(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のフラップゲート式防波堤は、海底面に設置するに当たり、杭式又は重力式の基礎構造が必要であるため、海底面以下の地盤に砂層が厚く堆積している場合には、大地震(L1地震動又はL2地震動)の際に液状化が発生する恐れがあった。
そして、液状化が発生した場合には、海底地盤が流動化して基礎構造が大きく変形し、フラップゲート本体の底版が傾き、その結果、扉体の起立が阻害され、必要時に機能しないという事態が生じる可能性が有った。
【0005】
また、扉体が倒伏状態の際に、潮の満ち引きや波の影響により、海底の土砂や塵など(水底沈降物、堆積物)が扉体の上に堆積する可能性もあった。
【0006】
そこで、本願発明者らは、鋭意研究の結果、フラップゲート式防波堤の代わりに、浮上式防潮堤について検討し、水底面に上面開口を揃えて矩形状のケーソンを水底地盤に埋設し、ケーソンの内部空間の中央部に仕切壁により構造物昇降室を画成し、この昇降室内を水面上に突出可能な防潮構造物が昇降するように構成すれば、仮に地震動などでケーソンに変形や破損が生じても、その応力はケーソンの各側壁から離間して立設された各仕切壁にまで及び難いことに着目した。
その結果、防潮構造物は、津波発生時等の必要時に支障なく水面上まで浮上し、浮上式防潮堤はその機能を果せることを知見した。
【0007】
また、各浮上時流入室の上面開口部に、防潮構造物の浮上中のみ開蓋する蓋体を配置すれば、ケーソン内に侵入した水底沈降物が、仕切壁と防潮構造物との隙間に侵入することで発生する防潮構造物の浮上障害を無くせることを知見した。
【0008】
しかも、各仕切壁の下端部に連通口を形成し、ケーソン内の各浮上時流入室と構造物昇降室とを連通すれば、防潮構造物の浮上中、蓋体が開いた各上面開口部から各浮上時流入室に流れ込んだ水が、各連通口を経て、構造物昇降室に下方より流入することに着目した。
その結果、防潮構造物の浮上に伴なう構造物昇降室の負圧状態が解消され、防潮構造物をスムーズに浮上できることを知見した。
【0009】
さらに、防潮構造物の浮上後、各蓋体により各浮上時流入室の上端開口部が再び閉蓋するように構成すれば、例えば津波来襲時、各浮上時流入室の上端開口部の開蓋によりケーソン内に流水路が形成され、この流水路を通して、防潮構造物が堰き止めた堤外(例えば湾外)から堤内(例えば湾内)への水の流れ込みを阻止できることを知見し、この発明を完成させた。
【0010】
この発明は、水底地盤が地震動などによって変形しても、構造物昇降室における防潮構造物の昇降への影響が少なく、かつ水底沈降物の仕切壁と防潮構造物との隙間への侵入を原因とした防潮構造物の浮上障害を防止することができ、また防潮堤作動時に防潮構造物をスムーズに浮上可能であるとともに、防潮構造物の浮上によってケーソン内に現出した流水路を介して、堤外から堤内へ向かう水の流れを浮上時流入室の上面開口部を閉蓋することで阻止できる浮上式防潮堤を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1に記載の発明は、水底面に上面開口を揃えて水底地盤に埋設される矩形状のケーソンと、該ケーソンの内部空間を、中央部の構造物昇降室と両側部の浮上時流入室とに、前記ケーソンの厚さ方向へ分割し、かつ下端部に、前記構造物昇降室と前記各浮上時流入室とを連通する複数の連通口が形成された仕切壁と、前記構造物昇降室に昇降自在に収納され、かつ内部空間が浮力付与用の空気室となった浮上函を有する防潮構造物と、該防潮構造物を、前記構造物昇降室の収納位置と、前記防潮構造物の上端面が水面より上方に配される浮上位置との間で昇降させる昇降装置と、前記浮上時流入室の上面開口部に配置され、前記防潮構造物が浮上する間のみ前記上面開口部を開蓋し、その他はこれを閉蓋する蓋体とを備え、前記昇降装置の作動による前記構造物昇降室での前記防潮構造物の浮上に伴ない、前記蓋体が開蓋状態となることで、水が前記各上面開口部から、前記各浮上時流入室、前記連通口を通って前記構造物昇降室に流入することを特徴とする浮上式防潮堤である。
【0012】
浮上式防潮堤とは、これを作動しない通常時には防潮構造物を水底下に配置し、津波や高潮などが発生したときに、水面上の浮上位置まで浮上させた防潮構造物により、波や潮を堰き止める機能を備えた防潮堤である。
浮上式防潮堤が設置される場所としては、例えば、港湾の湾口や河川の河口などを採用することができる。
【0013】
水底面としては、例えば、海底面、川底面などが挙げられる。
水底地盤としては、例えば、海底地盤、川底地盤などを採用することができる。
【0014】
ここでいうケーソンとは、水中構造物である浮上式防潮堤を構築する際に用いられるコンクリート製または鋼製の大型の箱である。
ケーソンの種類は限定されない。
【0015】
例えば、ニューマチックケーソンなどを採用することができる。
ニューマチックケーソンとは、あらかじめ別の製作ヤードで下部に作業室を設けた鉄筋コンクリート製または鋼製の函を築造しておき、次にこれを現場へ搬入し、作業室に地下水圧に相応する圧縮空気を常時送り込んで地下水を排除しながら、海底地盤の掘削・沈下・構築を繰り返すことにより造られた現場施工のケーソンである。
【0016】
ケーソンのサイズは、堰き止められる例えば湾口の幅や河口の幅に応じて、または、浮上式防潮堤の設置場所での津波や高潮の予想水位などに応じて適宜変更される。
ただし、ケーソンおよび防潮構造物の長さは、何れも15m〜40mが好ましい。
【0017】
その長さが15m未満では、例えば港湾の湾口などに複数のケーソンを連結して設置した場合、隣り合う防潮構造物と防潮構造物との目地部である間隙の開口率が、例えば3%以上と大きくなる。
そのため、防潮構造物が堰き止めている堤外から堤内への流水量が大きくなり、堤外の水位が上昇し、進入水流力も増加する。
また、その長さが40mを超えれば、浮上状態の防潮構造物に作用する津波や高潮といった外力の支点反力がケーソンの上端部の側壁に作用したとき、その耐力を満足できなくなるおそれがある。
【0018】
さらに、複数のケーソンを連結して使用する場合、隣接して浮上した防潮構造物と防潮構造物との隙間は任意であるものの、浮上式防潮堤が設置される湾口や河口などの開口率が、約2〜3%となる長さが好ましい。
開口率が2%未満では、ケーソンを連結する構造上、施工上の必要目地巾を確保することができなくなる。
【0019】
また、開口率が3%を超えれば、防潮構造物が堰き止めている堤外から堤内への流水量が大きくなり、堤外の水域の水位が上昇し、進入水流力も増加する。
特に好ましい隙間は、湾口や河口の開口率が1.5%〜2.0%となる長さである。
この範囲であれば、津波、高潮、台風の発生時において、例えば防潮構造物が堰き止めている湾内などへの波や潮の流入を防止し、水位上昇を抑えることができる。
【0020】
防潮構造物としては、密封された空気室を内在した浮上函を有し、かつ津波、高潮、高波などを堰き止められる構造物であれば任意である。
例えば、鋼板を水密溶接した浮上函のみからなるものでも、この浮上函の上面に、それぞれがプレキャストコンクリート板からなる防潮函または防潮板が固定されたものでもよい。
この浮上函の浮力は、防潮構造物の重力と均衡することが好ましいが、限定されるものではない。
【0021】
防潮構造物のサイズは、収納位置に達したとき、防潮構造物の上端面が構造物昇降室の上面開口に揃えて構造物昇降室に収納され、かつ浮上位置に達したときに、防潮構造物の上端面が水面より上方に配された浮上位置に配置されるものであれば任意である。
したがって、この防潮構造物のサイズも、堰き止められる例えば湾口の幅や河口の幅に応じて、または、浮上式防潮堤の設置場所での津波や高潮の予想水位などに応じて適宜変更される。
【0022】
浮体である防潮構造物の高さは、堰き止められる例えば湾口や河口などの深さに応じて適宜変更されるものの、15m〜30m程度が好ましい。
防潮構造物の浮上時、防潮構造物に作用する津波や高潮などの外力に耐えるため、構造物昇降室内に留められる防潮構造物の下部の長さ、すなわち、防潮構造物とケーソンとのラップ部の垂直方向長さは、防潮構造物の高さの約3分の1程度とすることが好ましい。
【0023】
防潮構造物の高さが15m未満では、海底面から突出する防潮構造物の高さが10m未満となり、水深の浅い湾口などにしか浮上式防潮堤を設置することができず、航路の水深の確保が困難となる。
また、防潮構造物の高さが30mを超えれば、浮上した防潮構造物に作用する津波や高潮などの外力を、ケーソンの上端部の側壁が支えきれないおそれがある。
【0024】
構造物昇降室とは、ケーソンの内部空間のうち、ケーソンの厚さ方向の中央部でもある中間部に配置されたもので、浮上式防潮堤を作動しない通常時には防潮構造物を収納し、かつ津波、高潮、高波などの発生時には、防潮構造物を浮上位置まで浮上させるための移動用の空間である。
【0025】
構造物昇降室のサイズは、防潮構造物のサイズに応じて適宜変更される。
水底沈降物としては、例えば、土砂、塵、ヘドロなどが挙げられる。
【0026】
各浮上時流入室は、ケーソンの内部空間のうち、ケーソンの厚さ方向の両端部に配置されている。
これらの浮上時流入室は、防潮構造物の浮上時、各浮上時流入室の上端開口部の蓋体が開くことで、構造物昇降室と防潮構造物との間隙から、この構造物昇降室に流れ込む水によって引込まれる水底沈降物を落とし込むための空間である。
しかも、これらの浮上時流入室は、その浮上時に上端開口部が開くことで、防潮構造物の浮上に伴なって、水底付近の水が各上面開口部から各浮上時流入室、各連通口を経て、構造物昇降室に流入することで、防潮構造物の浮上による構造物昇降室の負圧化を解消し、防潮構造物をスムーズに浮上させるための空間でもある。
【0027】
ケーソンの内部空間を、その厚さ方向へ構造物昇降室と各浮上時流入室とに分割する割合は任意である。
また、浮上時流入室の上端開口部のサイズは任意であるものの、ダイバーが浮上時流入室に潜水し、落下した水底沈降物を除去可能な縦横2m以上が好ましい。
ここで、浮上時流入室の上端開口部を縦横2m以上とすることで、作動時に浮上時流入室へ吸い込まれる水の流速が遅くなる。
その結果、吸い込みの際に周囲に堆積する砂やヘドロへの影響が少なくなり、それら堆積物の吸い込み低減を図る事が可能となる
仕切壁の素材は、例えば、ケーソンと同一素材でも、これと異なる素材でもよい。
具体例を挙げれば、コンクリート、鋼などを採用することができる。
【0028】
昇降装置の構成は、防潮構造物である浮上函を、構造物昇降室の収納位置と、防潮構造物の上端面が水面より上方に配される浮上位置との間で昇降させることができれば任意である。
具体的には、ワイヤにより防潮構造物を収納位置まで引き上げる方式のものや、浮上函の浮力により防潮構造物を浮上させる方式のものを採用することができる。
その他、構造物昇降室に空気を供給し、これにより防潮構造物を浮上させるものなどを採用することができる。
【0029】
また、第2に記載の発明は、前記浮上函の浮力が、前記防潮構造物の重力と均衡していることを特徴とする前記第1に記載の浮上式防潮堤である。
ここでいう「浮上函の浮力が、防潮構造物の重力と均衡している」とは、浮上函の浮力と防潮構造物の重力とが完全に均衡している場合のほか、浮上函の浮力の方が防潮構造物の重力よりわずかに大きい場合や、これとは反対の場合が挙げられる。
【0030】
第3に記載の発明は、前記仕切壁が、前記ケーソンの厚さ方向へ3分割する2枚のものであることを特徴とする、前記第1または第2に記載の浮上式防潮堤である。
ケーソンの内部空間を、その厚さ方向へ構造物昇降室と各浮上時流入室とに3分割する割合は任意である。
【0031】
例えば、均等割りしても、構造物昇降室の方を大きくしてもよい。
この場合、2つの浮上時流入室は同一割合とした方が好ましい。
【発明の効果】
【0032】
第1に記載の発明によれば、水底面に上面開口を揃えた状態で矩形状のケーソンを水底地盤に埋設し、ケーソンの内部空間の中央部に、仕切壁によって構造物昇降室を画成し、昇降装置の作動力によりこの昇降室内を水面上に突出可能な防潮構造物が昇降するように構成している。
【0033】
そのため、例えば地震動などでケーソンの各側壁に変形や破損が生じた場合でも、ケーソンの側壁から離間して立設された各仕切壁にまでその応力が影響するおそれは小さい。
その結果、構造物昇降室の防潮構造物は、災害時などの必要時に支障なく浮上し、浮上式防潮堤はその機能を果たすことができる。
【0034】
浮上式防潮堤を作動しない通常時は、蓋体開閉手段により各浮上時流入室の上面開口部が閉蓋され、かつ構造物昇降室の上端開口も防潮構造物によって塞がれるため、水底周辺の水底沈降物はケーソン内に流入しない。
これにより、ケーソン内に侵入した水底沈降物が、仕切壁と防潮構造物との隙間に入り込んで生じる、防潮堤作動時の防潮構造物の浮上障害を無くすことができる。
【0035】
また、この防潮堤作動時は、昇降装置によって防潮構造物が構造物昇降室を浮上している間、各蓋体は蓋体開閉手段により開蓋状態となっている。
そのため、ケーソン周辺の水が、各上面開口部を通って各浮上時流入室に流れ込み、その後、仕切壁の下端部の連通口を通過し、下方から構造物昇降室に流入する。
【0036】
その結果、防潮構造物の浮上に伴なう構造物昇降室の負圧状態が解消され、防潮構造物をスムーズに浮上させることができる。
なお、この蓋体の開蓋に伴ない、ケーソン内には一方の浮上時流入室の上端開口部と、他方の浮上時流入室の上端開口部とを連通する流水路が現出する。
【0037】
また、防潮構造物の浮上後の浮上位置到達後は、再び各蓋体が蓋体開閉手段により閉蓋状態となる。
そのため、例えば津波来襲時、水底地盤に埋設されたケーソン内の流水路を通って、例えば湾外である堤外から、例えば湾内である堤内へ向かう水位差による水の流れを阻止することができる。
【0038】
特に、第2に記載の発明にあっては、浮上函の浮力を防潮構造物の重力と均衡させたため、昇降装置による防潮構造物の昇降時、昇降装置は小さな力で防潮構造物を昇降させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、この発明の実施例を具体的に説明する。
ここでは、比較的水深が浅く、湾口幅が比較的狭い漁港の湾口の海底地盤に、3基のケーソンが直列状態で埋設された浮上式防潮堤を例とする。
各ケーソンは、その厚さ方向を湾内外方向に揃えている。
【0041】
図1に示すように、10はこの発明の実施例1に係る浮上式防潮堤で、漁港の湾口11の海底に構築され、湾内への津波や高潮の流入を堰き止めるものである。
この浮上式防潮堤10は、海底面aに上面開口を揃えて海底地盤bに埋設される矩形状の3基のケーソン12と、詳細には
図2に示すように、各ケーソン12の内部空間の中央部に配される構造物昇降室13と、該構造物昇降室13の両側部に配された一対の浮上時流入室15A,15Bとを備えている。
【0042】
該浮上式防潮堤10は、ケーソン12の厚さ方向へ3分割し、かつ構造物昇降室13と各浮上時流入室15A,15Bとを連通する、複数の連通口28が形成された仕切壁16A,16Bを有すると共に、構造物昇降室13に昇降自在に収納され、かつ内部空間が浮力付与用の空気室17となる浮上函18による防潮構造物19を有している。
また、浮上式防潮堤10は、前記防潮構造物19を、
図3に示す前記構造物昇降室13の所定の収納位置P1と、防潮構造物19の上端面が海面cより上方に配される浮上位置P2との間で昇降させるものとして、
図5に示すように昇降装置20を有している。
【0043】
加えて、浮上式防潮堤10は、
図4に示すように、前記浮上時流入室15A,15Bの上面開口部を閉蓋する鋼板製の蓋体50と、蓋体開閉手段として、ケーソン12に設けられ、防潮構造物19が浮上する間のみ蓋体50を開き、その他はこれを閉じるばね式常閉ヒンジ51とを備えている。
【0044】
以下、これらの構成体を具体的に説明する。
図1に示すように、3基のケーソン12は同一構成体で、各ケーソン12の間隔は、浮上時に隣り合う防潮構造物19と防潮構造物19との隙間dが30cm程度となるように設定している。
各ケーソン12は同一物であるため、以下、1基のケーソン12のみについて説明する。
【0045】
図2〜
図4に示すように、ケーソン12は、上端面が開口した長さ約20m、高さ約20m、厚さ約8.5mの鉄筋コンクリートからなるニューマチックケーソンで、その長さ方向を湾口11の幅方向に揃えて現場施工される。
よって、ケーソン12の4枚の側壁21〜24のうち、大判な1枚の側壁21が湾内側Aに配置され、別の大判な側壁22が湾外側Bに配置され、小判な2枚の側壁23,24が湾口11の幅側に配置されている。
なお、湾口幅は、約60mである。
【0046】
ケーソン12の施工に際しては、あらかじめ地上において、下部に作業室25を設けた鉄筋コンクリート製の函を築造し、これを現場へ搬送して湾口11の海底面aまで吊り降ろす。
その後、作業室25に地下水圧に相応する圧縮空気を常時送り込み、地下水を排除しながらドライな環境下で、海底地盤bの掘削・沈下・構築を繰り返すことにより、所定深さ及び高さ位置にケーソン12が設置される。
【0047】
ここで、2枚の仕切壁16A,16Bは、ケーソン12の構築時にこれと一体的に造られた鉄筋コンクリート製の平壁で、ケーソン12の内部空間を、その厚さ方向に略均等に3分割するものである。
各仕切壁16A,16Bの高さは、ケーソン12の底壁である作業室25の天井壁26の上面から、ケーソン12の上端開口までの高さと略同じである。
各仕切壁16A,16Bの長さ方向の両端部には、仕切壁16A,16Bの下端部から上端部まで垂直に延びた2本のスライド孔27が形成されている。
【0048】
各スライド孔27の長さは、防潮構造物19の構造物昇降室13での収納位置P1から、海面cより数m上方の位置までの距離である海面上の浮上位置P2と同じである。
また、これらの仕切壁16A,16Bの下端部には、仕切壁16A,16Bをその長さ方向へ5等分割した各領域に、後述の部分流入室15a,15bに連通する矩形状の連通口28が、それぞれ形成されている。
【0049】
構造物昇降室13は、ケーソン12の厚さ方向の長さが約2mの矩形状の空間で、2枚の仕切壁16A,16Bと、小判な2枚の側壁23,24のうち、各長さ方向の中間部とによって画成されている。
【0050】
図2に示すように、構造物昇降室13の上端開口部には、防潮構造物19の垂直な昇降を安定化させる楔構造のスタビライザー29が設けられている(
図2の一部拡大図を参照)。
該スタビライザー29は、仕切壁16A,16Bの上端部の構造物昇降室13側の面に固定された第1の部材29aと、浮上函18のうち、スライドアーム32の取り付け位置より若干上方位置に固定された第2の部材29bとからなる。
【0051】
2つの浮上時流入室15A,15Bは、それぞれ構造物昇降室13と略同一サイズの矩形状の空間である。
このうち、湾内側Aの浮上時流入室15Aは、湾内側Aに配置される側壁21と、湾内側Aに配置される仕切壁16Aと、小判な2枚の側壁23,24の各湾内側Aの端部とにより画成されている。
【0052】
一方、湾外側Bの浮上時流入室15Bは、湾外側Bの側壁22と、湾外側Bに配置される仕切壁16Bと、小判な2枚の側壁23,24の湾外側Bの端部とにより画成されている。
これらの浮上時流入室15A,15Bは、
図4に示すように、鉄筋コンクリート製の4枚の縦長な短冊状の隔壁30により、ケーソン12の長さ方向に5等分割され、それぞれが部分流入室15a,15bを構成している。
【0053】
このうち、両端(1番目と5番目)に配された部分流入室15a,15bの各上側開口部は、合計4枚の閉鎖板52により塞がれている。
各閉鎖板52には、ボルト止めされた点検蓋53によって閉じられた点検口54が、それぞれ形成されている。
【0054】
メンテナンス時には、ダイバーがスパナにより点検蓋53を取り外し、点検口54を通ってケーソン12内に入る。
また、残りの部分流入室15a,15bの上側開口部のうち、対応する仕切壁16A,16B側には、前記ばね式常閉ヒンジ51が配設されている。
該ばね式常閉ヒンジ51により、前記蓋体50を、通常、閉じておくことが可能となる。
【0055】
前記ばね式常閉ヒンジ51は、
図4に示すように、回動軸55に外挿されたコイルばね56のばね力により、対応する上側開口部を常閉するものである。
各コイルばね56のばね力は、各蓋体50の上への海底沈降物14の堆積や、海底における潮の流れ程度の外力の作用では開蓋せず、防潮構造物19が構造物昇降室13を上昇する際の大きな負圧力にのみ開蓋するように設計されている。
【0056】
また、各部分流入室15a,15bの下端部には、合計5つの前記連通口28が配されている。
これらの連通口28のうち、両端に配置されたものは、メンテナンス時、ダイバーが構造物昇降室13に出入りする専用の作業口となる。
【0057】
各隔壁30は、対応する仕切壁16A,16Bに直交状態で連結された補強用の平壁で、その高さは、仕切壁16A,16Bの高さと同一である。
各隔壁30も、各仕切壁16A,16Bと同様に、ケーソン12の構築に伴って築造されるものである。
【0058】
図2に示すように、防潮構造物19は、その高さが構造物昇降室13の高さより数m短い外は構造物昇降室13と略同じサイズの矩形函状のものである。
この防潮構造物19は、本体となる鋼製の浮上函18と、この浮上函18の上面に固定されたプレキャストコンクリート製の防潮函31とを有している。
【0059】
防潮構造物19としては、コンクリート製の防潮函31と鋼板製の浮上函18とを連結して全体を鉄筋コンクリート製の函体としたものであり、函体の内部に、その底板から天井板まで届く長さのH形鋼を、一定の間隔で複数本配置することもできる。
全体を鉄筋コンクリート製の函体とした場合には、高さ方向に対して底面から3分の2を水密構造とし、水密構造を保つために、鉄筋コンクリートの腐食防止用の電食防止装置(図示せず)を取り付けることが望ましい。
この場合、水密構造部分が浮上機能を有し、残りの部分が防潮機能を有するものとなる。
【0060】
図2または
図3に示すように、浮上函18は、サイズが異なる鋼板を横長な箱状に水密溶接したもので、空気室17が密封されている。
浮上函18の浮力は、防潮構造物19の重力と略均衡している。
詳しくは、浮上函18の浮力の方がその重力よりわずかに大きい。
これにより、構造物昇降室13の収納位置P1に位置する防潮構造物19は、自由状態では、ゆっくりと浮上位置P2まで浮き上がって上昇する。
【0061】
浮上函18の湾内側Aの鋼板18aの下部には、その長さ方向の両端部に、仕切壁16A,16Bの厚さより長い角材からなる2本のスライドアーム32が、湾内側Aの仕切壁16Aの各スライド孔27に挿通された状態で突設されている。
また、浮上函18の湾外側Bの鋼板18bの下部にも、同一のスライドアーム32が、湾外側Bの仕切壁16Bの各スライド孔27に挿通された状態で2本突設されている。
防潮構造物19の昇降時、各スライドアーム32が対応するスライド孔27に沿って垂直にスライドすることにより、防潮構造物19は収納位置P1と浮上位置P2との間をスムーズに上下移動する。
【0062】
防潮函31は、工場生産された6枚のプレキャストコンクリート板を横長な箱状に組み立てたもので、
図2に示すように、内部空間に配されたトラス構造の鉄骨33により内側から補強されている。
防潮函31の上板は、構造物昇降室13の上端開口を塞ぐ天蓋34となっている。
防潮函31の高さは、浮上函18の約半分である。
【0063】
次に、3基のケーソン12の各防潮構造物19を同期昇降させる昇降装置20について詳細に説明する。
【0064】
図1に示すように、昇降装置20は、岸壁に設置され、かつ12個のドラムを同期回転させる電動ウインチ35と、各ドラム36に基端部が卷回され、各先端部が対応するケーソン12のスライドアーム32に固定された2本1組、合計6組(12本)のワイヤ37と、各ケーソン12の作業室25の天井壁26のうち、各浮上時流入室15A,15Bの長さ方向の両端部と対峙する箇所の下面に配設された2個1組、合計12個の内部滑車38と、岸壁から湾内へ向かってL字形に延出した固定式防潮堤39に離間して固定され、かつそれぞれ12個の車が同軸的に連結された3個の外部滑車40とを有している。
【0065】
外部滑車40のうち、電動ウインチ35側となる上流側の2つは、固定式防潮堤39の上端部に固定され、残った1つは、固定式防潮堤39の屈曲部のうち、海底地盤bに埋まった下端部に、図示しない保護ケースに収納状態で固定されている。
なお、固定式防潮堤39の下端部は、ケーソン12の下端部と同じ深さに在る。
【0066】
各ドラム36から繰り出されたワイヤ37は、3つの外部滑車40の各車に架け渡されて海底面下のケーソン12の下端部の深さまで引き下げられ、その後、各ケーソン12の作業室25へ水平に引っ張られ、さらに対応する内部滑車38を介して引き上げられた後、それぞれのスライドアーム32のうち、各浮上時流入室15A,15Bに配された先端部に固定されている。
当然ながら、各ワイヤ37の引き回し経路のうち、海底地盤bに埋まった領域には、各ワイヤ37が移動自在に内挿される図示しない鞘管が複数本配設されている。
【0067】
昇降装置20の運転時、電動ウインチ35をワイヤ37卷回側へ作動することで、各内部滑車38および各外部滑車40を介して、12本のワイヤ37が対応するドラム36に巻き付けられる。
このとき、
図3に示すように、各スライド孔27に垂直ガイドされながら各スライドアーム32が徐々に引き下げられ、各防潮構造物19は各浮上函18の浮力に抗して、対応する構造物昇降室13の収納位置P1まで下降する。
【0068】
各収納位置P1への到達時、
図3または4に示すとおり、各構造物昇降室13の上端開口が各防潮函31の天蓋34により塞がれる。
これとは反対に、電動ウインチ35をワイヤ37繰り出し側へ作動することにより、各ワイヤ37が各ドラム36から繰り出される。
【0069】
これに伴い、各スライドアーム32が各スライド孔27に垂直ガイドされて、各浮上函18の浮力により各防潮構造物19が、対応する構造物昇降室13の収納位置P1から海面上の浮上位置P2まで徐々に浮上する。
なお、これらの操作は、岸壁に建築された機械操作室のオペレータからの指令に基づいて行われる。
【0070】
次に、
図1〜
図5を参照して、この発明の実施例1に係る浮上式防潮堤10の作動を説明する。
図1に示すように、あらかじめ、図示しない機械操作室のオペレータからの指令に基づき、電動ウインチ35をワイヤ巻き取り側に作動して、各ワイヤ37を同時に対応するドラム36に巻き上げ、各ケーソン12の防潮構造物19を構造物昇降室13の収納位置P1まで引き下げておく。
【0071】
このとき、浮上函18の浮力と対応する防潮構造物19の重力とが略均衡しているため、ワイヤ37に作用する張力を可能な限り小さくすることができる。
これにより、電動ウインチ35の小型化が図れる。
【0072】
なお、各防潮構造物19の引き下げ状態は、各ドラム36の回転をロックすることにより、浮上式防潮堤10を作動しない通常時の間、常に維持される。
この通常時には、各防潮構造物19が海底面a下に存在するため、景観を損なわず、かつ船舶は湾口11を支障なく通航できる。
【0073】
また、
図4に示すように、この通常時には、各ばね式常閉ヒンジ51のばね力によって、各浮上時流入室15A,15Bの上面開口部が各蓋体50により閉蓋され、かつ構造物昇降室13の上端開口も防潮構造物19によって塞がれるため、海底周辺の海底沈降物14はケーソン12内に流入しない。
これにより、ケーソン12に侵入した海底沈降物14が、仕切壁16A,16Bと防潮構造物19との隙間に入り込んで生じる、防潮堤作動時の防潮構造物19の浮上障害を無くすことができる。
【0074】
また、この防潮堤作動時は、昇降装置20によって防潮構造物19が構造物昇降室13を浮上している間、各蓋体50は、ばね式常閉ヒンジ51のばね力に抗して開蓋状態となっている。
そのため、ケーソン周辺の水が、各上面開口部を通って各浮上時流入室15A,15Bに流れ込み、その後、仕切壁16A,16Bの下端部の連通口28を通過し、下方から構造物昇降室13に流入する。
【0075】
その結果、防潮構造物19の浮上に伴なう構造物昇降室13の負圧状態が解消され、防潮構造物19をスムーズに浮上させることができる。
なお、
図2に示すように、この蓋体50の開蓋に伴ない、ケーソン12には一方の浮上時流入室16Aの上端開口部と、他方の浮上時流入室16Bの上端開口部とを連通する流水路57が形成される。
【0076】
また、防潮構造物19の浮上位置到達後は、再び各蓋体50がばね式常閉ヒンジ51のばね力により閉蓋状態となる。
そのため、例えば津波来襲時、海底地盤bに埋設されたケーソン12の流水路57を通って、湾外側Bから湾内側Aへ向かう水位差による水の流れを阻止することができる。
【0077】
なお、定期的または不定期に行われるケーソン12のメンテナンス時には、作業者であるダイバーが、浮上時流入室15A,15Bの何れかの点検蓋53を開けて部分流入室15aに潜り、浮上時流入室15A,15Bのメンテナンスを行う。
その後、ダイバーは、連通口28をくぐり構造物昇降室13へ移動することで、防潮構造物19や構造物昇降室13のメンテナンスを行うことができる。
【0078】
一方、例えば津波発生時には、
図1に示すようにオペレータからの指令に基づき、各ドラム36のロックを解除し、その後、電動ウインチ35をワイヤ37繰り出し側へ作動して各ワイヤ37を対応するドラム36から繰り出す。
これにより、各ケーソン12においては、各スライドアーム32が各スライド孔27により垂直ガイドされながら、各浮上函18の浮力の作用により、各防潮構造物19が各構造物昇降室13の収納位置P1から徐々に浮上し、最終的に各防潮構造物19が海面上の浮上位置P2に達する。
【0079】
その結果、沿岸から押し寄せた津波を、湾口11に配備された3基のケーソン12の各防潮構造物19の上部によって堰き止めることができる。
このとき、各防潮構造物19の下部にはその反力が作用し、これを一対の仕切壁16A,16Bの上部が受け、ここで受けた反力は、各仕切壁16A,16Bに連結された8枚の隔壁30を介して、ケーソン12の湾内側Aおよび湾外側Bの各側壁の上部にそれぞれ分散される。
【0080】
これにより、大きな津波が各防潮構造物19に衝突しても、各仕切壁16A,16Bが破損するおそれは少ない。
また、各防潮構造物19の浮上時、第1の部材29aと第2の部材29bとが密着することで、各スタビライザー29が水密構造になる。
【0081】
なお、各防潮構造物19の浮上速度を高めるため、各スライドアーム32の先端部に、対応するワイヤ37の固定状態を解除する図示しないワイヤ固定解除装置を配設してもよい。
これにより、浮上中の各防潮構造物19の大きな負荷となる各ワイヤ37の重量を軽減することができる。
その他、各ケーソン12の作業室25に図示しないワイヤ切断装置を配備し、各ワイヤ37の先端部を自動で切断してもよい。
【0082】
このように、海底面aに上面開口を揃えた状態で各ケーソン12を海底地盤bに埋設し、各ケーソン12の内部空間の中央部に、一対の仕切壁16A,16Bによって構造物昇降室13を画成し、昇降装置20の作動力によりこの構造物昇降室13の中を防潮構造物19が昇降するように構成している。
【0083】
そのため、例えば地震発生時、地震動で各ケーソン12の各側壁に変形や破損が生じた場合でも、各ケーソン12の側壁から離間して立設された各仕切壁16A,16Bにまでその応力が影響するおそれは小さい。
その結果、各防潮構造物19は津波発生時に支障なく浮上し、この浮上式防潮堤10はその機能を果たすことができる。
【0084】
また、各浮上函18の浮力を、対応する防潮構造物19の重力と略均衡させたため、各昇降装置20による各防潮構造物19の昇降時、これらの昇降装置20は小さな力で各防潮構造物19を昇降させることができる。
さらに、浮上した隣り合う防潮構造物19と防潮構造物19との隙間dを30cm程度としたため、浮上式防潮堤10を作動させた際の湾口11の開口率は2%程度となり、例えば津波などが漁港へ押し寄せても、それが湾内に流入する量はわずかとなる。
【0085】
これにより、津波などから湾内の設備等を保護することができる。
さらにまた、漁港の湾口11の幅は60mと長いため、従来の巻き上げ式水門では、長さが60mの門扉と大型のアクチュエータとを備えた専用水門を現場施工する必要があったものの、ここでは長さが20mのケーソン12を3基使用する分割式の閉門構造を採用したため、異なる幅の湾口11にも対応することができる。
【0086】
なお、
図5に示すように、各ワイヤ37を海底面aに沿って配線し、各ケーソン12に対して上方からワイヤ37を侵入させてもよい。
具体的には、各浮上時流入室15Bの上端開口部と、浮上時流入室15Bの底部と、構造物昇降室13の底部とに、それぞれ内部滑車38を配設する。
【0087】
そして、ワイヤ37を、浮上時流入室15Bの上部開口部から底部、連通口28および構造物昇降室13の底部へと順に引き回し、最後にワイヤ37の先端部を浮上函18の底板に固定してもよい。
【0088】
次に、
図6および
図7を参照して、この発明の実施例2に係る浮上式防潮堤について説明する。
図6に示すように、この発明の実施例2の浮上式防潮堤10Aの特徴は、浮上函18の浮力を防潮構造物19の重力よりわずかに小さくし、かつ津波などの発生時に、昇降装置20Aを作動して各ワイヤ37を各ドラム36に巻き取ることにより、防潮構造物19を海面上の浮上位置P2まで強制的に引き上げるように構成した点である。
【0089】
浮上函18は、その浮力が防潮構造物19の重力よりわずかに小さく設計されている。
これにより、浮上位置P2に置かれた防潮構造物19は、ゆっくりと構造物昇降室13の収納位置P1まで沈降して行く。
【0090】
また、2個1組、合計12個の内部滑車38Aは、各ケーソン12の各仕切壁16A,16Bの上端部のうち、各スライド孔27の上端付近の浮上時流入室側の面に固定されている。
ここでは、各ワイヤ37の先端部はリング状に加工され、対応するスライドアーム32に外挿されている(
図7を参照)。
3個の外部滑車40Aのうち、最もケーソン側の外部滑車40Aは、固定式防潮堤39の屈曲部のうちの海底面aの付近に固定されている。
【0091】
電動ウインチ35の各ドラム36から繰り出された12本のワイヤ37は、3つの外部滑車40Aの各車に架け渡されて海底面aの付近まで引き下げられ、その後、各ケーソン12の対応する浮上時流入室15A,15Bの上面開口まで水平に引っ張られる。
次に、ワイヤ37は、そこから各内部滑車38Aにより直下へ引き下げられた後、各浮上時流入室15A,15Bの方へ突出した各スライドアーム32の先端部に固定されている。
【0092】
この実施例2の浮上式防潮堤10Aにあっては、あらかじめ、オペレータからの指令に基づき、電動ウインチ35をワイヤ繰り出し側へ作動して各ドラム36から各ワイヤ37を繰り出す。
これにより、各ケーソン12では、対応する浮上函18の浮力より大きい各防潮構造物19の重力の作用により、各防潮構造物19が徐々に沈下して行き、最終的には各構造物昇降室13の収納位置P1に配置される。
【0093】
例えば、津波発生時には、オペレータからの指令に基づき、電動ウインチ35をワイヤ巻き取り側へ作動し、各ワイヤ37を対応するドラム36に巻き取る。
これにより、各ケーソン12では、各スライドアーム32が各スライド孔27により垂直ガイドされながら、各防潮構造物19の重力の作用に抗して、各防潮構造物19が、各構造物昇降室13の収納位置P1から海面上の浮上位置P2まで引き上げられる。
【0094】
このように、防潮構造物19を昇降装置20Aにより強制的に引き上げるようにしたため、防潮構造物19の浮上時間が短縮され、沿岸を震源地として発生することにより、湾口11までの到達時間が短い津波にも対応することができる。
その他の構成、作用および効果は、実施例1から推測可能な範囲であるため、説明を省略する。