特許第6768643号(P6768643)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6768643高含水量を有する袋状水分散性洗剤配合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6768643
(24)【登録日】2020年9月25日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】高含水量を有する袋状水分散性洗剤配合物
(51)【国際特許分類】
   C11D 17/04 20060101AFI20201005BHJP
   C11D 1/83 20060101ALI20201005BHJP
   C11D 3/04 20060101ALI20201005BHJP
   C11D 17/08 20060101ALI20201005BHJP
【FI】
   C11D17/04
   C11D1/83
   C11D3/04
   C11D17/08
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-518262(P2017-518262)
(86)(22)【出願日】2015年10月9日
(65)【公表番号】特表2017-532414(P2017-532414A)
(43)【公表日】2017年11月2日
(86)【国際出願番号】US2015054829
(87)【国際公開番号】WO2016060945
(87)【国際公開日】20160421
【審査請求日】2018年9月25日
(31)【優先権主張番号】62/062,991
(32)【優先日】2014年10月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アフア・サーポン・カリカリ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィクラム・プラサド
(72)【発明者】
【氏名】サーラ・ジェイ・ヴィツカ
【審査官】 林 建二
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−320683(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0281658(US,A1)
【文献】 特表2010−519365(JP,A)
【文献】 特表2007−533866(JP,A)
【文献】 特開2008−002024(JP,A)
【文献】 特開昭60−212497(JP,A)
【文献】 特開昭53−056202(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/048278(WO,A1)
【文献】 特開2006−077207(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0141664(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第102015876(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/00−19/00
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
A47L 15/00−21/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分散性密封パッケージに収容された洗剤であって、前記洗剤が、(a)洗剤全重量に基づいて14〜40重量%のアニオン性界面活性剤と非イオン性面活性剤の混合物、(b)洗剤全重量に基づいて5〜10重量%の塩化アンモニウムもしくは洗剤全重量に基づいて5重量%の硫酸アンモニウム、並びに(c)洗剤全重量に基づいて40〜75重量%の水のみからなり、前記パッケージは、前記洗剤と直接接触しているエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体を含み、前記共重合体は、共重合体全重量に基づいて70〜90重量%のエチレンの重合単位、共重合体全重量に基づいて10〜30重量%の(メタ)アクリル酸の重合単位、及び共重合体全重量に基づいて0.2重量%以下の架橋剤を含む、洗剤。
【請求項2】
前記水分散性密封パッケージがエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体のみからなる、請求項1に記載の洗剤。
【請求項3】
前記共重合体が、共重合体全重量に基づいて0.05重量%以下の架橋剤を有する、請求項1または2に記載の洗剤。
【請求項4】
前記(b)成分が洗剤全重量に基づいて5〜10重量%の塩化アンモニウムである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の洗剤。
【請求項5】
洗剤全重量に基づいて46〜72重量%の水を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の洗剤。
【請求項6】
洗剤全重量に基づいて17〜38重量%のアニオン性界面活性剤と非イオン性面活性剤の前記混合物を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の洗剤。
【請求項7】
前記共重合体は、共重合体全重量に基づいて76〜84重量%のエチレンの重合単位、及び共重合体全重量に基づいて16〜24重量%の(メタ)アクリル酸の重合単位を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の洗剤。
【請求項8】
前記共重合体は、エチレンアクリル酸共重合体である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の洗剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分散性の袋に封入された洗剤配合物に関する。
【0002】
袋状洗剤配合物は、例えば、米国特許公開第2006/0281658号において知られており、ポリビニルアルコール袋内の高塩配合物が記載されている。しかしながら、この参考文献は、本明細書で特許請求される袋状洗剤配合物の使用を示唆していない。
【0003】
本発明により解決される課題は、高含水量を有する改良された袋状クリーニング洗剤配合物の必要性である。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、密封パッケージに収容された洗剤であって、(a)14〜40重量%の界面活性剤、(b)3〜25重量%の塩、及び(c)40〜75重量%の水を含み、前記パッケージは、前記液体洗剤と直接接触しているエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体を含み、前記共重合体は、70〜90重量%のエチレンの重合単位、10〜30の(メタ)アクリル酸の重合単位、及び0.2重量%以下の架橋剤を含む、洗剤を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0005】
他に指定のない限り、百分率は重量百分率(重量%)であり、温度は℃である。他に指定のない限り、操作は、室温(20−25℃)で行った。洗剤中の成分の重量百分率は、活性成分、例えば、市販の界面活性剤製品中に存在し得るいかなる水も有しない界面活性剤分子、及び水を含む液体洗濯洗剤組成物全体の重量を基準としている。共重合体中のエチレン、(メタ)アクリル酸または架橋剤単位の百分率は、ポリマー鎖の全重量を基準としている。用語「(メタ)アクリル」は、メタクリルまたはアクリルを意味する。
【0006】
好ましくは、洗剤は、クリーニング配合物または洗濯洗剤、好ましくは洗濯洗剤である。好ましくは、洗剤を収容する密封パッケージを洗濯機に加える。
【0007】
好ましくは、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体は、少なくとも73重量%、好ましくは少なくとも76重量%、好ましくは少なくとも78重量%、好ましくは87重量%以下、好ましくは84重量%以下、好ましくは82重量%以下のエチレンを含む。好ましくは、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体は、少なくとも13重量%、好ましくは少なくとも16重量%、好ましくは少なくとも18重量%、好ましくは27重量%以下、好ましくは24重量%以下、好ましくは22重量%以下の(メタ)アクリル酸を含む。好ましくは、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体はランダム共重合体である。好ましくは、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体はエチレン−アクリル酸共重合体である。
【0008】
好ましくは、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体の数平均分子量(Mn)は2,000〜20,000、好ましくは2,500〜15,000、好ましくは3,000〜10,000である。好ましくは、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体の重量平均分子量(Mw)は8,000〜150,000、好ましくは10,000〜100,000、好ましくは12,000〜60,000、好ましくは14,000〜30,000である。好ましくは、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体は部分的に中和されている。すなわち、カルボン酸基の50〜100モル%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、好ましくは少なくとも88%、好ましくは96%以下、好ましくは94%以下、好ましくは92%以下が塩基の添加により中和されている。好ましくは、塩基は、アルカリ金属水酸化物、好ましくは水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム、好ましくは水酸化カリウムである。
【0009】
好ましくは、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体中の架橋剤の量は、0.15重量%以下、好ましくは0.1重量%以下、好ましくは0.05重量%以下、好ましくは0.02重量%以下である。全ての百分率は乾燥ポリマーを基準とする。架橋剤は、多エチレン性不飽和モノマーまたはZn+2、Ca+2、Mg+2、及びAl+3からなる群から選択される金属イオンの重合単位である。金属イオンの百分率は、アニオンを有しない金属のみを基準とする。
【0010】
好ましくは、洗剤は、少なくとも17重量%、好ましくは少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも23重量%、好ましくは少なくとも26重量%、好ましくは38重量%以下、好ましくは35重量%以下、より好ましくは32重量%以下の界面活性剤を含む。好ましくは、洗剤は、少なくとも43重量%、好ましくは少なくとも46重量%、好ましくは少なくとも49重量%、好ましくは少なくとも52重量%、好ましくは少なくとも55重量%、好ましくは72重量%以下、好ましくは69重量%以下、好ましくは66重量%以下の水を含む。
【0011】
好ましくは、洗剤組成物は、少なくとも4重量%、好ましくは少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも7重量%、好ましくは少なくとも9重量%、好ましくは20重量%以下、好ましくは17重量%以下、好ましくは15重量%以下、好ましくは13重量%以下の塩を含む。塩の量は、洗剤中に存在するアニオン性またはカチオン性界面活性剤を含まない。好ましくは、塩は10個以下の炭素原子、好ましくは6個以下の炭素原子、好ましくは3個以下の炭素原子を有する。好ましくは、塩は、塩化物、クエン酸塩、リン酸塩、硫酸塩、炭酸塩、メタケイ酸塩、及びアルミノケイ酸塩からなる群から選択される。好ましくは、塩のカチオンは、アルカリ金属イオンまたはアンモニウムイオンである。好ましくは、洗剤は、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、及び硫酸アンモニウムからなる群から選択される塩、好ましくは塩化ナトリウムまたは塩化アンモニウムを含む。
【0012】
界面活性剤は、カチオン性、アニオン性、非イオン性、脂肪酸金属塩、双性イオン性またはベタイン性界面活性剤であってよい。好ましくは、配合物は、少なくとも1種の、好ましくは少なくとも2種のアニオン性界面活性剤を含む。好ましくは、非イオン性界面活性剤は、少なくとも8個の炭素原子を有するアルキル基及び少なくとも5個の重合したエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイド残基を有する。好ましくは、非イオン性界面活性剤は、少なくとも5個、好ましくは少なくとも6個、好ましくは少なくとも7個、好ましくは12個以下、好ましくは11個以下、好ましくは10個以下の重合したエチレンオキサイド残基を有する。好ましくは、洗剤組成物は、少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも6重量%、好ましくは少なくとも8重量%、好ましくは15重量%以下、好ましくは13重量%以下、好ましくは11重量%以下の直鎖アルコールエトキシレートを含む。好ましくは、直鎖アルコールエトキシレートは、C−C18、好ましくはC10−C16、好ましくはC12−C15のアルキル基を有する。好ましくは、直鎖アルコールエトキシレートは、6〜12個、好ましくは7〜10個のエチレンオキサイド重合単位を含む。好ましくは、アニオン性界面活性剤は、少なくとも10個の炭素原子を有するアルキル基及びアニオン性基を有し、好ましくはスルホン酸塩及び硫酸塩から選択される。アニオン性界面活性剤はまた、エチレンオキサイドの重合残基を有していてもよく、及び/または芳香環、例えば直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩を有していてもよい。いくつかのアニオン性界面活性剤は、脂肪酸アルカリ金属塩である。好ましくは、洗剤組成物は、5重量%以下、好ましくは3重量%以下、好ましくは1重量%以下の直鎖アルキルベンゼンスルホネートを含む。好ましくは、アルキルベンゼンスルホネートはC10−C14アルキル基を有する。好ましくは、洗剤組成物は、少なくとも2重量%、好ましくは少なくとも3重量%、好ましくは少なくとも4重量%のアルキルスルフェートを含む。好ましくは、洗剤組成物は、12重量%以下、好ましくは10重量%以下、好ましくは8重量%以下のアルキルスルフェートを含む。好ましくは、アルキルスルフェートは1分子当たり1〜5個の重合エチレンオキサイド単位を含む。好ましくは、洗剤組成物は、少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも13重量%、好ましくは少なくとも16重量%の直鎖アルキルスルホネートを含む。好ましくは、組成物は25重量%以下、好ましくは22重量%以下の直鎖アルキルスルホネートを含む。
【0013】
好ましくは、洗剤組成物のpHは4〜11、好ましくは4.5〜10、好ましくは4.5〜9である。配合物のpHを調整するのに適した塩基として、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムなどの鉱物性塩基;水酸化アンモニウム;モノ−、ジ−またはトリ−エタノールアミンなどの有機塩基;または2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール(DMAMP)が挙げられる。塩基の混合物を使用してもよい。水性媒体のpHを調整するのに適した酸としては、塩酸、リン酸、硫酸などの鉱酸;及び酢酸などの有機酸が挙げられる。酸の混合物を使用してもよい。配合物を塩基でより高いpHに調整し、次いで酸で上記の範囲に逆滴定してもよい。
【実施例】
【0014】
エチレン/アクリル酸(92%KOH中和済)フィルムの調製:ガラス、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)または二軸延伸ポリエチレン(BOPET)基材上に、15ミル(375μm)のエッジを有するドローダウンバーをフィルムが塗工されるべき方向に対して垂直に置く。ドローダウンバーで囲まれた領域に共重合体(80/20エチレン−アクリル酸、85%〜92%中和、Mn約5000)の分散液を加える。ドローダウンバーを基材の一端から他端までゆっくりと引きずり、均一な層が形成されるように分散液を引き伸ばす。基材を40℃に設定された強制空気オーブン内に20分間載置する。このステップの後、刃を用いて作られたフィルムの一端をそっと剥がし、次いでフィルムの残りを手で剥がす。このプロセスでは〜3ミル(〜75μm)の厚さのフィルムを作るべきである。
【0015】
配合物の調製:FlackTek SPEEDMIXER(Model DAC150FVZ−K)を用いて3540rpmで1分間、界面活性剤及びボルテックスを組み合わせてスラリーとする。スラリーに溶媒と水を加え、混合を繰り返す。次に、ハイドロトロープ、材料及び塩を添加し、3540rpmで3分間混合する。配合物を一晩かけて平衡化させるか、または使用前に透明な単相液体に変化させる。全ての洗剤配合物は、長期間安定であり、均質で澄んだ透明な液体である。
【0016】
袋の調製:上記のように調製されたフィルムから2インチ×4インチストリップを切り取る。最も長い辺の中ほどで折り曲げて、2つに重なった2インチ×2インチの袋表面を得る。8インチMIDWEST PACIFICヒートシーラーを活用して、「3」のヒート設定を使用して、2つのエッジのそれぞれを〜3秒間互いに平行に密封し、1つの開いた端を有する袋を作成する。注入器を用いて袋内に〜2から3mLの配合物を入れる。最後に、インパルスシーラーを用いて袋の開口エッジを密封する。安定性の観察のため、糸くずの出ないワイプを張ったペトリ皿にその袋を置く。
【0017】
PVOHを用いた袋の調製
ポリビニルアルコール(PVOH)(製品M8630)フィルムはMonoSol(登録商標)から得られる。したがって、調製は不要である。既製のフィルムからストリップを切り取り、エチレン/アクリル酸フィルムに用いられたものと同じ手順に従う。
【0018】
【表1】
【0019】
配合物Aは、示された塩及び可塑剤/溶媒に加えて、20%のALPHA−STEP PC−48(メチル2−スルホラウリン酸ナトリウム)を含有していた。配合物Bは、示された塩及び可塑剤/溶媒に加えて、19.5%のALPHA−STEP PC−48及び10%のBIO−SOFT N25−7(アルコールエトキシレート)を含有していた。配合物Cは、示された塩及び可塑剤/溶媒に加えて、19.5%のALPHA−STEP PC−48、9.5%のBIO−SOFT N25−7及び6.5%のSTEOL CS−270(アルコールエトキシレートスルフェート)を含有していた。全ての配合物の残りは水であった。「U」は配合物が不安定であり、そのため袋で試験をしなかったことを示している。「NaCit」はクエン酸ナトリウムである。「EAA」はエチレン/アクリル酸共重合体である。「PG」はプロピレングリコールである。
【0020】
表に示された結果は、試験された配合物について、塩化、炭酸、硫酸、クエン酸及びケイ酸アニオンを有する様々なナトリウム塩、カリウム塩、及びアンモニウム塩のうち、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、及び硫酸アンモニウムのみが、PVOH系袋と比較して優れた安定性を有する袋状配合物となったことを示している。