(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ローラーの数が、少なくとも3本であり、前記複数のローラー(5)の1つおきのローラー(5)は、その軸が2本の隣接するローラー(5)の軸によって形成される平面の外にある位置まで可動であるように構成されている、請求項5から7のいずれか一項に記載の装置。
【背景技術】
【0002】
選択透過性中空糸膜の製造方法は、通常、フィルターを製造するために膜をハウジング中に移し得る前に、膜を乾燥するステップを含む。乾燥は、不連続的に、例えば膜のストランドもしくは束を製造し、続いて乾燥チャンバーもしくはオーブン中でこれらを乾燥することによって、または連続的に、即ちオンラインで実施することができる。従来技術において知られている大多数のオンライン乾燥工程は、中空糸膜を、熱風によって、例えば対流オーブン中で乾燥することを含む。
【0003】
EP 2591847Alは、中空糸膜を乾燥ガスで連続的に乾燥する特定の装置を開示している。
【0004】
JP 61/146306Aは、膜を加熱体と接触させることを含む、セルロースの中空糸膜を製造する方法を開示している。加熱体の好ましい温度は100から140℃である。
【0005】
WO 2013/034611A1は、中空糸膜の乾燥ステップを含む、ポリスルホンまたはポリエーテルスルホンとポリビニルピロリドンのグラフトコポリマーから選択透過性中空糸膜を製造する方法を開示している。乾燥ステップは、150℃から280℃の範囲の温度で実施され、連続プロセス、即ちオンライン乾燥プロセスとして実施することができる。乾燥は単一プロセスステップで実施され、乾燥時間という項目は割り当てられない。
【0006】
US 2015/0075027A1は、水分低減ステップおよび最終乾燥ステップを含む加熱ステップを含む多孔質膜を製造する方法を開示している。水分低減ステップにおいて、膜材料の熱変形温度T
dより高い温度t
ghを有する加熱媒体が使用され、最終乾燥ステップにおいて、膜材料の熱変形温度T
d以下の温度t
ghを有する加熱媒体が使用される。水分低減ステップに対して170℃以上の温度t
ghが教示され、最終乾燥ステップに対して120℃以下の温度t
ghが挙げられている。加熱媒体として、過熱蒸気、熱風または熱ガスが使用される。参照はまた、水分低減ユニットおよび水分低減ユニットの下流に配置された最終乾燥ユニット含む乾燥装置を開示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の方法は、
a)i.任意選択的にポリアミド(PA)と組み合わせて、少なくとも1種のポリスルホン、ポリエーテルスルホン(PES)、またはポリアリールエーテルスルホン(PAES);
ii.少なくとも1種のポリビニルピロリドン(PVP);および
iii.少なくとも1種の溶媒;
を含むポリマー溶液を、2つの同心の開口部を有するノズルの外側の環状スリットを通して沈殿浴槽中に押し出すステップと、同時に
b)中心流体をノズルの内側開口部を通して押し出すステップと、
c)得られた中空糸膜を洗浄するステップと、
d)中空糸膜を乾燥および調質の2段階処理にかけるステップと
を連続的に含み、
乾燥および調質の2段階処理は、中空糸膜の外側表面に、210から280℃、例えば220から260℃の範囲の温度を1から4秒間、例えば2から3秒間の範囲の時間適用することによって中空糸膜を乾燥すること、および続いて、中空糸膜の外側表面に、180から200℃の範囲の温度を2から5秒間、例えば3から4秒間の範囲の時間適用することによって中空糸膜を調質することを含む。
【0011】
乾燥および調質の2段階処理は、水の十分な蒸発および細孔の規定された収縮を提供する。本方法の一実施形態において、乾燥および調質は、中空糸膜を180から280℃の範囲の温度を有する高温表面(例えば、加熱されたローラー)と接触させることによって実施される。
【0012】
理論に拘束されることを望むものではないが、乾燥を追加の調質と組み合わせること、ならびに温度および滞留時間の特定の範囲を選択することによって、新たに紡糸される中空糸膜の細孔構造は、より狭い孔径分布の方へ改変され、最終中空糸膜のより高い選択性をもたらすものと考えられる。
【0013】
ステップa)において使用されるポリマー溶液(「紡糸溶液」)は、任意選択的にポリアミド(PA)と組み合わせて、少なくとも1種のポリスルホン、ポリエーテルスルホン(PES)、またはポリアリールエーテルスルホン(PAES)、および少なくとも1種のポリビニルピロリドン(PVP)を含む。一実施形態において、100kDa未満の分子量を有する低分子量成分および100kDa以上の分子量を有する高分子量成分からなるポリビニルピロリドンが、膜を製造するために使用される。
【0014】
適したポリエーテルスルホンの一例は、一般式−[O−Ph−SO
2−Ph−]
n−、約60,000から65,000Da、好ましくは63,000から65,000Daの重量平均分子量、および約1.5から1.8のMw/Mnを有するポリマーである。
【0015】
本方法の一実施形態において、ポリマー溶液は、溶液の総重量に対して12から16wt%のポリエーテルスルホンおよび溶液の総重量に対して3から12wt%、例えば5から8wt%のPVPを含み、ここで、前記PVPは、溶液の総重量に対して3から8wt%、例えば4から6wt%の低分子量(100kDa未満)PVP成分および溶液の総重量に対して0から4wt%、例えば1から3wt%の高分子量(100kDa以上)PVP成分からなる。一実施形態において、紡糸溶液に含まれている総PVPは、22から34wt%、例えば25から30wt%の高分子量(100kDa以上)成分および66から78wt%、例えば70から75wt%の低分子量(100kDa未満)成分からなる。高分子量および低分子量PVPの例は、例えば、それぞれPVP K85/K90およびPVP K30である。
【0016】
特定の実施形態において、ポリマー溶液は、溶液の総重量に対して66−81wt%の溶媒、および溶液の総重量に対して0−10wt%、例えば0−5wt%の適した添加剤をさらに含む。適した添加剤は、例えば、水、グリセリン、および他のアルコールからなる群から選択される。一実施形態において、水が、溶液の総重量に対して、0から8wt%の量で、例えば2から6wt%の量で紡糸溶液中に存在する。
【0017】
一実施形態において、本方法に使用される溶媒は、N−メチルピロリドン(NMP)、N−エチルピロリドン、N−オクチルピロリドン、ジメチルアセトアミド(DMAC)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ブチロラクトンおよび前記溶媒の混合物からなる群から選択される。特定の実施形態において、NMPが溶媒として使用される。
【0018】
DIN EN ISO 628−1に従って22℃において測定された、ポリマー溶液の動的粘度は、通常、3,000から15,000mPa・s、例えば4,000から9,000mPa・s、またはさらに4,900から5,900mPa・sの範囲である。
【0019】
本開示の方法のステップb)において使用される中心流体または孔内液体は、少なくとも1種の上記の溶媒ならびに水、グリセリンおよび他のアルコールの群から選択される沈殿媒体を含む。
【0020】
ある特定の実施形態において、中心流体は、膜の性能をさらに向上させるために、膜の表面を改変するさらなる添加剤をさらに含む。本発明の一実施形態において、中心流体中の添加剤の量は、中心流体の総重量に対して、0.02から2wt%、例えば0.05から0.5wt%、または0.05−0.25wt%である。
【0021】
適した添加剤の例は、ヒアルロン酸、および双性イオンポリマー、加えて分子中に双生イオンを有するビニル重合性モノマーと別のビニル重合性モノマーのコポリマーを含む。双性イオン(コ)ポリマーの例は、ホスホベタイン、スルホベタイン、およびカルボキシベタインを含む。
【0022】
中心流体は、通常40−100wt%の沈殿媒体および0−60wt%の溶媒を含む。本方法の一実施形態において、中心流体は、44−69wt%の沈殿媒体および31−56wt%の溶媒を含む。特定の実施形態において、中心流体は、49−63wt%の水および37−51wt%のNMPを含む。別の実施形態において、中心流体は、53−56wt%の水および44−47wt%のNMPを含む。
【0023】
本方法の一実施形態において、紡糸口金の外側スリットの開口部を通って流れて出てくるポリマー溶液は、制御された雰囲気を有するスピニングシャフト中を導かれる。
【0024】
本方法の一実施形態において、スピニングシャフトは、2から90℃の範囲内、例えば25から70℃、または30から60℃の範囲内の温度に維持される。
【0025】
一実施形態において、沈殿している中空糸は、水分量に対して0から10wt%、例えば、0から5wt%、または0から3wt%の含量の溶媒を含む、湿性の蒸気/空気混合物に曝露される。湿性の蒸気/空気混合物の温度は、少なくとも15℃、好ましくは少なくとも30℃、および高くて75℃、例えば62℃以下である。さらに、湿性の蒸気/空気混合物中の相対湿度は60から100%である。
【0026】
温度が制御された蒸気雰囲気中の溶媒の効果は、繊維の沈殿速度を制御することである。より少ない溶媒が用いられた場合、外側表面はより高密度な表面を得て、より多くの溶媒が使用された場合、外側表面はより開放性の構造を有するであろう。沈殿する膜を取り囲む、温度が制御された蒸気雰囲気中の溶媒量を制御することによって、膜の外側表面上の細孔の量およびサイズが改変され、制御され得る。
【0027】
本開示の方法の一実施形態において、紡糸口金の温度は、50−70℃、例えば55−61℃であり、スピニングシャフトの温度は、25−65℃、例えば50−60℃である。ノズルの開口部と沈殿浴槽との間の距離は、30から110cm、例えば45から55cmである。沈殿浴槽は、10−80℃、例えば20−40℃の温度を有する。一実施形態において、紡糸速度は、15−100m/分、例えば25−55m/分の範囲である。
【0028】
本発明の一実施形態において、沈殿浴槽は、85から100wt%の水および0から15wt%の溶媒、例えばNMPを含む。別の実施形態において、沈殿浴槽は、90から100wt%の水および0から10wt%のNMPを含む。
【0029】
ステップa)およびb)によって得られた中空糸膜は、続いて洗浄されて、不要成分が除去される(ステップc)。本方法の一実施形態において、中空糸膜は、70から90℃の温度範囲の少なくとも1つの水浴槽を通過される。別の実施形態において、膜は2つの水浴槽を通過される。さらに別の実施形態において、膜は5つの水浴槽を通過される。本方法のある特定の実施形態において、個々の水浴槽は、異なる温度を有する。例えば、各水浴槽は、先行する水浴槽より高い温度を有していてもよい。
【0030】
次いで、膜は、膜の外側表面に210から280℃、例えば220から260℃の範囲の温度を1から4秒間、例えば2から3秒間の範囲の時間適用することによって前記膜を乾燥すること、および続いて、膜の外側表面に180から200℃の範囲の温度を2から5秒間、例えば3から4秒間の範囲の時間適用することによって前記膜を調質することを含む、乾燥および調質の2段階処理(ステップd)にかけられる。
【0031】
乾燥の後、中空糸膜は任意選択的に滅菌される。適した滅菌方法には、蒸気、エチレンオキシド、または放射線照射による処理が含まれる。本方法の一実施形態において、中空糸膜は、少なくとも121℃の温度で少なくとも21分間蒸気滅菌される。
【0032】
一実施形態において、本開示の方法によって得られた膜は、任意選択的にポリアミド(PA)と組み合わせて、80−99wt%のポリスルホン、ポリエーテルスルホン(PES)、またはポリアリールエーテルスルホン(PAES);および1−20wt%のポリビニルピロリドン(PVP)を含む。
【0033】
一実施形態において、選択透過性中空糸膜に含まれるPVPは、高分子量(100kDa以上)および低分子量(100kDa未満)成分からなり、膜中のPVPの総重量に対して10−45wt%の高分子量成分と、膜中のPVPの総重量に対して55−90wt%の低分子量成分とを含む。
【0034】
一実施形態において、本開示の方法によって得られた中空糸膜は、180から250μmの内径を有する。別の実施形態において、内径は185から195μmである。さらに別の実施形態において、内径は210から220μmである。
【0035】
中空糸膜の壁厚は、通常20から55μmの範囲である。一実施形態において、壁厚は33から37μmである。別の実施形態において、壁厚は38から42μmである。さらに別の実施形態において、壁厚は43から47μmである。さらに別の実施形態において、壁厚は48から52μmである。
【0036】
本開示の方法によって得られた中空糸膜は、対称的壁構造または非対称的壁構造を有してもよい。一実施形態において、膜壁は対称的スポンジ構造を有する。別の実施形態において、膜壁は非対称的スポンジ構造を有する。本方法のさらに別の実施形態において、膜壁は、非対称的壁構造を有し、フィンガー構造を有する層を含み、即ち5μmを超えるサイズを有するマクロボイドを特徴とする。
【0037】
本開示のさらなる態様は、選択透過性中空糸膜の乾燥および調質の連続的2段階処理を実施することが可能な装置である。
【0038】
中空糸膜4を連続的に乾燥および調質する装置は、ハウジング1中に配置された複数のローラー5を含む。ハウジング1は、中空糸膜4のための入口2および出口3、ならびに排気口7を有する。
【0039】
ローラー5は、中空糸膜4を加熱するように構成されている。中空糸膜4は、ローラー5の外表面上を通過されて、高温の表面に接触し、この過程で加熱される。複数のローラー5の各ローラー5の外表面は、個別に加熱可能である。一実施形態において、各ローラー(5)の外表面は、150℃から300℃の範囲の温度に加熱可能であるように構成されている。各ローラー5の温度は個別に制御される。加熱は様々な方法で実施され得る。例えば、ローラー5の外表面は、電気的に、即ち抵抗加熱または誘導加熱によって加熱され得て、あるいは輻射加熱によって、ローラー5の内側もしくはローラー5の外側からまたは両側から加熱され得る。
【0040】
各ローラー5は、駆動装置6によって個別に駆動される。駆動装置6は通常モーターであろう。各ローラー5の速度は、個別に制御される。一実施形態において、各ローラー5は、30から100m/分、例えば45から75m/分の範囲の円周速度で回転するように構成されている。
【0041】
ローラー5は、すべてのローラー5の軸が平行であり、すべての軸が1つの共通の平面内にあるようにハウジング1中に位置付けられる。一実施形態において、ローラー5の数は、2から20本、例えば5から10本、例えば8から10本である。一実施形態において、入口2の下流の最初の2本のローラー5の間の間隙aは、0.2から8mm、例えば1から7mm、例えば3から5mmの範囲である。一実施形態において、装置中のすべてのローラー5は、同じ直径Dを有する。装置の一実施形態において、直径Dは、200から300mmの範囲である。
【0042】
図lに示すように、中空糸4が入口2から出口3までの装置を通る途中で、中空糸4はローラー5の加熱表面上を通過する。等しいサイズのローラーを有する装置に関して、ローラー5の加熱表面と接触している個々の中空糸4のそれぞれの長さ(「接触長さ」)は、約(N−l)
*π
*Dであり、ここで、Nは装置中のローラー5の数であり、Dはローラー5の直径である。装置の一実施形態において、接触長さは少なくとも1mである。別の実施形態において、接触長さは少なくとも2mである。さらに別の実施形態において、接触長さは少なくとも6mである。
【0043】
装置の一実施形態において、複数のローラー5の1つおきのローラー5は、その軸が、2本の隣接するローラー5の軸によって形成される平面の外にある位置まで可動であるように構成されている。
【0044】
ハウジング1は、排気口7を特徴とし、排気口はファン9に接続されている。装置の操作の間、ファン9は、中空糸膜4から水を蒸発させることによって生じた水蒸気をハウジング1から除去し、それによって乾燥工程を支援する。ファン9の処理能力は、制御器8によって制御される。一実施形態において、ファン9は、1時間当たり200から400m
3のガスの範囲の処理能力を有するように構成されている。
【0045】
装置の一実施形態において、ハウジング1は2つの区画に分離されるように構成されており、各区画は、ローラー5の総数の一部を含む。装置の実例において、ローラーの総数は10本であり、入口2の下流の第1の区画は、4本のローラー5を含み、第2の区画は6本のローラー5を含む。
【0046】
5本のローラー5を有する装置の例示的な実施形態を
図1および2に示す。装置は、中空糸膜4のための入口2および出口3を有するハウジング1を含む。5本のローラー5が、ハウジング1中に配置される。各ローラー5は、モーター6によって個別に駆動される。
図1は、中空糸膜4の処理時の(「作動位置」における)装置を示す。ローラー5は、これらの中心が一直線に並べられるようにハウジング中に位置付けられる。最初の2本のローラー5の間の最小距離aがまた示されている。
図1によって図示されているように、中空糸膜4は、入口2を通って装置に進入し、ローラー5の表面上を通過し、出口3を通って装置から出る。
図2に示されるように、1つおきのローラー5は、作動位置におけるローラー5の軸によって形成される平面に対して垂直に移動され得る。ハウジング1の上部の部品10もまた、ローラー5のためのさらなる空間を提供し、装置内部への接近を容易にするために上昇させ得る。
図2に示す位置(「準備位置」)では、中空糸4は、入口2から出口3まで直線で装置中に供給され得、装置を
図1に示す作動位置に戻すと、中空糸膜4は、ローラー5の表面上に自動的に導かれる。結果的に、製造工程の開始時、または製造工程の間の個々の中空糸膜4の破断後における中空糸膜4の準備が、大幅に容易になる。ハウジング1は排気口7を特徴とし、排気口はファン9に接続されている。ファン9の処理能力は、制御器8によって制御される。装置の一実施形態において、ファンは、1時間当たり200から400m
3のガス体積をハウジング1から除去するように構成されている。
【0047】
上記に述べ、および下記に記載する特徴は、明示された組合せで使用されるだけでなく、本発明の範囲から逸脱することなく、他の組合せまたはそれら自体で使用され得るものと理解されたい。
【0048】
次に、本発明を以下の実施例においてより詳細に説明する。実施例は、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の特定の実施形態を単に例示するものである。
【0049】
分析方法
i)膜束の製造
[A]ハンドバンドルの製造:
紡糸工程の後の膜束の製造は、以下の性能試験のための繊維束を製造するために必要である。第1の工程ステップは、繊維束を23cmの規定された長さに切断することである。次の工程ステップは、繊維の両端を溶融することからなる。光学的制御は、すべての繊維が十分に溶融されたことを保証する。次いで、繊維束の両端部をポッティングキャップ中に移す。ポッティングキャップは、機械的に固定され、ポッティングチューブをポッティングキャップの上に置く。次いで、繊維はポリウレタンで埋め込まれる。ポリウレタンが硬化した後、埋め込まれた膜束は規定された長さに切断され、様々な性能試験に使用する前に、乾燥保存される。
【0050】
[B]ミニモジュールの製造:
ミニモジュール[=ハウジング中の繊維束]は同様に製造される。ミニモジュールは、繊維の保護を保証し、繊維上の残留水分による蒸気滅菌に使用される。ミニモジュールの製造は、以下の点で異なる;
・所望の繊維の数は、360cm
2の有効表面積Aに対して、式(1)に従って計算される。
【0051】
A=π・d
i・l・n[cm
2] (1)
ただし、
d
i=繊維内径[cm]
n=繊維の量
1=有効繊維長[cm]
・繊維束は、20cmの規定された長さに切断される
・繊維の両端部を溶融し、次のステップを実施する前に、繊維束はハウジング中に移される。
【0052】
[C]フィルターの製造:
フィルター(=透析器)は、1.4m
2の有効表面積を有する約8,000から10,000本の繊維を含む。フィルターは、透析液用の2個のコネクター、および両端に適用され、それぞれが1個の中心に位置する血液コネクターを有するキャップを有する、円筒形のハウジングで特徴付けられる。(巻き取り後の)製造工程は、以下の主要なステップに分類され得る:
・切断された束(長さ約30cm)は、特定の束用鉤爪でハウジング中に移される、
・束の両端は、密閉工程によって密閉される、
・繊維はポリウレタン(PUR)によりハウジング中に埋め込まれる、
・両端部を切断して繊維を開口する、
・キャップは、超音波溶接を用いて血液コネクターに溶接される、
・最終処理は、すすぎ、完全性試験、最終乾燥を含む
・フィルターを滅菌バッグに充填し、蒸気滅菌する。
【0053】
ii)ハンドバンドルおよびミニモジュールの水圧透過率(Lp)
膜束の水圧透過率は、膜束を通した加圧下、規定の体積の水を加圧することによって決定され、膜束を一方で封止し、所要時間を測定する。水圧透過率は、決定された時間t、有効膜表面積A、適用圧力pおよび膜を通して加圧された水の体積Vから、式(2):
Lp=V/[p・A・t] (2)
に従って計算することができる。
【0054】
繊維の数、繊維長ならびに繊維内径から、有効膜表面積Aが計算される。膜束は、Lp試験を実施する30分前にぬらされなければならない。この目的のために、膜束を500mlの超高純度の水を含む箱に入れる。30分後、膜束を試験系に移す。試験系は、37℃に維持された水浴槽および膜束を取り付けることが可能な装置からなる。水浴槽の充填高さは、膜束が指定された装置中で水面の下に位置していることを保証しなければならない。膜の漏れにより、不適切な試験結果が生じることを回避するために、膜束および試験系の完全性試験を前もって実施しなければならない。完全性試験は、束の一方が閉鎖された膜束を通して空気を加圧することにより実施される。気泡は、膜束または試験装置の漏れを示している。漏れが、試験装置中で膜束の不正確な取り付けに起因するのか、それとも実際に膜の漏れが存在するのかを点検しなければならない。膜の漏れが検出された場合は、膜束を廃棄しなければならない。適用される圧力は非常に高いので水圧透過率の測定中に漏れが生じ得ることがないことを保証するために、完全性試験において適用される圧力は、水圧透過率を決定する間に適用される圧力と少なくとも同じ値でなければならない。
【0055】
iii)ハンドバンドル、ミニモジュールおよびフィルターのタンパク質に対する選択性/ふるい係数(SC)
膜の選択性は、ふるい係数の測定によって決定される。この目的ために、タンパク質(本明細書では、ミオグロビン、MW=17kDa;およびアルブミン、MW=66kDa)が溶解されている媒体が極めて重要である。本試験手順に使用される媒体は、7.2のpHを有するPBS緩衝液である。一般に、特定の分子のふるい係数は、以下の通りに得られる。特定のタンパク質溶液を37℃±1℃の温度に維持し、規定条件(血流(Q
B)、TMPおよび濾過速度(UF))下で、試験装置(ハンドバンドル、ミニモジュールまたはフィルター)を通してポンプ給送する。次いで、フィード中(in)、保持液(r)中および濾液(f)中のタンパク質の濃度を決定し、次いで、ふるい係数(SC)を以下の式(3):
SC[%]=2・c(f)/[c(in)+c(r)]・100% (3)
に従って計算することができる。
【0056】
濾液中のタンパク質の濃度がゼロの場合、ふるい係数0%が得られる。濾液中のタンパク質の濃度が、フィードおよび保持液中のタンパク質の濃度と等しい場合、ふるい係数100%が得られる。
【0057】
[A]ハンドバンドルおよびミニモジュールについての水溶液中のふるい係数
ミオグロビンおよびアルブミンの水溶液中のふるい係数実験が、別個の溶液による2つの異なる実験の構成を使用して実施される。最初に、ミオグロビンのふるい係数を決定する。次いで、アルブミンのふるい係数を決定する。
【0058】
PBS緩衝液中のミオグロビンの濃度は100mg/lである。ふるい係数実験に先立って、上記のようにLp試験を実施する。ミオグロビンに関するふるい係数実験を、ミオグロビン溶液を磁気撹拌子で緩徐に撹拌して、シングルパス式で実施する。試験条件は以下の通り規定されている。
【0059】
固有流量(J
v cm/秒単位)および壁面せん断速度(γ s
−1単位)を固定し、一方、血流量(Q
B)および濾過速度(UF)を、それぞれ式(4)および(5)を使用して計算する:
Q
B[ml/分]=γ・n・π・di
3・60/32 (4)
UF[ml/分]=J
v・A・60 (5)
ただし、
n=繊維の量
di=繊維内径[cm]
γ=せん断速度[s
−1]
A=有効膜表面積[cm
2]
ここで、Aは式(1)に従って計算される。
【0060】
ハンドバンドルまたはミニモジュールを試験する場合、せん断速度を500s
−1に設定し、固有流量を0.38・10
−04cm/秒に定める。
【0061】
第1の試料を15分後に採取し(貯留液、保持液、および濾液)、二度目を60分後に採取する。最後に、試験の束をPBS緩衝液で数分間すすぐ。次いで試験を停止する。
【0062】
続いて、アルブミンのSC試験を実施する。60gのアルブミンをPBS緩衝液に溶解し、アルブミン溶液を磁気撹拌子で緩徐に撹拌して、実験を再循環させながら実施する。試験の構成において、Q
Bを式(4)に従って計算し、400mmHgの一定のTMPを設定し、UFおよび保持液流量は、試験条件および膜透過性から生じたものである。15分後、フローをシングルパス式に切り替え、試料(貯留液、保持液、および濾液)を採取する。SC試験後、試験束は、PBS緩衝液で再度すすがれてもよく、タンパク質に対する膜の吸着容量の指標を得るために第2のLp試験を実施するのに使用される。
【実施例】
【0063】
ポリマー溶液の動的粘度ηを、DIN ISO 1628−1に従って、22℃の温度において、毛細管粘度計(ViscoSystem(登録商標)AVS 370、Schott−Gerate GmbH、Mainz、Germany)を使用して測定した。
【0064】
[実施例1]
ポリマー溶液を、N−メチルピロリドン(NMP)中に、ポリエーテル−スルホン(Ultrason(登録商標)6020、BASF Aktiengesellschaft)およびポリビニルピロリドン(K30およびK85、BASF Aktiengesellschaft)および蒸留水を溶解することによって調製した。ポリマー紡糸溶液中の様々な成分の重量分率は、PES:PVP K85:PVP K30:H
2O:NMP=13.6:2.6:5:75.6であった。ポリマー溶液の粘度は8,540mPa・sであった。
【0065】
溶液を調製するために、最初にフィンガーパドル撹拌機を備えた30Lの容器に、NMPおよび水を充填した。PVPをNMPに添加し、50℃において均一な透明溶液が得られるまで撹拌した。最後に、ポリエーテルスルホンを添加した。混合物を50℃において、透明な高粘度の溶液が得られるまで撹拌した。加温した溶液を20℃まで冷却し、50mmHgにおいて1−2時間脱気した。高粘度のポリマー溶液をステンレス鋼容器に移した。
【0066】
蒸留水とN−メチルピロリドン(NMP)を混合することによって、孔内液体を調製した。中心流体中の2つの成分の重量分率は、H
2O:NMP=53wt%:47wt%であった。
【0067】
孔内液体の調製を以下の通り実施した:
・蒸留水をステンレス鋼容器に充填した。NMPを添加し、混合物を約1分間撹拌した;
・透明な混合物を第2のステンレス鋼容器中に濾過し、50mmHgにおいて脱気した。
【0068】
ポリマー溶液を50℃に加熱し、この溶液および孔内液体を紡糸ダイに通すことによって、膜を形成した。ダイの温度は55℃であり、スピニングシャフトの温度は50℃であった。中空糸膜は、50m/分の紡糸速度で形成された。ダイを出た液体毛細管は水浴槽(周囲温度)中を通過させた。ダイと沈殿浴槽との間の距離は100cmであった。形成された中空糸膜は、5つの異なる水浴槽を通して導いた。
【0069】
第5の水浴槽から出た後、繊維は加熱されたローラーを備えた2つの区画を有するオンラインドライヤーに供給され、区画1は4本の加熱されたローラーを含み、区画2は6本の加熱されたローラーを含んでいた。膜は、第1の区画において220から280℃の範囲の温度で乾燥され(ローラー1−4:250/280/260/220℃)、第2の区画において180から190℃の範囲の温度で調質された(ローラー5−10:190/190/190/180/180/180℃)。第1の区画中の滞留時間は2.4秒であり、第2の区画中の滞留時間は3.2秒であった。
【0070】
乾燥した中空糸膜は、190μmの内径および260μmの外径ならびに全体的に非対照な膜構造を有していた。膜の活性な分離層は内側であった。活性な分離層は、最小の細孔を有する層と定義される。膜は巻取り車に巻き取られ、356本の繊維を有するミニモジュールは、上記の方法に従って製造された。
【0071】
[比較例1]
実施例1を反復した。第5の水浴槽から出た後、繊維を巻取り車に巻き取り、束に切断した。束を70℃の水ですすぎ、遠心乾燥し、続いて乾燥キャビネット中で50℃において乾燥した。
【0072】
乾燥中空糸膜は、190μmの内径および260μmの外径ならびに全体的に非対照な膜構造を有していた。膜の活性な分離層は内側であった。356本の繊維を有するミニモジュールは、上記の方法に従って製造された。
【0073】
蒸気滅菌した膜(ミニモジュール):
実施例1および比較例1において製造された膜の性能を、それぞれ上記のように蒸気滅菌した((22±1)分、(121±1)℃)ミニモジュールに関して測定した。水圧透過率ならびに水溶液中のミオグロビンおよびアルブミンのふるい係数を試験した。この結果を表1に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
比較から、膜の選択性に関する指標である、ミオグロビンおよびアルブミンのふるい係数の比、ならびにミオグロビンおよびアルブミンのふるい係数の差異は両方とも、本発明の膜のほうがはるかに大きいことが明らかである。