特許第6768689号(P6768689)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6768689高アンモニア血症に関連する病気を処置するために操作された細菌
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6768689
(24)【登録日】2020年9月25日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】高アンモニア血症に関連する病気を処置するために操作された細菌
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/21 20060101AFI20201005BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20201005BHJP
   A61K 35/741 20150101ALI20201005BHJP
   A61K 35/742 20150101ALI20201005BHJP
   A61K 35/744 20150101ALI20201005BHJP
   A61K 35/745 20150101ALI20201005BHJP
   A61K 35/747 20150101ALI20201005BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20201005BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20201005BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20201005BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20201005BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20201005BHJP
   C12N 15/52 20060101ALI20201005BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20201005BHJP
【FI】
   C12N1/21ZNA
   C12N1/20 E
   A61K35/741
   A61K35/742
   A61K35/744
   A61K35/745
   A61K35/747
   A61P1/16
   A61P7/00
   A61P9/00
   A61P25/00
   A61P27/02
   C12N15/52 Z
   C12N15/63 Z
【請求項の数】24
【全頁数】110
(21)【出願番号】特願2017-548375(P2017-548375)
(86)(22)【出願日】2015年12月4日
(65)【公表番号】特表2018-504919(P2018-504919A)
(43)【公表日】2018年2月22日
(86)【国際出願番号】US2015064140
(87)【国際公開番号】WO2016090343
(87)【国際公開日】20160609
【審査請求日】2018年12月3日
(31)【優先権主張番号】62/173,710
(32)【優先日】2015年6月10日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/103,513
(32)【優先日】2015年1月14日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/256,039
(32)【優先日】2015年11月16日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/087,854
(32)【優先日】2014年12月5日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/150,508
(32)【優先日】2015年4月21日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/173,706
(32)【優先日】2015年6月10日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/184,811
(32)【優先日】2015年6月25日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/263,329
(32)【優先日】2015年12月4日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/183,935
(32)【優先日】2015年6月24日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/256,041
(32)【優先日】2015年11月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517196203
【氏名又は名称】シンロジック オペレーティング カンパニー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181272
【弁理士】
【氏名又は名称】神 紘一郎
(72)【発明者】
【氏名】ディーン ファルブ
(72)【発明者】
【氏名】ビンセント エム イザベラ
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン ダヴリュー コツラ
(72)【発明者】
【氏名】ポール エフ ミラー
【審査官】 田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−520362(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/035831(WO,A1)
【文献】 Applied and Environmental Microbiology, 1998年,Vo.64, No.5,p.1805-1811
【文献】 Nucleic Acids Research, 1991年,Vol.19, No.11,p.2889-2892
【文献】 Jundishapur J. Microbiol.,2014年 7月 1日,Vol.7, No.7,e15942 (p.1-5)
【文献】 Orphanet Journal of Rare Diseases, 2012年,Vol.7, No.32,p.1-30
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00−7/08
A61K 35/741
A61K 35/742
A61K 35/744
A61K 35/745
A61K 35/747
A61P 1/16
A61P 7/00
A61P 9/00
A61P 25/00
A61P 27/02
C12N 1/20
C12N 15/00−15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルギニンレギュロンを含む遺伝子操作した細菌であって、
前記細菌は、アルギニンフィードバック耐性N−アセチルグルタミン酸シンセターゼ(ArgAfbr)をコードする遺伝子を含み、ArgAfbrは、同一条件下の同じ細菌サブタイプに由来する野生型N−アセチルグルタミン酸シンセターゼと比較し、アルギニンフィードバック阻害が低減しており、ArgAfbrをコードする前記遺伝子の発現は、低酸素または嫌気的な条件により誘導されるプロモータにより制御され、
前記細菌は機能性ArgRを欠くように遺伝子操作されている、細菌。
【請求項2】
対応する野生型細菌に通常存在する機能性argR遺伝子の各コピーが削除されている、請求項1に記載の細菌。
【請求項3】
対応する野生型細菌に通常存在する機能性argG遺伝子の各コピーが個別に削除されているか、または、1つもしくは複数のヌクレオチドの削除、挿入、もしくは置換により不活性になっている、請求項1に記載の細菌。
【請求項4】
対応する野生型細菌に通常存在する機能性argG遺伝子の各コピーが削除されている、請求項3に記載の細菌。
【請求項5】
低酸素または嫌気的な条件下で、機能性ARGボックスを含むオペロン中に存在し、アルギニン生合成酵素をコードする各遺伝子の転写が、同一条件下の野生型細菌の対応する遺伝子と比較し増加する、請求項1に記載の細菌。
【請求項6】
低酸素または嫌気的な条件下で誘導される前記プロモータはFNR応答性プロモータである、請求項1に記載の細菌。
【請求項7】
請求項1に記載の細菌であって、前記アルギニンフィードバック耐性N−アセチルグルタミン酸シンセターゼ遺伝子は、
a)配列番号28、および
b)遺伝子コードの冗長性を別とすれば配列番号28にコードされているのと同じポリペプチドをコードするDNA配列から選択されるDNA配列を有する、細菌。
【請求項8】
非病原性細菌である、請求項1に記載の細菌。
【請求項9】
プロバイオティクス細菌である、請求項1に記載の細菌。
【請求項10】
バクテロイデス、ビフィドバクテリウム、クロストリジウム、エシェリキア、ラクトバチルス、およびラクトコッカスからなる群から選択される、請求項1に記載の細菌。
【請求項11】
大腸菌株Nissleである、請求項1に記載の細菌。
【請求項12】
前記アルギニンフィードバック耐性N−アセチルグルタミン酸シンセターゼ(ArgAfbr)をコードする遺伝子は、前記細菌のプラスミドに存在し、前記プラスミドにおいて、低酸素または嫌気的な条件下で誘導されるプロモータに操作可能に連結している、請求項1に記載の細菌。
【請求項13】
前記アルギニンフィードバック耐性N−アセチルグルタミン酸シンセターゼ(ArgAfbr)をコードする遺伝子は、細菌染色体に存在し、前記染色体において、低酸素または嫌気的な条件下で誘導されるプロモータに操作可能に連結している、請求項1に記載の細菌。
【請求項14】
哺乳類の消化管に存在する場合に補完される遺伝子において栄養要求株である、請求項1に記載の細菌。
【請求項15】
前記哺乳類の消化管はヒトの消化管である、請求項14に記載の細菌。
【請求項16】
前記細菌はthyAまたはdapBの栄養要求株である、請求項14に記載の細菌。
【請求項17】
抗生物質耐性遺伝子を含む、請求項1に記載の細菌。
【請求項18】
アルギニンレギュロンを含む遺伝子操作した細菌および薬学的に許容される担体を含む、薬学的に許容される組成物であって、前記細菌は、アルギニンフィードバック耐性N−アセチルグルタミン酸シンセターゼ(ArgAfbr)をコードする遺伝子を含み、ArgAfbrは、同一条件下の同じ細菌サブタイプに由来する野生型N−アセチルグルタミン酸シンセターゼと比較し、アルギニンフィードバック阻害が低減しており、ArgAfbrをコードする前記遺伝子の発現は、低酸素または嫌気的な条件により誘導されるプロモータにより制御され、前記細菌は機能性ArgRを欠くように遺伝子操作されている、薬学的に許容される組成物。
【請求項19】
請求項1〜15及び17の何れか一項に記載の遺伝子操作した細菌または請求項18に記載の薬学的に許容される組成物を含み、高アンモニア血症関連疾患またはその症状の処置を、それを必要とする対象で行うための医薬組成物。
【請求項20】
前記高アンモニア血症関連疾患は尿素サイクル異常症である、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記尿素サイクル異常症は、アルギニノコハク酸尿症、アルギナーゼ欠損症、カルバモイルリン酸シンセターゼ欠損症、シトルリン血症、N−アセチルグルタミン酸シンセターゼ欠損症、またはオルニチントランスカルバミラーゼ欠損症から選択される、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記高アンモニア血症関連疾患は、肝性脳症、急性肝不全、または慢性肝不全から選択される肝疾患である、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記高アンモニア血症関連疾患の症状は、脳卒中、運動失調、脳卒中様病変、昏睡、精神病、視力喪失、急性脳症、脳浮腫、ならびに嘔吐、呼吸性アルカローシス、および低体温からなる群から選択される、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項24】
投与は、経口投与または直腸投与である、請求項19に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【優先権主張】
【0001】
本出願は、2014年12月5日に出願された米国仮特許出願第62/087854号、2015年6月10日に出願された米国仮特許出願第62/173706号、2015年11月16日に出願された米国仮特許出願第62/256041号、2015年1月14日に出願された米国仮特許出願第62/103513号、2015年4月21日に出願された米国仮特許出願第62/150508号、2015年6月10日に出願された米国仮特許出願第62/173710号、2015年11月16日に出願された米国仮特許出願第62/256039号、2015年6月25日に出願された米国仮特許出願第62/184811号、2015年6月24日に出願された米国仮特許出願第62/183935号、および2015年12月4日に出願された米国仮特許出願第62/263329号の利益を主張するものであり、これらはその全体が参照により本明細書に組み込まれて、開示の継続性を提供する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、過剰のアンモニアを減少させ、アンモニアおよび/または窒素を代わりの副生成物に変換するための組成物および治療法に関する。ある態様では、本開示は、特に、哺乳類の消化管などの低酸素条件で過剰なアンモニアを減少させることが可能な、遺伝子操作した細菌に関する。ある態様では、本明細書に開示する組成物および方法を、尿素サイクル異常症および肝性脳症などの高アンモニア血症に関連する疾患を和らげるまたは処置するために用いることができる。
【背景技術】
【0003】
アンモニアは毒性が強く、全器官での代謝時に生成される(Walker,2012)。高アンモニア血症は、解毒作用の低下および/またはアンモニア生成の増加により引き起こされる。哺乳類では、尿素サイクルでアンモニアを尿素に酵素的に変換することによりアンモニアは解毒され、その後、尿で除去される。アンモニアの解毒作用の低下は、アルギニノコハク酸尿症、アルギナーゼ欠損症、カルバモイルリン酸シンセターゼ欠損症、シトルリン血症、N−アセチルグルタミン酸シンセターゼ欠損症、オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症などの、尿素サイクル酵素が欠損しているサイクル異常症(UCD)により引き起こされ得る(Haeberle et al.,2012)。National Urea cycle disorders Foundationは、UCDの罹患率は8500人の出生児数あたり1人と推測する。加えて、肝性脳症、門脈体循環シャント、および有機酸異常症などのいくつかの非UCD疾患も、高アンモニア血症を引き起こし得る。高アンモニア血症は、脳卒中、運動失調、脳卒中様病変、昏睡、精神病、視力喪失、急性脳症、脳浮腫、ならびに嘔吐、呼吸性アルカローシス、低体温、または死亡などの神経症状を発生させ得る(Haeberle et al.,2012;Haeberle et al.,2013)。
【0004】
アンモニアは、種々の生合成経路により合成されるアミノ酸に対する窒素の供給源でもある。例えば、アルギニン生合成は、窒素原子を1つ含むグルタミン酸を、窒素原子を4つ含むアルギニンに変換する。アルギニン生合成経路で形成されるシトルリンなどの中間代謝産物も窒素を取り込む。したがって、高アンモニア血症に関連する症状を和らげるまたは処置するために、アルギニン生合成の強化を利用して、体内の過剰な窒素を非毒性分子に取り込むことができる。同様に、ヒスチジン生合成、メチオニン生合成、リシン生合成、アスパラギン生合成、グルタミン生合成、およびトリプトファン生合成も過剰な窒素の取り込みが可能であり、これらの経路の強化を利用して、高アンモニア血症に関連する症状を和らげるまたは処置することができる。
【0005】
高アンモニア血症およびUCDの現在の治療は、アンモニア過剰を低減することを目的とするが、準最適だと広く考えられている(Nagamani et al.,2012;Hoffmann et al.,2013;Torres−Vega et al.,2014)。ほとんどのUCD患者は、タンパク質制限からなる実質的に修正された食事を必要とする。しかしながら、低タンパク食は注意深くモニターしなければならず、タンパク質の摂取を制限しすぎると身体は筋肉を分解し、その結果アンモニアが生成される。加えて、多くの患者は、フェニル酪酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、およびグリセロールフェニル酪酸塩などのアンモニア除去薬の補給を必要とし、これらの薬物の1つまたは複数を一日に3〜4回投与しなければならない(Leonard,2006;Diaz et al.,2013)。これらの薬の副作用としては、吐き気、嘔吐、過敏症、食欲不振、および女性の月経障害が挙げられる(Leonard,2006)。小児では、食物および薬剤の送達に、腹部に外科的に埋め込んだ胃瘻管、または、鼻を通って腹部に手動で挿入される経鼻胃管が必要な場合がある。これらの処置選択肢が失敗した場合、肝臓移植が必要となり得る(National Urea cycle disorders Foundation)。したがって、尿素サイクル異常症を含む高アンモニア血症に関連した疾患の、効果的で信頼性が高い、および/または長期の処置に対するニーズは著しく満たされていない。
【0006】
本発明は、過剰なアンモニアを減少させ、アンモニアおよび/または窒素を代わりの副生成物に変換することが可能な、遺伝子操作した細菌を提供する。ある実施形態では、遺伝子操作した細菌は、消化管などの低酸素環境において過剰なアンモニアを減少させ、アンモニアおよび/または窒素を選択的に代わりの副生成物に変換する。ある実施形態では、遺伝子操作した細菌は非病原性であり、有害なアンモニアを減少させるために消化管に導入することができる。高アンモニア血症の患者の過剰なアンモニアの70%が、胃腸管に蓄積される。本発明の別の態様は、アンモニアおよび/もしくは窒素の消費、または、アルギニンもしくはシトルリンなどの非毒性副生成物の生成のレベルの向上に基づき、遺伝子操作した細菌を選択または標的にする方法を提供する。本発明はまた、遺伝子操作した細菌を含む医薬組成物、および、尿素サイクル異常症および肝性脳症などの高アンモニア血症に関連する疾患を和らげ、処置する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1A】非誘導条件下での、本発明のArgR欠失細菌の一実施形態におけるアルギニンレギュロンの状態を描いた図である。酸素(O)が、FNR(点描されたボックス内のFNR)の二量体化、およびFNRによるFNRプロモータ(グレーのFNRボックス)とその制御下にあるargAfbr遺伝子の活性化を防ぐ一方(「X」により示される)、ArgA(短い不規則な曲線)と相互作用してArgA活性を阻害する(「X」により示される)アルギニン(楕円中の「Arg」)により、好気条件下でアルギニン生成が比較的低いことを示す。
図1B】誘導条件下での、本発明のArgR欠失細菌の一実施形態におけるアルギニンレギュロンの状態を描いた図である。FNR二量体化(2つの点描されたボックス内のFNR)とアルギニンによる阻害に対し耐性のあるArgAfbr(argAfbrの上の短い不規則な曲線)の誘導FNRプロモータ(グレーのFNRボックス)介在性発現による、嫌気的条件下でのアルギニン生成の増加を描く。これは、ArgA(argAを描くボックスの上の短い不規則な曲線)と相互作用するアルギニン(楕円中の「Arg」)により引き起こされる、野生型ArgAの阻害に打ち勝つ(湾曲矢印)。アルギニンレギュロンの各遺伝子は、遺伝子名を含む長方形により描く。1つまたは集合した長方形に隣接する各矢印は、その遺伝子の矢印の方向への転写の駆動を担うプロモータを描く。1つまたは一連の長方形に隣接するより太い線はArgR結合部位を描くが、この細菌ではArgRの欠失により利用されることはない。各長方形の上の矢印は各遺伝子の発現産物を描く。
図2図2Aおよび2Bは、本発明の代替の例示的実施形態を描く図である。図2Aは、好気的条件下での実施形態を描き、ここでは酸素の存在下でFNRタンパク質(FNRボックス)が単量体のまま残り、アルギニンフィードバック耐性argAfbr遺伝子の発現を駆動するFNRプロモータ(「FNR」)に結合してそれを活性化することができない。野生型ArgAタンパク質は機能的だが、アルギニンへの結合によりネガティブフィードバック阻害の影響を受けやすく、アルギニンレベルを通常以下に抑える。各アルギニン生合成遺伝子(argA、argE、argC、argB、argH、argD、argI、argG、carA、およびcarB)のプロモータ領域におけるアルギニンリプレッサ(ArgR)結合部位の全てを突然変異させて(黒い棒;黒「X」)、ArgRへの結合を低減または消失させる。図2Bは、嫌気的条件下での同一の実施形態を描き、ここでは酸素がない場合にFNRタンパク質(FNRボックス)が二量体化し、FNRプロモータ(「FNR」)に結合しそれを活性化させる。これは、アルギニン(楕円中の「Arg」)によるフィードバック阻害に対し耐性があるアルギニンフィードバック耐性argAfbr遺伝子の発現を駆動する(黒色の短い不規則な曲線=argAfbr遺伝子発現産物)。各アルギニン生合成遺伝子(argA、argE、argC、argB、argH、argD、argI、argG、carA、およびcarB)のプロモータ領域におけるアルギニンリプレッサ(ArgR)結合部位の全てを突然変異させて(黒い棒)、ArgRへの結合を低減または消失させ(黒い「X」)、アルギニン−ArgR複合体による阻害を防いだ。これは高レベルのアルギニン生成を可能にする。図1Aおよび1Bにおけるアルギニン生合成遺伝子の構成は、大腸菌株Nissleに見られるものの代表である。
図3】本発明の別の実施形態を描く図である。この実施形態では、tetR遺伝子に由来するTetリプレッサ(TetR)の発現を駆動するプロモータにおいてArgR結合部位(黒い棒)を含む構成物が、遺伝子Xの発現を駆動する、TetR結合部位(TetRとXの間の黒い棒)を含む第2プロモータに連結している。低アルギニン濃度下では、TetRは発現し、遺伝子Xの発現を阻害する。高アルギニン濃度下では、ArgRがアルギニンと結合し、ArgR結合部位に結合することにより、tetR遺伝子に由来するTetRの発現を阻害する。これは、次に、TetRによる阻害を解消し、遺伝子Xの発現(黒色の短い不規則な曲線)を可能にする。
図4】本発明の別の実施形態を描く図である。この実施形態では、tetR遺伝子に由来するTetリプレッサ(TetR)の発現を駆動するプロモータにおいてArgR結合部位(黒い棒)を含む構成物が、緑色蛍光タンパク質(「GFP」)の発現を駆動する、TetRの結合部位(TetR楕円に結合する黒い棒)を含む第2プロモータに連結している。低アルギニン濃度下でTetRは発現し、GFPの発現を阻害する。高アルギニン濃度でArgRはアルギニンと結合し、ArgR結合部位に結合することによりtetR遺伝子に由来するTetRの発現を阻害する。これは、次に、TetRによる阻害を解消し、GFPの発現を可能にする。この構成物を含有する宿主を突然変異させることにより、高アルギニン生成源を、蛍光活性化セルソーター(「FACS」)を用いて、GFP発現に基づき選択することが可能である。
図5】本発明の別の実施形態を描く図である。この実施形態では、tetR遺伝子に由来するTetリプレッサ(図示せず)の発現を駆動するプロモータにおいてArgR結合部位(ArgR−Arg複合体が結合する黒い棒)を含む構成物が、宿主の生存のために必要な栄養要求性タンパク質(「AUX」)の発現を駆動する、TetR結合部位(黒い棒)を含む第2プロモータに連結している。高アルギニン濃度下では、ArgR−アルギニン複合体がArgR結合部位に結合することにより、tetR遺伝子に由来するTetRの発現を阻害する。これは、次に、AUXの発現を可能にし、宿主の生存を可能にする。低アルギニン濃度下では、TetRはtetR遺伝子より発現し、AUXの発現を阻害して宿主を死滅させる。図5の構成物は、AUX発現の制御を通して宿主細胞の生存にそれを必要なものにすることにより、高アルギニン(「Arg」)生成を強化する。
図6-1】大腸菌Nissleのアルギニン生合成オペロンごとにARG結合部位を含む野生型遺伝子配列とその突然変異体を描く図である。各野生型配列では、ARGボックスをイタリック体で示し、各遺伝子の開始コドンは囲む。RNAポリメラーゼ結合部位には下線を引く(Cunin,1983;Maas,1994)。ArgR結合時にDNAメチル化から保護される塩基は強調表示し、ArgR結合時にヒドロキシルラジカルアタックから保護される塩基は太字にする(Charlier et al.,1992)。強調表示した太字の塩基は、ArgR結合を妨げる突然変異の主要標的である。
図6-2】図6−1と同様である。
図6-3】図6−1と同様である。
図7-1】FNR応答性プロモータ配列を含む例示的な調節領域配列の核酸配列を描く図である。下線を引いた配列は予想されるリボソーム結合部位であり、太字の配列はクローニングに用いられる制限部位である。FNRプロモータを含む例示的な配列としては、限定されるわけではないが、配列番号16、配列番号17、nirB1プロモータ(配列番号18)、nirB2プロモータ(配列番号19)、nirB3プロモータ(配列番号20)、ydfZプロモータ(配列番号21)、強力なリボソーム結合部位に融合したnirBプロモータ(配列番号22)、強力なリボソーム結合部位に融合したydfZプロモータ(配列番号23)、fnrS1から選択される嫌気的に誘導される小RNA遺伝子fnrSプロモータ(配列番号24)、fnrS2から選択される嫌気的に誘導される小RNA遺伝子fnrSプロモータ(配列番号25)、CRP結合部位に融合したnirBプロモータ(配列番号26)、およびCRP結合部位に融合したfnrSプロモータ(配列番号27)が挙げられる。
図7-2】図7−1と同様である。
図8A】例示的なargAfbr配列の核酸配列を描く図である。
図8B-1】例示的なFNRプロモータ駆動argAfbrプラスミドの核酸配列を描く図である。FNRプロモータ配列は太字にし、argAfbr配列は囲む。
図8B-2】図8B−1と同様である。
図9】例示的なFNRプロモータ駆動argAfbr配列の核酸配列を描く図である。FNRプロモータ配列は太字にし、リボソーム結合部位は強調表示し、argAfbr配列は囲む。
図10】強力なリボソーム結合部位に融合した例示的なFNRプロモータ(fnrS)の制御下のargAfbr遺伝子の概略図である。
図11】強力なリボソーム結合部位に融合した例示的なFNRプロモータ(nirB)の制御下のargAfbr遺伝子の別の概略図である。他の調節エレメントも存在してよい。
図12】弱いリボソーム結合部位に融合した例示的なFNRプロモータ(nirB)の制御下のargAfbr遺伝子の概略図である。
図13図13Aおよび13Bは、CRP結合部位に融合したFNR応答性プロモータの例示的な実施形態を描く図である。図13Aは、太字で示す制限部位を有する、FNR−CRPプロモータ領域のマップを描く。図13Bは、CRP結合部位およびリボソーム結合部位の両方に融合した、例示的なFNRプロモータ(nirBプロモータ)の制御下のargAfbr遺伝子の概略図を描く。他の調節エレメントも存在してよい。
図14図14Aおよび14Bは、CRP結合部位に融合したFNR応答性プロモータの代替の例示的実施形態を描く図である。図14Aは、太字で示す制限部位を有する、FNR−CRPプロモータ領域のマップを描く。図14Bは、CRP結合部位およびリボソーム結合部位の両方に融合した、例示的なFNRプロモータ(fnrSプロモータ)の制御下のargAfbr遺伝子の概略図を描く。
図15-1】大腸菌NissleにおけるargG遺伝子の調節領域と5’部分の野生型ゲノム配列と、その構成的突然変異体を描く図である。各配列のプロモータ領域には下線を引き、argG遺伝子の5’部分は囲む。野生型配列では、ArgR結合部位は大文字で下線を引く。突然変異配列では、5’非翻訳領域が大文字で下線を引く。構成的プロモータの制御下でargGを発現する細菌は、アルギニンを生成することが可能である。野生型の制御下でargGを発現する細菌、ArgR阻害可能プロモータは、シトルリンを生成することが可能である。
図15-2】図15−1と同様である。
図16】大腸菌Nissleの構成的に発現したargG構成物の例示的な実施形態を描く図である。構成的プロモータは、グレーで囲まれたBBa_J23100である。クローニングで用いる制限部位は太字である。
図17】野生型argGオペロン大腸菌Nissleのマップおよび構成的に発現したその突然変異体を描く図である。ARGボックスは野生型オペロンには存在するが、突然変異体にはない。ArgGはBBa_J23100プロモータの制御下で構成的に発現する。
図18-1】例示的なBADプロモータ駆動argAfbr構成物の核酸配列を描く図である。全ての太字配列がNissleゲノムDNAである。araC遺伝子の一部を太字にし、下線を引き、argAfbr遺伝子は囲み、間の太字配列は、アラビノースの存在により活性化されるプロモータである。リボソーム結合部位はイタリック体で示し、ターミネータ配列は強調し、FRT部位は囲む。araD遺伝子の一部は点線で囲む。
図18-2】図18−1と同様である。
図19】例示的なBADプロモータ駆動argAfbr構成物の概略図である。この実施形態では、argAfbr遺伝子をaraCとaraDの遺伝子の間に挿入する。ArgAfbrにはリボソーム結合部位、FRT部位、および1つまたは複数の転写ターミネータ配列が隣接する。
図20】pSC101プラスミドのマップを描く図である。制限部位は太字で示す。
図21A-1】pSC101プラスミドの核酸配列を描く図である。
図21A-2】図21A−1と同様である。
図21B-1】fnrSプロモータ駆動argAfbrpSC101プラスミドのヌクレオチド配列を描く図である。argAfbr配列は囲み、リボソーム結合部位は強調表示し、fnrSプロモータは大文字かつ太字である。
図21B-2】図21B−1と同様である。
図22】大腸菌1917Nissle染色体内の例示的な組み込み部位のマップを描く図である。これらの部位は、必須遺伝子の発現を妨げることなく回路コンポーネントを染色体に挿入できる領域を示す。挿入が多岐または集中的に発現した遺伝子の間で起きることを示すために逆斜線(/)を用いる。thyAなどの生合成遺伝子内への挿入は、栄養要求性を生じさせるのに有用であり得る。一部の実施形態では、個別の回路コンポーネントを、示した部位のうち2つ以上に挿入する。
図23】赤色蛍光タンパク質(RFP)を構成的に発現する3つの細菌株を描く図である。株1〜3において、rfp遺伝子を細菌染色体内の異なる部位に挿入したが、これは蛍光灯の下で様々な輝度を生じさせる。非改変大腸菌Nissle(株4)は非蛍光性である。
図24】誘導(+ATC)および非誘導(−ATC)の条件下で、ストレプトマイシン耐性対照Nissle(SYN−UCD103)、SYN−UCD201、SYN−UCD202、およびSYN−UCD203により生成されるin vitroでのアルギニンレベルについての棒グラフである。SYN−UCD201はΔArgRを含み、argAfbrを含まない。SYN−UCD202はΔArgRと、高コピープラスミドにおいてテトラサイクリン誘導argAfbrを含む。SYN−UCD203はΔArgRと、低コピープラスミドにおいてテトラサイクリン駆動argAfbrを含む。
図25】誘導条件下で、ストレプトマイシン耐性対照Nissle(SYN−UCD103)、SYN−UCD104、SYN−UCD204、およびSYN−UCD105により生成されるin vitroでのアルギニンおよびシトルリンレベルについての棒グラフである。SYN−UCD104は、野生型ArgRと、低コピープラスミドにあるテトラサイクリン誘導argAfbrと、テトラサイクリン誘導argGと、argGを除く各アルギニン生合成オペロンの各ARGボックスにおける突然変異とを含む。SYN−UCD204は、ΔArgRと、低コピープラスミドにおいてテトラサイクリン誘導性プロモータの制御下で発現するargAfbrを含む。SYN−UCD105は、野生型ArgR、低コピープラスミドにあるテトラサイクリン誘導argAfbr、構成的に発現するargG(BBa_J23100構成的プロモータ)、およびargGを除く各アルギニン生合成オペロンの各ARGボックスにおいて突然変異を含む。
図26】酸素の存在下(+O)または非存在下(−O)で、誘導(+ATC)および非誘導(−ATC)の条件下におけるストレプトマイシン耐性Nissle(SYN−UCD103)、SYN−UCD205、およびSYN−UCD204により生成されるin vitroでのアルギニンレベルについての棒グラフである。SYN−UCD103は対照Nissle構成物である。SYN−UCD205はΔArgRと、低コピープラスミドにおいてFNR誘導性プロモータ(fnrS2)の制御下で発現するargAfbrを含む。SYN−UCD204はΔArgRと、低コピープラスミドにおいてテトラサイクリン誘導性プロモータの制御下で発現するargAfbrを含む。
図27】in vivoでのNissle滞留についてのグラフである。ストレプトマイシン耐性Nissleを抗生物質の前処置なしに経口胃管投与を介してマウスに投与した、6匹の全マウスの糞便ペレットを投与後にモニターして、マウスの胃腸管になお滞留する投与Nissleの量を求めた。棒はマウスに投与された細菌の数を表す。線は、連続10日間の各日の糞便サンプルから発見されたNissleの数を表す。
図28図28A、28B、28Cは、高アンモニア血症TAAマウスにおけるアンモニアレベルについての棒グラフである。図28Aは、非改変対照Nissle、または、SYN−UCD202、Argリプレッサ遺伝子が削除され、argAfbr遺伝子が高コピープラスミドにおいてテトラサイクリン誘導性プロモータの制御下にある遺伝子操作した株で処置した、高アンモニア血症マウスにおけるアンモニアレベルについての棒グラフを描く。全部で96匹のマウスをテストし、エラーバーは標準誤差を表す。SYN−UCD202で処置したマウスのアンモニアレベルは、4日目と5日目は、非改変対照Nissleで処置したマウスのアンモニアレベルより低い。図28Bは、肝性脳症のTAAマウスモデルにおける、ストレプトマイシン耐性対照Nissle(SYN−UCD103)および溶媒のみの対照と比較した、SYN−UCD204のin vivoでの効果(アンモニア消費)を示す棒グラフを描く。図28Cは、TAA処置後24〜28時間の血中アンモニア濃度の増減率についての棒グラフである。
図29】高アンモニア血症spfashマウスにおけるアンモニアレベルについての棒グラフである。56匹のspfashマウスを4グループに分けた。グループ1には通常食を与え、グループ2〜4には最初の採血後に70%タンパク質食を与えた。グループには、1日に2回、水、ストレプトマイシン耐性Nissle対照(SYN−UCD103)、またはSYN−UCD204を用いて経管栄養し、第1経管栄養の4時間後に採血した。ΔArgRと、低コピープラスミドにおいてテトラサイクリン誘導性プロモータの制御下で発現するargAfbrを含むSYN−UCD204は、高アンモニア血症の閾値を下回るレベルにまで血中アンモニアを著しく低減させた。
図30】尿素サイクル酵素の例示的な概略図を描く図である。
図31】アンモニア消費動態と投薬のチャートである。この情報を用いて、UCD患者における、治療に該当する量のアンモニアを吸収するために生成することが必要なアルギニンの量を決定することができる。同様の計算をシトルリン生成についても行うことができる。
図32】アンモニアをシトルリンまたはアルギニンなどの所望の生成物に変換することを介してUCDおよび高アンモニア血症により特徴付けられる疾患を処置する、合成遺伝子回路の例示的な図である。
図33図33Aおよび33Bは、ポジティブフィードバック栄養要求株を生成し、高アルギニン生成を選択するのに用いることができる、例示的な構成物の図である。図33Aは、thyAの発現を駆動するastCプロモータのマップを描く。図33Bは、astCプロモータの制御下のthyA遺伝子の概略図を描く。調節領域には、CRP、ArgR、およびRNAポリメラーゼ(RNAP)の結合部位が含まれ、追加の調節エレメントも含まれ得る。
図34】栄養要求性株を生成するために、破壊または削除することができる例示的な細菌遺伝子の表である。これらには、限定されるわけではないが、オリゴヌクレオチド合成、アミノ酸合成、および細胞壁合成に必要な遺伝子が含まれる。
図35】経管栄養の24時間または48時間後に検出した、マウスの消化管における種々のアミノ酸栄養要求株の生存を示す表である。これらの栄養要求株はBW25113、大腸菌の非Nissle株を用いて生成した。
図36】本開示の非限定的実施形態を描く図であり、ここでは外因性環境条件または1つもしくは複数の環境シグナルが、異種遺伝子、および、1つの誘導性プロモータまたは複数の誘導性プロモータに由来する少なくとも1つのリコンビナーゼの発現を活性化する。リコンビナーゼは次に毒素遺伝子を活性化配座にフリッピングし、リコンビナーゼの天然動態が毒素の発現に時間遅延を生じさせ、異種遺伝子が完全に発現できるようにする。いったん毒素が発現したら、それは細胞を死滅させる。
図37】本開示の別の非限定的例を描く図であり、ここでは外因性環境条件または1つもしくは複数の環境シグナルが、異種遺伝子、抗毒素、および、1つの誘導性プロモータまたは複数の誘導性プロモータに由来する少なくとも1つのリコンビナーゼの発現を活性化する。リコンビナーゼは次に毒素遺伝子を活性化配座にフリッピングするが、蓄積された抗毒素の存在により毒素の活性は抑制される。いったん外因性環境条件または合図(Cue)が存在しなくなると、抗毒素の発現は止まる。毒素は構成的に発現し、蓄積し続け、細菌細胞を死滅させる。
図38】本開示の別の非限定的例を描く図であり、ここでは外因性環境条件または1つもしくは複数の環境シグナルが、異種遺伝子、および、1つの誘導性プロモータまたは複数の誘導性プロモータに由来する少なくとも1つのリコンビナーゼの発現を活性化する。リコンビナーゼは次に、少なくとも1つの除去酵素を活性化配座にフリッピングする。少なくとも1つの除去酵素は次に1つまたは複数の必須遺伝子を除去し、老化と最終的な細胞死をまねく。リコンビナーゼおよび除去遺伝子の天然動態は時間遅延を生じさせるが、その動態は、除去する必須遺伝子の数および選択に応じて変わり、最適化され、ほんの数時間または数日間のうちに細胞死を起こし得る。(図60に示すように)入れ子になった多数のリコンビナーゼの存在を利用して、さらに細胞死のタイミングを制御することが可能である。
図39】本開示の非限定的実施例を描く図であり、ここでは抗毒素が構成的プロモータより発現し、異種遺伝子の発現が外因性環境シグナルにより活性化される。アラビノースがない場合は、AraC転写因子は転写を阻害する配座をとる。アラビノースの存在下では、AraC転写因子の配座は変化し、これは、AraC転写因子がAraBADプロモータに結合し、AraBADプロモータを活性化させることを可能にし、TetRの発現を誘導して毒素の発現を妨げる。しかしながら、アラビノースが存在しない場合、TetRは発現せず、毒素が発現し、最終的には抗毒素に打ち勝ち細胞を死滅させる。抗毒素の発現を調節する構成的プロモータは、毒素の発現を駆動するプロモータより弱いプロモータであるはずである。AraCは本回路では構成的プロモータの制御下にある。
図40】本開示の非限定的実施例を描く図であり、ここでは異種遺伝子の発現が外因性環境シグナルにより活性化される。アラビノースがない場合は、AraC転写因子は転写を阻害する配座をとる。アラビノースの存在下では、AraC転写因子の配座は変化し、これは、AraC転写因子がAraBADプロモータに結合し、AraBADプロモータを活性化させることを可能にし、TetR(tetリプレッサ)および抗毒素の発現を誘導する。抗毒素が組換え細菌細胞において蓄積する一方で、TetRは(TetR結合部位を有するプロモータの制御下にある)毒素の発現を妨げる。しかしながら、アラビノースが存在しない場合、抗毒素とTetRは両方とも発現しない。TetRが存在して毒素の発現を阻害することがないため、毒素が発現し、細胞を死滅させる。AraCは本回路では構成的プロモータの制御下にある。
図41】argR遺伝子が削除され、フィードバック耐性argAfbr遺伝子を発現する、操作した細菌株の例示的な実施形態を描く図である。この株は、アンモニアの消費およびアルギニンの生成に有用である。
図42】argR遺伝子が削除され、フィードバック耐性argAfbr遺伝子を発現する、操作した細菌株の例示的な実施形態を描く図である。この株はさらに、染色体において1つまたは複数の栄養要求性改変を含む。この株は、アンモニアの消費およびアルギニンの生成に有用である。
図43】argRおよびargG遺伝子が削除され、フィードバック耐性argAfbr遺伝子を発現する、操作した細菌株の例示的な実施形態を描く図である。この株は、アンモニアの消費およびシトルリンの生成に有用である。
図44】argRおよびargG遺伝子が削除され、フィードバック耐性argAfbr遺伝子を発現する、操作した細菌株の例示的な実施形態を描く図である。この株はさらに、染色体において1つまたは複数の栄養要求性改変を含む。この株は、アンモニアの消費およびシトルリンの生成に有用である。
図45】ArgR結合部位を欠き、フィードバック耐性argAfbr遺伝子を発現する、操作した細菌株の例示的な実施形態を描く図である。この株は、アンモニアの消費およびアルギニンの生成に有用である。
図46】ArgR結合部位を欠き、フィードバック耐性argAfbr遺伝子を発現する、操作した細菌株の例示的な実施形態を描く図である。この株はさらに、染色体において1つまたは複数の栄養要求性改変を含む。この株は、アンモニアの消費およびアルギニンの生成に有用である。
図47】argGを除くアルギニン生合成オペロンの全てにおいてArgR結合部位を欠き、フィードバック耐性argAfbr遺伝子を発現する、操作した細菌株の例示的な実施形態を描く図である。この株は、アンモニアの消費およびシトルリンの生成に有用である。
図48】argGを除くアルギニン生合成オペロンの全てにおいてArgR結合部位を欠き、フィードバック耐性argAfbr遺伝子を発現する、操作した細菌株の例示的な実施形態を描く図である。この株はさらに、染色体において1つまたは複数の栄養要求性改変を含む。この株は、アンモニアの消費およびシトルリンの生成に有用である。
図49図49Aは、野生型clbA構成物の概略図である。図49Bは、clbAノックアウト構成物の概略図である。
図50】野生型clbA構成物およびclbAノックアウト構成物の例示的配列を描く図である。
図51】SYN−UCD101、SYN−UCD102、およびブランク対照に由来する培養培地における、ベースライン、2時間目、および4時間目のin vitroでのアンモニアレベルについての棒グラフである。SYN−UCD101およびSYN−UCD102は両方ともin vitroでアンモニアを消費することが可能である。
図52】SYN−UCD201、SYN−UCD203、およびブランク対照に由来する培養培地における、ベースライン、2時間目、および4時間目のin vitroでのアンモニアレベルについての棒グラフである。SYN−UCD201およびSYN−UCD203は両方ともin vitroでアンモニアを消費することが可能である。
図53】操作したセーフティーコンポーネントとしてのGeneGuardの使用を描く図である。操作したDNAは全て、条件付きで破壊され得るプラスミドに存在する。例えば、Wright et al.,“GeneGuard:A Modular Plasmid System Designed for Biosafety,” ACS Synthetic Biology (2015) 4:307−316を参照。
図54】例示的なL−ホモセリンおよびL−メチオニンの生合成経路を描く図である。回路は、MetJにより阻害される遺伝子を示し、metJの欠失はこれらの遺伝子の構成的発現および経路の活性化をまねく。
図55】例示的なヒスチジン生合成経路を描く図である。
図56】例示的なリシン生合成経路を描く図である。
図57】例示的なアスパラギン生合成経路を描く図である。
図58】例示的なグルタミン生合成経路を描く図である。
図59】例示的なトリプトファン生合成経路を描く図である。
図60】本開示の1つの非限定的な実施形態を描く図であり、ここでは外因性環境条件または1つもしくは複数の環境シグナルが、異種遺伝子、および、1つの誘導性プロモータまたは複数の誘導性プロモータに由来する第1リコンビナーゼの発現を活性化する。リコンビナーゼは次に第2リコンビナーゼを逆方向から活性配座にフリッピングする。活性第2リコンビナーゼは毒素遺伝子を活性配座にフリッピングし、リコンビナーゼの天然動態は毒素の発現に時間遅延を生じさせ、異種遺伝子が完全に発現できるようにする。いったん毒素が発現したら、それは細胞を死滅させる。
図61図60に描くキルスイッチの実施形態を有する尿素サイクル異常症(UCD)を標的にするように生物操作した合成物質を描く図である。この例では、IntリコンビナーゼおよびKid−Kis毒素−抗毒素システムをUCDを処置するために組換え細菌細胞において用いる。過剰なアンモニアを消費し有益な副生成物を生成して、患者の予後を改善するように、組換え細菌細胞を操作する。組換え細菌細胞はまた、安全性を確保するため高度に制御可能なキルスイッチを含む。(例えば、消化管に見られるような)低酸素環境に応答して、FNRプロモータはIntリコンビナーゼの発現を誘導し、また、Kis抗毒素の発現も誘導する。Intリコンビナーゼは、Kid毒素遺伝子の活性化配座へのフリッピングを引き起こすが、蓄積したKis抗毒素の存在が、発現したKid毒素の活性を抑制する。酸素の存在下(消化管外など)では、抗毒素の発現は止まる。毒素は構成的に発現するためそれは蓄積し続け、細菌細胞を死滅させる。
図62】本開示の別の非限定的な実施形態を描く図であり、ここでは異種遺伝子の発現が外因性環境シグナルにより活性化される。アラビノースがない場合は、AraC転写因子は、転写を阻害する配座をとる。アラビノースの存在下では、AraC転写因子の配座は変化し、これは、AraC転写因子がAraBADプロモータに結合し、AraBADプロモータを活性化させることを可能にし、TetR(tetリプレッサ)および抗毒素の発現を誘導する。抗毒素が組換え細菌細胞において蓄積する一方で、TetRは(TetR結合部位を有するプロモータの制御下にある)毒素の発現を妨げる。しかしながら、アラビノースが存在しない場合、抗毒素とTetRは両方とも発現しない。TetRが存在して毒素の発現を阻害することがないため、毒素は発現し、細胞を死滅させる。図62はまた、本開示の別の非限定的な実施形態を描き、ここでは、組換え細菌に見られない必須遺伝子の発現が、外因性環境シグナルにより活性化される。アラビノースがない場合は、AraC転写因子は、araBADプロモータの制御下にある必須遺伝子の転写を阻害する配座をとり、細菌細胞は生存することができない。アラビノースの存在下では、AraC転写因子の配座は変化し、これは、AraC転写因子がAraBADプロモータに結合し、AraBADプロモータを活性化させることを可能にし、必須遺伝子の発現を誘導して細菌細胞の生存能力を維持する。
図63】本開示の非限定的な実施形態を描く図であり、ここでは、抗毒素が構成的プロモータより発現し、異種遺伝子の発現が外因性環境シグナルにより活性化される。アラビノースがない場合は、AraC転写因子は、転写を阻害する配座をとる。アラビノースの存在下では、AraC転写因子は、AraC転写因子の配座は変化し、これは、AraC転写因子がAraBADプロモータに結合し、AraBADプロモータを活性化させることを可能にし、TetR発現を誘導することにより毒素の発現を妨げる。しかしながら、アラビノースが存在しない場合、TetRは発現せず、毒素が発現し、最終的には抗毒素に打ち勝ち細胞を死滅させる。抗毒素の発現を調節する構成的プロモータは、毒素の発現を駆動するプロモータより弱いプロモータであるはずである。
図64】組換え細菌の固有の安全性ならびに改変した安全性−老廃物管理など(キルスイッチおよび/または栄養要求性を含む)、本開示の組換え細菌の安全設計の概要を描く図である。
【0008】
図面の簡単な説明の図1A中,ArgA(短い不規則な曲線)は
とする。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、尿素サイクル異常症および肝性脳症などの高アンモニア血症に関連する疾患を和らげるまたは処置する、遺伝子操作した細菌、その医薬組成物、ならびにその方法を含む。遺伝子操作した細菌は、特に、哺乳類の消化管などの低酸素条件で過剰なアンモニアを減少させることが可能である。ある実施形態では、遺伝子操作した細菌は、体内の過剰な窒素を、アルギニン、シトルリン、メチオニン、ヒスチジン、リシン、アスパラギン、グルタミン、またはトリプトファンなどの非毒性分子に取り込むことにより、過剰なアンモニアを減少させる。
【0010】
本開示をより容易に理解できるようにするため、ある特定の用語をまず定義する。これらの定義は、本開示の残りの部分に照らし合わせて、当業者によって理解されるように読まれるべきである。別段の定義がない限り、本明細書で用いられる全ての技術的および科学的な用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。追加の定義は、詳細な説明全体を通して記載する。
【0011】
「高アンモニア血症」、「高アンモニア血症の」、または「過剰なアンモニア」は、体内のアンモニア濃度の上昇を指すために用いる。高アンモニア血症は、解毒作用の低下および/またはアンモニア生成の増加により引き起こされる。解毒作用の低下は、アルギニノコハク酸尿症、アルギナーゼ欠損症、カルバモイルリン酸シンセターゼ欠損症、シトルリン血症、N−アセチルグルタミン酸シンセターゼ欠損症、およびオルニチントランスカルバミラーゼ欠損症などの尿素サイクル異常症(UCD)、または開放肝管などの肝臓のバイパス、ならびに/または、グルタミンシンセターゼの欠損に起因し得る(Hoffman et al.,2013;Haeberle et al.,2013)。アンモニア生成の増加は、感染症、薬物、神経性膀胱、および腸内細菌の過剰増殖に起因し得る(Haeberle et al.,2013)。高アンモニア血症に関連する他の疾患および症状としては、限定されるわけではないが、肝性脳症、急性肝不全、または慢性肝不全などの肝疾患;有機酸異常症;イソ吉草酸血症;3−メチルクロトニルグリシン尿症;メチルマロン酸血症;プロピオン酸尿症;脂肪酸酸化欠損症;カルニチンサイクル異常症;カルニチン欠乏症;β酸化異常症;リシン尿性蛋白不耐症;ピロリン−5−カルボン酸シンセターゼ欠損症;ピルビン酸カルボキシラーゼ欠損症;オルニチンアミノトランスフェラーゼ欠損症;炭酸脱水酵素欠乏症;高インスリン血症−高アンモニア血症症候群;ミトコンドリア病;バルプロエート療法;アスパラギナーゼ療法;完全非経口栄養法;グリシン含有溶液を用いた膀胱鏡検査;肺/骨髄移植後;門脈体循環シャント;尿路感染症;尿道拡張;多発性骨髄腫;および化学療法が挙げられる(Hoffman et al.,2013;Haeberle et al.,2013;Pham et al.,2013;Lazier et al.,2014)。健康な対象の血漿アンモニア濃度は、典型的には、約50μmol/L未満である(Leonard,2006)。一部の実施形態では、高アンモニア血症の診断シグナルは、少なくとも約50μmol/L、少なくとも約80μmol/L、少なくとも約150μmol/L、少なくとも約180μmol/L、または少なくとも約200μmol/Lという血漿アンモニア濃度である(Leonard,2006;Hoffman et al.,2013;Haeberle et al.,2013)。
【0012】
「アンモニア」は、気体アンモニア(NH)、アンモニウムイオン(NH)、またはそれらの混合物を指すために用いる。身体の液体部分では、気体アンモニアおよびアンモニウムイオンは、均衡を保って存在する。
【0013】
【化1】
【0014】
一部の臨床検査では総アンモニア(NH+NH)を解析する(Walker,2012)。本発明の任意の実施形態では、別段の指示がない限り、「アンモニア」は、気体アンモニア、アンモニウムイオン、および/または総アンモニアを指し得る。
【0015】
アンモニアの「解毒作用」は、有毒アンモニアを除去する、および/または、限定されるわけではないが、アルギニン、シトルリン、メチオニン、ヒスチジン、リシン、アスパラギン、グルタミン、トリプトファン、または尿素を含む、1つまたは複数の非毒性分子に変換する天然または合成のプロセスを指すために用いる。尿素サイクルは、例えば、尿において体内から除去するためにアンモニアを尿素に酵素的に変換する。アンモニアは、非常に多くの生化学経路を介して合成される多くのアミノ酸にとって窒素の供給源であることから、そのアミノ酸生合成経路の1つまたは複数の強化を利用して、過剰な窒素を非毒性分子に取り込むことができる。例えば、アルギニン生合成で、窒素原子を1つ含むグルタミン酸を窒素原子を4つ含むアルギニンに変換することにより、過剰な窒素を非毒性分子に取り込む。ヒトでは、アルギニンは大腸から再吸収されないため、結果として、大腸内の過剰なアルギニンは有害とは考えられない。同様に、シトルリンも大腸から再吸収されないため、結果として、大腸内の過剰なシトルリンは有害とは考えられない。アルギニン生合成はまた、シトルリンを最終生成物として生成するように改変させることができ、シトルリンは3つの窒素原子を含むため、該改変経路も過剰な窒素を非毒性分子に取り込むことが可能である。
【0016】
「アルギニンレギュロン」、「アルギニン生合成レギュロン」、および「argレギュロン」は、アルギニン生合成経路において、グルタミン酸からアルギニンおよび/またはシトルリンなどの中間代謝産物への変換を担う酵素をコードした遺伝子を含む所与の細菌種におけるオペロンの集合を指すために、区別なく用いる。アルギニンレギュロンはまた、それらのオペロンに関連するオペレータ、プロモータ、ARGボックス、および/または、調節領域を含む。アルギニンレギュロンには、限定されるわけではないが、アルギニン生合成酵素N−アセチルグルタミン酸シンセターゼ、N−アセチルグルタミン酸キナーゼ、N−アセチルグルタミルリン酸レダクターゼ、アセチルオルニチンアミノトランスフェラーゼ、N−アセチルオルニチナーゼ、オルニチントランスカルバミラーゼ、アルギニノスクシネートシンターゼ、アルギニノスクシネートリアーゼ、カルバモイルリン酸シンターゼをコードするオペロン、それらのオペレータ、それらのプロモータ、それらのARGボックス、および/またはそれらの調節領域が含まれる。一部の実施形態では、アルギニンレギュロンは、N−アセチルグルタミン酸シンセターゼおよび/もしくはN−アセチルオルニチナーゼに追加される、またはそれらの代わりとなるオルニチンアセチルトランスフェラーゼをコードするオペロン、ならびに、関連するオペレータ、プロモータ、ARGボックス、および/または調節領域を含む。一部の実施形態では、アルギニンレギュロンの1つまたは複数のオペロンまたは遺伝子は、細菌のプラスミドに存在し得る。一部の実施形態では、細菌はアルギニンレギュロン中に任意の遺伝子またはオペロンの多数のコピーを含み得、該1つまたは複数のコピーは、本明細書に記載するように、突然変異させるか、さもなければ変えることができる。
【0017】
1つの遺伝子は1つの酵素、例えば、N−アセチルグルタミン酸シンセターゼ(argA)をコードし得る。2つ以上の遺伝子は、1つの酵素の別個のサブユニット、例えば、カルバモイルリン酸シンターゼのサブユニットAおよびサブユニットB(carAおよびcarB)をコードし得る。一部の細菌では、2つ以上の遺伝子はそれぞれ独立して、同一の酵素、例えばオルニチントランスカルバミラーゼ(argFおよびargI)をコードし得る。一部の細菌では、アルギニンレギュロンは、限定されるわけではないが、N−アセチルグルタミン酸シンセターゼをコードするargA;N−アセチルグルタミン酸キナーゼをコードするargB;N−アセチルグルタミルリン酸レダクターゼをコードするargC;アセチルオルニチンアミノトランスフェラーゼをコードするargD;N−アセチルオルニチナーゼをコードするargE;アルギニノスクシネートシンターゼをコードするargG;アルギニノスクシネートリアーゼをコードするargH;それぞれ独立してオルニチントランスカルバミラーゼをコードするargFおよびargIの一方または両方;カルバモイルリン酸シンターゼの小サブユニットをコードするcarA;カルバモイルリン酸シンターゼの大サブユニットをコードするcarB;それらのオペロン;それらのオペレータ;それらのプロモータ;それらのARGボックス;および/またはそれらの調節領域を含む。一部の実施形態では、アルギニンレギュロンは、(N−アセチルグルタミン酸シンセターゼおよび/もしくはN−アセチルオルニチナーゼに追加される、またはそれらの代わりとなる)オルニチンアセチルトランスフェラーゼをコードするargJ、それらのオペロン、それらのオペレータ、それらのプロモータ、それらのARGボックス、および/またはそれらの調節領域が含まれる。
【0018】
「アルギニンオペロン」、「アルギニン生合成オペロン」、および「argオペロン」は、少なくとも1つのプロモータと少なくとも1つのARGボックスを含む共通の調節領域の制御下でアルギニン生合成酵素をコードする、1つまたは複数の遺伝子のクラスタを指すために区別なく用いる。一部の実施形態では、前記1つまたは複数の遺伝子は、同時転写および/または同時翻訳される。アルギニン生合成を担う酵素をコードする遺伝子の任意の組み合わせは、天然または合成的に、オペロンに組織化され得る。例えば、バチルス・サブチリスでは、N−アセチルグルタミルリン酸レダクターゼ、N−アセチルグルタミン酸キナーゼ、N−アセチルオルニチナーゼ、N−アセチルグルタミン酸キナーゼ、アセチルオルニチンアミノトランスフェラーゼ、カルバモイルリン酸シンターゼ、およびオルニチントランスカルバミラーゼをコードする遺伝子が、プロモータおよびARGボックスを含む共通の調節領域の制御下で、単一オペロン、argCAEBD−carAB−argF(例えばTable 2を参照)に組織化される。大腸菌K12およびNissleでは、N−アセチルオルニチナーゼ、N−アセチルグルタミルリン酸レダクターゼ、N−アセチルグルタミン酸キナーゼ、およびアルギニノスクシネートリアーゼをコードする遺伝子は、2つの二極性オペロン、argECBHに組織化される。アルギニン生合成を担う酵素をコードするオペロンは、染色体全体にわたり、異なる遺伝子座に分布し得る。非改変細菌では、各オペロンはArgRを介してアルギニンにより阻害され得る。一部の実施形態では、アルギニンおよび/または中間副生成物の生成を、本明細書で提供するように、アルギニン生合成オペロンによりコードされる酵素の発現を改変させることにより、本発明の遺伝子操作した細菌において変えることができる。各アルギニンオペロンは、プラスミドまたは細菌の染色体に存在し得る。加えて、任意のアルギニンオペロンの多数のコピー、またはアルギニンオペロン内の遺伝子もしくは調節領域が細菌内に存在し得、オペロンの1つもしくは複数のコピー、または遺伝子もしくは調節領域は、本明細書に記載するように、突然変異させるか、さもなければ変えることができる。一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌は、コピー数を増やすために同一生成物(例えば、オペロンまたは遺伝子または調節領域)の多数のコピーを含むか、または多数の異なる機能を実行するオペロンの多数の異なるコンポーネントを含むように、遺伝子操作する。
【0019】
「ARGボックスコンセンサス配列」はARGボックスの核酸配列を指し、この核酸は、argR、argA、argB、argC、argD、argE、argF、argG、argH、argI、argJ、carA、および/またはcarBの調節領域の1つまたは複数において高頻度で生じることが知られている。上記のように、各argオペロンは、ARGボックスと呼ばれる、18ヌクレオチドの不完全な回帰性配列を少なくとも1つ含む調節領域を含み、これはプロモータと一部重複し、リプレッサタンパク質がそれに結合する(Tian et al.,1992)。ARGボックスのヌクレオチド配列は各オペロンで異なり得、コンセンサスARGボックス配列は、nTGAATATTCAnである(Maas,1994)。アルギニンリプレッサは、1つまたは複数のARGボックスに結合して、該1つまたは複数のARGボックスに操作可能に連結するアルギニン生合成酵素の転写を積極的に阻害する。
【0020】
「突然変異アルギニンレギュロン」または「突然変異させたアルギニンレギュロン」は、アルギニン生合成経路においてグルタミン酸からアルギニンおよび/またはシトルリンなどの中間副生成物への変換を担う酵素をコードしたオペロンそれぞれの、アルギニン介在性阻害を低減または消失させる核酸突然変異を1つまたは複数含み、その結果、突然変異アルギニンレギュロンが、同一条件下の同じ細菌サブタイプに由来する非改変レギュロンよりも多くのアルギニンおよび/または中間副生成物を生成する、アルギニンレギュロンを指すために用いる。一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌は、アルギニンフィードバック耐性N−アセチルグルタミン酸シンターゼ突然変異体、例えばargAfbrと、アルギニン生合成酵素N−アセチルグルタミン酸キナーゼ、N−アセチルグルタミルリン酸レダクターゼ、アセチルオルニチンアミノトランスフェラーゼ、N−アセチルオルニチナーゼ、オルニチントランスカルバミラーゼ、アルギニノスクシネートシンターゼ、アルギニノスクシネートリアーゼ、およびカルバモイルリン酸シンターゼをコードする1つまたは複数のオペロンの少なくとも1つのARGボックスにおいて1つまたは複数の核酸突然変異を含む、突然変異アルギニンレギュロンとを含み、それによりレギュロンの阻害を解除し、アルギニンおよび/または中間副生成物の生合成を強化する。一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌は、1つまたは複数の核酸突然変異を含む突然変異アルギニンリプレッサを含み、その結果、アルギニンリプレッサの機能は低下もしくは不活性となるか、または、遺伝子操作した細菌はアルギニンリプレッサを持たず(例えば、アルギニンリプレッサ遺伝子を削除して)、レギュロンの阻害解除ならびにアルギニンおよび/もしくは中間副生成物の生合成の強化がもたらされる。一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌は、アルギニンフィードバック耐性N−グルタミン酸シンターゼ突然変異体、例えばargAfbr、アルギニン生合成酵素をコードするオペロンそれぞれの少なくとも1つのARGボックスにおいて1つまたは複数の核酸突然変異を含む、突然変異アルギニンレギュロン、および/または、突然変異アルギニンリプレッサを含むか、もしくは該アルギニンリプレッサは削除されている。一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌は、アルギニンフィードバック耐性N−グルタミン酸シンターゼ突然変異体、例えばargAfbrと、アルギニン生合成酵素をコードするオペロンそれぞれの少なくとも1つのARGボックスにおいて1つまたは複数の核酸突然変異を含む、突然変異アルギニンレギュロンとを含む。一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌は、アルギニンフィードバック耐性N−グルタミン酸シンターゼ突然変異体、例えばargAfbrと、突然変異アルギニンリプレッサとを含むか、もしくはアルギニンリプレッサは削除されている。一部の実施形態では、突然変異アルギニンレギュロンは、野生型N−アセチルグルタミン酸シンセターゼをコードするオペロンを含み、前記オペロンの少なくとも1つのARGボックスにおいて、1つまたは複数の核酸突然変異を含む。一部の実施形態では、突然変異アルギニンレギュロンは、野生型N−アセチルグルタミン酸シンセターゼをコードするオペロンと、突然変異アルギニンリプレッサとを含むか、またはアルギニンリプレッサは削除されている。一部の実施形態では、突然変異アルギニンレギュロンは、(N−アセチルグルタミン酸シンセターゼおよび/もしくはN−アセチルオルニチナーゼに追加される、またはそれらの代わりとなる)オルニチンアセチルトランスフェラーゼをコードするオペロンを含み、前記オペロンの少なくとも1つのARGボックスにおいて、1つまたは複数の核酸突然変異を含む。
【0021】
ARGボックスは、各アルギニン生合成オペロンの調節領域においてプロモータと一部重複する。突然変異アルギニンレギュロンでは、1つまたは複数のアルギニン生合成オペロンの調節領域を、回帰性ARGボックス配列を破壊し、ArgR結合を低減させるのに十分なほど突然変異させるが、非突然変異調節領域のプロモータとの相同性は未だ十分に高く、天然のオペロン特異的プロモータとして認識される。オペロンは、少なくとも1つのARGボックスにおいて少なくとも1つの核酸突然変異を含み、その結果、オペロンのARGボックスおよび調節領域に対するArgR結合が低減または消失する。一部の実施形態では、DNAのメチル化から保護される塩基およびArgR結合時のヒドロキシルラジカルアタックから保護される塩基が、ArgR結合を妨げる突然変異の主要標的である(図6等を参照)。突然変異調節領域のプロモータは、非突然変異調節領域のプロモータに対し十分に高い相同性を保持し、その結果、RNAポリメラーゼは十分な親和性をもってそれに結合して、操作可能に連結したアルギニン生合成酵素の転写を促進する。一部の実施形態では、突然変異体のプロモータのG/C:A/T比率は、野生型プロモータのG/C:A/T比率とわずか10%異なるだけである。
【0022】
一部の実施形態では、2つ以上のARGボックスが単一オペロンに存在し得る。これらの実施形態の一態様では、オペロンの少なくとも1つのARGボックスを、オペロンの調節領域に対する、必須の低減ArgR結合を生成するように変更する。これらの実施形態の代替の態様では、オペロンのARGボックスをそれぞれ、オペロンの調節領域に対する、必須の低減ArgR結合を生成するように変更する
【0023】
「低減」ArgR結合は、同一条件下の同じサブタイプの細菌の非改変のARGボックスおよび調節領域に対するリプレッサ結合と比較し、オペロンのARGボックスへのリプレッサ結合が低減すること、または、前記オペロンの調節領域に対する総リプレッサ結合が低減することを指すために用いられる。一部の実施形態では、オペロンの突然変異ARGボックスおよび突然変異調節領域に対するArgR結合は、同一条件下の同じサブタイプの細菌の非改変のARGボックスおよび調節領域に対するArgR結合よりも、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%低い。一部の実施形態では、突然変異ARGボックスおよび突然変異調節領域に対する低減ArgR結合は、オペロンにおいて、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約50倍、少なくとも約100倍、少なくとも約200倍、少なくとも約300倍、少なくとも約400倍、少なくとも約500倍、少なくとも約600倍、少なくとも約700倍、少なくとも約800倍、少なくとも約900倍、少なくとも約1000倍、または少なくとも約1500倍の、1つまたは複数の遺伝子のmRNA発現の増加をもたらす。
【0024】
「ArgR」または「アルギニンリプレッサ」は、アルギニンレギュロンにおいてアルギニン生合成遺伝子の転写を調節することによりアルギニン生合成を阻害することが可能なタンパク質を指すために用いる。アルギニンリプレッサタンパク質をコードする遺伝子(「argR」)の発現が野生型細菌で高まると、アルギニン生合成は減少する。argRの発現が野生型細菌で減少するか、または、argRを削除もしくは突然変異させてアルギニンリプレッサ機能を不活化する場合、アルギニン生合成は増加する。
【0025】
「任意の機能的ArgRを欠いた」細菌および「ArgR欠失細菌」は、各アルギニンリプレッサの活性が、同一条件下の同じサブタイプの細菌に由来する非改変アルギニンリプレッサと比較し、著しく低減または消失している細菌を指すために用いる。低減または消失したアルギニンリプレッサの活性は、例えば、アルギニン生合成遺伝子の転写の強化、ならびに/または、アルギニンおよび/もしくはシトルリンなどの中間副生成物の濃度の上昇をもたらし得る。アルギニンリプレッサ活性が低減または消失した細菌は、細菌性argR遺伝子を改変するか、またはargR遺伝子の転写を改変することにより、生成することが可能である。例えば、染色体argR遺伝子は削除もしくは突然変異させるか、または、argR遺伝子を、野生型リプレッサ活性を示さないargR遺伝子で置き換えることが可能である。
【0026】
「操作可能に連結した」は、核酸配列の発現を可能にする、例えばシスで作用する形で調節領域配列に結合した核酸配列、例えば、フィードバック耐性ArgAをコードする遺伝子を指す。
【0027】
「誘導性プロモータ」は、1つまたは複数の遺伝子に操作可能に連結している調節領域を指し、ここにおいて前記遺伝子の発現は、前記調節領域の誘導因子の存在下で増加する。
【0028】
「外因性環境条件」は、上記のプロモータが誘導される環境または状況を指す。一部の実施形態では、外因性環境条件は、哺乳動物の消化管に特異的である。一部の実施形態では、外因性環境条件は、哺乳動物の上部胃腸管に特異的である。一部の実施形態では、外因性環境条件は、哺乳動物の下部胃腸管に特異的である。一部の実施形態では、外因性環境条件は、哺乳動物の小腸に特異的である。一部の実施形態では、外因性環境条件は、哺乳類の消化管の環境などの、低酸素性、微好気的、または嫌気的な条件である。一部の実施形態では、外因性環境条件は、哺乳類の消化管に特異的な分子または代謝産物、例えばプロピオナートである。一部の実施形態において、本発明の遺伝子操作した細菌は、酸素レベル依存性プロモータを含む。細菌は、酸素レベルを感知することができる進化した転写機能を有する。異なるシグナル経路が、異なる酸素レベルにより引き起こされ、異なる動態で起き得る。「酸素レベル依存性プロモータ」または「酸素レベル依存性調節領域」は、1つまたは複数の酸素レベル感知転写因子が結合することのできる核酸配列を指し、ここでは対応する転写因子の結合および/または活性化は、下流の遺伝子発現を活性化させる。
【0029】
酸素レベル依存性転写因子の例としては、限定されるわけではないが、FNR、ANR、およびDNRが挙げられる。対応するFNR応答性プロモータ、ANR応答性プロモータ、およびDNR応答性プロモータが当技術分野で知られており(例えば、Castiglione et al.,2009、Eiglmeier et al.,1989、Galimand et al.,1991、Hasegawa et al.,1998、Hoeren et al.,1993、Salmon et al.,2003を参照)、非限定的例をTable 1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
本明細書で用いる場合、「非天然」核酸配列は、細菌に通常存在しない核酸配列、例えば、内因性配列の余分なコピー、異なる細菌種、細菌株、もしくは細菌亜株に有来する配列などの異種配列、または、同じサブタイプの細菌に由来する非改変配列と比較し改変および/もしくは突然変異させた配列を指す。一部の実施形態では、非天然核酸配列は、合成の、非天然発生配列である(例えば、Purcell et al.,2013を参照)。非天然核酸配列は、調節領域、プロモータ、遺伝子、および/または遺伝子カセット中の1つもしくは複数の遺伝子であり得る。一部の実施形態では、「非天然」は、天然で見られる相互関係とは異なる関係の2つ以上の核酸配列を指す。非天然核酸配列は、プラスミドまたは染色体に存在し得る。一部の実施形態では、本発明の遺伝子操作した細菌は、直接的または非直接的に誘導できる、天然では無関連のプロモータ、例えば、ブチロジェニック遺伝子カセットに操作可能に連結するFNR応答性プロモータに、操作可能に連結する遺伝子カセットを含む。
【0032】
「構成的プロモータ」は、その制御下および/またはそれが操作可能に連結するコード配列または遺伝子の連続転写を容易にすることが可能なプロモータを指す。構成的プロモータおよびバリアントは当技術分野で周知であり、該構成的プロモータおよびバリアントとしては、限定されるわけではないが、BBa_J23100、構成的大腸菌σ プロモータ(例えば、osmYプロモータ(International Genetically Engineered Machine(iGEM)Registry of Standard Biological Parts Name BBa_J45992;BBa_J45993))、構成的大腸菌σ32プロモータ(例えば、htpGヒートショックプロモータ(BBa_J45504))、構成的大腸菌σ70プロモータ(例えば、lacqプロモータ(BBa_J54200;BBa_J56015)、大腸菌CreABCDリン酸感知オペロンプロモータ(BBa_J64951)、GlnRSプロモータ(BBa_K088007)lacZプロモータ(BBa_K119000;BBa_K119001);M13K07遺伝子Iプロモータ(BBa_M13101);M13K07遺伝子IIプロモータ(BBa_M13102)、M13K07遺伝子IIIプロモータ(BBa_M13103)、M13K07遺伝子IVプロモータ(BBa_M13104)、M13K07 遺伝子Vプロモータ(BBa_M13105)、M13K07遺伝子VIプロモータ(BBa_M13106)、M13K07遺伝子VIIIプロモータ(BBa_M13108)、M13110(BBa_M13110))、構成的バチルス・サブチリスσプロモータ(例えば、プロモータveg(BBa_K143013))、プロモータ43(BBa_K143013)、PliaG(BBa_K823000)、PlepA(BBa_K823002)、Pveg(BBa_K823003))、構成的バチルス・サブチリスσプロモータ(例えば、プロモータctc(BBa_K143010)、プロモータgsiB(BBa_K143011))、サルモネラプロモータ(例えば、サルモネラ由来のPspv2(BBa_K112706)、サルモネラ由来のPspv(BBa_K112707))、バクテリオファージT7プロモータ(例えば、T7プロモータ(BBa_I712074;BBa_I719005;BBa_J34814;BBa_J64997;BBa_K113010;BBa_K113011;BBa_K113012;BBa_R0085;BBa_R0180;BBa_R0181;BBa_R0182;BBa_R0183;BBa_Z0251;BBa_Z0252;BBa_Z0253))、およびバクテリオファージSP6プロモータ(例えば、SP6プロモータ(BBa_J64998))が挙げられる。
【0033】
本明細書で用いる場合、アルギニンまたはシトルリンなどの中間副生成物を「過剰生成」する遺伝子操作した細菌は、突然変異アルギニンレギュロンを含む細菌を指す。例えば、遺伝子操作した細菌はフィードバック耐性型のArgAを含み得、アルギニンフィードバック耐性ArgAが発現する場合、同一条件下の同じサブタイプの非改変細菌よりも多くのアルギニンおよび/または中間副生成物を生成することが可能である。遺伝子操作した細菌は、代わりにまたはさらに、アルギニン生合成酵素をコードするオペロンそれぞれの少なくとも1つのARGボックスにおいて1つまたは複数の核酸突然変異を含む、突然変異アルギニンレギュロンを含み得る。遺伝子操作した細菌は、代わりにまたはさらに、突然変異アルギニンリプレッサを含むか、もしくはアルギニンリプレッサは削除されている。一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌は、同一条件下の同じサブタイプの非改変細菌よりも、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約50倍、少なくとも約100倍、少なくとも約200倍、少なくとも約300倍、少なくとも約400倍、少なくとも約500倍、少なくとも約600倍、少なくとも約700倍、少なくとも約800倍、少なくとも約900倍、少なくとも約1000倍、または少なくとも約1500倍のアルギニンを生成する。一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌は、同一条件下の同じサブタイプの非改変細菌よりも、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約50倍、少なくとも約100倍、少なくとも約200倍、少なくとも約300倍、少なくとも約400倍、少なくとも約500倍、少なくとも約600倍、少なくとも約700倍、少なくとも約800倍、少なくとも約900倍、少なくとも約1000倍、または少なくとも約1500倍のシトルリンまたは他の中間副生成物を生成する。一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌における1つまたは複数のアルギニン生合成遺伝子のmRNA転写レベルは、同一条件下の同じサブタイプの非改変細菌におけるmRNA転写レベルよりも、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約50倍、少なくとも約100倍、少なくとも約200倍、少なくとも約300倍、少なくとも約400倍、少なくとも約500倍、少なくとも約600倍、少なくとも約700倍、少なくとも約800倍、少なくとも約900倍、少なくとも約1000倍、または少なくとも約1500倍高い。ある実施形態では、非改変細菌は、このようなオペロンにおいて、検出可能レベルのアルギニン、中間副生物、および/または遺伝子の転写を有さないだろう。しかしながら、突然変異アルギニンレギュロンを有する対応する遺伝子操作した細菌では、アルギニンならびに/または中間副生成物のタンパク質および/もしくは転写レベルは検出可能であろう。転写レベルは、遺伝子のmRNAレベルを直接測定することにより検出することができる。アルギニンおよび/または中間副生成物のレベル、ならびにアルギニン生合成遺伝子から発現した転写物レベルを測定する方法は、当技術分野で既知である。例えば、アルギニンおよびシトルリンは、質量分析により測定することができる。
【0034】
「消化管」は、食物の移送および消化、栄養の吸収、ならびに老廃物の排泄を担う器官、腺、管、および系を指す。ヒトでは、消化管は口で始まり肛門で終わる胃腸管を含み、加えて、食道、胃、小腸、および大腸を含む。消化管はまた、脾臓、肝臓、胆嚢、および膵臓などの副器官および付属腺を含む。上部胃腸管は、食道、胃、小腸の十二指腸を含む。下部胃腸管は、小腸の残り、つまり空腸および回腸、ならびに大腸の全て、つまり盲腸、結腸、直腸、および肛門管を含む。細菌は消化管全体、例えば、胃腸管、特に腸に見られる。
【0035】
「非病原性細菌」は、宿主において病気または有害な反応を引き起こすことのできない細菌を指す。一部の実施形態では、非病原性細菌は共生細菌である。非病原性細菌の例としては、限定されるわけではないが、バチルス、バクテロイデス、ビフィドバクテリウム、ブレビバクテリウム、クロストリジウム、エンテロコッカス、大腸菌、ラクトバチルス、ラクトコッカス、サッカロミケス、およびスタフィロコッカス、例えば、バチルス・コアグランス、バチルス・サブチリス、バクテロイデス・フラジリス、バクテロイデス・サブチリス、バクテロイデス・シータイオタオミクロン、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・インファンティス、ビフィドバクテリウム・ラクティス、ビフィドバクテリウム・ロングム、クロストリジウム・ブチリカム、エンテロコッカス・フェシウム、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・ブルガリクス、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・ジョンソニ、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・プランタルム、ラクトバチルス・ロイテリ、ラクトバチルス・ラムノサス、ラクトコッカス・ラクティス、およびサッカロマイセス・ブラウディが挙げられる(Sonnenborn et al.,2009;Dinleyici et al.,2014;米国特許第6835376号明細書;同第6203797号明細書;同第5589168号明細書;同第7731976号明細書)。天然の病原性細菌を遺伝子操作して病原性を低減または消失させることができる。
【0036】
「プロバイオティクス」は、生きた非病原性の微生物、例えば細菌を指すために用い、これは、適切な量の微生物を含む宿主生物に健康上の利益を与えることが可能である。一部の実施形態では、宿主生物は哺乳動物である。一部の実施形態では、宿主生物はヒトである。非病原性細菌の一部の種、株、および/またはサブタイプは、現在、プロバイオティクス細菌として認められている。プロバイオティクス細菌の例としては、限定されるわけではないが、ビフィドバクテリア、大腸菌、ラクトバチルス、およびサッカロミケス、例えば、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、エンテロコッカス・フェシウム、大腸菌株Nissle、ラクトバチルス アシドフィルス、ラクトバチルス・ブルガリクス、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・プランタルム、およびサッカロマイセス・ブラウディが挙げられる(Dinleyici et al.,2014;米国特許第5589168号明細書;同第6203797号明細書;同第6835376号明細書)。プロバイオティクスは細菌のバリアントまたは突然変異株であり得る(Arthur et al.,2012;Cuevas−Ramos et al.,2010;Olier et al.,2012;Nougayrede et al.,2006)。非病原性細菌を遺伝子操作して、所望の生物学的特性、例えば生存性を高めるまたは向上させることができる。非病原性細菌を遺伝子操作して、プロバイオティクス特性を与えることができる。プロバイオティクス細菌を遺伝子操作して、プロバイオティクス特性を高めるまたは向上させることができる。
【0037】
本明細書で用いる場合、「安定的に維持された」または「安定した」細菌は、非天然遺伝物質、例えば、フィードバック耐性argA遺伝子、突然変異アルギニンリプレッサ、および/または宿主ゲノムに組み込まれたもしくは自己複製染色体外プラスミドで増殖した他の突然変異アルギニンレギュロンを担持し、その結果、該非天然遺伝物質が保持され、発現し、増殖する、細菌宿主細胞を指すために用いる。安定した細菌は、培地などのin vitroで、および/もしくは、消化管などのin vivoで、生存ならびに/または増殖することが可能である。例えば、安定した細菌は、argAfbr遺伝子を含む遺伝子操作した細菌であり得、ここにおいてargAfbr遺伝子を担持するプラスミドまたは染色体は細菌において安定的に維持され、その結果、argAfbrは細菌において発現することが可能であり、細菌は、in vitroおよび/またはin vivoで生存および/または増殖することが可能である。
【0038】
本明細書で用いる場合、用語「処置する」およびその同根語は、病気もしくは疾患、またはその認識できる症状の少なくとも1つを改善することを指す。別の実施形態では、「処置する」は、患者により認識可能であるとは限らない、測定可能な身体的パラメータの少なくとも1つを改善することを指す。別の実施形態では、「処置する」は、身体的(例えば、認識可能な症状の安定化)、生理学的(例えば、身体パラメータの安定化)、またはその両方の何れかで、病気または疾患の進行を抑えることを指す。別の実施形態では、「処置する」は、病気または疾患の進行を遅らせること、または反転させることを指す。本明細書で用いる場合、「予防する」またはその同根語は、発症を遅らせること、または所与の病気もしくは疾患にかかるリスクを低減させることを指す。
【0039】
処置が必要な人には、すでに特定の医学疾患を有する人、および疾患を持つリスクのある人または最終的に疾患にかかり得る人が含まれ得る。処置の必要性は、例えば、疾患の発症に関連する1つまたは複数のリスク因子の存在、疾患の存在もしくは進行、または、疾患のある対象の処置を受けるという推定意志により評価される。初期の高アンモニア血症はUCDにより引き起こされるが、これは常染色体劣性またはX連鎖性先天性代謝異常であり、これらの治療法は知られていない。高アンモニア血症はまた、尿素サイクルの他の妨害、例えば有毒代謝産物、感染症、および/または基質欠損症に続発し得る。高アンモニア血症の処置には、過剰なアンモニアおよび/または関連する症状を低減または消失させることを包含し得、基となる高アンモニア血症関連疾患の消失を必ずしも包含するわけではない。
【0040】
本明細書で用いる場合、「医薬組成物」は、生理学的に適切な担体および/または賦形剤といった他の構成要素を有する、本発明の遺伝子操作した細菌の製剤を指す。
【0041】
句「生理学的に許容される担体」および「薬学的に許容される担体」は区別なく用いることができるが、これらは、生物にひどい炎症を起こさず、投与される細菌化合物の生物学的活性および特性を無効にしない担体または希釈剤を指す。アジュバントはこれらの句に含まれる。
【0042】
用語「賦形剤」は、有効成分の投与をさらに容易にするために医薬組成物に加えられる不活性物質を指す。例としては、限定されるわけではないが、重炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の糖および各種澱粉、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油、ポリエチレングリコール、ならびに例えばポリソルベート20を含む界面活性剤が挙げられる。
【0043】
用語「治療的有効用量」および「治療的有効量」は、高アンモニア血症などの病態の予防、症状の発症の先延ばし、または症状の改善をもたらす化合物の量を指すために用いる。治療的有効量は、例えば、アンモニア濃度の上昇に関連する疾患の1つまたは複数の症状を処置し、予防し、重症度を軽減させ、発症を遅らせ、および/または発生のリスクを低減させるために十分であり得る。治療的有効量および治療的に有効な投与頻度は、当技術分野で既知の方法または以下で述べる方法により決定することが可能である。
【0044】
冠詞「一つ(a)」および「一つ(an)」は、本明細書で用いる場合、明確にそれとは反対の指示がない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
【0045】
句「および/または」は、リストの要素間で用いる場合、(1)単一の列挙された要素のみが存在すること、または(2)リスト中の2つ以上の要素が存在することの何れかを意味することを意図する。例えば、「A、B、および/またはC」は、選択が、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AおよびB、AおよびC、BおよびC、またはA、B、およびCであり得ることを示す。句「および/または」は、リスト中の要素の「少なくとも1つ」または「1つまたは複数」と、区別なく用いることができる。
【0046】
細菌
本発明の遺伝子操作した細菌は、過剰なアンモニアを減少させ、アンモニアおよび/または窒素を代替の副生成物に変換することが可能である。一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌は、非病原性細菌である。一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌は共生細菌である。一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌はプロビオティック細菌である。一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌は、病原性を低減または消失するように改変または突然変異させた天然の病原菌である。例示的な細菌としては、限定されるわけではないが、バチルス、バクテロイデス、ビフィドバクテリウム、ブレビバクテリウム、クロストリジウム、エンテロコッカス、大腸菌、ラクトバチルス、ラクトコッカス、サッカロミケス、およびスタフィロコッカス、例えば、バチルス・コアグランス、バチルス・サブチリス、バクテロイデス・フラジリス、バクテロイデス・サブチリス、バクテロイデス・シータイオタオミクロン、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・インファンティス、ビフィドバクテリウム・ラクティス、ビフィドバクテリウム・ロングム、クロストリジウム・ブチリカム、エンテロコッカス・フェシウム、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・ブルガリクス、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・ジョンソニ、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・プランタルム、ラクトバチルス・ロイテリ、ラクトバチルス・ラムノサス、ラクトコッカス・ラクティス、およびサッカロマイセス・ブラウディが挙げられる。ある実施形態では、遺伝子操作した細菌は、バクテロイデス・フラジリス、バクテロイデス・シータイオタオミクロン、バクテロイデス・サブチリス、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・インファンティス、ビフィドバクテリウム・ラクティス、クロストリジウム・ブチリカム、大腸菌Nissle、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・プランタルム、ラクトバチルス・ロイテリ、およびラクトコッカス・ラクティスからなる群から選択される。
【0047】
一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌は、大腸菌株Nissle1917(大腸菌Nissle)、「最も特徴付けられたプロバイオティクスの1つに進化した」腸内細菌科のグラム陰性細菌である(Ukena et al.,2007)。該株は、その完全なる無害性を特徴とし(Schultz,2008)、GRAS(generally recognized as safe)ステータスを有する(Reister et al.,2014、強調筆者)。ゲノムシーケンシングにより、大腸菌Nissleは目立った病原性因子(例えば、大腸菌α溶血素、P−線毛アドヘシン)を持たないことが確認された(Schultz,2008)。加えて大腸菌Nissleは、病原性付加因子を担持せず、エンテロトキシンも細胞毒も生成せず、浸蝕性でなく、そして尿路病原性ではないことが示されている(Sonnenborn et al.,2009)。1917年には、大腸菌NissleはMutaflorと呼ばれる医薬カプセルに、治療用にパッケージ化された。大腸菌Nissleは以来、ヒトの潰瘍性大腸炎をin vivoで処置するため(Rembacken et al.,1999)、ヒトの炎症性腸疾患、クローン病、および回腸嚢炎をin vivoで処置するため(Schultz,2008)、ならびに腸内浸潤性サルモネラ、レジオネラ、エルシニア、および赤痢菌をin vitroで阻害するため(Altenhoefer et al.,2004)に用いられてきた。大腸菌Nissleの治療効果および安全性が説得力をもって証明されていることは一般に認められている(Ukena et al.,2007)。
【0048】
当業者は、本明細書で開示する遺伝子の改変は、他の種、株、およびサブタイプの細菌向けに修正され、それらに適合させることができることを理解しよう。例えば、アルギニン介在性調節は、非常に異なる細菌、つまり、大腸菌、サルモネラ・エンテリカ血清型チフィムリウム、サーモトガ(Thermotoga)、およびモリテラ・プロファンダ(Moritella profunda)などのグラム陰性細菌、ならびに、B.サブチリス、ジオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)、およびストレプトマイセス・クラブリガルス(Streptomyces clavuligerus)などのグラム陽性細菌、ならびに他の細菌において、著しく良好に保全されることが知られている(Nicoloff et al.,2004)。さらに、アルギニンリプレッサは、細菌ゲノムに広く保全されており、その認識シグナル(ARGボックス)、弱いパリンドロームもゲノム間で保全される(Makarova et al.,2001)。
【0049】
非改変大腸菌Nissleおよび本発明の遺伝子操作した細菌は、消化管または血清において、例えば防御因子により破壊され得る(Sonnenborn et al.,2009)。in vivoでの細菌の滞留時間は、実施例19に記載する方法を用いて決定することが可能である。一部の実施形態では、滞留時間をヒト対象について計算する。野生型ArgRおよび野生型アルギニンレギュロンを含むストレプトマイシン耐性大腸菌Nissleを用いた非限定的例を提供する(図27を参照)。一部の実施形態では、in vivoでの滞留時間を、本発明の遺伝子操作した細菌について計算する。
【0050】
過剰なアンモニアの減少
アルギニン生合成経路
大腸菌(E.coli)などの細菌において、アルギニン生合成経路は、酵素N−アセチルグルタミン酸シンセターゼ、N−アセチルグルタミン酸キナーゼ、N−アセチルグルタメートリン酸レダクターゼ、アセチルオルニチンアミノトランスフェラーゼ、N−アセチルオルニチナーゼ、カルバモイルリン酸シンターゼ、オルニチントランスカルバミラーゼ、アルギニノスクシネートシンターゼ、およびアルギニノスクシネートリアーゼを要する8ステップの酵素プロセスにおいて、グルタミン酸をアルギニンに変換することができる(Cunin et al.,1986)。最初の5つのステップは、オルニチン前駆体を生成するためにN−アセチル化を伴う。6番目のステップでは、オルニチントランスカルバミラーゼ(オルニチンカルバモイルトランスフェラーゼとしても知られる)がシトルリンの形成を触媒する。最後の2ステップは、シトルリンからアルギニンを生成するためにカルバモイルリン酸の利用を伴う。
【0051】
バチルス・ステアロサーモフィルスおよび淋菌などの一部の細菌において、アルギニン生合成の1番目と5番目のステップは、二機能性酵素オルニチンアセチルトランスフェラーゼにより触媒され得る。この二機能性は、オルニチンアセチルトランスフェラーゼ(argJ)が、大腸菌において、N−アセチルグルタミン酸シンセターゼ(argA)とN−アセチルオルニチナーゼ(argE)の両方の栄養要求性遺伝子突然変異を補完することが示された際に、最初に特定された(Mountain et al.,1984;Crabeel et al.,1997)。
【0052】
argAはN−アセチルグルタミン酸シンセターゼをコードし、argBはN−アセチルグルタミン酸キナーゼをコードし、argCはN−アセチルグルタミルリン酸レダクターゼをコードし、argDはアセチルオルニチンアミノトランスフェラーゼをコードし、argEはN−アセチルオルニチナーゼをコードし、argFはオルニチントランスカルバミラーゼをコードし、argIもオルニチントランスカルバミラーゼをコードし、argGはアルギニノスクシネートシンターゼをコードし、argHはアルギニノスクシネートリアーゼをコードし、argJはオルニチンアセチルトランスフェラーゼをコードする。carAは、グルタミナーゼ活性を有するカルバモイルリン酸シンターゼの小Aサブユニットをコードし、carBは、アンモニアからのカルバモイルリン酸合成を触媒するカルバモイルリン酸シンターゼの大Bサブユニットをコードする。これらのアルギニン生合成遺伝子(つまり、argA、argB、argC、argD、argE、argF、argG、argH、argI、argJ、carA、およびcarB)の1つまたは複数の異なる組み合わせは、天然でまたは合成的に1つまたは複数のオペロンに組織化され得、このような組織化は細菌の種、株、およびサブタイプごとに異なり得る(例えばTable 2を参照)。各オペロンの調節領域は少なくとも1つのARGボックスを含有し、調節領域ごとのARGボックスの数は、オペロンおよび細菌ごとに異なり得る。
【0053】
これらの酵素をコードする遺伝子は全て、各遺伝子の調節領域に結合し転写を阻害する複合体を形成するArgRとの相互作用を介し、アルギニンにより阻害を受ける。N−アセチルグルタミン酸シンセターゼも、アルギニン単独により、タンパク質レベルでアロステリックフィードバック阻害を受ける(Tuchman et al.,1997;Caldara et al.,2006;Caldara et al.,2008;Caldovic et al.,2010)。
【0054】
細菌においてアルギニン生合成を調節する遺伝子は、染色体全体に分散し、MaasおよびClark(1964)が「レギュロン」と名付けた、単一のリプレッサにより制御される多数のオペロンに組織化される。各オペロンは、プロモータと一部重複し、リプレッサタンパク質が結合する、ARGボックスと呼ばれる、18ヌクレオチド不完全回帰性配列を少なくとも1つ含む調節領域により調節される(Tian et al.,1992;Tian et al.,1994)。argR遺伝子は、リプレッサタンパク質をコードし、これは1つまたは複数のARGボックスに結合する(Lim et al.,1987)。アルギニンは、アルギニンリプレッサを活性化するコリプレッサとして機能する。各オペロンを調節するARGボックスは非同一の場合があり、コンセンサスARGボックス配列は、 nTGAAT ATTCAn である(Maas,1994)。加えて、argRの調節領域は、2つのプロモータを含有し、このうち一方が、2つのARGボックスと一部重複し、自動調節される。
【0055】
一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌は突然変異アルギニンレギュロンを含み、同一条件下の同じサブタイプの非改変細菌より多くのアルギニンおよび/またはシトルリンなどの中間副生成物を生成する。突然変異アルギニンレギュロンは1つまたは複数の核酸突然変異を含み、これは、アルギニン生合成経路におけるグルタミン酸からアルギニンへの変換を担う酵素をコードする1つまたは複数のオペロンの―ARGボックスへのArgR結合および/またはN−アセチルグルタミン酸シンセターゼへのアルギニン結合を介した―アルギニン介在性阻害を低減または防止することにより、アルギニンおよび/または中間副生成物の生合成を強化する。
【0056】
代替の実施形態では、細菌を、別の代謝経路、例えば、ヒスチジン生合成経路、メチオニン生合成経路、リシン生合成経路、アスパラギン生合成経路、グルタミン生合成経路、およびトリプトファン生合成経路を介して過剰なアンモニアを消費するように、遺伝子操作する。
【0057】
ヒスチジン生合成経路
ヒスチジン生合成は、例えば、大腸菌の単一オペロン内に位置する8つの遺伝子により実行される。全部で10個の酵素反応に対し、オペロンの8つの遺伝子のうち3つ(hisD、hisB、およびhisI)は二機能性酵素をコードし、2つ(hisHおよびhisF)は、単一ステップを触媒する1つの酵素を共に形成するポリペプチド鎖をコードする(Alifano et al.,1996)。hisG遺伝子の生成物、ATPホスホリボシルトランスフェラーゼは、ヒスチジンによりタンパク質レベルで阻害される。一部の実施形態では、本発明の遺伝子操作した細菌は、フィードバック耐性hisGを含む。当技術分野で既知の技法を用いて、細菌を、突然変異させるおよび/またはフィードバック耐性hisG突然変異体についてスクリーニングすることができる。フィードバック耐性hisGを含むように操作した細菌のヒスチジン生成レベルは上がり、そのためアンモニア消費量は増加し、高アンモニア血症を軽減するだろう。あるいは、ヒスチジン生合成に必要な1つまたは複数の遺伝子を、FNR誘導性プロモータなどの誘導性プロモータの制御下に置き、律速酵素の生成の強化を可能にするだろう。ヒスチジン生合成経路に対する任意の他の適切な改変を利用して、アンモニア消費量を増加させることができる。
【0058】
メチオニン生合成経路
細菌性メチオニンレギュロンは、ホモセリンからの3ステップメチオニン合成(つまり、アシル化、スルフリル化、およびメチル化)を制御する。metJ遺伝子は、メチオニンまたはその誘導体と組み合わさった場合に転写レベルでメチオニンレギュロン内の遺伝子の阻害を引き起こす、調節タンパク質をコードする(Saint−Girons et al.,1984;Shoeman et al.,1985)。一部の実施形態では、本発明の遺伝子操作した細菌は、metJが削除されているか、または、破壊されたもしくは突然変異したmetJを含む。metJを削除するか、破壊するか、または突然変異させるように操作した細菌のメチオニン生成レベルは上がり、そのためアンモニア消費量は増加し、高アンモニア血症を軽減させるだろう。メチオニン生合成経路に対する任意の他の改変を利用して、アンモニア消費量を増加させることができる。
【0059】
リシン生合成経路
微生物は、2つの経路のうち一方によりリシンを合成する。ジアミノピメリン酸(DAP)経路を利用してアスパラギン酸およびピルビン酸からリシンを合成し(Dogovski et al.,2012)、アミノアジピン酸経路を利用してα−ケトグルタル酸およびアセチル補酵素Aからリシンを合成する。ジヒドロジピコリン酸シンターゼ(DHDPS)酵素はDAP経路の第1ステップを触媒し、リシンによるフィードバック阻害を受ける(Liu et al.,2010;Reboul et al.,2012)。一部の実施形態では、本発明の遺伝子操作した細菌は、フィードバック耐性DHDPSを含む。フィードバック耐性DHDPSを含むように操作した細菌のヒスチジン生成レベルは上がり、そのためアンモニア消費量は増加し、高アンモニア血症を軽減するだろう。あるいは、リシン生成は、リシン生合成に必要な1つまたは複数の遺伝子をFNR誘導性プロモータなどの誘導性プロモータの制御下に置くことにより最適化することが可能であろう。リシン生合成経路に対する任意の他の適切な改変を利用して、アンモニア消費量を増加させることができる。
【0060】
アスパラギン生合成経路
アスパラギンは、オキサロ酢酸トランスアミナーゼ酵素およびアスパラギンシンセターゼ酵素それぞれを介して、オキサロ酢酸およびアスパラギン酸から直接合成される。この経路の第2ステップでは、L−グルタミンまたはアンモニアの何れかがアミノ基供与体として機能する。一部の実施形態では、本発明の遺伝子操作した細菌は、同一条件下の同じサブタイプの非改変細菌と比較し、アスパラギンを過剰に生成することにより、過剰なアンモニアを消費し、高アンモニア血症を軽減する。あるいは、アスパラギン合成は、これらの遺伝子の一方または両方をFNR誘導性プロモータなどの誘導性プロモータの制御下に置くことにより最適化することができる。アスパラギン生合成経路に対する任意の他の適切な改変を利用して、アンモニア消費量を増加させることができる。
【0061】
グルタミン生合成経路
アンモニアおよびオキソグルタル酸からのグルタミンおよびグルタミン酸の合成は、3つの酵素により厳重に調節される。グルタミン酸脱水素酵素が、オキソグルタル酸の還元的アミノ化反応を触媒して、単一ステップでグルタミン酸を産する。グルタミンシンセターゼは、グルタミン酸およびアンモニアのATP依存性縮合を触媒してグルタミンを形成する(Lodeiro et al.,2008)。グルタミンシンセターゼはまた、サイクル反応においてグルタミン−オキソグルタル酸アミノトランスフェラーゼ(グルタミン酸シンターゼとしても知られる)と共に作用して、グルタミンおよびオキソグルタル酸からグルタミン酸を生成する。一部の実施形態では、本発明の遺伝子操作した細菌は、同一条件下の同じサブタイプの非改変細菌と比較し、高いレベルでグルタミンシンセターゼを発現する。グルタミンシンセターゼの発現が増大するように操作した細菌のグルタミン生成レベルは上がり、そのためアンモニア消費量は増加し、高アンモニア血症を軽減するだろう。あるいは、グルタミン酸脱水素酵素および/またはグルタミン−オキソグルタル酸アミノトランスフェラーゼの発現は、アンモニア消費を促進するように改変することができるだろう。グルタミンシンセターゼの生成は窒素により転写レベルで調節されることから(Feng et al.,1992;van Heeswijk et al.,2013)、グルタミンシンセターゼ遺伝子をFNR誘導性プロモータなどの異なる誘導性プロモータの制御下に置くことを利用して、グルタミン生成を改善することもできる。グルタミンおよびグルタミン酸の生合成経路に対する任意の他の適切な改変を利用して、アンモニア消費量を増加させることができる。
【0062】
トリプトファン生合成経路
大部分の細菌において、コリスマート前駆体からのトリプトファンの合成に必要な遺伝子は、単一転写ユニット、trpオペロンとして組織化される。trpオペロンは、高レベルのトリプトファンが存在する場合は、トリプトファンリプレッサ(TrpR)により阻害される単一プロモータの制御下にある。trpオペロンの転写はまた、高レベルの荷電トリプトファンtRNAの存在下で終了し得る。一部の実施形態では、本発明の遺伝子操作した細菌は、trpR遺伝子が削除されているか、または、破壊されたもしくは突然変異したtrpR遺伝子を含む。trpR遺伝子の欠失、破壊、または突然変異、およびその結果として起きるTrpR機能の不活化は、高いレベルのトリプトファン生成とアンモニア消費の両方をもたらすだろう。あるいは、トリプトファン生合成に必要な1つまたは複数の酵素を、FNR誘導性プロモータなどの誘導性プロモータの制御下に置くことが可能であろう。トリプトファン生合成経路に対する任意の他の適切な改変を利用して、アンモニア消費量を増加させることができる。
【0063】
突然変異アルギニンレギュロンを含む遺伝子操作した細菌
一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌はアルギニン生合成経路を含み、過剰なアンモニアを減少させることが可能である。より具体的な態様では、遺伝子操作した細菌は突然変異アルギニンレギュロンを含み、ここではアルギニン生合成酵素をコードした1つまたは複数のオペロンの阻害が解除されて、同一条件下の同じサブタイプの非改変細菌よりも多くのアルギニンまたはシトルリンなどの中間副生成物を生成する。一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌はアルギニンを過剰に生成する。一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌はシトルリンを過剰に生成するが、これは、シトルリンが現在、特定の尿素サイクル異常症の治療に用いられていることから(National Urea cycle disorders Foundation)、さらに有益であり得る。一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌はアルギニン生合成経路において、本明細書に記載する任意の中間物などの代替の中間副生成物を過剰生成する。一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌は、同一条件下の同じ細菌サブタイプの非改変細菌よりも、多くのアルギニン、シトルリン、および/または他の中間副生成物を生成することにより、過剰なアンモニアを消費する。アルギニンおよび/または中間副生成物の生合成の強化を利用して、尿素サイクル異常症および肝性脳症を含む高アンモニア血症と関連する症状を処置するために、体内の過剰な窒素を非毒性分子に組み込むことができる。
【0064】
当業者は、オペロン内のアルギニン生合成遺伝子の構成は、大腸菌K12の二極性argECBH、バチリス・サブチリスのargCAEBD−carAB−argF、およびラクトバチルス・プランタルムの二極性carAB−argCJBDFなど、細菌の種、株、およびサブタイプにより異なることを理解しよう。異なる細菌に由来するオペロン構成の非限定的例をTable 2に示す(ある場合では、遺伝子は、大腸菌の既知の配列に対する配列相同性により推定および/または特定され;ある場合では、アルギニンレギュロンの遺伝子全てが既知である、および/または以下で示されているわけではない)。ある例では、アルギニン生合成酵素は、細菌の種、株、およびサブタイプにより異なる。
【0065】
【表2】
【0066】
各オペロンは、前記オペロンにおいてアルギニン生合成遺伝子の阻害と発現を制御する、少なくとも1つのプロモータおよび少なくとも1つのARGボックスを含む調節領域により調節される。
【0067】
一部の実施形態では、本発明の遺伝子操作した細菌は、1つまたは複数の核酸突然変異を含むアルギニンレギュロンを含み、該核酸突然変異は、アルギニン生合成経路においてグルタミン酸からアルギニンおよび/または中間副生成物への変換を担う酵素をコードする1つまたは複数のオペロンのアルギニン介在性阻害を、低減または消失させる。アルギニン介在性阻害の低減または消失は、(例えば、アルギニンリプレッサを突然変異させるか、もしくは削除することで、または、アルギニン生合成酵素をコードするオペロンそれぞれの少なくとも1つのARGを突然変異させることで)ArgRリプレッサ結合を低減または消失させることにより、および/または、(例えば、N−アセチルグルタミン酸シンセターゼを突然変異させて、アルギニンフィードバック耐性N−アセチルグルタミン酸シンターゼ突然変異体、例えばargAfbrを生成することで)N−アセチルグルタミン酸シンセターゼに対するアルギニン結合を低減または消失させることにより、達成することができる。
【0068】
ARGボックス
一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌は、アルギニン生合成酵素N−アセチルグルタミン酸キナーゼ、N−アセチルグルタミルリン酸レダクターゼ、アセチルオルニチンアミノトランスフェラーゼ、N−アセチルオルニチナーゼ、オルニチントランスカルバミラーゼ、アルギニノスクシネートシンターゼ、アルギニノスクシネートリアーゼ、およびカルバモイルリン酸シンターゼをコードする1つまたは複数のオペロンの少なくとも1つのARGボックスにおいて1つまたは複数の核酸突然変異を含む、突然変異アルギニンレギュロンを含むことにより、レギュロンの阻害を解除し、アルギニンおよび/または中間副生成物の生合成を強化する。一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌は、1つまたは複数の核酸突然変異を含む突然変異アルギニンリプレッサを含み、その結果、アルギニンリプレッサの機能は低下もしくは不活性となるか、または、遺伝子操作した細菌はアルギニンリプレッサを持たず(例えば、アルギニンリプレッサ遺伝子が削除されている)、レギュロンの阻害解除ならびにアルギニンおよび/または中間副生成物の生合成の強化がもたらされる。これらの実施形態の何れかにおいて、遺伝子操作した細菌はさらに、アルギニンフィードバック耐性N−アセチルグルタミン酸シンターゼ突然変異体、例えば、argAfbrを含み得る。したがって、一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌は、アルギニン生合成酵素をコードする1つまたは複数のオペロンの少なくとも1つのARGボックスにおいて1つまたは複数の核酸突然変異を含む、突然変異アルギニンレギュロンと、アルギニンフィードバック耐性N−アセチルグルタミン酸シンターゼ突然変異体、例えば、argAfbrとを含む。一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌は、突然変異アルギニンリプレッサを含むか、またはアルギニンリプレッサは削除され、そして、アルギニンフィードバック耐性N−アセチルグルタミン酸シンターゼ突然変異体、例えば、argAfbrを含む。一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌は、アルギニンフィードバック耐性N−アセチルグルタミン酸シンターゼ突然変異体、例えば、argAfbr、アルギニン生合成酵素をコードするオペロンそれぞれの少なくとも1つのARGボックスにおいて1つまたは複数の核酸突然変異を含む、突然変異アルギニンレギュロン、および/または、突然変異アルギニンリプレッサを含むか、もしくは、アルギニンリプレッサは削除されている。
【0069】
一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌は、アルギニンフィードバック耐性N−アセチルグルタミン酸シンターゼをコードし、さらに、N−アセチルグルタミン酸キナーゼ、N−アセチルグルタミルリン酸レダクターゼ、アセチルオルニチンアミノトランスフェラーゼ、N−アセチルオルニチナーゼ、オルニチントランスカルバミラーゼ、アルギニノスクシネートシンターゼ、アルギニノスクシネートリアーゼ、カルバモイルリン酸シンターゼ、野生型N−アセチルグルタミン酸シンセターゼをコードする1つまたは複数のオペロンの各ARGボックスにおいて1つまたは複数の核酸突然変異を含む、突然変異アルギニンレギュロンを含み、その結果、ArgR結合は低減または消失し、それによりレギュロンの阻害を解除し、アルギニンおよび/または中間副生成物の生合成を強化する。
【0070】
一部の実施形態では、アルギニノスクシネートシンターゼ(argG)をコードするオペロンのARGボックスがArgRに結合する機能を維持し、それによりシトルリン生合成を駆動させる。例えば、アルギニノスクシネートシンターゼ(argG)をコードするオペロンの調節領域が構成的で、それによりアルギニン生合成を駆動させることができる。代替の実施形態において、1つまたは複数の代替オペロンの調節領域は構成的であり得る。しかしながらある細菌では、多数の酵素をコードする遺伝子は二極性オペロンに組織化されるか、または共通の調節領域の制御下にあり得、これらの場合、構成的活性型の調節領域を操作するためには、調節領域をデコンボリューションする必要がある場合がある。例えば、大腸菌K12およびNissleでは、argEおよびargCBHは2つの二極性オペロンargECBHに組織化され、構成型のargEおよび/またはargCBHを生成するためにそれらの調節領域をデコンボリューションする場合がある。
【0071】
一部の実施形態では、アルギニン生合成遺伝子を含む1つまたは複数のオペロンのARGボックスを全て突然変異させて、ArgR結合を低減または消失させる。一部の実施形態では、アルギニン生合成酵素をコードする1つまたは複数のオペロンのARGボックスを全て突然変異させて、ArgR結合を低減または消失させる。一部の実施形態では、アルギニン生合成遺伝子を含む各オペロンのARGボックスを全て突然変異させて、ArgR結合を低減または消失させる。一部の実施形態では、アルギニン生合成酵素をコードする各オペロンのARGボックスを全て突然変異させて、ArgR結合を低減または消失させる。
【0072】
一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌は、フィードバック耐性N−アセチルグルタミン酸シンターゼおよびArgR阻害可能調節領域により駆動されるアルギニノスクシネートシンターゼをコードし、さらに、N−アセチルグルタミン酸キナーゼ、N−アセチルグルタミルリン酸レダクターゼ、アセチルオルニチンアミノトランスフェラーゼ、N−アセチルオルニチナーゼ、オルニチントランスカルバミラーゼ、アルギニノスクシネートシンターゼ、アルギニノスクシネートリアーゼ、カルバモイルリン酸シンターゼ、およびオプションとして、野生型N−アセチルグルタミン酸シンセターゼをコードするオペロンそれぞれの各ARGボックスにおいて1つまたは複数の核酸突然変異を含む、突然変異アルギニンレギュロンを含み、その結果、ArgR結合は低減または消失し、それによりレギュロンの阻害を解除し、シトルリン生合成を強化する。一部の実施形態では、シトルリンを生成することが可能な遺伝子操作した細菌は、シトルリンがさらに、ある特定の尿素サイクル異常症の処置に対し治療的に有効なサプリメントとして機能することから、特に有利である(National Urea cycle disorders Foundation)。
【0073】
一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌は、アルギニンフィードバック耐性N−アセチルグルタミン酸シンターゼおよび構成的プロモータにより駆動されるアルギニノスクシネートシンターゼをコードし、さらに、N−アセチルグルタミン酸キナーゼ、N−アセチルグルタミルリン酸レダクターゼ、アセチルオルニチンアミノトランスフェラーゼ、N−アセチルオルニチナーゼ、オルニチントランスカルバミラーゼ、アルギニノスクシネートリアーゼ、カルバモイルリン酸シンターゼ、およびオプションとして、野生型N−アセチルグルタミン酸シンセターゼをコードするオペロンそれぞれの各ARGボックスにおいて1つまたは複数の核酸突然変異を含む、突然変異アルギニンレギュロンを含み、その結果、ArgR結合は低減または消失し、それによりレギュロンの阻害を解除し、アルギニン生合成を強化する。
【0074】
一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌は、突然変異アルギニンレギュロンおよびフィードバック耐性ArgAを含み、アルギニンフィードバック耐性ArgAが発現する場合、同一条件下の同じサブタイプの非改変細菌よりも多くのアルギニンおよび/または中間副生成物を生成することが可能である。
【0075】
アルギニンリプレッサ結合部位(ARGボックス)
一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌は、加えて、アルギニン生合成酵素N−アセチルグルタミン酸キナーゼ、N−アセチルグルタミルリン酸レダクターゼ、アセチルオルニチンアミノトランスフェラーゼ、N−アセチルオルニチナーゼ、オルニチントランスカルバミラーゼ、アルギニノスクシネートシンターゼ、アルギニノスクシネートリアーゼ、およびカルバモイルリン酸シンターゼをコードする1つまたは複数のオペロンの少なくとも1つのARGボックスにおいて1つまたは複数の核酸突然変異を含む、突然変異アルギニンレギュロンを含み、その結果、アルギニンレギュロンの阻害を解除し、アルギニンおよび/または中間副生成物、例えばシトルリンの生合成を強化する。
【0076】
一部の実施形態では、突然変異アルギニンレギュロンは、オルニチンアセチルトランスフェラーゼをコードするオペロンを含み、前記オペロンの少なくとも1つのARGボックスにおいて1つまたは複数の核酸突然変異を含む。1つまたは複数の核酸突然変異は回帰性ARGボックス配列の破壊を引き起こし、その結果、同一条件下の同じサブタイプの細菌の非改変ARGボックスおよび調節領域に対するArgR結合と比較し、オペロンのARGボックスおよび調節領域に対するArgR結合は低減または消失する。一部の実施形態では、ArgR結合時のDNAメチル化およびヒドロキシルラジカルアタックから保護される核酸は、ArgR結合を妨げる突然変異の主要標的である。一部の実施形態では、突然変異アルギニンレギュロンは、上記のアルギニン生合成酵素をコードするオペロンそれぞれの1つまたは複数のARGボックスにおいて、少なくとも3つの核酸突然変異を含む。ARGボックスはプロモータと一部重複し、突然変異アルギニンレギュロンにおいては、突然変異プロモータ領域のG/C:A/T比率は、野生型プロモータ領域のG/C:A/T比率とわずか10%異なるだけである(図6)。プロモータは、非突然変異プロモータに対し十分に高い相同性を保持し、その結果、RNAポリメラーゼが十分な親和性をもって結合して転写を促進する。
【0077】
大腸菌Nissleの各アルギニン生合成オペロンについてARGボックスを含む野生型遺伝子配列とその突然変異体を、図6に示す。例示的な野生型配列では、ARGボックスをイタリック体で示し、各遺伝子の開始コドンは囲む。RNAポリメラーゼ結合部位には下線を引く(Cunin,1983;Maas,1994)。一部の実施形態では、下線を引いた配列は変更しない。ArgR結合時にDNAメチル化から保護される塩基は強調表示し、ArgR結合時にヒドロキシルラジカルアタックから保護される塩基は太字にする(Charlier et al.,1992)。強調表示した太字の塩基は、ArgR結合を妨げる突然変異の主要標的である。
【0078】
一部の実施形態では、2つ以上のARGボックスが単一オペロンに存在し得る。これらの実施形態の一態様では、オペロンの少なくとも1つのARGボックスを突然変異させて、オペロンの調節領域に対する、必須の低減ArgR結合を生成する。これらの実施形態の代替の態様では、オペロンの各ARGボックスを突然変異させて、オペロンの調節領域に対する、必須の低減ArgR結合を生成する。例えば、大腸菌NissleのcarABオペロンは2つのAGボックスを含み、ARGボックス配列の一方または両方を突然変異させることができる。大腸菌NissleのargGオペロンは3つのARGボックスを含み、1つ、2つ、または3つのARGボックス配列を突然変異させるか、破壊するか、または削除することができる。一部の実施形態では、3つのARGボックス配列の全てを突然変異させるか、破壊するか、または削除し、構成的プロモータ、例えばBBa_J23100をargGオペロンの調節領域に挿入する。当業者は、調節領域ごとのARGボックスの数が細菌ごとに異なり得ることと、ARGボックスのヌクレオチド配列が各オペロンで異なり得ることを理解しよう。
【0079】
一部の実施形態では、オペロンの突然変異ARGボックスまたは調節領域に対するArgR結合の親和性は、同一条件下の同じサブタイプの細菌の非改変のARGボックスおよび調節領域に対するArgR結合の親和性よりも、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%低い。一部の実施形態では、突然変異ARGボックスおよび調節領域に対する低減ArgR結合は、関連オペロンの遺伝子のmRNA発現を、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約50倍、少なくとも約100倍、少なくとも約200倍、少なくとも約300倍、少なくとも約400倍、少なくとも約500倍、少なくとも約600倍、少なくとも約700倍、少なくとも約800倍、少なくとも約900倍、少なくとも約1000倍、または少なくとも約1500倍に増加させる。
【0080】
一部の実施形態では、定量PCR(qPCR)を用いて、アルギニン生合成遺伝子のmRNA発現レベルを増幅し、検出し、および/または定量化する。アルギニン生合成遺伝子、例えばargA、argB、argC、argD、argE、argF、argG、argH、argI、argJ、carA、およびcarBに特異的なプライマーを設計し、それを用いて、当技術分野で既知の方法に従いサンプル中のmRNAを検出することができる(Fraga et al.,2008)。一部の実施形態では、フルオロフォアをarg mRNAを含有し得るサンプル反応混合物に加え、サーマルサイクラ―を用いて、特異的な波長の光をサンプル反応混合物に当て、その結果生じるフルオロフォアによる発光を検出する。反応混合物を加熱し、所定の期間にわたり所定の温度まで冷却する。ある実施形態では、加熱と冷却を所定のサイクル数で繰り返す。一部の実施形態では、反応混合物を所定のサイクル数で加熱し、90〜100℃、60℃〜70℃、および30℃〜50℃まで冷却する。ある実施形態では、反応混合物を所定のサイクル数で加熱し、93〜97℃、55℃〜65℃、および35℃〜45℃まで冷却する。一部の実施形態では、蓄積したアンプリコンを各qPCRサイクル後に定量化する。蛍光が閾値を超えるサイクル数がthreshold cycle(C)である。各サンプルで少なくとも1つのC結果が生成され、該C結果を用いて、アルギニン生合成遺伝子のmRNA発現レベルを求めることができる。
【0081】
一部の実施形態では、アルギニン生合成酵素N−アセチルグルタミン酸キナーゼ、N−アセチルグルタミルリン酸レダクターゼ、アセチルオルニチンアミノトランスフェラーゼ、N−アセチルオルニチナーゼ、オルニチントランスカルバミラーゼ、アルギニノスクシネートシンターゼ、アルギニノスクシネートリアーゼ、およびカルバモイルリン酸シンターゼをコードする1つまたは複数のオペロンの少なくとも1つのARGボックスにおいて1つまたは複数の核酸突然変異を含む、遺伝子操作した細菌は、加えて、アルギニンフィードバック耐性N−アセチルグルタミン酸シンターゼ突然変異体、例えばargAfbrを含む。
【0082】
一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌は、フィードバック耐性形態のArgAを含み、アルギニン生合成酵素N−アセチルグルタミン酸キナーゼ、N−アセチルグルタミルリン酸レダクターゼ、アセチルオルニチンアミノトランスフェラーゼ、N−アセチルオルニチナーゼ、オルニチントランスカルバミラーゼ、アルギニノスクシネートシンターゼ、アルギニノスクシネートリアーゼ、オルニチンアセチルトランスフェラーゼ、およびカルバモイルリン酸シンターゼをコードする1つまたは複数のオペロンの各ARGボックスにおいて、1つまたは複数の核酸突然変異を含む。
【0083】
一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌は、フィードバック耐性形態のArgAと、ArgR阻害可能調節領域により駆動されるアルギニノスクシネートシンターゼとを含み、アルギニン生合成酵素N−アセチルグルタミン酸キナーゼ、N−アセチルグルタミルリン酸レダクターゼ、アセチルオルニチンアミノトランスフェラーゼ、N−アセチルオルニチナーゼ、オルニチントランスカルバミラーゼ、アルギニノスクシネートリアーゼ、オルニチンアセチルトランスフェラーゼ、およびカルバモイルリン酸シンターゼをコードするオペロンそれぞれの各ARGボックスにおいて、1つまたは複数の核酸突然変異を含む。これらの実施形態では、細菌はシトルリンを生成することが可能である。
【0084】
一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌は、フィードバック耐性形態のArgAと、構成的プロモータから発現したアルギニノスクシネートシンターゼとを含み、アルギニン生合成酵素N−アセチルグルタミン酸キナーゼ、N−アセチルグルタミルリン酸レダクターゼ、アセチルオルニチンアミノトランスフェラーゼ、N−アセチルオルニチナーゼ、オルニチントランスカルバミラーゼ、アルギニノスクシネートシンターゼ、アルギニノスクシネートリアーゼ、オルニチンアセチルトランスフェラーゼ、およびカルバモイルリン酸シンターゼをコードするオペロンそれぞれの各ARGボックスにおいて、1つまたは複数の核酸突然変異を含む。これらの実施形態では、細菌はアルギニンを生成することが可能である。
【0085】
Table 3は、1つまたは複数の核酸突然変異がアルギニンオペロンそれぞれのアルギニン介在性阻害を低減または消失させる、突然変異構成物の例を示す。突然変異構成物は、酸素レベル依存性プロモータ、例えばFNRプロモータにより駆動される、フィードバック耐性形態のArgAを含む。各突然変異アルギニンレギュロンは、N−アセチルグルタミン酸キナーゼ、N−アセチルグルタミルリン酸レダクターゼ、アセチルオルニチンアミノトランスフェラーゼ、N−アセチルオルニチナーゼ、オルニチントランスカルバミラーゼ、アルギニノスクシネートシンターゼ、アルギニノスクシネートリアーゼ、カルバモイルリン酸シンターゼ、および野生型N−アセチルグルタミン酸シンセターゼをコードする1つまたは複数のオペロンの少なくとも1つのARGボックスにおいて、1つまたは複数の核酸突然変異を含み、その結果、ArgR結合は低減または消失し、それによりアルギニンおよび/または中間副生成物の生合成を強化する。突然変異アルギニンレギュロン構成物の非限定的例を、Table 3に示す。
【0086】
【表3】
【0087】
突然変異は、プラスミドまたは染色体に存在し得る。一部の実施形態では、アルギニンレギュロンは、単一のリプレッサタンパク質により調節される。特定の種、株、および/またはサブタイプの細菌では、アルギニンレギュロンは2つの推定リプレッサにより調節され得るという提案がなされてきた(Nicoloff et al.,2004)。したがって、ある実施形態では、本発明のアルギニンレギュロンは、2つ以上のリプレッサタンパク質により調節される。
【0088】
ある実施形態では、突然変異アルギニンレギュロンは、遺伝子操作した細菌の1つの種、株、またはサブタイプにおいて発現する。代替の実施形態では、突然変異アルギニンレギュロンは、遺伝子操作した2つ以上の種、株、および/またはサブタイプの細菌において発現する。
【0089】
アルギニンリプレッサ(ArgR)
本発明の遺伝子操作した細菌は、アルギニン生合成経路においてグルタミン酸からアルギニンおよび/または中間副生成物への変換を担う酵素をコードする1つまたは複数のオペロンのアルギニン介在性阻害を低減または消失させる1つまたは複数の核酸突然変異を含む、アルギニンレギュロンを含む。一部の実施形態では、アルギニン介在性阻害の低減または消失は、例えば、(上記のような)アルギニン生合成酵素をコードする1つもしくは複数のオペロンの少なくとも1つのARGボックスを突然変異させる、または、(例えば、本明細書で論じる)アルギニンリプレッサを突然変異させるもしくは削除する、および/または、(N−アセチルグルタミン酸シンセターゼを突然変異させて、アルギニンフィードバック耐性N−アセチルグルタミン酸シンターゼ突然変異体、例えばargAfbrを生成することにより)N−アセチルグルタミン酸シンセターゼに対するアルギニン結合を低減もしくは消失させることにより、ArgRリプレッサ結合を低減もしくは消失させることで、達成することができる。
【0090】
したがって、一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌は機能的ArgRリプレッサを欠き、そのためアルギニン生合成オペロンそれぞれのArgRリプレッサ介在性転写阻害は、低減または消失する。一部の実施形態では、操作した細菌は、1つまたは複数の核酸突然変異を含む突然変異アルギニンリプレッサを含み、その結果、アルギニンリプレッサ機能は低下するか、または不活性になる。一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌はアルギニンリプレッサを持たず(例えば、アルギニンリプレッサ遺伝子が削除されている)、レギュロンの阻害解除ならびにアルギニンおよび/または中間副生成物の生合成の強化がもたらされる。一部の実施形態では、対応する野生型細菌に通常存在する機能性argR遺伝子の各コピーを個別に削除するか、または、1つもしくは複数のヌクレオチドの削除、挿入、もしくは置換により不活性にする。一部の実施形態では、対応する野生型細菌に通常存在する機能性argR遺伝子の各コピーを削除する。
【0091】
一部の実施形態では、アルギニンレギュロンは単一のリプレッサタンパク質により調節される。特定の種、株、および/またはサブタイプの細菌では、アルギニンレギュロンは2つの別個の推定リプレッサにより調節され得るという提案がなされてきた(Nicoloff et al.,2004)。したがって、ある実施形態では、遺伝子操作した細菌において、異なるアミノ酸配列をそれぞれ含む2つの別個のArgRタンパク質を突然変異させるか、または削除する。
【0092】
一部の実施形態では、突然変異アルギニンリプレッサを含むか、またはアルギニンリプレッサが削除されている遺伝子改変した細菌は、加えて、アルギニンフィードバック耐性N−アセチルグルタミン酸シンターゼ突然変異体、例えば、argAfbrを含む。一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌は、フィードバック耐性形態のArgAを含み、任意の機能性アルギニンリプレッサを欠き、アルギニンを生成することが可能である。ある実施形態では、遺伝子操作した細菌はさらに機能性ArgGを欠き、シトルリンを生成することが可能である。一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌においてargR遺伝子が削除される。一部の実施形態では、argR遺伝子を突然変異させてArgR機能を不活化する。一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌においてargG遺伝子が削除される。一部の実施形態では、argG遺伝子を突然変異させてArgR機能を不活化する。一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌はargAfbrを含み、ArgRが削除される。一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌はargAfbrを含み、ArgRが削除され、argGが削除される。一部の実施形態では、削除されたArgRおよび/または削除されたargGは細菌ゲノムから削除され、argAfbrはプラスミドに存在する。一部の実施形態では、削除されたArgRおよび/または削除されたargGは細菌ゲノムから削除され、argAfbrは染色体上に組み込まれる。一つの特定の実施形態では、遺伝子改変した細菌は、染色体上に組み込まれたargAfbrを含み、ゲノムArgRが削除され、ゲノムargGが削除される。別の特定の実施形態では、遺伝子改変した細菌はプラスミド上にあるargAfbrを含み、ゲノムArgRが削除され、ゲノムargGが削除される。argGが削除される任意の実施形態では、アルギニンよりもむしろシトルリンが生成される。
【0093】
一部の実施形態では、フィードバック耐性形態のArgAが発現する条件下で、本発明の遺伝子操作した細菌は、同一条件下の同じサブタイプの非改変細菌と比較し、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約50倍、少なくとも約100倍、少なくとも約200倍、少なくとも約300倍、少なくとも約400倍、少なくとも約500倍、少なくとも約600倍、少なくとも約700倍、少なくとも約800倍、少なくとも約900倍、少なくとも約1000倍、もしくは少なくとも約1500倍のアルギニン、シトルリン、他の中間副生成物、および/またはオペロンにある遺伝子の転写物を生成する。
【0094】
一部の実施形態では、定量PCR(qPCR)を用いて、アルギニン生合成遺伝子のmRNA発現レベルを増幅、検出、および/または定量化する。アルギニン生合成遺伝子、例えば、argA、argB、argC、argD、argE、argF、argG、argH、argI、argJ、carA、およびcarBに対し特異的なプライマーを設計し、それを用いて当技術分野で既知の方法に従いサンプル中のmRNAを検出することができる(Fraga et al.,2008)。一部の実施形態では、フルオロフォアをarg mRNAを含有し得るサンプル反応混合物に加え、サーマルサイクラ―を用いて、特異的な波長の光をサンプル反応混合物に当て、その結果生じるフルオロフォアによる発光を検出する。反応混合物を加熱し、所定の期間にわたり所定の温度まで冷却する。ある実施形態では、加熱と冷却を所定のサイクル数で繰り返す。一部の実施形態では、反応混合物を所定のサイクル数で、加熱し、90〜100℃、60℃〜70℃、および30℃〜50℃まで冷却する。ある実施形態では、反応混合物を所定のサイクル数で、加熱し、93〜97℃、55℃〜65℃、および35℃〜45℃まで冷却する。一部の実施形態では、蓄積したアンプリコンを各qPCRサイクル後に定量化する。蛍光が閾値を超えるサイクル数がthreshold cycle(C)である。各サンプルで少なくとも1つのC結果が生成され、該C結果を用いて、アルギニン生合成遺伝子のmRNA発現レベルを求めることができる。
【0095】
フィードバック耐性N−アセチルグルタミン酸シンセターゼ
一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌は、アルギニンフィードバック耐性N−アセチルグルタミン酸シンターゼ突然変異体、例えばargAfbrを含む。一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌は、アルギニンフィードバック耐性ArgAを含む突然変異アルギニンレギュロンを含み、アルギニンフィードバック耐性ArgAが発現する際には、同一条件下の同じサブタイプの非改変細菌よりも多くのアルギニンおよび/または中間副生成物を生成することが可能である。アルギニンフィードバック耐性(feedback resistant)N−アセチルグルタミン酸シンセターゼタンパク質(argAfbr)は、フィードバック感受性親株由来の酵素よりもL−アルギニンに対する感受性が著しく低い(例えば、Eckhardt et al.,1975;Rajagopal et al.,1998を参照)。フィードバック耐性argA遺伝子は、プラスミドまたは染色体に存在し得る。一部の実施形態では、プラスミドからの発現は、argAfbr発現を増加させるのに有効であり得る。一部の実施形態では、染色体からの発現はargAfbr発現の安定性を増大させるのに有効であり得る。
【0096】
一部の実施形態では、本開示の任意の遺伝子操作した細菌は、細菌染色体の1つまたは複数の組み込み部位に組み込まれる。例えば、アルギニンフィードバック耐性N−アセチルグルタミン酸シンターゼをコードする配列の1つまたは複数のコピーが、細菌染色体に組み込まれ得る。アルギニンフィードバック耐性N−アセチルグルタミン酸シンターゼの多数のコピーが染色体に組み込まれていることは、N−アセチルグルタミン酸シンターゼをより多く生成することを可能にし、また、発現レベルを微調整することも可能にする。あるいは、アルギニンフィードバック耐性N−アセチルグルタミン酸シンターゼに加え、任意のキルスイッチ回路といった本明細書に記載の別の回路が、細菌染色体の1つまたは複数の異なる組み込み部位に組み込まれて、多数の異なる機能を実行し得る。
【0097】
多数の別個のフィードバック耐性N−アセチルグルタミン酸シンセターゼタンパク質が当技術分野で既知であり、遺伝子操作した細菌に組み込まれ得る。一部の実施形態では、argAfbr遺伝子は、構成的プロモータの制御下で発現する。一部の実施形態では、argAfbr遺伝子は、外因性環境条件により誘導されるプロモータの制御下で発現する。一部の実施形態では、外因性環境条件は、哺乳動物の消化管に対し特異的である。一部の実施形態では、外因性環境条件は、哺乳類の消化管に特異的な分子または代謝産物、例えばプロピオナートまたはビリルビンである。一部の実施形態では、外因性環境条件は、哺乳類の消化管の環境といった、低酸素性または嫌気的条件である。
【0098】
細菌は、酸素レベルを感知することが可能な転写機能を進化させてきた。異なるシグナル経路が、異なる酸素レベルにより引き起こされ、異なる動態で起き得る。酸素レベル依存性プロモータは、1つまたは複数の酸素レベル感知転写因子が結合することのできる核酸配列であり、対応する転写因子の結合および/または活性化が、下流の遺伝子発現を活性化させる。一実施形態では、argAfbr遺伝子は、酸素レベル依存性プロモータの制御下にある。より多くの特定の態様では、argAfbr遺伝子は、哺乳類の消化管の環境といった、低酸素性または嫌気的な環境下で活性化される、酸素レベル依存性プロモータの制御下にある。
【0099】
ある実施形態では、遺伝子操作した細菌は、フマル酸・硝酸レダクターゼレギュレータ(FNR)プロモータの制御下で発現するargAfbrを含む。大腸菌では、FNRは、好気代謝から嫌気代謝へのスイッチを制御する、主要な転写アクティベータである(Unden et al.,1997)。嫌気状態では、FNRは二量体化し、嫌気的増殖への適合を担う数百の遺伝子を活性化する活性DNA結合タンパク質になる。好気状態では、FNRは酸素により二量体化を妨げられ、不活性である。代替の実施形態では、遺伝子操作した細菌は、酸素レベル依存プロモータの制御下で、例えば、アルギニンデイミナーゼ・硝酸還元ANRプロモータ(Ray et al.,1997)、異化型硝酸呼吸レギュレータDNRプロモータ(Trunk et al.,2010)の嫌気的調節下で発現するargAfbrを含む。これらの実施形態では、アルギニン生合成経路は、消化管などの低酸素または嫌気的な環境で特に活性化する。
【0100】
緑膿菌では、アルギニンデイミナーゼ・硝酸還元(ANR)転写レギュレータの嫌気的調節が、「酸素限定または嫌気的な条件下で誘導可能な生理学的機能の発現に必要である」(Winteler et al.,1996;Sawers 1991)。緑膿菌ANRは、大腸菌FNRと相同であり、「コンセンサスFNR部位(TTGAT――――ATCAA)はANRおよびFNRにより効率的に認識された」(Winteler et al.,1996)。FNRと同じように、嫌気状態において、ANRは嫌気的増殖への適合を担う非常に多くの遺伝子を活性化する。好気状態では、ANRは不活性である。シュードモナス・フルオレッセンス、シュードモナス・プチダ、シュードモナス・シリンガエ、およびシュードモナス・メンドシナは全て、ANRの機能的アナログを有する(Zimmermann et al.,1991)。ANRにより調節されるプロモータ、例えば、arcDABCオペロンのプロモータは当技術分野に既知である(例えば、Hasegawa et al.,1998を参照)。
【0101】
FNRファミリーには、異化型硝酸呼吸レギュレータ(DNR)(Arai et al.,1995)、ANRとともに「緑膿菌の嫌気硝酸呼吸」に必要な転写レギュレータ(Hasegawa et al.,1998)も含まれる。ある遺伝子では、FNR結合モチーフは「おそらくDNRによってのみ認識される」(Hasegawa et al.,1998)。外因性環境条件および対応する調節領域により制御される任意の適切な転写レギュレータを用いることができる。非限定的例としては、ArcA/B、ResD/e、NreA/B/C、およびAirSRが挙げられ、他のものも当技術分野で既知である。
【0102】
一部の実施形態では、argAfbrは、哺乳類の消化管などの環境において、特異的な分子または代謝産物に応答する誘導性プロモータの制御下で発現する。例えば、単鎖脂肪酸プロピオナートは、消化管に位置する、主要な微生物発酵代謝産物である(Hosseini et al.,2011)。一実施形態では、argAfbr遺伝子発現は、プロピオナート誘導性プロモータの制御下にある。より具体的な実施形態では、argAfbr遺伝子発現は、哺乳類の消化管におけるプロピオナートの存在により活性化されるプロピオナート誘導性プロモータの制御下にある。健康な状態および/または病気の状態の哺乳類の消化管に見られる任意の分子または代謝産物を用いて、argAfbr発現を誘導することができる。非限定的例としては、プロピオナート、ビリルビン、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼ、血液凝固第II因子、血液凝固第第VII因子、血液凝固第第IX因子、血液凝固第第X因子、アルカリホスファターゼ、ガンマグルタミルトランスフェラーゼ、肝炎抗原、肝炎抗体、アルファフェトプロテイン抗体、抗ミトコンドリア抗体、抗平滑筋抗体、抗核抗体、鉄、トランスフェリン、フェリチン、銅、セルロプラスミン、アンモニア、およびマンガンが挙げられる。代替の実施形態では、argAfbr遺伝子発現は、pBADプロモータの制御下にあり、これは糖アラビノースの存在下で活性化する(例えば、図18を参照)。
【0103】
肝性脳症(HE)および他の肝臓の病気または疾患を持つ対象は、慢性肝不全を患い、これは血液および腸における高アンモニアレベルの原因となる。アンモニアに加え、これらの患者は、血液および腸において、ビリルビン、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼ、血液凝固第II因子、血液凝固第VII因子、血液凝固第IX因子、および血液凝固第X因子、アルカリホスファターゼ、ガンマグルタミルトランスフェラーゼ、肝炎抗原、肝炎抗体、アルファフェトプロテイン抗体、抗ミトコンドリア抗体、抗平滑筋抗体、抗核抗体、鉄、トランスフェリン、フェリチン、銅、セルロプラスミン、アンモニア、およびマンガンのレベルが上昇する。これらのHE関連分子またはそれらの代謝産物の1つに応答するプロモータを用いて本開示の細菌を操作することが可能であり、該細菌は、HE患者の腸のargAfbrを発現するようにのみ誘導されるだろう。これらのプロモータがUCD患者において誘導されることは予想されない。
【0104】
一部の実施形態では、argAfbr遺伝子は、テトラサイクリンにさらされることにより誘導されるプロモータの制御下で発現する。一部の実施形態では、遺伝子発現はさらに当技術分野で既知の方法により、例えば、リボソーム結合部位を最適化する、転写レギュレータを操作する、および/または、mRNAの安定性を高めることにより、最適化される。
【0105】
一部の実施形態では、アルギニンフィードバック耐性N−アセチルグルタミン酸シンセターゼが活性である場合、遺伝子操作した細菌において、N−アセチルグルタミン酸シンセターゼのアルギニンフィードバック阻害は、同一条件下の同じサブタイプの細菌に由来する野生型N−アセチルグルタミン酸シンセターゼと比較し、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%低減する。
【0106】
一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌は、argAfbr遺伝子を担持する、安定的に維持されたプラスミドまたは染色体を含み、その結果、argAfbrは宿主細胞において発現することが可能であり、宿主細胞は培地などのin vitroで、および/または、消化管などのin vivoで、生存および/または増殖することが可能である。一部の実施形態では、細菌はフィードバック耐性argA遺伝子の多数のコピーを含み得る。一部の実施形態では、フィードバック耐性argA遺伝子は、低コピープラスミドにおいて発現する。一部の実施形態では、低コピープラスミドは、発現の安定性を向上させるために有用であり得る。一部の実施形態では、低コピープラスミドは、非誘導条件下において発現の漏れ(leaky expression)を低減させるのに有用であり得る。一部の実施形態では、フィードバック耐性argA遺伝子は、高コピープラスミドにおいて発現する。一部の実施形態では、高コピープラスミドは、argAfbrの発現を増大させるのに有用であり得る。一部の実施形態では、フィードバック耐性argAfbr遺伝子は、染色体において発現する。一部の実施形態において、細菌は、多数の作用機序(MOA)、例えば、同一の生成物の多数のコピーを生成する回路または多数の異なる機能を実行する回路を含むように、遺伝子操作する。挿入部位の例としては、限定されるわけではないが、malE/K、insB/I、araC/BAD、lacZ、dapA、cea、および図22に示す他のものが挙げられる。例えば、遺伝子操作した細菌には、4つの異なる挿入部位、例えばmalE/K、insB/I、araC/BAD、lacZにおいて、argAfbrの4つのコピーが挿入され得る。あるいは、遺伝子操作した細菌には、3つの異なる挿入部位、例えばmalE/K、insB/I、lacZにおいて、argAfbrの3つのコピーが挿入され得、3つの異なる挿入部位、例えばdapA、cea、araC/BADにおいて、3つの突然変異アルギニンレギュロン、例えば、2つはシトルリンを生成し、1つはアルギニンを生成する突然変異アルギニンレギュロンが挿入され得る。
【0107】
一部の実施形態では、プラスミドまたは染色体は、野生型ArgR結合部位、例えばARGボックスも含む。一部の例では、機能性ArgRの存在または増加は、ARGボックス以外の部位におけるオフターゲット結合の原因となり得、これは遺伝子発現においてオフターゲット変異を引き起こし得る。機能性ARGボックスをさらに含むプラスミドまたは染色体を用いて、つまり、ArgRシンク(sink)として作用させることにより、オフターゲットArgR結合を低減または消失させることができる。一部の実施形態では、プラスミドまたは染色体は機能性ArgR結合部位を含まず、例えば、プラスミドまたは染色体は改変ARGボックスを含むか、またはARGボックスを含まない。
【0108】
一部の実施形態では、フィードバック耐性argA遺伝子はプラスミドに存在し、低酸素または嫌気的な条件下で誘導されるプロモータに操作可能に連結する。一部の実施形態では、フィードバック耐性argA遺伝子は染色体に存在し、低酸素または嫌気的な条件下で誘導されるプロモータに操作可能に連結する。一部の実施形態では、フィードバック耐性argA遺伝子はプラスミドに存在し、哺乳類の消化管に特異的な分子または代謝産物により誘導されるプロモータに操作可能に連結する。一部の実施形態では、フィードバック耐性argA遺伝子は染色体に存在し、哺乳類の消化管に特異的な分子または代謝産物により誘導されるプロモータに操作可能に連結する。一部の実施形態では、フィードバック耐性argA遺伝子は染色体に存在し、テトラサイクリンにさらされることにより誘導されるプロモータに操作可能に連結する。一部の実施形態では、フィードバック耐性argA遺伝子はプラスミドに存在し、テトラサイクリンにさらされることにより誘導されるプロモータに操作可能に連結する。
【0109】
一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌は、多数の作用機序(MOA)、例えば、(コピー数を増加させるために)同一生成物の多数のコピーを生成する回路、または、多数の異なる機能を実行する回路を含む。挿入部位の例としては、限定されるわけではないが、malE/K、insB/I、araC/BAD、lacZ、dapA、cea、および図22に示す他のものが挙げられる。
【0110】
一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌は、対応する酸素レベル依存性プロモータに加え、異なるまたは突然変異した酸素レベル依存性転写レギュレータ、例えばFNR、ANR、またはDNRを含む。異なるまたは突然変異した酸素レベル依存性転写レギュレータは、低酸素または嫌気的な環境で操作可能に連結した遺伝子の転写を増加させる。一部の実施形態では、対応する野生型転写レギュレータは野生型活性を保持する。代替の実施形態では、対応する野生型転写レギュレータは削除されるか、または突然変異して野生型活性は低減もしくは消失する。ある実施形態では、突然変異酸素レベル依存性転写レギュレータは、二量体化およびFNR活性を強化するアミノ酸置換を含む、FNRタンパク質である(例えば、Moore et al.,2006を参照)。
【0111】
一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌は、低酸素または嫌気的な環境においてアンモニアを減少させる、および/または、アンモニアを消費する、異なる細菌種に由来する酸素レベル依存性転写レギュレータを含む。ある実施形態では、突然変異酸素レベル依存性転写レギュレータは、淋菌に由来するFNRタンパク質である(例えば、Isabella et al.,2011を参照)。一部の実施形態では、対応する野生型転写レギュレータは手を加えられておらず、野生型活性を保持する。代替の実施形態では、対応する野生型転写レギュレータを削除するか、または突然変異させて、野生型活性を低減または消失させる。
【0112】
一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌は、酸素レベル依存性プロモータ、例えばFNRプロモータの制御下で発現するargAfbrと、上記のように1つまたは複数のARGボックス突然変異を含む突然変異調節領域の制御下で発現する野生型argAとを含む。ある実施形態では、遺伝子操作した細菌は、酸素レベル依存性プロモータ、例えばFNRプロモータの制御下で発現するargAfbrを含み、野生型argAは含まない。さらに他の実施形態では、突然変異アルギニンレギュロンは、酸素レベル依存性プロモータ、例えばFNRプロモータの制御下で発現するargAfbrを含み、さらに、ARGボックス突然変異を持たない野生型argAを含む。
【0113】
一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌は、プラスミドおよび/または染色体からArgAfbrを発現させる。一部の実施形態では、argAfbr遺伝子は構成的プロモータの制御下で発現する。一部の実施形態では、argAfbr遺伝子は誘導性プロモータの制御下で発現する。一実施形態では、argAfbrは、低酸素または嫌気的な環境下で活性化する酸素レベル依存性プロモータ、例えばFNRプロモータの制御下で発現する。FNRプロモータにより駆動されるargAfbrプラスミドの核酸配列を図8に示すが、FNRプロモータ配列は太字にし、argAfbr配列は囲む。
【0114】
FNRプロモータ配列は当技術分野で既知であり、任意の適切なFNRプロモータ配列を本発明の遺伝子操作した細菌で用いることができる。任意の適切なFNRプロモータを、任意の適切なフィードバック耐性ArgA(例示的配列、配列番号8A)と組み合わせることができる。非限定的FNRプロモータ配列を図7で提供する。一部の実施形態では、本発明の遺伝子操作した細菌は、配列番号16、配列番号17、nirB1プロモータ(配列番号18)、nirB2プロモータ(配列番号19)、nirB3プロモータ(配列番号20)、ydfZプロモータ(配列番号21)、強力なリボソーム結合部位に融合したnirBプロモータ(配列番号22)、強力なリボソーム結合部位に融合したydfZプロモータ(配列番号23)、fnrS、嫌気的に誘導される小RNA遺伝子(fnrS1プロモータ配列番号24またはfnrS2プロモータ配列番号25)、crp結合部位に融合したnirBプロモータ(配列番号26)、およびcrp結合部位に融合したfnrS(配列番号27)のうち、1つまたは複数を含む。
【0115】
一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌は、配列番号28の核酸配列またはその機能的断片を含む。一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌は、遺伝子コードの冗長性を別とすれば配列番号28と同じポリペプチドをコードする、核酸配列を含む。一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌は、配列番号28のDNA配列と、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%の相同性を有する核酸配列、または、遺伝子コードの冗長性を別とすれば配列番号28と同じポリペプチドをコードする核酸配列を含む。
【0116】
他の実施形態では、argAfbrは、転写アクティベータ、例えばCRPの結合部位に融合した酸素レベル依存性プロモータの制御下で発現する。CRP(環状AMP受容体タンパク質または異化活性化タンパク質またはCAP)は、グルコースなどの迅速に代謝可能な糖質が存在する場合に、より好ましくない炭素源の吸収、代謝、および同化を担う遺伝子を阻害することにより、細菌において主要な調整的役割を果たす(Wu et al.,2015)。このグルコース選好はグルコース抑制および炭素異化産物抑制と呼ばれている(Deutscher,2008;Goerke and Stuelke,2008)。一部の実施形態では、argAfbr発現は、CRP結合部位に融合した酸素レベル依存性プロモータにより制御される。一部の実施形態では、argAfbr発現は、CRP結合部位に融合したFNRプロモータにより制御される。これらの実施形態では、環状AMPは、グルコースが環境中に存在しない場合にCRPと結合する。この結合はCRPにおいて配座変化を引き起こし、CRPがその結合部位に強固に結合できるようにする。CRP結合は次に、直接的なタンパク質−タンパク質相互反応を介してRNAポリメラーゼをFNRプロモータに補充することにより、argAfbr遺伝子の転写を活性化させる。グルコースの存在下では、環状AMPはCRPに結合せず、argAfbr遺伝子の転写は抑制される。一部の実施形態では、転写アクティベータの結合部位に融合した酸素レベル依存性プロモータ(例えばFNRプロモータ)を用いて、例えばグルコースをin vitroで増殖培地に加えることにより十分な量のグルコースが存在する際に、argAfbrが嫌気的条件下で発現しないようにする。
【0117】
アルギニン異化
本発明を実施する際に考慮すべき重要な事項は、アンモニアがアルギニンおよび/またはシトルリン異化の副生成物として過剰生成されないようにすることである。尿素サイクルの最終酵素段階で、アルギナーゼはアルギニンのオルニチンおよび尿素への加水分解を触媒する(Cunin et al.,1986)。ウレアーゼは消化管の細菌から生成され得るが、尿素の二酸化炭素およびアンモニアへの分解を触媒する(Summerskill,1966;Aoyagi et al.,1966;Cunin et al.,1986)。したがって、ウレアーゼ活性は、「ヒト組織に有毒」であり得るアンモニアを生成し得る(Konieczna et al.,2012)。大腸菌Nissleを含む一部の細菌では、遺伝子arcDはアルギニン/オルニチンアンチポータをコードし、これもアンモニアを遊離させ得る(Vander Wauven et al.,1984;Gamper et al.,1991;Meng et al.,1992)。
【0118】
AstAは、アルギニンからスクシナートへの変換に関与する酵素であり、これはアンモニアを遊離させる。SpeAはアルギニンからアグマチンへの変換に関与する酵素であり、これはさらに異化してアンモニアを生成し得る。したがって、一部の例では、アルギニンの分解を防ぐことが有利であり得る。一部の実施形態では、突然変異アルギニンレギュロンを含む遺伝子操作した細菌は、加えて、アルギニン異化を低減または消失させる突然変異を含み、それによりさらなるアンモニア生成を低減または消失させる。一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌はまた、ArcD活性を低減または消失させる突然変異を含む。ある実施形態では、ArcDは削除される。一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌はまた、AstA活性を低減または消失させる突然変異を含む。ある実施形態では、AstAは削除される。一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌はまた、SpeA活性を低減または消失させる突然変異を含む。ある実施形態では、SpeAは削除される。一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌はまた、アルギナーゼ活性を低減または消失させる突然変異を含む。ある実施形態では、アルギナーゼは削除される。一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌はまた、ウレアーゼ活性を低減または消失させる突然変異を含む。ある実施形態では、ウレアーゼは削除される。一部の実施形態では、アルギニン異化に関与する1つまたは複数の他の遺伝子を突然変異させるか、または削除する。
【0119】
必須遺伝子および栄養要求株
本明細書で用いる場合、用語「必須遺伝子」は、細胞の増殖および/または生存に必要な遺伝子を指す。細菌の必須遺伝子は当業者に周知であり、指示された遺伝子の削除、ならびに/または、ランダムな突然変異誘発およびスクリーニングにより特定することが可能である(例えば、Zhang and Lin,2009,DEG 5.0,a database of essential genes in both prokaryotes and eukaryotes,Nucl.Acids Res.,37:D455−D458、およびGerdes et al.、Essential genes on metabolic maps,Curr.Opin.Biotechnol.,17(5):448−456を参照。これらそれぞれの内容は全て、参照により本明細書に明確に組み込まれる)。
【0120】
「必須遺伝子」は、生物が生存する状況および環境に依存し得る。例えば、必須遺伝子の突然変異、改変、または切除は、栄養要求株化する本開示の組換え細菌をもたらし得る。栄養要求性の改変は、外から加えられる生存または増殖に必須の栄養が存在しない場合に、必須栄養を生成するのに必要な遺伝子欠くことで細菌を死滅させることを目的とする。
【0121】
栄養要求性の改変は、外から加えられる生存または増殖に必須の栄養がない場合は、必須栄養を生成するのに必要な遺伝子を欠くことで、細菌を死滅させることを目的とする。一部の実施形態では、本明細書に記載する任意の遺伝子操作した細菌において、細胞の生存および/または増殖に必要な遺伝子を削除するか、または突然変異させる。一実施形態では、必須遺伝子はDNA合成遺伝子、例えば、thyAである。別の実施形態では、必須遺伝子は細胞壁合成遺伝子、例えば、dapAである。さらに別の実施形態では、必須遺伝子はアミノ酸遺伝子、例えばserAまたはMetAである。限定されるわけではないが、cysE、glnA、ilvD、leuB、lysA、serA、metA、glyA、hisB、ilvA、pheA、proA、thrC、trpC、tyrA、thyA、uraA、dapA、dapB、dapD、dapE、dapF、flhD、metB、metC、proAB、およびthi1を含む、細胞の生存および/または増殖に必要な任意の遺伝子が、対応する野生型遺伝子が細菌で生成されない限り、標的となり得る。例えば、チミンは細菌の細胞増殖に必要な核酸であり、それが欠けると、細菌は細胞死する。thyA遺伝子は、チミジル酸シンセターゼ、つまりdUMPをdTMPに変換することによりチミン合成の第1段階を触媒する酵素をコードする(Sat et al.,2003)。一部の実施形態では、本開示の細菌細胞はthyA栄養要求株であり、ここにおいてthyA遺伝子は削除されている、および/または無関係の遺伝子に置換されている。thyA栄養要求株は、例えば、チミンをin vitroで増殖培地に加えることにより十分な量のチミンが存在する場合、または、in vivoのヒト消化管において天然に見られる高レベルのチミンが存在する場合にのみ、増殖することが可能である。一部の実施形態では、本開示の細菌細胞は、哺乳類の消化管に該細菌が存在する場合に補完される遺伝子において、栄養要求的である。十分な量のチミンがない場合、thyA栄養要求株は死滅する。一部の実施形態では、栄養要求性改変を利用して、栄養要求性遺伝子の生成物がない場合は(例えば消化管の外)、細菌細胞が生存できないようにする。
【0122】
ジアミノピメリン酸(DAP)は、リシン生合成経路内で合成されるアミノ酸であり、細菌の細胞壁成長に必要である(Meadow et al.,1959;Clarkson et al.,1971)。一部の実施形態では、本明細書に記載の遺伝子操作した細菌はいずれもdapD栄養要求株であり、ここにおいてdapDは削除されている、および/または、無関係の遺伝子と置き換えられている。dapD栄養要求株は、例えば、DAPをin vitroで増殖培地に加えることにより十分な量のDAPが存在する場合でのみ、増殖することが可能である。十分な量のDAPがなければ、dapD栄養要求株は死滅する。一部の実施形態では、栄養要求性改変を利用して、栄養要求性遺伝子の生成物がない場合は(例えば消化管の外)、細菌細胞が生存できないようにする。
【0123】
他の実施形態では、本開示の遺伝子操作した細菌は、uraA栄養要求株であり、ここにおいてuraAは削除されている、および/または、無関係の遺伝子と置き換えられている。uraA遺伝子は、UraA、ピリミジンウラシルの吸収およびそれに続く代謝を促進する膜結合性輸送体をコードする(Andersen et al.,1995)。uraA栄養要求株は、例えば、ウラシルをin vitroで増殖培地に加えることにより十分な量のウラシルが存在する場合にのみ、増殖することが可能である。十分な量のウラシルがなければ、uraA栄養要求株は死滅する。一部の実施形態では、栄養要求性改変を利用して、栄養要求性遺伝子の生成物がない場合は(例えば消化管の外)、細菌が生存できないようにする。
【0124】
複雑なコミュニティでは、細菌はDNAを共有することが可能である。非常に稀な状況で、栄養要求性細菌株は、非栄養要求性株からDNAを受け取ることができ、これは遺伝子の欠失を修復し、栄養要求株を永続的にレスキューする。そのため、2つ以上の栄養要求株で細菌株を操作することにより、栄養要求性をレスキューするのに十分な回数でDNA転移が起きる可能性を著しく減らすことができる。一部の実施形態では、本発明の遺伝子操作した細菌では、細胞の生存および/または増殖に必要な2つ以上の遺伝子を削除するか、突然変異させる。
【0125】
必須遺伝子の他の例としては、限定されるわけではないが、yhbV、yagG、hemB、secD、secF、ribD、ribE、thiL、dxs、ispA、dnaX、adk、hemH、lpxH、cysS、fold、rplT、infC、thrS、nadE、gapA、yeaZ、aspS、argS、pgsa、yefM、metG、folE、yejM、gyrA、nrdA、nrdB、folC、accD、fabB、gltX、ligA、zipA、dapE、dapA、der、hisS、ispG、suhB、tadA、acpS、era、rnc、ftsB、eno、pyrG、chpR、lgt、fbaA、pgk、yqgD、metK、yqgF、plsC、ygiT、pare、ribB、cca、ygjD、tdcF、yraL、yihA、ftsN、murI、murB、birA、secE、nusG、rplJ、rplL、rpoB、rpoC、ubiA、plsB、lexA、dnaB、ssb、alsK、groS、psd、orn、yjeE、rpsR、chpS、ppa、valS、yjgP、yjgQ、dnaC、ribF、lspA、ispH、dapB、folA、imp、yabQ、ftsL、ftsI、murE、murF、mraY、murD、ftsW、murG、murC、ftsQ、ftsA、ftsZ、lpxC、secM、seca、can、folK、hemL、yadR、dapD、map、rpsB、infB ,nusA、ftsH、obgE、rpma、rplU、ispB、murA、yrbB、yrbK、yhbN、rpsI、rplM、degS、mreD、mreC、mreB、accB、accC、yrdC、def、fmt、rplQ、rpoA、rpsD、rpsK、rpsM、entD、mrdB、mrdA、nadD、hlepB、rpoE、pssA、yfiO、rplS、trmD、rpsP、ffh、grpE、yfjB、csrA、ispF、ispD、rplW、rplD、rplC、rpsJ、fusA、rpsG、rpsL、trpS、yrfF、asd、rpoH、ftsX、ftsE、ftsY、frr、dxr、ispU、rfaK、kdtA、coaD、rpmB、dfp、dut、gmk、spot、gyrB、dnaN、dnaA、rpmH、rnpA、yidC、tnaB、glmS、glmU、wzyE、hemD、hemC、yigP、ubiB、ubiD、hemG、secY、rplO、rpmD、rpsE、rplR、rpLF、rpsH、rpsN、rplE、rplX、rplN、rpsQ、rpmC、rplP、rpsC、rplV、rpsS、rplB、cdsA、yaeL、yaeT、lpxD、fabZ、lpxA、lpxB、dnaE、accA、tilS、proS、yafF、tsf、pyrH、olA、rlpB、leuS、lnt、glnS、fldA、cydA、infA、cydC、ftsK、lolA、serS、rpsA、msbA、lpxK、kdsB、mukF、mukE、mukB、asnS、fabA、mviN、rne、yceQ、fabD、fabG、acpP、tmk、holB、lolC、lolD、lolE、purB、ymfK、minE、mind、pth、rsA、ispE、lolB、hemA、prfA、prmC、kdsA、topA、ribA、fabI、racR、dicA、ydfB、tyrS、ribC、ydiL、pheT、pheS、yhhQ、bcsB、glyQ、yibJ、およびgpsAが挙げられる。他の必須遺伝子も当業者には既知である。
【0126】
一部の実施形態では、本開示の遺伝子操作した細菌は、合成リガンド依存性必須遺伝子(SLiDE)の細菌細胞である。SLiDE細菌細胞は、特定のリガンドの存在下でのみ増殖する1つまたは複数の必須遺伝子において突然変異を有する、合成栄養要求株である(Lopez and Anderson “Synthetic Auxotrophs with Ligand−Dependent Essential Genes for a BL21 (DE3 Biosafety Strain,”ACS Synthetic Biology (2015) DOI:10.1021/acssynbio.5b00085を参照(この内容は全て参照により本発明に明確に組み込まれる))。
【0127】
一部の実施形態では、SLiDE細菌細胞は、必須遺伝子において突然変異を有する。一部の実施形態では、必須遺伝子は、pheS、dnaN、tyrS、metG、およびadkからなる群から選択される。一部の実施形態では、必須遺伝子は、以下の突然変異:H191N、R240C、I317S、F319V、L340T、V347I、およびS345Cのうち1つまたは複数を含むdnaNである。一部の実施形態では、必須遺伝子は、突然変異H191N、R240C、i317S、F319V、L340T、V347I、およびS345Cを含むdnaNである。一部の実施形態では、必須遺伝子は、以下の突然変異:F125G、P183T、P184a、R186a、およびI188Lのうち1つまたは複数を含むpheSである。一部の実施形態では、必須遺伝子は、突然変異F125G、P183T、P184a、R186a、およびI188Lを含むpheSである。一部の実施形態では、必須遺伝子は、以下の突然変異:L36V、C38A、およびF40Gのうち1つまたは複数を含むtyrSである。一部の実施形態では、必須遺伝子は、突然変異L36V、C38A、およびF40Gを含むtyrSである。一部の実施形態では、必須遺伝子は、以下の突然変異:E45Q、N47R、I49G、およびA51Cのうち1つまたは複数を含むmetGである。一部の実施形態では、必須遺伝子は、突然変異E45Q、N47R、I49G、およびA51Cを含むmetGである。一部の実施形態では、必須遺伝子は、以下の突然変異:I4L、L5I、およびL6Gのうち1つまたは複数を含むadkである。一部の実施形態では、必須遺伝子は突然変異I4L、L5I、およびL6Gを含むadkである。
【0128】
一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌は、リガンドにより補完される。一部の実施形態では、リガンドは、ベンゾチアゾール、インドール、2−アミノベンゾチアゾール、インドール−3−酪酸、インドール−3−酢酸、およびL−ヒスチジンメチルエステルからなる群から選択される。例えば、metGにおいて突然変異(E45Q、N47R、I49G、およびA51C)を含む細菌細胞は、ベンゾチアゾール、インドール、2−アミノベンゾチアゾール、インドール−3−酪酸、インドール−3−酢酸、またはL−ヒスチジンメチルエステルにより補完される。dnaNにおいて突然変異(H191N、R240C、I317S、F319V、L340T、V347I、およびS345C)を含む細菌細胞は、ベンゾチアゾール、インドール、2−アミノベンゾチアゾール、インドール−3−酪酸、インドール−3−酢酸、またはL−ヒスチジンメチルエステルにより補完される。pheSにおいて突然変異(F125G、P183T、P184A、R186A、およびI188L)を含む細菌細胞は、ベンゾチアゾールまたは2−アミノベンゾチアゾールにより補完される。tyrSにおいて突然変異(L36V、C38A、およびF40G)を含む細菌細胞は、ベンゾチアゾールまたは2−アミノベンゾチアゾールにより補完される。adkにおいて突然変異(I4L、L5I、およびL6G)を含む細菌細胞は、ベンゾチアゾールまたはインドールにより補完される。
【0129】
一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌は、それをリガンド栄養要求性にする、2つ以上の突然変異必須遺伝子を含む。一部の実施形態では、細菌細胞は2つの必須遺伝子において突然変異を含む。例えば、一部の実施形態では、細菌細胞は、tyrSにおける突然変異(L36V、C38A、およびF40G)と、metGにおける突然変異(E45Q、N47R、I49G、およびA51C)を含む。他の実施形態では、細菌細胞は、3つの必須遺伝子において突然変異を含む。例えば、一部の実施形態では、細菌細胞はtyrSにおける突然変異(L36V、C38A、およびF40G)、metGにおける突然変異(E45Q、N47R、I49G、およびA51C)、ならびにpheSにおける突然変異(F125G、P183T、P184A、R186A、およびI188L)を含む。
【0130】
一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌は、その必須遺伝子が、図39、49、62、および63に示すアラビノース系を用いて置き換えられている、条件付きの栄養要求株である。
【0131】
一部の実施形態では、本開示の遺伝子操作した細菌は栄養要求株であり、また、本明細書に記載するキルスイッチコンポーネントおよび系の何れかなどの、キルスイッチ回路も含む。例えば、組換え細菌は、細胞の生存および/または増殖に必要な必須遺伝子、例えば、thyAなどのDNA合成遺伝子、dapAなどの細胞壁合成遺伝子、および/もしくは、serAまたはMetAなどのアミノ酸遺伝子が削除されるか、または、該必須遺伝子において突然変異を含み、また、環境条件および/もしくはシグナルに応答して発現する1つまたは複数の転写アクティベータ(記載したアラビノース系など)により調節されるか、または、外因性環境条件および/もしくはシグナルを感知して発現する1つまたは複数のリコンビナーゼ(本明細書ならびに図39、40、および50に記載のリコンビナーゼ系など)により調節される、毒素遺伝子も含み得る。他の実施形態は、Wright et al.,“GeneGuard:A Modular Plasmid System Designed for Biosafety,” ACS Synthetic Biology (2015) 4:307−16に記載されており、この内容は全て参照により本明細書に明確に組み込まれる。一部の実施形態では、本開示の遺伝子操作した細菌は栄養要求株であり、また、本明細書に記載するキルスイッチコンポーネントおよび系の何れかなどのキルスイッチ回路、ならびに、条件付き複製起点などの別のバイオセキュリティ系も含む(上記Wright et al.を参照)。
【0132】
他の実施形態では、栄養要求性改変を利用して、過剰なアンモニアを消費する突然変異細菌をスクリーニングすることもできる。より具体的な態様では、栄養要求性改変を利用して、アルギニンを過剰生成することにより過剰なアンモニアを消費する突然変異細菌をスクリーニングすることができる。本明細書に記載するように、アルギニン代謝に関与する多くの遺伝子が、ArgRとの相互作用を介してアルギニンにより阻害を受ける。astC遺伝子プロモータは、アルギニン−ArgR複合体が、転写リプレッサとは対照的に転写アクティベータとして機能するという点で独特である。AstCは、大腸菌において、スクシニルオルニチンアミノトランスフェラーゼ、アンモニア生成アルギニンスクシニルトランスフェラーゼ(AST)経路の第3酵素、および、第1のastCADBEオペロンをコードする(Schneider et al.,1998)。ある実施形態では、遺伝子操作した細菌は遺伝子に対し栄養要求性であり、astCプロモータの制御下で栄養要求性遺伝子産物を発現させる。これらの実施形態では、栄養要求性はポジティブフィードバックメカニズムの支配下にあり、該栄養要求性を利用して、アルギニンを過剰生成することにより過剰なアンモニアを消費する突然変異細菌を選択する。ポジティブフィードバック栄養要求株の非限定的例を図33Aおよび33Bに示す。
【0133】
遺伝子調節回路
一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌は、本明細書に記載する構成物を発現させる、多層遺伝子調節回路を含む(例えば、全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国仮特許出願第62/184,811号を参照)
【0134】
ある実施形態では、本発明は、アルギニンを過剰生成する遺伝子操作した細菌を選択するための方法を提供する。一部の実施形態では、本発明は、代替の代謝経路、例えば、ヒスチジン生合成経路、メチオニン生合成経路、リシン生合成経路、アスパラギン生合成経路、グルタミン生合成経路、およびトリプトファン生合成経路を介して過剰なアンモニアを消費する遺伝子操作した細菌を、選択する方法を提供する。一部の実施形態では、本発明は、突然変異アルギニンレギュロンと、ArgRを調節した2リプレッサ活性化遺伝子調節回路とを含む、遺伝子操作した細菌を提供する。2リプレッサ活性化遺伝子調節回路は、アンモニアを減少させるか、または栄養要求株をレスキューする突然変異細菌を選択するのに有用である。一部の構成物では、高レベルのアルギニンおよび結果として生じるアルギニンによるArgRの活性化は、検出可能標識または細胞の生存に必要な必須遺伝子の発現を引き起こし得る。
【0135】
2リプレッサ活性化調節回路は、第1ArgRと、第2リプレッサ、例えばTetリプレッサとを含む。これらの実施形態の一態様において、ArgRは、対象の特定の遺伝子、例えば検出可能な生成物の転写を阻害する第2リプレッサの転写を阻害し、これを用いて、過剰なアンモニアを消費する突然変異体、および/または、細胞の生存に必要な必須遺伝子をスクリーニングすることができる。限定されるわけではないが、ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、およびGFPなどの蛍光タンパク質などの任意の検出可能な生成物を用いることができる。一部の実施形態では、第2リプレッサはTetリプレッサタンパク質(TetR)である。この実施形態では、野生型ARGボックスを含むArgR阻害可能プロモータがTetRの発現を引き起こし、TetR阻害可能プロモータが、対象の少なくとも1つの遺伝子、例えばGFPの発現を引き起こす。(低アルギニン濃度で起きる)ArgR結合を欠く場合、tetRは転写され、TetRはGFP発現を阻害する。(高アルギニン濃度で起きる)ArgR結合が存在する場合、tetR発現は阻害され、GFPが生成される。これらの実施形態で有用な他の第2リプレッサの例としては、限定されるわけではないが、ArsR、AscG、LacI、CscR、DeoR、DgoR、FruR、GalR、GatR、CI、LexA、RafR、QacR、およびPtxSが挙げられる(米国特許出願公開第2003/0166191号明細書)。一部の実施形態では、スイッチを含む突然変異アルギニンレギュロンは突然変異誘発にさらされ、アルギニンを過剰生成することによりアンモニアを減少させる突然変異体は、検出可能な生成物が蛍光を発する際に、例えばフローサイメトリー、FACS(fluorescence−activated cell sorting)による検出可能生成物のレベルに基づき、選択される。
【0136】
一部の実施形態では、対象の遺伝子は、細菌の生存および/または増殖に必要なものである。ArgRの制御下にある場合を除いて遺伝子生成物を生成しないように、対応する野生型遺伝子が取り除かれているか、または突然変異している限り、限定されるわけではないが、cysE、glnA、ilvD、leuB、lysA、serA、metA、glyA、hisB、ilvA、pheA、proA、thrC、trpC、tyrA、thyA、uraA、dapA、dapB、dapD、dapE、dapF、flhD、metB、metC、proAB、およびthi1などの任意の遺伝子を用いることができる。一部の実施形態では、野生型ARGボックスを含むArgR阻害可能プロモータが、TetRタンパク質の発現を引き起こし、TetR阻害可能プロモータが、細菌の生存および/または増殖に必要な少なくとも1つの遺伝子、例えばthyA、uraAの発現を駆動する(Sat et al.,2003)。一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌は、該細菌が哺乳類の消化管に存在する場合は補完されない遺伝子において栄養要求性であり、ここにおいて前記遺伝子は、細菌中に存在する第2誘導遺伝子により補完され;第2遺伝子の転写はArgR阻害可能型であり、十分に高濃度のアルギニンの存在下で誘導される(そうして栄養要求性遺伝子を補完する)。一部の実施形態では、2リプレッサ活性化回路を含む突然変異アルギニンレギュロンは突然変異誘発にさらされ、過剰なアンモニアを減少させる突然変異体は、生存および/または増殖に必要な遺伝子生成物を欠く中での増殖により選択される。一部の実施形態では、2リプレッサ活性化回路を含む突然変異アルギニンレギュロンを用いて、高レベルのアルギニンがない場合は(例えば、消化管の外)細菌が生存できないようにする。
【0137】
宿主プラスミドの相互依存性
一部の実施形態では、本発明の遺伝子操作した細菌はまた、プラスミド相互依存性を生成するように改変したプラスミドを含む。ある実施形態では、相互依存性宿主プラスミドのプラットフォームはGeneGuardである(Wright et al.,2015)。一部の実施形態では、GeneGuardプラスミドは、(i)必須の複製イニシエータータンパク質がトランスに提供されている条件付き複製起点、(ii)遺伝子の転座を介して宿主によりレスキューされ、また、富栄養培地において使用するのに適合した栄養要求性改変、および/または、(iii)広スペクトル毒素をコードする核酸配列を含む。毒素遺伝子を用いて、抗毒素を発現しない株(例えば、野生型細菌)に対しプラスミドDNA自体を不利にすることにより、プラスミドの拡散に対し不利な選択を行うことができる。一部の実施形態では、GeneGuardプラスミドは、抗生物質を選択することなく、少なくとも100世代にわたり安定的である。一部の実施形態では、GeneGuardプラスミドは、宿主の増殖を妨害しない。GeneGuardプラスミドを用いて、本発明の遺伝子操作した細菌において、意図しないプラスミドの伝播を大きく低減させる。
【0138】
相互依存性宿主プラスミドのプラットフォームは、単独で、または本明細書に記載するような他のバイオセーフティ機構(例えば、キルスイッチ、栄養要求性)と組み合わせて用いることができる。一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌はGeneGuardプラスミドを含む。他の実施形態では、遺伝子操作した細菌はGeneGuardプラスミドおよび/または1つもしくは複数のキルスイッチを含む。他の実施形態では、遺伝子操作した細菌はGeneGuardプラスミドおよび/または1つもしくは複数の栄養要求性を含む。さらに他の実施形態では、遺伝子操作した細菌は、GeneGuardプラスミド、1つもしくは複数のキルスイッチ、および/または1つもしくは複数の栄養要求性を含む。
【0139】
キルスイッチ
一部の実施形態では、本発明の遺伝子操作した細菌はまた、キルスイッチを含む(例えば、全体が参照により本明細書に組み込まれる米国仮特許出願第62/183935号および同第62/263329号を参照。)キルスイッチは、外部の刺激に応答して遺伝子操作した微生物を積極的に死滅させることを目的としている。細菌が生存のための必須栄養を欠くために死滅する栄養要求性突然変異とは対照的に、キルスイッチは、細胞死を引き起こす微生物内の毒性分子の生成を誘導する、環境内の特定の因子により誘発される。
【0140】
キルスイッチを用いて遺伝子操作した細菌は、in vitroでの研究目的のために、例えば、実験室環境の外でバイオ燃料生成微生物の拡散を制限するために、遺伝子操作されている。病気または疾患を処置するためのin vivo投与のために遺伝子操作した細菌はまた、治療遺伝子などの異種遺伝子の発現および送達後、または対象が治療効果を経験した後の特定の時点において死滅するようにプログラムすることができる。例えば、一部の実施形態では、キルスイッチを、argAfbrの酸素レベル依存性発現後の一定期間後に、細菌を死滅させるように活性化させる。一部の実施形態では、キルスイッチを、argAfbrの酸素レベル依存性発現後に遅れて、例えば、アルギニンまたはシトルリンの生成後に活性化させる。あるいは、細菌は、該細菌が患部の外まで広がった後に死滅するように操作することができる。具体的には、それは、微生物による対象の長期のコロニー形成、対象内の対象領域の外(例えば、消化管外)への微生物の拡散、または、対象の外側の環境への微生物の拡散(例えば、対象の便を介した環境への拡散)を防ぐのに有用である。キルスイッチで用いることができる毒素の例としては、限定されるわけではないが、バクテリオシン、リシン、および細胞膜の溶解、細胞DNAの劣化、または他のメカニズムにより細胞死を引き起こす他の分子が挙げられる。このような毒素は個別に、または組み合わせて用いることが可能である。その生成を制御するスイッチは、例えば、転写活性化(トグルスイッチ、例えば、Gardner et al.,2000を参照)、翻訳(リボレギュレータ)、またはDNA組換え(組換え系スイッチ)に基づき得、嫌気状態または活性酸素などの環境刺激を感知することが可能である。これらのスイッチは、単一の環境因子により活性化することが可能であるか、または、細胞死を誘導するためにAND、OR、およびNORの論理的構成にあるいくつかのアクティベータを必要とし得る。例えば、ANDリボレギュレータスイッチは、テトラサイクリン、イソプロピルβ−D−1−チオガラクトピラノシド(IPTG)、およびアラビノースにより活性化されて、細胞膜を透過性にして細胞を死滅させるリシンの発現を誘導する。IPTGはエンドリシンおよびホリンのmRNAの発現を誘導し、これらは次に、アラビノースおよびテトラサイクリンの添加により阻害は解除される。3つの誘導因子は全て細胞死を引き起こすために存在しなければならない。キルスイッチの例は当技術分野で既知である(Callura et al.,2010)。一部の実施形態では、キルスイッチを、argAfbrの酸素レベル依存性発現後の一定期間後に、細菌を死滅させるように活性化させる。一部の実施形態では、キルスイッチを、argAfbrの酸素レベル依存性発現後に遅れて活性化させる。
【0141】
キルスイッチは、毒素が環境条件または外部シグナルに応答して生成されるように設計する(例えば、細菌が外部刺激に応答して死滅する)、または、代わりに、いったん環境条件が存在しなくなる、もしくは外部シグナルが止まると毒素が生成されるように設計することが可能である。
【0142】
したがって、一部の実施形態では、本開示の遺伝子操作した細菌を、例えば低酸素環境において外因性環境シグナルを感知した後に死滅するように、さらにプログラミングする。一部の実施形態では、本開示の遺伝子操作した細菌、例えばargAfbrおよびリプレッサArgRを発現する細菌は、1つまたは複数のリコンビナーゼをコードする1つまたは複数の遺伝子を含み、その発現は環境条件またはシグナルに応答して誘導され、細胞を死滅させる毒素の発現に最終的には至る、1つまたは複数の組換え事象を引き起こす。一部の実施形態では、少なくとも1つの組換え事象とは、細菌毒素をコードする逆方向異種遺伝子のフリッピングであり、該毒素は次に、第1リコンビナーゼによりフリッピングした後に構成的に発現する。一実施形態では、細菌毒素の構成的発現は遺伝子操作した細菌を死滅させる。これらのタイプのキルスイッチ系では、いったん遺伝子操作した細菌細胞が外因性環境条件を感知し、対象の異種遺伝子を発現したら、組換え細菌細胞はもはや生存不可である。
【0143】
本開示の遺伝子操作した細菌、例えば、argAfbrおよびリプレッサArgRを発現する細菌が、少なくとも1つの組換え事象を引き起こす環境条件またはシグナルに応答して、1つまたは複数のリコンビナーゼを発現する別の実施形態では、遺伝子操作した細菌はさらに、外因性の環境条件またはシグナルに応答して、抗毒素をコードする異種遺伝子を発現する。一実施形態では、少なくとも1つの組換え事象とは、第1リコンビナーゼによる、細菌毒素をコードした逆方向異種遺伝子のフリッピングである。一実施形態では、細菌毒素をコードする逆方向異種遺伝子は、第1フォワードリコンビナーゼ認識配列と、第1リバースリコンビナーゼ認識配列の間に位置する。一実施形態では、細菌毒素をコードする異種遺伝子は、第1リコンビナーゼによりフリッピングした後に構成的に発現する。一実施形態では、抗毒素は毒素の活性を阻害し、それにより遺伝子操作した細菌の死滅を遅らせる。一実施形態では、遺伝子操作した細菌は、外因性の環境条件がもはや存在せず、抗毒素をコードした異種遺伝子がもはや発現しない場合に、細菌毒素により死滅する。
【0144】
別の実施形態では、少なくとも1つの組換え事象とは、第1リコンビナーゼにより第2リコンビナーゼをコードする逆方向異種遺伝子がフリッピングし、その後、第2リコンビナーゼにより細菌毒素をコードする逆方向異種遺伝子がフリッピングすることである。一実施形態では、第2リコンビナーゼをコードする逆方向異種遺伝子は、第1フォワードリコンビナーゼ認識配列と、第1リバースリコンビナーゼ認識配列の間に位置する。一実施形態では、細菌毒素をコードする逆方向異種遺伝子は、第2フォワードリコンビナーゼ認識配列と、第2リバースリコンビナーゼ認識配列の間に位置する。一実施形態では、第2リコンビナーゼをコードする異種遺伝子は、第1リコンビナーゼによりフリッピングした後に構成的に発現する。一実施形態では、細菌毒素をコードする異種遺伝子は、第2リコンビナーゼによりフリッピングした後に構成的に発現する。一実施形態では、遺伝子操作した細菌は細菌毒素により死滅する。一実施形態では、遺伝子操作した細菌はさらに、外因性の環境条件に応答して抗毒素をコードする異種遺伝子を発現する。一実施形態では、抗毒素は、外因性の環境条件が存在する場合に毒素の活性を阻害し、それにより遺伝子操作した細菌の死滅を遅らせる。一実施形態では、遺伝子操作した細菌は、外因性の環境条件がもはや存在せず、抗毒素をコードする異種遺伝子がもはや発現しない場合に、細菌毒素によって死滅する。
【0145】
一実施形態では、少なくとも1つの組換え事象とは、第1リコンビナーゼにより、第2リコンビナーゼをコードする逆方向異種遺伝子がフリッピングし、その後、第2リコンビナーゼにより、第3リコンビナーゼをコードする逆方向異種遺伝子がフリッピングし、その後、第3リコンビナーゼにより、細菌毒素をコードする逆方向異種遺伝子がフリッピングすることである。
【0146】
一実施形態では、少なくとも1つの組換え事象とは、第1リコンビナーゼにより、第1除去酵素をコードする逆方向異種遺伝子のフリッピングである。一実施形態では、第1除去酵素をコードする逆方向異種遺伝子は、第1フォワードリコンビナーゼ認識配列と、第1リバースリコンビナーゼ認識配列の間に位置する。一実施形態では、第1除去酵素をコードする異種遺伝子は、第1リコンビナーゼによりフリッピングした後、構成的に発現する。一実施形態では、第1除去酵素は、第1必須遺伝子を除去する。一実施形態では、プログラムされた組換え細菌細胞は、第1必須遺伝子が除去された後は生存不可である。
【0147】
一実施形態では、第1リコンビナーゼはさらに、第2除去酵素をコードする逆方向異種遺伝子をフリッピングする。一実施形態では、第2除去酵素をコードする逆方向異種遺伝子は、第2フォワードリコンビナーゼ認識配列と、第2リバースリコンビナーゼ認識配列の間に位置する。一実施形態では、第2除去酵素をコードする異種遺伝子は、第1リコンビナーゼによりフリッピングした後、構成的に発現する。一実施形態では、遺伝子操作した細菌は、第1必須遺伝子および第2必須遺伝子が両方除去された後は、死滅するか、または、もはや生存不可である。一実施形態では、遺伝子操作した細菌は、第1リコンビナーゼにより、第1必須遺伝子が除去されるか、または第2必須遺伝子が除去されるかのいずれかの場合で、死滅するか、または、もはや生存不可である。
【0148】
一実施形態では、遺伝子操作した細菌は、少なくとも1つの組換え事象が起きた後に死滅する。別の実施形態では、遺伝子操作した細菌は、少なくとも1つの組換え事象が起きた後にもはや生存不可である。
【0149】
これらの実施形態のいずれかにおいて、リコンビナーゼは、BxbI、PhiC31、TP901、BxbI、PhiC31、TP901、HK022、HP1、R4、Int1、Int2、Int3、Int4、Int5、Int6、Int7、Int8、Int9、Int10、Int11、Int12、Int13、Int14、Int15、Int16、Int17、Int18、Int19、Int20、Int21、Int22、Int23、Int24、Int25、Int26、Int27、Int28、Int29、Int30、Int31、Int32、Int33、およびInt34から成る群から選択されるリコンビナーゼ、またはその生物学的に活性な断片であり得る。
【0150】
上記のキルスイッチ回路では、毒素は環境因子またはシグナルの存在下で生成される。キルスイッチ回路の別の態様では、毒素は環境因子の存在下で阻害され(生成されない)、その後、いったん環境条件またはシグナルがもはや存在しなくなれば生成される。毒素が外部因子またはシグナルの存在下で阻害される(そして、いったん外部シグナルが除去されれば活性化する)例示的なキルスイッチを、図39、40、62、および63に示す。本開示は、外因性環境においてアラビノースまたは他の糖を感知した際に1つまたは複数の異種遺伝子を発現させる組換え細菌細胞を提供する。この態様では、組換え細菌細胞はaraC遺伝子を含有し、これは、araBADプロモータの制御下で、1つまたは複数の遺伝子と同様にAraC転写因子をコードする。アラビノースがない場合、AraC転写因子は、araBADプロモータの制御下で遺伝子の転写を阻害する配座をとる。アラビノースの存在下では、AraC転写因子の配座は変化し、これは、それがAraBADプロモータに結合し、該プロモータを活性化させることを可能にし、これは所望の遺伝子の発現を誘導する。
【0151】
したがって、1つまたは複数の異種遺伝子が外因性環境においてアラビノースを感知すると発現する、一部の実施形態では、1つまたは複数の異種遺伝子は、直接的または間接的に、araBADの制御下にある。一部の実施形態では、発現する異種遺伝子は、以下の、異種治療遺伝子、抗毒素をコードする異種遺伝子、リプレッサタンパク質もしくはポリペプチドをコードする異種遺伝子、例えばTetRリプレッサ、細菌細胞に見られない必須タンパク質をコードする異種遺伝子、および/または、調節タンパク質もしくはポリペプチドをコードする異種のうちの1つまたは複数から選択される。
【0152】
アラビノース誘導性プロモータは、Para、ParaB、ParaC、およびParaBADを含め当技術分で既知である。一実施形態では、アラビノース誘導性プロモータは大腸菌由来である。一部の実施形態では、ParaCプロモータおよびParaBADプロモータは二方向性のプロモータとして機能し、ParaBADプロモータは一方の方向で異種遺伝子の発現を制御し、(ParaBADプロモータにごく接近し、ParaBADプロモータとは逆鎖にある)ParaCはもう一方の方向で異種遺伝子の発現を制御する。アラビノースの存在下では、両プロモータから両異種遺伝子の転写が誘導される。しかしながら、アラビノースがない場合は、両プロモータから両異種遺伝子の転写は誘導されない。
【0153】
本開示の例示的な一実施形態では、本開示の遺伝子操作した細菌は、少なくとも以下の配列:テトラサイクリンリプレッサタンパク質(TetR)をコードした異種遺伝子に操作可能に連結したParaBADプロモータ、AraC転写因子をコードした異種遺伝子に操作可能に連結したParaCプロモータ、および、テトラサイクリンリプレッサタンパク質により阻害されるプロモータ(PTetR)に操作可能に連結した細菌毒素をコードする異種遺伝子を有するキルスイッチを含有する。アラビノースの存在下では、AraC転写因子はParaBADプロモータを活性化し、これはTetRタンパク質の転写を活性化し、これは次に、毒素の転写を阻害する。しかしながら、アラビノースがない場合は、AraCはParaBADプロモータからの転写を抑制し、TetRタンパク質は発現しない。この場合、異種毒素遺伝子の発現が活性化され、毒素が発現する。毒素は組換え細菌細胞において蓄積され、組換え細菌細胞は死滅する。一実施形態では、AraC転写因子をコードするAraC遺伝子は、構成的プロモータの制御下にあり、そのため構成的に発現する。
【0154】
本開示の一実施形態では、組換え細菌細胞はさらに、構成的プロモータの制御下で抗毒素を含む。この状況では、アラビノースの存在下では、毒素はTetRタンパク質による阻害により発現せず、抗毒素タンパク質は細胞内に蓄積される。しかしながら、アラビノースがない場合、TetRタンパク質は発現せず、毒素の発現が誘導される。毒素は組換え細菌細胞内で蓄積され始める。組換え細菌細胞は、いったん毒素タンパク質が細胞内の抗毒素タンパク質と等しいか、またはそれより多い量で存在するともはや生存不可であり、組換え細菌細胞は毒素により死滅させられるだろう。
【0155】
本開示の別の実施形態では、組換え細菌細胞はさらに、ParaBADプロモータの制御下で抗毒素を含む。この状況では、アラビノースの存在下で、TetRおよび抗毒素が発現し、抗毒素は細胞内で蓄積され毒素はTetRタンパク質による阻害により発現しない。しかしながら、アラビノースがない場合は、TetRタンパク質と抗毒素の両方が発現せず、毒素の発現が誘導される。毒素は組換え細菌細胞内で蓄積され始める。組換え細菌細胞は、いったん毒素タンパク質が発現したらもはや生存不可であり、組換え細菌細胞は毒素により死滅させられるだろう。
【0156】
本開示の別の例示的な実施形態では、本開示の遺伝子操作した細菌は、少なくとも以下の配列:組換え細菌細胞に見られない(生存のために必要な)必須ポリペプチドをコードする異種遺伝子に操作可能に連結したParaBADプロモータ、および、AraC転写因子をコードする異種遺伝子に操作可能に連結したParaCプロモータを有するキルスイッチを含有する。アラビノースの存在下では、AraC転写因子はParaBADプロモータを活性化し、これは必須ポリペプチドをコードする異種遺伝子の転写を活性化し、組換え細菌が生存することを可能にする。しかしながら、アラビノースがない場合は、AraCはParaBADプロモータからの転写を抑制し、生存に必要な必須タンパク質は発現しない。この場合、組換え細菌細胞はアラビノースの非存在下で死滅する。一部の実施形態では、組換え細菌細胞に見られない必須ポリペプチドをコードする異種遺伝子に操作可能に連結したParaBADプロモータの配列は、上で直接記載したTetR/毒素キルスイッチ系と共に細菌細胞内に存在し得る。一部の実施形態では、組換え細菌細胞に見られない必須ポリペプチドをコードする異種遺伝子に操作可能に連結したParaBADプロモータの配列は、上で直接記載したTetR/毒素/抗毒素キルスイッチシステム系と共に細菌細胞内に存在し得る。
【0157】
一部の実施形態では、本開示の遺伝子操作した細菌、例えば、argAfbrとリプレッサArgRを発現する細菌はさらに、上記のキルスイッチ回路の何れかのコンポーネントをコードする遺伝子を含む。
【0158】
上記の実施形態の何れかにおいて、細菌毒素は、リシン、Hok、Fst、TisB、LdrD、Kid、SymE、MazF、FlmA、Ibs、XCV2162、dinJ、CcdB、MazF、ParE、YafO、Zeta、hicB、relB、yhaV、yoeB、chpBK、hipA、ミクロシンB、ミクロシンB17、ミクロシンC、ミクロシンC7−C51、ミクロシンJ25、ミクロシンColV、ミクロシン24、ミクロシンL、ミクロシンD93、ミクロシンL、ミクロシンE492、ミクロシンH47、ミクロシンI47、ミクロシンM、コリシンA、コリシンE1、コリシンK、コリシンN、コリシンU、コリシンB、コリシンIa、コリシンIb、コリシン5、コリシン10、コリシンS4、コリシンY、コリシンE2、コリシンE7、コリシンE8、コリシンE9、コリシンE3、コリシンE4、コリシンE6;コリシンE5、コリシンD、コリシンM、およびクロアシンDF13からなる群または生物学的に活性なその断片から選択される。
【0159】
上記の実施形態の何れかでは、抗毒素は、抗リシン、Sok、RNAII、IstR、RdlD、Kis、SymR、MazE、FlmB、Sib、ptaRNA1、yafQ、CcdA、MazE、ParD、yafN、Epsilon、HicA、relE、prlF、yefM、chpBI、hipB、MccE、MccECTD、MccF、Cai、ImmE1、Cki、Cni、Cui、Cbi、Iia、Imm、Cfi、Im10、Csi、Cyi、Im2、Im7、Im8、Im9、Im3、Im4、ImmE6、クロアシン免疫タンパク質(Cim)、ImmE5、ImmD、およびCmiからなる群または生物学的に活性なその断片から選択される。
【0160】
一実施形態では、細菌毒素は遺伝子操作した細菌に対し殺菌性である。一実施形態では、細菌毒素は、遺伝子操作した細菌に対し静菌性である。
【0161】
一部の実施形態では、本明細書で提供する操作した細菌は、アルギニン生合成経路においてグルタミンからアルギニンおよびまたは中間副生成物、例えばシトルリンへの変換を担う酵素をコードするオペロンそれぞれの、アルギニン介在性阻害を低減または消失させる1つまたは複数の核酸突然変異を含むアルギニンレギュロンを有し、その結果、突然変異アルギニンレギュロンは、同一条件下の同じ細菌サブタイプに由来する非改変レギュロンよりも多くのアルギニンおよび/または中間副生成物を生成する。一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌は、アルギニンフィードバック耐性N−アセチルグルタミン酸シンターゼ突然変異体、例えばargAfbrを含む。一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌は、アルギニン生合成酵素N−アセチルグルタミン酸キナーゼ、N−アセチルグルタミルリン酸レダクターゼ、アセチルオルニチンアミノトランスフェラーゼ、N−アセチルオルニチナーゼ、オルニチントランスカルバミラーゼ、アルギニノスクシネートシンターゼ、アルギニノスクシネートリアーゼ、およびカルバモイルリン酸シンターゼをコードするオペロンそれぞれの少なくとも1つのARGボックスにおいて1つまたは複数の拡散突然変異を含む、突然変異アルギニンレギュロンを含み、それによりレギュロンの阻害を解除し、アルギニンおよび/または中間副生成物の生合成を強化する。一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌はさらに、アルギニンフィードバック耐性N−アセチルグルタミン酸シンターゼ突然変異体を含む。一部の実施形態では、アルギニンフィードバック耐性N−アセチルグルタミン酸シンターゼ突然変異体は、酸素レベル依存性プロモータにより制御される。一部の実施形態では、アルギニンフィードバック耐性N−アセチルグルタミン酸シンターゼ突然変異体は、低酸素または嫌気的な条件下で誘導されるプロモータにより制御される。一部の実施形態では、プロモータは、フマル酸・硝酸レダクターゼレギュレータ(FNR)プロモータ、アルギニンデイミナーゼ・硝酸還元(ANR)プロモータ、および異化型硝酸呼吸レギュレータ(DNR)プロモータから選択される。一部の実施形態では、アルギニンフィードバック耐性N−アセチルグルタミン酸シンターゼ突然変異体は、argAfbrである。
【0162】
一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌は、アルギニン生合成酵素をコードするオペロンそれぞれの少なくとも1つのARGボックスにおいて1つまたは複数の核酸突然変異を含む、突然変異アルギニンレギュロンと、アルギニンフィードバック耐性N−アセチルグルタミン酸シンターゼ突然変異体とを含む。一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌は突然変異アルギニンレギュロンを含み、ここにおいて該細菌は、同一条件下の同じ細菌サブタイプに由来する野生型N−アセチルグルタミン酸シンセターゼと比較し、アルギニンフィードバック阻害を低減させるように突然変異させた機能性N−アセチルグルタミン酸シンセターゼをコードする遺伝子を含み、突然変異N−アセチルグルタミン酸シンセターゼをコードする遺伝子の発現は、低酸素または嫌気的な条件下で誘導されるプロモータにより制御され、突然変異アルギニンレギュロンは、アルギニン生合成酵素N−アセチルグルタミン酸キナーゼ、N−アセチルグルタメートリン酸レダクターゼ、アセチルオルニチンアミノトランスフェラーゼ、N−アセチルオルニチナーゼ、カルバモイルリン酸シンターゼ、オルニチントランスカルバミラーゼ、アルギニノスクシネートシンターゼ、およびアルギニノスクシネートリアーゼをコードする遺伝子を含む1つまたは複数のオペロンを含み、各オペロンは、ArgRリプレッサ結合を介したオペロンのアルギニン介在性阻害を低減させる、1つまたは複数の核酸突然変異によって特徴付けられる1つまたは複数の突然変異ARGボックスを含み、オペロン内の遺伝子の転写を促進するのに十分な親和性を有するRNAポリメラーゼ結合を保持する。
【0163】
一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌は、アルギニン生合成酵素をコードするオペロンそれぞれの少なくとも1つのARGボックスにおいて1つまたは複数の核酸突然変異を含む、突然変異アルギニンレギュロンと、アルギニンフィードバック耐性N−アセチルグルタミン酸シンターゼ突然変異体とを含む栄養要求株である。一実施形態では、アルギニン生合成酵素をコードするオペロンそれぞれの少なくとも1つのARGボックスにおいて1つまたは複数の核酸突然変異を含む、突然変異アルギニンレギュロンと、アルギニンフィードバック耐性N−アセチルグルタミン酸シンターゼ突然変異体とを含む遺伝子操作した細菌は、cysE、glnA、ilvD、leuB、lysA、serA、metA、glyA、hisB、ilvA、pheA、proA、thrC、trpC、tyrA、thyA、uraA、dapA、dapB、dapD、dapE、dapF、flhD、metB、metC、proAB、およびthi1の栄養要求株から選択される栄養要求株である。一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌は2つ以上の栄養要求性を有し、例えば、それらはΔthyA栄養要求株およびΔdapA栄養要求株である。
【0164】
一部の実施形態では、アルギニン生合成酵素をコードするオペロンそれぞれの少なくとも1つのARGボックスにおいて1つまたは複数の核酸突然変異を含む、突然変異アルギニンレギュロンと、アルギニンフィードバック耐性N−アセチルグルタミン酸シンターゼ突然変異体とを含む遺伝子操作した細菌は、さらに、本明細書で提供する何れかのキルスイッチ回路などのキルスイッチ回路を含む。例えば、一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌はさらに、誘導性プロモータの制御下にある1つまたは複数のリコンビナーゼと、逆方向の毒素配列とをコードする1つまたは複数の遺伝子を含む。一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌はさらに、抗毒素をコードする1つまたは複数の遺伝子を含む。一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌はさらに、誘導性プロモータの制御下にある1つまたは複数のリコンビナーゼをコードする1つまたは複数の遺伝子と、1つまたは複数の逆方向除去遺伝子とを含み、ここにおいて該除去遺伝子は、必須遺伝子を削除する酵素をコードする。一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌はさらに、抗毒素をコードする1つまたは複数の遺伝子を含む。一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌はさらに、TetRリプレッサ結合部位を有するプロモータの制御下にある毒素をコードする1つまたは複数の遺伝子と、ParaBADなどのアラビノースにより誘導される誘導性プロモータの制御下にあるTetRをコードする遺伝子とを含む。一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌はさらに、抗毒素をコードする1つまたは複数の遺伝子を含む。
【0165】
一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌は、アルギニン生合成酵素をコードするオペロンそれぞれの少なくとも1つのARGボックスにおいて1つまたは複数の核酸突然変異を含む、突然変異アルギニンレギュロンと、アルギニンフィードバック耐性N−アセチルグルタミン酸シンターゼ突然変異体とを含む栄養要求株であり、さらに、本明細書に記載のキルスイッチ回路の何れかなどの、キルスイッチ回路を含む。
【0166】
上記の遺伝子操作した細菌の一部の実施形態では、アルギニンフィードバック耐性N−アセチルグルタミン酸シンセターゼをコードする遺伝子は、細菌のプラスミドに存在し、プラスミドにおいて、低酸素または嫌気的な条件下で誘導されるプロモータに操作可能に連結する。他の実施形態では、アルギニンフィードバック耐性N−アセチルグルタミン酸シンセターゼをコードする遺伝子は細菌の染色体に存在し、染色体において、低酸素または嫌気的な条件下で誘導されるプロモータに操作可能に連結する。
【0167】
一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌は、1つまたは複数の核酸突然変異を含む突然変異アルギニンリプレッサを含み、その結果、アルギニンリプレッサの機能は低減もしくは不活化するか、または、遺伝子操作した細菌はアルギニンリプレッサを有さず(例えば、アルギニンリプレッサ遺伝子が削除されている)、レギュロンの阻害解除ならびに、アルギニンおよび/もしくは中間副生成物の生合成の強化がもたらされる。一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌はさらに、アルギニンフィードバック耐性N−アセチルグルタミン酸シンターゼ突然変異体を含む。一部の実施形態では、アルギニンフィードバック耐性N−アセチルグルタミン酸シンターゼ突然変異体は、酸素レベル依存性プロモータにより制御される。一部の実施形態では、アルギニンフィードバック耐性N−アセチルグルタミン酸シンターゼ突然変異体は、低酸素または嫌気的な条件下で誘導されるプロモータにより制御される。一部の実施形態では、プロモータは、フマル酸・硝酸レダクターゼレギュレータ(FNR)プロモータ、アルギニンデイミナーゼ・硝酸還元(ANR)プロモータ、および異化型硝酸呼吸レギュレータ(DNR)プロモータから選択される。一部の実施形態では、アルギニンフィードバック耐性N−アセチルグルタミン酸シンターゼ突然変異体は、argAfbrである。
【0168】
一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌は、突然変異したアルギニンリプレッサを含むか、またはアルギニンリプレッサは削除されており、そして、アルギニンフィードバック耐性N−アセチルグルタミン酸シンターゼ突然変異体を含む。一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌はアルギニンレギュロンを含み、ここにおいて細菌は、同一条件下の同じ細菌サブタイプに由来する野生型N−アセチルグルタミン酸シンセターゼと比較しアルギニンフィードバック阻害が低減した機能性N−アセチルグルタミン酸シンセターゼをコードする遺伝子を含み、ここにおいてアルギニンフィードバック耐性N−アセチルグルタミン酸シンセターゼをコードする遺伝子の発現は、外因性の環境条件により誘導されるプロモータにより制御され、細菌は機能性ArgRリプレッサを欠くように遺伝子操作されている。
【0169】
一部の実施形態では、突然変異アルギニンリプレッサを含むか、またはアルギニンリプレッサが削除されており、そして、アルギニンフィードバック耐性N−アセチルグルタミン酸シンターゼ突然変異体を含む遺伝子操作した細菌は、栄養要求株である。一実施形態では、突然変異アルギニンリプレッサを含むか、またはアルギニンリプレッサは削除されており、そして、アルギニンフィードバック耐性N−アセチルグルタミン酸シンターゼ突然変異体を含む遺伝子操作した細菌は、cysE、glnA、ilvD、leuB、lysA、serA、metA、glyA、hisB、ilvA、pheA、proA、thrC、trpC、tyrA、thyA、uraA、dapA、dapB、dapD、dapE、dapF、flhD、metB、metC、proAB、およびthi1の栄養要求株から選択される栄養要求株である。一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌は2つ以上の栄養要求性を有し、例えば、それらはΔthyA栄養要求株およびΔdapA栄養要求株である。
【0170】
一部の実施形態では、突然変異アルギニンリプレッサを含むか、またはアルギニンリプレッサは削除されており、そして、アルギニンフィードバック耐性N−アセチルグルタミン酸シンターゼ突然変異体を含む遺伝子操作した細菌はさらに、本明細書で提供するキルスイッチ回路の何れかなどのキルスイッチ回路を含む。例えば、一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌はさらに、誘導性プロモータの制御下にある1つまたは複数のリコンビナーゼをコードする1つまたは複数の遺伝子と、逆方向の毒素配列をコードする1つまたは複数の遺伝子とを含む。一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌はさらに、抗毒素をコードする1つまたは複数の遺伝子を含む。一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌はさらに、誘導性プロモータの制御下にある1つまたは複数のリコンビナーゼをコードする1つまたは複数の遺伝子と、1つまたは複数の逆方向除去遺伝子を含み、ここにおいて該除去遺伝子は、必須遺伝子を削除する酵素をコードする。一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌はさらに、抗毒素をコードする1つまたは複数の遺伝子を含む。一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌はさらに、TetRリプレッサ結合部位を有するプロモータの制御下にある毒素をコードする1つまたは複数の遺伝子と、ParaBADなどのアラビノースにより誘導される誘導性プロモータの制御下にあるTetRをコードする遺伝子とを含む。一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌はさらに、抗毒素をコードする1つまたは複数の遺伝子を含む。
【0171】
一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌は、突然変異アルギニンリプレッサを含むか、またはアルギニンリプレッサは削除されており、そして、アルギニンフィードバック耐性N−アセチルグルタミン酸シンターゼ突然変異体を含む栄養要求株であり、さらに、本明細書に記載のキルスイッチ回路の何れかなどの、キルスイッチ回路を含む。
【0172】
上記の遺伝子操作した細菌の一部の実施形態では、アルギニンフィードバック耐性N−アセチルグルタミン酸シンターゼをコードする遺伝子は細菌のプラスミドに存在し、プラスミドにおいて、低酸素または嫌気的な条件下で誘導されるプロモータに、操作可能に連結する。他の実施形態では、アルギニンフィードバック耐性N−アセチルグルタミン酸シンセターゼは細菌の染色体に存在し、染色体において、低酸素または嫌気的な条件下で誘導されるプロモータに、操作可能に連結する。
【0173】
アンモニア輸送
細胞へのアンモニア輸送を強化するために、アンモニア輸送体を本発明の遺伝子操作した細菌において発現または改変することができる。amtBは、アンモニアを細菌細胞に輸送する膜輸送タンパク質である。一部の実施形態では、本発明の遺伝子操作した細菌はまた、天然amtB遺伝子の多数のコピーを含む。一部の実施形態では、本発明の遺伝子操作した細菌はまた、異なる細菌種に由来するamtB遺伝子を含む。一部の実施形態では、本発明の遺伝子操作した細菌は、異なる細菌種に由来するamtB遺伝子の多数のコピーを含む。一部の実施形態では、本発明の遺伝子操作した細菌の天然amtB遺伝子は、改変されていない。一部の実施形態では、本発明の遺伝子操作した細菌は、その天然プロモータ、誘導性プロモータ、天然プロモータよりも強力なプロモータ、例えば、GlnRSプロモータ、P(Bla)プロモータ、または構成的プロモータにより制御されるamtB遺伝子を含む。
【0174】
一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌の天然amtB遺伝子は改変されておらず、天然amtB遺伝子の1つまたは複数の追加コピーが、argAfbrの発現を制御するものと同一の誘導性プロモータ、例えばFNRプロモータ、または、argAfbrの発現を制御するものとは異なる誘導性プロモータ、または、構成的プロモータの制御下で、ゲノムに挿入される。代替の実施形態では、天然amtB遺伝子は改変されておらず、異なる細菌種に由来する非天然amtB遺伝子のコピーが、argAfbrの発現を制御するものと同一の誘導性プロモータ、例えばFNRプロモータ、または、argAfbrの発現を制御するものとは異なる誘導性プロモータ、または構成的プロモータの制御下で、ゲノムに挿入される。
【0175】
一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌の天然amtB遺伝子は改変されておらず、天然amtB遺伝子の1つまたは複数の追加コピーが、argAfbrの発現を制御するものと同一の誘導性プロモータ、例えばFNRプロモータ、または、argAfbrの発現を制御するものとは異なる誘導性プロモータ、または構成的プロモータの制御下で、細菌のプラスミドに存在する。代替の実施形態では、天然amtB遺伝子は改変されておらず、異なる細菌種に由来する非天然amtB遺伝子のコピーが、argAfbrの発現を制御するものと同一の誘導性プロモータ、例えばFNRプロモータ、または、argAfbrの発現を制御するものとは異なる誘導性プロモータ、または構成的プロモータの制御下で、細菌のプラスミドに存在する。
【0176】
一部の実施形態では、天然amtB遺伝子を突然変異誘発させ、アンモニア輸送の増大を示す突然変異体を選択し、突然変異誘発amtB遺伝子を単離し、遺伝子操作した細菌に挿入する。一部の実施形態では、天然amtB遺伝子を突然変異誘発させ、アンモニア輸送の増大を示す突然変異体を選択し、その突然変異体を用いて本発明の細菌を生成する。本明細書に記載のアンモニア輸送体改変体はプラスミドまたは染色体に存在し得る。
【0177】
一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌は大腸菌Nissleであり、大腸菌Nissleの天然amtB遺伝子は改変されず、天然大腸菌NissleのamtB遺伝子の1つまたは複数の追加コピーが、argAfbrの発現を制御するものと同一の誘導性プロモータ、例えばFNRプロモータ、または、argAfbrの発現を制御するものとは異なる誘導性プロモータ、または構成的プロモータの制御下で、大腸菌Nissleゲノムに挿入される。代替の実施形態では、大腸菌Nissleの天然amtB遺伝子は改変されず、異なる細菌、例えばラクトバチルス・プランタルムに由来する非天然amtB遺伝子のコピーが、argAfbrの発現を制御するものと同一の誘導性プロモータ、例えばFNRプロモータ、または、argAfbrの発現を制御するものとは異なる誘導性プロモータ、または構成的プロモータの制御下で、大腸菌Nissleゲノムに挿入される。
【0178】
一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌は大腸菌Nissleであり、大腸菌Nissleの天然amtB遺伝子は改変されず、天然大腸菌NissleのamtB遺伝子の1つまたは複数の追加コピーが、argAfbrの発現を制御するものと同一の誘導性プロモータ、例えばFNRプロモータ、または、argAfbrの発現を制御するものとは異なる誘導性プロモータ、または構成的プロモータの制御下で、細菌のプラスミドに存在する。代替の実施形態では、大腸菌Nissleの天然amtB遺伝子は改変されず、異なる細菌、例えばラクトバチルス・プランタルムに由来する非天然amtB遺伝子のコピーが、argAfbrの発現を制御するものと同一の誘導性プロモータ、例えばFNRプロモータ、または、argAfbrの発現を制御するものとは異なる誘導性プロモータ、または構成的プロモータの制御下で、細菌のプラスミドに存在する。
【0179】
医薬組成物および製剤
本発明の遺伝子操作した細菌を含む医薬組成物を用いて、高アンモニア血症に関連する疾患または高アンモニア血症に関連する症状を処置し、管理し、改善させ、および/または予防することができる。1つまたは複数の遺伝子操作した細菌を含む本発明の医薬組成物は、単独で、または、予防薬、治療薬、および/もしくは薬学的に許容される担体と組み合わせて提供される。
【0180】
ある実施形態では、医薬組成物は、本明細書に記載の遺伝子改変体、例えば、突然変異アルギニンレギュロンを含むように操作した1つの種、株、またはサブタイプの細菌を含む。代替の実施形態では、医薬組成物は、本明細書に記載の遺伝子改変体、例えば、突然変異アルギニンレギュロンを含むように操作した2つ以上の種、株、および/またはサブタイプの細菌を含む。
【0181】
本発明の医薬組成物は、有効成分を処理して医薬用途向けの組成物にすることを容易にする賦形剤および助剤を含む、1つまたは複数の生理学的に許容される担体を用いて、従来の方式で製剤化され得る。医薬組成物を製剤化する方法は当技術分野で既知である(例えば、“Remington´s Pharmaceutical Sciences,” Mack Publishing Co.,Easton,PAを参照)。一部の実施形態では、医薬組成物を、錠剤化、凍結乾燥、直接圧縮、従来型の混合、溶解、造粒、粉末化、乳化、カプセル化、封入、噴霧乾燥して、錠剤、顆粒、ナノ粒子、ナノカプセル、マイクロカプセル、マイクロタブレット、ペレット、または粉末を形成するが、これらは腸溶コーティングされる場合もされない場合もある。適切な製剤は投与経路によって決まる。
【0182】
本発明の遺伝子操作した細菌は、任意の適切な剤形(例えば、液体、カプセル、サシェ、硬カプセル、軟カプセル、錠剤、腸溶錠、懸濁液用粉末、顆粒、または経口投与用のマトリックス徐放性形態)で、任意の適切な投与形式(例えば、経口性、局所性、即時放出性、拍動放出性、遅延放出性、または徐放性)用に、医薬組成物に製剤化することができる。遺伝子操作した細菌の適切な投与量は、約10〜1012細菌に及び得る。組成物は、日毎、週毎、または月毎に1回または複数回投与することができる。遺伝子操作した細菌は、1つまたは複数の薬学的に許容される担体、増粘剤、希釈剤、緩衝剤、界面活性剤、中性又はカチオン性の脂質、脂質複合体、リポソーム、浸透増強剤、担体化合物、および他の薬学的に許容される担体または薬剤を含む医薬組成物に製剤化し得る。
【0183】
本発明の遺伝子操作した細菌は、局所的に投与することができ、軟膏、クリーム、経皮パッチ、ローション、ゲル、シャンプー、スプレー、エアロゾル、水剤、エマルジョンの形態、および当業者に周知の他の形態に製剤化することができる。例えば、“Remington´s Pharmaceutical Sciences,” Mack Publishing Co.,Easton,PAを参照。一実施形態では、噴霧不可の局所的剤形として、局所適用に適合した担体または1つもしくは複数の賦形剤を含み、水よりも動粘度の高い粘性形態〜半固形または固形を用いる。適切な製剤としては、限定されるわけではないが、水剤、懸濁液、エマルジョン、クリーム、軟膏、散剤、塗布薬、膏薬などが挙げられ、これは滅菌するか、または、種々の特性、例えば浸透圧に影響を与えるために助剤(例えば、保存剤、安定剤、湿潤剤、緩衝剤、もしくは塩)と混ぜることができる。他の適切な局所剤形には噴霧可能なエアゾール製剤が含まれ、ここでは、固体または液体の不活性担体と組み合わさった有効成分が、加圧された揮発性物質(例えば、フレオンなどのガス状噴霧剤)との混合物か、または、スクイズ容器にパッケージ化される。保湿剤または湿潤剤も医薬組成物および剤形に加えることが可能である。このような追加成分の例は当技術分野で周知である。
【0184】
本発明の遺伝子操作した細菌は、錠剤、丸薬、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁剤などとして、経口投与および製剤化し得る。経口用の薬理組成物を、所望により適切な助剤を加えた後に固形賦形剤を用いて作成し、オプションとして、結果として生じる混合物を粉砕し、顆粒の混合物を加工して、錠剤または糖衣錠のコアを得ることが可能である。適切な賦形剤としては、限定されるわけではないが、ラクトース、スクロース、マンニトール、もしくはソルビトールを含む糖などの充填材;トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボメチルセルロースナトリウムなどのセルロース組成物;および/または、ポリビニルピロリドン(PVP)もしくはポリエチレングリコール(PEG)などの生理学的に許容されるポリマーが挙げられる。架橋されたポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸、またはアルギン酸ナトリウムなどのそれらの塩などの崩壊剤も加えることができる。
【0185】
錠剤またはカプセルは、薬学的に許容される、結合剤などの賦形剤(例えば、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、スクロース、グルコース、ソルビトール、デンプン、ガム、カオリン、およびトラガカント);充填材(例えば、ラクトース、結晶セルロース、もしくはリン酸水素カルシウム);潤滑剤(例えば、カルシウム、アルミニウム、亜鉛、ステアリン酸、ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、デンプン、安息香酸ナトリウム、L−ロイシン、ステアリン酸マグネシウム、タルク、もしくはシリカ);崩壊剤(例えば、デンプン、ジャガイモデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、糖、セルロース誘導体、シリカ粉末);または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)を用いて従来の手段により調製することが可能である。錠剤は、当技術分野で周知の方法によりコーティングすることができる。コーティングの外殻が存在する場合があり、共通の膜としては、限定されるわけではないが、ポリラクチド、ポリグリコール酸、ポリ酸無水物、他の生分解性ポリマー、アルギナート−ポリリジンリシン−アルギナート(APA)、アルギナート−ポリメチレン−co−グアニジン−アルギナート(A−PMCG−A)、ヒドロキシメチルアクリレート−メチルメタクリレート(HEMA−MMA)、多層HEMA−MMA−MAA、ポリアクリロニトリルビニルクロライド(PAN−PVC)、アクリロニトリル/メタリルスルホン酸ナトリウム(AN−69)、ポリエチレングリコール/ポリペンタメチルシクロペンタシロキサン/ポリジメチルシロキサン(PEG/PD5/PDMS)、ポリN,N−ジメチルアクリルアミド(PDMAAm)、シリカ被包、セルロースサルフェート/アルギン酸ナトリウム/ポリメチレン−co−グアニジン(CS/A/PMCG)、セルロースアセテートフタレート、アルギン酸カルシウム、k−カラギーナン−ローカストビーンガムゲルビーズ、ゲラン−キサンタンビーズ、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、カラギーナン、ポリデンプン無水物、デンプンポリメタクリレート、ポリアミノ酸、および腸溶性コーティングポリマーが挙げられる。
【0186】
一部の実施形態では、遺伝子操作した細菌は、消化管または消化管の特定領域、例えば大腸への放出向けに腸溶コーティングする。胃から結腸の典型的なpHプロファイルは約1〜4(胃)、5.5〜6(十二指腸)、7.3〜8.0(回腸)、および5.5〜6.5(結腸)である。一部の病気では、pHプロファイルは変わり得る。一部の実施形態では、コーティングは、放出部位を特定するために、特定のpH環境で分解される。一部の実施形態では、少なくとも2つのコーティングを用いる。一部の実施形態では、外側のコーティングと内側のコーティングは、異なるpH値で分解される。
【0187】
経口投与向けの液体製剤は、水剤、シロップ、懸濁剤、または、使用前に水もしくは他の適切な溶媒と構成物をなす乾燥品の形態をとることができる。このような液体製剤は、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体、または水素化食用油脂);乳化剤(例えば、レシチンまたはアカシア);非水性媒体(例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール、または分画化植物油);および保存剤(例えば、メチルもしくはプロピル−p−ヒドロキシベンゾエートまたはソルビン酸)などの薬学的に許容される薬剤とともに従来の手段により調製することができる。製剤はまた、緩衝塩、着香剤、着色剤、および甘味剤を適宜含んでよい。経口投与向けの製剤は、本発明の遺伝子操作した細菌を徐放、制御放出、または持続放出するために適切に製剤化することができる。
【0188】
ある実施形態では、本発明の遺伝子操作した細菌は、例えば不活性希釈剤または吸収可能な可食担体とともに、経口投与することができる。化合物はまた、硬殻または軟殻のゼラチンカプセルに封入すること、錠剤に圧縮すること、または、対象の食事に直接組み込むことができる。経口治療的投与のために、化合物に賦形剤を組み込むことができ、摂取可能な錠剤、バッカル錠、トローチ、カプセル、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、およびウエハなどの形態で用いることができる。本発明の化合物を非経口投与以外により投与するため、化合物をその不活性化を防ぐ物質でコーティングするか、または、化合物を該物質と同時投与する必要がある場合がある。
【0189】
一部の実施形態では、組成物を、ナノ粒子、ナノカプセル、マイクロカプセル、またはマイクロタブレットを介した小腸内投与、空腸内投与、十二指腸内投与、回腸内投与、胃シャント投与、または結腸内投与のために製剤化するが、これは腸溶コーティングされる場合もされない場合もある。本発明の医薬組成物はまた、例えば、ココアバターもしくは他のグリセリドといった従来の坐剤基剤を用いて、座薬または停留浣腸などの直腸組成物に製剤化することができる。組成物は、懸濁剤、水剤、または油性もしくは水性媒体のエマルジョンとすることができ、懸濁剤、安定剤、および/または拡散剤を含んでよい。
【0190】
本発明の遺伝子操作した細菌は、鼻腔内に投与し、エアロゾル形態、スプレー、ミスト、または液滴の形態で製剤化し、適切な噴射剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、または他の適切なガス)の使用で、加圧パックまたは噴霧器からのエアロゾルスプレーの形態で好都合に送達することができる。加圧式エアロゾルの投薬ユニットは、計量された量を送達するバルブを提供することにより決定され得る。吸入器または注入器で使用する(例えば、ゼラチン製の)カプセルおよびカートリッジは、化合物とラクトースまたはデンプンのような適切な粉末基剤との粉末混合物を含有して製剤化され得る。
【0191】
本発明の遺伝子操作した細菌は、デポ剤として投与および製剤化することができる。このような長く作用する製剤は、注入または注射により投与することができる。例えば、組成物は、適切なポリマー性もしくは疎水性の物質とともに(例えば、許容される油中のエマルジョンとして)製剤化するか、またはイオン交換樹脂とともに製剤化するか、または、やや難溶の誘導体として(例えばやや難溶の塩として)製剤化することができる。
【0192】
一部の実施形態では、本発明は、単一剤形で薬学的に許容される組成物を提供する。単一剤形は、液状形態または固形であってよい。単一剤形は、改変なしに患者に直接投与するか、または、投与前に希釈もしくは再構成することができる。ある実施形態では、単一剤形は、ボーラス形態、例えば、単回注射、および多数の錠剤、カプセル、ピルなどを含む経口用量を含む単回経口用量で投与することができる。代替の実施形態では、単回剤形を、例えば注入により、ある期間にわたり投与することができる。
【0193】
本発明の医薬組成物の単一剤形は、医薬組成物をより小さいアルコット、単一用量容器、単一用量液状形態、または錠剤、顆粒、ナノ粒子、ナノカプセル、マイクロカプセル、マイクロタブレット、ペレット、もしくは粉末などの単一用量固形に分割することにより調製することができ、これは腸溶コーティングされる場合もされない場合もある。固形中の単一用量は、患者に投与する前に、液体、典型的には滅菌水または生理食塩液を加えることにより再構成することができる。
【0194】
投与計画は、治療反応が提供されるように調節することができる。例えば、単一ボーラスを一度に投与すること、いくつかに分割された用量を所定の期間にわたり投与すること、または、用量を治療状況が示唆するように増減させることができる。投与量の仕様は、活性化合物のユニークな特性および達成すべき特定の治療効果により定められる。用量の値は、緩和すべき症状の種類および重症度により変更することができる。任意の特定の対象に対しては、特定の投与計画を、個別のニーズおよびに治療する臨床医の専門的な判断力に従い時間とともに調節することができる。
【0195】
別の実施形態では、組成物は制御放出系または徐放系で送達することが可能である。一実施形態では、ポンプを用いて制御放出または徐放を達成することができる。別の実施形態ではポリマー材料を用いて本開示の治療の制御放出または徐放を達成することができる(例えば、米国特許第5989463号明細書を参照)。徐放製剤で用いるポリマーの例としては、限定されるわけではないが、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(エチレン−co−ビニルアセタート)、ポリ(メタクリル酸)、ポリグリコライド(PLG)、ポリ無水物、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)、ポリラクチド(PLA)、ポリ(ラクチド−co−グリコライド)(PLGA)、およびポリオルトエステルが挙げられる。徐放製剤で用いるポリマーは、不活性で、溶出する不純物がなく、貯蔵時に安定的で、無菌で、生分解性であり得る。一部の実施形態では、制御放出系または徐放系は、予防標的または治療標的の近くに置くことが可能であるため、全身用量の一部のみを必要とする。当業者に既知の任意の適切な技法を用いることができる。
【0196】
本発明の遺伝子操作した細菌は、中性形態または塩形態として投与および製剤化することができる。薬学的に許容される塩としては、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などに由来するようなアニオンとともに形成されたもの、および、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどに由来するようなカチオンとともに形成されたものが挙げられる。
【0197】
成分は、別個に、または単位剤形中で混合されて、例えば、活性薬剤の量を示すアンプルまたはサシェなどの密封された容器中の凍結乾燥粉末または無水濃縮物として、供給される。投与方式が注射による場合、成分を投与前に混ぜ合わせることができるように、注射用の滅菌水または生理食塩水のアンプルを提供することが可能である。
【0198】
本発明の医薬組成物は、薬剤の量を示すアンプルまたはサシェなどの密封された容器にパッケージ化することができる。一実施形態では、本発明の1つまたは複数の医薬組成物は、密封された容器において、滅菌凍結乾燥粉末または無水濃縮物として供給され、対象への投与に適した濃度に(例えば水または生理食塩水を用いて)再構成することが可能である。一実施形態では、本発明の1つまたは複数の予防薬、治療薬、または医薬組成物は、2℃〜8℃の間で保存された密封された容器において滅菌凍結乾燥粉末として供給され、再構成後1時間以内、3時間以内、5時間以内、6時間以内、12時間以内、24時間以内、48時間以内、72時間以内、または1週間以内に投与される。抗凍結剤が、凍結乾燥剤形、主に0〜10%スクロース(最適には0.5〜1.0%)に含まれ得る。他の適切な抗凍結剤には、トレハロースおよびラクトースが含まれる。他の適切な充填材としてはグリシンおよびアルギニン(この何れかは0〜0.05%の濃度で含まれ得る)、ならびに、ポリソルベート80(最適には、0.005〜0.01%の濃度で含まれる)が挙げられる。追加の界面活性剤としては、限定されるわけではないが、ポリソルベート20およびBRIJ(登録商標)界面活性剤が挙げられる。医薬組成物は、注射可能な溶液として調製することができ、さらに、吸収または分散を高めるのに用いられるもの、例えばヒアルロニダーゼなど、アジュバントとして有用な薬剤を含むことが可能である。
【0199】
投薬は、病気の重症度および応答性、投薬経路、処置の時間的経過(数日〜数か月〜数年)、ならびに病気の改善までの時間を含むいくつかの因子に依存し得る。本明細書で提供する化合物の毒性および治療効果は、細胞培養物または動物モデルにおける標準的な薬学的手順により判断することが可能である。例えば、LD50、ED50、EC50、およびIC50を決定することができ、毒性と治療効果の用量比(LD50/ED50)を治療インデックスとして計算することができる。毒性副作用を示す組成物は、注意深く改変して、潜在的な損傷を最小化し副作用を減らすことで、用いることができる。投薬は、細胞培養試験および動物モデルから最初に推定することができる。in vitroおよびin vivoの試験ならびに動物研究から得られたデータは、ヒトで用いる用量の幅を明確にする際に用いることが可能である。
【0200】
処置法
本発明の別の態様は、高アンモニア血症に関連する病気または疾患の処置法を提供する。一部の実施形態では、本発明は、これらの病気または疾患に関連する1つまたは複数の症状を低減し、改善させ、または消失させる方法を提供する。一部の実施形態では、疾患は、アルギニノコハク酸尿症、アルギナーゼ欠損症、カルバモイルリン酸シンセターゼ欠損症、シトルリン血症、N−アセチルグルタミン酸シンセターゼ欠損症、およびオルニチントランスカルバミラーゼ欠損症などの尿素サイクル異常症である。代替の実施形態では、疾患は、肝性脳症、急性肝不全、もしくは慢性肝不全などの肝疾患;有機酸異常症;イソ吉草酸血症;3−メチルクロトニルグリシン尿症;メチルマロン酸血症;プロピオン酸尿症;脂肪酸酸化欠損症;カルニチンサイクル異常症;カルニチン欠乏症;β酸化異常症;リシン尿性蛋白不耐症;ピロリン−5−カルボン酸シンセターゼ欠損症;ピルビン酸カルボキシラーゼ欠損症;オルニチンアミノトランスフェラーゼ欠損症;炭酸脱水酵素欠乏症;高インスリン血症−高アンモニア血症症候群;ミトコンドリア病;バルプロエート療法;アスパラギナーゼ療法;完全非経口栄養法;グリシン含有溶液を用いた膀胱鏡検査;肺/骨髄移植後;門脈体循環シャント;尿路感染症;尿道拡張;多発性骨髄腫;化学療法;感染症;神経性膀胱;または腸内細菌の過剰増殖である。一部の実施形態では、それらに関連する症状としては、限定されるわけではないが、発作、運動失調、脳卒中様病変、昏睡、精神病、視力喪失、急性脳症、脳浮腫、ならびに、嘔吐、呼吸性アルカローシス、および低体温が挙げられる。
【0201】
本方法は、本明細書に記載する少なくとも一つの遺伝子操作した細菌種、細菌株、または細菌サブタイプを用いて医薬組成物を調製すること、および、該医薬組成物を治療的に有効な量で対象に投与することを含む。一部の実施形態では、本発明の遺伝子操作した細菌を、例えば液体懸濁液において経口投与する。一部の実施形態では、本発明の遺伝子操作した細菌をジェルカプセル内で凍結乾燥させ、経口投与する。一部の実施形態では、本発明の遺伝子操作した細菌を栄養チューブまたは胃シャントを介して投与する。一部の実施形態では、本発明の遺伝子操作した細菌を、例えば浣腸により直腸に投与する。一部の実施形態では、本発明の遺伝子操作した細菌を、局所的に、腸内に、空腸内に、十二指腸内に、回腸内に、および/または結腸内に投与する。
【0202】
ある実施形態では、医薬組成物を対象に投与することにより、対象におけるアンモニア濃度を低減させる。一部の実施形態では、本開示の方法は、対象におけるアンモニア濃度を、未処置対象または対照対象のレベルと比較し、少なくとも約10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%以上低下させることができる。一部の実施形態では、低下は、対象におけるアンモニア濃度を医薬組成物を投与する前後で比較することにより測定する。一部の実施形態では、高アンモニア血症を処置または改善する方法は、病状または疾患の1つまたは複数の症状を少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または95%以上改善することを可能にする。
【0203】
医薬組成物の投与前、投与中、および投与後に、対象のアンモニア濃度を、血液、血清、血漿、尿、糞便、腹水、腸粘膜擦過物、組織から採取したサンプル、ならびに/または、以下の、胃、十二指腸、空腸、回腸、盲腸、結腸、直腸および肛門管のうち1つもしくは複数の内容物から採取したサンプルなどの生物学的サンプルにおいて、測定することができる。一部の実施形態では、本方法には、本発明の組成物を投与して、対象のアンモニア濃度を検出不能なレベルにまで、または、対象の処置前のアンモニア濃度の1%、2%、5%、10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、または80%にまで低減させることを含み得る。
【0204】
ある実施形態では、突然変異アルギニンレギュロンを含む遺伝子操作した細菌は大腸菌Nissleである。遺伝子操作した細菌は、投与して数時間後または数日後に、例えば消化管もしくは血清の防御因子により(Sonnenborn et al.,2009)、またはキルスイッチの活性化により破壊され得る。したがって、突然変異アルギニンレギュロンを含む医薬組成物は、治療的に有効な用量および頻度で再投与することができる。マウスにおけるin vivoでのNissle滞留の長さを図27に示す。代替の実施形態では、遺伝子操作した細菌は、投与後数時間または数日内では破壊されず、増殖して消化管に定着し得る。
【0205】
医薬組成物は単独で、または、限定されるわけではないが、フェニル酪酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、およびグリセロールフェニルブチラートなどの1つもしくは複数の追加の治療薬と組み合わせて投与することができる。1つまたは複数の追加の治療薬を選択する際の考慮すべき重要な事項は、その薬剤が本発明の遺伝子操作した細菌に適合すべきである、例えば、その薬剤が細菌を死滅させてはならないということである。一部の実施形態では、医薬組成物は食物と共に投与される。代替の実施形態では、医薬組成物は食物を食べる前または後に投与される。医薬組成物は、1つまたは複数の食事改善、例えば低たんぱく食およびアミノ酸捕捉と組み合わせて投与することができる。医薬組成物の用量および投与頻度は、症状の重症度および疾患の進行度に基づき選択することができる。適切な治療的に有効な用量および/または投与頻度は、処置する臨床医により選択され得る。
【0206】
in vivoでの処置
本発明の遺伝子操作した細菌は、in vivoで、例えば動物モデルにおいて評価することができる。高アンモニア血症に関連する病気または症状の任意の適切な動物モデルを用いることができ(例えば、Deignan et al.,2008;Nicaise et al.,2008を参照)、例えば、急性肝不全および高アンモニア血症のマウスモデルを用いることができる。この急性肝不全および高アンモニア血症は、チオールアセトアミド(TAA)を用いた処置により誘導することができる(Nicaise et al.,2008)。別の例示的な動物モデルはspfash(sparse fur with abnormal skin and hair)マウスであり、これはオルニチントランスカルバミラーゼ遺伝子におけるミスセンス突然変異により、血漿アンモニアレベルの上昇を示す(Doolittle et al.,1974;Hodges and Rosenberg,1989)。本発明の遺伝子操作した細菌は、動物に、例えば経口胃管投与により投与することができ、処置の効果は、例えば血液サンプルにおけるアンモニア、および/または、糞便サンプルにおけるアルギニン、シトルリン、もしくは他の副生成物を測定することにより決定される。
【0207】
例示的実施形態
1.アルギニンレギュロンを含む遺伝子操作した細菌であって、
前記細菌は、同一条件下の同じ細菌サブタイプに由来する野生型N−アセチルグルタミン酸シンセターゼと比較しアルギニンフィードバック阻害が低減した機能性N−アセチルグルタミン酸シンセターゼをコードする遺伝子を含み、アルギニンフィードバック耐性N−アセチルグルタミン酸シンセターゼをコードする前記遺伝子の発現は、外因性の環境条件により誘導されるプロモータにより制御され、
前記細菌は機能性ArgRを欠くように遺伝子操作されている、細菌。
【0208】
2.前記アルギニンフィードバック耐性N−アセチルグルタミン酸シンセターゼの発現を制御するプロモータは、低酸素または嫌気的な条件下で誘導される、実施形態1の細菌。
【0209】
3.対応する野生型細菌に通常存在する機能性argR遺伝子の各コピーが個別に削除されているか、または、1つもしくは複数のヌクレオチドの削除、挿入、もしくは置換により不活性になっている、実施形態1または2の何れか一つの細菌。
【0210】
4.対応する野生型細菌に通常存在する機能性argR遺伝子の各コピーが削除されている、実施形態3の細菌。
【0211】
5.対応する野生型細菌に通常存在する機能性argG遺伝子の各コピーが個別に削除されているか、または、1つもしくは複数のヌクレオチドの削除、挿入、もしくは置換により不活性になっている、実施形態1〜4の何れか一つの細菌。
【0212】
6.対応する野生型細菌に通常存在する機能性argG遺伝子の各コピーが削除されている、実施形態5の細菌。
【0213】
7.前記アルギニンフィードバック耐性N−アセチルグルタミン酸シンセターゼの発現を制御するプロモータを誘導する条件下で、機能性ARGボックスを含むオペロン中に存在し、アルギニン生合成酵素をコードする各遺伝子の転写が、同一条件下の野生型細菌の対応する遺伝子と比較し増加する、実施形態1〜7の何れか一つの細菌。
【0214】
8.低酸素または嫌気的な条件下で誘導される前記プロモータはFNRプロモータである、実施形態2〜7の何れか一つの細菌。
【0215】
9.実施形態2〜7の何れか一つの細菌であって、前記アルギニンフィードバック耐性N−アセチルグルタミン酸シンセターゼ遺伝子は、
a)配列番号28、
b)遺伝子コードの冗長性を別とすれば配列番号28にコードされているのと同じポリペプチドをコードするDNA配列、および
c)a)またはb)のDNA配列と少なくとも80%の相同性を有するDNA配列から選択されるDNA配列を有する、細菌。
【0216】
10.非病原性細菌である、実施形態1〜9の何れか一つの細菌。
【0217】
11.プロバイオティクス細菌である、実施形態10の細菌。
【0218】
12.バクテロイデス、ビフィドバクテリウム、クロストリジウム、エシェリキア、ラクトバチルス、およびラクトコッカスからなる群から選択される、実施形態10の細菌。
【0219】
13.大腸菌株Nissleである、実施形態12の細菌。
【0220】
14.前記アルギニンフィードバック耐性N−アセチルグルタミン酸シンセターゼをコードする遺伝子は前記細菌のプラスミドに存在し、前記プラスミドにおいて、低酸素または嫌気的な条件下で誘導される前記プロモータに操作可能に連結している、実施形態2〜13の何れか一つの細菌。
【0221】
15.前記アルギニンフィードバック耐性N−アセチルグルタミン酸シンセターゼをコードする遺伝子は細菌染色体に存在し、前記染色体において、低酸素または嫌気的な条件下で誘導される前記プロモータに操作可能に連結している、実施形態2〜13の何れか一つの細菌。
【0222】
16.哺乳類の消化管に存在する場合に補完される遺伝子において栄養要求株である、実施形態1〜15の何れか一つの細菌。
【0223】
17.哺乳類の消化管はヒトの消化管である、実施形態16の細菌。
【0224】
18.実施形態1〜17の何れか一つの細菌および薬学的に許容される担体を含む、薬学的に許容される組成物。
【0225】
19.経口投与または直腸投与向けに製剤化された、実施形態18の薬学的に許容される組成物。
【0226】
20.実施形態19の薬学的に許容される組成物を生成する方法であって、
a)前記アルギニンフィードバック耐性N−アセチルグルタミン酸シンセターゼの発現を制御するプロモータを誘導しない条件下で、実施形態1〜17の何れか一つの細菌を増殖培地において増殖させるステップと、
b)結果として生じる細菌を前記増殖培地から単離するステップと、
c)前記単離した細菌を薬学的に許容される担体に懸濁するステップとを含む、方法。
【0227】
21.高アンモニア血症関連疾患またはその症状の処置を、それを必要とする対象で行う方法であって、前記対象に実施形態18の組成物を、前記高アンモニア血症関連疾患の重症度を軽減するのに十分な期間にわたって投与するステップを含む、方法。
【0228】
22.前記高アンモニア血症関連疾患は尿素サイクル異常症である、実施形態21の方法。
【0229】
23.前記尿素サイクル異常症は、アルギニノコハク酸尿症、アルギナーゼ欠損症、カルバモイルリン酸シンセターゼ欠損症、シトルリン血症、N−アセチルグルタミン酸シンセターゼ欠損症、またはオルニチントランスカルバミラーゼ欠損症である、実施形態22の方法。
【0230】
24.前記高アンモニア血症関連疾患は、肝疾患;有機酸異常症;イソ吉草酸血症;3−メチルクロトニルグリシン尿症;メチルマロン酸血症;プロピオン酸尿症;脂肪酸酸化欠損症;カルニチンサイクル異常症;カルニチン欠乏症;β酸化異常症;リシン尿性蛋白不耐症;ピロリン−5−カルボン酸シンセターゼ欠損症;ピルビン酸カルボキシラーゼ欠損症;オルニチンアミノトランスフェラーゼ欠損症;炭酸脱水酵素欠乏症;高インスリン血症−高アンモニア血症症候群;ミトコンドリア病;バルプロエート療法;アスパラギナーゼ療法;完全非経口栄養法;グリシン含有溶液を用いた膀胱鏡検査;肺/骨髄移植後;門脈体循環シャント;尿路感染症;尿道拡張;多発性骨髄腫;化学療法;感染症;神経性膀胱;または腸内細菌の過剰増殖である、実施形態21の方法。
【0231】
25.前記肝疾患は、肝性脳症、急性肝不全、または慢性肝不全である、実施形態24の方法。
【0232】
26.前記高アンモニア血症関連疾患の症状は、脳卒中、運動失調、脳卒中様病変、昏睡、精神病、視力喪失、急性脳症、脳浮腫、ならびに嘔吐、呼吸性アルカローシス、および低体温からなる群から選択される、実施形態25の方法。
【0233】
27.突然変異アルギニンレギュロンを含む遺伝子操作した細菌であって、
前記細菌は、同一条件下の同じ細菌サブタイプに由来する野生型N−アセチルグルタミン酸シンセターゼと比較し、アルギニンフィードバック阻害が低減するように突然変異させた機能性N−アセチルグルタミン酸シンセターゼを含み、前記突然変異N−アセチルグルタミン酸シンセターゼをコードする遺伝子の発現は、低酸素または嫌気的な条件下で誘導されるプロモータにより制御され、
前記突然変異アルギニンレギュロンは、アルギニン生合成酵素N−アセチルグルタミン酸キナーゼ、N−アセチルグルタメートリン酸レダクターゼ、アセチルオルニチンアミノトランスフェラーゼ、N−アセチルオルニチナーゼ、カルバモイルリン酸シンターゼ、オルニチントランスカルバミラーゼ、アルギニノスクシネートシンターゼ、およびアルギニノスクシネートリアーゼをコードする遺伝子を含む1つまたは複数のオペロンを含み、
アルギニノスクシネートシンターゼをコードする遺伝子を含むオペロンを除く各オペロンは、ArgR結合を介した前記オペロンのアルギニン介在性阻害を低減させる1つまたは複数の核酸突然変異によって特徴付けられる、1つまたは複数の突然変異ARGボックスを含み、前記オペロン内の遺伝子の転写を促進するのに十分な親和性を有するRNAポリメラーゼ結合を保持する、細菌。
【0234】
28.前記アルギニノスクシネートシンターゼをコードする遺伝子を含むオペロンは、ArgR結合を介した前記オペロンのアルギニン介在性阻害を低減させる1つまたは複数の核酸突然変異によって特徴付けられる、1つまたは複数の突然変異ARGボックスを含み、前記アルギニノスクシネートシンターゼ遺伝子の転写を促進するのに十分な親和性を有するRNAポリメラーゼ結合を保持する、実施形態27の遺伝子操作した細菌。
【0235】
29.前記アルギニノスクシネートシンターゼをコードする遺伝子を含むオペロンは、前記アルギニノスクシネートシンターゼ遺伝子の転写を調節する構成的活性型プロモータを含む、実施形態27の遺伝子操作した細菌。
【0236】
30.前記機能性N−アセチルグルタミン酸シンセターゼをコードする遺伝子を、同一条件下の同じ細菌サブタイプに由来する野生型N−アセチルグルタミン酸シンセターゼと比較し、アルギニンフィードバック阻害を低減するように突然変異させた、実施形態27〜29の何れか一つの細菌。
【0237】
31.ArgR結合は、同一条件下の野生型アルギニンレギュロンを含む同じ細菌サブタイプに由来する細菌と比較し低減している、実施形態27〜30の何れか一つの細菌。
【0238】
32.前記低減されたArgR結合を介するアルギニン介在性阻害は、アルギニン生合成酵素N−アセチルグルタミン酸キナーゼ、N−アセチルグルタメートリン酸レダクターゼ、アセチルオルニチンアミノトランスフェラーゼ、N−アセチルオルニチナーゼ、カルバモイルリン酸シンターゼ、オルニチントランスカルバミラーゼ、およびアルギニノスクシネートリアーゼをコードする前記遺伝子それぞれの転写を、同一条件下の対応する野生型細菌と比較し増加させる、実施形態27の何れか一つの細菌。
【0239】
33.前記低減されたArgR結合を介するアルギニン介在性阻害は、アルギニン生合成酵素N−アセチルグルタミン酸キナーゼ、N−アセチルグルタメートリン酸レダクターゼ、アセチルオルニチンアミノトランスフェラーゼ、N−アセチルオルニチナーゼ、カルバモイルリン酸シンターゼ、オルニチントランスカルバミラーゼ、アルギニノスクシネートシンターゼ、およびアルギニノスクシネートリアーゼをコードする前記遺伝子それぞれの転写を、同一条件下の対応する野生型細菌と比較し増加させる、実施形態28の細菌。
【0240】
34.前記アルギニン生合成酵素N−アセチルグルタミン酸キナーゼ、N−アセチルグルタメートリン酸レダクターゼ、アセチルオルニチンアミノトランスフェラーゼ、N−アセチルオルニチナーゼ、カルバモイルリン酸シンターゼ、オルニチントランスカルバミラーゼ、およびアルギニノスクシネートリアーゼをコードするオペロンはそれぞれ、該オペロンの各ARGボックスにおいて1つまたは複数の核酸突然変異を含む、実施形態27の細菌。
【0241】
35.前記アルギニン生合成酵素N−アセチルグルタミン酸キナーゼ、N−アセチルグルタメートリン酸レダクターゼ、アセチルオルニチンアミノトランスフェラーゼ、N−アセチルオルニチナーゼ、カルバモイルリン酸シンターゼ、オルニチントランスカルバミラーゼ、アルギニノスクシネートシンターゼ、およびアルギニノスクシネートリアーゼをコードするオペロンはそれぞれ、該オペロンの各ARGボックスにおいて1つまたは複数の核酸突然変異を含む、実施形態28の細菌。
【0242】
36.実施形態27〜35の何れか一つの細菌であって、野生型オルニチンアセチルトランスフェラーゼをコードする1つまたは複数のオペロンをさらに含み、野生型オルニチンアセチルトランスフェラーゼをコードする各オペロンは、ArgR結合を介した前記オペロンのアルギニン介在性阻害を低減させる1つまたは複数の核酸突然変異によって特徴付けられる、1つまたは複数の突然変異ARGボックスを含み、前記オペロンの遺伝子の転写を促進するのに十分な親和性を有するRNAポリメラーゼ結合を保持する、細菌。
【0243】
37.低酸素または嫌気的な条件下で誘導される前記プロモータはFNRプロモータである、実施形態27〜36の何れか一つの細菌。
【0244】
38.実施形態27〜37の何れか一つの細菌であって、野生型N−アセチルグルタミン酸シンセターゼをコードする1つまたは複数のオペロンを追加で含み、野生型N−アセチルグルタミン酸シンセターゼをコードする各オペロンは、ArgR結合を介した前記オペロンのアルギニン介在性阻害を低減させる1つまたは複数の核酸突然変異によって特徴付けられる、1つまたは複数の突然変異ARGボックスを含み、前記オペロンの遺伝子の転写を促進するのに十分な親和性を有するRNAポリメラーゼ結合を保持し、前記遺伝子操作した細菌は野生型N−アセチルグルタミン酸シンセターゼプロモータを含まない、細菌。
【0245】
39.N−アセチルグルタミン酸キナーゼ、N−アセチルグルタメートリン酸レダクターゼ、アセチルオルニチンアミノトランスフェラーゼ、N−アセチルオルニチナーゼ、カルバモイルリン酸シンターゼ、オルニチントランスカルバミラーゼ、アルギニノスクシネートシンターゼ、およびアルギニノスクシネートリアーゼをコードする遺伝子が、大腸菌Nissleに存在するオペロンにまとめられている、実施形態27〜39の何れか一つの細菌。
【0246】
40.各オペロンがプロモータ領域を含み、前記突然変異アルギニンレギュロンの各プロモータ領域のG/C:A/T比率は、対応する野生型プロモータ領域で見られるG/C:A/T比率とわずか10%異なるだけである、実施形態27〜39の何れか一つの細菌。
【0247】
41.各突然変異ARGボックスは、前記対応する野生型ARGボックスと比較し、少なくとも3つのヌクレオチド突然変異によって特徴付けられる、実施形態27〜40の何れか一つの細菌。
【0248】
42.前記突然変異N−アセチルグルタミン酸シンセターゼ遺伝子は、
a)配列番号28、
b)遺伝子コードの冗長性を別とすれば配列番号28と同じポリペプチドをコードするDNA配列、および
c)a)またはb)のDNA配列と少なくとも80%の相同性を有するDNA配列から選択されるDNA配列を有する、実施形態27〜41の何れか一つの細菌。
【0249】
43.N−アセチルグルタミン酸キナーゼ、N−アセチルグルタミルリン酸レダクターゼ、およびアルギニノスクシネートリアーゼをコードする単一オペロンを含み、前記単一オペロンは突然変異した配列番号5のDNA配列を含み、前記突然変異は配列番号5のヌクレオチド37、38、45、46、47のうち1つまたは複数、および、配列番号5のヌクレオチド55、56、57、67、68、69のうち1つまたは複数にある、実施形態27〜42の何れか一つの細菌。
【0250】
44.前記単一オペロンは配列番号6のDNA配列を含む、実施形態43の細菌。
【0251】
45.アセチルオルニチンアミノトランスフェラーゼをコードする前記オペロンは、突然変異した配列番号11のDNA配列を含み、前記突然変異は、配列番号11のヌクレオチド20、21、29、30、31のうち1つまたは複数、および、配列番号11のヌクレオチド41、42、50、52のうち1つまたは複数にある、実施形態27〜44の何れか一つの細菌。
【0252】
46.アセチルオルニチンアミノトランスフェラーゼをコードする前記オペロンは、配列番号12のDNA配列を含む、実施形態45の細菌。
【0253】
N−アセチルオルニチナーゼをコードする前記オペロンは、突然変異した配列番号7のDNA配列を含み、前記突然変異は、配列番号7のヌクレオチド92、93、94、104、105、106のうち1つまたは複数、および、配列番号7のヌクレオチド114、115、116、123、124のうち1つまたは複数にある、実施形態27〜46の何れか一つの細菌。
【0254】
48.N−アセチルオルニチナーゼをコードする前記オペロンは、配列番号8のDNA配列を含む、実施形態46の細菌。
【0255】
49.オルニチントランスカルバミラーゼをコードする前記オペロンは、突然変異した配列番号3のDNA配列を含み、前記突然変異は、配列番号3のヌクレオチド12、13、14、18、20のうち1つまたは複数、および、配列番号3のヌクレオチド34、35、36、45、46のうち1つまたは複数にある、実施形態27〜48の何れか一つの細菌。
【0256】
50.オルニチントランスカルバミラーゼをコードする前記オペロンは、配列番号4のDNA配列を含む、実施形態49の細菌。
【0257】
51.カルバモイルリン酸シンターゼをコードするオペロンの前記突然変異プロモータ領域は、突然変異した配列番号9のDNA配列を含み、前記突然変異は、配列番号9のヌクレオチド33、34、35、43、43、45のうち1つまたは複数、および、配列番号9のヌクレオチド51、52、53、60、61、62のうち1つまたは複数にある、実施形態27〜50の何れか一つの細菌。
【0258】
52.カルバモイルリン酸シンターゼをコードする前記オペロンは、配列番号10のDNA配列を含む、実施形態51の細菌。
【0259】
53.N−アセチルグルタミン酸シンセターゼをコードするオペロンの前記突然変異プロモータ領域は、突然変異した配列番号1のDNA配列を含み、前記突然変異は、配列番号1のヌクレオチド12、13、14、21、22、23のうち1つまたは複数、および、配列番号1のヌクレオチド33、34、35、42、43、44のうち1つまたは複数にある、実施形態27〜52の何れか一つの細菌。
【0260】
54.N−アセチルグルタミン酸シンセターゼをコードする前記オペロンは配列番号2のDNA配列を含む、実施形態53の細菌。
【0261】
55.アルギニノスクシネートシンターゼをコードするオペロンの前記突然変異プロモータ領域は、突然変異した配列番号13のDNA配列を含み、前記突然変異は、配列番号13のヌクレオチド9、11、19、21のうち1つまたは複数、配列番号13のヌクレオチド129、130、131、140、141、142のうち1つまたは複数、および、配列番号13のヌクレオチド150、151、152、161、162、163の1つまたは複数にある、実施形態28の細菌。
【0262】
56.アルギニノスクシネートシンターゼをコードする前記オペロンは、配列番号31のDNA配列を含む、実施形態27の細菌。
【0263】
57.アルギニノスクシネートシンターゼをコードする前記オペロンは、配列番号32のDNA配列を含む、実施形態28の細菌。
【0264】
58.バクテロイデス、ビフィドバクテリウム、クロストリジウム、エシェリキア、ラクトバチルス、およびラクトコッカスからなる群から選択される、実施形態27〜57の何れか一つの細菌。
【0265】
59.大腸菌Nissleである、実施形態27〜58の何れか一つの細菌。
【0266】
60.前記オペロンの少なくとも1つは前記細菌のプラスミドに存在し、前記プラスミド上のそれらに対応する前記アルギニンレギュロン遺伝子の全ての染色体コピーは活性酵素をコードしない、実施形態27〜59の何れか一つの細菌。
【0267】
61.前記突然変異N−アセチルグルタミン酸シンセターゼをコードする遺伝子は、前記細菌のプラスミドに存在し、前記プラスミドにおいて、低酸素または嫌気的な条件下で誘導される前記プロモータに操作可能に連結している、実施形態60の細菌。
【0268】
62.前記突然変異N−アセチルグルタミン酸シンセターゼをコードする遺伝子は前記細菌染色体に存在し、前記染色体において、低酸素または嫌気的な条件下で誘導される前記プロモータに操作可能に連結している、実施形態27〜59の何れか一つの細菌。
【0269】
63.哺乳類の消化管に存在する際に補完される第1遺伝子において栄養要求株である、実施形態27〜62の何れか一つの細菌。
【0270】
64.哺乳類の消化管はヒトの消化管である、実施形態63の細菌。
【0271】
65.実施形態27〜64の何れか一つの細菌であって、
a)前記細菌は、哺乳類の消化管に存在する場合に補完されない第2遺伝子において栄養要求性であり、
b)前記第2遺伝子は、前記細菌に存在する誘導性第3遺伝子により補完され、
c)前記第3遺伝子の転写は、十分に高濃度のアルギニンの存在下で誘導され、それにより前記第2遺伝子の栄養要求性が補完される、細菌。
【0272】
66.実施形態65の細菌であって、
a)前記第3の遺伝子の転写は、第2リプレッサにより阻害され、
b)前記第2リプレッサの転写は、アルギニン−アルギニンリプレッサ複合体により阻害される、細菌。
【0273】
67.前記第3遺伝子および前記第2リプレッサはそれぞれプラスミドに存在する、実施形態66の細菌。
【0274】
68.実施形態27〜67の何れか一つの細菌と、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的に許容される組成物。
【0275】
69.実施形態68の薬学的に許容される組成物を生成する方法であって、
a)実施形態27〜67の何れか一つの細菌を、好気的な条件下で増殖培地において増殖させるステップと、
b)結果として生じる細菌を前記増殖培地から単離するステップと、
c)前記単離した細菌を薬学的に許容される担体に懸濁するステップとを含む、方法。
【0276】
70.高アンモニア血症関連疾患またはその症状の処置を、それを必要とする対象で行う方法であって、前記対象に実施形態68の組成物を、前記高アンモニア血症関連疾患の重症度を軽減するのに十分な期間にわたって投与するステップを含む、方法。
【0277】
71.前記高アンモニア血症関連疾患は尿素サイクル異常症である、実施形態70の方法。
【0278】
72.前記尿素サイクル異常症は、アルギニノコハク酸尿症、アルギナーゼ欠損症、カルバモイルリン酸シンセターゼ欠損症、シトルリン血症、N−アセチルグルタミン酸シンセターゼ欠損症、またはオルニチントランスカルバミラーゼ欠損症である、実施形態71の方法。
【0279】
73.前記高アンモニア血症関連疾患は、肝疾患;有機酸異常症;イソ吉草酸血症;3−メチルクロトニルグリシン尿症;メチルマロン酸血症;プロピオン酸尿症;脂肪酸酸化欠損症;カルニチンサイクル異常症;カルニチン欠乏症;β酸化異常症;リシン尿性蛋白不耐症;ピロリン−5−カルボン酸シンセターゼ欠損症;ピルビン酸カルボキシラーゼ欠損症;オルニチンアミノトランスフェラーゼ欠損症;炭酸脱水酵素欠乏症;高インスリン血症−高アンモニア血症症候群;ミトコンドリア病;バルプロエート療法;アスパラギナーゼ療法;完全非経口栄養法;グリシン含有溶液を用いた膀胱鏡検査;肺/骨髄移植後;門脈体循環シャント;尿路感染症;尿道拡張;多発性骨髄腫;化学療法;感染症;神経性膀胱;または腸内細菌の過剰増殖である、実施形態70の方法。
【0280】
74.前記肝疾患は、肝性脳症、急性肝不全、または慢性肝不全である、実施形態73の方法。
【0281】
75.前記高アンモニア血症関連疾患の症状は、脳卒中、運動失調、脳卒中様病変、昏睡、精神病、視力喪失、急性脳症、脳浮腫、ならびに嘔吐、呼吸性アルカローシス、および低体温からなる群から選択される、実施形態70の方法。
【0282】
76.検出可能な生成物をコードするDNA配列を追加で含み、前記検出可能な生成物をコードするDNA配列の転写は、アルギニンの存在下で誘導される、実施形態27〜75の何れか一つの細菌。
【0283】
77.a)前記検出可能な生成物をコードするDNA配列の転写は、第3リプレッサにより阻害され、
b)前記第3リプレッサの転写はアルギニン−アルギニンリプレッサ複合体により阻害される、実施形態76の細菌。
【0284】
78.高レベルのアルギニンを生成する細菌を選択する方法であって、
a)実施形態77の細菌を提供するステップと、
b)前記細菌を第1期間の間培養するステップと、
c)前記培養物を突然変異誘発させるステップと、
d)前記突然変異誘発された培養物を第2期間の間培養するステップと、
e)前記検出可能な生成物を発現する細菌を選択することにより、高レベルのアルギニンを生成する細菌を選択するステップとを含む、方法。
【0285】
79.前記検出可能な生成物は蛍光タンパク質であり、選択には蛍光活性化セルソーターの使用が含まれる、実施形態78の方法。
【0286】
本明細書全体を通して言及される参考文献の全列挙には以下を含む。
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【実施例】
【0287】
以下の例は、本開示の例示的な実施形態を提供する。当業者は、本開示の趣旨または範囲を変更することなく多数の修正および変更が実行できることを理解しよう。このような修正および変更は、本開示の範囲内に包含される。実施例は、決して本開示を限定しない。
【0288】
アルギニンリプレッサ結合部位(ARGボックス)
実施例1.ARGボックス突然変異
大腸菌Nissleのアルギニン生合成オペロンごとにArgR結合部位を含む野生型ゲノム配列を図6に示す。それらの配列に対する改変は、以下のパラメータに従い設計される。各野生型配列について、ARGボックスはイタリック体で示す。アルギニンレギュロンのARGボックスは、各オペロンのプロモータ領域と一部重複する。下線を引いた配列はRNAポリメラーゼ結合部位を表し、その配列は変更されない。ArgR結合時にDNAメチル化から保護される塩基を強調表示し、ArgR結合時にヒドロキシラジカルアタックから保護される塩基は太字にする。強調表示した太字の塩基は、ArgR結合を破壊する突然変異の主要標的である。
【0289】
実施例2.ラムダレッド組換え
ラムダレッド組換えを用いて、染色体改変、例えばARGボックス突然変異を作成する。ラムダレッドは、バクテリオファージラムダに由来する組換え酵素を用いて、カスタムDNAの一片を大腸菌の染色体に挿入する手順である。pKD46プラスミドを大腸菌Nissle宿主株に形質転換する。大腸菌Nissle細胞をLB培地において一晩増殖させる。一晩たった培養物を5mLのLB培地において1:100で希釈し、OD600が0.4〜0.6に到達するまで増殖させる。全てのチューブ、溶液、およびキュベットを、予め4℃まで冷却する。大腸菌細胞を4℃で5分間、2000rpmで遠心分離し、上澄みを取り除き、細胞を4℃の水1mLに再懸濁する。大腸菌を4℃で5分間、2000rpmで遠心分離し、上澄みを取り除き、細胞を4℃の水0.5mLに再懸濁する。大腸菌を4℃で5分間、2000rpmで遠心分離し、上澄みを取り除き、細胞を4℃の水0.1mLに再懸濁する。エレクトロポレーターを2.5kVに設定する。1ngのpKD46プラスミドDNAを大腸菌細胞に加え、ピペットすることにより混ぜ、滅菌した冷却キュベットにピペットする。乾いたキュベットをサンプルチャンバに置き、電気パルスを適用する。1mLの室温SOC培地をすぐに加え、混合物を培養チューブに移し、30℃で1時間インキュベートする。細胞を選択性培地プレートに広げ、30℃で一晩インキュベートする。
【0290】
図6に示す所望のARGボックス配列を含むDNA配列を、遺伝子合成会社に発注した。argAオペロンについては、突然変異調節領域が以下の核酸配列(配列番号2)を含む:
gcaaaaaaacaCTTtaaaaaCTTaataatttcCTTtaatcaCTTaaagaggtgtaccgtg。
【0291】
ラムダ酵素を用いて、この構成物を、相同組換えを介して大腸菌Nissleのゲノムに挿入する。構成物は、大腸菌Nissleのゲノムの特定の部位に、そのDNA配列に基づいて挿入する。構成物を特定の部位に挿入するため、構成物に隣接する相同性DNA配列を特定する。DNAの相同性配列は、突然変異した配列の何れかの側に約50塩基を含む。相同性配列は、合成遺伝子の一部として注文する。あるいは、相同性配列をPCRによって加えることができる。構成物を用いて大腸菌NissleゲノムのargAの上流の天然配列を置き換える。構成物は、組換えによって取り除くことのできる抗生物質耐性マーカを含む。結果として生じる突然変異argA構成物は、argAの上流に約50の相同塩基を含み、組換えによって取り除くことが可能なカナマイシン耐性マーカ、gcaaaaaaacaCTTtaaaaaCTTaataatttcCTTtaatcaCTTaaagaggtgtaccgtgと、argAに対し相同的な約50の塩基とを含む。
【0292】
一部の実施形態では、ARGボックスを上記のようにargG調節領域において突然変異させ、BBa_J23100構成プロモータをラムダレッド組換えを用いて調節領域に挿入した(SYN−UCD105)。これらの細菌はアルギニンを生成することが可能であった。代替の実施形態では、argG調節領域(配列番号31)は依然としてArgR阻害性を保ち、細菌はシトルリンを生成することが可能であった。
【0293】
実施例3.大腸菌Nissleの形質転換
突然変異ARGボックス構成物を、pKD46を含む大腸菌Nissleに形質転換する。全てのチューブ、溶液、およびキュベットを予め4℃まで冷却する。一晩たった培養物を、アンピシリンを含有する5mLのLB培地において1:100に希釈し、OD600が0.1に到達するまで増殖させる。0.05mLの100X L−アラビノース原液を加えて、pKD46ラムダレッド発現を誘導する。培養物のOD600が0.4〜0.6に到達するまで増殖させる。大腸菌を4℃で5分間、2000rpmで遠心分離し、上澄みを取り除き、細胞を4℃の水1mLに再懸濁する。大腸菌細胞を4℃で5分間、2000rpmで遠心分離し、上澄みを取り除き、細胞を4℃の水0.5mLに再懸濁する。大腸菌を4℃で5分間、2000rpmで遠心分離し、上澄みを取り除き、細胞を4℃の水0.1mLに再懸濁する。エレクトロポレーターを2.5kVに設定する。0.5μgの突然変異ARGボックス構成物を細胞に加え、ピペットすることにより混ぜ、滅菌した冷却キュベットにピペットする。乾いたキュベットをサンプルチャンバに置き、電気パルスを適用する。1mLの室温SOC培地をすぐに加え、混合物を培養チューブに移し、37℃で1時間インキュベートする。細胞を、カナマイシンを含有するLBプレートに広げ、一晩インキュベートする。
【0294】
実施例4.突然変異体の確認
突然変異の存在をコロニーPCRにより確認する。コロニーをピペットの先で取り、上下にピペットすることにより20μLの低温ddHOに再懸濁する。3μLの懸濁液を、後で用いる適切な抗生物質を有するインデックスプレートにピペットする。インデックスプレートを37℃で一晩増殖させる。PCRマスターミックスを、5μLの10XPCR緩衝液、0.6μLの10mM dNTP、0.4μLの50mM MgSO、6.0μLの10Xエンハンサー、および3.0μLのddHOを用いて作成する(PCR反応毎に15μLのマスターミックス)。10μMのプライマーミックスを、argA突然変異構成物に対し固有の2μLのプライマー(100μMストック)を16μLのddHOに混ぜることにより作成する。各20μLの反応に対し、15μLのPCRマスターミックス、2.0μLのコロニー懸濁液(鋳型)、2.0μLのプライマーミックス、および1.0μLのPfx(登録商標)Platinum DNA PolをPCRチューブにおいて混ぜ合わせる。PCRサーモサイクラーを以下のようにプログラミングし、ステップ2〜4を34回繰り返す:1)5:00分で94℃、2)0:15分で94℃、3)0:30分で55℃、4)2:00分で68℃、5)7:00分で68℃、次に4℃まで冷却する。PCR産物を10μLの各アンプリコンおよび2.5μLの5X色素を用いて、ゲル電気泳動により解析する。PCR産物は、突然変異がゲノムに挿入されている場合にのみ生じる。
【0295】
実施例5.選択性マーカの除去
抗生物質耐性遺伝子を、pCP20を用いて除去する。突然変異ARGボックスを有する各株を、抗生物質を含有するLB培地において、37℃で、OD600が0.4〜0.6に到達するまで増殖させる。全てのチューブ、溶液、およびキュベットを、予め4℃まで冷却する。細胞を4℃で5分間、2000rpmで遠心分離し、上澄みを取り除き、細胞を4℃の水1mLに再懸濁する。大腸菌を4℃で5分間、2000rpmで遠心分離し、上澄みを取り除き、細胞を4℃の水0.5mLに再懸濁する。大腸菌を4℃で5分間、2000rpmで遠心分離し、上澄みを取り除き、細胞を4℃の水0.1mLに再懸濁する。エレクトロポレーターを2.5kVに設定する。1ngのpCP20プラスミドDNAを細胞に加え、ピペットすることにより混ぜ、滅菌した冷却キュベットにピペットする。乾いたキュベットをサンプルチャンバに置き、電気パルスを適用する。1mLの室温SOC培地をすぐに加え、混合物を培養チューブに移し、30℃で1〜3時間インキュベートする。細胞を、カナマイシンを含有するLBプレートに広げ、一晩インキュベートする。一晩で十分なOD600まで増殖しないコロニーは追加で24時間さらにインキュベートする。200μLの細胞をアンピシリンプレートに広げ、200μLの細胞をカナマイシンプレートに広げ、両方を一晩37℃で増殖させる。アンピリシンプレートはpCP20を有する細胞を含有する。カナマイシンプレートは、どれぐらいの細胞がエレクトロポレーションに耐えたかについての指標となる。アンピシリンプレートからの形質転換体を非選択的に43℃で精製し、一晩増殖させる。
【0296】
実施例6.形質転換体の確認
精製した形質転換体を、アンピシリンおよびカナマイシンに対する感受性についてテストする。43℃で増殖させたプレートのコロニーを取り、10μLのLB培地に再懸濁する。3μLの細胞懸濁液を3つのプレートそれぞれにピペットする:1)37℃でインキュベートしたカナマイシンを有するLBプレートであって、宿主株のゲノムにおけるKanR遺伝子の有無をテストするプレート;2)30℃でインキュベートしたアンピシリンを有するLBプレートであって、pCP20プラスミドに由来するAmpR遺伝子の有無をテストするプレート;3)37℃でインキュベートした抗生物質なしのLBプレート。カナマイシンまたはアンピシリンプレートにおいて特定のコロニーについて増殖が観察されない場合、KanR遺伝子およびpCP20プラスミドの両方が失われており、コロニーはさらなる解析のために保存される。保存されたコロニーをLBプレートに再度筋状に置いて単一コロニーを得、37℃で一晩増殖させる。突然変異ゲノムARGボックスの存在を、ゲノムのargA領域をシーケンシングすることにより確かめる。
【0297】
ラムダレッド組換え、大腸菌Nissleの形質転換、突然変異の確認、選択性マーカの除去、および形質転換体の確認/シーケンシングのための方法を、図6に示すARGボックス突然変異およびオペロンのそれぞれについて繰り返す。結果として生じる細菌は、アルギニン生合成酵素をコードする1つまたは複数のオペロンの各ARGボックスにおいて突然変異を含み、その結果、ARGボックスへのArgR結合が低減し、前記オペロンの調節領域への全ArgR結合が低減する。
【0298】
実施例7.アルギニンフィードバック耐性N−アセチルグルタミン酸シンセターゼ(argAfbr
上記のARGボックス突然変異に加え、大腸菌Nissle細菌はさらに、以下のプロモータ:テトラサイクリン誘導性プロモータ、配列番号16〜27から選択されるFNRプロモータの何れかの制御下で発現するアルギニンフィードバック耐性N−アセチルグルタミン酸シンセターゼ(argAfbr、配列番号28)の遺伝子を含む。本明細書に記載するように、他のプロモータも用いることができる。
【0299】
argAfbr遺伝子は、高コピープラスミド、低コピープラスミド、または染色体において発現する。SYN―UCD101は、野生型ArgR、野生型ArgA、プラスミド上のテトラサイクリン誘導性argAfbrを含み、各アルギニン生合成オペロンの各ARGボックスにおいて突然変異を含む。プラスミドは機能性ArgR結合部位、つまりARGボックスを含まない。SYN−UCD101を用いてSYN−UCD102を生成したが、これは野生型ArgR、野生型ArgA、プラスミド上のテトラサイクリン誘導性argAfbrを含み、各アルギニン生合成オペロンの各ARGボックスにおいて突然変異を含む。プラスミドはさらに、機能性ArgR結合部位、つまりARGボックスをさらに含む。一部の場合では、機能性ArgRの存在および/または蓄積は、ARGボックス以外の部位でのオフターゲット結合の原因となり得る。このプラスミドにおける機能性ARGボックスの導入は、つまり、ArgRシンクとして作用させることにより、オフターゲットArgR結合を低減または消失させるのに有用であり得る。SYN−UCD104は、野生型ArgR、野生型ArgA、低コピープラスミド上のテトラサイクリン誘導性argAfbr、テトラサイクリン誘導性argGを含み、argGを除く各アルギニン生合成オペロンの各ARGボックスにおいて突然変異を含む。SYN−UCD105は、野生型ArgR、野生型ArgA、低コピープラスミド上のテトラサイクリン誘導性argAfbr、構成的に発現したargG(BBa_J23100構成的プロモータを含む配列番号31)を含み、各アルギニン生合成オペロンの各ARGボックスにおいて突然変異を含む。SYN−UCD103は対照Nissle構成物である。
【0300】
argAfbr遺伝子を、大腸菌Nissleの以下の挿入部位のうち1つまたは複数で細菌ゲノムに挿入する:malE/K、araC/BAD、lacZ、thyA、malP/T。任意の適切な挿入部位を用いることができる。例えば図22を参照。挿入部位はゲノムのどこでもよく、例えば、(栄養要求株を生成する)thyAなどの生存および/もしくは増殖に必要な遺伝子;ゲノム複製部位の近くなどのゲノム活性領域;ならびに/または、意図しない転写のリスクを低減させるため、アラビノースオペロンのAraBとAraCの間など、分岐プロモータの間でよい。挿入部位において、挿入部位およびargAfbr構成物に対し相同的なDNAプライマーを設計する。標的部位に対し相同性を有する構成物を含有する直鎖状DNA断片をPCRにより生成し、ラムダレッド組換えを上記のように実行する。
【0301】
結果として生じる大腸菌Nissle細菌を、アルギニン生合成酵素をコードする1つまたは複数のオペロンの―ArgR結合およびN−アセチルグルタミン酸シンセターゼへのアルギニン結合を介した―アルギニン介在性阻害を低減させる核酸突然変異を含むように遺伝子操作し、それによりアルギニンおよび/またはシトルリンの生合成を強化する(図25)。
【0302】
アルギニンリプレッサ(ArgR)
実施例8.ArgR配列
大腸菌Nissleの野生型argRヌクレオチド配列およびargR削除後のヌクレオチド配列を以下に示す。
【0303】
【表4】
【0304】
【表5】
【0305】
実施例9.ArgRの削除
pKD46プラスミドを、大腸菌Nissle宿主株に形質転換する。大腸菌Nissle細胞をLB培地において一晩増殖させる。一晩たった培養物を5mLのLB培地において1:100で希釈し、OD600が0.4〜0.6に到達するまで増殖させる。全てのチューブ、溶液、およびキュベットを、予め4℃まで冷却する。大腸菌細胞を4℃で5分間、2000rpmで遠心分離し、上澄みを取り除き、細胞を4℃の水1mLに再懸濁する。大腸菌を4℃で5分間、2000rpmで遠心分離し、上澄みを取り除き、細胞を4℃の水0.5mLに再懸濁する。大腸菌を4℃で5分間、2000rpmで遠心分離し、上澄みを取り除き、細胞を4℃の水0.1mLに再懸濁する。エレクトロポレーターを2.5kVに設定する。1ngのpKD46プラスミドDNAを大腸菌細胞に加え、ピペットすることにより混ぜ、滅菌した冷却キュベットにピペットする。乾いたキュベットをサンプルチャンバに置き、電気パルスを適用する。1mLの室温SOC培地をすぐに加え、混合物を培養チューブに移し、30℃で1時間インキュベートする。細胞を選択性培地プレートに広げ、30℃で一晩インキュベートする。
【0306】
ArgR遺伝子の上流および下流の約50の相同塩基を、PCRによりpKD4プラスミドのカナマイシン抵抗遺伝子に加え、以下のKanR構成物:(ArgR上流の〜50塩基)(ターミネータ)(pKD4由来のFRT部位に隣接するKanR遺伝子)(ArgRの下流のDNA)を生成する。
【0307】
一部の実施形態では、argR遺伝子およびargG遺伝子の両方を上記のようにラムダレッド組換えを用いて削除し、細菌はシトルリンを生成することが可能である。
【0308】
実施例10.大腸菌Nissleの形質転換
ArgRを削除するために、KanR構成物を、pKD46を含む大腸菌Nissleに形質転換する。全てのチューブ、溶液、およびキュベットを予め4℃まで冷却する。一晩たった培養物をアンピシリンを含有する5mLのLB培地において1:100に希釈し、OD600が0.1に到達するまで増殖させる。0.05mLの100X L−アラビノース原液を加えて、pKD46ラムダレッド発現を誘導する。培養物のOD600が0.4〜0.6に到達するまで増殖させる。大腸菌細胞を4℃で5分間、2000rpmで遠心分離し、上澄みを取り除き、細胞を4℃の水1mLに再懸濁する。大腸菌を4℃で5分間、2000rpmで遠心分離し、上澄みを取り除き、細胞を4℃の水0.5mLに再懸濁する。大腸菌を4℃で5分間、2000rpmで遠心分離し、上澄みを取り除き、細胞を4℃の水0.1mLに再懸濁する。エレクトロポレーターを2.5kVに設定する。0.5μgのKanR構成物を細胞に加え、ピペットすることにより混ぜ、滅菌した冷却キュベットにピペットする。乾いたキュベットをサンプルチャンバに置き、電気パルスを適用する。1mLの室温SOC培地をすぐに加え、混合物を培養チューブに移し、37℃で1時間インキュベートする。細胞を、カナマイシンを含有するLBプレートに広げ、一晩インキュベートする。
【0309】
実施例11.突然変異体の確認
突然変異の存在をコロニーPCRにより確認する。コロニーをピペットの先で取り、上下にピペットすることにより20μLの低温ddHOに再懸濁する。3μLの懸濁液を、後で用いる適切な抗生物質を有するインデックスプレートにピペットする。インデックスプレートを37℃で一晩増殖させる。PCRマスターミックスを、5μLの10XPCR緩衝液、0.6μLの10mM dNTP、0.4μLの50mM MgSO、6.0μLの10Xエンハンサー、および3.0μLのddHOを用いて作成する(PCR反応毎に15μLのマスターミックス)。10μMのプライマーミックスを、KanR遺伝子に対し固有の2μLのプライマー(100μMストック)を16μLのddHOに混ぜることにより作成する。各20μLの反応に対し、15μLのPCRマスターミックス、2.0μLのコロニー懸濁液(鋳型)、2.0μLのプライマーミックス、および1.0μLのPfx(登録商標)Platinum DNA PolをPCRチューブにおいて混ぜ合わせる。PCRサーモサイクラーを以下のようにプログラミングし、ステップ2〜4を34回繰り返す:1)5:00分で94℃、2)0:15分で94℃、3)0:30分で55℃、4)2:00分で68℃、5)7:00分で68℃、次に4℃まで冷却する。PCR産物を10μLの各アンプリコンおよび2.5μLの5X色素を用いて、ゲル電気泳動により解析する。PCR産物は、KanR遺伝子がゲノムに挿入されている場合にのみ生じる。
【0310】
実施例12.選択性マーカの除去
抗生物質耐性遺伝子をpCP20を用いて除去する。ArgRが削除された株を、抗生物質を含有するLB培地において、37℃で、OD600が0.4〜0.6に到達するまで増殖させる。全てのチューブ、溶液、およびキュベットを、予め4℃まで冷却する。細胞を4℃で5分間、2000rpmで遠心分離し、上澄みを取り除き、細胞を4℃の水1mLに再懸濁する。大腸菌を4℃で5分間、2000rpmで遠心分離し、上澄みを取り除き、細胞を4℃の水0.5mLに再懸濁する。大腸菌を4℃で5分間、2000rpmで遠心分離し、上澄みを取り除き、細胞を4℃の水0.1mLに再懸濁する。エレクトロポレーターを2.5kVに設定する。1ngのpKD20プラスミドDNAを細胞に加え、ピペットすることにより混ぜ、滅菌した冷却キュベットにピペットする。乾いたキュベットをサンプルチャンバに置き、電気パルスを適用する。1mLの室温SOC培地をすぐに加え、混合物を培養チューブに移し、30℃で1〜3時間インキュベートする。200μLの細胞をアンピシリンプレートに広げ、200μLの細胞をカナマイシンプレートに広げ、両方を一晩37℃で増殖させる。アンピリシンプレートはpCP20を有する細胞を含有する。細胞を一晩インキュベートし、一晩で十分なOD600まで増殖しないコロニーは追加で24時間さらにインキュベートする。カナマイシンプレートは、どれぐらいの細胞がエレクトロポレーションに耐えたかについての指標となる。アンピシリンプレートからの形質転換体を非選択的に43℃で精製し、一晩増殖させる。
【0311】
実施例13.形質転換体の確認
精製した形質転換体を、アンピシリンおよびカナマイシンに対する感受性についてテストする。43℃で増殖させたプレートのコロニーを取り、10μLのLB培地に再懸濁する。3μLの細胞懸濁液を3つのプレートそれぞれにピペットする:1)37℃でインキュベートしたカナマイシンを有するLBプレートであって、宿主株のゲノムにおけるKanR遺伝子の有無をテストする、プレート;2)30℃でインキュベートしたアンピシリンを有するLBプレートであって、pCP20プラスミドに由来するAmpR遺伝子の有無をテストする、プレート;3)37℃でインキュベートした抗生物質なしのLBプレート。カナマイシンまたはアンピシリンのプレートにおいて特定のコロニーについて増殖が観察されない場合、KanR遺伝子およびpCP20プラスミドの両方が失われており、コロニーはさらなる解析のために保存される。単一コロニーを得るため、保存されたコロニーをLBプレートに再度筋状に置いて単一コロニーを得、37℃で一晩増殖させる。ArgRの欠損を、ゲノムのargR領域をシーケンシングすることにより確かめる。
【0312】
実施例14.アルギニンフィードバック耐性N−アセチルグルタミン酸シンセターゼ(argAfbr
上記のArgR欠失に加え、大腸菌Nissle細菌はさらに、以下のプロモータ:テトラサイクリン誘導性プロモータ、配列番号16〜27から選択されるFNRプロモータのそれぞれの制御下で発現する、アルギニンフィードバック耐性N−アセチルグルタミン酸シンセターゼ(argAfbr、配列番号28)遺伝子を含む。本明細書で記載するように、他のプロモータも用いることができる。
【0313】
argAfbr遺伝子は、高コピープラスミド、低コピープラスミド、または染色体において発現する。SYN―UCD201、SYN―UCD202、およびSYN―UCD203のそれぞれにおいて、ArgRは削除されている(ΔArgR)。SYN―UCD201はさらに野生型argAfbrを含むが、誘導性argAfbrは欠く。SYN―UCD202は、ΔArgRと、高コピープラスミドにおいてテトラサイクリン誘導性プロモータの制御下で発現するargAfbrを含む。SYN―UCD203は、ΔArgRと、低コピープラスミドにおいてテトラサイクリン誘導性プロモータの制御下で発現するargAfbrを含む。SYN―UCD204は、ΔArgRと、低コピープラスミドにおいてテトラサイクリン誘導性プロモータの制御下で発現するargAfbrを含む。SYN―UCD205は、ΔArgRと、低コピープラスミドにおいてFNR誘導性プロモータ(fnrS2)の制御下で発現するargAfbrを含む。
【0314】
argAfbr遺伝子を、大腸菌Nissleの以下の挿入部位のうち1つまたは複数で細菌ゲノムに挿入する:malE/K、araC/BAD、lacZ、thyA、malP/T。任意の適切な挿入部位を用いることができる。例えば図22を参照。挿入部位はゲノムのどこでもよく、例えば、(栄養要求株を生成する)thyAなどの生存および/もしくは増殖に必要な遺伝子;ゲノム複製部位の近くなどのゲノム活性領域;ならびに/または、意図しない転写のリスクを低減させるため、アラビノースオペロンのAraBとAraCの間など、分岐プロモータの間でよい。挿入部位において、挿入部位およびargAfbr構成物に対し相同的なDNAプライマーを設計する。標的部位に対し相同性を有する構成物を含有する直鎖状DNA断片をPCRにより生成し、ラムダレッド組換えを上記のように実行する。結果として生じる大腸菌Nissle細菌はArgRが削除され、フィードバック耐性N−アセチルグルタミン酸シンセターゼが挿入され、それによりアルギニンまたはシトルリンの生合成が増大している。
【0315】
実施例15.アンモニアの定量化
上記の遺伝子操作した細菌を5mLのLBにおいて一晩増殖させた。翌日、細胞をペレット化し、M9+グルコースにおいて洗浄し、ペレット化し、3mLのM9+グルコースにおいて再懸濁した。細胞培養物を4時間振とう(250rpm)しながらインキュベートし、37℃で、好気的に、またはCoy嫌気的チャンバ(90%N、5%CO、5%Hを供給)において嫌気的にインキュベートした。ベースライン(t=0)、2時間目、および4時間目で、各細胞培養物のOD600を、各細胞の相対豊富度を求めるために測定した。
【0316】
t=0、2時間目、および4時間目に、培地中のアンモニア濃度を求めるために、各細胞培養物の1mLアリコットをNova Biomedical Bioprofile Analyzer 300で解析した。SYN−UCD101およびSYN−UCD102は両方ともin vitroでアンモニアを消費することが可能だった。図28A、B、およびCには、SYN−UCD202、SYN−UCD204、SYN−UCD103、およびブランク対照を用いたアンモニア濃度についての棒グラフを描く。
【0317】
図16.アルギニンおよびシトルリンの定量化
一部の実施形態では、上記の遺伝子操作した細菌を、一晩LBにおいて振とうしながら増殖させる。細菌を5mLのLBにおいて1:100に希釈し、1.5時間振とうしながら37℃で増殖させる。細菌培養物を以下のように誘導する:(1)FNR誘導性argAfbrを含む細菌を、37℃で、Coy嫌気的チャンバ(90%N、5%CO、5%H、および20mM硝酸を供給)において嫌気的条件下で最長4時間、37℃でLBにおいて誘導する;(2)テトラサイクリン誘導性argAfbrを含む細菌を、アンヒドロテトラサイクリン(100ng/mL)を用いて誘導する;(3)アラビノース誘導性argAfbrを含む細菌を、グルコースを欠く培地において1%アラビノースを用いて誘導する。誘導後、細菌細胞をインキュベータから取り出し、5分間最高速度でスピンダウンする。細胞を1mLのM9グルコースに再懸濁し、OD600を測定する。OD600が0.6〜0.8になるまで細胞を希釈する。M9グルコース培地中の再懸濁した細胞を、37℃で振とうしながら好気的に増殖させる。100μLの細胞再懸濁液を取り出し、OD600を時間=0で測定する。100μLのアリコットを、質量分析用の丸底96ウェルプレートにおいて−20℃で凍らせる(LC−MS/MS)。後続の各時点において、100μLの細胞懸濁液を取り出し、OD600を測定し;100μLのアリコットを、質量分析用の丸底96ウェルプレートにおいて−20℃で凍らせる。サンプルをアルギニンおよび/またはシトルリンの濃度について解析する。各時点で、質量分析により求められる正規化濃度対OD600を用いて、単位時間当たりの細胞ごとのアルギニンおよび/またはシトルリンの生成割合を求める。
【0318】
一部の実施形態では、上記の遺伝子操作した細菌を、アガー上で、単一コロニー用にグリセロールストックから縞状に置く。コロニーを取り、3mLのLBにおいて4時間または一晩増殖させ、次に5分間2500rcfで遠心分離する。培養物を0.5%グルコースを有するM9培地において洗浄する。培養物を0.5%グルコースを有する3mLのM9培地に再懸濁し、OD600を測定する。培養物を、ATC(100ng/mL)を有するまたは有さない、20mMグルタミンを有するまたは有さない、0.5%グルコースを有するM9培地に希釈し、その結果、全てのOD600を0.4〜0.5にする。各サンプルの0.5mLのアリコットを取り出し、5分間14000rpmで遠心分離し、上澄みを取り出し、保存する。上澄みを−80℃で凍らせ、細胞ペレットを−80℃で凍らせる(t=0)。残った細胞を4〜6時間振とう(250rpm)しながら増殖させ、37℃で、好気的に、またはCoy嫌気的チャンバ(90%N、5%CO、5%Hを供給)において嫌気的にインキュベートする。0.5mLアリコット1つを各サンプルから2時間ごとに取り出し、OD600を測定する。アリコットを5分間14000rpmで遠心分離し、上澄みを取り出す。上澄みを−80℃で凍らせ、細胞ペレットを−80℃で凍らせる(t=2、4、および6時間)サンプルを氷に置き、アルギニンおよびシトルリンのレベルを質量分析を用いて求める。
【0319】
細菌培養物の上澄みに対し、500、100、20、4、および0.8μg/mLのアルギニンおよびシトルリン標準液のサンプルを調製する。丸底96ウェルプレートにおいて、20μLのサンプル(細菌上澄みまたは標準液)を、L−Arginine−1315(Sigma)およびL−シトルリン−2,3,3,4,4,5,5−d7(CDNアイソトープ)内部標準物質を2μg/mLの最終濃度で有する、80μLの水に加える。プレートをPierceASeal foilを用いてヒートシールし、よく混ぜる。V底96ウェルポリプロピレンプレートにおいて、5μLの希釈サンプルを、95μLの誘導体化混合物(85μLの10mM NaHCO pH9.7および10μLの10mg/mLダンシルクロリド(アセトニトリルに希釈してある)に加える。プレートをThermASeal foilを用いてヒートシールし、よく混ぜる。サンプルを誘導体化のために60℃で45分間インキュベートし、5分間4000rpmで遠心分離する。丸底96ウェルプレートにおいて、20μLの誘導体化サンプルを0.1%ギ酸を有する180μLの水に加える。プレートをClearASeal sheetを用いてヒートシールし、よく混ぜる。
【0320】
アルギニンおよびシトルリンを、Thermo TSQ Quantum Max triple quadrupole mass spectrometerを用いて、タンデム質量分析計(LC−MS/MS)に結合させた液体クロマトグラフィにより測定する。以下の表で、LC−MS/MS法の概要を提供する。
【0321】
【表6】
【0322】
図51は、ベースライン、2時間目、および4時間目における、SYN−UCD101、SYN−UCD102、およびブランク対照に由来する培養培地のin vitroでのアンモニアレベルについての棒グラフを描く。SYN−UCD101およびSYN−UCD102は両方ともin vitroでアンモニアを消費することが可能である。
【0323】
図52は、誘導(+ATV)および非誘導(−ATC)の条件下での、非改変Nissle、SYN−UCD201、SYN−UCD202、およびSYN−UCD203により生成されるin vitroのアルギニンレベルについての棒グラフを描く。SYN−UCD202およびSYN−UCD203は両方とも、非改変NissleおよびSYN−UCD201と比較し、in vitroでアルギニンを生成することが可能だった。SYN−UCD203は、SYN−UCD202と比較し、非誘導条件下でより低レベルのアルギニン生成を示した。
【0324】
図24は、誘導(+ATC)および非誘導(−ATC)の条件下で、SYN−UCD103、SYN−UCD201、SYN−UCD202、およびSYN−UCD203により生成されるin vitroでのアルギニンレベルについての棒グラフを描く。SYN−UCD201はΔArgRを含み、argAfbrを含まない。SYN−UCD202は、ΔArgRと、高コピープラスミドにおいてテトラサイクリン駆動argAfbrを含む。SYN−UCD203は、ΔArgRと、低コピープラスミドにおいてテトラサイクリン駆動argAfbrを含む。
【0325】
図25は、誘導条件下で、SYN−UCD103、SYN−UCD104、SYN−UCD204、およびSYN−UCD105により生成されるin vitroでのアルギニンおよびシトルリンのレベルについての棒グラフを描く。
【0326】
図26は、酸素の存在下(+O)または非存在下(−O)での、誘導(+ATC)および非誘導(−ATC)の条件下におけるSYN−UCD103、SYN−UCD205、およびSYN−UCD204により生成されるin vitroでのアルギニンレベルについての棒グラフを描く。
【0327】
図27は、in vivoでのNissle滞留のグラフを描く。ストレプトマイシン耐性Nissleを、抗生物質の前処置なしに経口胃管投与を介してマウスに投与した。6匹の全マウスの糞便ペレットを投与後にモニターして、マウスの胃腸管になお滞留する投与Nissleの量を求めた。棒はマウスに投与された細菌の数を表す。線は、連続10日間の各日の糞便サンプルから発見されたNissleの数を表す。
【0328】
図28Aは、非改変対照NissleまたはSYN−UCD202、Argリプレッサ遺伝子が削除され、argAfbr遺伝子が高コピープラスミドにおいてテトラサイクリン誘導性プロモータの制御下にある遺伝子操作株で処置した、高アンモニア血症マウスにおけるアンモニアレベルについての棒グラフを描く。図28Bは、肝性脳症のTAAマウスモデルにおける、ストレプトマイシン耐性対照Nissle(SYN−UCD103)および溶媒のみの対照と比較したSYN−UCD204のin vivoでの効果(アンモニア消費)を示す棒グラフである。図28Cは、TAA処置後24〜28時間の血中アンモニア濃度の増減率についての棒グラフを描く。
【0329】
図29は、ストレプトマイシン耐性Nissle対照(SYN−UCD103)またはSYN−UCD104で処置した高アンモニア血症spfashマウスにおけるアンモニアレベルについての棒グラフを描く。
【0330】
ATCまたは嫌気的誘導因子の存在下または非存在下での、遺伝子操作した細菌における細胞内アルギニンおよび分泌(上澄み)アルギニンの生成量を測定し、同一条件下の同じ株の対照細菌と比較する。
【0331】
ATCまたは嫌気的誘導因子の存在下または非存在下での、遺伝子操作した細菌の遺伝子操作した細菌における、6時間にわたる総アルギニン生成量を測定し、同一条件下の同じ株の対照細菌と比較する。
【0332】
実施例17.高アンモニア血症および急性肝不全のマウスモデルにおける遺伝子操作した細菌の効果
野生型C57BL6/Jマウスを、急性肝不全および高アンモニア血症を引き起こすチオールアセトアミド(TAA)で処置する(Nicaise et al.,2008)。マウスを非改変対照Nissle細菌か、または、上記のように高レベルのアルギニンまたはシトルリンを生成するように遺伝子操作したNissle細菌で処置する。
【0333】
1日目は、50mLの細菌培養物を一晩増殖させ、ペレット化する。ペレットを最終濃度が約1011CFU/mLのPBS5mLに再懸濁する。マウスの血中アンモニアレベルを下顎出血により測定し、アンモニアレベルをPocketChem Ammonia Analyzer(Arkray)により求める。マウスに100μLの細菌(約1010CFU)で経管栄養する。マウス用の飲み水を、0.1mg/mLのアンヒドロテトラサイクリン(ATC)および味をよくするために5%スクロースを含有するように変更した。
【0334】
2日目は、細菌経管栄養溶液を上記のように調製し、マウスに100μLの細菌で経管栄養する。マウスは0.1mg/mLのATCおよび5%スクロースを含有する飲み水を与えられ続ける。
【0335】
3日目は、細菌経管栄養溶液を上記のように調製し、マウスに100μLの細菌で経管栄養する。マウスは0.1mg/mLのATCおよび5%スクロースを含有する飲み水を与えられ続ける。マウスは、100μLのTAA(0.5%NaCl中に250mg/kg体重)の腹腔内(IP)注射を受ける。
【0336】
4日目は、細菌経管栄養溶液を上記のように調製し、マウスに100μLの細菌で経管栄養する。マウスは0.1mg/mLのATCおよび5%スクロースを含有する飲み水を与えられ続ける。マウスは、100μLのTAA(0.5%NaCl中に250mg/kg体重)の別のIP注射を受ける。マウスの血中アンモニアレベルを下顎出血により測定し、アンモニアレベルをPocketChem Ammonia Analyzer(Arkray)により求める。
【0337】
5日目は、マウスの血中アンモニアレベルを下顎出血により測定し、アンモニアレベルをPocketChem Ammonia Analyzer(Arkray)により求める。糞便ペレットをマウスより採取し、液体クロマトグラフィ質量分析法(LC−MS)によりアルギニン含有量を求める。遺伝子操作したNissleおよび非改変対照Nissleで処置したマウスのアンモニアレベルを比較する。
【0338】
実施例18.高アンモニア血症およびUCDのマウスモデルにおける遺伝子操作した細菌の効果
オルニチントランスカルバミラーゼは尿素サイクル酵素であり、spf−ash突然変異を含むマウスは軽度のオルニチントランスカルバミラーゼ欠損症を示し、これはヒトUCDのモデルとして機能する。マウスを非改変対照Nissle細菌か、または、上記のように高レベルのアルギニンまたはシトルリンを生成するように遺伝子操作したNissle細菌で処置する。
【0339】
60匹のspf−ashマウスを、100μL(PO QD)の本発明の遺伝子操作した細菌(SYN−UCD103、SYN−UCD204)またはH2O対照:H2O対照、通常食(n=15);H2O対照、高タンパク質食(n=15);SYN−UCD103、高タンパク質食(n=15);SYN−UCD204、高タンパク質食(n=15)で処置した。1日目にマウスを計量し、ケージごとのマウスの体重の差異を最小化するようにグループ分けした。マウスに経管栄養し、20mg/LのATCを有する水をケージに加えた。2日目は、朝と午後にマウスに経管栄養した。3日目は、朝にマウスに経管栄養し、計量し、ベースラインのアンモニアレベルを得るために投薬4時間後に採血した。マウスに午後に経管栄養し、食事を70%タンパク質食に変更した。4日目は、マウスに朝と午後に経管栄養した。5日目は、マウスに朝に経管栄養し、計量し、アンモニアレベルを得るために投薬4時間後に採血した。6日目および7日目は、マウスに朝に経管栄養した。8日目は、マウスに朝に経管栄養し、計量し、アンモニアレベルを得るために投薬4時間後に採血した。9日目は、マウスに朝と午後に経管栄養した、10日目は、マウスに朝に経管栄養し、計量し、アンモニアレベルを得るために投薬4時間後に採血した。12日目は、朝と午後にマウスに経管栄養した。13日目は、マウスに朝に経管栄養し、計量し、アンモニアレベルを得るために投薬4時間後に採血した。血中アンモニアレベル、体重、および生存比率を解析する(図29)。
【0340】
実施例19.Nissle滞留
非改変大腸菌Nissleおよび本発明の遺伝子操作した細菌は、消化管または血清において、例えば防御因子により破壊され得る。in vivoでの細菌の滞留時間は計算できる。大腸菌Nissleのストレプトマイシン耐性株を用いた非限定的例を以下に記載する。代替の実施形態では、本発明の遺伝子操作した細菌について、滞留時間を計算する。
【0341】
C57BL/6マウスを1週間、動物施設で慣らした。1週間の順化後(つまり0日目)、ストレプトマイシン耐性Nissle(SYN−UCD103)を1〜3日目に経口胃管投与を介してマウスに投与した。マウスを抗生物質で前処置した。投与した細菌、つまり接種剤の量をTable 4に示す。接種剤のCFUを求めるため、接種剤を階段希釈し、ストレプトマイシン(300μg/mL)を含有するLBプレートに置いた。プレートを37℃で一晩インキュベートし、コロニーを数えた。
【0342】
【表7】
【0343】
2〜10日目に、糞便ペレットを最大6匹のマウス(ID No.1〜6;Table 5)から採取した。ペレットをPBSを含有するチューブにおいて計量し、均質化した。糞便ペレット中のNissleのCFUを求めるため、均質化糞便ペレットを階段希釈し、ストレプトマイシン(300μg/mL)を含有するLBプレートに置いた。プレートを37℃で一晩インキュベートし、コロニーを数えた。
【0344】
1日目の糞便ペレットも採取し、ストレプトマイシン(300μg/mL)を含有するLBプレートに置いて、ストレプトマイシン耐性型の、マウス胃腸管に特有の任意の株があるか確かめた。マウス胃腸管内に未だ滞留する投与されたNissleの経時変化および量をTable 5に示す。
【0345】
図27は、in vivoでのNissle滞留についてのグラフを描く。ストレプトマイシン耐性Nissleを抗生物質の前処置なしに経口胃管投与を介してマウスに投与した。6匹の全マウスの糞便ペレットを投与後にモニターして、マウスの胃腸管になお滞留する投与Nissleの量を求めた。棒はマウスに投与した細菌の数を表す。線は、連続10日間の各日の糞便サンプルから発見されたNissleの数を表す。
【0346】
【表8】
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6-1】
図6-2】
図6-3】
図7-1】
図7-2】
図8A
図8B-1】
図8B-2】
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15-1】
図15-2】
図16
図17
図18-1】
図18-2】
図19
図20
図21A-1】
図21A-2】
図21B-1】
図21B-2】
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44
図45
図46
図47
図48
図49A
図49B
図50
図51
図52
図53
図54
図55
図56
図57
図58
図59
図60
図61
図62
図63
図64
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]