(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0004】
本発明は、前記従来の問題点を解決するものであって、各々の連通管の前端開口部の間隔を比較的小さくしても、インキ吸蔵体の内部における各々の連通管の前端近傍に適正な高密度部を形成でき、ペン先からの十分なインキ吐出性が得られる直液式筆記具を提供しようとするものである。
【0005】
尚、本明細書において、「前」とはペン先側を指し、「後」とはその反対側を指す。
【0006】
本願の第1の発明は、ペン先と、前記ペン先の後端に接続されるインキ吸蔵体と、前記インキ吸蔵体の後方に配置され、インキを直に貯溜するインキタンクと、前記インキタンクと前記インキ吸蔵体との間を接続する複数本の連通管とからなり、前記連通管の各々の前端が開口され、前記連通管の各々の前端をインキ吸蔵体の後端から前方に挿入することにより前記インキ吸蔵体の内部を押圧圧縮し、前記連通管の各々の前端をインキ吸蔵体内部に位置させてなる直液式筆記具であって、前記連通管の各々の前端が、前方に向かうに従って径方向内方に向かう傾斜面を備え、前記連通管の各々の前端開口部が径方向外方に向かって開口してなることを要件とする。
【0007】
前記第1の発明の直液式筆記具は、前記連通管の各々の前端が、前方に向かうに従って径方向内方に向かう傾斜面を備え、前記連通管の各々の前端開口部が径方向外方に向かって開口してなることにより、各々の連通管の前端近傍でインキ吸蔵体が過度に圧縮されることなく、ペン先からの十分なインキ吐出性が得られる。特に、前記第1の発明の直液式筆記具は、細身の軸筒を得るために軸筒の外径を小さくし、それに伴いインキ吸蔵体の外径及び各々の連通管の前端開口部の間隔を小さくしても、各々の連通管の前端近傍でインキ吸蔵体が適度に圧縮され、インキ吸蔵体の内部における各々の連通管の前端近傍に適正な高密度部を形成でき、各々の連通管を介してインキと空気の交替をスムーズに行うことができ、ペン先からのインキ吐出性が低下することがない。
【0008】
次に、本願の第2の発明は、前記第1の発明の直液式筆記具において、前記連通管の各々の側壁を連結部により連結し、前記連結部の前端を前記連通管の各々の前端開口部より前方に位置させたことを要件とする。
【0009】
前記第2の発明の直液式筆記具は、前記連通管の各々の側壁を連結部により連結し、前記連結部の前端を前記連通管の各々の前端開口部より前方に位置させたことにより、より一層、各々の連通管の前端近傍でインキ吸蔵体が適度に圧縮され、インキ吸蔵体の内部における各々の連通管の前端近傍に適正な高密度部を形成できる。
【0010】
次に、第3の発明は、前記第2の発明の直液式筆記具において、前記連結部の前端が前方に向かうに従って径方向内方に向かう傾斜面を複数備え、前記連結部の前端の各々の傾斜面と前記連通管の前端の各々の傾斜面とを連続的に接続させたことを要件とする。
【0011】
前記第3の発明の直液式筆記具は、前記連結部の前端が前方に向かうに従って径方向内方に向かう傾斜面を複数備え、前記連結部の前端の各々の傾斜面と前記連通管の前端の各々の傾斜面とを連続的に接続させたことにより、より一層、各々の連通管のインキ吸蔵体へのスムーズな挿入が可能となり、インキ吸蔵体の内部における各々の連通管の前端近傍に適正な高密度部を形成できる。
【0012】
次に、第4の発明は、前記第1乃至第3の発明の直液式筆記具において、前記連通管の前端が平面状の傾斜面であることを要件とする。
【0013】
前記第4の発明の直液式筆記具は、前記連通管の前端が平面状の傾斜面であることにより、より一層、各々の連通管のインキ吸蔵体へのスムーズな挿入が可能となり、インキ吸蔵体の内部における各々の連通管の前端近傍に適正な高密度部を形成できる。
【0014】
また、前記第1の発明に関連して、本願の更なる発明(第5の発明)の直液式筆記具は、ペン先と、前記ペン先の後端に接続される筒状のインキ吸蔵体と、前記インキ吸蔵体の後方に配置されるインキタンクと、前記インキ吸蔵体と前記インキタンクとの間を接続する複数本の連通管と、を備え、前記連通管の各々の前端部は、前記インキ吸蔵体の内部に位置していて、前記インキ吸蔵体の外周側に向いた傾斜面を有するように形成されており、前記連通管の各々は、前記前端部の前記傾斜面内において開口部を有しており、前記連通管の各々は、前記開口部に隣接して前記開口部よりも前方に延在する先端領域を有しており、前記先端領域は、前記連通管の各々が前記インキ吸蔵体の後端から前方に挿入される時に当該インキ吸蔵体の内部を押圧圧縮できる押圧圧縮部を構成していることを要件とする。
【0015】
本発明によれば、前記連通管の各々が、前記インキ吸蔵体の外周側に向いた傾斜面を有するように形成されており、前記傾斜面内において開口部を有しており、且つ、前記開口部に隣接して前記開口部よりも前方に延在する先端領域を有しており、当該先端領域がインキ吸蔵体の内部を押圧圧縮できる押圧圧縮部を構成しているという特徴のために、連通管の各々の先端領域の近傍でインキ吸蔵体が過度に圧縮されるおそれがなく、ペン先からの十分なインキ吐出性が得られる。特に、細身の軸筒を得るために軸筒の外径を小さくし、それに伴いインキ吸蔵体の外径及び各々の連通管の開口部の間隔を小さくしても、各々の連通管の先端領域の近傍でインキ吸蔵体は適度に圧縮され、インキ吸蔵体の内部における各々の連通管の先端領域の近傍において適正な(所望の)高密度部を形成でき、結果として、各々の連通管を介してインキと空気との交替をスムーズに行うことができ、ペン先からのインキ吐出性が低下するおそれがない。
【0016】
少なくとも本願出願の時点においては、連通管の各々が互いから離れている態様も、本発明の範囲から排除されない。
【0017】
しかしながら、連通管の各々の側壁が連結部によって連結されていることが好ましい。この場合、各々の連通管のインキ吸蔵体への挿入がより容易になる。
【0018】
また、この場合において、連結部の前端側の領域が、連通管の各々の開口部よりも前方に延在していて、連通管の各々の先端領域と共に押圧圧縮部を構成していることが更に好ましい。この場合、インキ吸蔵体が、各々の連通管の先端領域の近傍で、より一層適度に圧縮されて、より一層適正な高密度部を形成できる。結果として、各々の連通管を介してインキと空気との交替をより一層スムーズに行うことができる。
【0019】
また、この場合において、連結部の前端側の領域は、連通管の各々の傾斜面と連続する1以上の連結部傾斜面を有していることが更に好ましい。この場合、各々の連通管のインキ吸蔵体への挿入をより一層スムーズに行うことができる。また、この場合も、インキ吸蔵体が、各々の連通管の先端領域の近傍で、より一層適度に圧縮されて、より一層適正な高密度部を形成できる。結果として、各々の連通管を介してインキと空気との交替を更によりスムーズに行うことができる。
【0020】
少なくとも本願出願の時点においては、連通管の本数は限定されない。
【0021】
しかしながら、連通管の本数は2本であることが好ましい。2本である場合、1本がインキ供給用に作用する一方で、他の1本が空気置換用に作用するため、インキと空気との交替を極めて高効率に行うことができる。
【0022】
なお、連通管の各々の前端部の傾斜面は、平面状であってもよいし、凸曲面状であってもよいし、凹曲面状であってもよい。
【0023】
また、前記第2の発明は、実質的に、以下のように規定することもできる。すなわち、本願の更なる発明(第6の発明)の直液式筆記具は、ペン先と、前記ペン先の後端に接続される筒状のインキ吸蔵体と、前記インキ吸蔵体の後方に配置されるインキタンクと、前記インキ吸蔵体と前記インキタンクとの間を接続する複数本の流通路を有する共同連通管と、を備え、前記共同連通管の前端部は、前記インキ吸蔵体の内部に位置していて、前記流通路の各々が前記インキ吸蔵体の外周側に向いた傾斜面内において開口部を有するような形状を有しており、前記共同連通管は、前記各開口部に隣接して前記各開口部よりも前方に延在する先端領域を有しており、前記先端領域は、前記共同連通管が前記インキ吸蔵体の後端から前方に挿入される時に当該インキ吸蔵体の内部を押圧圧縮できる押圧圧縮部を構成していることを要件とする。
【0024】
本発明によれば、前記共同連通管の前端部が、前記流通路の各々が前記インキ吸蔵体の外周側に向いた傾斜面内において開口部を有するような形状を有しており、且つ、前記共同連通管は、前記各開口部に隣接して前記各開口部よりも前方に延在する先端領域を有しており、当該先端領域がインキ吸蔵体の内部を押圧圧縮できる押圧圧縮部を構成しているという特徴のために、共同連通管の先端領域の近傍でインキ吸蔵体が過度に圧縮されるおそれがなく、ペン先からの十分なインキ吐出性が得られる。特に、細身の軸筒を得るために軸筒の外径を小さくし、それに伴いインキ吸蔵体の外径及び共同連通管の各開口部間の間隔を小さくしても、共同連通管の先端領域の近傍でインキ吸蔵体は適度に圧縮され、インキ吸蔵体の内部における共同連通管の先端領域の近傍において適正な(所望の)高密度部を形成でき、結果として、各々の流通路を介してインキと空気との交替をスムーズに行うことができ、ペン先からのインキ吐出性が低下するおそれがない。
【0025】
例えば、前記共同連通管の前端部は、各々が前記インキ吸蔵体の外周側に向いた複数の傾斜面を有するように形成されており、前記流通路の各々が、前記複数の傾斜面の各々に対応していて、対応する傾斜面内において開口部を有している。
【0026】
この場合、流通路の本数は2本であることが好ましい。2本である場合、1本がインキ供給用に作用する一方で、他の1本が空気置換用に作用するため、インキと空気との交替を極めて高効率に行うことができる。
【0027】
また、この場合、複数の傾斜面の各々は、平面状であってもよいし、凸曲面状であってもよいし、凹曲面状であってもよい。
【0028】
あるいは、例えば、前記共同連通管の前端部は、軸線回りに回転対称な回転体形状を有している。更に詳しくは、前記共同連通管の前端部は、円錐形状または切頭円錐形状を有し得る。あるいは、前記共同連通管の前端部は、球面形状を有し得る。
【0029】
続いて、本願の更なる発明(第7の発明)の直液式筆記具は、ペン先と、前記ペン先の後端に接続される筒状のインキ吸蔵体と、前記インキ吸蔵体の後方に配置されるインキタンクと、前記インキ吸蔵体と前記インキタンクとの間を接続する連通管と、を備え、前記連通管の前端部は、前記インキ吸蔵体の内部に位置していて、複数の開口部の各々が前記インキ吸蔵体の外周側に向いた傾斜面内において開口するような形状を有しており、前記連通管は、前記各開口部に隣接して前記各開口部よりも前方に延在する先端領域を有しており、前記先端領域は、前記連通管が前記インキ吸蔵体の後端から前方に挿入される時に当該インキ吸蔵体の内部を押圧圧縮できる押圧圧縮部を構成していることを要件とする。
【0030】
本発明によれば、前記連通管の前端部が、複数の開口部の各々が前記インキ吸蔵体の外周側に向いた傾斜面内において開口するような形状を有しており、且つ、前記連通管は、前記各開口部に隣接して前記各開口部よりも前方に延在する先端領域を有しており、当該先端領域がインキ吸蔵体の内部を押圧圧縮できる押圧圧縮部を構成しているという特徴のために、連通管の先端領域の近傍でインキ吸蔵体が過度に圧縮されるおそれがなく、ペン先からの十分なインキ吐出性が得られる。特に、細身の軸筒を得るために軸筒の外径を小さくし、それに伴いインキ吸蔵体の外径及び連通管の各開口部間の間隔を小さくしても、連通管の先端領域の近傍でインキ吸蔵体は適度に圧縮され、インキ吸蔵体の内部における連通管の先端領域の近傍において適正な(所望の)高密度部を形成でき、結果として、各々の開口部を介してインキと空気との交替をスムーズに行うことができ、ペン先からのインキ吐出性が低下するおそれがない。
【0031】
例えば、前記連通管の前端部は、各々が前記インキ吸蔵体の外周側に向いた複数の傾斜面を有するように形成されており、前記開口部の各々が、前記複数の傾斜面の各々に対応していて、対応する傾斜面内において開口している。
【0032】
この場合、開口部の数は2個であることが好ましい。2個である場合、1個がインキ供給用に作用する一方で、他の1個が空気置換用に作用するため、インキと空気との交替を極めて高効率に行うことができる。
【0033】
また、この場合、複数の傾斜面の各々は、平面状であってもよいし、凸曲面状であってもよいし、凹曲面状であってもよい。
【0034】
あるいは、例えば、前記連通管の前端部は、軸線回りに回転対称な回転体形状を有している。更に詳しくは、前記連通管の前端部は、円錐形状または切頭円錐形状を有し得る。あるいは、前記連通管の前端部は、球面形状を有し得る。
【発明を実施するための形態】
【0036】
[第1の実施の形態]
本発明の直液式筆記具の第1の実施の形態を
図1乃至
図4に示す。
図1は、本発明の第1の実施の形態の直液式筆記具1の縦断面図であり、
図2は、
図1の要部拡大縦断面図であり、
図3は、
図2のA−A線断面図であり、
図4は、
図2の連通管の前端の斜視図である。第1の実施の形態は、前記第1の発明乃至第5の発明に関している。
【0037】
図1に示すように、本実施の形態の直液式筆記具1は、ペン先2と、前記ペン先2の後端に接続されるインキ吸蔵体3と、前記インキ吸蔵体3の後方に配置される中間部材7と、前記中間部材7の後方に配置されるインキタンク4と、前端部で前記ペン先2を保持する軸筒8と、ペン先2側に着脱自在に設けられるキャップ(図示せず)と、からなっている。前記軸筒8の内部に、前記インキ吸蔵体3、前記中間部材7、及び、前記インキタンク4の前部、が収容されている。以下、各構成要素毎に詳細を説明していく。
【0038】
・ペン先
本実施の形態のペン先2は、合成樹脂製繊維(例えば、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ナイロン繊維等)から樹脂加工によって製造された棒状体である。ペン先2の前端は、砲弾状に研削されている。
【0039】
・インキ吸蔵体
図1及び
図2に示すように、本実施の形態のインキ吸蔵体3は、円柱状の合成樹脂製繊維束(例えば、ポリエステル繊維束)の加工体からなる。インキ吸蔵体3の外周面には、合成樹脂製の円筒状の外皮が被覆されている。インキ吸蔵体3の前端面の軸心に、ペン先2の後端が突き刺し挿入されるようになっている。そして、当該突き刺し挿入の結果、ペン先2の後端がインキ吸蔵体3の内部に位置されるようになっている。
【0040】
・軸筒
本実施の形態の軸筒8は、合成樹脂(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等)から射出成形によって製造された筒状体である。
図1に示すように、軸筒8は、ペン先2外周面を保持する先細部と、当該先細部より後方に連設されインキ吸蔵体3及び中間部材7が収容される本体部と、からなる。
【0041】
軸筒8(本体部)の後端開口部に、インキタンク4が着脱自在に取り付けされるようになっている。具体的には、インキタンク4の前部外周面に雄ネジ41aが形成されていて、軸筒8(本体部)の後端開口部の内周面に雌ネジ81が形成されていて、両者が螺合することでインキタンク4の前部外周面と軸筒8(本体部)の後端開口部の内周面とが互いに着脱自在に取り付けられるようになっている。
【0042】
・中間部材
本実施の形態の中間部材7は、合成樹脂(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等)から射出成形よって製造される。
図1に示すように、中間部材7は、インキ吸蔵体3とインキタンク4とを区画する隔壁71と、当該隔壁71の前面より前方に突出され且つインキ吸蔵体3の内部に突き刺し接続される複数本(具体的には2本であるが、後述のように一体に連結されている)の連通管5と、隔壁71の後面より後方に突出され且つインキタンク4の前端開口部に挿着される接続管72と、隔壁71の前面より前方に突出し且つ軸筒8内面(本体部内面)に固着される取付筒部73と、を有している。
【0043】
軸筒8、隔壁71及び取付筒部73によって形成される空間が、吸蔵体収容部を構成しており、その中にインキ吸蔵体3が収容されている。
【0044】
また、本実施の形態においては、隔壁71の後面の軸心に、後方に突出する棒状部74が一体に形成されている。当該棒状部74は、後述するように、インキタンク4の栓体43を後方に押圧するようになっている。
【0045】
本実施の形態においては、接続管72の内面とインキタンク4の前端部外面とが嵌合される構造が採用されている。しかしながら、接続管72の外面とインキタンク4の前端部内面とが嵌合される構造が採用されてもよい。
【0046】
その他、本実施の形態において、隔壁71は円板状であり、各々の連通管5、接続管72、及び、取付筒部73は、それぞれ円筒状である。
【0047】
そして、本実施の形態においては、隔壁71、各々の連通管5、接続管72、取付筒部73、及び棒状部74は、一体に連設されている。即ち、中間部材7として、隔壁71、各々の連通管5、接続管72、取付筒部73、及び棒状部74が一部品で構成されている。
【0048】
・連通管
連通管5の各々の内部には、軸方向に流通路53が設けられており、当該流通路53は、連通管5の各々の両端にて開口されている。連通管5の各々の前端は、インキ吸蔵体3の内部に開口されており、連通管5の各々の後端は、インキ吸蔵体3の後方のインキタンク4内に開口されている。各々の連通管5は、インキ吸蔵体3とインキタンク4との間に並列に配置されていて、すなわち、インキ吸蔵体3とインキタンク4との間に独立した複数本(具体的には2本)の流通路53が並列に設けられている。本実施の形態の流通路53は、それぞれ、接続管72の内側に位置する隔壁71の領域内で、軸心を外れた箇所(軸心から離れた箇所)を貫通している。本実施の形態では、連通管5の各々の流通路53は、横断面円形状を有している。
【0049】
・傾斜面
本実施の形態の連通管5の各々の前端部には、傾斜面52が形成されている。当該傾斜面52は、インキ吸蔵体3の外周側に向いた傾斜面であり、すなわち、前方に向かうに従って径方向内方に向かう形状を有している。換言すれば、傾斜面52は、前方に向かうに従って中間部材7の軸心及びインキ吸蔵体3の軸心に接近する形状を有している。
【0050】
そして、各連通管5(各流通路53)の開口部51が、インキ吸蔵体3の外周側に向いた傾斜面(径方向外方に向いた傾斜面)52内に形成されている(開口されている)。開口部51は、傾斜面52の真上からは楕円形状に見える。
【0051】
連通管5の前端部の傾斜面52は、具体的には、平面状、凸曲面状、凹曲面状等であり得る。本実施の形態では、平面状の傾斜面52が採用されている。
【0052】
・連結部
本実施の形態では、各々の連通管5の側壁は、連結部6によって一体に連結されている。連結部6の前端は、各々の連通管5の開口部51より前方に位置している。そして、連結部6の前端部も、インキ吸蔵体3の外周側に向いた傾斜面61、すなわち前方に向かうに従って径方向内方に向かう傾斜面61、を有している。換言すれば、傾斜面61は、前方に向かうに従って中間部材7の軸心及びインキ吸蔵体3の軸心に接近する形状を有している。
【0053】
本実施の形態では、連結部6の傾斜面61は、複数個(具体的には2個)が形成されている。そして、各傾斜面61は、具体的には、平面状、凸曲面状、凹曲面状等であり得るが、本実施の形態では、平面状の傾斜面61が採用されて、隣接する連通管5の傾斜面52と滑らかに連続している。
【0054】
一方、本実施の形態では、複数個(具体的には2個)の傾斜面61は、傾斜面52に連続する側とは反対側で互いに隣接(所定角度(この場合90°:
図1参照)をなすように交差)していて、連結部6の最前端(先端)に稜線状の頂部62が形成されている。本実施の形態では、連結部6の頂部62は、インキ吸蔵体3の軸心と直交するように位置している。
【0055】
・高密度部
連通管5の各々の前端及び連結部6の前端は、一体的にインキ吸蔵体3の後端から前方に突き刺し挿入され、インキ吸蔵体3の内部のペン先2の後端近傍に位置決めされている。連通管5の各々の前端及び連結部6の前端がインキ吸蔵体3に突き刺し挿入される際、連通管5の各々の前端及び連結部6の前端がインキ吸蔵体3の繊維を掻き分けながらインキ吸蔵体3の繊維を前方に押圧圧縮する。特に、連通管5の各々の開口部51よりも前方に延在する先端領域52dと連結部6の開口部51よりも前方に延在する領域61dとが、協働して押圧圧縮部として作用する。この押圧圧縮作用により、各々の連通管5の前端近傍のインキ吸蔵体3の繊維密度が、各々の連通管5の前端近傍以外の部分のインキ吸蔵体3の繊維密度よりも、高くなる。すなわち、インキ吸蔵体3内部において、各々の連通管5の前端近傍に繊維密度の高い高密度部31が形成され、同時に、各々の連通管5の前端近傍以外に繊維密度の低い低密度部32が形成される(
図1参照)。
【0056】
繊維密度の高い高密度部31は、相対的に毛細管力が大きく、繊維密度の低い低密度部32は、相対的に毛細管力が小さい。このため、インキ吸蔵体3内部におけるインキは、低密度部32よりも高密度部31に優先的に含浸され得る。そして、高密度部31に含浸されたインキは、連通管5の各々の開口部51を確実に液シールする。これにより、インキタンク4のインキがペン先2側から過剰に漏出することが効果的に防止される。
【0057】
前述の通り、連通管5の各々の前端は、インキ吸蔵体3の軸心から離れた位置に配置されている。好ましくは、連通管5の各々の前端は、インキ吸蔵体3の軸心を中心とする同一円周上に互いに等間隔で配置される。本実施の形態では、連通管5の本数が2本であるので、当該2本の連通管5がインキ吸蔵体3の軸心に対して180度対称位置に配置されている。一方、ペン先2はインキ吸蔵体3の軸心に位置している。従って、連通管5の各々の前端は、ペン先2の後端と直接接続されることはなく(非接触状態)、インキ吸蔵体3の内部、特に高密度部31を介して、ペン先2とインキ流通可能になっている。なお、連通管5の各々の前端は、ペン先2の後端より後方に位置していることが好ましい。
【0058】
・インキタンク
図1に示すように、本実施の形態のインキタンク4は、前端が開口し後端が閉鎖された有底筒状の本体41と、当該本体41の前端開口部の内面に固着される筒状の先口体42と、当該先口体42の内面に嵌着される栓体43と、からなっている。本体41及び先口体42は、合成樹脂から射出成形によって製造される。栓体43は、金属製または合成樹脂製のボールからなる。
【0059】
本体41の外周面に、雄ネジ41aと、当該雄ネジ41aの後方に位置する鍔部41bと、が一体に形成されている。本体41の雄ネジ41aは、軸筒8の後端開口部内周面に形成された雌ネジ81と螺合されるようになっている。インキタンク4の接続完了時、鍔部41bが軸筒8の後端に当接されるようになっている。
【0060】
インキタンク4は、軸筒8に接続される前には、栓体43によって閉鎖されている。使用時に、中間部材7の棒状部74によって栓体43がインキタンク4内に押し込まれて外されることで、インキタンク4は開栓される。インキタンク4内には、直にインキ9が貯溜されている。インキタンク4内に貯溜されるインキ9の種類は、水性インキ、油性インキのいずれであってもよい。
【0061】
インキタンク4の前端開口部の外面(より詳しくは、先口体42の前端部の外周面)には、中間部材7の接続管72の内面が着脱自在に嵌着されている。インキタンク4のインキが消費され筆記不能となった場合、使用済のインキタンク4は接続管72から取り外され、内部にインキが十分に充填されている新たなインキタンク4が接続管72に挿着される。これにより、再び、筆記可能となる。ここで、新たなインキタンク4の前端開口部51は、栓体43により閉鎖されているが、接続管72をインキタンク4の前端開口部51に挿着する際、栓体43が棒状部74によって後方に押圧されて外されて開栓される。
【0062】
本実施の形態の直液式筆記具1は、前記第1の発明に対応しており、前記連通管5の各々の前端が、前方に向かうに従って径方向内方に向かう傾斜面52を備え、前記連通管5の各々の前端開口部51が径方向外方に向かって開口してなることにより、各々の連通管5の前端近傍でインキ吸蔵体3が過度に圧縮されることなく、ペン先2からの十分なインキ吐出性が得られる。特に、本実施の形態の直液式筆記具1は、細身の軸筒8を得るために軸筒8の外径を小さくし、それに伴いインキ吸蔵体3の外径及び各々の連通管5の前端開口部51の間隔を小さくしても、各々の連通管5の前端近傍でインキ吸蔵体3が適度に圧縮され、インキ吸蔵体3の内部における各々の連通管5の前端近傍に適正な高密度部31を形成でき、各々の連通管5を介してインキと空気の交替をスムーズに行うことができ、ペン先2からのインキ吐出性が低下することがない。
【0063】
また、本実施の形態の直液式筆記具1は、前記第2の発明に対応しており、前記連通管5の各々の側壁を連結部6により連結し、前記連結部6の前端を前記連通管5の各々の前端開口部51より前方に位置させたことにより、より一層、各々の連通管5の前端近傍でインキ吸蔵体3が適度に圧縮され、インキ吸蔵体3の内部における各々の連通管5の前端近傍に適正な高密度部31を形成できる。
【0064】
また、本実施の形態の直液式筆記具1は、前記第3の発明に対応しており、前記連結部6の前端が前方に向かうに従って径方向内方に向かう傾斜面61を複数備え、前記連結部6の前端の各々の傾斜面61と前記連通管5の前端の各々の傾斜面52とを連続的に接続させたことにより、より一層、各々の連通管5のインキ吸蔵体3へのスムーズな挿入が可能となり、インキ吸蔵体3の内部における各々の連通管5の前端近傍に適正な高密度部31を形成できる。
【0065】
また、本実施の形態の直液式筆記具1は、前記第4の発明に対応しており、前記連通管5の前端が平面状の傾斜面52であることにより、より一層、各々の連通管5のインキ吸蔵体3へのスムーズな挿入が可能となり、インキ吸蔵体3の内部における各々の連通管5の前端近傍に適正な高密度部31を形成できる。
【0066】
また、本実施の形態の直液式筆記具1は、前記第5の発明に対応しており、前記連通管5の各々が、前記インキ吸蔵体3の外周側に向いた傾斜面52を有するように形成されており、前記傾斜面52内において開口部51を有しており、且つ、前記開口部51に隣接して前記開口部51よりも前方に延在する先端領域52dを有しており、当該先端領域52dがインキ吸蔵体3の内部を押圧圧縮できる押圧圧縮部を構成しているという特徴のために、連通管5の各々の先端領域52dの近傍でインキ吸蔵体3が過度に圧縮されるおそれがなく、ペン先2からの十分なインキ吐出性が得られる。特に、細身の軸筒8を得るために軸筒8の外径を小さくし、それに伴いインキ吸蔵体3の外径及び各々の連通管5の開口部51の間隔を小さくしても、各々の連通管5の先端領域52dの近傍でインキ吸蔵体3は適度に圧縮され、インキ吸蔵体3の内部における各々の連通管5の先端領域52dの近傍において適正な(所望の)高密度部31を形成でき、結果として、各々の連通管5を介してインキと空気との交替をスムーズに行うことができ、ペン先2からのインキ吐出性が低下するおそれがない。
【0067】
また、本実施の形態の直液式筆記具1では、連通管5の各々の側壁が連結部6によって連結されているため、各々の連通管5のインキ吸蔵体3への挿入がより容易である。
【0068】
また、本実施の形態の直液式筆記具1では、連結部6の前端側の領域61dが、連通管5の各々の開口部51よりも前方に延在していて、連通管5の各々の先端領域52dと共に押圧圧縮部を構成しているため、インキ吸蔵体3が、各々の連通管5の先端領域52dの近傍で、より一層適度に圧縮されて、より一層適正な高密度部31を形成している。結果として、各々の連通管5を介してインキと空気との交替をより一層スムーズに行うことができる。
【0069】
また、本実施の形態の直液式筆記具1では、連結部6の前端側の領域61dは、連通管5の各々の傾斜面52と連続する1以上の連結部傾斜面を有しているため、各々の連通管5のインキ吸蔵体3への挿入をより一層スムーズに行うことができる。また、この特徴は、インキ吸蔵体3が、各々の連通管5の先端領域52dの近傍で、より一層適度に圧縮されて、より一層適正な高密度部31を形成できることにも寄与していると考えられる。
【0070】
また、本実施の形態の直液式筆記具1では、連通管5の本数が2本であって、1本がインキ供給用に作用する一方で、他の1本が空気置換用に作用するため、インキと空気との交替を極めて高効率に行うことができる。
【0071】
なお、本実施の形態において、連通管5の各々の開口部51よりも前方に延在する先端領域52dと連結部6の開口部51よりも前方に延在する領域61dとが、協働して押圧圧縮部として作用することが重要である。本実施の形態では、稜線状の頂部62の長さL(
図4参照)がαmmであり、2つの流路部53の離間距離G(
図3参照)がβmmであり、すなわち、2つの開口部51の間で、前方側から見て(
図4の矢印方向から見て)少なくともαmm×βmmの矩形領域が効果的に押圧圧縮作用を果たしていることが重要である。なお、頂部62の長さLは、例えば0.5mm〜4.0mmの範囲から選択され得るし、2つの流路部53の離間距離Gは、例えば0.5mm〜3.0mmの範囲から選択され得る。
【0072】
本実施の形態の他のサイズに関して補足すれば、インキ吸蔵体3の直径は5〜13mm程度であり、各流路部53の横断面は円形状で、その直径d(
図3参照)は0.5〜3.0mm程度であり、各連通管5の外径D(
図3参照)は直径1.5〜5.0mm程度であり、頂部62とペン先2の後端との間の距離a(
図1参照)は、1.0〜10mm程度である。
【0073】
[第2の実施の形態:スリット状の間隙]
なお、以上の第1の実施の形態では、2つの連通管5の側壁同士が連結部6によって連結されていたが、両者が連結されていない態様も採用可能である。そのような第2の実施の形態を、
図5乃至
図7に示す。
【0074】
図5は、本発明の第2の実施の形態の直液式筆記具12の要部拡大縦断面図であり、
図6は、
図5のA−A線断面図であり、
図7は、
図5の連通管の前端の斜視図である。第2の実施の形態は、前記第1の発明及び前記第5の発明に関している。
【0075】
図5乃至
図7に示すように、本実施の形態の直液式筆記具12は、2つの連通管5が連結部で連結されておらず、両者の間にスリット状の間隙121が存在している。スリット状の間隙121の離間幅Sは、0.5〜2.0mmである。
【0076】
本実施の形態のその他の構成は、第1の実施の形態の直液式筆記具1と同様である。
図5乃至
図7において、第1の実施の形態と同様の構成部分には同様の符号を付し、その詳細な説明は省略する。本実施の形態の各サイズについても、第1の実施の形態と略同様である。
【0077】
本実施の形態によっても、第1の実施の形態と略同様の作用効果が得られる。すなわち、連通管5の各々の先端領域52dの近傍でインキ吸蔵体3が過度に圧縮されるおそれがなく、ペン先2からの十分なインキ吐出性が得られる。特に、細身の軸筒8を得るために軸筒8の外径を小さくし、それに伴いインキ吸蔵体3の外径及び各々の連通管5の開口部51の間隔を小さくしても、各々の連通管5の先端領域52dの近傍でインキ吸蔵体3は適度に圧縮され、インキ吸蔵体3の内部における各々の連通管5の先端領域52dの近傍において適正な(所望の)高密度部31を形成でき、結果として、各々の連通管5を介してインキと空気との交替をスムーズに行うことができ、ペン先2からのインキ吐出性が低下するおそれがない。
【0078】
[第3の実施の形態:共同連通管]
また、第1の実施の形態では、2つの連通管5の側壁同士が連結部6によって連結されていたが、それらを最初から一体化した態様、すなわち、各々が流通路53を有する2つの連通管5に代えて、2つの流通路53を有する共同連通管131を備えた態様も採用可能である。そのような第3の実施の形態を、
図8及び
図9に示す。
【0079】
図8は、本発明の第3の実施の形態の直液式筆記具の共同連通管131の前端の斜視図であり、
図9は、
図8の共同連通管131の前端の縦断面図である。第3の実施の形態は、前記第1乃至第4の発明及び前記第5の発明に関している。
【0080】
図8及び
図9に示すように、本実施の形態の直液式筆記具は、各々が流通路53を有する2つの連通管5を備える代わりに、2つの流通路53を有する共同連通管131を備えている。
【0081】
共同連通管131の前端部は、インキ吸蔵体3の内部に位置していて、流通路53の各々がインキ吸蔵体3の外周側に向いた傾斜面132内において開口部51を有するような形状を有している。また、共同連通管131は、各開口部51に隣接して各開口部51よりも前方に延在する先端領域133を有している。この先端領域133が、共同連通管131がインキ吸蔵体3の後端から前方に挿入される時にインキ吸蔵体3の内部を押圧圧縮できる押圧圧縮部を構成している。
【0082】
更に、本実施形態では、共同連通管131の前端部は、各々がインキ吸蔵体3の外周側に向いた2個の傾斜面132を有するように形成されており、流通路53の各々が、2個の傾斜面の各々に対応して、対応する傾斜面132内において開口部51を有している。そして、2個の傾斜面132は、互いに隣接(所定角度(この場合120°:
図9参照)をなすように交差)していて、共同連通管131の最前端(先端)に稜線状の頂部134が形成されている。本実施の形態の頂部134も、インキ吸蔵体3の軸心と直交するように位置している。
【0083】
本実施の形態のその他の構成は、第1の実施の形態の直液式筆記具1と同様である。
図8及び
図9において、第1の実施の形態と同様の構成部分には同様の符号を付し、その詳細な説明は省略する。本実施の形態の各サイズについても、第1の実施の形態と略同様である。
【0084】
本実施の形態によっても、第1の実施の形態と同様の作用効果が得られる。すなわち、共同連通管131の先端領域133の近傍でインキ吸蔵体3が過度に圧縮されるおそれがなく、ペン先2からの十分なインキ吐出性が得られる。特に、細身の軸筒8を得るために軸筒8の外径を小さくし、それに伴いインキ吸蔵体3の外径及び共同連通管131の外径を小さくしても、共同連通管131の先端領域133の近傍でインキ吸蔵体3は適度に圧縮され、インキ吸蔵体3の内部における共同連通管131の先端領域133の近傍において適正な(所望の)高密度部31を形成でき、結果として、各々の流通路53を介してインキと空気との交替をスムーズに行うことができ、ペン先2からのインキ吐出性が低下するおそれがない。
【0085】
[第4の実施の形態:傾斜面連続]
ここで、第1の実施の形態及び第3の実施の形態では、連結部9または共同連通管131の最前端(先端)に稜線状の頂部62、134が形成されているが、本発明はそのような態様に限定されないで、稜線状の頂部が形成されない態様も採用可能である。そのような第4の実施の形態を、
図10及び
図11に示す。
【0086】
図10は、本発明の第4の実施の形態の直液式筆記具の共同連通管141の前端の斜視図であり、
図11は、
図10の共同連通管141の前端の縦断面図である。第4の実施の形態は、前記第1乃至第3の発明及び前記第5の発明に関している。
【0087】
図10及び
図11に示すように、共同連通管141の前端部も、インキ吸蔵体3の内部に位置していて、流通路53の各々がインキ吸蔵体3の外周側に向いた傾斜面142内において開口部51を有するような形状を有している。また、共同連通管141も、各開口部51に隣接して各開口部51よりも前方に延在する先端領域143を有している。この先端領域143が、共同連通管141がインキ吸蔵体3の後端から前方に挿入される時にインキ吸蔵体3の内部を押圧圧縮できる押圧圧縮部を構成している。
【0088】
また、
図10及び
図11に示すように、本実施の形態の直液式筆記具でも、共同連通管141の前端部は、各々がインキ吸蔵体3の外周側に向いた2個の傾斜面142を有するように形成されており、流通路53の各々が、2個の傾斜面142の各々に対応して、対応する傾斜面142内において開口部51を有している。
【0089】
しかし、2個の傾斜面142は、互いに滑らかに連続する同一の曲率を有する凸曲面であって、共同連通管131の最前端(先端)に稜線状の頂部を形成していない。連続する2個の傾斜面142の曲率半径(
図11参照)は、例えば3.0mmである。
【0090】
本実施の形態のその他の構成は、第3の実施の形態の直液式筆記具と同様である。
図10及び
図11において、第3の実施の形態と同様の構成部分には同様の符号を付し、その詳細な説明は省略する。本実施の形態の各サイズについても、第1の実施の形態と略同様である。
【0091】
本実施の形態によっても、第3の実施の形態と同様の作用効果が得られる。すなわち、共同連通管141の先端領域143の近傍でインキ吸蔵体3が過度に圧縮されるおそれがなく、ペン先2からの十分なインキ吐出性が得られる。特に、細身の軸筒8を得るために軸筒8の外径を小さくし、それに伴いインキ吸蔵体3の外径及び共同連通管141の外径を小さくしても、共同連通管141の先端領域143の近傍でインキ吸蔵体3は適度に圧縮され、インキ吸蔵体3の内部における共同連通管141の先端領域143の近傍において適正な(所望の)高密度部31を形成でき、結果として、各々の流通路53を介してインキと空気との交替をスムーズに行うことができ、ペン先2からのインキ吐出性が低下するおそれがない。
【0092】
[第5の実施の形態:円錐面]
共同連通管の前端部の形状としては、軸線回りに回転対称な回転体形状を採用することもできる。そのような第5の実施の形態を、
図12及び
図13に示す。
【0093】
図12は、本発明の第5の実施の形態の直液式筆記具の共同連通管151の前端の斜視図であり、
図13は、
図12の共同連通管151の前端の縦断面図である。第5の実施の形態は、前記第1乃至第3の発明及び前記第5の発明に関している。
【0094】
図12及び
図13に示すように、共同連通管151の前端部も、インキ吸蔵体3の内部に位置していて、流通路53の各々がインキ吸蔵体3の外周側に向いた傾斜面152内において開口部51を有するような形状を有している。また、共同連通管151も、各開口部51に隣接して各開口部51よりも前方に延在する先端領域153を有している。この先端領域153が、共同連通管151がインキ吸蔵体3の後端から前方に挿入される時にインキ吸蔵体3の内部を押圧圧縮できる押圧圧縮部を構成している。
【0095】
そして、
図12及び
図13に示すように、本実施の形態の直液式筆記具では、共同連通管151の前端部が、円錐形状の傾斜面152を有するように形成されており、2つの流通路53が、断面直径方向に対をなすように、円錐形状の傾斜面152内において開口部51を有している。本実施の形態の当該円錐形状では、
図13に示すように、頂点154を通る断面において母線がなす角度が略90°である。
【0096】
本実施の形態のサイズに関して補足すれば、インキ吸蔵体3の直径は5〜13mm程度であり、共同連通管151の外径Dは直径3.0〜9.0mm程度であり、各流路部53の横断面は円形状で、その直径dは0.5〜3.0mm程度であり、頂点154とペン先2の後端との間の距離a(
図1参照)は、1.0〜10mm程度である。また、2つの流路部53の離間距離Gはγmmであり、すなわち、2つの開口部51の間で、前方側から見て(
図13の矢印方向から見て)少なくともγmm×γmmの矩形領域が効果的に押圧圧縮作用を果たす。本実施の形態において、2つの流路部53の離間距離Gは、例えば0.5mm〜4.0mmの範囲から選択され得る。
【0097】
本実施の形態のその他の構成は、第3の実施の形態の直液式筆記具と同様である。
図12及び
図13において、第3の実施の形態と同様の構成部分には同様の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0098】
本実施の形態によっても、第3の実施の形態と同様の作用効果が得られる。すなわち、共同連通管151の先端領域153の近傍でインキ吸蔵体3が過度に圧縮されるおそれがなく、ペン先2からの十分なインキ吐出性が得られる。特に、細身の軸筒8を得るために軸筒8の外径を小さくし、それに伴いインキ吸蔵体3の外径及び共同連通管151の外径を小さくしても、共同連通管151の先端領域153の近傍でインキ吸蔵体3は適度に圧縮され、インキ吸蔵体3の内部における共同連通管151の先端領域153の近傍において適正な(所望の)高密度部31を形成でき、結果として、各々の流通路53を介してインキと空気との交替をスムーズに行うことができ、ペン先2からのインキ吐出性が低下するおそれがない。
【0099】
なお、本実施の形態においては、共同連通管151の最前端(先端)に頂点154が形成されているが、頂点が丸められて最前端(先端)近傍が球面状になっている態様や、共同連通管151の前端部が切頭円錐形状を有している態様も、採用可能である。
【0100】
[第6の実施の形態:球面]
共同連通管の前端部の形状として、球面形状を採用することもできる。球面形状は、軸線回りに回転対称な回転体形状の一態様である。そのような第6の実施の形態を、
図14及び
図15に示す。
【0101】
図14は、本発明の第6の実施の形態の直液式筆記具の共同連通管161の前端の斜視図であり、
図15は、
図14の共同連通管161の前端の縦断面図である。第6の実施の形態は、前記第1乃至第3の発明及び前記第5の発明に関している。
【0102】
図14及び
図15に示すように、共同連通管161の前端部も、インキ吸蔵体3の内部に位置していて、流通路53の各々がインキ吸蔵体3の外周側に向いた傾斜面162内において開口部51を有するような形状を有している。また、共同連通管161も、各開口部51に隣接して各開口部51よりも前方に延在する先端領域163を有している。この先端領域163が、共同連通管161がインキ吸蔵体3の後端から前方に挿入される時にインキ吸蔵体3の内部を押圧圧縮できる押圧圧縮部を構成している。
【0103】
そして、
図14及び
図15に示すように、本実施の形態の直液式筆記具では、共同連通管161の前端部が、球面形状の傾斜面162を有するように形成されており、2つの流通路53が、断面直径方向に対をなすように、球面形状の傾斜面162内において開口部51を有している。本実施の形態の当該球面形状の曲率半径(
図15参照)は、例えば3.0mmである。
【0104】
本実施の形態のその他の構成は、第5の実施の形態の直液式筆記具と同様である。
図14及び
図15において、第5の実施の形態と同様の構成部分には同様の符号を付し、その詳細な説明は省略する。本実施の形態の各サイズについても、第5の実施の形態と略同様である。
【0105】
本実施の形態によっても、第5の実施の形態と同様の作用効果が得られる。すなわち、共同連通管161の先端領域163の近傍でインキ吸蔵体3が過度に圧縮されるおそれがなく、ペン先2からの十分なインキ吐出性が得られる。特に、細身の軸筒8を得るために軸筒8の外径を小さくし、それに伴いインキ吸蔵体3の外径及び共同連通管161の外径を小さくしても、共同連通管161の先端領域163の近傍でインキ吸蔵体3は適度に圧縮され、インキ吸蔵体3の内部における共同連通管161の先端領域163の近傍において適正な(所望の)高密度部31を形成でき、結果として、各々の流通路53を介してインキと空気との交替をスムーズに行うことができ、ペン先2からのインキ吐出性が低下するおそれがない。
【0106】
本実施の形態においては、共同連通管161の前端部の傾斜面162は、均一の曲率半径を有する球面形状として形成されているが、軸心を含む領域と周辺領域と(場合によっては、更にそれらの間の1以上の中間領域と)の間で、曲率半径が異っていてもよい。
【0107】
[変形例]
以上の各実施の形態の直液式筆記具において、流通路53同士が途中で互いに連通している態様も、本発明の実施の形態として採用可能である。例として、第3乃至第6の実施の形態の直液式筆記具について、2本の流通路53を連絡部56を介して互いに連通させた変形例を、
図16乃至
図19に示す。
図16乃至
図19は、各変形例の共同連通管131’〜161’の前端の縦断面図である。
【0108】
極端な場合、開口部は2カ所に設けられているものの、その他の領域全体で2本の流通路53が一体になっていても差し支え無い。この場合、連通管の本数は1本であるとも言い得る。このような変形例を、
図20乃至
図23に示す。
図20乃至
図23は、各変形例の連通管131”〜161”の前端の縦断面図である。
【0109】
各変形例の直液式筆記具は、ペン先2と、ペン先2の後端に接続される筒状のインキ吸蔵体3と、インキ吸蔵体3の後方に配置されるインキタンク4と、インキ吸蔵体3とインキタンク4との間を接続する連通管131”〜161”と、を備え、連通管131”〜161”の前端部は、インキ吸蔵体3の内部に位置していて、2つの開口部51の各々がインキ吸蔵体3の外周側に向いた傾斜面132〜162内において開口するような形状を有しており、連通管131”〜161”は、各開口部51に隣接して各開口部51よりも前方に延在する先端領域133〜163を有しており、先端領域133〜163は、連通管131”〜161”がインキ吸蔵体3の後端から前方に挿入される時に当該インキ吸蔵体3の内部を押圧圧縮できる押圧圧縮部を構成している。
【0110】
なお、開口部51の壁の高さhは、インキと空気との交替をスムーズに行うためには、少なくとも0.5mm、好ましくは1.5mmが必要である。