(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
熱硬化性生体光組成物であって、該組成物の体積あたりの重量約20%を超える濃度のブロック共重合体、および該ブロック共重合体内に可溶化された少なくとも一つのキサンテン染料を含み、該ブロック共重合体が、ポリエチレングリコール−プロピレングリコール(PEG−PPG)、ポリエチレングリコール−ポリ(乳酸−co−グリコール酸)(PEG−PLGA)またはポリエチレングリコール−ポリ(ε−カプロラクトン)(PEG−PCL)のうちの少なくとも1つの配列を備え、該キサンテン染料が、エオシンY、エリスロシンB、フルオレセイン、ローズベンガルおよびフロキシンBから選択され、該少なくとも一つのキサンテン染料が、該組成物の重量当たり0.001%と3%との間であり、該熱硬化性生体光組成物が、22℃で液体状であり、熱への曝露において熱硬化し、該熱硬化性生体光組成物の光活性化によって、該少なくとも一つのキサンテン染料が、蛍光を放射する、熱硬化性生体光組成物。
【発明を実施するための形態】
【0034】
(1)概要
本開示は、熱硬化性生体光膜およびその使用を提供する。これらの組成物を使用する生体光療法は、熱硬化性組成物の有益な効果と組成物の照射時に生成される蛍光によって誘発される光生体刺激を組み合わせることになる。さらに、特定の実施形態では、本開示の熱硬化性生体光組成物を使用した光線療法は、例えば、コラーゲン合成を促進することにより皮膚を若返らせる、創傷治癒または組織修復を促進する、瘢痕を予防または治療する、にきび、湿疹、乾癬または皮膚炎などの皮膚状態を治療する、または歯周炎を治療する。
【0035】
(2)定義
本開示のさらなる詳細の記述を続ける前に、特定の組成物または過程段階はさまざまに異なりうるという理由から、本開示はこれらに限定されないことが理解されるべきである。本明細書および添付した請求項で使用する時、文脈により明らかにそうでないことが示されていない限り、単数形(「a」、「an」、および「the」)には、複数の対象物が含まれることに注意する必要がある。
【0036】
本明細書で使用される場合、与えられた値または範囲の文脈での「約」という用語は、与えられた値または範囲の20%以内、好ましくは10%以内、さらに好ましくは5%以内の値または範囲を指す。
【0037】
「および/または」は本明細書で使用される場合、もう一方のあるなしに関わらず、二つの特定された特徴または構成要素のそれぞれの特定開示として解釈されるべきことをここで指摘しておく。例えば、「Aおよび/またはB」は、それぞれが本明細書に個別に提示されたかのように、(i)A、(ii)B、(iii)AおよびBのそれぞれの特定開示として解釈されるものとする。
【0038】
「生体光」とは、生体関連の文脈での、光子の生成、操作、検出および適用を意味する。すなわち、生体光組成物は、主に光子の生成および操作のために、その生理的効果を発揮する。
【0039】
「熱硬化性」とは、自発的に(例えば、標的組織との接触時に)またはある形態のエネルギー(例えば、熱エネルギー)への曝露後に、固体または半固体状態(例えば、ゲル)への相転移を受けることができる液体組成物を意味する。熱エネルギーは、暖かい体との接触、または光源によって提供される場合がある。一部の実施形態では、固体または半固体状態への相転移は、周辺温度よりも高い温度にある組織との接触時に起こりうる。「熱硬化性」および「感熱ゲル化」という用語は、本明細書では互換的に使用される。「熱硬化する」および「感熱ゲル化する」という用語も、本明細書では互換的に使用される。
【0040】
「局所適用」または「局所使用」とは、例えば、皮膚、粘膜、膣、口腔、内部の手術創部など、体の表面に適用されることを意味する。
【0041】
「発色団」、および「光活性剤」という用語は、本明細書では互換的に使用される。発色団とは、光照射に接触した時、光を吸収することができる化合物を意味する。発色団は容易に光励起を受け、そのエネルギーをその他の分子に移動するかまたは光(例えば、蛍光)として放射することができる。
【0042】
「光退色(photobleaching)」または「光退色(photobleach)」とは、発色団の光化学的破壊を意味する。発色団は完全にまたは部分的に光退色しうる。
【0043】
「作用光」という用語は、特定の光源(例えば、ランプ、LED、またはレーザー)から放射され、物質(例えば、発色団または光活性剤)によって吸収されることができる光エネルギーを意味することを意図する。好適実施形態では、作用光は可視光である。「作用光」および「光」という用語は本明細書では互換的に使用される。
【0044】
「皮膚の若返り」とは、皮膚の一つ以上の老化の兆候を、減少、縮小、遅延または逆転する、または皮膚の状態を一般的に改善する過程を意味する。例えば、皮膚の若返りには、皮膚の明度の増加、毛穴サイズの減少、小皺またはしわの低減、薄く透けた皮膚の改善、堅さの改善、皮膚のたるみの改善(骨量の減少によってできたものなど)、乾燥肌(痒いことがある)の改善、そばかす、しみ、クモ状静脈の低減または逆転、粗くざらざらした肌の外観、伸ばした時に消える小皺の減少または予防、たるんだ皮膚の低減、またはしみで覆われた肌の改善が含まれる場合がある。本開示によると、本開示の組成物、方法および使用の特定の実施形態によって、上記の状態の一つ以上を改善でき、老化の兆候の一つ以上を、減少、縮小、遅延または逆転さえする場合がある。
【0045】
「創傷」とは、例えば、急性、亜急性、遅延または治癒困難創傷、および慢性創傷を含む、任意の組織の傷害を意味する。創傷の例には、開放創および閉鎖創の両方を含みうる。創傷には、例えば、切断、やけど、切開、切除、病変、裂傷、擦り傷、穿刺または穿通創傷、手術創、切断、挫傷、血腫、圧挫損傷、潰瘍(例えば、圧力、糖尿病性、静脈または動脈など)、瘢痕化、および歯周炎(歯周組織の炎症)によって生じる創傷が含まれる。
【0046】
本主題の特徴および利点は、添付の図で示される選択実施形態の以下の詳細な説明を踏まえてさらに明らかになる。明らかとなるように、開示および請求された主題は、すべて本請求の範囲を逸脱することなく、さまざまな点での変更が可能である。従って、図面および説明は、制限的ではなく例示的性質を持つとして見なされるべきであり、主題の全範囲は請求項に記述される。
【0047】
(3)熱硬化性生体光組成物
本開示は、広い意味で、熱硬化性生体光組成物およびこのような組成物の使用方法を提供する。熱硬化性生体光組成物は、広い意味で、特定の波長の光(例えば、光子)で活性化されうる。本開示のさまざまな実施形態による熱硬化性生体光組成物は、ブロック共重合体を含有し、少なくとも一つの発色団がブロック共重合体中に可溶化されている。熱硬化性生体光組成物中の発色団は光によって活性化され、光エネルギーの分散を加速するが、これは光がそれ自体で治療効果を継続すること、および/または組成物に含まれるその他の作用物質(agent)の光化学的活性化につながる(例えば、組成物にこのような化合物が存在する時または組成物と接触した時の過酸化物(オキシダントまたは酸化剤)の分解過程の加速で、一重項酸素などの酸素ラジカルの形成につながる)。
【0048】
発色団が特定波長の光子を吸収する時、それは励起される。これは不安定な状態であり、分子は基底状態に戻ろうとして過剰のエネルギーを放出する。一部の発色団については、基底状態に戻る時、過剰エネルギーを光として放射することが好ましい。この過程は、蛍光発光と呼ばれる。放射された蛍光のピーク波長は、変換過程でのエネルギー損失のために、吸収波長と比べて長波長に向かって移行する。これはストークスシフトと呼ばれる。適切な環境では(例えば、生体光組成物中では)、このエネルギーの大部分は、生体光組成物のその他の構成要素または直接治療部位に移動される。
【0049】
理論に束縛されるものではないが、光活性化された発色団によって放射される蛍光は、生物細胞および組織によって認識されて好ましいバイオモジュレーションにつながりうる、そのフェムト秒、ピコ秒、またはナノ秒の放射特性のために治療特性を持つと考えられる。さらに、放射された蛍光は、より長い波長を持つため、活性化光よりも深く組織中に浸透する。一部の実施形態では組成物を通過する活性化光を含む、このような広い範囲の波長で組織を照射することは、細胞および組織に対して多様でかつ補完的な効果を持ちうる。つまり、発色団は、組織への治療的効果のために本開示の生体光組成物に使用される。一つの態様では、特定の任意の理論に束縛されるものではないが、放射された蛍光は、細菌膜の不安定化をもたらし、それにより細菌膜の構造的完全性の喪失をもたらすような電子の流れの混乱を突然引き起すことによって、機械的性質の効果を持つ可能性がある。これは、これらの光活性剤の別個の用途で、単純な染料として、または光重合の触媒としての発色団の使用とは異なる。
【0050】
本開示の熱硬化性生体光組成物は、局所使用することができる。一部の実施形態では、熱硬化性生体光組成物は一旦熱硬化すると粘着性である。これらの熱硬化性生体光組成物の粘着性は、治療部位からの除去を簡単にし、従って、治療をより早くかつ扱いやすくしうる。一旦熱硬化すると、これらの熱硬化性生体光組成物の粘着性は、扱いやすい治療も提供しうる。さらに、熱硬化性生体光組成物は、発色団と組織との間の接触を制限することができる。
【0051】
本開示の熱硬化性組成物は、標的皮膚組織と接触した時に熱硬化するように設計されている。一部の実施形態では、熱硬化性生体光組成物は摂氏32度以上で熱硬化する。一部の実施形態では、組成物は摂氏32度で1分以内に熱硬化する。その他の実施形態では、組成物は摂氏32度で、50秒、40秒、30秒、20秒、10秒、5秒、または5秒未満以内に熱硬化する。その他の実施形態では、組成物は標的組織との接触時に自発的に熱硬化する。
【0052】
これらの熱硬化性生体光組成物は、組成物を構成する構成要素に基づいて説明されうる。追加的にまたは代替的に、本開示の組成物は機能的特性および構造的特性を持ち、これらの特性は組成物を定義および記述するためにも使用されうる。発色団、ブロック共重合体、およびその他の任意選択的成分を含む本開示の熱硬化性生体光組成物の個別構成要素を以下に詳述する。
【0053】
(a)発色団
適切な発色団は、蛍光化合物(または染料)(「蛍光色素」または「発蛍光団」としても知られる)でありうる。その他の染料グループまたは染料(生物学的および組織学的染料、食品着色料、カロテノイド、およびその他の染料)も使用しうる。適した光活性剤は、一般に安全と認められる(GRAS)ものでありうる。有利なことに、皮膚またはその他の組織による忍容性が良好でない光活性剤を本開示の熱硬化性生体光組成物に含めることができ、特定の実施形態にあるように、光活性剤は、ブロック共重合体内に溶解されている。
【0054】
特定の実施形態では、本開示の熱硬化性生体光組成物は、光の適用に際して部分的または完全な光退色を受ける第一の発色団を含む。一部の実施形態では、第一の発色団は、約380〜800nm、380〜700nm、400〜800nmまたは380〜600nmの波長など、可視スペクトルの範囲の波長で吸収する。その他の実施形態では、第一の発色団は、約200〜800nm、200〜700nm、200〜600nmまたは200〜500nmの波長で吸収する。一つの実施形態では、第一の発色団は、約200〜600nmの波長で吸収する。一部の実施形態では、第一の発色団は、約200〜300nm、250〜350nm、300〜400nm、350〜450nm、400〜500nm、450〜650nm、600〜700nm、650〜750nmまたは700〜800nmの波長の光を吸収する。
【0055】
当業者には当然のことながら、特定の発色団の光特性は、発色団の周囲の媒体に応じて変化しうる。従って、本明細書で使用される場合、特定の発色団の吸収および/または放射波長(またはスペクトル)は、本開示の熱硬化性生体光組成物で測定される波長(またはスペクトル)に対応する。
【0056】
本明細書に開示された熱硬化性生体光組成物は、少なくとも一つの追加的発色団を含みうる。発色団を組み合わせることは、組み合わされた染料分子による光吸収を増加し、吸収およびフォトバイオモジュレーションの選択性を高めうる。これは、新しい感光性および/または選択的発色団混合物の生成の複数の可能性を作り出す。従って、特定の実施形態では、本開示の生体光組成物は、複数の発色団を含む。このような複数発色団組成物が光で照射される時、エネルギー移動が発色団間で起こる可能性がある。共鳴エネルギー移動として知られるこの過程は、励起された「供与体」発色団(本明細書では第一の発色団とも呼ばれる)がその励起エネルギーを「受容体」発色団(本明細書では第二の発色団とも呼ばれる)に移動させる、よく見られる光物理的過程である。共鳴エネルギー移動の効率および有向性は、供与体および受容体発色団のスペクトル特性に依存する。特に、発色団間のエネルギーの流れは、吸収および発光スペクトルの相対的位置付けおよび形状を反映する、スペクトルの重複に依存する。より具体的には、エネルギー移動が起こるためには、供与体発色団の放射スペクトルが、受容体発色団の吸収スペクトルと重複しなければならない。
【0057】
エネルギー移動は、供与体放射の減少またはクエンチングおよび励起状態の存続時間の減少を通してそれ自体現れ、受容体放射強度の増加も伴う。エネルギー移動の効率を高めるためには、供与体発色団は、光子を吸収し光子を放出する良好な能力を持つべきである。さらに、供与体発色団の放射スペクトルと受容体発色団の吸収スペクトルの間の重複が多いほど、供与体発色団はより良く受容体発色団にエネルギーを移動することができる。
【0058】
特定の実施形態では、本開示の熱硬化性生体光組成物は、第二の発色団をさらに含む。一部の実施形態では、第一の発色団は、第二の発色団の吸収スペクトルと少なくとも約80%、50%、40%、30%、20%、または10%重複する放射スペクトルを持つ。一つの実施形態では、第一の発色団は、第二の発色団の吸収スペクトルと少なくとも約20%重複する発光スペクトルを持つ。一部の実施形態では、第一の発色団は、第二の発色団の吸収スペクトルと少なくとも1〜10%、5〜15%、10〜20%、15〜25%、20〜30%、25〜35%、30〜40%、35〜45%、50〜60%、55〜65%または60〜70%重複する発光スペクトルを持つ。
【0059】
本明細書で使用される場合、スペクトルの重複%は、スペクトル四半値全幅(FWQM)で測定された、供与体発色団の放射波長範囲と受容体発色団の吸収波長範囲との重複%を意味する。一部の実施形態では、第二の発色団は可視スペクトルの範囲の波長で吸収する。特定の実施形態では、第二の発色団は、約50〜250、25〜150または10〜100nmの範囲内の、第一の発色団の吸収波長よりも比較的長い吸収波長を持つ。
【0060】
第一の発色団は、生体光組成物の重量当たり約0.001〜40%の量で存在できる。存在する時、第二の発色団は、生体光組成物の重量当たり約0.001〜40%の量で存在できる。特定の実施形態では、第一の発色団は、生体光組成物の重量あたり、約0.001〜3%、0.001〜0.01%、0.005〜0.1%、0.1〜0.5%、0.5〜2%、1〜5%、2.5〜7.5%、5〜10%、7.5〜12.5%、10〜15%、12.5〜17.5%、15〜20%、17.5〜22.5%、20〜25%、22.5〜27.5%、25〜30%、27.5〜32.5%、30〜35%、32.5〜37.5%、または35〜40%の量で存在する。特定の実施形態では、第二の発色団は、生体光組成物の重量あたり、約0.001〜3%、0.001〜0.01%、0.005〜0.1%、0.1〜0.5%、0.5〜2%、1〜5%、2.5〜7.5%、5〜10%、7.5〜12.5%、10〜15%、12.5〜17.5%、15〜20%、17.5〜22.5%、20〜25%、22.5〜27.5%、25〜30%、27.5〜32.5%、30〜35%、32.5〜37.5%、または35〜40%の量で存在する。特定の実施形態では、発色団または発色団の組み合わせの重量あたりの合計重量は、生体光組成物の重量あたり約0.005%〜1%、0.05〜2%、1〜5%、2.5〜7.5%、5〜10%、7.5〜12.5%、10〜15%、12.5〜17.5%、15〜20%、17.5〜22.5%、20〜25%、22.5〜27.5%、25〜30%、27.5〜32.5%、30〜35%、32.5〜37.5%、または35〜40.001%の量でありうる。
【0061】
使用される発色団の濃度は、熱硬化性生体光組成物からの生体光活性の望ましい強度および持続時間に基づいて、また望ましい医学的または美容的効果に基づいて選択されうる。例えば、キサンテン染料などの一部の染料は、それより後は濃度をさらに増加しても実質的により高い放射蛍光を提供しない「飽和濃度」に達する。飽和濃度を超えて発色団濃度をさらに増加させると、マトリックスを通過する活性化光の量を減少させうる。そのため、特定の用途に対して活性化光よりも多くの蛍光が必要な場合、高い濃度の発色団を使用しうる。しかし、放射される蛍光と活性化光との間にバランスが必要な場合、飽和濃度に近いまたはそれより低い濃度を選択しうる。
【0062】
本開示の熱硬化性生体光組成物に使用されうる、適した発色団としては、以下が挙げられるがこれに限定されない。
【0063】
クロロフィル染料
例示的なクロロフィル染料としては、クロロフィルa、クロロフィルb、クロロフィリン、細菌クロロフィルa、細菌クロロフィルb、細菌クロロフィルc、細菌クロロフィルd、プロトクロロフィル、プロトクロロフィルa、両親媒性クロロフィル誘導体1および両親媒性クロロフィル誘導体2が挙げられるがこれらに限定されない。
【0064】
キサンテン誘導体
例示的なキサンテン染料としては、エオシンB、エオシンB(4’,5’−ジブロモ,2’,7’−ジニトロ−フルオレセイン,ジアニオン)、エオシンY、エオシンY(2’,4’,5’,7’−テトラブロモ−フルオレセイン,ジアニオン)、エオシン(2’,4’,5’,7’−テトラブロモ−フルオレセイン,ジアニオン)、エオシン(2’,4’,5’,7’−テトラブロモ−フルオレセイン,ジアニオン)メチルエステル、エオシン(2’,4’,5’,7’−テトラブロモ−フルオレセイン,モノアニオン)p−イソプロピルベンジルエステル、エオシン誘導体(2’,7’−ジブロモ−フルオレセイン,ジアニオン)、エオシン誘導体(4’,5’−ジブロモ−フルオレセイン,ジアニオン)、エオシン誘導体(2’,7’−ジクロロ−フルオレセイン,ジアニオン)、エオシン誘導体(4’,5’−ジクロロ−フルオレセイン,ジアニオン)、エオシン誘導体(2’,7’−ジヨード−フルオレセイン,ジアニオン)、エオシン誘導体(4’,5’−ジヨード−フルオレセイン,ジアニオン)、エオシン誘導体(トリブロモ−フルオレセイン,ジアニオン)、エオシン誘導体(2’,4’,5’,7’−テトラクロロ−フルオレセイン,ジアニオン)、エオシン、エオシンセチルピリジニウム塩素イオン対、エリスロシンB(2’,4’,5’,7’−テトラヨード−フルオレセイン,ジアニオン)、エリスロシン、エリスロシンジアニオン、エリチオシンB、フルオレセイン、フルオレセインジアニオン、フロキシンB(2’,4’,5’,7’−テトラブロモ−3,4,5,6−テトラクロロ−フルオレセイン,ジアニオン)、フロキシンB(テトラクロロ−テトラブロモ−フルオレセイン)、フロキシンB、ローズベンガル(3,4,5,6−テトラクロロ−2’,4’,5’,7’−テトラヨードフルオレセイン,ジアニオン)、ピロニンG、ピロニンJ、ピロニンY、ローダミンなどのローダミン染料(4,5−ジブロモ−ローダミンメチルエステル、4,5−ジブロモ−ローダミンn−ブチルエステル、ローダミン101メチルエステル、ローダミン123、ローダミン6G、ローダミン6Gヘキシルエステル、テトラブロモ−ローダミン123、およびテトラメチル−ローダミンエチルエステルを含む)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0065】
メチレンブルー染料
模範的メチレンブルー誘導体には、1−メチルメチレンブルー、1,9−ジメチルメチレンブルー、メチレンブルー、メチレンバイオレット、ブロモメチレンバイオレット、4−ヨードメチレンバイオレット、1,9−ジメチル−3−ジメチル−アミノ−7−ジエチル−アミノ−フェノチアジン、および1,9−ジメチル−3−ジメチルアミノ−7−ジブチル−アミノ−フェノチアジンが含まれるがこれに限定されない。
【0066】
アゾ染料
例示的なアゾ(またはジアゾ)染料としては、メチルバイオレット、ニュートラルレッド、パラレッド(ピグメントレッド1)、アマランス(アゾルビンS)、カルモイシン(アゾルビン、フードレッド3、アシッドレッド14)、アルーラレッドAC(FD&C 40)、タートラジン(FD&Cイエロー5)、オレンジG(アシッドオレンジ10)、ポンソー4R(フードレッド7)、メチルレッド(アシッドレッド2)、およびムレキシド−プルプル酸アンモニウムが挙げられるがこれらに限定されない。
【0067】
本開示の一部の態様では、本明細書に開示の熱硬化性生体光組成物の一つ以上の発色団は、アシッドブラック1、アシッドブルー22、アシッドブルー93、アシッドフクシン、アシッドグリーン、アシッドグリーン1、アシッドグリーン5、アシッドマゼンタ、アシッドオレンジ10、アシッドレッド26、アシッドレッド29、アシッドレッド44、アシッドレッド51、アシッドレッド66、アシッドレッド87、アシッドレッド91、アシッドレッド92、アシッドレッド94、アシッドレッド101、アシッドレッド103、アシッドローセイン(Acid roseine)、アシッドルビン、アシッドバイオレット19、アシッドイエロー1、アシッドイエロー9、アシッドイエロー23、アシッドイエロー24、アシッドイエロー36、アシッドイエロー73、アシッドイエローS、アクリジンオレンジ、アクリフラビン、アルシアンブルー、アルシアンイエロー、アルコール可溶性エオシン、アリザリン、アリザリンブルー2RC、アリザリンカルミン、アリザリンシアニンBBS、アリザロールシアニンR、アリザリンレッドS、アリザリンパープリン、アルミノン、アミドブラック10B、アミドシュワルツ、アニリンブルーWS、アントラセンブルーSWR、オーラミンO、アゾカルミンB(Azocannine B)、アゾカルミンG、アゾイックジアゾ5、アゾイックジアゾ48、アズールA、アズールB、アズールC、ベーシックブルー8、ベーシックブルー9、ベーシックブルー12、ベーシックブルー15、ベーシックブルー17、ベーシックブルー20、ベーシックブルー26、ベーシックブラウン1、ベーシックフクシン、ベーシックグリーン4、ベーシックオレンジ14、ベーシックレッド2、ベーシックレッド5、ベーシックレッド9、ベーシックバイオレット2、ベーシックバイオレット3、ベーシックバイオレット4、ベーシックバイオレット10、ベーシックバイオレット14、ベーシックイエロー1、ベーシックイエロー2、ビエブリッヒスカーレット、ビスマルクブラウンY、ブリリアントクリスタルスカーレット6R、カルシウムレッド、カルミン、カルミン酸、セレスチンブルーB、チャイナブルー、コチニール、コエレスチンブルー、クロムバイオレットCG、クロモトロープ2R、クロモキサンシアニンR、コンゴコリント、コンゴレッド、コットンブルー、コットンレッド、クロセインスカーレット、クロシン、クリスタルポンソー6R、クリスタルバイオレット、ダリア、ダイアモンドグリーンB、ダイレクトブルー14、ダイレクトブルー58、ダイレクトレッド、ダイレクトレッド10、ダイレクトレッド28、ダイレクトレッド80、ダイレクトイエロー7、エオシンB、エオシンブルーイッシュ、エオシン、エオシンY、エオシンイエローイッシュ、エオシノール、エリーガーネットB、エリオクロムシアニンR、エリスロシンB、エチルエオシン、エチルグリーン、エチルバイオレット、エバンスブルー、ファーストブルーB、ファーストグリーンFCF、ファーストレッドB、ファーストイエロー、フルオレセイン、フードグリーン3、ガレイン、ガラミンブルー、ガロシアニン、 ゲンチアナバイオレット、ヘマテイン、ヘマチン、ヘマトキシリン、ヘリオファーストルビンBBL、ヘルベチアブルー、ヘマテイン、ヘマチン、ヘマトキシリン、ホフマンバイオレット、インペリアルレッド、インドシアニングリーン、イングレインブルー、イングレインブルー1、イングレインイエロー1、INT、ケルメス、ケルメス酸、ケルンエヒトロート、Lac、ラッカイン酸、ラウトバイオレット、ライトグリーン、リサミングリーンSF、ルクソールファーストブルー、マゼンタ0、マゼンタI、マゼンタII、マゼンタIII、マラカイトグリーン、マンチェスターブラウン、マルチウスイエロー、メルブロミン、マーキュロクロム、メタニルイエロー、メチレンアズールA、メチレンアズールB、メチレンアズールC、メチレンブルー、メチルブルー、メチルグリーン、メチルバイオレット、メチルバイオレット2B、メチルバイオレット10B、モルダントブルー3、モルダントブルー10、モルダントブルー14、モルダントブルー23、モルダントブルー32、モルダントブルー45、モルダントレッド3、モルダントレッド11、モルダントバイオレット25、モルダントバイオレット39、ナフトールブルーブラック、ナフトールグリーンB、ナフトールイエローS、ナチュラルブラック1、ナチュラルグリーン3(クロロフィリン)、ナチュラルレッド、ナチュラルレッド3、ナチュラルレッド4、ナチュラルレッド8、ナチュラルレッド16、ナチュラルレッド25、ナチュラルレッド28、ナチュラルイエロー6、NBT、ニュートラルレッド、ニューフクシン、ナイアガラブルー3B、ナイトブルー、ニトロBT、ニトロブルーテトラゾリウム、ニュークリアファーストレッド、オレンジG、オルセイン、パラロサニリン、フロキシンB、ピクリン酸、ポンソー2R、ポンソー6R、ポンソーB、ポンソー・デ・キシリジン、ポンソーS、プリムラ、プルプリン、ピロニンB、フィコビリン、フィコシアニン、フィコエリスリン、フィコエリスリンシアニン(PEC)、フタロシアニン、ピロニンG、ピロニンY、キニン、ローダミンB、ロザニリン、ローズベンガル、サフロン、サフラニンO、スカーレットR、スカーレットレッド、シャルラッハR、シェラック、シリウスレッドF3B、ソロクロムシアニンR、ソルブルブルー、スピリットソルブルエオシン、サルファーイエローS、スイスブルー、タートラジン、チオフラビンS、チオフラビンT、チオニン、トルイジンブルー、トルイジンレッド、トロペオリンG、トリパフラビン、トリパンブルー、ウラニン、ビクトリアブルー4R、ビクトリアブルーB、ビクトリアグリーンB、ビタミンB、ウォーターブルーI、ウォーターソルブルエオシン、キシリジンポンソー、またはイエローイッシュエオシンのいずれかから独立して選択されうる。
【0068】
特定の実施形態では、適用部位で生体光の相乗作用を提供するために、本開示の熱硬化性生体光組成物には、上記の発色団のいずれか、またはその組み合わせが含まれる。
【0069】
特定の理論に束縛されるものではないが、発色団の組み合わせの相乗効果とは、生体光効果がその個別の効果の合計よりも大きいことを意味する。有利なことに、これは、熱硬化性生体光組成物の反応性の増加、より速いまたは改善された治療時間につながりうる。また、光への暴露時間、使用される光源の出力、および使用される光の波長などの治療条件を、同じまたはより良い治療結果を達成するために変更する必要はない。つまり、発色団の相乗的組み合わせの使用は、光源へのより長い暴露時間、より高い出力の光源、または異なる波長の光源を必要とすることなく、同じまたはより良い治療を可能にしうる。
【0070】
一部の実施形態では、組成物は、第一の発色団としてエオシンY、および第二の発色団として、ローズベンガル、フルオレセイン、エリスロシン、フロキシンB、クロロフィリンのいずれか一つ以上を含む。これらの組み合わせは、一部にはこれらの吸収と放射スペクトルとの重複または近接のために、活性化された時、互いにエネルギーを移動させることができるので、相乗効果を持つと考えられる。この移動されたエネルギーは、次に蛍光として放射されるか、または活性酸素種の生成につながる。この吸収されて再放射された光は、組成物全体に伝達され、治療部位中へも伝達されると考えられる。
【0071】
さらなる実施形態では、組成物は以下の相乗効果のある組み合わせを含む:エオシンYとフルオレセイン、フルオレセインとローズベンガル、エリスロシンとエオシンY、ローズベンガルまたはフルオレセインとの組み合わせ、フロキシンBとエオシンY、ローズベンガル、フルオレセイン、エリスロシンの一つ以上との組み合わせ。その他の相乗効果のある発色団の組み合わせも可能である。
【0072】
熱硬化性生体光組成物中の発色団の組み合わせの相乗効果によって、活性化光(LEDからの青い光など)によって通常は活性化され得ない発色団が、活性化光によって活性化される発色団からのエネルギー移動を通して活性化されうる。このようにして、必要な美容的または医学的療法に従って、光活性化された発色団の異なる特性を利用し適合させることができる。
【0073】
例えば、ローズベンガルは、分子酸素の存在下で活性化された時、高収率の一重項酸素を生成できるが、放射された蛍光に関しては低い量子収率を持つ。ローズベンガルは、540nmのあたりにピーク吸収を持つので、緑色の光によって活性化されうる。エオシンYは高い量子収率を持ち、青い光によって活性化されうる。ローズベンガルとエオシンYを組み合わせることによって、治療的蛍光を放射し、青い光で活性化された時に一重項酸素を生成できる組成物が得られる。この場合、青い光はエオシンYを光活性化し、エオシンYはそのエネルギーの一部をローズベンガルに移動するだけでなく、一部のエネルギーを蛍光として放射する。
【0074】
一部の実施形態では、1または複数の発色団は、光活性化時のその放射蛍光が電磁スペクトルの緑、黄、オレンジ、赤および赤外部分の一つ以上の中にあり、例えば約490nm〜約800nmの範囲内のピーク波長を持つように選択される。特定の実施形態では、放射蛍光は、0.005〜約10mW/cm
2、約0.5〜約5mW/cm
2の間の出力密度を持つ。
【0075】
(b)ブロック共重合体
本開示の熱硬化性生体光組成物はブロック共重合体を含む。ブロック共重合体は合計組成物の体積当たりの重量20%を超える量で存在する。一部の実施形態では、ブロック共重合体は少なくとも21%、22%、23%、24%または25%の量で存在する。一部の実施形態では、ブロック共重合体は21%、22%、23%、24%または25%の量で存在する。
【0076】
「ブロック共重合体」という用語は本明細書で使用される場合、異なるホモポリマーの2つ以上のブロック(またはセグメント)から成る共重合体を指す。ホモポリマーという用語は単一モノマーから成るポリマーを指す。A−B構造を持つシンプルなジブロックポリマーおよびA−B−A、B−A−BまたはA−B−C構造を持つトリブロックポリマーを含むブロック共重合体の多くの変形が可能であり、にさらに複雑なブロック共重合体が知られている。さらに、本明細書で別途指示がない限り、ブロック共重合体を構成するモノマーまたは反復ユニットの反復数およびタイプは特に限定されない。例えば、単量体反復単位を「a」および「b」として示す時、本明細書では、この共重合体が (a)
m(b)
nの平均組成を持つランダム共重合体のみでなく、組成(a)
m(b)
nのジブロック共重合体、および組成(a)
l(b)
m(a)
nのトリブロック共重合体なども含むことを意味する。上記の式では、l、m、およびnは反復ユニットの数を示し、これらは正の数である。
【0077】
前述または以下のいずれかの特定の実施形態では、ブロック共重合体は生体適合性である。ポリマーはそのポリマー中では「生体適合性」であり、その分解生成物は細胞または生物に対して実質的に無毒(非発がん性および非免疫原性を含む)であり、生物(患者)などの生物系で実質的な毒性効果なしに排除またはその他の方法で分解される。
【0078】
特定の実施形態では、ブロック共重合体は、ポロキサマーと呼ばれるトリブロック共重合体のグループからのものである。ポロキサマーはA−B−Aブロック共重合体であり、Aセグメントは親水性ポリエチレングリコール(PEG)ホモポリマーであり、Bセグメントは疎水性ポリプロピレングリコール(PPG)ホモポリマーである。PEGはその分子量に応じて、ポリエチレンオキシド(PEO)またはポリオキシエチレン(POE)としても知られる。さらに、PPGはその分子量に応じて、ポリプロピレンオキシド(PPO)としても知られる。ポロキサマーはBASF Corporationから市販されている。ポロキサマーは逆熱ゼラチン組成物(reverse thermal gelatin composition)、すなわちその粘度がある点までは温度と共に増加し、そこからは粘度が再び減少するという特徴を持つ組成物を生成する。ブロックの相対的サイズに応じて、共重合体は固体、液体またはペーストでありうる。本開示の特定の実施形態では、ポロキサマーはプルロニック(登録商標)F127(ポロキサマー407としても知られる)である。一部の実施形態では本開示の熱硬化性生体光組成物は、プルロニック(登録商標)F127を組成物の体積当たりの重量20%を超える量で含む。その他の実施形態では、プルロニックは少なくとも21%、22%、23%、24%、または25%の量で存在する。その他のポロキサマーも使用できる。
【0079】
PEGブロックはポリマーの親水性に寄与するので、ポリマー中のPEGブロックの長さまたはPEGの合計量を増やすと、ポリマーをより親水性にする傾向がある。ポリマーのその他の構成要素の量および割合、望ましい全体的親水性、およびポリマーの処方に含められうる任意の薬物または治療薬の性質および化学的官能基に応じて、当業者であれば、望ましい物理的および化学的特徴を持つポリマーを得るために、使用されるPEGブロックの長さ(または分子量)および/またはポリマーに組み込まれるPEGの合計量を容易に調節することができる。
【0080】
ポリマー中のPEGの合計量は、約80重量%以下、75重量%以下、70重量%以下、65重量%以下、約60重量%以下、約55重量%以下、または約50重量%以下でありうる。特定の実施形態では、PEGの合計量は約55重量%、56重量%、57重量%、58重量%、59重量%、60重量%、61重量%、62重量%、63重量%、64重量%、65重量%、66重量%、67重量%、68重量%、69重量%、または約70重量%である。別途指定されない限り、ポリマーの特定構成要素の重量パーセントは、ポリマーの合計重量がその構成要素のモノマーの指定パーセントで構成されることを意味する。例えば、65重量%PEGは、ポリマーの重量の65%がPEGモノマーで構成されることを意味し、モノマーはさまざまな長さのブロックに連結され、ランダム分布を含め、ブロックはポリマーの長さに沿って分布する。
【0081】
界面活性剤の存在は発色団の蛍光を強化することができる。しかし、電気的に反発しない組み合わせ(non-electrically repelling combinations)に基づいて、界面活性剤と発色団の補完的な組み合わせを試験し選択することができる。例えば、負に荷電した発色団をイオン性または非イオン性界面活性剤とともに使用することができ、逆もまた可能である。
【0082】
ブロック共重合体は、ゼラチンおよび/またはヒドロキシエチルセルロース(HEC)およびカルボキシメチルセルロース(CMD)などの修飾セルロース、および/またはキサンタンガム、グアーガムなどのポリサッカライド、および/またはデンプンおよび/またはその他任意の増粘剤などの、増粘剤または安定剤と混合することもできる。本開示の特定の実施形態では、安定剤または増粘剤はゼラチンを含みうる。例えば、界面活性剤相は、約0〜5重量%、約5〜25重量%、約0〜15重量%、または約10〜20重量%のゼラチンを含むことができる。
【0083】
増粘剤および/または安定剤は、それらが生体光膜の光透過性に対して有する効果、またはブロック共重合体への安定化効果に応じて選択されうる。熱硬化性生体光組成物は、少なくとも一つの発色団を活性化するために十分な光を伝達することができなければならない。
【0084】
(c)オキシダント/抗菌剤
特定の実施形態によると、本開示の熱硬化性生体光組成物は、酸素を豊富に含む化合物などの一つ以上の追加的構成要素を、酸素ラジカル源(「オキシダント」)として任意選択的に含みうる。過酸化物化合物は過酸化基(R−O−O−R)を含むオキシダントであり、過酸化基は2つの酸素原子を含み、そのそれぞれが他方およびラジカルまたは一部の元素に結合されている鎖状の構造である。本開示の熱硬化性生体光組成物に光が照射されると、発色団がより高いエネルギー状態に励起される。発色団の電子がより低いエネルギー状態に戻る時、より低いエネルギーレベルの光子を放射し、そのためより長い波長の光の放射を生じる(ストークスシフト)。適正な環境では、このエネルギーの一部が、存在する場合は過酸化物または酸素などのオキシダントに移動されて、一重項酸素などの酸素ラジカルの形成を生じ得る。生体光組成物の活性化によって生成される一重項酸素およびその他の活性酸素種は、ホルミシス形式で働くと考えられる。これは、標的組織の細胞のストレス反応経路を刺激・調節することにより、通常は有毒な刺激(例えば、活性酸素)への低い暴露によってもたらされる健康利益効果である。外因性に生成されたフリーラジカル(活性酸素種)に対する内因性反応は、外因性フリーラジカルに対する防御力の増加で調節され、治癒および再生過程の加速を誘発する。さらに、これは抗菌効果も生成しうる。フリーラジカルへの暴露に対する細菌の極端な感受性は、本開示の熱硬化性生体光組成物を殺菌組成物にする可能性がある。
【0085】
抗菌剤は、微生物を死滅させるか、その成長または蓄積を阻害し、本開示の熱硬化性生体光組成物中に任意選択的に含まれる。本開示の方法および組成物での使用に適切な抗菌剤には、過酸化水素、尿素過酸化水素、過酸化ベンゾイル、フェノールならびに塩素化フェノールおよび塩素化フェノール化合物、レゾルシノールおよびその誘導体、ビスフェノール化合物、安息香酸エステル(パラベン)、ハロゲン化カルボニリド(halogenated carbonilide)、高分子抗菌剤、チアゾリン、トリクロロメチルチオイミド、天然抗菌剤(「天然精油」とも呼ばれる)、金属塩、ならびに広域スペクトル抗生物質が含まれるがこれに限定されない。
【0086】
過酸化水素(H
2O
2)は強力な酸化剤で、水と酸素に分解して、いかなる持続的な有毒残渣化合物も形成しない。過酸化水素が生体光組成物で使用されうる濃度の適切範囲は、約0.1%〜約3%、約0.1〜1.5%、約0.1%〜約1%、約1%、約1%未満である。
【0087】
過酸化尿素(過酸化カルバミドまたはペルカルバミドとしても知られる)は、水溶性であり、約35%の過酸化水素を含む。過酸化尿素が本開示の生体光組成物で使用されうる濃度の適切範囲は、約0.25%未満、または約0.3%未満、0.001〜0.25%、または約0.3%〜約5%である。過酸化尿素は、熱または光化学反応で加速されうる緩徐放出形式で、尿素と過酸化水素とに分解する。
【0088】
過酸化ベンゾイルは、過酸化基で結合された2つのベンゾイル基(カルボン酸のHを除去した安息香酸)から成る。これは、にきびの治療では、2.5%〜10%に変化する濃度で存在する。放出された過酸化基は、細菌を死滅させるのに効果的である。過酸化ベンゾイルは、皮膚の代謝回転および毛穴の清浄も促進し、これは細菌数の低減およびにきびの減少にさらに寄与する。過酸化ベンゾイルは、皮膚に接触すると安息香酸と酸素に分解するが、どちらも毒性はない。過酸化ベンゾイルが本熱硬化性生体光組成物で使用されうる濃度の適切な範囲は、約2.5%〜約5%である。
【0089】
本開示で使用しうる特定のフェノールおよび塩素化フェノール抗菌剤には、フェノール、2−メチルフェノール、3−メチルフェノール、4−メチルフェノール、4−エチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、3,4−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、4−n−プロピルフェノール、4−n−ブチルフェノール、4−n−アミルフェノール、4−tert−アミルフェノール、4−n−ヘキシルフェノール、4−n−ヘプチルフェノール、モノ−およびポリ−アルキルおよび芳香族ハロフェノール、p−クロロフェニル、メチルp−クロロフェノール、エチルp−クロロフェノール、n−プロピルp−クロロフェノール、n−ブチルp−クロロフェノール、n−アミルp−クロロフェノール、sec−アミルp−クロロフェノール、n−ヘキシルp−クロロフェノール、シクロヘキシルp−クロロフェノール、n−ヘプチルp−クロロフェノール、n−オクチル、p−クロロフェノール、o−クロロフェノール、メチルo−クロロフェノール、エチルo−クロロフェノール、n−プロピルo−クロロフェノール、n−ブチルo−クロロフェノール、n−アミルo−クロロフェノール、tert−アミルo−クロロフェノール、n−ヘキシルo−クロロフェノール、n−ヘプチルo−クロロフェノール、o−ベンジルp−クロロフェノール、o−ベンジル−m−メチルp−クロロフェノール、o−ベンジル−m,m−ジメチルp−クロロフェノール、o−フェニルエチルp−クロロフェノール、o−フェニルエチル−m−メチルp−クロロフェノール、3−メチルp−クロロフェノール、3,5−ジメチルp−クロロフェノール、6−エチル−3−メチルp−クロロフェノール、6−n−プロピル−3−メチルp−クロロフェノール、6−イソ−プロピル−3−メチルp−クロロフェノール、 2−エチル−3,5−ジメチルp−クロロフェノール、6−sec−ブチル−3−メチルp−クロロフェノール、2−イソ−プロピル−3,5−ジメチルp−クロロフェノール、6−ジエチルメチル−3−メチルp−クロロフェノール、6−iso−プロピル−2−エチル−3−メチルp−クロロフェノール、2−sec−アミル−3,5−ジメチルp−クロロフェノール、2−ジエチルメチル−3,5−ジメチルp−クロロフェノール、6−sec−オクチル−3−メチルp−クロロフェノール、p−クロロ−m−クレゾールp−ブロモフェノール、メチルp−ブロモフェノール、エチルp−ブロモフェノール、n−プロピルp−ブロモフェノール、n−ブチルp−ブロモフェノール、n−アミルp−ブロモフェノール、sec−アミルp−ブロモフェノール、n−ヘキシルp−ブロモフェノール、シクロヘキシルp−ブロモフェノール、o−ブロモフェノール、tert−アミルo−ブロモフェノール、n−ヘキシルo−ブロモフェノール、n−プロピル−m,m−ジメチルo−ブロモフェノール、2−フェニルフェノール、4−クロロ−2−メチルフェノール、4−クロロ−3−メチルフェノール、4−クロロ−3,5−ジメチルフェノール、2,4−ジクロロ−3,5−ジメチルフェノール、3,4,5,6−テトラブロモ−2−メチルフェノール、5−メチル−2−ペンチルフェノール、4−イソプロピル−3−メチルフェノール、パラ−クロロ−メタキシレノール(para-chloro-metaxylenol)(PCMX)、クロロチモール、フェノキシエタノール、フェノキシイソプロパノール、および5−クロロ−2−ヒドロキシジフェニルメタンが含まれるがこれに限定されない。
【0090】
レゾルシノールおよびその誘導体も、抗菌剤として使用できる。特定のレゾルシノール誘導体には、メチルレゾルシノール、エチルレゾルシノール、n−プロピルレゾルシノール、n−ブチルレゾルシノール、n−アミルレゾルシノール、n−ヘキシルレゾルシノール、n−ヘプチルレゾルシノール、n−オクチルレゾルシノール、n−ノニルレゾルシノール、フェニルレゾルシノール、ベンジルレゾルシノール、フェニルエチルレゾルシノール、フェニルプロピルレゾルシノール、p−クロロベンジルレゾルシノール、5−クロロ−2,4−ジヒドロキシジフェニルメタン、4’−クロロ−2,4−ジヒドロキシジフェニルメタン、5−ブロモ−2,4−ジヒドロキシジフェニルメタン、および4’−ブロモ−2,4−ジヒドロキシジフェニルメタンを含むがこれに限定されない。
【0091】
本開示に使用しうる特定のビスフェノール抗菌剤には以下が含まれるがこれに限定されない:2,2’−メチレン ビス−(4−クロロフェノール)、2,4,4’トリクロロ−2’−ヒドロキシ−ジフェニルエーテル(Ciba Geigy(ニュージャージー州、フローハムパーク)からTriclosan(登録商標)という商標で販売されている)、2,2’−メチレン ビス−(3,4,6−トリクロロフェノール)、2,2’−メチレン ビス−(4−クロロ−6−ブロモフェノール)、ビス−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)スルフィド、およびビス−(2−ヒドロキシ−5−クロロベンジル)スルフィド。
【0092】
本開示で使用しうる特定の安息香酸エステル(benzoie ester)(パラベン)には、メチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、エチルパラベン、イソプロピルパラベン、イソブチルパラベン、ベンジルパラベン、メチルパラベンナトリウム、およびプロピルパラベンナトリウムが含まれるがこれに限定されない。
【0093】
本開示で使用しうる特定のハロゲン化カルバニリドには、3,4,4’−トリクロロカルバニリド(Ciba−Geigy(ニュージャージー州フローラムパーク)からTriclocarban(登録商標)という商標で販売されている3−(4−クロロフェニル)−1−(3,4−ジクロロフェニル(3,4-dichlorphenyl))尿素など)、3−トリフルオロメチル−4,4’−ジクロロカルバニリド、および3,3’,4−トリクロロカルバニリドが含まれるがこれに限定されない。
本開示で使用しうる特定の高分子抗菌剤には、ポリヘキサメチレンビグアナイド塩酸塩、およびポリ(イミノイミドカルボニル イミノイミドカルボニル イミノヘキサメチレン塩酸塩)(Vantocil(登録商標) IBという商標で販売されている)を含むがこれに限定されない。
【0094】
本開示で使用しうる特定のチアゾリンには、Micro−Check(登録商標)という商標で販売されているもの、および2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(Vinyzene(登録商標) IT−3000 DIDPという商標で販売されている)を含むがこれに限定されない。
【0095】
本開示で使用しうる特定のトリクロロメチルチオイミドには、N−(トリクロロメチルチオ)フタルイミド(Fungitrol(登録商標)という商標で販売されている)、およびN−トリクロロメチルチオ−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシイミド(Vancide(登録商標)という商標で販売されている)を含むがこれに限定されない。
【0096】
本開示で使用しうる特定の天然抗菌剤には、アニス、レモン、オレンジ、ローズマリー、ウインターグリーン、タイム、ラベンダー、クローブ、ホップ、ティーツリー、シトロネラ、小麦、大麦、レモングラス、ニオイヒバ、シダーウッド、シナモン、フリーグラス(fleagrass)、ゼラニウム、ビャクダン、スミレ、クランベリー、ユーカリ、クマツヅラ、ペパーミント、安息香、バジル、フェンネル、モミ、バルサム、メントール、オクメア・オリガナム(ocmea origanuin)、ヒダスティス(hydastis)、カラデンシス(carradensis)、ベルベリダシアエ・ダセアエ(Berberidaceac daceae)、ラタフィアエ・ロンガ(Ratanhiae longa)、およびウコンの油を含むがこれに限定されない。また、このクラスの天然抗菌剤には、抗菌性の利益を提供することがわかっている植物油の重要な化学成分も含まれる。これらの化学物質には、アネトール、カテコール、カンフェン、チモール、オイゲノール、ユーカリプトール、フェルラ酸、ファルネソール、ヒノキチオール、トロポロン、リモネン、メントール、サリチル酸メチル、カルバコール、テルピネオール、ベルベノン、ベルベリン、ラタニア抽出物、カリオフェレン・オキシド(caryophellene oxide)、シトロネル酸、クルクミン、ネロリドール、およびゲラニオールが含まれるがこれに限定されない。
【0097】
本開示で使用しうる特定の金属塩には、周期表の3a〜5a、3b〜7bおよび8のグループの金属塩が含まれるがこれに限定されない。金属塩の特定の例には、アルミニウム、ジルコニウム、亜鉛、銀、金、銅、ランタン、スズ、水銀、ビスマス、セレニウム、ストロンチウム、スカンジウム、イットリウム、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム(promethum)、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、タリウム、イッテルビウム、ルテチウムの塩、およびその混合物が含まれるがこれに限定されない。金属イオンベースの抗菌剤の例は、HealthShield(登録商標)という商標で販売されている、HealthShield Technology社(マサチューセッツ州ウェイクフィールド)製のものである。
【0098】
本開示で使用されうる特定の広域スペクトル抗菌剤には、本明細書の抗菌剤のその他のカテゴリーで記載されたものを含むがこれに限定されない。
【0099】
本開示の方法で使用しうる追加的抗菌剤には、ピリチオン(特にピリチオン含有亜鉛複合体で、Octopirox(登録商標)という商標で販売されているものなど)、ジメチルジメチルオール ヒダントイン(dimethyidimethylol hydantoin)(Glydant(登録商標)という商標で販売)、メチルクロロイソチアゾリノン/メチルイソチアゾリノン(Kathon CG(登録商標)という商標で販売)、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、イミダゾリジニル尿素(Germall 115(登録商標)という商標で販売)、ジアゾリジニル尿素(Germall 11(登録商標)という商標で販売)、ベンジルアルコールv2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール(Bronopol(登録商標)という商標で販売)、ホルマリンまたはホルムアルデヒド、ヨードプロペニル ブチルカルバメート(Polyphase P100(登録商標)という商標で販売)、クロロアセトアミド、メタンアミン、メチルジブロモニトリル グルタロニトリル(1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン)(Tektamer(登録商標)という商標で販売)、グルタルアルデヒド、5−ブロモ−5−ニトロ−1,3−ジオキサン(Bronidox(登録商標)という商標で販売)、フェネチルアルコール、o−フェニルフェノール/o−フェニルフェノールナトリウムヒドロキシメチルグリシン酸ナトリウム(o-phenylphenol/sodium o-phenylphenol sodium hydroxymethylglycinate)(Suttocide A(登録商標)という商標で販売)、ポリメトキシ二環式オキサゾリジン(Nuosept C(登録商標)という商標で販売)、ジメトキサン、チメロサール(thimersal)、ジクロロベンジルアルコール、カプタン、クロルフェネネシン、ジクロロフェン、クロロブタノール、ラウリン酸グリセリル、ハロゲン化ジフェニルエーテル、2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシ−ジフェニルエーテル(Ciba−Geigy(ニュージャージー州フローラムパーク)からTriclosan(登録商標)という商標で販売)、および2,2’−ジヒドロキシ−5,5’−ジブロモ−ジフェニルエーテルが含まれるがこれに限定されない。
【0100】
(4)熱硬化性生体光組成物の光学特性
特定の実施形態では、本開示の生体光組成物は、実質的に透明または透光性である。生体光組成物の透過率%は、例えば、Perkin−Elmer Lambda 9500シリーズUV−可視分光光度計を使用して、250nm〜800nmの波長範囲で測定できる。一部の実施形態では、可視領域内の透過率が測定されて平均化される。一部のその他の実施形態では、熱硬化性生体光組成物の透過率は発色団を除外して測定される。透過率は厚さに依存するため、分光光度計に装填する前に各サンプルの厚さをカリパスで測定できる。透過率値は、以下によって正規化できる。
【数1】
ここで、t
1=実際の検体の厚さ、t
2=透過率測定値を正規化しうる厚さ。当技術分野では、透過率測定値は通常、1cmに正規化される。
【0101】
一部の実施形態では、生体光組成物は、可視領域内で、約20%、30%、40%、50%、60%、70%、または75%を超える透過率を持つ。一部の実施形態では、透過率は可視領域内で、40%、41%、42%、43%、44%、または45%を超える。一部の実施形態では、組成物は約40〜100%、45〜100%、50〜100%、55〜100%、60〜100%、65〜100%、70〜100%、75〜100%、80〜100%、85〜100%、90〜100%、または95〜100%の光透過率を持つ。
【0102】
(5)使用方法
本開示の熱硬化性生体光組成物は、美容的および/または医学的利益を持ちうる。それらは、皮膚の若返りおよび皮膚のコンディショニングを促進するため、にきび、湿疹、皮膚炎または乾癬などの皮膚疾患の治療を促進するため、組織修復を促進するため、歯周ポケットを含む創傷治癒を促進するため、瘢痕化を予防または治療するため、細菌感染症、真菌感染症またはウイルス感染症を予防または治療するために使用できる。それらは急性炎症を治療するために使用できる。急性炎症は、それ自体、痛み、熱、発赤、腫れおよび機能の喪失として現れうる。これには、例えば、虫刺され(蚊、ハチ、スズメバチ)、ウルシなどのアレルギー反応、または切除を伴う治療後に見られるものが含まれる。
【0103】
従って、特定の実施形態では、本開示は急性炎症を治療する方法を提供する。
【0104】
特定の実施形態では、本開示は、皮膚の若返りを提供するため、または、皮膚状態を改善するため、皮膚疾患を治療するため、瘢痕化を防止または治療するため、および/または創傷治癒および/または組織修復を加速するための方法を提供し、方法は、本開示の熱硬化性生体光組成物を、治療を必要とする皮膚または組織のエリアに適用することと、生体光組成物中に存在する発色団(複数可)の吸収スペクトルと重複する波長を持つ光を生体光組成物に照射することとを含む。
【0105】
本開示の方法では、任意の作用光の供給源を使用できる。任意のタイプのハロゲン、LEDまたはプラズマアークランプまたはレーザーが適切でありうる。作用光に適した光の供給源の主要特性は、それらが組成物中に存在する一つ以上の光活性因子を活性化するために適切な波長(または複数の波長)の光を照射することである。一つの実施形態では、アルゴンレーザーが使用される。別の実施形態では、チタンリン酸カリウム(KTP)レーザー(例えば、GreenLight(商標)レーザー)が使用される。また別の実施形態では、光硬化デバイスなどのLEDランプが作用光の供給源である。また別の実施形態では、作用光の供給源は、約200〜800nmの波長を持つ光の供給源である。別の実施形態では、作用光の供給源は、約400〜600nmの波長を持つ可視光の供給源である。別の実施形態では、作用光の供給源は、約400〜800nmの波長を持つ可視光の供給源である。別の実施形態では、作用光の供給源は、約400〜700nmの波長を持つ可視光の供給源である。また別の実施形態では、作用光の供給源は青い光である。また別の実施形態では、作用光の供給源は赤い光である。また別の実施形態では、作用光の供給源は緑色の光である。さらに、作用光の供給源は、適切な出力密度を持つべきである。非平行光源(LED、ハロゲン、またはプラズマランプ)の適切な出力密度は、約0.1mW/cm
2〜約200mW/cm
2の範囲である。レーザー光源の適切な出力密度は、約0.5mW/cm
2〜約0.8mW/cm
2の範囲である。
【0106】
本開示の方法の一部の実施形態では、被験者の皮膚表面で光は、約0.1mW/cm
2〜約500mW/cm
2、または0.1〜300mW/cm
2、または0.1〜200mW/cm
2のエネルギーを持ち、与えられるエネルギーは、治療されている状態、光の波長、皮膚から光源までの距離、および標的皮膚または創傷に適用された生体光組成物の厚さに少なくとも依存する。特定の実施形態では、被験者の皮膚で光は、約1〜40mW/cm
2、または20〜60mW/cm
2、または40〜80mW/cm
2、または60〜100mW/cm
2、または80〜120mW/cm
2、または100〜140mW/cm
2、または30〜180mW/cm
2、または120〜160mW/cm
2、または140〜180mW/cm
2、または160〜200mW/cm
2、または110〜240mW/cm
2、または110〜150mW/cm
2、または190〜240mW/cm
2である。
【0107】
生体光組成物内の発色団(複数可)の活性化は、照射時ほぼ即時(フェムトまたはピコ秒)に起こりうる。本開示の生体光組成物の吸収された、反射されたおよび再放射された光の相乗効果、および治療されている組織とのその相互作用を利用するために、長い暴露期間は有益でありうる。一つの実施形態では、組織もしくは皮膚または生体光組成物の作用光への暴露時間は、0.01分〜90分の間である。別の実施形態では、組織もしくは皮膚または生体光組成物の作用光への暴露時間は、1分〜5分の間である。一部のその他の実施形態では、生体光組成物は、1分〜3分の間照射される。特定の実施形態では、光は、1〜30秒、15〜45秒、30〜60秒、0.75〜1.5分、1〜2分、1.5〜2.5分、2〜3分、2.5〜3.5分、3〜4分、3.5〜4.5分、4〜5分、5〜10分、10〜15分、15〜20分、または20〜30分の間適用される。治療時間は、最大約90分、約80分、約70分、約60分、約50分、約40分または約30分の範囲でありうる。当然のことながら、用量を維持するために、治療領域に送達されるフルエンス率を調節することによって治療時間を調節できる。例えば、送達されるフルエンスは、約4〜約60 J/cm
2、約10〜約60 J/cm
2、約4 〜約90 J/cm
2、約10〜約90 J/cm
2、約10〜約50 J/cm
2、約10〜約40 J/cm
2、約10〜約30 J/cm
2、約20〜約40 J/cm
2、約15 J/cm
2〜25 J/cm
2、または約10〜約20 J/cm
2でありうる。
【0108】
一部の実施形態では、熱硬化性生体光組成物は、特定の間隔で再照射されうる。また別の実施形態では、作用光の供給源は、適切な暴露時間の間、治療エリアの上方で連続的な動きをしている。また別の実施形態では、熱硬化性生体光組成物は、発色団が少なくとも部分的に光退色するかまたは完全に光退色するまで、照射されうる。
【0109】
特定の実施形態では、発色団(複数可)は、太陽および頭上からの照明からのものを含む周辺光によって光励起できる。特定の実施形態では、発色団(複数可)は、電磁スペクトルの可視領域の光によって光活性化できる。光は、太陽光、電球、LEDデバイス、テレビ、コンピュータ、電話、携帯デバイス上などの電子表示スクリーン、携帯デバイス上のフラッシュライトなど、任意の光源によって放射できる。本開示の方法では、任意の光源を使用できる。例えば、周辺光と直接太陽光または直接人工光との組み合わせを使用しうる。周辺光には、LED電球、蛍光電球などの頭上からの照明、および間接太陽光を含みうる。
【0110】
本開示の方法では、熱硬化性生体光組成物は、光の適用後に皮膚から取り除かれうる。その他の実施形態では、熱硬化性生体光組成物は、組織上に長時間配置されたままとなり、状態を治療するのに適切な時点で、直接または周辺光で再活性化される。
【0111】
本開示の方法の特定の実施形態では、熱硬化性生体光組成物は、顔などの組織に、1週間に1回、2回、3回、4回、5回または6回、毎日、またはその他の任意の頻度で塗布されうる。合計治療時間は、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、または適切と考えられるその他の任意の長さでありうる。特定の実施形態では、治療される合計組織エリアは、別々のエリア(頬、額)に分けられ、各エリアを別々に治療することができる。例えば、熱硬化性生体光組成物を第一の部分に局所的に塗布し、その部分を光で照射し、その後、組成物を取り除くことができる。次に、生体光組成物が皮膚の第二の部分に塗布され、照射されて、取り除かれる。最後に、生体光組成物が第三の部分に塗布され、照射されて、取り除かれる。
【0112】
特定の実施形態では、熱硬化性生体光組成物は、瘢痕の修正を最適化するために、創傷閉鎖の後に使用できる。この場合、熱硬化性生体光組成物は、週1回または、医師によって適切と見なされる間隔など、定期的な間隔で適用されうる。
【0113】
特定の実施形態では、熱硬化性生体光組成物は、治療された皮膚の状態を維持するために、にきび治療の後に使用できる。この場合、組成物は、週1回または、医師によって適切と見なされる間隔など、定期的な間隔で適用されうる。
【0114】
特定の実施形態では、熱硬化性生体光組成物は、治療された皮膚の状態を維持するために、切除による皮膚の若返り治療の後に使用できる。この場合、組成物は、週1回または、医師によって適切と見なされる間隔など、定期的な間隔で適用されうる。
【0115】
特定の実施形態では、熱硬化性生体光組成物は、湿疹または乾癬を治療するために使用できる。この場合、組成物は、週1回または、医師によって適切と見なされる間隔など、定期的な間隔で適用されうる。組成物を罹患エリアにスプレーすると患者の痛みが少なくなる場合がある。
【0116】
本開示の方法では、追加的構成要素を随意に熱硬化性生体光組成物に含めるか、または組成物と組み合わせて使用しうる。このような追加的構成要素には、治癒因子、抗菌剤、酸素を豊富に含む作用物質、しわ充填剤(例えば、ボトックス、ヒアルロン酸およびポリ乳酸)、真菌剤、抗細菌剤、抗ウイルス剤、および/またはコラーゲン合成を促進する作用物質を含むがこれに限定されない。これらの追加的構成要素は、本開示の熱硬化性生体光組成物の局所適用の前、それと同時、および/またはその後に、皮膚に局所的に適用されうる。適切な治癒因子は、適用部位上の組織の治癒または再生過程を促進または亢進する化合物を含む。本開示の熱硬化性生体光組成物の光活性化の間、治療部位で皮膚または粘膜によるこのような追加的構成要素の分子吸収の増加がありうる。特定の実施形態では、治療部位での血流の増加が、一定時間観察され得る。フリーラジカルカスケードの動的相互作用による、リンパ排液の増加および浸透圧平衡の変化の可能性は、治癒因子を含めることで強化または補強さえされうる。治癒因子は、光退色時間およびプロファイルなど、生体光組成物からの生体光出力も調節するか、または組成物内の特定の成分の浸出を調節しうる。適切な治癒因子には、グルコサミン、アラントイン、サフロン、コラーゲン合成を促進する作用物質、抗真菌剤、抗細菌剤、抗ウイルス剤、および成長因子などの創傷治癒因子が含まれるがこれに限定されない。
【0117】
(i)皮膚の若返り
本開示の熱硬化性生体光組成物は、皮膚の若返りの促進、または皮膚状態および外観の改善において有用でありうる。真皮は、皮膚の2番目の層で、皮膚の構造要素である結合組織を含む。異なる機能を持つさまざまなタイプの結合組織がある。エラスチン線維は、皮膚に弾力性を与え、コラーゲンは皮膚に強度を与える。
【0118】
真皮と表皮の間の接合点は、重要な構造である。真皮・表皮接合部は、連結して指のような表皮隆起を形成する。表皮の細胞は、真皮の血管から栄養素を受け取る。表皮隆起は、これらの血管および必要な栄養素に曝される表皮の表面積を増加させる。
【0119】
皮膚の老化には、皮膚への著しい生理学的変化が伴う。新しい皮膚細胞の生成は減速し、真皮・表皮接合部の表皮隆起は平らになる。エラスチン線維の数は増加するが、その構造および結合力は減少する。皮膚の老化と共に、コラーゲンの量および真皮の厚さも減少する。
【0120】
コラーゲンは、皮膚の細胞外基質の主な構成要素で、構造骨組を提供する。老化過程の間、コラーゲン合成の減少およびコラーゲン線維の不溶化は、真皮の菲薄化および皮膚の生物力学特性の低下に寄与する。
【0121】
皮膚の生理学的変化は、しばしば経時老化、内因性老化、および光老化と呼ばれる、顕著な老化症状をもたらす。皮膚はより乾燥し、粗さおよび落屑が増加し、外観がくすみ、最も明瞭には小皺およびしわが現れる。皮膚の老化のその他の症状または兆候には、薄く透けた皮膚、(こけた頬と落ち込んだ眼窩並びに手および首の堅さの顕著な喪失につながる)下層脂肪の減少、骨量の減少(骨量減少のために骨が皮膚から後退し、皮膚のたるみを生じる)、乾燥肌(痒い場合がある)、皮膚を冷却するために十分に汗をかくことの不能、望ましくない顔の毛、そばかす、しみ、クモ状静脈、荒れてガサガサの肌、伸ばすと消える小皺、たるんだ皮膚、しみの多い顔が含まれるがこれに限定されない。
【0122】
真皮・表皮接合部は、表皮の角化細胞を、真皮の下部にある細胞外基質から分離する基底膜(basement membrane)である。この膜は、角化細胞と接触している基底板(basal lamina)、および細胞外基質と接触している下層網状板の2つの層から構成される。基底板は、構造ネットワークおよび細胞付着のための生体接着特性を提供する役割を果たす分子であるIV型コラーゲンおよびラミニンを豊富に含む。
【0123】
ラミニンは、基底膜にのみ存在する糖タンパク質である。これは、非対称な十字の形状に配置され、ジスルフィド結合で一緒に保持された3つのポリペプチド鎖(アルファ、ベータおよびガンマ)から成る。3つの鎖は、ラミニン1およびラミニン5を含むラミニンの12の異なるイソ型を生じる、異なるサブタイプとして存在する。
【0124】
真皮は、(α−インテグリンおよびその他のタンパク質から成る)角化細胞上にある特定接合部である半接着斑に、角化細胞の基底膜の所でVII型コラーゲン原線維によって固定されている。ラミニン、および特にラミニン5は、基底角化細胞中の半接着斑膜貫通タンパクとVII型コラーゲンとの間の実際の固定点を構成する。
【0125】
ラミニン5合成およびVII型コラーゲンの発現は、老化した皮膚では減少することが証明されている。これによって、真皮と表皮の間の接触が失われ、皮膚が弾力性を失い、垂れ下がるようになる。
【0126】
最近、表情じわと一般的に呼ばれる別のタイプのしわが、一般的認知を得た。表情しわは、特に真皮での復元力の低下から生じるが、このために顔の筋肉が顔の表情を作る時、皮膚は元の状態にもはや戻ることができなくなる。
【0127】
本開示の熱硬化性生体光組成物および本開示の方法は、皮膚の若返りを促進する。特定の実施形態では、本開示の熱硬化性生体光組成物および方法は、皮膚の明度、毛穴サイズの減少、痣(blotchiness)の減少、皮膚の色合いを均一にする、乾燥の減少、および皮膚の引き締めなど、皮膚状態を促進する。特定の実施形態では、本開示の熱硬化性生体光組成物および方法は、コラーゲン合成を促進する。特定のその他の実施形態では、本開示の熱硬化性生体光組成物および方法は、小皺またはしわの出現、薄く透けた皮膚、(こけた頬と落ち込んだ眼窩並びに手および首の堅さの顕著な喪失につながる)下層脂肪の減少、骨量の減少(骨量減少のために骨が皮膚から後退し、皮膚のたるみを生じる)、乾燥肌(痒い場合がある)、皮膚を冷却するために十分に汗をかくことができない、望ましくない顔の毛、そばかす、しみ、クモ状静脈、荒れてガサガサの肌、伸ばすと消える小皺、たるんだ皮膚、またはまだらな顔色が含まれるがこれに限定されない皮膚老化の一つ以上の兆候を減少、軽減、遅延または逆転さえしうる。特定の実施形態では、本開示の生体光組成物および方法は、毛穴サイズの減少を誘発し、皮膚小区分の彫りを高め、かつ/または皮膚の半透明性を高めうる。
【0128】
特定の実施形態では、熱硬化性生体光組成物は、コラーゲン促進剤と併せて使用されうる。コラーゲン合成を促進する作用物質(すなわち、コラーゲン合成促進剤)には、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、脂質、小さな化学分子、天然産物および天然産物からの抽出物が含まれる。
【0129】
例えば、ビタミンC、鉄、およびコラーゲンの摂取は、皮膚または骨のコラーゲン量を効果的に増加させることが発見された。例えば、米国特許出願公開第20090069217号を参照。ビタミンCの例には、L−アスコルビン酸またはL−アスコルビン酸ナトリウムなどのアスコルビン酸誘導体、アスコルビン酸を乳化剤などでコーティングして得られるアスコルビン酸製剤、およびこれらビタミンCの2つ以上を任意の割合で含む混合物が含まれる。さらに、アセロラまたはレモンなど、ビタミンCを含む天然産物も使用されうる。鉄製剤の例には、硫酸第一鉄、クエン酸第一鉄ナトリウム、またはピロリン酸第二鉄などの無機鉄、ヘム鉄、フェリチン鉄、またはラクトフェリン鉄などの有機鉄、およびこれらの鉄の2つ以上を任意の割合で含む混合物が含まれる。さらに、ほうれん草またはレバーなど、鉄を含む天然産物も使用されうる。さらに、コラーゲンの例には、ウシまたはブタなど、哺乳類の骨、皮膚、などを酸またはアルカリで処理することで得られる抽出物、ペプシン、トリプシン、またはキモトリプシンなどのプロテアーゼで抽出物を加水分解することで得られるペプチド、およびこれらのコラーゲンの2つ以上を任意の割合で含む混合物が含まれる。植物起源から抽出されたコラーゲンも使用されうる。
【0130】
(ii)皮膚疾患
本開示の熱硬化性生体光組成物および方法は、紅斑、毛細血管拡張症、光線毛細血管拡張症、基底細胞癌、接触皮膚炎、隆起性皮膚線維肉腫、性器疣贅、化膿性汗腺炎、黒色腫、メルケル細胞癌、 貨幣状皮膚炎、伝染性軟属腫(molloscum contagiosum)、乾癬、乾癬性関節炎、酒さ、疥癬、頭皮乾癬、脂腺癌、扁平上皮癌、脂漏性皮膚炎、脂漏性角化症、帯状疱疹、癜風、いぼ、皮膚がん、天疱瘡、日焼け、皮膚炎、湿疹、発疹、膿痂疹、慢性単純性苔癬、鼻瘤、口囲皮膚炎、鬚毛部仮性毛包炎(pseudofolliculitis barbae)、薬疹、多形紅斑、結節性紅斑、環状肉芽腫、光線性角化症、紫斑、円形脱毛症、アフタ性口内炎、乾燥肌、あかぎれ、乾燥症、尋常性魚鱗癬、真菌感染症、単純ヘルペス、間擦疹、ケロイド、角化症、稗粒腫、伝染性軟属腫、ばら色粃糠疹、掻痒、じんま疹、ならびに血管の腫瘍および形態異常(malformation)を含むがこれに限定されない皮膚疾患を治療するために使用されうる。皮膚炎には、接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、貨幣状皮膚炎、全身性剥脱性皮膚炎、およびうっ滞性皮膚炎が含まれる。皮膚がんには、黒色腫、基底細胞癌、および扁平上皮癌が含まれる。
【0131】
(iii)にきびおよびにきび跡
本開示の熱硬化性生体光組成物および方法は、にきびを治療するために使用しうる。本明細書で使用される場合、「にきび」とは、皮膚腺または毛包の炎症によって生じる皮膚の疾患を意味する。本開示の熱硬化性生体光組成物および方法は、発現前の早期段階またはにきびの病変が目に見える後期の段階で、にきびを治療するために使用できる。軽度、中程度および重度のにきびは、生体光組成物および方法の実施形態で治療できる。にきびの発現前の早期段階は、毛嚢脂腺器官にある皮脂腺からの皮脂または真皮油(dermal oil)の過剰分泌で通常始まる。皮脂は、毛包の管を通して皮膚表面に達する。管の中および皮膚上での過剰量の皮脂の存在は、毛包管からの皮脂の正常な流れを妨害または停滞させる傾向があり、そのため皮脂の濃縮化および固化を起こして、面皰として知られる固体の栓を作る。にきびの発症の通常の順序では、毛包口の過角化が刺激されて、それにより管のブロックが完了される。通常の結果は、丘疹、膿疱、または嚢胞で、これらは二次感染を引き起こす細菌で汚染されていることがよくある。にきびは、面皰、炎症性丘疹、または嚢胞の存在によって具体的に特徴付けられる。にきびの外観は、わずかな皮膚過敏から、陥凹および外観を損なう瘢痕の発現までに及びうる。従って、本開示の熱硬化性生体光組成物および方法は、皮膚過敏、陥凹、瘢痕の発現、面皰、炎症性丘疹、嚢胞、過角化症、およびにきびに関連した皮脂の濃厚化および硬化の一つ以上を治療するために使用できる。
【0132】
一部の皮膚疾患は、発赤、顔面紅潮、灼熱感、落屑、吹き出物、丘疹、膿疱、面皰、斑、結節、小疱、水疱、毛細血管拡張症、クモ状静脈、ただれ、表面の過敏または痛み、痒み、炎症、赤、紫もしくは青い斑点もしくは変色、ほくろ、および/または腫瘍を含む様々な症状を呈する。
【0133】
本開示の熱硬化性生体光組成物および方法は、さまざまなタイプのにきびを治療するために使用されうる。にきびの一部のタイプには、例えば、尋常性座瘡、嚢腫性座瘡、萎縮性座瘡、臭素座瘡、塩素座瘡、集簇性座瘡、化粧品性座瘡、洗剤性座瘡、流行性座瘡、夏季座瘡、電撃性座瘡、ハロゲン座瘡、硬結性座瘡、ヨード座瘡、座瘡ケロイド、機械的座瘡、丘疹性座瘡、ポマード座瘡、月経前座瘡、膿疱性座瘡、壊血病性座瘡、腺病性座瘡、蕁麻疹様座瘡、痘瘡状座瘡、毒物性座瘡、プロピオン酸座瘡、表皮剥離性座瘡、グラム陰性座瘡、ステロイド座瘡および結節嚢胞性座瘡が含まれる。
【0134】
特定の実施形態では、本開示の熱硬化性生体光組成物は、全身または局所的な抗生物質治療と併せて使用される。例えば、にきびを治療するために使用される抗生物質としては、テトラサイクリン、エリスロマイシン、ミノサイクリン、ドキシサイクリンが挙げられ、これらも本開示の組成物および方法と一緒に使用されうる。熱硬化性生体光組成物の使用は、抗生物質治療に必要な時間を減少させるか、または用量を減少させることができる。
【0135】
(iv)創傷治癒
本開示の熱硬化性生体光組成物および方法は、創傷を治療し創傷治癒を促進するために使用されうる。本開示の生体光組成物および方法によって治療されうる創傷としては、例えば、異なる方法で始まり(例えば、長期間のベッド休養による圧力潰瘍、外傷または手術によって誘発された創傷、やけど、糖尿病または静脈不全に関連した潰瘍、歯周炎などの状態によって誘発された創傷)、および異なる特性を持つ皮膚および皮下組織への傷害が挙げられる。特定の実施形態では、本開示は、例えば、やけど、切開、切除、病変、裂傷、擦り傷、穿刺または穿通創傷、手術創、挫傷、血腫、圧挫損傷、切断、痛みおよび潰瘍の治療ならびに/または治癒を促進するための熱硬化性生体光組成物および方法を提供する。
【0136】
本開示の熱硬化性生体光組成物および方法は、耐久性のある構造的、機能的、および美容的閉合を作るための順序正しくタイムリーな一連のイベントをたどらなかった創傷である、慢性皮膚潰瘍または創傷の治療および/または治癒を促進するために使用されうる。慢性創傷の大部分は、その病因に基づいて、圧力潰瘍、神経障害性(糖尿病性足部)潰瘍および血管性(静脈性または動脈性)潰瘍の3つのカテゴリーに分類できる。
【0137】
例えば、本開示は、糖尿病性潰瘍の治療および/または治癒の促進のための熱硬化性生体光組成物および方法を提供する。糖尿病患者は、神経性および血管性の両方の合併症のために、足およびその他の潰瘍形成を起こしやすい。末梢神経障害は、足および/または脚の感覚の変化または完全喪失を起こす可能性がある。進行した神経障害を持つ糖尿病患者は、鋭さと鈍さとを識別する能力をすべて失う。神経障害患者は、足への切り傷または外傷に、数日または数週間、全く気が付かないことがある。進行した神経障害を持つ患者は、持続的な圧力損傷を感じる能力を失い、その結果、組織虚血および壊死が起こり、例えば足底潰瘍形成につながりうる。微小血管疾患は、糖尿病の重大な合併症の一つで、潰瘍形成にもつながりうる。特定の実施形態では、慢性創傷の治療のための熱硬化性生体光組成物および方法が本明細書に提供されており、慢性創傷は、糖尿病の神経性および/または血管性の合併症による糖尿病性足潰瘍および/または潰瘍形成によって特徴付けられる。
【0138】
その他の例では、本開示は、圧力潰瘍の治療および/または治癒の促進のための熱硬化性生体光組成物および方法を提供する。圧力潰瘍は床擦れ、褥瘡性潰瘍および坐骨結節潰瘍を含み、患者にかなりの痛みおよび不快感を起こさせる可能性がある。圧力潰瘍は、皮膚に長時間圧力が加えられた結果として起こる可能性がある。従って、個人の体重または質量のために、患者の皮膚に圧力がかかる可能性がある。圧力潰瘍は、皮膚のエリアへの血液供給が、2時間または3時間を超えて妨害または遮断された時に発症する可能性がある。影響を受けた皮膚エリアは、赤くなり、痛みおよび壊死が起こる可能性がある。治療しない場合、皮膚が破れて開き、感染する可能性がある。従って圧力潰瘍は、例えば、長時間ベッドに横になる、車椅子に座る、および/またはギブス包帯を装着することから、圧力下にある皮膚のエリアに起こる皮膚潰瘍である。圧力潰瘍は、人が寝たきり、意識を失った、痛みを感じることができない、または動けない時に起こる可能性がある。圧力潰瘍は、臀部エリア(仙骨または腸骨稜上)、または足のかかとなど、体の骨張った隆起部に起こることがよくある。
【0139】
創傷治癒過程には3つの明確な段階がある。第一に、創傷が起こった時から最初の2〜5日までに典型的に起こる炎症段階では、血小板が凝集して顆粒を沈着し、フィブリンの沈着を促進し、成長因子の放出を刺激する。白血球が創傷部位に移動し、破片を消化して創傷から外に移し始める。この炎症段階の間、単球もマクロファージに変換され、これは血管新生および線維芽細胞の生成を刺激するために成長因子を放出する。
【0140】
第二に、典型的には2日〜3週間までに起こる増殖段階では、肉芽組織が形成され、上皮形成および収縮が開始される。この段階の重要な細胞タイプである線維芽細胞は、増殖してコラーゲンを合成し、創傷を満たして、その上で上皮細胞が成長する強い基質(matrix)を提供する。線維芽細胞がコラーゲンを生成すると、血管形成が近くの血管から拡大し、肉芽組織を生じる。肉芽組織は、典型的には創傷の基部から成長する。上皮形成には、創傷を密封するために、創傷表面からの上皮細胞の移動を伴う。上皮細胞は、類似のタイプの細胞に接触する必要性によって動かされ、これらの細胞がその上を移動するグリッドとして機能するフィブリン鎖のネットワークによって誘導される。筋線維芽細胞と呼ばれる収縮性細胞が創傷中に現れ、創傷の閉鎖を助ける。これらの細胞は、コラーゲン合成および収縮性を示し、肉芽創では一般的である。
【0141】
第三に、3週間から数年まで起こりうる創傷治癒の最終段階のリモデリング段階では、瘢痕中のコラーゲンが繰り返し分解および再合成を受ける。この段階の間、新しく形成された皮膚の引張強度が増加する。
【0142】
しかし、創傷治癒の速度が増すと、瘢痕形成の関連増加がよく起こる。瘢痕化は、大部分の成体動物およびヒト組織における治癒過程の結果である。瘢痕組織は、通常、機能品質が劣るため、それを置き換える組織と同一ではない。瘢痕のタイプには、萎縮性、肥厚性およびケロイド性瘢痕、および瘢痕拘縮が含まれるがこれに限定されない。萎縮性瘢痕は平らで、谷または穴として周辺の皮膚よりも下にくぼんでいる。肥厚性瘢痕は、元の病変の境界内に留まっている隆起した瘢痕であり、異常なパターンで配列された過剰なコラーゲンを含むことがよくある。ケロイド性瘢痕は、元の創傷の縁を超えて広がる隆起した瘢痕であり、周辺の正常皮膚に部位特異的な方法で侵入し、異常な様式で配置された渦巻き状コラーゲンをしばしば含む。
【0143】
それに対して、正常皮膚は、バスケットウィーブパターンに配列されたコラーゲン線維から成り、これは真皮の強度と弾性の両方に寄与する。従って、より滑らかな創傷治癒過程を達成するためには、コラーゲン生成を刺激するだけでなく、瘢痕形成を減少させる方法でそれを行うアプローチが必要である。
【0144】
本開示の熱硬化性生体光組成物および方法は、実質的に均一な上皮形成(epithelialization)の形成の促進、コラーゲン合成の促進、制御された収縮の促進によって、および/または瘢痕組織の形成の低減によって、創傷治癒を促進する。特定の実施形態では、本開示の熱硬化性生体光組成物および方法は、実質的に均一な上皮形成を促進することによって創傷治癒を促進しうる。一部の実施形態では、本開示の熱硬化性生体光組成物および方法は、コラーゲン合成を促進する。一部のその他の実施形態では、本開示の熱硬化性生体光組成物および方法は、制御された収縮を促進する。特定の実施形態では、本開示の熱硬化性生体光組成物および方法は、例えば、瘢痕組織の形成を減少させることによって、創傷治癒を促進する。
【0145】
本開示の方法では、本開示の熱硬化性生体光組成物は、陰圧補助創傷閉鎖デバイスおよびシステムと組み合わせても使用しうる。
【0146】
特定の実施形態では、熱硬化性生体光組成物は、最大1、2または3週間、所定の位置に保たれ、さまざまな間隔で、周辺光を含みうる光を照射される。この場合、組成物は、光への暴露と暴露の間、不透明組成物で覆われるか、または光に暴露したままにしうる。
【0147】
(6)キット
本開示は、本開示の熱硬化性生体光組成物を調製するため、および/または熱硬化性生体光組成物を形成するために必要な任意の構成要素を提供するためのキットも提供する。
【0148】
一部の実施形態では、キットは、本開示の熱硬化性生体光組成物を作るために使用できる構成要素または組成物を含む容器を含む。一部の実施形態では、キットは、本開示の熱硬化性生体光組成物を含む。本開示の生体光組成物を構成する異なる構成要素が、別々の容器中に提供されうる。例えば、ブロック共重合体は発色団とは別の容器中に提供されうる。このような容器の例は、二重チャンバーシリンジ、取り外し可能な仕切り付きの二重チャンバー容器、パウチ付きの小袋、および複数区画ブリスターパックである。別の例は、別の構成要素の容器内に注入できるシリンジ中に構成要素の一つを提供することである。一部の実施形態では、組成物はスプレー缶またはボトル中に提供される。
【0149】
その他の実施形態では、キットは、本開示の熱硬化性生体光組成物の治療を増強するための全身性薬物を含む。例えば、キットは、(例えばにきび治療または創傷治癒のための)全身性または局所性抗生物質またはホルモン治療、または陰圧デバイスを含みうる。
【0150】
その他の実施形態では、キットは、本開示の熱硬化性生体光組成物の構成要素を適用するための手段を備える。
【0151】
特定の態様では、熱硬化性生体光組成物を保持するためのチャンバー、および生体光組成物を容器から排出するためにチャンバーと連通している出口を備える容器が提供されており、ここで熱硬化性生体光組成物はブロック共重合体中に可溶化された少なくとも一つの発色団を含む。チャンバーは、オキシダントおよび発色団など、混合すると不安定な成分を分離するために分割しうる。容器は、一旦排出されたら組成物を活性化するための光源をさらに備える。
【0152】
キットの特定の実施形態では、キットは、熱硬化性生体光組成物の発色団を活性化するために適切な波長を持つ携帯光などの光源をさらに含みうる。携帯光は、電池式または再充電式でありうる。
【0153】
本開示による熱硬化性生体光組成物の使い方についての書面指示をキットに含め得るか、または本開示の熱硬化性生体光材料を構成している組成物または構成要素を含む容器に含めるか付属させうる。
【0154】
同等の熱硬化性生体光組成物、方法およびキットの確認は、通常の実施者の技能の十分に範囲内であり、本開示の教えを考慮すると、通常の実験以上のものを必要としない。
【0155】
この開示を見直した後、当業者であれば変形および変更を考え付く。開示された特徴は、本明細書で開示されたその他の一つ以上の特徴との任意の組み合わせおよびサブコンビネーション(複数の依存性組み合わせおよびサブコンビネーションを含む)で、実施されうる。その任意の構成要素を含め、上に記載または例示された様々な特徴は、その他のシステムに組み合わせまたは組み込みうる。さらに、特定の特徴は、省略するか、または実施しなくても良い。変化、置換、代替の例は、当業者であれば究明可能であり、本明細書に開示された情報の範囲を逸脱することなく行なうことができる。本明細書に引用されたすべての参考文献は、参照によりその全体が組み込まれ、本出願の一部となる。
【0156】
本開示の実施は、以下の実施例からさらにより完全に理解されるが、これらは例示目的のみで本明細書に提示されており、いかなる方法でも本開示を制限するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0157】
(実施例1)例示的熱硬化性生体光組成物の調製
本開示の実施形態に従って、その中に発色団を組み込んだポロキサマー基材を含む熱硬化性組成物が作られた。具体的には、(二つのPEGブロックに連結された一つのPPGブロックを含む反復ユニットを持つ)ポリエチレングリコール(PEG)およびポリプロピレングリコール(PPG)のブロック共重合体であるプルロニック(登録商標)F−127が、例えば、組織に適用された時または組織に適用されたおよび/またはランプで加熱された時、約20℃〜39℃の温度で粘着性生体光組成物へと熱硬化するのを可能にする重量パーセントで使用された。
【0158】
異なる温度で20% w/vおよび25 % w/v プルロニックF−127溶液の熱硬化性(ゲル化)挙動が評価された。溶液はプルロニックF−127を冷たい(約4℃)脱イオン水に溶解することによって調製された。20% w/v プルロニック溶液については、20gのプルロニックF−127粉末を100 mLの冷水に溶解した。25% w/v プルロニックF−127溶液については、25gのプルロニックF−127粉末を100 mLの冷水に溶解した。プルロニックF−127の濃度は水の体積当たりの重量で表す。ゲル化は、冷たいプルロニックF−127溶液の2mLアリコートを試験管に入れ、はっきり定義された温度まで予熱された水浴に試験管を浸すことによって評価された。ゲル化は、試験管を逆さまにした時に組成物に流れが観察されない場合、起こったと見なされた。結果は表1に要約されている。
【表1】
【0159】
次に、発色団を含む25%プルロニック組成物のゲル化温度への過酸化カルバミドの効果を評価した。過酸化カルバミドの存在は、少なくとも25%の濃度において、ゲル化が起こる温度を上げることによりゲル化挙動に影響するように見えるが、十分に生理学的に妥当な温度範囲内である。そういうわけで、プルロニックF−127に基づくこれらの生体光組成物は、過酸化カルバミドまたはその他の過酸化物または過酸化物前駆体も含むことができる。
【表2】
【0160】
一旦ゲル化すると、表2のすべてのプルロニック溶液が透明/透光性の粘着性組成物(剥離可能ではない)を形成したことは注目に値する。これらの粘着性生体光組成物は、セルロース系組成物(例えば、アルギネート、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースなど)などの増粘剤を加えることによって剥離可能にすることができる。熱硬化された組成物は、温度がそのゲル化温度より下に下げられた場合再び液化できるという点で、熱硬化は可逆性であった。
【0161】
表2の溶液はポンプスプレーに入れられ、標的組織上にスプレーされて(約37℃の)標的組織に接触した時にゲルを形成することができた。溶液は洗浄または拭き取りによって簡単に除去できる。あるいは、冷たい吸収性組成物をゲルの上に配置して、ゲルを液状に戻してそれを組成物中に浸み込ませることができる。組成物はスポンジまたは布である場合がある。組成物は、ゲルのゲル化温度より下の温度であることのみを必要とする。
【0162】
青い光で活性化された時、表2のゲル1〜3は光を吸収して放射した。
【0163】
この例のプルロニックF−127の代わりにその他任意のポロキサマー(例えば、P−123、L−122、L−61、L−121およびP−65)を、体温または体温近くでゲル化を可能にする重量パーセントで、皮膚温度または皮膚温度近くまたは皮膚温度未満で使用できることが、当業者には明らかである。
【0164】
(実施例2)実施例1の熱硬化性生体光組成物の生体光評価
実施例1のゲル3(0.01 wt%エオシンY + 0.01 wt%フルオレセインを含む)の発光スペクトルが
図1に示されている。約400〜470nmのピーク波長および約30〜150mW/cm
2の出力密度を持つ光で5分間照射された時、放射された蛍光がSP−100分光測定器(SP−100、ORB Optronix)を使用して測定された。
図1に見られるように、発色団は10分の照射後、完全には光退色しなかった。
【0165】
(実施例3)実施例2の熱硬化性生体光組成物によるHaCaTヒト角化細胞によるIL6およびIL8の調節
実施例2の熱硬化性生体光組成物を、炎症、特にサイトカインIL6およびIL8を調節するその能力について評価した。これらの炎症性サイトカインの調節を評価するために、一般に認められたインビトロモデルとしてHaCaTヒト角化細胞の細胞を使用した。多くの皮膚状態ならびに創傷で過剰で制御されていない炎症が観察され、創傷治癒過程を損なうことによるなど、宿主に有害である可能性がある。従って、IL6およびIL8分泌の下方制御は、創傷治癒に加えて、湿疹および乾癬などのその他の状態を緩和するうえで有益な場合がある。
【0166】
非毒性濃度のIFNγを使用して、HaCaT細胞によるIL6およびIL8の分泌を調節した。デキサメタゾン(最終濃度5uM)を陽性対照(炎症促進性サイトカイン生成の強力な阻害剤)として使用した。HaCaT細胞への光の潜在的毒性効果を、生細胞数の分光光度評価である、XTTベースのインビトロ毒性アッセイキットを使用して評価した。
【0167】
細胞培養物に、実施例2の熱硬化性生体光組成物によって放射され該組成物を通して伝達された光を照射した。熱硬化性生体光組成物を細胞培養物の上方5 cmに配置し、400〜470nm(平均460nm)のピーク波長および約30〜150mW/cm
2の出力密度を持つ青い光を90秒間照射した。
【0168】
サイトカインの定量は、製造業者の指示に従って、照射から24時間後に培養物上清のサイトカインELISAで実施された(R&D Systems社製のDuoSet ELISA開発キット)。分泌されたサイトカインの量は、細胞生存率に対して正規化された。治療後24時間の生存細胞数の分光光度評価を使用した細胞生存率で測定した場合、すべての試験サンプルに対して毒性効果は観察されなかった。すべてのサンプルは四つ組でスクリーニングした。試験された膜については、3回の生物学的反復を実施した。
【0169】
実施例2の熱硬化性生体光組成物によって放射された光は、IFNγ刺激HaCaT細胞にIL6およびIL8の下方調節を生じたことが分かった。表3は、熱硬化性生体光組成物からの照射時間中に培養細胞が受ける光治療を、照射後のIL6およびIL8発現と共に要約している。
【表3】
【0170】
(実施例4)実施例2の熱硬化性生体光組成物による炎症の調節
実施例2の熱硬化性生体光組成物によって媒介される生物学的効果のより詳細な情報を得るために、ヒトサイトカイン抗体アレイ(RayBio C−Series、RayBiotech, Inc.)が実施された。サイトカインは分泌された細胞間シグナル伝達タンパク質として広く定義され、炎症、先天免疫、アポトーシス、血管新生、細胞成長および分化で重要な役割を果たす。複数サイトカインの同時検出は、細胞活動を調べるための強力なツールを提供する。サイトカインによる細胞プロセスの制御は複雑で動的なプロセスであり、複数タンパク質がしばしば関与する。ポジティブおよびネガティブフィードバックループ、多面効果および冗長機能、複数のサイトカイン間の空間的および時間的発現または相乗的相互作用、膜結合受容体の可溶形態の放出を介した制御さえも、すべてがサイトカインシグナル伝達の効果を調節する一般的な機序である。
【0171】
熱硬化性生体光組成物を通しておよび熱硬化性生体光組成物から伝達される光の、HaCaT細胞による培養基におけるサイトカイン分泌プロファイルに対する効果が、ヒトサイトカイン抗体アレイ(Raybiotech社製RayBio C−シリーズ)を使用して決定された。手短に言えば、HaCaT細胞は実施例3のように照射された。照射後24時間で上清を採取し、製造業者の指示に従って整列した抗体膜と共に培養された。得られたシグナルをImageJソフトウェアで定量した。各実験に対して、XTTアッセイを実施して、分泌されたサイトカインの量を細胞生存率に対して正規化した(細胞生存率はすべてのサンプルで90%を超えていた)。すべてのサンプルは四つ組で実施した。以下の要約表は、熱硬化性生体光組成物での細胞の治療はタンパク質の発現を調節できることを示している。
【表4-1】
【表4-2】
【0172】
結論
実施例2の熱硬化性生体光組成物は青い光(細胞に送達された最大6 J/cm
2のエネルギーフルエンス)の貫通を可能にし、緑および黄色の光スペクトル(細胞に送達される最大0.3 J/cm
2 のエネルギーフルエンス)内の蛍光を生成した。結果は、この光がHaCaT細胞の炎症促進性サイトカインIL−6およびIL−8の下方制御を可能にすることを示した。
【0173】
タンパク質アレイアッセイでは、実施例2の熱硬化性生体光組成物は炎症促進性サイトカイン(TNFアルファ、IL6など)および炎症促進性ケモカイン(MCP−3、TARCなど)の生成を負に調整できることも示した。興味深いことに、熱硬化性生体光組成物は成長因子(EGF、IGF−1、ANG、VEGFなど)の分泌も下方調節することができた。
【0174】
従って、本開示の熱硬化性生体光組成物の特定の実施形態は、創傷治癒の炎症段階でこの段階の素早い解消が望ましい時、またはその他の炎症性疾患で有用となりうる。
【0175】
(実施例5)熱硬化性生体光組成物によるコラーゲン生成の調節
ここではヒト皮膚線維芽細胞(DHF)をインビトロモデルとして使用して、本開示の熱硬化性生体光組成物と組み合わせた青い可視光の効果を調べ、コラーゲン(細胞外基質の構成要素)の分泌に対する効果を評価した。
【0176】
コラーゲン生成は、例えば創傷治癒において、ならびに皮膚状態および皮膚の若返りなどのその他の適応のために有用である場合がある。創傷治癒では、ケガをしてから4〜5日以内に、基質(matrix)生成細胞すなわち線維芽細胞が肉芽組織内に移動する。これらの線維芽細胞は、MMPを介して暫定的基質を分解し、コラーゲンI、IIIおよびV、プロテオグリカン、フィブロネクチンおよびその他の構成要素で構成される新しい細胞外基質(ECM)を増殖および合成することによってサイトカイン/成長因子に応答する。TGF−ベータは、プロテアーゼインヒビターを強化しながら同時にプロテアーゼを阻害して、基質蓄積を支持する。
【0177】
TGFβ−1の非毒性濃度を細胞に加えて、過剰増殖状態を模倣した。HaCaT細胞への光の潜在的毒性効果を、生細胞数の分光光度評価である、XTTベースのインビトロ毒性アッセイキットを使用して評価した。
【0178】
細胞培養物に、実施例2の熱硬化性生体光組成物によって放射され該組成物を通して伝達された光を照射した。ゲルを細胞培養物の上方5cmに配置し、400〜470nmのピーク波長および約30〜150mW/cm
2の出力密度を持つ青い光を5分間照射した。ビタミンCおよびTGFB1を陽性対照として使用した。
【0179】
治療から48時間後に、ピクロシリウスレッド法を使用してコラーゲン生成を評価した。簡単に言うと、塩基性アミノ酸が豊富なコラーゲン分子は酸性染料と強く反応する。シリウスレッドはコラーゲン(タイプI、II、V)と反応する細長く伸びた染料分子であり、コラーゲンに結合し、数回洗浄して遊離染料を除去した後、結合したシリウスレッドを水酸化ナトリウムで溶出して、分光光度計を使用して定量する。すべてのサンプルは四つ組でスクリーニングした。試験された基質のそれぞれに対して2回の生物学的反復が行われた。
【0180】
実施例2の熱硬化性生体光組成物を通したおよび該組成物による光照射はコラーゲン生成を刺激できることが、
図2からわかる。未治療対照と比べてDHF細胞培養上清におけるコラーゲン生成の4倍の増加が観察された。
【0181】
当然ながら、本発明は本明細書に記述および図示された特定の実施形態に限定されず、添付の請求項で定義される本発明の範囲内に入るすべての変更および変形が含まれる。