(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、本発明の蓄電デバイス用電極の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の蓄電デバイス用電極の電極層の一例を拡大して模式的に示す拡大模式図である。
【
図3】
図3は、蓄電デバイス用電極の集電板を厚さ方向に沿って切断する断面の一例を模式的に示す切断図である。
【
図4】
図4は、本発明の蓄電デバイス用電極の一例を、電極層を透明にして示す一部拡大図である。
【
図6】
図6(a)〜(e)は、金属イオンを含有する本発明の蓄電デバイス用電極を用いて蓄電デバイスを製造する工程の一例を順に模式的に示す工程図である。
【
図7】
図7は、本発明の空気電池の一例を模式的に示す模式図である。
【
図8】
図8は、本発明の空気電池の別の一例を模式的に示す模式図である。
【
図9】
図9は、本発明の全固体電池の一例を模式的に示す模式図である。
【0031】
(発明の詳細な説明)
以下、本発明の蓄電デバイス用電極について図面を用いながら説明するが、本発明の蓄電デバイス用電極は以下の記載に限定されない。
【0032】
図1は、本発明の蓄電デバイス用電極の一例を模式的に示す斜視図である。
図2は、本発明の蓄電デバイス用電極の電極層の一例を拡大して模式的に示す拡大模式図である。
図1に示すように、蓄電デバイス用電極10は、第1主面21と第1主面21と反対側の第2主面22を有する金属からなる集電板20と、第1主面21及び第2主面22に備えられた電極層30とからなる。
また、
図2に示すように、蓄電デバイス用電極10では、電極層30は、ケイ素のみからなる活物質31と、活物質31を結合するバインダ32と、導電助剤33からなる。
【0033】
蓄電デバイス用電極10では、活物質31がケイ素のみからなるので、活物質の重量あたりの金属イオンの吸蔵量を大きくとることができる。そのため、蓄電デバイス用電極10を小型化することができる。
また、活物質31は、バインダ32で結合されているので、金属イオンの吸蔵放出により活物質の体積が変化したとしても、電極層30を集電板20から剥離しにくくすることができる。
【0034】
活物質31の平均粒子径は、特に限定されないが1〜10μmであることが好ましい。活物質31の平均粒子径が1μm以上であれば、活物質の平均粒子径を容易に調整することができる。活物質31の平均粒子径が10μm以下であれば、比表面積が充分に大きいので、ドープに要する時間を短くすることができる。
【0035】
蓄電デバイス用電極10では、活物質31は、金属イオンと化学結合することにより金属イオンを吸蔵していることが好ましい。
活物質31を形成するケイ素は、金属イオンと化学結合することにより金属イオンを吸蔵することができる。
そのため、例えば、炭素のように金属イオンをインターカレーションにより吸蔵する物質に比べ、多くの金属イオンを吸蔵することができる。
このように金属イオンを吸蔵した蓄電デバイス用電極10は、蓄電デバイス用の電極として好適に用いることができる。
【0036】
金属イオンは、特に限定されないが、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属のイオンであることが好ましく、リチウムイオンであることがより好ましい。
アルカリ金属及びアルカリ土類金属は、イオン化傾向が大きい。すなわち、酸化還元電位が低い。そのため、活物質がアルカリ金属及びアルカリ土類金属を吸蔵する場合、大きなエネルギーを蓄えることができる。また、アルカリ土類金属については、2価イオンとなるので大きなエネルギーを蓄えることができる。
特に、リチウムイオンは、イオン化傾向が大きく、大きなエネルギーを蓄えるのに適した金属イオンである。
【0037】
バインダ32の材料は、特に限定されないが、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等をあげることができる、これらの中では、ポリイミド樹脂であることが好ましい。
ポリイミド樹脂は、耐熱性があり、強度がある化合物である。そのため、活物質31がポリイミド樹脂からなるバインダ32で結合されていると、金属イオンの吸蔵放出により活物質の体積が変化したとしても、電極層30を集電板20から剥離しにくくすることができる。
【0038】
電極層30における活物質31と、バインダ32との重量割合は、活物質:バインダ=70:30〜90:10であることが好ましい。
【0039】
バインダ32に含まれる導電助剤33の材料は、特に限定されないが、カーボンブラック、炭素繊維、カーボンナノチューブ等をあげることができる。これらの中では、カーボンブラックからなることが好ましい。
バインダ32が導電助剤33を含有していると、蓄電デバイス用電極10の導電性を高くすることができる。そのため、効率よく集電することができる。
特に、カーボンブラックは、少量で導電性を確保することができる。そのため、カーボンブラックが導電助剤33であると、蓄電デバイス用電極10の導電性をより向上させることができる。
【0040】
導電助剤33がカーボンブラックからなる場合、その平均粒子径は、3〜500nmであることが好ましい。
【0041】
電極層30において、バインダ32に占める導電助剤33の重量割合は、20〜50%であることが好ましい。
【0042】
蓄電デバイス用電極10では、電極層30は、第1主面21及び第2主面22に備えられている。
電極層30が、集電板20の第1主面21及び第2主面22に備えられていると、金属イオンの吸蔵放出により活物質31の体積が変化したとしても、集電板20の第1主面21及び第2主面22における電極層30の体積の変化の割合は同じになる。そのため、集電板20の反りが発生することを防止することができる。
なお、第1主面21に備えられた電極層30と、第2主面22に備えられた電極層30との重量割合は同じであることが好ましい。
【0043】
電極層30の厚さは、特に限定されないが、5〜50μmであることが好ましい。
電極層の厚さが5μm未満であると、集電板に比べて活物質の量が少なくなるので電気容量が低下しやすくなる。
電極層の厚さが50μmを超えると、蓄電デバイス用電極を用いて製造された蓄電デバイスのサイズが大きくなる。また、金属イオンが電極層を移動する距離が長くなり、充放電に時間がかかる。
【0044】
片面の電極層30の面密度は、特に限定されないが、0.1〜10mg/cm
2であることが好ましい。
【0045】
蓄電デバイス用電極10では、集電板20の厚さは、特に限定されないが、5〜30μmであることが好ましい。
集電板の厚さが5μm未満であると、薄すぎるので集電板が破れやすくなる。
集電板の厚さが30μmを超えると、厚すぎるので、このような厚さの集電板を含む蓄電デバイス用電極が用いられた蓄電デバイスのサイズが大きくなりやすくなる。
【0046】
集電板20の引張強度は特に限定されないが、300〜1500MPaであることが好ましい。
【0047】
蓄電デバイス用電極10では、集電板20の材料は、特に限定されないが、銅、ステンレス鋼、貴金属があげられる。
これらの中では、銅又はオーステナイト系ステンレス鋼であることが好ましい。
【0048】
銅は、入手しやすい上に充分な導電性を有する。そのため、集電板20が銅からなると、充分な導電性を確保することができる。
【0049】
オーステナイト系ステンレス鋼は、入手しやすい上に腐食耐性が高く、高い弾性率を有する。
そのため、集電板20がオーステナイト系ステンレス鋼からなると、集電板20は腐食に強く、反りやシワが発生しにくい。
オーステナイト系ステンレス鋼は、電気抵抗率が高い。そのため、集電板の電気抵抗率も高くなる。しかし、蓄電デバイス用電極10を蓄電デバイスの正極及び/又は負極に金属イオンをドープするため、あるいは蓄電デバイス中の電解液濃度を調整するために用いる場合には、集電板20に大電流を流す必要はない。そのため、集電板の電気抵抗率が少し高くても、充分にドープしたり電解液の濃度を調整することができる。
【0050】
また、集電板20がオーステナイト系ステンレス鋼からなる場合、集電板20は、マルテンサイト系ステンレス鋼を含有することが好ましい。
マルテンサイト系ステンレス鋼は硬度が高い。そのため、集電板20が、マルテンサイト系ステンレス鋼を含有していると、集電板20を固く高強度にすることができる。
そのため、集電板20に、反りやシワが発生することを防止しやすくなる。
【0051】
図3は、蓄電デバイス用電極の集電板を厚さ方向に沿って切断する断面の一例を模式的に示す切断図である。
【0052】
集電板20がオーステナイト系ステンレス鋼からなり、かつ、マルテンサイト系ステンレス鋼を含有する場合、
図3に示すように、蓄電デバイス用電極10では、集電板20を厚さ方向に沿って切断する断面において、マルテンサイト系ステンレス鋼51は、オーステナイト系ステンレス鋼52の中に島状に点在することが好ましい。
マルテンサイト系ステンレス鋼は硬度が高い反面、靱性が低い。そのため、集電板において、マルテンサイト系ステンレス鋼がオーステナイト系ステンレス鋼の中の一部に偏在している場合、マルテンサイト系ステンレス鋼が偏在している場所が折れやすくなる。
しかし、集電板20において、マルテンサイト系ステンレス鋼51が、オーステナイト系ステンレス鋼52の中に島状に点在していると集電板20が折れにくくなる。
【0053】
なお、マルテンサイト系ステンレス鋼及びオーステナイト系ステンレス鋼の存在は、以下の条件の電子後方散乱回折図測定法(EBSD法)により分析することができる。
【0054】
(EBSD法の条件)
<分析装置>
EF−SEM:日本電子株式会社製JSM−7000F/EBSDD:TSL Solution
<分析条件>
範囲 :14×36μm
ステップ :0.05μm/step
測定ポイント :233376
倍率 :5000倍
phase :γ−鉄、α−鉄
【0055】
集電板20がオーステナイト系ステンレス鋼からなり、かつ、マルテンサイト系ステンレス鋼を含有する場合、集電板20を厚さ方向に対し垂直な方向に切断する断面において、マルテンサイト系ステンレス鋼が占める面積は、断面全体の5〜20%であることが好ましい。
マルテンサイト系ステンレス鋼が占める面積が上記範囲内であると、集電板20が腐食しにくく、高強度になる。
マルテンサイト系ステンレス鋼が占める面積が5%未満であると、マルテンサイト系ステンレス鋼を含有することによる集電板の強度向上効果が得られにくくなる。
マルテンサイト系ステンレス鋼が占める面積が20%を超えると、マルテンサイト系ステンレス鋼が表面に露出しやすくなる上に、内部に存在するマルテンサイト系ステンレス鋼まで連続的につながり、集電板全体が腐食しやすくなる。また、マルテンサイト系ステンレス鋼の割合が大きくなるので、集電板が折れやすくなる。
【0056】
蓄電デバイス用電極10では、集電板20は、第1主面21から第2主面22を貫通する複数の貫通孔を有し、貫通孔の内部には、電極層30が備えられていることが好ましい。
貫通孔の内部に電極層30が備えられていると、第1主面21側の電極層30と、第2主面22側の電極層30とは、集電板20の貫通孔を通じて繋がることになる。
そのため、第1主面21側の電極層30と、第2主面22側の電極層30とが剥がれにくくなり、両主面の電極層30が互いに同じように力を及ぼしあうので、集電板20に反りが発生しにくい。なお、貫通孔には電極層が完全に充填されていてもいなくてもよく、集電板の貫通孔を完全に塞がないように電極層が形成されていてもよい。
【0057】
貫通孔の形状は、特に限定されないが、円筒状であってもよく、大きい開口部と小さい開口部とを有するテーパ状であってもよい。
【0058】
貫通孔がテーパ状である場合について、図面を用いて説明する。
図4は、本発明の蓄電デバイス用電極の一例を、電極層を透明にして示す一部拡大図である。
図5は、
図4のA−A線断面図である。
【0059】
図4及び
図5に示すように、蓄電デバイス用電極10では、集電板20は複数の貫通孔40を有していてもよく、貫通孔40は、第1主面21側に広がった第1テーパ孔41と、第2主面22側に広がった第2テーパ孔42とからなっていてもよい。この場合、第1テーパ孔41及び第2テーパ孔42には電極層30が充填されることになる。
貫通孔の形状が第1主面又は第2主面の1方向にのみ広がるテーパ状であると、活物質が、金属イオンを吸蔵放出するのに伴い体積変化する場合、一方の主面側の体積変化に伴う力が強くなり、集電板に歪みが生じやすくなり、集電板が反りやすくなる。
しかし、
図5に示すように、貫通孔40が、第1主面21側に広がった第1テーパ孔41と、第2主面22側が広がった第2テーパ孔42とからなると、活物質が金属イオンを吸蔵放出するのに伴い体積変化したとしても、体積変化に伴う力が分散される。その結果、集電板20に歪みが生じることを防ぐことができ、さらに集電板20が反りにくくなる。
【0060】
蓄電デバイス用電極10では、貫通孔の開口率は、特に限定されないが、1〜20%であることが好ましい。なお、貫通孔の開口率は第1テーパ孔、第2テーパ孔とも小さい方の孔の面積を開口の面積比として定義する。
貫通孔の開口率が1%未満であると、表裏の電極層の接合力が弱くなり剥がれ易くなる。
貫通孔の開口率が20%を超えると、集電板の抵抗が高くなり金属イオンの放出に偏りが生じやすくなる。
貫通孔の密度は、特に限定されないが、300〜7000個/cm
2であることが好ましい。
【0061】
貫通孔が円筒状である場合、その直径は、10〜200μmであること好ましい。
貫通孔がテーパ状である場合、大きい開口部の直径は、20〜200μmであることが好ましく、小さい開口部の直径は、10〜100μmであることが好ましい。
【0062】
蓄電デバイス用電極10は、正極又は負極用の電極として用いてもよく、正極及び/又は負極に金属イオンをドープするための金属イオン供給極であってもよい。
蓄電デバイス用電極10は、金属イオンを吸蔵できる量が多い。さらに金属イオンと結合して吸蔵しているので化学的に安定であり、安全に金属イオンを吸蔵することができる。そのため、リチウムイオン二次電池、リチウムイオンキャパシタなどの蓄電デバイスの正極又は負極用電極としても好適に用いることができ、正極及び/又は負極に金属イオンをドープするための金属イオン供給極として好適に用いることができる。
【0063】
次に、本発明の蓄電デバイス用電極の製造方法の一例について説明する。
【0064】
(1)集電板の作製工程
まず、厚さが5〜30μmの金属からなる集電板を準備する。
集電板の材料としては、特に限定されず、銅、オーステナイト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼等を用いることができ、製造する蓄電デバイス用電極の用途に合わせて選択することが好ましい。
【0065】
次に、必要に応じて集電板に貫通孔を形成する。貫通孔を形成する方法は、特に限定されず、エッチング法、パンチング法、レーザー加工法により貫通孔を形成してもよい。
これらの中では、エッチング法であることが好ましい。エッチング法で貫通孔を形成することにより多くの貫通孔を同時に形成しテーパ状の貫通孔を形成することができる。
【0066】
なお、貫通孔の形状、大きさ、密度等は、上記の通りであるので、ここでの説明は省略する。
【0067】
(2)活物質スラリーの作製工程
ケイ素と熱硬化樹脂からなるバインダとを混合し、活物質スラリーを作製する。
【0068】
活物質とバインダとの重量割合は、特に限定されないが、活物質:バインダ=70:30〜90:10となるように調製することが好ましい。
【0069】
バインダとしては、特に限定されず、ポリイミド樹脂前駆体、ポリアミドイミド樹脂前駆体等があげられる。これらの中では、ポリイミド樹脂前駆体が好ましい。
【0070】
塗工性の観点から、活物質スラリーの粘度は、1〜10Pa・sであることが好ましい。なお、スラリーの粘度はB型粘度計を用い、1〜10rpmとなる条件で測定する。
活物質とバインダの割合を調整することにより活物質スラリーの粘度を調整することができる。また、必要に応じて増粘剤等により粘度を調整してもよい。
【0071】
(3)活物質スラリーの塗工工程
集電板の両主面に活物質スラリーを塗工する。
塗工する活物質スラリーの量は、特に限定されないが、加熱乾燥後に0.1〜10mg/cm
2であることが好ましい。
【0072】
(4)プレス加工工程
次に、活物質スラリーが塗工された集電板をプレス加工する。
プレス加工の圧力は、特に限定されないが、活物質が平坦になるように押さえることができれば充分である。
【0073】
(5)加熱工程
次に、活物質スラリーが途工された集電板を加熱し、活物質スラリーに含まれる熱硬化樹脂からなるバインダを硬化させる。
加熱条件は、使用するバインダの種類に応じて決定することが好ましい。
バインダがポリイミド樹脂前駆体を含む場合、加熱温度は、250〜350℃であることが好ましい。また、加熱時の雰囲気は、窒素ガス雰囲気等の不活性雰囲気であることが好ましい。
【0074】
以上の工程を経て、本発明の蓄電デバイス用電極を製造することができる。
【0075】
次に、本発明の蓄電デバイス用電極を、金属イオン供給極として使用するために金属イオンをドープする方法について説明する。
【0076】
(1)有機電解液塗布工程
まず、本発明の蓄電デバイス用電極の集電板の一方の主面側の電極層に有機電解液を塗布する。
有機電解液は、特に限定されないが、有機溶媒に電解質として金属塩を溶解させた溶液を用いることができる。
有機溶媒としては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)等の環状カーボネート類、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)等の鎖状カーボネート類、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸エチル等の脂肪族カルボン酸エステル類、γ−ブチロラクトン等のγ−ラクトン類、1,2−ジエトキシエタン(DEE)、エトキシメトキシエタン(EME)等の鎖状エーテル類、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等の環状エーテル類、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、プロピルニトリル、ニトロメタン、エチルモノグライム、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エチルエーテル、1,3−プロパンスルトン、アニソール、N−メチルピロリドン、フッ素化カルボン酸エステル等の非プロトン性有機溶媒等があげられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
なお、後述するように金属イオン源としてリチウムを用いる場合、有機電解液は、リチウムイオン導電性を有することが好ましい。
(2)加熱工程
次に、有機電解液が塗布された、電極層と金属イオン源とを接触させて、加熱することにより金属イオンをドープする。
金属イオン源としては、特に限定されないが、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム等があげられる。これらの中では、リチウムであることが好ましい。
加熱の条件は、特に限定されないが、250〜300℃、10〜120分間加熱することが好ましい。
【0077】
(3)乾燥工程
ドープ後の蓄電デバイス用電極を溶媒で洗浄し自然乾燥させることによりドープが完了する。溶媒としてはDMC(ジメチルカーボネート)などが好適に利用できる。
【0078】
なお、ドープの方法はこのような金属イオン源に接触させる方法に限定されず、他の方法も利用できる。例えば、金属イオン源と蓄電デバイス用電極とをそれぞれ外部回路につなぎ、電気的にドープすることもできる。
【0079】
次に、このようにして得られた金属イオンを含有する本発明の蓄電デバイス用電極を用いて蓄電デバイスを製造する方法を説明する。
図6(a)〜(e)は、金属イオンを含有する本発明の蓄電デバイス用電極を用いて蓄電デバイスを製造する工程の一例を順に模式的に示す工程図である。
【0080】
(1)蓄電デバイスの組立工程
まず、
図6(a)に示すように、蓄電デバイス用電極10と、正極161と、負極162と、セパレータ163とを蓄電パッケージ164に収容する。
この際、蓄電デバイス用電極10と、正極161と、負極162とがそれぞれ分離されるようにセパレータ163を配置する。
【0081】
正極161は、正極集電体と、正極集電体に備えられた正極活物質とから構成されている。
正極集電体は、特に限定されないが、アルミニウム、ニッケル、銅、銀及びこれらの合金からなることが好ましい。
正極活物質は、特に限定されないが、LiMnO
2、Li
xMn
2O
4(0<x<2)、Li
2MnO
3、Li
xMn
1.5Ni
0.5O
4(0<x<2)等の層状構造を持つマンガン酸リチウム又はスピネル構造を有するマンガン酸リチウム;LiCoO
2、LiNiO
2又はこれらの遷移金属の一部を他の金属で置き換えたもの;LiNi
1/3Co
1/3Mn
1/3O
2などの特定の遷移金属が半数を超えないリチウム遷移金属酸化物;これらのリチウム遷移金属酸化物において化学量論組成よりもLiを過剰にしたもの;LiFePO
4等のオリビン構造を有するもの等があげられる。
また、これらの金属酸化物に、アルミニウム、鉄、リン、チタン、ケイ素、鉛、錫、インジウム、ビスマス、銀、バリウム、カルシウム、水銀、パラジウム、白金、テルル、ジルコニウム、亜鉛、ランタン等により一部置換した材料も使用することができる。特に、Li
αNi
βCo
γAl
δO
2(1≦α≦2、β+γ+δ=1、β≧0.7、γ≦0.2)又はLi
αNi
βCo
γMn
δO
2(1≦α≦1.2、β+γ+δ=1、β≧0.6、γ≦0.2)が好ましい。
正極活物質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0082】
正極活物質に代えて正極に活性炭を用いてもよい。活性炭は非常に表面積が大きく表面に電解質が電気二重層を形成し、キャパシタとして作用する。電解質がリチウム塩の場合には、リチウムイオンキャパシタになる。
【0083】
負極162は、負極集電体と、負極集電体に備えられた負極活物質とから構成されている。
負極集電体は、特に限定されないが、アルミニウム、ニッケル、銅、銀及びこれらの合金等からなることが好ましい。
負極活物質は、特に限定されないが、ケイ素、一酸化ケイ素、二酸化ケイ素、炭素等からなることが好ましい。
【0084】
セパレータ163は、特に限定されないが、ポリプロピレン、ポリエチレン等の多孔質フィルムや不織布を用いることができる。また、セパレータとしては、それらを積層したものを用いることもできる。また、耐熱性の高い、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、セルロース、ガラス繊維を用いることもできる。また、それらの繊維を束ねて糸状にし、織物とした織物セパレータを用いることもできる。
【0085】
(2)電解液注入工程
次に、
図6(b)に示すように、蓄電パッケージ164に電解液165を注入する。
電解液165は、特に限定されないが、溶媒に電解質として金属塩を溶解させた溶液を用いることができる。
溶媒としては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)等の環状カーボネート類、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)等の鎖状カーボネート類、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸エチル等の脂肪族カルボン酸エステル類、γ−ブチロラクトン等のγ−ラクトン類、1,2−ジエトキシエタン(DEE)、エトキシメトキシエタン(EME)等の鎖状エーテル類、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等の環状エーテル類、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、プロピルニトリル、ニトロメタン、エチルモノグライム、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エチルエーテル、1,3−プロパンスルトン、アニソール、N−メチルピロリドン、フッ素化カルボン酸エステル等の非プロトン性有機溶媒等があげられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0086】
金属塩としては、特に限定されないが、リチウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等を用いることができる。
金属塩として、リチウム塩を用いる場合、リチウム塩としては、LiPF
6、LiAsF
6、LiAlCl
4、LiClO
4、LiBF
4、LiSbF
6、LiCF
3SO
3、LiC
4F
9CO
3、LiC(CF
3SO
2)
2、LiN(CF
3SO
2)
2、LiN(C
2F
5SO
2)
2、LiB
10Cl
10、低級脂肪族カルボン酸リチウム、クロロボランリチウム、四フェニルホウ酸リチウム、LiBr、LiI、LiSCN、LiCl、イミド類等があげられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0087】
電解液165の電解質濃度は、特に限定されないが、0.5〜1.5mol/Lであることが好ましい。
電解質濃度が0.5mol/L未満であれば、電解液の電気電導率を充分にしにくくなる。
電解質濃度が1.5mol/Lを超えると、電解液の密度及び粘度が増加しやすくなる。
【0088】
(3)負極活物質への金属イオンのドープ工程
次に、
図6(c)に示すように、負極162と蓄電デバイス用電極10とを電気化学的に接続し、蓄電デバイス用電極10に吸蔵された金属イオンを負極162に移す。
本工程では、負極162が正極として機能し、蓄電デバイス用電極10が負極として機能する。
本工程を行うことにより負極162の負極活物質に金属イオンがドープされる。
なお、蓄電デバイスが、正極または負極にもともと金属イオンを含有している場合には、ドープ工程は必須ではないが、電解質としての金属イオンの不足分を補うようにドープ工程を行ってもよい。また、蓄電デバイスが完成する前だけでなく、金属イオンが不足した段階でドープしてもよい。
蓄電デバイスがリチウムイオンキャパシタの場合、正極及び負極の中に金属イオンを含有していないので、正極または負極にドープを行うことで蓄電デバイスが動作可能となるよう金属イオンが蓄電デバイスの内部に供給される。
【0089】
上記負極活物質への金属イオンのドープ工程を行った後、
図6(d)に示すように、負極162と蓄電デバイス用電極10との電気化学的な接続を切断することにより、蓄電デバイス100を製造することができる。
このように製造された蓄電デバイス100は本発明の蓄電デバイスの一例でもある。
すなわち蓄電デバイス100は、正極161と、負極162と、正極161と負極162とを分離するセパレータ163と、正極161と負極162とセパレータ163とを収容する蓄電パッケージ164と、蓄電パッケージ164に封入された電解液165とからなる蓄電デバイスであって、蓄電デバイス100はさらに、負極162に金属イオンをドープするための蓄電デバイス用電極10を含んでいる。
【0090】
本発明の蓄電デバイス用電極10は、単位体積当たりの金属イオンを吸蔵できる量が多い。このため、蓄電デバイス用電極10は、小型化することができ、蓄電デバイスの動作に必要な電解質を最初に供給する金属イオン供給源、金属イオンが蓄電デバイス中で消費され金属イオン濃度が低下したときなどの電解液濃度を調整する金属イオン供給源として好適に使用することができる。
また、このような蓄電デバイス用電極10を用いた蓄電デバイス100も小型化することができる。
【0091】
また、
図6(e)に示すように、蓄電デバイス100の正極161と負極162を接続することにより、電流を流すことができる。
【0092】
蓄電デバイス100の内部には、蓄電デバイス用電極10が金属イオンを含有したまま残ることになるが、リチウム等の活性な金属が蓄電デバイスの内部に単体で残るわけではないので安全性が高い。
【0093】
次に、金属イオンがドープされた本発明の蓄電デバイス用電極を負極として用いた空気電池について説明する。
なお、このような空気電池は、本発明の空気電池でもある。
【0094】
図7は、本発明の空気電池の一例を模式的に示す模式図である。
図7に示すように、空気電池200は、導電性多孔体からなる正極261と、蓄電デバイス用電極10からなる負極と、正極261と蓄電デバイス用電極10とを隔てるセパレータ263と、正極261、蓄電デバイス用電極10及びセパレータ263を収容する蓄電パッケージ264と、蓄電パッケージ264に収容された有機電解液265とからなり、正極261の一部は蓄電パッケージ264から露出している。
【0095】
空気電池200における蓄電デバイス用電極10は金属イオンがドープされている。
負極である蓄電デバイス用電極10の構成材料等は上記の通りであるのでここでの説明は省略する。
【0096】
正極261は、触媒と、触媒を担持する多孔質素材から構成されている。
触媒は、特に限定されないが、マンガン酸化物、コバルト酸化物、酸化ニッケル、酸化鉄、酸化銅等からなることが好ましい。
多孔質素材は、特に限定されないが、炭素からなることが好ましい。
【0097】
セパレータ263は、特に限定されないが、ポリプロピレン、ポリエチレン等の多孔質フィルムや不織布を用いることができる。また、セパレータとしては、それらを積層したものを用いることもできる。また、耐熱性の高い、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、セルロース、ガラス繊維を用いることもできる。また、それらの繊維を束ねて糸状にし、織物とした織物セパレータを用いることもできる。
【0098】
有機電解液265は、特に限定されないが、有機溶媒に電解質として金属塩を溶解させた溶液を用いることができる。
有機溶媒としては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)等の環状カーボネート類、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)等の鎖状カーボネート類、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸エチル等の脂肪族カルボン酸エステル類、γ−ブチロラクトン等のγ−ラクトン類、1,2−ジエトキシエタン(DEE)、エトキシメトキシエタン(EME)等の鎖状エーテル類、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等の環状エーテル類、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、プロピルニトリル、ニトロメタン、エチルモノグライム、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エチルエーテル、1,3−プロパンスルトン、アニソール、N−メチルピロリドン、フッ素化カルボン酸エステル等の非プロトン性有機溶媒等があげられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0099】
金属塩としては、特に限定されないが、リチウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等を用いることができる。
金属塩として、リチウム塩を用いる場合、リチウム塩としては、LiPF
6、LiAsF
6、LiAlCl
4、LiClO
4、LiBF
4、LiSbF
6、LiCF
3SO
3、LiC
4F
9CO
3、LiC(CF
3SO
2)
2、LiN(CF
3SO
2)
2、LiN(C
2F
5SO
2)
2、LiB
10Cl
10、低級脂肪族カルボン酸リチウム、クロロボランリチウム、四フェニルホウ酸リチウム、LiBr、LiI、LiSCN、LiCl、イミド類等があげられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0100】
有機電解液265の電解質濃度は、特に限定されないが、0.5〜1.5mol/Lであることが好ましい。
電解質濃度が0.5mol/L未満であれば、電解液の電気電導率を充分にしにくくなる。
電解質濃度が1.5mol/Lを超えると、電解液の密度及び粘度が増加しやすくなる。
【0101】
空気電池は、正極の活物質として空気を使用するので、電気容量が大きいことが特徴である。このため電気容量に与える影響は、負極における金属イオンの吸蔵量が支配的になる。
蓄電デバイス用電極10は、ケイ素を活物質として用いているので空気電池200の電気容量を効率的に大きくすることができる。
【0102】
また、蓄電デバイス用電極10を用いた空気電池は、以下の構成であってもよい。
図8は、本発明の空気電池の別の一例を模式的に示す模式図である。
【0103】
図8に示すように、空気電池300は、導電性多孔体からなる正極361を備える陽極槽371と、負極である蓄電デバイス用電極10を備える陰極槽372とを有する蓄電パッケージ364からなる空気電池であって、正極361の一部は蓄電パッケージ364から露出しており、陽極槽371と陰極槽372とは固体電解質363により隔てられており、陽極槽371には、水系電解液365aが収容されており、陰極槽372には、有機電解液365bが収容されている。
【0104】
空気電池200における蓄電デバイス用電極10(負極)は金属イオンがドープされている。
蓄電デバイス用電極10の構成材料等は上記の通りであるのでここでの説明は省略する。
【0105】
導電性多孔体からなる正極361の構成は、上記正極261と同じ構成であることが好ましい。
【0106】
固体電解質363は、金属イオン伝導性があれば特に限定されないが、例えば、Li
3N、Garnet−Type型リチウムイオン伝導体、NASICON型リチウムイオン伝導体、β−Fe
2(SO
4)型リチウムイオン伝導体、ペロブスカイト型リチウムイオン伝導体、チオLISICON型リチウムイオン伝導体、高分子型リチウムイオン伝導体等を用いることができる。
【0107】
水系電解液365aは、特に限定されないが、水系アルカリ電解液であることが好ましく、水酸化リチウムを水又は水系溶媒に溶解させたものがより好ましく、水酸化リチウム水溶液がさらに好ましい。また、水系アルカリ電解液はハロゲン化リチウムを含むものであってもよく、ハロゲン化リチウムの好ましい例としては、フッ化リチウム(LiF)、塩化リチウム(LiCl)、臭化リチウム(LiBr)、ヨウ化リチウム(LiI)等があげられる。
【0108】
有機電解液365bは、特に限定されないが、有機溶媒に電解質として金属塩を溶解させた溶液を用いることができる。
有機溶媒としては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)等の環状カーボネート類、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)等の鎖状カーボネート類、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸エチル等の脂肪族カルボン酸エステル類、γ−ブチロラクトン等のγ−ラクトン類、1,2−ジエトキシエタン(DEE)、エトキシメトキシエタン(EME)等の鎖状エーテル類、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等の環状エーテル類、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、プロピルニトリル、ニトロメタン、エチルモノグライム、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エチルエーテル、1,3−プロパンスルトン、アニソール、N−メチルピロリドン、フッ素化カルボン酸エステル等の非プロトン性有機溶媒等があげられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0109】
金属塩としては、特に限定されないが、リチウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等を用いることができる。
金属塩として、リチウム塩を用いる場合、リチウム塩としては、LiPF
6、LiAsF
6、LiAlCl
4、LiClO
4、LiBF
4、LiSbF
6、LiCF
3SO
3、LiC
4F
9CO
3、LiC(CF
3SO
2)
2、LiN(CF
3SO
2)
2、LiN(C
2F
5SO
2)
2、LiB
10Cl
10、低級脂肪族カルボン酸リチウム、クロロボランリチウム、四フェニルホウ酸リチウム、LiBr、LiI、LiSCN、LiCl、イミド類等があげられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0110】
有機電解液365bの電解質濃度は、特に限定されないが、0.5〜1.5mol/Lであることが好ましい。
電解質濃度が0.5mol/L未満であれば、電解液の電気電導率を充分にしにくくなる。
電解質濃度が1.5mol/Lを超えると、電解液の密度及び粘度が増加しやすくなる。
【0111】
水系電解液365aと、有機電解液365bとを用いる空気電池300は、放電に伴って、負極である蓄電デバイス用電極10の金属イオンが正極側に移動し、水系電解液365a中の水酸化金属の濃度が上昇する。
そのため、空気電池300は、蓄電デバイス用電極10を交換したり、水系電解液365aを交換したりすることによる「機械的充電」が容易である。
空気電池の負極に金属を用いると、一般的に空気電池の負極に用いられる金属は、反応性の高い金属であるので、負極を交換する際に発火等の危険性が高い。
しかし、負極に蓄電デバイス用電極10を用いると、金属はケイ素と結合し蓄電デバイス用電極10に吸蔵されているので、発火の危険性を小さくすることができる。
【0112】
次に、金属イオンがドープされた本発明の蓄電デバイス用電極を負極として用いた全固体電池について説明する。
なお、このような全固体電池は、本発明の全固体電池でもある。
【0113】
図9は、本発明の全固体電池の一例を模式的に示す模式図である。
図9に示すように、全固体電池400は、正極461と、負極である蓄電デバイス用電極10と、正極461と蓄電デバイス用電極10とを分離する固体電解質463と、正極461と蓄電デバイス用電極10と固体電解質463を収容する蓄電パッケージ464とからなる。
【0114】
全固体電池400における蓄電デバイス用電極10は金属イオンがドープされている。
蓄電デバイス用電極10の構成材料等は上記の通りであるのでここでの説明は省略する。
【0115】
正極461は、正極集電体と、正極集電体に備えられた正極活物質とから構成されている。
正極集電体は、特に限定されないが、アルミニウム、ニッケル、銅、銀及びこれらの合金からなることが好ましい。
正極活物質は、特に限定されないが、LiMnO
2、Li
xMn
2O
4(0<x<2)、Li
2MnO
3、Li
xMn
1.5Ni
0.5O
4(0<x<2)等の層状構造を持つマンガン酸リチウム又はスピネル構造を有するマンガン酸リチウム;LiCoO
2、LiNiO
2又はこれらの遷移金属の一部を他の金属で置き換えたもの;LiNi
1/3Co
1/3Mn
1/3O
2などの特定の遷移金属が半数を超えないリチウム遷移金属酸化物;これらのリチウム遷移金属酸化物において化学量論組成よりもLiを過剰にしたもの;LiFePO
4等のオリビン構造を有するもの等があげられる。
また、これらの金属酸化物に、アルミニウム、鉄、リン、チタン、ケイ素、鉛、錫、インジウム、ビスマス、銀、バリウム、カルシウム、水銀、パラジウム、白金、テルル、ジルコニウム、亜鉛、ランタン等により一部置換した材料も使用することができる。特に、Li
αNi
βCo
γAl
δO
2(1≦α≦2、β+γ+δ=1、β≧0.7、γ≦0.2)又はLi
αNi
βCo
γMn
δO
2(1≦α≦1.2、β+γ+δ=1、β≧0.6、γ≦0.2)が好ましい。
正極活物質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0116】
固体電解質463としては、特に限定されないが、8Li
2O・67Li
2S・25P
2S
5、Li
2S、P
2S
5、Li
2S−SiS
2、LiI−Li
2S−SiS
2、LiI−Li
2S−P
2S
5、LiI−Li
2S−B
2S
3等の硫化物系非晶質固体電解質や、Li
2O−B
2O
3−P
2O
5、Li
2O−SiO
2等の酸化物系非晶質固体電解質や、Li
1.3Al
0.3Ti
0.7(PO
4)
3、Li
1+x+yA
xTi
2−xSi
yP
3−yO
12(Aは、Al又はGa、0≦x≦0.4、0<y≦0.6)等の結晶質酸化物を用いることができる。
【0117】
全固体電池400では、金属イオンが固体電解質463中を移動する。固体電解質463中には、金属イオンの移動を阻害する物質が少ないので、全固体電池400は高い性能を発揮することができる。
負極として蓄電デバイス用電極10を用いると、蓄電デバイス用電極10の活物質はケイ素であるので、蓄電デバイス用電極10内の金属イオンが正極側に移動しても、蓄電デバイス用電極10表面のケイ素濃度が高まりにくい。さらに、全固体電池400は、通常、30〜200℃で使用されることになる。すなわち、高温で使用されることになる。そのため、金属イオンの拡散が起きやすく、放電しても性能の低下を防止することができる。
【0118】
(実施例)
以下に本発明をより具体的に説明する実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0119】
(実施例1)
(1)集電板の作製工程
厚さが20μmである銅板を準備した。
準備した銅板に、37%の塩化第2銅水溶液により40℃で20分間エッチング処理を行い、テーパ状の貫通孔を形成した。
貫通孔の密度は、2500個/cm
2であった。
貫通孔の大きい開口部の直径は、120μmであり、小さい開口部の直径は、60μmであった。
(2)活物質スラリーの作製工程
次に、ケイ素7gと、ポリイミド樹脂前駆体2.5gと、カーボンブラック0.5gを混合し、活物質スラリーを作製した。
活物質スラリーの粘度は、10Pa・sであった。
【0120】
(3)活物質スラリーの塗工工程
活物質スラリーの量が加熱乾燥後に3mg/cm
2となるように、集電板の両主面に活物質スラリーを塗工した。
【0121】
(4)プレス加工工程
活物質スラリーが塗工された集電板をプレスし、活物質が平坦になるようにした。
【0122】
(5)加熱工程
プレス加工後の集電板を窒素雰囲気下、250℃、1時間加熱し、活物質スラリーに含まれるポリイミド樹脂前駆体を硬化させ電極層を形成した。
【0123】
以上の工程を経て実施例1に係る蓄電デバイス用電極を製造した。
【0124】
(実施例2)
上記(1)集電板の作製工程において、厚さが20μmの銅板の代わりに厚さが20μmのSUS304板を準備し、37%の塩化第2鉄水溶液により40℃で1時間エッチング処理を行った以外は実施例1に係る蓄電デバイス用電極の製造方法と同様に、実施例2に係る蓄電デバイス用電極を製造した。
【0125】
(実施例3)
以下の方法で、実施例1に係る蓄電デバイス用電極にリチウムイオンをドープし、実施例3に係る蓄電デバイス用電極を製造することができる。
【0126】
(1)有機電解液塗布工程
実施例1に係る蓄電デバイス用電極を縦×横=37.5×50mmに切断し、蓄電デバイス用電極の集電板の第1主面側の電極層に1.0mol/LのLiPF
6/プロピレンカーボネート(PC)の有機電解液を塗り込む。
【0127】
(2)ドープ工程
その後、蓄電デバイス用電極の第1主面に縦52mm、横52mmのリチウム箔を貼り付け、ラミネートで封止し、Li極と蓄電デバイス用電極とを短絡させた状態で45℃の高温槽中に2時間放置し、リチウムイオンをドープする。
【0128】
(3)乾燥工程
ドープ後の蓄電デバイス用電極をジメチルカーボネートで洗浄し、自然乾燥させる。
【0129】
(実施例4)
実施例3に係る蓄電デバイス用電極を用いて、以下のように蓄電デバイスを製造することができる。
【0130】
(1)蓄電デバイスの組立工程
正極集電体がアルミニウムであり、正極活物質がLiMnO
2である正極を準備する。
負極集電体がアルミニウムであり、負極活物質が炭素である負極を準備する。
ポリプロピレンからなるセパレータを準備する。
【0131】
次に、
図6(a)に示すように、実施例1に係る蓄電デバイス用電極と、正極と、負極と、セパレータとを蓄電パッケージに収容する。
この際、実施例1に係る蓄電デバイス用電極と、正極と、負極とがそれぞれ分離されるようにセパレータを配置する。
【0132】
(2)電解液注入工程
次に、溶媒がプロピレンカーボネート(PC)であり、LiPF
6が溶解された電解液を準備する。
そして、蓄電パッケージに電解液を注入する。
【0133】
(3)負極活物質への金属イオンのドープ工程
次に、負極と実施例1に係る蓄電デバイス用電極とを、電気化学的に接続し、実施例1に係る蓄電デバイス用電極に吸蔵されたリチウムイオンを移す。
【0134】
負極と実施例1に係る蓄電デバイス用電極との電気化学的な接続を切断する。
以上の工程を経て、実施例4に係る蓄電デバイスを製造する。
また、実施例1に係る蓄電デバイス用電極は、蓄電デバイス中のリチウムイオンが消耗されリチウムイオン濃度が低下したときに、再度負極活物質にリチウムイオンを供給することができる。
これにより、電解液濃度を調整し、蓄電デバイス中のリチウムイオン濃度を復元することができる。
【0135】
(実施例5)
実施例3に係る蓄電デバイス用電極を用いて、以下のように空気電池を製造することができる。
【0136】
(1)組立工程
触媒としてマンガン酸化物を担持する多孔質炭素からなる正極を準備する。
ポリプロピレンからなるセパレータを準備する。
次に、
図7に示すように、正極の一部が蓄電パッケージから露出するように、正極、実施例3に係る蓄電デバイス用電極及びセパレータを蓄電パッケージに収容する。
【0137】
(2)電解液注入工程
次に、溶媒がプロピレンカーボネート(PC)であり、LiPF
6が溶解された電解液を準備する。
そして、蓄電パッケージに電解液を注入する。
【0138】
以上の工程を経て、実施例5に係る空気電池を製造する。
【0139】
(実施例6)
実施例3に係る蓄電デバイス用電極を用いて、以下のように空気電池を製造することができる。
【0140】
(1)組立工程
触媒としてマンガン酸化物を担持する多孔質炭素からなる正極を準備する。
Li
3Nからなる固体電解質を準備する。
次に、
図8に示すように、正極の一部が蓄電パッケージから露出するように、正極、実施例3に係る蓄電デバイス用電極及び固体電解質を蓄電パッケージに収容する。
【0141】
(2)電解液注入工程
水系電解液として、水酸化リチウム水溶液を準備する。
有機電解液として、溶媒がプロピレンカーボネート(PC)であり、LiPF
6が溶解された電解液を準備する。
次に、正極側に水系電解液を注入し、負極側に有機電解液を注入する。
【0142】
以上の工程を経て、実施例6に係る空気電池を製造する。
【0143】
(実施例7)
実施例3に係る蓄電デバイス用電極を用いて、以下のように全固体電池を製造することができる。
【0144】
正極集電体がアルミニウムであり、正極活物質がLiMnO
2である正極を準備する。
8Li
2O・67Li
2S・25P
2S
5からなる固体電解質を準備する。
次に、
図9に示すように、正極と実施例3に係る蓄電デバイス用電極とを分離するように固体電解質を蓄電パッケージに収容し、実施例7に係る全固体電池を製造する。