(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に示すプレスブレーキでは、斜板を2つの位置の間で傾動させてポンプの吐出量を変更しているので、それぞれの位置においては圧力が一定であるが、斜板が一方の位置から他方の位置に動いている間に圧力変動が発生する。この圧力変動は速度変化の際に発生するため、上部テーブルを安定して動作させることが困難であった。また、斜板を傾動させるための制御も必要となり、制御が複雑となっていた。
【0006】
本発明は、簡易な制御により安定して動作させることが可能なプレスブレーキおよび曲げ加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明のプレスブレーキは、パンチとダイによって板状の部材を曲げ加工するプレスブレーキであって、可動テーブルと、固定テーブルと、油圧シリンダと、ポンプと、を備える。可動テーブルは、パンチが装着される。固定テーブルは、ダイが装着される。油圧シリンダは、伸長する際に油が供給される第1伸長室および第2伸長室と、収縮する際に油が供給される収縮室と、を有する。油圧シリンダは、伸縮により固定テーブルに対して可動テーブルを接近または離間させる。ポンプは、第1伸長室および第2伸長室に接続された第1吐出部と、収縮室に接続された第2吐出部と、を有し、第1吐出部および第2吐出部のうち一方から油を吐出する際には他方から油を吸引する。
【0008】
このように、2つの第1伸長室および第2伸長室を有する油圧シリンダおよび双方向ポンプが設けられている。ワークに対して曲げ加工を行うために設定された加工設定領域以外の領域において可動テーブルを固定テーブルに接近させる際には、ポンプからの油を第1伸長室に供給せず第2伸長室にのみ供給することにより、油圧シリンダを伸長させる際に油圧によって作用される面積を小さくすることができる。そのため、加工設定領域以外の領域において、可動テーブルを高速で固定テーブルへ接近させることができる。このような接近における加工設定領域以外の領域は、高速接近領域ともいえる。
【0009】
また、第1伸長室にも油を供給することにより、加工設定領域において第1伸長室および第2伸長室の双方に油が供給されることになり、油圧シリンダを伸長させる際に油圧によって作用される面積が大きくすることができる。そのため、加工設定領域において可動テーブルを低速で加圧力を増加して固定テーブルへ近づけることができる。このような接近における加工設定領域は、低速接近領域ともいえる。
【0010】
すなわち、2つの伸長室のうちの一方の伸長室にのみ油を供給した状態から双方の伸長室に油を供給する状態にするだけで可変テーブルの固定テーブルへの接近速度を高速から低速に変更し加圧力を増加可能なため、吐出量を可変とするように複雑な双方向ポンプおよびシステムを使用することなく、それと同等な効率の良い可動テーブルの動作が可能となる。
【0011】
また、加工設定領域(低速接近領域)とは、実際にダイおよびパンチがワークに接触して板状部材の曲げ加工が行われる領域であってもよいし、実際にダイおよびパンチがワークに接触して板状部材の曲げ加工が行われる領域を含む領域に設定されてもよい。
第2の発明のプレスブレーキは、第1の発明のプレスブレーキであって、可動テーブルの下降による油圧シリンダからの油の排出に対して抵抗力を発生する抵抗力発生部を更に備える。
【0012】
これによって、可動テーブルを下降させる際に自重による下降に対してカウンター力を発生させることができる。そのため、ポンプから吐出された油によって可動テーブルの下降を制御することが可能となる。仮に、自重による下降に対してカウンター力を発生させない場合、可動テーブルの下降時にマイナストルクで制御することになり、作動油の温度変化による粘度の違いによって不安定になりやすく、速度を速く若しくは加速度を速くし難かった。しかしながら、カウンター力を発生することによって、油圧によるプラスのトルクで可動テーブルの下降を制御できる。すなわち、ポンプを動作させるモータの回転数、トルクがそのまま可動テーブルの動作に影響するようになり、安定した速い可動テーブルの動作が可能となる。
【0013】
第3の発明のプレスブレーキは、第2の発明のプレスブレーキであって、抵抗力発生部は、収縮室に接続され、油圧が所定値より小さい場合に油を遮断し、油圧が所定値以上の場合に油を通過させる弁を有する。
ここで、例えば、所定値を可動テーブルの自重によって生じる油圧よりも高い値に設定することによって、自重だけでは可動テーブルが下降しないため、ポンプから吐出された圧油によって可動テーブルの下降を制御することが可能となる。
【0014】
第4の発明のプレスブレーキは、第1の発明のプレスブレーキであって、油圧シリンダは、シリンダチューブと、シリンダチューブに挿入されシリンダチューブの内周面を摺動可能なピストン部と、を有する。ピストン部の第2伸長室を形成する表面のうち伸縮方向に対して垂直な第1面の面積は、ピストン部の収縮室を形成する表面のうち伸縮方向に対して垂直な第2面の面積と同じである。
【0015】
このように、第1面の面積と第2面の面積を同じ面積とすることにより、高速接近領域における速度と離間速度を同程度の速度に設定し易くなる。すなわち、第1面の面積と第2面の面積が同じであるため、ポンプによる吸引と排出の方向を反対にするだけで、ポンプを駆動するモータに係る負荷が同程度の状態で、高速接近領域における速度と離間速度を同程度の速度にできる。このため、油量を補充するための油量補充回路を介することなく可動テーブルを容易に制御することができる。
【0016】
なお、第1面の面積と第2面の面積が同じとは、機械的な誤差を含む。
第5の発明のプレスブレーキは、第4の発明のプレスブレーキであって、油圧シリンダは、伸縮方向に沿うようにピストン部に形成された孔部に挿入された棒状部材を更に有する。ピストン部は、長手方向が伸縮方向に沿うようにシリンダチューブに挿入され、先端が可動テーブルに接続されているピストンロッドと、ピストンロッドに固定されシリンダチューブの内周面を摺動可能なピストンと、を持つ。孔部は、ピストンに設けられた開口部からピストンロッドに亘って形成され、孔部のピストンロッド側の端は閉じられている。棒状部材は、その先端に、孔部の内周面に対して摺動可能な摺動部を持つ。第2伸長室は、孔部の内側であって棒状部材とピストン部によって囲まれた空間によって形成される。第1伸長室は、ピストン部と棒状部材とシリンダチューブに囲まれた空間によって形成される。収縮室は、ピストン部とシリンダチューブに囲まれた空間によって形成される。第1面は、第2伸長室に面するピストンロッドの表面のうち摺動部に対向する部分である。第2面は、収縮室に面するピストンの表面部分である。
【0017】
このように第1面の面積と第2面の面積を同じ面積とすることにより、油量を補充するための油量補充回路を介することなく可動テーブルを容易に制御することができる。
第6の発明のプレスブレーキは、第1または2の発明のプレスブレーキであって、遮断部と、遮断部およびポンプを制御する制御部と、を更に備える。遮断部は、第1吐出部と第1伸長室との間の油の流通を遮断可能である。制御部は、遮断部を遮断して、ポンプの第1吐出部から吐出させた油を第2伸長室に供給して、可動テーブルを第1所定位置まで固定テーブルに接近させ、可動テーブルが第1所定位置に達すると、遮断部を油の流通を可能にして、ポンプの第1吐出部から吐出させた油を第1伸長室および第2伸長室に供給して、第2所定位置まで可動テーブルを固定テーブルに接近させ、可動テーブルが第2所定位置に達すると、遮断部を遮断して、ポンプの第2吐出部から吐出させた油を収縮室に供給して可動テーブルを固定テーブルから離間させる。
【0018】
このように、2つの伸長室のうちの一方の伸長室への油の供給を停止した状態から供給を開始した状態にするだけで、可変テーブルの固定テーブルへの接近速度を高速から低速に変更し加圧力を増加可能なため、簡易な制御で安定した動作が容易となる。
第7の発明のプレスブレーキは、第1の発明のプレスブレーキであって、ポンプは、定容量型双方向ポンプである。
【0019】
上述したように、2つの伸長室のうちの一方の伸長室にのみ油を供給した状態から双方の伸長室に油を供給する状態にするだけで可変テーブルの固定テーブルへの接近速度を高速から低速に変更し加圧力を増加可能である。そのため、吐出量を可変とする可変容量型双方向ポンプおよびシステムを使用することなく、定容量型双方向ポンプを用いることができ、容易に制御を行うことが出来る。
【0020】
第8の発明のプレスブレーキは、第1の発明のプレスブレーキであって、ポンプを駆動する電動サーボモータを更に備える。
ここで、サーボ弁を利用した油圧制御もあるが、油圧機器のコストが高いうえに作動油中のコンタミの管理が大変負担となる。また、常時モータを駆動し続けるので省エネとはいえない。
【0021】
対して、本発明では、ポンプを電動サーボモータで直接駆動するため、作動油中のコンタミの管理も通常通りで済むうえ、油圧開度構成も制御も簡素化され、油圧機器のコストも安くなる。また、必要なときに電動サーボモータを動かすので、省エネルギー化が図れる。
第9の発明の曲げ加工方法は、板状の部材を曲げ加工する曲げ加工方法であって、第1接近ステップと、第2接近ステップと、離間ステップとを備える。第1接近ステップは、ポンプの第1吐出部から油を吐出させて油圧シリンダの第2伸長室に油を供給するとともに油圧シリンダの収縮室からポンプの第2吐出部に油を吸引することにより、パンチが装着される可動テーブルを、ダイが装着される固定テーブルに接近させる。第2接近ステップは、ポンプの第1吐出部から油を吐出させて第1伸長室および第2伸長室に油を供給するとともに収縮室からポンプの第2吐出部に油を吸引することにより、可動テーブルを固定テーブルに接近させる。離間ステップは、ポンプの第2吐出部から油を吐出させて収縮室に油を供給するとともに油圧シリンダの第1伸長室からポンプの第1吐出部に油を吸引することにより、可動テーブルを固定テーブルから離間させる。
【0022】
このように、2つの第1伸長室および第2伸長室を有する油圧シリンダおよび双方向ポンプが設けられている。ワークに対して曲げ加工を行うために設定された加工設定領域以外の領域において可動テーブルを固定テーブルに接近させる際には、ポンプからの油を第1伸長室に供給せず第2伸長室にのみ供給することにより、油圧シリンダを伸長させる際に油圧によって作用される面積を小さくすることができる。そのため、加工設定領域以外の領域において、可動テーブルを高速で固定テーブルへ接近させることができる。このような接近における加工設定領域以外の領域は、高速接近領域ともいえる。
【0023】
また、第1伸長室にも油を供給することにより、加工設定領域において第1伸長室および第2伸長室の双方に油が供給されることになり、油圧シリンダを伸長させる際に油圧によって作用される面積が大きくすることができる。そのため、加工設定領域において可動テーブルを低速で加圧力を増加して固定テーブルへ近づけることができる。このような接近における加工設定領域は、低速接近領域ともいえる。
【0024】
すなわち、2つの伸長室のうちの一方の伸長室にのみ油を供給した状態から双方の伸長室に油を供給する状態にするだけで可変テーブルの固定テーブルへの接近速度を高速から低速に変更し加圧力を増加可能なため、吐出量を可変とするように複雑な双方向ポンプおよびシステムを使用することなく、それと同等な効率の良いラム動作が可能となる。
また、加工設定領域(低速接近領域)とは、実際にダイおよびパンチがワークに接触して板状部材の曲げ加工が行われる領域であってもよいし、実際にダイおよびパンチがワークに接触して板状部材の曲げ加工が行われる領域を含む領域に設定されてもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、簡易な制御により安定して動作させることが可能なプレスブレーキおよび曲げ加工方法を提供することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明にかかる実施の形態のプレスブレーキについて図面を参照しながら以下に説明する。
<1.構成>
(1−1.プレスブレーキ1の概要)
図1(a)は、本実施の形態のプレスブレーキ1の構成を示す正面模式図である。
図1(b)は、プレスブレーキ1の側面模式図である。本実施の形態のプレスブレーキ1は、
図1(a)および
図1(b)に示すように、フレーム10と、テーブル11と、ラム12と、一対の油圧シリンダ13a、13bと、シリンダ駆動部14a、14bと、制御部15と、操作部16と、を備える。
【0028】
フレーム10は、左右方向に所定の間隔をおいて配置された一対のプレート部10a、10bを有している。プレート部10a、10bは、
図1(b)に示すように、側面視において略C字形状の部材である。
テーブル11は、プレート部10a、10bの下部に固定されており、上面にダイ17が装着可能である。
【0029】
ラム12は、プレート部10a、10bの上部に昇降可能に支持されており、下面にパンチ18が装着可能である。ラム12が下降してラム12の下側に配置されているテーブル11に接近し、ダイ17とパンチ18の協働によって、板状のワークWに対して折り曲げ加工が行われる。
一対の油圧シリンダ13a、13bは、ラム12を昇降するためにラム12の左右の端の上側に鉛直方向に沿って配置されている。油圧シリンダ13aはフレーム10のプレート部10aに固定され、油圧シリンダ13bはフレーム10のプレート部10bに固定されている。油圧シリンダ13a、13bは、その伸縮方向が上下方向に一致するように配置されている。
【0030】
シリンダ駆動部14aは、圧油を供給または吸引することにより油圧シリンダ13aを駆動する。シリンダ駆動部14bは、圧油を供給または吸引することにより圧油を用いて油圧シリンダ13bを駆動する。
制御部15は、シリンダ駆動部14a、14bを制御する。操作部16は、作業者による操作の入力が行われ、後述する
図2に示すように、フートスイッチ95、操作盤94等を有する。
【0031】
(1−2.油圧シリンダ13a、13b)
次に、油圧シリンダ13a、13bの構成について説明するが、油圧シリンダ13a、13bは同様の構成であるため、
図1(a)において左側に設けられている油圧シリンダ13aを用いて、その構成を説明する。
図2(a)は、油圧シリンダ13aが収縮した状態を示す断面図である。
図2(b)は、油圧シリンダ13aが伸長した状態を示す断面図である。油圧シリンダ13aは、
図2(a)及び
図2(b)に示すように、シリンダチューブ20と、ピストン部21と、棒状部材22と、第1伸長室23と、第2伸長室24と、収縮室25と、を有する。
【0032】
シリンダチューブ20は、円筒状であって、
図1(a)に示すフレーム10に固定されている。ピストン部21は、シリンダチューブ20の内周面を摺動可能であり、ピストン31と、ピストンロッド32と、を有する。
ピストン31は、円柱形状であって、シリンダチューブ20の内周面に接触しており、伸縮方向X(上下方向)に沿ってシリンダチューブ20の内周面を摺動する。ピストンロッド32は、円柱形状であって、上下方向に沿ってシリンダチューブ20に挿入されており、その上端がピストン31に固定されている。また、ピストンロッド32の下端は、シリンダチューブ20の下方においてラム12に固定されている。
【0033】
ピストン31の上面に形成された開口部31aから下方に向かってピストンロッド32まで円柱形状の孔部33が形成されている。孔部33は、ピストンロッド32を貫通しておらず、孔部33の下端は閉じられている。
棒状部材22は、孔部33の内周面に対して相対的に摺動可能であり、摺動部34と、ロッド部35とを有する。
【0034】
摺動部34は、円柱形状であって、上下方向に沿って孔部33の内周面を摺動する。ロッド部35は、円柱形状であって、上下方向に沿ってシリンダチューブ20に挿入されており、その下端が摺動部34に固定されている。また、ロッド部35は、上端がシリンダチューブ20から突出するように配置されており、フレーム10に固定されている。すなわち、棒状部材22は、シリンダチューブ20とともにフレーム10に固定されており、移動しない。また、棒状部材22には、上下方向に沿って油が流通するシリンダ流通路36が形成されている。このシリンダ流通路36は、摺動部34の下面に開口部36aを有している。
【0035】
第1伸長室23は、シリンダチューブ20とピストン部21と棒状部材22によって囲まれた中空円柱状の空間である。第1伸長室23は、ピストン部21よりも上側に形成されており、棒状部材22の周囲に形成された空間ともいえる。
第1伸長室23に圧油が供給されると、ピストン31の円環状の上面31bに圧力が付与され、ピストン部21が下方に移動する。
【0036】
第2伸長室24は、孔部33内の円柱状の空間であって、ピストン部21と棒状部材22に囲まれた空間である。第2伸長室24にシリンダ流通路36から圧油が供給されると、孔部33の底面33aに圧力が付与され、ピストン部21が下方に移動する。孔部33の底面33aは、摺動部34に対向するピストン部21の面ともいえる。
ここで、底面33aの面積は、上面31bの面積よりも小さく形成されている。なお、第1伸長室23および第2伸長室24は円柱状の空間であるため、第2伸長室24の伸縮方向に垂直な断面積は、第1伸長室23の伸縮方向に垂直な断面積よりも小さいともいえる。
【0037】
収縮室25は、ピストン31の下側であって、ピストンロッド32とシリンダチューブ20の間の中空円柱状の空間である。収縮室25に圧油が供給されると、収縮室25に面したピストン31の円環状の下面31cに圧力が付与され、ピストン部21が上方に移動する。なお、収縮室25は、円環状であるため、シリンダチューブ20の底面20aも円環状であり、下面31cと同じ面積である。
【0038】
図2(c)は、
図2(a)のAA´間の矢示断面図である。
図2(c)の右斜め上から左斜め下方に向かうハッチングが施された領域が底面33aを示し、右斜め下から左斜め上方に向かうハッチングが施された領域がシリンダチューブ20の底面20aを示す。
図2(c)に示す、底面33aと底面20aは同じ面積に形成されている。上述したように底面20aと下面31cは同じ形状であるため、底面33aと下面31cは同じ面積に設定されている。
【0039】
すなわち、伸長方向(上下方向ともいえる)に対して垂直な面であって第2伸長室24に面する孔部33の底面33aと、伸長方向に対して垂直な面であって収縮室25に面するピストン31の下面31cは、同じ面積に設定されている。
(1−3.シリンダ駆動部14a、14b)
次に、油圧シリンダ13a、13bを駆動するシリンダ駆動部14a、14bについて説明する。なお、シリンダ駆動部14aとシリンダ駆動部14bは同様の構成であるため、シリンダ駆動部14aを用いて、その構成を説明する。
【0040】
図3は、シリンダ駆動部14aの構成を示す油圧回路図である。
図3に示すように、シリンダ駆動部14aは、油圧回路40と、定容量型双方向ポンプ41と、サーボモータ42と、タンク43とを有する。
定容量型双方向ポンプ41は、第1吐出部41aと第2吐出部41bを有する。定容量型双方向ポンプ41は、第1吐出部41aおよび第2吐出部41bのうち一方から油を吐出し他方から油を吸引する。
【0041】
サーボモータ42は、定容量型双方向ポンプ41の回転を制御する。サーボモータ42は、後段にて説明するが、ラム12の位置を検出するリニアセンサ93の検出結果に基づいて制御される。サーボモータ42の回転数を上げると定容量型双方向ポンプ41の吐出量が多くなる。サーボモータ42の回転数を下げると定容量型双方向ポンプ41の吐出量は少なくなる。サーボモータ42の回転方向を正逆反転すると、定容量型双方向ポンプ41の油の吐出方向が逆になる。サーボモータ42をサーボ制御することによって、ラム12のモーションを変えることができる。このように定容量双方向ポンプ41をサーボモータ42で直接駆動することで応答性がよい制御が可能になる。
【0042】
なお、サーボ弁を利用した油圧制御もあるが、油圧機器のコストが高いうえに作動油中のコンタミの管理が大変負担となる。また、常時モータを駆動し続けるので省エネとはいえない。しかしながら、本実施の形態では、定容量双方向ポンプ41をサーボモータ42で直接駆動するため、作動油中のコンタミの管理も通常通りで済むうえ、油圧開度構成も制御も簡素化され、油圧機器のコストも安くなる。また、必要なときにサーボモータ42を動かすので、省エネルギー化が図れる。
【0043】
タンク43には油が貯められている。
油圧回路40は、油圧シリンダ13aと定容量型双方向ポンプ41とタンク43の間を接続する。
(1−3−1.油圧回路40)
油圧回路40は、
図3に示すように、主に、第1メイン回路51と、第2メイン回路52と、油量補充回路53と、第1伸長室油量調整回路54と、を有する。
【0044】
(第1メイン回路51)
第1メイン回路51は、定容量型双方向ポンプ41の第1吐出部41aと、第1伸長室23および第2伸長室24との間を接続する。第1メイン回路51は、主に、第1流通路61と、第2流通路62と、第3流通路63と、開閉バルブ64とを有する。
第1流通路61は、定容量型双方向ポンプ41の第1吐出部41aに接続されている。第2流通路62は、第1流通路61と第1伸長室23の間を接続する。第3流通路63は、第1流通路61とシリンダ流通路36との間を接続する。開閉バルブ64は、第2流通路62に設けられており、第2流通路62を開閉可能である。開閉バルブ64としては、ソレノイドバルブが用いられる。この開閉バルブ64によって、第1吐出部41aと第1伸長室23との間における油の流通を遮断または開放できる。
【0045】
(第2メイン回路52)
第2メイン回路52は、定容量型双方向ポンプ41の第2吐出部41bと収縮室25との間を接続する。第2メイン回路52は、第4流通路71と、チェックバルブ72と、第5流通路73と、リリーフバルブ74と、ストップバルブ75と、を有している。第4流通路71は、定容量型双方向ポンプ41の第2吐出部41bと収縮室25との間を接続する。チェックバルブ72は、第4流通路71に設けられており、吐出部41bから収縮室25の方向には油を流通可能とし、収縮室25から吐出部41bの方向には油の流通を遮断する。第5流通路73は、チェックバルブ72をバイパスするように第4流通路71から分岐して第4流通路71に合流しチェックバルブ72と並列に配置されている。収縮室25から吐出部41bの方向に油が流通する際には、油は第5流通路73を通過する。
【0046】
リリーフバルブ74は、いわゆるカウンターバランスバルブであり、第5流通路73に設けられている。収縮室25から排出された油はチェックバルブ72が第4流通路71に設けられているため第5流通路73に流れ込み、油の圧力が設定値以上になると、リリーフバルブ74を押し開いて吐出部41bに向かって流れる。リリーフバルブ74の設定値を適切に設定することにより、ラム12の自重による油圧シリンダ13aの下降を抑制でき、プラストルクによる油圧制御を行うことができる。
【0047】
ストップバルブ75は、チェックバルブ72およびリリーフバルブ74と、吐出部41bとの間であって、第4流通路71に2つ設けられている。これらストップバルブ75は、作業者の安全を確保するために設けられており、これらが閉じた状態では定容量型双方向ポンプ41が駆動しても装置が動作しない。
(油量補充回路53)
油量補充回路53は、第2メイン回路52の第4流通路71とタンク43との間を接続する。油量補充回路53には、切換バルブ、複数のリリーフバルブ、および複数のチェックバルブなどが設けられている。流通する油の量が不足したとき、タンク43に貯められている油が油量補充回路53から第4流通路71との合流部91aを介して第2メイン回路52に補充される。また、第1メイン回路51へも合流部91bを介して、タンク43に貯められている油が補充される。
【0048】
(第1伸長室油量調整回路54)
第1伸長室油量調整回路54は、第1伸長室23とタンク43の間を接続し、第1伸長室23に油を供給または第1伸長室23から油を排出する。
詳しくは後述するが、本実施の形態では、ラム12を高速で下降させる際には、定容量型双方向ポンプ41からの油を第1伸長室23に供給せず、第2伸長室24にのみ供給する。このように、定容量型双方向ポンプ41からの油を第2伸長室24にのみ供給して油圧シリンダ13aを伸長させる際、第1伸長室23を真空状態にしないように、第1伸長室油量調整回路54から第1伸長室23に油が供給される。また、ラム12を高速で上昇させる際には、第1伸長室23から余分な油が排出される。
【0049】
第1伸長室油量調整回路54は、主に、プレフィルバルブ81と、制御バルブ82と、第6流通路83と、第7流通路84とを有する。第6流通路83は、第2流通路62の第1伸長室23と開閉バルブ64の間の部分と、タンク43との間を接続する。プレフィルバルブ81は、第6流通路83に設けられている。
第7流通路84は、第4流通路71のストップバルブ75と吐出部41bの間の部分と、プレフィルバルブ81との間を接続している。制御バルブ82は、ソレノイドバルブであって、第7流通路84に設けられており、第4流通路71からプレフィルバルブ81への油の流通を開閉する。
【0050】
プレフィルバルブ81は、第7流通路84から圧油が供給されないときには、第6流通路83を通ってタンク43の油を第1伸長室23へと供給可能とし、逆方向への油の流通を遮断する。詳しくは後述するが、ラム12を高速で下降させるときは、第7流通路84から圧油が供給されておらず、ピストン部21の下降に伴ってタンク43から油が第1伸長室23に補充される。一方、ラム12を高速で上昇させるときは、制御バルブ82が開状態となり、第7流通路84から圧油がプレフィルバルブ81へと供給される。この圧油の供給によりプレフィルバルブ81は逆方向への油の流通が可能なように開かれ、第6流通路83を通って第1伸長室23の油がタンク43に流通可能な状態となる。これにより、ピストン部21の上昇に伴って第1伸長室23からタンク43へと油が排出される。
【0051】
(他の構成)
他の構成としては、例えば、第2流通路62の圧力を計測する圧力センサ92が設けられている。圧力センサ92の検出値は制御部15へとフィードバックされ、圧力センサ92の値が高くなりすぎた場合には、制御部15は装置を停止する。
開閉バルブ64とタンク43を繋ぐ第8流路85が設けられており、第8流路85には、絞り等が設けられている。第8流路85は、開閉バルブ64によって第1流路61と第2流路62が遮断されたときに、第2流路62と連通する。
【0052】
(1−4.制御構成)
図4は、本実施の形態のプレスブレーキ1の制御構成を示す図である。
図4に示すように、ラム12の位置を検出するリニアセンサ93が設けられており、位置検出部の一例としてのリニアセンサ93によって検出された位置信号が制御部15に入力される。サーボモータ42は、サーボアンプ96を介して制御部15に接続されている。
【0053】
制御部15には、操作部16が接続されている。作業者は、操作部16を介して操作の入力を行う。操作部16には、操作盤94およびフートスイッチ95等が設けられている。操作盤94には、モニター、プレス条件の設定スイッチ等が設けられている。フートスイッチ95は、油圧シリンダ13a、13bを駆動してラム12を昇降させる足踏みスイッチである。
【0054】
制御部15は、操作部16によって入力された設定に従うように、リニアセンサ93で検出された位置信号に基づいてサーボアンプ96に信号を送信してサーボモータ42の制御を行う。また、制御部15は、油圧回路40の制御も行う。例えば、制御部15は、開閉バルブ64の開閉を制御して第1伸長室23への油の供給または供給の停止を行う。また、制御部15は、制御バルブ82の開閉を制御してプレフィルバルブ81を開き、逆向きの油の流通(第1伸長室23からタンク43への流通)を可能とする。
【0055】
<2.動作>
次に、本実施の形態のプレスブレーキ1の動作について説明する。
図5は、本実施の形態1のプレスブレーキ1の動作を示すフロー図である。
図6は、動作の際のラム12の位置の時間変化を示す図である。
ラム12が上限位置(
図6のh1参照)に配置されている状態から動作が開始するとして説明する。
【0056】
はじめに、ステップS10において、制御部15は、作業者がフートスイッチ95を踏んだこと検出すると、ステップS11においてサーボモータ42を制御して定容量型双方向ポンプ41を駆動させる。
ステップS11では、開閉バルブ64が閉じた状態で定容量型双方向ポンプ41は吐出部41aから油を吐出し、吐出部41bから油を吸引する。これにより、定容量型双方向ポンプ41から吐出された圧油は第1流通路61、第3流通路63、およびシリンダ流通路36を順に通って第2伸長室24に流入する。一方、第2流通路62は遮断されているため、定容量型双方向ポンプ41からの圧油は第1伸長室23には供給されない。このように、定容量型双方向ポンプ41からの圧油を断面積の小さい第2伸長室24にのみ供給することにより、ラム12を高速で下降させることができる(
図6のt1〜t2参照)。
【0057】
また、収縮室25から定容量型双方向ポンプ41の吐出部41bに油が吸引される。
このように、定容量型双方向ポンプ41から第2伸長室24へ圧油が供給されるとともに、収縮室25から油が定容量型双方向ポンプ41に吸引されるため、油圧シリンダ13a、13bのピストン部21が下降し、ラム12が下降する。
尚、上限位置h1からピストン部21が下降し始めるとき、第4流通路71のチェックバルブ72の部分をバイパスするように、油は第5流通路73を通過することになるが、リリーフバルブ74によって所定の油圧以上になるまで流通が停止されている。このように、ラム12の自重によって収縮室25から油が流出することが抑制されているため、プラストルクで油圧によってラム12を下降させることが出来るため、自然落下よりも早い速度で安定して下降制御できる。
【0058】
また、ピストン部21の下降に伴って第1伸長室23にタンク43からプレフィルバルブ81を介して油が流入する。
次に、ステップS12において、制御部15は、リニアセンサ93の検出値を用いてラム12の位置が切換位置(
図6のh2参照)に達したことを検出すると、ステップS13において、開閉バルブ64を開状態に切替える。これにより、定容量型双方向ポンプ41から吐出された圧油が第2流通路62を通って第1伸長室23に流入する。なお、第2伸長室24への圧油の供給は継続されている。なお、上限位置h1〜切換位置h2の間が、高速接近領域の一例であり、
図6に示すグラフではG1(速下降)と示されている部分である。
【0059】
このように、第1伸長室23及び第2伸長室24へ圧油を供給することにより、圧油の供給部分が増えることになり、下降速度が遅くなり、加圧力が増す。そして、ラムが下限位置に達する間に、ワークWの曲げ加工が行われる(
図6のt2〜t3)。
次に、ステップS14において、制御部15は、リニアセンサ93の検出値を用いてラム12の位置が下限位置(
図6のh3参照)に達したことを検出すると、ステップS15において、開閉バルブ64を遮断状態に切替える。これにより、第2流通路62と第1流路61との間で油の流通が遮断される。なお、
図3では、開閉バルブ64が遮断状態のとき第2流通路62は第8流通路85を介してタンク43と連通している。これは、第1伸長室23内の圧力を下げる働きがある。開閉バルブ64とタンク43をつなぐ第8流路85に設置された絞りによって流れる油量が制限されている。また、切換位置h2〜下限位置h3が、加工のために設定された領域であって、低速接近領域の一例であり、グラフはG2(遅下降、加圧)と示されている部分である。
【0060】
次に、ステップS16において、制御部15は、制御バルブ82を切換え、第4流通路71からプレフィルバルブ81への圧油の供給を可能とする。
次に、ステップS17において、制御部15は、サーボモータ42を制御して、第2吐出部41bから油を吐出し、第1吐出部41aから油を吸い込むように定容量型双方向ポンプ41を逆に駆動する。
【0061】
この定容量型双方向ポンプ41の駆動により、収縮室25に定容量型双方向ポンプ41からの油が供給されるとともに、第2伸長室24の油が定容量型双方向ポンプ41へと吸引され、ピストン部21が上昇する。なお、上昇の際には、ラム12の質量がカウンター力として作用する。
ここで、第2流通路62の流通が遮断されているため、定容量型双方向ポンプ41の駆動によっては第1伸長室23の油は吸引されない。一方、第4流通路71を介して収縮室25に油が供給されるため、制御バルブ82および第7流通路84を介してプレフィルバルブ81へと圧油が供給される。この圧油の供給により、第1伸長室23からタンク43に向かってプレフィルバルブ81が開放される。これにより、ピストン部21の上昇に伴って、第1伸長室23から油がタンク43へと戻される。なお、収縮室25に面するピストン部21の下面31cの面積は、第2伸長室24に面する底面33aと同じ大きさであって小さく形成されているため、例えば、速下降時(t1〜t2)と同じ定容量型双方向ポンプ41の吐出量とすることによって、ラム12を高速で上昇できる(
図6のt4〜t5参照)。
図6に示すグラフでは、G3(速上昇)と示されている部分である。
【0062】
そして、ステップS18において、制御部15は、リニアセンサ93の検出値を用いてラム12の位置が上限位置(
図6のh1参照)に達したことを検出すると、ステップS19において、ポンプの駆動を停止する(
図6のt5参照)。続いて、ステップS20において、制御部15は、切り換えた制御バルブ82を戻して、プレフィルバルブ81の第1伸長室23からタンク43への開放を閉じる。これらステップS19、S20は、ほぼ同時に行われてもよい。
【0063】
なお、上限位置h1〜切換位置h2までの接近の間と、下限位置h3〜上限位置h1までの離間の間は、第2伸長室24と第1吐出部41aの間が連通し、収縮室25と第2吐出部41bの間が連通しており、概ね閉回路を構成している。そして、第2伸長室24におけるピストン部21の駆動に作用する底面33aと収縮室25におけるピストン部21の駆動に作用する下面31cの面積が同じであるため、定容量型双方向ポンプ41の回転方向を反対にするだけで、上限位置h1〜切換位置h2までの接近の間と、下限位置h3〜上限位置h1までの離間の間の速度を概ね同じ速度にできる。
【0064】
<3.特徴>
(3−1)
本実施の形態のプレスブレーキ1は、
図1および
図2(a)〜
図2(c)に示すように、パンチ18とダイ17によってワークW(板状の部材の一例)を曲げ加工するプレスブレーキであって、ラム12(可動テーブルの一例)と、テーブル11(固定テーブルの一例)と、油圧シリンダ13a、13bと、定容量型双方向ポンプ41(ポンプの一例)と、を備える。ラム12は、パンチ18が装着される。テーブル11は、ダイ17が装着される。油圧シリンダ13a、13bは、伸長する際に油が供給される第1伸長室23および第2伸長室24と、収縮する際に油が供給される収縮室25と、を有する。油圧シリンダ13a、13bは、伸縮によりテーブル11に対してラム12を接近または離間させる。定容量型双方向ポンプ41は、第1伸長室23および第2伸長室24に接続された第1吐出部41aと、収縮室25に接続された第2吐出部41bと、を有し、第1吐出部41aおよび第2吐出部41bのうち一方から油を吐出する際には他方から油を吸引する。
【0065】
ここで、ラム12のモーションは基本的には速下降、遅下降、下限停止および速上昇である。このモーションを全てサーボモータで行った場合、サーボモータの回転数を1サイクル中で大きく変化させなくてはならない。このようにサーボモータを変化させることは可能ではあるが、効率が下がる。
そこで、本実施の形態のプレスブレーキ1では、油圧シリンダ13a、13bを用い、ラム12のモーションの基本形を確保し、1サイクル中のサーボモータの回転数の変化を抑えることによって効率を上げている。一方、サーボ制御の特性を活かしてモーションの細かな補正を可能にして成形性を向上させている。
【0066】
このように、2つの第1伸長室23および第2伸長室24を有する油圧シリンダ13a、13bおよび定容量型双方向ポンプ41が設けられている。上限位置h1〜切換位置h2(ワークに対して曲げ加工を行うために設定された加工設定領域以外の領域の一例)においてラム12をテーブル11に接近させる際には、定容量型双方向ポンプ41からの油を第1伸長室23に供給せず第2伸長室24にのみ供給することにより、油圧シリンダ13a、13bを伸長させる際に油圧によって作用される面積が小さくすることができる。そのため、上限位置h1〜切換位置h2において、ラム12を高速でテーブル11へ接近させることができる。このような接近における加工設定領域以外の領域は、高速接近領域ともいえる。
【0067】
また、第1伸長室23にも油を供給することにより、加工設定領域において第1伸長室23および第2伸長室24の双方に油が供給されることになり、油圧シリンダ13a、13bを伸長させる際に油圧によって作用される面積が大きくできる。そのため、加工設定領域においてラム12を低速で加圧力を増加してテーブル11へ近づけることができる。このような接近における加工領域は、低速接近領域ともいえる。
【0068】
すなわち、2つの伸長室23、24のうちの一方の伸長室23にのみ油を供給した状態から双方の伸長室23、24に油を供給する状態にするだけでラム12のテーブル11への接近速度を高速から低速に変更し加圧力を増加可能なため、吐出量を可変とするように複雑な可変容量型双方向ポンプおよびシステムを使用することなく、それと同等な効率の良いラム動作が可能となる。
【0069】
また、加工設定領域(低速接近領域)とは、実際にダイ17およびパンチ18がワークWに接触して板状部材の曲げ加工が行われる領域であってもよいし、実際にダイ17およびパンチ18がワークWに接触して板状部材の曲げ加工が行われる領域を含む領域であってもよい。すなわち、切換位置h2は、パンチ18がワークWに接触する位置であってもよいし、パンチ18がワークWに接触する位置より高い位置に設定されていてもよい。
【0070】
(3−2)
本実施の形態のプレスブレーキ1は、
図3に示すように、ラム12の下降による油圧シリンダ13a、13bからの油の排出に対して抵抗力を発生するリリーフバルブ74(抵抗力発生部の一例)を更に備える。
これによって、ラム12を下降させる際に自重による下降に対してカウンター力を発生させることができる。そのため、定容量型双方向ポンプ41から吐出された油によってラム12の下降を制御することが可能となる。仮に、自重による下降に対してカウンター力を発生させない場合、ラム12の下降時にマイナストルクで制御することになり、作動油の温度変化による粘度の違いによって不安定になりやすく、速度を速く若しくは加速度を速くし難かった。しかしながら、カウンター力を発生することによって、油圧によるプラスのトルクでラム12の下降を制御できる。すなわち、定容量型双方向ポンプ41を動作させるサーボモータ42の回転数、トルクがそのままラム動作に影響するようになり、安定した速い可動テーブルの動作が可能となる。
【0071】
(3−3)
本実施の形態のプレスブレーキ1では、リリーフバルブ74は、収縮室25に接続され、油圧が所定値より小さい場合に油を遮断し、油圧が所定値以上の場合に油を通過させる。
ここで、例えば、所定値をラム12の自重によって生じる油圧よりも高い値に設定することによって、自重だけではラム12が下降しないため、定容量型双方向ポンプ41から吐出された圧油によって可動テーブルの下降を制御することが可能となる。
【0072】
(3−4)
本実施の形態のプレスブレーキ1では、油圧シリンダ13a、13bは、シリンダチューブ20と、シリンダチューブ20に挿入されシリンダチューブ20の内周面を摺動可能なピストン部21と、を有する。ピストン部21の第2伸長室24を形成する表面のうち伸縮方向に対して垂直な底面33a(第1面の一例)の面積は、ピストン部21の収縮室25を形成する表面のうち伸縮方向に対して垂直な下面31c(第2面の一例)の面積と同じである。
【0073】
このように、底面33aの面積と下面31cの面積を同じ面積とすることにより、高速接近領域における速度とラム12をテーブル11から離間させる離間速度を同程度の速度に設定し易くなる。すなわち、底面33aの面積と下面31cの面積が同じであるため、定容量型双方向ポンプ41による吸引と排出の方向を反対にするだけで、定容量型双方向ポンプ41を駆動するサーボモータ42に係る負荷が同程度の状態で、高速接近領域における速度(時刻t1〜t2)と離間速度(時刻t4〜t5までの速度)を同程度の速度にできる。このため、油量を補充するための油量補充回路53を介することなくラム12を容易に制御することができる。
【0074】
なお、底面33aの面積と下面31cの面積が同じとは、機械的な誤差を含む。
(3−5)
本実施の形態のプレスブレーキ1では、
図2に示すように、油圧シリンダ13a、13bは、伸縮方向に沿うようにピストン部21に形成された孔部33に挿入された棒状部材22を更に有する。ピストン部21は、長手方向が伸縮方向に沿うようにシリンダチューブ20に挿入され、先端がラム12に接続されているピストンロッド32と、ピストンロッド32に固定されシリンダチューブ20の内周面を摺動可能なピストン31と、を持つ。孔部33は、ピストン31に設けられた開口部31aからピストンロッド32に亘って形成され、孔部33のピストンロッド32側の端は閉じられている。棒状部材22は、その先端に、孔部33の内周面に対して摺動可能な摺動部34を持つ。第2伸長室24は、孔部33の内側であって棒状部材22とピストン部21によって囲まれた空間によって形成される。第1伸長室23は、ピストン部21と棒状部材22とシリンダチューブ20に囲まれた空間によって形成される。収縮室25は、ピストン部21とシリンダチューブ20に囲まれた空間によって形成される。底面33a(第1面の一例)は、第2伸長室24に面するピストンロッド32の表面のうち摺動部34に対向する部分である。下面31c(第2面の一例)は、収縮室25に面するピストン31の表面部分である。
【0075】
このように下面31cの面積と底面33aの面積を同じ面積とすることにより、油量を補充するための油量補充回路53を介することなくラム12を容易に制御することができる。
(3−6)
本実施の形態のプレスブレーキ1は、
図3に示すように、開閉バルブ64(遮断部の一例)と、開閉バルブ64および定容量型双方向ポンプ41を制御する制御部15と、を更に備える。開閉バルブ64は、第1吐出部41aと第1伸長室23との間の油の流通を遮断可能である。制御部15は、開閉バルブ64を遮断して、定容量型双方向ポンプ41の第1吐出部41aから吐出させた油を第1伸長室23に供給して、ラム12を切換位置h2(第1所定位置の一例)までテーブル11に接近させ、ラム12が切換位置h2に達すると、開閉バルブ64を油の流通を可能にして、定容量型双方向ポンプ41の第1吐出部41aから吐出させた油を第1伸長室23および第2伸長室24に供給して、ラム12を下限位置(第2所定位置の一例)までテーブル11に接近させ、ラム12が下限位置に達すると、開閉バルブ64を遮断して、定容量型双方向ポンプ41の第2吐出部41bから吐出させた油を収縮室25に供給してラム12をテーブル11から離間させる。
【0076】
このように、2つの伸長室23、24のうちの一方の伸長室23への油の供給を停止した状態から供給を開始した状態に切替えるだけで、ラム12のテーブル11への接近速度を高速から低速に変更し加圧力を増加可能なため、簡易な制御で安定した動作が容易となる。
(3−7)
本実施の形態のプレスブレーキ1は、定容量型双方向ポンプ41を駆動するサーボモータ42(電動サーボモータの一例)を更に備える。
【0077】
ここで、サーボ弁を利用した油圧制御もあるが、油圧機器のコストが高いうえに作動油中のコンタミの管理が大変負担となる。また、常時モータを駆動し続けるので省エネとはいえない。
対して、本実施の形態では、定容量型双方向ポンプ41をサーボモータ42で直接駆動するため、作動油中のコンタミの管理も通常通りで済むうえ、油圧開度構成も制御も簡素化され、油圧機器のコストも安くなる。また、必要なときにサーボモータ42を動かすので、省エネルギー化が図れる。
【0078】
(3−8)
本実施の形態の曲げ加工方法は、
図5に示すように、ワークW(板状の部材の一例)を曲げ加工する曲げ加工方法であって、ステップS11、S12(第1接近ステップの一例)と、ステップS13、S14(第2接近ステップの一例)と、ステップS17、S18(離間ステップの一例)とを備える。ステップS11、S12(第1接近ステップの一例)は、定容量型双方向ポンプ41(ポンプの一例)の第1吐出部41aから油を吐出させて油圧シリンダ13a、13bの第2伸長室24に油を供給するとともに油圧シリンダ13a、13bの収縮室25から定容量型双方向ポンプ41の第2吐出部41bへ油を吸引することにより、パンチ18が装着されるラム12(可動テーブルの一例)を、ダイ17が装着されるテーブル11(固定テーブルの一例)に接近させる。ステップS13、S14(第2接近ステップの一例)は、定容量型双方向ポンプ41の第1吐出部41aから油を吐出させて第1伸長室23および第2伸長室24に油を供給するとともに収縮室25から定容量型双方向ポンプ41の第2吐出部41bに油を吸引することにより、ラム12を固定テーブルに接近させる。ステップS17、S18(離間ステップの一例)は、定容量型双方向ポンプ41の第2吐出部41bから油を吐出させて収縮室25に油を供給するとともに油圧シリンダ13a、13bの第1伸長室23から定容量型双方向ポンプ41の第1吐出部41aに油を吸引することにより、ラム12をテーブル11から離間させる。
【0079】
このように、2つの第1伸長室23および第2伸長室24を有する油圧シリンダ13a、13bおよび定容量型双方向ポンプ41が設けられている。上限位置h1〜切換位置h2(ワークに対して曲げ加工を行うために設定された加工設定領域以外の領域の一例)においてラム12をテーブル11に接近させる際には、定容量型双方向ポンプ41からの油を第1伸長室23に供給せず第2伸長室24にのみ供給することにより、油圧シリンダ13a、13bを伸長させる際に油圧によって作用される面積が小さくすることができる。そのため、上限位置h1〜切換位置h2において、ラム12を高速でテーブル11へ接近させることができる。このような接近における加工設定領域以外の領域は、高速接近領域ともいえる。
【0080】
また、第1伸長室23にも油を供給することにより、加工設定領域において第1伸長室23および第2伸長室24の双方に油が供給されることになり、油圧シリンダ13a、13bを伸長させる際に油圧によって作用される面積が大きくできる。そのため、加工設定領域においてラム12を低速で加圧力を増加してテーブル11へ近づけることができる。このような接近における加工領域は、低速接近領域ともいえる。
【0081】
すなわち、2つの伸長室23、24のうちの一方の伸長室23にのみ油を供給した状態から双方の伸長室23、24に油を供給する状態にするだけでラム12のテーブル11への接近速度を高速から低速に変更し加圧力を増加可能なため、吐出量を可変とするように複雑な双方向ポンプおよびシステムを使用することなく、それと同等な効率の良いラム動作が可能となる。
【0082】
また、加工設定領域(低速接近領域)とは、実際にダイ17およびパンチ18がワークWに接触して板状部材の曲げ加工が行われる領域であってもよいし、実際にダイ17およびパンチ18がワークWに接触して板状部材の曲げ加工が行われる領域を含む領域であってもよい。すなわち、切換位置h2は、パンチ18がワークWに接触する位置であってもよいし、パンチ18がワークWに接触する位置より高い位置に設定されていてもよい。
【0083】
<4.他の実施の形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
(A)
上記実施の形態では、抵抗力発生部の一例としてリリーフバルブ74が用いられているが、これに限らなくても良く、例えばアキュムレータが設けられていてもよい。要するに、ラム12が自重で落下することを抑制できるカウンター力を発揮できさえすればよい。
【0084】
(B)
上記実施の形態では、固定テーブルの一例であるテーブル11が下方に配置され、可動テーブルの一例であるラム12が上方に配置されているが、逆であってもよい。すなわち、可動テーブルが固定テーブルの下方に配置されており、可動テーブルが上昇して固定テーブルに接近し、可動テーブルが下降して固定テーブルから離間する構成であってもよい。
【0085】
(C)
上記実施の形態では、遮断部の一例として開閉バルブ64が設けられ、高速接近領域では定容量型双方向ポンプ41から第1伸長室23への油の供給を遮断し、低速接近領域では第1伸長室23および第2伸長室24の双方に定容量型双方向ポンプ41から油を供給しているが、これに限られるものではない。例えば、高速接近領域から低速接近領域に入る際(すなわち、切換位置h2)において、定容量型双方向ポンプ41からの油の供給を第2伸長室24から第1伸長室23に切替えるように、遮断部の一例として切換バルブなどが設けられていてもよい。すなわち、高速接近領域において、第1伸長室23にのみ定容量型双方向ポンプ41から油を供給してもよい。この場合であっても、伸縮方向に対して垂直な第1伸長室23の断面積は、伸縮方向に対して垂直な第2伸長室24の断面積よりも大きく形成されているため、高速接近領域において、加圧力を大きくできる。
【0086】
(D)
上記実施の形態では、伸縮方向に対して垂直な第1伸長室23の断面積は、伸縮方向に対して垂直な第2伸長室24の断面積よりも大きく形成されているが、これに限られなくてもよい。高速接近領域では第2伸長室24にのみ定容量型双方向ポンプ41から油が供給され、低速接近領域では第1伸長室23および第2伸長室24の双方に油が供給されるため、たとえ第1伸長室23の断面積が第2伸長室24の断面積以下であっても低速接近領域における圧力を高速接近領域よりは大きくすることができる。
【0087】
しかしながら、第1伸長室23の断面積を第2伸長室24の断面積よりも大きく形成されているほうが、定容量型双方向ポンプ41の吐出量が同じであっても高速接近領域と低速接近領域における速度差と圧力差を大きくできるため効率がよい。
(E)
上記実施の形態の油圧シリンダ13a、13bでは、棒状部材22の下端部分である摺動部34の径がロッド部35の径よりも大きく形成され、摺動部34と孔部33の内周面が接触して第2伸長室24が形成されているが、これに限られるものではない。例えば、
図7(a)、(b)に示すような構成の油圧シリンダ13a´であってもよい。
図7(a)は、油圧シリンダ13a´が収縮した状態を示す図である。
図7(b)は、油圧シリンダ13a´が伸長した状態を示す図である。
【0088】
図7(a)および
図7(b)に示す油圧シリンダ13a´の棒状部材22´には、上記実施の形態の棒状部材22と異なり、摺動部34が設けられていない。また、ピストン部21´には、上記実施の形態のピストン部21と異なり、孔部33の内周面の上端部全周から径方向内側に向かって突出するように形成された突出部37が設けられている。
突出部37は棒状部材22´の外周面の全周にわたって当接しており、これによって第2伸長室24が形成される。
図7(a)および
図7(b)に示すように、油圧シリンダ13a´が伸縮する際に、ピストン部21´は、突出部37において棒状部材22´に対して摺動しながら上下移動する。なお、油圧シリンダ13bも、
図7(a)および
図7(b)に示す油圧シリンダ13a´と同様の構成であってもよい。
【0089】
(F)
上記実施の形態では、ポンプの一例として定容量型双方向ポンプ41が用いられているが、これに限られるものではない。たとえば、可変容量型のポンプを用いてもよく、その場合であっても、2つの伸長室23、24への油の供給の制御によってラム12の速度を変更できるため、ポンプによる油量の調整を少なくでき、制御が容易となる。