(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記定電流回路は、前記発光素子に流れる電流を制御する駆動トランジスタと、前記駆動トランジスタの制御端子に接続され、前記駆動トランジスタの導通及び非導通を制御するスイッチングトランジスタとを有する、
請求項7に記載の表示装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の一実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される、数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、工程(ステップ)、工程の順序等は、一例であって本開示を限定する主旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本開示の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0012】
なお、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、例えば、各図において縮尺等は必ずしも一致しない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0013】
(実施の形態)
以下、表示装置の一例として、有機EL素子210を有する有機EL表示装置1について説明する。
図1は、実施の形態に係る有機EL表示装置1を模式的に示す分解斜視図である。
【0014】
図1に示すように、有機EL表示装置1は、TFT基板100と、EL部200と、カラーフィルタ基板300とを備える。TFT基板100、EL部200及びカラーフィルタ基板300は、この順で下から上に積層されている。つまり、EL部200は、TFT基板100の上に配置され、カラーフィルタ基板300は、EL部200の上に配置される。具体的には、EL部200は、TFT基板100の平坦化層の上に形成される。また、EL部200とカラーフィルタ基板300とは、貼り合わせ層(不図示)によって貼り合わされる。
【0015】
TFT基板100は、複数の薄膜トランジスタ(TFT;Thin Film Transistor)を有するTFTアレイ基板である。TFT基板100は、マトリクス状に配列された複数の画素110の各々において、TFT及び容量素子等の回路素子によって構成された画素回路120を有する。TFT基板100は、例えば、ガラス基板又は透明樹脂基板等の基板と、TFTの電極及び配線が形成された複数の配線層と、配線層間に形成された層間絶縁層とを有する。
【0016】
具体的には、TFT基板100は、複数の配線として、画素110の行方向に沿って配置された複数のゲート配線(走査線)130と、ゲート配線130と交差するように画素110の列方向に沿って配置された複数のソース配線(信号線)140と、ソース配線140と平行に配置された複数の電源配線150とを有する。各画素110は、例えば互いに直交するゲート配線130とソース配線140とによって区画されている。
【0017】
ゲート配線130は、各画素回路120に含まれるスイッチングトランジスタのゲート電極と行毎に接続されている。ソース配線140は、各画素回路120に含まれるスイッチングトランジスタのソース電極と列毎に接続されている。電源配線150は、各画素回路120に含まれる駆動トランジスタのドレイン電極と列毎に接続されている。
【0018】
EL部200は、複数の画素110の各々に設けられた有機EL素子210を含む。各画素110における有機EL素子210は、発光素子の一例であり、各画素110の画素回路120によって駆動制御される。つまり、画素回路120によって各有機EL素子210の発光の制御が行われる。具体的には、有機EL素子210は電流が流れることで発光するので、画素回路120によって有機EL素子210に電流を供給することで、有機EL素子210を発光させることができる。
【0019】
有機EL素子210は、TFT基板100の上に形成される。具体的には、TFT基板100の上層には平坦化層が形成されており、有機EL素子210は、その平坦化層の上に形成される。詳細は後述するが、有機EL素子210は、陽極と発光層と陰極との積層構造である。
【0020】
カラーフィルタ基板300は、ガラス基板又は透明樹脂基板の透明基板に形成されたカラーフィルタ310を有する。本実施の形態において、カラーフィルタ310は、赤色フィルタ311、緑色フィルタ312及び青色フィルタ313を含む。赤色フィルタ311は、EL部200から発光された赤色の光を透過する。緑色フィルタ312は、EL部200から発光された緑色の光を透過する。青色フィルタ313は、EL部200から発光された青色の光を透過する。
【0021】
このように構成される有機EL表示装置1は、トップエミッション型であり、有機EL素子210の光をカラーフィルタ基板300側(TFT基板100側とは反対側)から出射させる。なお、有機EL表示装置1は、トップエミッション型に限るものではなく、有機EL素子210の光をTFT基板100側から出射させるボトムエミッション型であってもよい。トップエミッション型の有機EL表示装置は、ボトムエミッション型の有機EL表示装置と比較して、開口率を大きくすることができる。したがって、トップエミッション型の方がボトムエミッション型よりも発光効率が向上する。
【0022】
次に、有機EL表示装置1の各画素110におけるTFT基板100の画素回路120とEL部200との構成について、
図2を用いて説明する。
図2は、実施の形態に係る有機EL表示装置1の各画素110における画素回路120とEL部200との電気回路図である。
【0023】
各画素110の画素回路120は、有機EL素子210を発光させるための駆動電流を有機EL素子210に供給する定電流回路であり、TFT等の回路素子を有する。本実施の形態において、各画素回路120は、回路素子として2つのTFTと1つの容量素子とを有する2Tr1Cの回路構成となっている。
【0024】
具体的には、
図2に示すように、各画素回路120は、駆動トランジスタDrTrとして形成されたTFTと、スイッチングトランジスタSwTrとして形成されたTFTと、データ電圧(信号電圧)を記憶する蓄積容量として形成された容量素子Csとによって構成される。
【0025】
駆動トランジスタDrTrは、有機EL素子210を駆動するためのTFTであり、有機EL素子210に流れる電流を制御する。また、スイッチングトランジスタSwTrは、複数の画素110のうち発光させる画素110(つまり発光させる有機EL素子210)を選択するためのTFTである。スイッチングトランジスタSwTrは、駆動トランジスタDrTrの制御端子であるゲート電極G2に接続されており、駆動トランジスタDrTrの導通及び非導通を制御する。
【0026】
スイッチングトランジスタSwTrは、ゲート配線130に接続されるゲート電極G1と、ソース配線140に接続されるソース電極S1と、容量素子Csの一方の電極及び駆動トランジスタDrTrのゲート電極G2に接続されるドレイン電極D1と、チャネル層として機能する半導体層(図示せず)とを備える。スイッチングトランジスタSwTrは、接続されるゲート配線130及びソース配線140に所定の電圧が印加されると、ソース配線140に印加された電圧がデータ電圧として容量素子Csに保持される。
【0027】
駆動トランジスタDrTrは、スイッチングトランジスタSwTrのドレイン電極D1及び容量素子Csの他方の電極に接続されるゲート電極G2と、電源配線150に接続されるドレイン電極D2と、有機EL素子210の陽極及び容量素子Csの他方の電極に接続されるソース電極S2と、チャネル層として機能する半導体層(図示せず)とを備える。駆動トランジスタDrTrは、容量素子Csが保持しているデータ電圧に対応する電流を電源配線150からソース電極S2を通じて有機EL素子210の陽極に供給する。これにより、有機EL素子210では、陽極から陰極へと駆動電流が流れて、有機EL素子210の発光層が発光する。そして、有機EL素子210に通電する電流量(通電量)を制御することによって、有機EL素子210の発光輝度を制御することができる。
【0028】
このように構成される有機EL表示装置1では、画素110毎に発光制御を行うアクティブマトリクス方式が採用されている。つまり、各画素110におけるスイッチングトランジスタSwTr及び駆動トランジスタDrTrによって、マトリクス状に配列された複数の有機EL素子210を選択的に発光させることで、有機EL表示装置1に所望の画像を表示させることができる。
【0029】
また、
図2に示すように、EL部200は、複数の画素110の各々において、有機EL素子210と並列に接続された抵抗要素10を有する。有機EL素子210及び抵抗要素10は、いずれも通電によって経時的に抵抗値が高くなる特性を有する。本実施の形態において、有機EL素子210及び抵抗要素10は、通常動作の通電による経時的な劣化によって抵抗値が漸次高くなる。また、本実施の形態において、抵抗要素10の抵抗値の変化の割合は、有機EL素子210の抵抗値の変化の割合よりも大きくなっている。つまり、抵抗値が増大する変化の割合は、有機EL素子210よりも抵抗要素10の方が大きい。
【0030】
次に、有機EL表示装置1における有機EL素子210及び抵抗要素10の詳細な構成について、
図3及び
図4を用いて説明する。
図3は、実施の形態に係る有機EL表示装置1の一部の構成を模式的に示す断面斜視図である。
図4は、
図3の破線で囲まれる領域IVの拡大図である。
【0031】
図3に示すように、有機EL表示装置1の複数の画素110には、赤色画素、緑色画素及び青色画素が含まれている。複数の有機EL素子210は、
図3に示すように、赤色画素に対応する赤色用有機EL素子210R、緑色画素に対応する緑色用有機EL素子210G及び青色画素に対応する青色用有機EL素子210Bを含む。赤色用有機EL素子210Rは赤色光を発し、緑色用有機EL素子210Gは緑色光を発し、青色用有機EL素子210Bは青色光を発する。
【0032】
複数の有機EL素子210(赤色用有機EL素子210R、緑色用有機EL素子210G、青色用有機EL素子210B)は、バンク220によって互いに分離されている。本実施の形態において、バンク220は、ラインバンクであり、例えば、ソース配線140に平行に延びる複数の直線状の突条によって構成されている。なお、バンク220は、ラインバンクに限るものではなく、格子状のピクセルバンクであってもよい。
【0033】
複数の有機EL素子210(赤色用有機EL素子210R、緑色用有機EL素子210G、青色用有機EL素子210B)の各々は、第1電極である陽極211と、第1電荷機能層である正孔注入層212と、発光層213と、第2電荷機能層である電子輸送層214と、第2電極である陰極215とを有する。
【0034】
図4に示すように、陽極(アノード)211は、下部電極であり、TFT基板100上に所定形状で形成されている。陽極211は、バンク220の開口部220a内において画素110毎に形成されている。具体的には、陽極211は、バンク220の開口部220aの底部に形成されている。
【0035】
本実施の形態において、陽極211は、光反射性を有する反射電極であり、発光層213で発生した光を反射させる機能を有する。陽極211は、例えば、光反射層として、アルミニウム等の金属材料によって構成された金属層を含む。
【0036】
また、陽極211は、アルミニウム合金からなる金属層と当該金属層の上に形成された酸化タングステンからなる透明層等との積層構造であってもよい。この場合、酸化タングステンからなる層は、陽極211としてではなく、正孔注入層212として機能していてもよい。陽極211の厚みは、一例として、50nm〜700nmである。
【0037】
正孔注入層(HIL)212は、陽極211と発光層213との間に位置する層であって、発光層213に正孔を注入する機能を有する。正孔注入層212は、例えば、PEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)等のポリチオフェン系、フタロシアニン系、オリゴアミン系、デンドリマーアミン系等からなる有機材料によって構成される。正孔注入層212は発光層213よりも抵抗値が低いとよいので、正孔注入層212の材料としては、発光層213の材料よりも抵抗値が低いものを選ぶとよい。
【0038】
正孔注入層212は、バンク220の開口部220a内において画素110毎に形成されている。本実施の形態において、正孔注入層212は、バンク220に囲まれるように陽極211の上に設けられている。
【0039】
具体的には、正孔注入層212は、薄膜状であり、バンク220の開口部220aの底部からバンク220の側壁面に沿ってバンク220に乗り上げるように形成されている。また、正孔注入層212の厚さは、バンク220の開口部220aの底部の中央部では略一定で薄くなっているが、バンク220の根元に向かって徐々に厚くなり、バンク220の側壁面では下から上に向かうにつれて徐々に薄くなっている。正孔注入層212の中央部での厚みは、一例として、5nm〜100nmである。このような形状の正孔注入層212は、正孔注入層212を構成する有機材料をバンク220の開口部220a内に塗布して乾燥させることで形成することができる。
【0040】
発光層213(EML)は、陽極211と陰極215との間に位置する層であって、陽極211と陰極215とに所定の電圧が印加されることにより注入された電子と正孔とが再結合して生じるエネルギーにより発光材料が励起されて発光する機能を有する。本実施の形態において、発光層213は、正孔注入層212と電子輸送層214とに挟まれている。
【0041】
また、発光層213は、材料を選択することによって所定の色(波長)の光に発光させることができる。例えば、発光層213は、赤色に発光する赤色発光層、緑色に発光する緑色発光層及び青色に発光する青色発光層のいずれかである。
【0042】
発光層213は、有機発光材料を用いた有機発光層である。発光層213を構成する有機発光材料としては、例えば、アルミキノリキノール錯体(Alq3)等の低分子有機材料、又は、ポリパラフェニレンビニレン(PPV)、ポリフルオレンなどのポリマー発光材料等の高分子有機材料を用いることができる。発光層213の撥液性は正孔注入層212の撥液性よりも高いとよい(つまり、発光層213の接触角は正孔注入層212の接触角よりも大きいとよい)ので、発光層213の材料としては、正孔注入層212の材料よりも撥液性が高いものを選ぶとよい。
【0043】
発光層213は、バンク220の開口部220a内に画素110毎に形成されている。本実施の形態において、発光層213は、バンク220に囲まれるように正孔注入層212の上に設けられている。
【0044】
具体的には、発光層213は、薄膜状であり、正孔注入層212の表面形状にしたがって、バンク220の開口部220aの底部からバンク220の側壁面に沿ってバンク220に乗り上げるように形成されている。発光層213は、バンク220の開口部220aの底部の中央部では略一定の厚さであり、バンク220に近づくにつれて徐々に厚さが薄くなっている。発光層213の中央部での厚みは、一例として、30nm〜200nmである。このような形状の発光層213は、発光層213を構成する有機材料をバンク220の開口部220a内に塗布して乾燥させることで形成することができる。
【0045】
電子輸送層(ETL)214は、発光層213と陰極215との間に位置する層であって、発光層213に電子を輸送する機能を有する。電子輸送層214としては、例えば、金属キレート系、フェナントロリン系、オキサジアゾール系、トリアゾール系等の有機材料、又は、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等の無機材料が用いられる。
【0046】
また、電子輸送層214には、還元性金属が含まれているとよい。還元性金属としては、例えば、バリウム、チタン、ナトリウム又はアルミニウムを用いることができる。本実施の形態において、電子輸送層214は、バリウムを含む有機材料によって構成されている。電子輸送層214にドープされているバリウムの濃度は、例えば、電子輸送層214の材料の重量に対して1wt%〜50wt%である。
【0047】
電子輸送層214は、バンク220の開口部220aを覆うように発光層213の上に形成される。本実施の形態において、電子輸送層214は、複数のバンク220にわたって複数の画素110の発光層213の上に連続して形成されている。具体的には、電子輸送層214は、薄膜状の単一層であり、発光層213及びバンク220の表面形状に沿って、全てのバンク220の開口部220aを覆うように全ての画素110にわたって形成されている。電子輸送層214の厚さは、略一定であり、一例として、30nm〜100nmである。なお、電子輸送層214は、単一層に限るものではなく、正孔注入層212と同様に、バンク220の開口部220a内に、複数の画素110毎に形成されていてもよい。
【0048】
陰極(カソード)215は、陽極211と対向するようにして電子輸送層214の上に形成される。本実施の形態において、陰極215は、電子輸送層214と同様に、複数のバンク220にわたって連続して形成されている。つまり、陰極215は、複数の画素110に共通する共通電極である。具体的には、陰極215は、薄膜状の単一層であり、電子輸送層214の表面形状に沿って、全てのバンク220の開口部220aを覆うように全ての画素110にわたって形成されている。陰極215の厚さは、略一定であり、一例として、20nm〜200nmである。なお、陰極215は、単一層に限るものではなく、バンク220の開口部220a内に、複数の画素110毎に形成されていてもよい。
【0049】
また、本実施の形態における有機EL表示装置1は、トップエミッション型であるので、陰極215は、光透過性を有する材料で構成されている。例えば、陰極215は、インジウム錫酸化物(ITO:Indium Tin Oxide)又はインジウム亜鉛酸化物(IZO:Indium Zinc Oxide)等の透明金属酸化物によって構成された透明導電層(透明電極)である。なお、陰極215は、材料自体が透明でなくてもよく、例えば、Ag(銀)又はAl(アルミニウム)等の金属膜を薄膜化することによって光を透過させるように構成されていてもよい。
【0050】
このように構成される有機EL素子210では、陽極211と陰極215との間に電圧が印加されると、陽極211から正孔注入層212に正孔(ホール)が注入され、陰極215から電子輸送層214に電子が注入される。そして、電子と正孔とが発光層213に供給されて発光層213で再結合することによって発光層213が発光する。
【0051】
なお、本実施の形態における有機EL素子210は、電荷機能層として、正孔注入層212及び電子輸送層214を有しているが、電荷機能層は、これらに限るものではなく、有機EL素子210には、正孔輸送層、電子注入層、又は、電子ブロック層等のその他の電荷機能層が含まれていてもよい。
【0052】
バンク220は、有機EL素子210の各発光層213を区画するための隔壁であり、発光層213を囲む開口部220aを有する。バンク220の開口部220a内には、正孔注入層212及び発光層213が形成されている。本実施の形態において、正孔注入層212及び発光層213は、バンク220の内面を構成する側壁面(側面)に乗り上げるように形成されている。
【0053】
バンク220の側壁面において、発光層213の両端部は、正孔注入層212の両端部近傍に位置しているが、正孔注入層212の両端部を超えてはいない。つまり、正孔注入層212の両端部の先端の高さの位置は、発光層213の両端部の先端の高さの位置と同じかそれよりも上である。
【0054】
したがって、正孔注入層212及び発光層213の両端部の先端近傍の位置(
図4の破線で囲まれる領域Aの位置)において、正孔注入層212と電子輸送層214とが近接又は接触している。つまり、正孔注入層212と電子輸送層214との介在する発光層213が、バンク220の側壁面に乗り上げた正孔注入層212の端部と電子輸送層214とが近接又は接触する部分を残して形成される。本実施の形態において、正孔注入層212の両端部は、発光層213を介さずに領域Aにおいて電子輸送層214と接触している。正孔注入層212と電子輸送層214とが近接又は接触する部分は、電気抵抗特性を有する1つの抵抗素子と同様の挙動を示す。
【0055】
このように、バンク220の側壁面に形成された正孔注入層212の一部と電子輸送層214とが近接又は接触することによって、バンク220の中央部の有機EL素子210の主発光部に並列接続された抵抗回路として抵抗要素10が生成される。つまり、抵抗要素10は、正孔注入層212と電子輸送層214とが近接した部分又は正孔注入層212と電子輸送層214とが発光層213を介さずに直接接触した部分(正孔注入層212と電子輸送層214との界面)であり、有機EL素子210を構成する部材によって形成されている。正孔注入層212と電子輸送層214とが近接又は接触する部分は、本来無くてもよい部分であるが、本実施の形態では、正孔注入層212と電子輸送層214とが近接又は接触する部分をあえて形成することで、有機EL素子210と並列接続された抵抗要素10を各バンク220内に生成させている。
【0056】
このように構成される抵抗要素10は、有機EL素子210を構成する材料によって生成されているので、有機EL素子210と同様に、通電による劣化によって高抵抗化し、経時的に抵抗値が高くなっていく。
【0057】
この場合、正孔注入層212の材料を発光層213の材料よりも抵抗値が低いものを用いることで、通電劣化よる抵抗値の増加の割合(抵抗増加率)を、有機EL素子210よりも抵抗要素10の方を容易に大きくすることができる。
【0058】
バンク220は、例えば、樹脂等の有機材料によって構成されていてもよいし、無機材料によって構成されていてもよい。有機材料としては、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、又は、ノボラック型フェノール樹脂等があげられる。また、無機材料としては、SiO
2(酸化シリコン)、又は、Si
3N
4(窒化シリコン)等があげられる。なお、バンク220は、有機溶剤耐性及び絶縁性を有する材料で形成されているとよく、さらに、エッチング処理やベーク処理等がされることがあるので、それらの処理に対する耐性の高い材料で形成されていることが好ましい。
【0059】
また、バンク220の表面は、撥液面であるとよい。例えば、バンク220に、フッ素プラズマ等の撥液処理を施すことで、バンク220に撥液性を持たせてバンク220の表面を撥液面にすることができる。なお、バンク220に撥液処理を施すのではなく、撥液性を有する有機材料を用いてバンク220を形成することによって、バンク220の表面を撥液面にしてもよい。撥液性を有する有機材料としては、例えば、フッ素化ポリオレフィン系樹脂、フッ素化ポリイミド樹脂、フッ素化ポリアクリル樹脂等のフッ素樹脂を含む材料を用いることができる。
【0060】
また、図示しないが、陰極215を覆うように封止層が形成される。封止層としては、例えば、フッ素樹脂等の有機材料を用いてもよいし、SiO
2(酸化シリコン)、GeO(酸化ゲルマニウム)、Al
2O
3(酸化アルミニウム)等の酸化物材料、又は、SiON(酸窒化シリコン)、SiN(窒化シリコン)等の窒化物材料等の無機材料を用いてもよい。なお、本実施の形態において、有機EL表示装置1は、トップエミッション型であるので、封止層としは透光性材料が用いられる。
【0061】
次に、
図5及び
図6を用いて、本実施の形態に係る有機EL表示装置1の作用効果について、従来の有機EL表示装置と比較して説明する。
図5は、従来の有機EL表示装置における有機EL素子210Xが劣化したときの電流量の変化を示す図である。
図6は、実施の形態に係る有機EL表示装置1における有機EL素子210及び抵抗要素10が劣化したときの電流量の変化を示す図である。
【0062】
図5(a)に示すように、従来の有機EL表示装置では、定電流回路である画素回路120によって有機EL素子210Xに通電すると、有機EL素子210Xに電流が流れて有機EL素子210Xが発光する。
【0063】
このとき、有機EL素子210Xの発光層又は電荷機能層が通電等によって経時的に劣化する。このため、有機EL素子210Xは、通電による劣化によって経時的に抵抗値が徐々に上昇していく。つまり、有機EL素子210Xは、通常動作による通電によって時間の経過とともに高抵抗化する。
【0064】
この結果、
図5(b)に示すように、定電流回路である画素回路120から発光素子210Xに流れる電流量そのものは変わらないが、有機EL素子210Xの経時的な高抵抗化によって、有機EL素子210Xの輝度が徐々に低下していく。これにより、メニュー画面の白表示画素等において表示焼き付きが発生する。
【0065】
これに対して、本実施の形態における有機EL表示装置1では、通電による抵抗値の増加の割合が有機EL素子210よりも大きい抵抗要素10が有機EL素子210に並列接続されている。
【0066】
これにより、
図6(a)に示すように、定電流回路である画素回路120によって有機EL素子210に通電すると、有機EL素子210及び抵抗要素10の抵抗比率にしたがって画素回路120から供給される電流が分流して有機EL素子210及び抵抗要素10の各々に所定の電流が流れる。これにより、有機EL素子210が発光する。
【0067】
このとき、有機EL素子210及び抵抗要素10は、通常動作による通電劣化によって経時的に抵抗値が徐々に上昇して高抵抗化していくが、通電による抵抗値の増加の割合が有機EL素子210よりも抵抗要素10の方が大きいので、有機EL素子210及び抵抗要素10の抵抗比率は、抵抗要素10の方が有機EL素子210よりも大きくなるように自動的に変化する。この結果、
図6(b)に示すように、抵抗要素10に対する有機EL素子210の相対的な通電量を増加させることができる。これにより、有機EL素子210の劣化による輝度の低下を抑制することができる。したがって、有機EL素子210の劣化による表示焼き付きを抑制することができる。
【0068】
特に、本実施の形態における有機EL表示装置1では、抵抗器等の回路素子を別途実装するのではなく、有機EL素子210を構成する部材を利用して抵抗要素10を形成している。具体的には、EL部200のバンク220の側壁面において、正孔注入層212と電子輸送層214とを近接又は接触させることで抵抗要素10を生成させている。
【0069】
これにより、各画素110の有機EL素子210に並列接続させる抵抗器等の回路素子を別途実装する場合と比べて、小型の有機EL表示装置を実現することができる。
【0070】
また、有機EL素子210に並列接続された抵抗要素10に相対的に流れる電流量は、有機EL素子210の電子輸送層214にドープされるバリウムの濃度によって制御することができる。この点について、
図7を用いて説明する。
図7は、通電時間に対する有機EL素子210の輝度の変化を示す図である。また、
図7では、有機EL素子210の電子輸送層214にドープされるバリウムの濃度が、5%、20%、40%としたときの輝度の変化を示している。なお、
図7は、実験値である。
【0071】
図7に示すように、有機EL素子210の電子輸送層214にドープされるバリウムの濃度が高いほど、短い通電時間で有機EL素子210の輝度が低下することが分かる。つまり、有機EL素子210の電子輸送層214にドープされるバリウムの濃度が高くなればなるほど、有機EL素子210が劣化しやすくなる。つまり、高抵抗化しやすくなる。これは、電子輸送層214にドープするバリウムの濃度によって、通電劣化による電子輸送層214の抵抗変化率が変化するからである。このように、電子輸送層214にドープするバリウムの濃度によって、抵抗要素10に相対的に流れる電流量を制御することができる。
【0072】
次に、実施の形態に係る有機EL表示装置1の製造方法について、
図8A〜
図8Lを用いて説明する。
図8A〜
図8Lは、実施の形態に係る有機EL表示装置1の製造方法の工程断面図である。
【0073】
まず、
図8Aに示すように、TFT基板100を準備する。TFT基板100は、例えば、ガラス基板等の基板の上に画素回路120を構成するTFT等の回路素子及び配線等を形成し、平坦化層で覆うことによって作製することができる。なお、平坦化層の一部にはコンタクトホールが形成される。このコンタクトホールを介して、TFT基板100の画素回路120における駆動トランジスタDrTrのソース電極S2と有機EL素子210の陽極211とが電気的に接続される。
【0074】
次に、
図8Bに示すように、TFT基板100の上に、有機EL素子210の陽極211を形成する。例えば、スパッタリングによってTFT基板100の上にアルミニウム合金膜を形成し、フォトリソグラフィ及びエッチングを行うことで、アルミニウム合金からなる所定形状の陽極211を形成することができる。
【0075】
次に、
図8C〜
図8Fに示すように、開口部220aを有するバンク220を形成する。具体的には、陽極211が形成された領域を取り囲むようにバンク220を形成する。
【0076】
この場合、まず、
図8Cに示すように、陽極211を覆うようにTFT基板100の全面に、バンク220の材料としてフォトレジスト材料を含むレジスト膜220M(例えば感光性樹脂)を塗布等により塗膜する。次いで、
図8Dに示すように、レジスト膜220Mの上に開口を有するマスク230を形成し、その後、マスク230を介してレジスト膜220Mを露光し、その後、現像液により現像処理することによってレジスト膜220Mの所定の部位を除去して陽極211を露出させる。その後、150℃〜250℃程度の熱処理(例えばベーク処理)を施す。この熱処理によって、レジスト膜220Mに残留していた溶剤が揮発する。これにより、
図8Eに示すように、陽極211を露出させる開口部220aを有するバンク220を形成することができる。その後、
図8Fに示すように、マスク230を除去する。なお、必要に応じて、バンク220の表面に撥液処理を施してもよい。
【0077】
また、現像液によりレジスト膜220Mの一部を除去して開口部220aを形成する際、開口部220aの底面(陽極211の表面)とバンク220の側壁面とのなす角θ(テーパ角)が90度よりも大きくなるようにレジスト膜220Mの一部を除去するとよい。つまり、バンク220の根元部分付近の除去量を上部分よりも相対的に大きくすることで、バンク220の側壁面の根元部分が上部分よりも後退するようにバンク220の側壁面を傾斜させるとよい。バンク220の側壁面のテーパ角θ(傾斜角)は、例えばレジスト膜220Mの露光条件を調整することで制御することができる。
【0078】
次に、バンク220の開口部220a内に正孔注入層212を形成する。本実施の形態では、
図8G及び
図8Hに示すように、バンク220の開口部220a内に、正孔注入層212を構成する有機材料を含む第1有機溶剤212Mを塗布して乾燥することで、陽極211の上に正孔注入層212を形成する。
【0079】
この場合、まず、
図8Gに示すように、陽極211が露出するバンク220の開口部220a内に、印刷用インクとして、正孔注入層212を構成する有機材料が分散された第1有機溶剤212Mをインクジェット法によって塗布する。このとき、表面張力によって、第1有機溶剤212Mの表面は、バンク220の開口部220aから球面状に膨出した形状となる。
【0080】
なお、第1有機溶剤212Mの塗布方法は、インクジェット法に限るものではなく、ディスペンサー法、ノズルコート法、スピンコート法、凹版印刷法又は凸版印刷法等であってもよい。
【0081】
その後、第1有機溶剤212Mを乾燥させる。例えば、加熱処理を施すことによって第1有機溶剤212Mを乾燥させることができる。これにより、第1有機溶剤212Mの溶剤成分が揮発し、
図8Hに示すように、バンク220の開口部220aの内面に沿った薄膜状の正孔注入層212を形成することができる。具体的には、バンク220の開口部220aの底部からバンク220の側壁面に沿ってバンク220に乗り上げるように正孔注入層212を形成することができる。なお、加熱処理を行う際の温度又は時間、また、チャンバーで加熱処理を行う場合はチャンバー内の圧力等を制御することで、膨出した第1有機溶剤212Mを所望の厚さ及び形状の正孔注入層212にすることができる。
【0082】
次に、バンク220の開口部220a内に発光層213を形成する。本実施の形態では、
図8I及び
図8Jに示すように、バンク220の開口部220a内に、発光層213を構成する有機材料(発光材料)を含む第2有機溶剤213Mを塗布して乾燥することで、正孔注入層212の上に発光層213を形成する。
【0083】
この場合、まず、
図8Iに示すように、正孔注入層212が形成されたバンク220の開口部220a内に、印刷用インクとして、発光層213を構成する有機材料が分散された第2有機溶剤213Mをインクジェット法によって塗布する。このとき、表面張力によって、第2有機溶剤213Mの表面は、バンク220の開口部220aから球面状に膨出した形状となる。
【0084】
このとき、発光層213を形成するための第2有機溶剤213Mの撥液性は、正孔注入層212を形成するための第1有機溶剤212Mの撥液性よりも大きいので、第2有機溶剤213Mの表面の曲率は、第1有機溶剤212Mの表面の曲率よりも大きくなっている。
【0085】
また、赤色用有機EL素子の発光層213(赤色発光層)を形成するための第2有機溶剤213M、緑色用有機EL素子の発光層213(緑色発光層)を形成するための第2有機溶剤213M、及び、青色用有機EL素子の発光層(青色発光層)を形成するための第2有機溶剤213Mは、それぞれ別々に塗布されるが、複数のヘッドを有するインクジェット装置を使用することで、これらの第2有機溶剤213Mを同時に塗布することもできる。
【0086】
なお、第2有機溶剤213Mの塗布方法は、インクジェット法に限るものではなく、ディスペンサー法、ノズルコート法、スピンコート法、凹版印刷法又は凸版印刷法等であってもよい。
【0087】
その後、第2有機溶剤213Mを乾燥させる。例えば、加熱処理を施すことで第2有機溶剤213Mを乾燥させることができる。これにより、第2有機溶剤213Mの溶剤成分が揮発し、
図8Jに示すように、薄膜状の発光層213を形成することができる。具体的には、正孔注入層212と同様に、バンク220の開口部220aの底部からバンク220の側壁面に沿ってバンク220に乗り上げるように発光層213を形成することができる。なお、加熱処理を行う際の温度又は時間、また、チャンバーで加熱処理を行う場合はチャンバー内の圧力等を制御することで、膨出した第2有機溶剤213Mを所望の厚さ及び形状の発光層213にすることができる。
【0088】
このとき、本実施の形態では、発光層213の両端部が正孔注入層212の両端部を超えないように発光層213が形成されている。具体的には、正孔注入層212の両端部の先端が、発光層213の両端部の先端と丁度重なっているか、発光層213の両端部の先端から露出している。このような構造は、
図8Fに示すバンク220の側壁面のテーパ角θを90°よりも大きくすることで容易に形成することができる。また、上記のように、発光層213を形成するための第2有機溶剤213Mの撥液性を、正孔注入層212を形成するための第1有機溶剤212Mの撥液性よりも大きくすることで、正孔注入層212の両端部の先端を容易に発光層213の両端部の先端に一致又は当該先端から露出させることができる。
【0089】
次に、
図8Kに示すように、バンク220の開口部220aを覆うように発光層213の上に電子輸送層214を形成する。電子輸送層214の材料としては、低分子材料にバリウムが添加された有機材料が用いられる。電子輸送層214は、例えば、蒸着法によって、発光層213及びバンク220上の全面に形成される。
【0090】
このとき、正孔注入層212の両端部の先端が発光層213の両端部の先端と丁度重なっているか、発光層213の両端部の先端から露出しているので、バンク220の側壁面において、正孔注入層212と電子輸送層214とが近接又は接触することになる。これにより、正孔注入層212と電子輸送層214との界面付近で抵抗要素10が生成される。
【0091】
次に、
図8Lに示すように、電子輸送層214の上に陰極215を形成する。例えば、スパッタリングによって電子輸送層214の上にITOを形成することで、ITO膜からなる陰極215を形成することができる。
【0092】
このようにして、陽極211、正孔注入層212、発光層213、電子輸送層214及び陰極215を有する有機EL素子210を形成することができる。なお、その後、陰極215を覆うように全面に封止層を形成してもよい。これにより、TFT基板100の上にEL部200を形成することができる。
【0093】
なお、その後、別途作成したカラーフィルタ基板300を貼り合わせ層によってEL部200に貼り合わせることで、有機EL表示装置1を得ることができる。
【0094】
以上、本実施の形態における有機EL表示装置1によれば、複数の画素110の各々に設けられた有機EL素子210と、各有機EL素子210と並列に接続された抵抗要素10とを備えている。また、有機EL素子210及び抵抗要素10は、通電によって経時的に抵抗値が高くなる特性を有している。そして、この抵抗値の変化の割合は、有機EL素子210よりも抵抗要素10の方が大きい。
【0095】
この構成により、通電による通常動作によって有機EL素子210の劣化の進行と同時に、自動的に有機EL素子210への通電量を増加させることができる。これにより、有機EL素子210の劣化による輝度の低下を抑制することができる。この結果、有機EL素子210の劣化による表示焼き付きを抑制することができる。
【0096】
(変形例等)
以上、表示装置及び表示装置の製造方法について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示の技術は、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0097】
例えば、上記実施の形態において、抵抗要素10は、有機EL素子210を構成する部材によって構成したが、これに限るものではなく、経時的に抵抗値が高くなっていく可変抵抗であればよい。この場合、抵抗要素10は、材料の劣化により抵抗値が高くなるものに限らない。
【0098】
その他、上記実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で上記実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。