(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。以下に説明する実施の形態は、いずれも本開示の好ましい一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であって本開示を限定する主旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本開示の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。なお、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0013】
<実施の形態>
[構成]
図1は、本開示の一実施の形態に係る有機電界発光装置1の概略構成例を表したものである。
図2は、有機電界発光装置1に設けられた各画素11の回路構成の一例を表したものである。有機電界発光装置1は、例えば、有機電界発光パネル10、コントローラ20およびドライバ30を備えている。ドライバ30は、例えば、有機電界発光パネル10の外縁部分に実装されている。有機電界発光パネル10は、行列状に配置された複数の画素11を有している。コントローラ20およびドライバ30は、外部から入力された映像信号Dinおよび同期信号Tinに基づいて、有機電界発光パネル10を駆動する。
【0014】
(有機電界発光パネル10)
有機電界発光パネル10は、コントローラ20およびドライバ30によって各画素11がアクティブマトリクス駆動されることにより、外部から入力された映像信号Dinおよび同期信号Tinに基づく画像を表示する。有機電界発光パネル10は、行方向に延在する複数の走査線WSLと、列方向に延在する複数の信号線DTL
と、行方向に延在する複数の電源線DSLと、行列状に配置された複数の画素11とを有している。
【0015】
走査線WSLは、各画素11の選択に用いられるものであり、各画素11を所定の単位(例えば画素行)ごとに選択する選択パルスを各画素11に供給するものである。信号線DTLは、映像信号Dinに応じた信号電圧Vsigの、各画素11への供給に用いられるものであり、信号電圧Vsigを含むデータパルスを各画素11に供給するものである。電源線DSLは、各画素11に電力を供給するものである。
【0016】
各画素11は、例えば、赤色光を発するサブピクセル12、緑色光を発するサブピクセル12、および青色光を発するサブピクセル12を含んで構成されている。なお、各画素11は、例えば、さらに、他の色(例えば、白色や、黄色など)を発するサブピクセル12を含んで構成されていてもよい。
【0017】
各信号線DTLは、後述の水平セレクタ31の出力端に接続されている。各画素列には、例えば、複数の信号線DTLが1本ずつ、割り当てられている。各走査線WSLは、後述のライトスキャナ32の出力端に接続されている。各画素行には、例えば、複数の走査線WSLが1本ずつ、割り当てられている。各電源線DSLは、電源の出力端に接続されている。各画素行には、例えば、複数の電源線DSLが1本ずつ、割り当てられている。
【0018】
各サブピクセル12は、画素回路12−1と、有機電界発光素子12−2とを有している。有機電界発光素子12−2の構成については、後に詳述する。
【0019】
画素回路12−1は、有機電界発光素子12−2の発光・消光を制御する。画素回路12−1は、後述の書込走査によって各サブピクセル12に書き込んだ電圧を保持する機能を有している。画素回路12−1は、例えば、駆動トランジスタTr1、書込トランジスタTr2および保持容量Csを含んで構成されている。
【0020】
書込トランジスタTr2は、駆動トランジスタTr1のゲートに対する、映像信号Dinに対応した信号電圧Vsigの印加を制御する。具体的には、書込トランジスタTr2は、信号線DTLの電圧をサンプリングするとともに、サンプリングにより得られた電圧を駆動トランジスタTr1のゲートに書き込む。駆動トランジスタTr1は、有機電界発光素子12−2に直列に接続されている。駆動トランジスタTr1は、有機電界発光素子12−2を駆動する。駆動トランジスタTr1は、書込トランジスタTr2によってサンプリングされた電圧の大きさに応じて有機電界発光素子12−2に流れる電流を制御する。保持容量Csは、駆動トランジスタTr1のゲート−ソース間に所定の電圧を保持するものである。保持容量Csは、所定の期間中に駆動トランジスタTr1のゲート−ソース間電圧Vgsを一定に保持する役割を有する。なお、画素回路12−1は、上述の2Tr1Cの回路に対して各種容量やトランジスタを付加した回路構成となっていてもよいし、上述の2Tr1Cの回路構成とは異なる回路構成となっていてもよい。
【0021】
各信号線DTLは、後述の水平セレクタ31の出力端と、書込トランジスタTr2のソースまたはドレインとに接続されている。各走査線WSLは、後述のライトスキャナ32の出力端と、書込トランジスタTr2のゲートとに接続されている。各電源線DSLは、電源回路と、駆動トランジスタTr1のソースまたはドレインに接続されている。
【0022】
書込トランジスタTr2のゲートは、走査線WSLに接続されている。書込トランジスタTr2のソースまたはドレインが信号線DTLに接続されている。書込トランジスタTr2のソースおよびドレインのうち信号線DTLに未接続の端子が駆動トランジスタTr1のゲートに接続されている。駆動トランジスタTr1のソースまたはドレインが電源線DSLに接続されている。駆動トランジスタTr1のソースおよびドレインのうち電源線DSLに未接続の端子が有機電界発光素子21−2の陽極21に接続されている。保持容量Csの一端が駆動トランジスタTr1のゲートに接続されている。保持容量Csの他端が駆動トランジスタTr1のソースおよびドレインのうち有機電界発光素子21−2側の端子に接続されている。
【0023】
(ドライバ30)
ドライバ30は、例えば、水平セレクタ31およびライトスキャナ32を有している。水平セレクタ31は、例えば、制御信号の入力に応じて(同期して)、コントローラ20から入力されたアナログの信号電圧Vsigを、各信号線DTLに印加する。ライトスキャナ32は、複数のサブピクセル12を所定の単位ごとに走査する。
【0024】
(コントローラ20)
次に、コントローラ20について説明する。コントローラ20は、例えば、外部から入力されたデジタルの映像信号Dinに対して所定の補正を行い、それにより得られた映像信号に基づいて、信号電圧Vsigを生成する。コントローラ20は、例えば、生成した信号電圧Vsigを水平セレクタ31に出力する。コントローラ20は、例えば、外部から入力された同期信号Tinに応じて(同期して)、ドライバ30内の各回路に対して制御信号を出力する。
【0025】
次に、
図3、
図4、
図5を参照して、有機電界発光素子12−2について説明する。
図3は、有機電界発光パネル10の概略構成例を表したものである。
図4は、
図3の有機電界発光パネル10のA−A線での断面構成例を表したものである。
図5は、
図3の有機電界発光パネル10のB−B線での断面構成例を表したものである。
【0026】
有機電界発光パネル10は、行列状に配置された複数の画素11を有している。各画素11は、例えば、上述したように、赤色光を発するサブピクセル12(12R)、緑色光を発するサブピクセル12(12G)、および青色光を発するサブピクセル12(12B)を含んで構成されている。サブピクセル12Rでは、赤色の光を発する有機電界発光素子12−2(12r)を含んで構成されている。サブピクセル12Gでは、緑色の光を発する有機電界発光素子12−2(12g)を含んで構成されている。サブピクセル12Bでは、青色の光を発する有機電界発光素子12−2(12b)を含んで構成されている。サブピクセル12R,12G,12Bは、例えば、ストライプ配列となっている。各画素11において、例えば、サブピクセル12R,12G,12Bが、列方向に並んで配置されている。さらに、各画素行において、例えば、同一色の光を発するサブピクセル12が、行方向に並んで配置されている。
【0027】
有機電界発光パネル10は、基板14上に、行方向に延在する複数のラインバンク13を有している。有機電界発光パネル10は、さらに、基板14上に、複数のラインバンク13の端部を互いに連結する複数のバンク15を有している。各バンク15は、列方向に延在している。基板14は、例えば、各有機電界発光素子12−2や各ラインバンク13などを支持する基材と、基材上に設けられた配線層とによって構成されている。基板14内の基材は、例えば、無アルカリガラス、ソーダガラス、無蛍光ガラス、燐酸系ガラス、硼酸系ガラスまたは石英などによって形成されている。基板14内の基材は、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエチレン、ポリエステル、シリコーン系樹脂、またはアルミナなどによって形成されている。基板14内の配線層には、例えば、各画素11の画素回路12−1が形成されている。
【0028】
ラインバンク13およびバンク15は、例えば、絶縁性の有機材料によって形成されている。絶縁性の有機材料としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック型フェノール樹脂などが挙げられる。ラインバンク13およびバンク15は、例えば、耐熱性、溶媒に対する耐性を持つ絶縁性樹脂によって形成されていることが好ましい。ラインバンク13およびバンク15は、例えば、絶縁性樹脂をフォトリソグラフィおよび現像によって所望のパターンに加工することによって形成される。ラインバンク13の断面形状は、例えば、
図4に示したような順テーパ型であってもよく、裾が狭くなった逆テーパ型であってもよい。
【0029】
互いに平行で、かつ互いに隣接する2つのラインバンク13および両端のバンク15によって囲まれた領域が、溝部16なっている。各サブピクセル12において、各有機電界発光素子12−2は、互いに平行で、かつ互いに隣接する2つのラインバンク13の間隙に1つずつ配置されている。つまり、各サブピクセル12において、各有機電界発光素子12−2は、溝部16の中に1つずつ配置されている。互いに平行で、かつ互いに隣接する2つのラインバンク13の間隙(溝部16の幅D1)は、例えば、50μm以下の大きさとなっている。互いに平行で、かつ互いに隣接する2つのラインバンク13の間隙(溝部16の幅D1)は、例えば、RGBのサブピクセル12がストライプ配列となっているときに、精細度が150ppi以上となるような大きさとなっている。
【0030】
各有機電界発光素子12−2は、例えば、陽極21、正孔注入層22、正孔輸送層23、有機発光層24、電子輸送層25、電子注入層26および陰極27を基板14側からこの順に備えたものである。正孔注入層22は、正孔注入効率を高めるための層である。正孔輸送層23は、陽極21から注入された正孔を有機発光層24へ輸送するための層である。有機発光層24は、電子と正孔との再結合により、所定の色の光を発する層である。電子輸送層25は、陰極27から注入された電子を有機発光層24へ輸送するための層である。電子注入層26は、電子注入効率を高めるための層である。正孔注入層22および電子注入層26の少なくとも一方が省略されていてもよい。各有機電界発光素子12−2は、上述以外の層をさらに有していてもよい。
【0031】
陽極21は、例えば、基板14の上に形成されている。陽極21は、透光性を有する透明電極であって、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)又はIZO(Indium Zinc Oxide)等の透明導電性材料からなる透明導電膜が用いられる。なお、陽極21は、透明電極に限るものではなく、例えば、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、アルミニウムもしくは銀の合金等、または、反射性を有する反射電極であってもよい。陽極21は、反射電極と透明電極とが積層されたものであってもよい。
【0032】
正孔輸送層23は、陽極21から注入された正孔を有機発光層24へ輸送する機能を有する。正孔輸送層23は、例えば、塗布膜である。正孔輸送層23は、例えば、正孔輸送性を有する有機材料(以下、「正孔輸送性材料23M」と称する。)を溶質の主成分とする溶液を塗布および乾燥することにより形成されている。正孔輸送層23は、正孔輸送性材料23Mを主成分として含んで構成されている。正孔輸送層23は、例えば、正孔輸送性材料23Mおよび正孔輸送性材料23M以外の成分のうち、少なくとも一方に、不溶化する機能を有している。不溶化する機能とは、熱解離可溶性基、架橋性基または脱離性保護基などの不溶化基が、熱あるいは紫外光等の照射もしくはその組み合わせにより、化学変化し、有機溶媒や水への溶解性を低下させる機能のことをいう。従って、正孔輸送層23が、正孔輸送性材料23Mおよび正孔輸送性材料23M以外の成分のうち、少なくとも一方に、不溶化基を有する材料を含んでいる場合には、正孔輸送層23は、不溶化処理のなされた正孔輸送層である。不溶化は、例えば、残膜率で評価される。不溶化基については、後に詳述する。
【0033】
正孔輸送層23は、蒸着膜であってもよい。この場合には、正孔輸送層23は、例えば、正孔輸送性材料23Mを蒸着することにより形成されている。
【0034】
正孔輸送層23の原料(材料)である正孔輸送性材料23Mは、例えば、アリールアミン誘導体、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン化合物、ポリスチレン誘導体、ヒドラゾン誘導体、トリフェニルメタン誘導体、テトラフェニルベンジン誘導体等、または、これらの組み合わせからなる材料である。正孔輸送性材料23Mは、さらに、例えば、溶解性および不溶化の機能のために、その分子構造中に、可溶性基と、熱解離可溶性基、架橋性基または脱離性保護基などの不溶化基とを有している。
【0035】
有機発光層24は、正孔と電子との再結合により、所定の色の光を発する機能を有する。有機発光層24は、塗布膜である。有機発光層24は、正孔と電子との再結合により励起子を生成し発光する有機材料(以下、「有機発光材料24M」と称する。)を溶質の主成分とする溶液の塗布および乾燥により形成されている。有機発光層24は、有機発光材料24Mを主成分として含んで構成されている。サブピクセル12Rに含まれる有機電界発光素子12rでは、有機発光材料24Mが赤色有機発光材料を含んで構成されている。サブピクセル12Gに含まれる有機電界発光素子12gでは、有機発光材料24Mが緑色有機発光材料を含んで構成されている。サブピクセル12Bに含まれる有機電界発光素子12bでは、有機発光材料24Mが青色有機発光材料を含んで構成されている。
【0036】
有機発光層24は、例えば、有機発光材料24Mおよび有機発光材料24M以外の成分のうち、少なくとも一方に、不溶化する機能を有している。従って、有機発光層24が、有機発光材料24Mおよび有機発光材料24M以外の成分のうち、少なくとも一方に、不溶化基を有する材料を含んでいる場合には、有機発光層24は、不溶化処理のなされた有機発光層である。
【0037】
有機発光層24は、例えば、積層された複数の有機発光層によって構成されている。有機発光層24は、例えば、
図4、
図5に示したように、主成分が互いに共通の有機発光層24Aおよび有機発光層24Bを正孔輸送層23側からこの順に積層したものである。有機発光層24は、例えば、互いに積層された、主成分が互いに共通の有機発光層24Aおよび有機発光層24Bを有している。有機発光層24Aおよび有機発光層24Bは、ともに、塗布膜である。有機発光層24Aおよび有機発光層24Bは、ともに、有機発光材料24Mを溶質の主成分とする溶液の塗布および乾燥により形成されている。有機発光層24Aおよび有機発光層24Bは、ともに、有機発光材料24Mを主成分として含んで構成されている。有機発光層24Aおよび有機発光層24Bは、ともに、例えば、互いに共通のインクを塗布することにより形成されている。
【0038】
有機発光層24Aおよび有機発光層24Bのうち、少なくとも一方の層(具体的には、有機発光層24A)は、例えば、有機発光材料24Mおよび有機発光材料24M以外の成分のうち、少なくとも一方に、不溶化する機能(不溶化基を有する材料)を有している。従って、有機発光層24Aおよび有機発光層24Bのうち、不溶化する機能を有している層は、不溶化処理のなされた有機発光層である。
【0039】
有機発光層24の原料(材料)である有機発光材料24Mは、例えば、ドーパント材料単独であってもよいが、より好ましくは、ホスト材料とドーパント材料との組み合わせがよい。つまり、有機発光層24は、有機発光材料24Mとして、ホスト材料およびドーパント材料を含んで構成されている。ホスト材料は、主に電子又は正孔の電荷輸送の機能を担っており、ドーパント材料は、発光の機能を担っている。ホスト材料およびドーパント材料は1種類のみに限られるものではなく、2種類以上の組み合わせであってもよい。ドーパント材料の量は、ホスト材料に対して、0.01重量%以上30重量%以下であるとよく、より好ましくは、0.01重量%以上10重量%以下である。
【0040】
有機発光層24のホスト材料としては、例えば、アミン化合物、縮合多環芳香族化合物、ヘテロ環化合物が用いられる。アミン化合物としては、例えば、モノアミン誘導体、ジアミン誘導体、トリアミン誘導体、テトラアミン誘導体が用いられる。縮合多環芳香族化合物としては、例えば、アントラセン誘導体、ナフタレン誘導体、ナフタセン誘導体、フェナントレン誘導体、クリセン誘導体、フルオランテン誘導体、トリフェニレン誘導体、ペンタセン誘導体、または、ペリレン誘導体等が挙げられる。ヘテロ環化合物としては、例えば、カルバゾール誘導体、フラン誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、イミダゾール誘導体、ピラゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピロール誘導体、インドール誘導体、アザインドール誘導体、アザカルバゾール、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、または、フタロシアニン誘導体等が挙げられる。
【0041】
また、有機発光層24のドーパント材料としては、例えば、ピレン誘導体、フルオランテン誘導体、アリールアセチレン誘導体、フルオレン誘導体、ペリレン誘導体、オキサジアゾール誘導体、アントラセン誘導体、または、クリセン誘導体が用いられる。また、有機発光層24のドーパント材料としては、金属錯体が用いられてもよい。金属錯体としては、例えば、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、オスミウム(Os)、金(Au)、レニウム(Re)、もしくは、ルテニウム(Ru)等の金属原子と配位子とを有するものが挙げられる。
【0042】
有機発光層24は、蒸着膜であってもよい。この場合には、有機発光層24は、例えば、有機発光材料24Mを蒸着することにより形成されている。
【0043】
電子輸送層25は、陰極27から注入された電子を有機発光層24へ輸送する機能を有する。電子輸送層25は、例えば、塗布膜である。電子輸送層25は、電子輸送性を有する有機材料(以下、「電子輸送性材料25M」と称する。)主成分として含んで構成されている。
【0044】
電子輸送層25は、有機発光層24と陰極27との間に介在し、陰極27から注入された電子を有機発光層24へ輸送する機能を有する。電子輸送層25の原料(材料)である電子輸送性材料25Mは、例えば、分子内にヘテロ原子を1個以上含有する芳香族ヘテロ環化合物である。芳香族ヘテロ環化合物としては、例えば、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ベンズイミダゾール環、フェナントロリン環、キナゾリン環等を骨格に含む化合物が挙げられる。また、電子輸送層25は、電子輸送性を有する金属を含んでもよい。電子輸送層25は、電子輸送性を有する金属を含むことで、電子輸送層25の電子輸送性を向上できる。電子輸送層25に含まれる金属としては、例えば、バリウム(Ba)、リチウム(Li)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、セシウム(Cs)、ナトリウム(Na)、ルビジウム(Rb)等を用いることができる。
【0045】
電子輸送層25は、例えば、電子輸送性材料25Mおよび電子輸送性材料25M以外の成分のうち、少なくとも一方に、不溶化する機能を有している。従って、電子輸送層25が、電子輸送性材料25Mおよび電子輸送性材料25M以外の成分のうち、少なくとも一方に、不溶化基を有する材料を含んでいる場合には、電子輸送層25は、不溶化処理のなされた電子輸送層である。
【0046】
電子輸送層25は、蒸着膜であってもよい。この場合には、電子輸送層25は、例えば、電子輸送性材料25Mを蒸着することにより形成されている。
【0047】
陰極27は、例えば、光反射性を有する反射電極であり、例えば反射性を有する金属材料を用いて形成された金属電極である。陰極27の材料としては、例えば、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、銀(Ag)、アルミニウム−リチウム合金、マグネシウム−銀合金等が用いられる。なお、陰極27は、反射電極に限るものではなく、陽極21と同様に、ITO膜等の透明電極であってもよい。基板14及び陽極21が透光性を有し、陰極27が反射性を有する場合には、有機電界発光素子12−2は、基板14側から光が放出するボトムエミッション構造となっている。陽極21が反射性を有し、陰極27が透光性を有する場合には、有機電界発光素子12−2は、トップエミッション構造となっている。
【0048】
有機電界発光パネル10は、さらに、例えば、各有機電界発光素子12−2を封止する封止層28を有していてもよい。封止層28は、例えば、各有機電界発光素子12−2の陰極27の表面に接して設けられている。
【0049】
(不溶化基)
次に、上述した不溶化基について説明する。
図6、
図7は、不溶化基を有する有機材料の分子構造の例を表したものである。正孔輸送層23、有機発光層24および電子輸送層25のうち、少なくとも1つの層が、塗布膜となっており、不溶化基を有する材料を含んでいる。不溶化基は、熱解離可溶性基、架橋性基または脱離性保護基である。
【0050】
(熱解離可溶性基)
熱解離可溶性基とは、結合している芳香族炭化水素環から70℃以上で解離し、さらに溶媒に対して可溶性を示す基をいう。ここで、「溶媒に対して可溶性を示す」とは、化合物が熱および活性エネルギー線のうち少なくとも一方の照射によって反応する前の状態で、常温でトルエンに0.1重量%以上溶解することをいう。化合物のトルエンへの溶解性は、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上である。このような熱解離可溶性基として好ましくは、芳香族炭化水素環側に極性基を形成せずに熱解離する基であり、逆ディールスアルダー反応により熱解離する基であることがより好ましい。熱解離可溶性基としては、例えば、
図6に示したものが挙げられる。なお、熱解離可溶性基は、
図6に示したものに限定されるものではない。
【0051】
(架橋性基)
架橋性基とは、熱および活性エネルギー線のうち少なくとも一方の照射により、近傍に位置する他の分子の同一又は異なる基と反応して、新規な化学結合を生成する基をいう。熱および活性エネルギー線のうち少なくとも一方の照射によって起こる反応(不溶化反応)の前後で、溶媒に対する溶解性に大きな差を生じさせることができる点で、架橋性基は、熱解離可溶性基や脱離性保護基よりも好ましい。架橋性基としては、例えば、
図7に示したものが挙げられる。なお、架橋性基は、
図7に示したものに限定されるものではない。
【0052】
カチオン重合によって不溶化反応する基が、反応性が高く不溶化が容易な点で好ましい。カチオン重合によって不溶化反応する基としては、例えば、環状エーテル基(例えば、エポキシ基またはオキセタン基など)、または、ビニルエーテル基などが挙げられる。カチオン重合の速度を制御しやすい点では、オキセタン基が特に好ましい。カチオン重合の際に素子の劣化をまねくおそれのあるヒドロキシル基が生成しにくい点では、ビニルエーテル基が好ましい。
【0053】
(脱離性保護基)
脱離性保護基とは、加熱処理により脱離性保護基を脱離させることで分子構造変化をもたらす基をいう。脱離性保護基の脱離により、有機溶媒に対する溶解性が変化する。アミノ基を有する材料は、有機電界発光素子12−2の正孔輸送層23や電子輸送層25の材料として広く用いられる。脱離性保護基としては、t−BOC、ベンゾイル基、ベンジルカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、メトキシメチル基などが好ましい。
【0054】
(不溶化について)
不溶化は、例えば、不溶化される有機材料層を構成する材料の少なくとも一部を、エネルギーを加えることによって架橋することにより行われ得る。このような材料を含む塗布液を塗布して成膜した後に、エネルギーとして光または熱を加え、架橋させることによって膜を不溶化することができる。なお、本明細書においては、架橋とは、低分子の架橋剤が互いに重合することも含む概念である。不溶化される有機材料層を主に構成する材料が、エネルギーを加えることによって架橋するものであってもよい。また、不溶化される有機材料層を構成する材料のうちの、有機材料層を主に構成する材料を除く残余の材料の少なくとも一部が、エネルギーを加えることによって架橋するものであってもよい。不溶化は、例えば、脱離性保護基、熱解離可溶性基等にエネルギーを加えることによって置換基そのものが構造を変えることによっても行われ得る。
【0055】
[製造方法]
次に、有機電界発光パネル10の製造方法について説明する。
図8は、有機電界発光パネル10の製造手順の一例を表したものである。
図9〜
図15は、有機電界発光パネル10の製造過程の一例を表したものである。
【0056】
まず、基板14上に、複数のラインバンク13および複数のバンク15を形成する(
図9)。これにより、行方向に延在する溝部16が形成される。互いに平行で、かつ互いに隣接する2つのラインバンク13の間隙(溝部16の幅D1)を、有機電界発光パネル10として要求される精細度の大きさに応じて設定する。RGBのサブピクセル12がストライプ配列となっているときに、精細度を150ppi以上とする場合には、互いに平行で、かつ互いに隣接する2つのラインバンク13の間隙(溝部16の幅D1)を、50μm以下の大きさにする。
【0057】
次に、溝部16の底面に陽極21を形成する。続いて、例えば、インクジェット装置を用いて、インクの液滴を吐出したのち、吐出後のインクを乾燥させることにより、正孔注入層22および正孔輸送層23を形成する(
図10)。次に、例えば、インクジェット装置を用いて、インクの液滴を吐出することにより、主成分が互いに共通の液状の有機材料層24Aiおよび液状の有機材料層24Biを重ね塗りする。有機材料層24Aiおよび有機材料層24Biは、ともに、有機発光材料24Mを溶質の主成分とする液状の有機材料層である。有機材料層24Aiおよび有機材料層24Biは、ともに、有機発光材料24Mを主成分として含んで構成されている。有機材料層24Aiおよび有機材料層24Biは、ともに、互いに共通のインクによって構成されている。有機材料層24Aiおよび有機材料層24Biのうち、少なくとも有機材料層24Aiにおいて、有機発光材料24Mおよび有機発光材料24M以外の成分のうち、少なくとも一方に、不溶化基を有する材料を含んでいる。
【0058】
具体的には、まず、有機発光層24Aの原料である液状の有機材料層24Aiを、溝部16内に塗布する(ステップS101、
図11)。このとき、例えば、
図12に示したように、インクジェット装置からは、液滴LQの直径R1の2倍以上の吐出間隔D2で、液滴LQを溝部16内に滴下する。つまり、液滴の吐出間隙D2は、液滴LQの直径R1の2倍以上となっている。間隔D2は、例えば、溝部16内に滴下された全ての液滴LQにおいて等間隔となっている。なお、間隔D2が、例えば、溝部16内において、部分的に広くなったり、狭くなったりしていてもよい。
【0059】
次に、有機材料層24Aiに対して不溶化処理を行うことにより有機材料層24Aiに含まれる分子の構造に変化を与える(ステップS102)。これにより、有機材料層24Aiに含まれる溶媒が揮発するとともに、有機材料層24Aiに含まれる分子の構造の変化により、有機材料層24Aiが不溶化する。その結果、有機発光層24Aが形成される(
図13)。なお、ステップS102の不溶化処理において、有機材料層24Aiに含まれる溶媒を揮発させると同時に、有機材料層24Aiに含まれる分子の構造に変化を与えてもよい。また、ステップS102の不溶化処理において、有機材料層24Aiに含まれる溶媒を揮発させた後に、有機材料層24Aiに含まれる分子の構造に変化を与えてもよい。
【0060】
次に、有機発光層24Bの原料である液状の有機材料層24Biを、溝部16内に塗布する(ステップS103、
図14)。このとき、例えば、
図12に示したように、インクジェット装置からは、液滴LQの直径R1の2倍以上の吐出間隔D2で、液滴LQを溝部16内に滴下する。つまり、液滴の吐出間隙D2は、液滴LQの直径R1の2倍以上となっている。間隔D2は、例えば、溝部16内に滴下された全ての液滴LQにおいて等間隔となっている。なお、間隔D2が、例えば、溝部16内において、部分的に広くなったり、狭くなったりしていてもよい。
【0061】
次に、有機材料層24Biに対して不溶化処理を行う(ステップS104)。このとき、有機材料層24Biが不溶化基を有する材料を含んでいる場合には、不溶化処理により、有機材料層24Biに含まれる分子の構造に変化を与える。その結果、有機材料層24Biに含まれる溶媒が揮発するとともに、有機材料層24Biに含まれる分子の構造の変化により、有機材料層24Biが不溶化する。その結果、有機発光層24Bが形成される(
図15)。なお、ステップS104の不溶化処理において、有機材料層24Biに含まれる溶媒を揮発させると同時に、有機材料層24Biに含まれる分子の構造に変化を与えてもよい。また、ステップS104の不溶化処理において、有機材料層24Biに含まれる溶媒を揮発させた後に、有機材料層24Biに含まれる分子の構造に変化を与えてもよい。有機材料層24Biが不溶化基を有する材料を含んでいない場合には、有機材料層24Biに対して、不溶化処理の代わりに揮発処理を行う。その結果、有機発光層24Bが形成される(
図15)。
【0062】
次に、例えば、インクジェット装置を用いて、インクの液滴を吐出したのち、吐出後のインクを乾燥させることにより、電子輸送層25および電子注入層26を形成する。続いて、電子注入層26上に、陰極27および封止層28をこの順に形成する。このようにして、サブピクセル12ごとに有機電界発光素子12−2を有する有機電界発光パネル10が製造される。
【0063】
[効果]
次に、比較例と対比しつつ、本実施の形態の有機電界発光パネル10の製造方法の効果について説明する。
【0064】
インクジェット装置を用いて、有機電界発光素子を画素ごとに形成することにより、有機電界発光パネルを製造する方法が知られている。近年の高精細化に伴い、画素サイズが小さくなり、単位面積当たりの保液量が少なくなってきている。しかし、溶解性や、印刷可能な物性(粘度など)の観点から、インク濃度を過度に高くすることは難しい。そのため、例えば、特許文献1に記載の発明では、複数回に分けて、重ね塗りすることが提案されている。
【0065】
ところで、複数回に分けて、重ね塗りした場合には、既に塗られた層が、次に重ね塗りしたインクに溶解する。例えば、
図16A、
図16Bに示したように、基材100上に、一層目110を塗布した後、一層目110を乾燥させる。続いて、一層目110の上に、二層目120を塗布すると、例えば、
図16Cに示したように、一層目110の一部が溶解し、二層目120と混じり合う。このとき、一層目110の溶解は、二層目120を形成する際に吐出したインクの液滴が着弾した箇所の近傍のみで局地的に発生する。このように、溶解が、インクの液滴が着弾した箇所の近傍のみで局地的に発生した状態で、二層目120を乾燥させると、例えば、
図16Dに示したように、インクの液滴が着弾した箇所の膜厚が局所的に薄い有機材料層130が形成される。特に、画素間にインクが流動可能なラインバンクが用いられている場合には、この膜厚ムラが、複数の画素に渡り、筋状の輝度ムラとして視認されてしまう
【0066】
一方、本実施の形態では、塗布した有機材料層24Aiに対して、有機材料層24Aiに含まれる分子の構造に変化を与える不溶化処理が行われた後に、有機材料層24Biが塗布される。これにより、有機材料層24Aiが、有機材料層24Biによって溶解し難くなる。その結果、筋状の輝度ムラを抑えることができる。
【0067】
また、本実施の形態において、有機材料層24Aiおよび有機材料層24Biが、互いに共通のインクによって構成されている場合には、有機材料層24Biを塗布する際に、インクジェット装置のインクタンクを取り換える手間を省略することができる。その結果、有機電界発光パネル10の製造コストの上昇を低く抑えることができる。
【0068】
また、本実施の形態において、有機材料層24Aiにおいて、有機発光材料24Mおよび有機発光材料24M以外の成分のうち、少なくとも一方に、架橋性基を有する材料を含んでいる場合に、不溶化処理として、架橋性基の重合反応を促す処理を用いたとする。この場合、熱および活性エネルギー線のうち少なくとも一方の照射によって起こる反応(不溶化反応)の前後で、溶媒に対する溶解性に大きな差を生じさせることができる。そのため、有機材料層24Aiを、有機材料層24Biによって極めて溶解し難くすることができる。従って、筋状の輝度ムラを確実に抑えることができる。
【0069】
また、本実施の形態において、有機材料層24Aiにおいて、有機発光材料24Mおよび有機発光材料24M以外の成分のうち、少なくとも一方に、熱解離可溶性基を有する材料を含んでいる場合に、不溶化処理として、熱解離可溶性基の熱解離反応を促す処理を用いたとする。この場合、比較的、低エネルギーで不溶化処理を行うことができる。これにより、意図せぬ副次的な反応の発生を抑制できるので、有機発光材料24Mに対して悪影響を与えることなく、筋状の輝度ムラを抑えることができる。
【0070】
また、本実施の形態において、有機材料層24Aiにおいて、有機発光材料24Mおよび有機発光材料24M以外の成分のうち、少なくとも一方に、脱離性保護基を有する材料を含んでいる場合に、不溶化処理として、脱離性保護基の脱離反応を促す処理を用いたとする。この場合、比較的、低エネルギーで不溶化処理を行うことができる。これにより、意図せぬ副次的な反応の発生を抑制できるので、有機発光材料24Mに対して悪影響を与えることなく、筋状の輝度ムラを抑えることができる。
【0071】
また、本実施の形態において、塗布工程において、互いに平行な2つのラインバンクの間隙(溝部16内)に、有機材料層24Aiおよび有機材料層24Biを重ね塗りする場合には、サブピクセル12ごとに、有機材料層24Aiおよび有機材料層24Biを重ね塗りする場合と比べて、インクジェット装置の位置決め精度を低くすることができる。従って、低コストで、筋状の輝度ムラが抑えられた有機電界発光パネル10を製造することができる。
【0072】
また、本実施の形態において、互いに平行な2つのラインバンクの間隙(溝部16内)が、50μm以下の大きさとなっている場合には、本実施の形態の重ね塗りを行うことで、筋状の輝度ムラを抑えることができる。
【0073】
また、本実施の形態において、互いに平行な2つのラインバンクの間隙(溝部16内)が、RGBのサブピクセルがストライプ配列となっているときに精細度が150ppi以上となるような大きさとなっている場合には、本実施の形態の重ね塗りを行うことで、筋状の輝度ムラを抑えることができる。
【0074】
<変形例>
以下に、上記実施の形態の有機電界発光パネル10の製造方法の変形例について説明する。
【0075】
[変形例A]
上記実施の形態の有機電界発光パネル10において、電子輸送層25が、例えば、積層された複数の電子輸送層によって構成されていてもよい。
【0076】
電子輸送層25は、例えば、
図17に示したように、主成分が互いに共通の電子輸送層25Aおよび電子輸送層25Bを有機発光層24側からこの順に積層したものである。電子輸送層25は、例えば、互いに積層された、主成分が互いに共通の電子輸送層25Aおよび電子輸送層25Bを有している。電子輸送層25Aおよび電子輸送層25Bは、ともに、塗布膜である。電子輸送層25Aおよび電子輸送層25Bは、ともに、電子輸送性材料25Mを溶質の主成分とする溶液の塗布および乾燥により形成されている。電子輸送層25Aおよび電子輸送層25Bは、ともに、電子輸送性材料25Mを主成分として含んで構成されている。電子輸送層25Aおよび電子輸送層25Bは、ともに、例えば、互いに共通のインクを塗布することにより形成されている。
【0077】
電子輸送層25Aおよび電子輸送層25Bのうち、少なくとも一方の層(具体的には、電子輸送層25A)は、例えば、電子輸送性材料25Mおよび電子輸送性材料25M以外の成分のうち、少なくとも一方に、不溶化する機能(不溶化基を有する材料)を有している。従って、電子輸送層25Aおよび電子輸送層25Bのうち、不溶化する機能を有している層は、不溶化処理のなされた有機発光層である。
【0078】
次に、有機電界発光パネル10の製造方法について説明する。
図18は、有機電界発光パネル10の製造手順の一例を表したものである。以下では、陽極21を形成した後の工程から説明を始める。
【0079】
ま
ず、例えば、インクジェット装置を用いて、インクの液滴を吐出したのち、吐出後のインクを乾燥させることにより、正孔注入層22、正孔輸送層23および有機発光層24を形成する。次に、例えば、インクジェット装置を用いて、インクの液滴を吐出することにより、主成分が互いに共通の液状の有機材料層25Aiおよび液状の有機材料層25Biを重ね塗りする。有機材料層25Aiおよび有機材料層25Biは、ともに、電子輸送性材料25Mを溶質の主成分とする液状の有機材料層である。有機材料層25Aiおよび有機材料層25Biは、ともに、電子輸送性材料25Mを主成分として含んで構成されている。有機材料層25Aiおよび有機材料層25Biは、ともに、互いに共通のインクによって構成されている。有機材料層25Aiおよび有機材料層25Biのうち、少なくとも有機材料層25Aiにおいて、電子輸送性材料25Mおよび電子輸送性材料25M以外の成分のうち、少なくとも一方に、不溶化基を有する材料を含んでいる。
【0080】
具体的には、まず、電子輸送層25Aの原料である液状の有機材料層25Aiを、溝部16内に塗布する(ステップS201)。このとき、例えば、インクジェット装置からは、液滴LQの直径R1の2倍以上の吐出間隔D2で、液滴LQを溝部16内に滴下する。つまり、液滴の吐出間隙D2は、液滴LQの直径R1の2倍以上となっている。間隔D2は、例えば、溝部16内に滴下された全ての液滴LQにおいて等間隔となっている。なお、間隔D2が、例えば、溝部16内において、部分的に広くなったり、狭くなったりしていてもよい。
【0081】
次に、有機材料層25Aiに対して不溶化処理を行うことにより有機材料層25Aiに含まれる分子の構造に変化を与える(ステップS202)。これにより、有機材料層25Aiに含まれる溶媒が揮発するとともに、有機材料層25Aiに含まれる分子の構造の変化により、有機材料層25Aiが不溶化する。その結果、電子輸送層25Aが形成される。なお、ステップS202の不溶化処理において、有機材料層25Aiに含まれる溶媒を揮発させると同時に、有機材料層25Aiに含まれる分子の構造に変化を与えてもよい。また、ステップS202の不溶化処理において、有機材料層25Aiに含まれる溶媒を揮発させた後に、有機材料層25Aiに含まれる分子の構造に変化を与えてもよい。
【0082】
次に、電子輸送層25Bの原料である液状の有機材料層25Biを、溝部16内に塗布する(ステップS203)。このとき、例えば、インクジェット装置からは、液滴LQの直径R1の2倍以上の吐出間隔D2で、液滴LQを溝部16内に滴下する。つまり、液滴の吐出間隙D2は、液滴LQの直径R1の2倍以上となっている。間隔D2は、例えば、溝部16内に滴下された全ての液滴LQにおいて等間隔となっている。なお、間隔D2が、例えば、溝部16内において、部分的に広くなったり、狭くなったりしていてもよい。
【0083】
次に、有機材料層25Biに対して不溶化処理を行う(ステップS204)。このとき、有機材料層25Biが不溶化基を有する材料を含んでいる場合には、不溶化処理により、有機材料層25Biに含まれる分子の構造に変化を与える。その結果、有機材料層25Biに含まれる溶媒が揮発するとともに、有機材料層25Biに含まれる分子の構造の変化により、有機材料層25Biが不溶化する。その結果、電子輸送層25Bが形成される。有機材料層25Biが不溶化基を有する材料を含んでいない場合には、不溶化処理により、有機材料層25Biに含まれる溶媒が揮発することにより、有機材料層25Biが不溶化する。その結果、電子輸送層25Bが形成される。なお、ステップS204の不溶化処理において、有機材料層25Biに含まれる溶媒を揮発させると同時に、有機材料層25Biに含まれる分子の構造に変化を与えてもよい。また、ステップS204の不溶化処理において、有機材料層25Biに含まれる溶媒を揮発させた後に、有機材料層25Biに含まれる分子の構造に変化を与えてもよい。有機材料層25Biが不溶化基を有する材料を含んでいない場合には、有機材料層25
Biに対して、不溶化処理の代わりに揮発処理を行う。その結果、
電子輸送層25Bが形成される。
【0084】
次に、例えば、インクジェット装置を用いて、インクの液滴を吐出したのち、吐出後のインクを乾燥させることにより、電子注入層26を形成する。続いて、電子注入層26上に、陰極27および封止層28をこの順に形成する。このようにして、サブピクセル12ごとに有機電界発光素子12−2を有する有機電界発光パネル10が製造される。
【0085】
次に、本変形例に係る有機電界発光パネル10の製造方法の効果について説明する。
【0086】
本変形例では、塗布した有機材料層25Aiに対して、有機材料層25Aiに含まれる分子の構造に変化を与える不溶化処理が行われた後に、有機材料層25Biが塗布される。これにより、有機材料層25Aiが、有機材料層25Biによって溶解し難くなる。その結果、筋状の輝度ムラを抑えることができる。
【0087】
また、本変形例において、有機材料層25Aiおよび有機材料層25Biが、互いに共通のインクによって構成されている場合には、有機材料層25Biを塗布する際に、インクジェット装置のインクタンクを取り換える手間を省略することができる。その結果、有機電界発光パネル10の製造コストの上昇を低く抑えることができる。
【0088】
また、本変形例において、有機材料層25Aiにおいて、電子輸送性材料25Mおよび電子輸送性材料25M以外の成分のうち、少なくとも一方に、架橋性基を有する材料を含んでいる場合に、不溶化処理として、架橋性基の重合反応を促す処理を用いたとする。この場合、熱および活性エネルギー線のうち少なくとも一方の照射によって起こる反応(不溶化反応)の前後で、溶媒に対する溶解性に大きな差を生じさせることができる。そのため、有機材料層25Aiを、有機材料層25Biによって極めて溶解し難くすることができる。従って、筋状の輝度ムラを確実に抑えることができる。
【0089】
また、本変形例において、有機材料層25Aiにおいて、電子輸送性材料25Mおよび電子輸送性材料25M以外の成分のうち、少なくとも一方に、熱解離可溶性基を有する材料を含んでいる場合に、不溶化処理として、熱解離可溶性基の熱解離反応を促す処理を用いたとする。この場合、比較的、低エネルギーで不溶化処理を行うことができる。これにより、意図せぬ副次的な反応の発生を抑制できるので、有機発光材料25Mに対して悪影響を与えることなく、筋状の輝度ムラを抑えることができる。
【0090】
また、本変形例において、有機材料層25Aiにおいて、電子輸送性材料25Mおよび電子輸送性材料25M以外の成分のうち、少なくとも一方に、脱離性保護基を有する材料を含んでいる場合に、不溶化処理として、脱離性保護基の脱離反応を促す処理を用いたとする。この場合、比較的、低エネルギーで不溶化処理を行うことができる。これにより、意図せぬ副次的な反応の発生を抑制できるので、有機発光材料25Mに対して悪影響を与えることなく、筋状の輝度ムラを抑えることができる。
【0091】
また、本変形例において、塗布工程において、互いに平行な2つのラインバンクの間隙(溝部16内)に、有機材料層25Aiおよび有機材料層25Biを重ね塗りする場合には、サブピクセル12ごとに、有機材料層25Aiおよび有機材料層25Biを重ね塗りする場合と比べて、インクジェット装置の位置決め精度を低くすることができる。従って、低コストで、筋状の輝度ムラが抑えられた有機電界発光パネル10を製造することができる。
【0092】
また、本変形例において、互いに平行な2つのラインバンクの間隙(溝部16内)が、50μm以下の大きさとなっている場合には、本変形例の重ね塗りを行うことで、筋状の輝度ムラを抑えることができる。
【0093】
また、本変形例において、互いに平行な2つのラインバンクの間隙(溝部16内)が、RGBのサブピクセルがストライプ配列となっているときに精細度が150ppi以上となるような大きさとなっている場合には、本変形例の重ね塗りを行うことで、筋状の輝度ムラを抑えることができる。
【0094】
[変形例B]
上記実施の形態の有機電界発光パネル10において、正孔輸送層23が、例えば、積層された複数の正孔輸送層によって構成されていてもよい。
【0095】
正孔輸送層23は、例えば、
図19に示したように、主成分が互いに共通の正孔輸送層23Aおよび正孔輸送層23Bを陽極21または正孔注入層22側からこの順に積層したものである。正孔輸送層23は、例えば、互いに積層された、主成分が互いに共通の正孔輸送層23Aおよび正孔輸送層23Bを有している。正孔輸送層23Aおよび正孔輸送層23Bは、ともに、塗布膜である。正孔輸送層23Aおよび正孔輸送層23Bは、ともに、正孔輸送性材料23Mを溶質の主成分とする溶液の塗布および乾燥により形成されている。正孔輸送層23Aおよび正孔輸送層23Bは、ともに、正孔輸送性材料23Mを主成分として含んで構成されている。正孔輸送層23Aおよび正孔輸送層23Bは、ともに、例えば、互いに共通のインクを塗布することにより形成されている。
【0096】
正孔輸送層23Aおよび正孔輸送層23Bのうち、少なくとも一方の層(具体的には、正孔輸送層23A)は、例えば、正孔輸送性材料23Mおよび正孔輸送性材料23M以外の成分のうち、少なくとも一方に、不溶化する機能(不溶化基を有する材料)を有している。従って、正孔輸送層23Aおよび正孔輸送層23Bのうち、不溶化する機能を有している層は、不溶化処理のなされた有機発光層である。
【0097】
次に、有機電界発光パネル10の製造方法について説明する。
図20は、有機電界発光パネル10の製造手順の一例を表したものである。以下では、陽極21を形成した後の工程から説明を始める。
【0098】
ま
ず、例えば、インクジェット装置を用いて、インクの液滴を吐出したのち、吐出後のインクを乾燥させることにより、正孔注入層22を形成する。次に、例えば、インクジェット装置を用いて、インクの液滴を吐出することにより、主成分が互いに共通の液状の有機材料層23Aiおよび液状の有機材料層23Biを重ね塗りする。有機材料層23Aiおよび有機材料層23Biは、ともに、正孔輸送性材料23Mを溶質の主成分とする液状の有機材料層である。有機材料層23Aiおよび有機材料層23Biは、ともに、正孔輸送性材料23Mを主成分として含んで構成されている。有機材料層23Aiおよび有機材料層23Biは、ともに、互いに共通のインクによって構成されている。有機材料層23Aiおよび有機材料層23Biのうち、少なくとも有機材料層23Aiにおいて、正孔輸送性材料23Mおよび正孔輸送性材料23M以外の成分のうち、少なくとも一方に、不溶化基を有する材料を含んでいる。
【0099】
具体的には、まず、正孔輸送層23Aの原料である液状の有機材料層23Aiを、溝部16内に塗布する(ステップS301)。このとき、例えば、インクジェット装置からは、液滴LQの直径R1の2倍以上の吐出間隔D2で、液滴LQを溝部16内に滴下する。つまり、液滴の吐出間隙D2は、液滴LQの直径R1の2倍以上となっている。間隔D2は、例えば、溝部16内に滴下された全ての液滴LQにおいて等間隔となっている。なお、間隔D2が、例えば、溝部16内において、部分的に広くなったり、狭くなったりしていてもよい。
【0100】
次に、有機材料層23Aiに対して不溶化処理を行うことにより有機材料層23Aiに含まれる分子の構造に変化を与える(ステップS302)。これにより、有機材料層23Aiに含まれる溶媒が揮発するとともに、有機材料層23Aiに含まれる分子の構造の変化により、有機材料層23Aiが不溶化する。その結果、正孔輸送層23Aが形成される。なお、ステップS302の不溶化処理において、有機材料層23Aiに含まれる溶媒を揮発させると同時に、有機材料層23Aiに含まれる分子の構造に変化を与えてもよい。また、ステップS302の不溶化処理において、有機材料層23Aiに含まれる溶媒を揮発させた後に、有機材料層23Aiに含まれる分子の構造に変化を与えてもよい。
【0101】
次に、正孔輸送層23Bの原料である液状の有機材料層23Biを、溝部16内に塗布する(ステップS303)。このとき、例えば、インクジェット装置からは、液滴LQの直径R1の2倍以上の吐出間隔D2で、液滴LQを溝部16内に滴下する。つまり、液滴の吐出間隙D2は、液滴LQの直径R1の2倍以上となっている。間隔D2は、例えば、溝部16内に滴下された全ての液滴LQにおいて等間隔となっている。なお、間隔D2が、例えば、溝部16内において、部分的に広くなったり、狭くなったりしていてもよい。
【0102】
次に、有機材料層23Biに対して不溶化処理を行う(ステップS304)。このとき、有機材料層23Biが不溶化基を有する材料を含んでいる場合には、不溶化処理により、有機材料層23Biに含まれる分子の構造に変化を与える。その結果、有機材料層23Biに含まれる溶媒が揮発するとともに、有機材料層23Biに含まれる分子の構造の変化により、有機材料層23Biが不溶化する。その結果、正孔輸送層23Bが形成される。なお、ステップS304の不溶化処理において、有機材料層23Biに含まれる溶媒を揮発させると同時に、有機材料層23Biに含まれる分子の構造に変化を与えてもよい。また、ステップS304の不溶化処理において、有機材料層23Biに含まれる溶媒を揮発させた後に、有機材料層23Biに含まれる分子の構造に変化を与えてもよい。有機材料層23Biが不溶化基を有する材料を含んでいない場合には、有機材料層23Biに対して、不溶化処理の代わりに揮発処理を行う。その結果、正孔輸送層23Bが形成される。
【0103】
次に、例えば、インクジェット装置を用いて、インクの液滴を吐出したのち、吐出後のインクを乾燥させることにより、有機発光層24、電子輸送層25および電子注入層26を形成する。続いて、電子注入層26上に、陰極27および封止層28をこの順に形成する。このようにして、サブピクセル12ごとに有機電界発光素子12−2を有する有機電界発光パネル10が製造される。
【0104】
次に、本変形例に係る有機電界発光パネル10の製造方法の効果について説明する。
【0105】
本変形例では、塗布した有機材料層23Aiに対して、有機材料層23Aiに含まれる分子の構造に変化を与える不溶化処理が行われた後に、有機材料層23Biが塗布される。これにより、有機材料層23Aiが、有機材料層23Biによって溶解し難くなる。その結果、筋状の輝度ムラを抑えることができる。
【0106】
また、本変形例において、有機材料層23Aiおよび有機材料層23Biが、互いに共通のインクによって構成されている場合には、有機材料層23Biを塗布する際に、インクジェット装置のインクタンクを取り換える手間を省略することができる。その結果、有機電界発光パネル10の製造コストの上昇を低く抑えることができる。
【0107】
また、本変形例において、有機材料層23Aiにおいて、正孔輸送性材料23Mおよび正孔輸送性材料23M以外の成分のうち、少なくとも一方に、架橋性基を有する材料を含んでいる場合に、不溶化処理として、架橋性基の重合反応を促す処理を用いたとする。この場合、熱および活性エネルギー線のうち少なくとも一方の照射によって起こる反応(不溶化反応)の前後で、溶媒に対する溶解性に大きな差を生じさせることができる。そのため、有機材料層23Aiを、有機材料層23Biによって極めて溶解し難くすることができる。従って、筋状の輝度ムラを確実に抑えることができる。
【0108】
また、本変形例において、有機材料層23Aiにおいて、正孔輸送性材料23Mおよび正孔輸送性材料23M以外の成分のうち、少なくとも一方に、熱解離可溶性基を有する材料を含んでいる場合に、不溶化処理として、熱解離可溶性基の熱解離反応を促す処理を用いたとする。この場合、比較的、低エネルギーで不溶化処理を行うことができる。これにより、意図せぬ副次的な反応の発生を抑制できるので、有機発光材料23Mに対して悪影響を与えることなく、筋状の輝度ムラを抑えることができる。
【0109】
また、本変形例において、有機材料層23Aiにおいて、正孔輸送性材料23Mおよび正孔輸送性材料23M以外の成分のうち、少なくとも一方に、脱離性保護基を有する材料を含んでいる場合に、不溶化処理として、脱離性保護基の脱離反応を促す処理を用いたとする。この場合、比較的、低エネルギーで不溶化処理を行うことができる。これにより、意図せぬ副次的な反応の発生を抑制できるので、有機発光材料23Mに対して悪影響を与えることなく、筋状の輝度ムラを抑えることができる。
【0110】
また、本変形例において、塗布工程において、互いに平行な2つのラインバンクの間隙(溝部16内)に、有機材料層23Aiおよび有機材料層23Biを重ね塗りする場合には、サブピクセル12ごとに、有機材料層23Aiおよび有機材料層23Biを重ね塗りする場合と比べて、インクジェット装置の位置決め精度を低くすることができる。従って、低コストで、筋状の輝度ムラが抑えられた有機電界発光パネル10を製造することができる。
【0111】
また、本変形例において、互いに平行な2つのラインバンクの間隙(溝部16内)が、50μm以下の大きさとなっている場合には、本変形例の重ね塗りを行うことで、筋状の輝度ムラを抑えることができる。
【0112】
また、本変形例において、互いに平行な2つのラインバンクの間隙(溝部16内)が、RGBのサブピクセルがストライプ配列となっているときに精細度が150ppi以上となるような大きさとなっている場合には、本変形例の重ね塗りを行うことで、筋状の輝度ムラを抑えることができる。一般に、精細度が高くなると、間隙に保持できるインキ量も少なくなってしまう。従って、一回の印刷で必要な膜厚を得ようとする場合、インキの高濃度化が必要とされる。ところが、上述したように、印刷可能な物性(粘度など)の観点から、インク濃度を過度に高くすることは難しい。そこで、有機材料を複数回重ね塗りすることにより、精細度の高いパネルにおいても、有機材料層を厚く形成しつつ、筋状の輝度ムラを抑えることができる。
【0113】
<その他>
ところで、有機電界発光素子12−2の製造過程において、正孔輸送層23、有機発光層24および電子輸送層25のうち、少なくとも1つの層を厚く形成したとする。このとき、厚く形成した層を乾燥させるためには、薄く形成した層と比べて、乾燥時間を長めにするか、または、乾燥温度を高めにすることが必要となる。しかし、厚く形成した層を完全に乾燥させることは容易ではなく、厚く形成した層の下部の乾燥が不十分となってしまうことがある。この場合、厚く形成した層内に残留する溶媒によって、有機電界発光素子12−2の劣化が早まったりするなどの不具合が生じやすくなる。
【0114】
しかし、上記実施の形態では、有機発光層24が、複数の有機発光層(例えば、有機発光層24A、有機発光層24B)で構成され、有機発光層24が、複数の有機発光層(例えば、有機発光層24A、有機発光層24B)の重ね塗りで形成されている。これにより、有機発光層24を厚く形成した場合であっても、重ね塗りした複数の有機発光層を、一層ずつ乾燥させることができる。その結果、有機発光層24を一度の乾燥工程によって乾燥させた場合と比べて、有機発光層24内に残留する溶媒を極めて容易に少なくすることができる。従って、有機電界発光素子12−2の劣化が早まったりするなどの不具合を低減することができる。
【0115】
また、上記変形例Aでは、電子輸送層25が、複数の電子輸送層(例えば、電子輸送層25A、電子輸送層25B)で構成され、電子輸送層25が、複数の電子輸送層(例えば、電子輸送層25A、電子輸送層25B)の重ね塗りで形成されている。これにより、電子輸送層25を厚く形成した場合であっても、重ね塗りした複数の電子輸送層を、一層ずつ乾燥させることができる。その結果、電子輸送層25を一度の乾燥工程によって乾燥させた場合と比べて、電子輸送層25内に残留する溶媒を極めて容易に少なくすることができる。従って、有機電界発光素子12−2の劣化が早まったりするなどの不具合を低減することができる。
【0116】
また、上記変形例Bでは、正孔輸送層23が、複数の正孔輸送層(例えば、正孔輸送層23A、正孔輸送層23B)で構成され、正孔輸送層23が、複数の正孔輸送層(例えば、正孔輸送層23A、正孔輸送層23B)の重ね塗りで形成されている。これにより、正孔輸送層23を厚く形成した場合であっても、重ね塗りした複数の正孔輸送層を、一層ずつ乾燥させることができる。その結果、正孔輸送層23を一度の乾燥工程によって乾燥させた場合と比べて、正孔輸送層23内に残留する溶媒を極めて容易に少なくすることができる。従って、有機電界発光素子12−2の劣化が早まったりするなどの不具合を低減することができる。
【0117】
以上、実施の形態および変形例を挙げて本開示を説明したが、本開示は実施の形態等に限定されるものではなく、種々変形が可能である。例えば、上記実施の形態、変形例Aおよび変形例Bでは、基板14上に複数のラインバンク13および複数のバンク15が設けられていたが、それらの代わりに、サブピクセル12ごとに1つずつピクセルバンクが設けられていてもよい。
【0118】
なお、本明細書中に記載された効果は、あくまで例示である。本開示の効果は、本明細書中に記載された効果に限定されるものではない。本開示が、本明細書中に記載された効果以外の効果を持っていてもよい。
【0119】
また、例えば、本開示は以下のような構成を取ることができる。
(1)
サブピクセルごとに有機電界発光素子を備えた有機電界発光パネルの製造方法であって、
主成分が互いに共通の第1有機材料層および第2有機材料層を重ね塗りすることにより前記有機電界発光素子を製造する塗布工程を含み、
前記塗布工程において、前記第1有機材料層を塗布した後、前記第1有機材料層に対して不溶化処理を行うことにより前記第1有機材料層に含まれる分子の構造に変化を与え、前記不溶化処理のなされた後の前記第1有機材料層上に、前記第2有機材料層を塗布する
有機電界発光パネルの製造方法。
(2)
前記有機電界発光素子は、正孔輸送層、有機発光層および電子輸送層を含んで構成され、
前記塗布工程を実施することにより、前記正孔輸送層、前記有機発光層または前記電子輸送層を形成する
(1)に記載の有機電界発光パネルの製造方法。
(3)
前記第1有機材料層および前記第2有機材料層は、互いに共通のインクによって構成されている
(1)または(2)に記載の有機電界発光パネルの製造方法。
(4)
前記第1有機材料層において、前記主成分および前記主成分以外の成分のうち、少なくとも一方に、熱解離可溶性基、架橋性基または脱離性保護基を有する材料を含み、
前記不溶化処理として、前記熱解離可溶性基の熱解離反応、前記架橋性基の重合反応、または前記脱離性保護基の脱離反応を促す処理を用いる
(1)ないし(3)のいずれか一項に記載の有機電界発光パネルの製造方法。
(5)
前記塗布工程において、互いに平行な2つのラインバンクの間隙に、前記第1有機材料層および前記第2有機材料層を重ね塗りする
(1)ないし(4)のいずれか一項に記載の有機電界発光パネルの製造方法。
(6)
前記間隙は、50μm以下の大きさとなっている
(5)に記載の有機電界発光パネルの製造方法。
(7)
前記間隙は、RGBの前記サブピクセルがストライプ配列となっているときに精細度が150ppi以上となるような大きさとなっている
(5)に記載の有機電界発光パネルの製造方法。
(8)
インクジェット装置を用いたインクの液滴の吐出により、前記第1有機材料層および前記第2有機材料層を重ね塗りし、
前記液滴の吐出間隙は、前記液滴の直径の2倍以上となっている
(5)ないし(7)のいずれか一項に記載の有機電界発光パネルの製造方法。
(9)
サブピクセルごとに有機電界発光素子を備え、
前記有機電界発光素子は、正孔輸送層、有機発光層および電子輸送層を含んで構成され、
前記正孔輸送層、前記有機発光層または前記電子輸送層は、互いに積層された、主成分が互いに共通の第1有機材料層および第2有機材料層を有する
有機電界発光パネル。
(10)
前記第1有機材料層および前記第2有機材料層のうち、少なくとも一方の層は、熱解離可溶性基、架橋性基または脱離性保護基を有する材料を含む
(9)に記載の有機電界発光パネル。