特許第6768318号(P6768318)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6768318
(24)【登録日】2020年9月25日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】手摺り
(51)【国際特許分類】
   E04F 11/18 20060101AFI20201005BHJP
【FI】
   E04F11/18
【請求項の数】1
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-49367(P2016-49367)
(22)【出願日】2016年3月14日
(65)【公開番号】特開2017-166126(P2017-166126A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2018年11月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大井 一輝
(72)【発明者】
【氏名】田近 亮介
(72)【発明者】
【氏名】竹下 将史
【審査官】 五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−327286(JP,A)
【文献】 実開昭52−107037(JP,U)
【文献】 特開平07−166672(JP,A)
【文献】 特開昭61−204440(JP,A)
【文献】 実公平01−035915(JP,Y2)
【文献】 特開2010−144403(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 11/18
E04B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物躯体もしくは建物躯体に立設された支柱に固定される下枠と、下枠の上方位置において建物躯体もしくは建物躯体に立設された支柱に固定される上枠と、下枠及び上枠間に支持されるパネルユニットとからなり、
上枠は、下方に開口する上溝部を有しており、
パネルユニットは、パネル体と、パネル体の両側辺に取付けられる両縦框と、パネル体の上辺に取付けられ両縦框間に固定される上框とを有し、パネルユニットの上框が上枠の上溝部に挿入されているとともに、パネルユニットの上框の上面と上枠の上溝部との間に空間が形成されており、
パネルユニットは、上框の上面が縦框の上端面より低く、上枠に縦框が固定されていることを特徴とする手摺り。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
建物のバルコニー等に設けられ、ガラス板等を備えるパネルユニットにより形成される手摺りに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物のバルコニー等には手摺りが設けられているが、近年、デザイン性、採光性に優れたガラスパネルによって形成された手摺りが開発されて普及している。(特許文献1)
このような手摺りをバルコニーに対して形成するには、バルコニー等の建物躯体に固定された上、下枠の溝部に対して、ガラスパネル等をはめ込むことによって、手摺りを建物躯体に施工していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5330032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなガラス張りの手摺りにおいては、デザイン性が重視され、できるだけガラスの幅寸法を大きくすることが望まれる。
しかし、ガラスの幅寸法を大きくするとその間における上枠のたわみが生じやすくなり、例えば手摺りに寄りかかるなどしたときには、笠木にかかる荷重が上枠及び上枠に支持されたガラスパネル等に伝達され、ガラスパネル等の上辺が破損する可能性があった。
そして、上枠の強度を高めようとすると、笠木部分の見付け幅が大きくなって、デザイン性が損なわれてしまう。
【0005】
本発明は、上記の事情を鑑みたものであり、建物躯体等に固定される上枠と下枠との間に支持されるパネルユニットについて、笠木等手摺りの上枠部分にかかる荷重により、パネルユニットの破損を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の請求項1に係る発明は、建物躯体もしくは建物躯体に立設された支柱に固定される下枠と、下枠の上方位置において建物躯体もしくは建物躯体に立設された支柱に固定される上枠と、下枠及び上枠間に支持されるパネルユニットとからなり、上枠は、下方に開口する上溝部を有しており、パネルユニットは、パネル体と、パネル体の両側辺に取付けられる両縦框と、パネル体の上辺に取付けられ両縦框間に固定される上框とを有し、パネルユニットの上框が上枠の上溝部に挿入されているとともに、パネルユニットの上框の上面と上枠の上溝部との間に空間が形成されており、パネルユニットは、上框の上面が縦框の上端面より低く、上枠に縦框が固定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本願の請求項1に係る発明によれば、パネルユニットを上下枠間に支持することにより手摺りを施工することができるので、施工が容易で有り、また、手摺りにもたれかかるなどした場合に力のかかるパネル体の上辺に両縦框間に固定される上框を有しているので、パネル体の上辺部分を保護して破損を抑制できる。また、笠木等手摺りの上枠部分にかかる荷重を、直接ガラス等のパネル体に荷重が伝達されることを抑制し、パネルユニットの破損を防止でき、笠木等手摺りの上枠部分にかかる荷重をパネルユニットの縦框に伝達することができ、パネル体への外力の伝達を抑制しながら、手摺りの強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】(a)は本発明の実施形態に係る手摺りを外側から見た正面図であり、(b)は本発明の実施形態に係る手摺りを外側から見た斜視図である。
図2】(a)は本発明の実施形態に係る手摺りの全体縦断面図であり、(b)は本実施形態に係る手摺りの上枠の側端部を下方から見た斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係る手摺りのパネルユニットを説明するための図であり、(a)はパネルユニットの分解斜視図であり、(b)は(a)における領域Bの拡大図である。
図4】本発明の実施形態に係る手摺りのパネルユニットを説明するための図であり、(a)は図3(a)における領域Cの拡大図であり、(b)は図3(a)における領域Aの拡大図であり、(c)は領域Cの組み立て後の図である。
図5】(a)は本発明の実施形態に係る手摺りの上枠部分の縦断面図であり、(b)は下枠部分の縦断面図である。
図6】本発明の実施形態に係る手摺りの施工工程を説明するための図であり、(a)は建物躯体に対してブラケット及び外側下枠を取り付けた状態の縦断面図であり、(b)はさらにブラケットに対して上枠を固定した状態を示す縦断面図である。
図7】本発明の実施形態に係る手摺りの施工工程を説明するための図であり、(a)は建物躯体に固定された下枠及び上枠に対してパネルユニットを嵌め込む時の縦断面図であり、(b)はパネルユニットを嵌め込む時の上枠部分の拡大正面図である。
図8】本発明の実施形態に係る手摺りの施工工程を説明するための図であり、(a)は建物躯体に固定された下枠及び上枠に対してパネルユニットを嵌め込んだ状態の縦断面図であり、(b)はパネルユニットを嵌め込んだ時の上枠部分の拡大正面図であり、(c)はその正面拡大図である。
図9】本発明の実施形態に係る手摺りの施工工程を説明するための図であり、(a)は笠木を取り付ける状態及び内側下枠を取り付ける状態を示す縦断面図であり、(b)は手摺りの施工が完成した状態を示す縦断面図である。
図10】本発明の他の実施形態に係る手摺りのパネルユニットの上パネル框と右縦パネル框との接合を説明するための図であり、(a)は上パネル框と右縦パネル框との接合前の斜視図であり、(b)は接合後の斜視図である。
図11】本発明の他の実施形態に係る手摺りの上枠部分の縦断面図である。
図12】本発明の実施形態に係る手摺りの下枠部分縦断面図である。
図13】(a)は図1(a)におけるa−a断面図であり、(b)は図1(a)におけるb−b断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(手摺りの全体構成)
本発明を、バルコニーにおいて建物の壁面W間に設置される手摺りの実施形態を用いて説明する。なお、以下の説明において、バルコニーに設置される手摺りの建物側を内側といい、同手摺りの屋外側を外側という。
本発明の実施形態に係る手摺りは、図1(a),(b)に示すように、両側に建物の壁面W,W等が存在するバルコニーに対して設置される手摺りであって、建物躯体の外周縁部を立ち上げて形成されたパラペットPの上面に配置固定される下枠2と、両壁面W,W間にブラケット4,4を介して支持固定される上枠1と、上枠1と下枠2との間に横方向に間隔を開けて配置される2枚のパネルユニット3,3と、上枠1の上面に配置される笠木5とを備えている。
【0010】
図2(a)に示すように、上枠1は、底面部1bと、底面部1bの外側に連設されて下方に開口する溝を形成する上溝部1aと、底面部1bの上面に設けられる内係止爪1cとから形成されており、上溝部1aの外側壁外面には外係止爪1dが形成されている。そして、上枠1を覆うように笠木5が装着されている。
笠木5は、上枠1の内側から外側にかけて全体を覆うカバー部51により構成されており、カバー部51の外側の内面には上枠1の外係止爪1dに係止される被係止部51bが形成されるとともに、カバー部51の内側の内面には水平方向に延設されてその先端に上枠1の内係止爪1cに係止される被係止部51aが形成されている。
そして、笠木5を上枠1の上方より被せることで、上枠1の内、外係止爪1c,1dに対して被係止部51a,51bを係止させて装着することができ、必要に応じてネジ等の固定手段によって上枠1等に固定することも可能である。
【0011】
また、手摺りを構成する下枠2は、ネジ等の固定手段bによってパラペットP上に固定される下笠木21と、パラペットPの上面を覆う下笠木カバー22との二部材により形成されている。下笠木21は、パラペットPの上面に載置される載置部21aと、載置部21aの外側より下方に延設される外側壁部21bと、載置部21aの外側より上方に立ち上がる中空の当接壁部21cとからなり、下笠木カバー22は、パネルユニット3の内側においてパラペットPの上面を覆うカバー部22aと、カバー部22aの内側に設けられ、パラペットPの内側面に固定される固定部22bと、カバー部22aの内面より下方に垂下してパラペットP上面に当接する脚部22cとからなり、下笠木21と下笠木カバー22とによって、パラペットPの上面には下溝部2aが形成されている。
そして、パネルユニット3の上辺部分及び下辺部分が上枠1の上溝部1a及び下枠2の下溝部2aに支持されることで、パネルユニット3は上枠1及び下枠2間に配置されている。
【0012】
上枠1を壁面Wに取り付けるためのブラケット4は、図2(b)に示すように、壁面Wに固定される垂直部41と上枠1の底面部1bが載置固定される水平部42とからなる断面略L字状のスチール等の金属材料からなり、垂直部41には垂直方向に延びる長孔41a,41aが、水平部42には、手摺りの見付け方向に延びる長孔42a,42aが形成されている。そして、ブラケット4は、壁面Wに対して、垂直部41の長孔41a,41aにより上下方向に位置調節可能に支持することができ、上枠1は、底面部1bがブラケット4の水平部42に形成された長孔42a,42aを介して見付け方向に位置調節可能に支持されている。
【0013】
手摺りを構成するパネルユニット3は、図3(a)に示すように、上パネル框31,下パネル框32及び左、右パネル框33,34を四周に組んでなるパネル框体の内周に、グレージングチャンネル36を介してガラス等のパネル体35を固定して形成されている。
下パネル框32は、図3(b)に示すように、底壁32aと、内、外側壁32b,32bと、内、外側壁32b,32bの上端に連設されお互い近接するように屈曲してなる係止壁32c,32cとを有し、内側壁32bの内側表面より水平に延びる水平壁32dが形成されているとともに、外側壁32bの外側表面より水平に突出する突出片32eが形成されている。
また、下パネル框32の長手方向両端部には、係止壁32c,32cを切り欠いてなる切欠部32f,32fが形成されており、切欠部32f,32fが形成された位置の底壁32a,32aには、ビス等の固定手段bを挿入するためのビス孔32g,32gが形成されている。
【0014】
上パネル框31は、図4(a),(b)に示すように、底壁31aと、内、外側壁31b,31bと、内、外側壁31b,31bの下端に連設されお互い近接するように屈曲してなる係止壁31c,31cとにより下方に開口する断面略U字状の部材として形成されており、上パネル框31の底壁31aには長手方向に沿ってタッピングホール31d,31dが形成されている。
左、右パネル框33,34は、図4(a),(b)に示すように、底壁33a,34aと、内、外側壁33b,33b,34b,34bと、内、外側壁33b,33b,34b,34bの端部に連設されお互い近接するように屈曲してなる係止壁33c,33c,34c,34cを有し、左右パネル框材の長手方向上端部より若干下方位置の係止壁33c,33c,34c,34cを切り欠いてなる切欠部33e,34eが形成されており、切欠部33e,34eが形成された位置の底壁33a,34aには、ビス等の固定手段bを挿入するためのビス孔33f,34f(図示はない)が形成されている。また、底壁33a,34aの内周面にはタッピングホール33d,34dが長手方向に沿って形成されている。
【0015】
そして、図3(b)に示すように、下パネル框32の切欠部32f,32fに対して左、右パネル框33,34の下端を挿入し、下パネル框32の下方よりビス孔32g,32g及び左、右パネル框33,34のタッピングホール33d,34dに対してビス等固定手段bをネジ止め固定することにより、下パネル框32に対して左、右パネル框33,34が固定される。
さらに、図4(a),(b)に示すように、左、右パネル框33,34の上方位置に形成された切欠部33e,34eに上パネル框31の両端を挿入し、左、右パネル框33,34の外周側よりビス孔33f,34f及び上パネル框31のタッピングホール31d,31dに対してビス等固定手段bによりネジ止め固定することで、左、右パネル框33,34に対して上パネル框31が固定される。
【0016】
このように、上下左右のパネル框が四周框組され、框組みに際して、ガラス等のパネル体35の四周辺がグレージングチャンネル36を介して各パネル框の係止壁間に配置されることにより、パネルユニット3が形成されている。
そして、上パネル框31の両端が挿入される左、右パネル框33,34の上方位置に形成された切欠部33e,34eが左、右パネル框33,34の上端部より若干下方位置に形成されることによって、図4(c)に示すように、形成されたパネルユニット3において、上パネル框31の上面は左、右パネル框33,34の上端面より低く配置されることとなる。
【0017】
次に、パネルユニット3を上枠1及び下枠2間に配置した際の、上枠1とパネルユニット3の上辺部分との関係、及び、下枠2とパネルユニット3の下辺部分との関係について、説明する。
図5(a)に示すように、手摺りを構成する上枠1の上溝部1aの内側壁内面及び外側壁内面には、内側壁突出部1e及び外側壁突出部1fが、内側壁突出部1eが高い位置になるように高さ位置を異ならせて形成されており、内側壁突出部1e及び外側壁突出部1fが上溝部1aに対して挿入されたパネルユニット3の上辺部分の内外面(図5に示す実施形態においては、左、右パネル框33,34の内外面)に当接することで、パネルユニット3の上辺部分が支持されている。
【0018】
一方、図5(b)に示すように、下枠2の下溝部2aを構成する下笠木カバー22のカバー部22aの外側下面にはパネルユニット3の下パネル框32の水平壁32dに係止する係止部22dが形成されており、係止部22dによって下パネル框32の水平壁32dを係止した状態でカバー部22aの外側端部(突出部)22eがパネルユニット3の下パネル框32の内側壁32bに当接している。また、下パネル框32の外側壁32bの外側表面に形成された突出片(突出部)32eが下枠2の下溝部2aを構成する下笠木21の当接壁部21cに当接している。このように、下笠木カバー22のカバー部22aの外側端部(突出部)22eが下パネル框32の内側壁32bに当接し、下パネル框32の外側壁32bの突出片32eが下笠木21の当接壁部21cに当接することにより、パネルユニット3の下辺部分が支持されている。
【0019】
したがって、パネルユニット3の上辺部分及び下辺部分は、いずれも上枠1及び下枠2、もしくはパネル框に形成された突出部分による線接触であるので、面で接触する場合に比べて、パネルユニットを嵌め込む際に必要なパネルユニット3の上辺部分及び下辺部分と突出部分とのクリアランスが小さくできる。さらに、パネルユニット3や上、下枠1,2に製造誤差等があっても各部材が変形するなどして対応することができ、パネルユニット3の装着後には、ガタツキを防止することができる。
なお、下笠木21の載置部21aには、パネルユニット3の装着時に、下辺が内側に移動しないように位置を規制する位置決め突起21dが設けられている。
【0020】
(手摺りの施工工程)
上記実施形態に係る手摺の施工工程について、図6乃至9を参考にして、説明する。
図6(a)に示すように、手摺りを設置するパラペット(建物躯体)Pに対して、下笠木21が、パラペットPの外側の角部を覆うように載置されるとともに、パラペットPの両側の建物壁面Wには、ブラケット4が、垂直部41の長孔41a,41aを介してネジ等の固定手段bにより上下動自在に仮固定されている。下笠木21の外側壁部21bには、水切材21eが連結固定されているとともに、載置部21aの内側端部の下面には、シール材21sが配置され、下笠木21の下面に水等が侵入することを防止している。
【0021】
そして、図6(b)に示すように、下笠木21は、載置部21aのシール材21sが配置されている箇所において、ネジ等の固定手段bによってパラペットPに固定されるとともに、ブラケット4の水平部42の上面には上枠1の底面部1bが載置され、ブラケット4の水平部42の下面よりネジ等の固定手段bによって、ブラケット4と上枠1とが連結固定される。
これによって、上枠1は、建物壁面Wに対して、ブラケット4の長孔41a,41aの上下方向の長さ範囲において上下移動可能に支持されることとなる。
【0022】
下笠木21が固定され、上枠1が上下移動可能に支持された建物躯体に対して、パネルユニット3が装着される。パネルユニット3の装着時には、図7(a)に示すように、上枠1の上溝部1aに対して内側下方より斜め上方に向かってパネルユニット3の上辺部分が挿入され、パネルユニット3の下辺部分が下笠木21の当接壁部21cに当接されるまで嵌め込まれる。このとき、図7(b)に示すように、上枠1の上溝部1aの内側壁内面及び外側壁内面に形成された内側壁突出部1e及び外側壁突出部1fが、内側壁突出部1eが高い位置になるように高さ位置を異ならせて形成されているので、内側下方からのパネルユニット3の挿入に対する内側壁突出部1eと外側壁突出部1fとの間隔をパネルユニット3の上辺部分の幅寸法よりも大きく取ることができ、挿入を容易にすることができる。
【0023】
そして、パネルユニット3の挿入後には、図8(b)に示すように、内側壁突出部1eと外側壁突出部1fとの間隔はパネルユニット3の上辺部分の内外方向の寸法(左右パネル框33,34の幅寸法)と略等しくなり、内側壁突出部1eと外側壁突出部1fがパネルユニット3の上辺部分の内外面に当接することで、パネルユニット3の上辺部分を保持することができる。
また、上枠1が、建物壁面Wに上下移動可能に仮固定されているブラケット4に支持され、建物壁面Wに対して上下移動可能であるので、パネルユニット3の挿入時に上枠1が上方に移動することで上枠1の上溝部1aが浅く形成されていてもパネルユニット3の下辺部分は下笠木21を固定する載置部21aの上面の位置決め突起21dやビス等の固定手段bを超えて下笠木21の当接壁部21cに当接させることができる。
【0024】
パネルユニット3の下パネル框32の突出片32eが下笠木21の当接壁部21cに当接するように嵌め込まれて、上枠1と下笠木21との間に配置されたら、図8(a)(b)に示すように、上枠1及びブラケット4を長孔41a,41aに沿って下方に移動させてパネルユニット3の左、右パネル框33,34の上端に上枠1の上溝部1aの底1gを当接させ、その状態で、ブラケット4を仮固定している固定手段bの本締め行ってブラケット4及び上枠1を建物壁面Wに固定する。
【0025】
その後、図8(c)に示すように、上枠1の上溝部1aの上方より上枠1とパネルユニット3の左、右パネル框33,34のタッピングホール33d,34dとをネジ等の固定手段bにより固定するが、上パネル框31の上面が左、右パネル框33,34の上端面よりも下方に位置しているので、上枠1の上溝部1aの底1gと上パネル框31の上面とは直接接することなく空間sが形成され、笠木5にかかる荷重が上枠1を介して上パネル框31に直接伝わることがなく、パネルユニット3の上辺のガラス等の破損を防止することができる。
そして、下パネル框32及び左、右パネル框33,34の下端を長ビス等の固定手段bによって下笠木21に固定している。
【0026】
最後に、図9(a)に示すように、下笠木カバー22の係止部22dによって下笠木21に固定されたパネルユニット3の下パネル框32の水平壁32dを支持し、外側端部(突出部)22eを下パネル框32の内側壁32bに当接させた状態で、固定部22bを建物壁面Wに対してビス等の固定手段bにより固定することで下枠2を形成するとともに、上枠1の上方より笠木5を嵌め込んで笠木5の被係止部51a,51bに対して上枠1の内、外係止爪1c,1dを係止させることにより、図9(b)に示すように、手摺りが形成される。
【0027】
(他の実施形態に係るパネルユニットの上框)
上記実施形態においては、左、右パネル框33,34の上方位置に形成された切欠部33e,34eに対して、上パネル框31の両端部を挿入して取り付けていたが、切欠部の形状を変更することで、上パネル框31を左、右パネル框33,34の上方から落とし込むことにより取り付けるようにすることもできる。
以下、本発明の 他の実施形態に係るパネルユニットについて説明する。
他の実施形態においては、図10(a)に示すように、右パネル框34の切欠部34eが、右パネル框34の上端部において内、外側壁34b,34bを底壁34a近傍から完全に切欠いてなる側壁切欠34gと側壁切欠34gに連続して係止壁34cをさらに切欠いてなる係止壁切欠34hとから形成されている。なお、左パネル框33についても同様の切欠部33eが形成されている。
【0028】
これに対して、切欠部33e,34eに挿入される上パネル框31には、内、外側壁31b,31bの高さ方向略中央部位において、長さ方向に沿って外方に凸状部分31e,31eが設けられており、左右の凸状部分31e,31eにおける上パネル框31の幅寸法が、左、右パネル框33,34の幅寸法と略同一に形成されている。
【0029】
そして、左、右パネル框33,34の切欠部33e,34eに上パネル框31の両端を上方から落とすことにより、上パネル框31の内、外側壁31b,31bの下方部位が左、右パネル框33,34の係止壁切欠33h,34h内に配置されるとともに、凸状部分31e,31eが側壁切欠33g,34gに飲み込まれるように上端部に載置されこととなり、図10(b)に示すように、左、右パネル框33,34の内、外側壁33b,33b,34b,34bと上パネル框31の凸状部分31e,31eとが面一となるように、パネルユニット3を組むことができる。
【0030】
したがって、パネルユニット3の組み立てが簡単になるとともに、パネルユニット3の上辺部分を上枠1の上溝部1aに挿入した際には、図11に示すように、高さ位置の異なる内側壁突出部1eと外側壁突出部1fによって、パネルユニット3の左、右パネル框33,34の上端部の壁面とともに、上パネル框31の凸状部分31e,31eに当接して支持することができるので、内側壁突出部1eと外側壁突出部1fが当接するパネルユニット3の上辺部分を見付け方向全長に亘って形成することができ、パネルユニット3の支持を確実なものとすることができる。
【0031】
(手摺りの排水構造)
本実施形態の手摺りのようなバルコニー等に設置された手摺りにおいて、パラペットPへの固定部分に雨水等が侵入すると、下枠2をパラペットPに固定するためのネジ等の固定手段や、パラペットPを構成するコンクリート等が腐食し、手摺りにぐらつきが生じるなど、手摺りが不安定になることがある。
本実施形態に係る手摺りにおいては、下溝部2aから下枠2内に侵入した雨水等を排水する排水構造を有している。
【0032】
本実施形態に係る手摺りをパラペットPに固定するに際して、図12に示すように、パラペットPの内側上面から内側面にかけて外側水切材6が配置されるとともに、パラペットPの上面には、防水シート7が配置されているおり、下笠木21の外側壁部21bには水切材21eが連結固定されている
また、下笠木カバー22の脚部22cの下端が切欠かれ、固定部22bには排水孔が形成されて内側排水経路Xが形成されているとともに、下笠木21の当接壁部21cには、外側に貫通する排水孔が形成されて、外側排水経路Yが形成されている。
したがって、下溝部2aの隙間等から侵入した雨水等は、内側排水経路Xもしくは外側排水経路Yを通ってパラペットPの内側もしくは外側に排水され、下枠2とパラペットPとの間に留まることはなく、ネジ等の固定手段や、パラペットPを構成するコンクリート等が腐食することを防止できる。
【0033】
(パネルユニットの連結部)
本実施形態に係る手摺りは、図1,2に示すように、上枠1及び下枠2間に複数のパネルユニット3を嵌め込むことにより手摺りが構成されており、隣接するパネルユニット3,3間において、上枠1の上溝部1a及び下枠2の下溝部2aが開口するが、本実施形態に係る手摺りにおいては、図13に示すように、パネルユニット3,3間の上枠1の上溝部1a及び下枠2の下溝部2aに対して、それぞれキャップ81,82が装着される。
それにより、上枠1の下面及び下枠2の上面は、略面一に形成することができるので、意匠的にも優れ、上、下溝部1a,2aに対してゴミ等が侵入することを防止できる。
【0034】
以上のように、本実施形態に係る手摺りは、手摺りを建物躯体に上枠及び下枠を固定し、固定された上枠及び下枠に対して、少なくとも左右の縦框と上框とからなる框体にガラス等のパネル体パネルを装着したパネルユニットを嵌め込むように取り付けることができるので、取り付け作業が簡単であり、パネル体の上辺部分を保護して、破損を防止することができる。また、上枠が上下動自在に支持された状態でパネルユニットを嵌め込むことができ、パネルユニットを嵌め込んだ後に固定することができるので、上枠のパネルユニットの飲み込み量を大きくすることなく、パネルユニットの取付を可能にして、上枠の見付け幅を小さくすることができ、意匠性、採光性に優れた手摺りを形成することができる。
【0035】
さらに、上枠及び下枠に対して嵌め込まれるパネルユニットは、左右パネル框の上端面より若干下方位置において上パネル框の両端部が固定され、左右パネル框の上端が上枠に固定されるので、上枠に係る外力はパネルユニットの縦框に直接伝達することにより、パネル体に係る力を低減させながら、手摺りの強度を向上させることができ、パネルユニットの上框の上面と上枠との間に空間が形成されているので、上パネル框には笠木に係る荷重等が直接伝わらず、パネルユニット上辺のガラス等が破損することを抑制できる。
【0036】
なお、本発明を構成する各部材は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、各部材の具体的な構成、形状は、本発明を構成できるものであればどのような構成、形状のものでもよい。
また、上枠及び下枠の固定は、建物躯体に限定されるものではなく、例えば建物躯体に固定された支柱に対して固定されているものでもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 :上枠
1a :上溝部
1b :底面部
1c :内係止爪
1d :外係止爪
1e :内側壁突出部(突出部)
1f :外側壁突出部(突出部)
1g :底
2 :下枠
2a :下溝部
21 :下笠木
21a :載置部
21b :外側壁部
21c :当接壁部
21d :位置決め突起
21e :水切材
21s :シール材
22 :下笠木カバー
22a :カバー部
22b :固定部
22c :脚部
22d :係止部
22e :外側端部(突出部)
3 :パネルユニット
31 :上パネル框
31a :底壁
31b :外側壁
31c :係止壁
31d :タッピングホール
31e :凸状部分
32 :下パネル框
32a :底壁
32b :内、外側壁
32c :係止壁
32d :水平壁
32e :突出片(突出部)
32f :切欠部
32g :ビス孔
33 :左パネル框
33a :底壁
33b :外側壁
33c :係止壁
33d :タッピングホール
33e :切欠部
33f :ビス孔
33g :側壁切欠
34 :右パネル框
34a :底壁
34b :外側壁
34c :係止壁
34d :タッピングホール
34e :切欠部
34f :ビス孔
34g :側壁切欠
34h :係止壁切欠
35 :パネル体
36 :グレージングチャンネル
4 :ブラケット
41 :垂直部
41a :長孔
42 :水平部
42a :長孔
5 :笠木
51 :カバー部
51a :被係止部
51b :被係止部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13