特許第6768371号(P6768371)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6768371生体情報表示装置、生体情報表示方法、プログラム及び記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6768371
(24)【登録日】2020年9月25日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】生体情報表示装置、生体情報表示方法、プログラム及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20201005BHJP
   A61B 5/022 20060101ALI20201005BHJP
【FI】
   A61B5/00 D
   A61B5/022 500A
【請求項の数】20
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-125778(P2016-125778)
(22)【出願日】2016年6月24日
(65)【公開番号】特開2017-225744(P2017-225744A)
(43)【公開日】2017年12月28日
【審査請求日】2019年5月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】門磨 義史
(72)【発明者】
【氏名】村上 泰大
(72)【発明者】
【氏名】喜多村 智
【審査官】 ▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−147493(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/092707(WO,A1)
【文献】 国際公開第2004/023994(WO,A1)
【文献】 特開2013−099499(JP,A)
【文献】 特開2011−194164(JP,A)
【文献】 特開平09−122084(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3001682(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0350369(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00− 5/053
A61B 5/06− 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサと、
コンピュータ可読命令を記憶するメモリと、を備えた生体情報表示装置であって、
前記コンピュータ可読命令が前記プロセッサにより実行されると、前記生体情報表示装置は、
複数のバイタル値と前記複数のバイタル値が測定された複数の測定時刻とを有し、前記複数のバイタル値の各々が前記複数の測定時刻の対応する一つと関連付けられているバイタルデータを取得し、
前記取得されたバイタルデータのリストとトレンドグラフを生成し、
前記生成されたリストとトレンドグラフを表示部の表示画面上に表示させ、
前記バイタルデータに含まれるノイズデータを特定し、
前記特定されたノイズデータを除いたバイタルデータに基づいて、前記バイタルデータの上限値を規定するデータ上限線と前記バイタルデータの下限値を規定するデータ下限線を生成し、
前記生成されたデータ上限線とデータ下限線を前記トレンドグラフ上に表示させ、
前記データ上限線により規定される前記バイタルデータの上限値と前記データ下限線により規定される前記バイタルデータの下限値との間の範囲内に含まれているバイタルデータから、前記バイタルデータの最悪値を決定し、
前記決定されたバイタルデータの最悪値を前記表示画面上に特定する、
生体情報表示装置。
【請求項2】
前記生体情報表示装置は、前記バイタルデータの最悪値を前記トレンドグラフ上及び前記リスト上に特定する、請求項1に記載の生体情報表示装置。
【請求項3】
前記コンピュータ可読命令が前記プロセッサにより実行されると、前記生体情報表示装置は、操作者からの入力操作に従って、前記トレンドグラフ上に表示された前記データ上限線と前記データ下限線を移動させる、請求項1又は2に記載の生体情報表示装置。
【請求項4】
前記生体情報表示装置は、前記ノイズデータを特定する際に、
所定のバイタル値と前記所定のバイタル値が取得される直前に取得されたバイタル値とに基づいて、前記所定のバイタル値の第1増減率を算出し、
前記所定のバイタル値と前記所定のバイタル値が取得された直後に取得されたバイタル値とに基づいて、前記所定のバイタル値の第2増減率を算出し、
前記第1増減率と前記第2増減率のうち少なくとも一方が増減率許容範囲外であるかどうかを判定し、
前記第1増減率と前記第2増減率のうち少なくとも一方が前記増減率許容範囲外であると判定した場合、前記所定のバイタル値をノイズデータとして特定する、請求項1から3のうちいずれか一項に記載の生体情報表示装置。
【請求項5】
前記生体情報表示装置は、前記ノイズデータを特定する際に、
定のバイタル値がバイタル値許容範囲内であるかどうかを判定し、
前記所定のバイタル値が前記バイタル値許容範囲内でないと判定した場合、前記所定のバイタル値をノイズデータとして特定する、請求項1から4のうちいずれか一項に記載の生体情報表示装置。
【請求項6】
前記コンピュータ可読命令が前記プロセッサにより実行されると、前記生体情報表示装置は、操作者からの入力操作に従って、前記増減率許容範囲を変更する、請求項4に記載の生体情報表示装置。
【請求項7】
前記コンピュータ可読命令が前記プロセッサにより実行されると、前記生体情報表示装置は、操作者からの入力操作に従って、前記バイタル値許容範囲を変更する、請求項5に記載の生体情報表示装置。
【請求項8】
前記生体情報表示装置は、操作者からの入力操作に従って、前記バイタルデータに含まれるノイズデータを特定する、請求項1から7のうちいずれか一項に記載の生体情報表示装置。
【請求項9】
前記バイタルデータは、平均血圧データであって、
前記平均血圧データは、複数の平均血圧値と前記複数の平均血圧値が測定された複数の測定時刻とを有し、前記複数の平均血圧値の各々が前記複数の測定時刻の対応する一つと関連付けられており、
前記バイタルデータの最悪値は、前記平均血圧データの最低値と最高値である、請求項1から8のいずれか一項に記載の生体情報表示装置。
【請求項10】
複数のバイタル値と前記複数のバイタル値が測定された複数の測定時刻とを有し、前記複数のバイタル値の各々が前記複数の測定時刻の対応する一つと関連付けられているバイタルデータを取得するステップと、
前記取得されたバイタルデータのリストとトレンドグラフを生成するステップと、
前記生成されたリストとトレンドグラフを表示装置の表示画面上に表示させるステップと、
前記バイタルデータに含まれるノイズデータを特定するステップと、
前記特定されたノイズデータを除いたバイタルデータに基づいて、前記バイタルデータの上限値を規定するデータ上限線と前記バイタルデータの下限値を規定するデータ下限線を生成するステップと、
前記生成されたデータ上限線とデータ下限線を前記トレンドグラフ上に表示させるステップと、
前記データ上限線により規定される前記バイタルデータの上限値と前記データ下限線により規定される前記バイタルデータの下限値との間の範囲内に含まれているバイタルデータから、前記バイタルデータの最悪値を決定するステップと、
前記決定されたバイタルデータの最悪値を前記表示画面上に特定するステップと、
を含む、生体情報表示方法。
【請求項11】
前記バイタルデータの最悪値を特定するステップでは、前記バイタルデータの最悪値が前記トレンドグラフ上及び前記リスト上に特定される、請求項10に記載の生体情報表示方法。
【請求項12】
操作者からの入力操作に従って、前記トレンドグラフ上に表示された前記データ上限線と前記データ下限線を移動させるステップをさらに含む、請求項10又は11に記載の生体情報表示方法。
【請求項13】
前記ノイズデータを特定するステップは、
所定のバイタル値と前記所定のバイタル値が取得される直前に取得されたバイタル値とに基づいて、前記所定のバイタル値の第1増減率を算出するステップと、
前記所定のバイタル値と前記所定のバイタル値が取得された直後に取得されたバイタル値とに基づいて、前記所定のバイタル値の第2増減率を算出するステップと、
前記第1増減率と前記第2増減率のうち少なくとも一方が増減率許容範囲外であるかどうかを判定するステップと、
前記第1増減率と前記第2増減率のうち少なくとも一方が前記増減率許容範囲外であると判定した場合、前記所定のバイタル値をノイズデータとして特定するステップと、を含む、請求項10から12のうちいずれか一項に記載の生体情報表示方法。
【請求項14】
前記ノイズデータを特定するステップは、
定のバイタル値がバイタル値許容範囲内であるかどうかを判定するステップと、
前記所定のバイタル値が前記バイタル値許容範囲内でないと判定した場合、前記所定のバイタル値をノイズデータとして特定するステップと、を含む、請求項10から13のうちいずれか一項に記載の生体情報表示方法。
【請求項15】
操作者からの入力操作に従って、前記増減率許容範囲を変更するステップをさらに含む、請求項13に記載の生体情報表示方法。
【請求項16】
操作者からの入力操作に従って、前記バイタル値許容範囲を変更するステップをさらに含む、請求項14に記載の生体情報表示方法。
【請求項17】
操作者からの入力操作に従って、前記バイタルデータに含まれるノイズデータが特定される、請求項10から16のうちいずれか一項に記載の生体情報表示方法。
【請求項18】
前記バイタルデータは、平均血圧データであって、
前記平均血圧データは、複数の平均血圧値と前記複数の平均血圧値が測定された複数の測定時刻とを有し、前記複数の平均血圧値の各々が前記複数の測定時刻の対応する一つと関連付けられており、
前記バイタルデータの最悪値は、前記平均血圧データの最低値と最高値である、請求項10から17のうちいずれか一項に記載の生体情報表示方法。
【請求項19】
請求項10から18のうちいずれか一項に記載の生体情報表示方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項20】
請求項19に記載のプログラムが記憶されたコンピュータ読取可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報表示装置および生体情報表示方法に関する。また、本発明は、当該方法を実行するためのプログラム及び当該プログラムが記憶されたコンピュータ読取可能な記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
センサより取得されたバイタルデータには、バイタルデータの測定中における患者の挙動変化や外乱等に起因したノイズデータが含まれており、取得されたバイタルデータからノイズデータを特定することは難しい。
【0003】
特許文献1には、心電図波形から取得されたQT間隔の信頼度を高精度に区別した上で、信頼度の低いQT間隔と信頼度の高いQT間隔がプロット点の種類により区別されるようにQT間隔のトレンドグラフを表示画面上に表示する生体情報表示装置が開示されている。このように、特許文献1には、バイタルデータに含まれるノイズデータをトレンドグラフ上で可視化する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−94239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来では、医療従事者は、バイタルデータのリストのみからバイタルデータの最悪値(例えば、平均血圧の最高値及び最低値)を選択していた。例えば、バイタルデータの最悪値は、患者の死亡率を予測するスコア(例えば、APACHE2 SCORE等)に供される。しかしながら、バイタルデータはノイズデータを含んでいるため、表示画面上に表示されたバイタルデータのリストのみからノイズデータを判別し、バイタルデータの最悪値を決定するのは困難であると共に、多くの時間を要していた。特に、バイタルデータのリストのみからノイズデータであるかどうかを判別するのは困難であると共に、多くの時間を要する。このように、バイタルデータの最悪値の決定は医療従事者に大きな負荷を与えていた。
【0006】
本発明は、ノイズデータを含むバイタルデータの最悪値を容易に決定することができる生体情報表示装置及び生体情報表示方法を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、当該生体情報表示方法をコンピュータに実行させるためのプログラム及び当該プログラムが記憶されたコンピュータ読取可能な記憶媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る生体情報表示装置は、
プロセッサと、
コンピュータ可読命令を記憶するメモリと、を備える。
前記コンピュータ可読命令が前記プロセッサにより実行されると、前記生体情報表示装置は、
複数のバイタル値と前記複数のバイタル値が測定された複数の測定時刻とを有し、前記複数のバイタル値の各々が前記複数の測定時刻の対応する一つと関連付けられているバイタルデータを取得し、
前記取得されたバイタルデータのリストとトレンドグラフを生成し、
前記生成されたリストとトレンドグラフを表示部の表示画面上に表示させ、
前記バイタルデータに含まれるノイズデータを特定し、
前記特定されたノイズデータを除いたバイタルデータに基づいて、前記バイタルデータの上限値を規定するデータ上限線と前記バイタルデータの下限値を規定するデータ下限線を生成し、
前記生成されたデータ上限線とデータ下限線を前記トレンドグラフ上に表示させ、
前記データ上限線により規定される前記バイタルデータの上限値と前記データ下限線により規定される前記バイタルデータの下限値との間の範囲内に含まれているバイタルデータから、前記バイタルデータの最悪値を決定し、
前記決定されたバイタルデータの最悪値を前記表示画面上に特定する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ノイズデータを含むバイタルデータの最悪値を容易に決定することができる生体情報表示装置及び生体情報表示方法を提供することができる。さらに、本発明によれば、当該生体情報表示方法をコンピュータに実行させるためのプログラム及び当該プログラムが記憶されたコンピュータ読取可能な記憶媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態(以下、単に本実施形態という。)に係る生体情報表示装置を示すハードウェア構成図である。
図2】バイタルデータの一例を示す図である。
図3】本実施形態に係る生体情報表示方法を説明するためのフローチャートである。
図4】バイタルデータ表示ウィンドウを示す図(その1)である。
図5】バイタルデータ表示ウィンドウを示す図(その2)である。
図6】バイタルデータ設定ウィンドウの一例を示す図である。
図7図3に示すノイズデータ特定処理のフローチャートである。
図8図7に示す増減率に基づいたノイズデータ特定処理のフローチャートである。
図9図7に示す前後の平均血圧値に基づいたノイズデータ特定処理のフローチャートである。
図10図7に示す平均血圧値許容範囲に基づいたノイズデータ特定処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施形態について図面を参照しながら説明する。尚、本実施形態の説明において既に説明された要素と同一の参照番号を有する要素については、説明の便宜上、その説明は省略する。
【0011】
図1は、本実施形態に係る生体情報表示装置1のハードウェア構成図を示す。図1に示すように、生体情報表示装置1(以下、単に表示装置1という。)は、制御部2と、記憶部3と、ネットワークインターフェース4と、表示部5と、入力操作部6とを備える。これらはバス8を介して互いに通信可能に接続されている。
【0012】
表示装置1は、平均血圧等のバイタルデータのトレンドグラフやリストを表示するための専用装置(生体情報モニタ等)であってもよいし、例えば、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、スマートフォン、タブレット、操作者(医療従事者)の身体(例えば、腕や頭等)に装着されるウェアラブルデバイス(例えば、Apple Watchやスマートグラス等)であってもよい。
【0013】
制御部2は、メモリとプロセッサを備えている。メモリは、コンピュータ可読命令(プログラム)を記憶するように構成されており、例えば、各種プログラム等が格納されたROM(Read Only Memory)やプロセッサにより実行される各種プログラム等が格納される複数ワークエリアを有するRAM(Random Access Memory)等から構成される。プロセッサは、例えばCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)及び/又はGPU(Graphics Processing Unit)であって、ROMに組み込まれた各種プログラムから指定されたプログラムをRAM上に展開し、RAMとの協働で各種処理を実行するように構成されている。
【0014】
特に、プロセッサが後述する生体情報表示プログラムをRAM上に展開し、RAMとの協働で当該プログラムを実行することで、制御部2は、表示装置1の各種動作を制御してもよい。制御部2及び生体情報表示プログラムの詳細については後述する。
【0015】
記憶部3は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、USBフラッシュメモリ等の記憶装置(ストレージ)であって、プログラムや各種データを格納するように構成されている。記憶部3には、生体情報表示プログラムが組み込まれてもよい。また、図2に示す平均血圧データ等のバイタルデータが記憶部3に保存されていてもよい。平均血圧データは、血圧センサにより取得される。取得された平均血圧データは、通信ネットワークやUSBメモリ等の記憶媒体を介して記憶部3に保存される。図2に示すように、平均血圧は、複数の平均血圧値ART(N)(ここで、Nは1以上の整数)と、複数の平均血圧値ART(N)が測定された複数の測定時刻Tとを有し、複数の平均血圧値ART(N)の各々が複数の測定時刻Tの対応する一つと関連付けられている。例えば、所定患者の平均血圧値が1分ごとに取得される場合、1日(24時間)の間に測定される平均血圧値のサンプル総数は、60分×24時間=1440となる。この場合、N=1〜1440となる。また、平均血圧値の測定時刻Tとは、血圧測定を開始した開始時刻であってもよいし、血圧測定を終了した終了時刻であってもよい。または、当該測定時刻とは、開始時刻と終了時刻との間の時刻であってもよい。尚、図2に示す平均血圧では、測定時刻Tが古い方から順番に平均血圧値ART(N)が並んでいるが、平均血圧値が小さい方又は大きいから順番に平均血圧値ART(N)が並んでいてもよい。
【0016】
また、平均血圧データに加えて、最高血圧データ、体温データ、心拍数データ及び呼吸数データ等のバイタルデータが記憶部3に保存されてもよい。これらのバイタルデータも、複数のバイタル値と、複数のバイタル値が測定された複数の測定時刻を有すると共に、複数のバイタル値の各々が複数の測定時刻のうちの対応する一つと関連付けられている。
【0017】
ネットワークインターフェース4は、表示装置1を通信ネットワークに接続するように構成されている。具体的には、ネットワークインターフェース4は、通信ネットワークを介してサーバ等の外部装置と通信するための各種有線接続端子や、無線接続のための各種処理回路を含んでおり、通信ネットワークを介して通信するための通信規格に適合するように構成されている。ここで、通信ネットワークは、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)又はインターネット等である。例えば、生体情報表示プログラムや平均血圧等のバイタルデータは、通信ネットワーク上に配置されたコンピュータからネットワークインターフェース4を介して取得されてもよい。
【0018】
表示部5は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等の表示装置であってもよいし、操作者の頭に装着される透過型又は非透過型のヘッドマウントディスプレイ等の表示装置であってもよい。例えば、図4,5に示すように平均血圧データのリストやトレンドグラフが表示されたバイタルデータ表示ウィンドウ20が表示部5の表示画面上に表示される。
【0019】
入力操作部6は、表示装置1を操作する操作者の入力操作を受付けると共に、当該入力操作に対応する指示信号を生成するように構成されている。入力操作部6は、例えば、表示部5上に重ねて配置されたタッチパネル、筐体に取り付けられた操作ボタン、マウス又はキーボード等である。入力操作部6によって生成された指示信号は、バス8を介して制御部2に送信されて、制御部2は、指示信号に応じて所定の動作を実行する。
【0020】
次に、図3図5を参照して本実施形態に係る生体情報表示方法について説明する。図3は、本実施形態に係る生体情報表示方法を説明するためのフローチャートである。図4及び図5は、表示部5の表示画面上に表示されたバイタルデータ表示ウィンドウ20を示す図である。バイタルデータ表示ウィンドウ20には、平均血圧データのリスト24(最高値選択リスト22と最低値選択リスト23)とトレンドグラフ21が表示される。
【0021】
図3に示すように、最初に、表示装置1を起動した際に、ステップS1において、制御部2は、平均血圧データを記憶部3から取得する。尚、制御部2は、平均血圧データをネットワークインターフェース4を介して通信ネットワーク上に配置されたサーバから取得してもよい。次に、制御部2は、取得された平均血圧データのリスト24とトレンドグラフ21を生成した上で(ステップS2)、当該生成されたリスト24とトレンドグラフ21を表示部5の表示画面上に表示させる(ステップS3)。換言すれば、制御部2は、リスト24とトレンドグラフ21を含むバイタルデータ表示ウィンドウ20を表示部5の表示画面上に表示させる。図4に示すように、リスト24は、平均血圧値の最高値を選択するための最高値選択リスト22と、平均血圧値の最低値を選択するための最低値選択リスト23を含む。最高値選択リスト22では、操作者が平均血圧値の最高値を比較的容易に選択できるように、平均血圧値が大きい方から順番に平均血圧値が表示されている。一方、最低値選択リスト23では、操作者が平均血圧値の最低値を比較的容易に選択できるように、平均血圧値が小さい方から順番に平均血圧値が表示されている。トレンドグラフ21は、平均血圧値とその測定時刻との関係を示すグラフである。トレンドグラフの横軸が測定時刻である一方、トレンドグラフの縦軸は平均血圧値となる。
【0022】
次に、ステップS4において、制御部2は、平均血圧データに含まれるノイズデータを特定する。一般的に、血圧センサより取得された平均血圧データには、平均血圧データの測定中における患者の挙動変化や外乱等に起因したノイズデータが含まれている。本ステップでは、制御部2は、各平均血圧値がノイズデータであるかどうかを判定する。尚、本ステップについては後述する。
【0023】
次に、制御部2は、特定されたノイズデータを除いた平均血圧データに基づいて、データ上限線25とデータ下限線26を生成し(ステップS5)、図4に示すように、生成されたデータ上限線25とデータ下限線26をトレンドグラフ21上に表示する(ステップS6)。ここで、データ上限線25は、平均血圧値の上限値を規定している一方、データ下限線26は、平均血圧値の下限値を規定している。
【0024】
次に、ステップS7において、制御部2は、データ上限線25により規定される平均血圧値の上限値とデータ下限線26により規定される平均血圧値の下限値との間の範囲内に含まれる複数の平均血圧値から、平均血圧値の最高値と最低値を決定する。ここで、平均血圧値の最高値と最低値は、平均血圧データの最悪値として規定される。その後、制御部2は、平均血圧値の最高値を特定するための最高値特定マーク27をトレンドグラフ21上に表示すると共に、平均血圧値の最低値を特定するための最低値特定マーク28をトレンドグラフ21上に表示する。さらに、制御部2は、平均血圧値の最高値を最高値選択リスト22上に特定するために、最高値選択リスト22に表示された複数のラジオボタンの一つを選択し、選択されたラジオボタンをON表示にする。さらに、制御部2は、平均血圧値の最低値を最低値選択リスト23上に特定するために、最低値選択リスト23に表示された複数のラジオボタンの一つを選択し、選択されたラジオボタンをON表示にする。図4に示すように、最高値選択リスト22では、平均血圧値の最高値として87が選択される。一方、最低値選択リスト23では、平均血圧値の最低値として75が選択される。
【0025】
このように、平均血圧データの最低値と最高値がトレンドグラフ21上及びリスト24上に特定されるので、操作者は、平均血圧データの最低値と最高値を一目瞭然に視認可能となる。さらに、操作者は、トレンドグラフ21上に表示された平均血圧データの最低値と最高値を見ることで、当該最低値と最高値が妥当かどうかを直感的に判断することができる。
【0026】
また、制御部2は、ノイズデータとして特定された平均血圧値を最高値選択リスト22及び最低値選択リスト23上で特定する。例えば、最高値選択リスト22及び最低値選択リスト23上において、ノイズデータとして特定された平均血圧値を正常データとは異なる色で表示してもよい。図4に示すように、最高値選択リスト22では、平均血圧値178と201の各々がノイズデータとして特定されるように、その他の正常データとは異なる色で表示される。最低値選択リスト23では、平均血圧値−5,5,33,34,35の各々がノイズデータとして特定されるように、その他の正常データとは異なる色で表示される。一方、操作者は、データ上限線25とデータ下限線26を見ることで、ノイズデータとして特定された平均血圧値を視認することもできる。つまり、操作者は、トレンドグラフ21から、データ上限線25よりも大きい平均血圧値をノイズデータとして視認することができると共に、データ下限線26よりも小さい平均血圧値をノイズデータとして視認することができる。
【0027】
以上より、表示装置1を起動した後に、制御部2は、ステップS1からステップS8で特定される各種動作を実行する。次に、トレンドグラフ21上に表示されたデータ上限線25及び/又はデータ下限線26に対して入力操作があった場合(ステップS9でYES)、制御部2は、操作者からの入力操作に応じて、移動後のデータ上限線25及び/又はデータ下限線26をトレンドグラフ21上に再表示する。このように、制御部2は、操作者からの入力操作に従って、データ上限線25及び/又はデータ下限線26を移動させる。図5では、移動後のデータ上限線25及びデータ下限線26が示されている。
【0028】
具体的には、操作者が、データ上限線25を移動させるために入力操作部6を通じてデータ上限線25に対して所定の操作を行うと、入力操作部6は、操作者からの所定の操作に応じた操作信号を生成して、当該操作信号を制御部2に送信する。制御部2は、送信された操作信号に応じて、データ上限線25を更新した上で、更新されたデータ上限線25をトレンドグラフ21上に表示する。例えば、入力操作部6がマウスの場合、操作者は、カーソルをデータ上限線25に重ねた状態でドラッグ・アンド・ドロップ操作によりデータ上限線25を所望の位置に移動することができる。また、入力操作部6がタッチパネルの場合、操作者は、操作者の指をデータ上限線25に重ねた状態でドラッグ・アンド・ドロップ操作によりデータ上限線25を所望の位置に移動することができる。このように、ドラッグ・アンド・ドロップ操作等の比較的簡単な操作により、データ上限線25を所望の位置に移動させることができる。尚、データ下限線26もデータ上限線25と同様の手法により移動させることができる。
【0029】
さらに、操作者は、データ上限線25を移動させるための上限線移動コマンドボタン32をクリック操作又はタッチ操作することで、データ上限線25を所望の位置まで移動させることができる。同様に、操作者は、データ下限線26を移動させるための下限線移動コマンドボタン33をクリック操作又はタッチ操作することで、データ下限線26を所望の位置まで移動させることができる。
【0030】
図5に示すように、操作者による入力操作を通じてデータ上限線25とデータ下限線26が移動した後に、制御部2は、移動したデータ上限線25により規定される平均血圧値の上限値と、移動したデータ下限線26により規定される平均血圧値の下限値との間の範囲内に含まれている複数の平均血圧値から、平均血圧値の最高値と最低値を決定する(ステップS7)。その後、制御部2は、最高値特定マーク27と最低値特定マーク28をトレンドグラフ21上に表示する。さらに、制御部2は、最高値選択リスト22に表示された複数のラジオボタンの一つをON表示にすると共に、最低値選択リスト23に表示された複数のラジオボタンの一つをON表示にする(ステップS8)。図5に示すように、最高値選択リスト22では、平均血圧値の最高値として178が選択される一方、最低値選択リスト23では、平均血圧値の最低値として5が選択される。また、最高値選択リスト22では、平均血圧値201がノイズデータとして特定される一方、最低値選択リスト23では、平均血圧値−5がノイズデータとして特定される。
【0031】
このように、制御部2は、操作者からの入力操作に従って、トレンドグラフ21上に表示されたデータ上限線25とデータ下限線26を移動させる。例えば、操作者は、データ上限線25とデータ下限線26の位置を微調整することで、より最適な平均血圧データの最低値と最高値(換言すれば、より信頼性の高い最低値と最高値)を決定することができる。特に、操作者は、図4に示す平均血圧値の最高値87と最低値75に納得できない場合に、データ上限線25とデータ下限線26をドラッグ・アンド・ドロップ操作により移動させることで、図5に示すように平均血圧値の最高値178と最低値5を得ることができる。
【0032】
また、トレンドグラフ21に表示されたデータ上限線25及び/又はデータ下限線26に対して入力操作がない場合(ステップS9でNO)、制御部2は、自動調整ボタン29が操作者によってタッチ操作又はクリック操作されたかどうかを判定する(ステップS10)。自動調整ボタン29が操作された場合(ステップS10でYES)、制御部2は、ステップS4からステップS8で規定される各動作を実行する。例えば、図5に示す状態から、自動調整ボタン29が操作された場合、制御部2によって平均血圧データに含まれるノイズデータが特定された上、データ上限線25とデータ下限線26がトレンドグラフ21上に表示される。つまり、制御部2は、データ上限線25とデータ下限線26が図4に示した状態になるようにデータ上限線25とデータ下限線26を移動させる。
【0033】
一方、自動調整ボタン29が操作されない場合(ステップS10でNO)、制御部2は、表示装置1の動作を終了するかどうかを判断する(ステップS11)。例えば、操作者が表示画面上で入力操作を続けた場合(ステップS11でYES)、制御部2は、表示装置1の動作を終了させる。一方、表示装置1の動作を終了しない場合、処理はステップS9に戻る。
【0034】
本実施形態によれば、平均血圧データに含まれるノイズデータが特定され、特定されたノイズデータを除いた平均血圧データに基づいて、データ上限線25とデータ下限線26が生成及びトレンドグラフ21上に表示される。そして、データ上限線25により規定される平均血圧値の上限値と、データ下限線26により規定される平均血圧値の下限値との間の範囲内に含まれる複数の平均血圧値から、平均血圧値の最低値と最高値が決定され、決定された最低値と最高値が表示画面上において特定される。
【0035】
このように、ノイズデータを含む平均血圧データの最低値と最高値を比較的容易に決定することができる表示装置1を提供することができる。特に、操作者は、表示装置1を用いることで、視覚的且つ直感的に平均血圧データの最低値と最高値を決定することが可能となる。
【0036】
また、本実施形態によれば、自動調整ボタン29をクリック操作又はタッチ操作することで、平均血圧データに含まれるノイズデータが特定される。このため、操作者は、適当なタイミングで、特定されたノイズデータを除いた平均血圧データに基づいて、データ上限線25とデータ下限線26をトレンドグラフ21上に表示させることができる(図4参照)。従って、表示装置1の操作性を高めることができる。
【0037】
次に、図3に示すノイズデータ特定処理S4について図7から図10を用いて説明する。図7は、ノイズデータ特定処理S4のフローチャートである。図8は、図7に示す増減率に基づいたノイズデータ特定処理S41のフローチャートである。図9は、図7に示す前後の平均血圧値に基づいたノイズデータ特定処理S42のフローチャートである。図10は、図7に示す平均血圧値許容範囲に基づいたノイズデータ特定処理S43のフローチャートである。
【0038】
図7に示すように、最初に、制御部2は、増減率に基づいたノイズデータ特定処理を実行する(ステップS41)。図8を参照して増減率に基づいたノイズデータ特定処理(ステップS41)について説明する。図8に示すように、ステップS410において、制御部2は、平均血圧データの配列番号Nを1に設定する。ここで、図2に示すように、平均血圧データは、複数の平均血圧値ART(N)と複数の測定時刻Tを有し、測定時刻Tが古い方から順番に平均血圧値ART(N)が配列されている。つまり、配列番号Nが大きくなるに連れて、平均血圧値の測定時刻が新しくなる一方、配列番号Nが小さくなるに連れて、平均血圧値の測定時刻は古くなる。また、説明の便宜上、平均血圧データは以下の条件により取得されるものとする。このため、平均血圧値のサンプル総数は、2時間15分(=135分)であって、N=1〜135(NLAST=135)となる。

・所定患者の平均血圧値は、1分ごとに取得される(測定時刻の間隔は1分)
・所定患者の平均血圧値は、17時から19時15分の間に取得される
【0039】
尚、以降のステップS411からS417は、N=1から135(=NLAST)まで繰り返し実行されるため、配列番号Nを特定しないでこれらのステップの説明をする。
【0040】
ステップS411において、制御部2は、平均血圧値ART(N)の第1増減率ΔART1(N)を算出する。具体的には、制御部2は、平均血圧値ART(N)と平均血圧値ART(N)が取得される直前に取得された平均血圧値ART(N−1)とに基づいて、平均血圧値ART(N)の第1増減率ΔART1(N)を算出する。より具体的には、第1増減率ΔART1(N)は以下の式(1)に基づいて算出される。尚、N=1の場合では、ART(0)が定義されないため、第1増減率ΔART1(1)は演算されない点に留意されたい。

ΔART1(N)=ART(N)/ART(N−1)×100%・・・(1)
【0041】
次に、ステップS412において、制御部2は、平均血圧値ART(N)の第2増減率ΔART2(N)を算出する。具体的には、制御部2は、平均血圧値ART(N)と平均血圧値ART(N)が取得された直後に取得された平均血圧値ART(N+1)とに基づいて、平均血圧値ART(N)の第2増減率ΔART2(N)を算出する。より具体的には、第2増減率ΔART2(N)は以下の式(2)に基づいて算出される。尚、N=135の場合では、ART(136)が定義されないため、第2増減率ΔART2(135)は演算されない点に留意されたい。

ΔART2(N)=ART(N)/ART(N+1)×100%・・・(2)
【0042】
次に、制御部2は、第1増減率ΔART1(N)と第2増減率ΔART2(N)のうちの少なくとも一つが増減率許容範囲外であるかどうかを判定する(ステップS413)。例えば、制御部2は、第1増減率ΔART1(N)及び第2増減率ΔART2(N)のうちの少なくとも一つが増減率X%以上であるかどうかを判定する。この場合、増減率許容範囲内は、(100−X)%より大きく(100+X)%より小さい範囲となる。つまり、制御部2は、第1増減率ΔART1(N)が(100−X)%<ΔART1(N)<(100+X)%であるかどうかを判定すると共に、第2増減率ΔART2(N)が(100−X)%<ΔART2(N)<(100+X)%であるかどうかを判定する。
【0043】
例えば、X=16の場合、制御部2は、第1増減率ΔART1(N)及び第2増減率ΔART2(N)のうちの少なくとも一つが増減率16%以上であるかどうかを判定する。この場合、増減率許容範囲内は、84%より大きく116%より小さい範囲となる。つまり、制御部2は、第1増減率ΔART1(N)が84%<ΔART1(N)<116%であるかどうかを判定すると共に、第2増減率ΔART2(N)が84%<ΔART2(N)<116%であるかどうかを判定する。
【0044】
また、制御部2は、操作者からの入力操作に従って、当該増減率許容範囲を変更してもよい。例えば、操作者が、バイタルデータ表示ウィンドウ20に表示された設定変更ボタン30(図4参照)をクリック操作又はタッチ操作することで、制御部2は、図6に示すバイタルデータ設定ウィンドウ35を表示部5の表示画面上に表示する。次に、操作者がバイタルデータ設定ウィンドウ35に表示された増減率の値(図6では、16%)を所定の操作(増減ボタンに対するクリック操作又はキーボートを通じた数値入力)を通じて変更することで、制御部2は、操作者からの所定の操作に対応した操作信号に応じて、増減率許容範囲を変更する。例えば、バイタルデータ設定ウィンドウ35に表示された増減率が20%に設定された場合、制御部2は、増減率許容範囲を80%より大きく120%よりも小さい範囲に設定する。
【0045】
次に、図8に示すステップS413において、制御部2は、第1増減率ΔART1(N)と第2増減率ΔART2(N)のうちの少なくとも一つが増減率許容範囲外であると判定すると(ステップS413でYES)、平均血圧値ART(N)をノイズデータとして特定する(ステップS414)。一方、制御部2は、第1増減率ΔART1(N)と第2増減率ΔART2(N)の両方が増減率許容範囲内であると判定すると(ステップS413でNO)、平均血圧データの配列番号NがNLast(=135)であるかどうか判定する。制御部2は、平均血圧データの配列番号NがNLastでないと判定した場合(ステップS415でNO)、配列番号Nが1つ増加した上で(ステップS416)、処理はステップS411に戻る。一方、制御部2は、平均血圧データの配列番号NがNLastであると判定した場合(ステップS415でYES)、図7に示す前後の平均血圧値に基づいたノイズデータ特定処理S42を実行する。
【0046】
以下の表1に平均血圧値ART(N)と第1増減率ART1(N)と第2増減率ART2(N)との関係の具体例を示す。第1,2増減率の値は、小数点が四捨五入されている。
【表1】
表1:平均血圧値ART(N)と第1増減率ΔART1(N)と第2増減率ΔART2(N)との関係を示す一例
【0047】
次に、図7に示す前後の平均血圧値に基づいたノイズデータ特定処理S42について図9を参照して説明する。図9に示すように、ステップS420において、制御部2は、平均血圧データの配列番号Nを1に設定する。次に、ステップS421において、制御部2は、ノイズデータ特定処理S41において平均血圧値ART(N)がノイズデータとして特定されたかどうかを判定する(ステップS421)。制御部2は、ノイズデータ特定処理S41において平均血圧値ART(N)がノイズデータとして特定されたと判定した場合(ステップS421でYES)、処理はステップS424に進む。一方、制御部2は、ノイズデータ特定処理S41において平均血圧値ART(N)がノイズデータとして特定されなかったと判定した場合(ステップS421でNO)、ノイズデータ特定処理S41において、平均血圧値ART(N−1)と平均血圧値ART(N+1)の両方がノイズデータとして特定されたかどうかを判定する(ステップS422)。制御部2は、ノイズデータ特定処理S41において、平均血圧値ART(N−1)と平均血圧値ART(N+1)の両方がノイズデータとして特定されたと判定した場合(ステップS422でYES)、平均血圧値ART(N)をノイズデータとして特定する(ステップS423)。その後、処理はステップS424に進む。
【0048】
ステップS424において、制御部2は、平均血圧データの配列番号NがNLast(=135)であるかどうか判定する。制御部2は、平均血圧データの配列番号NがNLastでないと判定した場合(ステップS424でNO)、配列番号Nが1つ増加した上で(ステップS425)、処理はステップS421に戻る。一方、制御部2は、平均血圧データの配列番号NがNLastであると判定した場合(ステップS424でYES)、図7に示す平均血圧値許容範囲に基づいたノイズデータ特定処理S43を実行する。
【0049】
本実施形態によれば、ノイズデータ特定処理S41では、平均血圧値ART(N)の第1増減率ΔART1(N)と第2増減率ART2(N)が増減率許容範囲内であるため、当該平均血圧値ART(N)はノイズデータとして特定されない。一方で、本ノイズデータ特定処理S42では、平均血圧値ART(N)が取得される直前に取得された平均血圧値ART(N−1)と平均血圧値ART(N)が取得された直後に取得された平均血圧値ART(N+1)がノイズデータとして特定されている場合、当該平均血圧値ART(N)はノイズデータとして特定される。尚、平均血圧値ART(1)とART(135)については、当該ノイズデータ特定処理S42は実行されない。
【0050】
次に、図7に示す平均血圧値許容範囲(バイタル値許容範囲の一例)に基づいたノイズデータ特定処理S43について図10を参照して説明する。図10に示すように、ステップS430において、制御部2は、平均血圧データの配列番号Nを1に設定する。次に、ステップS431において、制御部2は、ノイズデータ特定処理S41及びS42において平均血圧値ART(N)がノイズデータとして特定されたかどうかを判定する(ステップS431)。制御部2は、ノイズデータ特定処理S41及びS42において平均血圧値ART(N)がノイズデータとして特定されたと判定した場合(ステップS431でYES)、処理はステップS434に進む。一方、制御部2は、ノイズデータ特定処理S41及びS42において平均血圧値ART(N)がノイズデータとして特定されなかったと判定した場合(ステップS431でNO)、平均血圧値ART(N)が平均血圧値許容範囲内(バイタル値許容範囲の一例)であるかどうかを判定する(ステップS432)。例えば、平均血圧値許容範囲が0より大きく200よりも小さい場合、制御部2は、平均血圧値ART(N)が0<ART(N)<200であるかどうかを判定する。
【0051】
また、制御部2は、操作者からの入力操作に従って、当該平均血圧値許容範囲を変更してもよい。例えば、操作者が、図6に示すバイタルデータ設定ウィンドウ35に表示された自動調整の閾値(図6では、上限閾値:200、下限閾値:0)を所定の操作(増減ボタンに対するクリック操作又はキーボートを通じた数値入力)を通じて変更したとき、制御部2は、操作者からの所定の操作に対応した操作信号に応じて、平均血圧値許容範囲を変更する。例えば、バイタルデータ設定ウィンドウ35に表示された上限閾値が180であると共に、下限閾値が30である場合、制御部2は、平均血圧値許容範囲を30より大きく180よりも小さい範囲に設定した上で、平均血圧値ART(N)が30<ART(N)<180であるかどうかを判定する。
【0052】
次に、図10に示すステップS432において、制御部2は、平均血圧値ART(N)が平均血圧値許容範囲内ではないと判定した場合(ステップS432でNO)、平均血圧値ART(N)をノイズデータとして特定する(ステップS433)。一方、制御部2は、平均血圧値ART(N)が平均血圧値許容範囲内であると判定した場合(ステップS432でYES)、平均血圧データの配列番号NがNLast(=135)であるかどうか判定する。制御部2は、平均血圧データの配列番号NがNLastでないと判定した場合(ステップS434でNO)、配列番号Nが1つ増加した上で(ステップS435)、処理はステップS431に戻る。一方、制御部2は、平均血圧データの配列番号NがNLastであると判定した場合(ステップS434でYES)、ノイズデータ特定処理S4が終了する。
【0053】
このように、本実施形態のノイズデータ特定処理S4は、増減率に基づいたノイズデータ特定処理S41と、前後の平均血圧値に基づいたノイズデータ特定処理S42と、平均血圧値許容範囲に基づいたノイズデータ特定処理S43の3つの処理により構成される。これら3つの処理を通じてノイズデータとして特定されなかった平均血圧値ART(N)は、正常なデータとして特定される。制御部2は、正常なデータとして特定された平均血圧値ART(N)に基づいてデータ上限線25とデータ下限線26を生成する。
【0054】
尚、ノイズデータ特定処理S4は、増減率に基づいたノイズデータ特定処理S41のみから構成されてもよいし、または増減率に基づいたノイズデータ特定処理S41と前後の平均血圧値に基づいたノイズデータ特定処理S42から構成されてもよい。さらに、ノイズデータ特定処理S4は、平均血圧値許容範囲に基づいたノイズデータ特定処理S43のみから構成されてもよい。この場合、ノイズデータ特定処理S43において、ステップS431が省略される。
【0055】
本実施形態によれば、増減率に基づいたノイズデータ特定処理S41において、平均血圧値ART(N)の第1増減率ΔART1(N)と第2増減率ΔART2(N)が算出され、第1増減率ΔART1(N)と第2増減率ΔART2(N)のうち少なくとも一方が増減率許容範囲外であると判定された場合に、当該平均血圧値ART(N)がノイズデータとして特定される。このように、各平均血圧値の第1増減率と第2増減率に着目することで、ノイズデータを比較的精度高く決定することができる。
【0056】
また、操作者からの入力操作に従って、増減率許容範囲が変更されるので、病院毎に最適な増減率許容範囲を設定することができる。また、平均血圧等のバイタルデータの種類毎に増減率許容範囲を変更することで、バイタルデータの種類毎に最適なノイズ判定を行うことができると共に、バイタルデータのノイズ判定精度をバイタルデータの種類毎に適宜カスタマイズすることが可能となる。
【0057】
また、本実施形態によれば、平均血圧値許容範囲に基づいたノイズデータ特定処理S43において、平均血圧値ART(N)が平均血圧値許容範囲内でないと判定された場合、平均血圧値ART(N)がノイズデータとして特定される。このように、比較的簡単な手法により平均血圧データのノイズデータが特定されるので、表示装置1の演算負荷を低減させることができる。
【0058】
また、操作者からの入力操作に従って、平均血圧値許容範囲が変更されるので、病院毎に最適な平均血圧値許容範囲を設定することができる。また、平均血圧値等のバイタルデータの種類毎に平均血圧値許容範囲を変更することで、バイタルデータの種類毎に最適なノイズ判定を行うことができると共に、バイタルデータのノイズ判定精度をバイタルデータの種類毎に適宜カスタマイズすることが可能となる。
【0059】
また、本実施形態に係る表示装置1をソフトウェアによって実現するためには、生体情報表示プログラムが記憶部3又はROMに予め組み込まれていてもよい。または、生体情報表示プログラムは、磁気ディスク(HDD、フロッピーディスク)、光ディスク(CD−ROM,DVD−ROM、Blu−rayディスク等)、光磁気ディスク(MO等)、フラッシュメモリ(SDカード、USBメモリ、SSD等)等のコンピュータ読取可能な記憶媒体に格納されていてもよい。この場合、表示装置1に設けられたディスクドライブ等によって記憶媒体に格納された生体情報表示プログラムが読み込まれることで、当該生体情報表示プログラムが、記憶部3に組み込まれる。そして、記憶部3に組み込まれた当該プログラムがRAM上にロードされて、プロセッサがRAM上にロードされた当該プログラムを実行する。このように、図3に示す生体情報表示方法が実行される。
【0060】
また、生体情報表示プログラムは、通信ネットワーク上のコンピュータからネットワークインターフェース4を介してダウンロードされてもよい。この場合も同様に、ダウンロードされた当該プログラムが記憶部3に組み込まれる。
【0061】
以上、本発明の実施形態について説明をしたが、本発明の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではない。本実施形態は一例であって、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【0062】
また、本実施形態では、バイタルデータの最悪値の一例として平均血圧データの最低値と最高値を容易に決定することができる表示装置1について説明した。しかしながら、本実施形態に表示装置1は、他のバイタルデータの最悪値を容易に決定するように構成されてもよい。例えば、表示装置1は、最高血圧データ、体温データ、心拍数データ及び呼吸数データ等のバイタルデータの最悪値を容易に決定することができるように構成されてもよい。これらのバイタルデータは、複数のバイタル値と、複数のバイタル値が測定された複数の測定時刻とを有し、複数のバイタル値の各々が複数の測定時刻の対応する一つと関連付けられている
【符号の説明】
【0063】
1:生体情報表示装置(表示装置)
2:制御部
3:記憶部
4:ネットワークインターフェース
5:表示部
6:入力操作部
8:バス
20:バイタルデータ表示ウィンドウ
21:トレンドグラフ
22:最高値選択リスト
23:最低値選択リスト
24:リスト
25:データ上限線
26:データ下限線
27:最高値特定マーク
28:最低値特定マーク
29:自動調整ボタン
30:設定変更ボタン
32:上限線移動コマンドボタン
33:下限線移動コマンドボタン
35:バイタルデータ設定ウィンドウ


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10