特許第6768342号(P6768342)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6768342
(24)【登録日】2020年9月25日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】照明器具
(51)【国際特許分類】
   F21S 8/04 20060101AFI20201005BHJP
   F21V 19/00 20060101ALI20201005BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20201005BHJP
【FI】
   F21S8/04 110
   F21V19/00 510
   F21Y115:10
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-92700(P2016-92700)
(22)【出願日】2016年5月2日
(65)【公開番号】特開2017-201591(P2017-201591A)
(43)【公開日】2017年11月9日
【審査請求日】2019年4月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】301048563
【氏名又は名称】株式会社SAK
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【弁理士】
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】岡 上 真 也
【審査官】 河村 勝也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−072136(JP,A)
【文献】 特開2012−199219(JP,A)
【文献】 特開2012−230826(JP,A)
【文献】 特開平06−309912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 8/04
F21V 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の下面に固定される器具本体と、ライトユニットと、前記ライトユニットを前記器具本体に取り付けるための弾性固定具と、を備えた照明器具であって、
前記器具本体が、前記ライトユニットが前記器具本体に取り付けられたときに前記ライトユニットと対面して前記ライトユニットの真上に位置するようになる板状の上壁を有し、前記器具本体が前記構造物の下面に固定されたときに、前記上壁の上方に空間が存在し、
前記弾性固定具は、前記ライトユニットの長手方向に延びる弾性板状体からなる上側部分及び下側部分を有し、前記上側部分の後端部と前記下側部分の後端部とが互いに接続され、前記上側部分の前端及び前記下側部分の前端が自由端であり、前記ライトユニットは、前記下側部分に取り付けられており、
前記器具本体の前記上壁に、前記弾性固定具の前記上側部分を挿入するための挿入開口が形成され、この挿入開口を介して、前記上側部分を、当該上側部分の前端から前記上壁の上方の空間に前方に向けて挿入可能であり、
前記弾性固定具の前記上側部分の前端部に、前記上側部分の後端部の方を向いた第1の折り返し部が形成され、前記器具本体の前記上壁の前記挿入開口から第1の距離だけ前方の位置に、前記第1の折り返し部の先端を引っ掛けることができる穴または凹部からなる第1係止部が形成されており、前記第1の折り返し部の先端を第1係止部に引っ掛けることにより、前記ライトユニットを前記器具本体から離した状態で前記弾性固定具を介して前記器具本体にぶら下げることが可能であり、
前記上側部分を前記第1の距離より大きい第2の距離だけ前記空間に挿入したときに、前記弾性固定具の弾性力により、前記上側部分に前記ライトユニットを担持する前記下側部分が近づき、これにより前記ライトユニットが前記器具本体のライト受け部に押し当てられるようになっている、照明器具。
【請求項2】
前記上側部分の前端と後端との間に第2の折り返し部が形成され、前記器具本体の前記上壁に、前記弾性固定具の前記上側部分を前記第2の距離だけ前記空間に挿入したときに前記第2の折り返し部と接触するか若しくは近接して前記上側部分が後方に移動することを防止または抑制する傾斜壁を有する第2係止部が形成されている、請求項1記載の照明器具。
【請求項3】
前記傾斜壁に、前記第2の折り返し部の先端と係合しうる穴または凹部が形成されている、請求項2記載の照明器具。
【請求項4】
前記上側部分は、上に凸となるように湾曲している、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の照明器具。
【請求項5】
前記器具本体の前記上壁の上方の空間は、前記上壁と前記構造物の前記下面との間の空間であり、前記器具本体に、前記空間の高さを決定するスペーサーとしての突起が形成されている、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の照明器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、器具本体と発光ユニットとを備えた照明器具において発光ユニットを器具本体に取り付ける取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、天井に設置する照明器具として、発光ユニットとして直管型蛍光灯を用いるものに代わって、直管型蛍光灯と概ね同じ長さのLEDランプユニットを用いるものが注目されてきており、その普及も進みつつある。
【0003】
LEDランプユニットを用いた照明器具は、天井に取り付けられる器具本体(シャーシ)と、器具本体に取り付けられるLEDランプユニットとから構成されている。このような照明器具を設置する際には、まず、天井に器具本体が固定され、その後、ランプユニットが器具本体に取り付けられる。ランプユニットは、板ばね等の弾性固定具を介して器具本体に取り付けられる(例えば特許文献1〜3などを参照)。
【0004】
このような照明器具においては、大地震等により大きな振動が与えられてもランプユニットが落下することがないように、器具本体に対するランプユニットの確実な取り付けが求められる。その一方で、現場での設置作業をできる限り簡単なものとすることが望まれている。さらには、照明装置の低価格化も求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−220034号公報
【特許文献2】特開2015−162382号公報
【特許文献3】特開2015−162365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、弾性固定具を介して器具本体に対するランプユニットの取り付けを確実に行うことができ、現場での設置作業が容易であり、かつ、低コストで製造することができる天井設置タイプの照明器具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の好適な一実施形態によれば、構造物の下面に固定される器具本体と、ライトユニットと、前記ライトユニットを前記器具本体に取り付けるための弾性固定具と、を備えた照明器具であって、前記器具本体が、前記ライトユニットが前記器具本体に取り付けられたときに前記ライトユニットと対面して前記ライトユニットの真上に位置するようになる板状の上壁を有し、前記器具本体が前記構造物の下面に固定されたときに、前記上壁の上方に空間が存在し、前記弾性固定具は、前記ライトユニットの長手方向に延びる弾性板状体からなる上側部分及び下側部分を有し、前記上側部分の後端部と前記下側部分の後端部とが互いに接続され、前記上側部分の前端及び前記下側部分の前端が自由端であり、前記ライトユニットは、前記下側部分に取り付けられており、前記器具本体の前記上壁に、前記弾性固定具の前記上側部分を挿入するための挿入開口が形成され、この挿入開口を介して、前記上側部分を、当該上側部分の前端から前記上壁の上方の空間に前方に向けて挿入可能であり、前記弾性固定具の前記上側部分の前端部に、前記上側部分の後端部の方を向いた第1の折り返し部が形成され、前記器具本体の前記上壁の前記挿入開口から第1の距離だけ前方の位置に、前記第1の折り返し部の先端を引っ掛けることができる穴または凹部からなる第1係止部が形成されており、前記第1の折り返し部の先端を第1係止部に引っ掛けることにより、前記ライトユニットを前記器具本体から離した状態で前記弾性固定具を介して前記器具本体にぶら下げることが可能であり、前記上側部分を前記第1の距離より大きい第2の距離だけ前記空間に挿入したときに、前記弾性固定具の弾性力により、前記上側部分に前記ライトユニットを担持する前記下側部分が近づき、これにより前記ライトユニットが前記器具本体のライト受け部に押し当てられるようになっている、照明器具が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の上記の実施形態によれば、上述した独特の形状の弾性固定具を利用することにより、上側部分を空間に浅く挿入したときには器具本体とランプユニットとの間に比較的大きな隙間を空けてランプユニットを器具本体にぶら下げることができ、また、上側部分を空間に深く挿入したときには器具本体にランプユニットを押しつけることができる。このため、器具本体とランプユニットの間の結線作業を容易に行うことができ、また、最終的にランプユニットを器具本体にしっかりと固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る照明器具の全体構造を概略的に示す斜視図である。
図2】ライトユニットを器具本体に取り付けた状態における、図1のII−II線に沿った照明器具の断面図である。
図3】ライトユニットを器具本体に取り付けた状態における、図1のIII−III線に沿った照明器具の概略断面図である。
図4図3の矢印IVの方向から器具本体を見た平面図である。
図5】弾性取付具を上側部分と下側部分に分離した状態で示す平面図である。
図6】無負荷状態の弾性取付具の側面図である。
図7A】ライトユニットを器具本体に取り付ける過程を示す作用図である。
図7B】ライトユニットを器具本体に取り付ける過程を示す作用図である。
図7C】ライトユニットを器具本体に取り付ける過程を示す作用図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照して発明の実施形態について説明する。
【0011】
本実施の形態に係る照明器具は、照明器具本体(以下「器具本体」と称する)100と、ライトユニット200と、ライトユニット200を器具本体100に固定するための弾性固定具300とを有している。器具本体100は、天井Cの下面等の構造物の下向きの面に取り付けられる部品であり、シャーシなどとも呼ばれる。ライトユニット200は、光源モジュール、光源ユニットなどとも呼ばれる部品である。本実施形態においては、ライトユニット200は、発光素子として多数のLED(Light Emitting Diode)素子を内蔵したLEDライトユニットからなる。
【0012】
以下に本明細書において、説明の便宜上、器具本体100及びライトユニット200の長手方向を前後方向、幅方向を左右方向と呼ぶこともある。
【0013】
器具本体100は、通常、プレス機を用いた加工(抜き加工、切り加工、曲げ加工等)により薄い鉄板から形成される。器具本体100は、図2に示すように、全体として概ね台形の断面形状を有している。
【0014】
器具本体100の幅方向(図2の左右方向)の中央部には、上に向けて窪んだ凹部102が形成されている。この凹部102に嵌め込まれるように、ライトユニット200が器具本体100に取り付けられる。凹部102は、上壁104と、左右一対の側壁106により画定される。上壁104は、ライトユニット200が器具本体100に取り付けられたときにライトユニット200と対面してライトユニット200の真上に位置する。
【0015】
上壁104には複数箇所例えば2箇所に貫通穴(図示せず)が形成されており、この貫通穴に通されたボルト108a(例えば野縁に埋め込まれた天井取付用ボルト)及びこれに螺合するナット108bにより(図1を参照)、器具本体100が天井に固定される。
【0016】
細長い長方形の上壁104の四隅には上に凸の突起110が形成されている。上記ボルト/ナット108a,108bにより器具本体100を天井Cに固定したときに、突起110はスペーサーとしての役割を果たし、上壁104と天井Cとの間に突起の高さに対応したサイズ(例えば高さ3mmの)の隙間112が形成される。つまり、上壁104の上方には、弾性固定具300の後述する上側部分320を挿入可能な空間(112)が存在する。また、このとき、器具本体100の左右両端のベース部114(図2を参照)が、天井Cの下面に接触する。
【0017】
特に図2に示すように、ライトユニット200は、概ね蒲鉾形の断面を有している。ライトユニット200を器具本体100に取り付けると、器具本体100の下面周縁部130がライトユニット200の上面周縁部に当接し、これによりライトユニット200の上面中央部と、器具本体100の上壁104との間に隙間202が形成される。この隙間202の中には、上壁104の下面に設けられた電源端子台116及び前述したボルト/ナット108a,108b、並びに後述する弾性固定具300が存在する。
【0018】
次に、図2図6を参照して、弾性固定具300及び器具本体100のうちのライトユニット200の取り付けに関連する部分について説明する。
【0019】
弾性固定具300は、上側部分320及び下側部分340を有する。上側部分320は、上壁104と天井Cとの間の隙間112に挿入される部分である。下側部分340は、ライトユニット200を保持する部分である。上側部分320及び下側部分340は、弾性を有する板状体(弾性板状体)からなる。上側部分320及び下側部分340はともにステンレス鋼等のバネ用鋼板から形成することができる。
【0020】
一例として、上側部分320の板厚は0.6mm、下側部分340の板厚は0.8mmであり、また、弾性固定具300の全長は10〜12cm程度、全幅(最大幅)は3cm程度であるが、これらの数値に限定されるものではない。
【0021】
好適な一実施形態において、上側部分320及び下側部分340は、例えばバネ用鋼板に対してプレス機を用いた加工(抜き加工、切り加工、曲げ加工等)を施すことにより別々に形成された後、各々の後端部が溶接、例えばスポット溶接(図5で×印で示す)により互いに接合される。
【0022】
弾性固定具300は、上側部分320及び下側部分340の前端(自由端)同士の間の上下方向距離を変化させるような負荷を受けると、その距離変化を打ち消すような弾性反発力を発生する。弾性固定具300は、全体としてみると、松葉バネに相当する。
【0023】
上側部分320の前端は自由端である。特に図6に示すように、弾性固定具300に何ら外力が負荷されていないときには、上側部分320は、前端から後端に渡って上方に凸となるようにゆるやかに湾曲している。
【0024】
特に図5に示すように、上側部分320は、幅が広い後部321と、幅が狭い前部322とを有する。前部322の前端部に、上側部分320の後端の方を向き概ね水平方向に延びる第1折り返し部323が形成されている。第1折り返し部323は、前部322の前端部を、下向きに大きく折り曲げることにより形成することができる。好適な一実施形態において、第1折り返し部323は後方に概ね水平方向に延びている。
【0025】
上側部分320の前後方向に関して概ね中央部において、幅広の後部321の幅方向中央部に、上側部分320の後端の方を向き斜め下方に向かって延びる第2折り返し部324が形成されている。第2折り返し部324は、プレス機による切り曲げ加工を行うことにより形成することができる。
【0026】
下側部分340の前側に拡幅部342が形成されており、拡幅部342にはライトユニット200に下側部分340を固定するための貫通穴344が形成されている。図5より明らかなように、この貫通穴344は、弾性固定具300を真上から見たときに上側部分320と重ならないようになっている。従って、貫通穴344にネジ346(図2及び図3を参照)を通してこのネジ346をライトユニット200に締め付けるときに、ドライバー等の工具が上側部分320に干渉しない。
【0027】
下側部分340は、貫通穴344よりも前側にある前端部分348(図5を参照)を有しており、ライトユニット200の重量を下側部分340が支えるときに、貫通穴344の位置が支点となって、前端部分348のほぼ全下面がライトユニット200の上面に面接触して押し付けられるようになっている。このため、ネジ346に負荷される曲げ荷重が低減され、下側部分340をライトユニット200に固定するために必要なネジ346の数を減らすことができる。図示された実施形態においては、一つの弾性固定具300をライトユニット200に固定するために用いているネジ346の数は2個である。
【0028】
上壁104には、この上壁104と天井Cとの間の隙間112に弾性固定具300の上側部分320を挿入するための挿入開口120が形成されている。この挿入開口120の幅(左右方向長さ)は、上側部分320の幅広の後部321の幅よりもやや大きい。
【0029】
上壁104の挿入開口120の少し前方(第1の距離例えば2〜5mm程度前方)には、上側部分320の第1折り返し部323を一時的に係止する(ここでは、引っ掛けて留め置く)ための、第1係止部122が形成されている。第1係止部122の幅は、第1折り返し部323の先端の幅よりもやや大きい。第1係止部122の形態は、第1折り返し部323の先端を引っ掛けておくことができる限りにおいて任意であるが、例えばスリット(細長い打ち抜き穴)または細長い窪みとすることができ、図示された実施形態ではスリットにより構成されている。
【0030】
第1係止部122のさらに前方には、第2係止部123が形成されている。この第2係止部123は、ライトユニット200が器具本体100に適正に取り付けられた後にライトユニット200が後退しようとしたときに(この動きはライトユニット200の器具本体100からの脱落をもたらしうる)、上側部分320の第2折り返し部324と係合して、ライトユニット200のそれ以上の後退を防止する。
【0031】
図示された実施形態においては、第2係止部123は プレス機による切り曲げ加工を行うことにより形成されており、基端側の第1傾斜壁124と、先端側の第2傾斜壁125とを有する。傾斜壁124,125を形成した結果として、上側部分320には穴126が形成されている。第1傾斜壁124には、第2折り返し部324の先端の幅よりもやや大きな幅を有するスリット127(細長い打ち抜き穴)が形成されている。このスリット127に、第2折り返し部324の先端を係合させることができる。スリット127の幅(左右方向長さ)は、第2折り返し部324の幅よりもやや大きい。スリット127に代えて、細長い窪み(凹部)を第1傾斜壁124に形成してもよい。
【0032】
本実施形態では、上側部分320は、第1折り返し部323を形成するための曲げ加工を除き、1つのプレス金型により1回のプレス工程で製造することができる。下側部分340は、1つのプレス金型により1回のプレス工程で製造することができる。また、上壁104に施される上側部分320と関与する部分の加工は、1つのプレス金型により1回のプレス工程により行うことができ、しかも、上側部分320と関係無い部分を形成するためのプレス加工と同じプレス金型を用いて1回のプレス工程で行うことができる。また、本実施形態においては、使用されるネジ346の数は合計4個である。つまり、本実施形態で用いられる弾性固定具300は、総数が2個と少なく、また、比較的少ない工程数で製造することができ、さらには、弾性固定具300のライトユニット200への取り付けのための部品点数及び作業工数も少ない。このため、弾性固定具300の使用による照明装置の部品コスト増を低く抑えることができる。
【0033】
次に、弾性固定具300を用いてライトユニット200を器具本体100に取り付ける方法について説明する。
【0034】
ライトユニット200の前側および後側にそれぞれ1つの弾性固定具300を、ネジ346を用いて取り付けておく。この弾性固定具300の取り付けは、通常はライトユニット200の製造工場で行われるが、照明器具の設置作業を行う現場で行ってもよい。
【0035】
まず、各弾性固定具300の上側部分320の前端部を、挿入開口120を通して、上壁104と天井Cとの間の隙間112に挿入する。このとき、作業者は、上側部分320の前端部を指で持って上方に引っ張り、上側部分320を弾性変形させた状態で、上側部分320の前端部を、挿入開口120に差し込む。次に、作業者が、ライトユニット200を持ちながらライトユニット200を前進させてゆくことにより、上側部分320を隙間112内で前進させてゆく。
【0036】
第1折り返し部323の先端が第1係止部122のやや前方の位置へ進んだ後に、ライトユニット200を下方に引きながら後退させてゆくと、第1折り返し部323が第1係止部122に引っ掛かる。その後作業者がライトユニット200から手を離した状態が図7Aに示されている。
【0037】
このとき、弾性固定具300の後端部から遠い上側部分320の先端(前端)部分でライトユニット200の自重が支持されることとなるので、上側部分320の前端と下側部分340の前端とが大きく離れるように弾性固定具300特にその上側部分320が撓む(弾性変形する)。その結果、器具本体100とライトユニット200との間に大きな隙間が生じる。この大きな隙間に手を入れた作業者は、電源端子台116から延びる電源コード117(図1を参照)をライトユニット200に容易に接続することができる。
【0038】
次に、図7Bに示すように、ライトユニット200を前進させることにより各弾性固定具300の上側部分320をさらに隙間112の中に押し込んでゆく。このとき、上側部分320は前端側が高くなるように傾斜しているので、上側部分320の前端部が天井Cに当たるが、上側部分320が上に凸となるように湾曲しているため、上側部分320の前端部が天井Cに引っ掛かってそれ以上前進できなくなることはない。上側部分320は天井Cに案内されながら前進してゆき、前進するに従って上側部分320は水平姿勢(図7Cに示す姿勢)に近づいてゆく(詳細後述)。
【0039】
上側部分320が前進してゆくときに、第2折り返し部324は上壁104に押しつけられて撓んでいる。つまり、第2折り返し部324は上壁104の上面に接して引きずられながら前進するが、第2折り返し部324は後方に向けて斜め下向きに延びているため、第2折り返し部324が上壁104に引っ掛かってそれ以上前進できなくなることはない。
【0040】
さらにライトユニット200を前進させて各弾性固定具300の上側部分320をさらに隙間112の中に押し込んでゆくと、第2折り返し部324の先端(後端)が第2係止部123に対応する穴126の位置に到達する。すると、接触していた上壁104からの負荷が解放されることにより撓んでいた第2折り返し部324が伸び、第2折り返し部324の先端が穴126内に入り込む(図3及び図7Cを参照)。
【0041】
このとき、第2折り返し部324の先端は、第1傾斜壁124のスリット127とほぼ同じ高さに位置するが、第2折り返し部324の先端はスリット127内に入っていてもよいし、スリット127から離れていてもよい。つまり、ライトユニット200が後退しようとしたときに、第2折り返し部324の先端がスリット127に係合して、ライトユニット200の後退が妨げられるようになっていればよい。
【0042】
上記の弾性固定具300の上側部分320を上壁104の挿入開口120に挿入し始めてから図7Cに示す最終位置(上側部分320を第2の距離例えば9〜10cm程度挿入した位置)まで到達するまでの間の殆どの期間において、挿入開口120の前縁121(図3図4を参照)が上側部分320に接触してライトユニット200の重さを支える支持点となる。上側部分320が隙間112内を前進してゆくに従って前縁121よりも後方にある上側部分320の長さが小さくなるので、ライトユニット200の自重に起因する上側部分320の撓み量が減少してゆき、上側部分320の形状は図6に示す初期形状(無負荷状態の形状)に近づいてゆく。
【0043】
従って上側部分320の上記の移動に伴い、ライトユニット200は器具本体100に近づいてゆき、最終的には、図2図3及び図7Cに示すように、ライトユニット200の上面周縁部が器具本体100のライト受け部である下面周縁部130に当接するようになる。さらに、ライトユニット200の上面の四隅に設けられた突起の形態のストッパー204の前後方向を向いた側面が、器具本体100のストッパー受け132(下面周縁部130の側面)に当接するかあるいは近接した位置に位置するとともに、ストッパー204の左右方向を向いた側面が凹部102の側壁106に当接するかあるいは近接した位置に位置するようになる。従って、ライトユニット200の水平方向の変位はストッパー204により防止または抑制される。
【0044】
以上により、ライトユニット200の器具本体100への取り付けが完了する。
【0045】
上記の実施形態によれば、弾性固定具300の上側部分320を上壁104と天井Cとの間の隙間112に差し込んだ後にライトユニット200を動かすだけで、ライトユニット200を器具本体100に容易に取り付けることができる。
【0046】
また、上記の実施形態によれば、上側部分320を挿入開口120に挿入して上側部分320を少量前進させた後に上側部分320を引き戻す(後退させる)ことにより、第1折り返し部323を第1係止部122に引っ掛けることができ、これにより、ライトユニット200を器具本体100から比較的大きな間隔を空けて、器具本体100から吊り下げることができる。このため、器具本体100とライトユニット200との間での結線作業を容易に行うことができる。
【0047】
さらに、上記の実施形態によれば、器具本体100へのライトユニット200の取り付け後に第2係止部123と係合する第2折り返し部324により上側部分320及びこれに結合されたライトユニット200の後退が防止されるため、地震等により大きな振動が加わってもライトユニット200が器具本体100から脱落することを防止することができる。
【0048】
もっとも、器具本体100からのライトユニット200の脱落は、上記ライトユニット受け部130とストッパーとの係合によっても防止することができる。また、器具本体100からライトユニット200を取り外す際に、第2係止部123に対する第2折り返し部324との係合を解除しなければならない。この係合解除のために、ライトユニット200を器具本体100から下方に浮かした状態で強い力で後方に引っ張って強めに上側部分320を引き抜く必要がある。
【0049】
ライトユニット200が長寿命なLEDユニットである場合、ライトユニット200の交換について殆ど考慮する必要が無い場合には、ライトユニット200の落下をより確実に防止するために、図示した通りに第2係止部123及び第2折り返し部324を設けることが好ましい。
【0050】
ライトユニット200の交換作業性を図示例よりも向上させたいのであれば、第2係止部123の第1傾斜壁124に設けたスリット127を窪みに変更するか、スリット127を廃止して第1傾斜壁124の表面を平坦面にしてもよい。第1傾斜壁124の表面を平坦面にする場合には、第1傾斜壁124の傾斜角を小さく(鉛直方向に近づける)してもよい。こうすることにより、上側部分320を後退させたときに、第2折り返し部324は第2係止部123から容易には離脱しないが、図示例の場合よりも弱い力で上側部分320を後退させることにより第2折り返し部324を第2係止部123から離脱させることが可能となる。
【0051】
ライトユニット200の交換作業性をさらに向上させたいのであれば、器具本体100からのライトユニット200の脱落防止は、ストッパー204に委ねて、第2折り返し部324及び第2係止部123を廃止してもよい。
【0052】
上記の説明においては、上側部分320が隙間112内を前進するときに、上側部分320が天井Cに接触しているものとしたが、上側部分320は天井Cから離れていてもよい。上側部分320をある程度隙間112内に挿入した後は、下側部分340がライトユニット200の自重を支える支持点となるネジ346の位置は、上側部分320の支持点となる挿入開口120の前縁121よりも前方に位置することになる。従って、ライトユニット200に働く重力により、前縁121を中心として上側部分320の前端を上壁104に近づける方向に弾性固定具300を回転させようとする力が作用し、この力は上側部分320の挿入量が大きくなるに従って大きくなる。挿入開口120の前後方向長さが十分に大きければ、上記弾性固定具300の回転が妨げられることはないので、上側部分320が天井Cに接して天井Cから下向きの力を受ける必要は必ずしもない。従って隙間112は、図示例よりも大きくても何ら差し支えはない。
【符号の説明】
【0053】
C 構造物の下面(天井)、100…器具本体、104…上壁、110…突起、 112…空間(隙間)、120…挿入開口、122…第1係止部、123…第2係止部、130…ライト受け部、200…ライトユニット、300…弾性固定具、320…上側部分、323…第1の折り返し部、324…第2の折り返し部、340…下側部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C