(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6768452
(24)【登録日】2020年9月25日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】ピクセル非一様性補正
(51)【国際特許分類】
G01J 1/44 20060101AFI20201005BHJP
G01J 1/02 20060101ALI20201005BHJP
H04N 5/33 20060101ALI20201005BHJP
H04N 5/369 20110101ALI20201005BHJP
H04N 5/357 20110101ALI20201005BHJP
【FI】
G01J1/44 D
G01J1/02 Q
H04N5/33
H04N5/369
H04N5/357
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-217877(P2016-217877)
(22)【出願日】2016年11月8日
(65)【公開番号】特開2017-90457(P2017-90457A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2019年5月9日
(31)【優先権主張番号】14/939,449
(32)【優先日】2015年11月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516320322
【氏名又は名称】センサーズ・アンリミテッド・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン・ナゼミ
【審査官】
蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−289712(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0340154(US,A1)
【文献】
特表2003−532111(JP,A)
【文献】
特開2005−236550(JP,A)
【文献】
特開2006−013885(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/00−1/60
H04N 5/30−5/378
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度変化に対するピクセル非一様性の補正方法であって、
焦点面アレイ(FPA
)の温度であるFPA温度を測定すること、
前記FPAに対してピクセル毎に非一様性補正マップを算出することであって、各ピクセルに対する非一様性補正が、前記FPA温度と実験的に導出された係数との関数であるよう前記非一様性補正マップを算出すること、及び
温度依存非一様性補正画像データを生成するために、前記FPAからのイメージング・データへ前記非一様性補正マップを適用することを含
み、
各ピクセルに対する前記非一様性補正が前記FPA温度及び実験導出係数の関数となる前記算出が、次式によって支配され、
【数1】
前記式中の、δIcが、各々のピクセルに関する、それの暗レベルから所望補正値への変化を表し、Irawが、デジタル数字でのピクセルの生の値であり、Tmax及びTminが、正規化FPA温度Tに対する、各々、最高及び最低温度であり、p0、p1、ならびにa0、a1、a3及びa5が、実験的に導出された係数である
、方法。
【請求項2】
前記非一様性補正マップを適用することが、前記FPAの前記温度を制御することなく実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記FPA温度及び実験導出係数の前記関数が、前記FPA温度に基づき、各々のピクセルのレベルにおける変化を、所望の補正値へ近似することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記FPAが、バッファー付きカレント・ミラー・ピクセル・アーキテクチャを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記FPAが、赤外イメージングのためのInGaAs材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
焦点面アレイ(FPA)、
FPA温度を測定するために、作動可能に結合された温度センサ、及び
前記FPA及び温度センサへ作動可能に結合されたモジュールであって、前記FPA温度と実験的に導出された係数との関数として、前記FPAに対してピクセル毎に非一様性補正マップを適用する、及び、温度依存非一様性補正画像データを生成するために、前記FPAからの出力を調整するよう前記非一様性補正マップを適用する前記モジュールを含
み、
前記モジュールが、次式に支配される前記FPA温度及び実験導出係数の関数として、前記FPAに対してピクセル毎に前記非一様性補正マップを算出するように構成され、
【数2】
前記式中の、δIcが、各々のピクセルに関する、それの暗レベルから所望補正値への変化を表し、Irawが、デジタル数字でのピクセルの生の値であり、Tmax及びTminが、正規化FPA温度Tに対する、各々、最高及び最低温度であり、p0、p1、ならびにa0、a1、a3及びa5が、実験的に導出された係数である、イメージング・システム。
【請求項7】
前記FPAの温度制御のために結合される熱電冷却デバイスが全く存在しない、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記FPAの温度制御のために結合される温度制御デバイスが全く存在しない、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記FPA温度及び実験導出係数の関数が、各々のピクセルの暗レベルにおける変化を、前記FPA温度での所望の補正値へ近似することを含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項10】
前記FPAが、バッファー付きカレント・ミラー・ピクセル・アーキテクチャを含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項11】
前記FPAが、赤外イメージングのためのInGaAs材料を含む、請求項6に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府委託による研究または開発に関する声明
この本発明は、米国海軍から授与された契約番号N00014−14−C−0061、及び、海兵隊システム・コマンド(MARCORSYSCOM)を通して授与された契約番号W15P7T−06−D−E402/S3及びW15P7T−10−D−D413/R23Gの下で、政府の支援を受けて達成された。米国政府は、本発明に特定の権利を有する。
【0002】
本開示は、イメージングに関し、特に、イメージング・システムに使用されるような焦点面アレイに関する。
【背景技術】
【0003】
典型的な焦点面アレイ(FPA)は、製造上のバラツキなどに起因して、動作にピクセル毎の変動がある。この変動は、正確な画像データを生成するために、典型的に、各ピクセルを較正することによって、及び、ピクセル毎の較正データを、ピクセルからの信号を補正するように使用される補正マップとして保存することによって対処される。ピクセル性能は温度の関数として変化するため、補正マップが作成された温度が、システムが最も正確な画像を生成する温度である。すなわち、FPAの温度変化は、補正マップの有効性を低減する。非一様性は、典型的に、低光レベルで最も顕著である。この問題に対する典型的な解決策は、FPAの温度を制御するために、熱電冷却を利用することである。熱電冷却が一定の、既知の温度をFPAに維持し、また、その既知の温度に対応する補正マップが使用される限り、FPAは、周囲温度に関係なく、正確な画像データを生成するために使用できる。
【0004】
そのような従来の方法及びシステムは、概して、それらの意図された目的を満たすと見なされている。しかしながら、今なお、本分野においては、イメージング技術を向上させる必要がある。本開示は、この必要性に対する解決策を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
温度変化に対するピクセル非一様性の補正方法は、FPA温度を判定すること、及び、FPAに対してピクセル毎に非一様性補正マップを算出することを含む。この方法における各ピクセルに対する非一様性補正は、FPA温度と、実験的に導出した係数との関数である。この方法は、また、温度依存非一様性補正画像データを生成するために、非一様性補正マップを、FPAからのイメージング・データに適用することを含む。
【0006】
非一様性補正マップの適用は、FPAの温度を制御することなく実行できる。FPA温度及び実験導出係数の関数は、FPA温度に基づき、各々のピクセルの暗レベルにおける変化を所望の補正値へ近似することを含むことができる。
【0007】
各ピクセルに対する非一様性補正がFPA温度及び実験導出係数の関数である、ピクセル毎の非一様性補正マップの算出は、次式によって支配されてもよい。
【0008】
【数1】
【0009】
上式において、δIcは、各々のピクセルに関する、それの暗レベルから所望補正値への変化を表し、Tは、デジタル数字でのFPA温度であり、Irawは、デジタル数字でのピクセルの生の値であり、T
max及びT
minは、正規化温度Tに対する、各々最高及び最低温度、例えば最高及び最低作動温度であり、p0、p1、ならびにa
0、a
1、a
3及びa
5は、実験的に導出された係数である。
【0010】
イメージング・システムは、焦点面アレイ(FPA)を含む。FPA温度を測定するために、温度センサが作動可能に結合される。上記説明のように、ピクセル毎に非一様性補正マップを算出するために、また、温度依存非一様性補正画像データを生成するために、FPAの出力を調節するよう非一様性補正マップを適用するために、FPA及び温度センサへ、モジュールが作動可能に結合される。
【0011】
FPAの温度制御のために、温度制御デバイス、例えば熱電冷却デバイスが結合される必要は全くない。FPAは、バッファー付きカレント・ミラー・ピクセル・アーキテクチャを含んでもよい。また、FPAが、赤外イメージングのためにInGaAs材料を含むことも想定される。
【0012】
本件開示のシステム及び方法の、これらの及び他の特徴は、図面と併せて、好適な実施形態の以下の詳細説明を考察すれば、当業者には容易に明らかになる。
【0013】
本件開示に関わる当業者が、過度の実験を行わずに、本件開示のデバイス及び方法を製作及び使用する方法を容易に理解できるよう、特定の図面を参照しながら、以下に好適な実施形態を詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本開示に従って構築されたイメージング・システムの例示的実施形態を表す概略図であり、焦点面アレイ(FPA)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面を参照する。図面内の類似参照数字は、本件開示の類似構造形態または態様を特定する。制限ではなく、説明及び図解の目的で、
図1は、本開示によるイメージング・システムの例示的実施形態の一部を示す。そのイメージング・システムは、全体として参照文字100が付されている。本明細書に説明のシステム及び方法は、非温度制御焦点面アレイを使用する正確なイメージングのために使用可能である。
【0016】
イメージング・システム100は、焦点面アレイ(FPA)102、及び
図1内に三つの大きな矢印によって示すようにFPA102上に画像の焦点を定めるレンズ光学系101を含む。FPA102は、例えば、ピクセルの240×612のグリッドを有する二次元アレイ等、いずれの適切なアレイ・タイプであってもよい。しかし、この開示の範囲を逸脱することなく、一次元アレイを含んで、他の適切なアレイ構成を使用することも可能である。
【0017】
温度センサ106は、読み出し集積回路ROIC104へ作動可能に結合される。FPA102とROIC104とは相対温度平衡状態にあるため、温度センサ106は、FPA102の温度を正確に表すのに十分な温度読み取りを提供する。ROIC104は、イメージングのためにアレイからの電気信号を調節するために、FPA102へ作動可能に結合される。ROIC104へは、モジュール112が作動可能に結合される。このモジュール112は、ROIC104からの信号が、信号出力のために調節可能なよう、フィールドプログラマブル・ゲートアレイ(FPGA)内のもの等の、埋め込みロジックで解析されるよう、エレクトロニック・アーキテクチャを提供する。モジュール112内では、ROIC104からの入力に基づいて、新しい制御値VGain、ゲイン電圧が算出される。それから、所望レベルのゲイン補整を成就するために、その新しい制御値がROIC104内に設定される。FPA102の温度制御のために、熱電冷却デバイス等の温度制御デバイスが結合される必要は全くない。FPA102は、バッファー付きカレント・ミラー・ピクセル・アーキテクチャまたは他の適切なアーキテクチャを含むことができる。また、FPA102が、赤外イメージングのために、InGaAs材料を含むことも想定される。
【0018】
温度変化に対する、例えば、システム100のピクセル非一様性の補正方法は、例えば、センサ106を使用してFPA温度を測定すること、及び、FPA、例えばFPA102に対して、ピクセル毎に非一様性補正マップを算出することを含む。この場合の、各ピクセルに対する非一様性補正は、FPA温度及び実験導出係数の関数である。この方法は、また、温度依存非一様性補正画像データを生成するためにFPAの出力を調節するよう、FPA温度で非一様性補正マップを適用することを含む、その補正画像データは、例えばモジュール112によって出力できる。
【0019】
非一様性補正マップの適用は、FPA102の温度を制御することなく実行可能である。FPA温度、基準温度でのシステム非一様性補正及び実験導出係数の関数は、各々のピクセルの暗レベルにおける変化を、所望の補正へ近似することを含むことができる。
【0020】
従来の非一様性補正は、絶対基準からピクセルを補正するモデルを利用する。このことは、ピクセルが、入力デジタル・レベルと温度とのペアのためのデジタル・レベルになるよう補正されることを意味する。対照的に、この実施例で使用されるモデルは、相対基準において任意のピクセルを補正するアプローチを利用する。このことは、ピクセルが、ノーマルからの差を最小にするよう補正されることを意味する。オフセットからのゲインにおける変化は、滑らかであり、モデル化が著しく容易である。以下の計算は、非一様性、及び較正係数の数を低減する、または最小化するモデルに由来する。
【0021】
各ピクセルに対する非一様性補正がFPA温度及び実験導出係数の関数である、ピクセル毎の非一様性補正マップの算出は、次式に支配されてもよい。
【0023】
上式において、δIcは、各々のピクセルに関する、それの暗レベルから所望補正値への変化を表し、Tは、デジタル数字でのFPA温度であり、Irawは、デジタル数字でのピクセルの生の値であり、T
max及びT
minは、正規化温度Tに対する、各々、最高及び最低温度、例えば最高及び最低作動温度などであり、p0、p1、ならびに、a
0、a
1、a
3及びa
5は、実験的に導出された係数である。
【0024】
本明細書で説明するシステム及び方法は、FPA温度及び光レベルの範囲に渡って、ピクセル毎の非一様性を補正するために使用できる。本明細書に開示のシステム及び方法を利用する潜在的な利点は、イメージング・システムから、熱電冷却デバイス等の、温度制御のためのハードウェアを排除することを含む。また、温度制御がFPAの温度を部分的にのみ制御するハイブリッド・システムの使用も想定される。そのケースでは、残存するFPA温度誘発非一様性が、本明細書に開示の技術を利用することで補正可能である。温度制御デバイスの低減または排除は、電力消費及びハードウェア・サイズへの主要な要因の排除を可能にする。また、非温度制御(または部分的非温度制御)イメージング・システムにおける温度変化に対してシステム・ゲイン補正が行われた場合、そのような補正は、本明細書に開示の非一様性補正のためのデジタル負荷を有利に低減可能であることも想定される。
【0025】
上記説明及び図示のように、本開示の方法及びシステムは、周囲温度の範囲に渡って正確なイメージング・データを提供することに加え、温度制御の必要性を低減または排除することを含む優れた特性を有するイメージング・システムを提供する。好適な実施形態を参照しながら、本件開示の装置及び方法を図示及び説明したが、当業者は、本件開示の範囲を逸脱することなく、それらへの変形例及び/または修正例を容易に理解することができる。
【符号の説明】
【0026】
100 イメージング・システム
101 レンズ光学系
102 焦点面アレイ(FPA)
104 読み出し集積回路(ROIC)
106 温度センサ
112 モジュール