(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記注射ガイド(12、32、52、72)の前記突出部(46、56)と前記安定器内の前記開口との間の接続部が、挿入するとき前記針を安定させるための係止手段を含む、請求項3または4に記載の眼科治療用器具。
前記注射ガイドを受け入れるよう適合された支持体を含み、前記支持体(70)が、前記測定スケール(76)と、前記注射ガイドを受け入れるためのスロット(74)とを含む、請求項39に記載のキット。
【発明を実施するための形態】
【0031】
実施形態による眼科治療用器具を、図面を参照しながら以下に記載する。
【0032】
一実施形態は、眼内への注射を補助するための眼科治療用器具を提供し、器具は、中空本体と、本体、例えば本体の下部に接続された基部とを含む安定器を含み、中空本体は基部から延び、注射ガイドは安定器に接続可能であり、注射針などの穿刺部材を受け入れるように適合されている。眼科治療用器具は、注射用器具、注入介助器、注入ヘルパー、または注入補助器と呼ぶこともできる。中空本体は、基部から垂直に、または実質的に垂直に延びることができる。本明細書で使用される「中空」は、例えば、安定器を眼の
表面に
載置するときに、眼の虹彩を、本体を通して見ることができるように、本体の内部が開いていることを意味し、器具の中心化を助ける状態である。本体に接続されている基部は、基部が本体の一体部分であることを意味し、すなわち本体は基部を含む。
【0033】
本体の下部は、使用中に眼の近くにあるか、眼と接触している本体11の部分を示す。本体は、一般に、第1の端部17と第2の端部18とを有し、第2の端部18は、使用中に眼に向く端部である。一例では、本体は円筒形状、例えば管状を有する。一例では、本体は円錐台形状を有し、すなわち円錐の切頭台の形状を有し、第2の端部は第1の端部よりも小さい直径を有する。本体11は、第1の端部17および第2の端部18で開いており、そのため、眼内での器具の正しい位置決めが可能になる。本体の側面には、1つ以上の窓部または開口部、例えば、反対側の2つの窓部が存在し得る。この窓部は、眼への視界を提供し、眼の外科処置を可能にすることもできる。本体の長さ、すなわち、第1の端部と第2の端部との間の長さは、20〜50mmの範囲、例えば30〜50mmであってもよい。一例では、本体の長さは約40mmである。このような本体の長さが比較的長いことは、顕著な眼角、すなわち眼が頭部のより深い所にある患者に特に適しており、その長さにより、使用者は指用のより広い空間が得られる。さらに、使用中に指が注射部位から離れているので、安全性も増している。本体の外径は、例えば、10〜30mmの範囲であってもよい。
【0034】
基部13は、安定器の本体11の第2の端部18に位置する。基部13は、例えば眼を安定させ、眼瞼を開いた状態に保つために、眼の表面にフィットするように適合される。一実施形態では、基部13は、例えば
図5Dに示すように、眼の表面にフィットするように適合された環状の支持面などのフランジ53を備える。フランジの幅は、安定器から1〜10mmの範囲、例えば3〜7mmの範囲、例えば約5mmであってもよい。一例では、基部、より具体的にはフランジは、眼の表面にフィットするように凹状である。
【0035】
一実施形態では、注射ガイドは安定器に取り外し可能に接続でき、これは、図面で見えるように、安定器とは別個の部分である注射ガイドが、安定器に接続され、安定器から取り外せることを意味する。安定器は、注射ガイドを受け入れるように適合される。すなわち、安定器と注射ガイドは、互いに物理的に嵌まるように設計されている。したがって、眼科用器具は、2部である、すなわち、2つの部分を備え、その部分は、安定器11、31、51、71および注射ガイド12、32、52、72である。
図5Dでは、2つの部分が接続されている。注射ガイドは、安定器に取り外し可能に接続されて設けることができ、使用中、より具体的には注入中に安定器に取り外し可能に接続される。
【0036】
一実施形態では、注射ガイドは、注射ガイドを受け入れるように適合された安定器の開口にフィットするように適合された、突出している部分または突出部46、56などの部分を備え、好ましくは注射ガイドは、安定器が眼に配置されたときに、眼の表面に対して、さらに具体的には、眼の表面の接平面に対して概ね垂直に針を保持するよう適合される。突出部は、例えば、円筒形部分46(
図4A)または円錐台形部分56(
図5A、5C)または任意の他の適切な形状であってもよい。安定器の開口は、突出部46、56を受け入れるように適合され、使用中に注射ガイドを安定化部分から手動で挿入および取り外しできるようにする。他方では、注射ガイドは、使用中に注射ガイドが実質的に動かないような精度で開口内に嵌まり込むべきである。これは、開口と対応する突出部との間にある適切なクリアランスを使用することによって実施することができる。一例では、クリアランスは、10〜500μm、例えば10〜200μm、例えば20〜100μmの範囲である。一例では、注射ガイドの突出部の上方に肩部47があり、この肩部は注射ガイドが開口に挿入されるときに開口の縁部に接触する。肩部は、注射ガイドの堅固な停止をもたらすストッパとして作用することができ、したがって、開口を通る突出部の到達を制限する。しかしながら、使用中、突出部は通常、ストッパが開口の縁部に接触する前に、眼の表面に接触する。したがって、ストッパは、使用者が注射ガイドを眼の中に深く挿入し過ぎることを防止する安全手段として機能し得る。一例では、基部を通る注射ガイドの移動は限定されず、例えば、注射ガイドのストッパとして作用する肩部などはない。
【0037】
一実施形態では、安定器の開口には、注射ガイドの開口内への挿入を案内するためのガイド手段が設けられている。ガイド手段は、例えば円錐台状の部分のような円錐であってもよく、注射ガイド用の通路を提供する。前述の円錐などのガイド手段の長さは比較的短く、例えば1〜5mmであり得る。一例では、ガイド手段は、注射深度を制限しない。すなわち、ガイド手段は、ストッパを含まない。一例では、ガイド手段は、注射深度を制限するためのストッパを含む。すなわち、前述のストッパは、上で説明したような、肩部および/または突出部などの、注射ガイドの対応するストッパまたは他の部分と接触する。一実施形態では、安定器の開口はガイド手段を備えていない。
【0038】
注射ガイドの挿入部位の位置は、注射可能物質の眼への送達および治療の円滑さに、影響を及ぼし得る。挿入部位は、安定器の本体の近くにあってもよい。そのような場合、注射部位が縁に近いので、注射部位が縁からより遠く離れている場合ほど、眼瞼は注射を妨げない。また、器具の移動が、特に麻酔剤を使用する場合に眼の表面を刺激することが少ない。これは通常、眼の上皮を弱化し、上皮組織の喪失を容易に引き起こし得ることである。したがって、注射部位は、基部、例えばフランジにあってもよい。一実施形態では、フランジは、注射ガイドを受け入れるように適合された開口を備える。
【0039】
また、注射部位は、例えば1〜10mmの距離、例えば縁の端から2〜8mmの距離で、縁から離れていてもよい。一実施形態では、注射ガイドは、安定器の支持アーム59を介して安定器に接続可能である。一実施形態では、支持アームは調節可能か可動であり、注射部位を調節することができる。一例では、支持アームの長さを調節することができる。調節可能な支持アームは、注射部位の所望の位置を固定するための調節および/または係止手段を含むことができる。
【0040】
注射ガイドは、針、または針のハブまたはコネクタを受け入れるように適合された通路、例えば注射ガイドを通るチャネルやボアなどを備える。注射ガイドは、第1の端部44と第2の端部45とを有し、針は、第1の44端部の開口43から注射ガイドに入り、第2の端部45の開口から出る。注射ガイドの第1の端部は、針、または針のハブまたはコネクタ、または注射器を受け入れるように適合される。注射ガイドの突出している部分または突出部46、56は、第2の端部45にある。すなわち、突出部46、56は、注射ガイドの第2の端部45を形成する。
図4Aおよび
図5Aに見られるように、例えば、第2の端部の開口が針のみを通すよう適合させるために、ボアが第2の端部45の方向へ向かって狭められてもよい。
【0041】
一実施形態では、安定器は、
図1に示すように、注射ガイドを受け入れるように適合された突出部を備える。この実施形態では、注射ガイドは、安定器の突出部を受け入れるためのチャネルまたは開口を備える。そのような場合、針は、突出部の開口に挿入しなければならない。
【0042】
注射ガイドは、例えば眼の上脈絡膜腔内で、注射ガイド内に挿入された針の注射深度を規定するように適合された少なくとも1つのストッパ40を含む。あるいは、注射ガイドは、注射ガイドに挿入する針の有効長を提供するように適合された少なくとも1つのストッパ40を備える。ストッパは、本明細書に記載の様々な代替物から選択することができる。一般に、注射深度は2000μm未満、より具体的には1200μm未満、または1100μm未満、さらには1000μm未満である。注射深度、すなわち針の貫く深さは、注射ガイド72から突出している針80の有効長(e)によって規定される(
図15)。有効長(e)は、
図15のように針の先端から、または針のベベルの内腔の中心から測定することができる。一実施形態では、注射深度は、注射ガイドから突出する針の有効長を1200μm未満にすることによって規定される。一実施形態では、注射ガイドの突出部46、56は、使用中に安定器内の開口を介して眼の表面に接触するように適合される。したがって、針の突出する長さは、注射深度に相応するか、それに等しい。上脈絡膜腔に注入するとき、注射深度、または対応して、針の有効長は、例えば600〜1200μmの範囲であり得る。したがって、「眼の上脈絡膜腔内の注射深度を規定する」という表現は、600〜1200μmの範囲の有効長の針、または本明細書に開示される他の範囲または任意の他の特定の長さ(複数可)を提供することを含む。一例では、注射は角膜を標的とする。角膜の平均的な厚さは545μmであるが、通常は400〜700μmの間で異なり得る。角膜へ注射するとき、注射深度、すなわち対応する針の有効長を、例えば50〜700μmの範囲、例えば100〜700μm、200〜700μm、300〜700μm、400〜700μmにすることができる。前述の有効長は、針を注射ガイド内に挿入した後に任意にいずれかの調節を行って所望の有効長の針を得た後に得られる最終的な有効長を示す。
【0043】
上脈絡膜腔への注射に適した有効長(e)の範囲の例は、500〜1200μm、600〜1200μm、700〜1200μm、800〜1200μm、500〜1100μm、600〜1100μm、700〜1100μm、800〜1100μm、500〜1000μm、600〜1000μm、700〜1000μm、500〜900μm、600〜900μm、および700〜900μmを含む。有効長の具体例としては、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、100、1050、1100、1150および1200μmが挙げられる。
【0044】
注射ガイドは、針の有効長を規定するように適合された少なくとも1つのストッパ40を含む。注射ガイドの突出部46、56の端部45は、例えば
図4Aに見られるように平坦または実質的に平坦であってもよく、または湾曲していてもよく、例えば凸状または凹状であってもよい。突出部46、56の平坦な端部は、
図15に示すように丸い縁部を有することができる。突出部の平坦または実質的に平坦な、すなわち湾曲していない(非凸または非凹)端部は、所望の注射深度を正確に規定し、注射ガイドを安定させるのに役立つ。平坦な端部は、特に端部が可撓性または弾性の材料で作られている場合、眼の表面との接触を増し、注射液が漏出するのを防止する。突出部46、56の端部45の直径は、0.5〜4mm、例えば2〜3mm、または1〜2mmの範囲であってもよい。一例では、試験で使用されるように、突出部46、56の端部45の直径は、約1.5mmである。
【0045】
一実施形態では、突出部は、例えばディスク状を有し、0.2〜1.0mmの範囲の厚さを有する弾性材料で作られた部分などの、可撓性または弾性の部分を備える。このような可撓性または弾性の部分は、注射部位において眼の表面と注射ガイドとの間の接続部を密封し、注射可能な流体のいかなる漏れをも防止することができる。可撓性または弾性の部分はまた、注射ガイドの退縮効果を提供し、したがって、注射可能物質の流れを増強する。また、このような密封された接合部は、注射部位を無菌状態に保つのに寄与し、いずれかの微生物が創傷に入るのを防止する。一実施形態では、基部内の開口は、注射部位を密閉するような可撓性部分を含む。一例では、基部の突出部と開口との両方は、一緒に注射部位を密封する可撓性の部分を含む。
【0046】
一例では、器具は、
中空本体と、本体の下部に接続された基部とを含む安定器であって、中空本体は基部から垂直に延び、
基部は眼を安定させ、眼瞼を開いた状態に保つために眼の表面にフィットするように適合される安定器と、
安定器に接続され、注射針を受け入れるように適合され、眼の表面に対して概ね垂直に保持される注射ガイドと
を含み、
注射ガイドは、さらに、眼の表面にある注射点を露出したままにするよう適合され、注射ガイドを介して注射を実行するのに利用可能であり、
注射ガイドは眼の上脈絡膜腔内の注射深度を規定するための調節手段を備える。より詳細には、器具は、眼の表面にある注射点を露出したままにし、注射ガイドを介して注射を実行するのに利用可能であるよう適合される。
一実施形態では、器具、または安定器は、複数の注射点を提供するように適合され、眼の表面にあるそれらを露出したままにし、注射ガイドを介して注射を実行するのに利用可能である。物質の注射は、複数の注射点のそれぞれに対して実行してもよい。
一実施形態では、器具は、ラチェットおよびプランジャタイプの伸張−退縮機構を備える。伸張−退縮機構は、注射ガイド内にあってもよいし、注射ガイドと安定器との間の接続部にあってもよい。
【0047】
実施形態において、調節手段は、
上向きに傾斜した形状であり、注射ガイドの内面に配置されている、1つまたは複数の固定ストッパ、
または、注射ガイドの中心を貫通し、針がその両側からワイヤを通すことができるようにするワイヤ、
および/または機械的なねじ山である。
【0048】
一例では、薬物などの物質が、眼、例えば上脈絡膜腔などの眼に、本明細書で記載される眼科治療用器具と皮下注射針を使用することによって送達される、外傷または眼疾患の治療用の物質を提供する。その中で、物質の注入は、眼の表面に対して概ね垂直になされる。この物質は、通常、水溶液、懸濁液などの溶液、分散液、乳濁液または懸濁液として、一般に注射液として提供される。
【0049】
そのような物質の一例は、眼の後ろにある色素であるメソゼアキサンチンである。メソゼアキサンチンは、ゼアキサンチンの異性体である。メソゼアキサンチンは、眼の上脈絡膜腔に注入するのに非常に適している。
【0050】
眼の疾患、障害および外傷を治療するために使用され得るすべての公知の治療物質、および予防薬または診断薬として作用する物質を含む、多種多様な物質を、本明細書に記載の器具を使用して、投与することができる。一例では、物質は炎症を軽減、阻害、予防および/または寛解する。この物質は、薬物またはプロドラッグであり得る。
【0051】
適切な物質の例は、抗生剤を含み、例えば抗菌薬、例えば抗生物質(例えば、テトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、バシトラシン、ネオマイシン、ポリミキシン、グラミシジン、セファレキシン、オキシテトラサイクリン、クロラムフェニコール、リファンピシン、シプロフロキサシン、トブラマイシン、ゲンタマイシン、エリスロマイシン、ペニシリン、スルホンアミド、スルファジアジン、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルフイソキサゾール、ニトロフラゾン、プロピオン酸ナトリウム);抗真菌薬(例えばクロラムフェニコール、クロルテトラサイクリン、シプロフロキサシン、フラマイセチン、フシジン酸、ゲンタマイシン、ネオマイシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、ポリミキシン、プロパミジン、テトラサイクリン、トブラマイシン、キノロン、アンホテリシンBおよびミコナゾール);抗ウイルス剤(例えば、イドクスウリジントリフルオロチミジン、アシクロビル、ガンシクロビル、インターフェロン、シドフォビル);抗癌化学療法剤;抗炎症性および/または抗アレルギー性化合物(例えばステロイド性化合物、例えばベタメタゾン、クロベタゾン、デキサメタゾン、デキサメタゾン21−リン酸、フルオシノロン、メドリゾン、フルオロメタロン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニドフルオロメトロン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン21−リン酸、酢酸プレドニゾロン、
および非ステロイド系化合物、例えばアンタゾリン、ブロモフェナク、ジクロフェナク、インドメタシン、ロドキサミド、サプロフェン、クロモグリク酸ナトリウム);抗体;アンタゴニスト(例えば、アンタゴニスト、セレクチンアンタゴニスト、接着分子アンタゴニスト、血小板内皮接着分子(PCAM)、血管細胞接着分子(VCAM))、白血球接着誘導サイトカインまたは増殖因子アンタゴニスト(例えば、腫瘍壊死因子−α(TNF−α、インターロイキン−1β(IL−1β)、単球走化性タンパク質−1(MCP−1)、または血管内皮増殖因子(VEGF))、β−アドレナリン受容体アンタゴニスト(例えば、カルテオロール、セタモロール、ベタキソロール、レボブノロール、メチプラノロール、チモロール);縮瞳薬(例えば、ピロカルピン、カルバコール、フィゾスチグミン);交感神経様作用薬(例えば、アドレナリン、ジピブリン);炭酸脱水酵素阻害剤(例えば、アセタゾラミド、ドルゾラミド);化学療法剤、副腎皮質ステロイド(例えば、デュレゾール)、トポイソメラーゼ阻害剤(例えば、トポテカン、イリノテカン、カンプトテシン、ラメララミンD、エトポシド、テニポシド、ドキソルビシン、ミトキサントロン、アンサクリン);プロスタグランジン、抗プロスタグランジングおよびプロスタグランジン類似体またはプロドラッグ、例えば、ビマトプロストおよびトラボプロスト;アルドースレダクターゼ阻害剤;人工涙液/ドライアイ療法;局所麻酔薬(例えば、アメソカイン、リグノカイン、オキシブプロカイン、プロキシメタカイン);シクロスポリン、ジクロフェナク、ウロガストロンおよび増殖因子(例えば、上皮増殖因子、散瞳薬および調節麻痺薬)、マイトマイシンCおよびコラゲナーゼ阻害剤および加齢性黄斑変性症の治療(例えば、ペガプタニブナトリウム、ラニビズマブ、アフリバーセプトおよびベバシズマブ)、トロンビン阻害剤;抗血栓剤;血小板溶解薬;血栓溶解薬;血管痙攣インヒビター;カルシウムチャネルブロッカー;血管拡張剤;抗高血圧剤;表面糖タンパク質受容体の阻害剤;
抗血小板薬;抗有糸分裂薬;微小管阻害剤;抗分泌剤;活性阻害剤;リモデリング阻害剤;アンチセンスヌクレオチド;代謝拮抗薬;細胞増殖阻害薬(血管新生阻害薬を含む);非ステロイド性抗炎症薬(例えば、サリチレート、インドメタシン、イブプロフェン、ジクロフェナク、フルルビプロフェン、ピロキシカム);抗アレルギー剤(例えば、クロモグリク酸ナトリウム、アンタゾリン、メタピリリン、クロルフェニラミン、セトリジン、ピリラミン、プロフェンピリダミン);抗増殖剤(例えば、1,3−シスレチノイン酸);鬱血除去剤、例えばフェニレフリン、ナファゾリン、テトラヒドラゾリン);縮瞳薬および抗コリンエステラーゼ(例えば、ピロカルピン、サリチル酸塩、カルバコールアセチルコリン塩化物、フィゾスチグミン、セリン、ジイソプロピルフルオロホスフェート、ホスホリンヨウ素、臭化デメカリウム);抗腫瘍薬(例えば、カルムスチン、シスプラチン、フルオロウラシル);免疫学的薬物(例えば、ワクチンおよび免疫刺激剤);ホルモン剤(例えば、エストロゲン、エストラジオール、プロゲステロン的、プロゲステロン、インスリン、カルシトニン、副甲状腺ホルモン、ペプチドおよびバソプレシン視床下部放出因子);免疫抑制剤、成長ホルモンアンタゴニスト、増殖因子(例えば、上皮増殖因子、線維芽細胞増殖因子、血小板由来増殖因子、形質転換増殖因子ベータ、ソマトトロピン、フィブロネクチン);血管新生阻害剤(例えば、アンギオスタチン、酢酸アネコルタブ、トロンボスポンジン、抗VEGF抗体);ドーパミン作動薬;放射線治療薬;ヒアルロン酸;ペプチド;タンパク質;酵素;細胞外マトリックス成分;ACE阻害剤;フリーラジカルスカベンジャー;キレート剤;抗酸化剤;抗ポリメラーゼ;光力学療法剤;遺伝子治療剤、例えばDNAまたはRNA分子またはそれらを含有するベクター;および他の治療剤、例えば、プロスタグランジン、抗プロスタグランジン、プロスタグランジン前駆体、タンパク質、ペプトイドなど、強膜のコラーゲンまたはGAG線維を分解するのに有効な薬剤、鎮痛剤および局所麻酔剤;および幹細胞療法に使用するための幹細胞がある。
【0052】
遺伝子治療は、例えば、網膜色素変性症、シュタルガルト病、全脈絡膜萎縮、X連鎖性網膜分離症、色覚異常、赤−緑の色覚異常および新生血管にまつわる加齢性黄斑変性症の治療に使用することができる。遺伝子治療に最も一般的に使用されるウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)である。AAVは単純(一本鎖DNA)であり、非病原性であり、サイズ(25nm)が小さい。異なるセロタイプおよびカプシドタンパク質からなる組換えAAVは、遺伝子およびタンパク質の長期発現が可能な特定の網膜層の細胞を標的とするように製造および設計することができる。遺伝子治療は、複数の網膜変性性症候群の治療において潜在的な有用性がある。それは、例えばレーバー先天黒内障(LCA)において広範に研究されている。
【0053】
一例では、2つ以上の物質が一緒にまたは別々に投与される。一例では、物質は、マイクロ粒子またはナノ粒子として投与されるか、マイクロ粒子またはナノ粒子に付着される。マイクロ粒子の例としては、微小球、マイクロカプセル、微粒子およびマイクロビーズが挙げられ、これらは1〜100μm、例えば1〜50μm、例えば1〜25μmの範囲の数平均直径を有することができる。ナノ粒子は、1〜1000nm、例えば1〜500nmの範囲の数平均直径を有することができる。任意の薬学的に許容される担体、賦形剤および/またはビヒクルは、例えば、水、生理食塩水、ポリマー、多糖類、界面活性剤などを含めることができる。一例では、物質はゲル化剤、例えば上脈絡膜腔でゲル化するように構成された薬剤を含む。このようなゲル化剤は、治療的に活性な薬剤の持続放出および/または制御放出を提供するために使用され得る。また、制御可能または持続的に放出する他の薬剤を含めることができる。一例では、物質は、硝子体内インプラントのようなインプラントとして投与され、例えば、糖尿病性浮腫を治療するための、Retisert、Ozurdex、およびIluvienなどの商品名で販売されているインプラントである。
【0054】
眼疾患および障害の例には、加齢性黄斑変性症、糖尿病関連眼疾患、例えば、糖尿病黄斑浮腫、脈絡膜変性、線維症、緑内障、炎症、腫脹、新生血管形成、静脈閉塞、虚血性眼疾患、高眼圧症、網膜芽腫、網膜色素変性症、癌、例えば、白血病、交感神経眼炎、側頭動脈炎、ブドウ膜炎および他の眼疾患、障害、または外傷、または脈絡膜または角膜の疾患、障害、または外傷を含む。
【0055】
加齢性黄斑変性症(AMD)は、通常、高齢者が罹患し、網膜の損傷のために視野の中心(黄斑)の視力を失う医学的状態である。ドライ型(非滲出型)形態では、ドルーゼンと呼ばれる細胞デブリが網膜と脈絡膜の間に蓄積し、網膜の萎縮および瘢痕化を引き起こす。より重度のウェット型(滲出型)形態では、網膜の後ろの脈絡膜から血管が成長し、滲出液および体液を漏出させ、また出血を引き起こす可能性がある。
【0056】
加齢性黄斑変性症、特にウェット型AMDは、例えば抗血管新生剤または抗VEGF剤、例えばVEGF−Aに対するモノクローナル抗体、例えばベバシズマブ、ラニビズマブ、ペガプタニブ、ペグプララニブおよびアフリベルセプまたは他の薬剤、例えばビタミン、ベルテポルフィン、ルテイン、ゼアキサンチンおよびメソゼアキサンチンを用いて上脈絡膜腔内に注射することにより治療することができる。
【0057】
緑内障は、例えばプロスタグランジン、例えばラタノプロスト、ビマトプロストまたはトラボプロスト、ベータブロッカー、アルファ−アドレナリン作動薬、炭酸脱水酵素阻害薬または有糸分裂またはコリン作動薬で治療することができる。
【0058】
一実施形態では、皮下注射針は、薬物などの注射可能物質が強膜下および脈絡膜上の上脈絡膜腔内に溶け出すことができるように、部分的にのみ強膜に貫入する。強膜は多孔性の構造であり、そのため注入可能物質が構造に入ることが可能である。また、これは、強膜と脈絡膜の間で正確に針の先端を標的化する必要がないので、より安全である。同様の効果は、例えば、本明細書に記載されている伸張−退縮機構を使用したとき、注射深度から針が退縮したときにも、物質のより良好な流れを得るために利用できる。
【0059】
実施形態を詳細に説明する前に、それらは特に例示された装置、システム、構造または方法に限定されないということを理解されたい。本明細書で使用する用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、限定することを意図するものではないことも理解されたい。
【0060】
例示的な器具を
図1、2A、2B、3,5D、13A、および13Bに示す。器具は安定器11、31、51、71と注射ガイド12、32、52、72を含む。安定器11、31、51、71は、眼を安定させて、眼瞼を開けたまま保つように適合される。安定器は、眼の接触面、例えば、いわゆるフランジを有する基部13、23、33、53、および基部13、33、53から垂直に延在する中空本体14、34、54を含む。
【0061】
一例では、中空本体14、34、54の全体的な形状はシリンダである。あるいは、形は上側開口部が下側開口部より大きい状態で、円錐であってもよく、それによって使用者は眼をより容易に診察することが可能になる。頂部が開いている設計は、直接見ることによって、角膜に集中する際に寄与する。
【0062】
一例では、角膜の大まかな形状に類似し、本体の内側の断面図は楕円形である。一例では、本体の内側の長さは約12mmであり、本体の内側の幅は約11mmである。本体の外側の断面図は、円形か楕円形であってもよい。内側の長さは角膜の水平な直径の平均に相応し、内側の幅は角膜の垂直な直径の平均に相応している。一般に、本体の内径は10〜14mmの範囲、例えば10〜13mmであってもよい。一例では、一方向への内径が約12mmで、垂直な直径は約11mmである。
【0063】
フランジ13、23、33、53は、一部または完全に可撓性であってもよく、例えば弾性材料で作られ、狭い眼瞼裂で、患者さえも痛みの少ない眼瞼下で配置するのを容易にするようにする。また、フランジは非可撓性であってもよく、器具の残りと同じ材料で作ることができる。また、一例において、制御可能に可撓性なフランジは、眼にそっと押すと、下にある強膜の上を滑るよう結膜を急き立てる。したがって、器具を引っ込めた後に、侵入点がすぐにかつ完全に閉じて封止される。創傷を封止することは、物質の逆流を防ぎ、感染や他の合併症のリスクを低下させる。また、フランジは、眼のまつげと眼瞼の辺縁が開放創と接触するのを防ぐ。フランジの縁部は丸くなければならない、すなわち、それらは、安定器を眼の内部と眼瞼の下に適用して、そこに動かすときに、角膜を損傷するのを防ぐために、鋭利でなく、かつ鋭い縁部を含まないものとする。しかしながら、フランジは実質的に薄いものであるべきで、使用する間に眼、特に眼の表面に接触している部分にいかなる接合部もあるべきでない。実際には、これは、フランジが弾性の部分を含んでいるなら、弾性の部分しか使用の間の眼に接触していないことを意味する。
【0064】
フランジまたは他のタイプの基部が眼の表面に接触しているとき、眼瞼の下の眼球にそれをしっかり取り付けることができる。そのようなケースでは、涙液または他の液体、例えば点眼液が、毛細管現象で安定器の注射チャネルの中に集中および/または上昇することがある。注射チャネルは、針が挿入される眼科治療用器具のチャネルを示している。集まった流体または液体を経て注射が行われるとき、流体または液体の上昇は、感染のリスクを生じさせる。本装置では、注射ガイドが安定器と別個であり、基部を通る注射チャネルが比較的背が短いため、この作用は低減する。さらに、注射ガイドが安定器に接続される時間が比較的短い。作用は注射ガイドに届かず、毛細管圧が弱いか、それが基部に実際に実在しない場合がある。しかしながら、基部の眼の側で、注射ガイドを受け入れるように適合された開口の近くで、基部にさらなる開口、例えば注射ガイドを受け入れるように適合させた開口の周りの1つ以上または複数の開口を設けることによって、毛細管圧に影響を及ぼす可能性がある。これらの開口は、基部を貫通して延在していてもよいし、例えば0.2〜1.0mmの範囲の深さを有する部分的なもの、すなわち空洞または窪みであってもよい。これらのさらなる開口は、注射の開口よりも小さい、例えば1.0mm以下、例えば0.2〜1.0mmの直径を有する、例えば円形の開口であってもよく、細長い開口、例えば注射ガイドの開口から半径方向に延びてもよく、1.0mm以下、例えば0.2〜1.0mmの幅、および5.0mm以下、例えば0.5〜5.0mmの長さであってもよい。毛細管圧を低下させ、また角膜との接触を容易にすることができる突出部、または溝、スロットまたはダクトのような、基部から延在していない基部の眼の側にある他の形状も、使用することができる。一例では、突出部は、直径が1.0mm以下、例えば0.2〜1.0mmの丸い部分、例えばノジュールである。一例では、突出部は、例えば注射ガイドの開口から半径方向に延びる細長い部分であり、幅が1.0mm以下、例えば0.2〜1.0mm、長さが5.0mm以下、例えば0.5〜5.0mmである。突出部の高さは、例えば、0.2〜1.0mmの範囲であってもよい。安定器が回転するとき、そのような突出部は、角膜の微動をもたらし得る。
【0065】
実施形態では、基部は吸盤と同様に作用する吸気リング(図示せず)に接続される。吸気リングは、眼をさらに安定させるように適合され、別個の装置、例えばポンプによって空気を吸うことができる穴を含んでいる。
【0066】
実施形態では、基部は装置または穿刺部材、例えば従来の針や注射器16、26、36を受け入れるように適合される注射ガイド12、32、52、72に接続される。
図1では、注射ガイド12が安定器11に直接取り付けられているので、注射点は縁に近い。あるいは、
図5Dに示すように、注射ガイド52は、支持アーム59を介して安定器51に接続される。それによって、注射点は、縁部からさらに離れる。
【0067】
注射ガイドおよびその安定器への取り付けは、眼の表面の一部、すなわち所望の注射点が露出したままで、注射ガイドを介して注射を行うのに利用できるように構築される。「注射点」は、注射ガイド、より具体的には前述の注射ガイドに挿入された針を受け入れるように適合された安定器の位置、例えば開口に相応する。
【0068】
実施形態(図示せず)では、眼科用器具は、縁から異なる距離にある複数の注射点、例えば縁にある第1の注射点、縁から3.5mmの距離にある第2の注射点、縁から12mmの距離にある第3の注射点、および/または角膜に対する第4の注射点、またはそれらの任意の組み合わせを提供するように構成される。また、眼科用器具は、例えば縁の周りにある、同じ距離の複数の注射点を提供し得る。好ましくは、縁と赤道の間に後部の注射点がある。また、眼科用器具は眼の表面と関連する様々な角度の注射点を提供でき、角度は(デカルト平面の)X、YまたはZ方向の少なくとも1つにおいて異なっている。
【0069】
例えば、1つ以上の支持アームに沿って、および/またはフランジで、例えば本体の異なった側で、注射ガイド用の複数の取り付け点を提供することによって、複数の注射点を実装できる。それぞれの注射点は、眼の表面を露出させておき、注射ガイドを通して注射を実行するのに利用可能である。物質の注射は、連続してまたはほぼ同時に、複数の注射点のすべてまたは一部で実行できる。異なった注射点に複数の注射を行う場合に、流体製剤のような注射物質の治療効果を改善できる。
【0070】
角膜に注射をする実施形態では、注射ガイドを安定器に接続して、針が本体の内側断面内にある開口部を貫くようにする。
【0071】
実施形態では、注射ガイドが、器具の残りから外されるか別々であって、独立ユニットとして使用されている。したがって、一実施形態が、注射針などの針を受け入れるように適合された注射ガイドを提供し、それにおいて、注射ガイドは例えば、眼の上脈絡膜腔の中で、注射ガイドに挿入された針の注射深度を規定するように適合される少なくとも1つのストッパを含む。そのような別個の注射ガイドは、安定器の文脈で本明細書に記載した注射ガイドと同一であってもよい。
【0072】
図10は、反射鏡を含んでいない注射ガイドと接続して使用できる機器を示している。この機器は、機器の促進、保持および位置決め用のハンドルまたはアーム101と、注射ガイドを受け入れて保持するための受け入れ手段102とを備える。したがって、この機器は安定器として作用する。受け入れ手段は、注射ガイドを受け入れるように適合されている。すなわち、機器と注射ガイドは、互いに物理的に嵌まり合うように設計されている。受け入れ手段は開口を含み、これは使用中に注射ガイドを機器から手動で挿入および取り外しできるように、注射ガイドの突出部46、56を受け入れるように適合される。他方では、注射ガイドは、使用中に注射ガイドが実質的に動かないような精度で開口内に嵌まり込むべきである。一実施形態では、
図10で見ることができるように、機器の開口は注射ガイドの挿入を開口に誘導するためのガイド手段を備えている。ガイド手段は、例えば円筒形の部分または円錐、例えば円錐台状の部分であってもよく、注射ガイドにチャネルを設ける。前述の円錐などのガイド手段の長さは比較的短く、例えば1〜5mmであり得る。一般に、受け入れ手段は、本明細書で説明した安定器71の基部の相応する部分と類似していてもよい。
図10の機器は、眼にフィットするように適合された環状の支持面を有することができる。一例では、支持面は、完全に環状、すなわち円形である。一例では、支持面は部分的に環状であり、すなわちC字形であるか、片側が例えば30〜90度開いており、完全な円を形成していない。このような環状支持体の開いている部分は、機器を眼の中に配置するとき縁の境界が見えるよう促す。
【0073】
また、他のタイプの機器または安定器を注射ガイドに接続して、使用することもできる。一例では、このような機器は、機器を促進し、保持し、位置決めするためのハンドルまたはアームと、眼の中に配置されるように適合されたハンドルの端部の傾斜部分とを備える。傾斜部分は、眼の表面にフィットするように適合された基部として作用し、注射ガイドを受け入れるように適合されている。傾斜部分は、注射ガイドを受け入れるための開口を含み、この開口は、使用中に眼の表面に接触するように適合された平坦部分にあってもよい。また、傾斜部分は、目蓋および睫毛と離れているように設計された拡張フランジを含めることもできる。傾斜部分は、例えば、金属製の縞などの縞で形成された部分であってもよい。このような機器の一例は、Katalyst Surgical LLCのRapid Access Vitreal Injection guide (RAVI Guide)である。
【0074】
実施形態では、独立したユニットとして、アームまたはハンドル付きまたは無しの注射ガイドのない安定器を使用することがある。したがって、一実施形態は、眼の表面にフィットするように構成され、本明細書に記載の注射ガイドのような注射ガイドを受け入れるように適合された基部を含む、注射ガイドまたは眼科治療用器具のための安定器を提供する。一実施形態では、安定器は、中空本体と、本体に接続された基部とを含み、中空本体は基部から例えば垂直に延び、基部は眼の表面にフィットするように適合され、注射ガイドを受け入れるように適合される。安定器は本明細書に記載されたいずれかの安定器と同一であってもよい。注射ガイドは、本明細書に記載された注射ガイドであってもよい。基部は、注射ガイドまたは針を受け入れるための開口を含むことができ、ガイド手段付きまたは無しの状態がある。
【0075】
注射ガイドは、針を受け入れ、所望の角度にそれを保持して、注射深度を規定するように適合される。また、注射ガイドは、汚染から、例えばまつげから針を保護し、使用者を保護して、その結果、安全な針として機能する。
【0076】
注射ガイドには、好ましくは挿入するとき安定器の基部、または、基部に取り付けられた支持アームから延在する管状の構造がある。
【0077】
実施形態では、注射角は注射点の眼の表面の接平面に対して約90度、例えば85〜95度である。90度に近い角度で、注射深度と注射点の両方の良好な制御が実現する。いくつかの場合、注射点次第で、90度と異なった注射角が好ましい場合もある。一般に、前述の90度の場合の注射は、注射点で眼の表面から垂直に行われる。3次元の場合の画定では、点Pの面に対して垂直な面、またはまさに垂直である面は、そのPにおける面に対する接平面に垂直なベクトルである。この場合、Pは注射点である。
【0078】
また、注射角は異なる場合がある、すなわち注射点における接平面と垂直ではなく、例えば、一般にX−Y−Z方向の少なくとも1つの方向において、注射点における眼の表面の接平面に対して45〜85度の範囲内の角度を形成することができる。これにより、末梢組織へのより良好なアクセスが可能になる。
【0079】
強膜または角膜の厚さ、したがって注射深度も、個々によって異なり得る。所望の位置、特に眼の上脈絡膜腔までの注射深度を得るために、針の特定の有効長を得なければならない。患者の強膜の厚さは、光干渉断層撮影、UBM装置、または超音波装置、例えばBスキャン、を使用するなど、任意の適切な手段を利用することによって、測定および判定することができる。患者の角膜の厚さは、バイオメーター、パキメイター、シャインプルークカメラ、光干渉断層撮影またはUBM装置または超音波装置、例えばAスキャン、を使用するなど、任意の適切な手段を使用することによって、測定および判定することができる。測定は、通常、操作の前に別々に実行され、個々の測定結果は、後で使用するために記録することができる。したがって、注射前のつかの間に、針の有効長は、個々の測定結果に従って患者のために具体的に調節され、標的組織または位置、例えば眼の上脈絡膜腔に対し正確な注射深度を得ることができる。これは、患者固有の注射深度と呼ぶことができる。また、適切な注射深度は、試験によって、すなわち薬剤が所望の位置に入るときをモニタすることによっても規定することができる。注射が成功しなかった場合、針の長さを調節し、例えば長さを増やすなどで、わずかに異なる位置への新たな注射を行う。
【0080】
注射ガイドは、注射深度を調節するための調節手段を含むことができる。このような手段は、手動、機械的、電子的、固定的および/または調節可能であってもよい。調節は段階的でも連続的でもよい。
【0081】
その管状部分の内部に、注射ガイドは、調節手段として機能することができ、注射ガイドに挿入された針の注射深度を規定するように適合される1つ以上の固定ストッパを含むことができる。
【0082】
実施形態では、調節手段またはストッパは、
図4Aおよび
図4Bに示すように、注射ガイドの内面42に取り付けられ、そこから突出するいくつかの機械的固定ストッパ40を備える。
【0083】
注射ガイドは、突出するストッパ40によって、一方向に関してのみ注射深度を制限することができる。あるいは、ストッパは、注射ガイドの内縁から別の内縁まで延在してもよい。いくつかのストッパがある場合、それらは互いに交差し得る。ストッパは、例えばハブ、注射器、または針の他の適切な部分、あるいは他の相応する医療機器に対するその作用に影響し得る。
【0084】
実施形態では、少なくとも1つのストッパ40は薄く、注射ガイドの上側開口部43に向く尖った形状を有し、接触時に針が損傷を受けることなく、下側開口部に向けて穏やかに摺動するようにする。複数のストッパを使用することができる。
【0085】
注射ガイド内の少なくとも1つのストッパ40は、針を受け入れるように適合された注射ガイドの内部に形成されたボアまたはチャネル41または他の通路などの注射ガイドの内側にあってもよい。一実施形態では、少なくとも1つのストッパ40は、ボアまたはチャネル41の表面にある。ストッパ40の量は、ストッパ(複数可)の種類、針、ハブの種類、または使用する装置の種類に応じて、1、2、3、4、5、またはそれより大きくてもよい。一実施形態では、3つのストッパ40がある。これにより、3つの点が平面を画定するので、構造が安定する。一実施形態では、少なくとも1つのストッパは、針を停止させるため、または注射ガイド内への針の貫入を制限するために、針のハブに接触するように適合される。ストッパが接触するハブの部分は、針軸とハブの接合部における肩部であっても、針軸とハブの接合部における接着部でも、ハブの突出部でも、ハブの注射器側のフランジであってもよい。一実施形態では、注射ガイドは、針を受け入れるためのボアを備え、ボアを取り囲む縁部は、ストッパとして機能するように適合される。より具体的には、ストッパは、注射ガイドの第1の端部にあり、例えば、ボアを取り囲む第1の端部の縁部は、ハブまたはコネクタを受け入れるように適合されたストッパ、例えば、ハブまたはコネクタの端部の肩部として作用し得る。ボアの直径は、針のハブまたはコネクタを受け入れるように適合されてもよい。
【0086】
本明細書で使用される針は、用語を注射針などと互換的に使用し得る任意の適切な穿刺部材を示す。穿刺部材は、標的組織内に挿入され得る針の先端部などの遠位端を有する。穿刺部材は、一般に、注射ガイドのストッパに接触し得る部分、例えばアダプタ、ハブまたはコネクタ、または針とハブとの接続部または接合部で接着する基部を有する。ストッパに接触する部分は、通常、肩部、縁部、突き出し、凹状縁部、溝、ノジュール等のような、穿刺部材の注射ガイドへの進入を停止させることができるような突出部を有する。
【0087】
一般に、注射針などの針には、3つの部分がある。ハブ、軸、およびベベルである。ハブは、針の一端にあり、注射器に取り付けられる部分である。時々、それはアダプタ、コネクタまたは接続部とも呼ばれる。軸は、突き出た先端を形成するために一端にベベルを設けた、針の細長いステムである。ベベルはカニューレまたは針の尖った先端の基底面、実際には針の最も先端である。針の軸の中空のボアは、内腔として知られている。針のサイズは長さとゲージによって指定される。針の長さは、ハブと軸の接合部から先端部の先までで測定できる。針のゲージは、針の外径を指定するのに使用される。一実施形態では、注射針は皮下注射針である。通常、針の軸はステンレスで作られているが、いかなる他の適当な材料も使用でき、例えば他の金属、プラスチックまたは生分解性の物質が挙げられる。1つのタイプの針では、針軸はハブまたはコネクタに接続される金属部分に取り付けられるか、ハブまたはコネクタの一部を形成する。一例では、そのような金属部分は正方形の断面を有する。
【0088】
また、通常針には、コネクタがある。これは、ルアーテーパータイプのコネクタなど、圧入かねじれによる継手によって、注射器のバレルに取り付けるためのものである。ルアーテーパーは、小規模の流体の継手の標準化されたシステムであり、医療および実験用の機器のオスの先細りの継手と、係合するメスの部分との間、例えば皮下注射器の先端と針、または二方活栓と針の間に漏れのない接続をもたらすためのものである。ルアーテーパーの接続は、2種類ある。係止と滑動である。係止式(「ルアーロック」)継手は、オス継手のスリーブのねじ山にねじ込む、メス継手にあるタブ付ハブによって、しっかりと接続される。滑動式継手、すなわち滑動式先端(「ルアースリップ」)継手は、まさにルアーテーパーの寸法に適合させ、一緒にプレスされ、摩擦により保持される(ねじ山がない)。一実施形態では、少なくとも1つのストッパは、針を停止させるため、または注射ガイド内への針の貫入を制限するために、針のコネクタに接触するように適合される。
【0089】
本明細書で使用される注射器とは、針などのような穿刺部材を介してコンテナから物質を注射するように適合された医療用注射器のような、用語を互換的に使用できる任意の適切な注射器装置を示す。一例では、注射器は、作動ロッド、例えば注射器のピストンまたはプランジャのような作動器を含み、これには、物質コンテナ内にある作動器の遠位端の動きをもたらす力が加えられ、それが物質コンテナから穿刺部材を介して標的組織内へ物質を運ぶ。物質コンテナの一例は、注射器のバレルである。注射器装置は、手動で操作可能であってもよく、または部分的または完全に自動化されてもよく、例えばポンプまたは他の機械動力式の作動器へのコネクタであってもよく、注射器装置の作動器を作動させるように構成されるプロセッサを含む制御器によって制御し得る。
【0090】
少なくとも1つのストッパ40は、注射ガイドの内面に配置され、注射ガイドの中心の方向に針を向ける、上向きに傾斜した形状を含むことができる。本明細書で使用する上向きとは、針が内部に挿入されるか、針を受け入れるように適合された注射ガイド44の第1の端部のある方向を示す。傾斜した形状とは、注射ガイドの第1の端部に向かって狭まりおよび/または低くなる、ベベルを付けた形状を示す(
図4A)。
【0091】
一実施形態では、注射ガイドは、針を受け入れるためのボア41を備え、少なくとも1つのストッパ40は、ボアの軸に平行なボアの表面に、細長い突起などの少なくとも1つの突起を含む。ボア41は、チャネルまたは通路と呼ぶこともできる。ボアの表面、すなわちボアの壁は、注射ガイドの内側にあり、すなわち、注射ガイドの内面である。突起とは、ボア41の表面からボア41の中心方向に延びる突出部をいう。突起が、ボアの軸に平行な細長い突起である場合、針の挿入方向にも平行である。細長い突起は、ボアの軸に平行な長さ、ボアの表面からボアの軸に向かう高さ、および長さと高さに垂直な幅を有する。細長い突起は、注射ガイドの第1の端部を指し示すかそれに相応する第1の端部と、注射ガイドの第2の端部を指し示すかそれに相応する第2の端部とを有する。一般に、細長い突起の幅は、突起の第2の端部で測定される、0.1〜2.0mm、例えば0.2〜1.0mmの範囲であってもよい。突起の高さは、突起の第2の端部で測定して、例えば0.5〜3mmの範囲、例えば0.2〜2mm、または0.5〜1.2mm、例えば、約0.2mm、約0.5mm、約0.7mm、約1.0mm、約1.2mm、約1.5mm、または約2.0mmであり得る。細長い突起により、針がストッパに当たったり引っかかったりするリスクが最小限に抑えられる。さらに、一実施形態では、
図4Aまたは
図11Cで見られるように、細長い突起のような少なくとも1つの突起は、端部が針を受け入れるように適合されている注射ガイドの第1の端部に向かって、ボアの長手方向にベベルを付けている。一実施形態では、細長い突起は、注射ガイドの第1の端部に向かって低くなる、すなわち、突起の高さが注射ガイドの第1の端部に向かって減少する。一実施形態では、細長い突起は、注射ガイドの第1の端部に向かって狭まる、すなわち、突起の幅が注射ガイドの第1の端部に向かって減少する。狭まる端部は、例えば、鋭いまたは丸みを帯びている。狭まる端部の幅は、例えば0.05〜0.5mmの範囲、例えば0.05〜0.3mmの範囲、例えば0.05〜0.2mmの範囲あってもよい。一例では、突起は、第1の端部に向かって低くなり、狭くなる。このようなベベルを付けられた構造は、針がストッパに当たったり引っかかったりするリスクをさらに低下させる。これは、針の先端が損傷しないという効果をもたらし、針は注射ガイドの何らかの材料を引っ掻いて除去しなくなる。また、針を円滑に挿入することができる。しかしながら、針のハブは、針の所望の有効長を規定するために、ストッパ40(複数可)によって停止させられる。
【0092】
また、ストッパ40は、突起または突出部とも呼ばれ得る他の形状を有していてもよい。一実施形態では、注射ガイドは、針を受け入れるためのボア41を備え、少なくとも1つのストッパ40は、ボアの表面にある少なくとも1つの縁部を含む。縁部は、ボアの周りに、完全にまたは部分的に、肩部を形成することができる。一実施形態では、少なくとも1つのストッパは、丸い、または実質的に丸い、例えばノジュールである。縁部、肩部またはノジュールなどのストッパの高さは、例えば、0.5〜3mmの範囲、例えば0.2〜2mm、または0.5〜1.2mm、例えば約0.2mm、約0.5mm、約0.7mm、約1.0mm、約1.2mm、約1.5mm、または約2.0mmであり得る。一例では、2つ以上のストッパ40がある。例えば、4つのストッパ40が示されている
図4Bで見られる。ボアまたはチャネル41の断面は、円形であってもよく、
図4Bで見られるように角がある、例えば四角形であってもよい。断面は、装置、例えば針、針のハブまたはコネクタ、あるいは他の装置を受け入れるべくフィットするように適合される。ストッパ(複数可)は、注射ガイドの第1の端部から1〜20mmの範囲の距離、例えば2〜10mmの範囲でボア内に配置されてもよい。
【0093】
一実施形態(図示せず)では、少なくとも1つのストッパは、例えば、100〜500μmの範囲の直径を有する薄い制限手段であり、ガイドの主な縦軸に垂直なワイヤなどが、注射ガイドの中心を貫通し、その結果、針はその両側からワイヤを通すことができる。
【0094】
一実施形態では、ストッパの面は、上向き(例えば、
図1のストッパ19、および
図4Aのストッパ40を参照)または下向きに傾斜しており、針を注射ガイドの中心に向けている。
【0095】
ストッパが傾斜しているタイプまたはワイヤタイプの形状であることは有利である。なぜなら、針がストッパを引っ掻くのを防ぐからである。引っ掻くことにより針は鈍化することになる。また、そのように引っ掻くと、注射ガイドの表面から材料が離れることになり、最後には材料が眼に至る可能性がある。また、使用者は、針が実際に眼に挿入されるようになって、所望の深さまで貫くのを確信し得る。
【0096】
一実施形態では、注射ガイドは、針を受け入れるためのボアを含み、少なくとも1つのストッパが注射ガイドのボアを横切るワイヤを含み、一例ではガイドの主な縦軸に対して垂直であり、そのため針はその両側からワイヤを通すことができる。
【0097】
ストッパは、一部または完全に、制御可能に可撓性であってもよい。制御可能に可撓性であることは、注射液のより良好な流れを得るために入れられるときに、針を戻す物質を示している。そのような材料は、弾性の、例えばエラストマーの材料、より具体的にはゴムまたは同様のものなどのエラストマーであってもよい。エラストマーは、粘弾性(粘性と弾性の両方を有する)および非常に弱い分子間力を有し、他の材料と比較して一般に低いヤング率および高い破壊歪みを有するポリマーである。弾性ポリマーに由来する用語は、よくゴムという用語と互換的に使用されるが、後者は加硫物を示す場合に好ましい。通常、ポリマーを形成するために関連付けられるそれぞれのモノマーは、炭素、水素、酸素、および/または、シリコンで作られている。エラストマーがガラス転移温度を超えて存在する無定形のポリマーであるので、かなりの部分運動が可能である。そのため、周囲温度で、ゴムは、比較的柔らかくて、変形可能である。エラストマーの例には、天然ポリイソプレン、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、クロロプレンゴム、ブチルゴム、スチレン−ブタジエンまたはニトリルゴムのような不飽和ゴムが含まれる。エラストマーの他の例は飽和ゴムを含み、例えばエチレン・プロピレン・ゴム、エピクロロヒドリン・ゴム、ポリアクリル酸ゴム、シリコーンゴム、フルオロシリコーン、フルオロエラストマ、ポリエチレンブロックアミド、クロロスルホン化ポリエチレンまたはエチレン酢酸ビニルなどが挙げられる。一例では、弾性材料は合成ゴム、例えばネオプレンを含む。一実施形態では、エラストマー材料は、透明であるか、実質的に透明である。一般に、この出願で使用される「弾性材料」は、上で説明した材料を示す。
【0098】
好ましくは、ストッパは注射ガイドの内側の、ある一定の距離に位置し、針がストッパに接触する前にガイドに押し込まれるようにしなければならない。このようにして、針が自動的に安定し、適切な態勢と角度に向けられるようになる。
【0099】
一実施形態では、注射ガイドは針の有効長を調節するための調節手段を含む。針が注射ガイドに挿入された後に針の有効長を調節する必要があることがある。患者特有の注射深度を得るように針の有効長を調節できる。これは、予め測定された強膜または角膜の厚さのような患者の個人的特徴に従って決定され、眼の表面から所望の位置、例えば上脈絡膜腔までの距離を判定することができる。針は強膜を完全または部分的に貫くことができる。注射ガイドに針を挿入した後に、針の予備的な有効長を提供する。これは、ゼロまたはゼロを超える値、例えば50〜700μm、例えば50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650または700μmであってもよい。この後、針の最終的な有効長とも呼ぶことができる針の所望の有効長を得るように、さらに長さを調節できる。有効長は、患者の個人的な特徴に従って、長めまたは短めにし得る。例えば、眼の表面から上脈絡膜腔まで以前に決定している距離と等しい針の有効長を得るように、長さを調節し得る。これはまた、患者特有の注射深度と呼ぶことができる。
【0100】
様々なタイプの調節機構を使用することによって、調節を実施できる。一実施形態では、調節手段はねじ山を含む。そのような場合では、
図5A〜5Dに示しているように、注射ガイドは前述のねじ山で取り付けられた2つの部品を含む。前述の2つの部分は、ねじでとめることによる調節が、注射ガイドに取り付けた針の有効長を変化させるように、調節可能である。針は、第1の部分510に取り付けられ、第2の部分512は、第1の部分に対して移動可能である。第1の部分は注射ガイドに挿入された針の注射深度を規定するように適合させられた少なくとも1つのストッパを含む。針が第2の部分から突出すると、針の有効長は、第1および第2の部分が互いに対して移動するにつれて、変化する。一実施形態では、調節手段は、くさび形部分を有するねじにより実装され、ねじを回すと、注射ガイドの第1の部分と第2部分との間でくさび部分が動いて、そのため第1の部分と第2の部分の距離が変化する。
【0101】
図5A〜
図5Dに示す実施形態では、調節手段は、機械的なねじ山501である。この実施形態では、注射ガイドは固定ストッパ502と安定化用の追加の固定ストッパ503をさらに含む。
【0102】
一実施形態では、針の有効長を調節する手段は段階的調節を含む。段階的調節は、1つのステップの調節によって、「クリック」音などの可聴および/または触覚表示を作り出すように実装されてもよい。ステップは、針の有効長を、例えば50μmまたは100μm変化させる間隔などの所定の間隔で、構成することができる。また、測定スケールを示す線、印などの針の調節された有効長を示すための印またはインディケータを提供できる。
図11Aと11Bは、段階的調節でねじ山を含む調節機構の実施例を示す。段階的調節は、注射ガイドの第1の部分および注射ガイドの第2の部分にある、くさび形、またはベベルを付けられた突出部505で実施され、突出部505は、第1および第2の部分にある突出部505の縁部が遭遇するとき調節を妨げる。より多くの力を加えることによって妨げることを克服することができ、くさび形部分の縁部が、注射ガイドの他の部分の相応する縁部を通る際に、クリック音が得られる。各「クリック」には1つの調節ステップが設けられている。突出部およびねじ山は、針の有効長の各ステップ、すなわち「クリック」において、例えば50または100μmで、所定の調節を提供するように配置される。また、機構は異なる注射深度を表す数値を示すポインタ514を含み、各値は1つの調節ステップを表す。これは
図13Aおよび13Bでも見ることができる。
【0103】
注射ガイドの外面は、使用者が針をガイドの意図している深さまで押すのを助ける、可視の指示を含むことができる。このようにして、使用者は、針が眼を所望の注射深度まで貫くのを確実にできる。例えば、測定スケールを示す線、印などの視覚的手段といった、針の調節された有効長を示すための印またはインディケータを提供できる。一実施形態では、注射ガイドがインディケータ手段、より具体的には視覚的なインディケータを含み、これは測定スケールなどの、針の調節可能な有効長を示す。
【0104】
注射ガイドが安定器に接続されるとき、接続が形成される。例えば、注射ガイドの突出部と安定器の開口の間の接続である。一実施形態では、注射ガイドの突出部と安定器の開口との接続は、挿入されるとき針を安定させる係止手段を含む。
【0105】
一実施形態では、係止手段はバヨネット型の連結を含む。バヨネットコネクタは固定機構であり、1つまたは複数のラジアルピンを有する円筒形のオス側部と、適合するL字型のスロット(複数可)を有するメス型レセプタ、および任意選択で2つの部品を互いに係止された状態に保つためのバネ(複数可)を含む。一例では、スロットは、セリフ(水平アームの端にある短い上向きの部分)付きの大文字のLのような形状をしており、ピンがLの垂直アーム内へと摺動し、回転して水平アームを越えて、次にバネによって短い垂直な「セリフ」内へとわずかに上方に押し込まれ、バネに押し付けられない限り、ピンが「セリフ」から出るまで、コネクタはもはや自由に回転することができない。また、この場合、積極的に眼に押さないとき、眼の弾性が、上向きに注射ガイドを押すことがある。
【0106】
一実施形態では、係止手段はねじ山を含む。安定器の中、または、眼の中に挿入するとき、針および/または注射ガイドが回るまたは回転するのを可能にすることは、有用な場合がある。そのような回転移動は、例えば少なくとも30度、例えば約90度、または180度であってもよい。そのような場合、針のベベルは、薬物用の経路を設けるために組織を切る、すなわち、穴をあける効果をもたらす。一実施形態では、係止手段は、ピン60とスロットの組み合わせを備え、器具の一部分は少なくとも1つのピン60を備え、他の部分は対応する少なくとも1つのスロット62を備え、ピン60はスロット62に嵌まり合うよう適合され、2つの部分を一緒に係止する。一例では、安定器は、注射ガイドを受け入れるように構成されたガイド手段を備え、ガイド手段は、例えば円錐形または円錐切頭台の部分に、前述の1つ以上のスロット62を備え、突出部または注射ガイドの第2の端部は、対応するピン60を含む。一例では、2つのスロット62と2つの対応するピン60(
図11A)がある。
【0107】
一実施形態では、ガイド手段には、
図12Aおよび
図12Bに示すように、ピンを受け入れて回転運動を提供するように適合された溝64が設けられている。
図12Aおよび
図12Bに示すように、溝が螺旋状の返しとして設けられている場合、溝64によって案内される動きはまた、注射ガイドを眼の方に押しやることができる。そのような螺旋状の返しは、少なくとも30度、例えば、約45度、90度または180度の回転移動を容易にすることができる。一実施形態では、溝は螺旋部分(または、ねじ山部分)と非螺旋部分を有し、これはさらに眼に進まずに、注射ガイドを回転させ続けるのを可能にする。非螺旋部分は、螺旋部分から例えば0.5〜2mm、注射ガイドの円周の方向に続く。一実施形態では、溝は螺旋部分と非螺旋部分を有し、これは注射ガイドが最も遠い位置から退縮するのを可能にし、また注射ガイドを安定器に係止する。そのような場合、非螺旋部分は、螺旋部分から、注射ガイドの軸に平行な方向に戻る、すなわち、注射方向と逆方向に、例えば0.2〜0.5mm続いていく。これは、「セリフ」を含むバヨネットマウントでよく使用される係止と類似している。
【0108】
図11Aは、第2の端部に2つのピン60を有する2部分の注射用器具の第2の部分512を示すが、前述のピンは安定器71の対応する溝62にフィットするように適合されている。
図12Aは、注射ガイド12を受け入れるためのガイド手段66を有する安定器71を示し、ガイド手段は、注射ガイドで2本のピン60を受け入れるための2つの溝62を有する。
図13Aは、注射器と針を備えた調節可能な2部分の注射ガイド72を示しており、注射ガイド72は、安定器71の前述のガイド手段66に挿入され、ピン60が実質的に円錐台形のガイド手段にある対応する溝62に挿入され、溝は短い螺旋状の返し64として配置される。
図13Bは、眼の側からの同じ配置を示し、針を有する注射ガイド72の第2の端部45が、安定器71のフランジ53にある開口から突き出している。注射ガイド72の第2の端部45の平坦な側面は、フランジ53の下面、すなわちフランジ53の眼の側から突出するように配置されているので、眼の表面に密接して接触し、そのため、針の突出部の長さが注射深度、すなわち針の有効長を規定するのは、注射ガイドの第2の端部45の平坦な側面である。
【0109】
一実施形態では、
図6に示すように、注射ガイドの突出部と安定器の開口との間の接続部は、ラチェットおよびプランジャタイプの伸張−退縮機構を備える。一例では、接続部は、係止手段と伸張−退縮機構との両方を備える。
【0110】
任意の適当な材料で器具を作ることができる。材料は、透明であるか、部分的に不透明であるか、完全に不透明であってもよい。1つの材料だけで器具を作製しても、2つ以上の異なった材料で器具を作製してもよく、例えば硬質材料、例えば硬質プラスチックや金属、弾性材料であってよい。例えば、注射ガイドは透明な硬質プラスチックを含むことができ、安定器には、金属などの不透明な材料を含むことができるが、ゴムなどの弾性材料を含むフランジを備える。
【0111】
一実施形態では、注射ガイドは透明な材料で作られて、針と注射の先を使用者が見えるようにする。安定器と同じ材料で注射ガイドを作ることができる。一例では、同じ材料で器具のすべての部分または一部を作る、すなわち、器具は1つのタイプの材料だけからなるが、ただしインク、塗料または同様のもので作られたものなどの、可能な任意の印は除く。材料は熱可塑性ポリマーであり得、一般に、通常硬質のプラスチックであり、すなわち非可撓性であるか非弾性である。医療グレードを使用できる。適切な熱可塑性ポリマーの例には、ポリカーボネート、ポリアミド、例えば脂肪族、環式脂肪族および芳香族ブロックに基づく透明な熱可塑性ポリアミド、または非晶質ポリアミド、ポリオキシメチレンコポリマー(POM)、例えばコポリマーのポリアセタール樹脂などが含まれる。市販されている有用な材料の例には、Grilamid(ポリアミド)、Kocetal、およびKepital(ポリオキシメチレンコポリマー)が含まれる。一例では、安定器と注射ガイドは、硬質の材料であり得る同じ材料で作られているが、器具は、本明細書に記載される弾性の部分をさらに含む。例えば注射ガイドの突出部、安定器の開口、注射ガイドのフランジまたは1つ以上のストッパに弾性の部分がある。
【0112】
一例では、注射ガイドは、注射針の分配用端部を受け入れて、所望の位置で針を保持するように適合される中空のシリンダである。シリンダの内側の寸法は、針、ハブ、コネクタまたは注射器の外側の寸法に適合される。また、注射ガイドはいかなる他の適当な形であってもよい。
【0113】
注射ガイドは、注射ガイド自体を退縮させずに、注射ガイド内で針を後方に戻すための戻り手段を含むことができる。戻り手段は、例えばバネ、可撓性または弾性突出部、または圧縮性、曲げ性、ねじり性、機械的および/または他の方法で動く材料などの可撓性要素であってもよい。
【0114】
戻り手段の目的は、針を注射経路の内側で後方に戻して、注射点に出入りする物質のより良好な流れを可能にするトンネル状の経路を作り出すことである。
【0115】
戻り手段は基部の中、または、注射ガイドのシリンダの下部に位置できる。あるいは、戻り手段は針または針の周りに直接取り付けられる移動可能リングであってもよい。また、戻り手段は、注射ガイドと基部の間の係止手段と接続して位置できる。
【0116】
戻り手段は、例えば、ボールペンに関連して使用している米国特許第3288115号明細書の特許公開で記載されている同様の機構のように、ラチェットおよびプランジャ機構に基づく、伸張−退縮機構として実装することができる。実施形態に関連して、そのような伸張−退縮機構は、最初に針を伸張し、その後、より良好な薬物の流れを可能にするために、それをわずかな距離だけ退縮させることができる。
図6はそのような機構を示している。
図6Aは、機構が伸長状態にあり、
図6Bは、機構が退縮状態にある。薬物の流れおよび拡散が改善されるので、このような伸張−退縮機構を使用すると、流体薬物製剤のような、注射される物質の治療効果が改善される。
【0117】
制御可能に可撓性な材料で、眼科治療用器具の全体、またはその任意の部分を作ることができる。
【0118】
ハンドルを本体の上部に接続できる。ハンドルは、例えばハイポのように、親指と他の2本の指を使用することによって、使用者がしっかり器具を持つことを可能にする。ハンドルは、円形、楕円形、または翼状などの、いかなる適当な形も有することができる。同様に、ハンドルなしで器具を構成できる。例示的ハンドル27および57は、例えば
図2A、
図5D、
図12A、
図13Bに示されている。翼状のハンドルのような非円形ハンドルを使用する場合、使用者は注射部位がどこにあるのかがすぐにわかる。翼状のハンドルは、例えば
図2A、5D、12Aおよび13Bに示されるように、本体の第1の端部から反対方向に延びる2つの翼部、すなわち平坦な延長部を有するハンドルを示す。
【0119】
図5Dおよび
図12Aに示す実施形態では、ハンドル57および中空本体54は、それらの外面の一部での堅固な保持を可能にする粗いテクスチャを有する。表面は、一部または完全に、例えば波形または溝付きであってもよい。
【0120】
眼科治療用器具を使用すると、使用者は、患者が注射の送達を見ることができないように、親指によって、本体54の上側開口部58を閉塞することができる。
【0121】
器具の形は左眼または、右眼に同様に適用できるという意味で対称であると好ましい。器具は使い捨てであってもよく、あるいは、何度かそれを使用できてもよい。
【0122】
器具は、外科用ドレープまたはドレープ様製品、例えば、開瞼器(LiDrape(登録商標))と一緒に使用するように適合することができ、それは器具に取り外し可能または一体であり得る。そのようなドレープは当該技術分野において周知である。
【0123】
実施形態では、本体は、例えば本体の側部に開口部を備え、それは任意の眼内圧から解放するために、ナイフまたは針によって角膜穿刺で穿刺するように適合される開口部である。また、このような開口部は、使用者が器具を位置決めしているときに眼を視覚的に良好に観察することを可能にし得る。例示的な開口部15、35、55は、
図1、
図3、
図5D、
図12Aおよび
図12Bに示されている。
【0124】
この器具は、好ましくは、眼の上脈絡膜腔および強膜内腔部および角膜への注射を行うために使用される。この器具は、眼の網膜下空間への注射を行うために使用することができる。
【0125】
眼から体液、組織、または分子の試料などの物質を取り除くのに器具を使用できる。
【0126】
SCSまたは眼の他の構造にある体液から試料を得るのに関連して、器具を使用できる。針が、眼組織の挿入位置の器具の中に残っている間、針を通して体液を引き出すことができる。あるいは、針が組織から引き出された後に、体液は眼組織に残っている開口の外から流れることが可能である。
【0127】
組織は、従来の生検に関連するコアリング法によって除去することができる。分子を針に結合させることによって、分子を除去することができる。結合は選択的な化学結合であってもよい。
【0128】
眼から検体、電気的活動、および光などの信号を検出するために、実施形態による器具をセンサと接続して使用できる。そのようなセンサとして、圧力、温度、化学物質、および/または電磁場(例えば光)のセンサを含むことができる。また、センサは、針、針の内側、または針を通して身体組織とつながる装置の内側の表面に設置されたバイオセンサであってもよい。バイオセンサは、電位差測定、電流測定、光学式、または生理化学的なものが可能である。また、器具を使用することによって、光ファイバを眼に挿入できる。
【0129】
一実施形態では、中空針は、それに関連する感知機能を有する物質、例えば流体またはゲルで満たされる。基質への結合または酵素によって媒介される反応に基づく感知をする適用例で、基質または酵素を、針の内部に固定化することができる。別の実施形態では、導波管または光ファイバを針に組み入れて、特定の場所へ光を向けるか、例えば色を評価するためのpH染料などの手段を利用しながら検出をする。同様に、熱、冷熱、電気、光または他のエネルギーの形態を、まさに直接特定の組織を刺激するか、損傷するか、治癒するか、診断目的のために伝えてもよい。一実施形態では、眼に留まる生分解性針が使用される。生分解性針は、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリラクチド−コ−グリコリド(PLGA)、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリエーテルエステル、ポリカプロラクトン、ポリエステルアミド、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、ポリウレタン、などの生分解性ポリマー、またはそのコポリマーおよびブレンドを含み得る。
【0130】
一般に、この器具は、眼内の試料や生検の採取、針電極による導電率の測定、刺激、画像化目的、レーザー治療、照明、温度測定、またはpHの測定のためなどの様々な目的で使用することができる。
【0131】
実施形態は、眼の内部構造内の指定された深さ内で、針と似た機器または相応する医療機器を位置決めすることが必要なあらゆる種類の眼の治療または測定に、広く適用できる。眼科学の他に、実施形態はまた、他の分野の医療においても使用され得る。例えば、歯科、美容、経皮物質の送達および抽出、インスリンおよびワクチンの注射、正確な精度の標的薬物送達、局所麻酔、吸引生検などの生検、特にブドウ膜黒色腫のための細針吸引生検(FNAB)、およびヒトおよび動物における試料採取、インビボおよびエキソビボの薬物試験を含む。
【0132】
器具に接続して使用する針は、ストッパまたは調節手段に反応するよう適合される任意の針であってよく、有効な注射深度(すなわち、眼組織への実際の貫入度)が規定されるようにする。針は、例えば、皮下注射針、インスリン針、薬物でコーティングされた中実針、硬膜外用の針、生分解性針、カニューレ、プローブ、線維、ケーブル、または、例えば、特定の画像化、操作または測定装置と接続して使用されるいかなる針または他の穿刺部材であってもよい。薬物でコーティングされた針は、例えば注射が眼の非常に薄い層、例えば顕著な体積の注射可能な流体を受け入れることができない角膜の層に標的化される場合に、使用できる。そのような治療の例には、血管新生の減少または阻害、およびリボフラビンが角膜内に正確な精度で投与される円錐角膜のような角膜の外陰部を治療するための角膜のコラーゲン架橋が含まれる。本明細書で使用される「注射する」または「注射」という用語は、注射可能物質を、例えば注射器を使用してコンテナから流体、溶液、懸濁液、エマルションなどとして投与すること、またはその物質を針にコーティングするものとして投与することを示し得る。
【0133】
一実施形態では、器具は通常の注射針用に適合される。通常の注射針の長さは、典型的には10mm超、例えば約13mm(1/2インチ)である。好ましくは、器具は20〜33G以下のサイズを有する皮下注射針用に適合される。本明細書で使用される「皮下注射針」は、マイクロニードルではない注射針を示し、7〜40G、例えば、20〜40Gの範囲、例えば33G、30G、29G、27Gまたは21Gの範囲のゲージを有する。皮下注射針の長さは、10〜40mm以上の範囲であってもよい。マイクロニードルは2.5mmまたは1.0mm以下の長さのある注射針である。
【0134】
一実施形態は、本明細書で記載される眼科治療用器具、または本明細書で記載される注射ガイド、または本明細書で記載される安定器、および任意選択に少なくとも1つの針、および/または注射器、および/または薬剤用バイアル、または他の任意の注射可能物質を含むバイアルを含むキットを提供する。キットは、ドレープや任意の他の材料や器具(複数可)も含むことができる。キットまたはその内容物は、滅菌でき、密閉され、内部パッケージなどのパッケージを含むことができ、例えば引き裂くことによって使用前に取り外すように適合された、プラスチック膜などの取り外し可能なカバーで覆われている。パッケージは、滅菌および/または保護ガスまたは真空を含むことができる。
【0135】
一実施形態で、注射ガイドは、針が注射器に据え付けられた状態で、取り上げられるように、支持体に配置される。これは、注射器に据え付けられた針を注射ガイド内に押し込むことによって注射ガイドを取り上げられること、すなわち、キットに含まれるパッケージから注射ガイドを取り上げるために手を使用する必要がないことを意味する。支持体は、キットの内部に形成されてもよく、それは、通常段ボール箱などの箱に入れられている。支持体は、プラスチック製であってもよく、キットに含まれる1つまたは複数の構成要素を保持するように設計されている。支持体は内側トレーと呼ぶことができる。一般に、内側トレーは、例えば押し出しにより形成できるか、真空で形成されるおよび/または真空で熱成形されるかであり得る。支持体の材料は、例えばHIPS、ABS、PET、ポリスチレンなどのプラスチック、または弾性材料などの任意の適切な材料であってもよく、あるいはこれは弾性および硬質材料を含んでもよい。注射ガイドは、使用者が針を注射器に据え付け、任意選択で注射器に薬剤を充填したときに、ストッパが針のハブに接触するまで注射器が押されて針が注射ガイドに入れるように、配置することができる。この後、注射ガイドが据え付けられ、すなわち、針および/または注射器に取り付けられるか係止され、針は第1の有効長を有する。注射器を持ち上げると、注射ガイドがそれに従う、すなわち、注射ガイドが取り上げられる。注射ガイドに調節手段があるなら、さらに針の有効長を調節して針の第2の有効長を得るようにでき、これは注射をするのに使用される最終的な有効長である場合がある。
【0136】
針の有効長は、注射ガイドから突出している針の長さをモニタするため、顕微鏡、拡大鏡または任意の他の拡大手段を使用することによって、チェックできる。実際の有効長を判定するのに測定スケールを使用できる。一実施形態では、キットは、針の有効長を判定するための測定スケールを含む。測定スケールは、針の有効長の範囲を表す距離のマークを有することができる。
図14aに示すような一実施形態では、キットは、例えば上で説明したように内側トレーとも呼ばれ得る、プラスチックまたは他の材料で作られる支持体70で、注射ガイドを受け入れるように適合される測定スケール76が設けられ、支持体は、スケール76と、例えば注射器36に接続される注射ガイド12を受け入れるためのスロット74とを含む。したがって、一実施形態では、注射ガイド52を受け入れるように適合された支持体を含み、支持体70は、測定スケール76と、注射ガイドを受け入れるためのスロット74とを含む。
【0137】
スロット74は、注射ガイド72、および注射ガイド72をスロット74に押すことによって力が加えられるとき、任意に注射器36も、係止するか安定させるように配置できる。ゴムなどの高い摩擦を提供する材料を、支持体のコーティングとして、または支持体またはスロットの一部としてなど、支持体で使用して、注射ガイドの安定化を容易にできる。そのような場合、好ましくは挿入された針を有する注射ガイドが、測定スケール支持体にある設計されたスロット内に配置されるか、針が既にスロット内にある注射ガイドに挿入され、注射ガイドは、
図14bに示すように、針の有効長が、針の裏側または側部にあり得る目盛りまたは尺度と比較することによって規定され得るように配置される。また、キットは、例えば注射ガイドに据え付けられた針と共に、既に前述の支持体に配置されている注射ガイドを備えてもよい。目盛りまたは尺度は、50μmまたは100μmの間隔などの所定の間隔の平行線または他のマーキングを含むことができる。一例では、目盛りは100μmの間隔の線を含む。針の有効長は、例えば、拡大鏡または顕微鏡のような拡大手段を使用することによって、
図14Cに示すように、針の突出する長さを目盛りの線と比較することによって、判定することができる。次に、針の有効長を調節して、モニタできる。一実施形態では、注射ガイドは支持体に位置している間調節可能であり、例えば注射ガイドの第2の部分を回して針の有効長を変えることができ、また、針の突出する長さにおける変化を見て、すぐに測定できる。そのような場合、支持体は、例えば、スロットの部分77に高い摩擦を有する材料を使用することによって、注射ガイドの第1の部分の移動が抑制されている間のみ、注射ガイドの第2の部分の調節を可能にするように設計できるが、この部分は注射ガイドの第1の部分、例えばゴムコーティングなどと接触している。あるいは、部分77は、第2の部分が調節されているときに第1の部分が移動するのを防止するために、注射ガイドの第1の部分にしっかりと嵌まるように設計される。一例では、キットには、例えばプラスチックまたはガラスまたは他の材料、好ましくは安価な材料で製作できる拡大鏡が設けられている。スケールよりも上方に置けるよう拡大鏡を適合させるか、既にスケールの上方と針の上方にある支持体にそれを置くことができる。支持体は、針および/または測定スケールから適切な位置および距離で、拡大鏡を保持するように設計されてもよい。
【0138】
針が注射ガイド内に挿入された後、針の有効長を測定するかさもなければ判定することを可能にする測定スケールまたは類似の補助具を使用する場合、特に調節可能な注射ガイドを使用する場合、実際に任意の針を使用することができる。針の長さは、所定の許容誤差または分散範囲内にある必要がないので、予め選択された針は必ずしも必要ではない。
【0139】
一実施形態では、針の有効長を判定するために使用され得る針の長さ用のゲージ器具が提供される。一実施形態では、針の長さ用のゲージ器具は、針用の開口と、開口の周りの特定の厚さとを備える複数の部分を含む一区画であり、特定の厚さはそれぞれ異なり、針の異なる可能な有効長を表す。異なる有効長は、例えば全開口の横に印刷された数値によって、区画内に示される。単一の開口に、注射ガイドに据え付けられた針を挿入し、ゲージ器具からの針先端の突出をチェックする。針の先端が見えない場合、針は、異なる厚さ、好ましくは以前の部分よりも薄い別の厚さを有する別の部分にある別の開口に挿入し、ゲージ器具からの針先端の突出を再びチェックする。針の先端がはじめて見えるとき、針の有効長はゲージ器具から読み取ることができ、それはその部分に示された長さに相応する。例えば、針の長さ用のゲージ器具は、区画の縁部に突出する平坦な部分を有するプラスチックの平坦な区画であってもよい。針の長さ用ゲージ器具は、針の所定の有効長に対する一連の厚さ、例えば50または100μmの間隔で、例えば600、650、700、750、800、850、900、950および1000μm、または600、700、800、900、1000、および1100μmの所定の有効長、または本明細書に開示された任意の他の長さを提供することができる。また、フィーラーゲージまたはバーニアキャリパータイプのゲージ器具などの他のタイプのゲージ器具、または針の有効長を判定するための任意の他の適切なゲージ手段を使用することができ、それは特に拡大手段を使用して、ゲージ手段と針の長さを比較することによる。
【0140】
あるいは、異なる有効長を提供する一連の、つまり少なくとも2つの注射ガイドがキットに提供されてもよい。一実施形態では、キットは少なくとも2つの注射ガイド、すなわちそれぞれが異なる針の所定の有効長を提供する複数の注射ガイドを含む。そのような注射ガイドがさらなる調節手段を必要としないので、一実施形態では、注射ガイドは、上で説明したような調節手段を含まない。針の所定の有効長を有する一連の注射ガイドは、例えば、50または100μmの間隔で、例えば600、650、700、750、800、850、900、950および1000μm、あるいは600、700、800、900、1000および1100μmである所定の有効長を提供する注射ガイドを備え得る。このような範囲の例には、500〜1000μm、600〜1000μm、600〜900μm、700〜1000μm、700〜900μm、さらには1200μmまでの範囲、例えば600〜1200μm、700〜1200μm、800〜1200μm、600〜1100μm、700〜1100μmまたは800〜1100μmを含み、いずれも50μmまたは100μmの間隔である。調節可能な注射ガイドによって同様の範囲を提供することができる。一実施形態では、針が注射器に据え付けられている状態で取り上げられるように、一連の注射ガイドは支持体に配置される。また、前述の支持体は、本明細書で説明したように、内側トレーと呼ぶことができる。
【0141】
一実施形態では、キットは眼の中、例えば眼の上脈絡膜腔に注射するための薬剤または他の物質を入れたバイアルを含む。一例では、バイアルは事前に充填された注射器である。薬剤または他の注射可能物質は、乾燥していてもよく、または溶液内、エマルション内または懸濁液内、水性または非水性であってもよい。乾燥させた物質は、蒸留水のような溶媒を添加することで、注入する前に、溶液、エマルションまたは懸濁液の形態にしなければならない。本明細書で使用する「注射可能物質」は、溶液、エマルション、懸濁液などの物質、および乾燥させた物質を含む、本明細書に記載されるような眼に注射される任意の物質を示す。
【0142】
市販されている皮下注射針の寸法にばらつきがあり、注射の精度に影響を及ぼす可能性があるので、針の長さが正確に分かっている予め選択された針、特にハブから針の先端までの針の長さがわかっているものを提供するのは有利な場合がある。針の長さは、例えば10〜100μm、さらに10〜50μm、または10〜30μm、または10〜20μm、または20〜50μmの範囲の分散を有する、所定の許容差または分散範囲内にあるか、より具体的には、約50μm、約40μm、約30μm、約20μm、または約10μm、さらには約5μmであってもよい。予め選択された針では、針の第1の有効長を標準化することができ、長さの誤差を最小にすることができる。所定の針の長さを有する針は、キットに設けられた注射ガイドと共に使用するときに、針の所定の有効長を提供するように適合される。
【0143】
一実施形態では、キットは、所定の針の長さを有する皮下注射針または任意の他の適切な穿刺部材のような少なくとも1つの針を含み、針の長さは針のハブから一般に針の先端まで測定することができ、10〜100μm、例えば10〜50μm、または10〜20μm、または上記の他の範囲の許容範囲内である。所定の針の長さは、コネクタから針の先端まで、または針軸とハブの接合部の接着部分から針の先端までを測定することもできる。
【0144】
一実施形態は、眼に物質を注射する方法を提供し、方法は、
本明細書に記載の眼科用器具を準備するステップと、
注射用の物質を準備するステップと、
物質を入れたコンテナに接続された穿刺部材を注射ガイドに挿入するステップと、
安定器を眼に配置するステップと、
安定器へ注射ガイドを挿入するステップと、
物質を眼に注射するステップと
を含む。
一実施形態は、眼に物質を注射する方法を提供し、方法は、
本明細書に記載の眼科用器具を準備するステップと、
注射用の物質を準備するステップと、
前述の物質を含む針を有する注射器を注射ガイド内に挿入するステップと、
安定器を眼に配置するステップと、
注射ガイドを安定器に挿入するステップと、
物質を眼に注射するステップと
を含む。
【0145】
また、注射は、穿刺部材、例えば注射可能物質で覆われた、すなわち注射可能物質を含有する別個のコンテナがない中実または中空であってもよい針で実行し得る。穿刺部材は、注射前に注射可能物質に浸漬されてもよく、または穿刺部材は、例えば穿刺部材に適用される物質の層として、注射可能物質が部材の先端に設けられてもよい。これは例えば、多くの量の物質を標的に注入できない場合で、例えば、標的組織に潜在的腔部がないとき役に立つ可能性がある。
【0146】
一実施形態では、注射は眼の上脈絡膜腔内を対象とする。一実施形態では、針は皮下注射針である。また、注射用の物質は、注射可能物質と呼ぶことができる。
【0147】
一実施形態は、本明細書に記載の方法のいずれかを用いて、皮下注射針のような通常のサイズの針、または非マイクロニードルで、眼、例えば眼の上脈絡膜腔または角膜の中に物質を注射する方法を提供する。
【0148】
一実施形態では、方法は、本明細書に記載されているように、針を備えた、前述の物質を含む注射器を注射ガイドに挿入した後、注射ガイドを調節して針の所望の有効長を得るステップを含む。一実施形態では、これは、注射ガイドを安定器に挿入する前に実行される。
【0149】
注射した後、注射ガイドは、安定器から離して取り外し得る。注射がうまくいかなかった場合、例えば注射深度が不正確である場合、注射ガイドを安定器から取り外して除去して、安定器が眼に残ることがある。例えば新しい注射ガイドおよび/または針で新しい注射深度が規定され、注射ガイドが既に眼の中にある安定器に挿入される。この局面では、眼において安定器を動かす、例えば回転させることによって、注射部位をわずかに変えることもできる。いくつかの注射点がある場合、同様にして最初の注射後に眼の中に安定器が残せ、その後の注射を新しい注射点で行う。
【0150】
一実施形態では、方法は、一連の、つまり少なくとも2つの注射ガイドを提供することを含み、各々、異なった有効長を例えば本明細書に記載されているキットで提供すること、および針の所望の有効長を提供する注射ガイドを選ぶことを含む。所望の有効長は、本明細書に記載されているように、患者を治療するのに所望の注射深度を提供する長さである。
【0151】
一実施形態では、眼に物質を注射する方法を提供し、方法は、
本明細書に記載の注射ガイドを準備するステップと、
注射用の物質を準備するステップと、
物質を入れたコンテナに接続された穿刺部材を注射針ガイドに挿入するステップと、
眼へ注射ガイドを挿入するステップと、
物質を眼に注射するステップと
を含む。
一実施形態では、眼に物質を注射する方法を提供し、方法は、
本明細書に記載の注射ガイドを準備するステップと、
注射用の物質を準備するステップと、
前述の物質を含む針を有する注射器を注射ガイド内に挿入するステップと、
注射ガイドを眼に挿入するステップと、
物質を眼に注射するステップと
を含む。
【0152】
以下、例示的な実施形態による実践で、器具の使用について説明する。
【0153】
実施形態では、ねじ山に基づく調節手段および取り外し可能な注射ガイドを使用し、方法は、
器具の基部を眼瞼の下に配置するステップ、
針を注射ガイドに挿入するステップ、
針の長さを所望の注射深度に調節するステップ、
注射ガイドを器具の安定器に挿入するステップ、
物質の注射を行うステップ、
針を注射ガイドから退縮させるステップ、
安定器を眼から取り外すステップ
を含む。
【0154】
本発明の眼科治療器具に関連して使用することができる物質は、眼に投与したときに治療効果を提供することができるすべての薬物、製剤、組成物および物質の中から選択することができる。例えば、弱い角膜を強化すべくナノ粒子を注射するのに器具を使用できる。物質は、治療効果を提供するのに十分な量で投与することができる。
【実施例】
【0155】
実施形態による器具を、ブタの眼にSCS注射をすることによって、試験した。使用される器具の構造は
図9に示されている。
【0156】
この器具を、1%メチレンブルー(Sigma−Aldrich; M9140−25g)、および1μmのカルボキシレート修飾Fluorospheres(Molecular Probes; F8821)を、上脈絡膜腔に注射するために、中空針(全長13mmの33Gの注射針、VitaNeedle)と共に使用した。注射した眼を、4%パラホルムアルデヒドで、+4℃で一晩固定し、パラフィン包埋または凍結切除のいずれかで処理した。その後、眼をマイクロセクションし、切片を対比染色し、光学顕微鏡(メチレンブルーを注入した眼のため)または共焦点顕微鏡(FluoSpheres)を用いて分析した。
【0157】
蒸留水で調製した1%メチレンブルー溶液、および1μmの赤色(580/605)カルボキシレート修飾FluoSpheresを使用した。色素を1ml注射器に取り、実体顕微鏡下で、以下のパラメータを用いて注射を行った。
【0158】
1)針の有効長は800〜900μmであった。針の全長(13mm)は、ねじ山に基づく調節手段によって制限されていた。
【0159】
2)針は、ブタの眼の縁から約7mm後方の組織に垂直に挿入した。
【0160】
3)色素1mlを、上脈絡膜腔に、制御された様式で注射した。
【0161】
組織を切片にし、切片を対比染色した。写真はライカの顕微鏡またはLSM700共焦点顕微鏡(Zeiss GmbH)で撮影した。色素の分布は、上脈絡膜腔の眼部から成功裏に確認された。
【0162】
上脈絡膜腔にメチレンブルーが見出された。
図7を参照されたい。
【0163】
メチレンブルーと同様に、ブタの眼球の切片による共焦点分析により、1μmのFluoSpheres(赤色)が上脈絡膜腔に局在することが明らかになった。
図8を参照されたい。
【0164】
この結果は、本器具が上脈絡膜腔内への注射材料の正確な送達にかなり適していることを示している。