特許第6768494号(P6768494)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6768494
(24)【登録日】2020年9月25日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】ハンドル
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/04 20060101AFI20201005BHJP
   B60R 13/02 20060101ALI20201005BHJP
【FI】
   B62D1/04
   B60R13/02 B
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-251929(P2016-251929)
(22)【出願日】2016年12月26日
(65)【公開番号】特開2018-103784(P2018-103784A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年10月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】村松 克弥
(72)【発明者】
【氏名】藤森 健志
(72)【発明者】
【氏名】大賀 真宏
【審査官】 森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/103752(WO,A1)
【文献】 特開2016−132255(JP,A)
【文献】 特開2011−213302(JP,A)
【文献】 特開2010−052664(JP,A)
【文献】 特開平04−224463(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/00− 1/28
B60R 13/01−13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷重が加わることで変形可能な複数の変形部を有するリム部を備えたハンドル本体と、
このハンドル本体の背面側を覆うカバー体とを具備し、
前記カバー体は、
前記変形部を結ぶ仮想線に対して前記ハンドル本体の中央側とは反対側に少なくとも一部が位置する四角形以上の多角形状の開口部と、
この開口部の縁部に立ち上げられた多角形筒状の壁面部とを備え、
前記壁面部は、互いに隣接しない角部の強度がその他の角部の強度よりも小さく設定されている
ことを特徴とするハンドル。
【請求項2】
壁面部は、互いに隣接しない角部の肉厚がその他の角部の肉厚よりも小さく設定されている
ことを特徴とする請求項1記載のハンドル。
【請求項3】
リム部は、変形部での変形に従い壁面部と当接してこの壁面部を押し込む押圧部を有し、
前記押圧部は、前記壁面部の角部のうち、強度が小さい角部に近接して配置された
ことを特徴とする請求項1または2記載のハンドル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドル本体の背面側を覆うカバー体を備えたハンドルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両において、ステアリングシャフトと接続される操向用のハンドルであるステアリングホイールが用いられている。ステアリングホイールは、円環状をなし乗員に把持操作されるリム部と、このリム部の内側に位置しステアリングシャフトと接続されるボス部と、これらリム部とボス部とを連結する複数のスポーク部とを備えたハンドル本体であるステアリングホイール本体に対して、エアバッグ装置などのモジュールやスイッチ類、意匠を構成する装飾部材であるフィニッシャ、及び、カバー体であるボディカバーなどが取り付けられる。
【0003】
近年、ステアリングホイールの意匠性の向上などを目的として、ボディカバーにて下部のスポーク部の近傍に四角形状の開口部を設けるとともに、この開口部の周縁に目隠し用の壁面部を立ち上げ、開口部を乗員側に露出させるようにフィニッシャを取り付けるものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−78570号公報 (第5−7頁、図1及び図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、ステアリングホイール本体のリム部に対して乗員が当接するなど荷重が入力されたときに、乗員との当接によってリム部などに前方への曲げ変形を生じさせて乗員への反力を低減する構成がある。ここで、ステアリングホイールは、一般に、水平方向(垂直方向)に対して傾斜した状態で備えられる操向用シャフトであるステアリングシャフトに装着されるため、下端部が乗員に最も近くなっている。そのため、例えば衝突時の衝撃によって前方へと投げ出された乗員は、乗員の身体に最も近いリム部の下端部と当接し、フィニッシャ及びボディカバーを変形させる。
【0006】
このとき、フィニッシャは、ステアリングホイール本体に対して乗員側に位置するため、乗員側から入力された衝撃によりリム部が前方へと変形するのに伴い引っ張り変形されるので、比較的容易に変形させることが可能となる。
【0007】
しかしながら、ボディカバーは、ステアリングホイール本体に対して背面側に位置するため、乗員側から入力された衝撃によりリム部が前方へと変形するのに伴い圧縮変形されるので、特に開口部の周縁に壁面部を備える場合、この周壁部が突っ張って変形の妨げにならないようにすることが望ましい。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、カバー体の開口部を囲む壁面部を、ハンドル本体に加わる荷重により容易に変形させることができるハンドルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載のハンドルは、荷重が加わることで変形可能な複数の変形部を有するリム部を備えたハンドル本体と、このハンドル本体の背面側を覆うカバー体とを具備し、前記カバー体は、前記変形部を結ぶ仮想線に対して前記ハンドル本体の中央側とは反対側に少なくとも一部が位置する四角形以上の多角形状の開口部と、この開口部の縁部に立ち上げられた多角形筒状の壁面部とを備え、前記壁面部は、互いに隣接しない角部の強度がその他の角部の強度よりも小さく設定されているものである。
【0010】
請求項2記載のハンドルは、請求項1記載のハンドルにおいて、壁面部は、互いに隣接しない角部の肉厚がその他の角部の肉厚よりも小さく設定されているものである。
【0011】
請求項3記載のハンドルは、請求項1または2記載のハンドルにおいて、リム部は、変形部での変形に従い壁面部と当接してこの壁面部を押し込む押圧部を有し、前記押圧部は、前記壁面部の角部のうち、強度が小さい角部に近接して配置されたものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載のハンドルによれば、リム部の変形部を結ぶ仮想線に対してハンドル本体の中央側とは反対側に少なくとも一部が位置する四角形以上の多角形状の開口部の縁部に立ち上げられた多角形筒状の壁面部の互いに隣接しない角部の強度をその他の角部の強度よりも小さく設定することで、リム部の変形に従い壁面部が押し込まれると、強度が小さい角部に応力が集中する。したがって、カバー体の開口部を囲む壁面部を、ハンドル本体に加わる荷重により容易に変形させることができる。
【0013】
請求項2記載のハンドルによれば、請求項1記載のハンドルの効果に加えて、壁面部の互いに隣接しない角部の肉厚をその他の角部の肉厚よりも小さく設定することで、強度が小さい角部を容易に形成できる。
【0014】
請求項3記載のハンドルによれば、請求項1または2記載のハンドルの効果に加えて、リム部の変形部での変形に従い壁面部と当接してこの壁面部を押し込む押圧部を、壁面部の角部のうち、強度が小さい角部に近接して配置することで、強度が小さい角部側から押圧部が壁面部を押し込むので、強度が小さい角部に対して応力をより集中させやすくなり、壁面部をより容易に変形させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施の形態のハンドルのカバー体を示す正面図である。
図2】同上カバー体の一部を拡大して示す正面図である。
図3】同上カバー体を示す斜視図である。
図4】同上ハンドルのステアリングホイール本体と装飾部材との相対的な位置関係を示す正面図である。
図5】同上ハンドルを示す正面図である。
図6】同上ハンドルの荷重入力時の変形状態を示す側面図である。
図7】同上ハンドルの曲げ荷重と変形量との関係の例を示すグラフである。
図8】本発明の第2の実施の形態のハンドルのステアリングホイール本体と装飾部材との相対的な位置関係を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の第1の実施の形態の構成を、図面を参照して説明する。
【0017】
図5において、10は自動車部品としてのハンドル(ステアリングハンドル)であるステアリングホイールで、このステアリングホイール10は、自動車の運転席の乗員の前方に配置され、ハンドル本体であるステアリングホイール本体11と、このステアリングホイール本体11の乗員側に取り付けられる設置体であるモジュール12と、ステアリングホイール本体11の反乗員側、すなわちモジュール12と反対側に取り付けられる図1ないし図3に示す被覆部材としてのカバー体13と、図5に示すステアリングホイール本体11の乗員側に取り付けられる装飾部材としてのフィニッシャ(ガーニッシュ)14となどから構成される。そして、モジュール12は、例えばエアバッグを収納したエアバッグ装置などが好適に用いられるが、例えばエアバッグ装置に代えて、例えば衝撃吸収体を収納したパッド体や、内部に収容物がない単なるホーンパッドなど、その他の任意のものを用いることもできる。
【0018】
なお、ステアリングホイール10は、通常、水平方向(垂直方向)に対して傾斜した状態で備えられる図示しない操縦装置としての操向用シャフトであるステアリングシャフトに装着されるものであるが、以下、モジュール12側を乗員側、正面側あるいは後側(図3に示す矢印RR側)、ステアリングシャフト側を車体側、背面側あるいは前側(図3に示す矢印FR側)とし、このステアリングシャフトに沿った前後方向を軸方向とし、その他、このステアリングホイール10が備えられる車体の直進方向を基準として、左右方向(図1などに示す矢印L,R方向)上下方向(図1などに示す矢印U,D方向)などの方向を説明する。
【0019】
そして、ステアリングホイール10(ステアリングホイール本体11)は、円環状(ドーナツ状)をなすリム部(リング部)21と、このリム部21の内側に位置する中心部としてのハブ部であるボス部(マウント部)22と、これらリム部21とボス部22とを連結する複数のスポーク部23とから構成されている。また、このステアリングホイール10(ステアリングホイール本体11)は、図4に示す芯金25を備えている。さらに、このステアリングホイール10(ステアリングホイール本体11)は、図5に示す被覆部26を備えている。そして、このステアリングホイール10(ステアリングホイール本体11)は、背面側がカバー体13(図1ないし図3)により覆われている。
【0020】
リム部21は、ボス部22の外方を囲んで位置している。このリム部21は、本実施の形態において、略円環状に連続して設けられている。
【0021】
スポーク部23は、車種などによってその本数は様々に設定し得るが、本実施の形態では例えば左右両側部及び下部の3本が設定されている。
【0022】
図4に示す芯金25は、例えばアルミニウムや鉄などの金属により一体に成形された、金属製のものである。この芯金25は、リム部21、ボス部22及びスポーク部23(図5)に対応し、円弧状のリム芯金部31、ボス芯金部32、及び、スポーク芯金部33を備えている。
【0023】
リム芯金部31は、リム部21(図5)を構成するものである。このリム芯金部31は、本実施の形態では円環状に形成されている。また、このリム芯金部31は、スポーク芯金部33との連結位置の下部が、荷重が加わることで変形可能な変形部35となっている。したがって、これら変形部35は、リム部21に備えられている。
【0024】
変形部35は、乗員のリム部21(図5)への当接により前方に向かってリム部21(リム芯金部31)を変形させることでステアリングホイール10(図5)から乗員への反力を抑制する部分である。すなわち、この変形部35は、リム部21(リム芯金部31(図4))を変形させることで乗員の当接による衝撃を逃がすようになっている。この変形部35は、リム部21に対して乗員側から荷重が入力されたときに応力が集中する位置となっている。このため、この変形部35は、本実施の形態において、リム部21における両側部のスポーク部23(スポーク芯金部33)の下部にそれぞれ位置している。換言すれば、この変形部35は、リム部21において、左右のスポーク部23(スポーク芯金部33)と連続する部分に位置している。すなわち、この変形部35は、リム部21のアナログ時計9時位置及び3時位置の下側寄りにそれぞれ配置されている。この変形部35は、リム部21(リム芯金部31)において、ステアリングホイール10(ステアリングホイール本体11)の中央部(回転中心C)よりも下側の略左右対称な位置に一対配置され、リム部21(リム芯金部31)を前方に向かって屈曲変形させる基点となっている。すなわち、リム部21の変形部35,35間を結ぶ仮想線VLが、リム部21の下部に対して荷重が加わったときの曲げラインとなっている。
【0025】
ボス芯金部32は、ステアリングシャフトと接続される部分である。また、このボス芯金部32には、モジュール12を支持する支持部が設けられていてもよい。さらに、このボス芯金部32には、ホーンスイッチ用の接点が設けられていてもよい。
【0026】
スポーク芯金部33は、ボス芯金部32とリム芯金部31とを連結して放射状に延びている。本実施の形態では、左右のスポーク部23に対応してスポーク芯金部33が設定され、下部のスポーク部23は、フィニッシャ14により構成されている。
【0027】
図5に示す被覆部26は、リム部21の意匠面を構成するものである。この被覆部26は、例えばポリウレタンなどの、軟質の合成樹脂(例えば連結体よりも軟質の合成樹脂)により成形された、合成樹脂製のものである。この被覆部26は、リム芯金部31(図4)と、このリム芯金部31とスポーク芯金部33(図4)との連結部とを覆って設けられている。なお、この被覆部26には、必要に応じて、例えば皮革や合成樹脂などの表皮体を巻くこともできる。
【0028】
そして、図1ないし図5に示すカバー体13は、ボディカバー、ロアカバー、あるいは裏カバーなどとも呼ばれるものである。このカバー体13は、ステアリングホイール本体11のボス部22および左右のスポーク部23のボス部22側の部分の背面側すなわち裏面側を覆っている。このカバー体13は、例えば絶縁性を有する熱可塑性樹脂を金型内に射出などして、例えばポリプロピレン等にて一体に形成されている。そして、このカバー体13は、底板部であるカバー体本体41を備えている。また、このカバー体13は、側面部42を備えている。さらに、このカバー体13は、ボス部22のボス芯金部32の一部が露出する露出開口部45を備えている。また、このカバー体13は、このカバー体13を芯金25に取り付けるためのボスなどの取付部46を備えている。さらに、このカバー体13は、開口部48を備えている。また、このカバー体13は、開口部48を囲む壁面部49を備えている。
【0029】
カバー体本体41は、略板状に設けられ、ボス部22(ボス芯金部32)の底部に対向して配置されている。
【0030】
側面部42は、カバー体本体41の外縁部から前方に向かって立ち上げられている。この側面部42は、ボス部22の外周部及びスポーク部23の背面側に対向している。この側面部42は、スポーク部23の背面側に対向する対向部51と、この対向部51を除く一般部52とを備えている。
【0031】
対向部51には、左右のスポーク部23(スポーク芯金部33)の背面側に対向する左右の側部対向部54,54と、下部のスポーク部23の背面側に対向する下部の下部対向部55とが設定されている。これら対向部51は、一般部52に対して前側に向かって拡開状に傾斜して設けられている。
【0032】
側部対向部54は、カバー体13の左右の上部に突出して設けられ、左右方向に沿って延びている。
【0033】
下部対向部55は、カバー体13の下部に突出して設けられ、下方に向かって延びている。また、この下部対向部55は、下側から上側に向かって徐々に拡開状に形成されている。換言すれば、この下部対向部55は、下側に短辺、上側に長辺を有する等脚台形状に形成されている。
【0034】
一般部52は、対向部51の側部対向部54,54間、及び、各側部対向部54と下部対向部55との間を連結して設けられている。
【0035】
露出開口部45は、カバー体本体41を前後方向に貫通して設けられている。この露出開口部45は、例えば円形状に設けられている。
【0036】
取付部46は、例えばボスや爪部などであり、ボス部22(ボス芯金部32)に対してカバー体13を位置決めするとともに、図示しないねじなどの固定体を用いたり、ボス部22(ボス芯金部32)に引っ掛けたりすることでボス部22(ボス芯金部32)の背面側にカバー体13を固定可能となっている。
【0037】
開口部48は、乗員側(正面)から見たステアリングホイール10の一部の意匠を構成するものである。本実施の形態において、この開口部48は、下部のスポーク部23の意匠を構成する。この開口部48は、下部対向部55に開口されている。このため、この開口部48は、変形部35,35を結ぶ仮想線VLに対してステアリングホイール本体11の中央側(回転中心C)とは反対側である下側に少なくとも一部が位置するように配置されている(図4)。本実施の形態において、この開口部48は、仮想線VLに対して下側に離れて位置し、ステアリングホイール本体11(芯金25)の下端近傍に配置されている。また、この開口部48は、四角形以上の多角形状に形成することができ、本実施の形態では、四角形状に形成されている。より具体的に、この開口部48は、例えば台形状に形成されている。さらに詳細に、この開口部48は、例えば下側に短辺、上側に長辺を有する略等脚台形状に形成されている。
【0038】
壁面部49は、開口部48を囲む多角形筒状に設けられている。この壁面部49は、開口部48の各辺部にそれぞれ連続して前側に立ち上げられた壁面57と、隣接する壁面57を連結し開口部48の各角部に連続する角部58とを備えている。すなわち、この壁面部49は、4以上の壁面57と、4以上の角部58とを備える。換言すれば、本実施の形態において、この壁面部49は、四角形筒状に形成されている。より具体的に、この壁面部49は、例えば台形筒状に形成されている。さらに詳細に、この壁面部49は、例えば下側に短い短辺、上側に長辺を有する略等脚台形筒状に形成されている。したがって、この壁面部49及び開口部48は、カバー体13の下部対向部55に沿って形成されている。そして、この壁面部49の壁面57は、上下左右に壁面57a,57b,57c,57dが設定され、角部58は、下側左右と上側左右とに、角部58a,58b,58c,58dを備えている。
【0039】
壁面57は、乗員側の端部である先端側がフィニッシャ14及びモジュール12と連続するように設けられることで、開口部48から内部が見えないようにする目隠しフランジである。この壁面57は、例えば下部対向部55から乗員(後方)に向けて突設されている。また、この壁面57の先端部である後端部は、側面部42(下部対向部55)よりも乗員側である後側へと突出して設けられている。さらに、壁面57は、突出先端側である後端側の位置が略一致するように設けられている。また、この壁面57に設定された壁面57a及び壁面57bは、それぞれ略左右方向に沿って設けられている。さらに、この壁面57に設定された壁面57c,57dは、それぞれ上下方向に沿って設けられている。また、これら壁面57c,57dは、下側から上側、すなわちモジュール12側に向かって左右方向に徐々に離れるように、すなわち拡開されて形成されている。
【0040】
また、角部58は、壁面57を隙間なく連続するように設けられている。このため、この角部58に設定されている下側の角部58a,58bは、それぞれ鈍角状に形成され、上側の角部58c,58dは、それぞれ鋭角状に形成されて、上下に対向する角部58どうし(角部58cと角部58a、及び、角部58dと角部58b)の角度は、互いに略補角の関係にある。この角部58(角部58a,58b,58c,58d)は、互いに隣接しないものの強度がその他のものの強度よりも小さく設定されている。例えば、四角形状の開口部48を囲む壁面部49は、互いに対角の位置関係にある一対の角部58,58どうしの強度が小さく、残りの他の対角の位置関係にある一対の角部58,58どうしの強度が大きい。具体的に、本実施の形態では、例えば角部58b,58cが角部58a,58dよりも強度が小さい。ここで、角部58b,58cは、角部58a,58dより肉厚が小さく設定されている。換言すれば、角部58a,58dは厚肉部であり、角部58b,58cは薄肉部である。さらに、これら角部58のうち、強度が大きい角部58(本実施の形態では角部58a,58d)は、角部58を除く壁面部49(壁面部49の一般部)である壁面57と同等、あるいはそれ以下の強度(肉厚)に設定されている。また、角部58は、壁面57に対して肉厚が徐変するように形成されている。すなわち、これら角部58は、壁面57の肉厚を変化させることで外観を損なうことなく厚肉状、あるいは薄肉状の角部58を容易に形成できる。
【0041】
また、図5に示すフィニッシャ14は、例えばステアリングホイール10を加飾するものである。このフィニッシャ14は、例えば合成樹脂により形成されている。このフィニッシャ14は、本実施の形態において、例えば正面から見て略U字(V字)状となっている。また、このフィニッシャ14は、モジュール12との間で開口部48を囲むように設けられている。すなわち、このフィニッシャ14は、壁面部49の壁面57のうち、壁面57aを除く、壁面57b,57c,57dと連続している。なお、壁面57aは、モジュール12の下端部と連続している。
【0042】
そして、ステアリングホイール10を製造する際には、芯金25を成形型にセットし、反応混合液を金型のキャビティに充填することでキャビティ内にて反応混合液が反応して、芯金25のリム芯金部31と、このリム芯金部31とスポーク芯金部33との連結部とを覆ってポリウレタン製などの軟質の被覆部26が成形される。そして、被覆部26が成形されたステアリングホイール10(ステアリングホイール本体11)を脱型し、必要に応じて被覆部26に表皮体を巻き、ステアリングシャフトに連結した後、モジュール12やカバー体13及びフィニッシャ14などを取り付ける。
【0043】
カバー体13は、ステアリングホイール本体11(芯金25)の背面側から、取付部46によりボス部22(ボス芯金部32)に対して位置決めすることで、対向部51の側部対向部54が左右のスポーク部23(スポーク芯金部33)の背面に対向し、下部対向部55がフィニッシャ14により形成される下部のスポーク部23の背面側に対向する。この状態で、カバー体13は、ねじなどの固定体を用いてボス部22(ボス芯金部32)に対して固定される。
【0044】
モジュール12は、フィニッシャ14により囲まれる部分にて芯金25に対して支持部などにより支持する。
【0045】
そして、このように構成されたステアリングホイール10は、運転席の乗員がリム部21を把持して回動することにより、走行時の操作が行われる。
【0046】
一方、車両の正面衝突などの際は、モジュール12が例えばエアバッグ装置である場合、インフレータからエアバッグの内部にガスが急速に噴射されて、折り畳まれて収納されたエアバッグが急激に膨張して乗員の前方で膨張展開し、乗員を拘束して保護するようになっている。
【0047】
さらに、衝突の衝撃により乗員が前方に移動するなどして、ステアリングホイール本体11のリム部21が押圧されると、リム部21(リム芯金部31)及びスポーク部23(スポーク芯金部33)が変形して、衝撃を吸収し、乗員を保護する。より詳細には、車両が正面衝突すると、乗員は前側に投げ出されるように前方に移動し、乗員に最も近いリム部21の下端部に当接し、前方に向かいリム部21の下端部を押圧して荷重を加えることで、リム部21のリム芯金部31が左右のスポーク部23のリム部21との連結位置を支点としてボス芯金部32側に屈曲変形する。したがって、リム部21が、仮想線VLを曲げラインとして乗員とは反対側の前側に屈曲変形する(図6)。
【0048】
このとき、カバー体13では、リム部21の下端部、すなわちアナログ時計の6時位置がリム部21の変形に伴い前側へと屈曲されることで、このリム部21が下部の位置でカバー体13の壁面部49の壁面57bを上方に向かって押し込んでいく。
【0049】
壁面部49では、角部58のうち、互いに隣接しない角部58、本実施の形態では対角に位置する角部58である角部58b,58cが、その他の角部58である角部58a,58dよりも強度が小さく(薄肉に)形成されていることにより、リム部21によって壁面57bが押し込まれていくに従い、薄肉部である角部58b,58cに応力が集中することでこれら角部58b,58cが鋭角状に屈曲していき、厚肉部である角部58a,58dが鈍角状に屈曲していくことで、正面から見て略平行四辺形状に変形していく(図2の想像線に示す)。すなわち、壁面部49は、入力荷重に対して過剰に突っ張ることなく、容易に変形する。
【0050】
例えば本実施の形態におけるステアリングホイール10のリム部21の変形量と荷重との関係の一例を図7のグラフに示す。このグラフでは、上下逆配置したステアリングホイール10を鉛直方向に対して例えば60°傾斜させて上方から加えた荷重に対するステアリングホイール10のリム部21の鉛直方向の変形量を示す。このグラフに示すように、本実施の形態に係る実施例では、角部58a〜58dの強度を略等しく設定した比較例と比べて、より小さい荷重でリム部21を変形させることができ、すなわち、リム部21からの反力を抑制できる。
【0051】
このように、上記の第1の実施の形態によれば、リム部21の変形部35,35を結ぶ仮想線VLに対してステアリングホイール本体11の中央側とは反対側である下側に少なくとも一部が位置する四角形以上の多角形状の開口部48の縁部に立ち上げられた多角形筒状の壁面部49の互いに隣接しない角部58の強度を、その他の角部58の強度よりも小さく設定することで、リム部21の変形に従い壁面部49が押し込まれると、強度が小さい角部58に応力が集中する。したがって、カバー体13の開口部48を囲む壁面部49を、ステアリングホイール本体11に加わる荷重により容易に変形させることができる。
【0052】
具体的に、壁面部49の互いに隣接しない角部58(互いに対角に位置する角部58)である角部58b,58cの肉厚を、その他の角部58である角部58a,58dの肉厚よりも小さく設定することで、強度が小さい角部58を容易に形成できる。
【0053】
特に、開口部48の形状が台形状である場合、互いに平行な辺部に対応する壁面部49の壁面57b(または壁面57a)に対して荷重が加わると、斜辺となっている壁面57c,57dがそれぞれ突っ張り、壁面部49が容易に変形しにくくなることで、リム部21に対して当接した乗員に対してステアリングホイール10からの反力が上昇しやすいので、上記の構成は、開口部48の形状が台形状である場合に、より有効となる。
【0054】
そして、カバー体13を円滑に変形させることができるので、例えばリム部21に対して当接した乗員に対してステアリングホイール10からの反力を抑制できる。
【0055】
次に、第2の実施の形態を図8を参照して説明する。なお、上記の第1の実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0056】
この第2の実施の形態は、上記の第1の実施の形態において、ステアリングホイール本体11(芯金25)のリム部21(リム芯金部31)が、カバー体13の壁面部49を押圧する押圧部61を備えるものである。
【0057】
押圧部61は、リム部21(リム芯金部31)の下部から上方に向かって、舌片状に突設されている。この押圧部61は、リム部21(リム芯金部31)の下部、すなわちアナログ時計の6時位置から左右方向の一側、例えば右側に偏って配置されている。この押圧部61は、壁面部49の角部58において、薄肉部側の角部58に近接して配置されている。本実施の形態において、この押圧部61は、角部58dに近接して配置されている。換言すれば、押圧部61は、壁面部49において、この押圧部61の押圧によって鋭角状に変形させる角部58に近接して配置されている。また、この押圧部61は、フィニッシャ14の下端部と連続されて下部のスポーク部23の一部を構成してもよい。さらにこの押圧部61には、カバー体13と係合される係合部62が切り欠き形成されている。この係合部62には、カバー体13から突設された爪状の係合爪部63が係合される。
【0058】
係合爪部63は、例えばカバー体13の下部対向部55から乗員側に向かって突設されている。また、この係合爪部63は、壁面部49に対して下側に配置されている。さらに、この係合爪部63は、カバー体13の左右方向の中心位置に対して一側、例えば右側に偏って配置されている。本実施の形態において、この係合爪部63は、壁面部49の角部58において、薄肉部側の角部58に近接して配置されている。すなわち、この係合爪部63は、角部58dに近接して配置されている。
【0059】
そして、衝突の衝撃により乗員が前方に移動するなどして、ステアリングホイール本体11のリム部21が押圧され、リム部21が、仮想線VLを曲げラインとして乗員とは反対側の前側に屈曲変形することで、カバー体13では、リム部21の下端部に位置する押圧部61がリム部21の変形に伴いカバー体13の壁面部49の壁面57bに当接してこの壁面57bを上方に向かって押し込んでいく。
【0060】
ここで、リム部21の変形部35での変形に従い壁面部49と当接してこの壁面部49を押し込む押圧部61を、壁面部49の角部58のうち、強度が小さい(薄肉状の)角部58(角部58b)に近接して配置することで、角部58のうち、強度が小さい(薄肉状の)角部58(角部58b)側から押圧部61が壁面部49を押し込むので、強度が小さい角部58に対して応力をより集中させやすくなり、壁面部49をより容易に変形させることができる。したがって、リム部21に対して当接した乗員に対してステアリングホイール10からの反力をより抑制できる。
【0061】
なお、上記の第2の実施の形態において、押圧部61は、壁面部49の強度が小さい角部58に近接して配置しているが、強度が大きい角部58に近接して配置しなければ、例えばステアリングホイール本体11の左右方向の中心位置(リム部21(リム芯金部31)のアナログ時計の6時方向の位置)に配置することもできる。
【0062】
また、上記の各実施の形態において、カバー体13に設ける開口部48は、意匠性を向上するために、例えば五角形、六角形など、四角形以上の任意の形状とすることができる。この場合には、壁面部49の角部58において互いに隣接しない角部58どうし、すなわち1つ置き、あるいは2つ置きなどの角部58を薄肉部とすることで、同様の作用効果を奏することができる。
【0063】
さらに、強度が相対的に小さい角部58は、肉厚を相対的に小さくするだけでなく、例えばスリットを設けるなど、任意の構成により強度を低下させることができる。
【0064】
ステアリングホイール10は、自動車用に限らず、他の任意の乗り物の操舵用などとして用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、例えば自動車などの車両のステアリングホイールとして好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0066】
10 ハンドルであるステアリングホイール
11 ハンドル本体であるステアリングホイール本体
13 カバー体
21 リム部
35 変形部
48 開口部
49 壁面部
58 角部
61 押圧部
VL 仮想線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8