(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付された図面を参照し、本発明を実施するための実施形態について詳述する。
図1及び
図2は、プレートコンパクタ100の一例を示す。ここで、プレートコンパクタ100は、締固め装置の一例として挙げられるが、ランマーなどであってもよい。
【0012】
プレートコンパクタ100は、エンジンベース120と、エンジン140と、燃料タンク160と、締固め板180と、起振装置200と、駆動プーリ220と、ベルト240と、従動プーリ260と、ハンドル280と、ベルトカバー300と、を有する。
【0013】
エンジンベース120は、例えば、下面が開口したボックス形状の金属板材からなり、防振ゴムなどを介在させて、その上面にエンジン140が着脱可能に固定されている。ここで、ボックス形状とは、6つの長方形で囲まれ、隣り合う面がすべて垂直になっている直方体に限らず、見た目で直方体であると認識できる程度でよい。また、エンジン140は、環境を考慮した4ストロークエンジンであって、図示しない、キャブレター、マフラー、エアクリーナなどを備えている。さらに、エンジン140の上方には、図示しないステーを介して、燃料タンク160が取り付けられている。
【0014】
エンジンベース120の下部には、図示しない防振ゴムを介在して、金属製の締固め板180の後部が着脱可能に固定されている。締固め板180は、締固め板本体182と、取付ブラケット184と、を有する。締固め板本体182は、前後方向の両端部が外方に向かって斜めに立ち上がり、かつ、左右方向(幅方向)の両端部が上方に向かって垂直に立ち上がる形状をなしている。取付ブラケット184は、締固め板本体182の上面形状に倣った、下面が開口するチャンネル形状(コ字形状)をなし、締固め板本体182の前後方向に沿った状態で、その前後方向の両端部及び下端部が締固め板本体182の上面に溶接などで固定されている。ここで、取付ブラケット184の内部に、発泡ウレタン樹脂やエポキシ樹脂などの制震材を充填することもできる。
【0015】
また、締固め板180の取付ブラケット184の前部には、偏心荷重(アンバランスウェイト)を回転させることで振動する、起振装置200が着脱可能に固定されている。ここで、起振装置200が締固め板180の前方に位置することで、その振動によりプレートコンパクタ100が前方へと自走可能となっている。
【0016】
エンジン140の回転駆動力は、駆動プーリ220、ベルト240及び従動プーリ260を介して、起振装置200に伝達される。具体的には、エンジン140の出力軸(クランク軸)に駆動プーリ220が固定されると共に、起振装置200の入力軸に従動プーリ260が固定され、駆動プーリ220と従動プーリ260との間にベルト240が巻き回されている。なお、ベルト240の張力を調整する調整機構を備えることもできる。
【0017】
エンジンベース120の後部には、締固め作業を行う作業者が把持するコ字形状のハンドル280の下端部が固定されている。ここで、コ字形状とは、隣り合う辺が直角をなしている形状に限らず、見た目でコ字形状であると認識できる程度でよい。また、エンジンベース120には、作業者などの安全を確保するために、駆動プーリ220、ベルト240及び従動プーリ260の周囲を覆うベルトカバー300が固定されている。
【0018】
そして、プレートコンパクタ100を使用した締固め作業においては、エンジン140を始動させると、その回転駆動力が駆動プーリ220、ベルト240及び従動プーリ260を介して起振装置200に伝達され、偏心荷重が回転して上下方向に振動する。この振動によって締固め板180が上下方向に振動し、路盤やアスファルト混合物層などを締め固めることができる。このとき、起振装置200が重心から外れた位置に設置されているため、作業者などがプレートコンパクタ100を前方に押さなくても、起振装置200の振動によってプレートコンパクタ100が前方に向かって自走する。
【0019】
次に、プレートコンパクタ100の締固め板180に着脱可能に取り付けられ、締固め板180が路盤などと接触することで発生する騒音を低減する、騒音低減装置の一例について説明する。
【0020】
図3は、騒音低減装置の第1実施形態を示す。
騒音低減装置400は、弾性板420と、弾性板420の一面に配置される金属板440と、弾性板420及び金属板440を締固め板180の下面に着脱可能に固定する固定具460と、を有する。
【0021】
弾性板420は、例えば、ゴム、弾性を有する樹脂(例えば、ポリウレタン、シリコン)又はゴムチップを樹脂で結合した、平面視で矩形形状をなす板状の部材であって、少なくとも、締固め板本体182の下面に位置する平坦部分(接地面)を覆う大きさを有している。金属板440は、例えば、鉄、スチール、ステンレス、アルミニウム合金などの金属からなる、平面視で矩形形状をなす板状の部材であって、少なくとも、弾性板420の一面を覆う大きさを有している。また、金属板440の板面には、その厚さ方向に貫通する、複数の貫通孔442が形成されている。貫通孔442は、例えば、円形、正方形、長方形、三角形、多角形などの同一断面を有し、金属板440の板面に対して、単位面積あたりの分布状態が同一(即ち、一様な分布状態)となるように形成されている。ここでは、金属板440の貫通孔442は、金属板440の直交する2方向について、夫々、一定の間隔を隔てて配置されている。なお、金属板440の貫通孔442は、隣り合う列の孔が半ピッチずれている、千鳥状に配置することもできる。
【0022】
金属板440の貫通孔442が円形の断面をなしている場合、その直径は1mm以上40mm以下であることが望ましい。貫通孔442の直径が1mm未満の場合、締固め作業によって貫通孔442を目詰まりさせる異物の除去が困難となり、貫通孔442の直径が40mmより大きい場合、騒音の原因となる音の減衰効果を発揮することが困難となる。なお、金属板440の貫通孔442が円形の断面以外である場合には、その最小間隔が1mm以上40mm以下であることが望ましい。また、金属板440に形成される貫通孔442のピッチは、金属板440の強度に影響が及ばないように、少なくとも貫通孔442の直径の1.1倍以上とすることが望ましい。
【0023】
固定具460は、長方形形状をなす板状部材462と、外周面に雄ねじが形成されたねじ部材464と、横断面がアングル形状(L字形状)をなすアングル部材466と、ねじ部材464に螺合する2つのナット468と、を有する。
【0024】
板状部材462は、金属板440と同一の金属からなり、金属板440の左右方向の両端部から直角に上方へと立ち上がるように、例えば、溶接などを介して金属板440に固定されている。なお、板状部材462は、金属板440を製造するときに、一体成形することもできる。ねじ部材464は、板状部材462の外側面、即ち、金属板440の左右外方に位置する外側面であって、金属板440の前後方向に沿って所定距離を隔てた少なくとも2位置に、例えば、溶接などを介して、金属板440の板面から垂直に上方へと延びるように固定されている。なお、ねじ部材464は、板状部材462の外側面に固定されたブラケットなどを介して、ここに固定することもできる。
【0025】
アングル部材466は、例えば、鉄、スチール、ステンレス、アルミニウム合金などの金属からなり、締固め板180における締固め板本体182の左右端部に着脱可能な全長を有している。また、アングル部材466の一面には、板状部材462に固定されたねじ部材464の軸部が挿通する挿通孔(図示せず)が形成されている。そして、アングル部材466の挿通孔は、2つのナット468によってねじ部材464の軸方向に対する相対位置を調整可能なように、ねじ部材464に対して着脱可能に固定されている。
【0026】
また、固定具460の板状部材462の内側面には、金属製の板状部材462と金属製の締固め板180とが直接接触することを防ぐため、例えば、ゴム、弾性を有する樹脂(例えば、ポリウレタン、シリコン)又はゴムチップを樹脂で結合した、矩形形状をなす弾性板480を配設することもできる。このようにすれば、板状部材462と締固め板180とが直接接触せず、例えば、金属板同士が接触して発生する異音を抑制することができる。
【0027】
なお、プレートコンパクタ100の締固め板180に対して、騒音低減装置400を着脱可能に固定する必要がない場合には、固定具460として、例えば、接着剤を使用して、締固め板本体182の下面に弾性板420及び金属板440を固定することもできる。この場合、金属板440は、平面視で、弾性板420と同一の形状を有していればよく、金属板の接触による異音が発生しないことから、弾性板480を省略することができる。
【0028】
そして、締固め板180の締固め板本体182に対して、
図4及び
図5に示すように、弾性板420が上位に位置する状態で、固定具460を介して騒音低減装置400を着脱可能に固定する。具体的には、固定具460の2つのナット468を緩め、
図6に示すように、締固め板本体182の下面に騒音低減装置400の弾性板420を当接させた状態で、上方に位置するナット468を締め込む。すると、アングル部材466の下端部が締固め板本体182の上面と当接し、ナット468の締め込みに伴って、固定具460の板状部材462を上方へと移動させる。そして、締固め板本体182と騒音低減装置400の金属板440とで弾性板420を挟み込んで固定した状態で、下方に位置するナット468をアングル部材466の方向に移動させることで、その固定状態をロックすることができる。
【0029】
このようなプレートコンパクタ100を使用して、路盤やアスファルト混合物層などを締固めする場合、騒音低減装置400の金属板440の下面が路盤などに接触し、この接触に起因する騒音が発生する。しかし、金属板440の板面には複数の貫通孔442が形成されているので、騒音が貫通孔442を通過するとき、例えば、振幅が減衰されて騒音を低減することができる。また、締固め板本体182は騒音低減装置400の金属板440と直接接触しないので、金属板同士が接触することで発生する騒音を抑制することができる。さらに、路盤などには金属板440が接触するため、プレートコンパクタ100が前方へと自走することを妨げることがない。
【0030】
ここで、騒音低減装置400の弾性板420の板面には、
図7に示すように、金属板440の貫通孔442と連続する貫通孔422、要するに、金属板440の貫通孔442と同位置に複数の貫通孔422を形成することもできる。弾性板420の貫通孔422は、例えば、円形、正方形、長方形、三角形、多角形などの同一断面を有する。弾性板420の貫通孔422が円形の断面をなしている場合、その直径は1mm以上40mm以下であることが望ましい。貫通孔422の直径が1mm未満の場合、締固め作業によって貫通孔422を目詰まりさせる異物の除去が困難となり、貫通孔422の直径が40mmより大きい場合、騒音の原因となる音の減衰効果を発揮することが困難となる。弾性板420の貫通孔422が円形の断面以外である場合には、その最小間隔が1mm以上40mm以下であることが望ましい。このようにすれば、弾性板420の貫通孔422と金属板440の貫通孔442とが連続することで、騒音の振幅を減衰させる孔の全長が長くなり、その減衰効果の実効を図ることができる。なお、弾性板420に貫通孔422を形成する場合、弾性板420に必要な強度を考慮して、その直径などの断面積を適宜設定することができる。
【0031】
また、弾性板420の貫通孔422と金属板440の貫通孔442とを、
図8に示すように、積層状態における上部開口と下部開口とが連通する限度内で、例えば、前後方向に半ピッチずつ相互にずらすことで、騒音の減衰特性を変化させることができる。この場合、締固め作業による振動などによって弾性板420と金属板440との相対位置が変化しないようにすべく、例えば、弾性板420と金属板440とを接着剤などで恒久的に固定してもよい。そして、騒音の減衰特性を変化させると、例えば、騒音苦情の原因となる周波数の騒音を集中的に減衰することができる。ここで、弾性板420の貫通孔422及び金属板440の貫通孔442は、前後方向に限らず、任意の方向にずらすことができ、また、そのずらし幅は半ピッチに限らず、上部開口と下部開口とが連通する限度内において任意に設定することができる。なお、弾性板420の貫通孔422は、騒音の減衰特性をチューニングすべく、例えば、円錐形状、段付き円柱形状など、その厚み方向で断面積が変化するようにしてもよい。
【0032】
図9は、騒音低減装置の第2実施形態を示す。なお、以下の説明においては、重複説明を避けるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。第1実施形態と共通する部分については、第1実施形態の説明を参照されたい。
【0033】
第2実施形態に係る騒音低減装置400では、1枚の弾性板420に代えて、薄板形状をなす複数(本実施形態においては3枚)の弾性板420を積み重ねたものを使用する。各弾性板420の板面には、1枚の弾性板420の貫通孔422と同位置に、その厚さ方向に貫通する、複数の貫通孔422が形成されている。各弾性板420の貫通孔422は、弾性板420が金属板440に積層された状態で、
図10に示すように、最上位に位置する弾性板420の貫通孔422(上部開口)と金属板440の貫通孔442(下部開口)とが連通する限度内において、金属板440及び弾性板420の板面上で相互にずれている。この場合、締固め作業の振動などによって各弾性板420及び金属板440との相対位置が変化しないようにすべく、例えば、隣り合う面同士を接着剤で恒久的に固定し、周縁部をカットして平面視で矩形形状に成形してもよい。ここで、金属板440に対する各弾性板420のずれ方向及びずれ幅は、上記限度内で任意に設定することができる。そして、
図11に示すように、プレートコンパクタ100の締固め板180に、固定具460を介して騒音低減装置400を着脱可能に固定する。
【0034】
このようにすれば、金属板440の貫通孔442及び各弾性板420の貫通孔422で形成される騒音減衰孔は、その途中で屈曲及び断面積が変化するため、騒音の減衰特性を多様に変化させることができる。そして、騒音の減衰特性を多様に変化可能となることから、例えば、特定の周波数の騒音を効率よく低減することができる。なお、他の作用及び効果に関しては、先の第1実施形態と同様であるので、その説明は省略する。必要があれば、先の第1実施形態の説明を参照されたい。
【0035】
固定具460としては、
図12に示すように、板状部材462の板面に挿通孔を形成し、ここにねじ部材464の軸部を挿通させると共に、ねじ部材464の一端部にアングル部材466を固定してもよい。このようにすれば、アングル部材466は、ナット468を締め付け又は緩めることで、プレートコンパクタ100の締固め板180の左右方向に移動可能となり、アングル部材466の一面と板状部材462とで締固め板180の締固め板本体182を挟んで固定することができる。
【0036】
また、固定具460としては、
図13及び
図14に示すように、矩形形状の第1の部材462と、矩形形状の第2の部材464と、強度を確保するためのリブ部材466と、ねじ部材468と、2つのナット470と、を有することもできる。
【0037】
第1の部材462は、金属板440の前後方向の両端部から、締固め板180の締固め板本体182の下面形状に沿って斜め外方へと向かって延びるように、その長辺が固定されている。第2の部材464は、第1の部材462の先端部、即ち、前後方向の両端部に位置する端部において、締固め板本体182の斜めに延びる部分の板面と直角をなすように、例えば、溶接などで固定されている。また、第2の部材464の板面には、左右方向の離間した少なくとも2位置において、締固め板本体182の斜めに延びる部分を臨む挿通孔464Aが形成されている。リブ部材466は、金属板440、第1の部材462及び第2の部材464の左右方向の両端部を連結する形状をなし、例えば、ここに溶接などで固定されている。従って、固定具460は、直交する2つの板材を有し、騒音低減装置400を締固め板180に強固に固定する強度を有するようになる。
【0038】
ねじ部材468は、外周面に雄ねじが形成された棒形状をなし、その先端部に、締固め板本体182の斜めに延びる部分を挟み込むスリット468Aが形成されている。そして、ねじ部材468の軸部は、第2の部材464の挿通孔464Aに挿通されている。また、2つのナット470は、ねじ部材468の軸部に対して、第2の部材464を挟んだ位置に螺合されている。
【0039】
かかる固定具460において、第2の部材464の下方に位置するナット470を締め付けると、ねじ部材468が締固め板本体182の方向にスライドし、その先端部に形成されたスリット468Aが締固め板本体182の端部を挟み込む。そして、このナット470を更に締め付けることで、一対のねじ部材468の先端部で締固め板本体182を挟み込み、騒音低減装置400を締固め板180に固定することができる。なお、第2の部材464の上方に位置するナット470は、これを締め付けることで、いわゆるロックナットとしての機能を発揮することができる。
【0040】
なお、各社から提供されているプレートコンパクタ100は、締固め板180の前後方向の寸法及び形状が異なっているため、騒音低減装置400の固定具360は、締固め板180の左右方向の両端部を固定することが望ましい。
【0041】
ここで、騒音低減装置400の騒音低減効果を説明することを目的とした、実施例について説明する。
その前提条件として、プレートコンパクタ100の締固め板180の下面に、3枚の弾性板420及び金属板440を積層した騒音低減装置400を固定する。各弾性板420は、厚さ5mmのゴム板からなり、直径7mmの貫通孔422が14mm間隔で形成されている。金属板440は、厚さ3mmのスチールからなり、弾性板420と同様に、直径7mmの貫通孔422が14mm間隔で形成されている。各弾性板420の貫通孔422及び金属板440の貫通孔442は、上位に位置する弾性板420の貫通孔422(上部開口)と下位に位置する金属板440の貫通孔442(下部開口)とが連通する限度内において、相互に3mmずつずれている。そして、固定具460は、締固め板180の左右方向の両端部を用い、騒音低減装置400を締固め板180の下面に固定している。
【0042】
比較例1として、一般的なプレートコンパクタを使用する。また、比較例2として、特許文献1のように、締固め板の上面に位置する密閉空間に樹脂製制震材を充填した静音型のプレートコンパクタを使用する。
【0043】
そして、
図15に示すように、骨材の最大粒径が13mmの開粒度アスファルト混合物層に、マスキングテープを使用して1m×1mの3つの試験区画500、520及び540を設定する。騒音計600を三脚620の先端に固定し、各試験区画500、520及び540の中央から4m、路面から1.2mの位置に騒音計600を設置する。また、半たわみ性舗装の施工と同様に、セメントミルクを開粒度アスファルト混合物層に所定量散布し、実施例、比較例1及び比較例2のプレートコンパクタを使用して、セメントミルクをアスファルト混合物層に浸透させる締固め作業の騒音を測定した。
【0044】
その結果、次のような測定結果が得られた。
【表1】
【0045】
上記測定結果を参照すると、実施例では、比較例1及び2に対して最大騒音値が約13%低減した。また、実施例では、比較例1及び2に対して騒音の頻出値の幅が小さくなった。従って、プレートコンパクタ100による締固め作業時に発生する騒音が小さくなり、騒音苦情が減少するものと考えられる。