(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、複数の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各実施形態において実質的に共通する部位には同一符号を付して説明する。
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について、
図1から
図4を参照しながら説明する。
【0008】
図1に示すように、パネル部材1は、例えばガラスやアクリル等の透光性材料で形成された板材2をベースとして構成されている。本実施形態では、この板材2が、表示装置の前面つまりはユーザが視認する面となることを想定している。以下、板材2の図示左方側の面を表面2aと称し、図示右方側の面を裏面2bと称する。なお、図示は省略するが、裏面2b側は表示装置の内部側になる。このようなパネル部材1は、例えば後述する冷蔵庫10(
図3参照)のような家電製品の扉の前板として用いられる。
【0009】
この板材2には、その裏面2b側に、蒸着層3、透光層4、着色層5および遮光層6が設けられている。なお、
図1は、説明の簡略化のために板材2および各層を模式的に示しており、必ずしもそれらの厚みが図示した通りになっている訳ではない。また、設ける層の種類や数は、
図1に例示したものに限定されない。
蒸着層3は、透光性を有する金属蒸着膜で形成されており、板材2の裏面2bの全域に設けられている。
【0010】
透光層4は、光を透過する例えば透光性塗料で形成されており、板材2の裏面2b側において、蒸着層3の裏面側であって光が透過すべき所定の表示領域(R)に対応して設けられている。換言すると、透光層4は、光源7から照射された照射光7aを前面側に透過することにより、所定の表示領域(R)を形成する。本実施形態では、この透光層4の厚みはdに設定されている。
【0011】
着色層5は、任意の色に着色された塗料で形成されており、板材2の裏面2b側において、表示領域(R)の周囲に設けられているとともに、表示領域(R)において、透光層4の縁に、透光層4の裏面側から重なるように設けられている。つまり、着色層5は、透光層4の周囲を囲った状態で、且つ、着色層5の一部が透過層の縁に重なった状態で設けられている。そのため、
図1に示す断面視において、着色層5は、概ね段差状となっている。この着色層5の色が、ユーザが視認するパネル部材1の色になるため、意匠性等を考慮して設定されている。
【0012】
遮光層6は、光を透過しない塗料により形成されており、光源7から照射された光が表示領域(R)の外側から前面に漏れることを防止している。この遮光層6は、板材2の裏面2b側において、表示領域(R)の周囲を覆うとともに、表示領域(R)の内側において、一部が透光層4の縁を覆うように設けられている。つまり、遮光層6は、透光層4の周囲を囲った状態で、且つ、遮光層6の一部が透過層の縁に重なった状態で設けられている。これら遮光層6や着色層5は、蒸着層3が化学的に変質することを防止する保護層としても機能する。
【0013】
パネル部材1の場合、透光層4の縁に重なっている遮光層6および着色層5の重なり量(W)は同じになるように設定されている。そのため、表示領域(R)には、透光層4の裏面側に遮光層6および着色層5が存在しない領域と、遮光層6および着色層5が存在する領域とが存在する。以下、表示領域(R)のうち、透光層4の裏面側に着色層5および遮光層6が存在しない領域を便宜的に中央領域(R0)と称する。また、遮光層6および着色層5が存在する領域、つまりは、中央領域を除く領域を、便宜的に外縁領域と称する。
【0014】
次に、上記した構成の作用について説明する。
まず、比較例として、
図2に示す従来構成のもの(以下、便宜的に従来パネル100と称する)について説明する。なお、説明の簡略化のために、従来パネル100においても本実施形態のパネル部材1と同じ種類の層が設けられているものとする。
【0015】
従来パネル100の場合、板材2の裏面2bには、全域に蒸着層3が設けられ、蒸着層3の裏面側において表示領域(R100)を除く部位に着色層5が設けられ、その着色層5に重ねて遮光層6が設けられている。そして、表示領域(R100)および着色層5および遮光層6に一部が重なった状態で、透光層4が設けられている。つまり、従来パネル100の場合、透光層4は、着色層5や遮光層6を覆う状態で設けられており、その厚み(d100)には着色層5や遮光層6の厚みが加わることになる。
【0016】
このような従来パネル100や本実施形態のパネル部材1は、単体の表示装置に用いられるだけでなく、例えば
図3に例示するように、冷蔵庫10等の家電製品に用いられることもある。例えば、冷蔵庫10は、貯蔵室を開閉する扉に静電式の操作パネル20(表示装置に相当する)を有するものがあり、その前扉をガラス面とすることにより高級感を醸し出す等、意匠性を高める工夫がなされている。
【0017】
そのため、板材2をガラスとすることにより、パネル部材1は、着色層5により色を任意に設定することができることから、冷蔵庫10への使用に適したものとなる。なお、パネル部材1は、冷蔵庫10に限らず、洗濯機等の家電製品にも適用することができる。
【0018】
さて、冷蔵庫10のような家電製品に用いる場合、操作パネル20は、情報を表示するという機能面だけでなく、明るさの均一性や色彩等の意匠面も重要となってくる。これは、冷蔵庫10の色は着色層5によって決まるものの、例えば高級感や重厚感を出す等の意匠面を考慮して選定されており、光源7の色は、冷蔵庫10の色と統一感が出るように選定されているためである。
【0019】
しかし、光源7から照射される光と、透光層4を通過した後の光とでは、その光量や色彩が変化する可能性がある。そのため、せっかく冷蔵庫10の色に合わせて光源7の色を選定しても、透光層4を通過したことにより、光量が低下して操作ボタンが見づらくなるといった機能面での不具合や、色彩が変化して冷蔵庫10の本体色との相違が際立って統一感が無くなるといった意匠面での不具合が生じる可能性がある。
【0020】
そこで、本実施形態のパネル部材1は、板材2に透光層4を設け設け、その透光層4の裏面側に着色層5および遮光層6を設けている。このため、パネル部材1は、透光層4の厚み(d)を例えば物理的な強度や製造上の仕様に基づいて純粋に必要となる厚みとすればよく、上記した従来パネル100のように着色層5および遮光層6の厚みを加える必要がない。つまり、パネル部材1は、透光層4の厚み(d)を従来パネル100の透光層4の厚み(d100)に比べて薄くすることができる。
【0021】
これにより、光源7からの光が通過する際の透光層4の長さが短くなり、透光層4を通過した際に生じる可能性のある光量や色彩の変化を低減することができる。
具体的には、透光層4の厚み(d)を薄くできることから、光源7からの光を十分に透過させることができ、視認性が低下するおそれを低減できる。つまり、機能面での不具合が生じるおそれも低減することができる。
【0022】
また、透光層4の厚み(d)を薄くできることから、透光層4の厚み(d)のばらつきによる影響が発生しにくくなる。これにより、その表示領域(R)内での明るさのムラが生じ難くなり、意匠性を損なうおそれを低減できる。つまり、意匠面での不具合が生じるおそれを低減することができる。
また、透光層4の厚み(d)は着色層5の厚みによって増減しないことから、深い色合いを出すために着色層5を厚めに塗装すること等が可能となり、意匠性を向上させることができる。
【0023】
さて、
図4は操作パネル20の一部を拡大して示すものであるが、操作パネル20には、明るさを調整する機能が設けられている。そして、ユーザのタッチ操作に応じて円環状に配置された5つのバーB1〜B5をそれぞれ点灯または消灯することにより、選択された明るさの目安を示すことができる。なお、図示は省略するが、バーB1〜B5の裏面側つまりは扉の内部には、それぞれ個別に光源7が設けられている。また、説明の簡略化のために図示は省略しているが、「明るさ調整」、「強」、「弱」の文字についても、個別の文字毎あるいは複数の文字毎に表示領域(R)が設けられている。
【0024】
このバーB1〜B5の輪郭が表示領域(R)に相当し、その表示領域(R)の内側に中央領域(R0)が形成されている。この場合、光源7からの光は、中央領域(R0)においては着色層5や遮光層6によって遮られることなく、パネル部材1の背面側からほぼ直接的にパネル部材1の表面2aつまりは扉の前面に到達する。一方、中央領域(R0)を除いた外縁領域では、透光層4の裏面側つまりは光源7側に着色層5や遮光層6が存在していることから、背面側からの光が直接的に扉の前面に到達することはないものの、蒸着層3の裏面側で反射したり、着色層5や遮光層6の端部で反射したりした光が間接的に到達することになる。
【0025】
このため、バーB1〜B5は、中央領域(R0)の輝度が相対的に高くなることから、視認性の高い表示が可能になる。一方、外縁領域では、輝度が相対的に低いことから、輪郭つまりは中央領域(R)と外縁領域との境界を目立たなくなるとともに、中央領域(R0)から表示領域(R)の外縁に向かって輝度が徐々に変化する態様となることから、人工的ではなく自然な感じでの表示が可能となる。
【0026】
また、パネル部材1は、光源7を点灯させている表示状態だけでなく、光源7を消灯している非表示状態においても、意匠性を損なうおそれを低減することができる。透光層4のみが存在し、着色層5や遮光層6が存在しない領域は、非表示状態においては、例えば黒等の暗色となっている。そのため、上記した従来パネル100の場合には、表示領域(R)の全てが暗色となるため、着色層5との境界がくっきりと見て取れるようになり、冷蔵庫10の色との差異が目立ってしまう可能性がある。
【0027】
これに対して、パネル部材1は、外縁領域すなわち透光層4に重なって着色層5が設けられている領域を備えている。このため、着色層5と暗部との間には、冷蔵庫10の色が若干薄まった領域が形成されることになる。これにより、着色層5との境界がぼやかされ、冷蔵庫10の色との差異が目立たなくなる。したがって、冷蔵庫10の色との差異が目立たなくなり、意匠性を損なうおそれを低減できる。
【0028】
以上説明した実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
パネル部材1は、透明な板材2と、板材2に設けられ、光源7からの光を透過させて表示領域(R)を形成する透光層4と、板材2に設けられ、表示領域の周囲を覆って光源7からの光を遮るとともに、一部が透光層4の縁に裏面側から重なっている遮光層6と、を備える。
【0029】
これにより、着色層5を必要且つ最小の厚みとすることができ、光量が低下して視認性が低下するといった機能面での不具合や、場所によって明るさや色彩にムラが出るといった意匠面での不具合等が生じるおそれを低減することができる。
また、表示領域(R)の輪郭を明確にしないことにより、いかにも人工的な表示態様ではなく、柔らかな緩衝的な表示態様にすることができる。
【0030】
パネル部材1は、板材2と遮光層6との間に設けられ、表示領域(R)の周囲を覆うとともに、一部が透光層4の縁に裏面側から重なっている着色層5を備える。これにより、パネル部材1の視覚的な色を任意に設定することができる。また、着色層5の厚みは透光層4の厚み(d)に影響を与えないことから、着色層5の厚みを任意に設定することができ、色合いを変える等、意匠性の向上を図ることができる。
【0031】
パネル部材1は、板材2の裏面側の全域を覆う蒸着層3を備える。この場合、実施形態のように透光性を有する金属蒸着膜で蒸着層3を形成することにより、金属光沢を与えることができ、高級感を出せる等、意匠性を向上させることができる。また、従来にない良い意味でのボケ感を伴う鏡像を得ることができる。
【0032】
パネル部材1は、冷蔵庫10等の家電製品の扉の前板として用いることができる。すなわち、パネル部材1を備えた冷蔵庫10によっても、機能面および意匠面での不具合が生じるおそれを低減することができる。例えば、相対的に面積が大きい扉に相対的に面積が小さい操作パネル20等の表示装置を設ける場合において、視認性の確保という表示装置としての本来の機能を実現することができるだけで無く、基本的には着色されている扉に対してデザインの統一感を損なうことがない等、意匠性を損なうことなく操作パネル20を配置することができる。また、意匠性を損なわないことから、ユーザの使い勝手の良い場所に操作パネル20等の表示装置を設けることができる。
【0033】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について、
図5から
図8を参照しながら説明する。第2実施形態では、板材2に設ける層の構成が第1実施形態と異なっている。
【0034】
例えば
図5に示すように、パネル部材1は、板材2の裏面2bの全域に透光層4を設けることができる。この場合、光源7からの光は、第1実施形態で説明したように中央領域(R0)よりも外側まで到達するため、表示領域(R)は、中央領域(R0)よりも広くなる。すなわち、着色層5および遮光層6は、表示領域(R)において、一部が透光層4の縁に重なっている。
【0035】
さて、
図5には便宜的に表示領域(R)の範囲を示しているものの、図示縦方向においては着色層5で遮られることが無いため、表示領域(R)の明確な境界が存在しなくなる。このため、中央領域(R0)において視認性の確保をしつつも、表示領域(R)の輪郭がぼんやりとした感じとなり、全体的に柔らかな印象の表示をすることができる。このような構成においても、第1実施形態と同様に、機能面および意匠面での不具合が生じるおそれを低減することができる等の効果を得ることができる。
【0036】
また、
図6に示すように、パネル部材1は、板材2に直接的に表示領域(R)となる透光層4を設け、表示領域(R)の周囲を覆って光源7からの光を遮るとともに、一部が透光層4の縁に裏面側から重なっている遮光層6とで構成することができる。このような構成においても、第1実施形態と同様に、機能面および意匠面での不具合が生じるおそれを低減することができる等の効果を得ることができる。
【0037】
また、
図7に示すように、着色層5を設けない構成とすることもできる。この場合、板材2に着色することで、任意に色とすることができる。このような構成においても、第1実施形態と同様に、機能面および意匠面での不具合が生じるおそれを低減することができる等の効果を得ることができる。
【0038】
また、
図8に示すように、重なり量を場所によって異ならせることもできる。この場合、相対的に重なり量(W1)が大きい図示情報側においては、表示領域(R)の輪郭をぼやかした感じで表現できるとともに、相対的に重なり量(W2)が小さい図示下方側においては、表示領域(R)の輪郭をくっきりと表現することができる。これにより、表示にメリハリが出る。
【0039】
より具体的には、例えば
図4に示したバーB1〜B5の内周側と外周側とで重なり量を異ならせることができる。あるいは、複数の表示領域(R)が設けられている場合に、表示領域毎に重なり量を異ならせることもできる。このような構成においても、第1実施形態と同様に、機能面および意匠面での不具合が生じるおそれを低減することができる等の効果を得ることができる。
【0040】
(その他の実施形態)
パネル部材1は、実施形態で例示した冷蔵庫10や洗濯機に限らず、単体の表示装置の前面パネルとして用いることができる。
実施形態で示した表示領域(R)の配置や文字等は例示であり、例示したものに限定されるものではない。
【0041】
各実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。本実施形態およびその変形は、発明の範囲および要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。