特許第6768391号(P6768391)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6768391
(24)【登録日】2020年9月25日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】開口カバー及び航空機
(51)【国際特許分類】
   B64C 1/14 20060101AFI20201005BHJP
   B64D 33/02 20060101ALN20201005BHJP
【FI】
   B64C1/14
   !B64D33/02
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-146361(P2016-146361)
(22)【出願日】2016年7月26日
(65)【公開番号】特開2018-16132(P2018-16132A)
(43)【公開日】2018年2月1日
【審査請求日】2019年4月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梶山 修作
(72)【発明者】
【氏名】小池 宏樹
【審査官】 長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06138950(US,A)
【文献】 特開2000−095195(JP,A)
【文献】 特開平01−297394(JP,A)
【文献】 特開平07−257492(JP,A)
【文献】 特開平11−301595(JP,A)
【文献】 米国特許第04252286(US,A)
【文献】 特開平05−213281(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 1/14
B64D 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機の内部と外部との間で流体が流通する開口部に設けられる開口カバーであって、
平坦な鋼板で形成されたカバー本体と、
前記カバー本体に貫通形成される複数の貫通孔と、を備え、
前記カバー本体は、前記カバー本体へ向かって流入する前記流体の流入方向に直交する直交面に対して傾斜して設けられ、
前記貫通孔の貫通方向は、前記流体の流入方向と、同じ方向となっており、
複数の前記貫通孔は、所定の内径となる中空円柱形状となっており、
前記内径は、前記貫通方向に亘って同径となっていることを特徴とする開口カバー。
【請求項2】
前記開口部は、前記流体としての外気を取り込む外気取入口、及び前記流体としての排気を排出する排気口の少なくとも一方であることを特徴とする請求項1に記載の開口カバー。
【請求項3】
複数の前記貫通孔は、千鳥配置となっていることを特徴とする請求項1または2に記載の開口カバー。
【請求項4】
前記貫通孔の前記内径は、前記カバー本体の板厚よりも小さくなっていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の開口カバー。
【請求項5】
請求項1からのいずれか1項に記載の開口カバーを備えることを特徴とする航空機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機の開口部に設けられる開口カバー及び航空機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、超音速の空気流を取り入れる取入口を備える航空機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−213281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
航空機の取入口等の開口部には、この開口部を被覆する開口カバーを設ける場合がある。開口部に開口カバーを設ける場合、開口カバーは、空気を流通させるための貫通孔が形成されたものが用いられており、例えば、パンチングメタルが用いられる。パンチングメタルは、鋼板に貫通孔を形成したものであり、貫通孔の貫通方向と、鋼板の板厚方向とが同じ方向となっている。
【0005】
ところで、開口カバーを開口部に設ける場合、開口カバーは、空気の流入方向に対して、斜めに設けられることがある。この場合、開口カバーの板面は、空気の流入方向に直交する直交面に対して傾斜することから、上記のパンチングメタルを用いると、空気の流入方向に対して、貫通孔の貫通方向が斜めとなってしまう。このため、開口部において圧力損失が生じることから、空気を効率よく取り込むことが困難となり、航空機の性能が低下する可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は、航空機の開口部における圧力損失を低減することができる開口カバー及び航空機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の開口カバーは、航空機の内部と外部との間で流体が流通する開口部に設けられる開口カバーであって、カバー本体と、前記カバー本体に貫通形成される複数の貫通孔と、を備え、前記カバー本体は、前記カバー本体へ向かって流入する前記流体の流入方向に直交する直交面に対して傾斜して設けられ、前記貫通孔の貫通方向は、前記流体の流入方向と、同じ方向となっていることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、カバー本体が流入方向に対して傾斜して設けられる場合であっても、複数の貫通孔が、流体の流入方向と同じ方向となっているため、流体の流通を阻害し難いものとすることができ、これにより、航空機の開口部における圧力損失を低減することができる。
【0009】
また、前記開口部は、前記流体としての外気を取り込む外気取入口、及び前記流体としての排気を排出する排気口の少なくとも一方であることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、外気取入口における外気の圧力損失を低減することができるため、外気を効率よく取り込むことができる。また、排気口における排気の圧力損失を低減することができるため、排気を効率よく排出することができる。
【0011】
また、複数の前記貫通孔は、千鳥配置となっていることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、複数の貫通孔を千鳥配置とすることで、カバー本体に対する複数の貫通孔の開口率を大きくし易いものとすることができる。このため、複数の貫通孔の開口率が低くなることを抑制できることから、圧力損失の増大を抑制することができる。なお、複数の貫通孔は、カバー本体に対して均等配置することがより好ましく、また、千鳥配置としては、60°千鳥配置が好ましい。
【0013】
また、複数の前記貫通孔は、所定の内径となる中空円柱形状となっており、前記内径は、前記貫通方向に亘って同径となっていることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、ドリル等の穿孔工具を用いて、カバー本体に対し各貫通孔を容易に加工することができる。
【0015】
また、前記貫通孔の前記内径は、前記カバー本体の板厚よりも小さくなっていることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、カバー本体の板厚を貫通孔の内径よりも厚くできるため、カバー本体の剛性を高くすることができる。このため、流体の流速が速く、流体からカバー本体に力が与えられても、カバー本体が変形することを抑制することができる。
【0017】
本発明の航空機は、上記の開口カバーを備えることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、開口部に開口カバーを設ける場合であっても、開口部における圧力損失を低減することができるため、圧力損失による航空機の性能低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本実施形態に係る開口カバーが取り付けられた航空機を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、開口カバーを模式的に示す平面図である。
図3図3は、航空機の外気取入口周りを模式的に示す断面図である。
図4図4は、開口カバーの一部を示す平面図である。
図5図5は、開口カバーを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能であり、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせることも可能である。
【0021】
[実施形態]
図1は、本実施形態に係る開口カバーが取り付けられた航空機を模式的に示す斜視図である。図2は、開口カバーを模式的に示す平面図である。図3は、航空機の外気取入口周りを模式的に示す断面図である。図4は、開口カバーの一部を示す平面図である。図5は、開口カバーを模式的に示す断面図である。
【0022】
本実施形態の開口カバー10は、航空機1に設けられる開口部を覆うように配置されている。航空機1の開口部としては、例えば、航空機1の空気調和装置に外気を取り込むための外気取入口、及び、航空機1の空気調和装置からの排気を排出するための排気口がある。本実施形態において、開口カバー10は、航空機1に設けられる外気取入口5を覆うように配置されている。なお、本実施形態では、航空機1の開口部として、外気取入口5に適用して説明するが、排気口に適用してもよく、特に限定されない。
【0023】
図1に示すように、開口カバー10は、板状に形成されており、航空機1の機首から機尾を結ぶ前後方向、つまり、ロール軸の軸方向に対して傾斜して配置されている。つまり、開口カバー10の板面(表面及び裏面)は、前後方向に直交する直交面に対して傾斜する傾斜面となっている。なお、開口カバー10は、航空機1の左右を結ぶ左右方向、つまり、ロール軸の軸方向に直交するピッチ軸の軸方向に直交する直交面に対して傾斜して配置されてもよい。そして、外気取入口5に取り込まれる外気は、前後方向に沿って流通すると共に、航空機1の外部から、開口カバー10が取り付けられた外気取入口5を介して、航空機1の内部へ向かって流通する。なお、ロール軸の軸方向となる前後方向に直交するヨー軸の軸方向を、高さ方向とする。
【0024】
図2に示すように、開口カバー10は、カバー本体11と、複数の貫通孔12と、複数の締結孔13とを備えており、例えば、パンチングメタルが用いられている。
【0025】
カバー本体11は、例えば、鋼板を用いて構成されており、外気取入口5の全面を被覆可能な形状に形成されている。カバー本体11は、航空機1に対して外側の面が表面側となり、外気がカバー本体11へ向かって流入する流入側の面となっている。また、カバー本体11は、航空機1に対して内側の面が裏面側となり、外気がカバー本体11から流出する流出側の面となっている。そして、カバー本体11は、その表面及び裏面が平行となっており、また、表面及び裏面を含む板面が、流入方向に直交する直交面に対して、非平行となる傾斜面となっている。また、カバー本体11は、その外側の周縁部が、外気取入口5に取り付けられる枠状の外枠部位11aとなっている。
【0026】
複数の貫通孔12は、カバー本体11に形成されており、カバー本体11の外枠部位11aの内側となる内側部位11bに形成されている。複数の貫通孔12は、カバー本体11に貫通形成されている。各貫通孔12は、カバー本体11が外気取入口5に取り付けられた状態において、貫通孔12の貫通方向が、外気の流入方向と同じ方向となるように形成されている。具体的に、貫通孔12の貫通方向は、前後方向となっている。このため、図5に示すように、各貫通孔12は、カバー本体11の板面に対する垂線方向に対して、斜めに貫通形成されている。
【0027】
複数の貫通孔12は、図4に示すように、千鳥配置となっている。つまり、複数の貫通孔12は、所定の方向に並べて配置された一列の貫通孔を複数列並べて設け、隣接する一方の列の貫通孔12同士の間に、隣接する他方の列の貫通孔12が位置するように配置されている。このため、複数の貫通孔12は、60°千鳥配置なっている。また、複数の貫通孔12は、カバー本体11に対して均等となるように配置されている。つまり、複数の貫通孔12は、その粗密の度合いがカバー本体11に対して一定となっている。
【0028】
各貫通孔12は、所定の内径となる中空円柱形状となっており、貫通方向に亘って同じ内径となっている。つまり、各貫通孔12は、ストレート孔となっている。この貫通孔12は、カバー本体11に対して、ドリル等の穿孔工具により機械加工されることにより貫通形成される。また、各貫通孔12は、その内径が、カバー本体11の板厚よりも小さくなるように形成されている。
【0029】
このような、複数の貫通孔12は、所定の開口率となるように、カバー本体11に形成されている。なお、開口率は、カバー本体11に対する複数の貫通孔12の開口の割合である。ここで、複数の貫通孔12は、千鳥配置となっていることから、貫通孔12が形成されない領域を小さくでき、開口率を大きくし易いものとすることができる。
【0030】
複数の締結孔13は、カバー本体11の外枠部位11aに設けられており、ボルト等の締結部材が挿入される貫通孔となっている。締結孔13は、貫通孔12よりも大きく形成されている。複数の締結孔13は、外枠部位11aに所定の間隔を空けて並べて形成されている。
【0031】
上記の開口カバー10は、航空機1の外気取入口5に、締結孔13を介してカバー本体11の外枠部位11aが取り付けられる。この状態において、開口カバー10は、カバー本体11の内側部位11bに形成される複数の貫通孔12が、外気の流入方向と同じ方向となる。このため、外気が開口カバー10を介して航空機1の内部に流入する場合、外気は、流入方向と同じ方向となる貫通孔12を流通する。
【0032】
以上のように、本実施形態によれば、カバー本体11が流入方向に対して傾斜して設けられる場合であっても、複数の貫通孔12が、外気の流入方向と同じ方向となっているため、外気の流通を阻害し難いものとすることができる。これにより、航空機1の外気取入口5における圧力損失を低減することができるため、外気を効率よく取り込むことができる。そして、外気を効率よく取り込むことで、空気調和装置の作動効率を向上させることができ、航空機1に搭載されている電子機器等の冷却を好適に行うことができる。
【0033】
また、本実施形態によれば、複数の貫通孔12を千鳥配置とすることで、カバー本体11に対する複数の貫通孔12の開口率を大きくし易いものとすることができる。このため、複数の貫通孔12の開口率が低くなることを抑制できることから、開口カバー10における圧力損失の増大を抑制することができる。
【0034】
また、本実施形態によれば、貫通孔12を中空円柱形状としたため、カバー本体11に対して各貫通孔12を容易に加工することができる。
【0035】
また、本実施形態によれば、カバー本体11の板厚を貫通孔12の内径よりも厚くできるため、カバー本体11の剛性を高くすることができる。このため、外気の流速が速く、外気からカバー本体11に力が与えられても、カバー本体11が変形することを抑制することができる。
【0036】
また、本実施形態によれば、外気取入口5に取り付けられた開口カバー10における圧力損失を低減することができるため、圧力損失による航空機1の性能低下を抑制することができる。
【0037】
なお、本実施形態では、開口カバー10を航空機1の外気取入口5に取り付ける場合について説明したが、本実施形態の開口カバー10を、航空機1の空気調和装置からの排気を排出する排気口に取り付けてもよい。この場合、航空機1の排気口における排気の圧力損失を低減することができるため、排気を効率よく排出することができることから、圧力損失による航空機1の性能低下を抑制することができる。なお、開口カバー10は、航空機1に設けられる開口部であれば、いずれに設けてもよい。
【0038】
また、本実施形態では、各貫通孔12をストレート孔に形成したが、これに限定されず、各貫通孔12の内径を、外気の流入方向に沿って大きくなるように形成してもよい。
【0039】
また、本実施形態では、鋼板のカバー本体11に複数の貫通孔12を形成した、いわゆるパンチングメタルを用いたが、この構成に特に限定されず、ハニカム材を用いてもよい。この場合、貫通孔12は、中空六角柱形状となる。
【符号の説明】
【0040】
1 航空機
5 外気取入口
10 開口カバー
11 カバー本体
11a 外枠部位
11b 内側部位
12 貫通孔
13 締結孔
図1
図2
図3
図4
図5