(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電動モータ駆動機構を内部に収容する筒状の第1ハウジングと、前記第1ハウジングの内側に同心状に配置され、且つ、前記電動モータ駆動機構に接続されたスピンドル駆動機構によって前記第1ハウジングに対して軸方向に相対移動される第2ハウジングと、を備えた車両用ドア開閉装置において、
前記スピンドル駆動機構は、
基端部が前記電動モータ駆動機構に連結された螺子スピンドルと、
該螺子スピンドルに螺合し、前記螺子スピンドルの回転に応じて前記螺子スピンドルの軸方向にスライドするプッシュロッドナットと、
基端部に前記プッシュロッドナットが一体的に設けられ、先端部が前記第2ハウジングに連結された筒状のプッシュロッドと、
該プッシュロッドを収容し、前記第1ハウジングに一体的に連結された筒状のプッシュロッドガイドと、
前記螺子スピンドルに設けられ、前記プッシュロッド内で前記螺子スピンドルと共に回転し、前記プッシュロッドの直線移動をガイドするスピンドルロータと、
前記プッシュロッドガイドから径方向内側へ突出され、伸長位置において前記プッシュロッドナットが当接することで前記プッシュロッドの先端側への移動を規制するストッパと、
を含んで構成され、
前記スピンドルロータが、前記ストッパに対して前記螺子スピンドルの先端側に離間して配置され、
前記螺子スピンドルの先端部は、前記プッシュロッドが収縮位置にあるときに前記第2ハウジングの端部に当接せず、且つ、前記ストッパに対して軸方向に離間して設けられ、前記プッシュロッドが伸長位置にあるときに、前記ストッパに当接した前記プッシュロッドナットの前記螺子スピンドルの先端側と前記スピンドルロータの前記螺子スピンドルの基端側との間に余裕量が形成されるように設定されていることを特徴とする車両用ドア開閉装置。
前記プッシュロッドナットに前記プッシュロッドの外径よりも突出して形成された外縁部を設け、前記プッシュロッドが伸長位置にあるときに前記外縁部が前記ストッパに当接される構成としたことを特徴とした請求項1に記載の車両用ドア開閉装置。
前記プッシュロッドナットの外縁部と前記プッシュロッドガイドの内周面との間に前記外縁部が前記内周面を摺動しながら移動可能なクリアランスが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用ドア開閉装置。
前記スピンドルロータの外周面と前記プッシュロッドの内周面との間に前記外周面が前記内周面を摺動しながら回転可能なクリアランスが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用ドア開閉装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の車両用ドア開閉装置では、スピンドルナットが螺子スピンドルとねじ結合される構造であり、しかも、第2ハウジングが伸長位置にある状態では、螺子スピンドルの先端部のストッパとスピンドルナットの端面との間の距離が短いために、螺子スピンドルとスピンドルナットとの螺合によるガタつきが発生するという問題があった。
【0006】
また、特許文献1に記載の車両用ドア開閉装置では、螺子スピンドルの先端部に設けられたローター(スピンドルロータ)にスピンドルナットが衝突することにより、支持部材が伸長位置で停止する構造であったため、伸長位置からさらにドアが開方向に動かされ、螺子スピンドルの軸方向に過負荷がかかった場合には、螺子スピンドルを回転保持するボールベアリングが破損する恐れがあった。
【0007】
さらに、ローターに過負荷が加わった場合でも破損しないようにするためには、螺子スピンドルにローターを強固に固定する複雑な構造を設けなければならなかった。したがって、ローターや螺子スピンドルに過負荷を生じ難くさせる構造にすることが望ましい。
【0008】
そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、プッシュロッドが伸長位置にあるときに、螺子スピンドルとスピンドルナットとの螺合ガタによるガタつきを低減させると共に、スピンドルロータや螺子スピンドルに過負荷を生じ難くさせることができる車両用ドア開閉装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
形態1;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、電動モータ駆動機構を内部に収容する筒状の第1ハウジングと、前記第1ハウジングの内側に同心状に配置され、且つ、前記電動モータ駆動機構に接続されたスピンドル駆動機構によって前記第1ハウジングに対して軸方向に相対移動される第2ハウジングと、を備えた車両用ドア開閉装置において、前記スピンドル駆動機構は、基端部が前記電動モータ駆動機構に連結された螺子スピンドルと、該螺子スピンドルに螺合し、前記螺子スピンドルの回転に応じて前記螺子スピンドルの軸方向にスライドするプッシュロッドナットと、基端部に前記プッシュロッドナットが一体的に設けられ、先端部が前記第2ハウジングに連結された筒状のプッシュロッドと、該プッシュロッドを収容し、前記第1ハウジングに一体的に連結された筒状のプッシュロッドガイドと、前記螺子スピンドルに設けられ、前記プッシュロッド内で前記螺子スピンドルと共に回転し、前記プッシュロッドの直線移動をガイドするスピンドルロータと、前記プッシュロッドガイドから径方向内側へ突出され、伸長位置において前記プッシュロッドナットが当接することで前記プッシュロッドの先端側への移動を規制するストッパと、を含んで構成され、前記スピンドルロータが、前記ストッパに対して前記螺子スピンドルの先端側に離間して配置されている。
【0010】
形態2;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記プッシュロッドナットに前記プッシュロッドの外径よりも突出して形成された外縁部を設け、前記プッシュロッドが伸長位置にあるときに前記外縁部が前記ストッパに当接される構成とした車両用ドア開閉装置を提案している。
【0011】
形態3;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記プッシュロッドナットの外縁部と前記プッシュロッドガイドの内周面との間に前記外縁部が前記内周面を摺動しながら移動可能なクリアランスが設けられている車両用ドア開閉装置を提案している。
【0012】
形態4;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記スピンドルロータの外周面と前記プッシュロッドの内周面との間に前記外周面が前記内周面を摺動しながら回転可能なクリアランスが設けられている車両用ドア開閉装置を提案している。
【0013】
形態5;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記螺子スピンドル先端部は、前記プッシュロッドが収縮位置にあるときに前記第2ハウジングの端部に当接せず、且つ、前記ストッパに対して軸方向に離間して設けられ、前記プッシュロッドが伸長位置にあるときに前記ストッパに当接した前記プッシュロッドナットと前記スピンドルロータとの間に余裕量が形成されるように設定されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の1またはそれ以上の実施形態によれば、プッシュロッドが伸長位置にあるときに、螺子スピンドルとスピンドルナットとの螺合ガタによるガタツキを低減させると共に、スピンドルロータや螺子スピンドルに過負荷を生じ難くさせることができるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、
図1〜
図3を用いて本発明の実施形態に係る車両用ドア開閉装置1(以下、単に「ドア開閉装置1」と称する)について説明する。
【0017】
<実施形態>
図1は、本実施形態に係るドア開閉装置1が作動して、車両用ドアが開位置にある状態の自動車V(車両)の後部ドアDを例示している。この図に示されるように、後部ドアDは自動車Vの後端部に設けられており、後部ドアDの上端部が、自動車Vの車幅方向を軸方向にして自動車VのボディB(車体)に回動可能に連結されている。これにより、後部ドアDが自動車Vのドア開口部B1を開閉可能に構成されている。ドア開閉装置1は、全体として略長尺円柱状に形成されている。そして、ドア開閉装置1の軸方向一端部(基端部)が、第1の傾斜結合部2によって、ボディB(詳しくは、ドア開口部B1の車両右側の側部)に結合されており、ドア開閉装置1の軸方向他端部(先端部)が、第2の傾斜結合部3によって、後部ドアDの車室内側の右端部に結合されている。そして、ドア開閉装置1が作動することで、後部ドアDがドア開口部B1を開閉するようになっている。
【0018】
<車両用ドア開閉装置の構成>
図2に示すように、ドア開閉装置1は、全体として略長尺円柱状に形成されている。なお、
図2において示される矢印AL1側は、ドア開閉装置1の軸方向一方側(基端側)を示しており、矢印AL2側は、ドア開閉装置1の軸方向他方側(先端側)を示している。
【0019】
ドア開閉装置1は、ドア開閉装置1の外郭を構成する「第1ハウジング」としてのメインハウジング4を有しており、メインハウジング4は、樹脂製とされると共に、略円筒状に形成されている。また、ドア開閉装置1は、「第2ハウジング」としてのスプリングカバー29を有しており、スプリングカバー29は、ドア開閉装置1の軸方向一方側へ開放された略有底円筒状に形成されている。このスプリングカバー29の直径は、メインハウジング4の直径よりも小さく設定されており、スプリングカバー29が、メインハウジング4と同心状に配置されると共に、メインハウジング4内に相対移動可能に収容されている。なお、
図2に示されるスプリングカバー29の収容状態は、ドア開閉装置1の初期状態であり、以下、この状態における位置を「収縮位置(初期位置)」と称する。そして、ドア開閉装置1の作動時に、スプリングカバー29がメインハウジング4に対して軸方向に相対移動することで、ドア開閉装置1(の長手方向の全長)が、伸縮されるようになっている。
【0020】
メインハウジング4の軸方向一端部には、前述した第1の傾斜結合部2の一部を構成する樹脂製の第1のボールソケット2Aが設けられおり、第1のボールソケット2Aは、メインハウジング4の軸方向一端部に、超音波溶着によって固定されている。これにより、メインハウジング4の軸方向一端部が、第1のボールソケット2Aを介してボディBに連結されている。すなわち、第1のボールソケット2Aが、ボディB側に設けられた図示しない球状嵌合部(例えば、ボールスタッドの球頭部)に嵌合して、回動連結支点となるように構成されている。
【0021】
スプリングカバー29の軸方向他方側には、樹脂製の第2のボールソケット3Aが設けられており、第2のボールソケット3Aは、前述した第2の傾斜結合部3の一部を構成している。この第2のボールソケット3Aには、ボールソケットプッシュロッド30が、インサート成形によって一体に形成されている。ボールソケットプッシュロッド30は、スプリングカバー29の軸方向他端部(先端部)を貫通して、後述するプッシュロッド25にカシメ固定されている。さらに、第2のボールソケット3Aは、後述するアシストスプリング26の付勢力によって、スプリングカバー29の軸方向他端部(先端部)に相対移動不能に連結されている。これにより、後述するプッシュロッド25及びスプリングカバー29の軸方向他端部が、第2のボールソケット3Aを介して後部ドアDに連結されている。
【0022】
メインハウジング4の軸方向一方側の内部には、メインハウジング4の内部空間を軸方向に仕切る内壁4Aが一体に設けられており、内壁4Aは、メインハウジング4の軸方向を板厚方向として形成されている。そして、メインハウジング4の内部における内壁4Aに対して軸方向一方側の空間内には、電動モータ駆動機構6が収容されている。この電動モータ駆動機構6は、電動モータ8(広義には、「駆動部」として把握される要素である)及び伝達機構9を含んで構成されている。
【0023】
電動モータ8は、略円柱状のモータ本体8Aを有しており、モータ本体8Aがメインハウジング4と同軸上に配置されている。モータ本体8Aの軸方向一端部には、モータリテーナ10が装着されており、モータリテーナ10によって電動モータ8のモータ端子(図示省略)が保持されている。また、モータリテーナ10によってモータ本体8Aの径方向のガタツキが抑制された状態で、電動モータ8がメインハウジング4内に収容されている。さらに、モータリテーナ10に対して軸方向一方側には、防水用のグロメット33が設けられている。
【0024】
一方、電動モータ8の回転軸8Bは、モータ本体8Aに対して軸方向他方側へ突出されており、当該回転軸8Bには、後述する螺子スピンドル12に電動モータ8の回転力を伝達するための伝達機構9が連結されている。この伝達機構9は、ギア機構や騒音防止の揺動機構などで構成されたギアボックスとされている。なお、前述した内壁4A及び第1のボールソケット2Aによって、伝達機構9、電動モータ8、モータリテーナ10、及びグロメット33が、メインハウジング4の軸方向において、ガタつきなくメインハウジング4に収容されている。
【0025】
メインハウジング4における内壁4Aに対して軸方向他方側の空間内には、前述したスプリングカバー29及びスピンドル駆動機構11が収容されている。このスピンドル駆動機構11は、螺子スピンドル12と、プッシュロッドナット13と、プッシュロッドガイド19と、スピンドルロータ23と、プッシュロッド25とを含んで構成されている。
【0026】
螺子スピンドル12は、金属材(例えば、鋼材)で構成されると共に、メインハウジング4の軸方向を長手方向とする略長尺丸棒状に形成されて、メインハウジング4と同軸上に配置されている。この螺子スピンドル12の軸方向一方側の部分は、ボールベアリング14の内側部分にカシメ固定されて、ボールベアリング14に回転可能に支持されている。ボールベアリング14は、メインハウジング4の内壁4Aに対して軸方向他方側に隣接配置されて、メインハウジング4に固定されている。さらに、螺子スピンドル12の軸方向一端部が、前述した電動モータ駆動機構6の伝達機構9に連結されている。これにより、電動モータ8が作動することで(回転軸8Bが正転又は逆転することで)、螺子スピンドル12が、自身の軸回り一方側又は他方側に回転するようになっている。また、
図3に示されるように、螺子スピンドル12の長手方向中間部(具体的には、螺子スピンドル12の軸方向一端部(基端部)及び他端部(先端部)を除く部分)における外周部は、雄ねじ部12Aとされており、雄ねじ部12Aには、ねじが形成されている。これにより、本実施の形態における「螺子スピンドル12の先端部」とは、螺子スピンドル12の先端側の部分における雄ねじ部12Aが形成されていない部分をいう。
【0027】
図2及び
図3に示されるように、プッシュロッド25は、円管状に形成されており、スプリングカバー29と同軸上に配置されている。また、プッシュロッド25の直径は、スプリングカバー29の直径よりも小さく、且つ螺子スピンドル12の直径よりも大きく設定されている。すなわち、プッシュロッド25は、スプリングカバー29の内部に収容されると共に、螺子スピンドル12が、プッシュロッド25の内部に収容されている。なお、プッシュロッド25の軸方向他端部には、前述のように、ボールソケットプッシュロッド30がカシメ固定されており、プッシュロッド25及びスプリングカバー29が一体移動するように構成されている。
【0028】
プッシュロッドナット13は、樹脂材により構成され、プッシュロッド25の軸方向一端部に、インサート成形によって一体形成されている。具体的には、
図3に示されるように、プッシュロッドナット13は、プッシュロッド25の径方向内側に設けられ且つプッシュロッド25の内周面に一体形成されたナットインナ部13Aと、プッシュロッド25の径方向外側に設けられ且つプッシュロッド25の外周面に一体成形された「外縁部」としてのナットアウタ部13Bと、を含んで構成されている。また、プッシュロッドナット13は、ナットインナ部13Aとナットアウタ部13Bとを連結するための複数の連結部13Cを有しており、連結部13Cは、プッシュロッド25に形成されたインサート成形用孔部25A内を挿通している。
【0029】
ナットインナ部13Aは、円筒形状に形成されている。そして、ナットインナ部13Aの内周面が、雌ねじ部13A1とされており、雌ねじ部13A1には、螺子スピンドル12の雄ねじ部12Aと螺合するねじが形成されている。これにより、プッシュロッドナット13と螺子スピンドル12とが、ねじ結合されている。
【0030】
ナットアウタ部13Bは、円筒形状に形成されている。また、ナットアウタ部13Bの外周部には、径方向外側へ突出された複数のガイド突起13B1がプッシュロッド25の軸方向に延在されており、ガイド突起13B1は、ナットアウタ部13Bの周方向に所定間隔毎に配置されている。すなわち、ナットアウタ部13Bの外周面が、プッシュロッド25の軸方向から見て、凹凸状(スプライン状)に形成されている。また、ナットアウタ部13Bの先端面は、被当接面13B2とされており、被当接面13B2は、プッシュロッド25の軸方向に対して直交する面に沿って配置されている。
【0031】
図2に示されるように、プッシュロッドガイド19は、円筒状を成す樹脂製とされて、プッシュロッド25と同軸上に配置されている。具体的には、プッシュロッドガイド19は、プッシュロッド25の径方向外側で、且つスプリングカバー29の径方向内側に配置されている。このプッシュロッドガイド19の軸方向一端部は、径方向外側へ突出されたフランジ状に形成されると共に、ボールベアリング14に対して軸方向他方側に隣接配置されて、レーザ溶着によってメインハウジング4に固定されている。また、
図3に示されるように、プッシュロッドガイド19の軸方向他端(先端)は、螺子スピンドル12の軸方向他端(先端)に対して、軸方向一方側(基端側)に配置されている。すなわち、螺子スピンドル12の軸方向他端部(先端部)が、プッシュロッドガイド19(の先端)に対して軸方向他端側へ離間して配置されている。
【0032】
また、プッシュロッドガイド19の内周面は、プッシュロッドナット13(ナットアウタ部13B)の外周面に対応した凹凸形状に形成されている。換言すると、プッシュロッドガイド19の内周面には、ガイド突起13B1に係合する複数のガイド凹部19Aが軸方向に延在されている。そして、プッシュロッドナット13(ナットアウタ部13B)の外周面が、プッシュロッドガイド19の内周面に嵌合(スプライン嵌合)されて、プッシュロッドナット13がプッシュロッドガイド19に対して相対回転不能に、且つ軸方向に相対移動(摺動)可能に構成されている。すなわち、プッシュロッドナット13(ナットアウタ部13B)の外周面とプッシュロッドガイド19の内周面との間には、プッシュロッドナット13がプッシュロッドガイド19に対して摺動可能なクリアランスが形成されている。これにより、電動モータ8の駆動によって、螺子スピンドル12が軸回り一方側へ回転されると、プッシュロッドナット13(プッシュロッド25)が、プッシュロッドガイド19によってガイドされて、軸方向他方側(先端側であり、
図3の矢印AL2側)へ移動して収縮位置から伸長位置(
図3に示される位置)に配置される設定になっている。一方、螺子スピンドル12が軸回り他方側へ回転されると、プッシュロッドナット13(プッシュロッド25)が、プッシュロッドガイド19によってガイドされて、軸方向一方側(基端側であり、
図3の矢印AL1側)へ移動して伸長位置から収縮位置に配置される設定になっている。
【0033】
また、
図2に示されるように、プッシュロッドガイド19の径方向外側には、圧縮コイルスプリングとして構成されたアシストスプリング26が設けられており、アシストスプリング26は、スプリングカバー29の内部に収容されている。換言すると、アシストスプリング26の径方向内側に、プッシュロッドガイド19が配置されている。アシストスプリング26の一端部は、第1スプリングローテーションワッシャー27を介してボールベアリング14に係止されており、アシストスプリング26の他端部は、第2スプリングローテーションワッシャー28を介して、スプリングカバー29の軸方向他端部(先端部)に係止されている。これにより、アシストスプリング26の付勢力が、スプリングカバー29及びボールソケットプッシュロッド30を介して、プッシュロッド25に作用して、プッシュロッド25が先端側へ付勢されている。なお、スプリングカバー29が伸長位置に到達した状態においても、アシストスプリング26が圧縮変形した状態となるように、アシストスプリング26の自然長が設定されている。
【0034】
また、アシストスプリング26のばね定数は、電動モータ駆動機構6の非作動状態において、手動操作などにより、後部ドアDが部分的に開いた位置にされた場合に、後部ドアDが、アシストスプリング26に対抗する方向の摩擦力(例えば、スピンドル駆動装置、変速ユニット、およびブレーキ装置の摩擦力)によって開位置まで開くことなく、部分的に開いた状態に維持されるように設定されている。しかしながら、アシストスプリング26の付勢力によって後部ドアDの開動作が補助されるため、電動モータ駆動機構6を駆動させる際に必要な力は、比較的小さい力で済むようになっている。
【0035】
次に、本発明の要部である、ストッパ20及びスピンドルロータ23について説明する。
図3に示されるように、ストッパ20は、プッシュロッドガイド19の軸方向他端部に一体に形成され、プッシュロッドガイド19の径方向内側へ突出されると共に、プッシュロッドガイド19の周方向全周に亘って形成されている。すなわち、ストッパ20は、円環状(リング状)に形成されて、プッシュロッドガイド19の内周面に一体に設けられている。ストッパ20の周方向から見た断面は、略矩形状を成しており、ストッパ20の基端側(矢印AL1側)の面が、当接面20Aとされている。すなわち、当接面20Aが、プッシュロッドガイド19の軸方向に対して直交する面に沿って配置されて、当該軸方向において、プッシュロッドナット13(ナットアウタ部13B)の被当接面13B2と対向して配置されている。そして、電動モータ駆動機構6の駆動によって、プッシュロッドナット13が軸方向他方側へ移動して伸長位置に到達したときには、プッシュロッドナット13の被当接面13B2が、ストッパ20の当接面20Aに面で当接して、プッシュロッドナット13(すなわち、プッシュロッド25)の軸方向他方側への移動が制限(規制)されるようになっている。なお、ストッパ20の形状は円環状でなくてもよい。例えば、プッシュロッドガイド19の内周に半径方向で対称的に内壁側に突出した突部を複数設けた構成としてもよく、単数の突部でもよく、プッシュロッドナット13の軸方向の移動を規制できる構成であれば、本実施形態の構成に限定されるものではない。
【0036】
スピンドルロータ23は、樹脂製とされると共に、略円筒状に形成されて、螺子スピンドル12の先端部に一体回転可能に固定されている。このスピンドルロータ23の外径は、プッシュロッド25の内径に比べて僅かに小さく設定されており、スピンドルロータ23とプッシュロッド25との間には、スピンドルロータ23の外周面がプッシュロッド25の内周面上を摺動しながら回転できるクリアランスが形成されている。また、スピンドルロータ23の先端側には、螺子スピンドル12に係止されたEリング24が設けられており、スピンドルロータ23が螺子スピンドル12の先端側から抜けることをEリング24によって防止する構成になっている。
【0037】
また、スピンドルロータ23は、ストッパ20に対して、螺子スピンドル12の先端側へ離間して配置されている。具体的には、プッシュロッド25の伸長位置では、プッシュロッドナット13の被当接面13B2とスピンドルロータ23の基端面23A(矢印AL1側の端面)との間の間隔が、所定距離Lを有する構成とされている。そして、プッシュロッドナット13とスピンドルロータ23との間の間隔を、所定距離L(余裕量)を有するように設定することにより、プッシュロッド25に伸長時におけるプッシュロッドナット13と螺子スピンドル12との間の螺合ガタを、プッシュロッドナット13及びスピンドルロータ23によって有効に抑制する構成になっている。具体的には、スピンドルロータ23とプッシュロッド25との間のクリアランス及びプッシュロッドナット13とプッシュロッドガイド19とのクリアランスにより半径方向のガタツキを軸方向の所定の範囲(距離(L))の両端で抑制することによって、ガタツキを防止するための追加構成を設けることなくガタツキを防止することができる。なお、この所定の間隔(余裕量)は、後部ドアDが閉状態(プッシュロッドが収縮位置)のときに、螺子スピンドル12の先端部と第2のボールソケット3Aのボールソケットプッシュロッド30の内端部が干渉しない長さであれば、大きいほどその効果がある。
【0038】
また、ストッパ20の当接面20Aの反対側(詳しくは、ストッパ20とスピンドルロータ23との間)には、プッシュロッド25の径方向外側において、「隙詰め部材」としてのXリング21が設けられている。Xリング21は、弾性を有すると共に、略円環状(リング状)に形成されており、Xリング21の周方向から見た断面が、X字形状に形成されている。このXリング21は、圧縮変形した状態で、プッシュロッド25の外周面と、プッシュロッドガイド19の内周面との間に配置されている。すなわち、Xリング21が、プッシュロッド25の外周面及びプッシュロッドガイド19の内周面に密着した状態で配置されている。これにより、Xリング21が、スピンドルロータ23と共に、プッシュロッド25の半径方向のガタツキを抑制する構成となっている。なお、Xリング21に対して、プッシュロッドガイド19の先端側には、プッシュロッドリテーナー22が設けられており、プッシュロッドリテーナー22は、Xリング21のプッシュロッドガイド19の先端側への抜けを防止する部材とされている。
【0039】
(作用及び効果)
次に、ドア開閉装置1の動作を説明しつつ、本実施の形態の作用及び効果について説明する。上記のように構成されたドア開閉装置1では、
図2に示される状態がドア開閉装置1の初期状態とされて、ドア開閉装置1が収縮位置(初期位置)に配置されている。そして、ドア開閉装置1の収縮位置(初期位置)では、自動車Vの後部ドアDは閉じており、アシストスプリング26は、最大のプレストレス(圧縮応力)を受けている。
【0040】
自動車Vの後部ドアDを開ける場合には、図示しないドアスイッチなどにより電動モータ駆動機構6を起動(作動)させて、螺子スピンドル12を回転駆動させる。具体的には、電動モータ8の駆動によって螺子スピンドル12が自身の軸回り一方側へ回転すると、螺子スピンドル12の雄ねじ部12Aに螺合されたプッシュロッドナット13がプッシュロッドガイド19のガイド凹部19Aに沿って先端側へ移動する。このため、プッシュロッド25及びスプリングカバー29が、プッシュロッドナット13と共にプッシュロッドガイド19の先端側へ移動する。すなわち、ドア開閉装置1の全長が長くなるように、スプリングカバー29がメインハウジング4から伸長される。
【0041】
このとき、アシストスプリング26は、スプリングカバー29を軸方向他方側(先端側)へ付勢しているため、後部ドアDの開駆動を補助(アシスト)する。そして、後部ドアDが開位置に達したことを電動モータ駆動機構6における回転数により判断するか、又は、ホールセンサやリミットスイッチなどのストロークセンサによる位置検出により、電動モータ駆動機構6の作動が停止されるまで、後部ドアDの開位置への開動作が継続される。また、スプリングカバー29がメインハウジング4から伸長されるときには、スプリングカバー29はアシストスプリング26の周囲を取り囲むように位置しているので、アシストスプリング26の径方向への座屈が防止される。
【0042】
一方、開位置の後部ドアDを閉じる場合には、電動モータ駆動機構6を起動(作動)させて、螺子スピンドル12を回転駆動させる。具体的には、電動モータ8の駆動によって螺子スピンドル12が自身の軸回り他方側へ回転すると、螺子スピンドル12の雄ねじ部12Aに螺合されたプッシュロッドナット13がプッシュロッドガイド19のガイド凹部19Aに沿って基端側へ移動する。このため、プッシュロッド25及びスプリングカバー29が、プッシュロッドナット13と共にプッシュロッドガイド19の基端側へ移動する。すなわち、ドア開閉装置1の全長が短くなるように、スプリングカバー29がメインハウジング4に対して退避される。
【0043】
また、後部ドアDの閉位置までの移動量を、電動モータ駆動機構6における電動モータ8の回転数により判断し、又は、ホールセンサやリミットスイッチなどのストロークセンサによる位置検出によって判別する。そして、判別された当該移動量に基づいて、電動モータ駆動機構6の作動が停止されるまで、後部ドアDの閉位置への閉動作が継続される。
【0044】
ここで、後部ドアDの開位置では、プッシュロッド25が伸長位置に到達して、プッシュロッドナット13の被当接面13B2が、プッシュロッドガイド19のストッパ20の当接面20Aに当接する。そして、この状態では、プッシュロッドナット13がストッパ20よりもプッシュロッド25の先端側に離間して配置されている。具体的には、プッシュロッドナット13の被当接面13B2からスピンドルロータ23の基端面23Aまでの距離が、所定距離Lとなっている。このため、プッシュロッド25の伸長時における、プッシュロッド25の径方向のガタツキ(振れ)を低減(抑制)することができる。
【0045】
すなわち、仮に、プッシュロッドナット13がストッパ20に対してプッシュロッド25の先端側に離間して配置されていない場合(換言すると、所定間隔Lが、略ゼロの場合)には、プッシュロッド25がストッパ20に対してプッシュロッド25の軸方向に隣接して配置される。これにより、プッシュロッド25のガタツキ(振れ)を低減(抑制)するためのプッシュロッドナット13及びプッシュロッド25が、軸方向に近接して配置されるため、プッシュロッド25に対するガタツキ(振れ)低減(抑制)効果が低下する。したがって、プッシュロッド25の伸長時において、プッシュロッド25が径方向にガタつき(振れて)、ひいては後部ドアDの開状態が不安定になる虞がある。
【0046】
これに対して、本実施の形態では、プッシュロッド25が伸長位置において、プッシュロッドナット13の被当接面13B2からスピンドルロータ23の基端面23Aまでの距離が、所定距離Lとなるように、プッシュロッドナット13とプッシュロッド25とが軸方向に間隔をあけて配置されている。このため、プッシュロッドナット13及びプッシュロッド25によるプッシュロッド25に対するガタツキ(振れ)低減(抑制)効果が有効に作用して、プッシュロッド25の伸長時における、プッシュロッド25の径方向のガタツキ(振れ)を低減(抑制)することができ、ひいては、後部ドアDの開状態を安定化することができる。
【0047】
また、伸長位置において、プッシュロッドナット13がプッシュロッドガイド19のストッパ20に当接する構造となっているため、プッシュロッドナット13とストッパ20との当接時に、螺子スピンドル12及びスピンドルロータ23に軸方向の荷重(過負荷)が作用することを抑制できる。このため、螺子スピンドル12を回転可能に支持するボールベアリング14においても、螺子スピンドル12を軸方向の移動を阻止するようにカシメ固定により行っている場合には、軸方向の過負荷が作用することが抑制されるため、ボールベアリング14の破損を抑制することができると共に、ひいては、過負荷に耐えられる構造する必要はないため、ボールベアリング14を小型化することができる。また、スピンドルロータ23の破損を抑制するために、螺子スピンドル12にスピンドルロータ23を強固に固定する複雑な構造をとることを抑制できる。
【0048】
また、プッシュロッド25が伸長位置では、プッシュロッドナット13の径方向外側部分を構成するナットアウタ部13Bの被当接面13B2が、プッシュロッドガイド19のストッパ20の当接面20Aに当接する。すなわち、プッシュロッドナット13では、螺子スピンドル12の雄ねじ部12Aに螺合されるナットインナ部13Aに対して径方向に離れたナットアウタ部13Bが、ストッパ20に当接される。このため、ナットアウタ部13Bがストッパ20に当接されるときの衝撃荷重が、ナットインナ部13A(雌ねじ部13A1)に直接入力されることを抑制できる。これにより、螺子スピンドル12に対するプッシュロッドナット13の作動による影響を少なくすることができる。
【0049】
また、ストッパ20の当接面20A及びプッシュロッドナット13の被当接面13B2は、プッシュロッドナット13の軸方向に対して直交する面に沿って形成されている。このため、当接面20A及び被当接面13B2が当接するときには、両者が面で当接されるようになる。これにより、当接面20A及び被当接面13B2の当接時に、ナットアウタ部13B及びストッパ20に入力される衝撃荷重を分散させることができる。したがって、ナットアウタ部13B及びストッパ20の破損の防止に寄与することができる。
【0050】
また、ストッパ20とスピンドルロータ23との間には、プッシュロッド25の径方向外側において、Xリング21が設けられており、Xリング21は、プッシュロッド25の外周面と、プッシュロッドガイド19の内周面との間に配置されている。このため、プッシュロッド25の径方向のガタをXリング21によって一層抑制することができると共に、ストッパ20とスピンドルロータ23との間の間隔(所定距離L)を有効に活用して、当該Xリング21を配置することができる。
【0051】
また、Xリング21は、弾性を有しているため、Xリング21がプッシュロッド25の外周面に密着しても、プッシュロッド25の移動時におけるXリング21の影響を少なくすることができる。このため、プッシュロッド25の移動性能を確保しつつ、プッシュロッド25のプッシュロッドガイド19に対する径方向のガタを抑制することができる。
【0052】
なお、本実施の形態では、螺子スピンドル12の軸方向一端部が、ボールベアリング14の内側部にカシメ固定されているが、螺子スピンドル12の軸方向一端部がボールベアリング14に内周部に挿通されて、回転可能に支持される構成として、軸方向の固定をメインハウジング4の内壁4Aなどで行ってもよい。
【0053】
また、本実施の形態では、第1のボールソケット2Aが第1の傾斜結合部2の一部を構成し、第2のボールソケット3Aが第2の傾斜結合部3の一部を構成しているが、第1のボールソケット2Aが第2の傾斜結合部3の一部を構成し、第2のボールソケット3Aが第1の傾斜結合部2の一部を構成してもよい。すなわち、メインハウジング4が後部ドアDに連結され、スプリングカバー29が車体Bに連結されるように構成してもよい。
【0054】
以上、この発明の実施形態につき、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。