特許第6768448号(P6768448)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6768448
(24)【登録日】2020年9月25日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】加湿機及び空気清浄機
(51)【国際特許分類】
   F24F 6/00 20060101AFI20201005BHJP
   F24F 7/00 20060101ALI20201005BHJP
【FI】
   F24F6/00 G
   F24F7/00 B
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-203014(P2016-203014)
(22)【出願日】2016年10月14日
(65)【公開番号】特開2018-63102(P2018-63102A)
(43)【公開日】2018年4月19日
【審査請求日】2019年9月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】中山 雄介
(72)【発明者】
【氏名】藤井 伸裕
(72)【発明者】
【氏名】小池 岳男
【審査官】 渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−071474(JP,A)
【文献】 特開2004−116839(JP,A)
【文献】 特開2013−088019(JP,A)
【文献】 特開2017−161110(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 6/00
F24F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気口と送気口とを結ぶ送風路の中途に水を含侵させた加湿フィルタを配し、前記吸気口から前記送風路に導入される空気を前記加湿フィルタに通して気化水分を含む湿り空気とし、前記送気口から前記送風路の外部に送り出す気化式の加湿機において、
当該加湿機の設置面を視認可能とする下部光透過部と、
底面に透明部を有する水受け皿と、
前記水受け皿に貯留された水に光を照射し、水面の像を前記水受け皿の透明部を介して前記設置面に投影する光源部と、
前記加湿フィルタに供給する水を貯留すると共に、貯留した水から得られる水滴を前記水受け皿に滴下する滴下部と、を備えていることを特徴とする気化式の加湿機。
【請求項2】
前記滴下部は、
前記加湿フィルタに供給する水量に比例して滴下する水滴の量を増減させることを特徴とする請求項1に記載の加湿機。
【請求項3】
前記滴下部は、
前記水受け皿への水滴の滴下位置がランダムになるように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の加湿機。
【請求項4】
前記滴下部は、
前記水受け皿への水滴の滴下位置が当該水受け皿の中心から縁よりになるように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の加湿機。
【請求項5】
前記滴下部は、
前記水受け皿への水滴の滴下タイミングがランダムになるように構成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の加湿機。
【請求項6】
前記下部光透過部は、前記加湿機の外装部下部の全周囲に設けられ、下端部が前記設置面に至る透明な枠体を含むことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の加湿機。
【請求項7】
前記光源部による設置面への水面の像の投影範囲は、前記枠体の当該設置面の外形によって囲まれた範囲と等しいことを特徴とする請求項6に記載の加湿機。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1項に記載の加湿機を備えた空気清浄機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吸気口から送風路内に導入される空気を、水を含侵した加湿フィルタに通し、加湿フィルタの下流側に導出される気化水分を含む湿り空気を、送気口を経て送風路の外部に送り出すように構成された気化式の加湿機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康指向の高まりにより、室内の空気に適正な湿度を与えるための加湿機が広く用いられている。特に、水の加熱蒸発を伴わずに加湿を可能とする気化式の加湿機は、室内温度を変えずに湿度調節をなし得ることから、その普及が拡大している。
【0003】
気化式の加湿機は、吸気口と送気口とを結ぶ送風路の内部に水を含侵させた加湿フィルタと送風ファンとを配してなり、送風ファンの動作により吸気口を経て送風路内に導入される空気を加湿フィルタに通し、該加湿フィルタの下流側に送り出される気化水分を含む湿り空気を、送気口を経て室内に送り出すように構成されている。
【0004】
加湿フィルタは、高い含水性を有すると共に通気が可能な材料(不織布等)のシートであり、吸気口の内側に送風路内への導入空気との接触が可能となるように配してある。加湿フィルタは、定量の水を貯留する水受け皿に下部を浸漬させてあり、気化により失われた水分を水受け皿からの吸い上げにより補充するようになしてある。水受け皿の一側には貯水タンクが設けてあり、水受け皿の内部には、加湿フィルタの吸い上げによる水面の低下に応じて貯水タンク内の水が逐次補給され、常時定量の水が貯留されるように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、居住空間の加湿機能に付随して、運転時に部屋の照明、特にインテリア性を求めた光による演出を行う機能を持たせた加湿機も提案され、既に製品化もされている。本願出願人も先に特許出願を行い、LED等の発光体を設けて、水を収容する透明容器と、該透明容器の内部の水とを光らせる演出を行う加湿機を提案している(特許文献2参照)。特許文献2の加湿機では、発光体がイオン発生装置の駆動と連動して発光するように構成されており、光の演出により加湿機がイオンモードで動作していることをユーザに通知することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−331181号公報
【特許文献2】特開2005−055123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来の気化式の加湿機は、スチーム式や超音波式の加湿機に比べて運転状態がわかり難いといった問題がある。これは、スチーム式や超音波式の加湿機では、目視できるミスト(水の粒)を出すのに対して、気化式の加湿機では目視できない水蒸気を含んだ風を出すためである。ミストが出る構成では、その量や勢いから加湿機の運転状態を直観的に把握することができる。しかしながら、水蒸気を目視できないため、何らかの通知手段がないとユーザは運転状態を把握することができない。
【0008】
なお、運転状態とは、動作モードとは区別されるもので、加湿の能力を表す強運転や、弱運転といったもので、水切れ状態などを含むこともできる。例えば、動作モード「強」
では常時強運転が実施され、動作モード「弱」では常時弱運転が実施される。また、動作モード「自動」では、室内の湿度に応じて、強運転と弱運転との間で、運転が自動に切り換えられる。
【0009】
また、従来の加湿機において、ユーザへの動作モードの通知は、操作部にLEDなどの通知部を設けて行うことが主流であった。しかしながら、通知部が正面等の加湿機の一側に設けられている場合、通知部の位置する側のユーザには通知できるものの、通知部の位置しない側にいるユーザには通知できない。なお、加湿機の上面に通知部を設けることで全方位から視認できるようになるが、上を向いた通知部を斜めから見ることになるため、見易いとは言えない。
【0010】
これに対し、特許文献2の構成を採用して、光の演出にて動作モードを通知することで、全方位から視認可能な通知部を実現できる。しかしながら、運転状態の通知をこのような特許文献2の構成を採用して行ったとしても、色の違い等でしか通知できず、ミストを視認できるスチーム式や超音波式の加湿機のように、運転状態を直観的に伝えることはできない。つまり、ユーザは、直感的に加湿機の運転状態を把握することができない。
【0011】
本願発明は、このような課題に鑑みなされたもので、その目的は、ユーザが直感的に加湿機の運転状態を把握することができる気化式の加湿機を提供することにある。なお、本発明の気化式の加湿機には、吸い込んだ空気をヒーター等で加熱した後、加湿フィルタによって加湿するいわゆるハイブリッド式加湿機も含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る加湿機は、吸気口と送気口とを結ぶ送風路の中途に水を含侵させた加湿フィルタを配し、前記吸気口から前記送風路に導入される空気を前記加湿フィルタに通して気化水分を含む湿り空気とし、前記送気口から前記送風路の外部に送り出す気化式の加湿機において、当該加湿機の設置面を可視可能とする下部光透過部と、底面に透明部を有する水受け皿と、前記水受け皿に貯留された水に光を照射し、水面の像を前記水受け皿の透明部を介して前記設置面に投影する光源部と、前記加湿フィルタに供給する水を貯留すると共に、貯留した水から得られる水滴を前記水受け皿に滴下する滴下部と、を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、ユーザが直感的に加湿機の運転状態を把握することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の一形態の加湿機の内部構成を示す縦断面図である。
図2図1に示す加湿機の外観を示す斜視図である。
図3】上記加湿機を示すもので、(a)は正面図、(b)は背面図である。
図4】上記加湿機の駆動状態を把握するための原理を説明する図である。
図5】上記加湿機における水面の投影範囲を説明する図である。
図6】上記加湿機における実際に水面を投影した状態を示す図である。
図7】水滴の滴下位置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔実施形態1〕
以下、本発明の実施の形態について、説明すれば以下の通りである。
【0016】
(加湿機の概略説明)
図2は、本実施の形態の加湿機1の外観を示す斜視図である。図3の(a)は加湿機1の正面図、(b)はその背面図である。図2および図3の(a)(b)に示すように、加湿機1は、加湿対象となる室内に軸心を縦向きとして設置される裾広がりの円筒形のハウジング(外装部)2を備えている。該ハウジング2は、後述する水受け皿17の外周部を境に、不透明材料からなる本体ハウジング2aと、下部に位置する透明材料からなる透明ハウジング(下部光透過部)2bとに分割されている。
【0017】
本体ハウジング2aの周面であって、加湿機1の背面側には吸気口4が開設され、本体ハウジング2aの上端面には、送気口5が開設されている。吸気口4は、円筒形をなす本体ハウジング2aの周壁に、多数の吸気孔を並設して構成されている。吸気口4の内側には、吸気された空気から埃等を取り除くプレフィルタ8が取り付けられている。
【0018】
本体ハウジング2aの上端面における送気口5の周囲には、加湿機1に対する操作を行うための操作部(図示せず)が設けられている。なお、操作部の位置は、送気口5の周囲に限るものではなく、例えば、本体ハウジング2aにおける吸気口4の上方等、別の位置に設けてもよい。
【0019】
また、ここでは、加湿機1として縦に長い縦型の外観を有するものを例示するが、一例に過ぎず、横に長い横型であってもよく、形状も矩形状の外観を有するものや、半球形状など、どのような形であってもよい。
【0020】
図1は、本実施の形態の加湿機1の内部構成を示す縦断面図である。図1に示すように、本体ハウジング2aの内部には、吸気口4と送気口5とを連絡する送風路7が形成され、送風ファン9、貯水タンク10、集水トレー(滴下部)11、加湿フィルタ12、光源部15、イオン発生器16、水受け皿17等が配設されている。
【0021】
送風ファン9は、吸気口4から送風路7内に導入され、送風路7内を通って、送気口5を経て送風路7の外部にける気流を形成するものである。送風ファン9は、送風路7における吸気口4の開設位置よりも上に配設されている。図1の例では、送風ファン9としてシロッコファンを例示しているが、軸流ファンであってもよい。送風ファン9が駆動されると、本体ハウジング2aの下部周面に設けた吸気口4を経て送風路7の内部に空気が導入され、導入された空気は、図中に破線の矢符により示すように上向きに方向を変えて流れ、本体ハウジング2aの上部端面に設けた送気口5から外部に送り出される。
【0022】
イオン発生器16は、空気浄化作用を有する活性種を生成する、正イオンと負イオンの一方またはその両方を発生させるものであり、送風路7内部に配設される。ここでは、イオン発生器16は、正イオンと負イオンの両方を発生させる高圧ユニットからなる。高圧ユニットの正電極(図示せず)および負電極(図示せず)は、送風ファン9のケーシング内部に露出している。これにより、イオン発生器16から発生した正イオンと負イオンは、送風路7の内部を流れる気流に乗って送気口5から放出される。
【0023】
加湿フィルタ12は、送風路7の中途に設けられ、水を含侵し、当該加湿フィルタに送風路7を流れる空気(気流)に気化水分(水蒸気)を付与して加湿するものである。加湿フィルタ12は、例えば、不織布のシートを蛇腹状に折り重ねたものからなる。このような加湿フィルタ12は、送風路7の内部であって、本体ハウジング2aの下部周面に開設された吸気口4の内側に面して配設されている。
【0024】
加湿フィルタ12を構成する不織布は、高い含水性を有すると共に、通気が可能な材料であり、吸気口4から導入される空気は、図1中に矢印で示すように、加湿フィルタ12の外側から内側に抜け出し、送風ファン9を経て送気口5に送られる。
【0025】
加湿フィルタ12の下部を支える集水トレー11は、加湿フィルタ12へと供給する水を適量貯留するもので、周縁を上向きに立ち上げて皿形に成形されている。集水トレー11には、貯水タンク10を支持するタンク支持部13が設けられており、該タンク支持部13に貯水タンク10が着脱可能に設置される。集水トレー11には、設置された貯水タンク10から適量の水が供給される。このような集水トレー11は、本体ハウジング2aの一側の開口を経て着脱可能に構成されている。
【0026】
また、集水トレー11には、底面から所定距離離れた高さ位置に図示しない水位センサが取付けている。水位センサは、例えば、集水トレー11上の貯留水6から受ける浮力によって上下に揺動するフロートを備え、貯留水6の水面レベルが所定レベル以下となった場合にオン動作するように構成されたフロートスイッチである。水位センサは、運転中に集水トレー11内の貯留水6が不足していることを使用者に報知すべく設けられている。
【0027】
貯水タンク10は、給水口となる蓋がある方を下方に向けて集水トレー11上に設置される。これにより、貯水タンク10内の水が必要に応じて集水トレー11に供給される。
【0028】
集水トレー11の底部には、当該底部を貫通した、水滴の滴下用の針11aが複数本設けられている。この針11aは、浸透し易い素材の針からなる。このため、集水トレー11に貯留している水が針11aの先端から浸透圧によって水滴が滴となって落ちる。つまり、集水トレー11の下方に水滴が滴下されることになる。
【0029】
集水トレー11の下方には、水受け皿17が設けられ、当該集水トレー11に貯留された水の一部が針11aを伝って水滴となって滴下される。つまり、集水トレー11及び針11aは、水受け皿17に水滴を滴下する滴下部として機能する。集水トレー11の滴下機能としての詳細な説明は後述する。
【0030】
水受け皿17は、透明ハウジング2bの周面部内に設けられ、底面に透明部を有し、周縁を上向きに立ち上げて皿形に成形されている。ここで、水受け皿17の周縁は、透明ハウジング2bの内径とほぼ同じ径の円形状である。
【0031】
集水トレー11の下部にはさらに光源部15が設けられている。この光源部15は、水受け皿17の貯留水6に光を照射し、貯留水6の水面の像を、当該水受け皿17の底面の透明部を介して床面等の加湿機1が設置されている設置面に投影するものである。
【0032】
このような光源部15からの光にて、貯留水6の水面の像を設置面に投影し得るように、水受け皿17の底面(透明部)は透明材料から構成され、また、加湿機1の設置面が視認できるように、加湿機1の下部には、透明ハウジング2bが設けられている。このような光源部15は、例えばLEDからなる。LEDは、青色や黄色、赤色等の単色LEDでもよいが、フルカラーLEDとすることで、色の変化を楽しんだり、室内の装飾に合わせた色を選択したりすることが可能となり、多様性が増す。
【0033】
特に、本実施形態1に係る加湿機1においては、水受け皿17に水滴が滴下されて生じる波紋等の水面の像を光源部15によって当該加湿機1の設置面に投影することで、ユーザが直感的に加湿機の運転状態を把握するようになっている。
【0034】
(設置面への水面の像の投影)
図4は、集水トレー11から水受け皿17に滴下した水滴により生じる水面の像の投影原理を説明するための図である。
【0035】
集水トレー11には、上述したように、複数の針11aが底面を貫通するようにして設けられている。針11aは、浸透し易い素材の針からなっているため、集水トレー11に貯留している水が当該針11aの先端から浸透圧によって水滴を滴として落とすようになっている。つまり、針11aの先端から水受け皿17に向かって水滴が滴下されることになる。
【0036】
気化式の加湿機1では、運転状態になると、加湿フィルタ12への水の供給が始まる。つまり、集水トレー11への水の供給が開始され、当該集水トレー11に貯留する水が加湿フィルタ12に浸透し始める。この状態になってはじめて、集水トレー11の針11aの先端から浸透圧によって水滴が滴となって水受け皿17に滴下される。つまり、水受け皿17に水滴が滴下されていることは、加湿機1が運転状態にあることを意味する。この水受け皿17に滴下される水滴による波紋は、光源部15によって水面の像として加湿機1の設置面に投影される。従って、ユーザは、設置面に投影される水面の像を見るだけで容易に加湿機1が運転状態にあるか否かを把握することができる。つまり、ユーザは直感的に加湿機の運転状態を把握することができる。
【0037】
また、集水トレー11に設けられた針11aは、それぞれ太さ、長さの違う針からなり、集水トレー11の底面にランダムに設けられている。例えば太い針では、水滴が大きいので、水受け皿17に形成される波紋が大きくなる。細い針では、水滴が小さいので、水受け皿17に形成される波紋が小さくなる。また、長い針では、水滴が滴となって水受け皿17に滴下されるまでの時間が長く、短い針では、水滴が滴となって水受け皿17に滴下されるまでの時間が短くなる。このように、太さ、長さの違う針11aを集水トレー11の底面にランダムに設けることで、水受け皿17において水滴の滴下により生じる波紋の位置及び大きさがランダムになり、さらに、水滴の滴下タイミングもランダムになる。これにより、水受け皿17から投影される水面の像を見ているユーザは、常に同じ滴下位置、同じタイミングで水滴を滴下する場合のような人工的な印象を廃し、水滴によって生じる波紋が自然に形成されているように感じることができる。
【0038】
また、透明ハウジング2bは、加湿機1の下部外周をなす全体が可視可能な透明材料から形成されることで、後述する光源部15による水面の像の投影時、あたかも加湿機1が設置面から浮き上がっているかのように見せることができる。但し、透明ハウジング2bは、必ずしも全体が透明材料からなる構成に限定されるものではなく、不透明な部分が含まれていてもよい。
【0039】
(加湿機1の動作)
以上のように構成された加湿機1は、図2に示すように、本体ハウジング2aを上とし、透明ハウジング2bを下として加湿対象となる室内に設置し、貯水タンク10を装着して使用される。
【0040】
操作部(図示せず)に設けられた運転スイッチをオンすると、本体ハウジング2aの内部の送風ファン9が回転駆動され、イオン発生器16も正イオン,負イオンの発生を開始する。また、光源部15も点灯される。送風ファン9の回転駆動により、送風路7の内部に前述したように気流が発生し、室内の空気が吸気口4およびプレフィルタ8を経て送風路7の内部に導入され、吸気口4の内側に配された加湿フィルタ12を通って上向きに方向を転換し、送気口5を経て室内に送り出される。送風路7を流れる気流には、イオン発生器16から発生された正イオン,負イオンも混入している。
【0041】
加湿フィルタ12には、前述したように、吸気口4から導入される空気が通気しており、加湿フィルタ12に含まれた水は、通気との接触により気化し、該通気中に混入する。これにより、送風路7内で前述の如く方向転換して送気口5から室内に送り出される空気は湿り空気となり、前記室内を加湿することができる。室内を加湿する能力は、送風ファン9の駆動制御により送風量を変更することで、調整することができる。つまり、加湿能力の高い強運転では、送風ファン9による送風量が多くなり、加湿能力の低い弱運転では送風量が少なくなる。
【0042】
このとき、集水トレー11上に配置された加湿フィルタ12は、加湿能力の高い強運転では、給水量が多くなるため、当該集水トレー11に設けられた針11aから水滴が水受け皿17に滴下されるまでの時間が速くなる。このため、水受け皿17の水面では、短時間で多くの波紋が形成され、投影される水面の像は速く揺らめく。逆に、加湿能力の高い強運転では、給水量が少なくなるため、当該集水トレー11に設けられた針11aから水滴が水受け皿17に滴下されるまでの時間が遅くなる。このため、水受け皿17の水面では、加湿能力の高い強運転の場合よりも、少ない波紋が形成され、投影される水面の像は遅く揺らめく。つまり、前記集水トレー11御及び針11aは、前記加湿フィルタ12に供給する水量に比例して滴下する水滴の量を増減するように制御し、運転モードの違いを表現させている。
【0043】
これにより、加湿機1のユーザは、加湿機1の近くに行って操作部(図示せず)の表示を確認するまでもなく、床面等の加湿機1の設置面に投影される水面の像を目視することで、水面の像が速く揺らめいている場合は強運転であり、水面の像が遅く揺らめいている場合は弱運転であると、直観的に知ることができる。
【0044】
また、加湿機1の運転が停止した場合、集水トレー11から水受け皿17に水滴が滴下されないので、水面の像が変化しない。このため、設置面に投影される水面の像は揺らめかない。したがって、加湿機1のユーザは、床面等の設置面に投影される像をみることで、加湿機1が停止している状態であることも直観的に知ることができる。
【0045】
また、光源部15が複数の色を発光できる構成であれば、動作モード毎に色を設定してもよい。動作モードの1つである自動モードは、室内の湿度の検出結果に応じて強運転と弱運転とが繰り返される。前述したように、気化式の加湿機から出る湿り空気では、含まれている水分を目視できないため、自動モードが設定されている場合、室内の湿度の状態が分からなかった。しかしながら、自動モードが設定されていても、水面の像を目視することで、強運転あるいは弱運転の何れの運転が行われているかを一目瞭然に知ることができる。これにより、スチーム式や超音波式と同様に、直間的に運転状態をユーザに通知することができる。
【0046】
さらに、従来の貯水タンクやその内部の水を光らせる演出に比べて、投影される像に動きがあるので、光源部15の光による演出効果が高く、インテリア性に優れている。
【0047】
なお、本実施の形態では、運転状態として、強運転および弱運転を例示したが、例えば、強運転と弱運転との間に強度がこれらの中間である中運転を設けてもよい。
【0048】
以下の実施形態2では、加湿機1の駆動を直感的に把握できる点について説明する。
【0049】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について説明すれば、以下のとおりである。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0050】
図5は、透明ハウジング2bの設置面における外枠で囲まれた領域(範囲)18を示す図である。図6は、領域18に波紋19の写った投影画像を投影した状態を示す図である。
【0051】
本実施形態では、図5に示すように、光源部15による設置面への水面の像の投影範囲(斜線領域)は、外装部2の下部の全周囲に設けられ、下端部が前記設置面に至る透明な枠体(透明ハウジング2b)の外形によって囲まれた領域18と等しくなるように設定されている。これにより、図6に示すように、水受け皿17に形成された水面の像の波紋19の写った投影画像は、透明ハウジング2bの外枠によって囲まれた領域18全てに投影されるので、波紋19の写った投影画像が透明ハウジング2bの外枠から外れた範囲に投影された場合に比べて、加湿機1が運転状態であることを直感的に把握することができる。
【0052】
以下の実施形態3では、水受け皿17の水面の像(波紋による像)の人工的な印象を廃する方法について説明する。
【0053】
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について、説明すれば、以下のとおりである。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0054】
図7は、水受け皿17に形成される水面の像を領域18に投影した波紋19の写った投影画像の一例を示す図である。
【0055】
本実施形態では、前記滴下部を構成する集水トレー11と針11aを、前記水受け皿17への水滴の滴下位置が当該水受け皿17の中心から縁よりになるように構成する。これにより、図7に示すように、波紋19の形成位置を領域18の中心ではなく中心からずれた周縁部に波紋19が形成される。ここで、波紋19が形成される位置は、領域18の中心から最も離れた外縁部に近接した位置であることが好ましいが、領域18の中心から少しでもずれていればよい。これにより、波紋19が領域18の中心位置に形成される場合のような人工的な印象を廃することが可能となる。
【0056】
なお、前記実施形態1〜3で説明した加湿機1は、空気清浄機に搭載してもよい。また、加湿機が搭載可能な家電、電子機器等にも上記加湿機1を搭載してもよい。
【0057】
さらに、本発明の態様に係る気化式の加湿機には、吸い込んだ空気をヒーター等で加熱した後、加湿フィルタによって加湿するいわゆるハイブリッド式加湿機も含まれる。
【0058】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る加湿機は、気化式の加湿機1は、吸気口4と送気口5とを結ぶ送風路7の中途に水を含侵させた加湿フィルタ12を配し、前記吸気口4から前記送風路7に導入される空気を前記加湿フィルタ12に通して気化水分を含む湿り空気とし、前記送気口5から前記送風路7の外部に送り出す気化式の加湿機1において、当該加湿機1の設置面を可視可能とする下部光透過部(透明ハウジング2bの周面部)と、底面に透明部を有する水受け皿17と、前記水受け皿17に貯留された水に光を照射し、水面の像を前記水受け皿17の透明部を介して前記設置面に投影する光源部15と、前記加湿フィルタ12に供給する水を貯留すると共に、貯留した水から得られる水滴を前記水受け皿17に滴下する滴下部(集水トレー11、針11a)と、を備えている。
【0059】
従って、上記の構成によれば、滴下部が、加湿フィルタに供給するための貯留した水から得られる水滴を前記水受け皿に滴下することで、当該水受け皿の水面には波紋が形成される。この波面が形成された水面は、光源部により設置面に投影される。設置面に投影された水面の像は、滴下部からの水滴の滴下に連動して変化する。水受け皿に水滴が滴下されているということは加湿機が運転状態にあることを示しているため、ユーザは、設置面に投影された水面の像を見るだけで加湿機が運転状態にあることを直感的に把握することが可能となる。
【0060】
本発明の態様2に係る加湿機1は、上記態様1において、前記滴下部(集水トレー11、針11a)は、前記加湿フィルタ12に供給する水量に比例して滴下する水滴の量を増減させてもよい。
【0061】
上記構成によれば、滴下部から滴下する水滴の量が、加湿フィルタに供給する水量に比例して増減することで、水受け皿の水面の像が水の滴下の量の増減に連動して変化する。例えば加湿フィルタへの水の供給量が増えれば、水受け皿に滴下される水の量も増えるので、水の滴下量に連動して水面の像が大きく揺らめく。一方、加湿フィルタへの水の供給量が減れば、水受け皿に滴下される水の量も減るので、水の滴下量に連動して水面の像が小さく揺らめく。ここで、加湿フィルタへの水の供給量が増えることは、加湿機の加湿強度が強い場合を示し、加湿フィルタへの水の供給量が減ることは、加湿機の加湿強度が弱い場合を示している。従って、加湿フィルタへの水の供給量、すなわち加湿機の加湿強度に連動して加湿機の設置面に投影された水面の像の揺らめき度合いが変化するので、ユーザは、加湿機の設置面に映し出される水面の像を見るだけで、加湿機の加湿強度等の運転状態を容易に把握することが可能となる。
【0062】
本発明の態様3に係る加湿機1は、上記態様1または2において、前記滴下部(集水トレー11、針11a)は、前記水受け皿17への水滴の滴下位置がランダムになるように構成されていてもよい。
【0063】
上記の構成によれば、水受け皿に滴下される水滴の滴下位置がランダムであるため、水滴の滴下位置が規則正しい場合のような人工的な印象を廃することができる。
【0064】
本発明の態様4に係る加湿機1は、上記態様1または2において、前記滴下部(集水トレー11、針11a)は、前記水受け皿17への水滴の滴下位置が当該水受け皿17の中心から縁よりになるように構成されていてもよい。
【0065】
上記の構成によれば、受け皿への水滴の滴下位置が当該水受け皿の中心から縁よりになるので、投影された水面の像では、常に投影面の中心からずれた位置から水滴の滴下による波紋が生じる。これにより、常に投影面の中心位置に水滴が滴下する場合のような人工的な印象を廃することができる。
【0066】
本発明の態様5に係る加湿機1は、上記態様1〜4の何れか1態様において、前記滴下部(集水トレー11、針11a)は、前記水受け皿17への水滴の滴下タイミングがランダムになるように構成されていてもよい。
【0067】
上記の構成によれば、水受け皿に滴下される水滴の滴下タイミングがランダムであるため、水滴の滴下タイミングが規則正しい場合のような人工的な印象を廃することができる。
【0068】
本発明の態様6に係る加湿機1は、上記態様1〜5の何れか1態様において、前記下部光透過部(透明ハウジング2bの周面部)は、加湿機1の外装部(ハウジング2)下部の全周囲に設けられ、下端部が前記設置面に至る透明な枠体(透明ハウジング2b)からなってもよい。
【0069】
上記の構成によれば、水面の像の投影時、あたかも加湿機1が設置面から浮き上がっているかのように見せることができる。
【0070】
本発明の態様7に係る加湿機1は、上記態様6において、前記光源部15による設置面への水面の像(波紋19)の投影範囲は、前記枠体の当該設置面の外形によって囲まれた範囲(領域18)と等しいことが好ましい。
【0071】
上記の構成によれば、水面の像の写った投影画像が枠体の外枠から外れた範囲に投影された場合に比べて、加湿機が駆動していることを直感的に把握することができる。
【0072】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0073】
1 加湿機
2 ハウジング(外装部)
2a 本体ハウジング
2b 透明ハウジング(下部光透過部、枠体)
4 吸気口
5 送気口
6 貯留水
7 送風路
8 プレフィルタ
9 送風ファン
10 貯水タンク
11 集水トレー(滴下部)
11a針(滴下部)
12 加湿フィルタ
13 タンク支持部
15 光源部
16 イオン発生器
18 領域(範囲)
19 波紋
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7