(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記発泡板の130℃における押出方向の加熱寸法変化率に対する幅方向の加熱寸法変化率の比の最大値が1.5〜5.0であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリスチレン系樹脂押出発泡板。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のポリスチレン系樹脂押出発泡板について、該押出発泡板の物性、組成、製造方法の順で詳細に説明する。
本発明のポリスチレン系樹脂押出発泡板は、筒状に押出されたポリスチレン系樹脂発泡体の内面を融着することにより製造されたものであり、押出発泡板の厚みは2〜15mmである。押出発泡板の厚みが薄すぎる場合には、剛性が低下し、ディスプレイ材やサインボード等として使用できなくなるおそれがある。一方、押出発泡板の厚みが厚すぎる場合には、軽量性、取扱い性、生産性が損なわれるおそれがある。かかる観点から、該厚さの下限は2.5mmであることが好ましく、3mmがより好ましい。一方、厚さの上限は、12mmが好ましく、10mmがより好ましい。
【0012】
押出発泡板の厚みは、押出発泡板を幅方向に沿って、一方の端部から他方の端部に至るまで等間隔に複数箇所(5箇所以上)を定め、該箇所について測定される厚み(mm)の算術平均値として求める。
【0013】
押出発泡板の見掛け密度は30〜100kg/m
3である。該見掛け密度が小さすぎる場合には、押出発泡板としての、剛性や強度を維持することが困難となるおそれがある。この観点から、見掛け密度の下限は、好ましくは35kg/m
3、より好ましくは40kg/m
3である。
一方、見掛け密度が大きすぎる場合には、軽量性を維持することが困難となるおそれがある。この観点から見掛け密度の上限は、好ましくは90kg/m
3、より好ましくは80kg/m
3、更に好ましくは75kg/m
3である。
【0014】
押出発泡板の見掛け密度は、押出発泡板の重量を、その体積(cm
3)で除した値を意味する。例えば、押出発泡板の坪量(単位面積あたりの重量)を、その厚みで割算することにより求めることができる。
【0015】
押出発泡板の押出方向(MD)の平均気泡径D
MDは、50〜600μmである。平均気泡径D
MDが小さすぎると、押出発泡板の製造時にコルゲートが発生し易くなり、外観、幅方向厚み精度、表面平滑性等が悪化するおそれがある。この観点から平均気泡径D
MDの下限は60μmが好ましく、80μmがより好ましく、100μmが更に好ましい。一方、平均気泡径D
MDが大きすぎると、押出発泡板の外観や圧縮物性が悪くなる傾向がある。平均気泡径D
MDの上限は500μmであることが好ましく、より好ましくは400μm、更に好ましくは350μm、特に好ましくは300μmである。
【0016】
押出発泡板の幅方向(TD)の平均気泡径D
TDは、50〜600μmである。平均気泡径D
TDが小さすぎると、押出発泡板の製造時、円筒状発泡体にコルゲートが発生し易くなり、押出発泡板の外観、幅方向厚み精度、平滑性等が悪化するおそれがある。この観点から平均気泡径D
TDの下限は70μmが好ましく、80μmがより好ましく、100μmが更に好ましい。一方、平均気泡径D
MDが大きすぎると、押出発泡板の外観や圧縮物性が悪くなる傾向がある。平均気泡径D
MDの上限は500μmであることが好ましく、より好ましくは400μm、更に好ましくは350μmである。
【0017】
平均気泡径D
MDに対する厚み方向の平均気泡径D
VDの比(D
VD/D
MD)は、0.6〜1.3である。該比が小さすぎると、気泡形状が厚み方向に扁平になりすぎ、押出発泡板の圧縮強度が不十分となるおそれがある。この観点から、比(D
VD/D
MD)の下限は0.7が好ましい。一方、比(D
VD/D
MD)が大きすぎると、押出発泡板の製造時、円筒状発泡体が押出方向に余り安定したバルーンを形成できない。その結果、厚み不良や幅方向にヒダの残る押出発泡板になるため好ましくない。この観点から、該比の上限は1.2が好ましい。
【0018】
平均気泡径D
TDに対する厚み方向の平均気泡径D
VDの比(D
VD/D
TD)は、0.6〜1.3である。該比が小さすぎると、気泡形状が厚み方向に扁平になりすぎ、圧縮強度が悪化するおそれがある。この観点から、比(D
VD/
TD)の下限は0.65が好ましく、0.70がより好ましい。一方、比(D
VD/
TD)が大きすぎると、押出発泡板の製造時、円筒状発泡体にコルゲートが発生し、それにより外観、幅方向厚み精度、表面平滑性等が悪化するおそれや、押出発泡板を幅方向に沿って曲げた際の曲げ剛性が低下するおそれがある。この観点から、該比の上限は1.2が好ましい。
【0019】
押出発泡板の押出方向の平均気泡径D
MD、及び幅方向の平均気泡径D
TDは、次のように測定される。
まず、押出方向(MD)に沿って押出発泡板を切断し、垂直断面写真(押出方向断面写真)を撮影する。次に、押出方向断面写真において、発泡板の一方の表面から他方の表面に向かって垂直線を引く。そして、発泡板の両表面から各々発泡板の全厚みの1/4の位置に垂直線と直交する二本の直線(水平線)を引く。該二本の水平線によって囲まれた領域から、20個以上の気泡を無作為に選択し、投影画像の拡大率を考慮した各気泡の押出方向の水平フェレ径を測定する。次に、測定した各気泡の水平フェレ径の算術平均値を算出し、押出方向の平均気泡径D
MDとする。
幅方向の平均気泡径
TDについては、幅方向(TD)に沿って発泡体を切断して、垂直断面写真(幅方向断面写真)を撮影すること以外は、押出方向(MD)の場合と同じようにして、各気泡の幅方向の水平フェレ径を測定し、各気泡の水平フェレ径を算術平均値して、幅方向の平均気泡径
TDとする。
【0020】
平均気泡径D
MD、D
TDに対する厚み方向の平均気泡径D
VDの比(D
VD/D
MD、及びD
VD/D
TD)は、次のように測定される。
前記した平均気泡径D
MD、及び幅方向の平均気泡径D
MDの測定の際、選択した各気泡の垂直フェレ径をそれぞれ測定する。次にこれらの算術平均値を算出し、厚み方向の平均気泡径D
VDとし、それぞれ平均気泡径の比(D
VD/D
MD、及びD
VD/D
TD)を算出する。
【0021】
本発明の押出発泡板においては、押出方向に直交する垂直断面において、表層部に存在する単位面積当たりの気泡数である気泡密度の平均値が20〜200個/mm
2であることを要する。該平均値が小さすぎると、外観の美麗さが損なわれるおそれがある。一方、該平均値が大きすぎると、製造時にコルゲートの発生を抑えられなくなり、押出発泡板の厚みの均一性が低下するおそれがある。かかる観点から、気泡密度の平均値の下限は30個/mm
2であることが好ましく、上限は180個/mm
2であることが好ましい。
なお、表層部とは、発泡板の表面から厚み方向に0.5mmまでの範囲をいう。
【0022】
表層部の気泡密度は、次のように測定される。
まず、押出発泡板の幅方向に亘って一方の端部から他方の端部に至るまでに10mm間隔の複数箇所の各々について、押出方向に直交する垂直断面の写真を撮影する。次に、各断面写真において、一方の表面から他方の表面に向かって垂直線を引く。そして、垂直線を中心として2mm間隔の2本の平行線を引き、各表面から0.5mmの位置に垂直線と直交する水平線を引き、この0.5mm×4mmの範囲に存在する気泡の数を計測する。このとき、上記平行線又は水平線と交わる気泡も計測する。計測した気泡の数を2mm
2(0.5×4mm)で割算して各断面における表層部の気泡密度を求め、各断面における表層部の気泡密度を算術平均することにより、表層部の気泡密度の平均値を求める。
【0023】
前記各断面における表層部の気泡密度の個々の測定値において、その最大値が平均値の1.2倍以下であると共に、その最小値が平均値の0.8倍以上であることを要する。最大値と最小値のそれぞれが、この範囲内にあることは、押出発泡時に、円筒状発泡体のコルゲートの発生が抑制されたことにより、気泡密度が均一、かつ外観良好な押出発泡板が得られたことを意味する。
【0024】
本発明においては、押出発泡板の表面に、押出方向の気泡径及び幅方向の気泡径のいずれか一方が50μm未満の小気泡の数が300個/mm
2以下(0を含む)であることが好ましい。この小気泡の数は、製造時に筒状に押出された発泡体が、後述する外部ガイダーに押し当てられながら、適正にブローアップされているか否かを評価できる指標である。また、小気泡の数が多すぎると、発泡板の表面硬度が低下するおそれや、外観が低下するおそれがある。
【0025】
次に、外部ガイダーを用いて押出発泡板を製造する際に、該小気泡の数が、ブローアップ比の影響を受けること、気泡形状や、押出発泡板の圧縮強度と関係することについて詳しく説明する。
本発明の押出発泡板は筒状に押出された発泡体を押出直後に外部ガイダーに押し当てながら拡幅することにより製造することができる。ブローアップ比を大きく設定しすぎると、筒状発泡体が拡幅時に外部ガイダーに過度に強く押し当てられるようになる。その結果、筒状発泡体の表面の小気泡の数は増大する。小気泡の数が多くなりすぎると、気泡形状が扁平になり、得られた押出発泡板の圧縮強度が低下する。
これに対し、ブローアップ比を適度に設定して外部ガイダーに筒状発泡体を適度に押し当てると、小気泡の数は増大することがなく、気泡形状が球形に近づく傾向が強くなり、得られた押出発泡板の圧縮強度が向上する。外部ガイダーを用いて製造する際に、ブローアップ比が適性に選択されているか否かの境界を小気泡の数で表すことができる。適正範囲の小気泡の数の上限は300個/mm
2であり、好ましくは250個/mm
2であり、より好ましくは200個/mm
2である。小気泡は発生しないことが好ましいが、通常は少なくとも5個/mm
2程度の小気泡が発生する傾向にある。
【0026】
該小気泡の数は、次のように測定される。
押出発泡板の幅方向において、一方の端部から他方の端部に至るまでに5箇所以上の複数箇所を測定点とする。各測定点にて発泡板表面の拡大写真を撮影し、押出方向1mm、幅方向1mmの範囲内の小気泡の数を計測する。得られた計測値の算術平均値を小気泡の数とする。
【0027】
図2に小気泡の数が162個/mm
2(実施例3)の押出発泡板表面の拡大写真を、
図3に小気泡の数が584個/mm
2(比較例4)の押出発泡板表面の拡大写真を示す。
【0028】
本発明においては、押出発泡板の130℃における押出方向の加熱寸法変化率に対する幅方向の加熱寸法変化率の比の最大値が1.5〜5.0であることが好ましい。該比がこの範囲内であることにより、長手方向への曲げ強度と幅方向の曲げ強度とのバランスに優れた押出発泡板を得ることができる。
すなわち、本発明の押出発泡板は、押出された筒状発泡体を押出直後から押出方向に引き取りながら製造されるため、得られた押出発泡板を加熱すると押出方向に収縮し、幅方向には伸びる特性を有する。押出発泡板が押出方向に延伸されていることにより、長手方向への曲げ強度が高まる。したがって、該比は2.0以上がより好ましく、2.5以上がさらに好ましい。一方、あまりにも押出方向への延伸が強すぎると、幅方向の曲げ強度とのバランスが悪くなるので、該比は、4.5以下がより好ましく、4.3以下がさらに好ましく、4.0以下が特に好ましい。
【0029】
加熱寸法変化率の測定は次のようにして行なう。まず押出発泡板の厚みはそのままで、押出発泡板の幅方向中央部から一辺10cmの正方形のサンプルを複数切り出す。このとき、該正方形サンプルの縦、横のそれぞれの辺の方向が、押出発泡板の押出方向(MD)、幅方向(TD)と一致するようにして切り出す。そして、サンプルの押出方向中央部に幅方向に沿って端部から端部まで直線を描くとともに、サンプルの幅方向中央部に押出方向に沿って端部から端部まで直線を描く。
【0030】
次に、縦300mm、横300mm、厚さ10mmサイズの正方形状の木製枠材であって、中央部に縦250mm、横250mmの正方形状の貫通孔が設けられた木製枠材を2枚用意する。次に、直径0.1mmの円形断面の針金を使用して、上記貫通孔において縦横それぞれ20mm間隔の網状となるように、当該針金を各木製枠材の片面にそれぞれ釘で固定する。続いて、縦20mm、横10mm、試験片厚みよりも3mm程度厚い厚みの木製スぺーサーを4個用意し、これらを一方の木製枠材の針金固定側面の四隅に釘で固定する。
【0031】
上記切り出したサンプルを、上記4個のスペーサーが固定された木製枠材と他方の木製枠材とが針金固定側同士が対向する様にして、網状針金間(そこには木製スぺーサーの厚み分の間隔が保持されている)に挟み、続いて貫通孔を覆うことなく木製枠材同士がずれないように固定する。
【0032】
かかる状態に木製枠材中に保持されたサンプルを、130℃に温度調節された空気循環式オーブンに入れて3秒加熱した後、オーブンから23℃の雰囲気下に取り出して冷却する。該冷却後のサンプルの各直線の長さを測定し、サンプルの加熱前の長さ(10cm)から加熱後の長さを引き算して、この差の絶対値をそれぞれ求める。これらの絶対値を加熱前の長さ(10cm)で除して、さらに100を掛けて、押出方向(MD)の加熱寸法変化率及び幅方向(TD)の加熱寸法変化率をそれぞれ求める。幅方向の加熱寸法変化率を押出方向の加熱寸法変化率で割算することにより、押出方向の加熱寸法変化率に対する幅方向の加熱寸法変化率の比を求める。次に、別のサンプルを、130℃に温度調節された空気循環式オーブンに入れて6秒加熱した後、オーブンから23℃の雰囲気下に取り出し冷却して、同様にして、押出方向の加熱寸法変化率に対する幅方向の加熱寸法変化率の比を求める。さらに、9秒加熱、12秒加熱・・・と、加熱時間を3秒ずつ増やしながら、押出方向の加熱寸法変化率に対する幅方向の加熱寸法変化率の比を求めていき、加熱寸法変化率の比が極大点を迎えるまでこの測定を実施する。この加熱寸法変化率の極大値を押出方向の加熱寸法変化率に対する幅方向の加熱寸法変化率の比の最大値とする。
なお、加熱寸法変化率の測定には空気循環式オーブン、例えばタバイエスペック株式会社製の「PERFECT OVEN PH−200」(商品名)を使用することができる。
【0033】
次に、本発明の押出発泡板の組成について説明する。
本発明において、押出発泡板を構成するポリスチレン系樹脂は、スチレンを主体とする重合体であり、スチレン単独重合体のみならず、スチレンと他のビニル系単量体との共重合体を用いることができる。具体的には、ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリスチレン−ポリフェニレンエーテル共重合体、ポリスチレンとポリフェニレンエーテルとの混合物等が挙げられる。また、これらのポリスチレン系樹脂は2種以上を混合して用いてもよい。
なお、本発明におけるポリスチレン系樹脂は、スチレンに由来する成分が50モル%以上のものであり、好ましくは60モル%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上である。また、ポリスチレン系樹脂は、多官能性単量体に由来する構造成分や多官能性マクロモノマーに由来する構造成分を含んでいてもよい。
【0034】
また、本発明では、上記ポリスチレン系樹脂に対し、所望の目的に応じて、プロピレン単独重合体、エチレン−プロピレン共重合体などのポリプロピレン系樹脂、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンなどのポリエチレン系樹脂、スチレン−共役ジエンブロック共重合体やその水添物などの熱可塑性エラストマー、エチレン−プロピレンゴム、ブタジエンゴムなどのゴム等の重合体を配合することができる。その割合は、上記ポリスチレン系樹脂100重量部に対して40重量部以下であることが好ましく、20重量部以下であることがより好ましく、10重量部以下であることがさらに好ましい。
【0035】
また前記ポリスチレン系樹脂には、本発明の目的を著しく損なわない範囲で、必要に応じて各種の添加剤、例えば、造核剤、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、導電性付与剤、耐候剤、紫外線吸収剤、着色剤、難燃剤、無機充填剤等を添加することができる。
【0036】
本発明の押出発泡板は、筒状に押出されたポリスチレン系樹脂発泡体の内面を融着することにより得られたものであり、該押出発泡板を製造可能な好適な方法として、環状ダイから円筒状に押出された発泡体を拡幅しつつピンチロールにて挟圧して該発泡体の内面を融着させる方法が挙げられる。
次に、この製造方法について、
図1を用いて説明する。
まず、押出発泡板1の原料となるポリスチレン系樹脂2、その他必要に応じて添加される気泡調整剤等の添加剤3を押出機4に供給して加熱混練し、発泡剤5を圧入して更に混練し、発泡適正温度に調整し、発泡性溶融樹脂6とする。
発泡性溶融樹脂6の吐出量を制御して環状ダイ7に導入する。その後、発泡性溶融樹脂6を環状ダイ7のダイリップを通して筒状に押出して発泡させる。この筒状に押出された発泡体11の中空部に圧縮気体を導入することにより該発泡体をバルーン状に膨らませる際に、環状ダイ7の直後に設けられた外部ガイダー8の内面に発泡体11の表面を押し当てながら、発泡体を拡幅(ブローアップ)する。そして、この拡幅された筒状発泡体を引き取りながらピンチロール9の間を通過させて挟圧し、筒状発泡体の内面同士を融着させて貼り合せることにより、本発明のポリスチレン系樹脂押出発泡板を得ることができる。
【0037】
発泡性樹溶融脂の発泡適正温度とは、発泡するのに最適な粘弾性を示す温度を意味する。発泡適正温度は、ポリスチレン系樹脂の種類や溶融粘度、発泡剤の種類や添加量によって適宜定まるものであるが、通常、130℃以上170℃以下程度の範囲である。
【0038】
ポリスチレン系樹脂押出発泡板1の製造に用いられるダイ7、発泡体の内面を融着させるためのピンチロール9等の各種装置は、従来押出発泡の分野で用いられてきた公知のものを適宜用いることができる。外部ガイダー8は、ブローアップされた発泡体11の表面に当接する形状であり、その内径が環状ダイ7側では環状ダイ7のダイリップの直径よりもわずかに大きく、押出方向に向かって拡径していく形状を有している。外部ガイダーとしては、例えば、特公昭52−44355号公報に記載された冷却筒や特公昭55−45375号公報に記載された冷却器などと同様な形状のものを使用できる。
【0039】
本発明の押出発泡板を得るためには、(1)押出方向の平均気泡径D
MDと幅方向の平均気泡径D
TDとがそれぞれ50〜600μmとなるように調節し、かつ(2)比(D
VD/D
MD)と比(D
VD/D
TD)とを、それぞれ0.6〜1.3の範囲内となるようにに調節しながら、(3)筒状発泡体のコルゲートを抑えることが重要である。以下、これらの調節方法について説明する。なお、比(D
VD/D
MD)と比(D
VD/D
TD)とを併せて気泡変形率ともいう。
【0040】
平均気泡径D
MD及びD
TDは、主に発泡体中の気泡数を調整することにより調整できる
。具体的には、ブローアップ比、引取速度を一定として、発泡体中の気泡数を多くするほど平均気泡径は小さくなる。発泡体中の気泡の数は、主に気泡調整剤の配合量により調整することができる。具体的には、同発泡条件では、気泡調整剤の配合量を多くするほど、気泡の数を多くすることができる。
【0041】
比(D
VD/D
TD)は、主にブローアップ比の設定により調整することができる。具体的には、ブローアップ比を小さくすると、上記のように、D
TDの値が小さくなると共にD
VDの値が大きくなるため、比(D
VD/D
TD)の値は大きくなる。本発明においては、ブローアップ比を1.8〜2.8の範囲内に設定することが好ましく、より好ましくは2.0〜2.7である。また、比(D
VD/D
MD)についても、ブローアップ比を小さくすることにより、D
VDの値が大きくなるため、その値は大きくなる。また、比(D
VD/D
MD)は、押出時の樹脂のスウェルを考慮した吐出速度と引取速度とのバランスにより調整することもできる。具体的には、吐出速度に対して相対的に引取速度を速くすると、比(D
VD/D
MD)の値は小さくなる。
【0042】
コルゲートは次のようにすれば抑えることができる。
平均気泡径が小さくなるように発泡体の気泡の数を多くすると、発泡速度が速くなり、筒状に押出された発泡体にコルゲートが発生しやすくなる。通常は、筒状に押出された発泡体の中空部に圧縮気体を導入することにより、該発泡体をバルーン状に膨らませてコルゲートがなくなるまで拡幅する。そのため気泡は扁平になる。ここで、気泡の数が多い状態で、気泡変形率を1に近づけるようにブローアップ比を小さくすると、筒状発泡体に大きなコルゲートが発生してしまう。それに対して、筒状発泡体をバルーン状に膨らませる際に、押出直後から円筒状発泡体の表面を外部ガイダーの内面に押し当てる。これにより円周方向への気泡の成長による筒状発泡体の周長の増加を抑制しつつ、厚み方向にも気泡を成長させることが可能となり、ブローアップ比を小さくしても、コルゲートの発生を抑制することができる。その後、従来と同様にして筒状発泡体の内面を融着させて貼り合わせることにより、本発明のポリスチレン系樹脂押出発泡板を得ることができる。
【0043】
発泡性溶融樹脂に添加される気泡調整剤としては有機系のもの、無機系のもののいずれも使用することができる。無機系気泡調整剤としては、ホウ酸亜鉛、ホウ酸マグネシウム、硼砂等のホウ酸金属塩、塩化ナトリウム、水酸化アルミニウム、タルク、ゼオライト、シリカ、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム等が挙げられる。また有機系気泡調整剤としては、リン酸−2,2−メチレンビス(4,6−tert−ブチルフェニル)ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カルシウム、安息香酸アルミニウム、ステアリン酸ナトリウム等が挙げられる。またクエン酸と重炭酸ナトリウム、クエン酸のアルカリ塩と重炭酸ナトリウム等を組み合わせたもの等も気泡調整剤として用いることができる。これらの気泡調整剤は2種以上を混合して用いることができる。
気泡調整剤の添加量は、押出発泡板の所望の気泡径に応じて適宜調整することができるが、押出発泡板を形成するための樹脂100質量部に対して、概ね0.05〜10質量部であり、好ましくは0.05〜5質量部である。
【0044】
発泡剤としては物理発泡剤を用いることができる。物理発泡剤としては、例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン等の炭素数2以上6以下の脂肪族炭化水素、塩化メチル、塩化エチル、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1−ジフルオロエタン等の炭素数1以上3以下のハロゲン化脂肪族炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等の炭素数1以上4以下の脂肪族アルコール、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、イソプロピルエーテル、メチルエチルエーテル等の炭素数2以上8以下の脂肪族エーテル、等の有機物理発泡剤、窒素、二酸化炭素等の無機物理発泡剤が挙げられる。
【0045】
上記した物理発泡剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して使用することもできる。物理発泡剤は、上記した中でもポリスチレン系樹脂との相溶性、発泡効率の観点から、有機物理発泡剤が好ましく、特にノルマルブタン、イソブタン、又はこれらの混合物を主成分とするものが好ましい。
【0046】
物理発泡剤の添加量は、発泡剤としてイソブタン30質量%とノルマルブタン70質量%とのブタン混合物等の有機系物理発泡剤を用いる場合、押出発泡板を構成する樹脂100質量部に対して、概ね0.5〜10質量部、好ましくは1〜8質量部、より好ましくは2〜6質量部である。なお、発泡剤としては、物理発泡剤以外の発泡剤を併せて用いることもできる。
【0047】
以上説明したように、本発明の押出発泡板を製造可能な方法の特徴は、ブローアップ比を特定範囲内に収めると共に、筒状発泡体を外部ガイダーに接触させることにより、コルゲートを抑えることにある。両者のバランスが取れている場合、前記したように、押出発泡板の表面に、押出方向の気泡径及び幅方向の気泡径のいずれか一方が50μm未満の小気泡が存在し、該小気泡の数が300個/mm
2以下であるという構成を満たすことができる。
【0048】
本発明のポリスチレン系樹脂押出発泡板は、従来のものよりも圧縮強度、軽量性に優れることから、ディスプレイ材、包装材、食品容器等として好適に用いることができるものである。
【実施例】
【0049】
実施例1
ポリスチレン樹脂(PSジャパン社製ポリスチレン(GPPS)「HH102」、メルトフローレイト(2.6g/10分(測定温度200℃、荷重5kg))に、気泡調整剤としてタルクマスターバッチ(タルク濃度35重量%)をポリスチレン系樹脂100重量部に対して表1に示す量(0.8重量部)添加してタンデム型押出機の第一押出機に供給した。
【0050】
上記原料を第一押出機において、約200℃まで加熱してポリスチレン系樹脂を溶融させ、ポリスチレン系樹脂と気泡調整剤とを混練し、更に第一押出機先端付近で発泡剤として表1に示す量の混合ブタン(イソブタン/ノルマルブタン=30/70)を注入し、さらにこれらを混練した。次いで、第一押出機の下流側に接続された第二押出機において表1に示す樹脂温度(138℃)となるように発泡性溶融樹脂の温度を調節し、該溶融樹脂を環状ダイの口径100mmのダイリップから筒状に押出して発泡させた。この筒状に押出された発泡体の中空部に圧縮空気を導入してバルーン状に拡幅することにより、ダイの押出方向下流側に設けられた外部ガイダー(20℃に温調)に発泡体の外表面を押し当てながら、バルーン状の発泡体を引き取った。
【0051】
次いで、上記筒状発泡体の内面が融着可能な状態にある間に、筒状発泡体を上下のピンチロール間を通過させることにより発泡体内面を融着させて、厚み5mm、幅390mmの押出発泡板(原板)を得た。製造条件を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
得られた押出発泡板を28日間(40℃、相対湿度15%の条件下で14日、25℃、相対湿度50%の条件下で14日、計28日)養生した。押出発泡板の見掛け密度、厚み等の物性を表2に示す。
【0054】
【表2】
【0055】
実施例2
実施例2は、実施例1に対し平均気泡径を小さくした例である。
【0056】
実施例3、4
実施例3は、実施例1に対し押出発泡板の見掛け密度を更に小さくした例である。実施例4は、実施例3に対し押出発泡板の平均気泡径、平均気泡径比を小さくした例である。
図4に、実施例4で得られた押出発泡板の押出方向断面の拡大写真(30倍)を、
図5に幅方向断面の拡大写真(30倍)を示す。
【0057】
実施例5
実施例5は、実施例1に対し押出発泡板の見掛け密度を更に小さくした例である。
【0058】
実施例6、7
実施例6は、実施例1に対し押出発泡板の見掛け密度を大きくした例である。実施例7は、実施例6に対し平均気泡径、平均気泡径比を小さくした例である。
【0059】
比較例1、2
比較例1は、実施例1に対し、外部ガイダーを使用せずに、ブローアップ比を大きくした例である。比較例2は、さらに、押出発泡板の見掛け密度を小さくし、平均気泡径を大きくした例である。
図6に、比較例2で得られた押出発泡板の押出方向断面の拡大写真(30倍)を、
図7に幅方向断面の拡大写真(30倍)を示す。
【0060】
比較例3、4、5
比較例3、4、5は、実施例1に対しブローアップ比を大きくして幅470mmの押出発泡板を得た例である。比較例3は、押出発泡板の見掛け密度を実施例1と同程度とした例であり、比較例4は、比較例3よりも押出発泡板の見掛け密度を小さくした例、比較例5は、比較例4よりも押出発泡板の見掛け密度を小さくした例である。
比較例5では外部ガイダーを用いたが、筒状発泡体のコルゲートを抑えきれず、得られた押出発泡板はその表面にコルゲートに由来する模様を有するものであった。
【0061】
比較例6
比較例6は、外部ガイダーを使用せずに、ブローアップ比を実施例1と同じにした例である。比較例6では、筒状発泡体のコルゲートを抑えきれず、得られた押出発泡板はその表面にコルゲートに由来する模様を有するものであった。
【0062】
表中、各物性の測定は、次のように行った。
(厚み)
押出発泡板の全幅に亘って、10mmごとにその厚みを測定し、その算術平均値を押出発泡板の厚み[mm]とした。
【0063】
(坪量)
押出発泡板の全幅に亘って幅250mmの試験片を切り出し、該試験片の重量(g)を該試験片の面積(板幅(mm)×250mm)で割り算し、1m
2当たりの積層発泡板の重量(g)に換算し、これを押出発泡板の坪量とした。
【0064】
(見掛け密度)
前記方法により押出発泡板の坪量を厚みで割算し、単位をkg/m
3に換算することにより、押出発泡板の見掛け密度を求めた。
【0065】
(平均気泡径、平均気泡径比)
押出発泡板を幅方向に4等分する位置でそれぞれ押出方向に沿って切断して、3箇所の押出方向垂直断面の拡大写真を撮影した。それぞれの押出方向垂直断面において(n=3)、前記方法により押出方向の平均気泡径及び厚み方向の平均気泡径を求めた。これらの値をそれぞれ算術平均し、押出発泡板の押出方向の平均気泡径D
MD及び平均気泡径比(D
VD/D
MD)を求めた。さらに、4等分された押出発泡板を押出方向に2等分する位置でそれぞれ幅方向に沿って切断して、4箇所の幅方向垂直断面の拡大写真を撮影した。それぞれの幅方向垂直断面において(n=4)、前記方法により幅方向の平均気泡径及び厚み方向の平均気泡径を求めた。これらの値をそれぞれ算術平均し、押出発泡板の幅方向の平均気泡径D
TD及び平均気泡径比(D
VD/D
TD)を求めた。
【0066】
(表層部の気泡密度)
押出発泡板の表層部の気泡密度(表中「表層気泡密度」)を前記方法により測定した。
【0067】
(小気法の数)
押出発泡板を幅方向に6等分する位置において、前記方法により押出発泡板の表面における小気泡の数を測定し、押出発泡板の表面における小気泡の数を求めた(片面あたり5箇所、両面で計10箇所の算術平均値)。
【0068】
(独立気泡率)
空気比較式比重計(930型、東芝・ベックマン(株)製)を使用し、ASTM D2856−70(1976再認定)の手順Cに基づき、押出発泡板中の連続気泡を除く部分の容積(気泡膜の容積と独立気泡の容積との合計)を求め、押出発泡板中の気泡の全容積(独立気泡の容積と連続気泡の容積との合計)に対する独立気泡の容積として独立気泡率[%]を計算により求めた。測定試料として、押出発泡板から25mm×25mm×押出発泡板厚みのサイズに切断された試験片を重ねて20mm程度の厚さにしたものを用いた(n=5)。
【0069】
(10%圧縮強度)
10%圧縮強度の測定は、JIS K7181(1994)に準拠して、次の方法により行なった。
押出発泡板から、縦5cm×横5cm×押出発泡板厚みの試験片を切り出し、該試験片を厚み方向に速度10mm/minで15%圧縮し、応力−歪曲線を得た。得られた応力−歪曲線より10%圧縮時の応力を読み取り、試験片の圧縮面積(25cm
2)で割ることにより押出発泡板の10%圧縮強度を求めた(n=5)。
【0070】
(曲げ弾性率)
曲げ弾性率の測定は、JIS K7203(1982年)に記載の測定法に準拠して行なった。押出発泡板から、押出発泡板厚み×幅25mm×長さ100mmの試験片を切り出し、該試験片を用いて、支点間距離50mm、圧子の半径R
15.0mm、支持台の半径R
25.0mm、試験速度10mm/min、室温23℃、湿度50%の条件で、オートグラフAGS−10kNG(島津製作所製)試験機により曲げ試験を行い、曲げ弾性率を求めた(n=5)。
【0071】
(表面硬度)
表面硬度の測定はJIS K6301(1975)の「5.硬さ試験」に準拠し、C形スプリング式硬さ試験機を用いて測定した(n=5)。具体的には、荷重4500gをかけた時の目盛が100となるようなばね圧力に調整されたC型スプリング式硬さ試験機を使用して、加圧面と試験片表面を接触させて直ちに目盛を読むものとする。尚、目盛及び押針の動きとばねの力との関係を表す基準線はJIS K6301(1975)の「5.硬さ試験」における
図5C型の通りとした。
【0072】
(押出方向の加熱寸法変化率に対する幅方向の加熱寸法変化率の比の最大値)
前記した方法で、押出方向の加熱寸法変化率に対する幅方向の加熱寸法変化率の比の最大値(表中、最大加熱寸法変形比)を求めた(n=3)。