特許第6768319号(P6768319)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6768319
(24)【登録日】2020年9月25日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】細胞立体物形成装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/36 20060101AFI20201005BHJP
   G01N 1/28 20060101ALI20201005BHJP
   G01B 13/12 20060101ALI20201005BHJP
【FI】
   G01N1/36
   G01N1/28 J
   G01B13/12
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-56883(P2016-56883)
(22)【出願日】2016年3月22日
(65)【公開番号】特開2017-173031(P2017-173031A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2019年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】390003665
【氏名又は名称】株式会社日進製作所
(72)【発明者】
【氏名】山田 正良
【審査官】 島田 保
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/147147(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第103462725(CN,A)
【文献】 特開2017−169463(JP,A)
【文献】 特開2015−087179(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00−1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的試料を含んでハイドロゲルの立体物を形成する立体物形成装置であって、
生物学的試料を含んで混合されることでハイドロゲルが形成される溶液を、液滴にして吐出する少なくとも2つの液滴吐出ノズルと、
空気を放出する空気ノズルと、
オリフィスと、
該オリフィスの前記空気ノズル側に設けられた第1空気圧室と、
該第1空気圧室内の圧力を測定する第1圧力計と、
前記オリフィスの空気圧力発生源側に設けられた第2空気圧室と、
該第2空気圧室内の圧力を測定する第2圧力計と、
を備え、
流量信号として前記第1圧力計および前記第2圧力計からの圧力信号を出力する流量測定部と、
該流量測定部から出力される流量信号に基づいて、前記空気ノズルと前記立体物との隙間寸法を計測する計測制御部と、
を備えたことを特徴とする細胞立体物形成装置
【請求項2】
請求項1において、前記計測制御部が、
前記空気ノズルおよび前記液滴吐出ノズルを前記立体物に対して相対的に移動させる三次元移動機能と、
該三次元移動機能により前記空気ノズルを移動したときの前記空気ノズルと前記立体物との隙間寸法から、前記立体物の形状を計測する立体物計測機能と、
を備えたことを特徴とする細胞立体物形成装置
【請求項3】
請求項2において、前記三次元移動機能を構成し可動部分である三次元移動機構が密閉構造体に収容されていることを特徴とする細胞立体物形成装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質、細胞、生体組織その他の生物学的試料を、ハイドロゲルで固定し、立体的に形成する細胞立体物形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1によると、ハイドロゲルを形成するモノマーの組み合わせを適切に選択し、これらを微小液滴の状態で、かつハイドロゲル化促進剤の共存下で接触させることで、生物学的試料(例えば、タンパク質結晶、細胞、生体組織など)をハイドロゲルで高速固定する方法が提案されている。また、少なくとも2つの吐出ノズルから、ハイドロゲルを形成する微小液滴を実質的に同時に、または連続して、1点に向けて吐出し、これらの溶液を接触させて生物学的試料をハイドロゲルで高速固定する方法も提案されている。さらに、吐出位置を制御しながら連続的に移動させて、微小液滴を吐出することによって、生物学的試料をハイドロゲルで立体的に固定する生物学的試料の立体物形成装置も考案されている。
【0003】
特許文献1によれば、微小液滴の吐出位置とハイドロゲルの形成位置とは必ずしも対応せず、また、微小液滴で形成されるハイドロゲルの形状も安定しないので、微小液滴の吐出毎に、吐出位置を特定し制御する必要がある。そこで、特許文献1の立体物形成装置では、生物学的試料の位置を検出して微小液滴の吐出位置を特定するために、光学的手段(例えば、CCDカメラと画像解析装置など)が用いられている。しかし、光学的手段を用いる場合には、吐出位置の特定に時間を要し吐出の時間間隔を短縮できない、立体物形成装置のコストが高くなる、透明なハイドロゲルに対して吐出位置を安定して特定できない、といった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2015/147147号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる実情を鑑みてなされたもので、タンパク質、細胞、生体組織その他の生物学的試料を、ハイドロゲルで精密かつ高速に固定し、短時間で安定して立体的に形成する立体形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明に係る請求項1の細胞立体物形成装置は、生物学的試料を含んで混合されることでハイドロゲルが形成される溶液を、液滴にして吐出する少なくとも2つの液滴吐出ノズルと、空気を放出する空気ノズルと、該空気ノズルから立体物に空気を放出して該流量を測定する流量測定部と、該流量測定部から出力される流量信号に基づいて、前記空気ノズルと前記立体物との隙間寸法を計測する計測制御部と、を備えたことを特徴としている。
【0007】
また、請求項2の細胞立体物形成装置は、前記計測制御部が、前記空気ノズルおよび前記液滴吐出ノズルを前記立体物に対して相対的に移動させる三次元移動機能と、該三次元移動機能により前記空気ノズルを移動したときの前記空気ノズルと前記立体物との隙間寸法から、前記立体物の形状を計測する立体物計測機能と、を備えることを特徴としている。
【0008】
また、請求項3の細胞立体物形成装置は、前記流量測定部が、オリフィスと、該オリフィスの前記空気ノズル側に設けられた第1空気圧室と、該第1空気圧室内の圧力を測定する第1圧力計と、前記オリフィスの空気圧力発生源側に設けられた第2空気圧室と、該第2空気圧室内の圧力を測定する第2圧力計と、を備え、前記流量信号として前記第1圧力計および前記第2圧力計からの圧力信号を出力することを特徴としている。
【0009】
また、請求項4の細胞立体物形成装置は、前記三次元移動機能を構成し可動部分である三次元移動機構が密閉構造体に収容されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の立体物形成装置によれば、タンパク質、細胞、生体組織その他の生物学的試料を、ハイドロゲルで精密かつ高速に固定し、短時間で安定して立体的に形成することができる。また、この立体物形成装置は、高価な画像計測装置を必要とせず、簡単で安価な空気マイクロメータにより、立体物の形状を計測することができる。さらに、この立体物形成装置の可動部分である三次元移動機構が密閉構造体に収容されているので、立体物形成装置の滅菌等を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る立体物形成装置の本体部10の斜視図
図2】本発明に係る立体物形成装置の本体部10の概略正面図(実体顕微鏡30および支持部31の一部を省略)
図3】本発明に係る立体物形成装置の本体部10(実体顕微鏡30および支持部31を除く)の概略上面図
図4】本発明に係る立体物形成装置の流量測定部100の概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の生物学的試料をハイドロゲルで立体的に固定する立体形成装置の実施形態を以下に図面に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されない。
【0013】
本発明の立体物形成装置は、本体部10、流量測定部100と、計測制御部50と、ハイドロゲルを形成する溶液を貯蔵する溶液タンクと、該溶液タンクから溶液を汲み出す溶液ポンプと、を備える。溶液タンクと溶液ポンプについては図示せず、また、ハイドロゲルを形成する溶液については特許文献1等に記載されているので、ここでは説明を省略する。
【0014】
図1図2、および、図3は、それぞれ、本体部10の斜視図、概略正面図、および、実体顕微鏡30および支持部31を除いた概略上面図である。本体部10は、ハイドロゲルを形成する溶液を液滴にして吐出する液滴吐出ノズル11a,11bと、これらの液滴でハイドロゲル化したものを積み上げて立体物を形成するための台である立体物形成台15と、空気を放出する空気ノズル12と、立体物形成台15に対して液滴吐出ノズル11a,11bおよび空気ノズル12の位置を相対的に移動させるXYZ軸直動ステージ20と、立体物を観察するための実体顕微鏡30と、を備える。XYZ軸直動ステージ20は、後述する三次元移動機能を構成し可動部分である三次元移動機構である。
【0015】
本実施形態では、液滴吐出ノズル11a,11bおよび空気ノズル12を固定して、立体物形成台15をXYZ軸直動ステージ20により移動させる構造となっているが、立体物形成台15を固定して、液滴吐出ノズル11a,11bおよび空気ノズル12をXYZ軸直動ステージ20により移動させる構造であってもよい。
【0016】
XYZ軸直動ステージ20の固定側は、ベース板21に固定して取り付けられている。一方、XYZ軸直動ステージ20の可動側には、円形支柱23を介して、立体物形成台15が取り付けられている。立体物形成台15は、六角支柱22a,22b,22c,22dを介して、ベース板21に固定して取り付けられている。柔軟性のあるジャバラ24が、円形支柱23を覆い、かつ、立体物形成台15とノズル基板25との間に挿入され、これらを密封するように取り付けられている。また、カバー26が、XYZ軸直動ステージ20を囲い、かつ、ノズル基板25とベース板21との間を密封するように、それらの間に取り付けられている。立体物形成台15と、ジャバラ24と、ノズル基板25と、カバー26と、ベース板21とは、XYZ軸直動ステージ20を完全に覆う密閉構造体となっている。すなわち、三次元移動機構であるXYZ軸直動ステージ20は、密閉構造体に収容されている。これにより、XYZ軸直動ステージ20の可動部の潤滑剤等から発生する塵埃が、立体物形成台15の上に降り注ぐことを防ぎ、立体物を汚染しない。また、立体物形成台15の洗浄や滅菌を容易に行うことができる。
【0017】
液滴吐出ノズル11a,11bと空気ノズル12とは、ノズル角度が調整できるノズル取付板13a,13b,13cに取付けられている。ノズル取付板13a,13b,13cは、ノズル支柱14a,14b,14cを介して、ノズル基板25に取り付けられている。空気ノズル12は、屈曲自在な配管を介して流量測定部100に接続される。液滴吐出ノズル11a,11bは、屈曲自在な配管を介して溶液ポンプ(図示せず)に接続される。液滴吐出ノズル11a,11bは、計測制御部50からの吐出信号により、液滴を吐出するもので、具体的には、ノズル内に圧電素子が組み込まれたインクジェット素子が好ましい。
【0018】
次に、流量測定部100について、図4の概略構成図を用いて説明する。流量測定部100は、オリフィス110と、該オリフィス110の空気ノズル12側に設けられた第1空気圧室120と、該第1空気圧室120内の圧力を測定する第1圧力計121と、オリフィス110の他方の側(空気圧力発生源140側)に設けられた第2空気圧室130と、該第2空気圧室130内の圧力を測定する第2圧力計131と、を備える。なお、第2圧力計131を備えず、第1圧力計121のみを備えたものであっても良い。この場合、空気圧力発生源140は、発生圧力を安定化するレギュレータを備えることが好ましい。
【0019】
空気ノズル12は、屈曲自在な配管を介してと第1空気圧室120に接続される。第2空気圧室130は、配管を介して空気圧力発生源140に接続される。第1圧力計121から出力される第1圧力信号と第2圧力計131から出力される第2圧力信号とは、計測制御部50に出力される。
【0020】
計測制御手段50は、流量測定部100からの流量信号として、第1圧力計121と第2圧力計131から出力される第1圧力信号と第2圧力信号を入力して、空気ノズル12と立体物との隙間寸法を計測する隙間寸法計測機能51と、液滴吐出ノズル11a,11bに吐出信号を出力して液滴を吐出させる吐出制御機能52と、XYZ軸直動ステージ20を三次元的に移動させる三次元移動機能53と、隙間寸法計測機能51および三次元移動機能53を組み合せた、立体物の形状を計測する立体物計測機能54と、吐出制御機能52と三次元移動機能53および立体物計測機能54を組み合せた、立体物を形成する立体物形成機能55、および、その他の機能を備える。
【0021】
計測制御手段50が備える機能は、アナログデジタル変換器、ROM、RAM、MPU、デジタルアナログ変換器などの個別ICで構成したもの、あるいは、これらの個別ICを集積したワンチップマイコンで容易に構成できる。また、シーケンサなどで構成しても良い。
【0022】
隙間寸法計測機能51は、MPUが、ROMに格納されたプログラムに基づいて、アナログデジタル変換器により第1圧力計121からの第1圧力信号と第2圧力計131からの第2圧力信号とをアナログデジタル変換した後、それらの圧力差分あるいは他の演算処理によりデジタル空気流量および隙間寸法を算出する。例えば、第1圧力信号と第2圧力信号の差分は、空気流量および隙間寸法の関数であるから、予め、既知の空気流量および既知の隙間寸法で校正して計測制御部に記憶させておき、その記憶している校正値との比較から空気流量および隙間寸法を算出することができる。
【0023】
空気圧力発生源140が発生する空気圧力がレギュレータで安定化されている場合は、第2圧力計131は不要となり、第1圧力計121からの第1圧力信号の大きさのみを、予め、既知の空気流量および既知の隙間寸法で校正して計測制御部に記憶させておき、その記憶している校正値との比較から空気流量および隙間寸法を算出することができる。また、他の算出方法を用いても良い。
【0024】
吐出制御機能52は、溶液ポンプによって溶液タンクからハイドロゲルを形成する溶液を汲み出し、液滴吐出ノズル11a,11bから液滴を吐出させる機能である。吐出制御機能52は、例えば、ノズル内に圧電素子が組み込まれたインクジェット素子に吐出信号を出力して、液滴吐出ノズル11a,11bから液滴を吐出させる。
【0025】
三次元移動機能53は、XYZ軸直動ステージ20を三次元的に移動させる機能である。具体的には、計測制御部50を構成するMPUが、ROMに格納されたプログラムに基づいて、移動パルスを3軸モータドライバに送出し、この3軸モータドライバがXYZ軸直動ステージ20に取り付けたモータを駆動する。
【0026】
立体物計測機能54は、立体物の形状を計測する機能であって、隙間寸法計測機能51および三次元移動機能53を組み合せて実現できる。具体的には、計測制御部50を構成するMPUが、ROMに格納されたプログラムに基づいて、上述の隙間寸法計測機能51および三次元移動機能53を組み合せて、立体物の形状を計測し、その計測結果をRAMに記憶させたり、あるいは、外部機器に出力したりする。
【0027】
立体物形成機能55は、立体物を形成する機能であって、吐出制御機能52と三次元移動機能53および立体物計測機能54を組み合せて実現できる。具体的には、計測制御部50を構成するMPUが、ROMに格納されたプログラムに基づいて、上述の吐出制御機能52と三次元移動機能53および立体物計測機能54を組み合せて、外部機器から入力した立体物の形状データ、あるいは、RAMに記憶した形状データに基づいて、立体物計測機能54により立体物の形状を確認しながら、吐出制御機能52と三次元移動機能53により立体物を形成する。
【符号の説明】
【0028】
10 本体部
11a,11b 液滴吐出ノズル
12 空気ノズル
13a,13b,13c ノズル取付板
14a,14b,14c ノズル支柱
15 立体物形成台
20 XYX軸直動ステージ
21 ベース板
22a,22b,22c,22d 六角支柱
23 円形支柱
24 ジャバラ
25 ノズル基板
26 カバー
30 実体顕微鏡
31 支持部
100 流量測定部
110 オリフィス
120 第1空気圧室
121 第1圧力計
130 第2空気圧室
131 第2圧力計
140 空気圧力発生源







図1
図2
図3
図4