【文献】
V.Vervisch他,Nuclear Radiation Detector based on Ion Implanted p-n Junction in 4H-SiC,2013 3rd International Conference on Advancements in Nuclear Instrumentation,Measurement Methods and their Applications ,2013年,p.1-5
【文献】
Laurent Ottaviani他,Study of Defects Generated by Standard-and Plasma-Implanatation of Nitrogen Atoms in 4H-SiC Epitaxial Layers,materials Science Forum,2012年,Vol.725,p.41-44
【文献】
L.Ottaviani他,Influence of Heating and Cooling Rates of Post-Implantation Annealing Process on Al-Implanted 4H-SiC Epitaxial Samples,Materials Science Forum,2010年,Vols.645-648,p.717-720
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記製造段階中において、前記第一のドープ層(100)中の前記第一のドーパント種の含有量、前記第二のドーパント種の注入のドーズ量、前記第二のドーパント種の注入深さとのパラメータに従って、前記空間電荷領域(500)の深さが調整される、請求項1に記載の方法。
前記製造段階中において、前記第二のドープ層(400)の厚さ及び/又は前記第二のドーパント種の注入エネルギーとのパラメータに従って、前記空間電荷領域(500)の位置が決定される、請求項1に記載の方法。
前記第一の電極(601)が前記第一のドープ層(100)と接触し、前記第一のドープ層(100)が前記第二のドープ層(400)と接触し、前記第二の電極(602)が前記第二のドープ層(400)と接触する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
前記空間電荷領域(500)が、前記界面から、前記第二のドーパント種の原子と前記所定の範囲内の特性を有する入射中性子束の中性子との間の衝突によって発生する粒子の電離率が最大となる領域を含むのに十分な深さにわたって前記第一のドープ層中に延在するように前記第一のドープ層及び前記第二のドープ層の前記第一のドーパント種及び前記第二のドーパント種の含有量の調整によって前記空間電荷領域の深さが調整される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
前記積層体の製造後に、活性化アニーリングが、アルゴン下で、900℃から1700℃の間の温度で、30から120分間の間の期間にわたって行われる、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
前記欠陥ピークを特定するステップが、予め製造されて前記所定の範囲内の特性を有する中性子束に晒された少なくとも一つのモデル化された積層体に対して行われる電子顕微鏡分析を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
放射性廃棄物パッケージの特性評価と、核施設の調査及び解体の制御と、核燃料再処理工場における核制御と、実験用原子炉及び発電原子炉の制御と、環境制御との応用のうち一つのための請求項19に記載の検出器の使用。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこの欠点を解決するための解決策を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このため、本発明は、所定の範囲内の特性を有する中性子束を検出するための検出器を実現するための方法を提案する。有利には、本方法は、パラメータを決定する段階を少なくとも備え、その段階は以下のステップを備える:
‐ モデル化された積層体によって所定の範囲内の特性を有する入射中性子束の侵入をシミュレーション又は再現するステップ。モデル化された積層体は少なくとも以下のものを順に備える:第一の電極、基板、第二の電極。基板は第一のドープ層及び第二のドープ層を備える。第一のドープ層は少なくとも一種の第一のドーパント種を備え、第一の層はnドープ層又はpドープ層の一方となり、第一の層が基板によって形成される。第二のドープ層は少なくとも一種の第二のドーパント種を備え、第二の層はnドープ層又はpドープ層の他方となり、第一の層と第二の層との間の界面にpn接合を形成し、第一の層中に(第一の層と第二の層との間の界面を用いて)空間電荷領域を形成する。第二の層は、基板中への第二のドーパント種の注入によって形成される。第二のドーパント種は、中性子変換物質から選ばれ、第二の層が中性子変換層を形成するようにする;
‐ 第二のドーパント種の原子と所定の範囲内の特性を有する入射中性子束の中性子との間の衝突によって発生する空隙及び/又は粒子の電離によって第一の層内に生じる少なくとも一つの欠陥ピークをシミュレーション又は特定するステップ;
‐ モデル化された積層体の第一の層と第二の層との間の界面に最も近い欠陥ピークの深さを特定するステップ;
‐ 空間電荷領域が、第一の層と第二の層との間の界面から、空間電荷領域が欠陥ピークを含まないように特定された欠陥ピークの深さ未満の深さで第一の層中に延在するためにモデル化された積層体が有すべき第一の層及び第二の層のパラメータ、特に、第二の層を形成するための基板中の第二のドーパント種の注入深さ(ひいては第二の層の厚さ)、及び、第一の層及び第二の層の第一のドーパント種及び第二のドーパント種の含有量(又は濃度)を決定するステップ。
【0010】
このように、第一の層と、第二のドーパント種でドープされた第二の層との間の界面が第一の層に画定され、第一の層と第二の層との間の界面を用いて、空間電荷領域が画定される。更に、同じ第二のドーパント種が中性子変換物質から選ばれるので、第二の層は中性子変換層を形成する。このようにして、中性子変換層を形成する第二の層は、空間電荷領域まで延在する。従って、空間電荷領域と中性子変換層は隣接する。この結果として、NCLの出力における電離率の最大箇所がSCR中に存在する。他方、検出される信号は、検出される電離率に極めて密接に依存する。結果として、この検出器の構造は、信号を実質的に改善することを可能にする。逆に、NCLとSCRとの間に中間層が存在すると、中性子とドーパント種との間の反応生成物はこの中間層によって部分的に吸収されてしまう。
【0011】
更に、有利には、本方法は、検出器を製造する段階を備え、第一の層が実現され、次いで第一の層の一部への第二のドーパント種の注入によって第二の層が実現され、注入、特に、第二のドーパント種の注入深さ及び含有量が、決定されたパラメータに従って決められ、製造された検出器において、空間電荷領域が、第一の層と第二の層との間の界面から、特定された欠陥ピークの深さ未満の深さで第一の層中に延在するようにされる。
【0012】
このように、本発明に係る方法は、第一の段階中において、欠陥ピークの深さをシミュレーションして、欠陥ピークを含まない空間電荷領域を形成するように基板の第二の層を実現することを提案する。欠陥ピークは、有利にはシミュレーションによって与えられる。より好ましくは、シミュレーションは、コンピュータによって行われるデジタルシミュレーションである。欠陥ピークは、コンピュータによらない方法でもシミュレーション可能であり、予め製造されて所定の範囲内の特性を有する中性子束に晒された少なくとも一つのモデル化された積層体に対して行われる電子顕微鏡型の分析によって、その形成後に特定される。
【0013】
SCRとNCLとが近接していることと、欠陥ピークを備えるSCRの構成との相乗効果によって、バイアスを必要とせずに、空間電荷領域の端部において実質的で正確な検出することが可能になる。実際、本発明に係る検出器では、十分な信号が、0ボルトでSCRの端部において検出される。従来技術のデバイスでは、SCRの端部に印加する電圧がゼロでは信号は検出されず、又は、存在している信号の信号対雑音比が弱過ぎるものとなる。従って、従来技術の検出器では、バイアスが必要不可欠である。
【0014】
しかしながら、本発明の開発過程において、上記検出器では、時間経過と共に得られる信号の質が劣化していくことがわかった。安定性に関するこの制限は、特に予測が難しいものである。
【0015】
本発明の開発過程において、この安定性の欠如がSCRの時間経過に対する劣化に起因することがわかった。また、この劣化が、SCRの端部におけるバイアスの印加に起因することがわかった。
【0016】
実際、バイアスは、SCR中の空隙を電離してSCRの物質を乱す蓋然性が高く、これが時間経過と共にSCRを変化させる。中性子と中性子変換物質との間の反応生成物によって発生するSCRの電場は、時間経過と共に変化する。このSCRの損傷の直接的な結果は、劣化していて時間経過に対して不安定な出力信号の存在である。これは、信号の変化を監視しなければならない連続的な測定又は長期間にわたる個々の各測定を行うことに支障をきたす。
【0017】
更に、従来技術において信号対雑音比を向上させるために推奨されている逆バイアスが増えるほど、SCRがより損傷して、結果の安定性が低下して、検出器の寿命が短くなる。
【0018】
本検出器は、バイアスを必要としないので、バイアスを必要とする従来技術の検出器よりも単純で安価である。
【0019】
更に、バイアスが要らないことで、本発明の係る発明には、バイアスに必要な接続部やケーブルや部品が存在せず、特に過酷な使用条件において頑丈で信頼性があるものとされる。
【0020】
有利には、基板の第二の層は、空間電荷領域が電離率の最大箇所を含むようにして形成される。電離率は有利にはシミュレーションによって決定される。より好ましくは、シミュレーションは、コンピュータによって行われるデジタルシミュレーションである。電離率は、コンピュータによらない方法でもシミュレーション可能であり、二次イオン質量分析法(SIMS)型の物理化学的分析によって、イオンのプロファイルに物質の電離プロファイルを取り入れることで、その形成後において特定される。更に、バイアス電圧に応じた検出器の応答を測定することによって、物質の電離率を評価することができる。
【0021】
他方、本検出器によって検出される信号の正確性が、中性子とガンマ線との間の区別を可能にする。
【0022】
このようにして、本発明は、特に、過酷な環境において検出器の信頼性及び寿命を実質的に向上させることを可能にする。
【0023】
特定の一実施形態では、基板は炭化ケイ素(SiC)製である。これは、過酷な使用条件において検出器の頑丈さ(ロバスト性)、信頼性及び寿命を著しく向上させることを可能にする。
【0024】
また、本発明は、中性子束(その中性子束のパラメータが所定の範囲内にある)を検出するためのデバイスを製造するためにパラメータを決定するための方法にも関する。本方法は以下のステップを備える:
‐ モデル化された積層体によって、入射中性子束(その入射中性子束のパラメータが所定の範囲内にある)の侵入をシミュレーションするステップ。モデル化された積層体は、少なくとも、第一の電極と、基板と、第二の電極とを順に備える。基板は、少なくとも一種の第一のドーパント種を備える第一のnドープ又はpドープ層と、少なくとも一種の第二のドーパント種を備える第二のpドープ又はnドープ層とを備え、第一の層は基板によって形成され、第一の層と第二の層との間の界面にpn接合を形成し、第一の層中に(第一の層と第二の層との間の界面を用いて)空間電荷領域を形成するようにする。第二の層は基板中への第二のドーパント種の注入によって形成される。第二のドーパント種は、中性子変換層を形成するように中性子変換物質から選ばれる;
‐ 入射中性子束の中性子と第二のドーパント種の原子との間の衝突によって発生する空隙及び/又は粒子の電離によって第一の層に生じる少なくとも一つの欠陥ピークをシミュレーションして、モデル化された積層体の第一の層と第二の層との間の界面に最も近い欠陥ピークの深さを特定するステップ;
‐ 空間電荷領域が第一の層と第二の層との間の界面から、空間電荷領域が欠陥ピークを含まないように特定された欠陥ピークの深さ未満の深さで第一の層中に延在するためにモデル化された積層体が有すべき第一の層及び第二の層のパラメータ、特に、第二の層を形成するための基板中の第二のドーパント種の注入深さ、第一の層及び第二の層の第一のドーパント種及び第二のドーパント種の含有量を決定するステップ。
【0025】
他の実施形態によると、本発明は、所定の範囲内の特性を有する中性子束の検出器に関する。本検出器は少なくとも一つの積層体を備え、その積層体は以下のものを順に備える:第一の電極、基板、第二の電極。基板は、少なくとも一種の第一のnドーパント又はpドーパント種を備える第一のnドープ又はpドープ層と、少なくとも一種の第二のドーパント種を備える第二のpドープ又はnドープ層とを備え、第一の層は基板によって形成され、第一の層と第二の層との間の界面にpn接合を形成し、また、第一の層と第二の層との間の界面を用いて第一の層中に空間電荷領域を形成するようにされる。有利には、第二の層は、基板中への第二のドーパント種の注入によって形成され、第二のドーパント種は、中性子変換層を形成するように中性子変換物質から選ばれる。有利には、第一の層及び第二の層のパラメータ、特に、第二の層を形成するための基板中への第二のドーパント種の注入深さ(ひいては第二の層の厚さ)、及び、第一の層及び第二の層の第一のドーパント種及び第二のドーパント種それぞれの含有量は、空間電荷領域が、第一の層と第二の層との間の界面から、検出器が所定の範囲内のパラメータの中性子束に晒される際における第二のドーパント種の原子と中性子との間の衝突によって発生する空隙及び/又は粒子の電離によって第一の層中に生じる欠陥ピークが位置する深さ未満の深さにわたって第一の層中に延在するように選択される。
【0026】
また、本発明は、検出器が所定の範囲内のパラメータの中性子束に晒されるような検出器の使用に関する。
【0027】
本発明の他の特徴、目的及び利点は、非限定的な例として与えられている添付図面を参照する以下の詳細な説明を読むことで、明らかとなるものである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図面は例として与えられるものであって本発明を限定するものではない。図面は、本発明の理解を容易にするためにブロック表示で構成されているが、必ずしも実際の応用の縮尺通りではない。特に、多様な層や膜の相対的な厚さは現実とおりに表されているものではない。
【0030】
本発明の枠組みにおいて、“上に”との用語は、必ずしも“接触して”との意味ではないことを定義しておく。つまり、例えば、一つの層を他の層の上に堆積するとは、必ずしも二つの層が互いに直接接触していることを意味せず、これら層の一方が、直接接触していることによって、又は、膜や他の層や他の要素によって分離されながら、他方の層を少なくとも部分的に覆うことを意味する。
【0031】
本発明の枠組みにおいて、層の厚さは、その層が最大の面積を有する面に垂直な方向に沿って測定されるものであることを定義しておく。典型的には、層がシリンダーの一部を形成する場合、その厚さは、ディスクを形成する二つの面に垂直な方向に沿って取られる。
図1では、厚さは垂直に沿って取られる。
【0032】
深さの測定、例えば、空間電荷領域や注入の深さについても同様である。
【0033】
本発明の枠組みにおいて、空間電荷領域や欠陥ピークの深さは、第一の層と第二の層との間の界面から測られる。
【0034】
本発明は、熱中性子、低速中性子、熱外中性子、高速中性子の検出に適用される。低速中性子は、0.025eVから10eVまでのエネルギーを有する中性子である。熱外中性子は、10eVから500eVまでの間のエネルギーを有する中性子である。高速中性子は、0.5MeVよりも大きなエネルギーを有する中性子である。まとめると、本発明は、0.025eVから数メガ電子ボルト、更には数十メガ電子ボルトまでのエネルギーの中性子の検出に適用される。
【0035】
本発明の実施形態の詳細な説明を始める前に、本発明に係る方法又は検出器に付随して又は代替的に使用可能な任意選択的な特徴について以下説明する:
‐ 基板は炭化ケイ素(SiC)を備える。これは、過酷な環境における検出器の信頼性に寄与する。
‐ 第二の層は、決定されたパラメータに従った第一の層の一部への第二のドーパント種の注入によって実現される。
‐ 検出器のパラメータを決定するステップは、コンピュータによって少なくとも部分的に支援又は実行される。これは、典型的には、少なくとも一つのマイクロプロセッサを備えるコンピュータによって行われるデジタルシミュレーションである。特に、入射中性子束の侵入をシミュレーションするステップがコンピュータによって行われる。
‐ 代わりに、検出器のパラメータを決定するステップを、コンピュータによらない方法でシミュレーションすることもでき、予め製造された検出器に対する電子顕微鏡型の分析によって行われる。特に、欠陥ピークを特定するステップが、予め製造され、所定の範囲内の特性を有する中性子束に晒された少なくとも一つのモデル化された積層体に対して行われる電子顕微鏡分析を含む。
‐ 積層体を特定するステップは、例えば、積層体のシミュレーション又はモデル化を含む。代わりに、このステップは、積層体の物質的な実現を含むことができる。
‐ 中性子束の所定の特性は、所定のエネルギーとフラックスとフルエンスと強度とのうち少なくとも一つを備える。
‐ 製造段階中において、空間電荷領域の位置、特にpn界面の深さ(第一の層と第二の層との間の界面の深さ)が以下のパラメータに従って決定される:第二の層の厚さ(μm単位)、及び/又は、第二のドーパント種の注入エネルギー(eV単位)。
‐ 製造段階中において、空間電荷領域の深さが以下のパラメータに従って調整される:第一の層のドーパント種の含有量(原子数/cm
3単位)、第二のドーパント種の注入のドーズ量(原子数/cm
2)、第二のドーパント種の注入深さ。
‐ 特定の実施形態によると、製造段階中において、空間電荷領域の位置、特にpn界面の深さ(第一の層と第二の層との間の界面の深さ)が、第二のドーパント種の注入エネルギー(eV単位)に従って決定される。製造段階中において、空間電荷領域の厚さが、第一の層の第一のドーパントの濃度(原子数/cm
3単位)及び第二のドーパント種の注入のドーズ量(原子数/cm
2単位)に従って調整される。
‐ 基板の第一の層には第二のドーパント種が存在しない。
‐ 第二のドーパント種はホウ素10同位体(
10B)を備える。一実施形態によると、第二のドーパント種はホウ素のみであり、そのホウ素がホウ素10同位体(
10B)を含む。好ましくは、第二のドーパント種はホウ素10同位体(
10B)のみである。
‐ 基板の第一の層は少なくともn+ドープ下部層とnドープ上部層とを備え、その上部層が、10
14から10
16原子数/cm
3の間の第一のドーパント種の濃度を有する。
‐ 空間電荷領域の深さは、ドーピングパラメータと、基板の第一の層の上部層の厚さとに依存する。
‐ 第一の電極は第一の層と接触し、第一の層は第二の層と接触し、第二の電極は第二の層と接触する。好ましくは、第一の電極が第一の層と接触する。好ましくは、第一の層が第二の層と接触する。好ましくは、第二の電極が第二の層と接触する。
‐ 欠陥ピークは、欠陥の濃度が0.005空隙数/(Å・イオン)以上の領域である。欠陥は、中性子と第二のドーパント種との間の衝突によって発生する。
‐ 空間電荷領域は、0から数十マイクロメートルの間の距離にわたって延在する。
‐ 検出器は単一の第二のドーパント種を備える。このように単一のドーパント種、典型的には
10Bを用いることで、NCLが形成され、基板にpn接合が画定される。
− 空間電荷領域は、中性子変換層に隣接し、つまり、中性子変換層に直接接触しているか又は直ぐ近傍に存在する。SCRとNCLとの間には中間層が存在しない。空間電荷領域は、SCRの少なくとも一部に隣接しているか又は直接接触している。
‐ NCLは電極からSCRと接触して延在する。このような特性が、信号の質の実質的な向上をもたらす。
‐ NCLは二つの電極と別体である。NCLは二つの電極の間に位置する。非限定的な一実施形態によると、NCLは一方の電極と少なくとも部分的に接触している。
‐ 検出器はSCRのバイアスを含まず、バイアス用デバイスが存在しない。
‐ 空間電荷領域が、界面から、第二のドーパント種の原子と所定の範囲内の特性を有する入射中性子束の中性子との間の衝突によって発生する粒子の電離率が最大となる領域を含むのに十分な深さにわたって、第一の層内に延在するように、空間電荷領域の深さが調整され、特に第一の層及び第二の層の第一のドーパント種及び第二のドーパント種の含有量を調整することによって、また、特に第二のドーパント種の注入を調整することによって、調整される。このようにして、基板の深さ全体に対して、この領域において電離率が最大となる。
‐ 第一の電極及び第二の電極は金属物質を含む。
‐ 一実施形態によると、第二のドーパント種の注入は、ホウ素10同位体を用いて、20から180keVの間のエネルギーで、10
15から10
17cm
−2の間のドーズ量で行われる。
‐ 他の実施形態によると、第二のドーパント種の注入は、ホウ素10同位体のプラズマ注入を用いて、5から15kVの間の電圧で、10
15から10
17cm
−2の間のドーズ量で行われる。
‐ 他の実施形態によると、基板中の第二のドーパント種、例えばホウ素10同位体の濃度は、1×10
19原子数/cm
3よりも高く、好ましくは1×10
19原子数/cm
3から1×10
21原子数/cm
3の間である。
‐ 有利には、第二のドーパント種の注入後に、第二の注入種の活性化アニーリングが行われる。このアニーリングは第二のドーパント種の原子を電気的に活性化することを可能にする。例えば、第二のドーパント種の原子がホウ素原子である場合、このアニーリング層はp+層を形成することを可能にする。更に、このアニーリングは、ホウ素の注入によって形成される欠陥の少なくとも一部を抑制することを可能にする。
‐ 非限定的な一実施形態によると、アニーリングはアルゴン下で行われる。非限定的な一実施形態によると、アニーリングは900から1700℃の間の温度で、30から120分間の間の期間にわたって行われる。
‐ nドープ上部層の形成は、好ましくは化学気相堆積を含む。
‐ 第一の電極の形成及び第二の電極の形成は金属化を含む。
‐ 以下の応用のうち一つのための検出器の使用:放射性廃棄物パッケージの特性評価、核施設の調査及び解体の制御、核燃料再処理工場における核制御、実験用原子炉及び発電原子炉の制御、環境制御。
‐ 採鉱又は石油採掘のための検出器の使用。
‐ 医療物理学のための検出器の使用。
‐ 国内治安(内部セキュリティ)の分野における検出器の使用。
【0036】
図1は、本発明に係る中性子を検出するための検出デバイス(検出器)を示す。そのパラメータが所定の範囲内にある入射中性子束(フラックス)のデバイスへの侵入をシミュレーションするためには、検出デバイスに対応してモデル化された層の積層体を事前に決定する必要がある。モデル化された積層体は、特に基板を備える。特に有利な実施形態によると、基板は、nドープ層又はpドープ層となるように少なくとも一種の第一のドーパント種を備える第一のドープ層100を備える。第一の層100は、好ましくは、一つの下部層101と一つの上部層102との積層体を備える。有利には、下部層101が炭化ケイ素(SiC)を備えることが好ましい。下部層101は有利には高濃度ドープされる(略数10
18cm
3のドーピングレベル)。基板100の上部層102は、好ましくは炭化ケイ素を備え、例えば、n型で、低ドーピングレベル(1×10
14から1×10
16原子数/cm
3の間の濃度)を有する。
【0037】
本発明の代替実施形態では、下部層101は上部層102よりも低濃度ドープされる。このようにして、代替実施形態では、層102が高濃度ドープされ、層101が低濃度ドープされる。
【0038】
有利には、基板は、nドープ層又はpドープ層の他方となるように少なくとも一種の第二のドーパント種を備える第二のドープ層400を備える。
【0039】
特定の実施形態では、基板はp型の第二のドープ層400を備える。より好ましくは、第二の層400は、第一の層100の上部層102中へのp型イオンの注入によって実現される。
【0040】
有利には、第二の層400のドーパント種は中性子変換物質である。このようにして、第二の層400が、以下で詳細に説明するような中性子変換層を有利に形成する。
【0041】
有利には、追加の層300が注入中のマスクとして機能する。
【0042】
n型で初期ドープされた第一の層100へ、第二の層400を形成するp型のドーパント物質を注入することに続いて、第一の層100のn型の半導体を、第二の層400のp型の半導体と接触させると(pn接合)、拡散現象によって、n側の多数電子は、電子が少数であるp領域に流され、p側の多数正孔は、正孔が少数であるn領域に流される。このようにして、逆電荷のイオンを残すことで、接触前のn半導体及びp半導体の電気的中性を保証する。最後に、p領域に移動した電子が多数正孔と再結合し、n領域に移動した正孔が多数電子と再結合する。従って、n型の半導体、つまり第一の層100の上部層102には、接合において空間電荷領域と呼ばれる電子の欠乏した領域が現れ、p型半導体には正孔の欠乏した領域が現れるが、領域500は、ドーパント原子に起因するイオンを含んだままである。
【0043】
中性子変換層を形成する第二の層400は、空間電荷領域500の直ぐ近傍、より正確には空間電荷領域500に隣接していて、これは、以下で詳細に説明するような多数の利点を与える。
【0044】
検出デバイスは、第一の電極601と第二の電極602も備え、これらはそれぞれアノードとカソードを表す。
【0045】
好ましくは、基板の第一の層100は第一の電極601と直接接触して、第二の層400は第二の電極602と直接接触する。
【0046】
第一の層100と第二の層400と第一の電極601と第二の電極602とを備える積層体が、上記モデル化された積層体を形成し、その積層体に対して入射中性子束の侵入のシミュレーションを開始する。このモデル化された積層体が、検出デバイスの現実の積層体を製造するのに用いられるパラメータを決定することを可能にする。
【0047】
図2は、入射中性子とドーパント物質(つまり、第二のドーパント種)例えば、ホウ素(
10B)の原子との間の反応によって発生するリチウム(
7Li)とヘリウム(
4He)の粒子に関連した電離プロファイルを示す。これらのプロファイルは、モデル化された積層体を用いたシミュレーションによって得られたものである。シミューレションを用いて、パラメータ決定段階において、モデル化された積層体を形成する多様な層のパラメータを変更して、実際の積層体のパラメータを決定する。“電離”との用語は、粒子、例えばヘリウム(
4He)のアルファ粒子が、高エネルギーを与えられて、その経路上で遭遇した原子、つまり通過媒体に属する原子、つまり第一の層100の原子から電子を追い出すことを意味する。電子を失った原子はイオンになる。粒子は、停止前に第一の層100に存在する複数の粒子を電離する。電離によるエネルギー損失は、粒子の質量と電荷の二乗とに比例し、速度と共に変化する。粒子は、低速であると、原子の近くを通過する時間が多くなり、衝突をもたらす機会が多くなる。他方、電離粒子のエネルギーの線形伝達に従う特定の電離が、粒子の伝播に従って増加し、その伝播の終わりにおいて最大となる。つまり、電離粒子は、その伝播の初めおいてはエネルギーの僅かな部分を付与する。エネルギーの最大の部分は、その伝播の終わり、つまり粒子が停止しようとする際に付与される(ブラッグピーク)。
【0048】
電子を取り出すことで、粒子はそのエネルギーを失い、減速し、最終的には停止する。電離が強くなるほど、経路は短くなる。これはアルファ粒子でも同じであり、その伝播距離は初期エネルギーに依存する。電子と生成されたイオンとは、電離粒子の通過後に再結合する。
【0049】
この反応は、有利には、中性子変換層400の下限近くにおいて行われる。
【0050】
図2は、伝播の終わりにおける粒子に起因する欠陥(空隙)プロファイルも示す。これらのプロファイルを得るため、所定の範囲内にあるパラメータの入射中性子束が第二の層400に侵入することをシミュレーションするためのシミュレーションステップが行われる。シミュレーションは、入射中性子と第二のドーパント種の原子との間の衝突によって発生する空隙及び/又は粒子の電離によって第一の層100に生じる少なくとも一つの欠陥ピーク801、802を得ることを可能にする。
【0051】
次いで、第一の層100と第二の層400との間の界面に最も近い欠陥ピーク801の深さが特定される。本発明の非限定的な一実施形態によると、リチウム粒子の伝播の終わりに対応する第一のピーク801が、第二の層400と空間電荷領域500との間の界面から始まる1.5から2×10
4オングストローム(1Å=10
−10m)の間の深さにおいて決定される。ヘリウム粒子の伝播の終わりに対応する第二のピーク802が、第二の層400と空間電荷領域500との間の界面から始まる3.4から3.6×10
4Åの間の深さにおいて決定される。
【0052】
有利には、空間電荷領域500は、(外部バイアスなしで)電離が最大である箇所、つまり、第一の層100のドープされた部分を表す第二の層400から第一の層100を分離する界面の近傍に位置する領域に位置する。
【0053】
他方、特に有利には、空間電荷領域500は、欠陥(空隙)の第一のピーク801及び第二のピーク802の外に位置し、それら空隙は、リチウム(
7Li)(及びヘリウム(
4He))の原子と炭化ケイ素製の第一の層100を形成している原子との間の衝突によるものである。
【0054】
電離率が最大であり、欠陥ピークが存在しない空間電荷領域500の位置及び深さが、外部バイアスなしで、実質的で信頼性のある信号を得ることを可能にし、更に、SCRの厚さがガンマ光子の検出を中性子の検出と別にするように十分薄いことで、中性子をガンマ光子と区別することを可能にする。SCRの厚さが薄いと、ガンマ光子のSCR中での相互作用の確率が低くなる。
【0055】
衝突に従って発生するリチウム(
7Li)とヘリウム(
4He)の粒子の経路を評価し、また、第一の層100中の深さに応じた結果となる欠陥ピーク801、802の位置をシミュレーションするために、事前シミュレーションが必要とされる。本実施形態では、デバイスを50℃付近の温度で実験用原子炉内で試験した。
【0056】
粒子の経路と欠陥ピークとのシミュレーションは、例えば、非特許文献2に記載のSRIM(Stopping and Range of Ions in Matter)によって行われる。
【0057】
図3Aから
図3Hは、モデル化された積層体を用いて本発明に係る中性子を検出するための検出デバイス(検出器)を実現及び製造するための一例の方法のステップを示す。
【0058】
図3Aは、基板100のダイヤグラムを示す。特に有利な実施形態によると、基板100は、下部層101と上部層102との積層体を備える。下部層101は、好ましくは炭化ケイ素(SiC)の基板を形成する。下部層101は、有利には高濃度ドープされる(略数10
18cm
−3のドーピングレベル)。下部層101は、有利にはn+型であり、窒素ドーピングによって実現される。下部層101の厚さは、例えば略350マイクロメートルである。
【0059】
上部層102は、好ましくは、低ドーピングレベル(1×10
14から1×10
16原子数/cm
3の間の濃度)でn型の炭化ケイ素を備える。上部層102は、有利には、下部層101上のエピタキシによって形成される。有利な一実施形態によると、上部層102は、下部層101上の化学気相堆積(CVD,chemical vapor deposition)又は液相エピタキシ(LPE,liquid phase epitaxy)での成長によって実現される。上部層102は好ましくは窒素でドープされる。上部層102の厚さは、例えば5から20マイクロメートルの間である。
【0060】
図3Bは、マスキング層200を用いた基板100上(より正確には基板100の上部層102上)のパターン形成を示す。薄層への一つ又は複数のパターンの実現は、通常フォトリソグラフィ法によって行われ、そのフォトリソグラフィ法においては、薄層に転写させたいパターンを有するマスキング層200が形成される。転写は、マスキング層200を介する薄層のエッチングによって実現される。好ましい一実施形態によると、追加の層300を基板100上に堆積させて、基板100の上部層102とマスキング層200との両方を覆うようにする。有利には、マスキング層200は、現像後にネガ型の側面を有する感光性樹脂を備える。この特定の幾何学的形状が、追加の堆積層300の不連続性を得ることを可能にする。このようにして、追加の層300は、その追加の層300が第二の層102に直接接触して堆積している部分に対応する底部と、追加の層300がマスキング層200上に堆積している部分に対応する頂部とを有する。追加の層300は、より好ましくは、酸化物ベースで形成される。層300は、例えば、酸化ケイ素(SiO
2)や酸窒化ケイ素(SiON)を含み得る。
【0061】
図3Cは、追加の層300を部分的に除去するステップを示し、基板100の上部層101上にパターンが形成されている。部分的に除去するステップは、好ましくはウェットエッチングを備える。有利には、このエッチングは、“リフトオフ”と呼ばれる方法によって行われ、この方法では、樹脂の分解によってマスキング層200を除去し、底部、つまりマスキング層200の上に載っていない部分の追加の層300のみを残すようにする。
【0062】
図3Dは、基板100中に第二のドーパント種をイオン注入するステップを示す。注入のパラメータ、特にエネルギー及びドーズ量が、基板中への第二のドーパント種の注入深さを決定する。注入方法も影響する。有利には、追加の層300の部分的除去の後に残っている底部を、注入中の保護に用いる。このようにして、追加の層300が、注入中のマスクとして機能する。注入ステップは、基板100の上部層102にイオンを衝突させて、基板100の上部層102中に第二の層400を形成するのに十分なドーズ量でイオンを注入することを備える。この基板100の第二の層400は、有利には、複数種の中性子変換物質から選択された第二のドーパント種を用いてドープされ、第二の層400によって中性子変換層が形成されるようにする。注入される種は、中性子の変換を可能にするようにして選択される。このようにして、第二の層400が、基板100中に含まれる中性子変換層を形成する。有利には、中性子変換層又は第二の層400は、注入後に、高ドーズ量のドーパント物質を備える。有利には、基板100中の第二のドーパント種の濃度は、1×10
19原子数/cm
3よりも高く、典型的には1×10
19原子数/cm
3から1×10
21原子数/cm
3の間である。ドーパント物質は、電子正孔対を形成するようにされる。ドーパント物質は、有利には、中性子と強く反応するように選択される。
【0063】
この注入に用いられるイオンは、好ましくは、p型層を形成するために、ホウ素10同位体(
10B)型のホウ素から選択される。他の実施形態によると、第二のドーパント種は、アルミニウムとベリリウムから選択され得る。
【0064】
一実施形態によると、注入は、10
15から10
17cm
−2の間のホウ素ドーズ量に対して20から180keVの間のエネルギーで行われる。この実施形態によると、注入は従来の注入器を用いて行われる。
【0065】
“プラズマ”と称される他の実施形態によると、注入は、10
15から10
17cm
−2の間のホウ素ドーズ量に対して5から15kVの間の電圧で行われる。この実施形態によると、注入はプラズマ反応器中で行われる。注入は、開口を形成するパターン上においてのみ第一の層100の上部層102中に行われる。有利には、プラズマによる注入方法は、欠陥発生率を最少にする。
【0066】
注入ステップの前に、シミュレーションステップを行い、空間電荷領域500並びに欠陥の第一のピーク801及び第二のピーク802の位置及び深さを特定する。欠陥ピークは、空隙の濃度が0.005空隙数/(Å・イオン)を超える領域に対応する。空間電荷領域500は、第二の層400(つまり、電子変換層)と第一の欠陥ピーク801との間の界面に位置していなければならない。
【0067】
空間電荷領域500の広がりを決定するパラメータは、基板の第一の層100の上部層102のドーピング及び厚さのパラメータ、並びに第二の層又は中性子変換層400を形成する第二のドーパント種のドーパント物質のドーピングのパラメータとを含む。基板の第一の層100中の欠陥ピーク801、802の位置を決定するパラメータは、第二のドーパント種のドーピングのパラメータである。
【0068】
以下の表は、シミュレーションステップにおいて用いた第二の層400の第二のドーパント種のドーピングパラメータの例を与える。ドーズ量は、検出器の応用に応じて有利に異なり得ることを理解されたい。
【0070】
図3Eは、基板の第一の層100の上部層102中に第二のドーパント種を注入することによって基板の第二の層400を形成するステップを示す。注入ステップに続いて、空間電荷領域500が、第一の層100と第二の層400との間の界面から、空間電荷領域500中に欠陥ピーク801、802を含まないような所定の深さ未満の制御された深さまで、基板の第一の層100に延在するように形成される。
【0071】
注入イオンのエネルギーがSCR500の位置、典型的には、SCR500の上限を区切るpn界面が位置する深さを定める。注入ドーズ量が、少なくとも部分的に、SCR500の厚さ、つまり、pn界面からSCR500が延在する深さを定める。基板100のドーピングもSCR500の厚さに影響する。
【0072】
このようにして、空間電荷領域500と中性子変換領域のpn界面が同じ種、つまり第二のドーパント種によって画定される。結果として、空間電荷領域500は中性子変換層に隣接する。SCR500とNCLとの間には中間層は存在しない。この様子は例えば
図2及び
図3Fに明らかに示されている。上述のように、SCRがNCLに直接接触しているので、NCLの出力における電離率の最大箇所はSCR中に位置する。これは、信号対雑音比を顕著に改善することを可能にする。
【0073】
第二のドーパント種の注入は、NCLが電極(図示されている例では電極602が後で形成される)からSCR500と接触して延在するように行われる。このようにして、NCLは、SCRや他の層中に埋め込まれず、電極から或る距離に位置決めされる。このようにして、初期基板100は、その上面から、pn接合を形成する界面まで連続的に第二のドーパント種が豊富である。しかしながら、この第二のドーパント種の存在の連続性は、第二のドーパント種の濃度がその厚さにわたって一定であることを示唆するものではない。
【0074】
図3Fは、活性化アニーリングのステップを示す。有利には、活性化アニーリングは、好ましくはアルゴン下で、好ましくは900から1700℃の間の温度で、好ましくは30から120分間の期間にわたって行われる。注入後アニーリングは、追加の層300の除去後に行われる。有利には、このアニーリングは、p+層を生成するために注入されたホウ素原子を電気的に活性化することを可能にする。更に、このアニーリングは、ホウ素の注入によって生じる欠陥の少なくとも一部を抑制する。高い加熱率(好ましくは略20℃/秒)を抵抗加熱モードと組み合わせて、優れた横方向の温度均一性を課し、炭化ケイ素の表面粗度を低く保ち、また、外部拡散によるホウ素の損失を制限する。外部拡散との用語は、本願において、活性化アニーリング中に一般的に生じる表面でのドーパントの蒸発、つまり、損失を意味する。
【0075】
一実施形態によると、アニーリングは、多様な温度レベルに対応する二つの連続したステップで行われる。アニーリングは、まず、900℃付近の温度において、120分間にわたって、毎秒20℃の加熱率で行われ、次いで、アニーリングは30分間にわたって1650℃に達し、次いで、毎分20℃の冷却率で冷却される。
【0076】
図3Gは、基板100の第一の表面及び第二の表面の金属化ステップを示す。金属化ステップは、基板100の第一の表面上に第一の金属層602を形成するように行われる。好ましくは、基板100の第一の表面は、そこから第二の層400が形成されている表面である。中性子束は、まず、この表面を介して基板中に侵入する。有利には、第一の金属層602は、一般的にカソード(又はアノード)と称される電極を形成する。第一の金属層602は、少なくとも中性子変換層400(又は第二の層400)を覆うように実現される。好ましくは、第一の金属層602は積層体を備える。一実施形態によると、第一の金属層602は、ニッケル/チタン/アルミニウム型の物質の積層体を備える。第一の金属層602の厚さは、好ましくは100から500ナノメートルの間である。
【0077】
金属化ステップは、基板100の第二の表面上に第二の金属層601を形成するように行われ、その第二の表面は第一の表面の反対側にある。有利には、第二の金属層601は、一般的にアノード(又はカソード)と称される電極を形成する。第二の金属層601は、基板100の第一の表面の反対側にある基板100の第二の表面を少なくとも部分的に覆うように実現される。好ましくは、第二の金属層601は積層体を備える。一実施形態によると、第二の金属層601はチタン/ニッケル型の物質の積層体を備える。第二の金属層601の厚さは好ましくは100から500ナノメートルの間である。
【0078】
図3Hは、第一の電極601及び第二の電極602の端部、つまりアノード601及びカソード602の端部とのコンタクトを設けるステップを示す。
【0079】
図4は、炭化ケイ素製の上部エピタキシャル層102中のホウ素10同位体(
10B)のホウ素プロファイルの重ね合わせを示す。ドーパント物質(この例ではホウ素)の注入後のシミュレーションのプロファイル(黒四角で表す)と、第二の層400及び第一の層100を介するアニーリング後のSIMS(secondary ion mass spectrometry,二次イオン質量分析法)型の実験プロファイル(黒丸で表す)とを比較する。アニーリングに用いたオーブンと、技術的に関連するアニーリング法の特定の特性が、有利に、アニーリング中のホウ素の非常に低い損失をもたらしている一方で、空間中へのホウ素の拡散を実質的に制限している。後者の効果は特に達成するのが難しいものである。一般的には、炭化ケイ素中へのホウ素の注入後のアニーリング中には実質的な拡散(熱的な拡散及び/又は欠陥によって促進される拡散)が観測されるものであり、つまり、濃度の実質的な減少に関連する空間中へのプロファイルの広がりが観測されるものである。
【0080】
本発明においては、空間電荷領域500は、アニーリング前後において有利に同じ位置に留まっており、これは、実験結果とシミュレーション成果との間の非常に優れた妥当性を得ることを可能にする。
【0081】
図5は、バイアス電圧に従った信号の変動を示す。三つのピーク901、902、903が観測されている。第一のピーク901(250未満のチャネル数)は、ガンマ線の検出に関連しており、これは、バイアスに従ったピーク901の広がり(空間電荷領域500の広がり)によって確かめられる。第三のピーク903(チャネル≒1500)は、入射熱中性子の検出に直接関連している。このピーク903の強度は、熱中性子束に比例している。このピーク903の強度には、バイアスに応じた変動は検出されない。有利には、このことは、外部バイアスなしで動作可能であること、つまり、エネルギーの観点において自立したシステムを有することができることを示唆している。この例では、実験は170℃付近の温度で行われた。信号の顕著な変動は観測されなかった。
【0082】
上記の点から、本発明が、単一ステップで実現される電子変換層の形成及びpn接合の形成による単純化された実現方法を提案していることは明らかである。本発明に係る方法は、電子変換層と空間電荷層との間の距離を最適化することの労力をなくすことを可能にし、これは、特に、電子変換層とp+注入層との同一性のおかげである。他方、検出器全体が炭化ケイ素に基づくものであるので、過酷な環境における検出器の使用制限は、炭化ケイ素(及び接続部)の物理的特性のみに関連するものとなる。
【0083】
特に有利には、好ましくは炭化ケイ素を備える基板中へのホウ素、より好ましくは同位体10型(
10B)の注入による中性子変換層の実現が、制約(熱的制約、機械的制約等)を抑えることを可能にする。他方、炭化ケイ素が、有利には、優れた信号対雑音比を保ちながら、極限環境において動作することを可能にする。
【0084】
他方、シミュレーション(例えば、SRIM型)が、p+層及びn層の厚さ及びドーピングを最適化して、空間電荷領域が、リチウムとヘリウムの粒子の発生によって生じる欠陥ピークの外に位置するように、空間電荷領域の位置及び厚さを定めることを可能にするので、検出器の寿命が延び、外部バイアスなしで信号(中性子とガンマ線との間の非常に優れた区別)を得ることができる。また、技術的パラメータ(注入、アニーリング)を制御することで、p+層のパラメータを制御することができる。有利には、例えば、炭化ケイ素の溶解限度に対応する多量のホウ素10同位体(
10B)のイオン注入による導入は、たとえそれが低品質(高い“漏れ”電流)のダイオードをもたらし得るものであったとしても、安価でありながら信頼性のある非常に優れた品質の中性子検出器(低フラックスの検出)を生じさせる。
【0085】
中性子検出は複数の応用範囲を有する。各応用は異なる検出システムを要する。中性子検出は、例えば、実験用原子炉、発電原子炉、地球物理学的採鉱、石油採掘(例えば、油膜の検出)、燃料再処理工場における核的方法の制御、放射性廃棄物パッケージの特性評価、核施設の調査及び解体の制御、医療物理学、環境において用いられる。
【0086】
上記説明によると、本発明に係る検出器が多数の利点を有することは明らかである。
【0087】
NCLに隣接し且つ欠陥ピーク外にSCRを配置することが、検出器の寿命を顕著に改善し、時間経過に対してより信頼性のあるものとし、また、信号対雑音比を改善するが、これは、バイアスなしで可能とされる。
【0088】
更に、本発明に係る検出器を製造するための方法は、所望の応用に応じて高度に順応性のあるモジュール式のものとなる。実際、SCRとNCLとの間に中間層が存在しないことが、NCLの厚さとSCRの厚さを容易に変更することを可能にし、例えば、最大の電離がSCR中にあることを保証しながら、その応用で測定される信号に適合することができる。従来技術の検出器では、NCLとSCRとの間の距離を調整することは難しい。
【0089】
更に、本発明に係る検出器は、その設計を通じて、所謂“過酷な”環境、つまり、高温、高圧、そして相当なレベルの放射線を有する環境において特に頑丈であることが示されている。例えば、過酷な環境は以下の条件のうち少なくとも一つを有する:150℃以上の温度、10バール以上の圧力、10Gy・s
−1における10
9n・cm
−2・s
−1以上の放射線。
【0090】
これに対し、既存の中性子検出器を使用することの主な制限は、一方では、使用制約(温度、圧力、放射線等)におけるものであり、デバイスはそのような制約に耐えられず、限られた寿命等の欠点を有し、他方では、その寿命の損失に対して検出器の性能を増大させることに関して為される選択におけるものである。
【0091】
また、従来技術の解決策は、使用可能な信号を得るために必要とされる逆バイアスの設定を必要とする。このバイアスは、検出器を複雑にし、中性子とガンマ粒子との間の区別性を低下させる。
【0092】
更に、NCLを形成するためと、SCR用のpn接合を画定するためとに同じ種を注入することによって、本発明に係る検出機器は、高速で単純で安価に製造可能である。
【0093】
本発明は、上述の実施形態に限られれるものではなく、その目的に従ったあらゆる実施形態に及ぶものである。更に、上記例においては、中性子を変換する注入種はホウ素であるが、本発明はこの種に限られるものではない。