特許第6768339号(P6768339)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6768339
(24)【登録日】2020年9月25日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】送風装置
(51)【国際特許分類】
   F04B 45/047 20060101AFI20201005BHJP
【FI】
   F04B45/047 B
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-91131(P2016-91131)
(22)【出願日】2016年4月28日
(65)【公開番号】特開2017-198164(P2017-198164A)
(43)【公開日】2017年11月2日
【審査請求日】2019年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 晃広
【審査官】 山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−103111(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/148008(WO,A1)
【文献】 特開昭58−140491(JP,A)
【文献】 特開2004−298607(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 45/047
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延びる中空の筒状部と、
中央部に内開口部を有し、前記筒状部の一端側に設けられた表板部と、
前記筒状部の他端側に設けられた底板部と、
前記筒状部の内部において、前記筒状部の内部空間を前記軸方向に二分割するように配置され、その周縁部が前記筒状部の内部壁に固定され、少なくともその略中央部が前記表板部側と前記底板部側との間において移動可能に設けられたダイヤフラムと、
前記ダイヤフラムに対して、その略中央部が前記表板部側と前記底板部側との間を往復移動させるための振動力を与える駆動装置と、
前記筒状部の外周面との間に所定の隙間を設けるように配置された、軸方向に延びる中空の外筒状部と、
前記表板部の外面との間に所定の隙間を設けるように配置されるとともに、中央部に表開口部を有し、前記外筒状部の一端側に設けられた外表板部と、を備え、
前記筒状部の外周面と前記外筒状部との間の前記隙間、および、前記表板部の外面と前記外表板部との間の前記隙間において、空気取入れ通路を構成し、
前記駆動装置の一端が前記ダイヤフラムに固定され、前記駆動装置の他端が前記底板部に固定されている、送風装置。
【請求項2】
前記筒状部の他端側において、前記空気取入れ通路は環状に開放している、請求項1に記載の送風装置。
【請求項3】
前記底板部の外面との間に所定の隙間を設けるように配置されるとともに、中央部に裏開口部を有し、前記外筒状部の他端側に設けられた外底板部と、
前記裏開口部を塞ぐように設けられるフィルタ部材と、
をさらに備える、
請求項1または請求項2に記載の送風装置。
【請求項4】
前記空気取入れ通路には、加熱装置が配置されている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の送風装置。
【請求項5】
前記空気取入れ通路には、イオン発生装置が配置されている、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の送風装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の送風装置を行列状に複数配置した、送風装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送風装置に関し、空気砲の原理を用いた送風装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、翼(ファン)をモータ等の駆動装置により回転駆動させる送風装置が、扇風機としてよく知られている。翼(ファン)を用いる送風装置においては、風の送り方向における幅が厚くなるという課題がある。
【0003】
ダイヤフラムを振動させることで、空気を渦輪(空気渦)を形成して、空気を送り出すシステムが、特開2008−215677号公報(特許文献1)、特開2008−275196号公報(特許文献2)、特開2010−54146号公報(特許文献3)、および、特開2014−85086号公報(特許文献4)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−215677号公報
【特許文献2】特開2008−275196号公報
【特許文献3】特開2010−54146号公報
【特許文献4】特開2014−85086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1から特許文献4に開示される装置においては、ダイヤフラムの前方の空間に空気を送り込むための空間や、装置が必要とされている。これらの空間および装置は、比較的大きな領域を専有し、送風装置の小型化を阻害する要因となっている。
【0006】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、送風量を低下させることなく、装置の小型化、特に、空気の送り方向における装置の幅を小さくすることが可能な構成を備える送風装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に基づいた送風装置においては、軸方向に延びる中空の筒状部と、中央部に内開口部を有し、上記筒状部の一端側に設けられた表板部と、上記筒状部の他端側に設けられた底板部と、上記筒状部の内部において、上記筒状部の内部空間を上記軸方向に二分割するように配置され、その周縁部が上記筒状部の内部壁に固定され、少なくともその略中央部が上記表板部側と上記底板部側との間において移動可能に設けられたダイヤフラムと、上記ダイヤフラムに対して、その略中央部が上記表板部側と上記底板部側との間を往復移動させるための振動力を与える駆動装置と、上記筒状部の外周面との間に所定の隙間を設けるように配置された、軸方向に延びる中空の外筒状部と、上記表板部の外面との間に所定の隙間を設けるように配置されるとともに、中央部に表開口部を有し、上記外筒状部の一端側に設けられた外表板部と、を備える。
【0008】
上記筒状部の外周面と上記外筒状部との間の上記隙間、および、上記表板部の外面と上記外表板部との間の上記隙間において、空気取入れ通路を構成している。
【0009】
他の形態においては、上記筒状部の他端側において、上記空気取入れ通路は環状に開放している。
【0010】
他の形態においては、上記底板部の外面との間に所定の隙間を設けるように配置されるとともに、中央部に裏開口部を有し、上記外筒状部の他端側に設けられた外底板部と、上記裏開口部を塞ぐように設けられるフィルタ部材と、をさらに備える。
【0011】
他の形態においては、上記空気取入れ通路には、加熱装置が配置されている。
他の形態においては、上記空気取入れ通路には、イオン発生装置が配置されている。
【0012】
他の形態においては、上述のいずれかに記載の送風装置を行列状に複数配置している。
【発明の効果】
【0013】
この発明においては、送風量を低下させることなく、装置の小型化、特に、空気の送り方向における装置の幅を小さくすることが可能な構成を備える送風装置の提供を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施の形態1における送風装置の正面図である。
図2図1中のII−II線矢視断面図である。
図3】実施の形態2における送風装置の断面図である。
図4】実施の形態3における送風装置の断面図である。
図5】実施の形態4における送風装置の断面図である。
図6】実施の形態5における送風装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の各実施の形態における、送風装置について図を参照しながら説明する。各実施の形態の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとし、重複する説明は繰り返さない場合がある。各実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、各実施の形態における構成を適宜組み合わせて用いることは当初から予定されていることである。
【0016】
(実施の形態1:送風装置100)
図1および図2を参照して、本実施の形態における送風装置100について説明する。図1は、送風装置100の正面図、図2は、図1中のII−II線矢視断面図である。
【0017】
本実施の形態の送風装置100は、正面視においては、外表板部110yがよく現れており円形形状を有している。外表板部110yの外径の直径φDは、約200mm程度である。外表板部110yの中央には、表開口部110H1が設けられている。この表開口部110H1の内径φdは、約20mm程度である。なお、外表板部110yの形状、寸法等は一例であって、この実施の形態には限定されない。外表板部110yの形状は矩形形状であってもよい。また、各部の寸法も、要求される送風性能に応じて、適宜変更可能である。
【0018】
図2の断面図によく表れるように、送風装置100は、軸方向(送風方向)に延びる中空の筒状部120xと、中央部に内開口部120Hを有し、筒状部120xの一端側(前側)に設けられた表板部120yと、筒状部120xの他端側(後側)に設けられた底板部120zとを有する。
【0019】
筒状部120xの内部には、筒状部120xの内部空間を軸方向に二分割するようにダイヤフラム140が配置されている。このダイヤフラム140は、その周縁部が筒状部120xの内部壁120x1に固定され、少なくともその略中央部が表板部120y側と底板部120z側との間において移動する。
【0020】
ダイヤフラム140の底板部120z側の中央部には、駆動装置130が連結されている。この駆動装置130が、ダイヤフラム140の略中央部に対して、表板部120y側と底板部120z側との間において往復移動させるための振動力を与える。
【0021】
駆動装置130には、一例としてソレノイドアクチュエータが用いられている。ソレノイドアクチュエータは、ソレノイドコイル130aと、ソレノイドコイル130aに摺動可能に設けられたソレノイド軸130bとを有している。ソレノイド軸130bの一端がダイヤフラム140に固定されている。
【0022】
上述した筒状部120x、表板部120y、底板部120z、ダイヤフラム140、および、駆動装置130により、いわゆる空気砲120が構成される。
【0023】
筒状部120xの外側には、中空の外筒状部110xが配置されている。この外筒状部110xは、筒状部120xの外周面120x2との間に所定の隙間HW1を設けるように配置されている。本実施の形態では、外筒状部110xは円筒形状であるが、上述したように、他の形態の採用も可能である。
【0024】
表板部120yの外側(送風側)には、外表板部110yが配置されている。この外表板部110yは、表板部120yの外面120z1との間に所定の隙間HW2を設けるように配置されるとともに、中央部に表開口部110H1を有している。外筒状部110xおよび外表板部110yにより外套部材110を構成する。
【0025】
筒状部120xの外周面120x2と外筒状部110xとの間の隙間HW1、および、表板部120yの外面120y1と外表板部110yとの間の隙間HW2において、空気取入れ通路AIを構成している。
【0026】
本実施の形態においては、空気砲120が外套部材110により覆われた状態となり、空気取入れ通路AIは筒状部120xの外周面120x2を取り囲むように全周に設けられていることとなる。その結果、筒状部120xの他端側において、空気取入れ通路AIは環状に開放した状態となる。
【0027】
上記構成を備える送風装置100によれば、駆動装置130としてのてソレノイドアクチュエータを駆動させることで、ダイヤフラム140の略中央部に対して、表板部120y側と底板部120z側との間において往復移動させることができる。
【0028】
これにより、空気砲の原理に基づき、表開口部110H1から空気を吐出させることができる。本実施の形態では、筒状部120xの外周面120x2の全周から空気を取り込むことができるため、図2に示すように、送風装置100の幅Wの大型化を回避することができる。ダイヤフラム140を連続して駆動(振動)させることで、連続した空気の吐出が可能となり、送風機としての機能を備えることができる。
【0029】
また、表開口部110H1から吐出される空気は、渦輪(空気渦)の形態で吐出されることから、遠くまで直進性を持って空気を送り出すことができる。さらに、このように、直進性に優れていることから、特定の箇所に向けてスポット的に送風することもできる。
【0030】
(実施の形態2:送風装置100A)
図3を参照して、本実施の形態における送風装置100Aについて説明する。図3は、図1中のII−II線矢視に相当する断面図である。
【0031】
本実施の形態の送風装置100Aの基本的構成は、上記実施の形態1における送風装置100と同一である。相違点は、空気取入れ通路AIを通過する空気を加熱するための加熱装置150を設けている点にある。本実施の形態においては、隙間HW1および隙間HW2のいずれにも加熱装置150を設ける場合について図示しているが、いずれか一方の隙間に設けてもよい。
【0032】
本実施の形態における送風装置100Aにおいても、上記実施の形態1における送風装置100と同様の作用効果を得ることができる。さらに、空気取入れ通路AIに加熱装置150を設けることで、空気取入れ通路AIを通過する空気を加熱して温風の送風を可能とする。
【0033】
(実施の形態3:送風装置100B)
図4を参照して、本実施の形態における送風装置100Bについて説明する。図4は、図1中のII−II線矢視に相当する断面図である。
【0034】
本実施の形態の送風装置100Bの基本的構成は、上記実施の形態1における送風装置100と同一である。相違点は、空気取入れ通路AIにイオン発生装置160を設けている点にある。ここで、イオン発生装置160は、プラスイオンH(HO)n(nは0を含まない任意の整数)またはマイナスイオンO(HO)m(mは0を含む任意の整数)を発生させる。イオン発生装置160は、たとえば、これらのイオンを室内に送出することにより、空気中のウイルスを不活性化もしくは死滅させる機能を有する。
【0035】
本実施の形態においては、イオン発生装置160から発生するイオンを効果的に送風装置100Bの配設空間に放出させるために、表開口部110H1の近傍にイオン発生装置160を設置しておくとよい。
【0036】
本実施の形態における送風装置100Bにおいても、上記実施の形態1における送風装置100と同様の作用効果を得ることができる。さらに、空気取入れ通路AIにイオン発生装置160を設けることで、空気の清浄化を図ることを可能とする。
【0037】
(実施の形態4:送風装置100C)
図5を参照して、本実施の形態における送風装置100Cについて説明する。図5は、図1中のII−II線矢視に相当する断面図である。
【0038】
本実施の形態の送風装置100Bの基本的構成は、上記実施の形態1における送風装置100と同一である。相違点は、底板部120zの外面120z1との間に所定の隙間を設けるように配置されるとともに、中央部に裏開口部110H2を有する外底板部110zが、外筒状部110xの他端側に設けられている。
【0039】
さらに、外底板部110zには、裏開口部110H2を塞ぐようにフィルタ部材170が設けられている。
【0040】
本実施の形態における送風装置100Cにおいても、上記実施の形態1における送風装置100と同様の作用効果を得ることができる。さらに、裏開口部110H2を塞ぐようにフィルタ部材170を設けることで、送風装置100Cから送り出される空気の清浄化を図ることを可能とする。
【0041】
(実施の形態5:送風装置100D)
図6を参照して、本実施の形態における送風装置100Dについて説明する。図6は、送風装置100Dの正面図である。
【0042】
本実施の形態の送風装置100Dは、上記実施の形態1における送風装置100を、行列状に複数配置した装置である。本実施の形態では、送風装置100を、横方向(X方向)に4列、縦方向(Y方向)に4行配列し、合計16台の送風装置100を用いている。
【0043】
このように、実施の形態1における送風装置100を行列状に複数配置したことで、送風装置100Dとして様々なタイプの風の送風を可能とする。たとえば、各送風装置100の駆動装置130の動作を同期させることで、送風装置100Dの全体から空気の送風を可能とする。この場合には、送風装置100の幅(W)には変化がないことから、送風装置の送風面積を大きくした場合でも、幅方向の大型化を招くことなく送風容量の大きい送風装置の提供を可能とする。
【0044】
また、時間差を設けて駆動装置130の動作を制御することで、送風装置100Dから送り出される風に波のような変化を与えることを可能とする。
【0045】
以上、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0046】
100,100A,100B,100C 送風装置、110 外套部材、110H1 表開口部、110H2 裏開口部、110x 外筒状部、110y 外表板部、110z 外底板部、120 空気砲、120H 内開口部、120x 筒状部、120x1 内部壁、120y 表板部、120z 底板部、120z1 外面、130 駆動装置(ソレノイドアクチュエータ)、130a ソレノイドコイル、130b ソレノイド軸、140 ダイヤフラム、150 加熱装置、160 イオン発生装置、170 フィルタ部材、HW1,HW2 隙間、AI 空気取入れ通路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6