(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制振装置は、さらに、前記制振対象と前記第一取付部材との間、または、前記マスと前記第二取付部材との間に介在し、前記制振対象の制振方向に前記粘弾性体と対向する範囲から外れた位置に位置する介装部材を備え、
前記第一取付部材または前記第二取付部材において、前記粘弾性体の固定位置と前記介装部材の固定位置との間が、板バネを形成し、
前記粘弾性体と前記板バネとが、前記制振対象と前記マスとの間で直列となる複合バネを形成する、請求項1−6の何れか一項に記載の制振構造。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(1.第一実施形態)
(1−1.制振構造1の構成)
第一実施形態の制振構造1の構成について、
図1を参照して説明する。制振構造1は、制振対象2と、制振対象2に取り付けられ制振対象2の振動を抑制する制振装置3と、を備える。例えば、制振対象2は、建物の構造体の一つである床材を例にあげる。ただし、制振対象2は、建物の構造体の他に、種々の部材を対象とすることができる。
【0016】
本実施形態においては、制振装置3は、例えば、住宅の上階の床裏に固定されている。制振対象2としての床材は、床材本体2a(制振対象本体部)、床材本体2aを支持し床材本体2aの裏面に固定されている架構部材2b(制振対象本体部)、架構部材2bの側面に鋼材等の金属製のブラケット2cとを備える。ブラケット2cは、L字状に形成されている。
【0017】
制振装置3は、いわゆる動吸振器である。制振装置3は、制振対象2としての床材におけるブラケット2cに固定されている。詳細には、制振装置3は、ブラケット2cの水平面部の上面に固定されている。制振装置3は、床材本体2aおよび架構部材2bに生じた面外振動を低減する。つまり、制振対象2としての床材が面外振動方向に振動する場合に、制振装置3は、制振対象2としての床材の面外振動を低減する。
【0018】
(1−2.制振構造1の詳細構成)
制振構造1の詳細構成について、
図2〜
図7を参照して説明する。制振対象2のブラケット2cは、
図2および
図4に示すように、制振装置3を固定する上面に、上方に突出する2個の対象突起2c1,2c2を備える。対象突起2c1,2c2は、例えば矩形に形成されている。ここで、ブラケット2cは、制振対象2の床材本体2aおよび架構部材2bとは別部材であって、対象突起2c1,2c2を容易に形成できる。ブラケット2cは、金属製であるため、例えば、プレス金型を所望形状に形成することで、対象突起2c1,2c2を容易に形成できる。なお、対象突起2c1,2c2は、矩形形状に限られず、円柱状、円錐台状、板状など、種々の形状とすることができる。
【0019】
さらに、ブラケット2cは、制振装置3を固定する面に、2個の貫通孔2c3,2c4が形成されている。さらに、ブラケット2cは、2個の貫通孔2c3,2c4に対応する部位の下面に、2個のナット2c5,2c6を備える。
【0020】
制振装置3は、マス10と、第一取付部材20と、2個の第一取付ボルト31,32と、第二取付部材40と、2個の粘弾性体51,52と、2個の第一係合部材61,62、2個の第二係合部材71,72と、2個の第二取付ボルト81,82と、2個の介装部材91,92と、2個のナット86,87とを備える。
【0021】
マス10は、例えば、主として金属などの高比重の材料により形成される。マス10は、マス本体部11と、2個のマス突起12,13とを備える。マス本体部11は、例えば直方体状に形成されている。マス本体部11の底面は、細長い長方形に形成される。ただし、マス本体部11の外形は、直方体状に限られず、立方体状、長円柱状、円柱状など、種々の形状とすることができる。
【0022】
マス突起12,13は、マス本体部11の下面に設けられ、マス本体部11の下面から下方に突出する。マス突起12,13は、マス本体部11の下面のうち、マス本体部11の長手方向の中央寄りに設けられている。また、マス突起12,13は、例えば板状に形成されており、面方向がマス本体部11の短手方向に一致するように(すなわち、厚み方向がマス本体部11の長手方向に一致するように)設けられている。なお、マス突起12,13は、板状に限られず、矩形形状、円柱状、円錐台状など、種々の形状とすることができる。
【0023】
ここで、マス突起12,13は、マス本体部11と同様に、金属などの高比重の材料により形成されており、マス本体部11と一体成形されている。従って、マス突起12,13は、容易に形成できる。ただし、マス突起12,13は、マス本体部11とは別体に形成され、締結部材(図示せず)や接着剤などによりマス本体部11に結合してもよい。
【0024】
第一取付部材20は、制振対象2に取り付けられる。第一取付部材20は、鋼材等の金属により、マス本体部11の底面の長方形に対応するような長方形の板状に形成される。第一取付部材20は、ブラケット2cに接地される平板状の接地部21を備える。接地部21には、一方の長辺(
図3の下側の辺)に開口する2個の切欠21a,21bが形成されている。2個の切欠21a,21bは、接地部21の長手方向において、中央寄りに距離を隔てて位置する。
【0025】
第一取付部材20は、さらに、接地部21の長手方向の両端に位置し、かつ、接地部21より上方に位置する上方張出部22,23を備える。上方張出部22,23は、
図5に示すように、接地部21と平行に位置し、ブラケット2cとの間に隙間を有する。なお、当該隙間が、後述する第一弾性片61b,62bの係止爪61b1,62b1が位置する領域として利用される。また、上方張出部22,23には、矩形の第一係合孔22a,23aが形成されている。
【0026】
2個の第一取付ボルト31,32は、2個の切欠21a,21bに配置されている。2個の第一取付ボルト31,32は、例えば、六角ボルトや六角穴付きボルト等である。2個の第一取付ボルト31,32が、ブラケット2cの貫通孔2c3,2c4に挿通され、2個のナット2c5,2c6に締結される。このようにして、第一取付部材20の接地部21がブラケット2cに接触した状態で、第一取付部材20がブラケット2cに固定される。このとき、対象突起2c1,2c2は、上方張出部22,23の第一係合孔22a,23aに対応した位置に位置する。
【0027】
第二取付部材40は、マス本体部11の底面側に取り付けられる。第二取付部材40は、鋼材等の金属により、平板状に形成される。詳細には、第二取付部材40は、マス本体部11の底面の長方形に対応するような長方形の板状に形成される。第一取付部材20の長手方向と第二取付部材40の長手方向とが一致するように、第一取付部材20と第二取付部材40とが平行に且つ対向して配置される。第一取付部材20と第二取付部材40の対向方向は、制振対象2の面外振動方向に一致する。さらに、第二取付部材40の長手方向とマス本体部11の底面の長手方向とが一致するように、第二取付部材40とマス本体部11の底面とが平行に且つ対向して配置される。
【0028】
さらに、第二取付部材40には、第一取付部材20の上方張出部22,23の第一係合孔22a,23aに対応する位置に、第二係合孔41,42が形成されている。第二係合孔41,42は、上方張出部22,23の第一係合孔22a,23aと同様に、矩形に形成されている。さらに、第二取付部材40には、2個の第二係合孔41,42のそれぞれの外側に、2個の貫通孔43,44が形成されている。貫通孔43,44は、円形に形成されている。
【0029】
2個の粘弾性体51,52は、ゴム弾性体またはその他のエラストマーにより、柱状に形成されている。本実施形態においては、2個の粘弾性体51,52は、四角柱状に形成されているが、円柱状など任意の形状とすることができる。2個の粘弾性体51,52は、第一取付部材20と第二取付部材40との間に介在するように配置される。詳細には、2個の粘弾性体51,52は、第一取付部材20の上方張出部22,23の第一係合孔22a,23aの部分と、第二取付部材40の第二係合孔41,42の部分との間に挟まれる。
【0030】
2個の第一係合部材61,62は、粘弾性体51,52の第一面(
図4の下面)に一体に設けられている。第一係合部材61,62は、樹脂により形成されており、粘弾性体51,52に比べて大きな弾性率を有する。第一係合部材61,62は、例えば、二色成形により、粘弾性体51,52との一体結合されている。
【0031】
第一係合部材61,62は、第一取付部材20に着脱可能に係合される。第一係合部材61,62は、第一座板61a,62a、および、複数の第一弾性片61b,62bを備える。第一座板61a,62aは、粘弾性体51,52の第一面に接着され、粘弾性体51,52の第一面に対応する形状であって粘弾性体51,52より僅かに大きな形状に形成される。第一座板61a,62aは、矩形に形成されている。
【0032】
第一弾性片61b,62bは、第一座板61a,62aから法線方向に突出する。本実施形態においては、第一弾性片61b,62bは、矩形の各辺(4辺)に位置するように形成されている。なお、第一弾性片61b,62bは、矩形の対向する2辺に配置するようにしてもよいし、円弧状に形成されるようにしてもよい。第一弾性片61b,62bは、上方張出部22,23の第一係合孔22a,23aに挿通可能である。第一弾性片61b,62bは、相互に寄り合う方向(縮径する方向(中心側))へ変形することが可能である。つまり、第一弾性片61b,62bは、第一係合孔22a,23aへ挿通可能となるように、第一係合孔22a,23aの中心側へ弾性変形可能である。そして、第一弾性片61b,62bは、第一係合孔22a,23aに対して着脱可能である。
【0033】
さらに、第一弾性片61b,62bの先端の径方向外側には、第一弾性片61b,62bが第一係合孔22a,23aに挿通された状態で、第一係合孔22a,23aの縁に係止する係止爪61b1,62b1が形成されている。
【0034】
2個の第二係合部材71,72は、粘弾性体51,52の第一面の裏面側に位置する第二面(
図4の上面)に一体に設けられている。第二係合部材71,72は、樹脂により形成されており、粘弾性体51,52に比べて大きな弾性率を有する。第二係合部材71,72は、例えば、二色成形により、粘弾性体51,52との一体結合されている。
【0035】
第二係合部材71,72は、第二取付部材40に着脱可能に係合される。第二係合部材71,72は、第二座板71a,72a、および、複数の第二弾性片71b,72bを備える。第二座板71a,72aは、粘弾性体51,52の第二面に接着され、粘弾性体51,52の第二面に対応する形状であって粘弾性体51,52より僅かに大きな形状に形成される。第二座板71a,72aは、矩形に形成されている。
【0036】
第二弾性片71b,72bは、第二座板71a,72aから法線方向に突出する。本実施形態においては、第二弾性片71b,72bは、矩形の各辺(4辺)に位置するように形成されている。なお、第二弾性片71b,72bは、矩形の対向する2辺に配置するようにしてもよいし、円弧状に形成されるようにしてもよい。第二弾性片71b,72bは、第二取付部材40の第二係合孔41,42に挿通可能である。第二弾性片71b,72bは、相互に寄り合う方向(縮径する方向(中心側))へ変形することが可能である。つまり、第二弾性片71b,72bは、第二係合孔41,42へ挿通可能となるように、第二係合孔41,42の中心側へ弾性変形可能である。そして、第二弾性片71b,72bは、第二係合孔41,42に対して着脱可能である。
【0037】
さらに、第二弾性片71b,72bの先端の径方向外側には、第二弾性片71b,72bが第二係合孔41,42に挿通された状態で、第二係合孔41,42の縁に係止する係止爪71b1,72b1が形成されている。
【0038】
2個の第二取付ボルト81,82は、マス10と第二取付部材40とを固定するための部材である。第二取付ボルト81,82は、金属により形成される。第二取付ボルト81,82は、マス10とは別体に形成され、マス10に形成された貫通孔(図示せず)に挿通される。また、第二取付ボルト81,82は、マス10に形成された雌ねじに螺合することでマス10と一体化されるようにしてもよい。さらに、マス10が鋳造により成形される場合には、第二取付ボルト81,82は、マス10の内部に雌ねじをインサート成形して、雌ねじに螺合することでマス10と一体化されるようにしてもよい。
【0039】
さらに、第二取付ボルト81,82は、マス本体部11の底面の長手方向の両端付近において、底面から制振対象2の面外振動方向に延びるように突出する。さらに、第二取付ボルト81,82は、先端(
図4の下端)に雄ネジを有する。第二取付ボルト81,82の先端は、第二取付部材40の2個の貫通孔43,44に挿通される。
【0040】
第二取付ボルト81,82は、粘弾性体51,52と対向する範囲から外れた位置に位置する。本実施形態においては、第二取付ボルト81,82は、2個の粘弾性体51,52の両外側に位置する。その他に、第二取付ボルト81,82は、2個の粘弾性体51,52の内側に位置するようにしてもよい。
【0041】
2個の介装部材91,92は、例えば、円環状に形成されている。本実施形態においては、介装部材91,92は、マス本体部11と一体に成形されている。ただし、介装部材91,92は、第二取付部材40と一体に形成されるようにしてもよく、マス10および第二取付部材40と別体に形成されるようにしてもよい。
【0042】
そして、介装部材91,92は、第二取付ボルト81,82を挿通した状態で、マス本体部11の底面と第二取付部材40との間に介在する。つまり、介装部材91,92により、マス本体部11の下面と第二取付部材40の上面との間に、隙間が形成される。なお、当該隙間が、第二弾性片71b、72bの係止爪71b1,72b1が位置する領域として利用される。
【0043】
また、介装部材91,92は、制振対象2の制振方向に2個の粘弾性体51,52と対向する範囲から外れた位置に位置する。詳細には、2個の介装部材91,92は、2個の粘弾性体51,52を結ぶ直線上に配置される。本実施形態においては、2個の介装部材91,92は、2個の粘弾性体51,52の両外側にそれぞれ配置される。
【0044】
2個のナット86,87は、2個の第二取付ボルト81,82の先端に螺合される。2個のナット86,87は、マス本体部11の底面との間に、第二取付部材40と2個の介装部材91,92のそれぞれとを挟み込む。つまり、2個のナット86,87は、マス10に第二取付部材40および2個の介装部材91,92を固定する。
【0045】
(1−3.制振装置3の組付方法)
制振装置3をブラケット2cに組み付ける方法(制振構造1の組付方法)について、
図4−
図7を参照して説明する。第一係合部材61の第一弾性片61bを、第一取付部材20の第一係合孔22aに挿通する。そして、
図5および
図6に示すように、第一弾性片61bの係止爪61b1が、第一係合孔22aの縁に係止される。第二係合部材71の第二弾性片71bを、第二取付部材40の第二係合孔41に挿通する。このとき、第二弾性片71bの係止爪71b1が、第二係合孔41の縁に係止される。このようにして、粘弾性体51が、第一取付部材20と第二取付部材40との間に固定される。
【0046】
もう一つの粘弾性体52についても、同様に組み付ける。すなわち、第一係合部材62の第一弾性片62bを、第一取付部材20の第一係合孔23aに挿通する。このとき、第一弾性片62bの係止爪62b1が、第一係合孔23aの縁に係止される。第二係合部材72の第二弾性片72bを、第二取付部材40の第二係合孔42に挿通する。このとき、第二弾性片72bの係止爪72b1が、第二係合孔42の縁に係止される。このようにして、粘弾性体52が、第一取付部材20と第二取付部材40との間に固定される。
【0047】
続いて、マス10を第二取付部材40に固定する。詳細には、
図4−
図6に示すように、第二取付ボルト81,82を、第二取付部材40の貫通孔43,44に挿通し、ナット86,87により締結する。このとき、
図5および
図6に示すように、マス突起12が、第二弾性片71bよりも第二係合孔41の中心側に挿通される。従って、マス突起12は、第二弾性片71bが第二係合孔41の中心側へ変形することを規制する。特に、マス突起12は、第二弾性片71bの先端側から挿入されている。従って、マス突起12は、第二弾性片71bの先端側が第二係合孔41の中心側へ変形することを、確実に規制する。
【0048】
同様に、マス突起13が、第二弾性片72bよりも第二係合孔42の中心側に挿通される。従って、マス突起13が、第二弾性片72bが、第二係合孔42の中心側へ変形することを規制する。特に、マス突起13は、第二弾性片72bの先端側から挿入されている。従って、マス突起13は、第二弾性片72bの先端側が第二係合孔42の中心側へ変形することを、確実に規制する。
【0049】
続いて、第一取付部材20の接地部21を、ブラケット2cに接地する。このとき、
図5に示すように、接地部21の切欠21a,21bを、ブラケット2cの貫通孔2c3,2c4に合わせる。この状態で、第一取付ボルト31,32を、切欠21a,21bおよび貫通孔2c3,2c4に挿通して、ナット2c5,2c6に締結する。このようにして、制振装置3が、ブラケット2cに固定される。
【0050】
このとき、
図5および
図6に示すように、ブラケット2cの対象突起2c1,2c2が、第一弾性片61b,62bよりも第一係合孔22a,23aの中心側に挿通される。従って、対象突起2c1,2c2は、第一弾性片61b,62bが第一係合孔22a,23aの中心側へ変形することを規制する。特に、対象突起2c1,2c2は、第一弾性片61b,62bの先端側から挿入されている。従って、対象突起2c1,2c2は、第一弾性片61b,62bの先端側が第一係合孔22a,23aの中心側へ変形することを、確実に規制する。
【0051】
(1−4.抜け止め効果)
上述したように、制振構造1によれば、対象突起2c1,2c2が第一弾性片61b,62bの変形を規制するため、第一弾性片61b,62bが、第一係合孔22a,23aから外れることを抑制できる。ここで、対象突起2c1,2c2は、制振対象2のブラケット2cに設けられている。つまり、制振対象2のブラケット2cが、制振対象2自体であることに加えて、変形規制のための部材としても機能する。そのため、第一弾性片61b,62bの変形を規制するための専用部材を用いる必要がないため、制振構造1においては、部品点数が増加しない。そして、第一取付部材20を制振対象2のブラケット2cに取り付けるだけで、第一弾性片61b,62bの変形を規制することができる。つまり、組付工数も増加しない。
【0052】
また、制振構造1によれば、マス突起12,13が第二弾性片71b,72bの変形を規制するため、第二弾性片71b,72bが、第二係合孔41,42から外れることを抑制できる。ここで、マス突起12,13は、マス10に設けられている。つまり、マス10が、マス10自体であることに加えて、変形規制のための部材としても機能する。そのため、第二弾性片71b,72bの変形を規制するための専用部材を用いる必要がないため、制振構造1においては、部品点数が増加しない。そして、第二取付部材40をマス10に取り付けるだけで、第二弾性片71b,72bの変形を規制することができる。つまり、組付工数も増加しない。
【0053】
(1−5.制振装置3による制振動作)
図5に示すように、マス本体部11の底面と第二取付部材40との間に、2個の介装部材91,92が介在する。そのため、マス本体部11の底面と第二取付部材40との対向面間には、2個の介装部材91,92が介在する位置を除いて、制振対象2の制振方向に隙間Aが形成される。
【0054】
さらに、2個の介装部材91,92は、制振対象2の制振方向に2個の粘弾性体51,52と対向する範囲から外れた位置に位置する。従って、第二取付部材40において、2個の粘弾性体51,52の固定位置と2個の介装部材91,92の固定位置との間が、板バネB,Cを形成する。
【0055】
つまり、2個の粘弾性体51,52と2個の板バネB,Cが、制振対象2とマス10との間で直列となる複合バネを形成する。制振装置3においては、制振対象2側からマス10に向かって、粘弾性体51,52、板バネB,Cの順に配列される。
【0056】
ここで、制振装置3において、2個の粘弾性体51,52が、第一取付部材20と第二取付部材40の両端付近を支持しているため、第二取付部材40は、2個の粘弾性体51,52により両持ち支持されている。さらに、制振装置3において、2個の板バネB,Cが、第二取付部材40とマス10の両端付近を支持しているため、マス10は、2個の板バネB,Cにより両持ち支持されている。
【0057】
さらに、一方の介装部材91と一方の粘弾性体51との離間距離と、他方の介装部材92と他方の粘弾性体52との離間距離とは、同一である。つまり、板バネBと板バネCとは、同一長さを有すると共に同一材料であるため、同一のバネ特性を有する。
【0058】
上記実施形態の制振装置3と、介装部材91,92を備えない構成とについて、マス10の質量を同一とした場合には、以下のようになる。制振装置3における共振周波数が、介装部材91,92を有しない構成に比べて低周波数側に位置する。さらに、制振装置3の共振周波数における最大値は、介装部材91,92を備えない構成に比べて大きくなっている。さらに、制振装置3の制振特性は、介装部材91,92を備えない構成に比べて、ピーキーな特性となる。ピーキーな特性とは、共振の鋭さが強くなることを意味し、Q値が大きくなることに相当する。Q値は、共振の鋭さを表す指標であり、振動エネルギーが共振周波数における振動エネルギーの半値となる2つの周波数の差Δfに対する、共振周波数f0の比(f0/Δf)である。
【0059】
また、制振装置3と、介装部材91,92を備えない構成とについて、制振対象の周波数を同一とした場合には、以下のようになる。制振装置3の伝達関数の最大値は、介装部材91,92を備えない構成に比べて大きくなる。さらに、制振装置3においてマス10の質量は、介装部材91,92を備えない構成に比べて小さくできる。つまり、介装部材91,92の存在により、制振効果を高くすることができると共に、マス10の軽量化を図ることができる。
【0060】
(2.第一実施形態の変形態様)
第一実施形態において、第一係合部材61,62が第一弾性片61b,62bを備え、第一取付部材20が第一係合孔22a,23aを備えることとした。この関係を反対にすることも可能である。すなわち、第一係合部材61,62が、第一係合孔22a,23aを備え、第一取付部材20が第一弾性片61b、62bを備えるようにしてもよい。この場合、対象突起2c1,2c2は、同様に、第一弾性片61b,62bの内側に挿入される。
【0061】
また、第一実施形態において、第二係合部材71,72が第二弾性片71b,72bを備え、第二取付部材40が第二係合孔41,42を備えることとした。この関係を反対にすることも可能である。すなわち、第二係合部材71,72が、第二係合孔41,42を備え、第二取付部材40が第二弾性片71b、72bを備えるようにしてもよい。この場合、マス突起12,13は、同様に、第二弾性片71b,72bの内側に挿入される。
【0062】
(3.第二実施形態)
第二実施形態の制振構造100について、
図8を参照して説明する。第二実施形態の制振構造100において、第一実施形態と同一構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0063】
制振構造100においては、ブラケット2cが対象突起2c1,2c2(
図5に示す)を備えず、マス突起12,13が、第二弾性片71b,72bの内側に挿通されるのみならず、第一弾性片61b,62bの内側にまで挿通される。制振構造100の詳細な構成は、以下の通りである。
【0064】
粘弾性体51が、貫通孔151aを備える。第一係合部材61の第一座板61a、および、第二係合部材71の第二座板71aが、粘弾性体51の貫通孔151aに対応する貫通孔161a1,171a1を備える。マス突起12は、第二係合部材71の第二弾性片71bの内側を挿通し、さらに、第二係合部材71の貫通孔171a1、粘弾性体51の貫通孔151aおよび第一係合部材61の貫通孔161a1を挿通し、第一弾性片61bの内側に到達する。
【0065】
つまり、マス突起12が、第一実施形態のマス突起12の機能に加えて、対象突起2c1の機能を有する。この場合も同様の効果を奏する。なお、粘弾性体51が貫通孔151aを備えるため、粘弾性体51の外形が、第一実施形態の粘弾性体51に比べて大きくなる。
【0066】
(4.第三実施形態)
第三実施形態の制振構造200について、
図9を参照して説明する。第三実施形態の制振構造200において、第一実施形態と同一構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0067】
制振構造200においては、マス10がマス突起12,13を備えず(
図5に示す)、ブラケット2cの対象突起2c1,2c2が、第一弾性片61b,62bの内側に挿通されるのみならず、第二弾性片71b,72bの内側にまで挿通される。制振構造200の詳細な構成は、以下の通りである。
【0068】
粘弾性体51が、貫通孔151aを備える。第一係合部材61の第一座板61a、および、第二係合部材71の第二座板71aが、粘弾性体51の貫通孔151aに対応する貫通孔161a1,171a1を備える。対象突起2c1は、第一係合部材61の第一弾性片61bの内側を挿通し、さらに、第二係合部材71の貫通孔171a1、粘弾性体51の貫通孔151aおよび第一係合部材61の貫通孔161a1を挿通し、第二係合部材71の第二弾性片71bの内側に到達する。つまり、対象突起2c1が、第一実施形態の対象突起2c1の機能に加えて、マス突起12の機能を有する。この場合も同様の効果を奏する。