(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
円筒形セラミックス焼結体からなるターゲット材と円筒状のバッキングチューブとのクリアランスに溶融した接合材が充填される円筒形スパッタリングターゲットの製造方法であって、
前記ターゲット材の上端面に円筒状のダミーパイプを連結し、前記ターゲット材の中空部に前記バッキングチューブを同軸に設置して、前記ダミーパイプと前記バッキングチューブとのクリアランスに複数の固定具を円周方向に等間隔に取り付ける配置工程と、
前記ターゲット材と前記バッキングチューブとのクリアランスに前記接合材を充填する充填工程と、
前記接合材を冷却し、前記ターゲット材と前記バッキングチューブとを接合する接合工程とを有することを特徴とする円筒形スパッタリングターゲットの製造方法。
前記充填工程では、前記ダミーパイプと前記バッキングチューブとのクリアランスに前記ダミーパイプの所定の高さ位置まで前記接合材をさらに充填することを特徴とする請求項2記載の円筒形スパッタリングターゲットの製造方法。
前記配置工程では、前記ダミーパイプと前記バッキングチューブとのクリアランスに、前記固定具を4ヶ所、円周方向に等間隔に取り付けることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項記載の円筒形スパッタリングターゲットの製造方法。
前記配置工程では、前記ターゲット材の上端面に前記ダミーパイプを連結した後、前記ターゲット材の中空部に前記バッキングチューブを同軸に設置して、前記ダミーパイプと前記バッキングチューブとのクリアランスに複数の固定具を円周方向に等間隔に取り付けることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項記載の円筒形スパッタリングターゲットの製造方法。
前記配置工程では、前記ターゲット材の中空部に前記バッキングチューブを同軸に設置した後、前記ターゲット材の上端面に前記ダミーパイプを連結して、前記ダミーパイプと前記バッキングチューブとのクリアランスに複数の固定具を円周方向に等間隔に取り付けることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項記載の円筒形スパッタリングターゲットの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0022】
[1.円筒形スパッタリングターゲットの概要]
まず、本発明の一実施形態に係る円筒形スパッタリングターゲットの製造方法で製造される円筒形スパッタリングターゲットの構成について、図面を使用しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る円筒形スパッタリングターゲットの製造方法で製造される円筒形スパッタリングターゲットの概略断面図である。
【0023】
図1に示すように、円筒形スパッタリングターゲット1は、円筒形のターゲット材10が円筒形のバッキングチューブ20の外周面に設置されたものであり、ターゲット材10とバッキングチューブ20とが接合層30を介して接合されている。本実施形態では、円筒形スパッタリングターゲット1は、ターゲット材10の内周面側に有する中空部にバッキングチューブ20を同軸に配置して、これらターゲット材10とバッキングチューブ20の中心軸が一致した状態で接合層を介して接合されたものとなっている。すなわち、円筒形スパッタリングターゲット1は、ターゲット材10の内周面とバッキングチューブ20の外周面とを接合層30を介して一体となるように接合されたものとなっている。
【0024】
円筒形スパッタリングターゲット1のサイズは、材質や顧客の要望等に応じて適宜調整することができ、特に限定されるものではない。例えば、外径が100mm〜200mm、内径が80mm〜180mm、全長が50mm〜200mmの円筒形セラミックス焼結体をターゲット材10として用いた場合には、そのターゲット材10を単独で用いるとき、分割して用いるとき、あるいは複数で用いるとき等があり、その状況により円筒形スパッタリングターゲット1のサイズが適宜決定される。
【0025】
ターゲット材10は、円筒形セラミックス焼結体からなり、当該円筒形セラミックス焼結体は、用途に応じて材料を適宜選択することができ、特に限定されることはない。例えば、インジウム(In)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、及びチタン(Ti)から選択される少なくとも1種を主成分とする酸化物等から構成される円筒形セラミックス焼結体を使用することができる。
【0026】
特に、後述する低融点接合材と馴染みやすい酸化インジウムを主成分とする円筒形セラミックス焼結体、具体的には、スズを含有する酸化インジウム(ITO)、セリウム(Ce)を含有する酸化インジウム(ICO)、ガリウム(Ga)を含有する酸化インジウム(IGO)、ガリウム及び亜鉛を含有する酸化インジウム(IGZO)等から構成される円筒形セラミックス焼結体がターゲット材10として好適に利用される。
【0027】
ターゲット材10の外径及び全長は、円筒形スパッタリングターゲットのサイズに応じて適宜調整することが可能である。ターゲット材10の内径は、ターゲット材10の内周面とバッキングチューブ20の外周面との間のクリアランスの幅及びバッキングチューブの外径に応じて適宜調整することが可能であり、これらは、特に限定されるものではない。また、ターゲット材10としては、1つの円筒形セラミックス焼結体から構成されるものだけでなく、複数の円筒形セラミックス焼結体を連結したものを使用することができる。円筒形セラミックス焼結体同士の連結方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができる。
【0028】
ターゲット材10の内周面に対して、めっき処理などによりニッケルや銅からなる下地層を形成したり、超音波はんだごてを用いて、接合材を接合面になじませる濡らし作業を行ったりといった前処理を行なってもよい。
【0029】
バッキングチューブ20は、その材質が円筒形スパッタリングターゲット1の使用時に、接合層30が劣化及び溶融しない十分な冷却効率を確保できる熱伝導性があり、スパッタリング時に、放電可能な電気伝導性、円筒形スパッタリングターゲット1の支持が可能な強度等を備えているものであればよい。バッキングチューブ20として、例えば、一般的なオーステナイト系ステンレス製、特にSUS304製のものに加えて、銅又は銅合金、チタン又はチタン合金、モリブデン又はモリブデン合金、アルミニウム又はアルミニウム合金等の各種材質を使用することができる。
【0030】
また、バッキングチューブ20は、公知の表面処理を施すことができる。例えば、旋盤加工等で得られたバッキングチューブ20の表面をブラスト加工により、クリーニングすることが好ましい。このようにブラスト加工を行うことによって、旋盤加工で付着した異物、油分をクリーニングすると共に、比表面積増加による接合材の濡れ性が向上できる。
【0031】
バッキングチューブ20の全長は、円筒形スパッタリングターゲット1のサイズに応じて適宜調整することが可能である。内径は、スパッタリング装置に応じて適宜調整することが可能であり、これらは特に限定されるものではない。また、バッキングチューブ20の外径は、下地層の厚さと共に、ターゲット材10とバッキングチューブ20との線膨張率の差を考慮して設定することが好ましい。
【0032】
例えば、ターゲット材10として、20℃における線膨張率が7.2×10
−6/℃のITOを使用し、バッキングチューブとして、20℃における線膨張率が17.3×10
−6/℃であるSUS304を使用する場合には、ターゲット材10とバッキングチューブ20とのクリアランスの幅が、好ましくは0.3mm〜3.0mm、より好ましくは0.5mm〜1.0mmとなるように、バッキングチューブ20の外径を設定する。
【0033】
ターゲット材10とバッキングチューブ20とのクリアランスの幅が0.3mm未満では、溶融した接合材をこの隙間に注入した場合に、バッキングチューブ20が熱膨張し、ターゲット材10が割れてしまう虞がある。一方、隙間の幅が3.0mmを超えると、ターゲット材10の中空部に、バッキングチューブ20を同軸に配置し、これらの中心軸が一致した状態で接合することが困難となる。
【0034】
接合層30は、例えば、インジウムからなり、ターゲット材10とバッキングチューブ20とを接合する。接合層30の役割は、放電により円筒形スパッタリングターゲット1上に発生した熱をバッキングチューブ20の内側を流れる冷却液で放熱するため、ターゲット材10とバッキングチューブ20との熱的な伝達を行うことにある。すなわち、接合層30は、円筒形スパッタリングターゲット1を使用する際に、バッキングチューブ20と同様にして、熱伝導性、電気伝導性、接着強度等を備えていればよい。
【0035】
[2.円筒形スパッタリングターゲットの製造方法]
次に、本発明の一実施形態に係る円筒形スパッタリングターゲットの製造方法について、図面を使用しながら説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係る円筒形スパッタリングターゲットの製造方法の概略を示すフロー図である。
図3(A)ないし(F)は、本発明の一実施形態に係る円筒形スパッタリングターゲットの製造方法の概略を模式的に示す断面図である。本実施形態に係る円筒形スパッタリングターゲットの製造方法は、円筒形セラミックス焼結体からなるターゲット材と円筒状のバッキングチューブとのクリアランスに接合材が充填される。そして、本実施形態は、
図2に示すように、配置工程S1と押さえ工程S2と充填工程S3と接合工程S4とを有する。以下、各工程S1〜S4について図面を使用しながら説明する。
【0036】
配置工程S1は、ターゲット材の上端面に円筒状のダミーパイプを連結し、このターゲット材の中空部にバッキングチューブを同軸に配置して、ダミーパイプとバッキングチューブとのクリアランスに複数の固定具を円周方向に等間隔に取り付ける工程である。
【0037】
まず、
図3(A)に示すように、円筒形セラミックス焼結体からなるターゲット材10の上端面11にダミーパイプ40を連結する。
【0038】
ダミーパイプ40は、ターゲット材10およびバッキングチューブ20のクリアランスに接合材を充填する際に、ターゲット材10とバッキングチューブ20とのクリアランスの上方の開口端まで接合層30で形成されるよう、ターゲット材10の上端面11よりも高い位置に接合材31が充填されても、接合材31が系外に漏れないよう堰止めする機能を有する。
【0039】
このダミーパイプ40は、ターゲット材10の上端面11に連結される。後工程の充填工程S3では、ダミーパイプ40を連結したことにより、ターゲット材10及びバッキングチューブ20を接合材31で充填した際に、ターゲット材10の上端面11よりも高い位置にあるダミーパイプ40の所定の高さまで接合材31を充填することが可能となる。その結果、接合層30を形成する冷却時に、接合材31が体積収縮しても、接合層30の上端面の位置は、ターゲット材10の上端面11と同じ高さとなる。すなわち、ターゲット材10とバッキングチューブ20とのクリアランスには、ターゲット材10の上端面11付近が未充填とならずに、接合材31を充填することができる。
【0040】
ダミーパイプ40は、Cu材やSUS材で作製し、前述した前処理等を行わない。これにより、接合工程S4において接合層30を形成した後、ダミーパイプ40に接着した接合材は、容易に剥離させることができる。このダミーパイプ40の外径及び内径は、ターゲット材10と略同一に設定する。形状を略同一にすることで、ターゲット材と同等に扱うことができる。ダミーパイプ40の長さは、特に限定されないが、ダミーパイプとバッキングチューブのクリアランスに少なくとも固定具60(
図3(C)参照)を配置するにあたり、この固定具60の長さより長くする。ダミーパイプ40の長さが固定具60の長さより短い場合、このような固定具60は、ターゲット材10とバッキングチューブ20とのクリアランス内に残ってしまう。固定具60の長さをダミーパイプ40の長さより短くすることで、円筒形スパッタリングターゲット1の接合層30を接合材31のみで充填することができる。詳細は後述する。
【0041】
ターゲット材10およびダミーパイプ40は、各々の外周または内周を基準に中心軸が同一になるように配置する。中心軸を合わせる方法としては、特に限定されない。例えば、ターゲット材10およびダミーパイプ40とほぼ同径の基準パイプを用いて、ターゲット材10およびダミーパイプ40の内側に配置して中心軸を合わせてもよい。また、バッキングチューブ20を活用し、バッキングチューブ20とターゲット材10及びダミーパイプ40とのクリアランスに円周方向に均等に複数のスペーサーを入れて中心軸を合わせてもよい。このように、ターゲット材10およびダミーパイプ40との中心軸を一致させた状態で、ターゲット材10およびダミーパイプ40を連結する。なお、ターゲット材10およびダミーパイプ40を連結した後、中心軸を合わせるために使用した基準パイプやスペーサーを取り外す。
【0042】
ターゲット材10およびダミーパイプ40の連結手段は、特に限定されない。例えば、ターゲット材10とダミーパイプ40とのつなぎ目周辺の外周を、耐熱テープ等を巻くことで連結する。また、ターゲット材10を複数用いる場合には、ターゲット材10およびダミーパイプ40との連結方法と同様に、ターゲット材10同士のつなぎ目周辺の外周を、耐熱テープ等を巻くことで連結してもよい。
【0043】
次いで、
図3(B)および(C)に示すように、バッキングチューブ20を、ダミーパイプ40と連結されたターゲット材10の中空部に同軸に設置する。すなわち、ターゲット材10およびバッキングチューブ20の中心軸が一致した状態で配置し、両者を接合することが重要となる。両者の中心軸がずれた状態でターゲット材10とバッキングチューブ20とを接合材31を介して接合すると、得られる円筒形スパッタリングターゲットの外径の中心と内径の中心が必然的にずれる。その結果、スパッタリング時の熱負荷により、円筒形スパッタリングターゲットが不均一に膨張し、ターゲット材に割れや剥離が生じるおそれがある。
【0044】
まず、バッキングチューブ20を、ダミーパイプ40と連結されたターゲット材10の中空部に同軸に配置する。この位置に配置する方法としては、特に制限されることなく、公知の手段を用いることができる。例えば、X−Yステージと固定具を用いて位置決めをすることにより、バッキングチューブ20を、ターゲット材10の中空部に同軸に配置することができる。詳細には、バッキングチューブ20は、X−Yステージによる位置決め可能な架台50に一方の端を、上記架台50の上面に形成された凹部51に固定して設置する。なお、この時、後述する第2の押さえ機構70(
図4参照)でバッキングチューブ20の上端面21を押圧してもよい。押圧することにより、このバッキングチューブ20がさらに固定される。バッキングチューブ20は、凹部51に固定する他に、接着剤等を塗布した接着面に固定してもよい。
【0045】
このバッキングチューブ20には、軸方向の端部を耐熱Oリング52によって封止し、その後、バッキングチューブ20にターゲット材10の中空部に配置するとともに、この封止側が下方となるように、ターゲット材10とバッキングチューブ20を直立させて配置する。
【0046】
また、
図3(B)のような配置状態とするため、上述した手順と異なり、ターゲット材10の中空部にバッキングチューブ20を同軸に設置した後、ターゲット材10の上端面11にダミーパイプ40を連結してもよい。
【0047】
詳細には、X−Yステージを用いて位置決めをすることにより、バッキングチューブ20を、ターゲット材10の中空部に同軸に配置する。バッキングチューブ20は、X−Yステージによる位置決め可能な架台50に一方の端を、上記架台50の上面に形成された凹部51に固定して設置する。このバッキングチューブ20には、軸方向の端部を耐熱Oリング52によって封止し、その後、バッキングチューブ20にターゲット材10の中空部に同軸に配置するとともに、この封止側が下方となるように、ターゲット材10とバッキングチューブ20を直立させて配置する。
【0048】
そして、ターゲット材10の上端面11には、ダミーパイプ40を連結させる。ここで、ターゲット材10およびダミーパイプ40の中心軸を一致させるために、ターゲット材10およびダミーパイプ40とバッキングチューブ20とのクリアランスに、ターゲット材10およびダミーパイプ40の長さを超えるスペーサーを円周方向に等間隔に配置し、ターゲット材10およびダミーパイプ40とバッキングチューブ20とが同軸になるように位置合わせを行う。その後、ターゲット材10とダミーパイプ40との外周面のつなぎ目を耐熱テープで巻き同一の位置に固定すればよい。なお、ターゲット材10およびダミーパイプ40を連結した後、中心軸を合わせるために使用したスペーサーを取り外す。
【0049】
次いで、
図3(C)に示すように、ターゲット材10の下方側はX−Yステージによる位置決めをし、ダミーパイプ40側は、ダミーパイプ40とバッキングチューブ20とのクリアランスに固定具60を取り付ける。これにより、ターゲット材10とバッキングチューブ20を同軸に配置することができる。また、固定具60を取り付けているため、ターゲット材10とバッキングチューブ20とのクリアランスの幅は、一定に維持されることができる。
【0050】
詳細には、複数の固定具60が、ダミーパイプ40とバッキングチューブ20の上端部側のクリアランスに、円周方向に等間隔に取り付けられる。これにより、後述する充填工程S3および接合工程S4では、ターゲット材10とバッキングチューブ20とのクリアランスの幅を均等に維持しつつ、ターゲット材10とバッキングチューブ20とのクリアランスに充填する接合材の接合率を向上させることができる。また、固定具60は、少なくとも3ヶ所以上、円周方向に等間隔に取り付けられることが好ましい。さらに、固定具60は、等間隔に取り付けることの容易性や接合材31を充填するスペースの確保などの作業効率上の観点から、4ヶ所円周方向に等間隔に取り付けられることがより好ましい。
【0051】
また、固定具60は、ターゲット材10の上端部付近に固定具60を配置するだけではなく、ダミーパイプ40の長さよりも短いものを使用するのが好ましい。これにより、固定具60は、ダミーパイプ40とバッキングチューブ20とのクリアランスに留まり、ターゲット材10とバッキングチューブ20のクリアランスには、固定具60はなく接合材31のみを充填することができる。その結果、作製された円筒形スパッタリングターゲット1の接合率をさらに高めることができる。
【0052】
固定具60としては、例えば、クリアランスの厚さと同等またはクリアランスより若干薄い厚さのスペーサーやくさびやシックネスゲージを用いることができる。固定具60の材料は、特に限定されないが、例えば、テフロン(登録商標)、SUS材、Cu材等が挙げられる。
【0053】
次に、押さえ工程S2について図面を使用して説明する。
図4は、本発明の一実施形態に係る円筒形スパッタリングターゲットの製造方法に含まれる押さえ工程を示す断面図である。
図5は、本発明の一実施形態に係る円筒形スパッタリングターゲットの製造方法で使用される第1の押さえ機構を示す概略平面図である。押さえ工程S2は、ダミーパイプ40の上端面41を第1の押さえ機構70で押圧することにより、ダミーパイプ40を介してターゲット材10を固定し、かつバッキングチューブ20の上端面21を第2の押さえ機構80で押圧することにより、バッキングチューブ20を固定する工程である。本実施形態では、配置工程S1後に、この押さえ工程S2をさらに設けてもよい。
【0054】
第1の押さえ機構70および第2の押さえ機構80は、後述する充填工程S3および接合工程S4においてターゲット材10とバッキングチューブとのクリアランスの幅を均等に維持するため、ターゲット材10およびバッキングチューブ20を固定する機能を有する。
図4に示すように、前工程である配置工程S1でバッキングチューブ20を、ターゲット材10の中空部に同軸に、即ち、これらの中心軸が一致した状態で配置するため、第1の押さえ機構70によりダミーパイプ40を介してターゲット材10を固定し、かつ第2の押さえ機構80によりバッキングチューブ20を固定する。架台50の一端部には、支柱53が鉛直方向に設置され、この支柱53には、第1の押さえ機構70と第2の押さえ機構80とをそれぞれ取り付ける。
【0055】
第1の押さえ機構70は、支柱53から水平方向に延在される第1のアーム部71とその第1のアーム部71の先端部の下方側に第1の押さえ部72が設けられる。また、第2の押さえ機構80は、支柱53から水平方向に延在される第2のアーム部81とその第2のアーム部81の先端部の下方側に第2の押さえ部82が設けられる。第1および第2の押さえ機構70,80は、支柱53よりネジやばね等でターゲット材10およびバッキングチューブ20を鉛直下方に押圧することによりターゲット材10およびバッキングチューブ20を固定する。なお、バッキングチューブ20が、架台50に十分に固定されている場合は、ダミーパイプ40を介してターゲット材10のみを第1の押さえ機構70で固定してもよい。つまり、押さえ工程S2では、ターゲット材10およびバッキングチューブ20のうち、少なくともダミーパイプ40の上端面41を第1の押さえ機構70で押圧することにより、ダミーパイプ40を介してターゲット材10が固定されていればよい。
【0056】
また、第1の押さえ部72は、次工程である充填工程S3で接合材31をターゲット材10とバッキングチューブ20とのクリアランスに供給するため、接合材31の供給に干渉せずに、効率的に鉛直方向にダミーパイプ40を介してターゲット材10を固定することができるよう、ダミーパイプ40の上端面41のうち所定の領域に接するものであればよく、
図5に示すように、例えばハーフリング状に形成されたものがよい。
【0057】
次に、充填工程S3は、ターゲット材10とバッキングチューブ20とのクリアランスに接合材31を充填する工程である。すなわち、
図3(D)に示すように、ターゲット材10とバッキングチューブ20を直立させたまま、ダミーパイプ40とバッキングチューブ20とのクリアランスに固定具60を取り付けたことで、ターゲット材10とバッキングチューブ20との一定のクリアランスを維持し、ターゲット材10とバッキングチューブ20とのクリアランスに接合材31のみを充填する。
【0058】
従来、ターゲット材とバッキングチューブとのクリアランスには、接合材の充填とともに、クリアランスを維持するためのスペーサーが複数配置されたままであった。スペーサーは、クリアランスの狭い曲面に配置するため、形状にもよるが、接合材を充填した時、スペーサー角部や曲面との接触部分等に空隙が発生しやすいものとなる。この空隙が存在する接合層を形成したスパッタリングターゲットを使用してスパッタリングを行った場合、スパッタリング時の熱負荷によって、ターゲット材に割れや剥離等の不具合が生じることがある。また、このスペーサーは、一般的に熱膨張係数が高い銅材やステンレス材が用いられる一方、接合材はインジウム合金が用いられる。このため、接合材のみの箇所とスペーサーのある箇所のクリアランスでは、熱膨張係数に差があり、ターゲット材の割れや欠けの原因となる。また、スペーサーのある箇所は、バッキングチューブと接触し、接合材で接合されないため、高温になった場合、ターゲット材とのバッキングチューブとの剥離が起こりやすい。そこで、本実施形態では、上記接合層30に固定具60を残さないよう、上記クリアランスに接合材31のみを充填することで、上述した不具合を防止することができる。
【0059】
充填工程S3では、配置工程S1において接合層30を形成するため、ターゲット材10とバッキングチューブ20とのクリアランスの両端開口部の下端側を、耐熱Oリング52などの封止手段を用いて封止されている。ターゲット材10とバッキングチューブ20は、これらの間に流し込まれる接合材31の融点以上にバンドヒータ(不図示)などで加熱される。
【0060】
ターゲット材10とバッキングチューブ20とのクリアランスの両端開口部のうち、封止されていない上端側から溶融状態にある接合材31を流し込む。充填された液体の接合材31がターゲット材10とバッキングチューブ20とのクリアランスの最下部より充填される。
【0061】
本実施形態では、
図3(D)に示すように、ターゲット材10の上端面11よりも高い位置、すなわち、ダミーパイプ40の所定の高さ位置まで接合材31を充填する。もし、ダミーパイプ40を利用しない場合には、接合材31を充填した後、接合材31の冷却時に、接合材31が体積収縮してターゲット材10の上端面11付近において、わずかに接合材31が充填されていない部分(以下、「未充填部」ともいう。)が生じる。そのため、ターゲット材10とバッキングチューブ20とのクリアランスに未充填部があることで、接合材31の接合率が低下する。そこで、本実施形態では、ダミーパイプ40とバッキングチューブ20とのクリアランスにダミーパイプ40の所定の高さ位置まで接合材31を充填することにより、接合材31の接合率を向上させることができる。本実施形態で作製される円筒形スパッタリングターゲット1は、上記接合率が高いため、ターゲット材10とバッキングチューブ20との接合強度が高くなり、接合層30による熱伝導率が良好となる。その結果、この円筒形スパッタリングターゲット1では、バッキングチューブ20内部の通水による冷却効果が高く、マグネトロンスパッタリング法のような高パワーを投入することができる。
【0062】
上記所定の高さとしては、この接合層30の上端面の位置がターゲット材10の上端面11と同じ高さに調整するため、ダミーパイプ40の下端からターゲット材の高さの4%以上の位置まで接合材31を充填することが好ましい。この下限値は、インジウムの液体から固体への体積収縮率に基づき、接合材31を充填するダミーパイプ40の高さ位置を算出したものである。このように、ダミーパイプ40の当該下限値の高さまで溶融したインジウムからなる接合材31をターゲット材10とバッキングチューブ20とのクリアランスだけでなく、ダミーパイプ40とバッキングチューブ20とのクリアランスまで充填することにより、接合材31を冷却した際、接合層30の上端面の位置がターゲット材10の上端面11と同じ高さとなるため、接合率の高い円筒形スパッタリングターゲット1が得られる。上記ダミーパイプ40の長さは、上記下限値よりも長く設定する。例えば、上記下限値より+10mmとしてもよい。なお、後述する接合工程S4では、接合材が冷却により固化した接合層30のうち余分な接合層が存在する場合には、この接合層30の上端面の位置がターゲット材10の上端面11と同じ高さに調整するため、余分な接合層を除去する。
【0063】
ターゲット材10およびバッキングチューブ20は、予め、その表面温度が接合材31の融点以上、好ましくは融点より10℃〜30℃高い温度となるように加熱しておくことが必要である。ターゲット材10およびバッキングチューブ20の表面温度が接合材31の融点以下では、接合材31がターゲット材10またはバッキングチューブ20に接触すると同時に硬化し、十分な量の接合材31を流し込むことが困難となる。
【0064】
接合層30には、上述のバッキングチューブ20と同様にして、熱伝導性、電気伝導性、接着強度等の特性を持たせるためには、接合層30の形成に用いる接合材31を選定する必要がある。例えば、インジウムを主成分とする接合材31は、スズを主成分とする接合材に比べて凝固時の硬度が低い。そのため、インジウムを主成分とする接合材31を用いて接合層30を形成する場合には、溶融した接合材31を注入してから固化するまでの過程において、ターゲット材10の割れ等の不具合を効果的に防止することができる。
【0065】
また、インジウムを主成分とする接合材31を用いて接合層30を形成する場合には、インジウムを50質量%以上、好ましくは70質量%〜100質量%、より好ましくは80質量%〜100質量%含有するものを使用する必要がある。特に、インジウムを80質量%以上、好ましくは90質量%〜100質量%含有する低融点接合材を接合材31として用いることが好ましい。このような低融点接合材であれば、原子又は分子間の結合が弱いため軟らかく、冷却固化後の硬度が適切な範囲にあるため、作業性に優れている。また、低融点接合材は、作業性に優れるだけでなく、溶融時の流動性が高いため、巣(鬆)やひけが極めて少ない、均一な接合層30を容易に形成することができる。
【0066】
例えば、インジウムの含有量が100質量%であるインジウム金属を接合材31として用いた場合には、インジウム金属の熱伝導率が81.6W/m・Kと熱伝導性に優れることから好ましい。また、インジウム金属は、液化して固化することによりターゲット材10とバッキングチューブ20とを接合させる際に、これらの密着性を高く接合できることから好ましい。
【0067】
一方、インジウムの含有量が50質量%未満では、バッキングチューブ20側との濡れ性が低いため、そのような接合材31を加熱して溶融した接合材31をターゲット材10の内周面とバッキングチューブ20の外周面との間の空隙部に、高い充填性をもって隙間なく注入することができない。
【0068】
また、接合材31としては、上述したインジウム系低融点接合材の他に、インジウム粉末を含有する樹脂ペースト、導電性樹脂等を用いることができるが、導電性や展延性の観点から、インジウム系低融点接合材が好ましく、融点が130℃〜160℃のインジウム系低融点接合材がより好ましい。なお、インジウム以外の成分については、特に制限されることはなく、例えば、スズ、アンチモン(Sb)、亜鉛等を必要に応じて含有させることができる。インジウム以外の成分の含有量は、50質量%未満であり、30質量%未満が好ましく、20質量%未満がより好ましい。
【0069】
次に、接合工程S4では、
図3(E)に示すように、ターゲット材10およびダミーパイプ40とバッキングチューブ20とのクリアランスに充填した接合材31を冷却し、ターゲット材10とバッキングチューブ20とを接合する工程である。
【0070】
ターゲット材10およびバッキングチューブ20の表面にバンドヒータで熱をかけるのを停止し、室温(20℃)まで放冷することにより、充填した接合材31が固化することで接合層30を形成する。なお、冷却手段や冷却スピードは、適宜調整することができる。
【0071】
次いで、
図3(F)に示すように、ターゲット材10とバッキングチューブ20とのクリアランスに充填された接合材31が完全に固化して、接合層30が形成されたことを目視で確認した後、配置工程S1で使用したダミーパイプ40、架台50、耐熱Oリング52、固定具60等をそれぞれ取り除く。このように、円筒形スパッタリングターゲット1を作製する。
【0072】
以上で説明した通り、本実施形態に係る円筒形スパッタリングターゲットの製造方法は、ターゲット材の上端面に円筒状のダミーパイプを連結し、ターゲット材の中空部にバッキングチューブを同軸に設置して、ダミーパイプとバッキングチューブとのクリアランスに複数の固定具を円周方向に等間隔に取り付ける配置工程S1と、ターゲット材とバッキングチューブとのクリアランスに接合材を充填する充填工程S3と、接合材を冷却し、ターゲット材とバッキングチューブとを接合する接合工程S4とを有する。本実施形態では、充填工程S3および接合工程S4において、ターゲット材とバッキングチューブとのクリアランスの幅を均等に維持しつつ、ターゲット材とバッキングチューブとのクリアランスに充填する接合材の接合率を向上させることができる。そして、このような製造方法は、簡素かつ低コストで、接合率の高い円筒形スパッタリングターゲットを作製することができる。
【0073】
また、本実施形態では、スパッタリング時の熱負荷によって、ターゲット材に割れや剥離等の不具合が生じることのない円筒形スパッタリングターゲットを得ることができる。
【0074】
さらに、本実施形態では、工業規模の生産において、このような円筒形スパッタリングターゲットを容易に得ることができるので、その工業的意義は極めて大きい。
【実施例】
【0075】
以下、実施例及び比較例を用いて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例及び比較例に限定されるものではない。なお、実施例1〜2では、上述した本発明の一実施形態に係る円筒形スパッタリングターゲットの製造方法の概略を示すフロー図(
図2参照)を使用して以下説明する。
【0076】
(実施例1)
実施例1では、外径100mm、内径81mm、全長200mmのITO製の円筒形セラミックス焼結体を5つ用意した。次に、全ての円筒形セラミックス焼結体について、接合面となる内周面以外の部分に余分な接合材が付着することを防止するため、耐熱性のマスキングテープでマスキングを行った。その後、全ての円筒形セラミックス焼結体について、接合面となる内周面をインジウムで濡らすと共に、全長が1000mmとなるように、5個の円筒形セラミックス焼結体を一定間隔で配列し、外周面を耐熱テープで固定することにより、ターゲット材を得た。
【0077】
次に、実施例1では、外径80mm、内径70mm、全長1100mmのSUS304製の旋盤加工で得られた円筒形バッキングチューブを用意した。この円筒形バッキングチューブのうち、接合面以外の部分については、余分な接合材が付着することを防止するため、耐熱テープでマスキングを行った。その後、投射材としてガラスビーズ♯80を使用し、円筒形バッキングチューブについて、ブラスト加工を行った。
【0078】
その後、超音波ハンダ付け装置(会社名:黒田テクノ株式会社、製品名:サンボンダ(登録商標)USM−528)を使用し、インジウム系低融点半田を用いた公知の濡らし作業を行った。
【0079】
次に、配置工程S1では、ターゲット材と内径および外径が同じで長さが50mmのダミーパイプ(SUS製)を用意した。5個のターゲット材とダミーパイプとをダミーパイプが最上端になるように並べターゲット材の内径と、外径がほぼ同等の基準パイプをターゲット材の中空部に設置した。次に、ターゲット材とダミーパイプの外周面のつなぎ目を耐熱テープで巻き同一の位置に連結した。その後、基準パイプをターゲット材より取り外し、ダミーパイプと連結したターゲット材を得た。
【0080】
次に、バッキングチューブを、X−Yステージによる位置決め可能な架台に一方の端を固定して設置した。このバッキングチューブには、軸方向の端部に耐熱Oリングを配置した。その後、ダミーパイプをターゲット材の上端面に連結した。このターゲット材の中空部にバッキングチューブを配置するとともに、Oリングによりクリアランスの下方側を封止するように、ターゲット材とバッキングチューブを直立させて配置した。なお、ダミーパイプはターゲット材の上方になるように配置した。
【0081】
また、ターゲット材の下方側はX−Yステージによる位置決めし、ダミーパイプ側は、ダミーパイプとバッキングチューブのクリアランスに長さ10mmの固定具を4ヶ所、円周方向に等間隔に配置してターゲット材の中空部にバッキングチューブを同軸になるように位置決めを行った。なお、ターゲット材とバッキングチューブのクリアランスは、0.5mmであった。
【0082】
続いて、充填工程S3では、ターゲット材の外周面にバンドヒータを取り付け、設定温度を180℃として加熱した。また、インジウム系低融点半田を用意し、これをバンドヒータにより190℃まで加熱して溶融した。
【0083】
バンドヒータが設定温度に達したことを確認した後、上方のクリアランスの開口側から溶融した接合材を注入し、下端側から徐々に接合材が充填された。所定量(1017g)の接合材を注入された際に、ダミーパイプの所定の高さまで接合材が充填されたことを確認した。その後、接合工程S4では、バンドヒータのスイッチを切り、室温(20℃)まで放冷した。接合材が完全に固化して接合層が形成されたことを確認した後、ダミーパイプ、固定具、マスキングテープ、および耐熱Oリングを取り除き、円筒形スパッタリングターゲットを得た。
【0084】
実施例1では、得られた円筒形スパッタリングターゲットに対して、超音波探傷装置(会社名:株式会社KJTD、製品名:SDS−WIN)を用いて、接合材の充填量を測定し、この測定値より、ターゲット材と円筒形バッキングチューブとの接合率を評価した。具体的には、これらの接合率が95.0%以上のものを「優(◎)」、90.0%以上95.0%未満のものを「良(○)」、90.0%未満のもの、又は、ターゲット材が円筒形バッキングチューブから脱落し、接合率を評価できなかったものを「不良(×)」として評価した。
【0085】
実施例1では、得られた円筒形スパッタリングターゲットの接合率を、上記方法により評価した結果、何れも優れたものであることが確認された。また、円筒形スパッタリングターゲットをマグネトロン型回転カソードスパッタリング装置に取り付け、0.6Paのアルゴン雰囲気中、出力300Wで放電試験を実施したところ、スパッタリング中に、ターゲット材に割れや欠け等が生じることはなかった。
【0086】
実施例1では、接合率と放電試験の結果を表1にそれぞれ示した。なお、表1中の「接合率」は、クリアランス体積に対する、接合材を加熱して接合材がクリアランスに注入されて接合層が形成された場合の接合層の体積(溶融した接合材の充填量)をいう。また、表1中の「放電試験」には、放電試験後の円筒形スパッタリングターゲットの割れ、欠け、剥離等の不具合が生じたか否かの結果を、「有り」又は「無し」で示した。
【0087】
(実施例2)
実施例2では、実施例1と同様にターゲット材とバッキングチューブとを用意した。次いで、配置工程S1では、バッキングチューブを、X−Yステージによる位置決め可能な架台に一方の端を固定して設置した。このバッキングチューブには、軸方向の端部に耐熱Oリングを配置した。
【0088】
耐熱Oリングでターゲット材とバッキングチューブとのクリアランスの下端側を封止して、ターゲット材を積み重ね、ターゲット材の上端面にはダミーパイプを配置した。ターゲット材及びダミーパイプとバッキングチューブのクリアランスにターゲット材とダミーパイプとの長さを超えるスペーサーを3ヶ所配置し、同軸になるように位置合わせを行い、その後、ターゲット材とダミーパイプとの外周面のつなぎ目を耐熱テープで巻き同一の位置に固定した。固定後、スペーサーを取り除いた。
【0089】
次に、ターゲット材の下方側はX−Yステージによる位置決めをし、ダミーパイプ側は、ダミーパイプとバッキングチューブのクリアランスに長さ10mmの固定具を3ヶ所円周方向に等間隔に配置してターゲット材の中空部にバッキングチューブを同軸になるように位置決めを行った。
【0090】
また、押さえ工程S2では、接合材充填時のクリアランスのずれを防止するため、ダミーパイプの上端面を押さえ機構により押さえた。その他条件は、実施例1と同様とした。
【0091】
(比較例1)
比較例1では、ダミーパイプを使用せず、ターゲット材とバッキングチューブとのクリアランスに固定具を取り付け、接合材をクリアランスに充填して冷却した後も固定具を取り外さなかったこと以外は実施例1と同様にして、円筒形スパッタリングターゲットを作製した。また、この円筒形スパッタリングターゲットの接合率と放電試験の結果を表1にそれぞれ示した。
【0092】
【表1】
【0093】
(実施例による考察)
表1に示す結果から、実施例1および実施例2では、ダミーパイプとバッキングチューブのクリアランスに固定具を取り付けることで、ターゲット材とバッキングチューブとのクリアランス内を接合材のみで充填した円筒形スパッタリングターゲットが得られた。これにより、接合率が非常に高いものとなり、この円筒形スパッタリングターゲットを使用したスパッタリングでの放電試験でも良好な結果が得られた。
【0094】
一方、比較例1では、ダミーパイプを使用せず、ターゲット材とバッキングチューブとのクリアランスに固定具を取り付け、接合材をクリアランスに充填して冷却した後も固定具を取り外さなかった。そのため、上記クリアランス内に固定具があり、その近辺に空隙が発生し高い接合率が得られない部分が生じた。このため、比較例1では、放電試験中に、ターゲット材に割れ、欠けが入ったので、放電試験を行うことができなかった。