(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6768316
(24)【登録日】2020年9月25日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】水質改善材の製造方法及び水質改善方法
(51)【国際特許分類】
C02F 3/00 20060101AFI20201005BHJP
A01K 63/04 20060101ALI20201005BHJP
A01K 61/00 20170101ALI20201005BHJP
【FI】
C02F3/00 D
A01K63/04 F
A01K61/00
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-47186(P2016-47186)
(22)【出願日】2016年3月10日
(65)【公開番号】特開2017-159260(P2017-159260A)
(43)【公開日】2017年9月14日
【審査請求日】2018年12月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】597021369
【氏名又は名称】日の丸カーボテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100138955
【弁理士】
【氏名又は名称】末次 渉
(72)【発明者】
【氏名】河尻 義孝
【審査官】
佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−201470(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/013219(WO,A1)
【文献】
特開2012−034661(JP,A)
【文献】
特開2014−009152(JP,A)
【文献】
特開2010−242075(JP,A)
【文献】
特開2011−050934(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/00
A01K 61/00−63/10
C05D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄と炭と焼酎滓又は柑橘類の滓とを混練し、成形して焼成することで鉄溶出材を製造し、
前記鉄溶出材を20wt%〜100wt%のレモン汁含有溶液に浸漬させ、前記鉄溶出材に前記レモン汁含有溶液を含浸させる、
ことを特徴とする水質改善材の製造方法。
【請求項2】
鉄と炭と焼酎滓又は柑橘類の滓とを混練し、成形して焼成することで鉄溶出材を製造し、前記鉄溶出材を20wt%〜100wt%のレモン汁含有溶液に浸漬させ、前記鉄溶出材に前記レモン汁含有溶液を含浸させて得られた水質改善材を湖沼、河川、海、或いは水槽の水に介在させて水質を改善する、
ことを特徴とする水質改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は
、水質改善材の製造方法及び水質改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
河川、湖沼、海辺等では、ヘドロ等の沈殿物が堆積し、水質悪化が生じやすい。このような状況下では、植物プランクトンにとって必要な栄養が不足しやすい。なかでも鉄分が不足すると、植物プランクトンの光合成が不活性になるとともに繁殖が進まない。その結果、植物プランクトンによるヘドロ等の有機物の分解が進まず、水質の悪化を招く。また、植物プランクトンは食物連鎖の基礎であるので、植物プランクトンの繁殖が抑えられると、植物プランクトンを餌とする水中生物の活性が損なわれる。その結果、水中生物環境全体の更なる悪化を招くとともに、更なる水質悪化が促進されてしまう。
【0003】
水質環境の改善のため、例えば、特許文献1のように、鉄キレート発生材を湖沼等に投入し、鉄キレートを生成させ、これを植物プランクトンに摂取させて悪化した水質を改善する方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−242075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の鉄キレート発生材は、水中で二価鉄を溶出させ得るものの、その溶出量は十分とは言えず、未だ改良の余地がある。
【0006】
本発明は、上記事項に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、より豊富に二価鉄を溶出可能
な水質改善材の製造方法及び水質改善方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第
一の観点に係る水質改善材の製造方法は、
鉄と炭と
焼酎滓又は柑橘類の滓とを
混練し、成形して焼成することで鉄溶出材を
製造し、
前記鉄溶出材を20wt%〜100wt%のレモン汁含有溶液に浸漬させ、前記鉄溶出材に前記レモン汁含有溶液を含浸させる、
ことを特徴とする。
【0011】
本発明の第
二の観点に係る水質改善方法は、
鉄と炭と焼酎滓又は柑橘類の滓とを混練し、成形して焼成することで鉄溶出材を製造し、前記鉄溶出材を20wt%〜100wt%のレモン汁含有溶液に浸漬させ、前記鉄溶出材に前記レモン汁含有溶液を含浸させて得られた水質改善材を湖沼、河川、海、或いは水槽の水に介在させて水質を改善する、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に
よって製造される水質改善材では、水中に介在させることで、多くの二価鉄を溶出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(水質改善材)
水質改善材は、鉄と炭とキレート剤とを含有する鉄溶出材と、鉄溶出材に含浸しているレモン汁とを備えている。
【0014】
鉄溶出材は、鉄と炭とキレート剤とを含有し、一体的に形成された構造をしている。鉄溶出材の形状は特に限定されず、球体、立方体、円柱体などが挙げられる。また、鉄溶出材の大きさについても特に限定されない。
【0015】
鉄は、鉄原子を含有しているものであればよい。鉄合金や鉄酸化物であってもよく、屑鉄等も用いることができる。
【0016】
炭は、炭素を含有していればよく、例えば、コークス、黒鉛、木炭、竹角、石炭等、種々の炭を用いることができる。炭素は鉄よりも電気陰性度が高いため、水中で鉄と接触すると鉄を酸化させ、鉄イオンを溶出させる。
【0017】
キレート剤は、溶出した鉄イオンと結合して鉄キレートを形成する。キレート剤は、2価鉄イオンとキレート化し得るものであれば特に制限はないが、焼酎滓や柑橘類の滓など、粘性を有するものなど、鉄と炭とを混練する際にバインダーとしての機能を発揮し得るものが好ましい。
【0018】
レモン汁は、レモン果実を搾って得られる搾り汁である。レモン汁は、レモン果実を皮ごと搾ったもの、果肉だけを搾ったもの、皮だけを搾ったものなど、いずれであってもよい。レモン汁は鉄溶出材に対して1〜5wt%含浸していることが好ましい。
【0019】
(水質改善材の製造方法)
まず、鉄溶出材を準備する。鉄と炭とキレート剤(例えば、焼酎滓や柑橘類の滓)とを混練し、所定の形状に成形する。この成形体を炉等に入れて、所定条件下で焼成することにより、鉄溶出材を製造する。炭は、鉄が溶出される程度含まれていればよく、キレート剤は、鉄と炭とを混練して成形できる程度含まれていればよい。
【0020】
或いは、鉄溶出材をレモン汁含有溶液に浸漬させる。レモン汁含有溶液は、レモンの果実を搾ったレモン汁をそのまま用いても、レモン汁を水で希釈して調製した溶液を用いてもよい。水で希釈したレモン汁含有溶液を用いる場合、レモン汁が20wt%以上とすることが好ましい。また、レモン汁含有溶液への浸漬は、常温で行えばよい。また、浸漬時間は、十分にレモン汁含有溶液が含浸する程度の時間であればよく、30分以上、より好ましくは60分以上とすればよい。これにより、水質改善材が得られる。
【0021】
また、得られた水質改善材は、乾燥、酸化を防止すべく、密閉可能な容器、袋等に入れて保存しておくことが望ましい。
【0022】
(水質改善方法)
水質改善方法では、上述した水質改善材を、河川、湖沼、海、水槽等の水中に介在させる。水中でキレート剤が除々に分離すると、鉄と炭が接触し、炭よりも電気陰性度が低い鉄が酸化されてFe
2+イオンが溶出する。さらに、Fe
2+イオンがキレート剤と反応し、鉄キレートを形成する。また、原理は明かではないが、水質改善材には、レモン汁が含浸していることから、レモン汁の作用によりFe
2+イオンの溶出、キレート化が促進される。これにより、豊富にFe
2+イオンが溶出されることになる。溶出したFe
2+イオンはキレート状態で水中に存在することとなるため、Fe
3+イオンに酸化されることが抑制される。
【0023】
このように、水質改善材は、湖沼や河川、海辺等の閉鎖性水域や水槽の水中へ介在させることにより、植物プランクトンの重要な栄養源であるFe
2+を豊富に供給し、イオン状態(キレート状態)のまま安定に水中に存在する。このため、食物連鎖の基礎である植物プランクトンがFe
2+を摂取することができる。これにより、植物プランクトンの光合成が活性化するとともに、植物プランクトンの増殖が促され、水中の有機物を分解することになる。更には、植物プランクトンを餌とする水中生物の増殖、活性化につながる。更には、Fe
2+は水中のリンと結びつくとリン酸鉄となってリンを固定化し、アオコや赤潮の原因となる富栄養化を防ぐ。これらが相まって、水質が改善されることになる。
【0024】
水質改善材は、豊富に二価鉄を溶出させることができるため、湖沼等への水質改善材の投入量を少なくすることができ、水質改善に要するコストの低減にもつながる。
【0025】
(実施例1:Fe
2+イオン溶出の検証)
鉄溶出材として、水質・底質浄化炭(商品名:キレートマリン、日の丸産業株式会社製)を準備した。
【0026】
この鉄溶出材(50g)を、レモン汁含有溶液(10mL)に20分間浸漬させた。そして、レモン汁含有溶液から鉄溶出材を取り出し、水質改善材を得た。得られた水質改善材は、乾燥しないよう、袋に入れて密封し保存しておいた。レモン汁含有溶液として、レモン果実を皮ごと搾った汁を100wt%、60wt%、40wt%、及び、20wt%の各溶液を用い、それぞれのレモン汁含有溶液に鉄溶出材を浸漬して得られた水質改善材をレモン100、レモン60、レモン40、及び、レモン20と、それぞれ記す。なお、レモン汁の希釈には純水を用いた。
【0027】
1Lの純水に、それぞれの水質改善材を投入した。そして、水質改善材を投入して1時間後の水中のFe
2+イオン濃度を測定した。
【0028】
また、レモン汁含有溶液に浸漬させなかった鉄溶出材についても、上記と同様に行った。これをブランクと記す。
【0029】
それぞれのFe
2+イオン濃度の結果を表1に示す。
【0031】
ブランクでは、Fe
2+イオン濃度は0.1ppm以下であった。レモン100、60、40、20では、Fe
2+イオン濃度が10ppm、3ppm、2ppm、1ppmであり、いずれもブランクよりもFe
2+イオンを溶出していることがわかる。
【0032】
(実施例2:水質改善の検証)
平成27年11月12日に国営備北丘陵公園(広島県庄原市三日市町4−10)の新池(面積:約330m
2、深さ:約50cm)に水質改善材を約66kg投入した。水質改善材は実施例1のレモン100を用いた。そして、投入日(平成27年11月12日)及びその約一ヶ月後(平成27年12月14日)の池の水質分析を行った。水質分析結果を表2に示す。
【0034】
表2を見ると水質改善材を投入して約一ヶ月後には、池の水のSS(浮遊物質量)が34.67mg/Lから4.33mg/Lに大幅に減少し、そして、透視度が20cmから100cmを超えるまでになっている。そして、COD(Chemical Oxygen Demand)が二価鉄溶出材の投入前の1/3になっており、水中の有機物が減少している。また、大腸菌についても大幅な低下がみられ、これはレモン汁の成分による抗菌作用が関与しているものと考えられる。
【0035】
一般に、浮遊物質を多く含む水は透視度が下がり、太陽光が遮られることによって藻類の光合成が阻害される。また、汚濁の進んだ水では有機物の浮遊物質の比率が高くなり、その有機物の分解に溶存酸素が消費されるため生態系に大きな影響を与え、水質悪化にもつながる。本実施例における水質改善材の水中への投入により、浮遊物質の減少、透視度の上昇を促し、上記の生態系、水質悪化の改善が可能であることがわかる。