特許第6768664号(P6768664)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6768664分子の細胞内送達のためのペプチドおよびナノ粒子
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6768664
(24)【登録日】2020年9月25日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】分子の細胞内送達のためのペプチドおよびナノ粒子
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/08 20060101AFI20201005BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20201005BHJP
   C07K 14/00 20060101ALI20201005BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20201005BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20201005BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20201005BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20201005BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20201005BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20201005BHJP
   A61K 47/56 20170101ALI20201005BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20201005BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20201005BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20201005BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20201005BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20201005BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20201005BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20201005BHJP
【FI】
   C07K7/08
   C12N15/113 ZZNA
   C07K14/00
   A61K31/713
   A61K31/7105
   A61K47/64
   A61K48/00
   A61K9/10
   A61K47/42
   A61K47/56
   A61K47/26
   A61K47/10
   A61P35/00
   A61P29/00
   A61P11/00
   A61P31/12
   A61P3/10
【請求項の数】24
【全頁数】89
(21)【出願番号】特願2017-533828(P2017-533828)
(86)(22)【出願日】2015年12月23日
(65)【公表番号】特表2018-504896(P2018-504896A)
(43)【公表日】2018年2月22日
(86)【国際出願番号】EP2015081197
(87)【国際公開番号】WO2016102687
(87)【国際公開日】20160630
【審査請求日】2018年12月25日
(31)【優先権主張番号】14/03004
(32)【優先日】2014年12月24日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514289920
【氏名又は名称】アーディジェン, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ディビタ, ジル
(72)【発明者】
【氏名】デサイ, ニール
【審査官】 星 功介
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/053622(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/150338(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00−19/00
A61K 9/00− 9/72
A61K 31/00−31/80
A61K 47/00−47/69
C12N 15/00−15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸配列XKWRSXRWRLWRXSR(配列番号1)(配列中、Xは、任意のアミノ酸であるか、存在せず、X〜Xは、任意のアミノ酸であり、XはVまたはSであり、XはR、VまたはAであり、XはSまたはLであり、XはWまたはYである)を含む、天然に存在しないペプチド。
【請求項2】
が、βAであるか、Sであるか、存在せず、Xが、AまたはVであり、Xが、GまたはLであり、Xが、WまたはYである、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
【化7】
のアミノ酸配列を含む、請求項2に記載のペプチド。
【請求項4】
長さが19または20アミノ酸である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項5】
前記ペプチドは、そのN末端に共有結合しているアセチル基を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項6】
前記ペプチドは、そのC末端に共有結合しているシステアミド基を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項7】
炭化水素結合によって結合されている、3つまたは6つの残基によって隔てられている2つの残基を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項8】
【化8】
のアミノ酸配列を含み、配列中、下付文字「S」の付いている残基が、前記炭化水素結合によって結合されている2つの残基である、請求項7に記載のペプチド。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のペプチドとカーゴ分子とを含む複合体。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のペプチドとカーゴ分子とを含むナノ粒子。
【請求項11】
前記カーゴ分子が、
a)核酸;
b)siRNA、miRNA、DNAプラスミド、もしくはこれらの類似体;
c)オリゴヌクレオチド;
d)一本鎖RNA、一本鎖DNA、二本鎖RNA、二本鎖DNA、もしくはこれらの誘導体
である、請求項9に記載の複合体または請求項10に記載のナノ粒子。
【請求項12】
a)前記ナノ粒子中の前記カーゴ分子の前記ペプチドに対するモル比が、約1:1〜約1:80である;
b)前記カーゴ分子が、集合分子と複合体化されて前記ナノ粒子のコアを形成する;
c)前記ナノ粒子が、表面層をさらに含む;
d)前記ナノ粒子が、表面に標的化部分を含む;
e)前記ナノ粒子の平均直径が、約10nm〜約300nmである;および/または
f)ゼータ電位の絶対値が約30mV未満である、
請求項10または請求項11に記載のナノ粒子。
【請求項13】
表面層と中間層とをさらに含む、請求項10〜12のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項14】
前記中間層が、請求項1〜8のいずれか一項に記載のペプチドを含む、請求項13に記載のナノ粒子。
【請求項15】
請求項9もしくは11に記載の複合体または請求項10〜14のいずれか一項に記載のナノ粒子と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項16】
a)前記医薬組成物が、静脈内、腫瘍内、動脈内、局所、眼内、眼科的、頭蓋内、髄腔内、小胞内、皮内、皮下、筋肉内、鼻腔内、気管内、肺、空洞内または経口投与用に製剤化される;
b)前記薬学的に許容される担体が、糖またはタンパク質であり、任意選択で前記糖が、スクロース、グルコース、マンニトールおよびこれらの組合せからなる群から選択され、約5%〜約20%の濃度で前記医薬組成物中に存在する;および/もしくは前記タンパク質がアルブミンである;ならびに/または
c)前記医薬組成物が、凍結乾燥される
請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
請求項10〜14のいずれか一項に記載のナノ粒子を調製する方法であって、
a)請求項1〜8のいずれか一項に記載のペプチドを含む組成物を、前記カーゴ分子を含む組成物と併せて混合物を形成するステップ、および
b)前記混合物をインキュベートして前記ナノ粒子を形成するステップ
を含む方法。
【請求項18】
医薬品として使用するための、請求項15または16に記載の医薬組成物。
【請求項19】
がん、糖尿病、炎症性疾患、線維症、ウイルス感染性疾患、遺伝性疾患、ならびに老齢および変性疾患からなる群から選択される疾患の処置において使用するための、請求項15または16に記載の医薬組成物。
【請求項20】
分子を細胞に送達する方法であって、前記細胞を請求項9もしくは11に記載の複合体または請求項10〜14のいずれか一項に記載のナノ粒子と接触させるステップを含み、前記複合体またはナノ粒子が前記分子を含み、前記細胞の前記複合体またはナノ粒子との前記接触が、ex vivoまたはin vitroで行われる、方法。
【請求項21】
前記細胞が、顆粒球、マスト細胞、単球、樹状細胞、B細胞、T細胞、またはナチュラルキラー細胞である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
a)前記分子が、標的抗原と特異的に結合する細胞外抗原結合ドメインと、膜貫通ドメインと、細胞内シグナル伝達ドメインとを含むキメラ抗原受容体をコードするプラスミドであり、任意選択で前記標的抗原が、がん関連抗原である、および/もしくはi)前記複合体もしくはナノ粒子がsiRNAをさらに含む、もしくはii)前記方法が、前記細胞を請求項9もしくは11に記載の複合体、または請求項10〜14のいずれか一項に記載のナノ粒子と接触させるステップをさらに含み、前記複合体またはナノ粒子がsiRNAを含む;または
b)前記分子がsiRNAである、
請求項21に記載の方法。
【請求項23】
核酸を安定化する方法であって、
a)請求項1〜8のいずれか一項に記載のペプチドを含む組成物を、前記核酸を含む組成物と併せて混合物を形成するステップ、および
b)前記混合物をインキュベートして、前記核酸を含む複合体を形成するステップ
を含む方法。
【請求項24】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のペプチドを含む組成物と、請求項9もしくは11に記載の複合体および/または請求項10〜14のいずれか一項に記載のナノ粒子を調製するための説明書とを含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸などのカーゴ分子の安定化および送達に有用であるペプチドおよびペプチド含有複合体/ナノ粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
小分子は、依然として、診療所で使用される主要薬物であるが、非常に多くの場合、それらの治療効果は、標的に到達する能力不足、特異性の欠如、毒性および大きな副作用につながる高用量の必要などの、限界に達している。過去10年にわたって、小分子の限界および遺伝子治療の限界を回避するために、それらの標的に対して高い特異性を呈するがリピンスキーの法則に従わないタンパク質、ペプチドおよび核酸などのより大きい治療用分子の発見の劇的な加速が目撃されてきた。これらの分子の薬学的効力は、それらの不良なin vivo安定性によって、および細胞内へのそれらの少ない取り込みによって、依然として制限されている。それ故、「送達」が治療パズルの主要ピースとなり、送達戦略を検証するために新たな道しるべ:(a)毒性の欠如、(b)低用量でのin vivo効率、(c)治療応用のための取り扱いの容易さ、(d)迅速なエンドソーム放出、および(e)標的に到達する能力が確立されてきた。ウイルス性送達戦略は、遺伝子および細胞治療に大きな希望を与えてきたが、それらの臨床応用では、副作用および毒性作用が問題となっている(Ibraheemら(2014年)Int J Pharm 459巻、70〜83頁)。主に非ウイルス性戦略の開発に研究の重点が置かれ、脂質、ポリカチオン性ナノ粒子およびペプチドベースの製剤を含む様々な方法が提案されてきたが、in vivoで効率的であり、臨床現場に届いているのは、これらの技術のうちのほんの少数である(Yinら(2014年)Nat Rev Genet 15巻、541〜555頁)。細胞透過性ペプチド(CPP)は、最も有望な非ウイルス性戦略の1つである。CPPの定義は絶えず進化し続けているが、CPPは、一般に、タンパク質にまたはキメラ配列に由来する、アミノ酸30未満の短鎖ペプチドと説明される。CPPは、通常、両親媒性であり、正味正電荷を有する(Langel U(2007年)Handbook of Cell−Penetrating Peptides(CRC Taylor & Francis、Boca Raton);Heitzら(2009年)Br J Pharmacol 157巻、195〜206頁)。CPPは、生体膜を透過すること、様々な生体分子の細胞膜経由での細胞質への移動を誘発すること、およびそれらの細胞内経路指定を向上させることができ、その結果、標的との相互作用を助けることができる。CPPを2つの主要クラスに細分することができ、第1のクラスは、カーゴとの化学結合を必要とし、第2のクラスは、安定した非共有結合性複合体の形成を伴う。両方の戦略からのCPPが多種多様な細胞型およびin vivoモデルへの、広範なカーゴ(プラスミドDNA、オリゴヌクレオチド、siRNA、PNA、タンパク質、ペプチド、リポソーム、ナノ粒子など。)の送達に有利であると報告されている(Langel U(2007年)Handbook of
Cell−Penetrating Peptides(CRC Taylor & Francis、Boca Raton);Heitzら(2009年)Br J Pharmacol 157巻、195〜206頁;Mickanら(2014年)Curr Pharm Biotechnol 15巻、200〜209頁;Shuklaら(2014年)Mol Pharm 11巻、3395〜3408頁)。
タンパク質形質導入ドメイン(PTD)の概念は、そもそも、一部のタンパク質、主として転写因子が細胞内でおよびある細胞から別の細胞にシャトリングされうるという観察に基づいて提案された(総説については、Langel U(2007年)Handbook of Cell−Penetrating Peptides(CRC Taylor & Francis、Boca Raton);
Heitzら(2009年)Br J Pharmacol 157巻、195〜206頁を参照されたい)。最初の観察は1988年にFrankelおよびPaboによってなされた。彼らは、HIV−1の転写トランス活性化(Tat)タンパク質が細胞に進入し、核に移行することを証明した。1991年に、Prochiantzのグループは、ショウジョウバエアンテナペディアホメオドメインで同じ結論に達し、このドメインが神経細胞により内在化されることを立証した。これらの研究の発端は、ペネトラチンと命名されたアンテナペディアのホメオドメインの第3ヘリックスに由来する16merペプチドである、最初のタンパク質形質導入ドメインの1994年における発見にあった。1997年にはLebleuのグループが細胞内取り込みに必要とされるTatの最小配列を同定し、in vivoでのPTDの応用の最初の概念実証が小さいペプチドおよび大きいタンパク質の送達についてDowdyのグループによって報告された(Gump JM、およびDowdy SF(2007年)Trends Mol Med 13巻、443〜448頁)。歴史的に、細胞透過性ペプチド(CPP)の観念は、1998年にLangelのグループによって導入され、スズメバチ毒ペプチドであるマストパランに結合された、神経ペプチドガラニンのN末端断片に由来する、最初のキメラペプチド担体であるトランスポータンが設計された。トランスポータンは、培養細胞でもin vivoでもPNA(ペプチド核酸)の送達を向上させると当初は報告された(Langel U(2007年)Handbook of Cell−Penetrating Peptides(CRC Taylor & Francis、Boca Raton))。1997年に、HeitzおよびDivitaのグループは、CPPをそれらのカーゴとの安定だが非共有結合性の複合体の形成に関与させる新たな戦略を提案した(Morrisら(1997年)Nucleic Acids Res 25巻、2730〜2736頁)。この戦略は、最初、親水性(極性)ドメインと疎水性(非極性)ドメインの2つのドメインからなる短鎖ペプチド担体(MPG)に基づいた。MPGは、核酸の送達用に設計された。次に、一次両親媒性ペプチドPep−1が、タンパク質およびペプチドの非共有結合性送達のために提案された(Morrisら(2001年)Nat Biotechnol 19巻、1173〜1176頁)。その後、WenderのグループおよびFutakiのグループは、ポリアルギニン配列(Arg8)が小および大分子を細胞におよびin vivoで送達するのに十分であることを立証した(Nakaseら(2004年)Mol Ther 10巻、1011〜1022頁;Rothbardら(2004年)J Am Chem Soc 126巻
、9506〜9507頁)。それ以来、天然または非天然配列に由来する多くのCPPが同定され、そのリストは絶えず増え続けている。単純ヘルペスウイルスのVP22タンパク質から、カルシトニンから、抗微生物性または毒素ペプチドから、細胞周期制御に関与するタンパク質から、およびポリプロリンリッチペプチドからペプチドが誘導された(Heitzら(2009年)Br J Pharmacol 157巻、195〜206頁)。より最近になって、二次両親媒性CPPに基づく新たな非共有結合性戦略が記載された。CADYおよびVEPEPファミリーなどのこれらのペプチドは、親水性および疎水性残基を分子の異なる側面に有するヘリックス形に自己集合することができる。WO2012/137150はVEPEP−6ペプチドを開示しており、US2010/0099626はCADYペプチドを開示しており、WO2014/053880はVEPEP−9を開示している。
本明細書において言及するすべての刊行物、特許、特許出願および公開特許出願の開示は、ここにそれら全体が参照によって本明細書に組み入れられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2012/137150号
【特許文献2】米国特許出願公開第2010/0099626号明細書
【特許文献3】国際公開第2014/053880号
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Ibraheemら(2014年)Int J Pharm 459巻、70〜83頁
【非特許文献2】Yinら(2014年)Nat Rev Genet 15巻、541〜555頁
【非特許文献3】Langel U(2007年)Handbook of Cell−Penetrating Peptides(CRC Taylor & Francis、Boca Raton)
【非特許文献4】Heitzら(2009年)Br J Pharmacol 157巻、195〜206頁
【非特許文献5】Mickanら(2014年)Curr Pharm Biotechnol 15巻、200〜209頁
【非特許文献6】Shuklaら(2014年)Mol Pharm 11巻、3395〜3408頁
【非特許文献7】Gump JM、およびDowdy SF(2007年)Trends Mol Med 13巻、443〜448頁
【非特許文献8】Morrisら(1997年)Nucleic Acids Res 25巻、2730〜2736頁
【非特許文献9】Morrisら(2001年)Nat Biotechnol 19巻、1173〜1176頁
【非特許文献10】Nakaseら(2004年)Mol Ther 10巻、1011〜1022頁
【非特許文献11】Rothbardら(2004年)J Am Chem Soc 126巻、9506〜9507頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本出願は、核酸などのカーゴ分子の安定化および送達に有用な新規クラスのペプチド(ADGNペプチド)を提供する。一態様では、アミノ酸配列XKWRSXRWRLWRXSR(配列番号1)(配列中、Xは、任意のアミノ酸であるか、存在せず、X〜Xは、任意のアミノ酸である)を含む、天然に存在しないペプチドが提供される。一部の実施形態では、Xは、βAであるか、Sであるか、存在せず、Xは、AまたはVであり、Xは、GまたはLであり、Xは、WまたはYであり、Xは、VまたはSであり、Xは、R、VまたはAであり、Xは、SまたはLであり、Xは、WまたはYである。一部の実施形態では、KWRSAGWRWRLWRVRSWSR(配列番号2)、KWRSALYRWRLWRSRSWSR(配列番号3)、またはKWRSALYRWRLWRSALYSR(配列番号4)のアミノ酸配列を含む、天然に存在しないペプチドが提供される。一部の実施形態では、ペプチドは、長さが19または20アミノ酸である。一部の実施形態では、ペプチドは、長さが約50、45、40、35、30、25または20アミノ酸のいずれか以下である。一部の実施形態では、ペプチドは、長さが約50、100、200、300、400、500、1000またはそれ超のアミノ酸のいずれか以上である。一部の実施形態では、ペプチドはL−アミノ酸を含む。一部の実施形態では、ペプチドはD−アミノ酸を含む。
【0006】
上記のペプチドのいずれかによる一部の実施形態では、ペプチドは、該ペプチドのN末端に共有結合している1つまたは複数の部分をさらに含み、1つまたは複数の部分は、アセチル基、ステアリル基、脂肪酸、コレステロール、脂質(リン脂質を含む)、ポリエチレングリコール、核局在シグナル、核外移行シグナル、抗体またはその抗体断片、ペプチド、多糖類、および標的化分子からなる群から選択される。一部の実施形態では、ペプチドは、そのN末端に共有結合で連結しているアセチル基を含む。一部の実施形態では、ペプチドは、該ペプチドのC末端に共有結合で連結している1つまたは複数の部分をさらに含み、1つまたは複数の部分は、システアミド基、システイン、チオール、アミド、ニトリロ三酢酸、カルボキシル基、直鎖状または分枝型C〜Cアルキル基、一級または二級アミン、オシディック(osidic)誘導体、脂質、リン脂質、脂肪酸、コレステロール、ポリエチレングリコール、核局在シグナル、核外移行シグナル、抗体またはその抗体断片、ペプチド、多糖類、および標的化分子からなる群から選択される。一部の実施形態では、ペプチドは、そのC末端に共有結合しているシステアミド基を含む。一部の実施形態では、ペプチドは、「ニート」であり、すなわち、上記のいずれの他の部分も含有しない。
【0007】
上記のペプチドのいずれかによる一部の実施形態では、ペプチドは、ステープル留めされている。例えば、一部の実施形態では、ペプチドは、3つまたは6つの残基によって隔てられている2つの残基間に炭化水素結合を含む。一部の実施形態では、ペプチドは、
【化1】
のアミノ酸配列を含む(配列中、下付文字「S」の付いている残基は、炭化水素結合によって結合されている2つの残基である)。
【0008】
上記のペプチドのうちのいずれか1つのペプチドによる一部の実施形態では、配列XKWRSXRWRLWRXSR(配列番号1)を有するペプチドの部分は、単一コアヘリックスモチーフを形成する。一部の実施形態では、配列XKWRSXRWRLWRXSR(配列番号1)を有するペプチドの部分は、ヘリックス構造であって、SまたはR残基が同じ側面にあり、W残基が他の側面にあり、そのヘリックスの1つの側面の静電接触部および他の側面の疎水性接触部のパッチを形成する、ヘリックス構造を形成する。
【0009】
本発明の別の態様では、上記のADGNペプチドのうちのいずれか1つのペプチドとカーゴ分子とを含む(「から本質的になる」または「からなる」を包含する)複合体が提供される。本出願の別の態様では、上記のADGNペプチドのうちのいずれか1つのペプチドとカーゴ分子とを含む(「から本質的になる」または「からなる」を包含する)ナノ粒子が提供される。一部の実施形態では、カーゴは、荷電している。一部の実施形態では、カーゴは、非荷電である。一部の実施形態では、カーゴは、物理的にまたは化学的に修飾されている。一部の実施形態では、カーゴは、未修飾である。一部の実施形態では、カーゴ分子は、核酸である。一部の実施形態では、核酸は、siRNA、miRNA、アンチセンスRNA、DNAプラスミド、およびこれらの類似体からなる群から選択される。一部の実施形態では、核酸は、オリゴヌクレオチドである。一部の実施形態では、DNAプラスミドは、標的抗原と特異的に結合する細胞外抗原結合ドメインと、膜貫通ドメインと、細胞内シグナル伝達ドメインとを含む、キメラ抗原受容体をコードする。一部の実施形態では、標的抗原は、CD19、CD20、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27、HVEM、BCMA、CD70、CD74、CD38、CD138、CD33、Lewis−Y、CD123、CD44v6およびCS1からなる群から選択される。一部の実施形態では、核酸は、一本鎖RNA、一本鎖DNA、二本鎖RNA、二本鎖DNA、およびこれらの誘導体からなる群から選択される。一部の実施形態では、核酸は、長さが約2〜約40ヌクレオチドである。一部の実施形態では、核酸は、長さが約100ヌクレオチドまでである。一部の実施形態では、核酸は、長さが約100ヌクレオチドより長い。一部の実施形態では、核酸は、少なくとも1つの修飾結合、例えば、ホスホロチオエート結合、または2’−メトキシ、2’−フルオロおよび2’−O−メトキシエチルを含むリボース環の2’位における修飾を含有する。
【0010】
上記の複合体またはナノ粒子のいずれかによる一部の実施形態では、複合体またはナノ粒子中のカーゴ分子のADGNペプチドに対するモル比は、約1:1〜約1:80(例えば、大体、約1:1〜約1:5、約1:5〜約1:10、約1:10〜約1:15、約1:15〜約1:20、約1:20〜約1:25、約1:25〜約1:30、約1:30〜約1:35、約1:35〜約1:40、約1:40〜約1:45、約1:45〜約1:50、約1:50〜約1:55、約1:55〜約1:60、約1:60〜約1:65、約1:65〜約1:70、約1:70〜約1:75、および約1:75〜約1:80のいずれかを含む)である。
【0011】
一部の実施形態では、カーゴ分子は、集合分子(例えば、ペプチド、タンパク質、抗体、脂質、リン脂質、ポリマー、アプタマー、ナノ粒子、リポソーム、デンドリマー、ポリメロソーム(polymerosome)、ウイルスベクター、およびミセル)と複合体化されて、ナノ粒子のコアを形成する。一部の実施形態では、集合分子は、上記のADGNペプチドのうちのいずれか1つのペプチドである(例えば、ナノ粒子は、ADGNペプチドとカーゴ分子とを含むコアを含む(「から本質的になる」または「からなる」を包含する)ことがある)。一部の実施形態では、集合分子は、ADGNペプチドではない(例えば、ナノ粒子は、カーゴ分子と非ADGNペプチドとを含むコアを含むことがあり、その場合、コアは、ADGNペプチドで被覆されている)。一部の実施形態では、ナノ粒子は、表面層をさらに含む。一部の実施形態では、表面層は、上記のADGNペプチドのうちのいずれか1つのペプチドを含む。一部の実施形態では、表面層は、ADGNペプチドでない細胞透過性ペプチドを含む。一部の実施形態では、ナノ粒子は、中間層をさらに含む。一部の実施形態では、中間層は、上記のADGNペプチドのうちのいずれか1つのペプチドを含む。一部の実施形態では、中間層は、ADGNペプチドでない細胞透過性ペプチドを含む。
【0012】
上記のナノ粒子のうちのいずれか1つのナノ粒子による一部の実施形態では、ナノ粒子は、表面に標的化部分を含む。一部の実施形態では、標的化部分は、ペプチド(例えば、AGDNペプチド)に結合している。一部の実施形態では、ペプチドは、標的化部分に共有結合している。一部の実施形態では、標的化部分は、ナノ粒子を組織または特定の細胞に標的化する。
【0013】
上記のナノ粒子のうちのいずれか1つのナノ粒子による一部の実施形態では、ナノ粒子のサイズ(直径)は、約10nm〜約300nmである。一部の実施形態では、ナノ粒子のサイズ(直径)は、約50nm〜約200nmである。一部の実施形態では、ナノ粒子のサイズ(直径)は、約80nm〜約140nmである。一部の実施形態では、ナノ粒子のサイズ(直径)は、約150nm、140nm、130nm、120nm、110nmまたは100nmのいずれか1つ以下である。
【0014】
一部の実施形態では、ナノ粒子のゼータ電位の絶対値は、約50mV以下であり、例えば、約40mV、30mV、20mV、10mV、9mV、8mV、7mV、6mVまたは5mVのいずれか以下を含む。一部の実施形態では、ナノ粒子のゼータ電位は、約−15〜約15mV、例えば、約−5〜約10mVである。
【0015】
上記のナノ粒子または複合体のうちのいずれか1つのナノ粒子または複合体による一部の実施形態では、ナノ粒子または複合体は、複数のカーゴ分子を含む。一部の実施形態では、ナノ粒子または複合体は、少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9または10のいずれかの異なるカーゴ分子(例えば、核酸)を含む。一部の実施形態では、カーゴは、同じ種類のもの(例えば、複数のmiRNAまたはsiRNA)である。一部の実施形態では、カーゴは、異なる種類のものである。
【0016】
一部の実施形態では、上記のナノ粒子のうちのいずれか1つのナノ粒子を含む組成物(例えば、医薬組成物)が提供される。一部の実施形態では、組成物中のナノ粒子の平均直径は、約10nm〜約300nmである。一部の実施形態では、組成物中のナノ粒子の平均直径は、約50nm〜約200nmである。一部の実施形態では、組成物中のナノ粒子の平均直径は、約80nm〜約140nmである。一部の実施形態では、組成物中のナノ粒子の平均直径は、約150nm、140nm、130nm、120nm、110nmまたは100nmのいずれか1つ以下である。一部の実施形態では、組成物は、約0.1、0.2、0.3、0.4または0.5のいずれか以下の多分散指数を有する。一部の実施形態では、組成物中のナノ粒子は、同じADGNペプチドおよびカーゴ分子を含む。一部の実施形態では、組成物中のナノ粒子は、異なるADGNペプチドおよび/またはカーゴ分子を含む。
【0017】
一部の実施形態では、ナノ粒子組成物は、ナノ粒子の懸濁液である。一部の実施形態では、ナノ粒子組成物は、凍結乾燥される。一部の実施形態では、ナノ粒子組成物は、少なくとも約24時間、48時間、72時間、4日、10日、30日、60日、3カ月、4カ月、5カ月、6カ月またはそれより長い期間のいずれかにわたって、室温で、または冷蔵条件下で、例えば、沈殿、凝集、サイズ変化および/または有効性の喪失なく、安定している。
【0018】
本出願の別の態様では、上記の複合体またはナノ粒子と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物が提供される。一部の実施形態では、医薬組成物は、静脈内、腫瘍内、動脈内、局所、眼内、眼科的、頭蓋内、髄腔内、小胞内、皮内、皮下、筋肉内、鼻腔内、気管内、肺、空洞内または経口投与用に製剤化される。一部の実施形態では、薬学的に許容される担体は、糖またはタンパク質を含む。一部の実施形態では、糖は、スクロース、グルコース、マンニトールおよびこれらの組合せからなる群から選択され、任意選択で、約5%〜約20%の濃度で医薬組成物中に存在する。一部の実施形態では、タンパク質は、アルブミンである。一部の実施形態では、医薬組成物は、凍結乾燥される。
【0019】
本出願のさらに別の態様では、上記のナノ粒子を調製する方法であって、a)上記のADGNペプチドをカーゴ分子と併せて混合物を形成するステップ、およびb)混合物をインキュベートしてナノ粒子を形成するステップを含む方法が提供される。
【0020】
本出願の別の態様では、カーゴ分子(例えば、核酸)を安定化する方法であって、カーゴ分子を上記のADGNペプチドと併せることによってカーゴ分子を安定化するステップを含む方法が提供される。一部の実施形態では、カーゴ分子およびADGNペプチドは、上記の複合体またはナノ粒子を形成する。一部の実施形態では、カーゴ分子は核酸であり、ADGNペプチドは、核酸のスーパーコイル構造を安定化する。一部の実施形態では、カーゴ分子は、(例えば、血清成分またはヌクレアーゼによってin vitroまたはin vivoで)分解されやすく、ADGNペプチドは、カーゴ分子を分解から保護する。
【0021】
本出願のさらなる態様では、個体の疾患を処置する方法であって、上記のカーゴ分子およびADGNペプチドを(例えば、複合体またはナノ粒子の形態で)含む有効量の医薬組成物を個体に投与するステップを含む方法が提供される。一部の実施形態では、疾患は、がん、糖尿病、炎症性疾患、線維症、ウイルス感染性疾患、遺伝性疾患、ならびに老齢および変性疾患からなる群から選択される。一部の実施形態では、疾患は、がん、例えば固形腫瘍である。
【0022】
一部の実施形態では、医薬組成物の投与は、1つまたは複数の遺伝子の発現を調節する結果となる。本明細書に記載する方法によって発現を調節することができる好適な遺伝子としては、増殖因子、サイトカイン、細胞表面受容体、シグナル伝達分子、キナーゼ、転写因子または転写の他の調節因子、タンパク質発現または修飾の制御因子、およびアポトーシスまたは転移の制御因子をコードするものが挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、1つまたは複数の遺伝子のうちの少なくとも1つは、EGF、VEGF、FGF、HGF、HDGF、IGF、PDGF、TGF−α、TGF−β、TNF−αおよびwntを含むがこれらに限定されない、増殖因子またはサイトカインをコードする。一部の実施形態では、1つまたは複数の遺伝子のうちの少なくとも1つは、EGF、VEGF、FGF、HGF、HDGF、IGF、PDGF、TGF−α、TGF−β、TNF−αおよびwntを含むがこれらに限定されない、増殖因子またはサイトカインをコードする。一部の実施形態では、1つまたは複数の遺伝子のうちの少なくとも1つは、ER、PR、Her2、Her3、アンジオポエチン受容体、EGFR、FGFR、HGFR、HDGFR、IGFR、KGFR、MSFR、PDGFR、TGFR、VEGFR1、VEGFR2、VEGFR3、Frizzledファミリー受容体(FZD−1〜10)、Smoothened、PatchedおよびCXCR4を含むがこれらに限定されない、細胞表面受容体をコードする。一部の実施形態では、1つまたは複数の遺伝子のうちの少なくとも1つは、KRAS、NRAS、RAF、MEK、MEKK、MAPK、MKK、ERK、JNK、JAK、PKA、PKC、PI3K、Akt、mTOR、Raptor、Rictor、MLST8、PRAS40、DEPTOR、MSIN1、S6キナーゼ、PDK1、BRAF、FAK、Src、Fyn、Shc、GSK、IKK、PLK−1、サイクリン依存性キナーゼ(Cdk1〜13)、CDK活性化キナーゼ、ALK/Met、Syk、BTK、Bcr−Abl、RET、β−カテニン、Mcl−1およびPKN3を含むがこれらに限定されない、シグナル伝達分子またはキナーゼをコードする。一部の実施形態では、1つまたは複数の遺伝子のうちの少なくとも1つは、ATF−2、Chop、c−Jun、c−Myc、DPC4、Elk−1、Ets1、Max、MEF2C、NFAT4、Sap1a、STAT、Tal、p53、CREB、Myc、NF−κB、HDAC、HIF−1αおよびRRM2を含むがこれらに限定されない、転写因子または転写の他の調節因子をコードする。一部の実施形態では、1つまたは複数の遺伝子のうちの少なくとも1つは、ユビキチンリガーゼ、LMP2、LMP7、MECL−1およびmiRNAを含むがこれらに限定されない、タンパク質発現または修飾の制御因子をコードする。一部の実施形態では、1つまたは複数の遺伝子のうちの少なくとも1つは、XIAP、Bcl−2、オステオポンチン、SPARC、MMP−2、MMP−9およびuPARを含むがこれらに限定されない、アポトーシスまたは転移の制御因子をコードする。
【0023】
一部の実施形態では、疾患が固形腫瘍である場合、発現が調節される遺伝子は、腫瘍形成および/または進行に関与するタンパク質をコードしうる。一部の実施形態では、腫瘍形成および/または進行に関与するタンパク質は、IL−2、IL−12、インターフェロン−ガンマ、GM−CSF、B7−1、カスパーゼ−9、p53、MUC−1、MDR−1、HLA−B7/ベータ2−ミクログロブリン、Her2、Hsp27、チミジンキナーゼおよびMDA−7を含むが、これらに限定されない。
【0024】
一部の実施形態では、疾患が血液学的悪性腫瘍である場合、発現が調節される遺伝子は、血液学的悪性腫瘍の発症および/または進行に関与するタンパク質をコードしうる。一部の実施形態では、血液学的悪性腫瘍の発症および/または進行に関与するタンパク質は、GLI1、CTNNB1、eIF5A、変異型DDX3X、ヘキソキナーゼII、ヒストンメチルトランスフェラーゼEZH2、ARK5、ALK、MUC1、HMGA2、HIF−1アルファ、IRF1、RPN13、HDAC11、Rad51、Spry2、mir−146a、mir−146b、サバイビン、MDM2、MCL1、CMYC、XBP1(スプライス型および非スプライス型)、SLAMF7、CS1、Erbb4、Cxcr4(ワルデンストレームマクログロブリン血症)、Myc、Bcl2、Prdx1およびPrdx2(バーキットリンパ腫)、Bcl6、Idh1、Idh2、Smad、Ccnd2、サイクリンd1〜2、B7−h1(pdl−1)およびPyk2を含むが、これらに限定されない。
【0025】
一部の実施形態では、疾患がウイルス感染症である場合、発現が調節される遺伝子は、ウイルス感染性疾患の発症および/または進行に関与するタンパク質をコードしうる。一部の実施形態では、ウイルス感染性疾患の発症および/または進行に関与するタンパク質は、RSVヌクレオカプシド、Pre−gen/Pre−C、Pre−S1、Pre−S2/S、X、HBV保存配列、HIV Tat、HIV TAR RNA、ヒトCCR5、miR−122、EBOVポリメラーゼL、VP24、VP40、GP/sGP、VP30、VP35、NPC1およびTIM−1を含むが、これらに限定されない。
【0026】
一部の実施形態では、疾患が遺伝性疾患である場合、発現が調節される遺伝子は、遺伝性疾患の発症および/または進行に関与するタンパク質をコードしうる。一部の実施形態では、遺伝性疾患の発症および/または進行に関与するタンパク質は、トランスサイレチン、MDS1−EVI1、PRDM16、SETBP1、β−グロビンおよびLPLを含むが、これらに限定されない。
【0027】
一部の実施形態では、疾患が老齢または変性疾患である場合、発現が調節される遺伝子は、老齢または変性疾患の発症および/または進行に関与するタンパク質をコードしうる。一部の実施形態では、老齢または変性疾患の発症および/または進行に関与するタンパク質は、ケラチンK6A、ケラチンK6B、ケラチン16、ケラチン17、p53、β−2アドレナリン受容体(ADRB2)、TRPV1、VEGF、VEGFR、HIF−1、HIF−1アルファおよびカスパーゼ−2を含むが、これらに限定されない。
【0028】
一部の実施形態では、疾患が線維性または炎症性疾患である場合、発現が調節される遺伝子は、線維性または炎症性疾患の発症および/または進行に関与するタンパク質をコードしうる。一部の実施形態では、線維性または炎症性疾患の発症および/または進行に関与するタンパク質は、SPARC、CTGF、TGFβ1、TGFβ受容体1、TGFβ受容体2、TGFβ受容体3、VEGF、アンジオテンシンII、TIMP、HSP47、トロンボスポンジン、CCN1、LOXL2、MMP2、MMP9、CCL2、アデノシン受容体A2A、アデノシン受容体A2B、アデニリルシクラーゼ、Smad 3、Smad 4、Smad 7、SOX9、アレスチン、PDCD4、PAI−1、NF−κBおよびPARP−1からなる群から選択される。
【0029】
上記の処置方法のうちのいずれか1つの方法による一部の実施形態では、個体は、哺乳動物である。一部の実施形態では、個体はヒトである。
【0030】
本発明の別の態様では、カーゴ分子を細胞に送達する方法であって、ADGNペプチドおよびカーゴ分子を(例えば、上記の複合体またはナノ粒子の形態で)含む組成物と細胞を接触させるステップを含む方法が提供される。一部の実施形態では、細胞の接触は、in vivoで行われる。一部の実施形態では、細胞の接触は、ex vivoで行われる。一部の実施形態では、細胞の接触は、in vitroで行われる。一部の実施形態では、細胞は、顆粒球、マスト細胞、単球、樹状細胞、B細胞、T細胞、またはナチュラルキラー細胞である。一部の実施形態では、カーゴ分子は、標的抗原と特異的に結合する細胞外抗原結合ドメインと、膜貫通ドメインと、細胞内シグナル伝達ドメインとを含むキメラ抗原受容体をコードするプラスミドである。一部の実施形態では、標的抗原は、がん関連抗原である。一部の実施形態では、複合体またはナノ粒子は、siRNAをさらに含む。一部の実施形態では、方法は、ADGNペプチドおよびsiRNAを(例えば、上記の複合体またはナノ粒子の形態で)含む第2の組成物と細胞を接触させるステップをさらに含む。一部の実施形態では、siRNAは、PD−1、PD−L1、PD−L2、TIM−3、BTLA、VISTA、LAG−3またはCTLA−4をコードするRNA分子を特異的に標的とする。
【0031】
一部の実施形態では、上記のカーゴ分子を細胞に送達する方法のいずれかによると、カーゴ分子は、siRNAである。
【0032】
本発明の別の態様では、個体の疾患を処置する方法であって、a)上記の方法のうちのいずれか1つの方法に従って分子を細胞に送達することによって、分子を含む改変細胞を産生するステップであって、改変細胞が疾患の処置に有用である、ステップ、およびb)改変細胞を個体に投与するステップを含む方法が提供される。一部の実施形態では、改変細胞は、静脈内、動脈内、腹腔内、小胞内、皮下、髄腔内、肺内、筋肉内、気管内、眼内、経皮、経口または吸入経路によって投与される。一部の実施形態では、疾患はがんである。一部の実施形態では、個体はヒトである。
【0033】
本発明のさらに別の態様では、上記のADGNペプチドのうちのいずれか1つのペプチドを含む組成物と、上記の複合体および/またはナノ粒子を調製するための説明書とを含むキットが提供される。一部の実施形態では、キットは、ペプチド、タンパク質、抗体、脂質、リン脂質、ポリマー、アプタマー、ナノ粒子、リポソーム、デンドリマー、ポリメロソーム、ウイルスベクター、およびミセルからなる群から選択される集合分子を含む組成物をさらに含む。
特定の実施形態では、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
アミノ酸配列XKWRSXRWRLWRXSR(配列番号1)(配列中、Xは、任意のアミノ酸であるか、存在せず、X〜Xは、任意のアミノ酸である)を含む、天然に存在しないペプチド。
(項目2)
が、βAであるか、Sであるか、存在せず、Xが、AまたはVであり、Xが、GまたはLであり、Xが、WまたはYであり、Xが、VまたはSであり、Xが、R、VまたはAであり、Xが、SまたはLであり、Xが、WまたはYである、項目1に記載のペプチド。
(項目3)
【化7】

のアミノ酸配列を含む、項目2に記載のペプチド。
(項目4)
長さが19または20アミノ酸である、項目1〜3のいずれか一項に記載のペプチド。
(項目5)
L−アミノ酸を含む、項目1〜4のいずれか一項に記載のペプチド。
(項目6)
D−アミノ酸を含む、項目1〜5のいずれか一項に記載のペプチド。
(項目5)
前記ペプチドのN末端に共有結合している1つまたは複数の部分をさらに含み、前記1つまたは複数の部分が、アセチル基、ステアリル基、脂肪酸、コレステロール、ポリエチレングリコール、核局在シグナル、核外移行シグナル、抗体またはその抗体断片、ペプチド、多糖類、および標的化分子からなる群から選択される、項目1〜4のいずれか一項に記載のペプチド。
(項目6)
前記ペプチドは、そのN末端に共有結合しているアセチル基を含む、項目5に記載のペプチド。
(項目7)
前記ペプチドのC末端に共有結合している1つまたは複数の部分をさらに含み、前記1つまたは複数の部分が、システアミド基、システイン、チオール、アミド、ニトリロ三酢酸、カルボキシル基、直鎖状または分枝型C〜Cアルキル基、一級または二級アミン、オシディック誘導体、脂質、リン脂質、脂肪酸、コレステロール、ポリエチレングリコール、核局在シグナル、核外移行シグナル、抗体またはその抗体断片、ペプチド、多糖類、および標的化分子からなる群から選択される、項目1〜6のいずれか一項に記載のペプチド。
(項目8)
前記ペプチドは、そのC末端に共有結合しているシステアミド基を含む、項目7に記載のペプチド。
(項目9)
炭化水素結合によって結合されている、3つまたは6つの残基によって隔てられている2つの残基を含む、項目1〜8のいずれか一項に記載のペプチド。
(項目10)
【化8】

のアミノ酸配列を含み、配列中、下付文字「S」の付いている残基が、前記炭化水素結合によって結合されている2つの残基である、項目9に記載のペプチド。
(項目11)
項目1〜10のいずれか一項に記載のペプチドとカーゴ分子とを含む複合体。
(項目12)
前記カーゴ分子が核酸である、項目11に記載の複合体。
(項目13)
前記核酸が、siRNA、miRNA、DNAプラスミド、およびこれらの類似体からなる群から選択される、項目12に記載の複合体。
(項目14)
前記核酸がオリゴヌクレオチドである、項目12に記載の複合体。
(項目15)
前記核酸が、一本鎖RNA、一本鎖DNA、二本鎖RNA、二本鎖DNA、およびこれらの誘導体からなる群から選択される、項目12〜14のいずれか一項に記載の複合体。
(項目16)
前記核酸が、長さ約2〜約40ヌクレオチドである、項目12〜15のいずれか一項に記載の複合体。
(項目17)
前記核酸が、長さ約100ヌクレオチドまでである、項目12〜15のいずれか一項に記載の複合体。
(項目18)
前記核酸が、長さ約100ヌクレオチドより長い、項目12〜13および15のいずれか一項に記載の複合体。
(項目19)
前記DNAプラスミドが、標的抗原と特異的に結合する細胞外抗原結合ドメインと、膜貫通ドメインと、細胞内シグナル伝達ドメインとを含むキメラ抗原受容体をコードする、項目13に記載の複合体。
(項目20)
前記標的抗原が、CD19、CD20、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27、HVEM、BCMA、CD70、CD74、CD38、CD138、CD33、Lewis−Y、CD123、CD44v6およびCS1からなる群から選択される、項目19に記載の複合体。
(項目21)
項目1〜10のいずれか一項に記載のペプチドとカーゴ分子とを含むナノ粒子。
(項目22)
前記カーゴ分子が核酸である、項目21に記載のナノ粒子。
(項目23)
前記核酸が、siRNA、miRNA、DNAプラスミド、およびこれらの類似体からなる群から選択される、項目22に記載のナノ粒子。
(項目24)
前記核酸がオリゴヌクレオチドである、項目22に記載のナノ粒子。
(項目25)
前記核酸が、一本鎖RNA、一本鎖DNA、二本鎖RNA、二本鎖DNA、およびこれらの誘導体からなる群から選択される、項目22〜24のいずれか一項に記載のナノ粒子。
(項目26)
前記核酸が、長さ約2〜約40ヌクレオチドである、項目22〜25のいずれか一項に記載のナノ粒子。
(項目27)
前記核酸が、長さ約100ヌクレオチドまでである、項目22〜23のいずれか一項に記載のナノ粒子。
(項目28)
前記核酸が、長さ約100ヌクレオチドより長い、項目22、23および25のいずれか一項に記載のナノ粒子。
(項目29)
前記DNAプラスミドが、標的抗原と特異的に結合する細胞外抗原結合ドメインと、膜貫通ドメインと、細胞内シグナル伝達ドメインとを含むキメラ抗原受容体をコードする、項目23に記載のナノ粒子。
(項目30)
前記標的抗原が、CD19、CD20、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27、HVEM、BCMA、CD70、CD74、CD38、CD138、CD33、Lewis−Y、CD123、CD44v6およびCS1からなる群から選択される、項目29に記載のナノ粒子。
(項目31)
前記ナノ粒子中の前記カーゴ分子の前記ペプチドに対するモル比が、約1:1〜約1:80である、項目21〜30のいずれか一項に記載のナノ粒子。
(項目32)
前記ナノ粒子中の前記カーゴ分子の前記ペプチドに対するモル比が、約1:5〜約1:40である、項目31に記載のナノ粒子。
(項目33)
前記カーゴ分子が、集合分子と複合体化されて前記ナノ粒子のコアを形成する、項目21〜32のいずれか一項に記載のナノ粒子。
(項目34)
前記集合分子が、ペプチド、タンパク質、抗体、脂質、リン脂質、ポリマー、アプタマー、ナノ粒子、リポソーム、デンドリマー、ポリメロソーム、ウイルスベクター、およびミセルからなる群から選択される、項目33に記載のナノ粒子。
(項目35)
前記集合分子が、項目1〜10のいずれか一項に記載のペプチドである、項目33に記載のナノ粒子。
(項目36)
前記集合分子が、項目1〜10のいずれか一項に記載のペプチドでない、項目33に記載のナノ粒子。
(項目37)
表面層をさらに含む、項目21〜36のいずれか一項に記載のナノ粒子。
(項目38)
前記表面層が、項目1〜10のいずれか一項に記載のペプチドを含む、項目37に記載のナノ粒子。
(項目39)
前記表面層が、項目1〜10のいずれか一項に記載のペプチドでない細胞透過性ペプチドを含む、項目37に記載のナノ粒子。
(項目40)
中間層をさらに含む、項目37〜39のいずれか一項に記載のナノ粒子。
(項目41)
前記中間層が、項目1〜10のいずれか一項に記載のペプチドを含む、項目40に記載のナノ粒子。
(項目42)
前記中間層が、項目1〜10のいずれか一項に記載のペプチドでない細胞透過性ペプチドを含む、項目40に記載のナノ粒子。
(項目43)
表面に標的化部分を含む、項目21〜42のいずれか一項に記載のナノ粒子。
(項目44)
前記標的化部分が、ペプチドに結合している、項目43に記載のナノ粒子。
(項目45)
前記ペプチドが、前記標的化部分に共有結合している、項目44に記載のナノ粒子。
(項目46)
前記標的化部分が、前記ナノ粒子を組織に標的化する、項目43〜45のいずれか一項に記載のナノ粒子。
(項目47)
複数のカーゴ分子を含む、項目21〜46のいずれか一項に記載のナノ粒子。
(項目48)
前記ナノ粒子の平均直径が、約10nm〜約300nmである、項目21〜47のいずれか一項に記載のナノ粒子。
(項目49)
前記ナノ粒子の前記平均直径が、約50nm〜約200nmである、項目48に記載のナノ粒子。
(項目50)
前記ナノ粒子の前記平均直径が、約80nm〜約140nmである、項目49に記載のナノ粒子。
(項目51)
ゼータ電位の絶対値が約30mV未満である、項目21〜50のいずれか一項に記載のナノ粒子。
(項目52)
前記ゼータ電位の前記絶対値が約10mV未満である、項目51に記載のナノ粒子。
(項目53)
項目11〜20のいずれか一項に記載の複合体または項目21〜52のいずれか一項に記載のナノ粒子と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
(項目54)
静脈内、腫瘍内、動脈内、局所、眼内、眼科的、頭蓋内、髄腔内、小胞内、皮内、皮下、筋肉内、鼻腔内、気管内、肺、空洞内または経口投与用に製剤化される、項目53に記載の医薬組成物。
(項目55)
前記薬学的に許容される担体が、糖またはタンパク質である、項目53に記載の医薬組成物。
(項目56)
前記糖が、スクロース、グルコース、マンニトールおよびこれらの組合せからなる群から選択され、約5%〜約20%の濃度で前記医薬組成物中に存在する、項目55に記載の医薬組成物。
(項目57)
前記タンパク質がアルブミンである、項目55に記載の医薬組成物。
(項目58)
凍結乾燥される、項目53〜57のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目59)
項目21〜52のいずれか一項に記載のナノ粒子を調製する方法であって、
a)項目1〜10のいずれか一項に記載のペプチドを含む組成物を、前記カーゴ分子を含む組成物と併せて混合物を形成するステップ、および
b)前記混合物をインキュベートして前記ナノ粒子を形成するステップ
を含む方法。
(項目60)
個体の疾患を処置する方法であって、有効量の項目53〜57のいずれか一項に記載の医薬組成物を前記個体に投与するステップを含む方法。
(項目61)
前記疾患が、がん、糖尿病、炎症性疾患、線維症、ウイルス感染性疾患、遺伝性疾患、ならびに老齢および変性疾患からなる群から選択される、項目60に記載の方法。
(項目62)
前記疾患が、がんである、項目61に記載の方法。
(項目63)
前記がんが、固形腫瘍であり、前記医薬組成物が、増殖因子およびサイトカイン、細胞表面受容体、シグナル伝達分子およびキナーゼ、転写因子および転写の他の調節因子、タンパク質発現および修飾の制御因子ならびにアポトーシスおよび転移の制御因子からなる群から選択される1つまたは複数のタンパク質の発現を調節する、項目62に記載の方法。
(項目64)
前記1つまたは複数のタンパク質のうちの1つが、EGF、VEGF、FGF、HGF、HDGF、IGF、PDGF、TGF−α、TGF−β、TNF−αおよびwntからなる群から選択される増殖因子またはサイトカインである、項目63に記載の方法。
(項目65)
前記1つまたは複数のタンパク質のうちの1つが、ER、PR、Her2、Her3、アンジオポエチン受容体、EGFR、FGFR、HGFR、HDGFR、IGFR、KGFR、MSFR、PDGFR、TGFR、VEGFR1、VEGFR2、VEGFR3、Frizzledファミリー受容体(FZD−1〜10)、Smoothened、PatchedおよびCXCR4からなる群から選択される細胞表面受容体である、項目63に記載の方法。
(項目66)
前記1つまたは複数のタンパク質のうちの1つが、KRAS、NRAS、RAF、MEK、MEKK、MAPK、MKK、ERK、JNK、JAK、PKA、PKC、PI3K、Akt、mTOR、Raptor、Rictor、MLST8、PRAS40、DEPTOR、MSIN1、S6キナーゼ、PDK1、BRAF、FAK、Src、Fyn、Shc、GSK、IKK、PLK−1、サイクリン依存性キナーゼ(Cdk1〜13)、CDK活性化キナーゼ、ALK/Met、Syk、BTK、Bcr−Abl、RET、β−カテニン、Mcl−1およびPKN3からなる群から選択されるシグナル伝達分子またはキナーゼである、項目63に記載の方法。
(項目67)
前記1つまたは複数のタンパク質のうちの1つが、ATF−2、Chop、c−Jun、c−Myc、DPC4、Elk−1、Ets1、Max、MEF2C、NFAT4、Sap1a、STAT、Tal、p53、CREB、Myc、NF−κB、HDAC、HIF−1αおよびRRM2からなる群から選択される転写因子または転写の他の調節因子である、項目63に記載の方法。
(項目68)
前記1つまたは複数のタンパク質のうちの1つが、ユビキチンリガーゼ、LMP2、LMP7およびMECL−1からなる群から選択される、タンパク質発現または修飾の制御因子である、項目63に記載の方法。
(項目69)
前記1つまたは複数のタンパク質のうちの1つが、XIAP、Bcl−2、オステオポンチン、SPARC、MMP−2、MMP−9、uPARからなる群から選択される、アポトーシスまたは転移の制御因子である、項目63に記載の方法。
(項目70)
前記がんが、固形腫瘍であり、前記医薬組成物が、腫瘍形成および/または進行に関与する1つまたは複数のタンパク質をコードする核酸を含む、項目62に記載の方法。
(項目71)
腫瘍形成および/または進行に関与する前記1つまたは複数のタンパク質が、IL−2、IL−12、インターフェロン−ガンマ、GM−CSF、B7−1、カスパーゼ−9、p53、MUC−1、MDR−1、HLA−B7/ベータ2−ミクログロブリン、Her2、Hsp27、チミジンキナーゼおよびMDA−7からなる群から選択される、項目70に記載の方法。
(項目72)
前記がんが、血液学的悪性腫瘍であり、前記医薬組成物が、血液学的悪性腫瘍の発症および/または進行に関与する1つまたは複数のタンパク質の発現を調節する、項目62に記載の方法。
(項目73)
血液学的悪性腫瘍の発症および/または進行に関与する前記1つまたは複数のタンパク質が、GLI1、CTNNB1、eIF5A、変異型DDX3X、ヘキソキナーゼII、ヒストンメチルトランスフェラーゼEZH2、ARK5、ALK、MUC1、HMGA2、IRF1、RPN13、HDAC11、Rad51、Spry2、mir−146a、mir−146b、サバイビン、MDM2、MCL1、CMYC、XBP1(スプライス型および非スプライス型)、SLAMF7、CS1、Erbb4、Cxcr4(ワルデンストレームマクログロブリン血症)、Myc、Bcl2、Prdx1およびPrdx2(バーキットリンパ腫)、Bcl6、Idh1、Idh2、Smad、Ccnd2、サイクリンd1〜2、B7−h1(pdl−1)およびPyk2からなる群から選択される、項目72に記載の方法。
(項目74)
前記疾患が、ウイルス感染症であり、前記医薬組成物が、前記ウイルス感染性疾患の発症および/または進行に関与する1つまたは複数のタンパク質の発現を調節する、項目61に記載の方法。
(項目75)
前記ウイルス感染性疾患の発症および/または進行に関与する前記1つまたは複数のタンパク質が、RSVヌクレオカプシド、Pre−gen/Pre−C、Pre−S1、Pre−S2/S、X、HBV保存配列、HIV Tat、HIV TAR RNA、ヒトCCR5、miR−122、EBOVポリメラーゼL、VP24、VP40、GP/sGP、VP30、VP35、NPC1およびTIM−1からなる群から選択される、項目74に記載の方法。
(項目76)
前記疾患が、遺伝性疾患であり、前記医薬組成物が、前記遺伝性疾患の発症および/または進行に関与する1つまたは複数のタンパク質の発現を調節する、項目61に記載の方法。
(項目77)
前記遺伝性疾患の発症および/または進行に関与する前記1つまたは複数のタンパク質が、トランスサイレチン、MDS1−EVI1、PRDM16、SETBP1、β−グロビンおよびLPLからなる群から選択される、項目76に記載の方法。
(項目78)
前記疾患が、老齢または変性疾患であり、前記医薬組成物が、前記老齢または変性疾患の発症および/または進行に関与する1つまたは複数のタンパク質の発現を調節する、項目61に記載の方法。
(項目79)
前記老齢または変性疾患の発症および/または進行に関与する前記1つまたは複数のタンパク質が、ケラチンK6A、ケラチンK6B、ケラチン16、ケラチン17、p53、β−2アドレナリン受容体(ADRB2)、TRPV1、VEGF、VEGFR、HIF−1およびカスパーゼ−2からなる群から選択される、項目78に記載の方法。
(項目80)
前記疾患が、線維性または炎症性疾患であり、前記医薬組成物が、前記線維性または炎症性疾患の発症および/または進行に関与する2つまたはそれ超のタンパク質の発現を調節する、項目61に記載の方法。
(項目81)
前記線維性または炎症性疾患の発症および/または進行に関与する前記2つまたはそれ超のタンパク質が、SPARC、CTGF、TGFβ1、TGFβ受容体1、TGFβ受容体2、TGFβ受容体3、VEGF、アンジオテンシンII、TIMP、HSP47、トロンボスポンジン、CCN1、LOXL2、MMP2、MMP9、CCL2、アデノシン受容体A2A、アデノシン受容体A2B、アデニリルシクラーゼ、Smad 3、Smad 4、Smad 7、SOX9、アレスチン、PDCD4、PAI−1、NF−κBおよびPARP−1からなる群から選択される、項目80に記載の方法。
(項目82)
前記個体がヒトである、項目60〜81のいずれか一項に記載の方法。
(項目83)
分子を細胞に送達する方法であって、前記細胞を項目11〜20のいずれか一項に記載の複合体または項目21〜52のいずれか一項に記載のナノ粒子と接触させるステップを含み、前記複合体またはナノ粒子が前記分子を含む、方法。
(項目84)
前記細胞の前記ナノ粒子との前記接触が、in vivoで行われる、項目83に記載の方法。
(項目85)
前記細胞の前記ナノ粒子との前記接触が、ex vivoで行われる、項目83に記載の方法。
(項目86)
前記細胞の前記ナノ粒子との前記接触が、in vitroで行われる、項目83に記載の方法。
(項目87)
前記細胞が、顆粒球、マスト細胞、単球、樹状細胞、B細胞、T細胞、またはナチュラルキラー細胞である、項目83〜86のいずれか一項に記載の方法。
(項目88)
前記細胞がT細胞である、項目87に記載の方法。
(項目89)
前記分子が、標的抗原と特異的に結合する細胞外抗原結合ドメインと、膜貫通ドメインと、細胞内シグナル伝達ドメインとを含むキメラ抗原受容体をコードするプラスミドである、項目87または88に記載の方法。
(項目90)
前記標的抗原が、がん関連抗原である、項目89に記載の方法。
(項目91)
前記複合体またはナノ粒子が、siRNAをさらに含む、項目89または90に記載の方法。
(項目92)
前記細胞を項目11〜20のいずれか一項に記載の複合体または項目21〜52のいずれか一項に記載のナノ粒子と接触させるステップをさらに含み、前記複合体またはナノ粒子がsiRNAを含む、項目89または90に記載の方法。
(項目93)
前記siRNAが、PD−1、PD−L1、PD−L2、TIM−3、BTLA、VISTA、LAG−3またはCTLA−4をコードするRNA分子を特異的に標的化する、項目91または92に記載の方法。
(項目94)
前記分子がsiRNAである、項目83〜88のいずれか一項に記載の方法。
(項目95)
個体の疾患を処置する方法であって、
a)項目83〜94のいずれか一項に記載の方法に従って分子を細胞に送達することによって、前記分子を含む改変細胞を産生するステップであって、前記改変細胞が前記疾患の処置に有用である、ステップ、および
b)前記改変細胞を前記個体に投与するステップ
を含む方法。
(項目96)
前記改変細胞が、静脈内、動脈内、腹腔内、小胞内、皮下、髄腔内、肺内、筋肉内、気管内、眼内、経皮、経口または吸入経路によって投与される、項目95に記載の方法。
(項目97)
前記疾患が、がんである、項目95または96に記載の方法。
(項目98)
前記個体がヒトである、項目95〜97のいずれか一項に記載の方法。
(項目99)
核酸を安定化する方法であって、
a)項目1〜10のいずれか一項に記載のペプチドを含む組成物を、前記核酸を含む組成物と併せて混合物を形成するステップ、および
b)前記混合物をインキュベートして、前記核酸を含む複合体を形成するステップ
を含む方法。
(項目100)
項目1〜10のいずれか一項に記載のペプチドを含む組成物と、項目11〜20のいずれか一項に記載の複合体および/または項目21〜52のいずれか一項に記載のナノ粒子を調製するための説明書とを含むキット。
(項目101)
ペプチド、タンパク質、抗体、脂質、リン脂質、ポリマー、アプタマー、ナノ粒子、リポソーム、デンドリマー、ポリメロソーム、ウイルスベクター、およびミセルからなる群から選択される集合分子を含む組成物をさらに含む、項目100に記載のキット。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1A図1Aは、ペプチド/siRNA粒子によるHeLa細胞内へのGAPDH siRNAのin vitro送達を示す図である。左から右へ各実験群についての柱は、それぞれ、0nM、10nM、20nM、50nM、80nM、100nM、150nMおよび200nMのsiRNA濃度に対応する。
【0035】
図1B図1Bは、ペプチド/siRNA粒子によるJurkat細胞内へのGAPDH siRNAのin vitro送達を示す図である。左から右へ各実験群についての柱は、それぞれ、0nM、10nM、20nM、50nM、80nM、100nM、150nMおよび200nMのsiRNA濃度に対応する。
【0036】
図2図2は、in vitro線維症モデルをシミュレートするための、in vitroでの初代ヒト線維芽細胞株におけるペプチド/SPARC siRNA複合体の利用を示す図である。
【0037】
図3A図3Aは、MTTアッセイによるHela細胞に対するADGNペプチドおよびペプチド/siRNA複合体の毒性の評価を示す図である。左から右へ各濃度についての柱は、それぞれ、対照、ADGN−100、ADGN−100/siRNA(1:20)、およびADGN−100/siRNA(1:40)に対応する。
【0038】
図3B図3Bは、シクロフィリン(cyclophin)mRNAレベルによるHelaおよびJurkat細胞に対するADGNペプチドおよびペプチド/siRNA複合体の毒性の評価を示す図である。上から下へ5μMペプチド濃度の線は、それぞれ、ADGN−100/siRNA(1:40)、対照、ADGN−100(1:20)、およびADGN−100に対応する。
【0039】
図4図4は、ADGNペプチド/サイクリンB1 siRNA複合体の静脈内投与によるHT−29腫瘍増殖の阻害を示す図である。上から下へ51日での線は、それぞれ、対照siRNA、PBS、Cyc−B1(5μg)、およびCycB1(10μg)に対応する。
【0040】
図5図5は、ADGNペプチド/サイクリンB1、ADGNペプチド/cdc20、または組合せADGNペプチド/サイクリンB1/cdc20 siRNA複合体の静脈内投与による、HT−29腫瘍増殖の阻害を示す図である。上から下へ48日での線は、それぞれ、対照siRNA、PBS、Cdc20(5μg)、Cyc−B1(5μg)、およびCyc−B1/Cdc20に対応する。
【0041】
図6A図6Aは、ADGN−100/siRNA複合体の単回静脈内注射後、様々な間隔でのAlexa700標識siRNA生体内分布のin vivoイメージングを示す図である。
【0042】
図6B図6Bは、ADGN−100/siRNA複合体の単回皮下注射後、様々な間隔でのAlexa700標識siRNA生体内分布のin vivoイメージングを示す図である。
【0043】
図7A図7Aは、BALB/cマウスにおけるADGN−100/siRNA複合体の単回静脈内注射後、様々な間隔でのAlexa700標識siRNAの組織内分布を示す図である。
【0044】
図7B図7Bは、HT−29担腫瘍マウスにおけるADGN−100/siRNA複合体の単回静脈内注射後、様々な間隔でのAlexa700標識siRNAの組織内分布を示す図である。
【0045】
図7C図7Cは、HT−29担腫瘍マウスにおけるADGN−100/siRNA複合体の単回皮下注射後、様々な間隔でのAlexa700標識siRNAの組織内分布を示す図である。
【0046】
図8A図8Aは、ADGN−100/siRNA複合体の静脈内または皮下注射後の相対第VII因子活性を示す図である。比較のためにネイキッドsiRNAの注射を含めた。
【0047】
図8B図8Bは、すべての処置群のマウスについての体重の安定性を示す図である。
【0048】
図9図9は、ADGN−100、VEPEP−9、リポフェクタミン、または担体なし(遊離プラスミド)によって媒介されたトランスフェクション後のT細胞株におけるルシフェラーゼレポーターの発現を示す図である。
【0049】
図10図10は、ADGN−100またはVEPEP−9と複合体化しているYFPレポーターをトランスフェクトした293TおよびK562細胞株のフローサイトメトリー分析を示す図である。
【0050】
図11図11は、ADGN−100によって媒介されたトランスフェクション後の293TまたはK562細胞におけるYFPレポーターの発現を経時的に示す図である。
【0051】
図12A図12Aは、ADGN−100によって媒介されたトランスフェクション後にYFPレポーターを安定的に発現する293T細胞の蛍光顕微鏡観察を示す図である。
【0052】
図12B図12Bは、ADGN−100によって媒介されたトランスフェクション後にYFPレポーターを安定的に発現する293T細胞のフローサイトメトリー分析を示す図である。
【0053】
図13図13は、20:1および30:1のモル比でのADGN−100/抗CD−19 CARベクター複合体の初代T細胞におけるトランスフェクション効率を示す図である。結果を非トランスフェクション細胞に対し正規化した。
【0054】
図14図14は、7−AADを使用してフローサイトメトリーによってアッセイした、ADGN−100/抗CD−19 CARベクター複合体をトランスフェクションした後の初代T細胞の生存率を示す図である。結果を非トランスフェクション細胞に対し正規化した。
【0055】
図15図15は、ヘリックス、ならびに芳香族パッチおよび静電パッチの位置を明らかにする、ADGN−100、CADY、VEPEP−6およびVEPEP−9ペプチドの3次元構造モデルを示す図である。
【0056】
図16図16は、MTTアッセイによるHela細胞に対するADGN、CADY、VEPEP−6およびVEPEP−9ペプチドならびにペプチド/siRNA複合体の毒性の評価を示す図である。上から下へ20μMペプチド濃度の線は、それぞれ、ADGN−100/siRNA、CADY/siRNA、対照、VEPEP−6/siRNA、VEPEP−9/siRNA、ADGN−100、CADY、VEPEP−6、VEPEP−9に対応する。
【0057】
図17図17は、ADGNおよびVEPEP−6ペプチドによるmiRNA送達のin vitroでの比較を示す図である。
【0058】
図18図18は、ADGN、VEPEP−6およびVEPEP−9ペプチドによるsiRNA送達のin vivoでの比較を示す図である。上から下へ51日での線は、それぞれ、対照siRNA、PBS、VEPEP−9/Cyc−B1、VEPEP−6/Cyc−B1、およびADGN/Cyc−B1に対応する。
【発明を実施するための形態】
【0059】
発明の詳細な説明
本出願は、核酸などのカーゴ分子の安定化および送達に好適な新規ペプチド(本明細書では「ADGNペプチド」と呼ぶ)を提供する。ADGNペプチドは、いずれの既知の細胞透過性ペプチドとも配列相同性が低い、二次両親媒性ペプチドを含む。各々が複数の短いヘリックスモチーフを含有する、CADYおよびVEPEP−6などの既知の細胞透過性ペプチドとは異なり、ADGNペプチドは、単一コアヘリックスモチーフを含有する。このヘリックスモチーフは、1つの側面にSまたはR残基および他の側面にW残基を露出しており、以前に報告されたものとは有意に異なる表面を形成する。注目に値することとして、ADGNペプチドとカーゴ分子で形成される複合体(例えば、ナノ粒子)は、より低い正味残基正電荷を含有する(例えば、中性に近い)。さらに、高い正味残基正電荷が細胞透過には必要であるという一般的理解にもかかわらず、ADGNペプチドは、既知の細胞透過性ペプチドと比較してカーゴ送達の有効性の向上を示した。ADGN技術は、遺伝子送達と、siRNAまたはアンチセンス分子などの小さいオリゴヌクレオチドの細胞内取り込みの両方を促進することによって、T細胞工学のための強力な非ウイルス性送達システムを構成する。ADGN技術は、ウイルスベクターより複雑でなく、毒性が低く、使用が容易である。
【0060】
したがって、本出願は、一態様では、より詳細に下でさらに説明する新規ADGNペプチドを提供する。
【0061】
別の態様では、ADGNペプチドを使用することにより、カーゴ分子を安定化する方法およびカーゴ分子を送達する方法が提供される。
【0062】
別の態様では、ADGNペプチドとカーゴ分子とを含む複合体またはナノ粒子が提供される。
【0063】
ADGNペプチドとカーゴ分子とを(例えば、複合体およびナノ粒子の形態で)含む医薬組成物、および疾患を処置するためのそれらの使用も提供される。
【0064】
本明細書において使用する場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、別段の指示がない限り、複数の言及対象を包含する。
【0065】
本明細書における「約」値またはパラメーターへの言及は、その値またはパラメーター自体に関する実施形態を含む(および記載する)。例えば、「約X」に言及する記載は、「X」の記載を含む。
【0066】
本発明の組成物および方法は、本明細書に記載する本発明の本質的要素および制限はもちろん、本明細書に記載するまたは別様に有用なあらゆる追加のまたは任意選択の成分、構成要素、または制限を含んでもよく、これらからなっていてもよく、またはこれらから本質的になっていてもよい。
【0067】
別段の断り書きがない限り、専門用語を従来の用法に従って使用する。
本発明のペプチド
【0068】
本発明は、小さいオリゴヌクレオチドまたはプラスミドDNAなどの様々なカーゴ分子と安定した複合体およびナノ粒子を形成することができるADGNペプチドを提供する。
【0069】
一部の実施形態では、次のアミノ酸配列を含むペプチド(例えば、天然に存在しないペプチド)が提供される:
KWRSXRWRLWRXSR(配列番号1)(配列中、
は、任意のアミノ酸であるか、存在せず、
〜Xは、任意のアミノ酸である)。
【0070】
一部の実施形態では、配列XKWRSXRWRLWRXSR(配列番号1)を有するペプチドの部分は、単一コアヘリックスモチーフを形成する。一部の実施形態では、配列XKWRSXRWRLWRXSR(配列番号1)を有するペプチドの部分は、ヘリックス構造であって、SまたはR残基が同じ側面にあり、W残基が他の側面にあり、静電接触部およびそのヘリックスの他の側面の疎水性接触部のパッチを形成する、ヘリックス構造を形成する。一部の実施形態では、ペプチドは、VEPEP−6またはCADY細胞透過性ペプチドと比べて低減された毒性を有する。一部の実施形態では、ペプチドは、長さが19または20アミノ酸である。一部の実施形態では、ペプチドは、長さが約50、45、40、35、30、25または20アミノ酸のいずれか以下である。一部の実施形態では、ペプチドは、長さが約50、100、200、300、400、500、1000またはそれ超のアミノ酸のいずれか以上である。一部の実施形態では、ペプチドはL−アミノ酸を含む。一部の実施形態では、ペプチドはD−アミノ酸を含む。
【0071】
一部の実施形態では、ペプチドは、次のアミノ酸配列を含む:
KWRSXRWRLWRXSR(配列番号1)(配列中、
は、βAであるか、Sであるか、存在せず、
は、AまたはVであり、
は、GまたはLであり、
は、WまたはYであり、
は、VまたはSであり、
は、R、VまたはAであり、
は、SまたはLであり、
は、WまたはYである)。
【0072】
一部の実施形態では、ペプチドは、
a)KWRSAGWRWRLWRVRSWSR(配列番号2)、
b)KWRSALYRWRLWRSRSWSR(配列番号3)、または
c)KWRSALYRWRLWRSALYSR(配列番号4)のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ペプチドは、配列番号3のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列を含む。
【0073】
一部の実施形態では、ペプチドは、
KWRSAGWRWRLWRVRSWSR(配列番号5)
(配列中、Xは、βAであるか、Sであるか、存在しない)のアミノ酸配列を含む。
【0074】
一部の実施形態では、ペプチドは、
a)1つまたは複数のSRモチーフ、
b)1つまたは複数のWまたはY残基、および
c)R残基
からなる群から選択される1つまたは複数の特徴を有する。
【0075】
一部の実施形態では、ペプチドは、溶液中で遊離しているとき、大半が折り畳まれていない状態のままである。一部の実施形態では、ペプチドは、カーゴ分子の存在下で少なくとも部分的なヘリックス構造をとることができる。一部の実施形態では、ヘリックス構造は、ヘリックス、例えば、これに限定されないがα−ヘリックスである。一部の実施形態では、ペプチドは、その長さの約50%超(例えば、約55%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、および95%のいずれか超)にわたってヘリックス構造をとる。一部の実施形態では、ヘリックス構造は、ペプチドのコアモチーフ内に主として位置し、コアモチーフは、アミノ酸配列RWRLWRXSR(配列番号6)であり、配列中、Xは、VまたはSであり、Xは、R、VまたはAであり、Xは、SまたはLであり、XはWまたはYである。一部の実施形態では、ペプチドは、単一ヘリックスモチーフを含む。一部の実施形態では、単一ヘリックスモチーフは、コアモチーフ内にある。一部の実施形態では、ヘリックス構造は、SおよびR残基のうちの少なくとも2つ(例えば、少なくとも3、4、5、6、7または8つのいずれか)がヘリックス構造の1つの側面にあり、W残基のうちの少なくとも1つ(例えば、少なくとも2、3、4または5つのいずれか)がそのヘリックス構造の反対側にあるように構成される。一部の実施形態では、SおよびR残基の大多数は、ヘリックス構造の1つの側面にあり、W残基の大多数は、そのヘリックス構造の反対側にある。一部の実施形態では、SおよびR残基のすべてがヘリックス構造の1つの側面にあり、W残基のすべてがそのヘリックス構造の反対側にある。一部の実施形態では、ヘリックス構造は、静電接触部のパッチがそのヘリックス構造の1つの側面に形成され、疎水性接触部のパッチがそのヘリックス構造の他の側面に形成されるように構成される。一部の実施形態では、ペプチドは、カーゴ分子の存在下で単一ヘリックスをとる。
【0076】
一部の実施形態では、ペプチドは、カーゴ分子と複合体化された場合、同じカーゴ分子と複合体化された、以前に記載されたCPP(例えば、CADYまたはVEPEP−6)より低い正味残基正電荷を有する。一部の実施形態では、ペプチドは、カーゴ分子と複合体化された場合、同じカーゴ分子と複合体化された、以前に記載されたCPPの正味残基正電荷の約80%未満(例えば、約70%、60%、50%、40%、30%または20%のいずれか未満)の正味残基正電荷を有する。一部の実施形態では、以前に記載されたCPPは、CADYまたはVEPEP−6である。
【表1】
【0077】
一部の実施形態では、ADGNペプチドは、該ペプチドのN末端に結合している1つまたは複数の部分をさらに含む。一部の実施形態では、1つまたは複数の部分は、ペプチドのN末端に共有結合している。一部の実施形態では、1つまたは複数の部分は、アセチル基、ステアリル基、脂肪酸、コレステロール、ポリエチレングリコール、核局在シグナル、核外移行シグナル、抗体またはその抗体断片、ペプチド、多糖類、および標的化分子からなる群から選択される。一部の実施形態では、1つまたは複数の部分は、アセチル基および/またはステアリル基である。一部の実施形態では、ペプチドは、そのN末端に結合しているアセチル基および/またはステアリル基を含む。一部の実施形態では、ペプチドは、そのN末端に結合しているアセチル基を含む。一部の実施形態では、ペプチドは、そのN末端に結合しているステアリル基を含む。一部の実施形態では、ペプチドは、そのN末端に共有結合しているアセチル基および/またはステアリル基を含む。一部の実施形態では、ペプチドは、そのN末端に共有結合しているアセチル基を含む。一部の実施形態では、ペプチドは、そのN末端に共有結合しているステアリル基を含む。
【0078】
一部の実施形態では、ADGNペプチドは、該ペプチドのC末端に結合している1つまたは複数の部分をさらに含む。一部の実施形態では、1つまたは複数の部分は、ペプチドのC末端に共有結合している。一部の実施形態では、1つまたは複数の部分は、システアミド基、システイン、チオール、アミド、ニトリロ三酢酸、カルボキシル基、直鎖状または分枝型C〜Cアルキル基、一級または二級アミン、オシディック誘導体、脂質、リン脂質、脂肪酸、コレステロール、ポリエチレングリコール、核局在シグナル、核外移行シグナル、抗体またはその抗体断片、ペプチド、多糖類、および標的化分子からなる群から選択される。一部の実施形態では、1つまたは複数の部分は、システアミド基である。一部の実施形態では、ペプチドは、そのC末端に結合しているシステアミド基を含む。一部の実施形態では、ペプチドは、そのC末端に共有結合しているシステアミド基を含む。
【0079】
一部の実施形態では、ADGNペプチドは、ステープル留めされている。本明細書において使用する「ステープル留めされている」は、ペプチド中の2残基間の化学結合を指す。一部の実施形態では、ADGNペプチドは、該ペプチドの2アミノ酸間に化学結合を含む形で、ステープル留めされている。一部の実施形態では、化学結合によって結合している2つのアミノ酸は、3または6つのアミノ酸によって隔てられている。一部の実施形態では、化学結合によって結合している2つのアミノ酸は、3つのアミノ酸によって隔てられている。一部の実施形態では、化学結合によって結合している2つのアミノ酸は、6つのアミノ酸によって隔てられている。一部の実施形態では、化学結合によって結合している2つのアミノ酸の各々は、RまたはSである。一部の実施形態では、化学結合によって結合している2つのアミノ酸の各々は、Rである。一部の実施形態では、化学結合によって結合している2つのアミノ酸の各々は、Sである。一部の実施形態では、化学結合によって結合している2つのアミノ酸の一方は、Rであり、他方はSである。一部の実施形態では、化学結合は、炭化水素結合である。
【0080】
一部の実施形態では、ADGNペプチドは、ステープル留めされており、
【化2】
のアミノ酸配列を含み、配列中、下付文字「S」の付いている残基は、炭化水素結合によって結合されている2つの残基である。
複合体およびナノ粒子
【0081】
一部の実施形態では、ADGNペプチドとカーゴ分子とを含む複合体が提供される。一部の実施形態では、複合体の平均サイズ(直径)は、約30nm〜約10ミクロンのいずれかの間であり、例えば、約50nm〜約1ミクロンの間、約50nm〜約400nmの間、約100nm〜約300nmの間、および約150nm〜約200nmの間を含む。一部の実施形態では、複合体中のペプチドのカーゴ分子に対するモル比は、約100:1〜約1:50の間であり、例えば、約50:1〜約1:20の間、約20:1〜約1:10の間、および約5:1〜約1:1の間を含む。一部の実施形態では、複合体は、実質的に非毒性である。一部の実施形態では、複合体は、複数のカーゴ分子を含む。一部の実施形態では、複合体は、所定の比率で存在する、複数のカーゴ分子を含む。一部の実施形態では、所定の比率は、より詳細に下で説明する方法のいずれかにおける複合体の最も有効な使用を可能にするように選択される。
【0082】
一部の実施形態では、複合体は、標的化部分を含む。一部の実施形態では、標的化部分は、ADGNペプチドに結合している。一部の実施形態では、標的化部分は、ADGNペプチドに共有結合している。一部の実施形態では、標的化部分は、複合体を組織または特定の細胞型に標的化する。一部の実施形態では、組織は、処置を必要とする組織である。一部の実施形態では、複合体は、該複合体のカーゴ分子によって処置することができる組織または細胞に該複合体を標的化する、標的化部分を含む。
【0083】
一部の実施形態では、ADGNペプチドとカーゴ分子とを含むナノ粒子が提供される。一部の実施形態では、ナノ粒子の平均サイズ(直径)は、約10nm〜約300nmであり、例えば、約50nm〜約200nm、約60nm〜約180nm、約80nm〜約140nm、および約90nm〜約120nmを含む。一部の実施形態では、ナノ粒子中のペプチドのカーゴ分子に対するモル比は、約100:1〜約1:50の間であり、例えば、約100:1〜約1:20の間、約90:1〜約1:10の間、約80:1〜約1:1の間、および約40:1〜約5:1を含む。一部の実施形態では、ナノ粒子のゼータ電位は、約−30mV〜約30mVであり、例えば、約−25mV〜約25mV、約−20mV〜約20mV、約−15mV〜約15mV、約−10mV〜約10mV、および約−5mV〜約10mVを含む。一部の実施形態では、ナノ粒子は、実質的に非毒性である。一部の実施形態では、ナノ粒子は、複数のカーゴ分子を含む。一部の実施形態では、ナノ粒子は、所定の比率で存在する複数のカーゴ分子を含む。一部の実施形態では、所定の比率は、より詳細に下で説明する方法のいずれかにおけるナノ粒子の最も有効な使用を可能にするように選択される。
【0084】
一部の実施形態では、ナノ粒子は、集合分子と複合体化されたカーゴ分子を含む。カーゴ分子と集合分子の複合体は、カーゴ分子と集合分子の間に共有結合性または非共有結合性相互作用を含むことがある。一部の実施形態では、集合分子と複合体化されたカーゴ分子は、ナノ粒子のコアを形成する。一部の実施形態では、集合分子は、ペプチド、タンパク質、抗体、脂質、リン脂質、ポリマー、アプタマー、ナノ粒子、リポソーム、デンドリマー、ポリメロソーム、ウイルスベクター、およびミセルからなる群から選択される。一部の実施形態では、ペプチドは、細胞透過性ペプチドである。一部の実施形態では、細胞透過性ペプチドは、上記のADGNペプチドである。一部の実施形態では、細胞透過性ペプチドは、上記のADGNペプチドではなく、PTDベースのペプチド、両親媒性ペプチド、ポリアルギニンベースのペプチド、MPGペプチド、CADYペプチド、VEPEPペプチド、Pep−1ペプチド、およびPep−2ペプチドを含むが、これらに限定されない。
【0085】
一部の実施形態では、ナノ粒子は、表面層をさらに含む。一部の実施形態では、表面層は、上記のADGNペプチドを含む。一部の実施形態では、表面層は、上記のADGNペプチドでない細胞透過性ペプチドを含む。一部の実施形態では、表面層は、ペプチドを含まない。一部の実施形態では、ナノ粒子は、該ナノ粒子のコアと表面層との間に中間層をさらに含む。一部の実施形態では、中間層は、上記のADGNペプチドを含む。一部の実施形態では、中間層は、上記のADGNペプチドでない細胞透過性ペプチドを含む。一部の実施形態では、ナノ粒子は、その表面に標的化部分を含む。一部の実施形態では、標的化部分は、ペプチドに結合している。一部の実施形態では、標的化部分は、ペプチドに共有結合している。一部の実施形態では、標的化部分は、ナノ粒子を組織または特定の細胞型に標的化する。一部の実施形態では、組織は、処置を必要とする組織である。一部の実施形態では、ナノ粒子は、その表面に、該ナノ粒子のカーゴ分子によって処置することができる組織または細胞に該ナノ粒子を標的化する標的化部分を含む。
【0086】
一部の実施形態では、カーゴ分子(例えば、少なくとも1、2、3、4、5またはそれ超のカーゴ分子)とペプチドとを含む複合体であって、ペプチドが、アミノ酸配列XKWRSXRWRLWRXSR(配列番号1)(配列中、Xは、任意のアミノ酸であるか、存在せず、X〜Xは、任意のアミノ酸である)を含む(例えば「から本質的になる」または「からなる」を包含する)、複合体が提供される。一部の実施形態では、核酸分子(例えば、少なくとも1、2、3、4、5またはそれ超の核酸分子)とペプチドとを含む複合体であって、ペプチドが、アミノ酸配列XKWRSXRWRLWRXSR(配列番号1)(配列中、Xは、任意のアミノ酸であるか、存在せず、X〜Xは、任意のアミノ酸である)を含む(「から本質的になる」または「からなる」を包含する)、複合体が提供される。一部の実施形態では、Xは、βAであるか、Sであるか、存在せず、Xは、AまたはVであり、Xは、GまたはLであり、Xは、WまたはYであり、Xは、VまたはSであり、Xは、R、VまたはAであり、Xは、SまたはLであり、Xは、WまたはYである。一部の実施形態では、KWRSAGWRWRLWRVRSWSR(配列番号2)、KWRSALYRWRLWRSRSWSR(配列番号3)、またはKWRSALYRWRLWRSALYSR(配列番号4)のアミノ酸配列を含む、天然に存在しないペプチドが提供される。一部の実施形態では、複合体中のカーゴ分子のペプチドに対するモル比は、約1:10〜約1:40(例えば、約1:20または約1:40)である。
【0087】
一部の実施形態では、ナノ粒子を含む組成物であって、ナノ粒子が、カーゴ分子(例えば、少なくとも1、2、3、4、5またはそれ超のカーゴ分子)およびペプチドを含み、ペプチドが、アミノ酸配列XKWRSXRWRLWRXSR(配列番号1)(配列中、Xは、任意のアミノ酸であるか、存在せず、X〜Xは、任意のアミノ酸である)を含む(例えば、「から本質的になる」または「からなる」を包含する)、組成物が提供される。一部の実施形態では、ナノ粒子を含む組成物であって、ナノ粒子が、核酸分子(例えば、少なくとも1、2、3、4、5またはそれ超の核酸分子)およびペプチドを含み、ペプチドが、アミノ酸配列XKWRSXRWRLWRXSR(配列番号1)(配列中、Xは、任意のアミノ酸であるか、存在せず、X〜Xは、任意のアミノ酸である)を含む(「から本質的になる」、または「からなる」を包含する)、組成物が提供される。一部の実施形態では、Xは、βAであるか、Sであるか、存在せず、Xは、AまたはVであり、Xは、GまたはLであり、Xは、WまたはYであり、Xは、VまたはSであり、Xは、R、VまたはAであり、Xは、SまたはLであり、Xは、WまたはYである。一部の実施形態では、KWRSAGWRWRLWRVRSWSR(配列番号2)、KWRSALYRWRLWRSRSWSR(配列番号3)、またはKWRSALYRWRLWRSALYSR(配列番号4)のアミノ酸配列を含む、天然に存在しないペプチドが提供される。一部の実施形態では、ナノ粒子中のカーゴ分子のペプチドに対するモル比は、約1:10〜約1:40(例えば、約1:20または約1:40)である。一部の実施形態では、組成物中のナノ粒子の平均直径は、約130nm以下である。一部の実施形態では、組成物中のナノ粒子の絶対ゼータ電位は、約10mV以下である。一部の実施形態では、組成物中のナノ粒子の多分散性は、約1.5以下である。
【0088】
ナノ粒子が、カーゴ分子(例えば、少なくとも1、2、3、4、5またはそれ超のカーゴ分子)および集合分子を含むa)コアを含み、コアが、b)ペプチドで被覆されており、ペプチドが、アミノ酸配列XKWRSXRWRLWRXSR(配列番号1)(配列中、Xは、任意のアミノ酸であるか、存在せず、X〜Xは、任意のアミノ酸である)を含む(例えば、「から本質的になる」、または「からなる」を包含する)、組成物が提供される。一部の実施形態では、ナノ粒子を含む組成物であって、ナノ粒子が、核酸分子(例えば、少なくとも1、2、3、4、5またはそれ超の核酸分子)およびペプチドを含み、ペプチドが、アミノ酸配列XKWRSXRWRLWRXSR(配列番号1)(配列中、Xは、任意のアミノ酸であるか、存在せず、X〜Xは、任意のアミノ酸である)を含む(「から本質的になる」、または「からなる」を包含する)、組成物が提供される。一部の実施形態では、Xは、βAであるか、Sであるか、存在せず、Xは、AまたはVであり、Xは、GまたはLであり、Xは、WまたはYであり、Xは、VまたはSであり、Xは、R、VまたはAであり、Xは、SまたはLであり、Xは、WまたはYである。一部の実施形態では、KWRSAGWRWRLWRVRSWSR(配列番号2)、KWRSALYRWRLWRSRSWSR(配列番号3)、またはKWRSALYRWRLWRSALYSR(配列番号4)のアミノ酸配列を含む、天然に存在しないペプチドが提供される。一部の実施形態では、ナノ粒子中のカーゴ分子のペプチドに対するモル比は、約1:10〜約1:40(例えば、約1:20または約1:40)である。一部の実施形態では、組成物中のナノ粒子の平均直径は、約130nm以下である。一部の実施形態では、組成物中のナノ粒子の絶対ゼータ電位は、約10mV以下である。一部の実施形態では、組成物中のナノ粒子の多分散性は、約1.5以下である。一部の実施形態では、集合分子は、細胞透過性ペプチドである。
【0089】
一部の実施形態では、ナノ粒子を含む組成物であって、ナノ粒子が、a)カーゴ分子(例えば、少なくとも1、2、3、4、5またはそれ超のカーゴ分子)および集合分子を含むコアを含み、コアが、b)ペプチドで被覆されており、ペプチドが、アミノ酸配列XKWRSXRWRLWRXSR(配列番号1)(配列中、Xは、任意のアミノ酸であるか、存在せず、X〜Xは、任意のアミノ酸である)を含む(例えば、「から本質的になる」、または「からなる」を包含する)、組成物が提供される。一部の実施形態では、ナノ粒子を含む組成物であって、ナノ粒子が、核酸分子(例えば、少なくとも1、2、3、4、5またはそれ超の核酸分子)およびペプチドを含み、ペプチドが、アミノ酸配列XKWRSXRWRLWRXSR(配列番号1)(配列中、Xは、任意のアミノ酸であるか、存在せず、X〜Xは、任意のアミノ酸である)を含む(「から本質的になる」、または「からなる」を包含する)、組成物が提供される。一部の実施形態では、Xは、βAであるか、Sであるか、存在せず、Xは、AまたはVであり、Xは、GまたはLであり、Xは、WまたはYであり、Xは、VまたはSであり、Xは、R、VまたはAであり、Xは、SまたはLであり、Xは、WまたはYである。一部の実施形態では、KWRSAGWRWRLWRVRSWSR(配列番号2)、KWRSALYRWRLWRSRSWSR(配列番号3)、またはKWRSALYRWRLWRSALYSR(配列番号4)のアミノ酸配列を含む、天然に存在しないペプチドが提供される。一部の実施形態では、ナノ粒子中のカーゴ分子のペプチドに対するモル比は、約1:10〜約1:40(例えば、約1:20または約1:40)である。一部の実施形態では、組成物中のナノ粒子の平均直径は、約150nm以下である。一部の実施形態では、組成物中のナノ粒子の絶対ゼータ電位は、約10mV以下である。一部の実施形態では、組成物中のナノ粒子の多分散性は、約1.5以下である。一部の実施形態では、集合分子は、細胞透過性ペプチド(例えば、CADYまたはVEPEP−6)である。一部の実施形態では、集合分子は、アミノ酸配列XKWRSXRWRLWRXSR(配列番号1)(配列中、Xは、任意のアミノ酸であるか、存在せず、X〜Xは、任意のアミノ酸である)を含む(例えば、「から本質的になる」または「からなる」を包含する)ペプチドである。コアにおける集合分子は、被覆層中のペプチドと同じであってもよく、または異なってもよい。
【0090】
一部の実施形態では、ナノ粒子を含む組成物であって、ナノ粒子が、a)カーゴ分子(例えば、少なくとも1、2、3、4、5またはそれ超のカーゴ分子)およびペプチドを含むコアを含み、コアが、b)表面層で被覆されており、ペプチドが、アミノ酸配列XKWRSXRWRLWRXSR(配列番号1)(配列中、Xは、任意のアミノ酸であるか、存在せず、X〜Xは、任意のアミノ酸である)を含む(例えば、「から本質的になる」または「からなる」を包含する)、組成物が提供される。一部の実施形態では、ナノ粒子を含む組成物であって、ナノ粒子が、核酸分子(例えば、少なくとも1、2、3、4、5またはそれ超の核酸分子)およびペプチドを含み、ペプチドが、アミノ酸配列XKWRSXRWRLWRXSR(配列番号1)(配列中、Xは、任意のアミノ酸であるか、存在せず、X〜Xは、任意のアミノ酸である)を含む(「から本質的になる」、または「からなる」を包含する)、組成物が提供される。一部の実施形態では、Xは、βAであるか、Sであるか、存在せず、Xは、AまたはVであり、Xは、GまたはLであり、Xは、WまたはYであり、Xは、VまたはSであり、Xは、R、VまたはAであり、Xは、SまたはLであり、Xは、WまたはYである。一部の実施形態では、KWRSAGWRWRLWRVRSWSR(配列番号2)、KWRSALYRWRLWRSRSWSR(配列番号3)、またはKWRSALYRWRLWRSALYSR(配列番号4)のアミノ酸配列を含む、天然に存在しないペプチドが提供される。一部の実施形態では、ナノ粒子中のカーゴ分子のペプチドに対するモル比は、約1:10〜約1:40(例えば、約1:20または約1:40)である。一部の実施形態では、組成物中のナノ粒子の平均直径は、約130nm以下である。一部の実施形態では、組成物中のナノ粒子の絶対ゼータ電位は、約10mV以下である。一部の実施形態では、組成物中のナノ粒子の多分散性は、約1.5以下である。一部の実施形態では、表面層は、細胞透過性ペプチド(例えば、CADYまたはVEPEP−6)を含む。
【0091】
一部の実施形態では、上記の複合体またはナノ粒子は標的化部分を含み、標的化部分は、細胞特異的および/または核標的化が可能なリガンドである。細胞膜表面受容体および/または細胞表面マーカーは、前記リガンドに高い親和性でおよび好ましくは高い特異性で結合することができる、分子または構造である。前記細胞膜表面受容体および/または細胞表面マーカーは、好ましくは、特定の細胞に特異的である、すなわち、別の型の細胞においてではなく1つの型の細胞において主として見いだされる(例えば、肝細胞の表面のアシアロ糖タンパク質受容体を標的とするガラクトシル残基)。細胞膜表面受容体は、リガンド(例えば、標的化部分)および結合分子(例えば、本発明の複合体またはナノ粒子)の細胞標的化および標的細胞への内在化を助ける。本発明に関して使用されうる多数のリガンド部分/リガンド結合パートナーは、文献に広く記載されている。そのようなリガンド部分は、所与の結合パートナー分子または少なくとも1つの標的細胞の表面に局在する結合パートナー分子のクラスと結合する能力を本発明の複合体またはナノ粒子に付与することができる。好適な結合パートナー分子は、細胞特異的マーカー、組織特異的マーカー、細胞受容体、ウイルス抗原、抗原性エピトープおよび腫瘍関連マーカーからなる群から選択されるポリペプチドを限定ではないが含む。結合パートナー分子は、さらに、1つまたは複数の糖、脂質、糖脂質または抗体分子からなることもあり、これらの分子を含むこともある。本発明によれば、リガンド部分は、例えば、脂質、糖脂質、ホルモン、糖、ポリマー(例えば、PEG、ポリリシン、PET)、オリゴヌクレオチド、ビタミン、抗原、レクチンのすべてもしくは一部、例えばJTS1(WO94/40958)などのポリペプチドのすべてもしくは一部、抗体もしくはその断片、またはそれらの組合せでありうる。一部の実施形態では、本発明において使用されるリガンド部分は、7アミノ酸の最小長を有するペプチドまたはポリペプチドである。リガンド部分は、ネイティブポリペプチドであるか、またはネイティブポリペプチドに由来するポリペプチドである。「由来する」は、(a)ネイティブ配列に対する1つもしくは複数の修飾(例えば、1つもしくは複数の残基の付加、欠失および/もしくは置換)、(b)天然に存在しないアミノ酸を含む、アミノ酸類似体、(c)置換されている結合、または(d)当技術分野において公知の他の修飾を含有することを意味する。リガンド部分として役立つポリペプチドは、例えば、マウス抗体の可変領域およびヒト免疫グロブリンの定常領域を併せ持つヒト化抗体などの、様々な起源の配列を融合させることによって得られるバリアントおよびキメラポリペプチドを包含する。加えて、そのようなポリペプチドは、(例えば、システイン残基がポリペプチドリガンドの両端に隣接することにより)直鎖状または環化構造を有することがある。加えて、リガンド部分として使用されているポリペプチドは、化学的部分の置換または付加によるその原構造の修飾(例えば、グリコシル化、アルキル化、アセチル化、アミド化、リン酸化、スルフヒドリル基の付加など)を含むことがある。本発明は、リガンド部分を検出可能にさせる修飾をさらに企図している。このために、検出可能部分での修飾を想定することができる(すなわち、シンチグラフィック、放射性もしくは蛍光部分、または色素標識など)。そのような検出可能標識をいずれの従来の手法によってリガンド部分に結合させてもよく、診断目的(例えば、腫瘍細胞のイメージング)に使用してもよい。一部の実施形態では、結合パートナー分子は、抗原(例えば、標的細胞特異的抗原、疾患特異的抗原、工学的に操作された標的細胞の表面で特異的に発現される抗原)であり、リガンド部分は、抗体、その断片または最小認識単位(例えば、抗原特異性をなお提示する断片)、例えば、免疫学マニュアル(例えば、Immunology、第3版、1993年、Roitt、BrostoffおよびMale、編集Gambli、Mosbyを参照されたい)に詳細に記載されているものである。リガンド部分は、モノクローナル抗体であってもよい。これらの抗原の多くに結合する多くのモノクローナル抗体が既に公知であり、モノクローナル抗体技術に関して当技術分野において公知の手法を使用して、ほとんどの抗原に対する抗体を調製することができる。リガンド部分は、抗体の一部(例えば、Fab断片)であってもよく、または合成抗体断片(例えば、ScFv)であってもよい。一部の実施形態では、リガンド部分は、全抗体ではなく、抗体断片の中から選択される。補体結合などの全抗体の有効な機能は除去される。scFvおよびdAb抗体断片は、1つまたは複数の他のポリペプチドとの融合体として発現されることがある。最小認識単位は、Fv断片の相補性決定領域(CDR)の1つまたは複数についての配列に由来することがある。全抗体、およびF(ab’)2断片は、「二価」である。「二価」とは、前記抗体およびF(ab’)2断片が2つの抗原結合部位を有することを意味する。対照的に、Fab、Fv、ScFv、dAb断片および最小認識単位は一価であり、抗原結合部位を1つしか有さない。一部の実施形態では、リガンド部分は、腫瘍細胞への標的化を可能にし、腫瘍特異的抗原、腫瘍細胞において差次的にもしくは過剰発現される細胞タンパク質、またはがん関連ウイルス(cancer−associated vims)の遺伝子産物などの、腫瘍状態に関係する分子を認識することができ、そのような分子と結合することができる。腫瘍特異的抗原の例としては、乳がんに関係するMUC−1(Hareuveniら、990、Eur.J. Biochem 189巻、475〜486頁)、乳および卵巣がんに関連する変異BRCA1およびBRCA2遺伝子によってコードされている産物(Mikiら、1994年、Science 226巻、66〜71頁;Fuirealら、1994年、Science 226巻、120〜122頁;Woosterら、1995年、Nature 378巻、789〜792頁)、結腸がんに関係するAPC(Poiakis、1995年、Curr.Opin.Genet.Dev.5巻、66〜71頁)、前立腺がんに関係する前立腺特異的抗原(PSA)(Stameyら、1987年、New England J. Med.317巻、909頁)、結腸がんに関係する癌胎児抗原(CEA)(Schreweら、1990年、Mol.Cell.Biol.10巻、2738〜2748頁)、黒色腫に関係するチロシナーゼ(Vileら、1993年、Cancer Res.53巻、3860〜3864頁)、黒色腫細胞において高度に発現されるメラニン細胞刺激ホルモン(MSH)の受容体、乳および膵臓がんに関係するErbB−2(Harrisら、1994年、Gene Therapy 1巻、170〜175頁)、ならびに肝臓がんに関係するアルファ−フェトプロテイン(Kanaiら、1997年、Cancer Res.57巻、461〜465頁)が挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、リガンド部分は、MUC−1抗原を認識すること、およびMUC−1抗原と結合すること、したがってMUC−1陽性腫瘍細胞を標的とすることができる抗体の断片である。一部の実施形態では、リガンド部分は、MUC−1抗原のタンデムリピート領域を認識するSM3モノクローナル抗体のscFv断片である(Burshellら、1987年、Cancer Res.47巻、5476〜5482頁;Girlingら、1989年、Int. J. Cancer 43巻、1072〜1076頁;Dokurnoら、1998年、J. Mol.Biol.284巻、713〜728頁)。腫瘍細胞において差次的にまたは過剰発現される細胞タンパク質の例としては、一部のリンパ系腫瘍において過剰発現されるインターロイキン2(IL−2)の受容体、肺癌細胞、膵臓、前立腺および胃腫瘍において過剰発現されるGRP(ガストリン放出ペプチド)(Michaelら、1995年、Gene Therapy 2巻、660〜668頁)、TNF(腫瘍壊死因子)受容体、上皮増殖因子受容体、Fas受容体、CD40受容体、CD30受容体、CD27受容体、OX−40、α−vインテグリン(Brooksら、994、Science 264巻、569頁)、およびある特定の血管新生増殖因子の受容体(Hanahan、1997年、Science 277巻、48頁)が挙げられるが、これらに限定されない。これらの指標に基づいて、そのようなタンパク質を認識することおよびそのようなタンパク質と結合することができる適切なリガンド部分を定義することは、当業者の範囲内である。例を挙げて説明すると、IL−2は、TL−2受容体との結合に好適なリガンド部分である。線維症および炎症に特異的である受容体の場合、これらは、上に特定されており、本発明の組成物の好適な標的である、TGFベータ受容体またはアデノシン受容体を含む。多発性骨髄腫の細胞表面マーカーは、これらに限定されるものではないがCD56、CD40、FGFR3、CS1、CD138、IGF1R、VEGFRおよびCD38を含み、本発明の組成物の好適な標的である。これらの細胞表面マーカーと結合する好適なリガンド部分は、抗CD56、抗CD40、PRO−001、Chir−258、HuLuc63、抗CD138−DM1、抗IGF1Rおよびベバシズマブを含むが、これらに限定されない。
カーゴ分子
【0092】
一部の実施形態では、上記の複合体またはナノ粒子のカーゴ分子は核酸である。一部の実施形態では、カーゴ分子は、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、一本鎖または二本鎖オリゴおよびポリヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、様々な形態のRNAi(例えば、siRNA、shRNAなどを含む)、マイクロRNA(miRNA)、アンタゴmir、リボザイム、アプタマー、プラスミドDNAなど、およびこれらの1つまたは複数の好適な組合せからなる群から選択される。一部の実施形態では、カーゴ分子は、例えば酵素もしくは抗体などのタンパク質、または小分子である。一部の実施形態では、ナノ粒子は、核酸とタンパク質または小分子との組合せを含む複数のカーゴ分子を含む。一部の実施形態では、この組合せは、互いに共有結合している、核酸とタンパク質または小分子を含む。一部の実施形態では、この組合せは、互いに共有結合していない、核酸とタンパク質または小分子を含む。
【0093】
本明細書において同義語として使用する「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを指し、DNAおよびRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチドもしくは塩基、および/またはそれらの類似体、あるいはDNAまたはRNAポリメラーゼによってポリマーに組み込むことができる任意の基質であることができる。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチドおよびそれらの類似体などの、修飾ヌクレオチドを含みうる。本明細書において使用する用語「核酸」は、一本鎖形態または二本鎖形態どちらかの少なくとも2つのデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドを含有するポリマーを指し、DNAおよびRNAを含む。DNAは、例えば、アンチセンス分子、プラスミドDNA、予め濃縮されたDNA、PCR産物、ベクター(PAC、BAC、YAC、人工染色体)、発現カセット、キメラ配列、染色体DNA、またはこれらの群の誘導体および組合せの形態であってもよい。RNAは、siRNA、非対称干渉RNA(aiRNA)、マイクロRNA(miRNA)、mRNA、tRNA、rRNA、RNA、ウイルスRNA(vRNA)、およびこれらの組合せの形態であってもよい。核酸は、合成であることもあり、天然に存在することもあり、天然に存在しないこともあり、基準核酸と同様の結合特性を有する、公知のヌクレオチド類似体または修飾骨格残基もしくは結合を含有する核酸(例えば、ロックド核酸(LNA)、アンロックド核酸(UNA)およびジップ核酸(ZNA)を含む)を含む。そのような類似体の例としては、限定ではないが、ホスホロチオエート、ホスホルアミデート、メチルホスホネート、キラル−メチルホスホネート、2’−O−メチルリボヌクレオチド、およびペプチド核酸(PNA)が挙げられる。特別な制限がない限り、この用語は、基準核酸と同様の結合特性を有する天然ヌクレオチドの公知類似体を含有する核酸を包含する。別段の指示がない限り、特定の核酸配列は、明確に示す配列ばかりでなく、その保存的に改変されたバリアント(例えば、縮重コドン置換)、アレル、オルソログ、SNPおよび相補配列も暗に包含する。具体的には、縮重コドン置換は、1つまたは複数の選択された(またはすべての)コドンの3位が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換されている配列を生じさせることによって果すことができる(Batzerら、Nucleic Acid Res.、19巻:5081頁(1991年);Ohtsukaら、j. Biol.Chern.、260巻:2605〜2608頁(1985年);Rossoliniら、Mol.Cell.Probes、8巻:91〜98頁(1994年))。「ヌクレオチド」は、糖デオキシリボース(DNA)またはリボース(RNA)、塩基、およびリン酸基を含有する。ヌクレオチドは、リン酸基によって互いに結合している。「塩基」は、プリンおよびピリミジンを含み、これらは、プリンおよびピリミジンの天然化合物アデニン、チミジン、グアニン、シトシン、ウラシル、イノシン、ならびに天然類似体および合成誘導体をさらに含み、天然類似体および合成誘導体は、新たな反応性基、例えば、これらに限定されるものではないが、アミン、アルコール、チオール、カルボキシレートおよびハロゲン化アルキルを配置する修飾を、それに限定されないが含む。本明細書において使用する「オリゴヌクレオチド」は、長さが一般に、必ずではないが約200ヌクレオチド未満である短鎖の一般に合成のポリヌクレオチドを一般に指す。用語「オリゴヌクレオチド」および「ポリヌクレオチド」は、相互排他的でない。ポリヌクレオチドについての上の説明は、オリゴヌクレオチドに同等におよび完全に当てはまる。
【0094】
一部の実施形態では、核酸は、一本鎖オリゴヌクレオチドである。一部の実施形態では、核酸は、二本鎖オリゴヌクレオチドである。本明細書に記載する核酸は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、RNAi、siRNA、shRNA、iRNA、アンタゴmirの場合には必ずではないが200ヌクレオチドまでまたはプラスミドDNAの場合には1000キロ塩基までの長さの範囲のいずれであってもよい。
【0095】
一部の実施形態では、核酸は、siRNAまたはshRNAなどの干渉RNAである。用語「干渉RNA」または「RNAi」または「干渉RNA配列」は、干渉RNAが標的遺伝子または配列と同じ細胞内にあるときに標的遺伝子または配列の発現を(例えば、干渉RNA配列に相補的であるmRNAの分解の媒介または翻訳の阻害によって)低減または阻害することができる、一本鎖RNA(例えば、成熟miRNA)または二本鎖RNA(すなわち、二重鎖RNA、例えばsiRNA、aiRNA、もしくはプレmiRNA)を指し、したがって、干渉RNAは、標的mRNA配列に相補的である一本鎖RNA、または2本の相補鎖によってもしくは単一の自己相補鎖によって形成された二本鎖RNAを指す。干渉RNAは、標的遺伝子もしくは配列との実質的もしくは完全同一性を有することもあり、またはミスマッチ領域(すなわち、ミスマッチモチーフ)を含むこともある。干渉RNAの配列は、完全長標的遺伝子に対応することもあり、またはその部分配列に対応することもある。干渉RNAは、「低分子干渉RNA」または「siRNA」、例えば、長さが約15〜60、15〜50または5〜40(二重鎖)ヌクレオチド、より典型的には長さが約15〜30、15〜25または19〜25(二重鎖)ヌクレオチドの干渉RNAを含み、好ましくは、長さが約20〜24、21〜22、または21〜23(二重鎖)ヌクレオチドである(例えば、二本鎖siRNAの各相補配列は、長さが15〜60、15〜50、15〜40、15〜30、15〜25、または19〜25ヌクレオチド、好ましくは、長さが約20〜24、21〜22、または21〜23ヌクレオチドであり、二本鎖siRNAは、長さが約15〜60、15〜50、15〜40、5〜30、5〜25または19〜25塩基対、好ましくは、長さが約8〜22、9〜20、または19〜21塩基対である)。siRNA二重鎖は、約1〜約4ヌクレオチドまたは約2〜約3ヌクレオチドの3’オーバーハング、および5’リン酸末端を含みうる。siRNAの例は、一方の鎖がセンス鎖であり、他方が相補アンチセンス鎖である、2本の別個の鎖状分子から組み立てられた二本鎖ポリヌクレオチド分子;センス領域とアンチセンス領域が核酸ベースまたは非核酸ベースのリンカーによって結合されている、一本鎖分子から組み立てられた二本鎖ポリヌクレオチド分子;自己相補的センスおよびアンチセンス領域を有するヘアピン二次構造を持つ二本鎖ポリヌクレオチド分子;ならびに2つまたはそれ超のループ構造と、自己相補的センスおよびアンチセンス領域を有するステムとを持ち、in vivoまたはin vitroでプロセシングされて活性二本鎖siRNA分子を生成することができる環状一本鎖ポリヌクレオチド分子を、限定ではないが、含む。好ましくは、siRNAは、化学合成される。siRNAは、E.coliリボヌクレアーゼIIIまたはダイサーでのより長いdsRNA(例えば、長さが約25ヌクレオチドより長いdsRNA)の切断によって生成することもできる。これらの酵素は、dsRNAを生体活性siRNAにプロセシングする(例えば、Yangら、Proc Natl.Acad.Set.USA、99巻:9942〜9947頁(2002年);Calegariら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、99巻:14236頁(2002年);Byromら、Ambion TeehNotes、10巻(1号):4〜6頁(2003年);Kawasakiら、Nucleic Acids Res.、3 1:981〜987頁(2003年);Knightら、Science、293巻:2269〜2271頁(2001年);およびRobertsonら、J. Biol.Chem.、243巻:82頁(1968年)を参照されたい)。好ましくは、dsRNAは、長さが少なくとも50ヌクレオチド〜約100、200、300、400または500ヌクレオチドである。dsRNAは、長さが1000、1500、2000、5000ヌクレオチドもの長さであることがあり、またはそれより長いこともある。dsRNAは、全遺伝子転写産物または部分遺伝子転写産物をコードすることができる。ある特定の事例では、siRNAは、プラスミドによってコードされる(例えば、自動的に折り重なってヘアピンループを有する二重鎖になる配列として転写される)こともある。低分子ヘアピン型RNAまたは短鎖ヘアピン型RNA(shRNA)は、RNA干渉によって遺伝子発現をサイレンシングするために使用することができるきついヘアピンターンを生じさせるRNAの配列である。shRNAヘアピン構造は、細胞機構によって切断されてsiRNAになり、その後、そのsiRNAは、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)と結合する。この複合体は、結合しているsiRNAと適合するmRNAと結合し、そのmRNAを切断する。干渉RNAの好適な長さは、約5〜約200ヌクレオチド、または10〜50ヌクレオチドもしくは塩基対、または15〜30ヌクレオチドもしくは塩基対である。一部の実施形態では、干渉RNAは、対応する標的遺伝子に実質的に相補的(例えば、少なくとも約60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、またはそれ超同一)である。一部の実施形態では、干渉RNAは、例えば天然に存在しないヌクレオチドを組み込むことによって修飾される。
【0096】
一部の実施形態では、核酸は、二本鎖アンチセンスRNAである。干渉RNAの好適な長さは、約5〜約200ヌクレオチド、または10〜50ヌクレオチドもしくは塩基対、または15〜30ヌクレオチドもしくは塩基対である。一部の実施形態では、干渉RNAは、対応する標的遺伝子に実質的に相補的(例えば、少なくとも約60%、70%。80%、90%、95%、98%、99%、またはそれ超同一)である。一部の実施形態では、アンチセンスRNAは、例えば天然に存在しないヌクレオチドを組み込むことによって修飾される。
【0097】
一部の実施形態では、核酸は、がんなどの疾患に関与するタンパク質をコードするRNA分子、例えばmRNAを特異的に標的とする干渉RNA、例えばsiRNAである。一部の実施形態では、疾患は、がん、例えば固形腫瘍または血液学的悪性腫瘍であり、干渉RNAは、がんに関与するタンパク質、例えばがんの進行の制御に関与するタンパク質をコードするmRNAを標的とする。
【0098】
一部の実施形態では、核酸は、免疫応答の負の制御に関与するタンパク質をコードするRNA分子、例えばmRNAを特異的に標的とする干渉RNA、例えばsiRNAである。一部の実施形態では、干渉RNAは、負の共刺激分子をコードするmRNAを標的とする。一部の実施形態では、負の共刺激分子は、例えば、PD−1、PD−L1、PD−L2、TIM−3、BTLA、VISTA、LAG−3およびCTLA−4を含む。
【0099】
一部の実施形態では、核酸は、miRNAである。マイクロRNA(miRNAと略記される)は、真核細胞において見つけられる短鎖リボ核酸(RNA)分子である。マイクロRNA分子は、他のRNAと比較して非常に少ないヌクレオチド(平均22個)を有する。miRNAは、標的メッセンジャーRNA転写産物(mRNA)上の相補配列と結合して、通常は、転写抑制または標的分解および遺伝子サイレンシングをもたらす、転写後制御因子である。ヒトゲノムは、1000を超えるmiRNAをコードすることができ、これらのmiRNAは、哺乳動物遺伝子の約60%を標的とすることができ、多くのヒト細胞型に大量に存在する。miRNAの好適な長さは、約5〜約200ヌクレオチド、または0〜50ヌクレオチドもしくは塩基対、または15〜30ヌクレオチドもしくは塩基対である。一部の実施形態では、miRNAは、対応する標的遺伝子に実質的に相補的(例えば、少なくとも約60%、70%。80%、90%、95%、98%、99%、またはそれ超同一)である。一部の実施形態では、アンチセンスRNAは、例えば天然に存在しないヌクレオチドを組み込むことによって修飾される。
【0100】
一部の実施形態では、核酸は、プラスミドDNAまたはDNA断片(例えば、約1000bpまでの長さのDNA断片)である。加えて、プラスミドDNAまたはDNA断片は、高メチル化または低メチル化されていてもよい。一部の実施形態では、プラスミドDNAまたはDNA断片は、1つまたは複数の遺伝子をコードし、前記1つまたは複数の遺伝子の発現に必要な制御要素を含有することがある。一部の実施形態では、プラスミドDNAまたはDNA断片は、適切な宿主細胞におけるプラスミドDNAまたはDNA断片の維持を可能にする選択可能マーカーをコードする1つまたは複数の遺伝子を含むことがある。
【0101】
一部の実施形態では、プラスミドDNAは、標的抗原と特異的に結合する細胞外抗原結合ドメインと、膜貫通ドメインと、細胞内シグナル伝達ドメインとを含むキメラ抗原受容体(CAR)をコードするDNA配列を含む。CARは、例えば、米国特許第8,822,647号、米国特許出願公開第2015/0051266号、WO2014/127261およびWO2014099671に記載されており、これらの開示は、それら全体が参照によって本明細書に具体的に組み入れられている。一部の実施形態では、標的抗原は、がん細胞に特に関連する(例えば、がん細胞によって発現される)抗原である。例えば、一部の実施形態では、プラスミドDNAは、がん関連抗原と特異的に結合する細胞外抗原結合ドメインと、膜貫通ドメインと、細胞内シグナル伝達ドメインとを含むCARをコードするDNA配列を含む。一部の実施形態では、がん関連抗原は、固形腫瘍に関連する。一部の実施形態では、がん関連抗原は、B細胞悪性腫瘍または白血病などの、血液学的悪性腫瘍に関連する。一部の実施形態では、標的抗原は、例えば、CD19、CD20、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27、HVEM、BCMA、CD70、CD74、CD38、CD138、CD33、Lewis−Y、CD123、CD44v6およびCS1を含む。
【0102】
したがって、一部の実施形態では、プラスミドDNAは、血液学的悪性腫瘍に関連するがん関連抗原と特異的に結合する細胞外抗原結合ドメインと、膜貫通ドメインと、細胞内シグナル伝達ドメインとを含むCARをコードするDNA配列を含む。一部の実施形態では、血液学的悪性腫瘍は、B細胞悪性腫瘍であり、がん関連抗原は、例えば、CD19、CD20、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27およびHVEMを含む。一部の実施形態では、血液学的悪性腫瘍は、急性骨髄性白血病などの白血病であり、がん関連抗原は、例えば、BCMA、CD70、CD74、CD38、CD138、CD33、Lewis−Y、CD123、CD44v6およびCS1を含む。
組成物
【0103】
一部の実施形態では、上記の複合体またはナノ粒子を含む組成物が提供される。一部の実施形態では、組成物は、上記の複合体またはナノ粒子と、薬学的に許容される希釈剤、賦形剤および/または担体とを含む医薬組成物である。一部の実施形態では、組成物中の複合体またはナノ粒子の濃度は、約1nM〜約100mMであり、例えば、約10nM〜約50mM、約25nM〜約25mM、約50nM〜約10mM、約100nM〜約1mM、約500nM〜約750μM、約750nM〜約500μM、約1μM〜約250μM、約10μM〜約200μM、および約50μM〜約150μMを含む。
【0104】
本明細書において使用する用語「薬学的に許容される希釈剤、賦形剤および/または担体」は、ヒトまたは他の脊椎動物宿主への投与に適合するありとあらゆる溶媒、分散媒、被覆剤、抗菌および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤などを含むことを意図する。典型的に、薬学的に許容される希釈剤、賦形剤および/または担体は、ヒトはもちろん非ヒト動物を含む動物における使用について、連邦の規制機関、州政府もしくは他の規制機関によって承認されている、または米国薬局方もしくは他の一般に認知されている薬局方に収載されている希釈剤、賦形剤および/または担体である。用語希釈剤、賦形剤および/または「担体」は、医薬組成物を投与するのに用いる希釈剤、アジュバント、賦形剤またはビヒクルを指す。そのような医薬希釈剤、賦形剤および/または担体は、滅菌液、例えば、水および油(石油、動物、植物または合成由来のものを含む)でありうる。水、食塩溶液ならびにデキストロースおよびグリセロール水溶液を液体希釈剤、賦形剤および/または担体として、特に注射用溶液に用いることができる。好適な医薬希釈剤および/または賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、白亜、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが挙げられる。組成物は、必要に応じて、少量の湿潤、増量、乳化剤、またはpH緩衝剤も含有することができる。これらの組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョン、徐放製剤などの形態をとることができる。好適な医薬希釈剤、賦形剤および/または担体の例は、E.W.Martinによって「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載されている。製剤は、投与方法に適合しなければならない。適切な希釈剤、賦形剤および/または担体は、当業者には明らかであり、大部分が投与経路に依存することになる。
【0105】
一部の実施形態では、上記の医薬組成物は、静脈内、腫瘍内、動脈内、局所、眼内、眼科的、頭蓋内、髄腔内、小胞内、皮内、皮下、筋肉内、鼻腔内、気管内、肺、空洞内または経口投与用に製剤化される。
【0106】
一部の実施形態では、ヒトまたは哺乳動物対象の処置に好適であると判明した本発明の医薬組成物の投薬量は、カーゴ分子0.001mg/kg〜100mg/kgの範囲である。一部の実施形態では、投薬量範囲は、0.1〜20mg/kgである。一部の実施形態では、投薬量範囲は、0.5〜10mg/kgの範囲内である。一部の実施形態では、個体への医薬組成物の投与スケジュールは、全処置に相当する単回投与から連日投与に及ぶ。一部の実施形態では、投与は、3〜30日に1回である。一部の実施形態では、投与は、4〜7日に1回である。
【0107】
一部の実施形態では、上記の複合体またはナノ粒子と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物であって、薬学的に許容される担体が糖またはタンパク質である、医薬組成物が提供される。一部の実施形態では、糖は、スクロース、グルコース、マンニトールおよびこれらの組合せからなる群から選択され、約5%〜約20%の濃度で医薬組成物中に存在する。一部の実施形態では、糖はスクロースである。一部の実施形態では、糖はグルコースである。一部の実施形態では、糖はマンニトールである。一部の実施形態では、タンパク質は、アルブミンである。一部の実施形態では、アルブミンは、ヒト血清アルブミンである。一部の実施形態では、医薬組成物は、凍結乾燥される。
調製方法
【0108】
一部の実施形態では、上記の複合体またはナノ粒子を調製する方法であって、a)上記のADGNペプチドを含む組成物を、上記のカーゴ分子を含む組成物と併せて混合物を形成するステップ、およびb)混合物をインキュベートして複合体またはナノ粒子を形成するステップを含む方法が提供される。一部の実施形態では、ADGNペプチドを含む組成物は、ADGNペプチドを約0.1mg/ml〜約10mg/mlの濃度で含む保存溶液であり、例えば、約0.2mg/ml〜約5mg/ml、約0.5mg/ml〜約2.5mg/ml、約0.75mg/ml〜約1.5mg/ml、および約1mg/mlを含む。一部の実施形態では、ADGNペプチドを含む保存溶液を約2分〜約20分間超音波処理し、例えば、約5分〜約15分、および約10分を含む。一部の実施形態では、カーゴ分子は核酸であり、カーゴ分子を含む組成物は、核酸を含む保存溶液である。一部の実施形態では、核酸は、上記のオリゴヌクレオチドであり、核酸を含む保存溶液は、オリゴヌクレオチドを約1μM〜約20μMの濃度で含み、例えば、約2μM〜約15μM、約3μM〜約10μM、約4μM〜約8μM、および約5μMを含む。一部の実施形態では、オリゴヌクレオチドを含む保存溶液を水中で配合する。一部の実施形態では、水は、蒸留水である。一部の実施形態では、オリゴヌクレオチドを含む保存溶液を緩衝液中で配合する。一部の実施形態では、核酸はプラスミドであり、核酸を含む保存溶液は、プラスミドを約20μM〜約500μMの濃度で含み、例えば、約30μM〜約400μM、約40μM〜約300μM、約50μM〜約200μM、約75μM〜約150μM、および約100μMを含む。一部の実施形態では、プラスミドを含む保存溶液を水中で配合する。一部の実施形態では、水は、蒸留水である。一部の実施形態では、プラスミドを含む保存溶液を緩衝液中で配合する。一部の実施形態では、緩衝液は、プラスミドの保管に使用される当技術分野において公知の任意の緩衝液であり、例えば、TrisおよびEDTAを含む緩衝液であって、Trisが約10mM〜約100mMの濃度(例えば、約20mM〜約80mM、約30mM〜約70mM、約40mM〜約60mM、および約50mMを含む)であり、EDTAが約0.1mM〜約1mMの濃度(例えば、約0.2mM〜約0.8mM、約0.3mM〜約0.7mM、約0.4mM〜約0.6mM、および約0.5mMを含む)である、緩衝液を含む。一部の実施形態では、方法は、ADGNペプチドを含む保存溶液と核酸を含む保存溶液とを水性媒体中で併せて混合物を形成するステップを含む。一部の実施形態では、水性媒体は、水であり、例えば蒸留水を含む。一部の実施形態では、水性媒体は、緩衝液であり、例えば、PBS、Tris、または核タンパク質複合体を安定化するための当技術分野において公知の任意の緩衝液を含む。一部の実施形態では、混合物中のADGNペプチドの核酸に対するモル比は、約1:5〜約80:1であり、例えば、約5:1〜約40:1、ならびに約1:2、1:1、2:1、5:1、10:1、20:1、30:1、40:1および50:1のいずれかを含む。一部の実施形態では、混合物を約10分〜60分間(例えば約20分、30分、40分および50分間のいずれかを含む)、約2℃〜約50℃の温度(例えば、約2℃〜約5℃、約5℃〜約10℃、約10℃〜約15℃、約15℃〜約20℃、約20℃〜約25℃、約25℃〜約30℃、約30℃〜約35℃、約35℃〜約40℃、約40℃〜約45℃、および約45℃〜約50℃を含む)でインキュベートして複合体またはナノ粒子を形成することによって、複合体またはナノ粒子を含む保存溶液を得る。一部の実施形態では、複合体またはナノ粒子を含む保存溶液は、4℃で少なくとも約3週間にわたって(例えば、少なくとも約6週間、2カ月、3カ月、4カ月、5カ月、および6カ月のいずれかにわたって、を含む)、安定した状態を保つ。一部の実施形態では、複合体またはナノ粒子を含む保存溶液を担体の存在下で凍結乾燥させる。一部の実施形態では、担体は、例えばスクロース、グルコース、マンニトールおよびこれらの組合せを含む糖であり、複合体またはナノ粒子を含む保存溶液中に約5%〜約20%(例えば、約7.5%〜約17.5%、約10%〜約15%、および約12.5%を含む)、重量/体積、で存在する。一部の実施形態では、担体は、例えば、ヒト血清アルブミンなどのアルブミンを含むタンパク質である。
【0109】
一部の実施形態では、上記のコアと少なくとも1つのさらなる層とを含むナノ粒子を調製する方法であって、a)上記の集合分子を含む組成物を、上記のカーゴ分子を含む組成物を併せて、第1の混合物を形成するステップ、b)第1の混合物をインキュベートしてナノ粒子のコアを形成するステップ、c)b)の混合物を、細胞透過性ペプチドを含む組成物と併せて、第2の混合物を形成するステップ、およびd)第2の混合物をインキュベートして、コアと少なくとも1つのさらなる層とを含むナノ粒子を形成するステップを含む方法が提供される。一部の実施形態では、方法は、e)コアと少なくとも1つのさらなる層とを含むナノ粒子を含む組成物と、細胞透過性ペプチドを含む組成物とを併せて、第3の混合物を形成するステップ、およびf)第3の混合物をインキュベートして、コアと少なくとも2つのさらなる層とを含むナノ粒子を形成するステップをさらに含む。増加する数の層を含むナノ粒子の形成に方法を適合させることができることは理解されるはずである。一部の実施形態では、集合分子は、上記のADGNペプチドである。一部の実施形態では、集合分子は、上記のADGNペプチドでない。一部の実施形態では、細胞透過性ペプチドは、上記のADGNペプチドである。一部の実施形態では、細胞透過性ペプチドは、上記のADGNペプチドでない。一部の実施形態では、集合分子または細胞透過性ペプチドを含む組成物は、集合分子または細胞透過性ペプチドを約0.1mg/ml〜約10mg/mlの濃度で含む保存溶液であり、例えば、約0.2mg/ml〜約5mg/ml、約0.5mg/ml〜約2.5mg/ml、約0.75mg/ml〜約1.5mg/ml、および約1mg/mlを含む。一部の実施形態では、集合分子または細胞透過性ペプチドを含む保存溶液を約2分〜約20分間超音波処理し、例えば、約5分〜約15分、および約10分を含む。一部の実施形態では、カーゴ分子は核酸であり、カーゴ分子を含む組成物は、核酸を含む保存溶液である。一部の実施形態では、核酸は、上記のオリゴヌクレオチドであり、核酸を含む保存溶液は、オリゴヌクレオチドを約1μM〜約20μMの濃度で含み、例えば、約2μM〜約15μM、約3μM〜約10μM、約4μM〜約8μM、および約5μMを含む。一部の実施形態では、オリゴヌクレオチドを含む保存溶液を水中で配合する。一部の実施形態では、水は、蒸留水である。一部の実施形態では、オリゴヌクレオチドを含む保存溶液を緩衝液中で配合する。一部の実施形態では、核酸はプラスミドであり、核酸を含む保存溶液は、プラスミドを約20μM〜約500μMの濃度で含み、例えば、約30μM〜約400μM、約40μM〜約300μM、約50μM〜約200μM、約75μM〜約150μM、および約100μMを含む。一部の実施形態では、プラスミドを含む保存溶液を水中で配合する。一部の実施形態では、水は、蒸留水である。一部の実施形態では、プラスミドを含む保存溶液を緩衝液中で配合する。一部の実施形態では、緩衝液は、プラスミドの保管に使用される当技術分野において公知の任意の緩衝液であり、例えば、TrisおよびEDTAを含む緩衝液であって、Trisが約10mM〜約100mMの濃度(例えば、約20mM〜約80mM、約30mM〜約70mM、約40mM〜約60mM、および約50mMを含む)であり、EDTAが約0.1mM〜約1mMの濃度(例えば、約0.2mM〜約0.8mM、約0.3mM〜約0.7mM、約0.4mM〜約0.6mM、および約0.5mMを含む)である、緩衝液を含む。一部の実施形態では、併せるステップを水性媒体中で行って、混合物を形成する。一部の実施形態では、水性媒体は、水であり、例えば蒸留水を含む。一部の実施形態では、水性媒体は、緩衝液であり、例えば、PBS、Tris、または核タンパク質複合体を安定化するための当技術分野において公知の任意の緩衝液を含む。一部の実施形態では、混合物中の細胞透過性ペプチドの核酸に対するモル比は、約1:5〜約80:1であり、例えば、約5:1〜約40:1、ならびに約1:2、1:1、2:1、5:1、10:1、20:1、30:1、40:1および50:1のいずれかを含む。一部の実施形態では、混合物を約10分〜60分間(例えば、約20分、30分、40分および50分間のいずれかを含む)、約30℃〜約45℃の温度で(例えば、約31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃、37℃、38℃、39℃、40℃、41℃、42℃、43℃および44℃のいずれかで、を含む)インキュベートしてナノ粒子を形成することによって、ナノ粒子を含む保存溶液を得る。一部の実施形態では、ナノ粒子を含む保存溶液は、4℃で少なくとも約3週間にわたって安定した状態を保つ。一部の実施形態では、ナノ粒子を含む保存溶液を担体の存在下で凍結乾燥させる。一部の実施形態では、担体は、例えば、スクロース、グルコース、マンニトールおよびこれらの組合せを含む糖であり、複合体またはナノ粒子を含む保存溶液中に約5%〜約20%(例えば、約7.5〜約17.5%、約10%〜約15%、および約12.5%を含む)、重量/体積、で存在する。一部の実施形態では、担体は、例えば、ヒト血清アルブミンなどのアルブミンを含むタンパク質である。
【0110】
一部の実施形態では、本発明の複合体またはナノ粒子を含む安定した組成物について、複合体の平均直径は、約10%より大きく変化せず、多分散指数は、約10%より大きく変化しない。
使用方法
【0111】
一部の実施形態では、個体の疾患を処置する方法であって、上記の複合体またはナノ粒子と薬学的に許容される担体とを含む有効量の医薬組成物を個体に投与するステップを含む方法が提供される。一部の実施形態では、複合体またはナノ粒子は、疾患の処置に有用な1つまたは複数のカーゴ分子を含む。一部の実施形態では、処置されることになる疾患は、がん、糖尿病、炎症性疾患、線維症、ウイルス感染性疾患、遺伝性疾患、ならびに老齢および変性疾患を含むが、これらに限定されない。一部の実施形態では、医薬組成物は、1つまたは複数の遺伝子の発現を調節する。一部の実施形態では、1つまたは複数の遺伝子は、増殖因子およびサイトカイン、細胞表面受容体、シグナル伝達分子およびキナーゼ、転写因子および転写の他の調節因子、タンパク質発現および修飾の制御因子、ならびにアポトーシスおよび転移の制御因子を含むがこれらに限定されない、タンパク質をコードする。一部の実施形態では、医薬組成物は、1つまたは複数のさらなる上記の複合体またはナノ粒子をさらに含む。一部の実施形態では、方法は、1つまたは複数のさらなる上記の複合体またはナノ粒子を含む1つまたは複数のさらなる有効量の医薬組成物を個体に投与するステップをさらに含む。
【0112】
本明細書において使用する活性または発現の「調節」は、遺伝子もしくはmRNAの状態もしくはコピー数を制御するもしくは変えること、または産生されるタンパク質などの遺伝子産物の量を変化させることを意味する。一部の実施形態では、カーゴ分子は、標的遺伝子の発現を阻害する。一部の実施形態では、調節(例えば、阻害)は、一部の実施形態では転写後レベルで起こり、カーゴ分子は、遺伝子または遺伝子産物の発現を、少なくとも約0%、20%、30%、40%、60%、70%、80%、90%または100%のいずれか、阻害する。プラスミド送達の場合などの一部の実施形態では、カーゴ分子は、遺伝子または遺伝子産物の発現を、少なくとも約10%、20%、30%、40%、60%、70%、80%、90%または100%のいずれか、増加させることがある。
【0113】
上記の方法の一部の実施形態では、1つまたは複数の遺伝子は、EGF、VEGF、FGF、HGF、HDGF、IGF、PDGF、TGF−α、TGF−β、TNF−α、wnt、ER、PR、Her2、Her3、アンジオポエチン受容体、EGFR、FGFR、HGFR、HDGFR、IGFR、KGFR、MSFR、PDGFR、TGFR、VEGFR1、VEGFR2、VEGFR3、Frizzledファミリー受容体(FZD−1〜10)、Smoothened、Patched、CXCR4、KRAS、NRAS、RAF、MEK、MEKK、MAPK、MKK、ERK、JNK、JAK、PKA、PKC、PI3K、Akt、mTOR、Raptor、Rictor、MLST8、PRAS40、DEPTOR、MSIN1、S6キナーゼ、PDK1、BRAF、FAK、Src、Fyn、Shc、GSK、IKK、PLK−1、サイクリン依存性キナーゼ(Cdk1〜13)、CDK活性化キナーゼ、ALK/Met、Syk、BTK、Bcr−Abl、RET、β−カテニン、Mcl−1、PKN、ATF−2、Chop、c−Jun、c−Myc、DPC4、Elk−1、Ets1、Max、MEF2C、NFAT4、Sap1a、STAT、Tal、p53、CREB、Myc、NF−κB、HDAC、HIF−1α、RRM2、ユビキチンリガーゼ、LMP2、LMP7、MECL−1、XIAP、Bcl−2、オステオポンチン、SPARC、MMP−2、MMP−9、uPAR、IL−2、IL−12、インターフェロン−ガンマ、GM−CSF、B7−1、カスパーゼ−9、p53、MUC−1、MDR−1、HLA−B7/ベータ2−ミクログロブリン、Her2、Hsp27、チミジンキナーゼ、およびMDA−7、GLI1、CTNNB1、eIF5A、変異型DDX3X、ヘキソキナーゼII、ヒストンメチルトランスフェラーゼEZH2、ARK5、ALK、MUC1、HMGA2、IRF1、RPN13、HDAC11、Rad51、Spry2、mir−146a、mir−146b、サバイビン、MDM2、MCL1、CMYC、XBP1(スプライス型および非スプライス型)、SLAMF7、CS1、Erbb4、Cxcr4(ワルデンストレームマクログロブリン血症)、Myc、Bcl2、Prdx1およびPrdx2(バーキットリンパ腫)、Bcl6、Idh1、Idh2、Smad、Ccnd2、サイクリンd1〜2、B7−h1(pdl−1)、Pyk2、RSVヌクレオカプシド、Pre−gen/Pre−C、Pre−S1、Pre−S2/S、X、HBV保存配列、HIV Tat、HIV TAR RNA、ヒトCCR5、miR−122、EBOVポリメラーゼL、VP24、VP40、GP/sGP、VP30、VP35、NPC1、TIM−1、トランスサイレチン、MDS1−EVI1、PRDM16、SETBP1、β−グロビン、LPL、ケラチンK6A、ケラチンK6B、ケラチン16、ケラチン17、p53、β−2アドレナリン受容体(ADRB2)、TRPV1、VEGF、VEGFR、HIF−1、カスパーゼ−2、SPARC、CTGF、TGFβ1、TGFβ受容体1、TGFβ受容体2、TGFβ受容体3、VEGF、アンジオテンシンII、TIMP、HSP47、トロンボスポンジン、CCN1、LOXL2、MMP2、MMP9、CCL2、アデノシン受容体A2A、アデノシン受容体A2B、アデニリルシクラーゼ、Smad 3、Smad 4、Smad 7、SOX9、アレスチン、PDCD4、PAI−1、NF−κB、ならびにPARP−1を含むが、これらに限定されない。
【0114】
上記の方法の一部の実施形態では、処置されることになる疾患はがんである。一部の実施形態では、がんは固形腫瘍であり、医薬組成物は、増殖因子およびサイトカイン、細胞表面受容体、シグナル伝達分子およびキナーゼ、転写因子および転写の他の調節因子、タンパク質発現および修飾の制御因子ならびにアポトーシスおよび転移の制御因子を含むがこれらに限定されないタンパク質をコードする、1つまたは複数の遺伝子の発現を調節する。一部の実施形態では、増殖因子またはサイトカインは、EGF、VEGF、FGF、HGF、HDGF、IGF、PDGF、TGF−α、TGF−β、TNF−αおよびwntを含むがこれらに限定されない。一部の実施形態では、細胞表面受容体は、ER、PR、Her2、Her3、アンジオポエチン受容体、EGFR、FGFR、HGFR、HDGFR、IGFR、KGFR、MSFR、PDGFR、TGFR、VEGFR1、VEGFR2、VEGFR3、Frizzledファミリー受容体(FZD−1〜10)、smoothened、patchedおよびCXCR4を含むがこれらに限定されない。一部の実施形態では、シグナル伝達分子またはキナーゼは、KRAS、NRAS、RAF、MEK、MEKK、MAPK、MKK、ERK、JNK、JAK、PKA、PKC、PI3K、Akt、mTOR、Raptor、Rictor、MLST8、PRAS40、DEPTOR、MSIN1、S6キナーゼ、PDK1、BRAF、FAK、Src、Fyn、Shc、GSK、IKK、PLK−1、サイクリン依存性キナーゼ(Cdk1〜13)、CDK活性化キナーゼ、ALK/Met、Syk、BTK、Bcr−Abl、RET、β−カテニン、Mcl−1およびPKN3を含むがこれらに限定されない。一部の実施形態では、転写因子または転写の他の調節因子は、ATF−2、Chop、c−Jun、c−Myc、DPC4、Elk−1、Ets1、Max、MEF2C、NFAT4、Sap1a、STAT、Tal、p53、CREB、Myc、NF−κB、HDAC、HIF−1αおよびRRM2を含むがこれらに限定されない。一部の実施形態では、タンパク質発現または修飾の制御因子は、ユビキチンリガーゼ、LMP2、LMP7、およびMECL−1を含むがこれらに限定されない。一部の実施形態では、アポトーシスまたは転移の制御因子は、XIAP、Bcl−2、オステオポンチン、SPARC、MMP−2、MMP−9、uPARを含むがこれらに限定されない。
【0115】
上記の方法の一部の実施形態では、処置されることになる疾患はがんであり、がんは固形腫瘍であり、医薬組成物は、腫瘍形成および/または進行に関与する1つまたは複数のタンパク質をコードする核酸を含む。一部の実施形態では、腫瘍形成および/または進行に関与する1つまたは複数のタンパク質は、IL−2、IL−12、インターフェロン−ガンマ、GM−CSF、B7−1、カスパーゼ−9、p53、MUC−1、MDR−1、HLA−B7/ベータ2−ミクログロブリン、Her2、Hsp27、チミジンキナーゼおよびMDA−7からなる群から選択される。
【0116】
上記の方法の一部の実施形態では、処置されることになる疾患はがんであり、がんは血液学的悪性腫瘍であり、医薬組成物は、血液学的悪性腫瘍の発症および/または進行に関与するタンパク質をコードする1つまたは複数(one of more)の遺伝子の発現を調節する。一部の実施形態では、血液学的悪性腫瘍の発症および/または進行に関与するタンパク質は、GLI1、CTNNB1、eIF5A、変異型DDX3X、ヘキソキナーゼII、ヒストンメチルトランスフェラーゼEZH2、ARK5、ALK、MUC1、HMGA2、IRF1、RPN13、HDAC11、Rad51、Spry2、mir−146a、mir−146b、サバイビン、MDM2、MCL1、CMYC、XBP1(スプライス型および非スプライス型)、SLAMF7、CS1、Erbb4、Cxcr4(ワルデンストレームマクログロブリン血症)、Myc、Bcl2、Prdx1およびPrdx2(バーキットリンパ腫)、Bcl6、Idh1、Idh2、Smad、Ccnd2、サイクリンd1〜2、B7−h1(pdl−1)およびPyk2を含むが、これらに限定されない。
【0117】
上記の方法の一部の実施形態では、処置されることになる疾患は、ウイルス感染性疾患であり、医薬組成物は、ウイルス感染性疾患の発症および/または進行に関与するタンパク質をコードする1つまたは複数の遺伝子の発現を調節する。一部の実施形態では、ウイルス感染性疾患の発症および/または進行に関与するタンパク質は、RSVヌクレオカプシド、Pre−gen/Pre−C、Pre−S1、Pre−S2/S、X、HBV保存配列、HIV Tat、HIV TAR RNA、ヒトCCR5、miR−122、EBOVポリメラーゼL、VP24、VP40、GP/sGP、VP30、VP35、NPC1およびTIM−1を含むが、これらに限定されない。
【0118】
上記の方法の一部の実施形態では、処置されることになる疾患は、遺伝性疾患であり、医薬組成物は、遺伝性疾患の発症および/または進行に関与するタンパク質をコードする1つまたは複数の遺伝子の発現を調節する。一部の実施形態では、遺伝性疾患の発症および/または進行に関与するタンパク質は、トランスサイレチン、MDS1−EVI1、PRDM16、SETBP1、β−グロビンおよびLPLを含むが、これらに限定されない。
【0119】
上記の方法の一部の実施形態では、処置されることになる疾患は、老齢または変性疾患であり、医薬組成物は、老齢または変性疾患の発症および/または進行に関与するタンパク質をコードする1つまたは複数の遺伝子の発現を調節する。一部の実施形態では、老齢または変性疾患の発症および/または進行に関与するタンパク質は、ケラチンK6A、ケラチンK6B、ケラチン16、ケラチン17、p53、β−2アドレナリン受容体(ADRB2)、TRPV1、VEGF、VEGFR、HIF−1およびカスパーゼ−2を含むが、これらに限定されない。
【0120】
上記の方法の一部の実施形態では、処置されることになる疾患は、線維性または炎症性疾患であり、医薬組成物は、線維性または炎症性疾患の発症および/または進行に関与するタンパク質をコードする2つまたはそれ超の遺伝子の発現を調節する。一部の実施形態では、線維性または炎症性疾患の発症および/または進行に関与するタンパク質は、SPARC、CTGF、TGFβ1、TGFβ受容体1、TGFβ受容体2、TGFβ受容体3、VEGF、アンジオテンシンII、TIMP、HSP47、トロンボスポンジン、CCN1、LOXL2、MMP2、MMP9、CCL2、アデノシン受容体A2A、アデノシン受容体A2B、アデニリルシクラーゼ、Smad 3、Smad 4、Smad 7、SOX9、アレスチン、PDCD4、PAI−1、NF−κBおよびPARP−1からなる群から選択される。
【0121】
上記の方法の一部の実施形態では、医薬組成物は、疾患に関与する1つまたは複数のmiRNAの発現を調節する。一部の実施形態では、疾患は、B型肝炎、C型肝炎、多発性肝のう胞および多発性のう胞腎、がん、心血管疾患、心不全、心肥大、神経発達疾患、脆弱X症候群、レッテ症候群、ダウン症候群、アルツハイマー病、ハンチントン病、統合失調症、炎症性疾患、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、乾癬、ならびに骨格筋疾患を含むが、これらに限定されない。一部の実施形態では、1つまたは複数のmiRNAは、miR−122、miR−21、miR−155、miR−23、およびmiR−191、miR−205、miR−145、miR−10b、およびmiR−125b、miR−200a、miR−200c、およびmiR−141、miR−199a、miR−140、miR−145、およびmiR125bl、miR−205、miR155、miR 200a、200b、200c、miR−193a、193b、miR−let 7g、miR−21、miR−20a、miR−17−19ファミリー、miR 31、miR 135、miR−181b、およびmiR 200c、miR−34、miR−let7、miR 143、miR 145、miR−133b、miR−126、Has−miR−191、199a、miR 155、miR−17−5p、miR−173p、miR−18a、miR−19a、miR−19b−1、miR−20aおよびmiR−92a−1、miR−21、miR 150、miR−155、miR−15a、miR16、miR−29、miR143、miR−45、miR−30d、miR−let 7a、miR−181a、miR−1、miR−16、miR−27b、miR−30d、miR−126、miR−133、miR−143、let−7ファミリー、miR−208、miR−23a、miR−23b、miR−24、miR−195、miR−199a、miR−214、miR−194、miR−192、miR−200c、miR−203、miR−106b−25、miR−15b、miR−16、has−mir−21およびhas−mir−205、miR−17−92、has−mir−126□、miR−let 7、hsa−let−7a−2、let−7f−1、miR−223、miR−26b、miR−221、miR−103−1、miR−185、miR−23 b、miR−203、miR 17−5p、miR−23、miR−205、miR−29c、miR−26a、miR−30c、miR−30e−5p、miR−146 b、miR−221、miR−222、miR−181b、miR−155、miR−224、miR−30d、miR−125b、miR−26a、miR−30a−5p、miR−23a、miR−23b、miR−24、miR−195、miR−199a、miR−214、miR−99a、let−7c、miR−125b−2、miR−155およびmiR−802、miR−9、miR−128a、miR−125b、miR−155、miR−146、miR−189、miR−61、miR−78、miR−21、miR−142−3p、miR 342、miR−299−3p、miR−198、miR−298、miR−196a、miR−17−5p、miR−409−3p、miR−141、miR−383、miR−112、miR−184、miR−203、mIR−132、miR−381、miR−382、miR−107、miR−103、およびmiR−100を含むが、これらに限定されない。
【0122】
上記の方法の一部の実施形態では、医薬組成物を、静脈内、腫瘍内、動脈内、局所、眼内、眼科的、頭蓋内、髄腔内、小胞内、皮内、皮下、筋肉内、鼻腔内、気管内、肺、空洞内または経口投与のいずれかによって個体に投与する。
【0123】
上記の方法の一部の実施形態では、個体は、哺乳動物である。一部の実施形態では、個体はヒトである。
【0124】
一部の実施形態では、分子を細胞に送達する方法であって、細胞を上記の複合体またはナノ粒子と接触させるステップを含み、複合体またはナノ粒子が分子を含む、方法が提供される。一部の実施形態では、細胞と複合体またはナノ粒子との接触をin vivoで行う。一部の実施形態では、細胞と複合体またはナノ粒子との接触をex vivoで行う。一部の実施形態では、細胞と複合体またはナノ粒子との接触をin vitroで行う。一部の実施形態では、細胞は、免疫細胞、例えば、顆粒球、マスト細胞、単球、樹状細胞、B細胞、T細胞、またはナチュラルキラー細胞である。一部の実施形態では、細胞は、末梢血由来T細胞、セントラルメモリーT細胞、臍帯血由来T細胞、または造血幹細胞もしくは他の前駆細胞である。一部の実施形態では、T細胞は、不死化T細胞、例えば、T細胞株からのT細胞である。一部の実施形態では、T細胞は、初代T細胞、例えば、個体のT細胞である。一部の実施形態では、細胞は、線維芽細胞である。一部の実施形態では、分子は、上記のカーゴ分子である。一部の実施形態では、カーゴ分子は、核酸、ポリペプチドおよび小分子からなる群から選択される。一部の実施形態では、カーゴ分子は、疾患、例えば、本明細書に記載する処置されることになる疾患のいずれか(例えば、がん、糖尿病、炎症性疾患、線維症、ウイルス感染性疾患、遺伝性疾患、ならびに老齢および変性疾患)の処置に有用である。一部の実施形態では、複合体またはナノ粒子は、1つまたは複数のさらなるカーゴ分子をさらに含む。一部の実施形態では、1つまたは複数のさらなるカーゴ分子は、疾患の処置に有用である。
【0125】
したがって、一部の実施形態では、核酸を細胞に送達する方法であって、細胞を上記の複合体またはナノ粒子と接触させるステップを含み、複合体またはナノ粒子が、核酸と、アミノ酸配列XKWRSXRWRLWRXSR(配列番号1)(配列中、Xは、任意のアミノ酸であるか、存在せず、X〜Xは、任意のアミノ酸である)を含むADGNペプチドとを含む、方法が提供される。一部の実施形態では、Xは、βAであるか、Sであるか、存在せず、Xは、AまたはVであり、Xは、GまたはLであり、Xは、WまたはYであり、Xは、VまたはSであり、Xは、R、VまたはAであり、Xは、SまたはLであり、Xは、WまたはYである。一部の実施形態では、ADGNペプチドは、KWRSAGWRWRLWRVRSWSR(配列番号2)、KWRSALYRWRLWRSRSWSR(配列番号3)、またはKWRSALYRWRLWRSALYSR(配列番号4)のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、複合体またはナノ粒子中の核酸のADGNペプチドに対するモル比は、約1:10〜約1:40(例えば、約1:20または約1:40)である。一部の実施形態では、細胞と複合体またはナノ粒子との接触をin vivoで行う。一部の実施形態では、細胞と複合体またはナノ粒子との接触をex vivoで行う。一部の実施形態では、細胞と複合体またはナノ粒子との接触をin vitroで行う。一部の実施形態では、細胞は、免疫細胞、例えば、顆粒球、マスト細胞、単球、樹状細胞、B細胞、T細胞、またはナチュラルキラー細胞である。一部の実施形態では、T細胞は、不死化T細胞、例えば、T細胞株からのT細胞である。一部の実施形態では、T細胞は、初代T細胞、例えば、個体のT細胞である。一部の実施形態では、細胞は、線維芽細胞である。一部の実施形態では、核酸は、疾患、例えば、本明細書に記載する処置されることになる疾患のいずれか(例えば、がん、糖尿病、炎症性疾患、線維症、ウイルス感染性疾患、遺伝性疾患、ならびに老齢および変性疾患)の処置に有用である。一部の実施形態では、核酸は、RNA、例えばsiRNAである。一部の実施形態では、核酸は、DNA、例えばプラスミドDNAである。一部の実施形態では、プラスミドは、治療用産物、または疾患、例えば、本明細書に記載する処置されることになる疾患のいずれか(例えば、がん、糖尿病、炎症性疾患、線維症、ウイルス感染性疾患、遺伝性疾患、ならびに老齢および変性疾患)の処置に有用な産物をコードする。一部の実施形態では、プラスミドは、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする。一部の実施形態では、複合体またはナノ粒子は、1つまたは複数のさらなるカーゴ分子をさらに含む。一部の実施形態では、1つまたは複数のさらなるカーゴ分子は、疾患の処置に有用である。
【0126】
一部の実施形態では、siRNAを細胞に送達する方法であって、細胞を上記の複合体またはナノ粒子と接触させるステップを含み、複合体またはナノ粒子が、siRNAと、アミノ酸配列XKWRSXRWRLWRXSR(配列番号1)(配列中、Xは、任意のアミノ酸であるか、存在せず、X〜Xは、任意のアミノ酸である)を含むADGNペプチドとを含む、方法が提供される。一部の実施形態では、Xは、βAであるか、Sであるか、存在せず、Xは、AまたはVであり、Xは、GまたはLであり、Xは、WまたはYであり、Xは、VまたはSであり、Xは、R、VまたはAであり、Xは、SまたはLであり、Xは、WまたはYである。一部の実施形態では、ADGNペプチドは、KWRSAGWRWRLWRVRSWSR(配列番号2)、KWRSALYRWRLWRSRSWSR(配列番号3)、またはKWRSALYRWRLWRSALYSR(配列番号4)のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、複合体またはナノ粒子中のsiRNAのADGNペプチドに対するモル比は、約1:10〜約1:40(例えば、約1:20または約1:40)である。一部の実施形態では、細胞と複合体またはナノ粒子との接触をin vivoで行う。一部の実施形態では、細胞と複合体またはナノ粒子との接触をex vivoで行う。一部の実施形態では、細胞と複合体またはナノ粒子との接触をin vitroで行う。一部の実施形態では、細胞は、免疫細胞、例えば、顆粒球、マスト細胞、単球、樹状細胞、B細胞、T細胞、またはナチュラルキラー細胞である。一部の実施形態では、T細胞は、不死化T細胞、例えば、T細胞株からのT細胞である。一部の実施形態では、T細胞は、初代T細胞、例えば、個体のT細胞である。一部の実施形態では、細胞は、線維芽細胞である。一部の実施形態では、siRNAは、疾患、例えば、本明細書に記載する処置されることになる疾患のいずれか(例えば、がん、糖尿病、炎症性疾患、線維症、ウイルス感染性疾患、遺伝性疾患、ならびに老齢および変性疾患)の処置に有用である。一部の実施形態では、siRNAの細胞への送達は、細胞における標的の発現減少をもたらす。一部の実施形態では、標的の発現は、少なくとも約30%(例えば、少なくとも約30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95%またはそれ超のいずれか(これらの値の間の任意の範囲を含む))減少される。一部の実施形態では、標的の発現は、少なくとも約5日にわたって(例えば、少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50日またはそれ超のいずれか(これらの値の間の任意の範囲を含む)にわたって)減少したままである。一部の実施形態では、複合体またはナノ粒子は、1つまたは複数のさらなるカーゴ分子をさらに含む。一部の実施形態では、1つまたは複数のさらなるカーゴ分子は、疾患の処置に有用である。
【0127】
一部の実施形態では、プラスミドを細胞に送達する方法であって、細胞を上記の複合体またはナノ粒子と接触させるステップを含み、複合体またはナノ粒子が、プラスミドと、アミノ酸配列XKWRSXRWRLWRXSR(配列番号1)(配列中、Xは、任意のアミノ酸であるか、存在せず、X〜Xは、任意のアミノ酸である)を含むADGNペプチドとを含む、方法が提供される。一部の実施形態では、Xは、βAであるか、Sであるか、存在せず、Xは、AまたはVであり、Xは、GまたはLであり、Xは、WまたはYであり、Xは、VまたはSであり、Xは、R、VまたはAであり、Xは、SまたはLであり、Xは、WまたはYである。一部の実施形態では、ADGNペプチドは、KWRSAGWRWRLWRVRSWSR(配列番号2)、KWRSALYRWRLWRSRSWSR(配列番号3)、またはKWRSALYRWRLWRSALYSR(配列番号4)のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、複合体またはナノ粒子中のプラスミドのADGNペプチドに対するモル比は、約1:10〜約1:40(例えば、約1:20または約1:40)である。一部の実施形態では、細胞と複合体またはナノ粒子との接触をin vivoで行う。一部の実施形態では、細胞と複合体またはナノ粒子との接触をex vivoで行う。一部の実施形態では、細胞と複合体またはナノ粒子との接触をin vitroで行う。一部の実施形態では、細胞は、免疫細胞、例えば、顆粒球、マスト細胞、単球、樹状細胞、B細胞、T細胞、またはナチュラルキラー細胞である。一部の実施形態では、T細胞は、不死化T細胞、例えば、T細胞株からのT細胞である。一部の実施形態では、T細胞は、初代T細胞、例えば、個体のT細胞である。一部の実施形態では、細胞は、線維芽細胞である。一部の実施形態では、プラスミドは、治療用産物、または疾患、例えば、本明細書に記載する処置されることになる疾患のいずれか(例えば、がん、糖尿病、炎症性疾患、線維症、ウイルス感染性疾患、遺伝性疾患、ならびに老齢および変性疾患)の処置に有用な産物をコードする。一部の実施形態では、プラスミドは、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする。一部の実施形態では、疾患はがんであり、CARは、がん関連抗原を標的とする。一部の実施形態では、プラスミドの細胞への送達は、プラスミドによってコードされている産物の発現をもたらす。一部の実施形態では、プラスミドによってコードされている産物は、少なくとも約5日にわたって(例えば、少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50日またはそれ超のいずれか(これらの値の間の任意の範囲を含む)にわたって)発現される。一部の実施形態では、複合体またはナノ粒子は、1つまたは複数のさらなるカーゴ分子をさらに含む。一部の実施形態では、1つまたは複数のさらなるカーゴ分子は、疾患の処置に有用である。
【0128】
一部の実施形態では、プラスミドおよび干渉RNA、例えばsiRNAを細胞に送達する方法であって、細胞を上記の複合体またはナノ粒子と接触させるステップを含み、複合体またはナノ粒子が、プラスミドと、干渉RNAと、アミノ酸配列XKWRSXRWRLWRXSR(配列番号1)(配列中、Xは、任意のアミノ酸であるか、存在せず、X〜Xは、任意のアミノ酸である)を含むADGNペプチドとを含む、方法が提供される。一部の実施形態では、Xは、βAであるか、Sであるか、存在せず、Xは、AまたはVであり、Xは、GまたはLであり、Xは、WまたはYであり、Xは、VまたはSであり、Xは、R、VまたはAであり、Xは、SまたはLであり、Xは、WまたはYである。一部の実施形態では、ADGNペプチドは、KWRSAGWRWRLWRVRSWSR(配列番号2)、KWRSALYRWRLWRSRSWSR(配列番号3)、またはKWRSALYRWRLWRSALYSR(配列番号4)のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、複合体またはナノ粒子中のプラスミドのADGNペプチドに対するモル比は、約1:10〜約1:40(例えば、約1:20または約1:40)であり、複合体またはナノ粒子中の干渉RNAのADGNペプチドに対するモル比は、約1:10〜約1:40(例えば、約1:20または約1:40)である。一部の実施形態では、細胞と複合体またはナノ粒子との接触をin vivoで行う。一部の実施形態では、細胞と複合体またはナノ粒子との接触をex vivoで行う。一部の実施形態では、細胞と複合体またはナノ粒子との接触をin vitroで行う。一部の実施形態では、細胞は、免疫細胞、例えば、顆粒球、マスト細胞、単球、樹状細胞、B細胞、T細胞、またはナチュラルキラー細胞である。一部の実施形態では、T細胞は、不死化T細胞、例えば、T細胞株からのT細胞である。一部の実施形態では、T細胞は、初代T細胞、例えば、個体のT細胞である。一部の実施形態では、細胞は、線維芽細胞である。一部の実施形態では、プラスミドは、治療用産物、または疾患、例えば、本明細書に記載する処置されることになる疾患のいずれか(例えば、がん、糖尿病、炎症性疾患、線維症、ウイルス感染性疾患、遺伝性疾患、ならびに老齢および変性疾患)の処置に有用な産物をコードする。一部の実施形態では、プラスミドは、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする。一部の実施形態では、疾患はがんであり、CARは、がん関連抗原を標的とする。一部の実施形態では、プラスミドの細胞への送達は、プラスミドによってコードされている産物の発現をもたらす。一部の実施形態では、プラスミドによってコードされている産物は、少なくとも約5日にわたって(例えば、少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50日またはそれ超のいずれか(これらの値の間の任意の範囲を含む)にわたって)発現される。一部の実施形態では、干渉RNAは、免疫応答の負の制御に関与するタンパク質をコードするRNA分子、例えばmRNAを特異的に標的とする。一部の実施形態では、干渉RNAは、負の共刺激分子をコードするmRNAを特異的に標的とする。一部の実施形態では、負の共刺激分子は、例えば、PD−1、PD−L1、PD−L2、TIM−3、BTLA、VISTA、LAG−3およびCTLA−4を含む。一部の実施形態では、干渉RNAは、siRNAである。一部の実施形態では、複合体またはナノ粒子は、1つまたは複数のさらなるカーゴ分子をさらに含む。一部の実施形態では、1つまたは複数のさらなるカーゴ分子は、疾患の処置に有用である。
【0129】
一部の実施形態では、プラスミドおよび干渉RNA、例えばsiRNAを細胞に送達する方法であって、a)プラスミドと、アミノ酸配列XKWRSXRWRLWRXSR(配列番号1)を含むADGNペプチドとを含む、第1の上記複合体またはナノ粒子、およびb)干渉RNAと、アミノ酸配列XKWRSXRWRLWRXSR(配列番号1)を含むADGNペプチドとを含む、第2の上記複合体またはナノ粒子と、細胞を接触させるステップを含み、配列中、Xが任意のアミノ酸であるか、存在せず、X〜Xが任意のアミノ酸である、方法が提供される。一部の実施形態では、Xは、βAであるか、Sであるか、存在せず、Xは、AまたはVであり、Xは、GまたはLであり、Xは、WまたはYであり、Xは、VまたはSであり、Xは、R、VまたはAであり、Xは、SまたはLであり、Xは、WまたはYである。一部の実施形態では、ADGNペプチドは、KWRSAGWRWRLWRVRSWSR(配列番号2)、KWRSALYRWRLWRSRSWSR(配列番号3)、またはKWRSALYRWRLWRSALYSR(配列番号4)のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、第1の複合体またはナノ粒子中のプラスミドのADGNペプチドに対するモル比は、約1:10〜約1:40(例えば、約1:20または約1:40)であり、第2の複合体またはナノ粒子中の干渉RNAのADGNペプチドに対するモル比は、約1:10〜約1:40(例えば、約1:20または約1:40)である。一部の実施形態では、細胞と第1および第2の複合体またはナノ粒子との接触をin vivoで行う。一部の実施形態では、細胞と第1および第2の複合体またはナノ粒子との接触をex vivoで行う。一部の実施形態では、細胞と第1および第2の複合体またはナノ粒子との接触をin vitroで行う。一部の実施形態では、細胞は、免疫細胞、例えば、顆粒球、マスト細胞、単球、樹状細胞、B細胞、T細胞、またはナチュラルキラー細胞である。一部の実施形態では、T細胞は、不死化T細胞、例えば、T細胞株からのT細胞である。一部の実施形態では、T細胞は、初代T細胞、例えば、個体のT細胞である。一部の実施形態では、細胞は、線維芽細胞である。一部の実施形態では、プラスミドは、治療用産物、または疾患、例えば、本明細書に記載する処置されることになる疾患のいずれか(例えば、がん、糖尿病、炎症性疾患、線維症、ウイルス感染性疾患、遺伝性疾患、ならびに老齢および変性疾患)の処置に有用な産物をコードする。一部の実施形態では、プラスミドは、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする。一部の実施形態では、疾患はがんであり、CARは、がん関連抗原を標的とする。一部の実施形態では、プラスミドの細胞への送達は、プラスミドによってコードされている産物の発現をもたらす。一部の実施形態では、プラスミドによってコードされている産物は、少なくとも約5日にわたって(例えば、少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50日またはそれ超のいずれか(これらの値の間の任意の範囲を含む)にわたって)発現される。一部の実施形態では、干渉RNAは、免疫応答の負の制御に関与するタンパク質をコードするRNA分子、例えばmRNAを特異的に標的とする。一部の実施形態では、干渉RNAは、負の共刺激分子をコードするmRNAを特異的に標的とする。一部の実施形態では、負の共刺激分子は、例えば、PD−1、PD−L1、PD−L2、TIM−3、BTLA、VISTA、LAG−3およびCTLA−4を含む。一部の実施形態では、干渉RNAは、siRNAである。一部の実施形態では、第1および/または第2の複合体またはナノ粒子は、1つまたは複数のさらなるカーゴ分子をさらに含む。一部の実施形態では、1つまたは複数のさらなるカーゴ分子は、疾患の処置に有用である。
【0130】
一部の実施形態では、ポリペプチドを細胞に送達する方法であって、細胞を上記の複合体またはナノ粒子と接触させるステップを含み、複合体またはナノ粒子が、ポリペプチドと、アミノ酸配列XKWRSXRWRLWRXSR(配列番号1)(配列中、Xは、任意のアミノ酸であるか、存在せず、X〜Xは、任意のアミノ酸である)を含むADGNペプチドとを含む、方法が提供される。一部の実施形態では、Xは、βAであるか、Sであるか、存在せず、Xは、AまたはVであり、Xは、GまたはLであり、Xは、WまたはYであり、Xは、VまたはSであり、Xは、R、VまたはAであり、Xは、SまたはLであり、Xは、WまたはYである。一部の実施形態では、ADGNペプチドは、KWRSAGWRWRLWRVRSWSR(配列番号2)、KWRSALYRWRLWRSRSWSR(配列番号3)、またはKWRSALYRWRLWRSALYSR(配列番号4)のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、複合体またはナノ粒子中のポリペプチドのADGNペプチドに対するモル比は、約1:10〜約1:40(例えば、約1:20または約1:40)である。一部の実施形態では、細胞と複合体またはナノ粒子との接触をin vivoで行う。一部の実施形態では、細胞と複合体またはナノ粒子との接触をex vivoで行う。一部の実施形態では、細胞と複合体またはナノ粒子との接触をin vitroで行う。一部の実施形態では、細胞は、免疫細胞、例えば、顆粒球、マスト細胞、単球、樹状細胞、B細胞、T細胞、またはナチュラルキラー細胞である。一部の実施形態では、T細胞は、不死化T細胞、例えば、T細胞株からのT細胞である。一部の実施形態では、T細胞は、初代T細胞、例えば、個体のT細胞である。一部の実施形態では、細胞は、線維芽細胞である。一部の実施形態では、ポリペプチドは、疾患、例えば、本明細書に記載する処置されることになる疾患のいずれか(例えば、がん、糖尿病、炎症性疾患、線維症、ウイルス感染性疾患、遺伝性疾患、ならびに老齢および変性疾患)の処置に有用である。一部の実施形態では、複合体またはナノ粒子は、1つまたは複数のさらなるカーゴ分子をさらに含む。一部の実施形態では、1つまたは複数のさらなるカーゴ分子は、疾患の処置に有用である。
【0131】
一部の実施形態では、小分子を細胞に送達する方法であって、細胞を上記の複合体またはナノ粒子と接触させるステップを含み、複合体またはナノ粒子が、小分子と、アミノ酸配列XKWRSXRWRLWRXSR(配列番号1)(配列中、Xは、任意のアミノ酸であるか、存在せず、X〜Xは、任意のアミノ酸である)を含むADGNペプチドとを含む、方法が提供される。一部の実施形態では、Xは、βAであるか、Sであるか、存在せず、Xは、AまたはVであり、Xは、GまたはLであり、Xは、WまたはYであり、Xは、VまたはSであり、Xは、R、VまたはAであり、Xは、SまたはLであり、Xは、WまたはYである。一部の実施形態では、ADGNペプチドは、KWRSAGWRWRLWRVRSWSR(配列番号2)、KWRSALYRWRLWRSRSWSR(配列番号3)、またはKWRSALYRWRLWRSALYSR(配列番号4)のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、複合体またはナノ粒子中の小分子のADGNペプチドに対するモル比は、約1:10〜約1:40(例えば、約1:20または約1:40)である。一部の実施形態では、細胞と複合体またはナノ粒子との接触をin vivoで行う。一部の実施形態では、細胞と複合体またはナノ粒子との接触をex vivoで行う。一部の実施形態では、細胞と複合体またはナノ粒子との接触をin vitroで行う。一部の実施形態では、細胞は、免疫細胞、例えば、顆粒球、マスト細胞、単球、樹状細胞、B細胞、T細胞、またはナチュラルキラー細胞である。一部の実施形態では、T細胞は、不死化T細胞、例えば、T細胞株からのT細胞である。一部の実施形態では、T細胞は、初代T細胞、例えば、個体のT細胞である。一部の実施形態では、細胞は、線維芽細胞である。一部の実施形態では、小分子は、疾患、例えば、本明細書に記載する処置されることになる疾患のいずれか(例えば、がん、糖尿病、炎症性疾患、線維症、ウイルス感染性疾患、遺伝性疾患、ならびに老齢および変性疾患)の処置に有用である。一部の実施形態では、複合体またはナノ粒子は、1つまたは複数のさらなるカーゴ分子をさらに含む。一部の実施形態では、1つまたは複数のさらなるカーゴ分子は、疾患の処置に有用である。
【0132】
一部の実施形態では、分子をT細胞に送達する方法であって、細胞を上記の複合体またはナノ粒子と接触させるステップを含み、複合体またはナノ粒子が、分子と、アミノ酸配列XKWRSXRWRLWRXSR(配列番号1)(配列中、Xは、任意のアミノ酸であるか、存在せず、X〜Xは、任意のアミノ酸である)を含むADGNペプチドとを含む、方法が提供される。一部の実施形態では、Xは、βAであるか、Sであるか、存在せず、Xは、AまたはVであり、Xは、GまたはLであり、Xは、WまたはYであり、Xは、VまたはSであり、Xは、R、VまたはAであり、Xは、SまたはLであり、Xは、WまたはYである。一部の実施形態では、ADGNペプチドは、KWRSAGWRWRLWRVRSWSR(配列番号2)、KWRSALYRWRLWRSRSWSR(配列番号3)、またはKWRSALYRWRLWRSALYSR(配列番号4)のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、複合体またはナノ粒子中の分子のADGNペプチドに対するモル比は、約1:10〜約1:40(例えば、約1:20または約1:40)である。一部の実施形態では、T細胞と複合体またはナノ粒子との接触をin vivoで行う。一部の実施形態では、T細胞と複合体またはナノ粒子との接触をex vivoで行う。一部の実施形態では、T細胞と複合体またはナノ粒子との接触をin vitroで行う。一部の実施形態では、T細胞は、不死化T細胞、例えば、T細胞株からのT細胞である。一部の実施形態では、T細胞は、初代T細胞、例えば、個体のT細胞である。一部の実施形態では、分子は、上記のカーゴ分子である。一部の実施形態では、カーゴ分子は、核酸、ポリペプチドおよび小分子からなる群から選択される。一部の実施形態では、カーゴ分子は、疾患、例えば、本明細書に記載する処置されることになる疾患のいずれかの処置に有用である。一部の実施形態では、複合体またはナノ粒子は、1つまたは複数のさらなるカーゴ分子をさらに含む。一部の実施形態では、1つまたは複数のさらなるカーゴ分子は、疾患の処置に有用である。
【0133】
一部の実施形態では、核酸をT細胞に送達する方法であって、細胞を上記の複合体またはナノ粒子と接触させるステップを含み、複合体またはナノ粒子が、核酸と、アミノ酸配列XKWRSXRWRLWRXSR(配列番号1)(配列中、Xは、任意のアミノ酸であるか、存在せず、X〜Xは、任意のアミノ酸である)を含むADGNペプチドとを含む、方法が提供される。一部の実施形態では、Xは、βAであるか、Sであるか、存在せず、Xは、AまたはVであり、Xは、GまたはLであり、Xは、WまたはYであり、Xは、VまたはSであり、Xは、R、VまたはAであり、Xは、SまたはLであり、Xは、WまたはYである。一部の実施形態では、ADGNペプチドは、KWRSAGWRWRLWRVRSWSR(配列番号2)、KWRSALYRWRLWRSRSWSR(配列番号3)、またはKWRSALYRWRLWRSALYSR(配列番号4)のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、複合体またはナノ粒子中の核酸のADGNペプチドに対するモル比は、約1:10〜約1:40(例えば、約1:20または約1:40)である。一部の実施形態では、T細胞と複合体またはナノ粒子との接触をin vivoで行う。一部の実施形態では、T細胞と複合体またはナノ粒子との接触をex vivoで行う。一部の実施形態では、T細胞と複合体またはナノ粒子との接触をin vitroで行う。一部の実施形態では、T細胞は、不死化T細胞、例えば、T細胞株からのT細胞である。一部の実施形態では、T細胞は、初代T細胞、例えば、個体のT細胞である。一部の実施形態では、核酸は、疾患、例えば、本明細書に記載する処置されることになる疾患のいずれか(例えば、がん、糖尿病、炎症性疾患、線維症、ウイルス感染性疾患、遺伝性疾患、ならびに老齢および変性疾患)の処置に有用である。一部の実施形態では、核酸は、RNA、例えばsiRNAである。一部の実施形態では、核酸は、DNA、例えばプラスミドDNAである。一部の実施形態では、プラスミドは、治療用産物、または疾患、例えば、本明細書に記載する処置されることになる疾患のいずれか(例えば、がん、糖尿病、炎症性疾患、線維症、ウイルス感染性疾患、遺伝性疾患、ならびに老齢および変性疾患)の処置に有用な産物をコードする。一部の実施形態では、プラスミドは、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする。一部の実施形態では、複合体またはナノ粒子は、1つまたは複数のさらなるカーゴ分子をさらに含む。一部の実施形態では、1つまたは複数のさらなるカーゴ分子は、疾患の処置に有用である。
【0134】
一部の実施形態では、siRNAをT細胞に送達する方法であって、細胞を上記の複合体またはナノ粒子と接触させるステップを含み、複合体またはナノ粒子が、siRNAと、アミノ酸配列XKWRSXRWRLWRXSR(配列番号1)(配列中、Xは、任意のアミノ酸であるか、存在せず、X〜Xは、任意のアミノ酸である)を含むADGNペプチドとを含む、方法が提供される。一部の実施形態では、Xは、βAであるか、Sであるか、存在せず、Xは、AまたはVであり、Xは、GまたはLであり、Xは、WまたはYであり、Xは、VまたはSであり、Xは、R、VまたはAであり、Xは、SまたはLであり、Xは、WまたはYである。一部の実施形態では、ADGNペプチドは、KWRSAGWRWRLWRVRSWSR(配列番号2)、KWRSALYRWRLWRSRSWSR(配列番号3)、またはKWRSALYRWRLWRSALYSR(配列番号4)のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、複合体またはナノ粒子中のsiRNAのADGNペプチドに対するモル比は、約1:10〜約1:40(例えば、約1:20または約1:40)である。一部の実施形態では、T細胞と複合体またはナノ粒子との接触をin vivoで行う。一部の実施形態では、T細胞と複合体またはナノ粒子との接触をex vivoで行う。一部の実施形態では、T細胞と複合体またはナノ粒子との接触をin vitroで行う。一部の実施形態では、T細胞は、不死化T細胞、例えば、T細胞株からのT細胞である。一部の実施形態では、T細胞は、初代T細胞、例えば、個体のT細胞である。一部の実施形態では、siRNAは、疾患、例えば、本明細書に記載する処置されることになる疾患のいずれか(例えば、がん、糖尿病、炎症性疾患、線維症、ウイルス感染性疾患、遺伝性疾患、ならびに老齢および変性疾患)の処置に有用である。一部の実施形態では、siRNAの細胞への送達は、細胞における標的の発現減少をもたらす。一部の実施形態では、標的の発現は、少なくとも約30%(例えば、少なくとも約30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95%またはそれ超のいずれか(これらの値の間の任意の範囲を含む))減少される。一部の実施形態では、標的の発現は、少なくとも約5日にわたって(例えば、少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50日またはそれ超のいずれか(これらの値の間の任意の範囲を含む)にわたって)減少したままである。一部の実施形態では、複合体またはナノ粒子は、1つまたは複数のさらなるカーゴ分子をさらに含む。一部の実施形態では、1つまたは複数のさらなるカーゴ分子は、疾患の処置に有用である。
【0135】
一部の実施形態では、プラスミドをT細胞に送達する方法であって、細胞を上記の複合体またはナノ粒子と接触させるステップを含み、複合体またはナノ粒子が、プラスミドと、アミノ酸配列XKWRSXRWRLWRXSR(配列番号1)(配列中、Xは、任意のアミノ酸であるか、存在せず、X〜Xは、任意のアミノ酸である)を含むADGNペプチドとを含む、方法が提供される。一部の実施形態では、Xは、βAであるか、Sであるか、存在せず、Xは、AまたはVであり、Xは、GまたはLであり、Xは、WまたはYであり、Xは、VまたはSであり、Xは、R、VまたはAであり、Xは、SまたはLであり、Xは、WまたはYである。一部の実施形態では、ADGNペプチドは、KWRSAGWRWRLWRVRSWSR(配列番号2)、KWRSALYRWRLWRSRSWSR(配列番号3)、またはKWRSALYRWRLWRSALYSR(配列番号4)のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、複合体またはナノ粒子中のプラスミドのADGNペプチドに対するモル比は、約1:10〜約1:40(例えば、約1:20または約1:40)である。一部の実施形態では、T細胞と複合体またはナノ粒子との接触をin vivoで行う。一部の実施形態では、T細胞と複合体またはナノ粒子との接触をex vivoで行う。一部の実施形態では、T細胞と複合体またはナノ粒子との接触をin vitroで行う。一部の実施形態では、T細胞は、不死化T細胞、例えば、T細胞株からのT細胞である。一部の実施形態では、T細胞は、初代T細胞、例えば、個体のT細胞である。一部の実施形態では、プラスミドは、治療用産物、または疾患、例えば、本明細書に記載する処置されることになる疾患のいずれか(例えば、がん、糖尿病、炎症性疾患、線維症、ウイルス感染性疾患、遺伝性疾患、ならびに老齢および変性疾患)の処置に有用な産物をコードする。一部の実施形態では、プラスミドは、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする。一部の実施形態では、疾患はがんであり、CARは、がん関連抗原を標的とする。一部の実施形態では、プラスミドの細胞への送達は、プラスミドによってコードされている産物の発現をもたらす。一部の実施形態では、プラスミドによってコードされている産物は、少なくとも約5日にわたって(例えば、少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50日またはそれ超のいずれか(これらの値の間の任意の範囲を含む)にわたって)発現される。一部の実施形態では、複合体またはナノ粒子は、1つまたは複数のさらなるカーゴ分子をさらに含む。一部の実施形態では、1つまたは複数のさらなるカーゴ分子は、疾患の処置に有用である。一部の実施形態では、1つまたは複数のさらなるカーゴ分子は、免疫応答の負の制御に関与するタンパク質をコードするRNA分子、例えばmRNAを特異的に標的とする1つまたは複数の干渉RNA、例えばsiRNAを含む。一部の実施形態では、干渉RNAは、負の共刺激分子をコードするmRNAを特異的に標的とする。一部の実施形態では、負の共刺激分子は、例えば、PD−1、PD−L1、PD−L2、TIM−3、BTLA、VISTA、LAG−3およびCTLA−4を含む。
【0136】
一部の実施形態では、プラスミドおよび干渉RNA、例えばsiRNAをT細胞に送達する方法であって、細胞を上記の複合体またはナノ粒子と接触させるステップを含み、複合体またはナノ粒子が、プラスミドと、干渉RNAと、アミノ酸配列XKWRSXRWRLWRXSR(配列番号1)(配列中、Xは、任意のアミノ酸であるか、存在せず、X〜Xは、任意のアミノ酸である)を含むADGNペプチドとを含む、方法が提供される。一部の実施形態では、Xは、βAであるか、Sであるか、存在せず、Xは、AまたはVであり、Xは、GまたはLであり、Xは、WまたはYであり、Xは、VまたはSであり、Xは、R、VまたはAであり、Xは、SまたはLであり、Xは、WまたはYである。一部の実施形態では、ADGNペプチドは、KWRSAGWRWRLWRVRSWSR(配列番号2)、KWRSALYRWRLWRSRSWSR(配列番号3)、またはKWRSALYRWRLWRSALYSR(配列番号4)のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、複合体またはナノ粒子中のプラスミドのADGNペプチドに対するモル比は、約1:10〜約1:40(例えば、約1:20または約1:40)であり、複合体またはナノ粒子中の干渉RNAのADGNペプチドに対するモル比は、約1:10〜約1:40(例えば、約1:20または約1:40)である。一部の実施形態では、T細胞と複合体またはナノ粒子との接触をin vivoで行う。一部の実施形態では、T細胞と複合体またはナノ粒子との接触をex vivoで行う。一部の実施形態では、T細胞と複合体またはナノ粒子との接触をin vitroで行う。一部の実施形態では、T細胞は、不死化T細胞、例えば、T細胞株からのT細胞である。一部の実施形態では、T細胞は、初代T細胞、例えば、個体のT細胞である。一部の実施形態では、プラスミドは、治療用産物、または疾患、例えば、本明細書に記載する処置されることになる疾患のいずれか(例えば、がん、糖尿病、炎症性疾患、線維症、ウイルス感染性疾患、遺伝性疾患、ならびに老齢および変性疾患)の処置に有用な産物をコードする。一部の実施形態では、プラスミドは、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする。一部の実施形態では、疾患はがんであり、CARは、がん関連抗原を標的とする。一部の実施形態では、プラスミドの細胞への送達は、プラスミドによってコードされている産物の発現をもたらす。一部の実施形態では、プラスミドによってコードされている産物は、少なくとも約5日にわたって(例えば、少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50日またはそれ超のいずれか(これらの値の間の任意の範囲を含む)にわたって)発現される。一部の実施形態では、干渉RNAは、免疫応答の負の制御に関与するタンパク質をコードするRNA分子、例えばmRNAを特異的に標的とする。一部の実施形態では、干渉RNAは、負の共刺激分子をコードするmRNAを特異的に標的とする。一部の実施形態では、負の共刺激分子は、例えば、PD−1、PD−L1、PD−L2、TIM−3、BTLA、VISTA、LAG−3およびCTLA−4を含む。一部の実施形態では、干渉RNAは、siRNAである。一部の実施形態では、複合体またはナノ粒子は、1つまたは複数のさらなるカーゴ分子をさらに含む。一部の実施形態では、1つまたは複数のさらなるカーゴ分子は、疾患の処置に有用である。
【0137】
一部の実施形態では、プラスミドおよび干渉RNA、例えばsiRNAをT細胞に送達する方法であって、a)プラスミドと、アミノ酸配列XKWRSXRWRLWRXSR(配列番号1)を含むADGNペプチドとを含む、第1の上記複合体またはナノ粒子、およびb)干渉RNAと、アミノ酸配列XKWRSXRWRLWRXSR(配列番号1)を含むADGNペプチドとを含む、第2の上記複合体またはナノ粒子と、細胞を接触させるステップを含み、配列中、Xが任意のアミノ酸であるか、存在せず、X〜Xが任意のアミノ酸である、方法が提供される。一部の実施形態では、Xは、βAであるか、Sであるか、存在せず、Xは、AまたはVであり、Xは、GまたはLであり、Xは、WまたはYであり、Xは、VまたはSであり、Xは、R、VまたはAであり、Xは、SまたはLであり、Xは、WまたはYである。一部の実施形態では、ADGNペプチドは、KWRSAGWRWRLWRVRSWSR(配列番号2)、KWRSALYRWRLWRSRSWSR(配列番号3)、またはKWRSALYRWRLWRSALYSR(配列番号4)のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、第1の複合体またはナノ粒子中のプラスミドのADGNペプチドに対するモル比は、約1:10〜約1:40(例えば、約1:20または約1:40)であり、第2の複合体またはナノ粒子中の干渉RNAのADGNペプチドに対するモル比は、約1:10〜約1:40(例えば、約1:20または約1:40)である。一部の実施形態では、T細胞と第1および第2の複合体またはナノ粒子との接触をin vivoで行う。一部の実施形態では、T細胞と第1および第2の複合体またはナノ粒子との接触をex vivoで行う。一部の実施形態では、T細胞と第1および第2の複合体またはナノ粒子との接触をin vitroで行う。一部の実施形態では、T細胞は、不死化T細胞、例えば、T細胞株からのT細胞である。一部の実施形態では、T細胞は、初代T細胞、例えば、個体のT細胞である。一部の実施形態では、プラスミドは、治療用産物、または疾患、例えば、本明細書に記載する処置されることになる疾患のいずれか(例えば、がん、糖尿病、炎症性疾患、線維症、ウイルス感染性疾患、遺伝性疾患、ならびに老齢および変性疾患)の処置に有用な産物をコードする。一部の実施形態では、プラスミドは、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする。一部の実施形態では、疾患はがんであり、CARは、がん関連抗原を標的とする。一部の実施形態では、プラスミドの細胞への送達は、プラスミドによってコードされている産物の発現をもたらす。一部の実施形態では、プラスミドによってコードされている産物は、少なくとも約5日にわたって(例えば、少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50日またはそれ超のいずれか(これらの値の間の任意の範囲を含む)にわたって)発現される。一部の実施形態では、干渉RNAは、免疫応答の負の制御に関与するタンパク質をコードするRNA分子、例えばmRNAを特異的に標的とする。一部の実施形態では、干渉RNAは、負の共刺激分子をコードするmRNAを特異的に標的とする。一部の実施形態では、負の共刺激分子は、例えば、PD−1、PD−L1、PD−L2、TIM−3、BTLA、VISTA、LAG−3およびCTLA−4を含む。一部の実施形態では、干渉RNAは、siRNAである。一部の実施形態では、第1および/または第2の複合体またはナノ粒子は、1つまたは複数のさらなるカーゴ分子をさらに含む。一部の実施形態では、1つまたは複数のさらなるカーゴ分子は、疾患の処置に有用である。
【0138】
一部の実施形態では、ポリペプチドをT細胞に送達する方法であって、細胞を上記の複合体またはナノ粒子と接触させるステップを含み、複合体またはナノ粒子が、ポリペプチドと、アミノ酸配列XKWRSXRWRLWRXSR(配列番号1)(配列中、Xは、任意のアミノ酸であるか、存在せず、X〜Xは、任意のアミノ酸である)を含むADGNペプチドとを含む、方法が提供される。一部の実施形態では、Xは、βAであるか、Sであるか、存在せず、Xは、AまたはVであり、Xは、GまたはLであり、Xは、WまたはYであり、Xは、VまたはSであり、Xは、R、VまたはAであり、Xは、SまたはLであり、Xは、WまたはYである。一部の実施形態では、ADGNペプチドは、KWRSAGWRWRLWRVRSWSR(配列番号2)、KWRSALYRWRLWRSRSWSR(配列番号3)、またはKWRSALYRWRLWRSALYSR(配列番号4)のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、複合体またはナノ粒子中のポリペプチドのADGNペプチドに対するモル比は、約1:10〜約1:40(例えば、約1:20または約1:40)である。一部の実施形態では、T細胞と複合体またはナノ粒子との接触をin vivoで行う。一部の実施形態では、T細胞と複合体またはナノ粒子との接触をex vivoで行う。一部の実施形態では、T細胞と複合体またはナノ粒子との接触をin vitroで行う。一部の実施形態では、T細胞は、不死化T細胞、例えば、T細胞株からのT細胞である。一部の実施形態では、T細胞は、初代T細胞、例えば、個体のT細胞である。一部の実施形態では、ポリペプチドは、疾患、例えば、本明細書に記載する処置されることになる疾患のいずれか(例えば、がん、糖尿病、炎症性疾患、線維症、ウイルス感染性疾患、遺伝性疾患、ならびに老齢および変性疾患)の処置に有用である。一部の実施形態では、複合体またはナノ粒子は、1つまたは複数のさらなるカーゴ分子をさらに含む。一部の実施形態では、1つまたは複数のさらなるカーゴ分子は、疾患の処置に有用である。
【0139】
一部の実施形態では、小分子をT細胞に送達する方法であって、細胞を上記の複合体またはナノ粒子と接触させるステップを含み、複合体またはナノ粒子が、小分子と、アミノ酸配列XKWRSXRWRLWRXSR(配列番号1)(配列中、Xは、任意のアミノ酸であるか、存在せず、X〜Xは、任意のアミノ酸である)を含むADGNペプチドとを含む、方法が提供される。一部の実施形態では、Xは、βAであるか、Sであるか、存在せず、Xは、AまたはVであり、Xは、GまたはLであり、Xは、WまたはYであり、Xは、VまたはSであり、Xは、R、VまたはAであり、Xは、SまたはLであり、Xは、WまたはYである。一部の実施形態では、ADGNペプチドは、KWRSAGWRWRLWRVRSWSR(配列番号2)、KWRSALYRWRLWRSRSWSR(配列番号3)、またはKWRSALYRWRLWRSALYSR(配列番号4)のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、複合体またはナノ粒子中の小分子のADGNペプチドに対するモル比は、約1:10〜約1:40(例えば、約1:20または約1:40)である。一部の実施形態では、T細胞と複合体またはナノ粒子との接触をin vivoで行う。一部の実施形態では、T細胞と複合体またはナノ粒子との接触をex vivoで行う。一部の実施形態では、T細胞と複合体またはナノ粒子との接触をin vitroで行う。一部の実施形態では、T細胞は、不死化T細胞、例えば、T細胞株からのT細胞である。一部の実施形態では、T細胞は、初代T細胞、例えば、個体のT細胞である。一部の実施形態では、小分子は、疾患、例えば、本明細書に記載する処置されることになる疾患のいずれか(例えば、がん、糖尿病、炎症性疾患、線維症、ウイルス感染性疾患、遺伝性疾患、ならびに老齢および変性疾患)の処置に有用である。一部の実施形態では、複合体またはナノ粒子は、1つまたは複数のさらなるカーゴ分子をさらに含む。一部の実施形態では、1つまたは複数のさらなるカーゴ分子は、疾患の処置に有用である。
【0140】
一部の実施形態では、分子をT細胞に送達する方法であって、細胞を上記の複合体またはナノ粒子と接触させるステップを含み、複合体またはナノ粒子が、分子と、アミノ酸配列XWWXWAX101112WX13R(配列番号25)(配列中、Xは、任意のアミノ酸であるか、存在せず、X〜X13は、任意のアミノ酸である)を含むVEPEP−9ペプチドとを含む、方法が提供される。一部の実施形態では、Xは、βAであるか、Sであるか、存在せず、Xは、Lであるか、存在せず、Xは、Rであるか、存在せず、Xは、L、RまたはGであり、Xは、R、WまたはSであり、Xは、S、PまたはTであり、Xは、WまたはPであり、Xは、F、AまたはRであり、Xは、S、L、PまたはRであり、X10は、RまたはSであり、X11は、Wであるか、存在せず、X12は、Aであるか、Rであるか、存在せず、X13は、WまたはFであり、Xが存在しない場合には、X、X11およびX12も存在しない。一部の実施形態では、VEPEP−9ペプチドは、LRWWLRWASRWFSRWAWWR(配列番号26)、LRWWLRWASRWASRWAWFR(配列番号27)またはRWWLRWASRWALSWRWWR(配列番号28)のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、複合体またはナノ粒子中の分子のVEPEP−9ペプチドに対するモル比は、約1:10〜約1:40(例えば、約1:20または約1:40)である。一部の実施形態では、T細胞と複合体またはナノ粒子との接触をin vivoで行う。一部の実施形態では、T細胞と複合体またはナノ粒子との接触をex vivoで行う。一部の実施形態では、T細胞と複合体またはナノ粒子との接触をin vitroで行う。一部の実施形態では、T細胞は、不死化T細胞、例えば、T細胞株からのT細胞である。一部の実施形態では、T細胞は、初代T細胞、例えば、個体のT細胞である。一部の実施形態では、分子は、上記のカーゴ分子である。一部の実施形態では、カーゴ分子は、核酸、ポリペプチドおよび小分子からなる群から選択される。一部の実施形態では、カーゴ分子は、疾患、例えば、本明細書に記載する処置されることになる疾患のいずれかの処置に有用である。一部の実施形態では、複合体またはナノ粒子は、1つまたは複数のさらなるカーゴ分子をさらに含む。一部の実施形態では、1つまたは複数のさらなるカーゴ分子は、疾患の処置に有用である。
【0141】
一部の実施形態では、核酸をT細胞に送達する方法であって、細胞を上記の複合体またはナノ粒子と接触させるステップを含み、複合体またはナノ粒子が、核酸と、アミノ酸配列XWWXWAX101112WX13R(配列番号25)(配列中、Xは、任意のアミノ酸であるか、存在せず、X〜X13は、任意のアミノ酸である)を含むVEPEP−9ペプチドとを含む、方法が提供される。一部の実施形態では、Xは、βAであるか、Sであるか、存在せず、Xは、Lであるか、存在せず、Xは、Rであるか、存在せず、Xは、L、RまたはGであり、Xは、R、WまたはSであり、Xは、S、PまたはTであり、Xは、WまたはPであり、Xは、F、AまたはRであり、Xは、S、L、PまたはRであり、X10は、RまたはSであり、X11は、Wであるか、存在せず、X12は、Aであるか、Rであるか、存在せず、X13は、WまたはFであり、Xが存在しない場合には、X、X11およびX12も存在しない。一部の実施形態では、VEPEP−9ペプチドは、LRWWLRWASRWFSRWAWWR(配列番号26)、LRWWLRWASRWASRWAWFR(配列番号27)またはRWWLRWASRWALSWRWWR(配列番号28)のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、複合体またはナノ粒子中の核酸のVEPEP−9ペプチドに対するモル比は、約1:10〜約1:40(例えば、約1:20または約1:40)である。一部の実施形態では、T細胞と複合体またはナノ粒子との接触をin vivoで行う。一部の実施形態では、T細胞と複合体またはナノ粒子との接触をex vivoで行う。一部の実施形態では、T細胞と複合体またはナノ粒子との接触をin vitroで行う。一部の実施形態では、T細胞は、不死化T細胞、例えば、T細胞株からのT細胞である。一部の実施形態では、T細胞は、初代T細胞、例えば、個体のT細胞である。一部の実施形態では、核酸は、疾患、例えば、本明細書に記載する処置されることになる疾患のいずれか(例えば、がん、糖尿病、炎症性疾患、線維症、ウイルス感染性疾患、遺伝性疾患、ならびに老齢および変性疾患)の処置に有用である。一部の実施形態では、核酸は、RNA、例えばsiRNAである。一部の実施形態では、核酸は、DNA、例えばプラスミドDNAである。一部の実施形態では、プラスミドは、治療用産物、または疾患、例えば、本明細書に記載する処置されることになる疾患のいずれか(例えば、がん、糖尿病、炎症性疾患、線維症、ウイルス感染性疾患、遺伝性疾患、ならびに老齢および変性疾患)の処置に有用な産物をコードする。一部の実施形態では、プラスミドは、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする。一部の実施形態では、複合体またはナノ粒子は、1つまたは複数のさらなるカーゴ分子をさらに含む。一部の実施形態では、1つまたは複数のさらなるカーゴ分子は、疾患の処置に有用である。
【0142】
一部の実施形態では、siRNAをT細胞に送達する方法であって、細胞を上記の複合体またはナノ粒子と接触させるステップを含み、複合体またはナノ粒子が、siRNAと、アミノ酸配列XWWXWAX101112WX13R(配列番号25)(配列中、Xは、任意のアミノ酸であるか、存在せず、X〜X13は、任意のアミノ酸である)を含むVEPEP−9ペプチドとを含む、方法が提供される。一部の実施形態では、Xは、βAであるか、Sであるか、存在せず、Xは、Lであるか、存在せず、Xは、Rであるか、存在せず、Xは、L、RまたはGであり、Xは、R、WまたはSであり、Xは、S、PまたはTであり、Xは、WまたはPであり、Xは、F、AまたはRであり、Xは、S、L、PまたはRであり、X10は、RまたはSであり、X11は、Wであるか、存在せず、X12は、Aであるか、Rであるか、存在せず、X13は、WまたはFであり、Xが存在しない場合には、X、X11およびX12も存在しない。一部の実施形態では、VEPEP−9ペプチドは、LRWWLRWASRWFSRWAWWR(配列番号26)、LRWWLRWASRWASRWAWFR(配列番号27)またはRWWLRWASRWALSWRWWR(配列番号28)のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、複合体またはナノ粒子中のsiRNAのVEPEP−9ペプチドに対するモル比は、約1:10〜約1:40(例えば、約1:20または約1:40)である。一部の実施形態では、T細胞と複合体またはナノ粒子との接触をin vivoで行う。一部の実施形態では、T細胞と複合体またはナノ粒子との接触をex vivoで行う。一部の実施形態では、T細胞と複合体またはナノ粒子との接触をin vitroで行う。一部の実施形態では、T細胞は、不死化T細胞、例えば、T細胞株からのT細胞である。一部の実施形態では、T細胞は、初代T細胞、例えば、個体のT細胞である。一部の実施形態では、siRNAは、疾患、例えば、本明細書に記載する処置されることになる疾患のいずれか(例えば、がん、糖尿病、炎症性疾患、線維症、ウイルス感染性疾患、遺伝性疾患、ならびに老齢および変性疾患)の処置に有用である。一部の実施形態では、siRNAの細胞への送達は、細胞における標的の発現減少をもたらす。一部の実施形態では、標的の発現は、少なくとも約30%(例えば、少なくとも約30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95%またはそれ超のいずれか(これらの値の間の任意の範囲を含む))減少される。一部の実施形態では、標的の発現は、少なくとも約5日にわたって(例えば、少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50日またはそれ超のいずれか(これらの値の間の任意の範囲を含む)にわたって)減少したままである。一部の実施形態では、複合体またはナノ粒子は、1つまたは複数のさらなるカーゴ分子をさらに含む。一部の実施形態では、1つまたは複数のさらなるカーゴ分子は、疾患の処置に有用である。
【0143】
一部の実施形態では、プラスミドをT細胞に送達する方法であって、細胞を上記の複合体またはナノ粒子と接触させるステップを含み、複合体またはナノ粒子が、プラスミドと、アミノ酸配列XWWXWAX101112WX13R(配列番号25)(配列中、Xは、任意のアミノ酸であるか、存在せず、X〜X13は、任意のアミノ酸である)を含むVEPEP−9ペプチドとを含む、方法が提供される。一部の実施形態では、Xは、βAであるか、Sであるか、存在せず、Xは、Lであるか、存在せず、Xは、Rであるか、存在せず、Xは、L、RまたはGであり、Xは、R、WまたはSであり、Xは、S、PまたはTであり、Xは、WまたはPであり、Xは、F、AまたはRであり、Xは、S、L、PまたはRであり、X10は、RまたはSであり、X11は、Wであるか、存在せず、X12は、Aであるか、Rであるか、存在せず、X13は、WまたはFであり、Xが存在しない場合には、X、X11およびX12も存在しない。一部の実施形態では、VEPEP−9ペプチドは、LRWWLRWASRWFSRWAWWR(配列番号26)、LRWWLRWASRWASRWAWFR(配列番号27)またはRWWLRWASRWALSWRWWR(配列番号28)のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、複合体またはナノ粒子中のプラスミドのVEPEP−9ペプチドに対するモル比は、約1:10〜約1:40(例えば、約1:20または約1:40)である。一部の実施形態では、T細胞と複合体またはナノ粒子との接触をin vivoで行う。一部の実施形態では、T細胞と複合体またはナノ粒子との接触をex vivoで行う。一部の実施形態では、T細胞と複合体またはナノ粒子との接触をin vitroで行う。一部の実施形態では、T細胞は、不死化T細胞、例えば、T細胞株からのT細胞である。一部の実施形態では、T細胞は、初代T細胞、例えば、個体のT細胞である。一部の実施形態では、プラスミドは、治療用産物、または疾患、例えば、本明細書に記載する処置されることになる疾患のいずれか(例えば、がん、糖尿病、炎症性疾患、線維症、ウイルス感染性疾患、遺伝性疾患、ならびに老齢および変性疾患)の処置に有用な産物をコードする。一部の実施形態では、プラスミドは、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする。一部の実施形態では、疾患はがんであり、CARは、がん関連抗原を標的とする。一部の実施形態では、プラスミドの細胞への送達は、プラスミドによってコードされている産物の発現をもたらす。一部の実施形態では、プラスミドによってコードされている産物は、少なくとも約5日にわたって(例えば、少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50日またはそれ超のいずれか(これらの値の間の任意の範囲を含む)にわたって)発現される。一部の実施形態では、複合体またはナノ粒子は、1つまたは複数のさらなるカーゴ分子をさらに含む。一部の実施形態では、1つまたは複数のさらなるカーゴ分子は、疾患の処置に有用である。
【0144】
一部の実施形態では、プラスミドおよび干渉RNA、例えばsiRNAをT細胞に送達する方法であって、細胞を上記の複合体またはナノ粒子と接触させるステップを含み、複合体またはナノ粒子が、プラスミドと、干渉RNAと、アミノ酸配列XWWXWAX101112WX13R(配列番号25)(配列中、Xは、任意のアミノ酸であるか、存在せず、X〜X13は、任意のアミノ酸である)を含むVEPEP−9ペプチドとを含む、方法が提供される。一部の実施形態では、Xは、βAであるか、Sであるか、存在せず、Xは、Lであるか、存在せず、Xは、Rであるか、存在せず、Xは、L、RまたはGであり、Xは、R、WまたはSであり、Xは、S、PまたはTであり、Xは、WまたはPであり、Xは、F、AまたはRであり、Xは、S、L、PまたはRであり、X10は、RまたはSであり、X11は、Wであるか、存在せず、X12は、Aであるか、Rであるか、存在せず、X13は、WまたはFであり、Xが存在しない場合には、X、X11およびX12も存在しない。一部の実施形態では、VEPEP−9ペプチドは、LRWWLRWASRWFSRWAWWR(配列番号26)、LRWWLRWASRWASRWAWFR(配列番号27)またはRWWLRWASRWALSWRWWR(配列番号28)のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、複合体またはナノ粒子中のプラスミドのVEPEP−9ペプチドに対するモル比は、約1:10〜約1:40(例えば、約1:20または約1:40)であり、複合体またはナノ粒子中の干渉RNAのVEPEP−9ペプチドに対するモル比は、約1:10〜約1:40(例えば、約1:20または約1:40)である。一部の実施形態では、T細胞と複合体またはナノ粒子の接触をin vivoで行う。一部の実施形態では、T細胞と複合体またはナノ粒子との接触をex vivoで行う。一部の実施形態では、T細胞と複合体またはナノ粒子との接触をin vitroで行う。一部の実施形態では、T細胞は、不死化T細胞、例えば、T細胞株からのT細胞である。一部の実施形態では、T細胞は、初代T細胞、例えば、個体のT細胞である。一部の実施形態では、プラスミドは、治療用産物、または疾患、例えば、本明細書に記載する処置されることになる疾患のいずれか(例えば、がん、糖尿病、炎症性疾患、線維症、ウイルス感染性疾患、遺伝性疾患、ならびに老齢および変性疾患)の疾患の処置に有用な産物をコードする。一部の実施形態では、プラスミドは、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする。一部の実施形態では、疾患はがんであり、CARは、がん関連抗原を標的とする。一部の実施形態では、プラスミドの細胞への送達は、プラスミドによってコードされている産物の発現をもたらす。一部の実施形態では、プラスミドによってコードされている産物は、少なくとも約5日にわたって(例えば、少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50日またはそれ超のいずれか(これらの値の間の任意の範囲を含む)にわたって)発現される。一部の実施形態では、干渉RNAは、免疫応答の負の制御に関与するタンパク質をコードするRNA分子、例えばmRNAを特異的に標的とする。一部の実施形態では、干渉RNAは、負の共刺激分子をコードするmRNAを特異的に標的とする。一部の実施形態では、負の共刺激分子は、例えば、PD−1、PD−L1、PD−L2、TIM−3、BTLA、VISTA、LAG−3およびCTLA−4を含む。一部の実施形態では、干渉RNAは、siRNAである。一部の実施形態では、複合体またはナノ粒子は、1つまたは複数のさらなるカーゴ分子をさらに含む。一部の実施形態では、1つまたは複数のさらなるカーゴ分子は、疾患の処置に有用である。
【0145】
一部の実施形態では、プラスミドおよび干渉RNA、例えばsiRNAをT細胞に送達する方法であって、a)プラスミドと、アミノ酸配列XWWXWAX101112WX13R(配列番号25)を含むVEPEP−9ペプチドとを含む、第1の上記の複合体またはナノ粒子、およびb)干渉RNAと、アミノ酸配列XWWXWAX101112WX13R(配列番号25)を含むVEPEP−9ペプチドとを含む、第2の上記の複合体またはナノ粒子と、細胞を接触させるステップを含み、配列中、Xが任意のアミノ酸であるか、存在せず、X〜X13が任意のアミノ酸である、方法が提供される。一部の実施形態では、Xは、βAであるか、Sであるか、存在せず、Xは、Lであるか、存在せず、Xは、Rであるか、存在せず、Xは、L、RまたはGであり、Xは、R、WまたはSであり、Xは、S、PまたはTであり、Xは、WまたはPであり、Xは、F、AまたはRであり、Xは、S、L、PまたはRであり、X10は、RまたはSであり、X11は、Wであるか、存在せず、X12は、Aであるか、Rであるか、存在せず、X13は、WまたはFであり、Xが存在しない場合には、X、X11およびX12も存在しない。一部の実施形態では、VEPEP−9ペプチドは、LRWWLRWASRWFSRWAWWR(配列番号26)、LRWWLRWASRWASRWAWFR(配列番号27)またはRWWLRWASRWALSWRWWR(配列番号28)のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、第1の複合体またはナノ粒子中のプラスミドのVEPEP−9ペプチドに対するモル比は、約1:10〜約1:40(例えば、約1:20または約1:40)であり、第2の複合体またはナノ粒子中の干渉RNAのVEPEP−9ペプチドに対するモル比は、約1:10〜約1:40(例えば、約1:20または約1:40)である。一部の実施形態では、T細胞と第1および第2の複合体またはナノ粒子の接触をin vivoで行う。一部の実施形態では、T細胞と第1および第2の複合体またはナノ粒子との接触をex vivoで行う。一部の実施形態では、T細胞と第1および第2の複合体またはナノ粒子との接触をin vitroで行う。一部の実施形態では、T細胞は、不死化T細胞、例えば、T細胞株からのT細胞である。一部の実施形態では、T細胞は、初代T細胞、例えば、個体のT細胞である。一部の実施形態では、プラスミドは、治療用産物、または疾患、例えば、本明細書に記載する処置されることになる疾患のいずれか(例えば、がん、糖尿病、炎症性疾患、線維症、ウイルス感染性疾患、遺伝性疾患、ならびに老齢および変性疾患)の処置に有用な産物をコードする。一部の実施形態では、プラスミドは、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする。一部の実施形態では、疾患はがんであり、CARは、がん関連抗原を標的とする。一部の実施形態では、プラスミドの細胞への送達は、プラスミドによってコードされている産物の発現をもたらす。一部の実施形態では、プラスミドによってコードされている産物は、少なくとも約5日にわたって(例えば、少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50日またはそれ超のいずれか(これらの値の間の任意の範囲を含む)にわたって)発現される。一部の実施形態では、干渉RNAは、免疫応答の負の制御に関与するタンパク質をコードするRNA分子、例えばmRNAを特異的に標的とする。一部の実施形態では、干渉RNAは、負の共刺激分子をコードするmRNAを特異的に標的とする。一部の実施形態では、負の共刺激分子は、例えば、PD−1、PD−L1、PD−L2、TIM−3、BTLA、VISTA、LAG−3およびCTLA−4を含む。一部の実施形態では、干渉RNAは、siRNAである。一部の実施形態では、第1および/または第2の複合体またはナノ粒子は、1つまたは複数のさらなるカーゴ分子をさらに含む。一部の実施形態では、1つまたは複数のさらなるカーゴ分子は、疾患の処置に有用である。
【0146】
一部の実施形態では、ポリペプチドをT細胞に送達する方法であって、細胞を上記の複合体またはナノ粒子と接触させるステップを含み、複合体またはナノ粒子が、ポリペプチドと、アミノ酸配列XWWXWAX101112WX13R(配列番号25)(配列中、Xは、任意のアミノ酸であるか、存在せず、X〜X13は、任意のアミノ酸である)を含むVEPEP−9ペプチドとを含む、方法が提供される。一部の実施形態では、Xは、βAであるか、Sであるか、存在せず、Xは、Lであるか、存在せず、Xは、Rであるか、存在せず、Xは、L、RまたはGであり、Xは、R、WまたはSであり、Xは、S、PまたはTであり、Xは、WまたはPであり、Xは、F、AまたはRであり、Xは、S、L、PまたはRであり、X10は、RまたはSであり、X11は、Wであるか、存在せず、X12は、Aであるか、Rであるか、存在せず、X13は、WまたはFであり、Xが存在しない場合には、X、X11およびX12も存在しない。一部の実施形態では、VEPEP−9ペプチドは、LRWWLRWASRWFSRWAWWR(配列番号26)、LRWWLRWASRWASRWAWFR(配列番号27)またはRWWLRWASRWALSWRWWR(配列番号28)のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、複合体またはナノ粒子中のポリペプチドのVEPEP−9ペプチドに対するモル比は、約1:10〜約1:40(例えば、約1:20または約1:40)である。一部の実施形態では、T細胞と複合体またはナノ粒子との接触をin vivoで行う。一部の実施形態では、T細胞と複合体またはナノ粒子との接触をex vivoで行う。一部の実施形態では、T細胞と複合体またはナノ粒子との接触をin vitroで行う。一部の実施形態では、T細胞は、不死化T細胞、例えば、T細胞株からのT細胞である。一部の実施形態では、T細胞は、初代T細胞、例えば、個体のT細胞である。一部の実施形態では、ポリペプチドは、疾患、例えば、本明細書に記載する処置されることになる疾患のいずれか(例えば、がん、糖尿病、炎症性疾患、線維症、ウイルス感染性疾患、遺伝性疾患、ならびに老齢および変性疾患)の処置に有用である。一部の実施形態では、複合体またはナノ粒子は、1つまたは複数のさらなるカーゴ分子をさらに含む。一部の実施形態では、1つまたは複数のさらなるカーゴ分子は、疾患の処置に有用である。
【0147】
一部の実施形態では、小分子をT細胞に送達する方法であって、細胞を上記の複合体またはナノ粒子と接触させるステップを含み、複合体またはナノ粒子が、小分子と、アミノ酸配列XWWXWAX101112WX13R(配列番号25)(配列中、Xは、任意のアミノ酸であるか、存在せず、X〜X13は、任意のアミノ酸である)を含むVEPEP−9ペプチドとを含む、方法が提供される。一部の実施形態では、Xは、βAであるか、Sであるか、存在せず、Xは、Lであるか、存在せず、Xは、Rであるか、存在せず、Xは、L、RまたはGであり、Xは、R、WまたはSであり、Xは、S、PまたはTであり、Xは、WまたはPであり、Xは、F、AまたはRであり、Xは、S、L、PまたはRであり、X10は、RまたはSであり、X11は、Wであるか、存在せず、X12は、Aであるか、Rであるか、存在せず、X13は、WまたはFであり、Xが存在しない場合には、X、X11およびX12も存在しない。一部の実施形態では、VEPEP−9ペプチドは、LRWWLRWASRWFSRWAWWR(配列番号26)、LRWWLRWASRWASRWAWFR(配列番号27)またはRWWLRWASRWALSWRWWR(配列番号28)のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、複合体またはナノ粒子中の小分子のVEPEP−9ペプチドに対するモル比は、約1:10〜約1:40(例えば、約1:20または約1:40)である。一部の実施形態では、T細胞と複合体またはナノ粒子との接触をin vivoで行う。一部の実施形態では、T細胞と複合体またはナノ粒子との接触をex vivoで行う。一部の実施形態では、T細胞と複合体またはナノ粒子との接触をin vitroで行う。一部の実施形態では、T細胞は、不死化T細胞、例えば、T細胞株からのT細胞である。一部の実施形態では、T細胞は、初代T細胞、例えば、個体のT細胞である。一部の実施形態では、小分子は、疾患、例えば、本明細書に記載する処置されることになる疾患のいずれか(例えば、がん、糖尿病、炎症性疾患、線維症、ウイルス感染性疾患、遺伝性疾患、ならびに老齢および変性疾患)の処置に有用である。一部の実施形態では、複合体またはナノ粒子は、1つまたは複数のさらなるカーゴ分子をさらに含む。一部の実施形態では、1つまたは複数のさらなるカーゴ分子は、疾患の処置に有用である。
【0148】
一部の実施形態では、分子を個体の細胞に送達する方法であって、上記の複合体またはナノ粒子を含む組成物を個体に投与するステップを含み、複合体またはナノ粒子が、分子と、アミノ酸配列XKWRSXRWRLWRXSR(配列番号1)(配列中、Xは、任意のアミノ酸であるか、存在せず、X〜Xは、任意のアミノ酸である)を含むADGNペプチドとを含む、方法が提供される。一部の実施形態では、Xは、βAであるか、Sであるか、存在せず、Xは、AまたはVであり、Xは、GまたはLであり、Xは、WまたはYであり、Xは、VまたはSであり、Xは、R、VまたはAであり、Xは、SまたはLであり、Xは、WまたはYである。一部の実施形態では、ADGNペプチドは、KWRSAGWRWRLWRVRSWSR(配列番号2)、KWRSALYRWRLWRSRSWSR(配列番号3)、またはKWRSALYRWRLWRSALYSR(配列番号4)のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、複合体またはナノ粒子中の分子のADGNペプチドに対するモル比は、約1:10〜約1:40(例えば、約1:20または約1:40)である。一部の実施形態では、組成物を個体に静脈内、動脈内、腹腔内、小胞内、皮下、髄腔内、肺内、筋肉内、気管内、眼内、経皮、経口または吸入経路によって投与する。一部の実施形態では、組成物を個体に静脈内経路によって投与する。一部の実施形態では、組成物を個体に皮下経路によって投与する。一部の実施形態では、分子は、上記のカーゴ分子である。一部の実施形態では、カーゴ分子は、核酸、ポリペプチドおよび小分子からなる群から選択される。一部の実施形態では、細胞は、免疫細胞、例えば、顆粒球、マスト細胞、単球、樹状細胞、B細胞、T細胞、またはナチュラルキラー細胞である。一部の実施形態では、個体は、疾患を有し、または疾患を発症するリスクがあり、カーゴ分子は、疾患の処置に有用である。一部の実施形態では、複合体またはナノ粒子は、1つまたは複数のさらなるカーゴ分子をさらに含む。一部の実施形態では、1つまたは複数のさらなるカーゴ分子は、疾患の処置に有用である。一部の実施形態では、組成物は医薬組成物であり、薬学的に許容される担体をさらに含む。一部の実施形態では、個体は哺乳動物である。一部の実施形態では、個体はヒトである。
【0149】
一部の実施形態では、核酸を個体の細胞に送達する方法であって、上記の複合体またはナノ粒子を含む組成物を個体に投与するステップを含み、複合体またはナノ粒子が、核酸と、アミノ酸配列XKWRSXRWRLWRXSR(配列番号1)(配列中、Xは、任意のアミノ酸であるか、存在せず、X〜Xは、任意のアミノ酸である)を含むADGNペプチドとを含む、方法が提供される。一部の実施形態では、Xは、βAであるか、Sであるか、存在せず、Xは、AまたはVであり、Xは、GまたはLであり、Xは、WまたはYであり、Xは、VまたはSであり、Xは、R、VまたはAであり、Xは、SまたはLであり、Xは、WまたはYである。一部の実施形態では、ADGNペプチドは、KWRSAGWRWRLWRVRSWSR(配列番号2)、KWRSALYRWRLWRSRSWSR(配列番号3)、またはKWRSALYRWRLWRSALYSR(配列番号4)のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、複合体またはナノ粒子中の核酸のADGNペプチドに対するモル比は、約1:10〜約1:40(例えば、約1:20または約1:40)である。一部の実施形態では、組成物を個体に静脈内、動脈内、腹腔内、小胞内、皮下、髄腔内、肺内、筋肉内、気管内、眼内、経皮、経口または吸入経路によって投与する。一部の実施形態では、組成物を個体に静脈内経路によって投与する。一部の実施形態では、組成物を個体に皮下経路によって投与する。一部の実施形態では、核酸は、RNA、例えばsiRNAである。一部の実施形態では、核酸は、DNA、例えばプラスミドDNAである。一部の実施形態では、プラスミドは、治療用産物、または疾患、例えば、本明細書に記載する処置されることになる疾患のいずれか(例えば、がん、糖尿病、炎症性疾患、線維症、ウイルス感染性疾患、遺伝性疾患、ならびに老齢および変性疾患)の処置に有用な産物をコードする。一部の実施形態では、プラスミドは、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする。一部の実施形態では、細胞は、免疫細胞、例えば、顆粒球、マスト細胞、単球、樹状細胞、B細胞、T細胞、またはナチュラルキラー細胞である。一部の実施形態では、個体は、疾患を有し、または疾患を発症するリスクがあり、核酸は、疾患の処置に有用である。一部の実施形態では、複合体またはナノ粒子は、1つまたは複数のさらなるカーゴ分子をさらに含む。一部の実施形態では、1つまたは複数のさらなるカーゴ分子は、疾患の処置に有用である。一部の実施形態では、組成物は医薬組成物であり、薬学的に許容される担体をさらに含む。一部の実施形態では、個体は哺乳動物である。一部の実施形態では、個体はヒトである。
【0150】
一部の実施形態では、siRNAを個体の細胞に送達する方法であって、上記の複合体またはナノ粒子を含む組成物を個体に投与するステップを含み、複合体またはナノ粒子が、siRNAと、アミノ酸配列XKWRSXRWRLWRXSR(配列番号1)(配列中、Xは、任意のアミノ酸であるか、存在せず、X〜Xは、任意のアミノ酸である)を含むADGNペプチドとを含む、方法が提供される。一部の実施形態では、Xは、βAであるか、Sであるか、存在せず、Xは、AまたはVであり、Xは、GまたはLであり、Xは、WまたはYであり、Xは、VまたはSであり、Xは、R、VまたはAであり、Xは、SまたはLであり、Xは、WまたはYである。一部の実施形態では、ADGNペプチドは、KWRSAGWRWRLWRVRSWSR(配列番号2)、KWRSALYRWRLWRSRSWSR(配列番号3)、またはKWRSALYRWRLWRSALYSR(配列番号4)のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、複合体またはナノ粒子中のsiRNAのADGNペプチドに対するモル比は、約1:10〜約1:40(例えば、約1:20または約1:40)である。一部の実施形態では、組成物を個体に静脈内、動脈内、腹腔内、小胞内、皮下、髄腔内、肺内、筋肉内、気管内、眼内、経皮、経口または吸入経路によって投与する。一部の実施形態では、組成物を個体に静脈内経路によって投与する。一部の実施形態では、組成物を個体に皮下経路によって投与する。一部の実施形態では、細胞は、免疫細胞、例えば、顆粒球、マスト細胞、単球、樹状細胞、B細胞、T細胞、またはナチュラルキラー細胞である。一部の実施形態では、個体は、疾患を有し、または疾患を発症するリスクがあり、siRNAは、疾患の処置に有用である。一部の実施形態では、siRNAの細胞への送達は、細胞における標的の発現減少をもたらす。一部の実施形態では、標的の発現は、少なくとも約30%(例えば、少なくとも約30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95%またはそれ超のいずれか(これらの値の間の任意の範囲を含む))減少される。一部の実施形態では、標的の発現は、少なくとも約5日にわたって(例えば、少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50日またはそれ超のいずれか(これらの値の間の任意の範囲を含む)にわたって)減少したままである。一部の実施形態では、複合体またはナノ粒子は、1つまたは複数のさらなるカーゴ分子をさらに含む。一部の実施形態では、1つまたは複数のさらなるカーゴ分子は、疾患の処置に有用である。一部の実施形態では、組成物は医薬組成物であり、薬学的に許容される担体をさらに含む。一部の実施形態では、個体は哺乳動物である。一部の実施形態では、個体はヒトである。
【0151】
一部の実施形態では、プラスミドを個体の細胞に送達する方法であって、上記の複合体またはナノ粒子を含む組成物を個体に投与するステップを含み、複合体またはナノ粒子が、プラスミドと、アミノ酸配列XKWRSXRWRLWRXSR(配列番号1)(配列中、Xは、任意のアミノ酸であるか、存在せず、X〜Xは、任意のアミノ酸である)を含むADGNペプチドとを含む、方法が提供される。一部の実施形態では、Xは、βAであるか、Sであるか、存在せず、Xは、AまたはVであり、Xは、GまたはLであり、Xは、WまたはYであり、Xは、VまたはSであり、Xは、R、VまたはAであり、Xは、SまたはLであり、Xは、WまたはYである。一部の実施形態では、ADGNペプチドは、KWRSAGWRWRLWRVRSWSR(配列番号2)、KWRSALYRWRLWRSRSWSR(配列番号3)、またはKWRSALYRWRLWRSALYSR(配列番号4)のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、複合体またはナノ粒子中のプラスミドのADGNペプチドに対するモル比は、約1:10〜約1:40(例えば、約1:20または約1:40)である。一部の実施形態では、組成物を個体に静脈内、動脈内、腹腔内、小胞内、皮下、髄腔内、肺内、筋肉内、気管内、眼内、経皮、経口または吸入経路によって投与する。一部の実施形態では、組成物を個体に静脈内経路によって投与する。一部の実施形態では、組成物を個体に皮下経路によって投与する。一部の実施形態では、細胞は、免疫細胞、例えば、顆粒球、マスト細胞、単球、樹状細胞、B細胞、T細胞、またはナチュラルキラー細胞である。一部の実施形態では、個体は、疾患を有し、または疾患を発症するリスクがあり、プラスミドは、疾患の処置に有用な産物をコードする。一部の実施形態では、プラスミドは、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする。一部の実施形態では、CARは、疾患に関連する抗原を標的とする。例えば、一部の実施形態では、疾患はがんであり、CARは、がん関連抗原を標的とする。一部の実施形態では、プラスミドの細胞への送達は、プラスミドによってコードされている産物の発現をもたらす。一部の実施形態では、プラスミドによってコードされている産物は、少なくとも約5日にわたって(例えば、少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50日またはそれ超のいずれか(これらの値の間の任意の範囲を含む)にわたって)発現される。一部の実施形態では、複合体またはナノ粒子は、1つまたは複数のさらなるカーゴ分子をさらに含む。一部の実施形態では、1つまたは複数のさらなるカーゴ分子は、疾患の処置に有用である。一部の実施形態では、組成物は医薬組成物であり、薬学的に許容される担体をさらに含む。一部の実施形態では、個体は哺乳動物である。一部の実施形態では、個体はヒトである。
【0152】
一部の実施形態では、ポリペプチドを個体の細胞に送達する方法であって、上記の複合体またはナノ粒子を含む組成物を個体に投与するステップを含み、複合体またはナノ粒子が、ポリペプチドと、アミノ酸配列XKWRSXRWRLWRXSR(配列番号1)(配列中、Xは、任意のアミノ酸であるか、存在せず、X〜Xは、任意のアミノ酸である)を含むADGNペプチドとを含む、方法が提供される。一部の実施形態では、Xは、βAであるか、Sであるか、存在せず、Xは、AまたはVであり、Xは、GまたはLであり、Xは、WまたはYであり、Xは、VまたはSであり、Xは、R、VまたはAであり、Xは、SまたはLであり、Xは、WまたはYである。一部の実施形態では、ADGNペプチドは、KWRSAGWRWRLWRVRSWSR(配列番号2)、KWRSALYRWRLWRSRSWSR(配列番号3)、またはKWRSALYRWRLWRSALYSR(配列番号4)のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、複合体またはナノ粒子中のポリペプチドのADGNペプチドに対するモル比は、約1:10〜約1:40(例えば、約1:20または約1:40)である。一部の実施形態では、組成物を個体に静脈内、動脈内、腹腔内、小胞内、皮下、髄腔内、肺内、筋肉内、気管内、眼内、経皮、経口または吸入経路によって投与する。一部の実施形態では、組成物を個体に静脈内経路によって投与する。一部の実施形態では、組成物を個体に皮下経路によって投与する。一部の実施形態では、細胞は、免疫細胞、例えば、顆粒球、マスト細胞、単球、樹状細胞、B細胞、T細胞、またはナチュラルキラー細胞である。一部の実施形態では、個体は、疾患を有し、または疾患を発症するリスクがあり、ポリペプチドは、疾患の処置に有用である。一部の実施形態では、複合体またはナノ粒子は、1つまたは複数のさらなるカーゴ分子をさらに含む。一部の実施形態では、1つまたは複数のさらなるカーゴ分子は、疾患の処置に有用である。一部の実施形態では、組成物は医薬組成物であり、薬学的に許容される担体をさらに含む。一部の実施形態では、個体は哺乳動物である。一部の実施形態では、個体はヒトである。
【0153】
一部の実施形態では、小分子を個体の細胞に送達する方法であって、上記の複合体またはナノ粒子を含む組成物を個体に投与するステップを含み、複合体またはナノ粒子が、小分子と、アミノ酸配列XKWRSXRWRLWRXSR(配列番号1)(配列中、Xは、任意のアミノ酸であるか、存在せず、X〜Xは、任意のアミノ酸である)を含むADGNペプチドとを含む、方法が提供される。一部の実施形態では、Xは、βAであるか、Sであるか、存在せず、Xは、AまたはVであり、Xは、GまたはLであり、Xは、WまたはYであり、Xは、VまたはSであり、Xは、R、VまたはAであり、Xは、SまたはLであり、Xは、WまたはYである。一部の実施形態では、ADGNペプチドは、KWRSAGWRWRLWRVRSWSR(配列番号2)、KWRSALYRWRLWRSRSWSR(配列番号3)、またはKWRSALYRWRLWRSALYSR(配列番号4)のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、複合体またはナノ粒子中の小分子のADGNペプチドに対するモル比は、約1:10〜約1:40(例えば、約1:20または約1:40)である。一部の実施形態では、組成物を個体に静脈内、動脈内、腹腔内、小胞内、皮下、髄腔内、肺内、筋肉内、気管内、眼内、経皮、経口または吸入経路によって投与する。一部の実施形態では、組成物を個体に静脈内経路によって投与する。一部の実施形態では、組成物を個体に皮下経路によって投与する。一部の実施形態では、細胞は、免疫細胞、例えば、顆粒球、マスト細胞、単球、樹状細胞、B細胞、T細胞、またはナチュラルキラー細胞である。一部の実施形態では、個体は、疾患を有し、または疾患を発症するリスクがあり、小分子は、疾患の処置に有用である。一部の実施形態では、複合体またはナノ粒子は、1つまたは複数のさらなるカーゴ分子をさらに含む。一部の実施形態では、1つまたは複数のさらなるカーゴ分子は、疾患の処置に有用である。一部の実施形態では、組成物は医薬組成物であり、薬学的に許容される担体をさらに含む。一部の実施形態では、個体は哺乳動物である。一部の実施形態では、個体はヒトである。
【0154】
本出願の別の態様では、カーゴ分子(例えば、核酸)を安定化する方法であって、カーゴ分子を上記のADGNペプチドと併せることによってカーゴ分子を安定化するステップを含む方法が提供される。一部の実施形態では、カーゴ分子およびADGNペプチドは、上記の複合体またはナノ粒子を形成する。一部の実施形態では、カーゴ分子は核酸であり、ADGNペプチドは、核酸のスーパーコイル構造を安定化する。一部の実施形態では、カーゴ分子は、(例えば、血清成分またはヌクレアーゼによってin vitroまたはin vivoで)分解されやすく、ADGNペプチドは、カーゴ分子を分解から保護する。
【0155】
本明細書に記載する方法のいずれかを組み合わせることができることは、理解されるはずである。したがって、例えば、核酸を細胞に送達するための上記の方法のいずれかを、ポリペプチドを細胞に送達するための上記の方法のいずれかと組み合わせることによって、核酸およびポリペプチドを細胞に送達することができる。企図される可能な組合せは、本明細書に記載する方法のいずれかの2つまたはそれ超の組合せを含む。
キット
【0156】
本明細書に記載する方法に有用なキット、試薬および製造品も、本明細書において提供される。そのようなキットは、ADGNペプチド、集合分子および/または他の細胞透過性ペプチドを収容するバイアルを、カーゴ分子を収容するバイアルとは別に含むことがある。患者処置時に、例えば、遺伝子発現分析または患者試料のプロテオミクスもしくは組織学的分析に基づいて、処置されることになる特定の病態が何であるかを先ず決定する。それらの結果を得たら、それに応じてADGNペプチドならびにいずれかの任意選択の集合分子および/または細胞透過性ペプチドを適切なカーゴ分子と組み合わせて、有効な処置のために患者に投与することができる複合体またはナノ粒子を得る。したがって、一部の実施形態では、1)ADGNペプチドと任意選択で2)1つまたは複数のカーゴ分子(例えば、核酸、例えばオリゴヌクレオチド)とを含むキットが提供される。一部の実施形態では、キットは、集合分子および/または他の細胞透過性ペプチドをさらに含む。一部の実施形態では、キットは、遺伝子発現プロファイルを判定するための薬剤をさらに含む。一部の実施形態では、キットは、薬学的に許容される担体をさらに含む。
【0157】
本明細書に記載するキットは、対象方法を実施するために該キットの構成要素を使用するための説明書(例えば、本明細書に記載する医薬組成物を製造するためのおよび/または医薬組成物の使用のための説明書)をさらに含むことがある。対象方法を実施するための説明書は、一般に、好適な記録媒体に記録される。例えば、説明書は、紙またはプラスチックなどの基材に印刷されることがある。したがって、説明書は、キット内に添付文書として存在することもあり、キットの容器またはその構成要素の表示の中に存在する(すなわち、包装または分包に付随する)ことなどもある。一部の実施形態では、説明書は、好適なコンピュータ可読記憶媒体(例えば、CD−ROM、ディスケットなど)上に存在する電子保存データファイルとして存在する。さらに他の実施形態では、実際の説明書はキット内に存在せず、リモートソースから、例えばインターネット経由で、説明書を得る手段が提供される。この実施形態の一例は、説明書を見ることができるおよび/または説明書をダウンロードすることができるウェブアドレスを含むキットである。説明書と同様に、説明書を得るためのこの手段は、好適な基材に記録される。
【0158】
キットの様々な構成要素は、別個の容器内に存在することがあり、その場合、それらの容器は、単一のハウジング、例えばボックス内に収容されていることがある。
【実施例】
【0159】
(実施例1)
材料および方法
ADGNペプチド
すべてのペプチドは、Fmoc化学を使用する固相ペプチド合成によって合成した。ペプチドは、C末端システアミド基を使用することなくさらなる官能化を可能にするために、N末端にベータ−アラニン、セリンまたはアセチル基を含有した。ペプチドは、C末端にシステアミドまたはCOOH基のどちらかを含有した。
本発明の構造
【0160】
ADGNペプチドは、二次両親媒性ペプチドであり、非常に用途が広く、強い構造多型性を示す。ADGNペプチドは、溶液中では遊離形態として折り畳まれておらず、カーゴの存在下では部分的アルファヘリックス構造をとる。
オリゴヌクレオチドおよびsiRNA
【0161】
siRNAを以下の配列に従って合成した:
【化3】
プラスミドDNA
【0162】
ルシフェラーゼをコードし、6.2Kbおよび3.8Kbのサイズを有するプラスミドを、New England BioLabsから入手し、リクローニングした。YFPをコードするプラスミド(6.3Kb)をSigma(USA)から入手し、リクローニングした。CMVプロモーターの制御下にあるCD19特異的キメラ抗原受容体をコードするプラスミドであって、CD28およびCD3zシグナル伝達部分に結合しているCD19特異的scFvを含むプラスミドを、以前に記載されたように調製した。
ADGNペプチド/カーゴ粒子および複合体の調製
【0163】
ペプチド/siRNAまたはペプチド/プラスミドナノ粒子は、両親媒性ペプチドとプラスミドまたはsiRNAとを混合することによって調製した。両親媒性ペプチドの保存溶液は、蒸留水中1mg/mLで調製し、10分間超音波処理した。siRNAの保存溶液は、水中5μM濃度で調製した。プラスミドの保存溶液は、50mM Tris、0.5mM EDTA緩衝液中、100μMの濃度で調製した。ペプチド/プラスミド複合体またはナノ粒子は、純水中で、ペプチド(400μM保存溶液)をプラスミド(100μM保存溶液)とともに30分間、37℃で、5:1、10:1または20:1の最終ペプチド対プラスミドモル比でインキュベートすることによって形成した。ペプチド/siRNA複合体またはナノ粒子は、水または好適な水性媒体中で、ペプチド(400μM保存溶液)をsiRNA(5μM保存溶液)とともに30分間、37℃で、10:1、20:1または40:1の最終ペプチド対siRNAモル比でインキュベートすることによって形成した。より低濃度のADGN−100/siRNA(20nM〜0.125nM)は、ストック複合体をPBSで同じペプチド/siRNA比を保つように系列希釈することによって得た。単独でのsiRNAまたはプラスミド、およびペプチド/プラスミド複合体を、PBS中で5日間、20℃および40℃で保管して、プラスミドの安定性を試験した。
【0164】
保管および安定性に関しては、水で調製した粒子の保存溶液は、4℃で少なくとも3週間にわたって安定した状態を保った。長期保管のために粒子を凍結乾燥することができ、その場合、その過程中での粒子の安定化のために、凍結乾燥前に5〜20%グルコースまたはマンニトールを粒子溶液に添加する。
ペプチドベースのナノ粒子の特性評価
【0165】
平均粒径分布を25℃で測定1回につき3分間判定し、ゼータ電位をZetasizer4装置(Malvern Ltd)で測定した。生理条件(0.9%NaCl)でのADGN−100/siRNA複合体のサイズおよび多分散性を、4℃、20℃および40℃での12/24/48時間のインキュベーション後、追跡した。3つの異なるペプチド/siRNAモル比(10:1、20:1および40:1)を分析した。
細胞培養およびペプチド媒介カーゴ送達
【0166】
接着HeLa細胞(アメリカ合衆国細胞培養系統保存機関[ATCC]から)を、2mMグルタミン、1%抗生物質(ストレプトマイシン10,000μg/mL、ペニシリン10,000IU/mL)および10%(w/v)ウシ胎仔血清(FCS)を補充したダルベッコ変性イーグル培地(DMEM)において、37℃で、5%COを含有する加湿雰囲気で培養した。トランスフェクションの前日に35mmディッシュに播種した合計150,000の細胞を集密度60%まで増殖させ、予め作っておいた200μlの複合体を重層し、3〜5分間インキュベートし、その後、400μlのDMEMを添加した。37℃での30分のインキュベーション後、ADGN−100/カーゴ複合体の重層を除去せずに、16%FCSを含有する1mLの新たなDMEMを、10%最終FCS濃度に至るように添加した。細胞を24または48時間、インキュベーターに戻した。GAPDHを標的とするsiRNAについては、Quantigen(Panomics Inc.)を使用して形質導入の24時間後にmRNAレベルを判定した。報告するデータは、3または4回の異なる実験の平均である。ルシフェラーゼをコードするプラスミドについては、48時間後にルミノメトリーによってルシフェラーゼ発現レベルを定量した。
細胞毒性
【0167】
ペプチド/siRNA複合体の毒性をHelaおよびJurkat細胞株で研究した。トランスフェクションの前日に24ウェルプレートに播種した合計30,000の細胞を、1〜50μM(500μM ADGN−100)の範囲の漸増濃度のペプチドまたはモル比20:1もしくは40:1で複合体化されたペプチド/siRNAとともに30分間インキュベートした後、最終10%FCS濃度に至るように培地を添加した。ハウスキーピング遺伝子シクロフィリンmRNAレベルのモニタリング(Quantigen、Panomic Inc.)によって、および比色MTTアッセイ(Sigma、Germany)によって、細胞毒性応答を12または24時間後に測定した。MTTアッセイについては、細胞培養培地を除去し、4時間、2.5mg/mlのMTTを含有するPBSで置換した。結果は、3回の別個の実験の平均に対応する。
マウス腫瘍モデル
【0168】
胸腺欠損雌ヌードマウス(6〜8週齢)の側腹部に100μl PBS中の1×10 HT−29細胞を皮下接種した。
【0169】
siRNA処置について:腫瘍移植の2〜3週間後、腫瘍サイズが約100mmに達したら、遊離Cyc−B1 siRNAもしくはCdc20 siRNA(50もしくは100μg)、対照siRNA、Cyc−B3、Cyc−B1 siRNA(1、5、10μg)、Cdc20 siRNA(5μg)、またはモル比20:1でADGNペプチドと複合体化されたCyc−B1およびCdc20 siRNA(各5μg)のカクテルの、どちらかの0.1mlの溶液での3日ごとの腫瘍内または静脈内注射によって、動物を処置した。
(実施例2)
RNA分子送達のためのADGNペプチド利用
実施例2.1:ADGNペプチドはカーゴと安定したナノ構造を形成する
【0170】
生理条件(0.9%NaCl)でのペプチド/siRNA複合体のサイズおよび多分散性を4℃、20℃および40℃での12、24および48時間のインキュベーション後に追跡した。3つの異なるペプチド:siRNAモル比を分析した:10:1、20:1、および40:1。
【0171】
モル比20:1または40:1で、ADGNペプチドはsiRNAと、120nmの平均直径および0.3の多分散指数(PI)を有する安定した粒子を形成した。粒子は、それらのサイズ分布(平均直径<130nm、および多分散指数<0.31)を維持し、異なる温度で長い期間にわたって安定した状態を保った(表2〜4を参照されたい)。モル比10:1では、粒径が経時的に増加した。
【0172】
ゼータ電位によるADGN−100/siRNA粒子電荷の測定値は、モル比20:1および40:1について同様であり、平均値は、それぞれ6.0±0.8mVおよび5.1±1.0mVであった。モル比10:1の粒子の平均ゼータ電位は、15.4±0.6mVであった。
【表2】
【表3】
【表4】
実施例2.2:ペプチド媒介siRNA送達
【0173】
ADGNペプチド/siRNA複合体を、Hela細胞とJurkat細胞の両方において、GAPDHを標的とするsiRNA(配列番号30)を使用してsiRNA送達について評価した。両方の細胞株へのsiRNAトランスフェクションを6ウェルプレートで行った。完全培地を除去し、細胞をPBSで洗浄した。4X濃度のナノ粒子溶液を1XPBSで希釈し、直ちに細胞に添加した。37℃で10分のインキュベーション後、細胞に遊離DMEM培地を重層し、37℃でさらに30〜60分間インキュベートした。その後、完全DMEM培地を添加し、細胞を48時間、37℃でインキュベートした後、ウエスタンブロット分析を行った。
【0174】
モル比10:1、20:1および40:1のペプチド/siRNA粒子を分析した。最終siRNA濃度が200nM〜10nMの範囲である、PBS中の保存溶液の系列希釈を使用して、siRNA用量反応を行った。実験を2回ずつ行った。
【0175】
異なる培養細胞で行った用量反応実験によって、GAPDH siRNAのペプチド媒介送達はGAPDH mRNAレベルの頑強な下方制御を誘導することが明らかになった(図1Aおよび1B)。モル比20:1および40:1の複合体を用いて両方の細胞株においてGAPDHの顕著なサイレンシングを達成した。60%より高い効率が50nM siRNA濃度で観察された。
実施例2.3:ADGNペプチドは短鎖ssRNAと安定したナノ構造を形成する
【0176】
2つのssRNAを評価した:G1(9−Mer:3’−AGC AGC AGC−5’、配列番号39)およびG2(12−mer:3’−AGC AGC AGC AGC−5’、配列番号40)。4℃および20℃での12および24時間のインキュベーション後、生理条件(0.9%NaCl)でペプチド/G1およびペプチド/G2複合体のサイズおよび多分散性を追跡した。2つの異なるペプチド:siRNAモル比を分析した:10:1および20:1。
【0177】
表5に示すように、モル比10:1または20:1で、ADGNペプチドはG1およびG2と、135nmの平均直径および0.25の多分散指数を有する安定した粒子を形成した。粒子は、それらのサイズ分布(平均直径<130nm、および多分散指数<0.3)を維持し、長い期間にわたって安定した状態を保った。
【0178】
ゼータ電位によるペプチド/G1およびペプチド/G2粒子電荷の測定値は、モル比10:1および20:1について同様であり、平均値は、それぞれ10.4±3.1および8.4±2.0mVであった。
【表5】
実施例2.4:in vitro線維症モデルをシミュレートするための、in vitroでの初代ヒト線維芽細胞株におけるペプチド/SPARC siRNA複合体の利用
【0179】
2つの異なるSPARC siRNA(AおよびB)を上で説明したようにADGNペプチドと複合体化した。2セットの初代ヒト線維芽細胞株(AおよびB)を培養し、40nMの濃度の2つの異なるペプチド/SPARC siRNA複合体で48時間処置した。非標的siRNAを陰性対照処置として使用した。Sparc発現をリアルタイムRT−PCRによって調査した。実験を2回ずつ行った(A1、A2およびB1、B2、図2を参照されたい)。両方の線維芽細胞株においてSPARCの80%より高いノックダウンが各SPARC siRNAについて見られた。
(実施例3)
HelaおよびJurkat細胞に対するADGNペプチドおよびペプチド/siRNA複合体の毒性の評価
【0180】
MTTアッセイを使用して、およびquantigen(商標)技術(Affymetrix)によって測定したシクロフィリンmRNAのレベルのモニタリングによって、ADGNペプチド、およびモル比20:1と40:1両方のADGNペプチド/siRNA複合体についての毒性を評価した。実験を2回ずつ行った。
【0181】
データは2つの方法間でよく相関し、ADGNペプチド/siRNA複合体については50μMまで毒性が観察されなかった(図3Aおよび3B)。生存率またはシクロフィリンmRNAレベルの約20〜30%の低下が50μMの遊離ペプチドで観察された。
(実施例4)
ADGNペプチド/siRNA粒子のin vivo利用
実施例4.1
【0182】
サイクリンB1、GAPDHおよびCdc20を標的とするsiRNAのin vivo送達に、ADGNペプチド/siRNA複合体を使用した。ADGNペプチド/サイクリンB1 siRNA複合体の3日ごとの注射は、異種移植マウスモデルにおける結腸腫瘍増殖を予防した。
【0183】
胸腺欠損雌ヌードマウス(6〜8週齢)の側腹部に100μl PBS中の1×10 PC3(前立腺がん)またはHT−29(結腸がん)細胞を皮下接種した。腫瘍移植の2〜3週間後、腫瘍サイズが約100mmに達したら、50もしくは100μg遊離Cyc−B1 siRNA(配列番号32)、対照siRNA、または5もしくは10μg Cyc−B3(配列番号34)、またはADGNペプチドと複合化したCyc−B1 siRNAの0.1mlの溶液での3日ごとの腫瘍内または静脈内注射によって、動物を処置した。粒子の保存溶液を水で調製し、この保存溶液は、4℃で少なくとも3週間にわたって安定であった。長期保管のために粒子を凍結乾燥することができ、その場合、その過程中での粒子の安定化のために、凍結乾燥前に5〜20%グルコースまたはマンニトールを粒子溶液に添加する。投与前に、粒子を希釈して生理条件(0.9%NaClおよび5〜20%マンニトール)にした。デジタルカリパスを使用して二次元で定期的に腫瘍直径を測定し、腫瘍体積を長さ×幅×高さ×0.52として算定した。曲線は、動物6匹のコホートにおける腫瘍サイズの平均値を示し、動物の死亡も、毒性のいかなる徴候も観察されなかった。実験は、国家の規則に従って行い、地方動物実験倫理委員会によって承認された。結果の統計的有意性をスチューデントt検定によって算定し、p<0.05を統計的に有意であると見なした。
【0184】
ペプチド/サイクリンB1 siRNA粒子の全身静脈内投与後、HT−29腫瘍サイズの有意な縮小が48日目に観察され、5μgおよび10μgのsiRNAで、それぞれ、65%および90%の阻害があった(図4)。ペプチド/ミスマッチsiRNA(10μg)のまたはペプチド担体単独の抗腫瘍活性の欠如とともに、これらの結果は、サイクリンB1 siRNAの全身送達に伴う生物学的応答の頑強性および特異性を強く示している。
【0185】
ペプチド粒子におけるサイクリンB1およびCdc20 siRNAの併用は、ペプチド/siRNA複合体を3日ごとに注射すると、異種移植マウスモデルの結腸腫瘍増殖を予防する。ペプチド/siRNA粒子中の、5μg(0.25mg/kg)のCyc−B1 siRNA、Cdc20 siRNA(配列番号36)、および5μg Cyc−B1/Cdc20 siRNAの混合物(各々0.125mg/kg)を、異種移植腫瘍を有するマウスに、3日ごとに静脈内注射した。HT−29腫瘍サイズの有意な縮小が50日目に観察され、5μgのcyc−B1 siRNAおよびCdc20 siRNAで、それぞれ51%および38%の阻害があった(図5)。94%の顕著な縮小がペプチド/cyc−B1/cdc20 siRNA複合体について観察された(図5)。これは、これら2つの遺伝子を標的化する相乗的または相加的効果を示唆している。これらの結果は共に、頑強な生物学的応答を伴ったsiRNAのカクテルをin vivoで送達するADGNペプチド/siRNA粒子の能力を実証した。
実施例4.2:ADGN−100/siRNA生体内分布のin vivoイメージング
【0186】
in vivo蛍光イメージングを以前に記載されたように行った(Romeら、Methods Mol.Biol.948巻、49〜65頁、2013年)。Alexa700標識siRNAをモル比20:1でのADGN−100との複合体で使用して、実験を行った。薬物動態を正常BALB/cおよびHT−29担腫瘍マウスで評価した。ネイキッド状態またはADGN−100と複合体化した状態どちらか(n=4匹/群)の、0.5mg/kgのAlexa700蛍光標識siRNA(200μl)の単回用量を、マウスに静脈内(IV)または皮下(SC)投与した。2%イソフルランを使用して麻酔したマウスを、干渉フィルターを装備した663nm発光ダイオードによって照射した。投与後最初の15分の映像を獲得し、以前に記載された(Romeら、上掲、;Crombezら、Nucleic Acids Res. 37巻(14号)4559〜4569頁、2009年)ように裏面入射型CCD冷却カメラを使用して5時間にわたって1時間ごとに、次いで24時間後に、蛍光画像を撮影した。12または24時間時点でマウスを安楽死させ、様々な器官をAlexa蛍光定量のために除去した。全マウス分析を1、2、5、10および24時間後に行った。血液および組織試料(肝臓、脾臓、腎臓、肺、脳、心臓、皮膚、膵臓およびリンパ節)を2匹の動物から投与開始後12および24時間の時点で採取した。健常および担腫瘍マウスのsiRNAレベルを、組織1mg当りの蛍光単位として定量した。
【0187】
ADGN−100ベースの粒子を、全身静脈内投与と全身皮下投与の両方を使用して評価した。動態解析は、様々な組織中のsiRNAレベルが、ADGN−100/siRNA粒子の単回静脈内または皮下注射後、2〜3時間経つとピークに達することを実証した(図6)。ADGN−100/siRNA複合体の静脈内投与によって、解析した組織の大部分へのsiRNAの送達が、肺、腎臓、脾臓、リンパ節、肝臓、膵臓および筋肉に関しては有意なレベルで、ならびに心臓および脳に関してはより低いレベルで可能であった(図7A)。静脈内投与によって腫瘍組織へのsiRNAの有意な送達も可能であった(図7B)。ADGN−100/siRNA複合体の皮下投与によって、筋肉、皮膚、脾臓および肝臓へのsiRNAの有意な送達が可能であった(図7C)。
実施例4.3:siRNAサイレンシング因子VIIのin vivo送達
【0188】
ADGN−100ペプチドを、siRNAが標的とする内在性の、肝細胞によって発現される血液凝固因子VII(FVII)(肝臓において発現される標的)のin vivo送達について評価した。ADGN−100/siRNA粒子は、マウスにおいて毒性および有害副作用を一切誘導することなく、肝臓を標的とし、完全可逆性である強力な遺伝子サイレンシングをもたらした。
【0189】
粒子の保存溶液は、水中で、未修飾siRNA(siF7センス:5’−GCAAAGGCGUGCCAACUCATT−3’、配列番号37;siF7アンチセンス:5’−TGAGUUGGCACGCCUUUGCTT−3’、配列番号38)(Akincら、2009年、Molecular Therapy(2009年)17巻5号、872〜879頁)およびADGN−100ペプチドを20:1のペプチド/siRNAモル比で使用して調製した。ペプチド/siRNA粒子は、以前に記載された通り調製した。
【0190】
in vivoでの使用前に、ADGN−100/FVIIsiRNA粒子の安定性および有効性をin vitroでHepG2細胞(Hep G2−ATCC(登録商標)HB−8065)に関して先ず評価した。生理条件(0.9%NaCl)でのADGN−100/siRNA複合体のサイズおよび多分散性を4℃での2、24および48時間のインキュベーション後ならびに4℃で1〜4週間の保管後に追跡した。モル比20:1のADGN−100/FVIIsiRNAは、130nmの平均直径および0.31の多分散指数(PI)で4週間の期間にわたって安定していた(表6)。FVIIノックダウン(KD)についての粒子の効率を4℃での2および24時間のインキュベーション後ならびに4℃で1〜4週間の保管後にモニターした。FVII活性を未処置細胞に対し正規化した。ノックダウン結果は、3回の別個の実験の平均に相当する。ADGN−100との複合体中の100nM濃度のFVII siRNAは、HepG2細胞において約65%のFVIIノックダウンをもたらした。
【表6】
【0191】
in vivo実験のために、粒子を希釈して生理条件(0.9%NaClおよび5〜20%マンニトール)にした。静脈内(尾静脈)または皮下投与による、遊離siFVII siRNAまたはADGNペプチドと複合体化したsiFVII siRNAのどちらかの0.1ml溶液の3mg/kg(siRNA用量)での単回注射で、BALB/cマウス(6〜8週齢)を処置した。この研究は、4群のマウスを含んだ:等張グルコースを投与した対象群(C、N=2)、ネイキッド第VII因子siRNAを投与した群(ネイキッド、N=2)、複合体の皮下注射を投与した群(SQ、N=3)、および複合体の静脈内注射を投与した群(IV、N=3)。
【0192】
投与後の様々な時点で後眼窩採血によって血清試料を採取し、活性ベース色素産生試験キット(BIOPHEN VII)を使用して第VII因子タンパク質の血清レベルを食塩水対照処置動物のレベルと比較して定量した。実験は、国家の規則に従って行い、地方動物実験倫理委員会によって承認された。
【0193】
図8Aは、対象群に対し正規化した、3つの実験群についての第VII因子の相対平均活性レベルを示す。静脈内注射については注射8日後におよび皮下注射については注射24日後に、それぞれ、85%および71%の最大ノックダウンが測定された。ネイキッドsiRNAの注射についてはFVIIノックダウンが観察されなかった。これは、FVIIノックダウンが特異的であることを示す(図8A)。投与経路間のノックダウン動態の差は、皮下注射した製剤が肝臓への標的化前にリンパ系で足留めされることを示唆する。長いノックダウン期間が観察され、siRNAの単回注射後60日までFVII活性の測定可能な低下があった。この遺伝子サイレンシングは可逆的であり、静脈内および皮下注射についてそれぞれ35日目および45日目にはリバウンドが開始した(図8A)。遺伝子サイレンシングは、マウスにおいていかなる毒性応答も副作用応答も誘導することなく観察された(図8B)。
【0194】
注射後おおよそ60日に相当する、正常血清第VII因子レベルが回復した時点で、動物に再投与した。これらの結果は、肝細胞へのsiRNAの全身皮下または静脈内送達のためのADGN−100技術の効力を強く示している。ADGN−100は、有用なin vivo標的検証法となり、治療的処置に有用である。
【0195】
静脈内(IV)送達は、標的を迅速にノックダウンする手法を提供し、その一方で皮下(SQ)送達は、より長い期間にわたって持続性作用をもたらすことができる。所望の標的の最適なまたは長期のノックダウンのためにIV送達とSQ送達の両方を併用してもよい。好適な長さ(数日、数週間、数カ月)のサイクルでのIVの反復送達、SQの反復送達、または両方の送達様式を、所望のノックダウンプロファイルに基づいて選択すべきである。
(実施例5)
DNAおよび遺伝子送達のためのADGNペプチドの利用
実施例5.1:ADGNペプチドは溶液中のDNAスーパーコイル構造を安定化する
【0196】
ADGN−100/プラスミドDNAのサイズおよび多分散性の変化は、20℃でのインキュベーション後に観察されなかった(表7)。標準的な手法を使用するアガロースゲル電気泳動で、スーパーコイルプラスミドDNA(6.2Kbおよび3.8Kb)の百分率を1および4日のインキュベーション後に測定した(表8および表9)。ADGNペプチドは、試験したすべての条件でプラスミドスーパーコイル構造を十分に安定化した。同様の結果が両方のプラスミドについて観察された。対照的に、液体製剤とプラスミドの複合体は、4、20または40℃での4日の保管後、不安定であった。
【表7】
【表8】
【表9】
実施例5.2:ヘパリン処理に対するDNA/ペプチドナノ粒子の安定性
【0197】
ヘパリン処理に対するDNA/ペプチド粒子および対照の抵抗性を4℃、20℃および40℃での1および4日のインキュベーション後に評価した。遊離プラスミドおよびペプチド−または脂質−製剤をヘパリン(5μg)で1時間、32℃で処理し、その後、遊離プラスミドレベルをアガロースゲル電気泳動で分析した。ペプチド/プラスミド粒子を6.2Kbプラスミドとのモル比20:1で配合した。表10に示すように、様々な温度での1および4日のインキュベーションおよびその後のヘパリン処理後のペプチド/DNA複合体について、遊離プラスミドの百分率は低かった。この結果は、ペプチド/プラスミド粒子中のプラスミド/ペプチド相互作用には主としてアルギニン残基が関与し、ヘパリン処理によって解離されない安定した複合体が可能になったことを実証している。対照的に、プラスミドの脂質製剤は、ヘパリン処理下で不安定であり、放出された遊離プラスミドの百分率は高かった(表10)。
【表10】
実施例5.3:ADGNペプチド/プラスミドDNA粒子は遺伝子送達を促進する:
【0198】
20℃(表11)または40℃(表12)で1および4日間のペプチド/プラスミドナノ粒子の保管後にHela細胞でルシフェラーゼ発現効率を評価した。ペプチド媒介プラスミド送達効率を遊離プラスミドと、または脂質製剤(リポフェクタミン2000 Invitrogen)を使用して、比較した。6.2および3.8Kbプラスミドを用いて結果を得た。ADGNペプチド/プラスミドDNA粒子は、プラスミドサイズの有意な影響のない高いルシフェラーゼ発現によって証明されるように、遺伝子送達を促進した。ADGNペプチドは、トランスフェクション前のナノ粒子の4日のインキュベーション後でさえ、高いルシフェラーゼ発現を媒介した。対照的に、遺伝子送達およびルシフェラーゼ発現の媒介についての脂質製剤の効率は、20℃および40℃でのナノ粒子の4日の保管後、有意に低下した。
【表11】
【表12】
(実施例6)
T細胞へのADGN−100媒介遺伝子移入
実施例6.1
【0199】
ADGN−100(Ac−KWRSAGWRWRLWRVRSWSR−システアミド;配列番号2、残基1がアセチル化されており、残基19がシステアミドに共有結合している)、VEPEP−6(Ac−LWRALWRLWRSLWRLLWKA−システアミド;配列番号20、残基1がアセチル化されており、残基19がシステアミドに共有結合している)、およびVEPEP−9(Ac−LRWWLRWASRWFSRWAWWR−システアミド、配列番号26、残基1がアセチル化されており、残基19がシステアミドに共有結合している)ペプチドを、ルシフェラーゼを発現するプラスミドを使用してJurkat、293TおよびK562細胞をはじめとするT細胞への遺伝子送達について評価した。安定した遺伝子送達を研究するために、YFPを発現し、かつジェネティシン(Geneticine)(G418)に対する陽性選択マーカーを含有するプラスミドを使用した。ADGN−100およびVEPEP−9は、T細胞への強力なトランスフェクションはもちろん、YFPを発現する安定した形質転換細胞株の産生も可能にすることが判明した。
材料および方法
【0200】
細胞株をATCCから入手した:Jurkat、クローンE6−1(ATCC(登録商標)TIB−152(商標))、293T/17[HEK 293T/17](ATCC(登録商標)CRL−11268)、およびK562(ATCC(登録商標)CCL243(商標))。75cmフラスコおよび6ウェルディッシュにおいて、最終濃度10%までウシ胎児血清を含有するダルベッコ変性イーグル培地(DMEM)で細胞を培養した。細胞を4日ごとに継代させ、トランスフェクションの24時間前に新たに継代させた。ADGN−100、VEPEP−6およびVEPEP−9ペプチドの保存溶液を蒸留水中2mg/mLで調製し、10分間、水浴超音波処理装置で超音波処理し、その後、使用直前に希釈した。プラスミド保存溶液を、50mM Tris、0.5mM EDTA中100μMの濃度で調製した。
【0201】
1ngまたは5ngのプラスミドDNAを用いて10:1または20:1の最終ペプチド対プラスミドモル比で、ペプチド(400μM保存溶液)とプラスミド(100μM保存溶液)を純水中で30分間、37℃で混合することによって、ナノ粒子を調製した。その後、複合体溶液を5分間、9000rpmで遠心分離して一切の沈殿を除去し、トランスフェクション直前に50%PBS溶液で希釈した。ルシフェラーゼ(6.2Kb)およびYFP(6.3Kb)をコードするプラスミドをNew England BioLabs(USA)およびSigma(USA)からそれぞれ入手し、リクローニングした。
【0202】
トランスフェクションの24時間前に細胞を新たに継代させた。培養培地を除去し、細胞をPBSで2回洗浄した。細胞を5分間、0.2または0.4mLのプラスミド/ペプチド溶液とともにインキュベートし、その後、0.4mLの無血清培地を添加した。30分後、1.2mLの完全培地を添加し、血清レベルを10%に調整した。培養物を37℃で48時間インキュベートし、その後、YFPまたはルシフェラーゼ発現を比色アッセイ、FACS、および蛍光顕微鏡観察によって判定した。
【0203】
トランスフェクションの48時間後、数種のG418濃度:0、100、200、500、800または1000μg/mlを含有する完全増殖培地で細胞を培養した。2週間にわたって4日ごとに(または必要に応じて)薬物含有培地を置換した。第2週中に、生存細胞の「島」が選択された。その後、選択されたコロニーをレポーター発現について評価した。
様々なT細胞株におけるADGN−100媒介遺伝子発現
【0204】
様々なペプチドとのモル比10:1および20:1で、プラスミド複合体1および5ngを使用して、3つの細胞株(Jurkat、293TおよびK562)についてのYFPおよびルシフェラーゼ発現効率を評価した。ルシフェラーゼ発現を比色アッセイによってモニターし(図9)、GFP発現をFACSによってモニターした(表13、図10)。遊離プラスミド、リポフェクタミン(脂質ベースの送達系、Invitrogen)、または対照としての遊離ペプチドのいずれかを使用して、実験を3回ずつ行った。
【表13】
【0205】
YFP発現およびルシフェラーゼ発現は、トランスフェクションに、1ngの遊離プラスミドを使用した場合全く観察されず、5ngの遊離プラスミドを使用した場合5〜10%の陽性細胞しか観察されなかった。1または5ngどちらかのプラスミドを使用するVEPEP−6媒介トランスフェクションでは3つの細胞株についてYFP発現もルシフェラーゼ発現も観察されなかった。対照的に、ADGN−100またはVEPEP−9のどちらかによって媒介されるトランスフェクション後には3つの細胞株について効率的な遺伝子発現が観察された。20:1のペプチド対プラスミド比で複合体化したDNA 5ngで、最高発現レベルが得られた。トランスフェクション効率は、細胞株に依存して65〜85%の間で様々であった。ADGN−100は、Jurkatおよび293T/K562細胞における遺伝子送達についてリポフェクタミンよりそれぞれ2倍および5倍効率が高かった。
T細胞に対するADGN−100媒介安定トランスフェクション。
【0206】
安定したYFP発現クローンの産生についてのADGN−100媒介トランスフェクションの効率を293T細胞とK562T細胞の両方について評価した。モル比20:1でADGN−100と複合体化したプラスミド5ngを細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションを完全培地(10%FCS)中で48時間行い、YFP発現クローンを2週間にわたって様々な時点(2、5、7および14日)でフローサイトメトリーによって分析した。
【0207】
図11に示すように、ADGN−100媒介トランスフェクションの効率は、K562細胞と293T細胞の両方について約80%であり、YFP発現は、トランスフェクション後14日の時点で安定して維持され、57%(293T)および65%(K562)を超えるYFP陽性細胞があった。トランスフェクションの48時間後、様々な濃度のG418を含有する培地で3週間増殖させることによって安定なYFP発現クローンを選択し、FACSおよび顕微鏡観察によって分析した。YFPを安定的に発現する293T細胞のいくつかの個々のクローンを選択し、96ウェル組織培養プレートで高集密になるまで拡大増殖させた。選択されたすべてのクローンが高レベルのYFPを発現した(図12Aおよび12B)。
実施例6.2:T細胞における安定した遺伝子送達および抗CD19−CAR−T細胞の産生
【0208】
細胞工学およびCAR−T細胞工学のためのADGN技術の効力を評価した。ADGN−100ペプチドが、末梢血単核細胞(PBMC)から単離したT細胞に抗CD19 CARベクター発現プラスミドを効率的に送達し、安定した抗CD19CAR T細胞を産生することが証明された。
材料および方法
【0209】
常磁性ビーズに結合された抗CD3/抗CD28抗体(Dynabeads ClinExVivo CD3/CD28、Invitrogen)を3:1(ビーズ:細胞)比で用いて、末梢血単核細胞(PBMC)からT細胞を単離した。CD28およびCD3zシグナル伝達部分に結合しているCD19特異的scFvを有するCD19特異的キメラ抗原受容体(CAR)をコードするプラスミドと複合体化したADGN−100粒子を、CMVプロモーターの制御下で、T細胞にトランスフェクトした。T細胞を2つの比率(20:1および30:1)のペプチド/プラスミド複合体とともに48時間インキュベートすることによって、トランスフェクトした。
【0210】
4日目に、トランスフェクション細胞のレベルを分析し、細胞を新たなT細胞拡大増殖培地(5%熱不活化ヒトAB血清、1%Gluta−Max、300IU/mL IL−2を補充した、AIM V培地)に移した。12日目に、抗CD3/抗CD28常磁性ビーズとDynal ClinEx VIVO MPCマグネット(Invitrogen)を使用して細胞を回収し、洗浄し、生存率および抗CD19発現についてフローサイトメトリーによって分析した。T細胞上での抗CD19 CARの発現を、プロテインLアッセイを使用してフローサイトメトリーによって評価した。ビオチン化プロテインLをThermoScientificから購入し、滅菌水中、50ng/μlのストック濃度で復元し、4℃で保管した。7−AAD(Sigma)を使用して生存率を判定した。
結果
【0211】
ADGN−100は、PBMCから単離したT細胞への抗CD19 CARベクターのトランスフェクションを、20:1および30:1のペプチド対プラスミドモル比で、それぞれ57%および63%の効率で媒介した(図13)。結果を非トランスフェクション細胞に対し正規化し、遊離プラスミドとともにインキュベートしたT細胞と比較した。安定した発現は、20:1および30:1のペプチド/プラスミドモル比で、それぞれ、細胞の41%および48%において12日わたって維持された。平均生存率は、すべての条件でおおよそ80%またはそれより高かった。これは、ADGN−100トランスフェクションに関連する細胞毒性がなかったことを示す(図14)。結果を非トランスフェクション細胞に対し正規化し、遊離プラスミドとともにインキュベートしたT細胞と比較した。これらの結果は、トランスフェクションに非ウイルスベクターを用いるADGN−100技術を、腫瘍を標的とするT細胞を用いる抗がん治療などの免疫ベースの治療のための標的特異的T細胞の産生に有効に使用することができることを実証する。
(実施例7)
ADGN−100と他の二次両親媒性細胞透過性ペプチド(CADY/VEPEP−6/VEPEP−9)との比較
【0212】
19残基のうち4残基のみが、ADGN−100ペプチドとCADY、VEPEP−6またはVEPEP−9ペプチド間で共有される。
二次構造の比較
【0213】
分子モデリングpeplook−Zultimプログラム(Thomas AおよびBrasseur R.、2006年、Prediction of peptide structure: how far are we?、Proteins. 65巻、889〜97頁)を使用して、二次構造を決定した。4つすべてのペプチドは、膜を模倣する環境の中で、1つの側面にTrp基、他の側面に荷電残基、およびさらに別の側面に疎水性残基を露出している、二次両親媒性ヘリックス構造をとる(図15)。CADYおよびVEPEP−6は同じ二次構造をとり、ペプチドのコア、CおよびN末端にヘリックスモチーフがある(表14)。対照的に、ADGN−100およびVEPEP−9ペプチドは単一コアヘリックスモチーフを含有し、このモチーフは、VEPEP−9におけるほうが長く、Konateら2010年(Biochemistry)、Crowletら2014年(BBA)と一致している。
【表14】
ナノ粒子サイズ比較
【0214】
VEPEP−6、CADYおよびVEPEP−9は、モル比20:1(ペプチド:siRNA)で、siRNAとナノ粒子を形成し、該ナノ粒子は、100〜200nm間の範囲のサイズ、および150nmを中心とする平均直径、および正荷電表面(CADY、VEPEP−6およびVEPEP−9ベースの粒子について、それぞれ、40mV、25mVおよび17mVのゼータ電位)を有する。
【0215】
ADGN−100ペプチドは、平均直径が130nm未満であり、多分散指数が0.31未満である、より小さい粒子を形成する。さらに、ADGN−100/siRNA粒子の電荷は中性に近く、ゼータ電位は6.0±0.8mVである。これは、in vivo利用にとって大きな利点である。
毒性
【0216】
毒性は、50μMまでのADGN−100/siRNAおよびCADY/siRNA複合体については観察されず、50μMの遊離ADGN−100およびCADYで30%毒性を得た(図16)。VEPEP−6は、50μMで、他のペプチドより高い毒性を、複合体化した形態(10%毒性)でも、遊離形態(40%細胞死)でも示す。VEPEP−9/siRNA複合体について毒性は観察されなかった。ADGN−100とは対照的に、VEPEP−9は、50μMで、その遊離形態で、より高い毒性(40%細胞死)を示し、これは、VEPEP−9のより長いヘリックス構造に起因しうる。
in vitroでの遺伝子送達
【0217】
VEPEP−6、VEPEP−9、CADYおよびADGNペプチドは、プラスミドDNAと複合体を形成する。6.2KbプラスミドDNAの安定化に関するペプチドの効率を、4℃、20℃または40℃での1または4日のインキュベーション後に、ヘパリン処理後のプラスミドスーパーコイル構造の完全性とDNA/ペプチド粒子の安定性の両方を追跡することによって評価した。遊離プラスミド、および脂質製剤(リポフェクタミン2000 Invitrogen)との複合体を、比較のために含めた。ヘパリン処理のために、5μgヘパリンを試料とともに1時間、32℃でインキュベートし、その後、アガロースゲル電気泳動を行って遊離プラスミドを分離した。表15および16に示すように、VEPEP−9およびADGN−100ペプチドは、試験したすべての条件でプラスミドDNAを十分に安定化した。ADGN−100は、プラスミドDNAを分解およびヘパリン処理から十分に保護した。比較すると、VEPEP−6および脂質製剤は、4、20または40℃での4日のインキュベーション後、安定性が低かった。
【表15】
【表16】
【0218】
ペプチド媒介プラスミド送達の効率を、Hela細胞において、20℃で1または4日間インキュベートしたペプチド/プラスミドナノ粒子を使用して送達の48時間後にルシフェラーゼ発現を測定することによって評価した。20℃でのペプチド/プラスミドナノ粒子の1および4日の保管後にHela細胞で測定した、48時間の時点での遺伝子発現効率。試験した各条件で、ADGNペプチドは、VEPEP−6およびCADYよりそれぞれ少なくとも10倍および2倍効力が高かった(表17)。ADGNおよびVEPEP−9ペプチドは、同様のプラスミド送達効率レベルを示し、このレベルは、4日のインキュベーション後に脂質製剤で観察されたものより約100倍高かった。
【表17】
in vitroでの細胞内送達
【0219】
ヒトmiR−34aマイクロRNAは、最近、がんに関係づけられ、特にその発現がTP53状態に関連していた。MCF7乳がん細胞を用いる抗増殖アッセイにおいてADGN−100またはVEPEP−6ペプチド/miRNA−34粒子を使用した。一本鎖miRNA−34(UGGCAGUGUGGUUAGCUGGUUG、配列番号41)をペプチドなしで、またはADGN−100もしくはVEPEP−6のどちらかを20:1のペプチド:miRNA比で有するペプチド/miRNA粒子で、培養細胞に添加した。遊離miRNA−34(灰色棒)、VEPEP−6/miRNA−34粒子(白棒)、およびADGN−100/miRNA−34粒子(黒棒)の用量反応を評価した(図17)。ADGN−100は、81nMのIC50を有する、miRNA−34の抗増殖特性を大いに向上させた。
in vivoでの細胞内送達
【0220】
ADGN、VEPEP−6またはVEPEP−9のいずれかと複合体化したsiRNAの粒子を全身静脈内投与に使用した。ADGNペプチド粒子、VEPEP−6粒子またはVEPEP−9粒子中のCyc B1 siRNA 5〜10μg(0.25mg/kgまたは0.5mg/kg)を、異種移植HT−29腫瘍を有するマウスに3日ごとに静脈内注射した。0.25mg/kg siRNAを使用すると50日目の後に腫瘍サイズの有意な縮小が観察され、ADGNおよびVEPEP−6粒子についてそれぞれ61%および33%の阻害があった(図18)。0.5mg/kgのADGN/siRNAおよびVEPEP−6/siRNA粒子を使用したとき、50日目に、腫瘍進行がそれぞれ87%および65%低減された。対照的に、VEPEP−9/siRNA粒子は、0.25mg/kgおよび0.5mg/kgで腫瘍増殖をそれぞれ12%および38%しか低減させなかった。ADGN/siRNA粒子は、VEPEP−6およびVEPEP−9粒子より、それぞれ、2倍および9倍効率が高かった。
【化4】
【化5】
【化6】
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【配列表】
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