特許第6768470号(P6768470)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6768470
(24)【登録日】2020年9月25日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】ハンガーの取付構造
(51)【国際特許分類】
   B60N 3/02 20060101AFI20201005BHJP
【FI】
   B60N3/02 A
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-231495(P2016-231495)
(22)【出願日】2016年11月29日
(65)【公開番号】特開2018-86953(P2018-86953A)
(43)【公開日】2018年6月7日
【審査請求日】2019年9月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】390026538
【氏名又は名称】ダイキョーニシカワ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】畠堀 芳行
【審査官】 松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0319421(US,A1)
【文献】 特開2008−162339(JP,A)
【文献】 特開2013−107475(JP,A)
【文献】 特開平09−123820(JP,A)
【文献】 特開平07−266957(JP,A)
【文献】 特開2005−132213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00−99/00
B60R 3/00−7/14
A47C 7/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体(P)に組み付けられる車両用内装品(3)に突設された支持軸(15)に樹脂製のハンガー(33)を回動可能に取り付けたハンガーの取付構造であって、
上記支持軸(15)には、ストッパ部(15d)が張出形成され、
上記ハンガー(33)は、上記支持軸(15)が挿入される挿入孔(33d)が形成された軸受部(33a)と、該軸受部(33a)に突設されたフック部(33j)とを有し、上記軸受部(33a)の挿入孔(33d)の内周面には、突部(33i)が周方向一部に突設され、
上記ハンガー(33)の突部(33i)が上記支持軸(15)のストッパ部(15d)に支持軸(15)基端側から対向することで上記ハンガー(33)の支持軸(15)からの抜けが規制されているとともに、上記ハンガー(33)を支持軸(15)周りの所定位置に回動させた状態で、上記ハンガー(33)の突部(33i)が上記支持軸(15)の上記ストッパ部(15d)よりも基端側に当接することを特徴とするハンガーの取付構造。
【請求項2】
請求項1に記載のハンガーの取付構造において、
上記支持軸(15)のストッパ部(15d)には、上記ハンガー(33)の突部(33i)の通過を許容するための欠損部(15f)が設けられていることを特徴とするハンガーの取付構造。
【請求項3】
請求項2に記載のハンガーの取付構造において、
上記車両用内装品(3)を車体(P)に組み付けた状態で、上記支持軸(15)の欠損部(15f)と上記ハンガー(33)の突部(33i)とを対応させる位置への上記ハンガー(33)の回動が、ハンガー(33)と車体(P)との干渉により規制されるように上記欠損部(15f)及び上記突部(33i)が配置されていることを特徴とするハンガーの取付構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のハンガーの取付構造において、
上記ハンガー(33)の軸受部(33a)は、上記挿入孔(33d)を内側に形成する周壁部(33c)と、上記挿入孔(33d)の一端部を塞ぐ底壁部(33b)とを有し、
上記周壁部(33c)には、上記挿入孔(33d)の底部に連通する連通孔(33g)が貫通形成され、
上記突部(33i)は、上記連通孔(33g)の反底壁部(33b)側端縁に突設されていることを特徴とするハンガーの取付構造。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のハンガーの取付構造において、
上記支持軸(15)の上記ストッパ部(15d)より基端側の外周面には、嵌合凹部(15c)が周方向一部に形成され、
上記ハンガー(33)を支持軸(15)周りの所定位置に回動させた状態で、上記ハンガー(33)の突部(33i)が上記支持軸(15)の嵌合凹部(15c)に嵌合することを特徴とするハンガーの取付構造。
【請求項6】
請求項5に記載のハンガーの取付構造において、
上記ハンガー(33)の軸受部(33a)は、上記挿入孔(33d)を内側に形成する周壁部(33c)を備え、
上記周壁部(33c)には、上記挿入孔(33d)に連通する2条の連通スリット(33g)が、両連通スリット(33g)間が可撓部(33h)を構成するように互いに間隔を空けて貫通形成され、
上記突部(33i)は、上記可撓部(33h)に突設されていることを特徴とするハンガーの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体に組み付けられる車両用内装品に突設された支持軸に樹脂製のハンガーを回動可能に取り付けたハンガーの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車体に組み付けられるアシストグリップに突設された支持軸に樹脂製のハンガーを回動可能に取り付けた取付構造が開示されている。この取付構造では、ハンガーが、上記支持軸が挿入される挿入孔が形成された軸受部と、該軸受部に突設されたフック部とを有している。そして、上記ハンガーの軸受部の挿入孔に上記支持軸と1対のアーム部を有するクリップとを、クリップの両アーム部で支持軸を弾性的に挟み込んだ状態で挿入することで、ハンガーの回転操作時に節度感が得られるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4820746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、クリップを支持軸及びハンガーとは別に用意する必要があるので、部品点数が多くなって製造コストの増大を招く。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、製造コストの増大を招くことなく、ハンガーの回転操作時に節度感が得られるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、ハンガーを支持軸周りの所定位置に回動させた状態で、ハンガーの一部が支持軸に外周側から当接するようにしたことを特徴とする。
【0007】
具体的には、第1の発明は、車体に組み付けられる車両用内装品に突設された支持軸に樹脂製のハンガーを回動可能に取り付けたハンガーの取付構造を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0008】
すなわち、第1の発明は、上記支持軸には、ストッパ部が張出形成され、上記ハンガーは、上記支持軸が挿入される挿入孔が形成された軸受部と、該軸受部に突設されたフック部とを有し、上記軸受部の挿入孔の内周面には、突部が周方向一部に突設され、上記ハンガーの突部が上記支持軸のストッパ部に支持軸基端側から対向することで上記ハンガーの支持軸からの抜けが規制されているとともに、上記ハンガーを支持軸周りの所定位置に回動させた状態で、上記ハンガーの突部が上記支持軸の上記ストッパ部よりも基端側に当接することを特徴とする。
【0009】
第2の発明は、第1の発明に係るハンガーの取付構造において、上記支持軸のストッパ部には、上記ハンガーの突部の通過を許容するための欠損部が設けられていることを特徴とする。
【0010】
第3の発明は、第2の発明に係るハンガーの取付構造において、上記車両用内装品を車体に組み付けた状態で、上記支持軸の欠損部と上記ハンガーの突部とを対応させる位置への上記ハンガーの回動が、ハンガーと車体との干渉により規制されるように上記欠損部及び上記突部が配置されていることを特徴とする。
【0011】
第4の発明は、第1〜3のいずれか1つの発明に係るハンガーの取付構造において、上記ハンガーの軸受部は、上記挿入孔を内側に形成する周壁部と、上記挿入孔の一端部を塞ぐ底壁部とを有し、上記周壁部には、上記挿入孔の底部に連通する連通孔が貫通形成され、上記突部は、上記連通孔の反底壁部側端縁に突設されていることを特徴とする。
【0012】
第5の発明は、第1〜4のいずれか1つの発明に係るハンガーの取付構造において、上記支持軸の上記ストッパ部より基端側の外周面には、嵌合凹部が周方向一部に形成され、上記ハンガーを支持軸周りの所定位置に回動させた状態で、上記ハンガーの突部が上記支持軸の嵌合凹部に嵌合することを特徴とする。
【0013】
第6の発明は、第5の発明に係るハンガーの取付構造において、上記ハンガーの軸受部は、上記挿入孔を内側に形成する周壁部を備え、上記周壁部には、上記挿入孔に連通する2条の連通スリットが、両連通スリット間が可撓部を構成するように互いに間隔を空けて貫通形成され、上記突部は、上記可撓部に突設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
第1の発明によれば、ハンガーを所定位置から回転させる回転操作時に、ハンガーの突部が支持軸に摺接するので、上記突部と支持軸との摩擦により節度感が得られる。
【0015】
また、ハンガーの支持軸への取付けに、特許文献1のようなクリップが不要となるので、その分だけ部品点数を減らすことができ、製造コストを削減できる。
【0016】
第2の発明によれば、ハンガーの突部を支持軸の欠損部に対応させた状態でハンガーを支持軸に対して軸方向に相対的にスライドさせるだけで、ハンガーの取付け及び取外しを行えるので、欠損部を設けず、ハンガーの取付け時及び取外し時にハンガーの突部突設箇所を外周側に撓ませてストッパ部を乗り越えさせるようにした場合に比べ、ハンガーの取付け作業及び取外し作業が容易になる。
【0017】
また、ハンガーの取付け時及び取外し時にハンガーの突部突設箇所を撓ませる必要がないので、ハンガーの突部突設箇所を撓みにくく構成した場合でも、ハンガーの突部の突出高さを高く設定することにより、ハンガーを支持軸に取り付けた状態でのハンガーの支持軸からの抜けを確実に規制できる。
【0018】
第3の発明によれば、車両用内装品を車体に組み付けた状態では、ハンガーの突部と支持軸の欠損部とを対応させる位置までハンガーを回動させることができないので、車両用内装品を車体に組み付けた状態でのハンガーの支持軸からの抜けを防止できる。
【0019】
第4の発明によれば、支持軸がハンガーの底壁部で先端側から覆われて見えにくいので、見栄えを向上できる。
【0020】
また、ハンガーを成形する際、連通孔を利用することによって、アンダーカット部を設けることなく突部を形成できるので、型構造及び成形工程を簡素にできる。
【0021】
第5の発明によれば、ハンガーを支持軸周りの所定位置に回動させ、ハンガーの突部を支持軸の嵌合凹部に嵌合させることにより、ハンガーが車両の振動等により支持軸に対して相対的に回動するのを規制できる。
【0022】
また、ハンガーが所定位置で支持軸に対して相対的に回動し難くなるので、ハンガーを所定位置から支持軸に対して相対的に回動させる回転操作時には節度感が得られる。
【0023】
第6の発明によれば、2条の連通スリットに挟まれた可撓部に突部が形成されているので、ハンガーを所定位置から支持軸に対して相対的に回動させる回転操作時に、比較的小さい力で突部突設箇所を外周側に撓ませることができ、回転操作が容易になる。
【0024】
また、突部突設箇所を外周側に大きく撓ませることができるので、ハンガーの突部の突出高さを高く設定することにより、ハンガーが車両の振動等により所定位置から回動するのを確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】アシストグリップが格納位置にあり、かつハンガーが固定状態であるときの実施形態1に係るハンガーの取付構造が適用されたアシストグリップ装置の斜視図である。
図2】アシストグリップが使用位置にあり、かつハンガーが固定状態であるときの図1相当図である。
図3】アシストグリップが格納位置にあり、かつハンガーを収納位置から回動させたときの図1相当図である。
図4図1のIV−IV線における断面図である。
図5】ハンガーの取付前の図1のV−V線に対応する断面図である。
図6】アシストグリップの図5のVI−VI線に対応する断面図である。
図7】アシストグリップの脚部周り及びベース部材の組付前の状態を示す斜視図である。
図8】アシストグリップの脚部周り及びベース部材の組付後の状態を示す図7相当図である。
図9】アシストグリップ、ベース部材、スプリングケース、捩りコイルばね及びダンパーケースの斜視図である。
図10】アシストグリップの支持軸周り及びハンガーの取付前の状態を示す斜視図である。
図11】アシストグリップの支持軸周り及びハンガーの取付後の状態を示す図10相当図である。
図12】(a)は、アシストグリップの支持軸周りの平面図であり、(b)は、図12(a)のXII−XII線に相当する支持軸及びハンガーの断面図である。
図13】(a)は、ハンガーの平面図であり、(b)は、図13(a)のXIII−XIII線に相当する支持軸及びハンガーの断面図である。
図14】実施形態2におけるハンガーの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0027】
(実施形態1)
図1図4は、アシストグリップ装置1を示す。このアシストグリップ装置1は、車体のルーフピラーP側部に組み付けられている。
【0028】
アシストグリップ装置1は、乗員が把持するための樹脂製の車両用内装品としてのアシストグリップ3を備えている。アシストグリップ3は、ポリプロピレン等の樹脂材料を用いてガスインジェクション成形等により成形される。該アシストグリップ3は、長尺状に延びる把持部5aと、該把持部5aの両端から同じ方向に湾曲した一対の脚部5bとで略コ字状に形成されたグリップ本体部5を備えている。グリップ本体部5の内部には、図示しない空洞部が形成されている。
【0029】
各脚部5bの一方の面には、図5図11に示すように、他方の面側に凹む平面視略矩形状の収容凹部7が、脚部5b先端側に開放するように形成されている。一方(図9中左側)の収容凹部7の脚部5b先端側の周縁部には、切欠凹部9が形成されている。上記収容凹部7の内側面には、1対のガイド溝11が収容凹部7の反底面側に開放し、かつ上記把持部5aの長手方向に互いに対向するように形成されている。両ガイド溝11の反開放側(収容凹部7の底面側)端部には、有底の軸受孔13が同軸上に形成されている。
【0030】
また、一方(図9中左側)の脚部5bの他方の脚部5bと対向する面には、図12(a)、図12(b)及び図13(b)にも示すように、上記軸受孔13と同軸上に支持軸15が突設されている。上記支持軸15の先端よりも若干基端寄りの箇所には、環状の溝部15aが全周に亘って形成されている。該溝部15aの底面には、軸方向に延びる1対の突条部15bが周方向に若干間隔を空けて突設され、両突条部15b間には、嵌合凹部としての凹条部15cが支持軸15の周方向一部に形成されている。また、溝部15aより先端側の支持軸15の外周部が、上記溝部15a底面よりも外周側に張出形成された先端側ストッパ部15dを構成し、溝部15aより基端側の支持軸15の外周部が、上記溝部15a底面よりも外周側に張出形成された基端側ストッパ部15eを構成している。上記先端側ストッパ部15dの外周縁には、後述するハンガー33の凸条部33iの通過を許容するための円弧状の欠損部としての切欠部15fが形成されている。当該切欠部15fの支持軸15周方向の位置は、上記凹条部15cを図4中反時計回り(図13(b)中時計回り)に約210度回動させた位置に設定されている。上記基端側ストッパ部15eの基端部には、先端側よりも外周側に張り出す張出部15gが形成されている。また、支持軸15の端面には、ヒケ防止用の肉抜孔15hが軸方向全長に亘って延びるように形成されている。
【0031】
上記アシストグリップ3の両収容凹部7には、該アシストグリップ3を車体のルーフピラーPに組み付けるためのベース部材17が収容されている。ベース部材17は、特に図7図11に示すように、板厚方向に貫通する略矩形状の貫通孔17aが形成された略矩形板状の取付面部17bを備えている。一方(図9中左側)のベース部材17の取付面部17bの一方の面の貫通孔17aの周縁部には、1対の係合突部17cが貫通孔17aを挟んで互いに対向するように一体に突設されている。また、取付面部17bの係合突部17cの対向方向に延びる一端縁には、板状の突出面部17dが、上記係合突部17cの反突出方向に向けて一体に突設されている。該突出面部17dの反取付面部17b側の面における上記係合突部17cの対向方向に対向する端縁には、板状の対向面部17eが互いに対向するように一体に突設されている。各対向面部17eには、軸孔17fが貫通形成され、各軸孔17fの周縁部には、外側に突出するボス部17gが形成されている。また、突出面部17dの先端には、上記対向面部17eの外周縁に沿って断面円弧状に延出する延出面部17hが延設され、当該延出面部17hはその両側で両対向面部17eに連結されている。なお、他方(図9中右側)のベース部材17には、1対の係合突部17cのうち、把持部5aの長手方向内側の係合突部17cが形成されていない点で、上記一方のベース部材17と異なっているが、その他の構成は、上記一方のベース部材17と同じである。上記ベース部材17を収容凹部7に収容した状態で、上記ベース部材17の係合突部17cが上記収容凹部7の反底面側に突出している。また、特に図5に示すように、上記ベース部材17のボス部17gがアシストグリップ3のガイド溝11の反開放側端部に嵌合し、かつ上記ベース部材17の軸孔17fがアシストグリップ3の軸受孔13に対応している。
【0032】
また、上記ベース部材17の貫通孔17aには、一対の係止片部19aとこれら係止片部19aを連結する連結部(図示せず)とを有し、両係止片部19aを互いに接近させるように弾性変形可能な金属製のクリップ19が挿入され、両係止片部19aがベース部材17の係合突部17cの突出方向に突出している。
【0033】
また、上記ベース部材17の貫通孔17aには、蓋部21aと、該蓋部21aの裏側に突出する突出部21bとを有するロック部材21が、その突出部21bを上記クリップ19の両係止片部19aで挟んだ状態で挿入されている。
【0034】
上記ベース部材17の両係合突部17c、クリップ19の両係止片部19a、及びロック部材21の突出部21bは、ルーフピラーPの取付孔(図示せず)に挿入され、クリップ19の両係止片部19aがルーフピラーPの取付孔(図示せず)周縁に係止されている。この状態で、ロック部材21の突出部21bによりクリップ19の両係止片部19aの接近が規制されるので、クリップ19の両係止片部19aのルーフピラーPの取付孔(図示せず)からの抜けが防止される。
【0035】
また、上記アシストグリップ3の軸受孔13、及びベース部材17の軸孔17fには、特に図5に示すように、軸部材23が挿入され、各軸部材23の内側の端部が、上記ベース部材17の対向面部17eの対向面から突出している。
【0036】
また、上記切欠凹部9が形成された側(図9中左側)の脚部5bの収容凹部7には、スプリングケース25がベース部材17の対向面部17eに挟まれた状態で収容されている。スプリングケース25は、略筒状の周壁部25aと、該周壁部25aの両端部を塞ぐ対向壁部25bとを有している。周壁部25aには、挿通孔25cが形成され、両対向壁部25bの外側の面には、一方に開放する係合溝25dが形成されている。そして、スプリングケース25の両係合溝25dが、軸部材23の内側の端部に係合することで、スプリングケース25がベース部材17に固定されている。
【0037】
上記スプリングケース25の内部には、アシストグリップ3を使用位置側から格納位置側に付勢する捩りコイルばね27が収容されている。捩りコイルばね27の一端部は、上記スプリングケース25の挿通孔25cを介して上記アシストグリップ3の切欠凹部9に係止されている一方、捩りコイルばね27の他端部は、スプリングケース25に取付固定されている。
【0038】
一方、上記切欠凹部9が形成されていない側(図9中右側)の脚部5bの収容凹部7には、捩りコイルばね27のばね力によりアシストグリップ3が使用位置から格納位置に復帰する際、アシストグリップ3の回動速度を減衰させるダンパー機構(図示せず)、及び該ダンパー機構を格納するダンパーケース31が収容されている。ダンパーケース31は、略筒状の周壁部31aと、該周壁部31aの両端部を塞ぐ対向壁部31bとを有している。両対向壁部31bの外側の面には、一方に開放する係合溝31cが形成されている。そして、ダンパーケース31の両係合溝31cが、軸部材23の内側の端部に係合することで、ダンパーケース31がベース部材17に固定されている。
【0039】
また、上記アシストグリップ3の支持軸15には、本発明の実施形態1に係る取付構造が適用されて、図13(a)にも示す樹脂製のハンガー33が回動可能に取り付けられている。ハンガー33は、上記支持軸15を軸支する軸受部33aを備えている。該軸受部33aは、底壁部33bと、該底壁部33bに突設された環状の周壁部33cとを有し、上記周壁部33cの内側には、挿入孔33dが形成されている。したがって、挿入孔33dの一端部は、上記底壁部33bに塞がれている。周壁部33cの外周面は、平面視略U字状の湾曲部分33eと、該湾曲部分33eの両端部を周方向に連結する略平坦な平坦部分33fとで構成されている。上記周壁部33cの外周面の湾曲部分33eの周方向略中央部には、周方向に延びる2条の連通スリット33gが、上記周壁部33cの突出方向に互いに平行に間隔を空けて貫通形成され、両連通スリット33g間の周壁部33cが可撓部33hを構成している。一方の連通スリット33gは、上記周壁部33cの基端部に形成されて上記挿入孔33dの底部に連通する挿通孔を構成している一方、他方の連通スリット33gは、上記一方の連通スリット33gよりも先端側に形成されて上記挿入孔33dの底部よりも浅い部分に連通している。上記可撓部33hの内周面における周方向(両連通スリット33gの長手方向)中央部には、周壁部33cの周方向一部で周壁部33cの突出方向に延びる突部としての凸条部33iが突設されている。つまり、該凸条部33iは、基端部側の連通スリット33gの反底壁部33b側端縁を含む領域に突設されている。上記周壁部33cの外周面の湾曲部分33eの周方向一端部には、コートやバッグ等が掛けられる平面視略J字状のフック部33jが一体に突設されている。
【0040】
そして、上記軸受部33aの挿入孔33dには、アシストグリップ3の支持軸15が挿入され、ハンガー33の凸条部33iが、支持軸15の先端側ストッパ部15dに支持軸15基端側から対向することでハンガー33の支持軸15からの抜けが規制されているとともに、支持軸15の基端側ストッパ部15eに支持軸15先端側から対向することでハンガー33の支持軸15基端側への移動が規制されている。また、ハンガー33の凸条部33iが、支持軸15の溝部15a底面、すなわち支持軸15の先端側ストッパ部15dよりも基端側でかつ基端側ストッパ部15eよりも先端側の部分に当接している。さらに、上記支持軸15の切欠部15fとハンガー33の凸条部33iとを対応させる位置へのハンガー33の回動が、ハンガー33と車体のルーフピラーPとの干渉により規制されるようになっている。
【0041】
上述のように構成されたアシストグリップ装置1を車体のルーフピラーPに組み付けるには、まず、図4に一点鎖線で示すように、アシストグリップ3の支持軸15の切欠部15fと、上記ハンガー33の凸条部33iとを支持軸15の周方向に対応させた状態で、ハンガー33の挿入孔33dにアシストグリップ3の支持軸15を挿入する。これにより、ハンガー33の凸条部33iがアシストグリップ3の支持軸15の切欠部15fを通過し、支持軸15の溝部15a底面に当接する。このように、ハンガー33の凸条部33iを支持軸15の切欠部15fに対応させた状態で、ハンガー33の挿入孔33dにアシストグリップ3の支持軸15を挿入するだけで、ハンガー33のアシストグリップ3への取付けを行えるので、切欠部15fを設けず、ハンガー33の取付け時にハンガー33の凸条部33i突設箇所を外周側に撓ませて先端側ストッパ部15dを乗り越えさせるようにした場合に比べ、ハンガー33の取付け作業が容易になる。その後、ハンガー33を支持軸15周りの所定位置に回動させることで、図12(b)に示すように、ハンガー33の凸条部33iを支持軸15の凹条部15cに嵌合させる。これにより、凸条部33iが凹条部15cの側面(突条部15b)に挟まれてその回動を規制される。この状態が、ハンガー33の支持軸15に対する相対的な回動が規制された固定状態となる。なお、このとき、ハンガー33の凸条部33iは、凹条部15cの底面及び側面に当接している。
【0042】
また、図7に示すように、両ベース部材17の両軸孔17fに軸部材23を内側からボス部17g端面に達しないように挿入した状態で、両ベース部材17を図7中矢印Xで示す方向にスライドさせることで、両ベース部材17の両ボス部17gをアシストグリップ3のガイド溝11にその開放側から反開放側端部まで挿入する。これにより、ベース部材17の軸孔17fがアシストグリップ3の軸受孔13に対応する。そして、図8に示すように、各軸部材23を外側にスライドさせてベース部材17の軸孔17fを介してアシストグリップ3の軸受孔13に挿入する。これにより、ベース部材17がアシストグリップ3に固定される。
【0043】
その後、切欠凹部9が形成された脚部5b(図9中左側の脚部5b)の収容凹部7側では、両軸部材23の内側端部を、捩りコイルばね27を収容したスプリングケース25の係合溝25dにその開放側から反開放側端部まで挿入することで、スプリングケース25をベース部材17に固定する。そして、捩りコイルばね27の一端部を、スプリングケース25の挿通孔25cを介してアシストグリップ3の切欠凹部9に係止する。一方、切欠凹部9が形成されていない脚部5b(図9中右側の脚部5b)の収容凹部7側では、両軸部材23の内側端部を、ダンパー機構(図示せず)を格納したダンパーケース31の係合溝31cにその開放側から反開放側端部まで挿入することで、ダンパーケース31をベース部材17に固定する。
【0044】
その後、ベース部材17の貫通孔17aに上記クリップ19をその両係止片部19aが係合突部17cの突出方向に突出するように挿入した状態で、クリップ19の両係止片部19aをルーフピラーPの取付孔(図示せず)周縁部に押し付けることで両係止片部19aを互いに接近するように撓ませながらベース部材17の係合突部17cとともに該取付孔に挿入する。そして、クリップ19の両係止片部19aの間に、ロック部材21の突出部21bを挿入し、アシストグリップ装置1のルーフピラーPへの組付けを完了する。
【0045】
上述のようにアシストグリップ装置1をルーフピラーPに組み付け、アシストグリップ3に乗員の力を加えていない状態では、アシストグリップ3が、図4に実線で示す格納位置に位置する一方、ハンガー33が、固定状態で図4に実線で示す収納位置に位置する。このとき、ハンガー33の凸条部33iがアシストグリップ3の支持軸15の凹条部15cに嵌合し、ハンガー33の支持軸15に対する相対的な回動が規制されているので、ハンガー33が車両の振動等により収納位置から回動するのが防止される。
【0046】
この状態からアシストグリップ3を使用するには、アシストグリップ3の把持部3aを握って、アシストグリップ3を捩りコイルばね27のばね力に抗して車室内側(図4中反時計回り)に回動させて車室内に突出させる。このとき、ハンガー33の凸条部33iがアシストグリップ3の支持軸15の凹条部15cに嵌合することで、ハンガー33のアシストグリップ3に対する相対的な回動が規制されているので、ハンガー33もアシストグリップ3と共に回動する。そして、アシストグリップ3が格納位置から約100度回転した位置(図4に二点鎖線で示す位置)に達すると、各脚部5bの先端部がベース部材17に当接し、それ以上アシストグリップ3を回動させることができなくなる。この位置が、アシストグリップ3の使用位置となる。
【0047】
そして、この状態でアシストグリップ3から手を離すと、捩りコイルばね27のばね力によりアシストグリップ3が格納位置に復帰するとともに、ハンガー33もアシストグリップ3と共に回動して収納位置に復帰する。このとき、ダンパー機構(図示せず)がアシストグリップ3の回動速度を減衰させる。
【0048】
また、アシストグリップ3が格納位置に位置し、かつハンガー33が固定状態で収納位置にある状態からハンガー33を使用するには、ハンガー33のフック部33jに手を掛けて車室内側(図4中反時計回り方向)に押す。これにより、ハンガー33の凸条部33iがアシストグリップ3の一方の突条部15bに圧接してハンガー33の凸条部33i突接箇所が外周側に撓み、アシストグリップ3の一方の突条部15bを乗り越え、ハンガー33の支持軸15に対する相対的な回動が規制されていない非固定状態となり、車室内側に回動する。このとき、ハンガー33の凸条部33iと支持軸15の凹条部15cとの嵌合によりハンガー33が支持軸15に対して相対的に回動し難くなっている状態からハンガー33を回動させるので、節度感が得られる。また、2条の連通スリット33gに挟まれた可撓部33hに凸条部33iが形成されているので、比較的小さい力で凸条部33i突設箇所を外周側に撓ませることができ、回転操作が容易である。ハンガー33は、収納位置から図4中二点鎖線で示す位置まで180度回動させることができる。ハンガー33の凸条部33iは、図4中Y1で示す範囲だけ回動させることができる。
【0049】
上述のようにハンガー33を収納位置から回動させた状態で、ハンガー33のフック部33jに手を掛けて図4中時計回り方向に押すと、ハンガー33の凸条部33iがアシストグリップ3の一方の突条部15bに圧接してハンガー33の凸条部33i突接箇所が外周側に撓み、アシストグリップ3の一方の突条部15bを乗り越えて凹条部15cに嵌合し、ハンガー33が固定状態に戻るとともに収納位置に復帰する。このときも、2条の連通スリット33gに挟まれた可撓部33hに凸条部33iが形成されているので、比較的小さい力で凸条部33i突設箇所を外周側に撓ませることができ、回転操作が容易である。また、ハンガー33を回動させる過程で、ハンガー33の凸条部33iが、支持軸15の溝部15a底面、すなわち支持軸15の先端側ストッパ部15dよりも基端側でかつ基端側ストッパ部15eよりも先端側の部分に外周側から常時摺接するので、上記凸条部33iと支持軸15との摩擦により節度感が得られる。
【0050】
また、上述のようにアシストグリップ3をルーフピラーPに組み付けた状態で上記支持軸15の切欠部15fとハンガー33の凸条部33iとを対応させるには、ハンガー33を固定状態からアシストグリップ3に対して図4中反時計回りに相対的に約210度回動させる必要がある。例えば、アシストグリップ3が格納位置にあるとき、ハンガー33を図4に一点鎖線で示す位置まで回動させる必要がある。しかし、このような回動は、アシストグリップ3が格納位置と使用位置との間のどの位置にあっても、ハンガー33と車体のルーフピラーPとの干渉により規制される。このように、アシストグリップ3を車体のルーフピラーPに組み付けた状態では、ハンガー33をその凸条部33iを支持軸15の切欠部15fに対応させる位置まで回動させることができないので、アシストグリップ3をルーフピラーPに組付けた状態でのハンガー33の支持軸15からの抜けが防止される。なお、ハンガー33の凸条部33iの回動範囲は、図4中Y1で示された範囲であり、アシストグリップ3の回動範囲は約100度(=図4中Y2で示された範囲)であるので、アシストグリップ3が格納位置にあるときに、図4中Y3で示す範囲に位置するように支持軸15の切欠部15fを設けることで、アシストグリップ3をルーフピラーPに組付けた状態でのハンガー33の支持軸15からの抜けを防止できる。
【0051】
また、上述のように組み付けられたアシストグリップ装置1をルーフピラーPから取り外すには、まず、ロック部材21の突出部21bをクリップ19の両係止片部19aから抜く。その後、さらにアシストグリップ3を車室内側に引っ張ることで、クリップ19の両係止片部19aを互いに接近するように撓ませながらルーフピラーPの取付孔(図示せず)から抜く。その後、ハンガー33を支持軸15周りに回動させることで、アシストグリップ3の支持軸15の切欠部15fと、ハンガー33の凸条部33iとを支持軸15の周方向に対応させ、この状態で、ハンガー33をアシストグリップ3の支持軸15の突出方向にスライドさせることにより、ハンガー33をアシストグリップ3から取り外すことができる。したがって、切欠部15fを設けず、ハンガー33の取外し時にハンガー33の凸条部33i突設箇所を外周側に撓ませて先端側ストッパ部15dを乗り越えさせるようにした場合に比べ、ハンガー33の取外し作業が容易になる。また、ハンガー33の取付け時及び取外し時にハンガー33の凸条部33i突設箇所を撓ませる必要がないので、ハンガー33の凸条部33i突設箇所を撓みにくく構成した場合でも、ハンガー33の凸条部33iの突出高さを高く設定することにより、ハンガー33を支持軸15に取り付けた状態でのハンガー33の支持軸15からの抜けを確実に規制できる。
【0052】
したがって、本実施形態1によれば、ハンガー33の支持軸15への取付けに、特許文献1のようなクリップが不要となるので、その分だけ部品点数を減らすことができ、製造コストを削減できる。
【0053】
また、支持軸15がハンガー33の底壁部33bで先端側から覆われて見えにくいので、見栄えを向上できる。
【0054】
また、ハンガー33を成形する際、周壁部33c基端側の連通スリット33gを利用することによって、アンダーカット部を設けることなく凸条部33iを形成できるので、型構造及び成形工程を簡素にできる。
【0055】
また、2条の連通スリット33gに挟まれた可撓部33hに凸条部33iが形成され、凸条部33i突設箇所を外周側に大きく撓ませることができるので、ハンガー33の凸条部33iの突出高さを高く設定することにより、ハンガー33が車両の振動等により所定位置から回動するのを確実に防止できる。
【0056】
(実施形態2)
図14は、本実施形態2に係る取付構造を適用してアシストグリップ3に取り付けられるハンガー33を示す。本実施形態2では、ハンガー33の挿入孔33dが軸受部33aに貫通形成され、上記凸条部33iが、ハンガー33の周壁部33cの平坦部分33f対応箇所の周方向中央における挿入孔33dの貫通方向中央部に突設されている。また、上記連通スリット33gが周壁部33cに形成されていない。
【0057】
その他のアシストグリップ装置1の構成は、実施形態1と同じであるので、同一の構成箇所には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0058】
したがって、本実施形態2によれば、ハンガー33の軸受部33aに挿入孔33dが貫通形成されているので、周壁部33cに実施形態1のような連通スリット33gを設けなくても、アンダーカット部を設けることなく凸条部33iを形成でき、型構造及び成形工程を簡素にできる。
【0059】
なお、上記実施形態1,2では、ハンガー33を、アシストグリップ3に突設された支持軸15に取り付ける場合に本発明を適用したが、本発明は、インストルメントパネル、シートベルトのカバー部材、シート等、車体に組み付けられる他の車両用内装品に支持軸15を突設し、当該支持軸15にハンガー33を取り付ける場合にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、車体に組み付けられる車両用内装品に突設された支持軸に樹脂製のハンガーを回動可能に取り付けたハンガーの取付構造として有用である。
【符号の説明】
【0061】
3 アシストグリップ(車両用内装品)
15 支持軸
15c 凹条部(嵌合凹部)
15d 先端側ストッパ部
15f 切欠部(欠損部)
33 ハンガー
33a 軸受部
33b 底壁部
33c 周壁部
33d 挿入孔
33g 連通スリット(連通孔)
33h 可撓部
33i 凸条部(突部)
33j フック部
P ルーフピラー(車体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14