特許第6768324号(P6768324)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日揮触媒化成株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6768324-多孔質シリカ系粒子の製造方法 図000006
  • 特許6768324-多孔質シリカ系粒子の製造方法 図000007
  • 特許6768324-多孔質シリカ系粒子の製造方法 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6768324
(24)【登録日】2020年9月25日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】多孔質シリカ系粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/152 20060101AFI20201005BHJP
   C01B 33/18 20060101ALI20201005BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20201005BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20201005BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20201005BHJP
   C11D 3/12 20060101ALI20201005BHJP
【FI】
   C01B33/152 A
   C01B33/18 Z
   A61K8/19
   A61Q19/00
   A61Q19/10
   C11D3/12
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-63996(P2016-63996)
(22)【出願日】2016年3月28日
(65)【公開番号】特開2017-178637(P2017-178637A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2019年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190024
【氏名又は名称】日揮触媒化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120086
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼津 一也
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 慧
(72)【発明者】
【氏名】榎本 直幸
(72)【発明者】
【氏名】麻生 和良
【審査官】 ▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/002797(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00−33/193
A61K 8/19
A61Q 19/00
A61Q 19/10
C11D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メジアン径(D50)が100〜1000μm、平均円形度が0.1〜0.5の多孔質シリカ系粒子の製造方法であって、
平均粒子径100超〜1000nmのシリカ系微粒子が固形分濃度25〜50質量%含まれるシリカゾルを用意する第一工程と、
前記シリカゾルと、珪酸成分が固形分濃度1〜40質量%含まれる珪酸溶液とを混合し、シリカ系微粒子成分と珪酸成分との質量比(シリカ/珪酸)が90/10〜98/2の範囲にあるスラリーを作製する第二工程と、
前記スラリーを、温度100〜400℃、時間10分以内で乾燥させて、乾燥粉体を得る第三工程と、
前記乾燥粉体を篩分けする第四工程と、を含み、
前記第二工程で得られるスラリー中の珪酸成分の固形分濃度(二酸化珪素換算)が1.5〜7.0質量%であり、
当該多孔質シリカ系粒子は、1.0〜1.4KPaの荷重で30秒間塗擦した後のメジアン径(DR50)が5〜40μm、最大粒子径(DR100)が15〜200μmであることを特徴とする多孔質シリカ系粒子の製造方法。
【請求項2】
前記珪酸溶液中の珪酸の重量平均分子量が600未満であることを特徴とする請求項1に記載の多孔質シリカ系粒子の製造方法。
【請求項3】
前記第二工程において、前記珪酸溶液は珪酸塩溶液を脱アルカリ処理して得られ、脱アルカリ処理後24時間以内に前記シリカゾルと混合されることを特徴とする請求項1または2に記載の多孔質シリカ系粒子の製造方法。
【請求項4】
前記第二工程において、前記珪酸溶液は珪酸塩溶液であり、前記シリカゾルと混合された後で脱アルカリ処理され、脱アルカリ処理から24時間以内に前記第三工程が行われることを特徴とする請求項1または2に記載の多孔質シリカ系粒子の製造方法。
【請求項5】
前記第三工程において、ドラムドライヤー、スラリードライヤーまたはジェットドライヤーを用いて前記スラリーを乾燥させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の多孔質シリカ系粒子の製造方法。
【請求項6】
前記第三工程において、前記スラリーは5〜25リットル/時で供給されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の多孔質シリカ系粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗擦により崩壊する多孔質シリカ系粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
洗浄用化粧料には、物理的作用により古い角質層を剥ぎ落とすスクラブ剤が含まれている。スクラブ剤としては、微細なプラスチック粒子(例えば、ポリエチレン粒子)が知られている(特許文献1)。プラスチック粒子は、殺虫剤などの化学物質を吸収し易く、また、軽いため下水処理場で除去し難い。そのため、河川、海洋、池沼等に流れ込み、魚介類に蓄積し、これらを通して人体にも影響する虞がある。
【0003】
そこで、環境に影響を及ぼすプラスチック粒子の代りに、スクラブ剤としてシリカゲル粒子を用いることが知られている(例えば、特許文献2を参照)。特許文献2には、特定のシリカゲル粒子からなるスクラブ剤は、使用時のスクラブ感が良好であるとともに、塗擦時に粒子が崩壊することにより対象物への刺激が低いことが開示されている。
【0004】
しかし、このシリカゲル粒子は50〜700%の含水率を有し、製造方法から多孔性と推察される。そのため、以下に示すナノマテリアルの定義に該当する懸念がある。ナノマテリアルに該当する粒子が、直ちに環境、健康、安全上、重大な問題を生じると確認された訳ではないが、使用者、消費者から、ナノマテリアルに該当する粒子の使用を避けることが求められるであろう。
【0005】
ここで、欧州委員会より2011年10月18日付けの勧告で、以下のいずれかを満たすものがナノマテリアルに該当すると定義された。(1)1〜100nmの粒度分布が50個数%を超えるもの。(2)単位体積当たりの比表面積(SA)が60m2/cm3を超えるもの(シリカの比重を2.2g/cm3とすると、単位重量当たりの比表面積が27m2/gを超えるもの)。
従来の多孔質シリカ系粒子は、ナノサイズの細孔と高い比表面積を有しており、ナノマテリアルに該当する。
【0006】
今後、ナノマテリアルの定義がREACHに導入された場合、該当する粒子の利用に対して、いろいろな書類の提出が求められる可能性がある。そのため、手続きに時間と費用がかかり、産業利用上で支障をきたす虞がある。
【0007】
また、特許文献3には崩壊性粒子を含む化粧料が開示されている。ここで、粒径は100〜2000μm、一次粒子の平均粒径は100μm以下、微小圧縮強度は0.002〜0.1kgf/mm2である。しかしながら、この化粧料は、一次粒子が大きいため、粒子自体の強度が高い。そのため、角質を傷つけやすい、ザラザラした感覚が大きいなど、スクラブ剤に要求される感覚特性が得られ難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−278778号公報
【特許文献2】特開2011−225548号公報
【特許文献3】特開平10−226621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、感覚特性が優れ、かつ、ナノマテリアルの定義に該当しないシリカ系粒子がスクラブ剤として望まれている。そこで、本発明は、適度な塗擦力で崩壊する多孔質シリカ系粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するため、本発明の多孔質シリカ系粒子の製造方法は、平均粒子径100超〜1000nmのシリカ系微粒子が固形分濃度25〜50質量%含まれるシリカゾルを用意する第一工程と、シリカゾルと珪酸成分が固形分濃度1〜40質量%含まれる珪酸溶液とを混合し、シリカ系微粒子成分と珪酸成分との質量比(シリカ/珪酸)が90/10〜98/2の範囲にあるスラリーを作製する第二工程と、スラリーを100〜400℃、10分以内で乾燥させて、乾燥粉体を得る第三工程と、乾燥粉体を篩分けする第四工程を備えている。このとき、第二工程で得られるスラリー中の珪酸成分の固形分濃度(二酸化珪素換算)は1.5〜7.0質量%である。このような製造方法によれば、以下の特性(i)および(ii)を持つ多孔質シリカ系粒子が得られる。
(i)メジアン径(D50)が100〜1000μm
(ii)1.0〜1.4KPaの荷重で30秒間塗擦した後のメジアン径(DR50)が5〜40μm、最大粒子径(DR100)が15〜200μm
この多孔質シリカ系粒子は皮膚を傷つけない程度の塗擦力で崩壊するため、塗擦中に粒子が徐々に崩壊して小粒子になる。そのため、この多孔質シリカ系粒子をスクラブ剤として用いた洗浄用化粧料は、マイルドな角質層のピーリング効果を示すとともに、皮膚の損傷を防ぐことができる。
さらに、この珪酸溶液をGPCで測定して得られる珪酸の重量平均分子量が600未満であることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1の多孔質シリカ系粒子の、圧縮力と変位の関係を示す図表である。
図2】実施例1の多孔質シリカ系粒子の、圧縮力と変位の関係を示す図表である。
図3】実施例1の多孔質シリカ系粒子の、圧縮力と変位の関係を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の多孔質シリカ系粒子の製造方法は、平均粒子径100超〜1000nmのシリカ系微粒子が固形分濃度25〜50質量%含まれるシリカゾルを用意する第一工程と、シリカゾルと珪酸成分が固形分濃度1〜40質量%含まれる珪酸溶液とを混合し、シリカ系微粒子成分と珪酸成分との質量比(シリカ/珪酸)が90/10〜98/2の範囲にあるスラリーを作製する第二工程と、このスラリーを、100〜400℃、10分以内で乾燥させて、乾燥粉体を得る第三工程と、この乾燥粉体を篩分けする第四工程を備えている。このとき、第二工程で得られるスラリーには珪酸成分が固形分濃度(二酸化珪素換算)で1.5〜7.0質量%含まれている。特に、2.0〜5.0質量%が好ましい。このようなスラリーを乾燥させると、粒子内部の珪酸成分が乾燥初期にゲル化するため、塗擦により崩壊する乾燥粉体が得られる。この乾燥粉体を篩分けして得られる多孔質シリカ系粒子は以下の特性(i)および(ii)を備えており、塗擦中に徐々に崩壊して小粒子になる。
(i)メジアン径(D50)が100〜1000μm
(ii)1.0〜1.4KPaの荷重で30秒間塗擦した後のメジアン径(DR50)が5〜40μm、最大粒子径(DR100)が15〜200μm
【0013】
さらに、上述の製造方法を用いて、以下の特性(iii)〜(vi)の少なくとも一つを備える多孔質シリカ系粒子を得ることができる。すなわち、所定の粒子形状、細孔容積、比表面積、および粒子径の少なくとも一つを備える多孔質シリカ系粒子が作製できる。
(iii)平均円形度が0.1〜0.5
(iv)細孔容積(Pv)が0.1≦Pv<1.0ml/g
(v)比表面積が5〜60m/cm
(vi)最大粒子径(D100)とメジアン径(D50)の比(D100/D50)が3.0以下
【0014】
以下、各工程について詳細に説明する。
はじめに、シリカゾルと珪酸溶液を用意する。シリカゾルはシリカ系微粒子を固形分濃度で25〜50質量%含んでいる。シリカ系微粒子の平均粒子径は100超〜1000nmの範囲にある。この大きさのシリカ系微粒子を一次粒子とする多孔質シリカ系粒子は、塗擦によって一次粒子に崩壊しても、ナノマテリアルに該当することはない。なお、平均粒子径は、レーザー回折法により測定された粒度分布から求める。
珪酸溶液は珪酸成分を固形分濃度で1〜40質量%含んでいる。次に、シリカゾルと珪酸溶液を混合してスラリーを作製する。このとき、シリカ系微粒子成分と珪酸成分との質量比(シリカ/珪酸)が90/10〜98/2の範囲になるように混合される。このスラリーには、珪酸成分が固形分濃度(二酸化珪素換算)で1.5〜7.0質量%含まれている。このようなスラリーを乾燥させると、スラリー内部の珪酸成分のゲル化が乾燥初期に起こり、シリカゾルを構成する一次粒子(シリカ系微粒子)が疎なパッキング構造(凝集構造)を成す。そのため、比表面積が小さい割には細孔容積が大きい多孔質シリカ系粒子が得られる。このような多孔質シリカ系粒子には、適度な塗擦力で崩壊するという特性がある。スラリー中の珪酸成分の固形分濃度が1.5質量%未満の場合には、シリカ系微粒子が密なパッキング構造をとりやすくなる。そのため、細孔容積の大きな多孔質シリカ系粒子を調製することが困難となる。一方、7.0質量%を超えると、珪酸成分の安定性が低下し、経時によって微細なゲル状、または粒子状のシリカが生成される。そのため、比表面積が増加してしまい好ましくない。
【0015】
また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定法(GPC)を用いて、珪酸溶液中の珪酸の重量平均分子量を測定する。重量平均分子量は600未満が好ましい。重量平均分子量が600以上であると珪酸溶液中にゲル状や粒子状のシリカが生成しやすくなり、且つ、バインダー力が低下する虞がある。シリカゾルと珪酸溶液を混合した場合には、なおさら珪酸溶液のゲル化が起こりやすくなる。平均分子量の測定方法には、光散乱測定法(例えば、大塚電子株式会社製ダイナミック光散乱光度計、DLS-7000)も知られている。
【0016】
珪酸溶液には、アルカリ金属珪酸塩、有機塩基の珪酸塩等の珪酸塩溶液を利用できる。アルカリ金属珪酸塩として、珪酸ナトリウムや珪酸カリウムが、有機塩基の珪酸塩として第4級アンモニウムシリケートが挙げられる。さらに、この珪酸塩溶液を脱アルカリ処理することが好ましい。特に、珪酸ナトリウム水溶液(水ガラス)を陽イオン交換樹脂で脱アルカリ処理(Naイオンの除去等)して得られる溶液が適している。脱アルカリ処理後の溶液のpHは1〜8が好ましく、1.5〜4が適している。
【0017】
ここで、脱アルカリ処理後、24時間以内に次工程の処理を行うことが望ましい。すなわち、珪酸塩溶液を脱アルカリ処理した後、24時間以内にシリカゾルと混合しスラリーを作製することが望ましい。あるいは、シリカゾルと珪酸塩溶液の混合溶液に対して脱アルカリ処理を行ってもよい。この場合、脱アルカリ処理後24時間以内に後述する乾燥工程を行うことが望ましい。24時間を超えると、溶液中に微細なゲル状または粒子状のシリカが生成しやすくなり、比表面積が大きくなる虞がある。
【0018】
次に、このスラリーを乾燥させる乾燥工程について説明する。乾燥には、市販のドラムドライヤーを用いた回転乾燥が適している。この他にも、スラリードライヤーによる流動層乾燥、ジェットドライヤーによる気流式乾燥が挙げられる。
【0019】
ドラムドライヤーは、回転するドラム(円筒)の内部に熱媒体を投入し、加熱されたドラムにスラリーを供給し、蒸発・濃縮を行うと同時に、ドラム表面に薄膜状に付着させ、すみやかに蒸発乾燥を行い、ドラムが1回転する間に乾燥物は固定されたナイフにより連続的にドラム表面より掻き取るというものである。この場合、スラリーを5〜25リットル/時の速度で供給することによって、所定の特性を有する乾燥紛体が得られる。
【0020】
スラリーの乾燥温度は100〜400℃、乾燥時間は10分以内である。1分以内が好ましい。10分以上だと、珪酸に由来する100nm以下の微粒子が発生し、比表面積が増大してしまう。乾燥の終了を数値で表すことは出来ないが、スラリーの乾燥開始から乾燥粉体採取開始までの時間を乾燥時間とみなす。
乾燥工程後に篩分け工程を設けている。乾燥粉体を篩分けすることにより、多孔質シリカ系粒子の粒径分布が適切な範囲になる。
また、篩分けの前に乾燥粉体を粉砕しておくことが好ましい。これにより、多孔質シリカ系粒子の収量を増やすことができる。
【0021】
また、乾燥工程の後に焼成工程を設けてもよい。すなわち、乾燥粉体を焼成し、焼成粉体とする。焼成により多孔質シリカ系粒子の圧縮強度を高くすることができる。具体的には、乾燥粉体を、200〜900℃の温度で、1〜24時間焼成する。焼成温度が200℃未満、あるいは焼成時間が1時間未満では、多孔質シリカ系粒子を構成する一次粒子同士のシロキサン結合が十分でないため、圧縮強度の向上が期待できない。焼成温度が900℃を超えると、粒子の焼結により粒子内の細孔が消失し、所望の多孔性が得られない。さらに、結晶性シリカ(クオーツ等)が生成することがあるので好ましくない。また、焼成時間が24時間を超えても、格別の効果が得られないので、経済的ではない。
【0022】
次に、上述した工程で用いた材料に関して詳述する。
シリカ系微粒子の真球度は0.85〜1.00が適している。さらに、シリカ系微粒子の平均粒子径は、最終的に得られる多孔質シリカ系粒子の平均粒子径(d)に対して、0.01〜0.30の範囲にあることが好ましい。
シリカ系微粒子として、シリカ、シリカ−アルミナ、シリカ−ジルコニア、シリカ−チタニアなどの粒子が適用できる。シリカ系微粒子の組成の違いによって多孔質シリカ系粒子の製造条件を変更する必要はない。化粧料に配合することを考慮すると、非晶質シリカが好適である。
【0023】
また、スラリーには、必要に応じて有機系微粒子を含ませてもよい。有機系微粒子としては、天然ゴム、スチレン−ブタジエン系共重合体、アクリレート系ラテックス、ポリブタジエンなどのポリマーラテックス粒子が例示できる。有機系微粒子の平均粒子径はシリカ系微粒子と略同等であることが望ましい。すなわち、平均粒子径は100〜1000nmが適している。このような有機系微粒子を含む乾燥粉体を大気圧下または減圧下、400〜1200℃で加熱処理すると、有機系微粒子が消失するために、さらに細孔容積の大きな多孔質シリカ系粒子が得られる。
【0024】
次に、上述した製造方法により得られる多孔質シリカ系粒子の物性について説明する。多孔質シリカ系粒子は、メジアン径(D50)が100〜1000μmであり、1.0〜1.4KPaの荷重で30秒間塗擦した後のメジアン径(DR50)が5〜40μm、最大粒子径(DR100)が15〜200μmである。さらに、平均円形度が0.1〜0.5、最大粒子径(D100)とメジアン径(D50)との比(D100/D50)が3.0以下であることが好ましい。これらの値は、粒子群のSEM(走査型電子顕微鏡)写真を撮影し、無作為に選択した粒子100〜200個の画像データから求める。また、窒素吸着法により求めた多孔質シリカ系粒子の細孔容積(Pv)は、0.1ml/g以上、1.0ml/g未満が好ましい。BET法により求めた単位体積当たりの比表面積は、5〜60m/cmが好ましい。
【0025】
このような特性を持つ多孔質シリカ系粒子は洗浄用化粧料に適している。この洗浄用化粧料を用いると、粒子の稜が肌に接触することにより、使用者は塗擦開始時に瞬間的に硬いスクラブ感を得られる。このため、使用者はスクラブ感を得るために強い塗擦力(押込圧力)で洗浄用化粧料を擦り込む必要がない。すなわち、自然と弱い塗擦力で擦り込まれるようになり、塗擦によるヒリヒリ感が抑えられ、また、皮膚の損傷や角質層への微小な傷が防げることとなる。そのため、角質層のバリア機能や水分保持機能の低下が防止できる。
【0026】
ここで、細孔容積が0.1ml/g未満であると、粒子自体の多孔性が低いことから、粒子強度が高く、肌に塗擦した際に粒子が崩壊せず、皮膚の損傷や角質層への微小な傷が発生することが懸念される。また、細孔容積が1.0ml/gを超えると、粒子自体の多孔性が高いことから粒子強度が低く、皮膚に触れた瞬間に適度な刺激を感じることが出来ず、スクラブ剤に求められる適度な触覚が得られ難い。さらに、化粧料を調製する工程中に粒子が崩壊し易くなり、化粧料の品質安定性が低下する虞がある。
【0027】
また、多孔質シリカ系粒子は、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、群青、紺青、または有機顔料の少なくとも一つを含む微粒子を0.1〜5質量%含んでいてもよい。この範囲内であれば、多孔質シリカ系粒子の内部に当該微粒子を均一に含むことができる。酸化鉄としては、酸化第二鉄、α−オキシ水酸化鉄、四酸化三鉄が例示できる。当該微粒子の平均粒子径は、シリカ系微粒子と同等であることが望ましい。すなわち、平均粒子径は100nm〜1000nmの範囲が適している。当該微粒子を含有することで、着色した多孔質シリカ系粒子が得られる。
【0028】
[洗浄用化粧料]
上述した多孔質シリカ系粒子と、以下に述べる各種洗浄用の化粧料成分とを配合して洗浄用化粧料が得られる。
各種洗浄用の化粧料成分として、公知の成分を適宜含有することができる。例えば、非イオン系、カチオン系、アニオン系または両性の各種界面活性剤、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、ラウリルアルコール、エタノール、イソプロパノール、ブチルアルコール、ミリスチルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等のアルコール類、アラビアガム、カラギーナン、寒天、キサンタンガム、ゼラチン、アルギン酸、グアーガム、アルブミン、プルラン、カルボキシビニルポリマー、セルロース及びその誘導体、ポリアクリル酸アミド、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール等の各種高分子、増粘剤、湿潤剤、着色料、防腐剤、感触向上剤、香料、殺菌剤、消炎剤、体質顔料、紫外線吸収剤等を用いることができる。
【0029】
さらに、医薬部外品原料規格2006(発行:株式会社薬事日報社、平成18年6月16日)や、International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook(発行:The Cosmetic, Toiletry, and Fragrance Association、Fourteenth Edition 2014)等に収載されている化粧料成分を使用することができる。
このような洗浄用化粧料は、従来公知の方法で製造することが可能であり、高度な配合技術を駆使する必要はない。この洗浄用化粧料は、ペースト状、液状、ゲル状などの形態であり、具体的には、ボディ用途洗浄用化粧料、足用途洗浄用化粧料、顔用途洗浄用化粧料などが挙げられる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例を具体的に説明する。はじめに多孔質シリカ系粒子について説明する。
[実施例1]
市販のシリカゾル(日揮触媒化成(株)製:SS−160、平均粒子径160nm、シリカ濃度20質量%)20kgをロータリーエバポレーターで濃縮して、シリカ濃度40質量%のシリカゾル10kgを得る。このシリカゾルに、珪酸塩溶液としてJIS3号水硝子726g(シリカ濃度29質量%)を加える。さらに、陽イオン樹脂(三菱化成社製、SK−1B)を一気に加えてpHを2.5とする。その後、陽イオン交換樹脂を分離する。これにより、脱アルカリ処理(Naイオンの除去等)がなされ、シリカ系微粒子濃度37.3質量%、水硝子由来の珪酸濃度2.0質量%、全固形分濃度39.3質量%のスラリーが得られる。
【0031】
このスラリーを、150℃、1.5rpmで回転中のドラムドライヤー(カツラギ工業(株)製、D−0405)に、10L/hrの流量で供給して乾燥させる。このとき、乾燥時間は40秒である。脱アルカリ処理から24時間以内に、この乾燥工程を行なった。その後、ジューサーミキサー(日立製作所(株)製)で10秒間粉砕して、乾燥粉体を得る。さらに、この乾燥粉体を26mesh篩(JIS試験用規格篩)でふるい、多孔質シリカ系粒子の乾燥粉体を得た。この乾燥粉体を500℃で4時間焼成して多孔質シリカ系粒子の焼成粉体を作製する。各実施例の多孔質シリカ系粒子の製造条件を表1に示す。
このようにして得られた各実施例の多孔質シリカ系粒子の物性を以下のように測定・評価した。その結果を表2に示す。
【0032】
(1)平均粒子径
平均粒子径は、レーザー回折法により測定された粒度分布から求めることができる。ここでは、粒子径分布測定装置LA-950(株式会社堀場製作所製)を用いて粒度分布を測定した。
(2)平均円形度、メジアン径(D50)、最大粒子径(D100)、およびD100/D50
これらの値は、多孔質シリカ系粒子群のSEM(走査型電子顕微鏡)写真(倍率:100倍)を撮影し、SEM用画像解析ソフトウェア((株)オリンパス製Scandium)を用いて、無作為に選択した粒子100〜200個の画像データより求める。
(3)形状
前述のSEM写真を観察し、形状を判断する。本実施例による多孔質シリカ系粒子の形状は球状や楕円体ではなく、破砕状であった。
【0033】
(4)比表面積
多孔質シリカ系粒子の粉体を磁性ルツボ(B−2型)に約30ml採取し、105℃の温度で2時間乾燥後、デシケーターに入れて室温まで冷却する。次に、サンプルを1g取り、全自動表面積測定装置(湯浅アイオニクス社製、マルチソーブ12型)を用いて、比表面積(m/g)をBET法にて測定し、シリカの比重2.2g/cmで単位質量当たりの比表面積(m/cm)に換算する。
【0034】
(5)細孔容積
多孔質シリカ系粒子の粉体10gをルツボに取り、105℃で1時間乾燥後、デシケーターに入れて室温まで冷却する。次いで、よく洗浄したセルに1g試料を取り、窒素吸着装置を用いて窒素を吸着させ、以下の式から細孔容積を算出する。
細孔容積(ml/g)=(0.001567×(V−Vc)/W)
上記の式で、Vは圧力735mmHgにおける標準状態の吸着量(ml)、Vcは圧力735mmHgにおけるセルブランクの容量(ml)、Wは試料の質量(g)を表す。また、窒素ガスと液体窒素の密度の比は0.001567とする。
【0035】
(6)SiO濃度
多孔質シリカ系粒子の粉体0.2gを白金皿で精秤し、硫酸10mlと弗化水素酸10mlを加えて、砂浴上で硫酸の白煙が出るまで加熱する。冷却後、水約50mlを加えて加温溶解する。冷却後、水200mlに希釈しこれを試験溶液とする。この試験溶液について誘導結合プラズマ発光分光分析装置(島津製作所(株)製、ICPS−8100、解析ソフトウェアICPS−8000)を使用し、多孔質シリカ系粒子のSiO2濃度を求める。
【0036】
(7)塗擦後の最大粒子径(DR100)とメジアン径(DR50
電子天秤((株)AND製HF4000)上にウレタンエラストマー製の人工皮膚(株式会社ビューラックス製、バイオスキンプレート、品番P001-001#20、195×130×5Tmm)をセットし、人工皮膚の中央部に多孔質シリカ系粒子の粉体0.2gに純水3.8gを加えたスラリーを垂らした。続いて指4本を使用して1.0〜1.4KPaの荷重で円弧状に30秒間塗擦した。この人工皮膚の中央部のスラリーを採取し、SEM(走査型電子顕微鏡)写真(倍率:100倍)を撮影し、無作為に選択した粒子100〜200個の画像データから、前述のSEM用画像解析ソフトウェアを用いて最大粒子径(DR100)とメジアン径(DR50)を計測する。
【0037】
(8)圧縮変位
多孔質シリカ系粒子に圧縮力を加えた時に生じる圧縮変位を、微小圧縮試験機「MCT−210」(島津製作所社製)を用いて測定する。圧子は「FLAT200」(島津製作所社製)を使用する。測定結果を図1図3に示す。図1は、0から0.5gfの圧縮力を圧縮速度0.21gf/secで印加したときの多孔質シリカ系粒子の変位を示すグラフである。圧縮力0.5gf(圧縮力f1)における変位量を求めることができる。0.5gfの圧縮力f1を加えたとき、0.5〜3μmの変位が発生することが好ましい。本実施例では約1.0μmである。
【0038】
図2は、0から2.5gfの圧縮力を圧縮速度0.21gf/secで印加したときの多孔質シリカ系粒子の変位を示すグラフである。この時、0.01〜1.0μmの階段状の変位が5回以上発生することが好ましい。グラフ上で、圧縮力が変化していないのに変位が増えている箇所が階段状の変位である。図中、階段状の変位の開始点を▼で示している。本実施例では、階段状の変位が13回出現している。このとき、それぞれの変位量は0.01〜1.0μmである。圧縮力2.5gf(圧縮力f2)における変位d2(μm)を求め、圧縮変位の傾き(f2/d2)を算出する。圧縮変位の傾き(f2/d2)は0.5〜2.5の範囲が好ましい。本実施例では0.9である。
【0039】
さらに、多孔質シリカ系粒子に圧縮力の印加を継続する。ここでも圧縮力は0.21gf/secの割合で増加して印加される。圧縮力が大きくなると、10μm以上の階段状変位が発生する。図3は、10μm以上の階段状変位が出現するまで圧縮力を印加したときの、多孔質シリカ系粒子の変位を示すグラフである。10μm以上の階段状変位が現れた時の圧縮力をf3とする。圧縮力f3は5〜40gfの範囲であることが好ましい。圧縮力f3における変位d3(μm)を求め、圧縮変位の傾き(f3/d3)を算出する。ここで、変位d3は10μm以上の階段状変位が始まった時点で測定された変位である。圧縮変位の傾き(f3/d3)は0.3〜1.25の範囲が好ましい。本実施例では圧縮力f3は9.8gfであり、圧縮変位の傾き(f3/d3)は1.0である。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
[実施例2]
表1に示すように、粉砕時間を45秒間、篩を83mesh篩(JIS試験用規格篩)とした。これ以外は実施例1と同様に、多孔質シリカ系粒子を作製し、評価した。
【0043】
[実施例3]
本実施例では、原料シリカゾルに日揮触媒化成(株)製のSS−550(平均粒子径550nm、シリカ濃度20質量%)を用いた。これ以外は実施例1と同様に、多孔質シリカ系粒子を作製し、評価した。
【0044】
[実施例4]
本実施例では、シリカ濃度40質量%のシリカゾルを9.9kgとし、スラリーに第三成分としてα−酸化鉄(II)を40g添加した。これ以外は実施例1と同様に、孔質シリカ系粒子を作製し、評価した。
【0045】
[実施例5]
焼成工程を行わなかった以外は実施例1と同様に、多孔質シリカ系粒子を作製し、評価した。
【0046】
[実施例6]
本実施例では、シリカ濃度40質量%のシリカゾル10.0kgを用い、珪酸塩溶液としてJIS3号水硝子1.2kg(シリカ濃度29質量%)を用いた。これ以外は実施例1と同様に、多孔質シリカ系粒子を作製し、評価した。
【0047】
[実施例7]
本実施例では、シリカゾル(日揮触媒化成(株)製:SS−160、平均粒子径160nm、シリカ濃度20質量%)22.5kgをロータリーエバポレーターで濃縮して、シリカ濃度45質量%のシリカゾル10kgとした。このシリカゾルに、珪酸塩溶液としてJIS2号水硝子1.4kg(シリカ濃度35質量%)を加えた。これ以外は実施例1と同様に、多孔質シリカ系粒子を作成し、評価した。
【0048】
[比較例1]
スラリーに含まれるシリカ系微粒子成分と珪酸成分の質量比(シリカ/珪酸)を60/40とした。これ以外は実施例1と同様に、多孔質シリカ系粒子を作製し、評価した。珪酸成分が多いため、多孔質シリカ系粒子を構成する一次粒子の間隙に珪酸が入り込んで二次粒子が作製される。そのため、粒子の強度が高くなり、また、細孔容積が小さくなる。したがって、所望の崩壊性を持つ多孔質シリカ系粒子が得られなかった。
【0049】
[比較例2]
ふるい工程を行わない以外は実施例1と同様に、多孔質シリカ系粒子を作製し、評価した。本比較例では、篩工程を経ていないため、粗大粒子が多く存在し、最大粒子径が大きくなる。そのため、弱い塗擦力であっても塗擦開始時に皮膚を損傷する虞れがある。
【0050】
[比較例3]
珪酸成分の代りに純水を加えてスラリーを作製し、スラリーに含まれるシリカ系微粒子成分と珪酸成分との質量比(シリカ/珪酸)を100/0とした。これ以外は実施例1と同様に、多孔質シリカ系粒子を作製し、評価した。シリカ系微粒子のみで構成されているため、粒子の強度が弱く、低い圧縮力で崩壊してしまい、スクラブ効果を得ることができない。
【0051】
[比較例4]
乾燥温度を110℃、乾燥時間を60minに変更したこと以外は実施例1と同様に、多孔質シリカ系粒子を作製し、評価した。
【0052】
[比較例5]
原料シリカゾルに日揮触媒化成(株)製のSI−30(平均粒子径11nm、シリカ濃度20質量%)を用いた以外は実施例1と同様に多孔質シリカ系粒子を作製し、評価した。シリカ系微粒子の平均粒径が小さいため、多孔質シリカ系粒子の比表面積が大きく、また、粒子の強度が大きい。したがって、所望の崩壊性が得られない。
【0053】
[ボディ洗浄用化粧料の調製]
実施例1〜7または比較例1〜5で得られた多孔質シリカ系粒子を成分(1)として、表3に示す配合比率(質量%)となるように、各成分(2)〜(15)をビーカーに入れ、ホモジナイザーを使用して撹拌し、均一に混合した。
これにより、実施例1〜7の多孔質シリカ微粒子を配合したボディ洗浄用化粧料A〜Gと、比較例1〜5の多孔質シリカ微粒子を配合した化粧料a〜eが得られる。
【0054】
【表3】
【0055】
次いで、このようにして得られた化粧料A〜Gおよび化粧料a〜eの使用感(塗布中の感触と塗布後の感触)について、以下の試験法で評価した。
[洗浄用化粧料の使用感の評価]
多孔質シリカ系粒子を配合した洗浄用化粧料について、20名の専門パネラーによる官能テストを行い、スクラブ感、ヒリヒリ感のなさ、洗浄後の肌のつや、洗浄後の肌のくすみのなさ、洗浄後のヒリヒリ感のなさ、の5つの評価項目に関して聞き取り調査を行う。その結果を以下の評価点基準(a)に基づいて評価する。また、各人がつけた評価点を合計し、以下の評価基準(b)に基づき洗浄用化粧料の使用感に関する評価を行った。
【0056】
評価点基準(a)
5点:非常に優れている。
4点:優れている。
3点:普通。
2点:劣る。
1点:非常に劣る。
【0057】
評価基準(b)
◎:合計点が80点以上
○:合計点が60点以上80点未満
△:合計点が40点以上60点未満
▲:合計点が20点以上40点未満
×:合計点が20点未満
【0058】
評価結果を表4に示す。その結果、化粧料A〜Gは、その使用感が洗浄中、洗浄後においても非常に優れていることが分かった。しかし、化粧料a〜eは、その使用感がよくないことが分かった。
【0059】
【表4】

図1
図2
図3