるポリアミドイミド樹脂の酸価は、300KOHmg/g以下であることが好ましく、更に250KOHmg/g以下であることが好ましい。酸価が300KOHmg/g以下であれば、水染みの抑制及び着色樹脂組成物の安定性の点が優れる。
本発明において、酸価は、固形分1gを中和するのに要するKOHの質量(mg)を表し、JIS K 0070に準じ、電位差滴定法によって求めた値をいう。
【0066】
本発明で用いられるポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は、1000以上であることが好ましく、更に2000以上であることが好ましい。数平均分子量が1000以上であれば、着色層としての成膜性にも優れ、膜の溶剤耐性も良好である。
一方、本発明で用いられるポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は、20000以下であることが好ましく、8000以下であることがより好ましい。数平均分子量が20000以下であれば、溶剤への溶解性が良好であると共に、作業性に優れる。
本発明で、ポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は、ゲルパーミネーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、標準ポリスチレン換算値として求めた。測定は、東ソー(株)製のHLC−8120GPCを用い、カラムは東ソー(株)製 TFKguardcolumnhxl−L、TFKgel(G1000HXL、G2000HXL、G3000HXL、G4000HXL)、溶出溶剤はTHFを使用して行われたものである。
【0067】
本発明で用いられるポリアミドイミド樹脂は、前記2価の脂肪族ジイソシアネート類から合成されるイソシアヌレート型ポリイソシアネート構造単位を含むことから、汎用溶剤への溶解性を有するものであるが、中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)100質量部に対して、3質量部以上400質量部以下のいずれかの質量部で溶解するポリアミドイミド樹脂であることが好ましい。
上記のような溶解性を有するポリアミドイミド樹脂であれば、後述するようなカラーフィルタ用着色樹脂組成物に好ましい溶剤に対して、優れた溶剤溶解性を有し、塗布適性に優れたカラーフィルタ用着色樹脂組成物を得ることができる。
【0068】
<色材>
本発明において、色材は、カラーフィルタの着色層を形成した際に所望の発色が可能なものであればよく、特に限定されず、種々の有機顔料、無機顔料、分散可能な染料を用いることができる。中でも有機顔料は、発色性が高く、耐熱性も高いので、好ましく用いられる。有機顔料としては、例えばカラーインデックス(C.I.;The Society of Dyers and Colourists 社発行)においてピグメント(Pigment)に分類されている化合物、具体的には、下記のようなカラーインデックス(C.I.)番号が付されているものを挙げることができる。
【0069】
C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、15、16、17、20、24、31、55、60、61、65、71、73、74、81、83、93、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、116、117、119、120、126、127、128、129、138、139、150、151、152、153、154、155、156、166、168、175、185、及びC.I.ピグメントイエロー150の誘導体顔料;
C.I.ピグメントオレンジ1、5、13、14、16、17、24、34、36、38、40、43、46、49、51、61、63、64、71、73;
C.I.ピグメントバイオレット1、19、23、29、32、36、38;
C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、40、41、42、48:1、48:2、48:3、48:4、49:1、49:2、50:1、52:1、53:1、57、57:1、57:2、58:2、58:4、60:1、63:1、63:2、64:1、81:1、83、88、90:1、97、101、102、104、105、106、108、112、113、114、122、123、144、146、149、150、151、166、168、170、171、172、174、175、176、177、178、179、180、185、187、188、190、193、194、202、206、207、208、209、215、216、220、224、226、242、243、245、254、255、264、265;
C.I.ピグメントブルー15、15:3、15:4、15:6、60;
C.I.ピグメントグリーン7、36、58、59;
C.I.ピグメントブラウン23、25;
C.I.ピグメントブラック1、7。
【0070】
また、前記無機顔料の具体例としては、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、亜鉛華、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑、アンバー、チタンブラック、合成鉄黒、カーボンブラック等を挙げることができる。
【0071】
例えば、カラーフィルタの基板上に、本発明に係るカラーフィルタ用着色樹脂組成物を用いて遮光層のパターンを形成する場合には、インク中に遮光性の高い黒色顔料を配合する。遮光性の高い黒色顔料としては、例えば、カーボンブラックや四三酸化鉄などの無機顔料、或いは、シアニンブラックなどの有機顔料を使用できる。
【0072】
上記分散可能な染料としては、染料に各種置換基を付与して溶剤に不溶化することにより分散可能となった染料や、溶解度の低い溶剤と組み合わせて用いることにより分散可能となった染料や、溶剤に可溶性の染料をカウンターイオンと塩形成して不溶化(レーキ化)したレーキ色材が挙げられる。このような分散可能な染料と、分散剤とを組み合わせて用いることにより当該染料の分散性や分散安定性を向上することができる。
なお、目安として、10gの溶剤(又は混合溶剤)に対して染料の溶解量が10mg以下であれば、当該溶剤(又は混合溶剤)において、当該染料が分散可能であると判定することができる。
【0073】
本発明においては、中でも、前記レーキ色材を用いることが、輝度及びコントラストを向上する点から好ましい。レーキ色材は、通常、溶剤に可溶性の染料と、後述するレーキ化剤とを溶剤中で混合することにより得ることができる。上記溶剤に可溶性の染料としては、カラーフィルタの高輝度化の点から、透過率の高い染料を用いることが好ましい。当該染料は、所望の色調に応じて適宜選択すればよく、アゾ系染料、金属錯塩アゾ染料、アントラキノン系染料、トリアリールメタン系染料、キサンテン系染料、シアニン系染料、インジゴ系染料、ナフトキノン染料、キノンイミン染料、メチン染料、フタロシアニン染料等、いずれの基本骨格(発色部位)を有する染料であってもよい。また、上記染料は、アニオン性置換基を有する酸性染料や、カチオン性置換基を有する塩基性染料等、いずれに分類される染料であってもよい。
青色着色層を形成する場合には、高輝度化の点から、中でも、トリアリールメタン系染料、キサンテン系染料、及びシアニン系染料の少なくとも1種が好ましく、トリアリールメタン系染料であることがより好ましい。
【0074】
酸性染料としては、例えば、C.I.アシッドバイオレット29,31,33,34,36,36:1,39,41,42,43,47,51,63,76,103,118,126、C.I.アシッドブルー2,8,14,25,27,35,37,40,41,41:1,41:2,43,45,46,47,49,50,51,51,53,54,55,56,57,58,62,62:1,63,64,65,68,69,70,78,79,80,81,96,111,124,127,127:1,129,137,138,143,145,150,175,176,183,198,203,204,205,208,215,220,221,225,226,227,230,231,232,233,235,239,245,247,253,257,258,260,261,264,266,270,271,272,273,274,277,277:1,278,280,281,282,286,287,288,289,290,291,292,293,294,295,298,301,302,304,305,306,307,313,316,318,322,324,327,331,333,336,339,340,343,344,350、C.I.アシッドグリーン10,17,25,25:1,27,36,37,38,40,41,42,44,54,59,69,71,81,84,95,101,110,117等のアントラキノン系酸性染料;C.I.アシッドバイオレット15,16,17,19,21,23,24,25,38,49,72、C.I.アシッドブルー1、3、5、7、9、19、22、83、90、93、100、103、104、109、C.I.アシッドグリーン3,5,6,7,8,9,11,13,14,15,16,18,22,50,50:1等のトリアリールメタン系酸性染料;C.I.アシッドレッド50,51,52,87,92,94,289,388、C.I.アシッドバイオレット9,30,102、スルホローダミンG、スルホローダミンB、スルホローダミン101、スルホローダミン640等のキサンテン系酸性染料などが挙げられる。キサンテン系酸性染料は、中でも、C.I.アシッドレッド50、C.I.アシッドレッド52、C.I.アシッドレッド289、C.I.アシッドバイオレット9、C.I.アシッドバイオレット30、C.I.アシッドブルー19等のローダミン系酸性染料であることが好ましい。
また、市販の塩基性染料としては、例えば、C.I.ベーシックバイオレット1,3,14、C.I.ベーシックブルー1,5,7,8,11,26、C.I.ベーシックグリーン1,4等のトリアリールメタン系塩基性染料;C.I.ベーシックイエロー13、C.I.ベーシックレッド14等のシアニン系塩基性染料;C.I.ベーシックレッド29等のアゾ系塩基性染料;C.I.ベーシックバイオレット11等のキサンテン系塩基性染料等が挙げられる。トリアリールメタン系塩基性染料は、中でもC.I.ベーシックブルー1,5,7,8,11,26が好ましい。また、本発明においてトリアリールメタン系塩基性染料としては、後述する一般式(I’)で表される色材のカチオンを有する染料も好適なものとして挙げられる。
これらの染料は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0075】
レーキ色材においてカウンターイオンは、上記染料の種類に応じて異なり、酸性染料のカウンターイオンはカチオンであり、塩基性染料のカウンターイオンはアニオンである。そのため上記レーキ化剤は、上記染料に応じて適宜選択して用いられる。即ち、上記酸性染料を不溶化する場合には、レーキ化剤として当該染料のカウンターカチオンを生じる化合物が用いられ、上記塩基性染料を不溶化する場合には、レーキ化剤として当該染料のカウンターアニオンを生じる化合物が用いられる。
【0076】
酸性染料のカウンターカチオンとしては、アンモニウムカチオンの他、金属カチオンや、無機ポリマー等が挙げられる。
アンモニウムイオンを発生するレーキ化剤としては、例えば、1級アミン化合物、2級アミン化合物、3級アミン化合物等が好適なものとして挙げられ、中でも、耐熱性及び耐光性に優れる点から、2級アミン化合物又は3級アミン化合物を用いることが好ましい。
また金属カチオンを発生するレーキ化剤としては、所望の金属イオンを有する金属塩の中から適宜選択すればよい。
酸性染料のカウンターカチオンは、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0077】
酸性染料を含むレーキ色材としては、高輝度を達成可能となる点から、中でも、キサンテン系染料を含むレーキ色材であることが好ましい。
当該レーキ色材におけるキサンテン系酸性染料としては、中でも、下記一般式(II)で表される化合物、即ち、ローダミン系酸性染料を有することが好ましい。
【0078】
【化12】
(一般式(II)中、R
I〜R
IVは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表し、R
IとR
III、R
IIとR
IVが結合して環構造を形成してもよい。R
Vは、酸性基、Xは、ハロゲン原子を表す。mは0〜5の整数を表す。一般式(II)は酸性基を1個以上有するものであり、nは0以上の整数である。)
【0079】
R
I〜R
IVにおけるアルキル基は、特に限定されない。例えば、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の直鎖又は分岐状アルキル基等が挙げられ、中でも、炭素数が1〜8の直鎖又は分岐のアルキル基であることが好ましく、炭素数が1〜5の直鎖又は分岐のアルキル基であることがより好ましい。アルキル基が有してもよい置換基としては、特に限定されないが、例えば、アリール基、ハロゲン原子、水酸基等が挙げられ、置換されたアルキル基としては、ベンジル基等が挙げられ、更に置換基としてハロゲン原子や、酸性基を有していてもよい。
R
I〜R
IVにおけるアリール基は、特に限定されない。例えば、炭素数6〜20の置換基を有していてもよいアリール基が挙げられ、中でも、フェニル基、ナフチル基等を有する基が好ましい。R
I〜R
IVにおけるヘテロアリール基は、炭素数5〜20の置換基を有していてもよいヘテロアリール基が挙げられ、ヘテロ原子として、窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含むものが好ましい。
アリール基又はヘテロアリール基が有してもよい置換基としては、例えば、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子、酸性基、水酸基、アルコキシ基、カルバモイル基、カルボン酸エステル基等が挙げられる。
なお、R
I〜R
IVは、同一であっても異なっていてもよい。
【0080】
酸性基又はその塩の具体例としては、カルボキシ基(−COOH)、カルボキシラト基(−COO
−)、カルボン酸塩基(−COOM、ここでMは金属原子を表す。)、スルホナト基(−SO
3−)、スルホ基(−SO
3H)、スルホン酸塩基(−SO
3M、ここでMは金属原子を表す。)等が挙げられ、中でも、スルホナト基(−SO
3−)、スルホ基(−SO
3H)、又はスルホン酸塩基(−SO
3M)の少なくとも1種を有することが好ましい。なお金属原子Mとしては、ナトリウム原子、カリウム原子等が挙げられる。
【0081】
一般式(II)で表される化合物としては、高輝度化の点から、中でも、アシッドレッド50、アシッドレッド52、アシッドレッド289、アシッドバイオレット9、アシッドバイオレット30、アシッドブルー19等が好ましい。
また、耐熱性の点からは、一般式(II)において、m=1、且つn=0であるベタイン構造を有する化合物が好ましい。
また、中でも、m=1、且つn=0であって、R
I及びR
IIは各々独立にアルキル基又はアリール基であり、R
III及びR
IVは各々独立にアリール基又はヘテロアリール基であることが、輝度及び耐光性に優れた着色層を形成可能になる点から好ましい。
上記一般式(II)で表される化合物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、特開2010−211198号公報を参考に得ることができる。
【0082】
上記キサンテン系酸性染料の金属レーキ色材は、レーキ化剤として、金属原子を含むものが用いられる。金属原子を含むレーキ化剤を用いることにより、色材の耐熱性が高くなる。このようなレーキ化剤としては、2価以上の金属カチオンとなる金属原子を含むレーキ化剤が好ましい。
【0083】
一方、塩基性染料のカウンターアニオンとしては、有機アニオンであっても、無機アニオンであってもよい。当該有機アニオンとしては、アニオン性基を置換基として有する有機化合物が挙げられる。
【0084】
また、有機アニオンとして公知の酸性染料を用いてもよい。この場合、レーキ色材は、酸性染料と塩基性染料とがイオン対となって存在する。
これらの有機アニオンを発生するレーキ化剤としては、上記の有機アニオンのアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩等が挙げられる。
【0085】
一方、無機アニオンとしては、例えば、オキソ酸のアニオン(リン酸イオン、硫酸イオン、クロム酸イオン、タングステン酸イオン(WO
42−)、モリブデン酸イオン(MoO
42−)等)や、複数のオキソ酸が縮合したポリ酸アニオン等の無機アニオンやその混合物を挙げることができる。
上記ポリ酸としては、イソポリ酸アニオン(M
mO
n)
c−であってもヘテロポリ酸アニオン(X
lM
mO
n)
c−であってもよい。上記イオン式中、Mはポリ原子、Xはヘテロ原子、mはポリ原子の組成比、nは酸素原子の組成比を表す。ポリ原子Mとしては、例えば、Mo、W、V、Ti、Nb等が挙げられる。またヘテロ原子Xとしては、例えば、Si、P、As、S、Fe、Co等が挙げられる。
中でも、耐熱性の点から、モリブデン(Mo)及びタングステン(W)のうち少なくとも一方を含むポリ酸アニオンであることが好ましく、少なくともタングステンを含むc価のポリ酸アニオンであることがより好ましい。
【0086】
無機アニオンを発生するレーキ化剤としては、上記無機アニオンのアルカリ塩やアルカリ金属塩等が挙げられる。
レーキ色材における塩基性染料のカウンターアニオンは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明においてレーキ色材は、耐熱性及び耐光性の点から、中でも塩基性染料と無機アニオンとからなるレーキ色材であることが好ましく、更に、塩基性染料とポリ酸アニオンであることより好ましい。ポリ酸アニオンを含むレーキ色材の場合には、シランカップリング剤が経時で変化を受けやすいが、本発明においては、当該シランカップリング剤の含有割合が着色樹脂組成物中の全固形分に対して1質量%以下であるため、当該経時変化の影響が小さい一方、耐熱性及び耐光性が高いため、本願のレーキ色材として特に好適に用いられる。
【0087】
本発明においては、前記レーキ色材が、カラーフィルタの輝度を向上できる点から、トリアリールメタン系染料を有するレーキ色材を含むことが好ましく、中でも、トリアリールメタン系塩基性染料と、ポリ酸アニオンとを含むことが好ましい。
【0088】
本発明において、前記レーキ色材は、耐熱性及び耐光性に優れ、カラーフィルタの高輝度化を達成する点から、中でも、下記一般式(I)で表される色材であることが、分子会合状態を形成しており、より優れた耐熱性を示す点で好ましい。
【0089】
【化13】
(一般式(I)中、Aは、Nと直接結合する炭素原子がπ結合を有しないa価の有機基であって、当該有機基は、少なくともNと直接結合する末端に飽和脂肪族炭化水素基を有する脂肪族炭化水素基、又は当該脂肪族炭化水素基を有する芳香族基を表し、炭素鎖中にO、S、Nが含まれていてもよい。B
c−は少なくともタングステンを含むc価のポリ酸アニオンを表す。R
i〜R
vは各々独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表し、R
iiとR
iii、R
ivとR
vが結合して環構造を形成してもよい。Ar
1は置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表す。複数あるR
i〜R
v及びAr
1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
a及びcは2以上の整数、b及びdは1以上の整数を表す。eは0又は1であり、eが0のとき結合は存在しない。複数あるeは同一であっても異なっていてもよい。)
【0090】
上記一般式(I)で表される色材は、
図4に示すように、2価以上のアニオン202と、2価以上のカチオン201とを含むため、当該色材の凝集体においては、アニオンとカチオンが単に1分子対1分子でイオン結合しているのではなく、イオン結合203を介して複数の分子が会合する分子会合体210を形成するものと推定される。そのため、一般式(I)で表される色材の見かけの分子量は、従来のレーキ色材の分子量に比べて格段に増大する。このような分子会合体の形成により固体状態での凝集力がより高まり、熱運動を低下させ、イオン対の解離やカチオン部の分解を抑制でき、耐熱性が向上すると推定される。
【0091】
一般式(I)におけるAは、N(窒素原子)と直接結合する炭素原子がπ結合を有しないa価の有機基であって、当該有機基は、少なくともNと直接結合する末端に飽和脂肪族炭化水素基を有する脂肪族炭化水素基、又は当該脂肪族炭化水素基を有する芳香族基を表し、炭素鎖中にO(酸素原子)、S(硫黄原子)、N(窒素原子)が含まれていてもよいものである。Nと直接結合する炭素原子がπ結合を有しないため、カチオン性の発色部位が有する色調や透過率等の色特性は、連結基Aや他の発色部位の影響を受けず、単量体と同様の色を保持することができる。なお、耐熱性の点からは、Aがシロキサン結合を有しないことが好ましく、Si(ケイ素原子)を有しないことがより好ましい。
Aにおいて、少なくともNと直接結合する末端に飽和脂肪族炭化水素基を有する脂肪族炭化水素基は、Nと直接結合する末端の炭素原子がπ結合を有しなければ、直鎖、分岐又は環状のいずれであってもよく、末端以外の炭素原子が不飽和結合を有していてもよく、置換基を有していてもよく、炭素鎖中に、O、S、Nが含まれていてもよい。例えば、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、アミド基等が含まれていてもよく、水素原子が更にハロゲン原子等に置換されていてもよい。
また、Aにおいて上記脂肪族炭化水素基を有する芳香族基は、少なくともNと直接結合する末端に飽和脂肪族炭化水素基を有する脂肪族炭化水素基を有する、単環又は多環芳香族基が挙げられ、置換基を有していてもよく、O、S、Nが含まれる複素環であってもよい。
中でも、骨格の堅牢性の点から、Aは、環状の脂肪族炭化水素基又は芳香族基を含むことが好ましい。
環状の脂肪族炭化水素基としては、中でも、有橋脂環式炭化水素基が、骨格の堅牢性の点から好ましい。有橋脂環式炭化水素基とは、脂肪族環内に橋かけ構造を有し、多環構造を有する多環状脂肪族炭化水素基をいい、例えば、ノルボルナン、ビシクロ[2,2,2]オクタン、アダマンタン等が挙げられる。有橋脂環式炭化水素基の中でも、ノルボルナンが好ましい。また、芳香族基としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環を含む基が挙げられ、中でも、ベンゼン環を含む基が好ましい。例えば、Aが2価の有機基の場合、炭素数1〜20の直鎖、分岐、又は環状のアルキレン基や、キシリレン基等の炭素数1〜20のアルキレン基を2個置換した芳香族基等が挙げられる。
【0092】
一般式(I)における価数aは、カチオンを構成する発色性カチオン部位の数であり、aは2以上の整数である。本発明の色材においては、カチオンの価数aが2以上であるため、耐熱性に優れている。aの上限は特に限定されないが、製造の容易性の点から、aが4以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましい。
【0093】
R
i〜R
vにおけるアルキル基は、特に限定されない。例えば、炭素数1〜20の直鎖又は分岐状アルキル基等が挙げられ、中でも、炭素数が1〜8の直鎖又は分岐のアルキル基であることが好ましく、炭素数が1〜5の直鎖又は分岐のアルキル基であることが、輝度及び耐熱性の点から、より好ましい。中でも、R
i〜R
vにおけるアルキル基がエチル基又はメチル基であることが特に好ましい。アルキル基が有してもよい置換基としては、特に限定されないが、例えば、アリール基、ハロゲン原子、水酸基等が挙げられ、置換されたアルキル基としては、ベンジル基等が挙げられる。
R
i〜R
vにおけるアリール基は、特に限定されない。例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。アリール基が有してもよい置換基としては、例えばアルキル基、ハロゲン原子等が挙げられる。
中でも化学的安定性の点からR
i〜R
vとしては、各々独立に、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基、又は、R
iiとR
iii、R
ivとR
vが結合してピロリジン環、ピペリジン環、モルホリン環を形成していることが好ましい。
【0094】
R
i〜R
vはそれぞれ独立に上記構造をとることができるが、中でも、色純度の点からR
iが水素原子であることが好ましく、さらに製造および原料調達の容易さの点からR
ii〜R
vがすべて同一であることがより好ましい。
【0095】
Ar
1における2価の芳香族基は特に限定されない。Ar
1における芳香族基としては、Aにおける芳香族基に挙げられたものと同様のものとすることができる。
Ar
1は炭素数が6〜20の芳香族基であることが好ましく、炭素数が10〜14の縮合多環式炭素環からなる芳香族基がより好ましい。中でも、構造が単純で原料が安価である点からフェニレン基やナフチレン基であることがより好ましい。
【0096】
1分子内に複数あるR
i〜R
v及びAr
1は、同一であっても異なっていてもよい。R
i〜R
v及びAr
1の組み合わせにより、所望の色に調整することができる。
【0097】
一般式(I)で表される色材において、アニオン部(B
c−)は、少なくともタングステンを含み、モリブデンを含んでいてもよいc価のポリ酸アニオンを表す。
【0098】
一般式(I)で表される色材におけるポリ酸アニオンは、上記のアニオンを1種単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができ、2種以上組み合わせて用いる場合には、ポリ酸アニオン全体におけるタングステンとモリブデンとの比が90:10〜100:0であることが耐熱性と耐光性の点から好ましい。
【0099】
一般式(I)におけるbはカチオンの数を、dは分子会合体中のアニオンの数を示し、b及びdは1以上の整数を表す。bが2以上の場合、分子会合体中に複数あるカチオンは、1種単独であっても、2種以上が組み合わされていてもよい。また、dが2以上の場合、分子会合体中に複数あるアニオンは、1種単独であっても、2種以上が組み合わされていてもよく、有機アニオンと無機アニオンを組み合わせて用いることもできる。
【0100】
一般式(I)におけるeは、0又は1の整数である。e=0はトリアリールメタン骨格を表し、e=1はキサンテン骨格を表す。複数あるeは同一であっても異なっていてもよい。すなわち、例えば、トリアリールメタン骨格のみ、又は、キサンテン骨格のみを複数有するカチオン部であってもよく、1分子内に、トリアリールメタン骨格とキサンテン骨格の両方を含むカチオン部であってもよい。色純度の点からは、同一骨格のみを有するアニオン部であることが好ましい。一方、トリアリールメタン骨格とキサンテン骨格の両方を含むカチオン部とすることにより、一般式(I)で表される色材は、所望の色に調整することができる。
【0101】
本発明においては、一般式(I)で表される色材におけるeが0、即ち、下記一般式(I’)で表される色材を用いることが、所望の色に調整しやすい点からより好ましい。
【0102】
【化14】
(一般式(I’)中の各符号は、前記一般式(I)と同様である。)
【0103】
なお、一般式(I)で表される色材がキサンテン骨格を有する場合、キサンテン系染料にも含まれ得るが、一般式(I)で表される色材に該当する限り、本発明においては、一般式(I)で表される色材に該当するものとして取り扱うものとする。
【0104】
一般式(I)で表される色材の製造方法は、特に限定されない。例えば、国際公開第2012/144520号パンフレットに記載の製造方法により得ることができる。
【0105】
本発明において色材は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明において色材は、輝度及びコントラストを向上する点から、前述のようにレーキ色材が好適に用いられ、前記一般式(I)で表されるレーキ色材、前記キサンテン系染料を含むレーキ色材、及びこれらの組み合わせが、特に好適に用いられる。
また、C.I.ピグメントグリーン58や59などの亜鉛フタロシアニン顔料は、厚膜になり易く、現像し難い顔料であったが、前記特定のポリアミドイミド樹脂と組み合わせると、輝度及びコントラストを向上することが可能な点から、本発明の色材として好適に用いられる。
【0106】
本発明に用いられる色材の平均一次粒径としては、カラーフィルタの着色層とした場合に、所望の発色が可能なものであればよく、特に限定されず、用いる色材の種類によっても異なるが、10nm〜100nmの範囲内であることが好ましく、15nm〜60nmであることがより好ましい。色材の平均一次粒径が上記範囲であることにより、本発明に係る色材分散液を用いて製造されたカラーフィルタを備えた表示装置を高コントラストで、かつ高品質なものとすることができる。
【0107】
本発明に用いられる、色材は、再結晶法、ソルベントソルトミリング法等の公知の方法にて製造することができる。また、市販の色材を微細化処理して用いても良い。
【0108】
[分散剤]
本発明のカラーフィルタ用着色樹脂組成物において、前記色材は、分散剤により溶剤中に分散させて用いられる。本発明において分散剤は、従来公知の分散剤の中から適宜選択して用いることができる。分散剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。分散剤としては、例えば、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性、シリコーン系、フッ素系等の界面活性剤を使用できる。界面活性剤の中でも、均一に、微細に分散し得る点から、高分子分散剤が好ましい。
【0109】
高分子分散剤としては、例えば、ポリアクリル酸エステル等の不飽和カルボン酸エステルの(共)重合体類;ポリアクリル酸等の不飽和カルボン酸の(共)重合体の(部分)アミン塩、(部分)アンモニウム塩や(部分)アルキルアミン塩類;水酸基含有ポリアクリル酸エステル等の水酸基含有不飽和カルボン酸エステルの(共)重合体やそれらの変性物;ポリウレタン類;不飽和ポリアミド類;ポリシロキサン類;長鎖ポリアミノアミドリン酸塩類;ポリエチレンイミン誘導体(ポリ(低級アルキレンイミン)と遊離カルボキシル基含有ポリエステルとの反応により得られるアミドやそれらの塩基);ポリアリルアミン誘導体(ポリアリルアミンと、遊離のカルボキシル基を有するポリエステル、ポリアミド又はエステルとアミドの共縮合物(ポリエステルアミド)の3種の化合物の中から選ばれる1種以上の化合物とを反応させて得られる反応生成物)等が挙げられる。
【0110】
高分子分散剤としては、中でも、前記色材を好適に分散でき、分散安定性が良好である点から、主鎖又は側鎖に窒素原子を含み、アミン価を有する高分子分散剤が好ましく、中でも、3級アミンを有する繰り返し単位を含む重合体からなる高分子分散剤であることが、前記特定のポリアミドイミド樹脂との組合せによって、分散性が良好で塗膜形成時に異物を析出せず、輝度及びコントラストを向上する点から好ましい。
3級アミンを有する繰り返し単位を含む重合体を分散剤として用いることにより、前記特定のポリアミドイミド樹脂との組合せによって、前記色材の分散性及び分散安定性が向上する。3級アミンを有する繰り返し単位は、前記色材と親和性を有する部位である。3級アミンを有する繰り返し単位を含む重合体からなる高分子分散剤は、通常、溶剤と親和性を有する部位となる繰り返し単位を含む。3級アミンを有する繰り返し単位を含む重合体としては、中でも、3級アミンを有する繰り返し単位からなるブロック部と、溶剤親和性を有するブロック部とを有するブロック共重合体であることが、耐熱性に優れ、高輝度となる塗膜を形成可能となる点で好ましい。
【0111】
3級アミンを有する繰り返し単位は、3級アミンを有していれば良く、該3級アミンは、ブロックポリマーの側鎖に含まれていても、主鎖を構成するものであっても良い。
中でも、側鎖に3級アミンを有する繰り返し単位であることが好ましく、中でも、主鎖骨格が熱分解し難く、耐熱性が高い点から、下記一般式(1)で表される構造であることが、より好ましい。
【0112】
【化15】
(一般式(1)中、R
1は、水素原子又はメチル基、Qは、2価の連結基、R
2は、炭素数1〜8のアルキレン基、−[CH(R
5)−CH(R
6)−O]
x−CH(R
5)−CH(R
6)−又は−[(CH
2)
y−O]
z−(CH
2)
y−で示される2価の有機基、R
3及びR
4は、それぞれ独立に、置換されていてもよい鎖状又は環状の炭化水素基を表すか、R
3及びR
4が互いに結合して環状構造を形成する。R
5及びR
6は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。
xは1〜18の整数、yは1〜5の整数、zは1〜18の整数を示す。)
【0113】
上記一般式(1)の2価の連結基Qとしては、例えば、炭素数1〜10のアルキレン基、アリーレン基、−CONH−基、−COO−基、炭素数1〜10のエーテル基(−R’−OR”−:R’及びR”は、各々独立にアルキレン基)及びこれらの組み合わせ等が挙げられる。中でも、得られたポリマーの耐熱性や溶剤として好適に用いられるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に対する溶解性、また比較的安価な材料である点から、Qは、−COO−基又は−CONH−基であることが好ましい。
【0114】
上記一般式(1)の2価の有機基R
2は、炭素数1〜8のアルキレン基、−[CH(R
5)−CH(R
6)−O]
x−CH(R
5)−CH(R
6)−又は−[(CH
2)
y−O]
z−(CH
2)
y−である。上記炭素数1〜8のアルキレン基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、各種ブチレン基、各種ペンチレン基、各種へキシレン基、各種オクチレン基などである。
R
5及びR
6は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。
上記R
2としては、分散性の点から、炭素数1〜8のアルキレン基が好ましく、中でも、R
2がメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基であることが更に好ましく、メチレン基及びエチレン基がより好ましい。
【0115】
上記一般式(1)のR
3、R
4が互いに結合して形成する環状構造としては、例えば5〜7員環の含窒素複素環単環又はこれらが2個縮合してなる縮合環が挙げられる。該含窒素複素環は芳香性を有さないものが好ましく、飽和環であればより好ましい。
【0116】
上記一般式(1)で表される繰り返し単位としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアルキル基置換アミノ基含有(メタ)アクリレート等、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどのアルキル基置換アミノ基含有(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。中でも分散性、及び分散安定性が向上する点でジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドを好ましく用いることができる。
【0117】
前記3級アミンを有する繰り返し単位からなるブロック部において、一般式(1)で表される構成単位は、3個以上含まれることが好ましい。中でも、分散性、及び分散安定性を向上する点から、3個〜100個含むことが好ましく、3個〜50個含むことがより好ましく、更に3個〜30個含むことがより好ましい。
【0118】
前記3級アミンを有する繰り返し単位からなるブロック部(以下、Aブロックと記載することがある。)と溶剤親和性を有するブロック部(以下、Bブロックと記載することがある。)とを有するブロック共重合体における、溶剤親和性を有するブロック部としては、溶剤親和性を良好にし、分散性を向上する点から、前記一般式(1)で表される構成単位を有さず、前記一般式(1)と共重合可能な構成単位を有する溶剤親和性ブロック部を有する。本発明においてブロック共重合体の各ブロックの配置は特に限定されず、例えば、ABブロック共重合体、ABAブロック共重合体、BABブロック共重合体等とすることができる。中でも、分散性に優れる点で、ABブロック共重合体、又はABAブロック共重合体が好ましい。
前記一般式(1)と共重合可能な構成単位としては、レーキ色材の分散性及び分散安定性を向上させながら、耐熱性も向上する点から、下記一般式(2)で表される構成単位であることが好ましい。
【0119】
【化16】
(一般式(2)中、R
7は、水素原子又はメチル基、Aは、直接結合又は2価の連結基、R
8は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R
9)−CH(R
10)−O]
x−R
11又は−[(CH
2)
y−O]
z−R
11で示される1価の基である。R
9及びR
10は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、R
11は、水素原子、あるいは炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−CHO、−CH
2CHO、又は−CH
2COOR
12で示される1価の基であり、R
12は水素原子又は炭素数1〜5の直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル基である。xは1〜18の整数、yは1〜5の整数、zは1〜18の整数を示す。mは3〜200の整数、nは10〜200の整数を示す。)
【0120】
上記一般式(2)の2価の連結基Aとしては、前記一般式(1)におけるQと同様のものとすることができ、得られたポリマーの耐熱性や溶剤として好適に用いられるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート(PGMEA)に対する溶解性、また比較的安価な材料である点から、Aは、−COO−基であることが好ましい。
【0121】
R
8において、上記炭素数1〜18のアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種オクチル基、各種デシル基、各種ドデシル基、各種テトラデシル基、各種ヘキサデシル基、各種オクタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、ボルニル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、アダマンチル基、低級アルキル基置換アダマンチル基などを挙げることができる。
上記炭素数2〜18のアルケニル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。このようなアルケニル基としては、例えばビニル基、アリル基、プロペニル基、各種ブテニル基、各種ヘキセニル基、各種オクテニル基、各種デセニル基、各種ドデセニル基、各種テトラデセニル基、各種ヘキサデセニル基、各種オクタデセニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロオクテニル基などを挙げることができる。
中でも、分散性、基板密着性の点からR
8はメチル基、各種ブチル基、各種ヘキシル基、ベンジル基、シクロヘキシル基、ヒドロキシエチル基が好ましい。
【0122】
置換基を有していてもよいアリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基等が挙げられる。アリール基の炭素数は、6〜24が好ましく、更に6〜12が好ましい。
置換基を有していてもよいアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ビフェニルメチル基等が挙げられる。アラルキル基の炭素数は、7〜20が好ましく、更に7〜14が好ましい。
アリール基やアラルキル基等の芳香環の置換基としては、炭素数1〜4の直鎖状、分岐状のアルキル基の他、アルケニル基、ニトロ基、ハロゲン原子などを挙げることができる。
【0123】
また、上記R
11は水素原子、あるいは置換基を有してもよい、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−CHO、−CH2CHO、又は−CH2COOR
12で示される1価の基であり、R
12は水素原子又は炭素数1〜5の直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル基である。
上記R
11で示される1価の基において、有してもよい置換基としては、例えば炭素数1〜4の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、F、Cl、Brなどのハロゲン原子などを挙げることができる。
上記R
11のうちの炭素数1〜18のアルキル基、及び炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基は、前記R
8で示したとおりである。
上記R
8において、x、y及びzは、前記一般式(1)におけるR
2と同様である。
【0124】
本発明において上記ブロック共重合体の溶剤親和性のブロック部のガラス転移温度(Tg)は、適宜選択すればよい。耐熱性の点から、中でも、溶剤親和性のブロック部のガラス転移温度(Tg)が、80℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましい。
本発明における溶剤親和性のブロック部のガラス転移温度(Tg)は下記式で計算することができる。また同様に色材親和性ブロック部及びブロック共重合体のガラス転移温度も計算することが出来る。
1/Tg=Σ(Xi/Tgi)
ここでは、溶剤親和性のブロック部はi=1からnまでのn個のモノマー成分が共重合しているとする。Xiはi番目のモノマーの重量分率(ΣXi=1)、Tgiはi番目のモノマーの単独重合体のガラス転移温度(絶対温度)である。ただしΣはi=1からnまでの和をとる。なお、各モノマーの単独重合体ガラス転移温度の値(Tgi)は、Polymer Handbook(3rd Edition)(J.Brandrup, E.H.Immergut著(Wiley-Interscience、1989))の値を採用することができる。
【0125】
溶剤親和性のブロック部を構成する構成単位の数は、色材分散性が向上する範囲で適宜調整すればよい。中でも、溶剤親和性部位と色材親和性部位が効果的に作用し、色材の分散性を向上する点から、溶剤親和性のブロック部を構成する構成単位の数は、10〜200であることが好ましく、10〜100であることがより好ましく、更に10〜70であることがより好ましい。
【0126】
溶剤親和性のブロック部は、溶剤親和性部位として機能するように選択されれば良く、溶剤親和性のブロック部を構成する繰り返し単位は1種からなるものであっても良いし、2種以上の繰り返し単位を含んでいてもよい。
本発明の分散剤として用いられるブロック共重合体において、一般式(1)で表される構成単位のユニット数mと、溶剤親和性のブロック部を構成する他の構成単位のユニット数nの比率m/nとしては、0.01〜1の範囲内であることが好ましく、0.05〜0.7の範囲内であることが、色材の分散性、分散安定性の点からより好ましい。
【0127】
また、中でも、本発明において分散剤は、前記一般式(1)で表される構造を含みアミン価が40mgKOH/g以上120mgKOH/g以下である重合体が、前記特定のポリアミドイミド樹脂との組合せによって、分散性が良好で塗膜形成時に異物を析出せず、輝度及びコントラストを向上する点から好ましい。
アミン価が上記範囲内であることにより、粘度の経時安定性や耐熱性に優れると共に、アルカリ現像性や、溶剤再溶解性にも優れている。本発明において、分散剤のアミン価は、分散性および分散安定性の点から、中でも、アミン価が80mgKOH/g以上であることが好ましく、90mgKOH/g以上であることがより好ましい。一方、溶剤再溶解性の点から、分散剤のアミン価は、110mgKOH/g以下であることが好ましく、105mgKOH/g以下であることがより好ましい。
アミン価は、試料1g中に含まれるアミン成分を中和するのに要する過塩素酸と当量の水酸化カリウムのmg数をいい、JIS−K7237に定義された方法により測定することができる。当該方法により測定した場合には、分散剤中の有機酸化合物と塩形成しているアミノ基であっても、通常、当該有機酸化合物が解離するため、分散剤として用いられるブロック共重合体そのもののアミン価を測定することができる。
【0128】
本発明に用いられる分散剤の酸価は、現像残渣の抑制効果が発現される点から、下限としては、1mgKOH/g以上であることが好ましい。中でも、現像残渣の抑制効果がより優れる点から、分散剤の酸価は2mgKOH/g以上であることがより好ましい。また、本発明に用いられる分散剤の酸価は、現像密着性の悪化を防止できる点から、分散剤の酸価の上限としては、18mgKOH/g以下であることが好ましい。中でも、現像密着性が良好になる点から、分散剤の酸価は、16mgKOH/g以下であることがより好ましく、14mgKOH/g以下であることがさらにより好ましい。
本発明に用いられる分散剤においては、塩形成前のブロック共重合体の酸価が1mgKOH/g以上であることが好ましく、2mgKOH/g以上であることがさらに好ましい。現像残渣の抑制効果が向上するからである。また、塩形成前のブロック共重合体の酸価の上限としては18mgKOH/g以下であることが好ましいが、16mgKOH/g以下であることがより好ましく、14mgKOH/g以下であることがさらにより好ましい。現像密着性が良好になるからである。
色材濃度を高め、分散剤含有量が増加すると、相対的にバインダー量が減少することから、着色樹脂層が現像時に下地基板から剥離し易くなる。分散剤がカルボキシ基含有モノマー由来の構成単位を含むBブロックを含み、前記特定の酸価を有することにより、現像密着性が向上する。酸価が高すぎると、現像性に優れるものの、極性が高すぎて却って現像時に剥離が生じ易くなると推定される。
【0129】
また、本発明において、分散剤のガラス転移温度は、現像密着性が向上する点から、30℃以上であることが好ましい。すなわち、分散剤が、塩形成前ブロック共重合体であっても、塩型ブロック共重合体であっても、そのガラス転移温度は、30℃以上であることが好ましい。分散剤のガラス転移温度が低いと、特に現像液温度(通常23℃程度)に近接し、現像密着性が低下する恐れがある。これは、当該ガラス転移温度が現像液温度に近接すると、現像時に分散剤の運動が大きくなり、その結果、現像密着性が悪化するからと推定される。ガラス転移温度が30℃以上であることによって、現像時の分散剤の分子運動が抑制されることから、現像密着性の低下が抑制されると推定される。
分散剤のガラス転移温度は、現像密着性の点から中でも32℃以上が好ましく、35℃以上がより好ましい。一方、精秤が容易など、使用時の操作性の観点から、200℃以下であることが好ましい。
本発明における分散剤のガラス転移温度は、JIS K7121に準拠し、示差走査熱量測定(DSC)により測定することにより求めることができる。
【0130】
また、本発明において前記分散剤は、前記一般式(1)で表される構造を含みアミン価が40mgKOH/g以上120mgKOH/g以下である重合体であって、且つ、酸価が1mgKOH/g以上18mgKOH/g以下で、ガラス転移温度が30℃以上であることが、色材分散安定性に優れてコントラストを向上し、着色樹脂組成物とした際に、現像残渣の発生が抑制されながら、更に、高い現像密着性を有する点から好ましい。
【0131】
前記カルボキシ基含有モノマーとしては、一般式(1)で表される構成単位を有するモノマーと共重合可能で、不飽和二重結合とカルボキシ基を含有するモノマーを用いることができる。このようなモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸、アクリル酸ダイマーなどが挙げられる。また、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する単量体と無水マレイン酸や無水フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物のような環状無水物との付加反応物、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートなども利用できる。また、カルボキシ基の前駆体として無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などの酸無水物基含有モノマーを用いてもよい。中でも、共重合性やコスト、溶解性、ガラス転移温度などの点から(メタ)アクリル酸が特に好ましい。
【0132】
塩形成前のブロック共重合体中、カルボキシ基含有モノマー由来の構成単位の含有割合は、ブロック共重合体の酸価が前記特定の酸価の範囲内になるように適宜設定すればよく、特に限定されないが、ブロック共重合体の全構成単位の合計質量に対して、0.05質量%〜4.5質量%であることが好ましく、0.07質量%〜3.7質量%であることがより好ましい。
カルボキシ基含有モノマー由来の構成単位の含有割合が、前記下限値以上であることより、現像残渣の抑制効果が発現され、前記上限値以下であることより現像密着性の悪化を防止できる。
なお、カルボキシ基含有モノマー由来の構成単位は、上記特定の酸価となればよく、1種からなるものであっても良いし、2種以上の構成単位を含んでいてもよい。
【0133】
また、本発明に用いられる分散剤のガラス転移温度を特定の値以上とし、現像密着性が向上する点から、モノマーの単独重合体のガラス転移温度の値(Tgi)が10℃以上であるモノマーを、合計でBブロック中に75質量%以上とすることが好ましく、更に85質量%以上とすることが好ましい。
【0134】
前記ブロック共重合体において、前記Aブロックの構成単位のユニット数mと、前記Bブロックの構成単位のユニット数nの比率m/nとしては、0.05〜1.5の範囲内であることが好ましく、0.1〜1.0の範囲内であることが、色材の分散性、分散安定性の点からより好ましい。
【0135】
前記ブロック共重合体の重量平均分子量Mwは、特に限定されないが、色材分散性及び分散安定性を良好なものとする点から、1000〜20000であることが好ましく、2000〜15000であることがより好ましく、更に3000〜12000であることがより好ましい。
ここで、重量平均分子量は(Mw)、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレン換算値として求める。
【0136】
上記ブロック共重合体の製造方法は、特に限定されない。公知の方法によってブロック共重合体を製造することができるが、中でもリビング重合法で製造することが好ましい。連鎖移動や失活が起こりにくく、分子量の揃った共重合体を製造することができ、分散性等を向上できるからである。リビング重合法としては、リビングラジカル重合法、グループトランスファー重合法等のリビングアニオン重合法、リビングカチオン重合法等を挙げることができる。これらの方法によりモノマーを順次重合することによって共重合体を製造することができる。例えば、Aブロックを先に製造し、AブロックにBブロックを構成する構成単位を重合することにより、ブロック共重合体を製造することができる。また上記の製造方法においてAブロックとBブロックの重合の順番を逆にすることもできる。また、AブロックとBブロックを別々に製造し、その後、AブロックとBブロックをカップリングすることもできる。
【0137】
このような3級アミンを有する繰り返し単位からなるブロック部と溶剤親和性を有するブロック部とを有するブロック共重合体の具体例としては、例えば、特許第4911253号公報に記載のブロック共重合体を好適なものとして挙げることができる。
【0138】
上記3級アミンを有する繰り返し単位を含む重合体を分散剤として用いて、前記色材を分散する場合には、色材100質量部に対して、当該3級アミンを有する繰り返し単位を含む重合体の含有量が15質量部〜300質量部であることが好ましく、20質量部〜250質量部であることがより好ましい。上記範囲内であれば分散性及び分散安定性に優れ、コントラストを向上する効果が高くなる。
【0139】
本発明においては、色材の分散性や分散安定性の点から、前記3級アミンを有する繰り返し単位を含む重合体中のアミノ基のうちの少なくとも一部と、有機酸化合物とが塩を形成したものを分散剤として用いることがより好ましい(以下、このような重合体を、塩型重合体と称することがある)。
当該塩型重合体を用いることにより、特に、前記一般式(I)で表される色材、及び一般式(II)で表される色材の分散性及び分散安定性が向上する。中でも、3級アミンを有する繰り返し単位を含む重合体がブロック共重合体であって、前記有機酸化合物が酸性有機リン化合物であることが、レーキ色材、特に前記一般式(I)で表される色材、及び一般式(II)で表される色材の分散性及び分散安定性に優れる点から好ましい。
【0140】
本発明において上記有機酸化合物は、1個以上の炭素原子と、酸性基とを有する化合物であればよく特に限定されない。有機酸化合物が有する酸性基としては、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基等が挙げられ、分散性、分散安定性、耐熱性及びアルカリ現像性の点から、スルホ基又はリン酸基であることが好ましい。また、アルカリ現像性の点からはリン酸基を有することが好ましい。
有機酸化合物1分子中に含まれる酸性基の数は特に限定されないが、分散性分散安定性、耐熱性及びアルカリ現像性の点から、1分子中の酸性基が1〜3個であることが好ましく、1〜2個であることがより好ましい。また、酸性基の価数は、特に限定されないが、分散安定性、耐熱性及び現像性の点から、1〜3価の酸であることが好ましく、1〜2価の酸であることがより好ましい。
本発明において、有機酸化合物は、分散剤が有するアミノ基と塩形成しやすい点から、分子量が5000以下であることが好ましく、100以上1000以下であることがより好ましく、150以上500以下が更により好ましい。
【0141】
本発明において、有機酸化合物が下記一般式(3)、及び下記一般式(4)よりなる群から選択される1種以上であることが、分散性、分散安定性、耐熱性及びアルカリ現像性に優れる点から好ましい。
【0142】
【化17】
(式(3)及び式(4)中、R
a及びR
a’はそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R
c)−CH(R
d)−O]
s−R
e、−[(CH
2)
t−O]
u−R
e、又は−O−R
a’’で示される1価の基であり、R
a及びR
a’のいずれかは炭素原子を含む。R
a’’は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R
c)−CH(R
d)−O]
s−R
e、−[(CH
2)
t−O]
u−R
eで示される1価の基である。
R
bは、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R
c)−CH(R
d)−O]
s−R
e、−[(CH
2)
t−O]
u−R
e、又は−O−R
b’で示される1価の基である。R
b’は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R
c)−CH(R
d)−O]
s−R
e、又は−[(CH
2)
t−O]
u−R
eで示される1価の基である。
R
c及びR
dは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、R
eは、水素原子、あるいは炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−CHO、−CH
2CHO、−CO−CH=CH
2、−CO−C(CH
3)=CH
2又は−CH
2COOR
fで示される1価の基であり、R
fは水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である。
R
a、R
a’、及びR
bにおいて、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基はそれぞれ、置換基を有していてもよい。
sは1〜18の整数、tは1〜5の整数、uは1〜18の整数を示す。)
【0143】
上記一般式(3)において、R
a及びR
a’が芳香環を有する場合、該芳香環上に適当な置換基、例えば、炭素数1〜4の直鎖状、分岐状のアルキル基などを有していてもよい。
上記炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基は、前記分散剤におけるR
8と同様のものとすることができる。
【0144】
R
a及び/又はR
a’が、−O−R
a”の場合、酸性リン酸エステルとなる。
尚、R
a”が芳香環を有する場合、該芳香環上に適当な置換基、例えば炭素数1〜4の直鎖状、分岐状のアルキル基などを有していてもよい。
【0145】
上記R
eで示される1価の基において、有してもよい置換基としては、例えば炭素数1〜4の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、F、Cl、Brなどのハロゲン原子などを挙げることができる。
上記R
eのうちの炭素数1〜18のアルキル基は前記のR
8で示したとおりであり、炭素数2〜18のアルケニル基は、前記のR
a及びR
a’で示したとおりである。
R
a、R
a’及びR
a”において、sは1〜18の整数、tは1〜5の整数、uは1〜18の整数である。sは、好ましくは1〜4の整数、より好ましくは1〜2の整数であり、tは、好ましくは1〜4の整数、より好ましくは2又は3である。uは、好ましくは1〜4の整数、より好ましくは1〜2の整数である。
【0146】
上記一般式(4)において、R
bが芳香環を有する場合、該芳香環上に適当な置換基、例えば炭素数1〜4の直鎖状、分岐状のアルキル基などを有していてもよい。
R
bが、−O−R
b’の場合、酸性硫酸エステルとなる。上記R
b’は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R
c)−CH(R
d)−O]
s−R
e、又は−[(CH
2)
t−O]
u−R
eで示される1価の基である。
上記炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基は、前記のR
8で示したとおりであり、炭素数2〜18のアルケニル基は、前記のR
a及びR
a’で示したとおりである。尚、R
b’が芳香環を有する場合、該芳香環上に適当な置換基、例えば炭素数1〜4の直鎖状、分岐状のアルキル基などを有していてもよい。
上記R
c、R
d及びR
eは、前記と同じである。
上記R
b及びR
b’において、sは1〜18の整数、tは1〜5の整数、uは1〜18の整数である。好ましいs、t、uは、上記R
a、R
a’及びR
a”と同様である。
【0147】
上記一般式(3)で表される有機酸化合物としては、前記一般式(3)におけるR
a及びR
a’が、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、メチル基、エチル基、置換基を有していても良いアリール基又はアラルキル基、ビニル基、アリル基、−[CH(R
c)−CH(R
d)−O]
s−R
e、又は−[(CH
2)
t−O]
u−R
e、あるいは、−O−R
a’’で示される1価の基であり、R
a及びR
a’のいずれかは炭素原子を含み、且つ、R
a’’が、メチル基、エチル基、置換基を有していても良いアリール基又はアラルキル基、ビニル基、アリル基、−[CH(R
c)−CH(R
d)−O]
s−R
e、又は−[(CH
2)
t−O]
u−R
eであり、R
c及びR
dが、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であることが、色材の分散性を向上し、且つ得られた着色層のコントラストが高く、且つ、耐熱性に優れる点から好ましく、R
aが水酸基、且つ、R
a’が置換基を有していてもよいアリール基であることがより好ましい。
【0148】
また、一般式(4)で表される有機酸化合物としては、一般式(4)におけるR
bが、メチル基、エチル基、置換基を有していても良いアリール基又はアラルキル基、ビニル基、アリル基、−[CH(R
c)−CH(R
d)−O]
s−R
e、又は−[(CH
2)
t−O]
u−R
e、あるいは、−O−R
b’で示される1価の基であり、R
b’が、メチル基、エチル基、置換基を有していても良いアリール基又はアラルキル基、ビニル基、アリル基、−[CH(R
c)−CH(R
d)−O]
s−R
e、又は−[(CH
2)
t−O]
u−R
eであり、R
c及びR
dが、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であることが、色材の分散性を向上し、且つ得られた着色層のコントラストが高く、且つ、耐熱性に優れる点から好ましく、R
bが置換基を有していてもよいアリール基であることがより好ましい。
【0149】
中でも、上記一般式(3)及び一般式(4)で表される有機酸化合物は、R
a、R
a’及び/又はR
a’’、並びに/或いは、R
b及び/又はR
b’として、芳香環を有することが色材の分散性を向上し、且つ得られた着色層のコントラストが高く、且つ、耐熱性に優れる点から好ましい。R
a、R
a’及びR
a’’の少なくとも1つ、或いは、R
b又はR
b’が、置換基を有していても良いアリール基又はアラルキル基、より具体的には、ベンジル基、フェニル基、トリル基、ナフチル基、ビフェニル基であることが、色材分散性の点から好ましい。前記一般式(3)においては、R
a及びR
a’の一方が芳香環を有する場合には、R
a及びR
a’の他方は、水素原子や水酸基であるものも好適に用いられる。
【0150】
また、耐熱性や耐薬品性、特に耐アルカリ性の点からは、上記一般式(3)及び一般式(4)で表される有機酸化合物としては、リン(P)や硫黄(S)に炭素原子が直接結合した化合物であることが好ましく、R
a及びR
a’が、それぞれ独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R
c)−CH(R
d)−O]
s−R
e、−[(CH
2)
t−O]
u−R
eで示される1価の基であり、R
a及びR
a’のいずれかは炭素原子を含むことが好ましい。また、R
bが、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R
c)−CH(R
d)−O]
s−R
e、−[(CH
2)
t−O]
u−R
eで示される1価の基であることが好ましい。
【0151】
本発明において有機酸化合物は、分散性、耐熱性の面から、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、モノブチルリン酸、ジブチルリン酸、メチルリン酸、ジベンジルリン酸、ジフェニルリン酸、フェニルホスホン酸などが好ましく、中でも、p−トルエンスルホン酸、フェニルホスホン酸がより好ましい。なお、有機酸化合物は、p−トルエンスルホン酸一水和物のような水和物を用いてもよい。
本発明において有機酸化合物は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0152】
塩型ブロック共重合体の調製方法としては、前記一般式(3)で表される構成単位を有する重合体を溶解乃至分散した溶剤中に、前記一般式(3)及び(4)よりなる群から選択される1種以上の化合物を添加し、攪拌、更に必要により加熱する方法などが挙げられる。
なお、前記一般式(1)で表される構成単位を有する重合体の当該一般式(1)で表される構成単位が有する末端の窒素部位と、前記一般式(3)及び(4)よりなる群から選択される1種以上の化合物とが塩を形成していること、及びその割合は、例えばNMR等、公知の手法により確認することができる。
【0153】
[溶剤]
本発明において溶剤は、着色樹脂組成物中の各成分とは反応せず、これらを溶解乃至分散可能な溶剤の中から、適宜選択して用いることができる。溶剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
色材の分散性の点から、色材の23℃における溶解度が0.1(g/10ml溶剤)以下の溶剤を選択することが好ましい。色材に対してこのような実質的に溶解しない溶剤又は難溶性の溶剤を用いることにより、色材を微粒子として分散させて用いることができるため、耐熱性及び耐光性に優れた着色樹脂組成物を得ることができる。中でも、本発明において用いられる溶剤は、分散性、耐熱性に優れ、高輝度の塗膜が得られる点から、23℃における色材の溶解度が0.05(g/10ml溶剤)以下の溶剤であることが好ましい。
なお、本発明において、23℃における色材の溶解度が0.1(g/10ml溶剤)以下である溶剤は、以下の評価方法により簡易的に判定することができる。
まず、下記の方法により、色材を実質的に溶解しない溶剤であるか否かを判断することができる。
20mLサンプル管瓶に、溶解性を判断しようとする色材を0.1g投入し、溶剤Sを10mlホールピペットを用いて投入し、更にふたをした後に超音波で3分間処理する。得られた液は23℃のウォーターバスで60分間静置保管する。この上澄み液5mlをPTFE5μmメンブレンフィルターでろ過し、さらに0.25μmメンブレンフィルターでろ過し、不溶物を除く。得られたろ液の吸光スペクトルを紫外可視分光光度計(例えば、島津製作所社製 UV−2500PC)で1cmセルを用いて測定する。各色材の極大吸収波長における吸光度(abs)を求める。このとき、吸光度(abs)が測定上限値の40%未満(島津製作所社製 UV−2500PCの場合、吸光度(abs)が2未満)であれば当該溶剤は、前記色材を実質的に溶解しない溶剤であると評価できる。このとき、吸光度(abs)が測定上限値の40%以上の場合には、更に次の評価方法により、溶解度を求める。
まず、上記溶剤Sの代わりに、溶解性を判断しようとする色材の良溶剤(例えばメタノール等のアルコール)を用いて、同様にろ液を得て、色材溶液を作製し、その後10000倍〜100000倍程度に適宜希釈し、同様に色材の極大吸収波長における吸光度を測定する。上記溶剤Sの色材溶液と良溶剤の色材溶液の吸光度と希釈倍率から上記溶剤Sに対する色材の溶解度を算出する。
その結果、前記色材の溶解度が0.1(g/10ml溶剤)以下である溶剤は、本発明で用いることが可能な、色材が難溶性の溶剤であると判断される。
前記色材の溶解度が0.1(g/10ml溶剤)以下である溶剤は、色材分散液の分散安定性が向上する点から、色材分散液の全溶剤中に95質量%以上含むことが好ましく、さらに98質量%以上含むことが好ましく、100質量%含むことが最も好ましい。
【0154】
本発明の着色樹脂組成物においては、中でも、エステル系溶剤の中から適宜選択して用いることが分散安定性の点から好ましい。
エステル系溶剤は、少なくともエステル基を含む溶剤をいい、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、メトキシエチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシ−3−メチル−1−ブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、メトキシブチルアセテート、エトキシエチルアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、1,3−ブチレングリコールジアセテート、シクロヘキサノールアセテート、1,6−ヘキサンジオールジアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等が挙げられる。
また、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤や、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル等のグリコールジエーテル系溶剤も溶解性の調整の点から好適に用いられる。これらの溶剤は、特に、アルカリ可溶性樹脂を2種以上用いる場合や、酸価が高いアルカリ可溶性樹脂を用いる場合に、溶解性や相溶性を向上し易い点から好適に用いられる。
本発明に用いる溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、及びジエチレングリコールモノメチルエーテルから選ばれる少なくとも1種の溶剤であることが、他の成分の溶解性や塗布適性が良好になり、カラーフィルタのコントラスト及び輝度を向上する点から好ましい。
中でも、人体への危険性が低いこと、室温付近での揮発性が低いが加熱乾燥性が良い点から、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を用いることが好ましい。この場合には、従来のPGMEAを用いた着色樹脂組成物との切り替えの際にも特別な洗浄工程を必要としないというメリットがある。そのため、本発明に用いる溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含み、更に、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、及びジエチレングリコールモノメチルエーテルから選ばれる少なくとも1種の溶剤を含んでいても良いであることが更に好ましい。
本発明で用いられる溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを全溶剤中50質量%以上含むことが好ましく、更に70質量%以上含むことが好ましく、より更に90質量%以上含むことが好ましい。
【0155】
[その他のアルカリ可溶性樹脂]
本発明においては、前記特定のポリアミドイミド樹脂の他に、更にその他のアルカリ可溶性樹脂を含んでいても良い。当該その他のアルカリ可溶性樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明における、その他のアルカリ可溶性樹脂とは、前記特定のポリアミドイミド樹脂とは異なるものであって、酸性基、通常カルボキシル基を有するものであり、バインダー樹脂として作用し、かつパターン形成する際に用いられる現像液、特に好ましくはアルカリ現像液に可溶性である限り、適宜選択して使用することができる。
本発明において、アルカリ可溶性樹脂とは、酸価が40mgKOH/g以上であることを目安にすることができる。
【0156】
本発明において、前記特定のポリアミドイミド樹脂と組み合わせて用いるのに好ましいその他のアルカリ可溶性樹脂は、具体的には、カルボキシル基を有するアクリル系共重合体及びカルボキシ基を有するスチレン−アクリル系共重合体等のアクリル系樹脂、カルボキシル基を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂等が挙げられる。これらの中で特に好ましいものは、側鎖にカルボキシル基を有するとともに、さらに側鎖にエチレン性不飽和基等の光重合性官能基を有するものである。光重合性官能基を含有することにより形成される硬化膜の膜強度が向上するからである。また、これらアクリル系共重合体及びスチレン−アクリル系共重合体等のアクリル系樹脂、並びにエポキシアクリレート樹脂は、2種以上混合して使用してもよい。
【0157】
カルボキシル基を有する構成単位を有するアクリル系共重合体、及びカルボキシ基を有するスチレン−アクリル系共重合体等のアクリル系樹脂は、例えば、カルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマー、及び必要に応じて共重合可能なその他のモノマーを、公知の方法により(共)重合して得られた(共)重合体である。
カルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸、アクリル酸ダイマーなどが挙げられる。また、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する単量体と無水マレイン酸や無水フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物のような環状無水物との付加反応物、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートなども利用できる。また、カルボキシル基の前駆体として無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などの無水物含有モノマーを用いてもよい。中でも、共重合性やコスト、溶解性、ガラス転移温度などの点から(メタ)アクリル酸が特に好ましい。
【0158】
アルカリ可溶性樹脂は、着色層の密着性が優れる点から、更に炭化水素環を有することが好ましい。アルカリ可溶性樹脂に嵩高い基である、炭化水素環を有することにより硬化時の収縮が抑制され、基板との間の剥離が緩和し、基板密着性が向上する。また、本発明者らは、炭化水素環を有するアルカリ可溶性樹脂を用いることにより、得られた着色層の耐溶剤性、特に着色層の膨潤が抑制されるとの知見を得た。作用については未解明であるが、着色層内に嵩高い炭化水素環が含まれることにより、着色層内における分子の動きが抑制される結果、塗膜の強度が高くなり溶剤による膨潤が抑制されるものと推定される。
このような炭化水素環としては、置換基を有していてもよい環状の脂肪族炭化水素環、置換基を有していてもよい芳香族環、及びこれらの組み合わせが挙げられ、炭化水素環がカルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、アミド基等の置換基を有していてもよい。中でも、脂肪族環を含む場合には、着色層の耐熱性や密着性が向上すると共に、得られた着色層の輝度が向上する。
炭化水素環の具体例としては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ノルボルナン、トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカン(ジシクロペンタン)、アダマンタン等の脂肪族炭化水素環;ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、フルオレン等の芳香族環;ビフェニル、ターフェニル、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、スチルベン等の鎖状多環や、下記化学式(5)に示されるカルド構造等が挙げられる。
【0160】
炭化水素環として、脂肪族環を含む場合には、着色層の耐熱性や密着性が向上すると共に、得られた着色層の輝度が向上する点から好ましい。
また、前記化学式(5)に示されるカルド構造を含む場合には、着色層の硬化性が向上し、耐溶剤性(NMP膨潤抑制)が向上する点から特に好ましい。
【0161】
本発明で用いられるアルカリ可溶性樹脂において、カルボキシル基を有する構成単位とは別に、上記炭化水素環を有する構成単位を有するアクリル系共重合体を用いることが、各構成単位量を調整しやすく、上記炭化水素環を有する構成単位量を増加して当該構成単位が有する機能を向上させやすい点から好ましい。
カルボキシルを有する構成単位と、上記炭化水素環とを有するアクリル系共重合体は、前述の“共重合可能なその他のモノマー”として炭化水素環を有するエチレン性不飽和モノマーを用いることにより調製することができる。
炭化水素環を有するエチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、スチレンなどが挙げられる。
【0162】
本発明で用いられるその他のアルカリ可溶性樹脂はまた、硬化膜の膜強度が向上して現像耐性が向上し、また、硬化膜の熱収縮が抑制されて基板との密着性に優れる点から、エチレン性二重結合を有することが好ましい。エチレン性二重結合を有する場合には、カラーフィルタ製造時における樹脂組成物の硬化工程において、当該アルカリ可溶性樹脂同士、乃至、当該アルカリ可溶性樹脂と多官能モノマー等が架橋結合を形成し得る。その結果、着色層の硬化膜の膜強度が向上して、硬化膜の熱収縮が抑制されて基板との密着性に優れるものと推定される。
アルカリ可溶性樹脂中に、エチレン性二重結合を導入する方法は、従来公知の方法から適宜選択すればよい。例えば、アルカリ可溶性樹脂が有するカルボキシル基に、分子内にエポキシ基とエチレン性二重結合とを併せ持つ化合物、例えばグリシジル(メタ)アクリレート等を付加させ、側鎖にエチレン性二重結合を導入する方法や、水酸基を有する構成単位を共重合体に導入しておいて、分子内にイソシアネート基とエチレン性二重結合とを備えた化合物を付加させ、側鎖にエチレン性二重結合を導入する方法などが挙げられる。
【0163】
本発明のアルカリ可溶性樹脂は、更にメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等、エステル基を有する構成単位等の他の構成単位を含有していてもよい。エステル基を有する構成単位は、カラーフィルタ用着色樹脂組成物のアルカリ可溶性を抑制する成分として機能するだけでなく、溶剤に対する溶解性、さらには溶剤再溶解性を向上させる成分としても機能する。
【0164】
本発明におけるアルカリ可溶性樹脂は、カルボキシル基を有する構成単位と、炭化水素環を有する構成単位とを有するアクリル系共重合体及びスチレン−アクリル系共重合体等のアクリル系樹脂であることが好ましく、カルボキシル基を有する構成単位と、炭化水素環を有する構成単位と、エチレン性二重結合を有する構成単位とを有するアクリル系共重合体及びスチレン−アクリル系共重合体等のアクリル系樹脂であることがより好ましい。
【0165】
アルカリ可溶性樹脂は、各構成単位の仕込み量を適宜調整することにより、所望の性能を有するアルカリ可溶性樹脂とすることができる。
【0166】
カルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマーの仕込み量は、良好なパターンが得られる点から、モノマー全量に対して5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。一方、現像後のパターン表面の膜荒れ等を抑制する点から、カルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマーの仕込み量は、モノマー全量に対して50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。
カルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマーの割合が5質量%未満では、得られる塗膜のアルカリ現像液に対する溶解性が低下し、本願発明の効果を損ねる恐れがある。また、カルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマーの割合が50質量%を超えると、アルカリ現像液による現像時に、形成されたパターンの基板からの脱落やパターン表面の膜荒れを来たしやすくなる傾向がある。
【0167】
また、アルカリ可溶性樹脂として好ましく用いられる、カルボキシル基を有する構成単位と、炭化水素環を有する構成単位とを有するアクリル系共重合体及びスチレン−アクリル系共重合体等のアクリル系樹脂において、カルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマーの仕込み量は、モノマー全量に対して5質量%〜50質量%であることが好ましく、10質量%〜40質量%であることがより好ましい。また、当該アクリル系樹脂において、炭化水素環基含有エチレン性不飽和モノマーの仕込み量は、モノマー全量に対して30質量%〜80質量%であることが好ましく、40質量%〜75質量%であることがより好ましい。
【0168】
また、アルカリ可溶性樹脂としてより好ましく用いられる、カルボキシル基を有する構成単位と、炭化水素環を有する構成単位と、エチレン性二重結合を有する構成単位とを有するアクリル系共重合体及びスチレン−アクリル系共重合体等のアクリル系樹脂において、カルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマーに分子内にエポキシ基とエチレン性二重結合とを併せ持つ化合物を付加して、エチレン性二重結合を導入する場合には、カルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマーの仕込み量は、モノマー全量に対して5質量%〜50質量%であることが好ましく、10質量%〜40質量%であることがより好ましい。当該アクリル系樹脂において、炭化水素環基含有エチレン性不飽和モノマーの仕込み量は、モノマー全量に対して30質量%〜80質量%であることが好ましく、40質量%〜75質量%であることがより好ましい。また、当該アクリル系樹脂において、エポキシ基とエチレン性二重結合とを併せ持つ化合物はカルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマーの仕込み量に対して、10質量%〜95質量%であることが好ましく、15質量%〜90質量%であることがより好ましい。
アクリル系樹脂がカルボキシル基と炭化水素環とを有する構成単位を有する場合、当該構成単位は、カルボキシル基を有する構成単位、炭化水素環を有する構成単位の各々に含まれるものとする。
【0169】
前記その他のアルカリ可溶性樹脂は、現像液に用いるアルカリ水溶液に対する現像性(溶解性)の点から、酸価が50mgKOH/g以上のものを選択して用いることが好ましい。前記その他のアルカリ可溶性樹脂は、現像液に用いるアルカリ水溶液に対する現像性(溶解性)の点、及び基板への密着性の点から、酸価が80mgKOH/g以上300mgKOH/g以下であることが好ましく、中でも、90mgKOH/g以上280mgKOH/g以下であることが好ましく、100mgKOH/g以上250mgKOH/g以下であることがより好ましい。酸価が100mgKOH/g以上のアルカリ可溶性樹脂は、レーキ色材と組み合わせると耐熱性を向上させ、着色層の輝度を向上する点から好ましい。また、金属レーキ色材として、酸性染料の金属レーキ色材とを組み合わせて用いる場合には、耐熱性が向上する点から、酸価が90mgKOH/g以上のアルカリ可溶性樹脂を用いることが好ましい。
酸価が上記下限値以上のアルカリ可溶性樹脂は、前記一般式(I)で表される色材の分子会合体表面付近に存在しているアニオンが有する塩基性基と相互作用しやすく、その結果、アルカリ可溶性樹脂が前記分子会合体表面に吸着しやすいものと推定される。当該アルカリ可溶性樹脂は比較的酸価が高いため一旦吸着すると、高温加熱時においても解離しにくく、色材の分解などをより抑制でき、輝度の低下が抑制されて、耐熱性が格段に向上するものと推定される。
【0170】
アルカリ可溶性樹脂の側鎖にエチレン性不飽和基を有する場合のエチレン性不飽和結合当量は、100〜2000の範囲であることが好ましく、特に、140〜1500の範囲であることが好ましい。該エチレン性不飽和結合当量が、2000以下であれば現像耐性や密着性に優れている。また、100以上であれば、前記カルボキシル基を有する構成単位や、炭化水素環を有する構成単位などの他の構成単位の割合を相対的に増やすことができるため、現像性や耐熱性に優れている。
ここで、エチレン性不飽和結合当量とは、上記アルカリ可溶性樹脂におけるエチレン性不飽和結合1モル当りの重量平均分子量のことであり、下記数式(1)で表される。
【0171】
【数1】
(数式(1)中、Wは、アルカリ可溶性樹脂の質量(g)を表し、Mはアルカリ可溶性樹脂W(g)中に含まれるエチレン性二重結合のモル数(mol)を表す。)
【0172】
上記エチレン性不飽和結合当量は、例えば、JIS K 0070:1992に記載のよう素価の試験方法に準拠して、アルカリ可溶性樹脂1gあたりに含まれるエチレン性二重結合の数を測定することにより算出してもよい。
【0173】
アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は特に限定されない。中でも好ましくは1,000〜500,000の範囲であり、さらに好ましくは3,000〜200,000である。1,000未満では硬化後のバインダー機能が著しく低下し、500,000を超えるとアルカリ現像液による現像時に、パターン形成が困難となる場合がある。
【0174】
[多官能モノマー]
本発明のカラーフィルタ用着色樹脂組成物において用いられる多官能モノマーは、後述する開始剤によって重合可能なものであればよく、特に限定されず、通常、エチレン性不飽和二重結合を2つ以上有する化合物が用いられ、特にアクリロイル基又はメタクリロイル基を2つ以上有する、多官能(メタ)アクリレートであることが好ましく、更に、三官能以上の多官能(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0175】
多官能(メタ)アクリレートのうち、三官能以上の多官能(メタ)アクリレートとしては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、無水コハク酸変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、リン酸トリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カルボン酸変性ジペンタエリストールペンタ(メタ)アクリレート、無水コハク酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ウレタントリ(メタ)アクリレート、エステルトリ(メタ)アクリレート、ウレタンヘキサ(メタ)アクリレート、エステルヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0176】
本発明においては、光硬化性(高感度)を向上する点で、多官能モノマーが、重合可能な二重結合を3つ(三官能)以上有するものであるものが好ましく、例えば3価以上の多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート類が好適に挙げられる。また、本発明においては、アルカリ現像性を向上する点から、多官能モノマーがカルボキシル基を有することが好ましい。カルボキシル基を有する多官能モノマーとしては、例えば、前記多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート類のカルボン酸変性物等が挙げられる。
多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート類の具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート類のカルボン酸変性物としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートのコハク酸変性物、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートのコハク酸変性物等が挙げられる。
これらの多官能モノマーは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。例えば、カルボキシル基を有する多官能モノマーと、カルボキシル基を有しない多官能モノマーを組み合わせて用いてもよい。耐熱性及び密着性を向上する点からカルボキシル基を有しているペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートのコハク酸変性物、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートのコハク酸変性物が好ましい。
このような多官能モノマーは、適宜市販品を用いてもよく、例えば、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートのコハク酸変性物を含む市販品として、商品名M−520D、TO−2371(東亞合成(株)社製)等が挙げられる。
【0177】
[開始剤]
本発明のカラーフィルタ用着色樹脂組成物において用いられる開始剤としては、特に制限はなく、従来知られている各種開始剤の中から、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0178】
開始剤としては、芳香族ケトン類、ベンゾインエーテル類、ハロメチルオキサジアゾール化合物、α−アミノケトン、ビイミダゾール類、N,N−ジメチルアミノベンゾフェノン、ハロメチル−S−トリアジン系化合物、チオキサントン等を挙げることができる。開始剤の具体例としては、ベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン等の芳香族ケトン類、ベンゾインメチルエーテル等のベンゾインエーテル類、エチルベンゾイン等のベンゾイン、2−(o−クロロフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール2量体等のビイミダゾール類、2−トリクロロメチル−5−(p−メトキシスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール等のハロメチルオキサジアゾール化合物、2−(4−ブトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−S−トリアジン等のハロメチル−S−トリアジン系化合物、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパノン、1,2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1,1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、ベンジル、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、ベンジルメチルケタール、ジメチルアミノベンゾエート、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、2−n−ブトキシエチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、4−ベンゾイル−メチルジフェニルサルファイド、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルフォリニル)フェニル]−1−ブタノン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルフォリニル)フェニル]−1−ブタノン、α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキサイド、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−(4−モルフォリニル)−1−プロパノンなどが挙げられる。
中でも、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、ジエチルチオキサントンが好ましく用いられる。更に2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オンのようなα−アミノアセトフェノン系開始剤とジエチルチオキサントンのようなチオキサン系開始剤を組み合わせることが感度調整、水染みを抑制し、現像耐性が向上する点から好ましい。
α−アミノアセトフェノン系開始剤とチオキサン系開始剤を用いる場合のこれらの合計含有量は、着色樹脂組成物の固形分全量に対して、5質量%〜15質量%が好ましい。開始剤量が15質量%以下だと製造プロセス中の昇華物が低減するため好ましい。開始剤量が5質量%以上であると水染み等、現像耐性が向上する。
【0179】
本発明において、開始剤は、中でも、水染み発生抑制効果が高い点から、オキシムエステル系光開始剤を含むことが好ましい。
当該オキシムエステル系光開始剤としては、分解物によるカラーフィルタ用着色樹脂組成物の汚染や装置の汚染を低減する点から、中でも、芳香環を有するものが好ましく、芳香環を含む縮合環を有するものがより好ましく、ベンゼン環とヘテロ環を含む縮合環を有することがさらに好ましい。
オキシムエステル系光開始剤としては、1,2−オクタジオン−1−[4−(フェニルチオ)−、2−(o−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(o−アセチルオキシム)、特開2000−80068号公報、特開2001−233842号公報、特表2010−527339、特表2010−527338、特開2013−041153等に記載のオキシムエステル系光開始剤の中から適宜選択できる。市販品として、イルガキュアOXE−01、イルガキュアOXE−02、イルガキュアOXE−03(以上、BASF社製)、ADEKA OPT−N−1919、アデカアークルズNCI−930、アデカアークルズNCI−831(以上、ADEKA社製)、TR−PBG−304、TR−PBG−326、TR−PBG−345、TR−PBG−3057(以上、常州強力電子新材料社製)などを用いても良い。
【0180】
本発明に用いられる当該オキシムエステル系光開始剤としては、中でもアリールラジカル、特にフェニルラジカルを発生するオキシムエステル系光開始剤を用いることが好ましく、更にアルキルラジカル、特にメチルラジカルを発生するオキシムエステル系光開始剤を用いることが、耐溶剤性、現像耐性、及び水染み発生抑制効果が優れる点から好ましい。アルキルラジカルは、アリールラジカルと比べてラジカル移動が活性化し易いことが推定される。アルキルラジカルを発生するオキシムエステル系光開始剤としては、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(o−アセチルオキシム)(商品名:イルガキュアOXE−02、BASF製)、メタノン,[8−[[(アセチルオキシ)イミノ][2−(2,2,3,3−テトラフルオロプロポキシ)フェニル]メチル]−11−(2−エチルヘキシル)−11H−ベンゾ[a]カルバゾール−5−イル]−,(2,4,6−トリメチルフェニル)(商品名:イルガキュアOXE−03、BASF製)、エタノン,1−[9−エチル−6−(1,3−ジオキソラン,4−(2−メトキシフェノキシ)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(o−アセチルオキシム)(商品名ADEKA OPT−N−1919、ADEKA社製)、メタノン,(9−エチル−6−ニトロ−9H−カルバゾール−3−イル)[4−(2−メトキシ−1−メチルエトキシ−2−メチルフェニル]−,o−アセチルオキシム(商品名アデカアークルズNCI−831、ADEKA社製)、1−プロパノン,3−シクロペンチル−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(o−アセチルオキシム)(商品名TR−PBG−304、常州強力電子新材料社製)、1−プロパノン,3−シクロペンチル−1−[2−(2−ピリミジニルチオ)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(o−アセチルオキシム)(商品名TR−PBG−314、常州強力電子新材料社製)、エタノン,2−シクロヘキシル−1−[2−(2−ピリミジニルオキシ)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(o−アセチルオキシム)(商品名TR−PBG−326、常州強力電子新材料社製)、エタノン,2−シクロヘキシル−1−[2−(2−ピリミジニルチオ)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(o−アセチルオキシム)(商品名TR−PBG−331、常州強力電子新材料社製)、1−オクタノン,1−[4−[3−[1−[(アセチルオキシ)イミノ]エチル]−6−[4−[(4,6−ジメチル−2−ピリミジニル)チオ]−2−メチルベンゾイル]−9H−カルバゾール−9−イル]フェニル]−,1−(o−アセチルオキシム)(商品名:EXTA−9、ユニオンケミカル製)等が挙げられる。
【0181】
また、オキシムエステル系光開始剤に、3級アミン構造を有する光開始剤を組み合わせて用いることが、水染みを抑制し、また、感度向上の点から、好ましい。3級アミン構造を有する光開始剤は、分子内に酸素クエンチャーである3級アミン構造を有するため、開始剤から発生したラジカルが酸素により失活し難く、感度を向上させることができるからである。上記3級アミン構造を有する光開始剤の市販品としては、例えば、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(例えばイルガキュア907、BASF社製)、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン(例えばイルガキュア369、BASF社製)、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(例えば、ハイキュアABP、川口薬品製)などが挙げられる。
【0182】
本発明において開始剤は、オキシムエステル系光開始剤を用いることが好ましく、中でも、アルキルラジカル系オキシムエステル化合物を含むことが好ましい。
アルキルラジカル系オキシムエステル化合物と、α−アミノアルキルフェノン系開始剤とを組み合わせた場合には、水染み抑制効果に優れた塗膜を得ることができ、感度の調節も容易となる。
また、アルキルラジカル系オキシムエステル化合物と、アリールラジカル系オキシムエステル化合物とを組み合わせて用いた場合、少ない開始剤量で耐溶剤性と水染み抑制に特に優れた塗膜を得ることができ、感度の調節も容易となる。
アルキルラジカル系オキシムエステル化合物を用いる場合の含有量としては、着色樹脂組成物の固形分全量に対して、2質量%〜7質量%が好ましい。開始剤量が7質量未満であれば、マスク開口に対してパターンが太くなり過ぎないため好ましい。開始剤量が2質量%以上であれば耐溶剤性が良好となる。
【0183】
<任意添加成分>
本発明の着色樹脂組成物には、本発明の効果が損なわれない範囲で、必要に応じて各種添加剤を含むものであってもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、重合停止剤、連鎖移動剤、レベリング剤、可塑剤、界面活性剤、消泡剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、密着促進剤等などが挙げられる。また、アルカリ可溶性を有しない樹脂を更に含んでいても良い。
【0184】
(酸化防止剤)
本発明の着色樹脂組成物は、耐熱性及び耐光性の点から酸化防止剤を含有することが好ましい。酸化防止剤は従来公知のものの中から適宜選択すればよい。酸化防止剤の具体例としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ヒドラジン系酸化防止剤等が挙げられ、耐熱性の、耐光性の点から、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を用いることが好ましい。
【0185】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、ペンタエリトリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート](商品名:商品名:IRGANOX1010、BASF社製)、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート(商品名:イルガノックス3114、BASF製)、2,4,6−トリス(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルベンジル)メシチレン(商品名:イルガノックス1330、BASF製)、2,2’−メチレンビス(6−tert−ブチル−4−メチルフェノール)(商品名:スミライザーMDP−S、住友化学製)、6,6’−チオビス(2−tert−ブチル−4−メチルフェノール)(商品名:イルガノックス1081、BASF製)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチル(商品名:イルガモド195、BASF製)等が挙げられる。中でも、耐熱性及び耐光性の点から、ペンタエリトリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート](商品名:商品名:IRGANOX1010、BASF社製)が好ましい。
【0186】
酸化防止剤を用いる場合、その含有量は、本発明の効果が損なわれない範囲であれば特に限定されない。酸化防止剤の含有量としては、着色樹脂組成物中の全固形分100質量部に対して、酸化防止剤が0.1質量部〜5.0質量部であることが好ましく、0.5質量部〜4.0質量部であることがより好ましい。上記下限値以上であれば、耐熱性及び耐光性に優れている。一方、上記上限値以下であれば、本発明の着色樹脂組成物を高感度の感光性樹脂組成物とすることができる。
【0187】
<着色樹脂組成物における各成分の配合割合>
色材の合計の含有量は、着色樹脂組成物の固形分全量に対して、3質量%〜65質量%、より好ましくは4質量%〜55質量%の割合で配合することが好ましい。上記下限値以上であれば、着色樹脂組成物を所定の膜厚(通常は1.0〜5.0μm)に塗布した際の着色層が充分な色濃度を有する。また、上記上限値以下であれば、分散性及び分散安定性に優れると共に、充分な硬度や、基板との密着性を有する着色層を得ることができる。
また、分散剤の含有量としては、色材を均一に分散することができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、着色樹脂組成物の固形分全量に対して3質量%〜40質量%用いることができる。更に、着色樹脂組成物の固形分全量に対して5質量%〜35質量%が好ましく、特に5質量%〜25質量%がより好ましい。上記下限値以上であれば、色材の分散性及び分散安定性に優れ、コントラストを向上し、粘度の経時安定性に優れている。また、上記上限値以下であれば、着色層の輝度が良好なものとなる。
【0188】
本発明で用いられるポリアミドイミド樹脂の含有量としては、本発明の効果が損なわれない限り特に制限されないが、着色樹脂組成物の固形分全量に対して、5質量%〜60質量%の範囲内とすることが好ましく、さらに10質量%〜40質量%の範囲内とすることが好ましい。ポリアミドイミド樹脂の含有量が上記下限値よりも少ないと、充分なアルカリ現像性が得られない場合があり、また、ポリアミドイミド樹脂の含有量が上記上限値よりも多いと、現像時に膜荒れやパターンの欠けが発生する場合がある。
本発明において、前記特定のポリアミドイミド樹脂とは異なるその他のアルカリ可溶性樹脂が用いられる場合、アルカリ可溶性樹脂の合計量(前記特定のポリアミドイミド樹脂と、前記特定のポリアミドイミド樹脂とは異なるその他のアルカリ可溶性樹脂の合計量)が、着色樹脂組成物の固形分全量に対して、5質量%〜60質量%の範囲内とすることが好ましく、さらに10質量%〜40質量%の範囲内とすることが好ましい。
本発明において、前記特定のポリアミドイミド樹脂とは異なるその他のアルカリ可溶性樹脂が用いられる場合、本発明の効果の点から、アルカリ可溶性樹脂の合計量(前記特定のポリアミドイミド樹脂と、前記特定のポリアミドイミド樹脂とは異なるその他のアルカリ可溶性樹脂の合計量)に対して、前記特定のポリアミドイミド樹脂を35質量%以上とすることが好ましく、更に50質量%以上とすることが好ましい。
【0189】
本発明のカラーフィルタ用着色樹脂組成物において上記多官能モノマーを用いる場合の上記多官能モノマーの含有量は、特に制限はないが、着色樹脂組成物の固形分全量に対する多官能モノマーの含有量は、5質量%〜60質量%が好ましく、10質量%〜40質量%がより好ましい。多官能モノマーの含有量が上記範囲より少ないと十分に光硬化が進まず、露光部分が溶出する場合があり、また、多官能モノマーの含有量が上記範囲より多いとアルカリ現像性が低下するおそれがある。
本発明の着色樹脂組成物において上記開始剤を用いる場合の上記開始剤の含有量は、特に制限はないが、着色樹脂組成物の固形分全量に対して、1質量%〜40質量%が好ましく、2質量%〜30質量%がより好まく、3質量%〜20質量%が特に好ましい。この含有量が上記範囲より少ないと十分に重合反応を生じさせることができないため、着色層の硬度を十分なものとすることができない場合があり、一方上記範囲より多いと、着色樹脂組成物の固形分中の色材等の含有量が相対的に少なくなり、十分な着色濃度が得られない場合がある。
【0190】
アルカリ可溶性樹脂と多官能モノマーと、開始剤との合計の含有量は、着色樹脂組成物の固形分全量に対して10質量%〜92質量%、好ましくは15質量%〜87質量%の割合で配合するのが好ましい。上記下限値以上であれば、充分な硬度や、基板との密着性を有する着色層を得ることができる。また上記上限値以下であれば、現像性に優れたり、熱収縮による微小なシワの発生も抑制される。
また、溶剤の含有量は、着色層を精度良く形成することができる範囲で適宜設定すればよい。当該溶剤を含む上記着色樹脂組成物の全量に対して、通常、55質量%〜95質量%の範囲内であることが好ましく、中でも、65質量%〜88質量%の範囲内であることがより好ましい。上記溶剤の含有量が、上記範囲内であることにより、塗布性に優れたものとすることができる。
尚、本発明において固形分は、上述した溶剤以外のもの全てであり、液状の多官能モノマー等も含まれる。
【0191】
<カラーフィルタ用着色樹脂組成物の製造方法>
本発明のカラーフィルタ用着色樹脂組成物の製造方法は、色材と、分散剤と、前記ポリアミドイミド樹脂と、溶剤と、多官能モノマーと開始剤等の所望により用いられる各種添加成分とを含有し、色材が分散剤により溶剤中に均一に分散されうる方法であればよく、公知の混合手段を用いて混合することにより、調製することができる。
当該樹脂組成物の調製方法としては、例えば、(1)まず溶剤中に、色材と、分散剤とを添加して色材分散液を調製し、当該分散液に、前記ポリアミドイミド樹脂と、多官能モノマーと開始剤等の所望により用いられる各種添加成分を混合する方法;(2)溶剤中に、色材と、分散剤と、前記ポリアミドイミド樹脂と、多官能モノマーと開始剤等の所望により用いられる各種添加成分とを同時に投入し混合する方法;(3)溶剤中に、分散剤と、前記ポリアミドイミド樹脂と、多官能モノマーと開始剤等の所望により用いられる各種添加成分とを添加し、混合したのち、色材を加えて分散する方法;(4)溶剤中に、色材と、分散剤と、その他のアルカリ可溶性樹脂とを添加して色材分散液を調製し、当該分散液に、更に前記ポリアミドイミド樹脂と、溶剤と、多官能モノマーと開始剤等の所望により用いられる各種添加成分を添加し、混合する方法;などを挙げることができる。
これらの方法の中で、上記(1)及び(4)の方法が、色材の凝集を効果的に防ぎ、均一に分散させ得る点から好ましい。上記(4)の方法によりアクリル系樹脂などのその他のアルカリ可溶性樹脂を添加する場合には、着色樹脂組成物の経時安定性と溶剤再溶解性が向上する効果が高くなる点から好ましい。
【0192】
色材分散液を調製する方法は、従来公知の分散方法の中から適宜選択して用いることができる。例えば、(1)予め、分散剤を溶剤に混合、撹拌し、分散剤溶液を調製し、次いで必要に応じて有機酸化合物を混合して分散剤が有するアミノ基と有機酸化合物との塩形成させる。これを色材と必要に応じてその他の成分を混合し、公知の攪拌機または分散機を用いて分散させる方法;(2)分散剤を溶剤に混合、撹拌し、分散剤溶液を調製し、次いで、色材及び必要に応じて有機酸化合物と、更に必要に応じてその他の成分を混合し、公知の攪拌機または分散機を用いて分散させる方法;(3)分散剤を溶剤に混合、攪拌し、分散剤溶液を調整し、次いで、色材及び必要に応じてその他の成分を混合し、公知の攪拌機または分散機を用いて分散液としたのちに、必要に応じて有機酸化合物を添加する方法などが挙げられる。
本発明においては、上記(1)の方法とすることが、色材の分散安定性の点から好ましい。
【0193】
分散処理を行うための分散機としては、2本ロール、3本ロール等のロールミル、ボールミル、振動ボールミル等のボールミル、ペイントコンディショナー、連続ディスク型ビーズミル、連続アニュラー型ビーズミル等のビーズミルが挙げられる。ビーズミルの好ましい分散条件として、使用するビーズ径は0.03mm〜2.00mmが好ましく、より好ましくは0.10mm〜1.0mmである。
【0194】
具体的には、ビーズ径が比較的大きめな2mmジルコニアビーズで予備分散を行い、更にビーズ径が比較的小さめな0.1mmジルコニアビーズで本分散することが挙げられる。また、分散後、0.5μm〜2μmのメンブランフィルターで濾過することが好ましい。
【0195】
2.カラーフィルタ
本発明に係るカラーフィルタは、透明基板と、当該透明基板上に設けられた着色層とを少なくとも備えるカラーフィルタであって、当該着色層の少なくとも1つが、前記本発明に係るカラーフィルタ用着色樹脂組成物の硬化物からなる着色層を有する。
【0196】
このような本発明に係るカラーフィルタについて、図を参照しながら説明する。
図1は、本発明のカラーフィルタの一例を示す概略断面図である。
図1によれば、本発明のカラーフィルタ10は、透明基板1と、遮光部2と、着色層3とを有している。
【0197】
(着色層)
本発明のカラーフィルタに用いられる着色層は、少なくとも1つが、前記本発明に係るカラーフィルタ用着色樹脂組成物の硬化物からなる着色層である。
着色層は、通常、後述する透明基板上の遮光部の開口部に形成され、通常3色以上の着色パターンから構成される。
また、当該着色層の配列としては、特に限定されず、例えば、ストライプ型、モザイク型、トライアングル型、4画素配置型等の一般的な配列とすることができる。また、着色層の幅、面積等は任意に設定することができる。
当該着色層の厚みは、塗布方法、着色樹脂組成物の固形分濃度や粘度等を調整することにより、適宜制御されるが、通常、1μm〜5μmの範囲であることが好ましい。
【0198】
当該着色層は、例えば、着色樹脂組成物が感光性樹脂組成物の場合、下記の方法により形成することができる。
まず、前述した本発明のカラーフィルタ用着色樹脂組成物を、スプレーコート法、ディップコート法、バーコート法、ロールコート法、スピンコート法、ダイコート法などの塗布手段を用いて後述する透明基板上に塗布して、ウェット塗膜を形成させる。
次いで、ホットプレートやオーブンなどを用いて、該ウェット塗膜を乾燥させたのち、これに、所定のパターンのマスクを介して露光し、アルカリ可溶性樹脂及び多官能モノマー等を光重合反応させて、感光性の塗膜とする。露光に使用される光源としては、例えば低圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプなどの紫外線、電子線等が挙げられる。露光量は、使用する光源や塗膜の厚みなどによって適宜調整される。
また、露光後に重合反応を促進させるために、加熱処理を行ってもよい。加熱条件は、使用する着色樹脂組成物中の各成分の配合割合や、塗膜の厚み等によって適宜選択される。
【0199】
次に、現像液を用いて現像処理し、未露光部分を溶解、除去することにより、所望のパターンで塗膜が形成される。現像液としては、通常、水や水溶性溶剤にアルカリを溶解させた溶液が用いられる。このアルカリ溶液には、界面活性剤などを適量添加してもよい。また、現像方法は一般的な方法を採用することができる。
現像処理後は、通常、現像液の洗浄、着色樹脂組成物の硬化塗膜の乾燥が行われ、着色層が形成される。なお、現像処理後に、塗膜を十分に硬化させるために加熱処理を行ってもよい。加熱条件としては特に限定はなく、塗膜の用途に応じて適宜選択される。
【0200】
カラーフィルタの着色層の色度は、光源等に応じて適宜調整すればよく、特に限定されないが、例えば、青色着色層の場合、C光源における色度(x、y)において、xが0.12〜0.27、yが0.04〜0.18の範囲内であることが好ましい。
【0201】
(遮光部)
本発明のカラーフィルタにおける遮光部は、後述する透明基板上にパターン状に形成されるものであって、一般的なカラーフィルタに遮光部として用いられるものと同様とすることができる。
当該遮光部のパターン形状としては、特に限定されず、例えば、ストライプ状、マトリクス状等の形状が挙げられる。この遮光部としては、例えば、黒色顔料をバインダー樹脂中に分散又は溶解させたものや、クロム、酸化クロム等の金属薄膜等が挙げられる。この金属薄膜は、CrO
x膜(xは任意の数)及びCr膜が2層積層されたものであってもよく、また、より反射率を低減させたCrO
x膜(xは任意の数)、CrN
y膜(yは任意の数)及びCr膜が3層積層されたものであってもよい。
当該遮光部が黒色色材をバインダー樹脂中に分散又は溶解させたものである場合、この遮光部の形成方法としては、遮光部をパターニングすることができる方法であればよく、特に限定されず、例えば、遮光部用着色樹脂組成物を用いたフォトリソグラフィー法、印刷法、インクジェット法等を挙げることができる。
パターン状の遮光部は、例えば、前記着色層の形成と同様の方法で形成することができる。
【0202】
遮光部の膜厚としては、金属薄膜の場合は0.2μm〜0.4μm程度で設定され、黒色色材をバインダー樹脂中に分散又は溶解させたものである場合は0.5μm〜2μm程度で設定される。
【0203】
(透明基板)
本発明のカラーフィルタにおける透明基板としては、可視光に対して透明な基材であればよく、特に限定されず、一般的なカラーフィルタに用いられる透明基板を使用することができる。具体的には、石英ガラス、無アルカリガラス、合成石英板等の可撓性のない透明なリジッド材、あるいは、透明樹脂フィルム、光学用樹脂板、フレキシブルガラス等の可撓性を有する透明なフレキシブル材が挙げられる。
当該透明基板の厚みは、特に限定されるものではないが、本発明のカラーフィルタの用途に応じて、例えば100μm〜1mm程度のものを使用することができる。
なお、本発明のカラーフィルタは、上記透明基板、遮光部及び着色層以外にも、例えば、オーバーコート層や透明電極層、さらには配向膜や配向突起、柱状スペーサ等が形成されたものであってもよい。
【0204】
3.表示装置
本発明に係る表示装置は、前記本発明に係るカラーフィルタを有することを特徴とする。本発明において表示装置の構成は特に限定されず、従来公知の表示装置の中から適宜選択することができ、例えば、液晶表示装置や、有機発光表示装置などが挙げられる。
【0205】
[液晶表示装置]
液晶表示装置は、前述した本発明に係るカラーフィルタと、対向基板と、前記カラーフィルタと前記対向基板との間に形成された液晶層とを有することを特徴とする。
このような本発明の液晶表示装置について、図を参照しながら説明する。
図2は、液晶表示装置の一例を示す概略図である。
図2に例示するように液晶表示装置40は、カラーフィルタ10と、TFTアレイ基板等を有する対向基板20と、上記カラーフィルタ10と上記対向基板20との間に形成された液晶層30とを有している。
なお、本発明の液晶表示装置は、この
図2に示される構成に限定されるものではなく、一般的にカラーフィルタが用いられた液晶表示装置として公知の構成とすることができる。
【0206】
本発明の液晶表示装置の駆動方式としては、特に限定はなく一般的に液晶表示装置に用いられている駆動方式を採用することができる。このような駆動方式としては、例えば、TN方式、IPS方式、OCB方式、及びMVA方式等を挙げることができる。本発明においてはこれらのいずれの方式であっても好適に用いることができる。
また、対向基板としては、本発明の液晶表示装置の駆動方式等に応じて適宜選択して用いることができる。
さらに、液晶層を構成する液晶としては、本発明の液晶表示装置の駆動方式等に応じて、誘電異方性の異なる各種液晶、及びこれらの混合物を用いることができる。
【0207】
液晶層の形成方法としては、一般に液晶セルの作製方法として用いられる方法を使用することができ、例えば、真空注入方式や液晶滴下方式等が挙げられる。
【0208】
[有機発光表示装置]
有機発光表示装置は、前述した本発明に係るカラーフィルタと、有機発光体とを有することを特徴とする。
このような有機発光表示装置について、図を参照しながら説明する。
図3は、有機発光表示装置の一例を示す概略断面図である。
図3に例示するように本発明の有機発光表示装置100は、カラーフィルタ10と、有機発光体80とを有している。カラーフィルタ10と、有機発光体80との間に、有機保護層50や無機酸化膜60を有していても良い。
【0209】
有機発光体80の積層方法としては、例えば、カラーフィルタ上面へ透明陽極71、正孔注入層72、正孔輸送層73、発光層74、電子注入層75、および陰極76を逐次形成していく方法や、別基板上へ形成した有機発光体80を無機酸化膜60上に貼り合わせる方法などが挙げられる。有機発光体80における、透明陽極71、正孔注入層72、正孔輸送層73、発光層74、電子注入層75、および陰極76、その他の構成は、公知のものを適宜用いることができる。このようにして作製された有機発光表示装置100は、例えば、パッシブ駆動方式の有機ELディスプレイにもアクティブ駆動方式の有機ELディスプレイにも適用可能である。
なお、本発明の有機発光表示装置は、この
図3に示される構成に限定されるものではなく、一般的にカラーフィルタが用いられた有機発光表示装置として公知の構成とすることができる。
【実施例】
【0210】
以下、本発明について実施例を示して具体的に説明する。これらの記載により本発明を制限するものではない。
【0211】
(合成例1:樹脂Aの合成)
撹拌装置、温度計、コンデンサーを付けたフラスコにPGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)1086質量部、IPDI3N(イソホロンジイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型トリイソシアネート:NCO%=17.2)587.3質量部(0.80モル部)およびシクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物499.1質量部(2.52モル部)を加え、140℃まで昇温した。反応は、発泡とともに進行した。この温度で8時間反応させた。系内は淡黄色の液体となり、赤外スペクトルにて特性吸収を測定した結果、イソシアネート基の特性吸収である2270cm
−1が完全に消滅し、1780cm
−1、1720cm
−1にイミド基の吸収が確認された。酸価は、固形分換算で212KOHmg/gで、分子量はポリスチレン換算で数平均分子量4700であった。酸無水物の濃度は、固形分換算で1.14mmol/gであった。また、樹脂分の濃度は47.4質量%であった。これを樹脂A溶液とした。
【0212】
(合成例2:樹脂Bの合成)
合成例1で得られた樹脂A溶液にn−ブタノール96.3質量部(1.3モル部)を加え、120℃にて5時間反応させた。赤外スペクトルにて特性吸収を測定した結果、酸無水物基の特性吸収である1860cm
−1の特性吸収が完全に消失した。酸価は、固形分換算で、148KOHmg/gで、分子量はポリスチレン換算で数平均分子量4800であった。また、樹脂分の濃度は49.2質量%であった。これを樹脂B溶液とした。
【0213】
(合成例3:樹脂Cの合成)
撹拌装置、温度計、コンデンサーを付けたフラスコにPGMEA 1569質量部、IPDI3N 959質量部(1.31モル部)および無水トリメリット酸791質量部(4.12モル部)を加え、140℃まで昇温した。反応は、発泡とともに進行した。この温度で8時間反応させた。系内は淡黄色の液体となり、赤外スペクトルにて特性吸収を測定した結果、イソシアネート基の特性吸収である2270cm
−1が完全に消滅し、1780cm
−1、1720cm
−1にイミド基の吸収が確認された。酸価は、固形分換算で185KOHmg/gで、分子量はポリスチレン換算で数平均分子量5700であった。酸無水物の濃度は、固形分換算で0.57mmol/gであった。また、樹脂分の濃度は50.2質量%であった。これを樹脂C溶液とした。
【0214】
(合成例4:樹脂Dの合成)
合成例3で得られた樹脂C溶液にn−ブタノール79.9質量部(1.08モル部)を加え、120℃にて5時間反応させた。赤外スペクトルにて特性吸収を測定した結果、酸無水物基の特性吸収である1860cm
−1の吸収が完全に消失した。酸価は、固形分換算で、153KOHmg/gで、分子量はポリスチレン換算で数平均分子量5800であった。また、樹脂分の濃度は51.1質量%であった。これを樹脂D溶液とした。
【0215】
(合成例5:樹脂Eの合成)
撹拌装置、温度計、コンデンサーを付けたフラスコにPGMEA1086質量部、IPDI3Nを587.3質量部(0.80モル部)およびシクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物499.1質量部(2.52モル部)を加え、140℃まで昇温した。反応は、発泡とともに進行した。この温度で8時間反応させた。系内は淡黄色の液体となり、赤外スペクトルにて特性吸収を測定した結果、イソシアネート基の特性吸収である2270cm-1が完全に消滅し、1780cm
−1、1720cm
−1にイミド基の吸収が確認された。
110℃まで降温した後、p−メトキシフェノール1.2質量部、メタクリル酸グリシジル(GMA)153.5質量部(1.08モル部)、トリエチルアミン9.6質量部を加え110℃で15時間付加反応させた。赤外スペクトルにて特性吸収を測定した結果、酸無水物基の特性吸収である1860cm
−1の吸収が完全に消失した。酸価は、固形分換算で、148KOHmg/gで、分子量はポリスチレン換算で数平均分子量5000であった。また、樹脂分の濃度は51.3質量%であった。これを樹脂E溶液とした。
【0216】
(合成例6:樹脂Fの合成)
重合槽に、PGMEAを150質量部仕込み、窒素雰囲気下で100℃に昇温した後、メタクリル酸(MAA)32質量部、メタクリル酸シクロヘキシル(CHMA)52質量部及びパーブチルO(日油株式会社製)6質量部、連鎖移動剤(n−ドデシルメルカプタン)2質量部を1.5時間かけて連続的に滴下した。その後、100℃を保持して反応を続け、上記主鎖形成用混合物の滴下終了から2時間後に重合禁止剤として、p−メトキシフェノール0.1質量部を添加して重合を停止した。
次に、空気を吹き込みながら、エポキシ基含有化合物としてメタクリル酸グリシジル(GMA)16質量部を添加して、110℃に昇温した後、トリエチルアミン0.8質量部を添加して110℃で15時間付加反応させ、樹脂F溶液(重量平均分子量(Mw)9,000、固形分換算で酸価145mgKOH/g、固形分40質量%)を得た。
なお、上記重量平均分子量は、ポリスチレンを標準物質とし、THFを溶離液としてショウデックスGPCシステム−21H(Shodex GPC System−21H)により測定した。
【0217】
(合成例7:樹脂Gの合成)
撹拌装置、温度計、コンデンサーを付けたフラスコにPGMEA1464質量部、IPDI(イソホロンジイソシアネート)888質量部(2モル部)、NBDI(ノルボルナンジイソシアネート)412質量部(2モル部)及び無水トリメリット酸960質量部(5モル部)を加え、130℃まで昇温した。反応は、発泡とともに進行した。この温度で4時間反応させた。系内は薄茶色のクリア液体となり、赤外スペクトルにて特性吸収を測定した結果、イソシアネート基の特性吸収である2270cm-1が完全に消滅し、725cm-1、1780cm-1、1720cm-1にイミド基の吸収が確認された。酸価は、固形分換算で90KOHmg/gで、分子量はポリスチレン換算で数平均分子量1500であった。また、樹脂分の濃度は59.7質量%であった。これを樹脂G溶液とした。
【0218】
(合成例8:樹脂Hの合成)
撹拌装置、温度計、コンデンサーを付けたフラスコにトリメリット酸無水物96.1質量部(0.5モル部)、シクロヘキサンジカルボン酸86.1質量部(0.5モル部)とイソホロンジイソシアネート222.2質量部(1モル部)、重合溶剤のジメチルイミダゾリジノン404.4質量部を仕込み、150℃に昇温して5時間反応させた後、100℃に冷却しながらグリシジルメタクリレート0.3モル部とジメチルイミダゾリジノンを加えて濃度を30質量%として、3時間反応を継続した。得られたポリマー溶液を室温まで冷却して、大量の水中に投入して凝固させ、水で十分洗浄した後乾燥して粉体を得た。得られた不飽和基含有ポリアミドイミド樹脂を濃度が10質量%となるようにトルエンとエタノールの等量混合溶剤に溶解し、これを樹脂H溶液とした。
【0219】
【表1】
また、市販品の、脂肪族カルボン酸含有ポリアミドイミド樹脂、商品名 EMG−1015(DIC株式会社製)を用意した。
【0220】
(合成例9:ブロック共重合体1の合成)
冷却管、添加用ロート、窒素用インレット、機械的攪拌機、デジタル温度計を備えた500mL丸底4口セパラブルフラスコにTHF250質量部、塩化リチウム0.6質量部を加え、充分に窒素置換を行った。反応フラスコを−60℃まで冷却した後、ブチルリチウム4.9質量部(15質量%ヘキサン溶液)、ジイソプロピルアミン1.1質量部、イソ酪酸メチル1.0質量部をシリンジを用いて注入した。Bブロック用モノマーのメタクリル酸1−エトキシエチル(EEMA)2.2質量部、メタクリル酸2−(トリメチルシリルオキシ)エチル(TMSMA) 29.1質量部、メタクリル酸2−エチルヘキシル(EHMA)12.8質量部、メタクリル酸n−ブチル(BMA)13.7質量部、メタクリル酸ベンジル(BzMA)9.5質量部、メタクリル酸メチル(MMA)17.5質量部を、添加用ロートを用いて60分かけて滴下した。30分後、Aブロック用モノマーであるメタクリル酸ジメチルアミノエチル(DMMA)26.7質量部を20分かけて滴下した。30分間反応させた後、メタノール1.5質量部を加えて反応を停止させた。得られた前駆体ブロック共重合体THF溶液はヘキサン中で再沈殿させ、濾過、真空乾燥により精製を行い、PGMEAで希釈し固形分30質量%溶液とした。水を32.5質量部加え、100℃に昇温し7時間反応させ、EEMA由来の構成単位を脱保護しメタクリル酸(MAA)由来の構成単位とし、TMSMA由来の構成単位を脱保護してメタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)由来の構成単位とした。得られたブロック共重合体PGMEA溶液はヘキサン中で再沈殿させ、濾過、真空乾燥により精製を行い、前記一般式(1)で表される構造を含むブロック共重合体1(酸価 8mgKOH/g、Tg38℃)を得た。このようにして得られたブロック共重合体1を、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)にて確認したところ、重量平均分子量Mwは7730であった。また、アミン価は95mgKOH/gであった。
【0221】
(合成例10:色材Aの合成)
(1)中間体1の合成
国際公開第2012/144521号に記載の中間体3及び中間体4の製造方法を参照して、下記化学式(1)で示される中間体1を15.9g(収率70%)得た。
得られた化合物は、下記の分析結果より目的の化合物であることを確認した。
・MS(ESI) (m/z):511(+)、2価
・元素分析値:CHN実測値 (78.13%、7.48%、7.78%);理論値(78.06%、7.75%、7.69%)
【0222】
【化19】
【0223】
(2)色材Aの合成
中間体1 5.00g(4.58mmol)を水300mlに加え、90℃で溶解させ中間体2溶液とした。次に日本無機化学工業製リンタングステン酸・n水和物 H
3[PW
12O
40]・nH
2O(n=30) 10.44g(3.05mmol)を水100mLに入れ、90℃で攪拌し、リンタングステン酸水溶液を調製した。先の中間体2溶液にリンタングステン酸水溶液を90℃で混合し、生成した沈殿物を濾取し、水で洗浄した。得られたケーキを乾燥して下記化学式(2)で表される色材Aを13.25g(収率98%)を得た。
得られた化合物は、下記の分析結果より目的の化合物であることを確認した。(モル比W/Mo=100/0)
・MS(ESI) (m/z):510(+)、2価
・元素分析値:CHN実測値 (41.55%、5.34%、4.32%);理論値(41.66%、5.17%、4.11%)
また、リンタングステン酸のポリ酸構造が色材Aとなった後も保たれていることを
31P−NMRにより確認した。
【0224】
【化20】
【0225】
(合成例11:色材Bの合成)
Acid Red 289 5.0gを水500mlに加え、80℃で溶解させ、染料溶液を調製した。ポリ塩化アルミニウム(「商品名:タキバイン#1500」多木化学社製、Al
2(OH)
5Cl、塩基度83.5質量%、アルミナ分として23.5質量%)3.85gを水200mlに入れ、80℃で攪拌し、ポリ塩化アルミニウム水溶液を調製した。調製したポリ塩化アルミニウム水溶液を、80℃で15分かけて前記染料溶液に滴下し、さらに80℃で1時間攪拌した。生成した沈殿物を濾取し、水で洗浄した。得られたケーキを乾燥してローダミン系酸性染料の金属レーキ色材Bを6.30g(収率 96.2%)を得た。
【0226】
(調製例1:感光性バインダー成分CR−1の調製)
合成例1で得られた樹脂A溶液(固形分47.4質量%)16.6質量部に対して、多官能モノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)(アロニックスM402(東亜合成社製))23.5質量部、開始剤としてイルガキュア907(BASF社製)5.9質量部、カヤキュアーDETX−S(日本化薬社製)2.0質量部、酸化防止剤IRGANOX1010(BASF社製)0.8質量部、PGMEA51.3質量部を加えて、感光性バインダー成分CR−1を得た。
【0227】
(調製例2〜8:感光性バインダー成分CR−2〜CR−5およびCR−8〜CR−10の調製)
調製例1において、樹脂A溶液の代わりに、合成例2〜8の樹脂B〜H溶液をそれぞれ用いて各成分の重量比率が同じになるように調整した以外は、調製例1と同様にして感光性バインダー成分CR−2〜CR−5およびCR−8〜CR−10を得た。
【0228】
(実施例1:着色樹脂組成物の調製)
(1)色材分散液Aの調製
225mLマヨネーズ瓶中に、PGMEA63.3質量部、樹脂F溶液(固形分40質量%)13.0質量部、合成例9のブロック共重合体1(固形分45質量%)9.96質量部を入れ攪拌した。そこへフェニルホスホン酸(商品名:PPA、日産化学社製)0.72質量部(ブロック共重合体の3級アミノ基に対して0.6モル当量)を加え、室温で30分攪拌した。
合成例10の色材A 13.0質量部、粒径2.0mmジルコニアビーズ100質量部を入れ、予備解砕としてペイントシェーカー(浅田鉄工社製)で1時間振とうし、次いで粒径0.1mmのジルコニアビーズ200部に変更し本解砕としてペイントシェーカーで4時間分散を行い、色材分散液Aを得た。
【0229】
(2)カラーフィルタ用着色樹脂組成物の調製
上記(1)で得られた色材分散液A 30.9質量部、調製例1の感光性バインダー成分CR−1 26.9質量部、界面活性剤メガファックR08MH(DIC製)0.01質量部、PGMEA42.1質量部を混合し、実施例1のカラーフィルタ用着色樹脂組成物を得た。当該着色樹脂組成物は、感光性着色樹脂組成物である。
【0230】
(実施例2〜5:カラーフィルタ用着色樹脂組成物の調製)
実施例1において、感光性バインダー成分CR−1の代わりに、感光性バインダー成分CR−2〜CR−5にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜5のカラーフィルタ用着色樹脂組成物を得た。
【0231】
(実施例6:カラーフィルタ用着色樹脂組成物の調製)
(1)色材分散液Bの調製
225mLマヨネーズ瓶中に、PGMEA76.3質量部、合成例9のブロック共重合体1(固形分45質量%)9.96質量部を入れ攪拌した。そこへフェニルホスホン酸(商品名:PPA、日産化学社製)0.72質量部(ブロック共重合体の3級アミノ基に対して0.6モル当量)を加え、室温で30分攪拌した。
合成例10の色材A 13.0質量部、粒径2.0mmジルコニアビーズ100質量部を入れ、予備解砕としてペイントシェーカー(浅田鉄工社製)で1時間振とうし、次いで粒径0.1mmのジルコニアビーズ200部に変更し本解砕としてペイントシェーカーで4時間分散を行い、色材分散液Bを得た。
【0232】
(2)カラーフィルタ用着色樹脂組成物の調製
上記(1)で得られた色材分散液B 30.9質量部、調製例2の感光性バインダー成分CR−2 31.0質量部、界面活性剤メガファックR08MH(DIC製)0.01質量部、PGMEA38.1質量部を混合し、実施例6のカラーフィルタ用着色樹脂組成物を得た。
【0233】
(実施例7:カラーフィルタ用着色樹脂組成物の調製)
(1)感光性バインダー成分CR−6の調製
調製例1において、樹脂A溶液の代わりに、前記一般式(A)の繰り返し単位を有するポリアミドイミド樹脂溶液(固形分44.1質量%)(商品名:EMG−1015、DIC株式会社製、脂肪族カルボン酸含有ポリアミドイミド、固形分換算で酸価149KOHmg/g、数平均分子量4900)を用いて、各成分の重量比率が同じになるように調整した以外は、調製例1と同様にして感光性バインダー成分CR−6を得た。
(2)カラーフィルタ用着色樹脂組成物の調製
実施例1において、感光性バインダー成分CR−1の代わりに、感光性バインダー成分CR−6に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例7のカラーフィルタ用着色樹脂組成物を得た。
【0234】
(実施例8:カラーフィルタ用着色樹脂組成物の調製)
(1)感光性バインダー成分CR−7の調製
合成例5で得られた樹脂E溶液(固形分51.3質量%)15.7質量部に対して、多官能モノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)(アロニックスM402(東亜合成社製))24.1質量部、開始剤としてイルガキュア907(BASF製)5.9質量部、TR−PBG−304(常州強力電子新材料社製)1.2質量部、酸化防止剤IRGANOX1010(BASF製)0.8質量部、PGMEA52.4質量部を加えて、感光性バインダー成分CR−7を得た。
(2)カラーフィルタ用着色樹脂組成物の調製
実施例1において、感光性バインダー成分CR−1の代わりに、感光性バインダー成分CR−7に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例8のカラーフィルタ用着色樹脂組成物を得た。
【0235】
(比較例1〜3:カラーフィルタ用着色樹脂組成物の調製)
実施例1において、感光性バインダー成分CR−1の代わりに、感光性バインダー成分CR−8(樹脂F:アクリル系樹脂)、CR−9(樹脂G)、CR−10(樹脂H)に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例1〜3のカラーフィルタ用着色樹脂組成物を得た。
しかし、比較例3の着色樹脂組成物においては、作製後1日以内に大きくゲル化したため、評価不能であった。
【0236】
[評価]
<輝度及びコントラスト評価>
実施例1〜8及び比較例1〜2で得られたカラーフィルタ用着色樹脂組成物を、それぞれ厚み0.7mmで100mm×100mmのガラス基板(NHテクノグラス(株)社製、「NA35」)上に、スピンコーターを用いてポストベーク後の色度がy=0.089になるように塗布した後、ホットプレートを用いて80℃で3分間乾燥することにより、着色層を形成した。この着色層に超高圧水銀灯を用いて60mJ/cm
2の紫外線を照射した。
次に、当該着色基板を230℃のクリーンオーブンで75分間ポストベークし、得られた着色基板のコントラストと輝度(Y)を壺坂電気製コントラスト測定装置CT−1Bとオリンパス製顕微分光測定装置OSP−SP200を用いて測定した。結果を表2に示す。
【0237】
<現像時間評価>
実施例1〜8及び比較例1〜2で得られたカラーフィルタ用着色樹脂組成物を、それぞれ厚み0.7mmで100mm×100mmのガラス基板(NHテクノグラス(株)社製、「NA35」)上に、スピンコーターを用いて塗布した後、ホットプレートを用いて80℃で3分間乾燥することにより、厚さ2.5μmの着色層を形成した。この着色層にフォトマスクを介して超高圧水銀灯を用いて60mJ/cm
2の紫外線を照射した。その後、上記着色層が形成されたガラス板を、アルカリ現像液として0.05質量%水酸化カリウム水溶液を用いてシャワー現像し、上記着色層の未露光部が完全に溶解し、上記着色層を形成した箇所のガラス面が現れるまでの時間を現像時間(秒)として測定した。結果を表2に示す。
【0238】
<現像後残膜率>
実施例1〜8及び比較例1〜2で得られたカラーフィルタ用着色樹脂組成物を、それぞれ厚み0.7mmのガラス基板(NHテクノグラス(株)製、「NA35」)上に、スピンコーターを用いて塗布した。80℃のホットプレート上で3分間加熱乾燥を行った後、超高圧水銀灯を用いて60mJ/cm
2の紫外線を照射した。この時点での膜厚を測定して、T1(μm)とする。その後、アルカリ現像液として0.05質量%水酸化カリウム水溶液を用いてシャワー現像した。現像後の膜厚を測定してT2(μm)とする。T2/T1×100(%)を計算した値を現像後残膜率とした。
【0239】
<水染み評価>
実施例1〜8及び比較例1〜2で得られたカラーフィルタ用着色樹脂組成物を、ガラス基板(NHテクノグラス(株)社製、「NA35」)上に、スピンコーターを用いてポストベーク後に厚さ2.5μmの着色層を形成する膜厚で塗布した後、ホットプレートを用いて80℃で3分間乾燥し、フォトマスクを介さずに超高圧水銀灯を用いて30mJ/cm
2の紫外線を全面照射することにより、ガラス基板上に着色層を形成した。次いで、0.05質量%水酸化カリウム水溶液を現像液としてスピン現像し、現像液に60秒間接液させた後に純水で洗浄することで現像処理し、洗浄後の基板を10秒間回転させ水を遠心除去した直後に、下記のように純水の接触角を測定して水染みを評価した。
純水の接触角の測定は、前記水を遠心除去した直後の着色層表面に、純水1.0μLの液滴を滴下し、着滴10秒後の静的接触角をθ/2法に従って計測した。測定装置は、協和界面科学社製 接触角計DM 500を用いて、測定した。
(評価基準)
AA:接触角80度以上
A:接触角65度以上80度未満
B:接触角65度未満
水染み評価基準がAA又はAであれば、実用上使用できるが、評価結果がAAであればより効果が優れている。
【0240】
<着色樹脂組成物の経時安定性>
実施例1〜8及び比較例1〜2で得られたカラーフィルタ用着色樹脂組成物をそれぞれ室温(25℃)で保管し、調製から1日後及び2週間保管後に、それぞれ粘度を測定した。粘度は振動式粘度計(セコニック製VM−200T2)を用いて、25.0±1.0℃において測定し、測定開始から30秒後の値を採用した。
(経時安定性評価基準)
AA: 調製1日後の粘度と、2週間保存後の粘度とを比較して、粘度変化が3%未満
A: 調製1日後の粘度と、2週間保存後の粘度とを比較して、粘度変化が3%以上10%未満
B: 調製1日後の粘度と、2週間保存後の粘度とを比較して、粘度変化が10%以上
【0241】
<着色樹脂組成物の溶剤再溶解性評価>
幅0.5cm長さ10cmのガラス基板の先端を、実施例及び比較例で得られたカラーフィルタ用着色樹脂組成物に浸漬させ、ガラス基板の長さ1cm部分に塗布した。引き上げたガラス基板を、ガラス面が水平になるように恒温恒湿機に入れ、温度23℃、湿度80%RHで30分間の条件で乾燥させた。次に、乾燥させた塗膜が付着したガラス基板をPGMEA中に15秒間浸漬させた。このとき乾燥塗膜の再溶解状態を目視で判別し、評価した。結果を表2に併せて示す。
(溶剤再溶解性評価基準)
AA:乾燥塗膜が全て溶解
A:溶剤中に乾燥塗膜の薄片が生じるが、その薄片が5分以内に溶解
B:溶剤中に乾燥塗膜の薄片が生じ、その薄片が5分以内に溶解しない
溶剤再溶解性評価基準がAA又はAであれば、溶剤再溶解性良好と評価され、実用上問題なく使用できる。
【0242】
【表2】
【0243】
(実施例9:カラーフィルタ用着色樹脂組成物の調製)
色材分散液Cの調製
225mLマヨネーズ瓶中に、PGMEA62.9質量部、樹脂F溶液(固形分40質量%)13.0質量部、合成例9のブロック共重合体1(固形分45質量%)10.7質量部を入れ攪拌した。そこへフェニルホスホン酸(商品名:PPA、日産化学社製)0.39質量部(ブロック共重合体の3級アミノ基に対して0.3モル当量)を加え、室温で30分攪拌した。
合成例10の色材A 9.1質量部、合成例11の色材B 3.9質量部、粒径2.0mmジルコニアビーズ100質量部を入れ、予備解砕としてペイントシェーカー(浅田鉄工社製)で1時間振とうし、次いで粒径0.1mmのジルコニアビーズ200部に変更し本解砕としてペイントシェーカーで8時間分散を行い、色材分散液Cを得た。
(2)カラーフィルタ用着色樹脂組成物の調製
実施例1において、色材分散液Aの代わりに、上記(1)で得られた色材分散液Cに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例9のカラーフィルタ用着色樹脂組成物を得た。
【0244】
(実施例10〜13:カラーフィルタ用着色樹脂組成物の調製)
実施例9において、感光性バインダー成分CR−1の代わりに、感光性バインダー成分CR−2〜CR−5にそれぞれ変更した以外は、実施例9と同様にして、実施例10〜13のカラーフィルタ用着色樹脂組成物を得た。
【0245】
(実施例14:カラーフィルタ用着色樹脂組成物の調製)
(1)色材分散液Dの調製
225mLマヨネーズ瓶中に、PGMEA75.9質量部、合成例9のブロック共重合体1(固形分45質量%)10.7質量部を入れ攪拌した。そこへフェニルホスホン酸(商品名:PPA、日産化学社製)0.39質量部(ブロック共重合体の3級アミノ基に対して0.3モル当量)を加え、室温で30分攪拌した。
合成例10の色材A 9.1質量部、合成例11の色材B 3.9質量部、粒径2.0mmジルコニアビーズ100質量部を入れ、予備解砕としてペイントシェーカー(浅田鉄工社製)で1時間振とうし、次いで粒径0.1mmのジルコニアビーズ200部に変更し本解砕としてペイントシェーカーで8時間分散を行い、色材分散液Dを得た。
【0246】
(2)カラーフィルタ用着色樹脂組成物の調製
上記(1)で得られた色材分散液D 30.9質量部、調製例2の感光性バインダー成分CR−2 31.0質量部、界面活性剤メガファックR08MH(DIC製)0.01質量部、PGMEA38.1質量部を混合し、実施例14のカラーフィルタ用着色樹脂組成物を得た。
【0247】
(実施例15:カラーフィルタ用着色樹脂組成物の調製)
実施例9において、感光性バインダー成分CR−1の代わりに、感光性バインダー成分CR−6に変更した以外は、実施例9と同様にして、実施例15のカラーフィルタ用着色樹脂組成物を得た。
【0248】
(比較例4:カラーフィルタ用着色樹脂組成物の調製)
実施例9において、感光性バインダー成分CR−1の代わりに、感光性バインダー成分CR−8(樹脂F:アクリル系樹脂 含有)に変更した以外は、実施例9と同様にして、比較例4のカラーフィルタ用着色樹脂組成物を得た。
【0249】
[評価]
実施例9〜15及び比較例4については、色度がy=0.048になるように塗布した以外は実施例1と同様に、輝度、コントラストの評価を行った。
現像時間、現像後残膜率、水染み、経時安定性、及び再溶解性の評価は実施例1と同様に行った。
実施例9〜15及び比較例4の評価結果を表3に示す。
【0250】
【表3】
【0251】
(実施例16:カラーフィルタ用着色樹脂組成物の調製)
(1)色材分散液Eの調製
225mLマヨネーズ瓶中に、PGMEA63.3質量部、樹脂F溶液(固形分40質量%)13.0質量部、合成例9のブロック共重合体1(固形分45質量%)9.96質量部を入れ攪拌した。そこへフェニルホスホン酸(商品名:PPA、日産化学社製)0.72質量部(ブロック共重合体の3級アミノ基に対して0.6モル当量)を加え、室温で30分攪拌した。
そこへC.I.ピグメントグリーン58(FASTOGEN GREEN A350、DIC製)9.75質量部、C.I.ピグメントイエロー138を3.25質量部、粒径2.0mmジルコニアビーズ100質量部を入れ、予備解砕としてペイントシェーカー(浅田鉄工社製)で1時間振とうし、次いで粒径0.1mmのジルコニアビーズ200部に変更し本解砕としてペイントシェーカーで4時間分散を行い、色材分散液Eを得た。
【0252】
(2)カラーフィルタ用着色樹脂組成物の調製
上記(1)で得られた色材分散液E 44.0質量部、調製例1の感光性バインダー成分CR−1 24.3質量部、界面活性剤メガファックR08MH(DIC製)0.01質量部、PGMEA31.7質量部を混合し、実施例16のカラーフィルタ用着色樹脂組成物を得た。
【0253】
(実施例17〜18:カラーフィルタ用着色樹脂組成物の調製)
実施例16において、感光性バインダー成分CR−1の代わりに、感光性バインダー成分CR−2、及びCR−6にそれぞれ変更した以外は、実施例16と同様にして、実施例17、及び18のカラーフィルタ用着色樹脂組成物を得た。
【0254】
(比較例5:カラーフィルタ用着色樹脂組成物の調製)
実施例16において、感光性バインダー成分CR−1の代わりに、感光性バインダー成分CR−8(樹脂F:アクリル系樹脂 含有)に変更した以外は、実施例16と同様にして、比較例5のカラーフィルタ用着色樹脂組成物を得た。
【0255】
[評価]
実施例16〜18及び比較例5については、ポストベーク後の色度がy=0.575になるように塗布した以外は実施例1と同様に、輝度の評価を行った。
現像時間、水染み、及び経時安定性の評価は実施例1と同様に行った。
実施例16〜18及び比較例5の評価結果を表4に示す。
【0256】
【表4】
【0257】
(実施例19:カラーフィルタ用着色樹脂組成物の調製)
実施例13のカラーフィルタ用着色樹脂組成物の調製において、溶剤PGMEA42.1質量部の代わりに、溶剤を、PGMEA 33.9質量部及び3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール(商品名 ソルフィット クラレ製)8.2質量部を用いて、調製した以外は、実施例13と同様にして実施例19のカラーフィルタ用着色樹脂組成物を得た。
【0258】
(実施例20:カラーフィルタ用着色樹脂組成物の調製)
実施例13のカラーフィルタ用着色樹脂組成物の調製において、溶剤PGMEA42.1質量部の代わりに、溶剤を、PGMEA 33.9質量部及びジエチレングリコールエチルメチルエーテル(EMDG)8.2質量部を用いて、調製した以外は、実施例13と同様にして実施例20のカラーフィルタ用着色樹脂組成物を得た。
【0259】
(実施例21:カラーフィルタ用着色樹脂組成物の調製)
実施例13のカラーフィルタ用着色樹脂組成物の調製において、溶剤PGMEA42.1質量部の代わりに、溶剤を、PGMEA 33.9質量部及びプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)8.2質量部を用いて、調製した以外は、実施例13と同様にして実施例21のカラーフィルタ用着色樹脂組成物を得た。
【0260】
(実施例22:カラーフィルタ用着色樹脂組成物の調製)
実施例9のカラーフィルタ用着色樹脂組成物の調製において、溶剤PGMEA42.1質量部の代わりに、溶剤を、PGMEA 33.9質量部及びジエチレングリコールエチルメチルエーテル(EMDG)8.2質量部を用いて、調製した以外は、実施例9と同様にして実施例22のカラーフィルタ用着色樹脂組成物を得た。
【0261】
(実施例23:カラーフィルタ用着色樹脂組成物の調製)
実施例15のカラーフィルタ用着色樹脂組成物の調製において、溶剤PGMEA42.1質量部の代わりに、溶剤を、PGMEA 33.9質量部及び3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール(商品名 ソルフィット クラレ製)8.2質量部を用いて、調製した以外は、実施例15と同様にして実施例23のカラーフィルタ用着色樹脂組成物を得た。
【0262】
[評価]
実施例19〜23についても、実施例9と同様に、輝度、コントラスト、現像時間、現像後残膜率、水染み、経時安定性、及び溶剤再溶解性の評価を行った。
実施例19〜23の評価結果を表5に示す。
【0263】
【表5】
【0264】
(結果のまとめ)
前記一般式(A)で表される繰り返し単位を有するポリアミドイミド樹脂をアルカリ可溶性樹脂として用いた、本発明のカラーフィルタ用着色樹脂組成物に相当する実施例1〜23は、輝度及びコントラストが向上した着色層を形成可能で、良好な現像性を有し且つ現像後の水染み発生が抑制されたカラーフィルタ用着色樹脂組成物であり、輝度及びコントラストが向上したカラーフィルタを優れた生産性で形成可能であることが明らかにされた。
一方、従来アルカリ可溶性樹脂として多用されてきたアクリル系樹脂のみをアルカリ可溶性樹脂として用いた比較例1、4及び5の着色樹脂組成物は、実施例に比べて、着色層の輝度及びコントラストが劣り、且つ、現像後に水染みが発生した。
また、前記一般式(A)で表される繰り返し単位を有しないポリアミドイミド樹脂を用いた比較例2の着色樹脂組成物は、実施例に比べて、着色層の輝度及びコントラストが劣っていた。
更に、前記一般式(A)で表される繰り返し単位を有しないポリアミドイミド樹脂を用いた比較例3の着色樹脂組成物は、調製後1日で大きくゲル化してしまうほど安定性が悪い組成物であり、実施例と同様に評価できないものであった。
【0265】
前記一般式(A)で表される繰り返し単位を有するポリアミドイミド樹脂の中でも、末端のカルボキシル基をアルコール変性したものは、更に現像時間が短くなり、溶剤再溶解性に優れることが明らかにされた(実施例1及び3に対する、実施例2、4及び5の比較;実施例9及び11に対する、実施例10、12及び13の比較)。
また、着色樹脂組成物中に、アルカリ可溶性樹脂として、ポリアミドイミド樹脂だけではなく、更にアクリル系樹脂を含む場合には、経時安定性と溶剤再溶解性に優れることが明らかにされた(実施例6に対する実施例2の比較;実施例14に対する実施例10の比較)。