特許第6768344号(P6768344)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6768344
(24)【登録日】2020年9月25日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】金型冷却機構
(51)【国際特許分類】
   B22D 17/22 20060101AFI20201005BHJP
   B22C 9/06 20060101ALI20201005BHJP
【FI】
   B22D17/22 D
   B22C9/06 B
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-93595(P2016-93595)
(22)【出願日】2016年5月9日
(65)【公開番号】特開2016-221577(P2016-221577A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2019年3月15日
(31)【優先権主張番号】特願2015-105989(P2015-105989)
(32)【優先日】2015年5月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】315007433
【氏名又は名称】株式会社エーユー
(74)【代理人】
【識別番号】100120396
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】青木 文吾
【審査官】 田口 裕健
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−080344(JP,A)
【文献】 特開2008−055709(JP,A)
【文献】 特開平06−315751(JP,A)
【文献】 実開昭61−195854(JP,U)
【文献】 特開2007−144457(JP,A)
【文献】 特開2013−018052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 17/22
B22C 9/06
B29C 33/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型に形成された冷却穴と、
前記冷却穴に挿入され冷却流体を前記冷却穴内に供給する冷却管とを備え、
前記冷却管が、基端側から内部に供給された前記冷却流体を先端側の開口部から前記冷却穴内に放出する内側パイプと、
前記内側パイプを隙間を空けて内側に配し前記冷却穴内の前記冷却流体を前記隙間を通して基端側から外部に排出する外側パイプとを有し、
前記外側パイプが、先端部外周に設けられ前記冷却穴の内周面に密着可能なシール部材と、基端側外周に設けられた雄ねじ部とを有し、
前記冷却穴の内周面に、前記雄ねじ部に螺合可能な雌ねじ部と、
前記雌ねじ部の軸方向先端側に隣接していると共に前記雄ねじ部を収納可能な空間部とが設けられ、
前記雄ねじ部が、前記雌ねじ部を超えて前記空間部内まで送り込まれて前記雌ねじ部から外れていることを特徴とする金型冷却機構。
【請求項2】
請求項1に記載の金型冷却機構において、
前記金型に着脱可能に取り付けられた取付部材を備え、
前記取付部材が、前記冷却穴の一部を構成すると共に内周面に前記雌ねじ部が形成された貫通孔を有していることを特徴とする金型冷却機構。
【請求項3】
請求項2に記載の金型冷却機構において、
前記金型に、前記取付部材を嵌め込み可能な取付凹部が形成されていることを特徴とする金型冷却機構。
【請求項4】
請求項2に記載の金型冷却機構において、
前記冷却穴が、複数形成されていると共に、複数の前記冷却管にそれぞれ前記冷却管が挿入され、
前記取付部材が、複数の前記冷却穴に対応した複数の前記貫通孔を有した板部材であることを特徴とする金型冷却機構。
【請求項5】
請求項2に記載の金型冷却機構において、
前記冷却穴に、取付用雌ねじ部を内周面に有した取り付け孔部が形成され、
前記取付部材が、前記取付用雌ねじ部に螺着可能な取付用雄ねじ部を外周面に有し、前記取り付け孔部内に少なくとも一部が挿入状態で取り付けられていることを特徴とする金型冷却機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイカスト等に用いる金型を冷却する金型冷却機構に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ダイカスト鋳造や射出成形等に用いられる金型には、金型を冷却するための金型冷却機構が設けられている。例えば、この金型冷却機構としては、金型に複数の冷却穴を形成し、これらの冷却穴に冷却管を挿入して冷却管から冷却穴内に冷却水等の冷却流体を供給して金型を冷却する構造を有している。
【0003】
このような金型冷却機構では、冷却穴に挿入した冷却管がずれないよう固定すると共に、冷却穴に供給した冷却流体が漏れないようにする必要がある。例えば、特許文献1には、Oリング等のシール部材を冷却管の外周に設け、冷却流体が漏れないようにしていると共に、冷却管の後端を押さえ板(バックプレート)で支持している冷却板が記載されている。また、特許文献2には、金型の冷却穴に形成された雌ねじ部に冷却管の基端部分に形成された雄ねじ部を螺着させて冷却管を金型に固定している技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−132529号公報
【特許文献2】特開平6−315751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の技術において、以下の課題が残されている。
すなわち、従来の技術では、冷却管をOリング等のシール部材だけで固定する場合、後方にずれてしまうために押さえ板が必要になり、押さえ板を取り外さないと冷却管の取り外しができずメンテナンス性が低下してしまう不都合があった。また、冷却管を冷却穴に形成した雌ねじ部で固定する場合、ネジ止め位置が軸方向でずれやすく各冷却管の位置決めが難しいと共に、漏れを防止するために堅くネジ止めする必要があった。さらに、冷却管をねじ止めにて固定する場合、冷却流体用ホースの取り出し方向(接続方向)が固定されてしまい、軸回転方向の自由度が無くなってしまう不都合もあった。
【0006】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたもので、メンテナンス性に優れていると共に位置決めが容易である金型冷却機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明に係る金型冷却機構は、金型に形成された冷却穴と、前記冷却穴に挿入され冷却流体を前記冷却穴内に供給する冷却管とを備え、前記冷却管が、基端側から内部に供給された前記冷却流体を先端側の開口部から前記冷却穴内に放出する内側パイプと、前記内側パイプを隙間を空けて内側に配し前記冷却穴内の前記冷却流体を前記隙間を通して基端側から外部に排出する外側パイプとを有し、前記外側パイプが、先端部外周に設けられ前記冷却穴の内周面に密着可能なシール部材と、基端側外周に設けられた雄ねじ部とを有し、前記冷却穴の内周面に、前記雄ねじ部に螺合可能な雌ねじ部と、前記雌ねじ部の軸方向先端側に隣接していると共に前記雄ねじ部を収納可能な空間部とが設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明の金型冷却機構では、外側パイプが、シール部材と、雄ねじ部とを有し、冷却穴の内周面に、雄ねじ部に螺合可能な雌ねじ部と、雌ねじ部の軸方向先端側に隣接していると共に雄ねじ部を収納可能な空間部とが設けられているので、シール部材により漏れが防止されると共に、雌ねじ部を超えて空間部に雄ねじ部を配することで、冷却管の抜け止め及び後端側の位置決めが可能になる。すなわち、冷却管を冷却穴に挿入して取り付ける際は、雄ねじ部を外側から雌ねじ部にねじ込むと共に、雄ねじ部の先端側に形成された空間部内まで冷却管を回して雄ねじ部を送り込む。この状態で、空間部内まで送り込まれた雄ねじ部は雌ねじ部から外れるが、冷却管を回さない限り、雌ねじ部がストッパとして機能するために、後端側への移動が規制され、位置決めされる。また、冷却管を取り外す際は、冷却管を後端方向に引きながら冷却管を取付時と反対方向に回転させることで、空間部内の雄ねじ部を内側(先端側)から雌ねじ部にねじ込み、さらに雌ねじ部を超えて外側に出すことで、容易に冷却管を取り外すことができ、メンテナンスが容易になる。なお、冷却管が冷却穴に取り付けられた状態では、シール部材により漏れ防止が図られていると共に、雄ねじ部と雌ねじ部とが螺合していないため、両者を堅くネジ止めする必要がない。さらに、空間部に雄ねじ部が配された状態では、軸方向の位置を変えずに冷却管を回動させることができ、供給用ホースや排出用ホースの接続方向を容易に調整することが可能になる。すなわち、冷却流体用ホースの取り出し方向(接続方向)が固定されず、軸回転方向の高い自由度が得られる。
【0009】
第2の発明に係る金型冷却機構は、第1の発明において、前記金型に着脱可能に取り付けられた取付部材を備え、前記取付部材が、前記冷却穴の一部を構成すると共に内周面に前記雌ねじ部が形成された貫通孔を有していることを特徴とする。
すなわち、この金型冷却機構では、取付部材が、冷却穴の一部を構成すると共に内周面に雌ねじ部が形成された貫通孔を有しているので、雌ねじ部が取付部材に形成されていることで、金型本体に直接雌ねじ部を形成する必要が無い。また、取付部材を交換することで、雌ねじ部も交換可能になり、種々の雄ねじ部や冷却管に対応させることが可能になる。
【0010】
第3の発明に係る金型冷却機構は、第2の発明において、前記金型に、前記取付部材を嵌め込み可能な取付凹部が形成されていることを特徴とする。
すなわち、この金型冷却機構では、金型に、取付部材を嵌め込み可能な取付凹部が形成されているので、取付凹部に取付部材を嵌め込むだけで位置決めでき、冷却穴と雌ねじ部との軸合わせが容易になる。
【0011】
第4の発明に係る金型冷却機構は、第2の発明において、前記冷却穴が、複数形成されていると共に、複数の前記冷却管にそれぞれ前記冷却管が挿入され、前記取付部材が、複数の前記冷却穴に対応した複数の前記貫通孔を有した板部材であることを特徴とする。
すなわち、この金型冷却機構では、取付部材が、複数の冷却穴に対応した複数の貫通孔を有した板部材であるので、一つの取付部材で複数の冷却管を取付可能である。
【0012】
第5の発明に係る金型冷却機構は、第2の発明において、前記冷却穴に、取付用雌ねじ部を内周面に有した取り付け孔部が形成され、前記取付部材が、前記取付用雌ねじ部に螺着可能な取付用雄ねじ部を外周面に有し、前記取り付け孔部内に少なくとも一部が挿入状態で取り付けられていることを特徴とする。
すなわち、この金型冷却機構では、取付部材が、取付用雌ねじ部に螺着可能な取付用雄ねじ部を外周面に有し、取り付け孔部内に少なくとも一部が挿入状態で取り付けられているので、冷却穴内に取付部材をねじ込んで直接挿入することで、取付スペースをより小さくすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明の金型冷却機構によれば、外側パイプが、シール部材と、雄ねじ部とを有し、冷却穴の内周面に、雄ねじ部に螺合可能な雌ねじ部と、雌ねじ部の軸方向先端側に隣接していると共に雄ねじ部を収納可能な空間部とが設けられているので、シール部材により漏れが防止されると共に、冷却管の抜け止め及び後端側の位置決めが可能になる。したがって、本発明の金型冷却機構では、押さえ板が不要であると共に位置決めが容易であり、良好なシール性及びメンテナンス性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る金型冷却機構の第1実施形態を示す断面図である。
図2】第1実施形態において、冷却管を示す斜視図である。
図3】第1実施形態において、雄ねじ部が空間部に収納された状態を示す要部の拡大断面図である。
図4】第1実施形態において、冷却管を金型に取付部材で取り付けた状態を示す要部の正面図である。
図5】本発明に係る金型冷却機構の第2実施形態を示す断面図である。
図6】第2実施形態において、冷却管を金型に板状の取付部材で取り付けた状態を示す正面図である。
図7図6におけるA−A線断面の取付部材を示す図である。
図8】本発明に係る金型冷却機構の第3実施形態を示す断面図である。
図9】第3実施形態において、六角ボルト形状の取付部材(a)と頭部円形状の取付部材(b)を示す頭部側から見た図である。
図10】本発明に係る金型冷却機構の第4実施形態を示す断面図である。
図11】第4実施形態において、取付部材を示す頭部側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明における金型冷却機構の第1実施形態を、図1から図4に基づいて説明する。
【0016】
本実施形態における金型冷却機構1は、図1に示すように、金型2に形成された冷却穴3と、冷却穴3に挿入され冷却水等の冷却流体を冷却穴3内に供給する冷却管4とを備えている。なお、冷却穴3は複数形成されていると共に、各冷却穴3にそれぞれ冷却管4が取り付けられている。
上記金型2は、入れ子2Aと、入れ子2Aの外側に設置されたおも型2Bとを備えている。
【0017】
上記冷却管4は、図1及び図2に示すように、基端側の供給口5aから内部に供給された冷却流体を先端側の開口部5bから冷却穴3内に放出する内側パイプ5と、内側パイプ5を隙間Sを空けて内側に配し冷却穴3内の冷却流体を隙間Sを通して基端側から外部に排出する外側パイプ6とを有している。
【0018】
上記内側パイプ5の先端は、軸方向に対して斜めにカットされており、開口部5bが斜め方向に向けて開口している。
また、内側パイプ5の基端部5cは、雄ねじ加工されており、外側パイプ6内の基端部において雌ねじ加工された部分にねじ込まれて固定されている。
上記外側パイプ6の基端部には、冷却流体の排出用ホースが接続され隙間Sに連通した第2接続部6aと、冷却流体の供給用ホースが接続され供給口5aに連通した第1接続部6bとが形成されている。なお、第1接続部6bと第2接続部6aとは、ホース接続用に雌ねじが形成されている。
【0019】
上記冷却穴3は、おも型2Bを貫通し外側パイプ6の外径より内径が大きい貫通孔部3aと、入れ子2A内に形成され貫通孔部3aより内径が小さく設定されていると共に外側パイプ6が挿入可能な開口側穴部3bと、外側パイプ6の外径よりも内径が小さく設定されていると共に外側パイプ6の内径よりも内径が大きく設定された先端側穴部3cとを有している。すなわち、先端側穴部3cは、開口側穴部3bよりも小さい内径であると共に内側パイプ5が挿入可能であり、外側パイプ6と内側パイプ5との隙間Sと連通している。なお、貫通孔部3a、開口側穴部3b及び先端側穴部3cは、同軸に形成されている。
【0020】
上記外側パイプ6は、先端部外周に設けられ冷却穴3の内周面に密着可能なシール部材7と、基端側外周に設けられた雄ねじ部6dとを有している。
上記シール部材7は、外側パイプ6の先端部外周に形成された一対の環状溝6c内にそれぞれ嵌め込まれたOリングである。
上記冷却穴3の内周面には、図1及び図3に示すように、雄ねじ部6dに螺合可能な雌ねじ部9aと、雌ねじ部9aの軸方向先端側に隣接していると共に雄ねじ部6dを収納可能な空間部9bとが設けられている。
【0021】
また、本実施形態の金型冷却機構1は、図1及び図4に示すように、金型2に着脱可能に取り付けられた取付部材9を備えている。
この取付部材9は、冷却穴3の一部を構成すると共に内周面に雌ねじ部9aが形成された貫通孔9cを有している。
【0022】
上記冷却穴3の開口部周囲(おも型2Bの貫通孔部3aの開口部周囲)には、貫通孔9cとおも型2Bの貫通孔部3aとを同軸にして取付部材9を嵌め込み可能な取付凹部2aが形成されている。
上記貫通孔9cは、おも型2Bの貫通孔部3aと同じ又は貫通孔部3aより若干大きな内径に設定されている。
すなわち、貫通孔9cと外側パイプ6との間には、突出した雄ねじ部9aが収納可能な隙間である空洞部分が形成され、この空洞部分が、上記空間部9bとなる。
【0023】
上記取付部材9には、互いに貫通孔9cの軸線に対して反対側に配された一対のねじ孔9dが形成されていると共に、取付凹部2aには、一対のねじ孔9dに対応した位置に一対のねじ穴2bが形成されている。すなわち、取付部材9は、一対のねじ孔9dにそれぞれ挿通させたボルト10でねじ穴2bにねじ止めされている。
なお、取付部材9の最大外径は、取付凹部2aの内径と同じサイズに設定されており、取付部材9を取付凹部2aに嵌め込むと、雌ねじ部9aと冷却穴3との互いの軸線が一致するように設定されている。
【0024】
本実施形態の金型冷却機構1において、冷却管4の取り付け方法及び取り外し方法について以下に説明する。
まず、冷却管4を冷却穴3に挿入して取り付ける際は、先端側から冷却管4を冷却穴3に挿入していく。この際、外側パイプ6は、先端側穴部3cより外径が大きいため、開口側穴部3bまで挿入される。
また、この際、シール部材7が開口側穴部3bの内周面に密着状態となる。
【0025】
さらに、冷却管4を回して雄ねじ部6dを外側から雌ねじ部9aにねじ込んで螺合させると共に、雄ねじ部6dの先端側に形成された空間部9b内まで雄ねじ部6dを送り込む。この状態で、空間部9b内まで送り込まれた雄ねじ部6dは雌ねじ部9aから外れるが、冷却管4を回さない限り、雌ねじ部9aがストッパとして機能するために、後端側への移動が規制され、位置決めされる。
なお、外側パイプ6の先端は、先端側穴部3cと開口側穴部3bとの境の段部に当接しているので、冷却管4の先端方向への移動も規制される。
【0026】
この取り付けた状態で、第1接続部6bに接続された供給用ホースから冷却流体を冷却管4内に送り込むと、冷却流体が内側パイプ5内を通って開口部5bから冷却穴3の先端側に送り出される。冷却穴3内に送り出された冷却流体は、金型2を冷却し、外側パイプ6と内側パイプ5との隙間Sを通って基端側に送られる。さらに、隙間Sを通った冷却流体は、第2接続部6aに接続された排出用ホースから外部に排出される。すなわち、内側パイプ5内が冷却流体の往路となり、隙間Sが冷却流体の復路となる。
【0027】
また、冷却管4を取り外す際は、冷却管4を後端方向(抜く方向)に引きながら取付時と反対方向に回転させることで、空間部9b内に配されていた雄ねじ部6dを内側(先端側)から雌ねじ部9aにねじ込んで螺合させ、さらに回して雌ねじ部9aを超えて外側に出すことで、容易に冷却穴3から冷却管4を抜いて取り外すことができる。
【0028】
このように本実施形態の金型冷却機構1では、外側パイプ6が、シール部材7と、雄ねじ部6dとを有し、冷却穴3の内周面に、雄ねじ部6dに螺合可能な雌ねじ部9aと、雌ねじ部9aの軸方向先端側に隣接していると共に雄ねじ部6dを収納可能な空間部9bとが設けられているので、シール部材7により漏れが防止されると共に、雌ねじ部9aを超えて空間部9bに雄ねじ部6dを配することで、冷却管4の抜け止め及び後端側の位置決めが可能になる。
【0029】
なお、冷却管4が冷却穴3に取り付けられた状態では、シール部材7により漏れ防止が図られていると共に、雄ねじ部6dと雌ねじ部9aとが螺合していないため、両者を堅くネジ止めする必要がない。さらに、空間部9bに雄ねじ部6dが配された状態では、軸方向の位置を変えずに冷却管4を回動させることができ、供給用ホースや排出用ホースの接続方向を容易に調整することが可能になる。すなわち、冷却流体用ホースの取り出し方向(接続方向)が固定されず、軸回転方向の高い自由度が得られる。
【0030】
また、取付部材9が、冷却穴3の一部を構成すると共に内周面に雌ねじ部9aが形成された貫通孔9cを有しているので、雌ねじ部9aが取付部材9に形成されていることで、金型本体に直接雌ねじ部を形成する必要が無い。また、取付部材9を交換することで、雌ねじ部9aも交換可能になり、種々の雄ねじ部6dや冷却管4に対応させることが可能になる。
さらに、金型2に、取付部材9を嵌め込み可能な取付凹部2aが形成されているので、取付凹部2aに取付部材9を嵌め込むだけで位置決めでき、冷却穴3と雌ねじ部9aとの軸合わせが容易になる。
【0031】
次に、本発明に係る金型冷却機構の第2から第4実施形態について、図5から図10を参照して以下に説明する。なお、以下の各実施形態の説明において、上記実施形態において説明した同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0032】
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、複数の取付部材9を用いて複数の冷却管4を金型2に取り付けているのに対し、第2実施形態の金型冷却機構21では、図5から図7に示すように、取付部材22が、複数の冷却穴3に対応した複数の貫通孔9bを有した板部材である点である。
【0033】
すなわち、第2実施形態では、図6に示すように、複数の貫通孔9bの内周面に雌ねじ部9aが形成されており、これら雌ねじ部9aに各冷却管4の雄ねじ部6dを螺合させ、さらに雄ねじ部6dを空間部9bまで挿入することで、冷却管4を取り付けることができる。なお、図5は、図6におけるA−A線断面を図示したものである。
本実施形態では、板状の取付部材22には、6つの貫通孔9bが形成されており、6本の冷却管4を取り付け可能である。
【0034】
このように第2実施形態の金型冷却機構21では、取付部材22が、複数の冷却穴3に対応した複数の貫通孔9bを有した板部材であるので、一つの取付部材22で複数の冷却管4を取付可能である。
【0035】
次に、第3実施形態と第1実施形態の異なる点は、第1実施形態では、取付部材9が一対のねじ孔9dにそれぞれ挿通させたボルト10でねじ穴2bにねじ止めされているのに対し、第3実施形態の金型冷却機構31では、図8に示すように、冷却穴33内に取付部材39が直接ねじ止めされている点である。
すなわち、第3実施形態では、冷却穴33に、取付用雌ねじ部32bを内周面に有した取り付け孔部32cが形成され、取付部材39が、取付用雌ねじ部32bに螺着可能な取付用雄ねじ部39bを外周面に有し、取り付け孔部32c内に少なくとも一部が挿入状態で取り付けられている。
【0036】
上記取り付け孔部32cは、金型32のおも型32Bに形成された貫通孔部33a内であって開口部側に形成されている。
上記取付部材39は、取り付け孔部32cに挿入されたリテーナーとして機能する。
なお、取付部材39は、フランジ状の頭部を有しており、例えば図9の(a)に示すように、六角ボルト形状の取付部材39Aや、図9に(b)に示すように、頭部円形状タイプの取付部材39Bなどが採用可能である。なお、頭部円形状の取付部材39Bでは、ねじ止め時の回動作業を容易にするために、回動用孔39dが端面に4つ形成されている。
【0037】
第3実施形態の金型冷却機構31において、冷却管4の取り付け方法について以下に説明する。
まず、取り付け孔部32cの取付用雌ねじ部32bに、取付用雄ねじ部39bを螺着させて取付部材39の頭部がおも型32Bの表面に当接するまで取付部材39をねじ込む。次に、冷却管4を冷却穴3に挿入して取り付ける際、先端側から冷却管4を貫通孔39cから冷却穴3に挿入していく。
【0038】
この際、冷却管4を回して雄ねじ部6dを外側から取付部材39の雌ねじ部39aにねじ込んで螺合させると共に、雄ねじ部6dの先端側に形成された空間部9b内まで雄ねじ部6dを送り込む。この状態で、第1実施形態と同様に、空間部9b内まで送り込まれた雄ねじ部6dは雌ねじ部39aから外れるが、冷却管4を回さない限り、雌ねじ部39aがストッパとして機能するために、後端側への移動が規制され、位置決めされる。
【0039】
次に、第4実施形態と第3実施形態との異なる点は、第3実施形態では、取付部材39の頭部がおも型32Bの表面から突出しているのに対し、第4実施形態の金型冷却機構41では、図10に示すように、取付部材49の頭部とおも型42Bの表面とが面一となっている点である。
すなわち、第4実施形態では、取付部材49にはフランジ状の頭部が無く、取付部材49全体が完全に冷却穴43の取り付け孔部32c内に挿入されている。したがって、第4実施形態では、頭部が突出しない分、第3実施形態よりも取付スペースを小さくすることが可能になる。
【0040】
このように第3及び第4実施形態の金型冷却機構31,41では、取付部材39,49が、取付用雌ねじ部32bに螺着可能な取付用雄ねじ部39b,49bを外周面に有し、取り付け孔部32c内に少なくとも一部が挿入状態で取り付けられているので、冷却穴33,43内に取付部材39,49をねじ込んで直接挿入することで、取付スペースをより小さくすることができる。
【0041】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0042】
1,21,31,41…金型冷却機構、2,32,42…金型、2a…取付凹部、3,33,43…冷却穴、4…冷却管、5…内側パイプ、5b…開口部、6…外側パイプ、6d…雄ねじ部、7…シール部材、9,39,49…取付部材、9a,39a…雌ねじ部、9b…空間部、9c,39c…貫通孔、32b…取付用雌ねじ部、32c…取り付け孔部、39b,49b…取付用雄ねじ部、S…隙間
図1
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