(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被検物質を含む検体溶液が流れる流路であって、前記被検物質と特異的に反応する抗体が固定され前記検体溶液が接触する反応領域が配置された流路を有する分析チップを用い、前記被検物質と結合した蛍光標識から生じる蛍光を検出する表面プラズモン共鳴を利用した蛍光検出装置において、
前記検体溶液の吐出と吸引を行って前記流路内において前記検体溶液を第1方向とその反対の第2方向に往復させるポンプと、
前記ポンプの吐出量と吸引量とを制御するポンプ制御部であって、前記吐出量と前記吸引量の制御を通じて、前記検体溶液と前記反応領域とを接触させた状態で前記検体溶液を往復させるポンプ制御部と、
前記流路内の予め設定された少なくとも1つの位置について、前記検体溶液と気体との界面である気液界面が通過したことの検出に用いられる気液界面検出センサと、
前記気液界面検出センサの出力に基づいて、前記検体溶液の送液異常が生じたか否かを判定する送液異常判定部と、
前記送液異常が生じたと判定した場合にその旨を警告する警告部とを備え、
前記流路は、前記検体溶液の流れ方向に直交する断面の断面積が変化する断面積変化部を有しており、
前記気液界面センサは、
前記反応領域よりも上流側の前記断面積変化部に位置する第1位置、前記反応領域よりも下流側の前記断面積変化部に位置する第2位置、又は、前記反応領域内の第3位置のうち少なくともいずれかにおいて、前記気液界面の通過を検出する表面プラズモン共鳴を利用した蛍光検出装置。
前記ポンプ制御部は、前記検体溶液と前記反応領域とを常時接触させる状態で前記検体溶液を往復させる請求項1又は2に記載の表面プラズモン共鳴を利用した蛍光検出装置。
前記気液界面検出センサは、前記第1位置、前記第2位置及び前記第3位置の少なくとも1つの位置を前記気液界面が通過したことを光学的に検出する光センサを含む請求項1から3のいずれか1項に記載の表面プラズモン共鳴を利用した蛍光検出装置。
前記光センサは、前記第1位置における前記気液界面の通過を検出する第1光センサと、前記第2位置における前記気液界面の通過を検出する第2光センサと、前記第3位置の通過を検出する第3光センサの少なくとも1つを含む請求項6に記載の表面プラズモン共鳴を利用した蛍光検出装置。
前記送液異常判定部は、前記気液界面検出センサの出力に基づいて、前記気液界面が、前記第1位置及び前記第2位置の少なくとも一方の位置を通過したことを検出した場合に、前記送液異常が生じたと判定する請求項1から8のいずれか1項に記載の表面プラズモン共鳴を利用した蛍光検出装置。
前記送液異常判定部は、前記気液界面検出センサの出力に基づいて、前記気液界面が、前記第3位置を通過したことを検出した場合に、前記送液異常が生じたと判定する請求項1から9のいずれか1項に記載の表面プラズモン共鳴を利用した蛍光検出装置。
前記気液界面検出センサが、前記第1位置及び前記第2位置の一方の位置を前記気液界面が前記反応領域に向かって通過したことを検出した時から、前記検体溶液の流れ方向が反転して、再び同じ位置を前記気液界面が通過したことを検出するまでの往復時間を計測するタイマを備えており、
前記送液異常判定部は、前記往復時間が予め設定される予定時間を超えた場合に、前記送液異常が生じたと判定する請求項1から9のいずれか1項に記載の表面プラズモン共鳴を利用した蛍光検出装置。
被検物質を含む検体溶液が流れる流路であって、前記被検物質と特異的に反応する抗体が固定され前記検体溶液が接触する反応領域が配置された流路を有する分析チップを用い、前記被検物質と結合した蛍光標識から生じる蛍光を検出する表面プラズモン共鳴を利用した蛍光検出装置の作動方法において、
前記検体溶液の吐出と吸引を行って前記流路内において前記検体溶液を第1方向とその反対の第2方向に往復させるポンプの吐出量と吸引量とを制御するポンプ制御ステップであって、前記吐出量と前記吸引量の制御を通じて、前記検体溶液と前記反応領域とを接触させた状態で前記検体溶液を往復させるポンプ制御ステップと、
前記流路内の予め設定された少なくとも1つの位置について、前記検体溶液と気体との界面である気液界面が通過したことを検出する気液界面検出ステップと、
前記気液界面の通過の検出に基づいて、前記検体溶液の送液異常が生じたか否かを判定する送液異常判定ステップと、
前記送液異常が生じたと判定した場合にその旨を警告する警告ステップとを備え、
前記流路は、前記検体溶液の流れ方向に直交する断面の断面積が変化する断面積変化部を有しており、
前記気液界面センサは、
前記反応領域よりも上流側の前記断面積変化部に位置する第1位置、前記反応領域よりも下流側の前記断面積変化部に位置する第2位置、又は、前記反応領域内の第3位置のうち少なくともいずれかにおいて、前記気液界面の通過を検出する表面プラズモン共鳴を利用した蛍光検出装置の作動方法。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[第1実施形態]
図1に示す蛍光検出装置100は、表面プラズモン共鳴を利用した蛍光検出装置100であり、より具体的には、抗原抗体反応などによる生体物質の検査を含む分析に用いられる装置である。
【0026】
蛍光検出装置100を用いて分析を行う際、
図1に示す検体が収容された検体容器CBと、検体および試薬を抽出する際に用いられるノズルチップNCと、試薬セルおよびマイクロ流路が形成された分析チップ10が蛍光検出装置100にセットされる。なお、検体容器CB、ノズルチップNCおよび分析チップ10はいずれも一度使用したら破棄される使い捨てのものである。そして、蛍光検出装置100は検体を分析チップ10の流路15に注入して検体内の被検物質について定量的もしくは定性的な分析を行う。
【0027】
検体は、例えば血液であり、より具体的には、血清、血漿、又は全血である。なお、検体は血液以外でもよく、尿、鼻孔液、唾液、便、体腔液などでもよい。検体中に含有される被検物質としては、例えば、核酸、蛋白質、アミノ酸、糖質、脂質、またはこれらの修飾分子、複合体などである。複合体としては、例えば、腫瘍マーカー、シグナル伝達物質、ホルモンなどでもよい。
【0028】
図2に示すように、蛍光検出装置100は、装着部101、検体処理部20、測定部30、制御部40等を備えている。装着部101には、分析チップ10が装着される。検体処理部20は、ノズルチップNCを用いて検体容器CB(
図1参照)内から検体を抽出し、抽出した検体を試薬と混合撹拌した検体溶液を生成する。また、検体処理部20は、生成した検体溶液を分析チップ10に注入する。
【0029】
検体処理部20は、具体的には、ノズル移動機構21、ポンプ22、圧力計23などを備えている。ノズル移動機構21は、ノズルチップNCを上下方向及び左右方向に移動するための機構である。ポンプ22は、ノズルチップNCと配管26を介して接続され、気体を介して検体等の液体の吐出と吸引を行う。配管26は分岐しており、分岐路には、圧力計23が接続される。圧力計23は、配管26内の圧力を計測する。
【0030】
測定部30は、分析チップ10における、検体内の被検物質の反応状況を測定することで、被検物質の検体内の濃度などを測定する。測定部30は、光照射部31、入射角調整機構33、蛍光検出部32等を備えている。
【0031】
光照射部31は、分析チップ10に励起光Lを照射する。光照射部31は、励起光Lを照射する。入射角調整機構33は、分析チップ10に照射する励起光Lの入射角を調整する。蛍光検出部32は、分析チップ10において励起光Lによって励起された蛍光標識が発する蛍光を検出して蛍光検出信号を制御部40に出力する。蛍光検出部32は、フォトダイオード、フォトマルチプライヤ、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor Image Sensor)イメージセンサなどで構成される。
【0032】
測定部移動機構36は、測定部30を移動させる移動機構である。後述するように、分析チップ10には、測定対象となる領域が複数設けられており、測定部移動機構36は、分析チップ10の複数の領域の測定が可能なように、測定部30を分析チップ10に対して移動する。
【0033】
制御部40は、蛍光検出装置100の各部を統括的に制御する。制御部40には、操作部51、及び表示部52が接続されている。また、制御部40には、各種の計時を行うタイマが内蔵されている。操作部51は、ボタンや十字キーなどで構成されており、制御部40に対して、測定開始指示などの操作指示を入力する。また、検体に係る患者情報などの入力も操作部51を通じて行われる。表示部52は、例えば、液晶パネルなどで構成されており、測定結果、動作状態を表すステータス、警告などのメッセージを表示する。
【0034】
制御部40は、操作部51からの測定開始指示に従って、検体処理部20を制御して、検体溶液を分析チップ10に注入する。そして、測定部移動機構36や測定部30を作動させて測定を行う。測定において、制御部40は、蛍光検出部32から取得する蛍光検出信号に基づいて、データ分析を行い、分析結果を含む測定結果を表示部52に出力する。
【0035】
図3は分析チップ10の一例を示す模式図である。分析チップ10は、光透過性の樹脂等の誘電体で形成された本体11に、注入口12、排出口13、試料セル14A、14B、流路15が形成された構造を有している。注入口12は流路15を介して排出口13に連通している。注入口12にはノズルチップNCが差し込まれる。検体処理部20は、ノズルチップNCを介して検体溶液を流路15に注入する。試料セル14A、14Bは検体容器CB内の検体に混合する蛍光試薬を収容する容器である。蛍光試薬は、例えばpH調整のために、検体内のタンパクなどに吸着しターゲットを乖離させるなどの前処理を行う。なお、試料セル14A、14Bの開口部はシール部材により封止されており、検体と蛍光試薬とを混合する際にシール部材が穿孔されるようになっている。
【0036】
また、流路15内には検体内の被検物質を検出するための反応領域16が設けられている。反応領域16には、テスト領域TRおよびコントロール領域CRが形成されている。流路15において、注入口12がある側を反応領域16の上流側とした場合、コントロール領域CRは、テスト領域TRの下流側に設けられている。
【0037】
テスト領域TR上には第1抗体が固定されており、いわゆるサンドイッチ方式により標識化された抗体を捕捉する。また、コントロール領域CRには参照抗体が固定されており、コントロール領域CR上に検体溶液が流れることにより参照抗体が蛍光物質を捕捉する。なお、コントロール領域CRは2つ形成されており、非特異吸着を検出するためのいわゆるネガ型のコントロール領域CRと、検体差による反応性の違いを検出するためのいわゆるポジ型のコントロール領域CRとが形成されている。
【0038】
そして、測定開始が指示された際、検体処理部20は
図4に示すようにノズルチップNCを用いて検体容器CBから検体を吸引する。その後、検体処理部20は
図5に示すように試料セル14Aのシール部材を穿孔し試料セル14A内の試薬に検体を混合及び撹拌させた後、検体溶液を再びノズルチップNCを用いて吸引する。この動作を試料セル14Bについても同様に行う。試薬は、第2抗体B2が蛍光標識Fによって標識されたものである。第2抗体B2は、検体内に存在する被検物質(抗原)Aに特異的に結合する。そのため、検体と試薬を混合及び撹拌することにより、第2抗体B2と被検物質(抗原)Aとの結合により、第2抗体B2及び蛍光標識Fが、被検物質(抗原)Aの表面に修飾された検体溶液が生成される。
【0039】
そして、検体処理部20は、検体溶液を収容したノズルチップNCを注入口12に差し込む。そして、ポンプ22を作動させてノズルチップNCから検体溶液を吐出する吐出動作を行うことにより、ノズルチップNC内の検体溶液を流路15に注入する。上述したとおり、この注入口12からの吐出動作に同期して、排出口13から大気を吸引してもよい。こうすれば、流路15内によりスムーズに検体溶液を注入することができる。
【0040】
なお、検体処理部20が検体と試薬とを混合した検体溶液を流路15内に供給する場合について例示しているが、流路15内に予め試薬を充填させておき、検体処理部20が注入口12から検体のみを流入させるようにしてもよい。
【0041】
図6は、分析チップ10のテスト領域TRおよびコントロール領域CRと、分析チップ10に対して測定部30が移動する様子を示す説明図である。テスト領域TRおよび2つのコントロール領域CRは、流路15における検体溶液の流れ方向(X方向)に沿って配置されている。本体11には、テスト領域TRおよび2つのコントロール領域CRに対応して、励起光Lが入射する入射面を有するプリズム11Aが設けられている。
【0042】
測定部30において、光照射部31は、装着部101に分析チップ10が装着された場合に、分析チップ10のプリズム11Aの入射面と対向する位置に配置される。一方、蛍光検出部32は、分析チップ10の流路15の上方において、テスト領域TRやコントロール領域CRと対向する位置に配置され、各領域TR、CRからの蛍光を検出可能な位置に配置されている。
【0043】
測定部移動機構36は、光照射部31および蛍光検出部32を、流路15の流れ方向(X方向)、すなわち、テスト領域TR及びコントロール領域CRの配列方向に沿って直線的に移動させる。これにより、測定部30は、テスト領域TRおよび2つのコントロール領域CRの各領域のそれぞれと対向する位置に選択的に移動して、各領域の反応状況を測定することが可能となる。
【0044】
図7は、分析チップ10の反応領域16と、光照射部31及び蛍光検出部32との関係を、X方向から見た説明図である。なお、
図7においてはテスト領域TRに着目して説明するが、コントロール領域CRについても同様である。分析チップ10の本体11は、誘電体プレート17を有している。誘電体プレート17は、表側の面17Aが流路15の底面を構成し、裏側の面17Bにプリズム11Aが設けられる。テスト領域TR、コントロール領域CRを構成する金属膜18が形成される。金属膜18の材料は、本例では金である。誘電体プレート17とプリズム11Aは一体に成形されており、プリズム11Aも誘電体である。
【0045】
誘電体プレート17において、表側の面17Aは、金属膜18において反応領域に相当するテスト領域TRが設けられる表面とは反対側の裏面と接する主面に相当する。
【0046】
光照射部31は、金属膜18の裏面と接する誘電体プレート17の表側の面17Aの裏側から、プリズム11Aを介して励起光Lを面17Aに入射させる。面17Aに対する光軸の入射角θは、全反射条件を満足する臨界角以上の角度である。これにより、励起光Lがテスト領域TRやコントロール領域CRの金属膜18の裏面に照射される。光照射部31は、例えば、励起光Lを発する光源であるLD(Laser Diode)と、励起光Lを反射する反射ミラーなどで構成される。反射ミラーは回転移動が可能であり、光照射部31は、反射ミラーを回転移動させることで、励起光Lの入射角θを変化させることが可能である。入射角調整機構33は、レンズを併用するなどして反射ミラーを回転移動させることで、金属膜18の裏面における励起光Lの照射位置は変えずに、励起光Lの入射角を調整する。
【0047】
光照射部31により励起光Lが金属膜18の裏面に対して臨界角以上の特定の入射角で入射されることにより、金属膜18上にエバネッセント波Ewが滲み出し、このエバネッセント波Ewによって金属膜18の表面に表面プラズモンが励起される。この表面プラズモンにより金属膜18表面に電界分布が生じ、電場増強領域が形成される。すると、金属膜18上に固着された第1抗体B1と結合した蛍光標識Fはエバネッセント波Ewにより励起され増強された蛍光Lfを発生する。蛍光検出部32は、増強された蛍光Lfを受光して、受光した蛍光Lfの光量に応じた蛍光検出信号を出力する。
【0048】
ここで、表面プラズモン共鳴が生じて、増強された蛍光Lfが極大となる特定の入射角θを共鳴角と呼ぶ。共鳴角は、金属膜18の表面に接触する検体溶液SLの種類等によって変化する。そのため、入射角調整機構33によって励起光Lの入射角θが調整される。
【0049】
図8は、検体として血漿を使用した場合の蛍光Lfのプラズモン増強度と、励起光Lの反射光RLの反射率のそれぞれについて、入射角θとの関係を示す。
図8のプロファイルは、励起光Lの波長が658nm、金属膜18の厚みが36nm、金属膜18の材料が金、かつプリズム11Aの材料がPMMA(polymethyl methacrylate)の場合の例である。ここで、プラズモン増強度とは、増強が無い場合の蛍光Lfの光量を基準値として、その基準値に対して増強後の蛍光Lfの光量が何倍になっているかを示す指標である。プラズモン増強度は、蛍光検出部32が検出する蛍光Lfの光量は比例関係にあり、
図8において、縦軸を蛍光Lfの光量としても、入射角θとの関係は同じようなプロファイルとなる。
【0050】
図8において、蛍光Lfのプラズモン増強度がピーク値を示して極大となる入射角θが共鳴角として特定される。
図8に示す例では、共鳴角は73.6度である。励起光Lは、プラズモン増強にエネルギが消費されるため、蛍光Lfのプラズモン増強度とは反対に、励起光Lの反射光RLは共鳴角付近において大きく減衰し、反射率は極小値を示す。入射角調整によって、
図8に示すような、蛍光Lfのプラズモン増強度が極大値を示す共鳴角が特定される。
【0051】
図9は、検体溶液SLを流路15に注入して、検体溶液SLと反応領域16とを接触させる様子を示す。蛍光検出装置100において、制御部40は、検体溶液SLを流路15に注入した後も、ノズルチップNCを注入口12に挿入した状態で、ポンプ22を作動させる。制御部40は、ポンプ22を作動させることにより、流路15内において検体溶液SLを第1方向とその反対の第2方向に往復させる。上述したとおり検体溶液SLの注入や往復をさせる場合に、排出口13側にもポンプを接続して、ポンプ22に同期して吸引や吐出を行うようにしてもよい。
【0052】
ここで、第1方向は、流路15内において、検体溶液SLが注入口12側から排出口13側に向かって流れる方向であり、第2方向はその反対の方向とする。
【0053】
制御部40は、ポンプ22の気体の吐出量と吸引量とを制御するポンプ制御部である。検体溶液SLの往復は具体的には、制御部40が、ポンプ22の気体の吐出量と吸引量とを制御を通じて、検体溶液SLと反応領域16とを常時接触させた状態で検体溶液SLを第1方向と第2方向に流して流路15内を往復させる。すなわち、制御部40は、検体溶液SLが反応領域16と常時接触した状態で流路15内を往復するように、ポンプ22の気体の吐出量と吸引量とを制御する。
【0054】
この往復に際して、検体溶液SLと反応領域16とを常時接触させた状態にする理由は、測定結果に影響する測定条件のバラツキを防止するためである。すなわち、検体溶液SLの往復に際して、検体溶液SLの先端や後端、すなわち大気との界面である気液界面が反応領域16を通過すると、反応領域16が空気にさらされてしまう。例えば、ある検体溶液SLの検査において反応領域16が空気にさらされてしまったり、別の検体溶液SLの検査では反応領域16が空気にさらされなかったりというように測定条件にバラツキが生じると、検体内の被検物質(抗原)Aと第2抗体B2の結合量(反応量)にも影響する。測定条件のバラツキに起因して反応量が変化すると、測定結果の信頼性が低下するおそれもある。そのような事態が生じた場合には、送液異常として処理した方が好ましい場合もある。
【0055】
そのため、制御部40は、ポンプ22の気体の吐出量と吸引量とを制御して、検体溶液SLの往復の際に、検体溶液SLの気液界面BSが反応領域16を通過しないようにしている。しかしながら、ポンプ22の制御のみでは、検体溶液SLの気液界面BSが反応領域16を通過することを確実に防止するには、不十分な場合があった。というのも、検体溶液SLには、粘度差など個体差がある。こうした個体差があると、ポンプ22の吐出量と吸引量が同じでも、検体溶液SLの気液界面BSが目標位置よりも先に進んでしまったり、目標位置に達しないといったことが生じる場合があった。
【0056】
そこで、制御部40は、流路15内の予め設定された少なくとも1つの位置について、検体溶液SLと気液界面BSが通過したことを検出して、反応領域16が空気にさらされてしまうような、検体溶液SLの送液異常が生じたか否かを判定する。本例においては、圧力計23を用いて、所定位置の気液界面BSの通過が検出される。
【0057】
図9に示すように、流路15は、反応領域16が設けられる区間を含む一定の区間が他の区間と比較して狭くなっており、具体的には、反応領域16を含む一定の区間において、検体溶液SLの流れ方向(X方向)に直交する断面の断面積S1が、その両端の断面積S2よりも小さい。ここで、断面積が変化する断面積変化部15A、15Bを、それぞれ第1位置及び第2位置とする。第1位置は、第1方向を基準とした場合に、流路15において反応領域16よりも上流側に位置する位置であり、第2位置は、反応領域16よりも下流側に位置する位置である。本例において、第1及び第2位置は、送液異常を判定する際に、気液界面の通過したことを検出する検出位置として、流路15内に予め設定された少なくとも1つの位置に相当する。
【0058】
流路15において、検体溶液SLの先端や後端に位置する気液界面BSが、断面積変化部15A、15Bを通過すると、通過の際に流路15内には圧力変動が生じる。上述したとおり、流路15からポンプ22までの間の配管26の分岐路には圧力計23が接続されている。圧力計23は、こうした流路15内の圧力変動を検知するための圧力センサに相当する。
【0059】
検体溶液SLの気液界面BSが断面積変化部15A、15Bを通過する際の圧力変動は、通過時に急激に圧力が上昇して、通過後には直ちに下降するというように、スパイク状の圧力変動として現れる。検体溶液SLが流路15を流れる場合や流れる方向が反転する場合にも多少の圧力変化は生じるが、気液界面BSが断面積変化部15A、15Bを通過する際のスパイク状の圧力変動は生じない。
【0060】
制御部40は、圧力計23が計測した圧力値をリアルタイムで取得する。制御部40は、圧力計23が出力する圧力値をモニタして、スパイク状の圧力変動が生じた場合には、気液界面BSが第1位置又は第2位置を通過したことを検出する。このように、制御部40は、圧力計23の出力である圧力値に基づいて、検体溶液SLの送液異常が生じたか否かを判定する。すなわち、制御部40は、送液異常判定部として機能する。そして、圧力計23は、気液界面BSが第1位置又は第2位置を通過したことの検出に用いられる気液界面検出センサに相当する。
【0061】
また、制御部40は、検体溶液SLを往復させている間に、送液異常が生じたと判定した場合にその旨を警告する警告部として機能する。具体的には、気液界面BSが第1位置又は第2位置を通過する送液異常が生じた旨を表すメッセージを表示部52に表示する。なお、警告は音声で行ってもよい。
【0062】
以下、上記構成による作用について、
図10に示すフローチャート、
図11及び
図12に示す往復動作中の検体溶液SLの状態遷移図を参照しながら説明する。
図11は、送液異常と判定されない正常パターンの例を示し、
図12は、送液異常と判定される異常パターンの例を示す。
【0063】
蛍光検出装置100を用いて分析を行う際は、まず、ステップ(S)1001が実行されて、分析チップ10及び検体が収容された検体容器CBが蛍光検出装置100にセットされる。分析チップ10は、装着部101に装着される。
【0064】
次に、操作部51を通じて、例えば、患者情報などの検体情報が入力され、制御部40は、入力された検体情報を受け付ける(S1002)。制御部40は、操作部51からの測定開始指示の入力を待機する(S1003)。測定開始指示が入力されると(S1003でY)、制御部40は、検体処理部20の作動を開始させる。検体処理部20は、
図4に示したように、ノズルチップNCで検体容器CBから検体を吸引する。そして、
図5に示したように、吸引した検体をノズルチップNCから試料セル14Aに注入して、第2抗体B2と蛍光標識Fとを含む蛍光試薬と検体溶液SLを混合して、検体溶液SLを生成する。
【0065】
そして、検体処理部20は、ノズルチップNCの先端を分析チップ10の注入口12に差し込み、生成した検体溶液SLを流路15に注入する(S1004)。検体溶液SLを流路15に注入後、検体処理部20は、ポンプ22を作動させて、検体溶液SLの往復動作を開始する(S1005)。制御部40は、往復動作を開始するとタイマを作動させて計時を開始する。そして、制御部40は、圧力計23からの圧力値に基づいて、検体溶液SLの気液界面BSが第1位置又は第2位置を通過した否かの監視を開始する(S1006)。
【0066】
ここで、送液異常が生じない場合は、
図11に示すように検体溶液SLの往復動作が行われる。
図11Aは、検体溶液SLが流路15に注入されて、ポンプ22の吐出動作により、検体溶液SLが反応領域16の上流側から下流側まで流れて、第2位置を通過して、さらに、排出口13の近くまで到達している状態を示す。
【0067】
図11Aにおいて、圧力計23が出力する圧力値の時間変化を示すグラフは、気液界面BSが
図11Aに示す状態になった後の時間変化を示し、検体溶液SLの流路15への注入時の圧力値は示されていない。この状態では、圧力値は安定しており、スパイク状の圧力変動は生じない。
【0068】
図11Aに示す状態から、ポンプ22の吸引動作が行われると、検体溶液SLがノズルチップNCに吸引されて、検体溶液SLが第2方向に流れる。これにより、排出口13の近くにあった気液界面BSは、第2位置に近づく。
図11Cに示すように、気液界面BSが第2位置に到達する前に、ポンプ22が吐出動作を開始して、検体溶液SLの流れる方向が第1方向に反転すると、再び気液界面BSは、排出口13に向かう。
図11に示すように、検体溶液SLが往復している限りは、気液界面BSが第2位置や第1位置を通過することがない。
【0069】
この場合、
図11B及び
図11Cの圧力値のグラフが示すように、スパイク状の圧力変動は生じない。したがって、制御部40は、
図10において、気液界面BSが第1位置又は第2位置を通過していないと判定して(S1006でN)、S1007に進む。S1007において、往復動作が開始されてから所定時間経過していない場合は、再びステップS1006に復帰する。
【0070】
一方、
図12に示すパターンでは、制御部40は、エラー処理を行う(S1008)。
図12において、
図12Aに示す状態は、
図11Aと同じである。この状態から、
図12Bに示すように、ポンプ22が吸引動作を開始すると、検体溶液SLは第2方向に流れる。例えば、
図11の場合と比較して、
図12の場合の検体溶液SLの粘度が低いと、ポンプ22の吸引量が同じでも、検体溶液SLの気液界面BSは、
図12Bに示すように、第2位置を超えて、反応領域16に近づく。あるいは、反応領域16や、反応領域16を超えて第1位置に到達する。
【0071】
そして、
図12Cに示すように、ポンプ22の動作を吐出動作に切り替えると、検体溶液SLの流れる方向が第2方向から第1方向に反転して、再び、気液界面BSが第1位置を通過して、排出口13に向かう。
【0072】
この場合、
図12Bの圧力値のグラフが示すように、スパイク状の圧力変動が生じる。
図10において、制御部40は、圧力計23からの圧力値に基づいて、こうしたスパイク状の圧力変動を検知すると、気液界面BSが第1位置又は第2位置を通過したと判定する(S1006でY)。この場合、制御部40は、送液異常が生じたと判定して、S1008のエラー処理に進む。S1008において、制御部40は、送液異常が生じた旨のメッセージを表示部52に出力して、警告する。そして、制御部40は、こうした送液異常が生じた場合には、検査間における測定条件のバラツキの原因となるため、測定を中止する。
【0073】
また、制御部40は、送液異常が生じずに、所定時間が経過した場合(S1007でY)、検体溶液SLの往復動作を終了する(S1009)。このように反応領域16に対して検体溶液SLを往復させることにより、少量の検体溶液SLで、被検物質(抗原)Aと第1抗体B1の反応量を多くすることができる。
【0074】
制御部40は、検体溶液SLの往復動作を終了後、光照射部31の入射角を調整する(S1010)。制御部40は、光照射部31の入射角θを、予め設定された基準角に合わせる。そして、光照射部31から励起光Lを照射した状態で、基準角を基準として入射角θをプラス方向とマイナス方向に所定範囲内で変化させる。この間、蛍光検出部32は、反応量に応じた蛍光を検出する。制御部40は、蛍光検出部32で検出した蛍光検出信号に基づいて、プラズモン増強度が極大となる共鳴角を特定する。
【0075】
入射角調整(S1010)が終了した後、測定が行われる(S1011)。光照射部31は、特定した共鳴角で励起光Lを所定時間照射して、その間、蛍光検出部32は、蛍光を検出する。こうした蛍光の検出が、測定部30を移動させながら、テスト領域TRとコントロール領域CRについて行われる。
【0076】
制御部40は、テスト領域TR及びコントロール領域CRのそれぞれで、蛍光検出部32が検出した蛍光検出信号を分析する。そして、被検物質(抗原)Aと第2抗体B2の反応量を算出して、被検物質(抗原)Aの検体内の濃度を測定して、これを測定結果として出力する(S1012)。測定結果は、表示部52に表示される他、メモリにデータとして記録される。また、測定結果をプリント出力してもよい。
【0077】
以上説明したように、本例では、測定条件のバラツキの原因となる送液異常が生じた場合に警告するので、送液異常が生じたことをユーザに報知することができる。これにより、測定条件のバラツキが生じる測定結果は評価の対象から排除されるため、複数の検査間で測定条件を揃えることが可能になり、結果として、測定結果の信頼性が確保される。
【0078】
また、本例では、気液界面検出センサとして、圧力計23(圧力センサ)を利用している。流路15を有する分析チップ10を利用する蛍光検出装置100には、圧力計23は、標準的に用いられる装備である。本例では、こうした標準的な装備を用いて気液界面を検出できるため、コストの増加を抑制することができる。
【0079】
[変形例1−1]
上記例においては、送液異常の判定に際して、気液界面BSが第1位置又は第2位置を1回でも通過した場合には送液異常と判定しているが、通過回数が予め設定された回数を超えた場合に送液異常と判定してもよい。つまり、予め設定された回数までは、気液界面BSが第1位置又は第2位置を通過することを許容してもよい。
【0080】
[変形例1−2]
上記例においては、送液異常が生じた旨の警告を行って、かつ、測定も中止しているが、警告を行うのみで、測定は中止しなくてもよい。この場合には、測定結果の中に、送液異常が生じた旨の記録を含めることが好ましい。こうすれば、測定自体は行われるものの、ユーザは、送液異常が生じた結果を見て、その測定結果を評価の対象から除外したり、あるいは送液異常が生じたことを加味した上で測定結果を評価することができる。
【0081】
[第2実施形態]
図13に示す第2実施形態は、気液界面検出センサとして、第1位置又は第2位置を気液界面BSが通過したことを光学的に検出する光センサ61を用いる例である。その他の構成や処理手順は第1実施形態と同様であるので、同じ構成要素には同じ符号を付して説明を省略する。
【0082】
図13に示すように、第1位置及び第2位置には、それぞれ光センサ61が配置されている。光センサ61は、例えば、発光部61Aと受光部61Bで構成される透過型である。発光部61Aと受光部61Bは、流路15を挟んで、対向する位置に配置されている。発光部61Aは例えばフォトダイオードであり、受光部61Bは例えばLED(Light Emitting Diode)である。光センサ61は、制御部40に接続されており、制御部40によって動作が制御される。制御部40は、光センサ61の出力(光量信号)を受信して、その光量信号に基づいて送液異常を判定する。
【0083】
流路15内に検体溶液SLがある場合と無い場合では、発光部61Aが発光する光が流路15を透過する光量Iが変化する。これは、空気と検体溶液SLでは屈折率が異なることに起因する。検体溶液SLがある場合と無い場合とでどちらの透過光量が大きくなるかは、流路15を構成する透明材料の屈折率と、検体溶液SLまたは空気の屈折率との間の屈折率差の大小に応じて決まる。本例では、流路15に検体溶液SLがある場合の方が無い場合よりも光量Iが大きくなる例で説明する。
【0084】
また、第2実施形態においては、光センサ61が配置される第1位置又は第2位置は、流路15の断面積が変化する部分から反応領域16に近づいた位置に設定される。光センサ61を用いる場合には、第1実施形態のように、断面積変化部15A、15B(
図9参照)を第1位置や第2位置に設定すると、光の散乱が大きくなるため、第1位置や第2位置を設定する位置としては、断面積変化部15A、15B(
図9参照)を避けた方が好ましい。
【0085】
図13Aは、光センサ61が配置される第1位置又は第2位置において検体溶液SLがある場合を示す。
図13Bは、
図13Aの状態から、検体溶液SLが第2方向に流れて、第2位置を通過した状態を示す。
図13Bにおいては、光センサ61が配置される第2位置を気液界面BSが通過しているため、第2位置において検体溶液SLが無い。そのため、
図13Bのグラフに示すように、第2位置の受光部61Bが検出する光量Iは、
図13Aと比較して、低下する。制御部40は、こうした光量信号の変化に基づいて、気液界面BSが第1位置又は第2位置を通過したか否かを判定する。
【0086】
また、第2実施形態においては、気液界面BSを通過したことを検出する検出位置を、第1位置及び第2位置の2つの位置としているが、検出位置としては、第1位置及び第2位置に加えて、反応領域16内の第3位置を設けてもよい。この場合は、反応領域16内の金属膜18が設けられていない位置、具体的には、テスト領域TRやコントロール領域CRの間に第3位置を設定して、この第3位置に光センサ61を配置する。このように第3位置に光センサ61を配置することで、第1位置、第2位置、第3位置のそれぞれの位置を気液界面BSが通過したことを検出できるようにしてもよい。検出位置が多いほど、気液界面BSの通過の検出精度が向上する。
【0087】
また、第1位置、第2位置、及び第3位置の3つの位置のうちの少なくとも1つの位置を検出位置としてもよい。
【0088】
[変形例2−1]
上記例では、排出口13側の気液界面BSの通過を検出する例で説明したが、
図14に示すように、注入口12側の気液界面BSの通過を検出してもよい。また、注入口12に近い気液界面BSと注入口12に近い気液界面BSの両方の通過を検出してもよい。
【0089】
[変形例2−2]
また、
図15に示すように、反応領域16内の第3位置を気液界面BSが通過したか否かを検出する光センサとして、測定部30を兼用させてもよい。なお、測定部30を使用する場合は、流路15内の透過光量を検出するのではなく、テスト領域TRやコントロール領域CRを構成する金属膜18上の蛍光標識Fが発する蛍光を検出する。そのため、測定部30を光センサとして兼用できる前提としては、気液界面BSが反応領域16にある場合と無い場合とで、蛍光検出部32が検出する蛍光Lfの光量が変化することが必要である。測定部30を光学センサとして用いることで、専用の光学センサを用いることなく、反応領域16内の第3位置での検出が可能となる。
【0090】
また、測定部30を、反応領域16内の第3位置における気液界面BSの通過を検出する第3光センサとして兼用させるだけでなく、反応領域16外の第1位置又は第2位置における気液界面BSの通過を検出する光センサとして兼用してもよい。この場合には、反応領域16外の第1位置又は第2位置においても、測定部30が蛍光を検出できるように第1位置又は第2位置においても金属膜18を設けて、気液界面BSの通過を検出するためのダミー領域を設ける必要がある。
【0091】
[その他]
なお、
図15の例では、光センサ61と測定部30とを組み合わせているが、光センサ61を設けずに、測定部30のみを用いて、気液界面BSの通過を検出してもよい。
【0092】
また、光センサ61を使用する場合は、流路15内であれば、検出位置となる第1位置又は第2位置はどこに設定してもよい。例えば、流路15において反応領域16の近くの断面積が狭小な区間に設けた例で説明したが、断面積が相対的に広い区間において、より注入口12や排出口13の近くに第1位置や第2位置を設定してもよい。このように、光センサ61を使用する場合は、圧力計23を使用する場合と比べて、配置の自由度が高いというメリットがある。
【0093】
[第3実施形態]
図16に示す第3実施形態は、1つの光センサ61とタイマとを組み合わせて、送液異常を検出する形態である。タイマは、例えば制御部40に内蔵されているタイマが使用される。第3実施形態においては、光センサ61は、例えば排出口13の近傍に設定した第2位置に設けられる。
【0094】
第3実施形態においては、制御部40は、まず、
図16Aに示すように、検体溶液SLが第2方向に流れて、第2位置を気液界面BSが反応領域16に向かって通過したことを検出する。そして、制御部40は、第2位置を気液界面BSが通過した時から内蔵タイマの計時を開始し、
図16Bに示すように、検体溶液SLが第2方向に流れて、その後、
図16Cに示すように、検体溶液SLの流れ方向が第1方向に反転して、再び同じ第2位置を気液界面BSが通過したことを検出するまでの往復時間を計測する。
【0095】
制御部40は、計測した往復時間が予め設定される予定時間を超えた場合に、送液異常が生じたと判定する。例えば、
図16Bにおいて、検体溶液SLが第2方向に流れている場合に、気液界面BSが反応領域16を超えて注入口12近くまで到達して、そこから流れ方向が第1方向に反転して
図16Cに示す位置に復帰するまでの往復時間と、気液界面BSが反応領域16の手前で流れ方向が反転して
図16Cに示す位置に復帰するまでの往復時間とを比較する。この場合、注入口12近くまで到達した方が往復時間は多くかかると考えられる。そのため、往復時間が予定時間を超えた場合は、制御部40は、送液異常が生じたと判定して、警告する。
【0096】
このように、所定の検出位置を通過した後、同じ検出位置に復帰するまでの検体溶液SLの往復時間に基づいて送液異常を判定してもよい。この方法によれば、反応領域16から離れた位置に光学センサを配置することができる。反応領域16の近くにおいては、光学センサを配置しにくい場合もある。本例はそのような場合に有効である。
【0097】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、各実施形態や各変形例の組み合わせなど、本発明の要旨を逸脱しない限り種々の構成を採用し得ることはもちろんである。
【0098】
上記各実施形態において、例えば、制御部40などの電気信号の処理を実行する処理部(processing unit)のハードウェア的な構造は、次に示すような各種のプロセッサ(processor)である。
【0099】
各種のプロセッサには、CPU、プログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、専用電気回路等が含まれる。CPUは、周知のとおりソフトウエア(プログラム)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサである。PLDは、FPGA(Field Programmable Gate Array) 等の、製造後に回路構成を変更可能なプロセッサである。専用電気回路は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである。
【0100】
1つの処理部は、これら各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種または異種の2つ以上のプロセッサの組み合せ(例えば、複数のFPGAや、CPUとFPGAの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、1つ以上のCPUとソフトウエアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)等に代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのICチップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサを1つ以上用いて構成される。
【0101】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)である。
【0102】
また、上記以外にも、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行なってもよいのは勿論である。