(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6768483
(24)【登録日】2020年9月25日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】償却資産申告支援システムおよび償却資産申告支援方法ならびに償却資産申告支援プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/00 20120101AFI20201005BHJP
【FI】
G06Q40/00 410
【請求項の数】15
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-242113(P2016-242113)
(22)【出願日】2016年12月14日
(65)【公開番号】特開2018-97647(P2018-97647A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2019年9月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】398026679
【氏名又は名称】アクリーグ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166132
【弁理士】
【氏名又は名称】木船 英雄
(74)【代理人】
【識別番号】100093872
【弁理士】
【氏名又は名称】高崎 芳紘
(72)【発明者】
【氏名】磯山 左門
(72)【発明者】
【氏名】蜂須 嘉一郎
【審査官】
石川 正二
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−107175(JP,A)
【文献】
特開2001−022771(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3035522(JP,U)
【文献】
特開2003−296539(JP,A)
【文献】
特開2010−039894(JP,A)
【文献】
特開2007−206825(JP,A)
【文献】
特開2016−151894(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0379631(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
償却資産課税マスタに基づいて、償却資産の未申告事業者および償却資産の申告漏れ事業者を予測する償却資産未申告事業者予測手段と、
前記償却資産未申告事業者予測手段で予測された償却資産の未申告事業者および償却資産の申告漏れ事業者に対して申告を促す通知を発送する償却資産申告通知手段とを有することを特徴とする償却資産申告支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載の償却資産申告支援システムにおいて、
前記償却資産未申告事業者予測手段は、
前記償却資産課税マスタと法人市民税課税マスタとを照合して前記償却資産課税マスタにない事業者を、償却資産の未申告事業者として予測することを特徴とする償却資産申告支援システム。
【請求項3】
請求項1に記載の償却資産申告支援システムにおいて、
前記償却資産未申告事業者予測手段は、
前記償却資産課税マスタと公共事業の入札参加資格者リストとを照合して前記償却資産課税マスタにない事業者を、償却資産の未申告事業者として予測することを特徴とする償却資産申告支援システム。
【請求項4】
請求項1に記載の償却資産申告支援システムにおいて、
前記償却資産未申告事業者予測手段は、
前記償却資産課税マスタと職業別電話帳とを照合して前記償却資産課税マスタにない事業者を、償却資産の未申告事業者として予測することを特徴とする償却資産申告支援システム。
【請求項5】
請求項1に記載の償却資産申告支援システムにおいて、
前記償却資産未申告事業者予測手段は、
前記償却資産課税マスタと法人税(国税)資料とを照合して前記償却資産課税マスタにない償却資産を有する事業者を、償却資産の申告漏れ事業者として予測することを特徴とする償却資産申告支援システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の償却資産申告支援システムにおいて、
前記償却資産課税マスタの登録事業者を日本標準産業分類に基づいて業種毎に分類する業種分類手段と、
前記業種分類手段で分類された業種をランク付けする業種ランク付け手段とをさらに備え、
前記償却資産未申告事業者予測手段は、前記業種ランク付け手段でランク付けされた業種毎に前記償却資産課税マスタに基づいて償却資産の未申告事業者および償却資産の申告漏れ事業者を予測することを特徴とする償却資産申告支援システム。
【請求項7】
請求項6に記載の償却資産申告支援システムにおいて、
前記業種ランク付け手段は、
前記償却資産課税マスタに登録されている事業者数と経済センサスで公表されている事業者数とを比較し、その差分の大きさに基づいて各業種をランク付けすることを特徴とする償却資産申告支援システム。
【請求項8】
請求項6に記載の償却資産申告支援システムにおいて、
前記業種ランク付け手段は、
前記償却資産課税マスタに対する非課税の償却資産の割合に基づいて各業種をランク付けすることを特徴とする償却資産申告支援システム。
【請求項9】
請求項6に記載の償却資産申告支援システムにおいて、
前記業種ランク付け手段は、
前記償却資産課税マスタに記録された償却資産の取得日に基づいて各業種をランク付けすることを特徴とする償却資産申告支援システム。
【請求項10】
請求項6乃至9のいずれかに記載の償却資産申告支援システムにおいて、
前記業種ランク付け手段は、ランク付けした各業種を複数のグループに分類し、
前記償却資産未申告事業者予測手段は、前記業種ランク付け手段で分類された複数のグループ単位で順に償却資産の未申告事業者および償却資産の申告漏れ事業者を予測することを特徴とする償却資産申告支援システム。
【請求項11】
請求項6乃至10のいずれかに記載の償却資産申告支援システムにおいて、
前記償却資産申告通知手段による通知に対する申告数を予測し、予測した申告数から償却資産の増加額を算出する償却資産増加額予測手段をさらに備えたことを特徴とする償却資産申告支援システム。
【請求項12】
請求項11に記載の償却資産申告支援システムにおいて、
前記償却資産増加額予測手段で予測した償却資産の増加額から税収を算出する税収増加額予測手段をさらに備えたことを特徴とする償却資産申告支援システム。
【請求項13】
請求項12に記載の償却資産申告支援システムにおいて、
前記税収増加額予測手段で算出された税収増加額から財政力指数の向上率を予測する財政力指数向上予測手段をさらに備えたことを特徴とする償却資産申告支援システム。
【請求項14】
償却資産課税マスタに基づいて償却資産の未申告事業者および償却資産の申告漏れ事業者を予測する償却資産未申告事業者予測ステップと、
前記償却資産未申告事業者予測手段で予測された事業者に対して申告を促す通知を発送する償却資産申告通知ステップとを含むことを特徴とする償却資産申告支援方法。
【請求項15】
コンピュータを、
償却資産課税マスタに基づいて償却資産の未申告事業者および償却資産の申告漏れ事業者を予測する償却資産未申告事業者予測手段と、
前記償却資産未申告事業者予測手段で予測された事業者に対して申告を促す通知を発送する償却資産申告通知手段として機能させることを特徴とする償却資産申告支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未申告や申告漏れの償却資産を効率良く抽出して、事業者に申告を促し、課税するための償却資産申告支援システムおよび償却資産申告支援方法ならびに償却資産申告支援プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
工場や事務所に設置される機械設備や応接セット、事務用パソコンなどのような事業用途の固定資産のうち、所定の購入金額を超える物は、税法上の償却資産として毎年の決算時に費用として計上することができる。また、これらの償却資産は地方税である固定資産税の対象となるため、事業主はその事業所がある市区町村などの自治体に対して賦課期日である毎年1月1日現在所有している償却資産についてその月の末日までに申告する義務がある(地方税法第383条<固定資産の申告>)。
【0003】
しかし、この償却資産の会計処理や固定資産の申告といった管理・事務業務は、専門的知識を有し且つ手間を要するため、納税する事業者にとっては大きな負担である。そこで例えば以下の特許文献1では、会計処理や固定資産の申告のための処理を統一的に行うことで申告作業などの軽減を可能とした償却資産処理システムなどを提案している。また、以下の特許文献2では、さらに資産を正確に算定し、正しい資産価格を容易且つ短時間に求め得る減価償却資産価格算定装置などを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−135028号公報
【特許文献2】特開2008−250445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、減価償却の対象となる法人税や所得税は、その申告先が国や都道府県であるのに対し、一方の固定資産税は、その申告先が市町村であるため、未申告や申告漏れの償却資産が多いという問題がある。そのため、市町村の職員が未申告や申告漏れの償却資産がないかを調査し、未申告や申告漏れの償却資産があればその事業者に申告を促す通知を出すことになるが、市町村によっては事業者の数が膨大な上に、1つ1つの固定資産についてはその課税額が購入価格の1.4%乃至1.5%とそれほど高くないため、多くの人件費をかけても十分な税を徴収することが難しく、費用対効果は低いといった現実がある。
【0006】
そこで、本発明はこれらの課題を解決するために案出されたものであり、その目的は、未申告や申告漏れの償却資産を精度良く予測して課税するための償却資産申告支援システムおよび償却資産申告支援方法ならびに償却資産申告支援プログラムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔発明1〕前記課題を解決するために第1の発明は、償却資産課税マスタに基づいて償却資産の未申告事業者および償却資産の申告漏れ事業者を予測する償却資産未申告事業者予測手段と、前記償却資産未申告事業者予測手段で予測された償却資産の未申告事業者および償却資産の申告漏れ事業者に対して申告を促す通知を発送する償却資産申告通知手段とを有することを特徴とする償却資産申告支援システムである。このような構成によれば、未申告や申告漏れの償却資産を精度良く予測し、予測された償却資産の未申告事業者および償却資産の申告漏れ事業者に対して申告を促す通知を効率良く発送することができる。
【0008】
〔発明2〕第2の発明は、第1の発明において、前記償却資産未申告事業者予測手段は、前記償却資産課税マスタと法人市民税課税マスタとを照合して前記償却資産課税マスタにない事業者を、償却資産の未申告事業者として予測することを特徴とする償却資産申告支援システムである。このように償却資産課税マスタと法人市民税課税マスタとを照合した結果、法人市民税課税マスタには登録されているにもかかわらず、償却資産課税マスタに登録されていない事業者は、償却資産の未申告の可能性が極めて高いことから、その事業者を精度良く予測して通知することができる。
【0009】
〔発明3〕第3の発明は、第1の発明において、前記償却資産未申告事業者予測手段は、前記償却資産課税マスタと公共事業の入札参加資格者リストとを照合して前記償却資産課税マスタにない事業者を、償却資産の未申告事業者として予測することを特徴とする償却資産申告支援システムである。このように償却資産課税マスタと公共事業の入札参加資格者リストとを照合した結果、公共事業の入札参加資格者として登録しているにもかかわらず、償却資産課税マスタにない資格者は、償却資産の未申告の可能性が極めて高い事業者であることから、その事業者を精度良く予測して通知することができる。
【0010】
〔発明4〕第4の発明は、第1の発明において、前記償却資産未申告事業者予測手段は、前記償却資産課税マスタと職業別電話帳とを照合して前記償却資産課税マスタにない事業者を、償却資産の未申告事業者として予測することを特徴とする償却資産申告支援システムである。このように償却資産課税マスタと職業別電話帳とを照合した結果、職業別電話帳には載っているにもかかわらず、償却資産課税マスタにない事業者は、償却資産の未申告の可能性が極めて高い事業者であることから、その事業者を精度良く予測して通知することができる。
【0011】
〔発明5〕第5の発明は、第1の発明において、前記償却資産未申告事業者予測手段は、 前記償却資産課税マスタと法人税(国税)資料とを照合して前記償却資産課税マスタにない償却資産を有する事業者を、償却資産の申告漏れ事業者として予測することを特徴とする償却資産申告支援システムである。このように償却資産課税マスタと法人税(国税)資料とを照合した結果、法人税(国税)資料には載っているにもかかわらず、償却資産課税マスタにない事業者は、償却資産の未申告の可能性が極めて高い事業者であることから、その事業者を精度良く予測して通知することができる。
【0012】
〔発明6〕第6の発明は、第1乃至第5の発明において、前記償却資産課税マスタの登録事業者を日本標準産業分類に基づいて業種毎に分類する業種分類手段と、前記業種分類手段で分類された業種をランク付けする業種ランク付け手段とをさらに備え、前記償却資産未申告事業者予測手段は、前記業種ランク付け手段でランク付けされた業種毎に前記償却資産課税マスタに基づいて償却資産の未申告事業者および償却資産の申告漏れ事業者を予測することを特徴とする償却資産申告支援システムである。調査対象となる自治体内にある膨大な事業者のすべてに対して一律に前記第1乃至第4の発明に示すような照合作業を行うには容易でないし、効率的でもない。また、対象となる償却資産の種類やその数は、業種によって異なってくる。そこで、本発明のように事業者を業種別に分けると共に未申告の可能性に基づいてランク付けし、そのランクに基づいて調査すれば、より高精度な予測を行うことができる。
【0013】
〔発明7〕第7の発明は、第6の発明において、前記業種ランク付け手段は、前記償却資産課税マスタに登録されている事業者数と経済センサスで公表されている事業者数とを比較し、その差分の大きさに基づいて各業種をランク付けすることを特徴とする償却資産申告支援システムである。このように両者を比較し、その差分が大きい業種ほど未申告の償却資産が多い業種として予測することができる。
【0014】
〔発明8〕第8の発明は、第6の発明において、前記業種ランク付け手段は、全体の償却資産に対して非課税の償却資産の割合に基づいて各業種をランク付けすることを特徴とする償却資産申告支援システムである。このように非課税の償却資産の割合が多い業種ほど未申告の償却資産が多い業種として予測することができる。
【0015】
〔発明9〕第9の発明は、第6の発明において、前記業種ランク付け手段は、前記償却資産課税マスタに記録された償却資産の取得日に基づいて各業種をランク付けすることを特徴とする償却資産申告支援システムである。このように償却資産の取得日に基づき、その取得日が古いものが多い業種ほど未申告の償却資産が多い業種として予測することができる。
【0016】
〔発明10〕第10の発明は、第6乃至第9の発明において、前記業種ランク付け手段は、ランク付けした各業種を複数のグループに分類し、前記償却資産未申告事業者予測手段は、前記業種ランク付け手段で分類された複数のグループ単位で順に償却資産の未申告事業者および償却資産の申告漏れ事業者を予測することを特徴とする償却資産申告支援システムである。このような構成によれば、調査対象となる事業者の数が膨大であっても一定期間ごとのローテーションで効率良く調査することができる。
【0017】
〔発明11〕第11の発明は、第6乃至第10の発明において、前記償却資産申告通知手段による通知に対する申告数を予測し、予測した申告数から償却資産の増加額を予測する償却資産増加額予測手段をさらに備えたことを特徴とする償却資産申告支援システムである。このような構成によれば、通知した場合の償却資産の増加額を正確に予測することができる。
【0018】
〔発明12〕第12の発明は、第11の発明において、前記償却資産増加額予測手段で予測した償却資産の増加額から税収を算出する税収増加額予測手段をさらに備えたことを特徴とする償却資産申告支援システムである。このような構成によれば、予測した償却資産の増加額から税収を正確に予測することができる。
【0019】
〔発明13〕第13の発明は、第12の発明において、前記税収増加額予測手段で予測された税収増加額から財政力指数の向上率を予測する財政力指数向上予測手段をさらに備えたことを特徴とする償却資産申告支援システムである。このような構成によれば、予測された税収増加額から財政力指数の向上率を正確に予測することができる。
【0020】
〔発明14〕第14の発明は、償却資産課税マスタに基づいて償却資産の未申告事業者および償却資産の申告漏れ事業者を予測する償却資産未申告事業者予測ステップと、前記償却資産未申告事業者予測手段で予測された事業者に対して申告を促す通知を発送する償却資産申告通知ステップとを含むことを特徴とする償却資産申告支援方法である。このような方法によれば、第1の発明と同様な効果が得られる。
【0021】
〔発明15〕第15の発明は、コンピュータを、償却資産課税マスタに基づいて償却資産の未申告事業者および償却資産の申告漏れ事業者を予測する償却資産未申告事業者予測手段と、前記償却資産未申告事業者予測手段で予測された事業者に対して申告を促す通知を発送する償却資産申告通知手段として機能させることを特徴とする償却資産申告支援プログラムである。このようなプログラムを用いることにより、汎用のコンピュータシステムを用いて第1の発明を実現できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、償却資産課税マスタに基づいて償却資産の未申告事業者および償却資産の申告漏れ事業者を予測し、予測された事業者に対して申告を促す通知を発送するようにしたことから、未申告や申告漏れの償却資産を精度良く予測し、予測された償却資産の未申告事業者および償却資産の申告漏れ事業者に対して申告を促す通知を効率良く発送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明に係る償却資産申告支援システム100の実施の一形態を示す構成図である。
【
図2】情報管理サーバー200の構成を示すハードウェア構成図である。
【
図3】情報管理サーバー200の機能を示す説明図である。
【
図4】償却資産未申告事業者予測手段230の機能を示す説明図である。
【
図5】償却資産課税マスタD1の登録事業者を日本標準産業分類(大)によって分類することを示す概念図である。
【
図6】業種のランク付けおよびグループ分けの一例を示す表図である。
【
図7】データベースに保存されたデータ内容の一例を示す説明図である。
【
図8】本発明に係る償却資産申告支援方法の処理の流れの一例を示すフローチャート図である。
【
図9】申告事業者数と市内事業者数との集計を示す表図である。
【
図10】全体に対する免税対象の償却資産の割りの集計を示す表図である。
【
図11】償却資産の取得日の集計を示す表図である。
【
図12】償却資産課税マスタD1と法人市民税課税マスタD2との照合により未申告事業者の予測を示す説明図である。
【
図13】償却資産課税マスタD1と入札参加資格者リストD3との照合により未申告事業者の予測を示す説明図である。
【
図14】償却資産課税マスタD1と職業別電話帳D4との照合により未申告事業者の予測を示す説明図である。
【
図15】償却資産課税マスタD1と法人税(国税)資料D5との照合により未申告事業者の予測を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明の実施の形態を添付図面を参照しながら説明する。
図1は本発明に係る償却資産申告支援システム100の実施の一形態を示す全体構成図である。図示するように、この償却資産申告支援システム100は、情報管理サーバー200に対して、データベース300と、入出力装置(入力装置410、表示装置420)400とが直接あるいはLANやインターネットなどのネットワークNを介して相互に情報通信可能に接続した構成となっている。
【0025】
情報管理サーバー200は、パソコンやワークステーションなどの汎用の情報処理端末で構成されている。そして、そのハードウェア構成は
図2に示すように演算装置(CPU)201、主記憶装置(RAM)202、クロック(CLC)203、内部記憶装置(ROM)204などの内部機器をバス205で接続すると共に、インタフェース(I/F)206を介してネットワークNや入力装置(キーボードやマウスなど)410、表示装置(ディスプレイ)420、データベース(外部記憶装置)300などの外部機器との間で情報の入出力が可能に接続されたコンピュータシステムからなっている。
【0026】
図3はこの情報管理サーバー200のハードウェアおよびソフトウェア(プログラム)で実現される各機能を示したブロック図である。図示するように、この情報管理サーバー200は、前記ハードウェアおよびソフトウェア(プログラム)によって後述する業種分類手段210、業種ランク付け手段220、償却資産未申告事業者予測手段230、償却資産申告通知手段240および償却資産増加額予測手段250、税収増加額予測手段260、財政力指数向上予測手段270といった各手段を実現する機能を有している。
【0027】
業種分類手段210は、償却資産課税マスタに登録された事業者を、例えば
図5に示すように日本標準産業分類(大)に従って分類する機能を提供する。具体的には償却資産課税マスタ(台帳)D1に事業者名と共に登録された業種に基づいて各事業者をその業種別に分類するが、この日本標準産業分類(大)以外に他の基準によって分類するものであっても良い。
【0028】
なお、この日本標準産業分類は、統計調査の結果を産業別に表示する場合の統計基準として、事業所において社会的な分業として行われる財貨およびサービスの生産又は提供に係るすべての経済活動を分類したものであり、その大分類では、1.農業、林業、2.漁業、3.鉱業、採石業、砂利採取業、4.建設業、5.製造業、6.電気、ガス、熱供給、水道業、6.情報通信業、7.運輸業、郵便業、8.卸売業、小売業、9.金融業、保険業、10.不動産業、物品賃貸業、11.学術研究、専門技術サービス業、12.宿泊業、飲食サービス業、13.生活関連サービス業、娯楽業、14.教育、学習支援業、15.医療、福祉、16.複合サービス業、17.サービス業(他に分類されないもの)、18.公務(他に分類されないものを除く)、19.分類不能の産業に分類している。
【0029】
業種ランク付け手段220は、この業種分類手段210で分類された業種毎の未申告の償却資産が多い業種ごとに、例えば
図6に示すようにランク1からランク19に分けてランク付けする機能を提供する。すなわち、未申告の償却資産が多い業種ほど納付すべき固定資産税額が高くなるため、調査や通知の優先度を決定するためにランク付けする。なお、このランク付けの具体的方法については後述する。
【0030】
また、この業種ランク付け手段220は、ランク付けられた業種をランク毎に複数のグループに分ける機能も提供する。このグループ分けとして、
図6に示す例では、ランク1から2を第1グループG1、ランク3から6を第2グループG2、ランク7から19までを第3グループG3として、3つのグループに分けている。
【0031】
償却資産未申告事業者予測手段230は、償却資産課税マスタD1に基づいて償却資産の未申告事業者および償却資産の申告漏れ事業者を予測する機能を提供する。具体的には
図4に示すように、(1)法人市民税との照合手段231、(2)公共事業への入札参加資格者との照合手段232、(3)職業別電話帳、例えば東日本電信電話株式会社(NTT東日本)および西日本電信電話株式会社(NTT西日本)が発行しているタウンページ(登録商標:第1865719号など)などとの照合手段233、(4)法人税(国税)資料との照合手段234の4つの方法によって償却資産の未申告事業者および償却資産の申告漏れ事業者を予測する。
【0032】
償却資産申告通知手段240は、償却資産未申告事業者予測手段230で予測された償却資産の未申告事業者および償却資産の申告漏れ事業者に対して申告を促す通知を発送する機能を提供する。この通知の発送方法としては、例えばメール機能を利用して対象となる事業者のメールアドレスに対して自動的に定型文の通知を発送する方法や、郵便による通知の場合は、対象となる事業者の住所のリストをその通知内容と共に通知代行業者などに通知する方法が用いられる。
【0033】
償却資産増加額予測手段250および税収増加額予測手段260ならびに財政力指数向上予測手段270は、本発明システム100の稼働により、申告通知に対する地域別や年度別の償却資産の申告数や増加額の予測およびその増加額から自治体が得られる税収増加額、ならびに財政力指数の向上率を算出する機能を提供する。すなわち、対象とする自治体や地域、年度によっては、本発明システム100の稼働により得られる税収増加額や財政力指数の向上率が、本発明システム100の稼働費用よりも下回る可能性がある場合は、費用割れ(赤字)となってしまうことから、本発明システム100の稼働に際して予めそれらの額を算出するものである。
【0034】
ここで、財政力指数とは、地方公共団体の財政力を示す指数で、基準財政収入額を基準財政需要額で除して得た数値の過去3年間の平均値であり、財政力指数が1より高いほど、財源に余裕があるといえる。また、財政力指数が1に近い地方公共団体すなわち基準財政収入額と基準財政需要額が1:1の関係であれば、健全な財政運用状況であるといえる。なお、基準財政収入額は地方税である固定資産(償却資産の税収額が大きく影響する)の占める割合が比較的多く、他の税収に比べ見直すことで大きく影響することになる。
【0035】
データベース300は、HDDやSSDなどの大容量ストレージドライブから構成されており、
図7に示すように少なくとも償却資産課税マスタD1、法人市民税課税マスタD2、入札参加資格者リストD3、職業別電話帳D4、法人税(国税)資料D5などの各種データが更新可能に記憶・保存されている。なお、このデータベース300は
図1に示すようにネットワークNを介して情報管理サーバー200に情報通信可能に接続される構成の他に、
図2に示すように情報管理サーバー200の外部記憶装置として内部バス205に直接接続された(内部に組み込まれた)構成であっても良い。
【0036】
そして、この償却資産課税マスタD1、法人市民税課税マスタD2、入札参加資格者リストD3、職業別電話帳D4、法人税(国税)資料D5などの各種データやその更新データは、入力装置410やネットワークNを介した入出力装置400によって入力および更新がされると共に、その保存データは表示装置420や入出力装置400を介して出力し閲覧可能となっている。
【0037】
ここで、償却資産課税マスタD1は、実際に各事業者から各自治体(役所)に申告があった償却資産やその課税内容、事業者などを記録したデータ(台帳)であり、所定の手続を踏むことにより役所などから適法に借用することができる。また、法人市民税課税マスタD2は、各自治体が事業者毎に課税した法人税および市民税に関するデータ(台帳)、入札参加資格者リストD3は、各自治体や国が行う各種公共事業への入札参加資格者を集めたリスト(データ)、法人税(国税)資料D5は、国に対して納税する法人税(国税)に関する資料であり、いずれも所定の手続を経ることによって適法に入手することができる。また、職業別電話帳D4は、各自治体にある事業者の電話番号を記載したものであり、前記のように東日本電信電話株式会社などが発行している最新のものを用いることができる。
【0038】
図8はこのような構成および機能を有する本発明の償却資産申告支援システム100および償却資産申告支援プログラムによる主な処理の流れを示すフローチャートである。先ず、最初のステップS100(登録事業者の業種分けステップ)に示すように本システム100の業種分類手段210は、データベース300に保存されたある自治体の償却資産課税マスタD1に登録された事業者の業種を、
図5に示す日本標準産業分類(大)に基づいて19の業種に分類する。
【0039】
次のステップS102(業種ランク付けステップ)では、このように分類された業種を、業種ランク付け手段220が未申告の償却資産が多い業種から少ない業種へ19の区分にランク付けする。
図6の例ではランク1が最も未申告の償却資産が多く、順にランク2、ランク3、ランク4と続き、ランク19が最も未申告の償却資産が少ないことを示している。なお、後述するような分類分けの指標や対象とする償却資産課税マスタD1によっては、同じランクに2つ以上の業種が該当することもあるし、該当業種がないランクが存在することもある。
【0040】
このステップS102におけるランク付けの指標としては、例えば
図9から
図11に示すような3つの指標を用いることができる。先ず、
図9に示す指標は、償却資産課税マスタD1に登録されている申告事業者数と、経済センサスと称されるいわゆる経済の国勢調査で公表されている市内事業者との数を比較し、その差分を算出する。そして、その差分(事業者数)が大きい業種ほど償却資産の未申告や申告漏れの可能性が高いとみなすことができ、その差分の大きさに基づいてランク付けしたものである。これは実際に市内(自治体)に存在しているにもかかわらず、償却資産課税マスタD1に登録されていない業種は、償却資産の未申告の割合が多いと予測されるからである。
【0041】
次に、
図10に示す指標は、免税点数の集計に基づいてランク付けしたものであり、償却資産課税マスタD1に記載された全体の償却資産を、免税額(非課税額)である150万円を境に150万円未満と150万円以上に分け、全体に対する150万円未満の償却資産の割合が多い業種ほど償却資産の未申告や申告漏れの可能性が高いとみなすことができ、その割合の大きさに基づいてランク付けしたものである。これは今まで免税対象であったがために、償却資産の新規取得があった場合でも、150万円未満となるように過少申告をしている可能性があるため、償却資産の未申告の割合が多いと予測されるからである。
【0042】
さらに
図11に示す指標は、同じく償却資産課税マスタD1に基づいて課税対象となる償却資産の取得日を業種毎に集計し、その集計に基づいてランク付けしたものである。そして、償却資産の取得日が古い(図の例では1999年以前が対象)ものが多い業種ほど償却資産の未申告や申告漏れの可能性が高いとみなすことができ、その取得日に基づいてランク付けしたものである。これは償却資産の取得日が古く、耐用年数が経過した償却資産は既に買い替えられている可能性があり、その際の修正申告を失念している可能性があるため、償却資産の未申告の割合が多いと予測されるからである。
【0043】
図8のフローに戻り、このようにして償却資産課税マスタD1に登録された業種をランク付けしたならば、次のステップS104(グループ分けステップ)に移行して各事業者をそのランク順に複数のグループに分ける。例えば前述した
図6に示すとおり、ランク1から2を第1グループG1、ランク3から6を第2グループG2、ランク7から19を第3グループG3として、3つのグループに分ける。
【0044】
図6の例における各グループの業種数は、ランク1の属する業種の事業者の数が多く、ランクが低くなるにつれてその事業者の数が減少していると仮定したからであり、要するに調査の便宜上各グループに属する事業者の数が均等になるようにグループ分けしたものである。従って、各グループに属する事業者の数が変動するケースでは、各グループの事業者が均等になるように新たにグループ分けするのは勿論である。
【0045】
すなわち、調査対象となる自治体内にある膨大な事業者のすべてに対して同時期に調査を行うには容易でないし、効率的でもない。また、対象となる償却資産の種類やその数は、業種によって異なってくる。そこで、前記ステップS100〜S104において調査対象となる事業者を業種別に分けると共に未申告の可能性に基づいてランク付けし、そのランクに基づいて調査することにより、より高精度で効率的な予測を行うことができる。
【0046】
次にこのようにして償却資産課税マスタD1に登録された業種をランク毎にグループ分けしたならば、次のステップS106(償却資産未申告事業者予測ステップ)に示すように、償却資産未申告事業者予測手段230はランクが最も高い業種から各グループ単位で償却資産の未申告事業者を予測する。このステップS106における予測方法としては、
図12から
図14に示す3つの方法がある。先ず、
図12に示す方法は、償却資産課税マスタD1に登録された事業者と法人市民税課税マスタD2に登録された事業者とを照合し、その一致の有無を調査する。
【0047】
すなわち、市民税や法人税の確定申告に際しては、節税のためにどの事業者でも必ず償却資産を必要経費として申告しているが、その償却資産税の申告は別であるため、後者の申告をしていない事業者が多い。また、当該市区町村に事業所がある法人は必ず法人市民税を納めなければならない。そこで、この償却資産課税マスタD1と法人市民税課税マスタD2とを照合し、法人市民税課税マスタD2には登録されているものの、償却資産課税マスタD1には登録されていない事業者は償却資産税の未申告の疑義が高いと考えることができる。従って、
図12の方法ではこの事業者を償却資産税の未申告として予測する。なお、その反対、つまり償却資産課税マスタD1には登録されているものの法人市民税課税マスタD2には登録されていない事業者は、法人市民税の未申告疑義の可能性が高いものとして必要であれば市民税担当課などへ報告しても良い。
【0048】
次に
図13に示す方法は、償却資産課税マスタD1に登録された事業者と公共事業の入札参加資格者リストD3に登録された事業者とを照合し、その一致の有無を調査するものである。一般に公共事業への入札参加には資格が必要であり、一定の事業規模(人員や設備)がその要件となる場合がある。特に建設業の場合は大型の運搬車両や工事機器、重機などが必要となるが、これらの償却資産を申告しない事業者が多い。そこで、この償却資産課税マスタD1と入札参加資格者リストD3とを照合し、入札参加資格者リストD3には登録されているものの、償却資産課税マスタD1には登録されていない事業者を償却資産税の未申告として予測する。
【0049】
次に
図14に示す方法は、償却資産課税マスタD1に登録された事業者と職業別電話帳D4に記載されている事業者とを照合し、その一致の有無を調査するものである。償却資産未申告の事業者であっても、その殆どは営業目的のために職業別電話帳に電話番号と共に住所やその業種を載せている場合が多い。そこで、3つめの方法は、職業別電話帳D4に記載されているものの、償却資産課税マスタD1に登録されていない事業者を抽出し、その事業者を償却資産税の未申告として予測する。
【0050】
そして、このようにして償却資産税の未申告の事業者を予測したならば、次のステップS108(償却資産申告通知ステップ)に移行し、償却資産申告通知手段240によって予測された償却資産の未申告事業者に対して申告を促す通知を発送する。具体的には前述したようにメール機能を利用して対象となる事業者のメールアドレスに対して自動的に定型文の通知を発送する方法や、郵便による通知の場合は、対象となる事業者の住所のリストをその通知内容と共に通知代行業者などに通知する方法が用いられる。
【0051】
このようにしてあるグループに属する業種の事業者についての申告通知処理が終了したならば、最後のステップS110に移行し、全グループに対しての申告通知処理が終了するまで繰り返し、すべてのグループに対しての処理が行われたならば、全ての処理を終了する。なお、各グループの申告通知処理は、一定期間ごと例えば1年単位や数ヶ月単位で行われ、調査対象との事業者の数やシステム側の対応能力等に応じて適宜調整しても良いし、各グループに対して並行して処理を行っても良い。
【0052】
また、地方税の償却資産は自らが申告して固定資産税を納入する税に対して、法人税(国税)は事業者の申告により減価償却資産として経費算入して法人税の減額が受けられる事業者から見たら相反する税といえる。そこで、さらに
図15に示すように償却資産課税マスタD1と法人税(国税)資料D5とを照合し、法人税(国税)資料D5にはあるものの、償却資産課税マスタD1にはない償却資産を有する事業者に対して申告通知をすればより精度の高い課税を行うことができる。
【符号の説明】
【0053】
100…償却資産申告支援システム
200…情報管理サーバー
210…業種分類手段
220…業種ランク付け手段
230…償却資産未申告事業者予測手段
231…法人市民税照合手段
232…入札参加資格者照合手段
233…職業別電話帳照合手段
234…法人税(国税)資料照合手段
240…償却資産申告通知手段
250…償却資産増加額予測手段
260…税収増加額予測手段
270…財政力指数向上予測手段
300…データベース
400…入出力装置
410…入力装置
420…表示装置
D1…償却資産課税マスタ
D2…法人市民税課税マスタ
D3…入札参加資格者リスト
D4…職業別電話帳
D5…法人税(国税)資料
N…ネットワーク