(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図に沿って説明する。
【0011】
図2にインクジェット記録装置の構成図の例を示す。
101はインクジェット記録装置全体を制御するMPU(マイクロプロセッシングユニット)、102はインクジェット記録装置内で一時的にデータを記憶しておくRAM(ランダムアクセスメモリー)、103は帯電制御プログラムを記憶するROM(リードオンリーメモリ)、104は印字段数、文字サイズ、及び印字内容など設定データ群を入力するパネル、105は実際に印字する帯電電圧データを保存する帯電RAM、106は被印字物信号検出回路、107は印字物を検出するセンサ、108は文字信号発生回路、109はデータ等を送るバス、110はインクジェット記録装置のヘッド、111はインクを噴出するノズル、112はノズルより噴出したインクが粒子になりそのインク粒子に電荷を加える帯電電極、113は帯電したインク粒子を偏向する偏向電極、114は印字に使用しないインクを回収するガター、115はガターより回収されたインクを再びノズルへ供給するポンプ、116は印字の対象となる被印字物、117は被印字物を搬送するベルトコンベアである。
【0012】
次に、印字すべき文字の印字データを入力してから印字が完了するまでの一連の動作概要について述べる。
【0013】
パネル104より入力された印字の印字データは、バスライン109を介してRAM102に格納される。パネル104より印字データの入力終了の指示を入力すると、MPU101は印字データを、バスライン109を介してRAM102に格納する。格納後、MPUはROM103に記憶しているプログラムで送信された印字内容を階段波状のデータに変換してバスライン109を介して帯電RAM105に格納する。被印字物センサ107が被印字物を検知すると、被印字物検知回路106、バスライン109を通じてMPU101へ印字開始の指令が届く。MPU2は作成された階段波状のデータを帯電RAM105から取り出し、バスライン109を介して文字信号発生回路108へ送る。
【0014】
文字信号発生回路108は送られてきた階段波状のデータを文字信号(階段波状の帯電信号)に変更し、帯電電極112へ送出する。ノズル111より噴出されたインクは帯電電極112内で粒子化するとともに階段波状をなす帯電信号の電荷を受け、偏向電極113により偏向され、被印字物116へインクが飛行、付着し印字に供する。印字に使用されなかった無帯電のインク粒子はガター114で回収され、ポンプ115によって再びノズル111へ供給される。
【0015】
図3は、従来のインクジェット記録装置におけるドットパターンの階段波と印字時間との関係を示す図である。
【0016】
従来機にて10×12の図形から抜粋された縦列のドットパターンの階段波およびその縦列の印字時間の図である。従来制御として、縦1列の印字時間は、荷電に関わらず縦列の噴出ドット数が決定するため、10×12を印字する場合には、数(1)で縦一列印字時間が算出できる。
【0017】
(数1)
縦1列印字時間t1=12×(1/励振周波数)
縦列のドットパターンから階段波を作成する際に、1列目のインク粒子が(2)(3)(4)(9)(10)(11)の順で帯電され、残るインク粒子は帯電されず,印字に用いられない無荷電インク粒子としてガター114に回収される。この時、それぞれのインク粒子の帯電量は((2)→Q2)、((3)→Q3)、((4)→Q4)、((9)→Q9)、((10)→Q10)、((11)→Q11)となっている。
【0018】
同様に、2列目のインク粒子が(4)(9)の順で帯電される。残るインク粒子は帯電されず,印字に用いられない無荷電インク粒子としてガター114に回収される。この時、それぞれのインク粒子の帯電量は((4)→Q4)、((9)→Q9)となっている。
【0019】
また、
図3にある12×16の図形から抜粋された縦列のドットパターンの階段波およびその縦列の印字時間について説明する。縦1列の印字時間は、荷電に関わらず縦列の噴出ドット数が決定するため、12×16を印字する場合には、数(2)で縦1列印字時間が算出できる。
【0020】
(数2)
t2=16×(1/励振周波数)
縦列のドットパターンから階段波を作成する際に、1列目のインク粒子が(3)(4)(5)(13)(14)(15)の順で帯電される。残るインク粒子は帯電されず,印字に用いられない無荷電インク粒子としてガター114に回収される。この時、それぞれのインク粒子の帯電量は((3)→Q3)、((4)→Q4)、((5)→Q5)、((13)→Q13)、((14)→Q14)、((15)→Q15)となっている。同様に、2列目のインク粒子(5)(13)の順で帯電される。残るインク粒子は帯電されず,印字に用いられない無荷電インク粒子としてガター114に回収される。この時、それぞれのインク粒子の帯電量は((5)→Q5)、((13)→Q13)となっている。
【0021】
図1は、本発明に係るインクジェット記録装置におけるドットパターンの階段波と印字時間との関係を示す図である。
【0022】
本発明にて10×12と12×16の図形から抜粋された縦列のドットパターンの階段波およびその縦列の印字時間の図である。ドットパターンの各縦列ごとに印字用ドット数を算出する。各縦列における印字用ドット数を比較し、最大値を決定する。ここでは、印字用ドット数の最大個数は6個と算出される。縦一列の印字時間は印字用最大ドット数に依存するため、ここでは、数(3)に基づき縦1列の印字時間T1=6×(1/励振周波数)が算出できる。
【0023】
(数3)
縦1列の印字時間T=(印字用最大ドット数)×(1/励振周波数)
縦列のドットパターンから階段波を作成する際には、1列目に印字される6個のインク粒子(2)(3)(4)(9)(10)(11)が順番に帯電される。この時、それぞれのインク粒子の帯電量は((2)→Q2)、((3)→Q3)、((4)→Q4)、((9)→Q9)、((10)→Q10)、((11)→Q11)となっている。
【0024】
同様に、2列目に印字する2つのインク粒子は(4)(9)で、この順で帯電される。このとき、それぞれのインク粒子の帯電量は((4)→Q4)、((9)→Q9)となっている。印字用最大ドット数6に対して、2列目の印字ドットは2であるので、印字に用いられない無荷電インク粒子4個を挿入することで各縦列の印字時間を1列目と同一にする。
次に、12×16の図形から抜粋された縦列のドットパターンの階段波およびその縦列の印字時間について説明する。
【0025】
ドットパターンの各縦列の印字用ドット数を比較することで、印字用最大ドットが6個であることが算出できる。また、縦一列の印字時間は、印字用最大ドット6に基づき縦1列の印字時間T1=6×(1/励振周波数) と算出できる。
【0026】
縦列のドットパターンから階段波を作成する際には、1列目に印字される6個のインク粒子(3)(4)(5)(13)(14)(15)がこ順に帯電される。この時、それぞれのインク粒子の帯電量は((3)→Q3)、((4)→Q4)、((5)→Q5)、((13)→Q13)、((14)→Q14)、((15)→Q15)となっている。
【0027】
同様に、2列目に印字する2つのインク粒子は(5)(13)で、この順で帯電される。このとき、それぞれのインク粒子の帯電量は((5)→Q5)、((13)→Q13)となっている。印字用最大ドット数6に対して、2列目の印字ドットは2であるので、印字に用いられない無荷電インク粒子4個を挿入することで各縦列の印字時間を1列目と同一にする。
【0028】
上記記述により、縦列の印字用最大ドット数に基づき縦列の印字時間を設定することで、縦列の印字時間を最小限に抑えられ、かつ、印字速度を向上させることができるという効果を奏する。
【0029】
図4は、本発明に係るインクジェット記録装置におけるドットパターンの階段波と印字時間との関係を示す図である。
【0030】
本発明にて10×12の図形を印字するときに用いる縦列の印字時間の調整の図である。抜粋された縦列のドットパターンの階段波およびその縦列の印字時間について説明する。
【0031】
図4の上図は、既に示した
図1と同様の実施形態を示すので説明を省略する。
【0032】
図4の下図は、印字時間を任意に設定可能であることを示す実施例である。
【0033】
ドットパターンの各縦列の印字用ドット数を算出して比較することで、印字用最大ドット数が6個であることを算出する。
【0034】
ここで、縦一列の印字時間は最短で6とすることができるが、被印字物を運ぶラインやコンベアの条件等環境に併せて適宜印字時間を増やすことが可能で、例えばここでは縦一列の印字時間を7と設定することとする。印字用最大ドットは6であるので、縦列に印字用ドットと非印字用ドットを1個加えることにより、数式に基づき縦1列の印字時間をT2=7×(1/励振周波数)と算出する。
【0035】
階段波を作成する際には、1列目に印字されるインク粒子(2)(3)(4)(9)(10)(11)を順番に帯電した上で非印字用ドットを1個挿入する。この時、それぞれのインク粒子の帯電量は((2)→Q2)、((3)→Q3)、((4)→Q4)、((9)→Q9)、((10)→Q10)、((11)→Q11)となっている。
【0036】
同様に、2列目のインク粒子は(4)(9)でこの順で帯電される。印字用ドット粒子それぞれの帯電量は((4)→Q4)、((9)→Q9)となっている。ここでは、印字用最大ドットは7であるので、印字に用いられない無荷電インク粒子を5個挿入することで各縦列の印字時間を1列目と同一にする。
【0037】
上記記述により、縦配列の印字用最大ドット数に対して非印字用ドットを任意個数加えて使用することにより、縦配列の印字時間を自由に設定することができ、工場のライン環境への調整が容易なインクジェット記録装置およびその制御方法を提供することができる。
【0038】
次に制御のアルゴリズムについて、
図5、
図6、
図7に沿って説明する。
【0039】
図5は、本発明に係るインクジェット記録装置におけるドットパターンの階段波と印字時間との関係を示す図である。
図5の上図は従来手法、下図は本発明の説明である。
【0040】
IJPはテーブルから帯電要ドットに対して必要な帯電電圧を作成し、帯電RAMに保存する。実際印字をする際に、帯電RAMの先頭から順番的に取り出し、帯電電極に電圧をかけ、粒子に帯電させる。
【0041】
ここで、従来手法においては、帯電RAMの各テーブルに各ドットの帯電量を記憶させる。
図5の上図に示すように、帯電しないドットに対応するテーブルには帯電量0が記憶される。一方、
図5の下図にて示した本発明では、帯電RAMはドットパターンにおいて帯電する(0以外)ドットの帯電量のみを記憶する。印字用最大ドット数よりも印字ドットの縦列(例えば2列目)では、帯電させないドットに対応する帯電RAMの部分に0を記憶させておく。
【0042】
図6は印字用最大ドット数を検索するフローチャートである。
【0043】
運転開始(S601)後、まず印字列数(印字ライン数)を読込む(S602)。ここで、印字列数とは1文字当たりの各列数(横ドット数)と印字文字数との積である。1文字当たり(10×12ドットマトリクス)の文字が5文字あるときは、50印字ラインになる。
【0044】
次に、最初印字用最大ドット数を0と設定する(S603)。
【0045】
この後、印字対象文字列(上記例では5文字)の1列目から順に縦配列のドットパターンを読込む(S604)。これにより、1列ごとに1列分印字用ドット数を取得する(S605)。予め記憶した印字用最大ドット数(初期値は0)とS605で取得した1列分印字用ドット数とを比較し(S606)、印字用最大ドット数が1列分印字ドット数以下の場合には新たに取得した1列分印字ドット数を印字用最大ドット数として、印字用最大ドット数を更新する(S607)。S604からS607までが完了すると、次の印字列数に進み(S608)、最終列まで順次S604からS607までを行う(S609)。最終列まで処理が済むと完了となる(S610)。
図7は、各縦配列ドットの帯電有無に基づき所定の帯電量を帯電RAMに保存する方法に関するフローチャートである。
【0046】
開始(S701)後、1列分のドットデータを読込み(S702)、該当列の各印字用ドットの位置を取得する(S703)。
【0047】
次に、ドットデータ1個目から順に帯電可否を判断する(S704)。帯電要のドットについては、帯電電圧データを帯電RAMに保存し(S705)、帯電ドット数を+1する(S706)。次に、ドット位置を更新し(S707)、同一縦列内の次のドットについてS702からS707までの処理を行う(S708)。
【0048】
縦一列の全てのドットについてS702からS707までの処理が完了すると、
図6にて予め定めた印字用最大ドット数から当該列の帯電ドット数を引いた値を出力補正数として算出し(S709)、出力補正数の分だけ帯電RAMに0(帯電しない)を保存する(S710)。このように縦一列について処理が完了すると、次の列に進み(S711)、全印字列(上記例では50列)全てについて処理が完了すると(S712)、終了となる(S713)。