(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
層状に敷き詰めた金属粉末に第1の電子ビームを照射して前記金属粉末を溶融させた後凝固して形成された金属凝固層の上に、層状に金属粉末を敷き詰め、前記第1の電子ビームを照射して、新たに敷き詰めた前記金属粉末を溶融させた後凝固した金属凝固層を形成することを繰り返して、金属が凝固した一次造形物を形成する積層造形工程と、
前記積層造形工程において凝固せずに前記一次造形物に付着した金属粉末を除去して二次造形物を形成する金属粉末除去工程と、
前記二次造形物に第2の電子ビームを照射して前記二次造形物の表面を再溶融させて造形物を形成する表面処理工程と
を有し、
表面処理工程において、前記第2の電子ビームと前記二次造形物との少なくとも一方を移動させることにより、前記第2の電子ビームが前記二次造形物の表面における前記金属凝固層の層の境界線に交差するように移動して照射するとともに、
前記第2の電子ビームの照射により前記二次造形物の表面に形成される溶融池における、前記第2の電子ビームが前記二次造形物の表面を移動する方向の幅が、前記積層造形工程において形成された前記金属凝固層の1層の厚さの2倍以上となるよう、前記第2の電子ビームのパラメータを設定することを特徴とする三次元積層造形方法。
前記第2の電子ビームの前記二次造形物に対する中央ビーム軸の方向は、前記第1の電子ビームの前記一次造形物に対する中央ビーム軸の方向とは異なることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の三次元積層造形方法。
前記金属凝固層の層の面に対して前記第1の電子ビームの中央ビーム軸が成す角度と、前記金属凝固層の層の面に対して前記第2の電子ビームの中央ビーム軸が成す角度との差が、90度から180度の範囲の角度であることを特徴とする請求項4に記載の三次元積層造形方法。
第1の電子ビーム照射室と第1の電子銃とを備え、前記第1の電子ビーム照射室内において、層状に敷き詰めた金属粉末に第1の電子ビームを照射して前記金属粉末を溶融させた後凝固して形成された金属凝固層の上に、層状に金属粉末を敷き詰め、前記第1の電子ビームを照射して、新たに敷き詰めた前記金属粉末を溶融させた後凝固して金属凝固層を形成することを繰り返して、金属が凝固した一次造形物を形成するように制御される第1の電子ビーム照射機と、
前記一次造形物に凝固せずに付着した金属粉末を除去して前記一次造形物を二次造形物とする金属粉末除去室を備えた金属粉末除去機と、
第2の電子ビーム照射室と第2の電子銃を備え、前記第2の電子ビーム照射室内において、前記二次造形物に第2の電子ビームを照射して前記二次造形物の表面を再溶融させて造形物を形成するよう構成された第2の電子ビーム照射機とを備え、
前記第2の電子ビームが前記二次造形物の表面を移動するとともに、前記第2の電子ビームが、前記二次造形物の表面を移動する方向と平行な方向に振動するよう構成されていることを特徴とする三次元積層造形装置。
前記第1の電子ビーム照射室と前記金属粉末除去室とは、第1のゲートを介して接続されており、前記金属粉末除去室と前記第2の電子ビーム照射室とは、第2のゲートを介して接続されていることを特徴とする請求項10に記載の三次元積層造形装置。
前記第1の電子ビーム照射室と前記第2の電子ビーム照射室は同一の電子ビーム照射室であり、前記第1の電子銃と前記第2の電子銃は同一の電子銃であることを特徴とする請求項10に記載の三次元積層造形装置。
前記第2の電子ビームの前記二次造形物に対する中央ビーム軸の方向が、前記第1の電子ビームの前記一次造形物に対する中央ビーム軸の方向とは異なるように構成されていることを特徴とする請求項10から13のいずれか1項に記載の三次元積層造形装置。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態1による三次元積層造形方法および三次元積層造形装置を説明するための断面模式図である。
【
図2】本発明の実施の形態1による三次元積層造形方法および三次元積層造形装置における積層造形工程を説明するための第一の断面模式図である。
【
図3】本発明の実施の形態1による三次元積層造形方法および三次元積層造形装置における積層造形工程を説明するための第二の断面模式図である。
【
図4】本発明の実施の形態1による三次元積層造形方法および三次元積層造形装置における積層造形工程を説明するための第三の断面模式図である。
【
図5】本発明の実施の形態1による三次元積層造形方法および三次元積層造形装置における金属粉末除去工程を説明するための断面模式図である。
【
図6】本発明の実施の形態1による三次元積層造形方法および三次元積層造形装置における表面処理工程を説明するための断面模式図である。
【
図7】本発明の実施の形態1による三次元積層造形方法および三次元積層造形装置における表面処理工程の電子ビーム照射方向を説明するための斜視模式図である。
【
図8】本発明の実施の形態1による三次元積層造形方法および三次元積層造形装置における金属粉末除去工程後の造形物の端部を拡大して示す断面図である。
【
図9】本発明の実施の形態1による三次元積層造形方法および三次元積層造形装置における金属粉末除去工程後の造形物の側面表面の状態を示す断面図である。
【
図10】本発明の実施の形態1による三次元積層造形方法および三次元積層造形装置における金属粉末除去工程後の造形物の上面表面の状態を示す断面図である。
【
図11】本発明の実施の形態1による三次元積層造形方法および三次元積層造形装置における金属粉末除去工程後の造形物の裏面表面の状態を示す断面図である。
【
図12】本発明の実施の形態1による三次元積層造形方法および三次元積層造形装置における積層造形工程を説明するための概念斜視図である。
【
図13】本発明の実施の形態1による三次元積層造形方法および三次元積層造形装置における表面処理工程を説明するための概念斜視図である。
【
図14】本発明の実施の形態1による三次元積層造形方法および三次元積層造形装置における表面処理工程を説明するための概念図である。
【
図15】本発明の実施の形態1による三次元積層造形方法および三次元積層造形装置における表面処理工程の造形物表面の状態を示す拡大断面図である。
【
図16】比較例による三次元積層造形方法および三次元積層造形装置における表面処理工程の造形物表面の状態を示す拡大断面図である。
【
図17】電子ビームのビーム径を説明する線図である。
【
図18】本発明の実施の形態1による三次元積層造形方法および三次元積層造形装置における表面処理工程後の造形物の側面表面の状態を示す断面図である。
【
図19】本発明の実施の形態1による三次元積層造形方法および三次元積層造形装置における表面処理工程後の造形物の上面表面の状態を示す断面図である。
【
図20】本発明の実施の形態1による三次元積層造形方法および三次元積層造形装置における表面処理工程後の造形物の裏面表面の状態を示す断面図である。
【
図21】本発明の実施の形態2による三次元積層造形方法および三次元積層造形装置における表面処理工程を説明するための断面模式図である。
【
図22】本発明の実施の形態3による三次元積層造形方法および三次元積層造形装置における表面処理工程を説明するための断面模式図である。
【
図23】本発明の実施の形態3による三次元積層造形方法および三次元積層造形装置における表面処理工程の電子ビーム照射機の構成を説明するための断面模式図である。
【
図24】本発明の実施の形態4による三次元積層造形方法および三次元積層造形装置における表面処理工程を説明するための概念斜視図である。
【
図25】本発明の実施の形態4による三次元積層造形方法および三次元積層造形装置における積層造形工程と表面処理工程の電子ビームの照射方向説明するための概念図である。
【
図26】本発明の実施の形態5による三次元積層造形装置の概略構成を示す断面図である。
【
図27】本発明の実施の形態6による三次元積層造形装置の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1による三次元積層造形方法の各工程を示す概略図であり、各工程における三次元積層造形装置の断面図により示している。本発明に係る三次元積層造形方法は、積層造形工程、金属粉末除去工程、表面処理工程を有する。
図1A、
図1Bは積層造形工程を示す図、
図1C、
図1Dは金属粉末除去工程を示す図、
図1Eは表面処理工程を示す図である。
【0014】
金属材の三次元積層造形を行うため、原料には金属粉末を用いる。
図1A、
図1Bに示すように、積層造形工程において、金属粉末から一次造形物81を形成する。給粉機7により、加工室である電子ビーム照射室3内に設置された造形ボックス4に金属粉末6を供給して金属粉末6を層状に敷く。層状の金属粉末の一部に電子銃1から発生される電子ビーム2を照射し、金属粉末の予め定めた部分を溶融・凝固させる。所定の部分の層状の金属粉末が凝固した後、昇降ステージ5を所定距離降下させて、給粉機7から金属粉末を供給して凝固した金属の上に層状に金属粉末を敷く。その後、層状の金属粉末の一部に電子銃1から発生される電子ビーム2を照射し、金属粉末の予め定めた部分を溶融・凝固させる。この時、下層の既に凝固した部分と一体となって凝固部を形成する。これらの薄層の粉敷きとビーム照射を繰り返して、
図1Bに示すように、一体となった金属の一次造形物81が形成される。一次造形物81の周りには未溶融の金属粉末6が残ったままとなっている。
【0015】
次の金属粉末除去工程では、
図1C、
図1Dに示すように、一次造形物81の周りの未溶融の金属粉末6を取り除く。周りに未溶融の金属粉末6が付着した状態の一次造形物81を、ジェットノズル12を備えた金属粉末除去室11に設置して、ジェットノズル12から高圧の気体を噴射させて未溶融の金属粉末6を除去する。電子ビームが照射されていない部分の金属粉末も溶融には至っていないが、高温になっていたため、一次造形物81の周りに付着している。この未溶融部の金属粉末を気体を吹き付けることにより取り除き、金属粉末が除去された二次造形物82として取出す。
【0016】
表面処理工程では、加工室である電子ビーム照射室23内に二次造形物82を設置して、二次造形物82の表面に電子銃21から発生した電子ビーム22を照射する。電子ビームの照射位置を偏向により二次造形物82の表面上で高速に移動させる。二次造形物82の表面の薄い層のみが溶融し凝固する。表面の凹凸は電子ビームによる溶融・凝固で平均化され平滑になり最終的な造形物8とすることができる。
【0017】
各工程について詳細に説明する。
図2〜
図4は金属粉末の積層造形工程を、積層造形工程において使用する電子ビーム照射機100の断面図により示す図である。電子ビーム照射機100は、主要構成要素として電子銃1と電子ビーム照射室3を備えている。電子銃1には電子ビーム2を発生する電子源31、発生した電子ビーム2を金属粉末6上に集束させる集束レンズ32、金属粉末6上の所定の位置に電子ビーム2の照射位置を移動して走査するための偏向器33で構成される。積層造形工程において使用する電子ビーム照射機およびその構成要素を、第1の電子ビーム照射機100、第1の電子銃1、第1の電子ビーム照射室3、のように、また電子ビーム2を第1の電子ビームと、「第1の」を付して称することもある。
【0018】
電子銃制御装置34は、電子ビーム電流制御器35を介して電子源31を、集束レンズ電源36を介して集束レンズ32を、偏向電源37を介して偏向器33を制御するように構成されている。電子銃制御装置34は、予め、造形物の形状に応じた各積層の層毎の所定の形状に応じて作成したビーム電流データ341、ビーム焦点制御データ342、偏向データ343を記憶しておき、これらのデータをもとにビーム電流、ビームの焦点、偏向によるビーム照射位置を制御するように構成されている。
【0019】
図中に積層造形工程における電子ビームの中心経路である中央ビーム軸25を示す。この中央ビーム軸25は偏向をかけない場合の電子ビームの軌道に相当する。電子ビーム照射室3内には、造形ボックス4、積層を繰り返すごとに金属粉末と造形物を移動させる昇降ステージ5、新しい金属粉末の層を敷くための給粉機7で構成される積層槽150が配置される。他に真空排気のための真空ポンプや真空計などの真空排気系、機構の制御装置などが備えられるが、本発明とは直接関係ないため省略している。
【0020】
金属粉末はTiや各種鋼、Cuなど、用途に応じた金属粉末が使われる。金属粉末は平均粒径20〜200μmの金属粉末が選ばれる。造形ボックス4内に金属粉末が充填されている。
図2は複数の積層が繰り返された後に電子ビームが照射される状態を示す図である。電子ビーム2は電子銃制御装置34のデータに従い偏向され、電子ビームが照射された部分の金属粉末が溶融・凝固する。
【0021】
電子ビームに対する金属材のエネルギー吸収率は80〜90%と高く、金属粉末の表面での反射の影響もない。金属粉末が効率よく加熱され、安定に溶融凝固する。電子ビームの照射されていない部分の金属粉末は溶融していないため、金属粉末同士は強固に固着していない。
【0022】
図3は、
図2の状態で金属粉末6の表面層の所定領域を電子ビームで走査して金属粉末6を溶融凝固させた後、新たに金属粉末が給粉機7により供給された様子を示している。
図2の状態から昇降ステージ5が積層の1層分、下方に降下した後に、給粉機7がすでに敷かれた金属粉末上を移動しながら一定の層厚さになるように新たな金属粉末を敷く。層厚さは20〜200μmの範囲内で選ばれることが多い。
【0023】
図4は新しい層に電子ビーム2が照射されている様子を示す。電子銃制御装置34は新しい層のビーム照射位置に応じた偏向データに従い偏向器33を制御し、電子ビームが照射される。下層のすでに凝固している部分と一緒に溶融し、一体となって凝固し凝固部80を形成する。電子ビームの照射は上述した金属粉末の溶融・凝固のほかに、金属粉末全体の温度を予め設定した温度に保つためにも照射されることがある。
【0024】
この金属粉末の粉敷きと、そこへ電子ビームの照射を繰り返して金属粉末を所定の形状に凝固させる。予め定めた積層の高さに達するまで、粉敷きと電子ビーム照射を繰り返して行い、一次造形物81を形成して積層造形工程は終了する。この間、金属粉末には積層造形のために溶融・凝固を行わせる電子ビーム照射と、金属粉末全体の温度を高温に保つための電子ビームの照射がなされるだけである。余分な加熱あるいは局部的な加熱は行われず、造形物の熱変形は抑制されている。
【0025】
金属粉末除去工程について説明する。
図5は、金属粉末除去機200による金属粉末除去工程の説明図である。金属粉末除去機200は、主要構成要素として金属粉末除去室11とジェットノズル12を備えている。一次造形物81の周りには未溶融の金属粉末6が付着している。金属粉末全体の温度を定められた高温状態に保持しているため、溶融凝固させたパターン以外の部分の金属粉末も溶融はしていないが、造形物や金属粉末同士で付着している。未溶融の金属粉末が付着した造形物を金属粉末除去室11内に入れる。ジェットノズル12から高圧の気体の噴射で、未溶融の金属粉末を一次造形物81から取り除く。未溶融の金属粉末を取り除いた二次造形物82の表面には凹凸が残っている。電子ビーム照射側で、積層造形工程のビーム軸に垂直な面は表面の凹凸が小さい。一方、積層造形工程のビーム軸に平行な面や、ビーム照射側と反対側の面では凹凸が大きくなっている。金属粉末が酸化しやすい材料の場合や、粒径が小さい場合には、粉末の酸化、発火を防ぐため、吹き付ける気体として不活性ガスを使用してもよい。また、機械的な振動や衝撃を与える方法など他の方法を用いてもよい。
【0026】
次に、表面処理工程について説明する。
図6は表面処理工程を、表面処理工程で使用する電子ビーム照射機300の断面図により示す図である。表面処理工程に使用される電子ビーム照射機300は、主要構成要素として電子銃1と電子ビーム照射室3を備えている。電子銃21は電子源41、集束レンズ42、偏向器43で構成されている。電子銃制御装置44は、電子ビーム電流制御器45を介して電子源41を、集束レンズ電源46を介して集束レンズ42を、偏向電源47を介して偏向器43を制御するように構成されている。電子銃制御装置44は、造形物の形状や加工室内で配置される位置に応じて作成したビーム電流データ441、ビーム焦点制御データ442、偏向データ443を記憶しておき、これらのデータをもとにビーム電流、ビームの焦点、偏向によるビーム照射位置を制御するように構成されている。図中に表面処理工程における電子ビームの中心経路である中央ビーム軸26を示す。中央ビーム軸26は、偏向をかけない場合の電子ビームの軌道に相当する。二次造形物82は、積層造形工程の中央ビーム軸25に対して表面処理工程での中央ビーム軸26が直角になるように配置した。なお、表面処理工程において使用する電子ビーム照射機およびその構成要素を、第2の電子銃21、第2の電子ビーム照射室23、第2の電子ビーム照射機300のように、また電子ビーム22を第2の電子ビーム22と、「第2の」を付して称することもある。
【0027】
ここで、
図7を参照して、積層造形工程における中央ビーム軸25と表面処理工程における中央ビーム軸26のなす角度について説明する。積層における層間の境界面60に対して積層造形工程の中央ビーム軸25のなす角α、積層における層間の境界面60に対して表面処理工程の中央ビーム軸26のなす角βとする。角度の極性は積層造形工程における中央ビーム軸側を正とする。α-βを中央ビーム軸25と中央ビーム軸26のなす角θ
とする。αは通常90度である。
図2〜
図4と
図6で示した例の場合、αは90度、βは0度でありθは90度となる。
【0028】
電子銃制御装置44に記憶されているデータをもとに、電子ビーム22が偏向され二次造形物82の表面形状に応じて電子ビーム22の照射位置が移動して二次造形物82の表面を走査する。電子ビーム22が照射さている領域では表面深さ方向10〜300μmが溶融し、電子ビームが通り過ぎると凝固する。
【0029】
ここで、造形物の表面の凹凸について説明する。
図8に二次造形物82の断面の模式図を示す。図は3つの金属凝固層51が積層されている模様を示している。説明のために溶融前の金属粉末52を描いている。図の左側が二次造形物82の端面53である。積層の1層分の厚さを薄くすることが高精度化には有利であるが、同じ高さあたりに必要な積層数が増加するため、造形時間が大幅に増加する。積層厚さは50〜200μmが適切である。上述したように平均粒径20〜200μmの金属粉末が使われており、金属凝固層51の1層分の厚さと平均粒径は近い値になる。特に、平均粒径は50〜100μm、また積層の厚さも100μm前後が使われる場合が多く。積層の厚さと平均粒径が近い値の場合が多い。二次造形物82の端面53の表面には不完全結合部や余剰造形部が生じ凹凸が発生するが、図のように、電子ビームが照射された時の1層の溶融部の端面の形状は、層厚さに対して粒径が大きいため、粒の形の影響を受けて凹凸が多くなる。積層造形時の中央ビーム軸25に垂直な面では表面の凹凸は小さく、中央ビーム軸25に平行に近づくに従って表面の凹凸が大きくなる。電子ビーム照射方向に対して裏側の面も、端面と同様に表面の凹凸が大きくなる。
【0030】
造形後の造形物の表面の凹凸の例を
図9、10、11に示す。図は造形物表面の断面の模様である。横方向は表面に平行方向で縦方向がそこでの凹凸の様子になる。
図9は積層造形時の中央ビーム軸25に平行な面、
図10は中央ビーム軸25に直交する面、
図11は電子ビーム照射側に対して裏側の面である。
それぞれの表面粗さは、Raは
積層造形工程の中央ビーム軸25に平行な面 29μm
積層造形工程の中央ビーム軸25に直交する面 9μm
積層造形工程の電子ビーム照射側に対して裏面 27μm
程度であった。このように、積層造形時の中央ビーム軸25に平行な面において、積層方向にそって連続した凸、あるいは連続した凹が発生することが多い。
【0031】
二次造形物82に対する表面処理工程の電子ビームの照射方向に関して説明する。
図12は積層造形工程での一次造形物81と電子ビーム2の位置関係を示す。造形物の形状は球体の例で示す。球体の表面の点線は積層の各層の境界線61を示す。中央ビーム軸25は積層における各層の境界面に垂直方向を向いている。
図13は表面処理工程での二次造形物82に対する電子ビーム22の照射方向を示す。積層造形工程における電子ビーム2の中央ビーム軸25に対して、表面処理工程の電子ビーム22の中央ビーム軸26が略直角となる方向に照射している。そのため、表面処理工程において、積層造形時の中央ビーム軸25に平行な面に対して電子ビームを効率よく照射できる。71は造形物上の電子ビームの照射位置の軌跡を示す。
【0032】
図14は表面処理工程での、二次造形物82上における電子ビーム22の照射の軌跡71を示している。電子ビームの照射位置は同図中で上下方向に移動している。電子ビーム照射位置が上の端まで移動した後、同図中の右方向に移動し、72で示す軌跡の間隔をあけて下方向に移動する。以下、この往復の動きを繰り返す。従って、積層造形工程での積層の各層の境界線61に対して電子ビームの照射位置の軌跡は直交する。電子ビーム照射位置は電子ビーム22を偏向器43で制御するのが好ましい。
【0033】
二次造形物82の表面に電子ビームが照射されることにより金属が溶融した溶融池が形成される。電子ビームの照射位置の移動にともない溶融池は移動する。電子ビームを照射したときに発生する溶融池は電子ビームの移動方向を長軸とする楕円になるため、上記のように積層の各層の境界線に対して直交方向に電子ビームを移動させると、積層の複数の層にまたがる長い溶融池を形成し、積層の層毎に形成されていた凹凸を溶かして平滑化効果を高めることができる。
【0034】
上記では、電子ビームを偏向器43により制御して、造形物表面上を移動(図中の右方向への移動)させて照射する例で説明したが、電子ビームの進行方向を固定して、二次造形物82を回転ステージ等で回転させながら、造形物表面上の電子ビームの照射位置を移動させることもできる。この場合、電子ビームを二次造形物82の表面に効率的に照射でき、短時間で表面処理を行うことができる。また、電子ビームと造形物の両方を移動させても良いのは言うまでもない。
【0035】
ここで、電子ビームを照射することによる造形物の表面の平滑化に関して
図15および
図16を参照して説明する。図は二次造形物の表面にある凹凸の状況75を示している。凹凸の間隔(凸と凸の間隔または凹と凹の間隔)は積層の1層分の層厚さや金属粉末の粒径に依存する。一実施例として実験した、積層の1層分の厚さが100μm、金属粉末の平均粒径が60μmの場合、凹凸の間隔は100〜200μmが多かった。
【0036】
この凹凸部に電子ビーム22を照射すると溶融池76が形成される。電子ビーム22は図中の矢印78の方向に移動している。図中のwは溶融池の幅を示す。凹凸部が溶融し、電子ビーム22の終端部から順番に凝固していく。
図15に示すように、溶融池76の幅wが凹凸の間隔以上の広い範囲であると、凹凸は溶けてしまい平均化されるため凹凸が小さくなり平滑化される。
図16に示すように、凹凸の間隔に対して溶融池76の幅wが狭いと凹凸の平滑化効果は小さくなる。よって、溶融池の幅wが、凹凸の間隔に対応して予め設定した寸法以上となるようにするのが良い。凹凸の間隔は、上述のように、積層造形工程において形成された金属凝固層の厚さに対応して生ずる。このため、積層造形工程において形成された金属凝固層の厚さ方向における溶融池の幅wが金属凝固層の厚さの2倍以上となるようにするのが好ましい。
【0037】
溶融池の幅wを調整するためにビーム径、ビームパワー、ビームの強度分布形状などの電子ビーム22のパラメータを調整する。すなわち、積層造形工程において形成された金属凝固層の厚さ方向における溶融池の幅wが予め設定した寸法以上となるよう電子ビーム22のパラメータを設定する。ここで、ビーム径について説明する。
図17に集束された電子ビームのビームプロファイルを示す。横軸が径方向の寸法、縦軸は電流密度である。電流密度のピーク値Jpに対して、半分の電流密度のビームの幅(半値全幅)dでビーム径を表す。また、強度分布がフラットな形状のビームにすることもできる、この場合、ビーム径はフラット部分の径として定義できる。
【0038】
適切なビームパワーを与えた場合、溶融池の幅wはビーム径相当となるため、積層の層厚さの2倍以上にビーム径を制御するとよい。層厚さが100μmの場合は、ビーム径が200
μm以上がよい。ビーム径の簡単な調整は、ビーム照射位置での電子ビームの集束状態を
調整することで可能である。電子ビームの集束状態は集束レンズ電流により調整することができる。ビームパワーは、電子源41で電子ビームを加速する加速電圧は一定に保ち、電子ビームの電流値を変えて調整することが多い。
【0039】
溶融池の幅が広すぎると、本来必要な形状、例えば小さな突起部分やエッジなどが滑らかになってしまうことがある。200μmより大きい凹凸を精度よく形成するには、溶融池、ビーム径の上限は積層厚さの5倍程度より小さいことが望ましい。これらのことから、積層厚さに対して2〜5倍の溶融池を形成するのが望ましい。このためには、積層厚さの2〜5倍のビーム径に制御することが望ましい。突起部やエッジ部、他精度の必要な箇所は、表面処理のビームを照射しないように制御すればよい。これは、形状データをもとに偏向データにより制御することができる。
【0040】
ここで、一実施例による結果を示す。Tiの平均粒径60μmの粉末を使用し、層の厚さを100μmmとして実験を行った。積層の各層の境界線に対して電子ビームの照射位置の移動方向が直角の方向になるように電子ビームを偏向で移動させた。ビーム移動速度は1m/s、ビームパワーは600Wである。また、このとき電子ビームの軌跡の間隔(
図14の符号72で示す間隔)は100μmとした。表面処理工程後の最終の造形物の表面の凹凸の例を
図18(積層造形時のビーム軸に平行な面)、
図19(ビーム軸に直交する面)、
図20(ビーム照射側に対して裏側の面)に示す。表面処理によって、積層造形時のビーム軸に平行な面、ビーム軸に直交する面、ビーム照射側に対して裏側の面の表面粗さRaは次のように改善された。
【0042】
このように、三次元積層造形方法および装置では、積層造形工程、金属粉末除去工程、表面処理工程に分離し、積層造形が完了し、金属粉末を除去した二次造形物に、積層造形工程の中央ビーム軸とは異なる方向から電子ビームを照射できるように構成したため、二次造形物の表面の凹凸が大きく表面粗さが大きな表面に電子ビームを照射でき、表面を滑らかにできる効果が得られた。
【0043】
熱源に電子ビームを適用したため、金属粉末の表面での反射の影響なく効率よく加熱され、溶融・凝固が行われ、造形物の崩れ等が発生せず安定に生産できる効果がある。また、積層造形の工程が完了し造形物の形成が完了したあとに、表面処理のため熱源として電子ビームを照射するように構成したため、造形物の熱変形が抑制でき精度の高い積層造形が可能になる効果がある。
【0044】
さらに、積層造形工程での積層の各層の境界線に対して、表面処理工程の電子ビームの照射位置の軌跡が直交するようにビーム照射位置を移動させることで、表面の凹凸を低減
する効果を高くできる効果があった。
【0045】
なお、表面処理工程における電子ビームの照射位置の移動方向は積層の層間の境界線に直交方向に限ったものではなく、積層の層間の境界線に対して電子ビームの照射位置が交差するように移動し、その時に形成される溶融池が、積層における1層の層厚さ以上あり、造形物の凹凸の間隔以上にまたがる程度であれば同等の効果を得ることができる。
【0046】
表面処理工程において、二次造形物を回転させることで、表面処理を短時間でできることを示したように、積層造形工程の電子ビームの軸に対して、相対的に、表面処理工程の電子ビームのビーム軸の方向が変わるようにすることで短時間に表面処理できる効果を得ることができた。
【0047】
なお、
図13では電子銃を横に配置した例を示したが、電子銃は上方に固定し二次造形物82の向きを一次造形物81の向きとは異なる向きに変えて設置して電子ビーム22を照射しても同等の効果が得られる。また、積層造形工程の中央ビーム軸25と表面処理工程の中央ビーム軸26のなす角θ(=α―β、
図8参照)が90度の場合を示したが、角度θは90度に限定されるものではなく、造形物の表面に効率よく電子ビームを照射できる角度であれば同等の効果を得ることができる。
【0048】
また、三次元積層造形方法および装置では、仕上げ加工なしで、複雑な形状で精度の高い造形物を安定に供給できる効果がある。
【0049】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2による三次元積層造形方法における表面処理工程での電子ビーム照射の模様を、電子ビーム照射機300の断面図により
図21に示す。出力がkwオーダの電子ビームでは、通常、数mm以上の焦点深度を持つ。偏向によるビーム収差のない範囲では、造形物の平坦な面に対して電子ビームを照射する場合、焦点変動の影響は無視しても効果はかわらない。焦点深度は有限であり、造形物の形状が曲面や複数の面の組合せ、穴やへこみの組合せなど複雑な場合、焦点の補正により表面処理の効果を高めることができる。
【0050】
電子ビームの焦点を調整しビーム照射部の溶融状態を一定に保ち、安定な表面処理を行う。本実施の形態では集束レンズの焦点距離を調整して造形物の表面に焦点が合うように調整する。
図21は、球状の二次造形物82に電子ビームを照射した例を示している。電子ビームの照射方向が91になるように偏向されている場合、二次造形物82の表面92の位置に電子ビームの焦点があっている。偏向器43の制御により電子ビームの照射方向が93に移動した時に、焦点調整を行わなかった場合の焦点は94の位置となる。集束レンズ42を調整し焦点を95で示す位置に遠ざけることで二次造形物82の表面で常に電子ビームの焦点を結ばせることができる。
【0051】
電子銃では通常、磁気集束レンズを用いておりレンズ電流値を制御することで調整できる。光ビームのように機械的な駆動装置によるビーム照射ヘッドの制御やガルバノメータ式スキャナーは不要である。ビーム照射方向を制御する偏向器43の制御信号に同期して集束レンズの電流を電気的に制御することで、常に二次造形物82の表面に電子ビームの焦点を合わすことができる。これにより安定に表面処理でき、表面の滑らかな造形物8を得ることができた。なお、集束レンズ電流は造形物の形状データを元にビーム照射位置に応じた焦点距離に相当する電流値を予め計算しておく。
【0052】
電子ビームの場合、表面処理における造形物上の電子ビームの移動速度は1〜10m/sで高速に移動しているが、電気的に集束レンズ電流を制御するため、機械的な動きが不
要であり、ビーム移動に十分に追随させた焦点補正が可能である。なお、集束レンズ42は直流用の集束レンズと補正用の高速動作用の集束レンズ(ダイナミックフォーカスレンズと呼ばれる)の2個の集束レンズを組合せて使用しても同等の効果を得ることができる。
【0053】
この発明の実施の形態2による三次元積層造形方法および装置では、実施の形態1で示したように二次造形物82の表面の凹凸が大きく表面粗さが大きな表面に電子ビームを照射でき、表面を滑らかにできる効果があることに加えて、造形物の表面形状にあわせて、電子ビームの照射位置とビーム径を制御するように構成したため、表面形状が複雑な造形物でも表面を滑らかにできる効果がある。なお、
図21では球状の造形物で説明したが、他の複雑な形状の造形物においても同様に表面処理が可能である。
【0054】
実施の形態3.
この発明の実施の形態3による三次元積層造形方法における表面処理工程での電子ビーム照射の模様を、電子ビーム照射機300の断面図により
図22に示す。電子ビームをある方向に向けて照射する場合に、96の矢印の幅で電子ビームをビーム軸の垂直な方向に振動させる、いわゆるビームオシレーションをかけて照射する。
図23はビームオシレーションをかけるための電子銃21の構成を説明する図である。偏向器43で電子ビーム22のビーム照射位置(照射方向)を制御している。ビーム位置の移動を示す偏向データ402とビームオシレーション信号403を加算器401で加算した信号で偏向電源47を介して偏向器43を駆動する。オシレーション信号は数kHzから100kHz程度の高周波数の三角波で振幅はビーム照射位置の振幅で0.1〜2mm程度が選ばれる。偏向データは通常のビーム照射位置を移動するデータである。オシレーション信号により、ワーク193上で、電子ビームは細線矢印96で示す小さな振幅で高周波に振動しながら、ビーム照射位置が太線矢印192で示すように移動する。電子ビームはビームオシレーションの周波数が高いため、ワークに対しては見かけ上ビーム径が大きくなったのと同等に作用する。
【0055】
図22ではビーム偏向で二次造形物82の表面に電子ビームを照射している時に、偏向器43に高周波のオシレーション信号を重畳し、ビーム照射位置を振動させるビームオシレーションを加えた、矢印96で示す幅だけ振動させる。オシレーションの振幅0.5mm、
周波数10kHz、オシレーション波形三角波でビームオシレーションを加え、表面処理の溶融池の幅を安定に制御できた。
【0056】
実施の形態1で説明したように造形物の表面を滑らかにするためには、積層の層の厚さ、金属粉末の粒径に応じて溶融池の幅を制御することで効果を高めることができる。溶融池の幅はビームパワーで制御可能であるが、溶融深さも同時に変わってしまう。ビームオシレーションを用いることで、深さ方向の溶け込み幅を大きくせず、また熱影響を少なく保って、溶融池の幅を大きくすることができる。
【0057】
実施の形態3による三次元積層造形方法および装置では、実施の形態1、2で示したように造形物の表面の凹凸が大きく表面粗さの大きな表面を滑らかにでき、表面形状の複雑な造形物の表面を滑らかにできる効果があることに加えて、造形物への熱影響を少ない状態に保ちながら、表面を滑らかにできる効果がある。
【0058】
また、積層造形工程における1層の層の厚さを変えたときや、金属粉末の粒径が変わったときには、造形物の表面の凹凸の間隔が変わる。表面の凹凸を平滑化するために最適な溶融池の幅の調整するために、ビームオシレーションの振幅の調整が適しており、簡単に表面の滑らかな造形物を製造できる。
【0059】
実施の形態4.
この発明の実施の形態4による三次元積層造形方法における表面処理工程での電子ビーム照射の模様を
図24に概念図として示す。積層造形工程での中央ビーム軸25に対して、表面処理工程での中央ビーム軸26のなす角θが135度になる位置に電子銃21を配置した。なお、積層造形工程の中央ビーム軸25と表面処理工程の中央ビーム軸が交差する場合は角θは簡単に表される。交差しない場合は
図7で説明したように、積層における層間の境界面に対する角度により定義される。
【0060】
本実施の形態4によれば、表面処理工程において、積層造形時に電子ビーム照射側からみて造形物の裏側となる面に電子ビームを効率よく照射できる。二次造形物82の裏面の表面粗さは側面と同等の凹凸が発生している。表面処理工程において、裏面に対して電子ビームを効率的に照射でき、表面の凹凸を低減し、表面を平滑にすることが可能である。
図25は装置構成の例を示している。左側の
図25Aは積層造形工程を示す図、右側の
図25Bは表面処理工程を示す図である。図では積層造形工程における一次造形物81と表面処理工程における二次造形物82の配置方向を同じ方向にして、それぞれの電子銃の配置方向を変えている。ただし、ビーム軸方向が同一の電子銃を用いて、造形物の配置方向を変えてもよい。また、電子銃1と電子銃21として同じ電子銃、電子ビーム照射室3と電子ビーム照射室23として同じ電子ビーム照射室を使用してもよい。上記では、積層造形時の中央ビーム軸25と表面処理時の中央ビーム軸26のなす角度が135度の例を示したが、造形物の形状により、θとして90度〜180度の間の角度を選べばよい。
【0061】
特許文献1に記載されている従来の積層造形方法では、粉末の層を敷くことと、その層へ光ビームを照射して下層の凝固した層との一体化を繰り返し、積層造形作業の途中に、積層造形の途中の造形物を粉末の層から取出し、光ビームを端面に水平方向から照射していた。積層造形の途中で、端面に光ビームを照射するため、再び積層造形を行うことができるように、直前に敷かれた粉末の層から、造形物を鉛直方向に少し持ちあげて光ビームを水平方向から照射するという複雑な方法が使われている。しかし、この方法でも、光ビームの再照射のときには、造形物のほとんどの部分は金属粉末に埋まっており、光ビームを任意の方向、特に下側から上向きに光ビームを照射することはできないという課題があった。
【0062】
本発明の実施の形態4による三次元積層造形方法および装置では、上述したように、積層造形工程、金属粉末除去工程、表面処理工程に分離し、積層造形が完了し金属粉末を除去した二次造形物に、任意の方向から電子ビームを照射できるように構成したため、積層造形工程のビーム照射方向に対して反対側にあたる二次造形物の表面に対しても、表面処理工程で電子ビームを照射でき、表面を滑らかにできる効果が得られる。
【0063】
実施の形態5.
図26は、本発明の実施の形態5による三次元積層造形装置の概略構成を示す断面図である。実施の形態5による三次元積層造形装置では、三次元積層造形装置として、積層造形工程を実行する第1の電子ビーム照射機100、金属粉末除去工程を実行する金属粉末除去機200、表面処理工程を実行する第2の電子ビーム照射機300を有し、連続して処理できるように構成している。第1の電子ビーム照射機100の電子ビーム照射室3と金属粉末除去機200の金属粉末除去室11の間は第1のゲート102で仕切られている。積層造形工程中は第1のゲート102は閉められており、積層造形工程終了後、第1のゲート102を開けて未溶融の金属粉末が付着した一次造形物81を第1のゲート102を通して金属粉末除去装置200に送り込む。金属粉末除去機200の金属粉末除去室11と第2の電子ビーム照射機300の第2の電子ビーム照射室23間は第2のゲート203で仕切られている。金属粉末除去機200において金属粉末除去工程を実行している間は、第1のゲート102および第2のゲート203は閉められている。金属粉末除去工程終了後、第2のゲート203を開け、付着していた金属粉末が除去された二次造形物82を第2の電子ビーム照射室23に送り込む。その後、第2の電子ビーム照射室23内で表面処理工程を実行する。なお、処理される各造形物を金属粉末除去室と各電子ビーム照射室の間で移動させるためのステージなどの輸送機構も備えている。
【0064】
第1の電子ビーム照射機100、金属粉末除去機200、第2の電子ビーム照射機300および各ゲートは、中央制御装置50により制御され、積層造形工程、金属粉末除去工程、表面処理工程が実行される。中央制御装置50は、CPUとメモリを備えており、メモリに保存された各装置の制御パラメータなどに基づいてCPUが必要な演算処理を行い、各装置に対する指令を送出する。中央制御装置50と各装置の間に、電子銃制御装置のようなローカル制御装置を設けても良い。また、中央制御装置50は複数の計算機で構成されていても良い。
【0065】
本実施の形態5によれば、積層造形、金属粉末除去、表面処理の連続した処理が可能となり、生産性が向上する効果を得ることができる。
【0066】
実施の形態6.
図27は、本発明の実施の形態6による三次元積層造形装置の概略構成を示す断面図である。実施の形態6による三次元積層造形装置では、三次元積層造形装置として、積層造形工程および表面処理工程を実行する電子ビーム照射機110、金属粉末除去工程を実行する金属粉末除去機200を有し、各工程を連続して処理できるように構成している。電子ビーム照射機110の電子ビーム照射室3と金属粉末除去機200の金属粉末除去室11の間はゲート103で仕切られている。積層造形工程中はゲート103は閉められており、積層造形工程終了後、ゲート103を開けて未溶融の金属粉末が付着した造形物81をゲート103を通して金属粉末除去室11に送り込む。金属粉末除去室11において金属粉末除去工程を実行している間はゲート103は閉められている。金属粉末除去工程終了後、ゲート103を開け、付着していた金属粉末が除去された二次造形物82を再び電子ビーム照射室3に送り込む。その後、電子ビーム照射機110内で表面処理工程を実行する。表面処理工程を実行する際は、二次造形物82に第2の電子ビームを照射できるよう、積層槽150は退避させる。なお、処理される各造形物を電子ビーム照射室と金属粉末除去室との間で移動させるためのステージなどの輸送機構も備えている。
【0067】
電子ビーム照射機110、金属粉末除去機200およびゲート103は、中央制御装置501により制御され、積層造形工程、金属粉末除去工程、表面処理工程が実行される。
【0068】
本実施の形態6による三次元積層造形装置では積層造形工程に使用した電子ビーム照射機110を表面処理工程でも使用する。実施の形態5の、第1の電子銃1と第2の電子銃21とが同一の電子銃であり、第1の電子ビーム照射室3と第2の電子ビーム照射室23とが同一の電子ビーム照射室である場合、すなわち第1の電子ビーム照射機100と第2の電子ビーム照射機300を同一の電子ビーム照射機110とした場合に相当する。造形物8を電子ビーム照射ステージ105と金属粉末除去ステージ106間で移動させて処理することで、最終的な造形物8が完成する。本実施の形態6によれば、実施の形態5による効果に加え、電子銃1や付随する電源、排気系等を共有でき、設備費用の抑制が可能となる効果がある。
【0069】
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。