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特許6768457耐力壁の断熱構造及び耐力壁の断熱材取付方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6768457
(24)【登録日】2020年9月25日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】耐力壁の断熱構造及び耐力壁の断熱材取付方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/76 20060101AFI20201005BHJP
   E04B 2/56 20060101ALI20201005BHJP
【FI】
   E04B1/76 500F
   E04B2/56 645B
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-220634(P2016-220634)
(22)【出願日】2016年11月11日
(65)【公開番号】特開2018-76747(P2018-76747A)
(43)【公開日】2018年5月17日
【審査請求日】2019年10月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 勝也
【審査官】 松本 隆彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−005593(JP,A)
【文献】 特開2004−076315(JP,A)
【文献】 特開2004−076319(JP,A)
【文献】 特開2014−047522(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0021172(US,A1)
【文献】 特開平9−96036(JP,A)
【文献】 特開平5−98652(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/76
E04B 2/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端の直線部の間に斜め部と直線部とが交互に設けられたラチス材が一対の縦柱の間に配置されて、前記縦柱の一方と他方とに前記ラチス材の前記直線部が交互に接続されたラチス柱と、
前記ラチス柱の屋外側に設けられた外壁パネルと、
一対の前記縦柱の間における前記外壁パネルの所定位置を除いて前記ラチス材の前記外壁パネル側を覆う複数の第1断熱材と、
屋内側から一対の前記縦柱の間における前記ラチス材と前記外壁パネルとの間に取り付け可能とされ、前記第1断熱材の間又は下側の前記第1断熱材の下端から一対の前記縦柱の下端部の間を覆う第2断熱材と、
を備える耐力壁の断熱構造。
【請求項2】
一対の前記縦柱の一方の縦柱側の直線部が一対の前記縦柱の他方の縦柱側の直線部より長くされると共に、前記一方の縦柱と前記直線部との間に、直線部の上下方向長さより短くされた支持部材が設けられて、前記支持部材を介して前記直線部が前記一方の縦柱に接続されており、
前記第2断熱材は、前記他方の縦柱の前記直線部に重ならず、前記一方の縦柱の前記直線部に重なるように設けられている請求項1に記載の耐力壁の断熱構造。
【請求項3】
両端の直線部の間に斜め部と直線部とが交互に設けられたラチス材が一対の縦柱の間に配置されて、前記縦柱の一方と他方とに前記ラチス材の前記直線部が交互に接続されたラチス柱、及び前記ラチス柱の屋外側に設けられた外壁パネルを含む耐力壁に断熱材を取り付ける耐力壁の断熱材取付方法であって、
一対の前記縦柱の間における前記外壁パネルの所定位置を除いて前記ラチス材の前記外壁パネル側を覆う複数の第1断熱材を、前記外壁パネルの取り付け前に前記ラチス柱に取り付け、
屋内側から一対の前記縦柱の間における前記ラチス材と前記外壁パネルとの間に取り付け可能とされ、前記第1断熱材の間又は下側の前記第1断熱材の下端から一対の前記縦柱の下端部の間までを覆う第2断熱材を、前記外壁パネルが取り付けられた前記ラチス柱の屋内側から取り付けることを特徴とする耐力壁の断熱材取付方法。
【請求項4】
前記ラチス柱に予め前記第1断熱材を取付けると共に、前記第2断熱材を前記ラチス柱に着脱可能に取り付けておき、
前記外壁パネルを取付ける際に、前記ラチス柱から前記第2断熱材を取り外し、
前記外壁パネルを取付けた後に、前記第2断熱材を前記ラチス柱に取り付ける請求項3記載の耐力壁の断熱材取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐力壁の断熱構造及び耐力壁の断熱材取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、鉄骨造において耐力壁としてラチス柱が用いられた建物が記載されている。ラチス柱は、角形鋼などを用いた一対の縦材が上下の梁の間に配置されており、一対の縦材の間に、縦材に対して斜め方向に延びるように丸鋼材などを用いたラチス材が設けられる。ラチス材は、斜め部分と直線部分とが交互に形成されて、直線部分において縦材に接合されている。
【0003】
一方、住宅などの建物としては、断熱性が向上された高断熱性建物が要求されており、このために、建物の外壁部に断熱構造が採用されている。外壁部の断熱構造としては、柱を挟むように設けられる外壁パネルと屋内パネルとの間に板状に形成された断熱材が充填配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−047522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、軸組工法を用いた建物では、鉄骨の骨組みが形成された状態で外壁パネルが取り付けられ、骨組みが外壁パネルにより囲われている。断熱材は、外壁パネルが取り付けられた後の建物内部の施工に合わせて、屋内側から外壁部の柱の間に充填されて取り付けられる。この際、断熱材と外壁パネルとの間の空間を狭めるように断熱材が取り付けられることで、外壁部に断熱性が付与される。
【0006】
しかしながら、ラチス柱を用いた耐力壁が設けられていると、縦材(柱)の間に、上下方向に複数のラチス材が設けられていることで、断熱材を屋内側からラチス柱と外壁パネルとの間に取り付けるのが難しい作業となっている。このため、ラチス柱部分に対しては、外壁パネルの取り付けに先立って、断熱材を取り付けておくこともが考えられるが、外壁パネルを取り付ける際に、建物内側から外壁パネルの出面を調整する必要があり、断熱材が取り付けられていると、外壁パネルの取付調整の作業の妨げとなってしまう。
【0007】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、外壁パネルの取付調整の作業の妨げとならない耐力壁の断熱構造及び耐力壁の断熱材取付方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための第1の態様は、両端の直線部の間に斜め部と直線部とが交互に設けられたラチス材が一対の縦柱の間に配置されて、前記縦柱の一方と他方とに前記ラチス材の前記直線部が交互に接続されたラチス柱と、前記ラチス柱の屋外側に設けられた外壁パネルと、一対の前記縦柱の間における前記外壁パネルの所定位置を除いて前記ラチス材の前記外壁パネル側を覆う複数の第1断熱材と、屋内側から一対の前記縦柱の間における前記ラチス材と前記外壁パネルとの間に取り付け可能とされ、前記第1断熱材の間又は下側の前記第1断熱材の下端から一対の前記縦柱の下端部の間を覆う第2断熱材と、を備える耐力壁の断熱構造。
【0009】
第1の態様の耐力壁には、両端の直線部の間に斜め部と直線部とが交互に形成されているラチス材が2本の縦柱の間に配置されたラチス柱が適用されている。ラチス柱は、直線部が一対の縦柱に交互に接続されており、一対の縦柱の間に掛け渡された斜め部が上下方向に複数配置されている。
【0010】
第1の態様では、一対の縦柱の間で、ラチス材と外壁パネルとの間に断熱材が配置されている。断熱材は、縦柱の間において外壁パネルの所定位置を除いてラチス材の外壁パネル側を覆う複数の第1断熱材、及び屋内側から一対の縦柱の間のラチス材と外壁パネルとの間に取り付け可能とされ、第1断熱材の間又下側の第1断熱材の下端から一対の縦柱の下端部の間を覆う第2断熱材により形成されている。また、外壁パネルの所定位置としては、外壁パネルの出目などを調整するための位置が適用される。
【0011】
これにより、ラチス材と外壁パネルとの間に第1断熱材が取り付けられていても、外壁パネルの所定位置に対応する部分に第1断熱材が取り付けられていないことで、屋内側から外壁パネルの取付調整の作業が可能となる。また、第2断熱材は、屋内側からラチス材と外壁パネルとの間に挿入して取り付けできて、第1断熱材の間又は下側の第1断熱材の下端から縦柱の下端部の間までを塞ぐので、高い断熱性が得られる。
【0012】
第2の態様は、第1の態様において、一対の前記縦柱の一方の縦柱側の直線部が一対の前記縦柱の他方の縦柱側の直線部より長くされると共に、前記一方の縦柱と前記直線部との間に、直線部の上下方向長さより短くされた支持部材が設けられて、前記支持部材を介して前記直線部が前記一方の縦柱に接続されており、前記第2断熱材は、前記他方の縦柱の前記直線部に重ならず、前記一方の縦柱の前記直線部に重なるように設けられている。
【0013】
第2の態様では、ラチス材の直線部の長さは、一方の縦柱側が他方の縦柱側より長くされている。複数の第1断熱材の間を覆う第2断熱材は、他方の縦柱の直線部に重ならず、一方の縦柱の直線部に重なるように設けられており、斜め部の間が他方の縦柱の直線部側より広くされた一方の縦柱の直線部側に設けられている。
【0014】
これにより、屋内側から一対の縦柱の間のラチス材と外壁パネルとの間に取り付け可能にされた第2断熱材の上下方向の長さを大きくできるので、外壁パネルの所定位置を大きく開けることができて、外壁パネルの取付調整作業のための空間を大きく確保できる。
【0015】
第3の態様は、両端の直線部の間に斜め部と直線部とが交互に設けられたラチス材が一対の縦柱の間に配置されて、前記縦柱の一方と他方とに前記ラチス材の前記直線部が交互に接続されたラチス柱、及び前記ラチス柱の屋外側に設けられた外壁パネルを含む耐力壁に断熱材を取り付ける耐力壁の断熱材取付方法であって、一対の前記縦柱の間における前記外壁パネルの所定位置を除いて前記ラチス材の前記外壁パネル側を覆う複数の第1断熱材を、前記外壁パネルの取り付け前に前記ラチス柱に取り付け、屋内側から一対の前記縦柱の間における前記ラチス材と前記外壁パネルとの間に取り付け可能とされ、前記第1断熱材の間又は複数の前記第1断熱材の下端から一対の前記縦柱の下端部の間までを覆う第2断熱材を、前記外壁パネルが取り付けられた前記ラチス柱の屋内側から取り付けることを特徴としている。
【0016】
第3の態様では、外壁パネルの取り付けに先立って、ラチス柱に第1断熱材を取り付けておく。また、第2断熱材は、外壁パネルの取付調整の作業等が行われた後、屋内側からラチス材と外壁パネルとの間に挿入して取り付ける。このため、耐力壁に断熱材を付与するための第1断熱材及び第2断熱材の取り付けが容易となると共に、第2断熱材が外壁パネル取付調整の作業を妨げることがない。
【0017】
第4の態様は、第3の態様において、前記ラチス柱に予め前記第1断熱材を取付けると共に、前記第2断熱材を前記ラチス柱に着脱可能に取り付けておき、前記外壁パネルを取付ける際に、前記ラチス柱から前記第2断熱材を取り外し、前記外壁パネルを取付けた後に、前記第2断熱材を前記ラチス柱に取り付ける。
【0018】
第4の態様では、ラチス柱に予め第1断熱材を取り付けるときに、第2断熱材を着脱可能に仮止めして取り付けておく。これにより、第1断熱材を高精度で位置決めできると共に、外壁パネルを取り付けた後に第2断熱材を取り付ける際に、第1断熱材に対して第2断熱材を精度良く位置決めできる。
【0019】
例えば、第1断熱材及び第2断熱材に位置決め不良があると、ラチス柱に取り付けた第1断熱材と第2断熱材との間に隙間が生じて断熱性が低下する。これに対して、第1断熱材及び第2断熱材を精度良く位置決めできるので、高い断熱性が得られる。また、第1断熱材を取り付けるときに第2断熱材を仮止めしておくことで、第2断熱材を取り付けることきに、第1断熱材に対しての第2断熱材の位置決めが容易となるので、断熱材の取付作業の作業性を向上できる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように第1の態様によれば、ラチス柱を覆う第1断熱材及び第2断熱材が外壁パネルの取付調整の作業を妨げることがない、という効果を有する。
【0021】
第2の態様によれば、外壁パネルの取付調整等の作業スペースを広くできるので、外壁パネルの取付調整等の作業効率を向上できる、という効果を有する。
【0022】
第3の態様によれば、外壁パネルの取付調整等の作業性を低下させることなく断熱材を取り付けることができる、という効果を有する。
【0023】
また、第4の態様によれば、第1断熱材及び第2断熱材を精度良く位置決めできて、断熱性の向上を図ることができる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本実施の形態に係る建物の主要部を示す上方視の断面図である。
図2図1の2−2線における外壁部の断面図である。
図3】(A)及び(B)は、ラチス柱を示す正面図である。
図4】一部の断熱材の取付前を示す図2と同様の外壁部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。本実施の形態では、鉄骨軸組工法により構築された建物10を例に説明する。図1には、建物10の主要部が上方視の断面図にて示されている。また、図2には、建物10の外壁部が図1の2−2線における断面図にて示されると共に、2−2線側から見た紙面奥側の外壁部が正面図にて示されている。なお、建物10は、2階建て又は3階建て以上であっても良く、また、平屋であっても良い。図1及び図2には、2階立て以上の建物10における1階部分の外壁部分が示されている。また、図2では、1階の床レベルが1SL、2階の床レベルが2SL、1階の床仕上がりレベルが1FLにて示されている。
【0026】
建物10には、骨組みとして複数の柱や梁が設けられており、柱には、角形鋼等が用いられ、梁にはH形鋼等が用いられる。図2に示されるように、建物10には、下側に鉄筋コンクリート造の基礎梁12が設けられ、上側に天井梁(2階の床梁)14が設けられており、基礎梁12と天井梁14との間に柱16が設けられている。また、図1に示されるように、柱16は、建物10の角部の各々に設けられている。なお、角部の間隔(柱16の間隔)が所定の間隔より広い場合などにおいては、柱16の間に本又は複数本の柱16(例えば間柱、以下、区別する場合、柱16Aという)が設けられている。柱16の各々は、下端部が基礎梁12に連結され、上端部が天井梁14に連結されている。
【0027】
建物10には、屋外側の面に外壁パネル18が設けられると共に、屋内側に内装パネル(例えば石膏ボードなど)20が設けられて、外壁部22が形成されている。基礎梁12(又は基礎梁12上の床梁)及び天井梁14には、外壁フレーム24が設けられている。外壁パネル18は、所定の幅で高さ方向の長さが建物10の階高(1SLから2SLまでの高さ)に応じた長さとされており、外壁パネル18が建て起こされて外壁フレーム24に取付けられ、ボルト及びナット等により外壁フレーム24等に締結固定されている。
【0028】
外壁パネル18の裏面(屋内側の面)には、下地とされている複数の合板(図示省略)が上下方向に配置されて取り付けられており、隣接される外壁パネル18の間が目地とされる。また、建物10の角部(角の柱16の外側)には、コーナー用の外壁パネル18Aが取付けられて、建物10の外面が外壁パネル18により囲われる。屋外側から見える隣接する外壁パネル18の間の目地は、シーリング材等が用いられて目地埋めされる。
【0029】
外壁パネル18の各々は、目地において出面などの調整が行われて固定される。外壁パネル18の目地における調整は、外壁パネル18の長さ方向(建て起こしたときの高さ方向)の予め定めている高さ位置(以下、調整位置26という)において行われる。本実施の形態では、例えば、上下方向の中間部に調整位置26Aが設定され、下端部に調整位置26Bが設定されている。
【0030】
本実施の形態において調整位置26が外壁パネル18の所定位置とされている。外壁パネル18の取付調整には、調整位置26において、目地の幅に応じた厚さ(例えば、厚さが9mm)及びサイズ(例えば、50mm×35mm)のスペーサ合板28が用いられており、複数のスペーサ合板28が調整位置26において目地に嵌め込まれて、外壁パネル18の出目調整等の取付調整が行われる。なお、図2及び図4では、説明を容易にするために、柱16に対するスペーサ合板28の大きさの比率を実際よりも大きくして、調整位置26におけるスペーサ合板28を大きく示している。
【0031】
一方、建物10には、耐力壁を形成するラチス柱30が設けられている。図3(A)には、2本の縦柱が用いられたラチス柱30が正面図にて示され、図3(B)には、3本の縦柱が用いられたラチス柱30Bが正面図にて示されている。なお、ラチス柱30A、30Bは縦柱の間隔が異なっているが基本的構成は、同様であり、ここでは、ラチス柱30Aを例にラチス柱30の構造を説明する。
【0032】
ラチス柱30には、弦材としての一対の縦柱32、34が設けられていると共に、縦柱32、34の間にラチス材としてのラチス36が設けられている。縦柱32は、一対の縦柱のうちの一方の縦柱とされ、縦柱34は、一対の縦柱のうちの他方の縦柱とされている。縦柱32、34としては、例えば、角鋼材が用いられ、ラチス36としては、例えば、丸鋼材が用いられる。なお、ラチス柱30Bは、ラチス柱30Aとは縦柱32、34の間隔が異なるが、2本の縦柱32の間に縦柱34が設けられており、2つのラチス柱30Aが一体にされたのと同様の構成となっている。また、建物10においては、縦柱32が柱16とされ、縦柱34が柱16Aとされている。なお、縦柱32、34の間隔は、耐震強度、建物10における外壁部22の柱16の間隔等に応じて定まったものであれば良く、図3(A)では、図1図2、及び図4におけるラチス柱30の縦柱32(柱16)と縦柱34(柱16A)の間隔よりも狭いラチス柱30Aとしている。
【0033】
縦柱32、34には、上端部に連結部材38が設けられており、連結部材38がボルト及びナットを介して天井梁14に締結固定されている。また、縦柱32、34は、下端部が基礎梁12に設けられた図示しないアンカーにボルトによって締結固定されている。なお、縦柱32、34は、下端部に図示しない連結部材が設けられ、連結部材がボルト及びナットによって下梁(床梁)に締結固定されても良い。
【0034】
ラチス36は、両端の直線部40の間に斜め部42と直線部44が交互に形成されており、直線部44は、直線部44Aと直線部44Bとが交互にされている。直線部44A、44Bは、直線部44Bよりも直線部44Aが長くされている。直線部40、44A、44Bは、斜め部42の両端部に曲げ加工により形成されている。
【0035】
ラチス36は、両端の直線部40及び直線部44Bが縦柱34側とされて直線部44Aが縦柱32側とされており、直線部40、44Bが縦柱34溶接等により接合されている。また、縦柱32には、支持部材としてのラチスコマ46が設けられている。ラチスコマ46は、所定の板厚の金属板により形成されており、長さが直線部44Aの長さよりも短くされている。
【0036】
ラチスコマ46は、縦柱32とラチス36の直線部44Aとの間に配置されて、ラチスコマ46を介して直線部44Aが縦柱32に溶接等により接合されている。これにより、直線部44Aが縦柱32に対して浮いた状態にされている。なお、ラチスコマ46は、高減衰ゴム製の板材(粘弾性部材)であっても良い。
【0037】
ラチス柱30では、直線部44Aと斜め部42との間の曲げ部が塑性ヒンジ部となっている。塑性ヒンジ部は、地震力などの外力が作用した場合に曲げ変形して振動エネルギーを吸収するエネルギー吸収部に相当し、荷重により断面が降伏することで塑性ヒンジ(降伏ヒンジ)が形成される領域となっている。また、ラチスコマ46が設けられることで、塑性ヒンジ部が縦柱32から浮かせられて塑性ヒンジ部の曲げ変形領域が確保されており、縦柱32に干渉することなく変形が可能にされている。また、直線部44Aの両側の斜め部42が互いに逆向きとされていることで、揺れ方向が左右逆となっても塑性ヒンジ部が機能するようにされており、建物10は、ラチス柱30(30A、30B)が設けられていることで、優れた耐震性が得られる。
【0038】
一方、建物10では、外壁部22に内張断熱工法(充填断熱工法)及び外張断熱工法が併用されて断熱施工が行われている。外壁部22は、柱16の間でありかつラチス柱30が設けられていない部分においては、充填断熱工法が適用されて、断熱材48が配置される。断熱材48としては、硬質発泡ウレタンフォーム等の発泡プラスチック系断熱材料、グラスウール等の繊維系断熱材料などが、熱伝導率が所望の値以下となる厚さとされて用いられる。断熱材48は、2本の柱16の間(又は柱16と柱16Aとの間)において、天井梁14の下端から基礎梁12の上端の間に充填されて配置される。
【0039】
また、柱16(柱16Aを含む)と外壁パネル18(外壁パネル18Aを含む)との間には、外張断熱工法が適用されて、柱16と外壁パネル18との間の隙間に応じた厚さの断熱材50が適用される。断熱材50としては、硬質発泡ウレタンフォーム等の発泡プラスチック系断熱材料などが、柱16と外壁パネル18との隙間に応じた厚さとされて用いられる。本実施の形態では、断熱材50の厚さtを15mm(t=15)としている。なお、天井梁14等の各梁には、断熱材50と同様の断熱材料又は、繊維系断熱材料が用いられた断熱材50Aが取り付けられて屋外側が被覆される。
【0040】
これに対して、ラチス柱30が設けられている部分では、断熱材52を用いている。断熱材52としては、硬質発泡ウレタンフォーム等の発泡プラスチック系断熱材料などが用いられ、厚さが外壁パネル18とラチス36との間の隙間に合わせた厚さとされている。本実施の形態では、断熱材52の厚さtを40mm(t=40)として、断熱材50よりも厚くしている。
【0041】
ラチス柱30では、ラチス36の複数の斜め部42が上下方向に配置されており、屋内側からラチス36と外壁部22との間に挿入することが困難となっている。また、ラチス柱30の外壁パネル18側の面に断熱材52を予め取り付けておくと、外壁パネル18を取り付けたときに、外壁パネル18に対する調整位置26が断熱材52により隠れてしまう。
【0042】
ここから、ラチス柱30に取り付けられる断熱材52は、予め複数に分割されている。図4には、外壁パネル18及びラチス柱30のラチスの形状に応じて分割された断熱材52が示されている。
【0043】
図2及び図4に示されるように、本実施の形態では、断熱材52を四分割したのと同様の構成とされており、上から順に断熱材52A、断熱材52B、断熱材52C、及び断熱材52Dとしている。断熱材52から分割される断熱材52A、52Cは、第1断熱材とされており、断熱材52B、52Dが第2断熱材とされている。断熱材52A、52Cは、外壁パネル18に対して設定されている調整位置26近傍が除かれ、少なくとも調整位置26に重ならないようにされて、断熱材52A、52Cに重なっていない領域において、外壁パネル18の取付調整等のための作業スペースを確保できるようにされている。
【0044】
また、断熱材52Bは、断熱材52Aと断熱材52Cの間を塞ぐようにされており、断熱材52Dは、断熱材52Cの下端から外壁パネル18の下端近傍(柱16の下端部の間)塞ぐようにされている。また、断熱材52Aと断熱材52Cとの間を塞ぐ断熱材52Bは、直線部44Bに重ならず、直線部44Bより長い直線部44Aに重なるように設けられる。即ち、断熱材52B、52Dは、斜め部42に対して、直線部40、44A、44Bの何れかに偏った領域に対応されている。また、断熱材52Bは、斜め部42に対して直線部44A側に片寄るように設けられている。また、断熱材52B、52Dに基づき、断熱材52A、52Cの配置位置及び長さ(上下方向の長さ)が定まっている。
【0045】
ここから、本実施の形態では、外壁パネル18の上下方向中間部の調整位置26Aに重なる断熱材52Bは、上端位置が調整位置26Aよりも僅かに上側とされて、直線部44Bに重ならない位置とされていると共に、下端位置が直線部44に重なる位置とれている。また、調整位置26Bに重なる断熱材52Dは、上端位置が調整位置26Bよりも上側とされると共に、下端位置が外壁パネル18の下端よりも僅かに上側(断熱材52としての下端)の位置とされている。
【0046】
また、断熱材52Aは、上端位置が柱16(縦柱32、34)の上端位置(連結部材38の上端位置)とされていると共に、下端位置が断熱材52Bの上端位置とされている。断熱材52Cは、上端位置が断熱材52Bの下端位置とされていると共に、下端位置が断熱材52Dの上端位置とされている。なお、断熱材52A〜52Dは、1枚の断熱材52から分割したものに限らず、各々が必要な幅及び長さに切り取られて、上下に繋げたときに、断熱材52と同様の幅及び長さとなるように形成されたものであっても良い。
【0047】
以下に、本実施の形態の作用として、建物10の外壁部22の断熱施工を説明する。建物10では、骨組みを形成する柱16等の柱及び天井梁14等の梁などが予め加工される。この際、柱16と共にラチス柱30が形成される。また、ラチス柱30には、断熱材52を形成する断熱材52A〜52Dが取り付けられる。断熱材52は、断熱材52A〜52Dが、ラチス柱30の縦柱32(柱16)と縦柱34(柱16A)との間に配置されると共に、ラチス36上に隙間なく並べられる。また、断熱材52A、52Cは、ラチス柱30に取り付けられ、断熱材52B、52Dは、着脱可能にラチス柱30に仮止めされる。なお、断熱材52B、52Dの仮止めは、外壁パネル18が取り付けられた状態で、屋内側から取り外し可能とされた状態であれば良い。
【0048】
建物10は、建て方が行われて、柱16等の柱及び天井梁14等の梁などが組み付けられて骨組みが形成されると、柱16(柱16Aを含む)の外壁パネル18(外壁パネル18Aを含む)に対向する面に断熱材50が取り付けられる。なお、断熱材50は、断熱材52A、52Dと同様に予め柱16や天井梁14等に取り付けられていても良い。また、断熱材50は、少なくともラチス柱30に隣接する柱16(縦柱32、34)に取り付けられれば良い(それ以外の柱16には、屋内側から外壁パネル18との隙間に挿入しても良い)。
【0049】
この後、建物10の骨組みに外壁パネル18が取り付けられ、取付調整等の作業が行われる。外壁パネル18の取付調整等は、ラチス柱30に仮止めしている断熱材52B、52Dが取り外して行われる。断熱材52B、52Dは、外壁パネル18建て上げに先立って取り外されていることで、外壁パネル18の間に設定されている調整位置26の周囲が開放されて、取付調整等のための作業スペースが確保されて、外壁パネル18の出目調整等の作業が容易となる。
【0050】
外壁パネル18が取り付けられると、屋内側から断熱材48、及び断熱材52B、52Dが取り付けられる。断熱材52B、52Dは、ラチス柱30に仮止めされているのが用いられる。断熱材52Bは、斜め部42の間から断熱材52A、52Cの間に挿入されて取り付けられる。また、断熱材52Dは、最下段の斜め部42の下側から挿入されて、断熱材52Cの下側に取り付けられる。これにより、ラチス柱30では、断熱材52Aと断熱材52Cの間が断熱材52Cにより塞がれ、断熱材52Cの下側が断熱材52Dにより塞がれて、縦柱32(柱16)と縦柱34(柱16A)との間の全面が断熱材52により覆われる(断熱材52が充填される)。
【0051】
また、断熱材48は、屋内側から柱16の間(又は柱16と柱16Aとの間)に充填されて取り付けられる。これにより、建物10は、外壁パネル18側の全周が断熱材により区画されて屋内と屋外との間が断熱される。この後、建物10では、内装パネル20が取り付けられて、内装工事の施工が行われる。
【0052】
このように、本実施の形態では、ラチス柱30に取り付ける断熱材52を、外壁パネル18の取付調整等を行うために予め設定されている調整位置26に重なる断熱材52B、52Dとそれ以外の部分の断熱材52A、52Cとに分けて、外壁パネル18の取り付けに先立って断熱材52A、52Cをラチス柱30に取り付けている。このため、ラチス柱30への断熱材52A、52Cの取り付けは、開放された屋外側から屋内ことができるので、屋内側から取り付ける場合に比べて作業性が向上される。
【0053】
また、ラチス柱30に断熱材52B、52Dが取り付けられていないことにより、外壁パネル18に対する調整位置26の周囲が開放されるので、ラチス柱30に断熱材52を取り付けて断熱性を付与する場合でも、外壁パネル18の取付調整等の作業が容易となっている。
【0054】
さらに、断熱材52B、52Dは、ラチス36の斜め部42を挟んで直線部40、44A、44Bの何れか側が広くなるように形成されているので、上下に隣接する斜め部42の間から外壁パネル18とラチス36との間に容易に挿入できる。しかも、断熱材52Bは、直線部44Bに重ならず、斜め部42の間が直線部44B側よりも離れた直線部44Aに重なるようにされているので、外壁パネル18とラチス36との間への挿入がより容易になっている。
【0055】
また、ラチス柱30に断熱材52A、52Cを取り付ける際、断熱材52B、52Dを仮止めして取り付けるので、断熱材52A、52Cの取り付け位置の位置決めが容易となると共に、正確に位置決めして取り付けることができる。また、断熱材52B、52Dを取り付ける場合、断熱材52A、52Cを用いて断熱材52B、52Dを容易に位置決めできる。しかも、断熱材52A〜52Dが位置決めされるので、断熱材52Bと断熱材52A、52Cとの間、及び断熱材52Cと断熱材52Dとの間に隙間が生じることがないので、断熱材52A〜52Dの間に生じた隙間により断熱性が低下するのを抑制できる。
【0056】
しかも、予め断熱材52A〜52Dを加工できるので、建物10の建築現場(断熱材52の取り付け現場)において断熱材52を加工する場合に比べて高精度に加工できて、かつ取付現場で加工する必要がないので、断熱材52A〜52Dの取り付け作業が容易となる。
【0057】
また、本実施の形態において、断熱材52としては、任意の厚さ(例えば、断熱材50と同様の厚さtが15mm)を適用できる。このとき、本実施の形態では、断熱材50よりも厚さの厚い断熱材52を用いることで、より断熱性を向上できる。
【0058】
なお、以上説明した本実施の形態では、耐力壁として縦柱32、34の間隔が同様のラチス柱30A、30Bが用いられた建物10を例に説明したがこれに限るものではない。本発明が適用される建物の耐力壁は、縦柱の間隔が任意に設定されたものであっても良い。一対の縦柱の間隔が狭いラチス柱においても、一対の縦柱の間隔及び斜め部の間隔に応じて第1断熱材の上下方向の大きさを定めることで、一対の縦柱の間隔が比較的狭い場合もで、外壁パネルが取り付けられている状態で屋内側から第1断熱材を取り付けることができる。
【符号の説明】
【0059】
10 建物
16、16A 柱
18 外壁パネル
20 内装パネル
22 外壁部
26(26A、26B) 調整位置(外壁パネルの所定位置)
28 スペーサ合板
30(30A、30B) ラチス柱(耐力壁)
32 縦柱(一方の縦柱)
34 縦柱(他方の縦柱)
36 ラチス(ラチス材)
42 斜め部
44A 直線部(一方の縦柱側の直線部)
44B 直線部(他方の縦柱側の直線部)
46 ラチスコマ(支持部材)
48、50、52 断熱材
52A、52C 断熱材(第1断熱材)
52B、52D 断熱材(第2断熱材)
図1
図2
図3
図4