(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂の硬化および硬化促進用の新規の硬化剤および硬化促進剤、ならびに前記硬化剤または硬化促進剤を含むエポキシ樹脂組成物に関する。
【0002】
熱硬化性エポキシ樹脂の使用は、その良好な耐化学薬品性、その非常に良好な熱的および動的機械的特性ならびにその高い電気的絶縁能に基づいて広く知れ渡っている。さらに、エポキシ樹脂は、多くの基材への良好な付着性を示し、したがって、繊維複合材料(複合材)で使用するために、そして接着剤として最も適している。
【0003】
エポキシ樹脂の硬化は、様々なメカニズムに従って進行する。フェノールまたは無水物による硬化の他に、しばしばアミンによる硬化が行われる。これらの物質はたいていは液状であり、エポキシ樹脂と非常に良好に混ぜ合わせることができる。高い反応性、ひいては非常に低い潜在性に基づき、そのようなエポキシ樹脂組成物は、2成分形で仕上げられる。つまり、樹脂(A成分)および硬化剤(B成分)は、別々に格納され、使用直前に初めて正確な比率で混合される。この場合に、「潜在性」とは、個々の成分、つまりA成分およびB成分の混合物が、定義された貯蔵条件下で安定に存在することを意味する。前記2成分形の樹脂配合物は、いわゆる冷間硬化性樹脂配合物とも呼ばれ、ここで、そのために使用される硬化剤は、たいていはアミンまたはアミドアミンの群から選択される。
【0004】
1成分形の熱間硬化性エポキシ樹脂配合物は、それに対して事前に調合されて使用可能な状態で完成された状態にある、つまりは、エポキシ樹脂と硬化剤とが工場側で混合されて存在する。したがって、現場で使用する場合の個々の成分の混合の誤りは排除される。そのための前提条件は、室温でエポキシ樹脂と反応しない(貯蔵可能である)が、加熱下にエネルギー入力に応じて難なく反応する潜在性硬化剤系を形成することである。そのような1成分形のエポキシ樹脂配合物に関して、例えばジシアンジアミドは、特に適切であり、かつ費用的にも好ましい硬化剤である。周囲条件下で、相応の樹脂−硬化剤混合物は、十二(12)ヶ月まで使用可能な状態で貯蔵することができる。
【0005】
エポキシ樹脂の広い使用可能性、特にまた表面層としての使用可能性に基づき、エポキシ樹脂から製造された製品またはエポキシ樹脂を用いて製造された製品の安全性についての要求は、立法機関側だけで強まっているわけではない。こうして、利用者は、特にエポキシ樹脂の防炎作用または難燃作用の要求に特に関心を持つようになっている。多くの分野において、この要求は、人および物の危険性に基づき最優先事項である。これに関連して、例えば航空機、船舶、自動車および鉄道車両の構造用の構造材料を挙げることができるが、高い熱負荷にさらされる材料の表面封止、例えば配線板または発電機のコイルの封止用コンパウンドを挙げることもできる。
【0006】
燃焼性の評価のために、該材料は、使用分野に応じて非常に様々な材料試験に合格せねばならない。この場合に、基本的に、標準大気(約21%の酸素)下での可燃性、消炎性が調査されるが、発煙挙動も調査される。これらの材料試験で試験されるべき要求は、それを満たすのが非常に困難である。したがって、工業的に使用される多くの公知の防炎性または耐炎性のエポキシ樹脂材料は、20%までの臭素を、臭素化された樹脂成分の形で含有する。しばしば、追加的にかなりの量の金属が、例えば三酸化アンチモンまたは水酸化アルミニウムの形で相乗作用を示す難燃剤として使用される。これらの化合物での問題点は、確かに一方で難燃剤として優れた作用を有するものの、他方で環境を害するか、または人の健康を害するものと考えられていることにある。さらに、臭素を含む使い古しの材料の廃棄は、一層重大な問題を引き起こす。
【0007】
これらの理由から、臭素を含む難燃剤をより問題の少ない物質に置き換える試みには事欠くことはなかった。ハロゲン含有の難燃剤の代替として、例えば特にリン酸メラミンのような塩様の難燃剤およびリン含有の難燃剤、特に9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(DOPO)およびその誘導体を基礎とする難燃剤を挙げることができる(M.Rakotomalala,S.WagnerおよびM.Doering,Materials 2010,3,4300−4327も参照のこと)。
【0008】
さらに、反応性の有機リン化合物、例えばエポキシ基含有のリン化合物も、エポキシ樹脂の防炎化の調節のために提案されている。欧州特許出願公開第384940号明細書(EP384940A1)といった欧州特許出願から、リン不含のポリエポキシ樹脂と組み合わせて、エポキシ基含有のリン化合物およびイソシアヌル酸誘導体の形の特殊な芳香族ポリアミンを硬化剤として含有する、配線板の材料に使用するためのエポキシ樹脂混合物が知られている。
【0009】
独国特許出願公開第4308184号明細書(DE4308184A1)および独国特許出願公開第4308187号明細書(DE4308187A1)といった独国公開公報から、0.02mol/100gから1mol/100gまでのエポキシ価を有するリン変性されたエポキシ樹脂と組み合わせて上述のポリアミンを含むエポキシ樹脂混合物も知られている。この場合に、前記リン変性されたエポキシ樹脂は、一方で、1分子当たりに少なくとも2個のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物から誘導され、かつ他方で、ホスフィン酸、ホスホン酸およびピロホスホン酸もしくはホスホン酸半エステルから誘導されるか、またはホスフィン酸無水物およびホスホン酸無水物から誘導される構造単位から構成されている。
【0010】
リン変性されたエポキシ樹脂、硬化剤としての芳香族アミンおよび少なくとも1種の硬化促進剤を含有するプリプレグまたは複合材料の製造のための更なるエポキシ樹脂混合物は、国際公開第96/07685号パンフレット(WO96/07685A1)および国際公開第96/07686号パンフレット(WO96/07686A1)といった国際特許出願から知られている。
【0011】
リン成分を基礎として注型樹脂を開発する試みに事欠くことはなかった。このように、例えば、ホスホン酸無水物を硬化剤として含有するか、またはエポキシ樹脂成分もしくは硬化剤成分のリン化合物による変性によって得られる無水物により硬化可能なエポキシ樹脂は公知である(独国特許第4237132号明細書(DE4237132C1)、独国特許出願公開第19506010号明細書(DE19506010A1)を参照のこと)。これらの注型樹脂は、たいていは高粘性であり、溶剤を用いない場合に60℃を上回る温度で初めて加工可能となり、硬化のためには80℃を上回る温度が必要とされる。
【0012】
さらに、国際公開第2009/0077796号パンフレット(WO2009/0077796A1)といった国際特許出願から、エポキシ樹脂中で使用することができるリン酸アミドが知られている。
【0013】
つい最近までに、エポキシ樹脂中で使用することができるハロゲン不含の難燃剤の分野においてかなりの進展に至ったが、硬化されたエポキシ樹脂のポリマー網目の組み込み成分として難燃作用を発揮するエポキシ樹脂の硬化用のハロゲン不含の硬化剤または硬化促進剤は今日まで知られていない。
【0014】
したがって、本発明の課題は、エポキシ樹脂およびエポキシ樹脂組成物の硬化のために、特に硬化剤および/または硬化促進剤として使用することができ、かつエポキシ樹脂組成物中に混加した後に付加的に難燃作用がもたらされ、こうしてエポキシ樹脂組成物からまたはエポキシ樹脂組成物を用いて製造された生成物が防炎性または難燃性と評価され得る新規化合物を提供することである。この場合に、さらに、潜在性と評価され得るため、したがって硬化温度未満でエポキシ樹脂中で高い貯蔵安定性を有するだけでなく、エポキシ樹脂の完全な架橋を可能にするために硬化温度で高い反応性を示す、そのような難燃作用を有する硬化剤および硬化促進剤を提供する必要がある。
【0015】
前記課題は、請求項1に記載の硬化剤および請求項2に記載の硬化促進剤によって解決される。本発明の有利な実施形態は、従属形式請求項に挙げられており、それらは、選択的に互いに組み合わされてよい。
【0016】
したがって、第一の実施形態によれば、式(I)
【化1】
[式(I)について、以下のことが適用される:
式中、基R
1、R
2、R
3、R
6、Xおよび係数m、n、pについては、同時にまたは互いに独立して、
R
1、R
2=同時にまたは互いに独立して、水素またはアルキル、
R
3=アルキル、アリール、−O−アルキル、−O−アリール、−O−アルキルアリールまたは−O−アリールアルキル、
R
6=水素、アルキルまたは−NHC(O)NR
1R
2、
X=酸素または硫黄、
m=1、2または3、
n=0、1または2、ここで、m+n=3、
p=0、1または2
が適用される]によるリン含有酸のエステルの群からの少なくとも1種の化合物を含むエポキシ樹脂の硬化用の硬化剤が、本発明の主題である。
【0017】
第二の実施形態によれば、式(I)
【化2】
[式(I)については、以下のことが適用される:
式中、基R
1、R
2、R
3、R
6、Xおよび係数m、n、pについては、同時にまたは互いに独立して、
R
1、R
2=同時にまたは互いに独立して、水素またはアルキル、
R
3=アルキル、アリール、−O−アルキル、−O−アリール、−O−アルキルアリールまたは−O−アリールアルキル、
R
6=水素、アルキルまたは−NHC(O)NR
1R
2、
X=酸素または硫黄、
m=1、2または3、
n=0、1または2、ここで、m+n=3、
p=0、1または2
が適用される]によるリン含有酸のエステルの群からの少なくとも1種の化合物を含むエポキシ樹脂の硬化促進用の硬化促進剤も、本発明の主題である。
【0018】
この場合に、式(I)で示され、その係数pについては、p=0または1、特に0が適用される、リン含有酸のエステルの群からの少なくとも1種の化合物をそれぞれ含む硬化剤および硬化促進剤が有利である。
【0019】
したがって、本発明によれば、式(Ia)
【化3】
[式(Ia)については、以下のことが適用される:
式中、基R
1、R
2、R
3、R
6、Xおよび係数m、nについては、同時にまたは互いに独立して、
R
1、R
2=同時にまたは互いに独立して、水素またはアルキル、
R
3=アルキル、アリール、−O−アルキル、−O−アリール、−O−アルキルアリールまたは−O−アリールアルキル、
R
6=水素、アルキルまたは−NHC(O)NR
1R
2、
X=硫黄または酸素、
m=1、2または3、
n=0、1または2、ここで、m+n=3
が適用される]によるリン含有酸のエステルの群からの少なくとも1種の化合物をそれぞれ含む硬化剤および/または硬化促進剤が有利である。
【0020】
さらに、式(I)または式(Ia)で示され、その基R
3については、R
3=アリール、−O−アリールまたは−O−アルキルアリールが適用される、リン含有酸のエステルの群からの少なくとも1種の化合物をそれぞれ含む硬化剤および硬化促進剤が有利である。
【0021】
さらに、式(I)または式(Ia)で示され、その基R
6については、R
6=水素またはアルキルが適用される、リン含有酸のエステルの群からの少なくとも1種の化合物をそれぞれ含む硬化剤および硬化促進剤が有利である。
【0022】
さらに、式(I)または式(Ia)で示され、その基Xについては、X=酸素が適用される、リン含有酸のエステルの群からの少なくとも1種の化合物をそれぞれ含む硬化剤および硬化促進剤が有利である。
【0023】
この場合にさらに、式(I)または式(Ia)で示され、その基R
1、R
2については、同時にまたは互いに独立して、R
1、R
2=同時にまたは互いに独立して、アルキル、特に同時にまたは互いに独立してメチルまたはエチル、特に同時にメチルまたはエチルが適用される、リン含有酸のエステルの群からの少なくとも1種の化合物をそれぞれ含む硬化剤および硬化促進剤が有利である。
【0024】
さらに、式(I)で示され、式(I)中の基R
1、R
2、R
6、Xおよび係数m、n、pについては、同時にまたは互いに独立して、
R
1、R
2=同時にまたは互いに独立して、メチルまたはエチル、
R
3=アリール、−O−アリールまたは−O−アルキルアリール、
R
6=水素またはアルキル、
X=硫黄または酸素、
m=1、2または3、
n=0、1または2、ここで、m+n=3、
p=0
が適用される、リン含有酸のエステルの群からの少なくとも1種の化合物をそれぞれ含む硬化剤および硬化促進剤が特に有利である。
【0025】
さらに、式(Ia)で示され、その式(Ia)中の基R
1、R
2、R
6、Xおよび係数m、nについては、同時にまたは互いに独立して、
R
1、R
2=同時にまたは互いに独立して、メチルまたはエチル、
R
3=アリール、−O−アリールまたは−O−アルキルアリール、
R
6=水素またはアルキル、
X=硫黄または酸素、
m=1、2または3、
n=0、1または2、ここで、m+n=3
が適用される、リン含有酸のエステルの群からの少なくとも1種の化合物をそれぞれ含む硬化剤および硬化促進剤が特に有利である。
【0026】
本発明によれば、アルキルは、この場合に、一般式C
nH
2n+1を有し、式中、nは、その基の炭素原子の数を表し、特にnは、1〜10の数、有利には1〜5の数、特に有利には1または2を意味する直鎖状または分枝鎖状の一価の基を意味する。したがって、本発明によるアルキルは、特に、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、1−メチルエチル、1−メチルプロピル、1−メチルブチル、1−メチルペンチル、1−メチルヘキシル、1−メチルヘプチル、1−メチルオクチル、1−メチルノニル、1−エチルプロピル、1−エチルブチル、1−エチルペンチル、1−エチルヘキシル、1−エチルヘプチル、1−エチルオクチル、2−メチルプロピル、2−メチルブチル、2−メチルペンチル、2−メチルヘキシル、2−メチルヘプチル、2−メチルオクチル、2−メチルノニル、2−エチルブチル、2−エチルペンチル、2−エチルヘキシル、2−エチルヘプチル、2−エチルオクチル、1,1−ジメチルエチル、1,1−ジメチルプロピル、1,1−ジメチルブチル、1,1−ジメチルペンチル、1,1−ジメチルヘキシル、1,1−ジメチルヘプチル、1,1−ジメチルオクチル、1,2−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルブチル、1,2−ジメチルペンチル、1,2−ジメチルヘキシル、1,2−ジメチルヘプチル、1,2−ジメチルオクチル、2−エチル−1−メチルブチル、2−エチル−1−メチルペンチル、2−エチル−1−メチルヘキシル、2−エチル−1−メチルヘプチル、1−エチル−2−メチルプロピル、1−エチル−2−メチルブチル、1−エチル−2−メチルペンチル、1−エチル−2−メチルヘキシルまたは1−エチル−2−メチルヘプチルを意味し得る。
【0027】
本発明によれば、アルキルは、特に有利には、メチル、エチル、1−メチルエチル、n−プロピル、n−ブチル、2−メチルブチルまたは1,1−ジメチルエチルを意味する。さらに特に有利には、本発明によるアルキルは、メチルまたはエチルを意味する。
【0028】
本発明によれば、アリールは、単環式、二環式または多環式であってよい、一価の芳香族基、特に3個〜20個の炭素原子、有利には6個〜20個の炭素原子、特に有利には6個の炭素原子を有する一価の芳香族基を意味する。したがって、本発明によるアリールは、特にフェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、ピレニルまたはペリレニルを意味し得る。
【0029】
本発明によれば、アリールは、特に有利にはフェニルを意味する。
【0030】
本発明によれば、アルキルアリールは、特に3個〜20個の炭素原子を有する上述の意味のアリール基であって、その基が特に1個〜10個の炭素原子を有する上述のアルキル基で一置換または多置換されており、該アルキルアリール基の骨格への結合が、芳香族核に位置している、前記アリール基を意味する。したがって、本発明によるアルキルアリールは、特にトリル、キシリル、プソイドクミルまたはメシチルを意味し得る。
【0031】
本発明によれば、アルキルアリールは、特に有利にはトリルを意味する。
【0032】
本発明によれば、アリールアルキルは、上述の意味のアルキル基であって、その基が上述の意味のアリール基で置換されており、該アリールアルキル基の骨格への結合がアルキル基に位置している、前記アルキル基を意味する。したがって、本発明によるアリールアルキルは、特にベンジル、1−フェニルエチルまたは1−メチル−1−フェニルエチルを意味し得る。
【0033】
本発明によれば、アリールアルキルは、特に有利にはベンジルを意味する。
【0034】
本発明によれば、−NHC(O)NR
1R
2は、カルバモイルアミノ基であって、そのカルバモイル窒素において基R
1およびR
2で置換されており、ここで、R
1およびR
2が上述の意味を有し、かつアミノ窒素を介して骨格に結合されている、前記カルバモイルアミノ基を意味する。
【0035】
本発明によれば、−NHC(O)NR
1R
2は、特に有利には(ジメチルカルバモイル)アミノを意味する。
【0036】
本発明によれば、−O−アルキルは、アルコキシ基であって、このアルコキシ基が酸素原子を介して骨格に結合されており、さらにアルキルが上述の意味を有する、前記アルコキシ基を意味する。したがって、−O−アルキルは、特にメトキシ、エトキシ、n−プロポキシまたは1−メチルエトキシを意味し得る。
【0037】
本発明によれば、−O−アルキルは、特に有利にはメトキシまたはエトキシを意味する。
【0038】
本発明によれば、−O−アリールは、アリールオキシ基であって、このアリールオキシ基が酸素原子を介して骨格に結合されており、さらにアリールが上述の意味を有する、前記アリールオキシ基を意味する。したがって、−O−アリールは、特にフェノキシまたはナフトキシを意味し得る。
【0039】
本発明によれば、−O−アリールは、特に有利にはフェノキシを意味する。
【0040】
本発明によれば、−O−アルキルアリールは、アルキルアリールオキシ基であって、このアルキルアリールオキシ基が酸素原子を介して骨格に結合されており、かつ該アルキルアリール基の酸素への結合が該アルキルアリール基の芳香族核に位置しており、さらにアルキルアリールが上述の意味を有する、前記アルキルアリールオキシ基を意味する。したがって、−O−アルキルアリールは、特にトリルオキシまたはキシリルオキシを意味し得る。
【0041】
本発明によれば、−O−アルキルアリールは、特に有利にはトリルオキシを意味する。
【0042】
本発明によれば、−O−アリールアルキルは、アリールアルコキシ基であって、このアリールアルコキシ基が酸素原子を介して骨格に結合されており、かつ該アリールアルキル基の酸素への結合が該アルキルアリール基のアルキル基に位置しており、さらにアリールアルキルが上述の意味を有する、前記アリールアルコキシ基を意味する。したがって、−O−アリールアルキルは、特にベンジルオキシを意味し得る。
【0043】
本発明によれば、−O−アリールアルキルは、特に有利にはベンジルオキシを意味する。
【0044】
実験調査によれば、これらのリン含有酸のエステルの群からの化合物は、エポキシ樹脂の硬化のために優れた使用可能性を示すことが実証された。追加の調査において、さらに、これらの化合物は、エポキシ樹脂の硬化用の硬化剤としてのみならず、例えば通常のジシアンジアミド硬化剤を用いて硬化されるエポキシ樹脂の硬化促進用の硬化促進剤としても使用することができることが分かった。こうして全く驚くべきことに、本発明による化合物は、互いに独立して、硬化剤として使用できるだけでなく、公知の硬化剤と組み合わせて硬化促進剤としても使用できることが分かった。こうして提供された化合物は、硬化剤または硬化促進剤として、硬化されるべきエポキシ樹脂と反応し、したがって、硬化されたエポキシ樹脂のポリマー網目の構成部となる。
【0045】
こうして、本発明によれば、基X、係数mおよびnならびに基R
3の種類に依存して、特に、式(I)によるリン酸エステルおよびチオリン酸エステルの群から選択されるそれぞれ少なくとも1種の化合物、または式(I)によるホスホン酸エステルおよびチオホスホン酸エステル(ホスホン酸またはそのチオ誘導体の有機リン化合物のエステル)の群から選択されるそれぞれ少なくとも1種の化合物、または式(I)によるホスフィン酸エステルおよびチオホスフィン酸エステル(ホスフィン酸またはそのチオ誘導体の有機リン化合物のエステル)の群から選択されるそれぞれ少なくとも1種の化合物を含む硬化剤および硬化促進剤が、本発明の主題である。
【0046】
本発明によれば、リン酸エステルおよびチオリン酸エステルが有利である。したがって、さらなる実施形態によれば、式(I)で示され、その基R
1、R
2、R
3、R
6、Xおよび係数m、n、pについては、同時にまたは互いに独立して、
R
1、R
2=同時にまたは互いに独立して、水素またはアルキル、
R
3=−O−アルキル、−O−アリール、−O−アルキルアリールまたは−O−アリールアルキル、
R
6=水素、アルキルまたは−NHC(O)NR
1R
2、
X=酸素または硫黄、
m=1、2または3、
n=0、1または2、ここで、m+n=3、
p=0、1または2
が適用される、リン酸エステルおよびチオリン酸エステルの群から選択される少なくとも1種の化合物をそれぞれ含む硬化剤および/または硬化促進剤が特に有利である。
【0047】
この場合に、式(I)で示され、その係数pについては、p=0または1、特に0が適用される、リン酸エステルおよびチオリン酸エステルが特に好ましい。
【0048】
したがって、本発明によればさらに、式(Ia)
【化4】
[式(Ia)について、以下のことが適用される:
式中、基R
1、R
2、R
3、R
6、Xおよび係数m、nについては、同時にまたは互いに独立して、
R
1、R
2=同時にまたは互いに独立して、水素またはアルキル、
R
3=−O−アリール、−O−アルキルアリールまたは−O−アリールアルキル、
R
6=水素、アルキルまたは−NHC(O)NR
1R
2、
X=硫黄または酸素、
m=1、2または3、
n=0、1または2、ここで、m+n=3
が適用される]によるリン酸エステルおよびチオリン酸エステルの群から選択される少なくとも1種の化合物をそれぞれ含む硬化剤および/または硬化促進剤が有利である。
【0049】
式(I)で示され、その基R
1、R
2、R
3、R
6、Xおよび係数m、n、pについては、同時にまたは互いに独立して、
R
1、R
2=同時にまたは互いに独立して、アルキル、特にメチルまたはエチル、
R
3=−O−アリールまたは−O−アルキルアリール、特にフェノキシまたはトリルオキシ、
R
6=水素またはアルキル、特に水素またはメチル、
X=酸素または硫黄、
m=1、2または3、
n=0、1または2、ここで、m+n=3、
p=0または1、特に0
が適用される、リン酸エステルまたはチオリン酸エステルの群から選択される少なくとも1種の化合物をそれぞれ含む硬化剤および/または硬化促進剤がさらに有利である。
【0050】
式(I)で示され、その基R
1、R
2、R
6、Xおよび係数m、n、pについては、同時にまたは互いに独立して、
R
1、R
2=同時にまたは互いに独立して、メチルまたはエチル、
R
6=水素またはアルキル、特に水素またはメチル、
X=硫黄または酸素、
m=3、
n=p=0
が適用される、リン酸エステルまたはチオリン酸エステルの群から選択される少なくとも1種の化合物をそれぞれ含む硬化剤および/または硬化促進剤がさらに有利である。
【0051】
さらに、式(Ia)で示され、その基R
1、R
2、R
6、Xおよび係数m、nについては、同時にまたは互いに独立して、
R
1、R
2=同時にまたは互いに独立して、メチルまたはエチル、
R
6=水素またはメチル、
X=硫黄または酸素、
m=3、
n=0
が適用される、リン酸エステルまたはチオリン酸エステルの群から選択される少なくとも1種の化合物をそれぞれ含む硬化剤および/または硬化促進剤が特に有利である。
【0052】
あるいは本発明によれば、ホスホン酸エステルおよびチオホスホン酸エステルが有利である。したがって、さらなる実施形態によれば、式(I)で示され、その基R
1、R
2、R
3、R
6、Xおよび係数m、n、pについては、同時にまたは互いに独立して、
R
1、R
2=同時にまたは互いに独立して、水素またはアルキル、
R
3=アルキルまたはアリール、
R
6=水素、アルキルまたは−NHC(O)NR
1R
2、
X=酸素または硫黄、
m=2、
n=1、
p=0、1または2
が適用される、ホスホン酸エステルおよびチオホスホン酸エステルの群から選択される少なくとも1種の化合物をそれぞれ含む硬化剤および/または硬化促進剤が特に有利である。
【0053】
この場合に、式(I)で示され、その係数pについては、p=0または1、特に0が適用される、ホスホン酸エステルおよびチオホスホン酸エステルが特に好ましい。
【0054】
したがって、本発明によればさらに、式(Ia)
【化5】
[式(Ia)について、以下のことが適用される:
式中、基R
1、R
2、R
3、R
6、Xおよび係数m、nについては、同時にまたは互いに独立して、
R
1、R
2=同時にまたは互いに独立して、水素またはアルキル、特にメチルまたはエチル、
R
3=アルキルまたはアリール、特にフェニル、
R
6=水素、アルキルまたは−NHC(O)NR
1R
2、特に水素またはメチル、
X=硫黄または酸素、
m=2、
n=1
が適用される]によるホスホン酸エステルおよびチオホスホン酸エステルの群から選択される少なくとも1種の化合物をそれぞれ含む硬化剤および/または硬化促進剤が有利である。
【0055】
本発明によれば、式(I)で示され、その基R
1、R
2、R
3、R
6、Xおよび係数m、n、pについては、同時にまたは互いに独立して、
R
1、R
2=同時にまたは互いに独立して、アルキル、特にメチルまたはエチル、
R
3=アリール、特にフェニル、
R
6=水素またはアルキル、特に水素またはメチル、
X=酸素または硫黄、
m=2、
n=1、
p=0または1、特に0
が適用される、ホスホン酸エステルおよびチオホスホン酸エステルの群から選択される少なくとも1種の化合物をそれぞれ含む硬化剤および/または硬化促進剤がさらに有利である。
【0056】
あるいはさらに、本発明によれば、ホスフィン酸エステルおよびチオホスフィン酸エステルが有利である。したがって、さらなる実施形態によれば、式(I)で示され、その基R
1、R
2、R
3、R
6、Xおよび係数m、n、pについては、同時にまたは互いに独立して、
R
1、R
2=同時にまたは互いに独立して、水素またはアルキル、
R
3=アルキルまたはアリール、
R
6=水素、アルキルまたは−NHC(O)NR
1R
2、
X=酸素または硫黄、
m=1、
n=2、
p=0、1または2
が適用される、ホスフィン酸エステルおよびチオホスフィン酸エステルの群から選択される少なくとも1種の化合物をそれぞれ含む硬化剤および/または硬化促進剤が特に有利である。
【0057】
この場合に、式(I)で示され、その係数pについては、p=0または1、特に0が適用される、ホスフィン酸エステルおよびチオホスフィン酸エステルが特に好ましい。
【0058】
したがって、本発明によれば、式(Ia)
【化6】
[式中、基R
1、R
2、R
3、R
6、Xおよび係数m、nについては、同時にまたは互いに独立して、
R
1、R
2=同時にまたは互いに独立して、水素、メチルまたはエチル、
R
3=アルキルまたはアリール、
R
6=水素、アルキルまたは−NHC(O)NR
1R
2、
X=硫黄または酸素、
m=1、
n=2
が適用される]によるホスフィン酸エステルおよびチオホスフィン酸エステルの群から選択される少なくとも1種の化合物をそれぞれ含む硬化剤および/または硬化促進剤がさらに有利である。
【0059】
本発明によれば、式(I)で示され、その基R
1、R
2、R
3、R
6、Xおよび係数m、n、pについては、同時にまたは互いに独立して、
R
1、R
2=同時にまたは互いに独立して、アルキル、特にメチルまたはエチル、
R
3=アリール、特にフェニル、
R
6=水素またはアルキル、特に水素またはメチル、
X=酸素または硫黄、
m=1、
n=2、
p=0または1、特に0
が適用される、ホスフィン酸エステルおよびチオホスフィン酸エステルの群から選択される少なくとも1種の化合物をそれぞれ含む硬化剤および/または硬化促進剤がさらに有利である。
【0060】
式(I)または式(Ia)においてリンがどの酸化状態を有するかとは無関係に、本発明に関連して、係数m=1、2、3を意味することが重要である。それというのも、こうしてエポキシ樹脂またはエポキシ樹脂組成物の硬化のために特に良好に使用でき、特に硬化剤または硬化促進剤として使用できる化合物が提供され得るからである。何ら理論に縛られるべきではないが、基−NHC(O)NR
1R
2の存在を義務づけると、エポキシ樹脂の硬化に重要な影響を及ぼすと述べることができる。この場合に、式(I)中の基R
1およびR
2は、有利には水素またはアルキルを意味し、ここで、少なくとも1つの基R
1またはR
2は、揃って水素を意味しないか、または基R
1およびR
2は、同時に水素を意味しない。特に有利には、基R
1およびR
2は、同時にまたは互いに独立して、アルキルを意味し、ここで、R
1およびR
2は、異なるかまたは同一であってよい。さらに特に有利には、基R
1およびR
2は、同時にメチルまたはエチルを意味する。
【0061】
特に驚くべきことには、本発明による硬化剤および硬化促進剤は、公知の硬化剤または硬化促進剤と比較した難燃性についての試験において、防炎性の硬化剤および硬化促進剤であると明らかになった。これらの硬化剤および硬化促進剤は、ハロゲン不含と呼ばれるべきである。何ら理論に縛られるべきではないが、これらの硬化剤および硬化促進剤は、公知の硬化剤または硬化促進剤と比較して、該化合物中に含まれるリンに基づき、難燃剤としての追加作用を有することを述べることができる。こうして、本発明による硬化剤および硬化促進剤は、硬化されたエポキシ樹脂中で難燃剤として、良好ないし非常に良好な作用を示す。
【0062】
これは、現在使用されている、しばしば多量に添加剤として添加せねばならず、樹脂マトリックス中に化学的に結合導入されていないエポキシ樹脂用の難燃剤に対して、樹脂マトリックス中に直接的に化学結合を介して固定される反応性の難燃剤である。したがって、マトリックスからの溶出は見込まれ得ない。
【0063】
したがって、同様に、式(I)による化合物または式(I)による硬化剤もしくは式(I)による硬化促進剤の、エポキシ樹脂中での、または少なくとも1種のエポキシ樹脂をそれぞれ含む粉末塗料、封止用コンパウンド、接着剤もしくは硬化された成形材料中での難燃剤としての使用は、本発明の主題である。
【0064】
既に先に述べたように、さらに、これらの化合物は、硬化剤および/または硬化促進剤として使用できることが分かった。こうして実験調査において、これらの化合物がエポキシ樹脂の硬化用の硬化剤として、特にエポキシ樹脂の硬化用の単独の硬化剤として使用できることを明らかにすることができた。
【0065】
その他の実施形態によれば、式(I)による化合物は、エポキシ樹脂の硬化促進用の硬化促進剤としても使用することができる。実験調査において、本発明による化合物は、ジシアンジアミドを用いて硬化されるエポキシ樹脂の硬化を促進することが分かった。しかしながら、実験結果に縛られずに、本発明による化合物は、硬化促進剤として、グアニジン誘導体、芳香族アミン、変性ポリアミン、セミカルバゾン誘導体またはシアナミドの群からの硬化剤と一緒に使用することもできる。これらの硬化剤と一緒でも、硬化を促進することができる。
【0066】
その一方で、またはそれと同時に、本発明による硬化剤または硬化促進剤を、先に挙げた本発明の硬化剤または硬化促進剤とは異なる、式(I)によるさらなる硬化剤および/または硬化促進剤と一緒に使用することが予定されていてもよい。したがって、それぞれ式(I)による少なくとも2種の異なる硬化剤および/または硬化促進剤を含む、または特にそれらからなる硬化剤組成物も、本発明の主題である。したがって、硬化剤組成物であって、i)式(I)もしくは式(Ia)によるリン含有酸のエステルの群からの少なくとも1種の化合物をそれぞれ含む少なくとも2種の異なる硬化剤、またはii)式(I)もしくは式(Ia)によるリン含有酸のエステルの群からの少なくとも1種の化合物をそれぞれ含む少なくとも2種の異なる硬化促進剤、またはiii)式(I)もしくは式(Ia)によるリン含有酸のエステルの群からの少なくとも1種の化合物を含む少なくとも1種の硬化剤および式(I)もしくは式(Ia)によるリン含有酸のエステルの群からの少なくとも1種の化合物を含む少なくとも1種の硬化促進剤を含む、または特にそれらからなり、前記硬化剤および硬化促進剤は互いに異なっており、かつ式(I)または式(Ia)によるリン含有酸のエステルの群からの異なる化合物を含む硬化剤組成物も、本発明の主題である。
【0067】
あるいは本発明の硬化剤または硬化促進剤は、公知の硬化剤または促進剤と一緒に使用することもできる。したがって、硬化剤組成物であって、
a)式(I)による硬化剤もしくは硬化促進剤とは異なるエポキシ樹脂の硬化用の硬化剤、または式(I)による硬化剤もしくは硬化促進剤とは異なるエポキシ樹脂の硬化促進用の硬化促進剤、および
b)式(I)による少なくとも1種の硬化剤または硬化促進剤、
を含む、または特にそれらからなる硬化剤組成物も、本発明の主題である。
【0068】
硬化剤組成物であって、
a)式(I)または式(Ia)によるリン含有酸のエステルの群からの化合物を含む硬化剤および/または硬化促進剤とは異なるエポキシ樹脂の硬化用の少なくとも1種の硬化剤、および
b)式(I)または式(Ia)によるリン含有酸のエステルの群からの化合物を含むエポキシ樹脂の硬化促進用の少なくとも1種の硬化促進剤、
を含む、またはそれらからなる硬化剤組成物が特に有利である。
【0069】
そのうえ、さらに特に驚くべきことには、本発明による硬化剤および硬化促進剤は、エポキシ樹脂の硬化または硬化促進のために特に良好に使用できるだけでなく、エポキシ樹脂中で優れた貯蔵安定性を示すことも分かった。したがって、該硬化剤および硬化促進剤は、高潜在性と呼ばれ得る。したがって、本発明による硬化剤は、1成分形のペーストとして、すなわち予め調合して、エポキシ樹脂と混合されて使用可能な状態で提供することもできる。これらの結果は、全体として全く予測できたことではなかった。
【0070】
本発明の実施形態においては、同様に、a)少なくとも1種のエポキシ樹脂、ならびにb)前記の種類による少なくとも1種の硬化剤および/または前記の種類による少なくとも1種の硬化促進剤を含むエポキシ樹脂組成物も、本発明の主題である。
【0071】
好ましくは、該エポキシ樹脂組成物は、それぞれ式(I)による硬化剤もしくは硬化促進剤またはそれらの混合物の他に、a)エポキシ樹脂の硬化用のさらなる硬化剤、補助硬化剤、硬化促進剤もしくはその他の触媒を含まず、かつ/またはb)さらなる難燃添加剤もしくは防炎添加剤を含まない。
【0072】
したがってまた、a)少なくとも1種のエポキシ樹脂、ならびにb)式(I)による少なくとも1種の硬化剤および/または式(I)による少なくとも1種の硬化促進剤を含む、特にそれらからなるエポキシ樹脂組成物も、本発明の主題である。
【0073】
したがって、本発明のさらなる実施形態においては、特に、エポキシ樹脂組成物であって、
a)少なくとも1種のエポキシ樹脂、ならびに
b1)式(I)もしくは式(Ia)によるリン含有酸のエステルの群からの少なくとも1種の化合物を含むエポキシ樹脂の硬化用の少なくとも1種の硬化剤、ならびに/または
b2)式(I)もしくは式(Ia)によるリン含有酸のエステルの群からの少なくとも1種の化合物を含むエポキシ樹脂の硬化促進用の少なくとも1種の硬化促進剤
を含み、式(I)および式(Ia)は、本明細書に記載される構造を示す、エポキシ樹脂組成物も、本発明の主題である。
【0074】
しかしながら、本発明によるエポキシ樹脂組成物が、a)少なくとも1種のエポキシ樹脂、b)式(I)による硬化促進剤、およびc)式(I)による硬化剤または硬化促進剤とは異なるエポキシ樹脂の硬化用の硬化剤を含むこと、特にそれらからなることが予定されていてもよい。
【0075】
しかしながら、本発明によるエポキシ樹脂組成物が、a)少なくとも1種のエポキシ樹脂、b)式(I)による硬化剤または硬化促進剤とは異なるエポキシ樹脂の硬化促進用の硬化促進剤、およびc)式(I)によるエポキシ樹脂の硬化用の硬化剤を含むこと、特にそれらからなることが予定されていてもよい。
【0076】
したがって、本発明のさらなる実施形態においては、特に、エポキシ樹脂組成物であって、
a)少なくとも1種のエポキシ樹脂、ならびに
b)式(I)もしくは式(Ia)によるリン含有酸のエステルの群からの化合物を含む硬化剤および硬化促進剤とは異なるエポキシ樹脂の硬化用の少なくとも1種の硬化剤、ならびに
c)式(I)もしくは式(Ia)によるリン含有酸のエステルの群からの化合物を含むエポキシ樹脂の硬化促進用の少なくとも1種の硬化促進剤
を含み、式(I)および式(Ia)は、本明細書に記載される構造を示す、エポキシ樹脂組成物も、本発明の主題である。
【0077】
この場合に、成分b)としては、特にグアニジン誘導体、特にジシアンジアミド、芳香族アミン、変性ポリアミン、セミカルバゾン誘導体またはシアナミドの群からの硬化剤を使用することができる。
【0078】
硬化されるべきエポキシ樹脂に関して、本発明は何ら制限を課さない。通常は、1つより多くの1,2−エポキシ基(オキシラン)を有し、この場合に飽和または不飽和であり、脂肪族、脂環式、芳香族または複素環式であってよいあらゆる商慣習の製品が該当する。さらに、該エポキシ樹脂は、リン基およびヒドロキシル基のような置換基を有してよい。2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)のグリシジルポリエーテル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)のグリシジルポリエーテルおよびノボラックのグリシジルポリエーテルを基礎とするエポキシ樹脂は、本発明による硬化剤および硬化促進剤を使用することによって、特に良好に硬化させることができる。
【0079】
本発明による硬化剤または硬化促進剤の使用量には、何ら制限が課されない。しかしながら、有利には、100部の樹脂に対して、0.01部〜15部の、好ましくは0.1部〜15部、好ましくは0.1部〜10部、さらに特に有利には0.1部〜8部の硬化剤または硬化促進剤が使用される。また、幾つかの本発明による硬化剤の組み合わせ、または本発明による硬化剤とさらなる補助硬化剤との組み合わせも、ともに本発明によって包含される。
【0080】
本発明による硬化剤が単独の硬化剤として使用される場合には、有利には100部の樹脂に対して、0.1部〜15部、好ましくは1部〜15部、好ましくは4部〜15部、さらに特に有利には4部〜8部が使用される。
【0081】
本発明による硬化促進剤が公知の硬化剤、例えばジシアンジアミドと一緒に硬化促進のために使用されるのであれば、有利には100部の樹脂に対して、0.1部〜15部、好ましくは0.1部〜10部、好ましくは0.1部〜5部、さらに特に有利には0.1部〜4部が使用される。
【0082】
本発明により使用される硬化剤および/または硬化促進剤を用いたエポキシ樹脂の硬化は、一般的に、20℃から140℃までの温度で行われる。硬化温度の選択は、具体的な加工的要求および製品的要求に依存しており、その選択は、配合によって、とりわけ硬化剤量の調節と添加剤の添加によって変更することができる。この場合に、樹脂配合物にエネルギーをどのようにして供給するかは重要ではない。例としては、それは、熱の形で、オーブンまたは加熱エレメントによって、しかし同様に赤外線放射器によって、またはマイクロ波もしくはその他の放射による励起によって行うことができる。
【0083】
エポキシ樹脂の硬化のために当業者に知られているその他の商慣習の添加剤の添加によって、本発明による配合物の硬化プロフィールを、変更することができる。
【0084】
未硬化のエポキシ樹脂組成物の加工性を改善するため、または熱硬化性製品の熱機械的特性をその要求プロフィールに適合させるための添加剤には、例えば、反応性希釈剤、充填剤、レオロジー添加剤、例えばチキソトロピー剤または分散添加剤、消泡剤、染料、顔料、強化剤もしくは耐衝撃性改良剤が含まれる。
【0085】
本発明の実施形態においては、
a)支持体材料、特に繊維材料、および
b)少なくとも1種のエポキシ樹脂、および
c)少なくとも1種の硬化剤もしくは硬化促進剤、または本明細書に記載される種類の硬化剤組成物
を含むプリプレグまたは複合材料も、本発明の主題である。
【0086】
したがって、本発明のさらなる実施形態においては、
a)支持体材料、特に繊維材料、および
b)少なくとも1種のエポキシ樹脂、ならびに
c1)式(I)もしくは式(Ia)によるリン含有酸のエステルの群からの化合物を含む硬化剤および硬化促進剤とは異なるエポキシ樹脂の硬化用の少なくとも1種の硬化剤、ならびに
c2)式(I)もしくは式(Ia)によるリン含有酸のエステルの群からの化合物を含むエポキシ樹脂の硬化促進用の少なくとも1種の硬化促進剤
を含み、式(I)および式(Ia)は、本明細書に記載される構造を示す、プリプレグまたは複合材料も、本発明の主題である。
【0087】
この場合に、支持体材料としては、あらゆる通常の支持体材料を使用することができる。しかしながら、この場合に、網羅的ではないが、ガラス、
炭素、アラミドおよび木材もしくは天然繊維でできた繊維を挙げることができる。
【0088】
本発明の実施形態においては、本明細書に記載される化合物の製造方法も、本発明の主題である。したがって、式(I)
【化7】
[式(I)について、以下のことが適用される:
式中、基R
1、R
2、R
3、R
6、Xおよび係数m、n、pについては、同時にまたは互いに独立して、
R
1、R
2=同時にまたは互いに独立して、水素またはアルキル、特に同時にまたは互いに独立して、メチルまたはエチル、
R
3=アルキル、アリール、−O−アルキル、−O−アリール、−O−アルキルアリールまたは−O−アリールアルキル、特にフェニル、フェノキシまたはトリルオキシ、
R
6=水素、アルキルまたは−NHC(O)NR
1R
2、特に水素またはアルキル、特に有利には水素またはメチル、
X=酸素または硫黄、
m=1、2または3、
n=0、1または2、ここで、m+n=3、
p=0、1または2、特に0
が適用される]の化合物、特に式(I)によるリン酸エステル、チオリン酸エステル、ホスホン酸エステル、チオホスホン酸エステル、ホスフィン酸エステルおよびチオホスフィン酸エステルの群から選択される化合物の製造方法であって、以下のプロセスステップ:
A)式(II)
【化8】
[式中、基R
1、R
2、R
6および係数pについては、上述の意味が適用される]による化合物を準備するステップ、
B)A)で準備された化合物と式(III)
【化9】
[式中、基R
3、Xおよび係数m、nについては、上述の意味が適用され、かつHalは、塩素または臭素、特に塩素を意味する]による化合物とを反応させるステップ、
C)式(I)による化合物を単離するステップ、
を含む方法も、本発明の主題である。
【0089】
費用のかかる実験調査において、式(I)による所望の化合物は、式(II)および式(III)による化合物から出発して良好な空時収率で製造できることが分かった。特に驚くべきことには、所望の化合物は選択的に製造できることが分かった。
【0090】
この場合に、有利には、プロセスステップA)において、式(II)で示され、その式中、基R
1、R
2、R
6および係数pについては、同時にまたは互いに独立して、
R
1、R
2=同時にまたは互いに独立して、アルキル、特に同時に、アルキル、特に同時にまたは互いに独立して、メチルまたはエチル、特に同時に、メチルまたはエチル、
R
6=水素、アルキルまたは−NHC(O)NR
1R
2、特に水素またはアルキル、特に有利には水素またはメチル、
p=0
が適用される化合物が準備される。
【0091】
したがって、プロセスステップA)において、式(IIa)
【化10】
[式(IIa)について、以下のことが適用される:
式中、基R
1、R
2、R
6については、同時にまたは互いに独立して、
R
1、R
2=同時にまたは互いに独立して、アルキル、特に同時に、アルキル、特に同時にまたは互いに独立して、メチルまたはエチル、特に同時に、メチルまたはエチル、
R
6=水素、アルキルまたは−NHC(O)NR
1R
2、特に水素またはアルキル、特に有利には水素またはメチル
が適用される]による化合物を準備し、そしてこの式(IIa)による化合物をプロセスステップB)で、前記のようにして反応させる方法も、本発明の主題である。
【0092】
この場合に、式(II)または式(IIa)による化合物が使用され、それらはまた文献公知の方法(これについては、特に英国特許出願公開第999862号明細書(GB999862A)、英国特許出願公開第1153261号明細書(GB1153261A)、米国特許出願公開第3488376号明細書(US3488376A)、米国特許出願公開第2795610号明細書(US2795610A)および欧州特許出願公開第0108712号明細書(EP0108712A1)を参照のこと)に従って製造され得る。
【0093】
追加の実験調査において、さらに有利には、プロセスステップB)における反応は、極性非プロトン性溶剤、特にアセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミドおよび/またはアセトン、有利にはアセトニトリル中で特に効果的に実施することができることが分かった。この場合に、同時にまたはそれと独立して、さらに、該反応を、第三級アミン、特にトリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリイソプロピルアミンおよび/またはピリジン、有利にはトリエチルアミンの存在下で行うことが予定されていてよい。
【0094】
この場合に、該反応は、さらに有利には、−10℃から100℃までの範囲の温度で、特に−10℃から80℃までの範囲の温度で、さらに特に有利には−10℃から60℃までの範囲の温度で行うことができ、ここで、同時にまたはそれとは独立して、特に850mPaから1200mPaまでの範囲の圧力、特に950mPaから1200mPaまでの範囲の圧力、さらに特に有利には1000mPaから1200mPaまでの範囲の圧力が調整される。
【0095】
式(II)または式(IIa)による化合物の、式(III)による化合物に対するモル比が、4:1から1:1までの、有利には3:1から1:1までの、さらに有利には3:1から2:1までの範囲の比率に相当する場合に、プロセスステップB)における反応は、さらに有利に実施することができる。
【0096】
さらに、実験調査により、式(I)による化合物のプロセスステップC)における単離は、異なる部分プロセスステップにより行うことができることが明らかになった。特に有利には、良好な純度において、本発明による化合物を、
a)プロセスステップB)からの反応混合物から濾別し、引き続き水で洗浄し、真空中で乾燥させること、または
b)プロセスステップB)からの反応混合物から水の添加によって沈殿させ、生成した固体を濾別し、引き続き水で洗浄し、そして真空中で乾燥させること、または
c)プロセスステップB)からの反応混合物を真空中で蒸発濃縮し、残留物をアセトン中に取り、不溶性成分を濾別し、濾液を真空中で蒸発濃縮し、そして真空中で乾燥させること
によって単離することができる。
【0097】
あるいは式(I)による所望の化合物は、イソシアネートとアミンとの反応によっても製造することができる。したがってまた、式(I)
【化11】
[式(I)について、以下のことが適用される:
式中、基R
1、R
2、R
3、R
6、Xおよび係数m、n、pについては、同時にまたは互いに独立して、
R
1、R
2=同時にまたは互いに独立して、水素またはアルキル、特に同時にまたは互いに独立して、メチルまたはエチル、
R
3=アルキル、アリール、−O−アリール、−O−アルキルアリールまたは−O−アリールアルキル、特にフェニル、フェノキシまたはトリルオキシ、
R
6=水素、アルキルまたは−NHC(O)NR
1R
2、特に水素またはアルキル、特に有利には水素またはメチル、
X=酸素または硫黄、
m=1、2または3、
n=0、1または2、ここで、m+n=3、
p=0、1または2、特に0
が適用される]の化合物、特に式(I)によるリン酸エステル、チオリン酸エステル、ホスホン酸エステル、チオホスホン酸エステル、ホスフィン酸エステルおよびチオホスフィン酸エステルの群から選択される化合物の製造方法であって、以下のプロセスステップ:
A)式(IV)
【化12】
[式中、基R
3、R
6、Xおよび係数m、n、pについては、同時にまたは互いに独立して、
R
3=アルキル、アリール、−O−アリール、−O−アルキルアリールまたは−O−アリールアルキル、特にフェニル、フェノキシまたはトリルオキシ、
R
6=水素、アルキルまたは−NCO、特に水素またはアルキル、特に有利には水素またはメチル、
X=酸素または硫黄、
m=1、2または3、
n=0、1または2、ここで、m+n=3、
p=0、1または2
が適用される]によるイソシアネートを準備するステップ、
B)A)で準備された化合物を、式(V)
【化13】
[式中、基R
1、R
2については、同時にまたは互いに独立して、
R
1、R
2=同時にまたは互いに独立して、水素またはアルキル、特に同時にまたは互いに独立して、アルキル、特に同時にまたは互いに独立して、メチルまたはエチル、特に同時に、メチルまたはエチル、
が適用される]によるアミンと反応させるステップ、
C)式(I)による化合物を単離するステップ、
を含む方法も、本発明の主題である。
【0098】
この場合に、有利には、プロセスステップA)において、式(IV)で示され、その式中、基R
3、R
6、Xおよび係数m、n、pについては、同時にまたは互いに独立して、
R
3=アルキル、アリール、−O−アリール、−O−アルキルアリールまたは−O−アリールアルキル、
R
6=水素、アルキルまたは−NCO、特に水素またはアルキル、特に有利には水素またはメチル、
X=酸素または硫黄、
m=1、2または3、
n=0、1または2、ここで、m+n=3、
p=0
が適用される化合物が準備される。
【0099】
したがって、プロセスステップA)において、式(IVa)
【化14】
[式(IVa)について、以下ことが適用される:
式中、基R
3、R
6、Xおよび係数m、nについては、同時にまたは互いに独立して、
R
3=アルキル、アリール、−O−アリール、−O−アルキルアリールまたは−O−アリールアルキル、
R
6=水素、アルキルまたは−NCO、特に水素またはアルキル、特に有利には水素またはメチル、
X=酸素または硫黄、
m=1、2または3、
n=0、1または2、ここで、m+n=3
が適用される]による化合物を準備し、そしてこの式(IVa)による化合物をプロセスステップB)で、前記のようにして反応させる方法も、本発明の主題である。
【0100】
この場合に、溶剤としては、特に有利には、a)極性非プロトン性溶剤、特に酢酸エチル、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミドもしくはアセトン、有利には酢酸エチル、またはb)非極性非プロトン性溶剤、特にトルエン、シクロヘキサンもしくはn−ヘキサン、有利にはトルエン、またはc)a)からの溶剤およびb)からの溶剤からなる溶剤混合物、特に酢酸エチルおよびトルエンからの混合物の群から選択される溶剤または溶剤混合物を使用することができる。
【0101】
この場合に、該反応は、さらに有利には、−10℃から100℃までの範囲の温度で、特に−10℃から80℃までの範囲の温度で、さらに特に有利には0℃から60℃までの範囲の温度で行うことができ、ここで、同時にまたはそれとは独立して、特に850mPaから1200mPaまでの範囲の圧力、特に950mPaから1200mPaまでの範囲の圧力、さらに特に有利には1000mPaから1200mPaまでの範囲の圧力が調整される。
【0102】
さらに有利には、式(IV)による化合物の、式(V)による化合物に対するモル比が、1:6から1:1までの、有利には5:1から1:1までの、有利には4:1から1:1までの、有利には3:1から1:1までの範囲の比率に相当する場合に、プロセスステップB)における反応は、特に良好な結果をもって実施することができる。
【0103】
本発明の一実施形態によれば、本明細書に記載される式(I)または式(Ia)による化合物の、エポキシ樹脂またはエポキシ樹脂組成物の硬化のための使用も、本発明の主題である。したがって、式(I)または式(Ia)によるリン含有酸のエステルの群から選択される少なくとも1種の化合物をそれぞれ含む硬化剤および硬化促進剤の、
a)少なくとも1種のエポキシ樹脂をそれぞれ含む、プリプレグ、ラミネート、コーティング、ポリマー樹脂混合物、粉末塗料、封止用コンパウンドもしくは接着剤の硬化用の硬化剤、または
b)少なくとも1種のエポキシ樹脂をそれぞれ含む、プリプレグ、ラミネート、コーティング、ポリマー樹脂混合物、粉末塗料、封止用コンパウンドもしくは接着剤の硬化促進用の硬化促進剤、または
c)エポキシ樹脂中での、もしくは少なくとも1種のエポキシ樹脂をそれぞれ含む、粉末塗料、封止用コンパウンド、接着剤もしくは硬化された成形材料中での難燃剤、
としての使用も、本発明の主題である。
【0104】
以下に、本発明を実施例に基づき説明するが、本発明は、当該実施例に限定されることを意味するものではない。むしろ、有利な実施形態のあらゆる組み合わせも同様に本発明に包含されることが当てはまる。
【0105】
実施例
1)使用される物質および関連の略語
エポキシ樹脂:
ER エポキシ当量182〜187を有するエポキシ樹脂(Epikote(登録商標)Resin 828 LVEL、Hexion社)
硬化剤/硬化促進剤:
HA TDI−ウロン(DYHARD(登録商標)UR500、AlzChem AG社)
H ジシアンジアミド(DYHARD(登録商標)100S、AlzChem AG社)
HA−I トリ[p−(ジメチルカルバモイルアミノ)フェニル]チオホスフェート
HA−II トリ[p−(ジエチルカルバモイルアミノ)フェニル]チオホスフェート
HA−III トリ[p−(ジメチルカルバモイルアミノ)フェニル]ホスフェート
HA−IV ジ[p−(ジメチルカルバモイルアミノ)フェニル]フェニルホスフェート
HA−V [p−ジメチルカルバモイルアミノ)フェニル]ジフェニルホスフェート
HA−VI ジ[p−(ジメチルカルバモイルアミノ)フェニル]フェニルホスホネート
HA−VII [p−ジメチルカルバモイルアミノ)フェニル]ジフェニルホスフィネート
HA−VIII トリ[m−(ジメチルカルバモイルアミノ)フェニル]ホスフェート
HA−IX トリ[o−(ジメチルカルバモイルアミノ)フェニル]ホスフェート
HA−X トリ[4−(ジメチルカルバモイルアミノ)−3−メチルフェニル]ホスフェート。
【0106】
2)本発明による硬化剤/硬化促進剤の製造
実施例1: トリ[p−(ジメチルカルバモイルアミノ)フェニル]チオホスフェート(HA−I)
HA−Iは、式(I)で示され、その式中、m=3、n=p=0、X=S、R
1=R
2=メチル、R
6=Hであり、ここで、−NHC(O)NR
1R
2基がp位で存在する化合物に相当する。
【0107】
還流冷却器と、滴下漏斗と、温度計と、磁気撹拌機とを備えるN
2でフラッシングされた三ツ口フラスコ中で、12.17g(0.27mol)のジメチルアミン(99%、Linde社)を400mlのトルエン(分析用、Merck社)中に溶かした溶液を装入する。滴下漏斗を介して、27.92g(60mmol)のトリ(p−イソシアナトフェニル)チオホスフェート(酢酸エチル中27%、Bayer MaterialScience社)を285mlのトルエン中に溶かした溶液を、温度が25℃を上回らないように(場合により水浴で冷却)ゆっくりと滴加する。その滴加の間に白色の固体が沈殿する。添加が完了した後に、生成した懸濁液をさらに室温で1.5時間にわたり撹拌する。固体を分離し、僅かなトルエンで洗浄し、そして60℃で真空中で乾燥させる。
【0108】
【表1】
【0109】
実施例2: トリ[p−(ジエチルカルバモイルアミノ)フェニル]チオホスフェート(HA−II)
HA−IIは、式(I)で示され、その式中、m=3、n=p=0、X=S、R
1=R
2=エチル、R
6=Hであり、ここで、−NHC(O)NR
1R
2基がp位で存在する化合物に相当する。
【0110】
HA−IIの製造は、実施例1と同様にして行われ、その際、ジメチルアミンを19.75g(0.27mol)のジエチルアミン(99%、Fluka社)と置き換える。
【0111】
【表2】
【0112】
実施例3: トリ[p−(ジメチルカルバモイルアミノ)フェニル]ホスフェート(HA−III)
HA−IIIは、式(I)で示され、その式中、m=3、n=p=0、X=O、R
1=R
2=メチル、R
6=Hであり、ここで、−NHC(O)NR
1R
2基がp位で存在する化合物に相当する。
【0113】
a)N−(p−ヒドロキシフェニル)−N’,N’−ジメチル尿素の製造
N−(p−ヒドロキシフェニル)−N’,N’−ジメチル尿素の製造は、欧州特許出願公開第0108712号明細書(EP0108712A1)に記載されるのと同様に、90.00g(0.825mol)のp−アミノフェノール(98%、TCI社)、90.00g(0.837mol)のN,N−ジメチルカルバモイルクロリド(98%、Aldrich社)、84.00g(1.000mol)の炭酸水素ナトリウム(分析用、Merck社)および1800mlのアセトン(99.8%、VWR社、モレキュラーシーブを通して乾燥済み)を使用して行う。
【0114】
【表3】
【0115】
b)HA−IIIの製造
還流冷却器と、滴下漏斗と、温度計と、磁気撹拌機とを備えるN
2でフラッシングされた三ツ口フラスコ中で、3.78g(21mmol)のN−(p−ヒドロキシフェニル)−N’,N’−ジメチル尿素を20mlのアセトニトリル(100%、VWR社)中で装入し、2.13g(21mmol)のトリエチルアミン(99.5%、Sigma−Aldrich社)を添加し、そして生成した反応混合物を、氷浴によって0℃の温度に冷却する。滴下漏斗によって、1.07g(7mmol)の塩化ホスホリル(合成用、Merck社)を10mlのアセトニトリル中に溶かした溶液を、温度が5℃を上回らないように滴加する。その後に、氷浴を取り除き、その反応混合物を室温で一晩撹拌する。該反応混合物を、250mlの水で希釈する。その後に生ずる固体を分離し、僅かな水で引き続き洗浄し、60℃で真空中で乾燥させる。
【0116】
【表4】
【0117】
実施例4: ジ[p−(ジメチルカルバモイルアミノ)フェニル]フェニルホスフェート(HA−IV)
HA−IVは、式(I)で示され、その式中、m=2、n=1、p=0、X=O、R
1=R
2=メチル、R
3=−O−フェニル、R
6=Hであり、ここで、−NHC(O)NR
1R
2基がp位で存在する化合物に相当する。
【0118】
還流冷却器と、滴下漏斗と、温度計と、磁気撹拌機とを備えるN
2でフラッシングされた三ツ口フラスコ中で、28.83g(160mmol)のN−(p−ヒドロキシフェニル)−N’,N’−ジメチル尿素を160mlのアセトニトリル(100%、VWR社)中に懸濁し、16.19g(160mmol)のトリエチルアミン(99.5%、Sigma−Aldrich社)を添加し、そして生成した混合物を、氷浴によって0℃の温度に冷却する。滴下漏斗によって、16.88g(80mmol)のリン酸フェニルエステルジクロリド(97%、ABCR社)を80mlのアセトニトリル中に溶かした溶液を、温度が5℃を上回らないように滴加する。その後に、氷浴を取り除き、その反応混合物を室温で一晩撹拌する。生成した固体を分離し、僅かなアセトニトリルで引き続き洗浄し、空気乾燥させる。次いで、その固体を200mlの水中に懸濁し、50℃で30分間にわたって撹拌し、再び分離し、もう一度、水で引き続き洗浄する。引き続き、60℃で真空中で乾燥させる。
【0119】
【表5】
【0120】
実施例5: [p−(ジメチルカルバモイルアミノ)フェニル]ジフェニルホスフェート(HA−V)
HA−Vは、式(I)で示され、その式中、m=1、n=2、p=0、X=O、R
1=R
2=メチル、R
3=−O−フェニル、R
6=Hであり、ここで、−NHC(O)NR
1R
2基がp位で存在する化合物に相当する。
【0121】
還流冷却器と、滴下漏斗と、温度計と、磁気撹拌機とを備えるN
2でフラッシングされた三ツ口フラスコ中で、28.83g(160mmol)のN−(p−ヒドロキシフェニル)−N’,N’−ジメチル尿素を160mlのアセトニトリル(100%、VWR社)中に懸濁し、16.19g(160mmol)のトリエチルアミン(99.5%、Sigma−Aldrich社)を添加し、そして生成した混合物を、氷浴によって0℃の温度に冷却する。滴下漏斗を介して、42.98g(160mmol)のリン酸ジフェニルエステルクロリド(97%、ABCR社)を80mlのアセトニトリル中に溶かした溶液を、温度が5℃を上回らないように滴加する。氷浴を取り除いた後に、その混合物を室温で90分間にわたって撹拌し、その後にもう一度、50℃の温度で90分間にわたって撹拌する。室温に冷却した後に、400mlの水を添加することで、2相混合物が生成する。上方の水相を分離し、有機相に240mlの水を加える。その際に生成する固体を分離し、水で洗浄し、60℃で真空中で乾燥させる。
【0122】
【表6】
【0123】
実施例6: ジ[p−(ジメチルカルバモイルアミノ)フェニル]フェニルホスホネート(HA−VI)
HA−VIは、式(I)で示され、その式中、m=2、n=1、p=0、X=O、R
1=R
2=メチル、R
3=フェニル、R
6=Hであり、ここで、−NHC(O)NR
1R
2基がp位で存在する化合物に相当する。
【0124】
還流冷却器と、滴下漏斗と、温度計と、磁気撹拌機とを備えるN
2でフラッシングされた三ツ口フラスコ中で、3.60g(20mmol)のN−(p−ヒドロキシフェニル)−N’,N’−ジメチル尿素を20mlのアセトニトリル(100%、VWR社)中で装入し、2.02g(20mmol)のトリエチルアミン(99.5%、Sigma−Aldrich社)を添加し、そして生成した反応混合物を、氷浴によって0℃の温度に冷却する。滴下漏斗によって、1.95g(10mmol)のフェニルホスホン酸ジクロリド(合成用、Merck社)を10mlのアセトニトリル中に溶かした溶液を、温度が5℃を上回らないように滴加する。その後に、氷浴を取り除き、その反応混合物を室温で一晩撹拌する。該反応混合物を、150mlの水で希釈する。生ずる固体を分離し、僅かな水で引き続き洗浄し、60℃で真空中で乾燥させる。
【0125】
【表7】
【0126】
実施例7: [p−(ジメチルカルバモイルアミノ)フェニル]ジフェニルホスフィネート(HA−VII)
HA−VIIは、式(I)で示され、その式中、m=1、n=2、p=0、X=O、R
1=R
2=メチル、R
3=フェニル、R
6=Hであり、ここで、−NHC(O)NR
1R
2基がp位で存在する化合物に相当する。
【0127】
還流冷却器と、滴下漏斗と、温度計と、磁気撹拌機とを備えるN
2でフラッシングされた三ツ口フラスコ中で、3.60g(20mmol)のN−(p−ヒドロキシフェニル)−N’,N’−ジメチル尿素を20mlのアセトニトリル(100%、VWR社)中で装入し、2.02g(20mmol)のトリエチルアミン(99.5%、Sigma−Aldrich社)を添加し、そして生成した反応混合物を、氷浴によって0℃の温度に冷却する。滴下漏斗によって、4.72g(20mmol)のジフェニルホスフィン酸クロリド(98%、Acros Organics社)を10mlのアセトニトリル中に溶かした溶液を、温度が5℃を上回らないように滴加する。その後に、氷浴を取り除き、その反応混合物を室温で一晩撹拌する。該反応混合物を、50mlの水で希釈する。生ずる固体を分離し、僅かな水で引き続き洗浄し、60℃で真空中で乾燥させる。
【0128】
【表8】
【0129】
実施例8: トリ[m−(ジメチルカルバモイルアミノ)フェニル]ホスフェート(HA−VIII)
HA−VIIIは、式(I)で示され、その式中、m=3、n=p=0、X=O、R
1=R
2=メチル、R
6=Hであり、ここで、−NHC(O)NR
1R
2基がm位で存在する化合物に相当する。
【0130】
a)N−(m−ヒドロキシフェニル)−N’,N’−ジメチル尿素の製造
N−(m−ヒドロキシフェニル)−N’,N’−ジメチル尿素の製造は、欧州特許出願公開第0108712号明細書(EP0108712A1)に記載されるのと同様に、50.00g(0.458mol)のm−アミノフェノール(99%、Merck社)、37.10g(0.345mol)のN,N−ジメチルカルバモイルクロリド(98%、Aldrich社)および325mlのテトラヒドロフラン(99.8%、Merck社)を使用して行う。
【0131】
【表9】
【0132】
b)HA−VIIIの製造
還流冷却器と、滴下漏斗と、温度計と、磁気撹拌機とを備えるN
2でフラッシングされた三ツ口フラスコ中で、8.11g(45mmol)のN−(m−ヒドロキシフェニル)−N’,N’−ジメチル尿素を50mlのアセトニトリル(100%、VWR社)中で装入し、4.55g(45mmol)のトリエチルアミン(99.5%、Sigma−Aldrich社)を添加し、そして生成した反応混合物を、氷浴によって0℃の温度に冷却する。滴下漏斗によって、2.30g(15mmol)の塩化ホスホリル(合成用、Merck社)を25mlのアセトニトリル中に溶かした溶液を、温度が5℃を上回らないように滴加する。その後に、氷浴を取り除き、その反応混合物を室温で30分間にわたってさらに撹拌する。引き続き、その反応混合物を60℃で2時間にわたって撹拌する。室温に冷却した後に、存在している固体を分離する。濾液を、回転蒸発器で濃縮乾涸させ、次いで100mlのアセトン中に取る。不溶性成分を分離し、次いで濾液を再び真空下で濃縮乾涸させる。こうして得られた固体を、60℃で真空中で乾燥させる。
【0133】
【表10】
【0134】
実施例9: トリ[o−(ジメチルカルバモイルアミノ)フェニル]ホスフェート(HA−IX)
HA−IXは、式(I)で示され、その式中、m=3、n=p=0、X=O、R
1=R
2=メチル、R
6=Hであり、ここで、−NHC(O)NR
1R
2基がo位で存在する化合物に相当する。
【0135】
a)N−(o−ヒドロキシフェニル)−N’,N’−ジメチル尿素の製造
N−(o−ヒドロキシフェニル)−N’,N’−ジメチル尿素の製造は、N−(m−ヒドロキシフェニル)−N’,N’−ジメチル尿素[実施例8a)を参照のこと]の製造と同様にして、m−アミノフェノールをo−アミノフェノール(99%、Aldrich社)に置き換えて行う。
【0136】
【表11】
【0137】
b)HA−IXの製造
還流冷却器と、滴下漏斗と、温度計と、磁気撹拌機とを備えるN
2でフラッシングされた三ツ口フラスコ中で、8.11g(45mmol)のN−(o−ヒドロキシフェニル)−N’,N’−ジメチル尿素を50mlのアセトニトリル(100%、VWR社)中で装入し、4.55g(45mmol)のトリエチルアミン(99.5%、Sigma−Aldrich社)を添加し、そして生成した反応混合物を、氷浴によって0℃の温度に冷却する。滴下漏斗によって、2.30g(15mmol)の塩化ホスホリル(合成用、Merck社)を25mlのアセトニトリル中に溶かした溶液を、温度が5℃を上回らないように滴加する。その後に、氷浴を取り除き、その反応混合物を室温で30分間にわたってさらに撹拌する。引き続き、その反応混合物を60℃で2時間にわたって撹拌する。室温に冷却した後に、存在している固体を分離し、50mlの水中に懸濁させる。その懸濁液を室温で1時間にわたって撹拌し、次いで固体を再び分離し、水で洗浄し、60℃で真空中で乾燥させる。
【0138】
【表12】
【0139】
実施例10: トリ[4−(ジメチルカルバモイルアミノ)−3−メチルフェニル]ホスフェート(HA−X)
HA−IXは、式(I)で示され、その式中、m=3、n=p=0、X=O、R
1=R
2=R
6=メチルであり、ここで、−NHC(O)NR
1R
2基が4位で存在し、かつR
6は芳香族環の3位に存在する化合物に相当する。
【0140】
a)N−(4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−N’,N’−ジメチル尿素の製造
N−(4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−N’,N’−ジメチル尿素の製造は、N−(m−ヒドロキシフェニル)−N’,N’−ジメチル尿素[実施例8a)を参照のこと]の製造と同様にして、m−アミノフェノールを4−アミノ−3−メチルフェノール(98%、Alfa−Aesar社)に置き換えて行う。
【0141】
【表13】
【0142】
b)HA−Xの製造
還流冷却器と、滴下漏斗と、温度計と、磁気撹拌機とを備えるN
2でフラッシングされた三ツ口フラスコ中で、6.41g(33mmol)のN−(4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−N’,N’−ジメチル尿素を40mlのアセトニトリル(100%、VWR社)中で装入し、3.34g(33mmol)のトリエチルアミン(99.5%、Sigma−Aldrich社)を添加し、そして生成した反応混合物を、氷浴によって0℃の温度に冷却する。滴下漏斗によって、1.69g(11mmol)の塩化ホスホリル(合成用、Merck社)を15mlのアセトニトリル中に溶かした溶液を、温度が5℃を上回らないように滴加する。その後に、氷浴を取り除き、その反応混合物を室温で30分間にわたってさらに撹拌する。引き続き、その反応混合物を60℃で2時間にわたって撹拌する。室温に冷却した後に、存在している固体を分離する。濾液を、回転蒸発器で濃縮乾涸させ、次いで30mlのアセトン中に取る。不溶性成分を分離し、次いで濾液を再び真空下で濃縮乾涸させる。こうして得られた固体を、60℃で真空中で乾燥させる。
【0143】
【表14】
【0144】
3)本発明による硬化剤/硬化促進剤を含むエポキシ樹脂組成物および配合物の調製
本発明を、第1表に挙げられるエポキシ樹脂組成物の配合の例において示す。
【0145】
第1表: 使用されたエポキシ樹脂組成物
【表15】
【0146】
DSC調査および潜在性の測定のために、それぞれの実施例に挙げられる成分を、乳鉢中で互いに入念に混合する。
【0147】
難燃作用の調査のために、配合物の個々の成分の混合を溶解機中で行う。そのために、それらの成分を1L溶解機の受容器中に量り入れ、その混合物を溶解機中で900回転/分で2分間にわたって、次いで3000回転/分で2分間にわたって、引き続き3500回転/分で3分間にわたって分散させる。次いで、その混合物を60回転/分で60分間にわたって真空下で脱ガスする。その配合物は、表面上に確認できる気泡がもはや存在しなくなれば使用できる状態である。
【0148】
こうして製造され配合物から、4mm×180mm×350mmのサイズを有する硬化されたプレートを製造し、そこから燃焼性の調査のために必要な試験体をCNCフライスによって切削する。個々の配合物についてのプレートの製造のために使用した条件(第一ステップ:硬化、第二ステップ:熱処理)は、第2表に示されている。
【0149】
第2表: 例示配合物の硬化されたプレートの製造条件
【表16】
【0150】
4)DSC調査
本発明による化合物の硬化剤/硬化促進剤としての作用は、HA、つまり慣用の硬化剤/硬化促進剤と比較したHA−Iの実施例において示される。
【0151】
そのために、DSC測定からの特性データが考慮される。以下に記載されるDSC測定は、動的熱流束差型の熱量計DSC1またはDSC822e(Mettler Toledo社)で実施する。
【0152】
a)動的DSC
配合物の試料を、10K/分の昇温速度で30℃から250℃に加熱する。発熱的反応ピークの評価は、開始温度(T
開始)、ピーク極大での温度(T
極大)および放出された反応熱の尺度としてのピーク面積(Δ
RH)の測定によって行われる。
【0153】
b)T
Gの測定:
最大ガラス転移温度(End−T
G)の測定のために、硬化された配合物の試料を以下のDSC温度プログラムにかける:20K/分で30℃から200℃への昇温、200℃での10分間の保持、20K/分での200℃から50℃への冷却、50℃での10分間の保持、20K/分での50℃から200℃への昇温、200℃での10分間の保持、20K/分での200℃から50℃への冷却、50℃での5分間の保持、20K/分での50℃から220℃への昇温。2つの最後の昇温サイクルから、それぞれ熱容量の最大変化(ΔC
p)の変曲点で接線を引くことによって、ガラス転移温度を測定し、その平均値がEnd−T
Gとして示される。
【0154】
c)等温DSC:
配合物の1つの試料を、示された温度で示された時間にわたって一定に保持する(配合物の等温硬化)。評価は、ピーク極大の時間(硬化過程の始動のための尺度)および発熱的反応ピークの90%転化率(硬化過程の完了のための尺度)の測定によって行う。
【0155】
DSC調査の結果は、第3表および第4表にまとめられている。
【0156】
第3表: 動的DSCおよびT
G測定の結果
【表17】
【0157】
第4表: 等温DSCの結果
【表18】
【0158】
本発明による実施例と、工業的に慣用の硬化剤/硬化促進剤、例えばHA(実施例AおよびC)との比較により、本発明による硬化剤または硬化促進剤を使用した場合に、硬化過程についてのDSCによる同等の特性値が測定され得ることが示される。動的DSC測定からのT
開始およびT
極大に関する値は、本発明による硬化剤/硬化促進剤を含む配合物について、HA(実施例AまたはC)を使用した場合よりも若干高い、すなわち硬化は、本発明による硬化剤/硬化促進剤を使用した場合に、僅かによりゆっくり進む。硬化に際して放出されるエネルギーΔ
RHは、全ての配合物で同じ大きさの程度であり、そのことは、全ての試験された配合物において事実上硬化が起こることを示している。本発明による硬化剤/硬化促進剤が使用される場合に、達成可能なガラス転移温度は、工業的に慣用の硬化剤/硬化促進剤を含むその都度の配合物と比較して少なくとも同等であり、幾つかの実施例では明らかにより高い(実施例B、D、F、JおよびL)。
【0159】
等温DSC測定では、結果は同様に同等である。ここで、本発明による配合物における等温硬化におけるピーク極大は、確かに幾らか遅い時点で達成されるが、この差はさほど大きくない。90%の反応転化率までの時間は、本発明による硬化剤/硬化促進剤が使用される場合に、工業的に慣用の硬化剤/硬化促進剤HAと比較して確かに部分的に幾らかより長いとはいえ、まだ工業的に是認できるものである。
【0160】
まとめると、DSC調査は、本発明による化合物が、既に知られた硬化剤/硬化促進剤と同様に使用でき、その際に類似の硬化特性を示すことを示している。
【0161】
5)難燃作用
本発明による化合物の難燃作用は、HA、つまり慣用の硬化剤/硬化促進剤と比較したHA−Iの実施例において示される。以下に挙げられる調査のために、硬化された配合物でできた試験体を使用する。以下の燃焼試験を実施する。
【0162】
a)酸素指数:
酸素指数(限界酸素指数LOIとも)の測定は、DIN EN ISO 4589−2(プラスチック−酸素指数による燃焼性の試験方法 − 第2部:室温における試験)に従って行う。試験は、100mm×10mm×4mmのサイズの試験体(試験体−タイプIII)を用いて点火手順Aにより行われる。
【0163】
b)スモールバーナー試験:
スモールバーナー試験は、UL 94 V(装置および器具部品用のプラスチック材料可燃性試験)に従って行う。試験は、127mm×13mm×4mmのサイズのそれぞれ5つの試験体を用いて行われる。
【0164】
個々の燃焼試験の結果は、第5表および第6表にまとめられている。
【0165】
第5表: 酸素指数の測定結果
【表19】
【0166】
酸素指数は、点火された試験体が点火源が取り除かれた後にもさらに燃焼するのに、酸素−窒素ガス混合物中にどれほどの酸素含量(体積%)が少なくとも必要であるかを示している。酸素指数が、標準大気中に存在する約21体積%の酸素含量よりも大きい場合に、試験された材料の自己消火が観察され、したがって防炎性作用が示される。
【0167】
実施例AおよびC(本発明によるものではない)に相応する材料については、21.1体積%または20.7体積%の酸素指数値が測定された。ここで標準大気(約21体積%の酸素含量)において、バーナー炎による点火後にさらなる燃焼の継続が確認される。実施例D、E、FおよびG(本発明による、硬化促進剤としてHA−I、HA−III、HA−IVまたはHA−Vを含有)について、より高い値が確認される。最良の結果は、実施例B(本発明による、硬化剤としてHA−Iを含有)について26.7体積%で測定される。最後に挙げた材料の場合には、標準大気(空気)において、迅速な自己消火が予想されるべきである。
【0168】
第6表: スモールバーナー試験の結果(それぞれ5つの試験体)
【表20】
【0169】
* 示されているのは、それぞれ5つの個々の試験体の結果である。2回目の接炎は、1回目の接炎において自己消火が観察される場合にのみ行われる。自己消火せずに完全に燃焼した場合には、後燃え時間についての値として、>180秒が記入される。
【0170】
# 考察は、2回の接炎後の状態に対するものである。1回だけしか接炎が行われない場合には、その後にある状態が記載されている。
【0171】
UL 94 Vによるスモールバーナー試験の接炎試験は、工業的に慣用の硬化剤/硬化促進剤HAではなく、本発明による硬化剤/硬化促進剤HA−Iを使用した場合に難燃作用の改善を示している。実施例Aについても、実施例Cについても(両者とも本発明によるものではない)、個々の試験における後燃え時間は、大部分が180秒を上回っており、燃焼滴下物(下にある綿の点火によって)および試験体の完全な燃焼を観察することができる。実施例BおよびD(両者とも本発明によるものであり、硬化剤または硬化促進剤としてHA−Iを含有する)については、個々の試験における後燃え時間は、大部分が180秒を下回っており、それどころか部分的により大きく下回っている(実施例B)。配合物Bの試験体は、配合物Aとは異なり、試験体部の滴下または落下なく自己消火を示す。配合物Dの試験体については、部分的に、燃焼落下(下にある綿の点火によって)および完全な燃焼が確認されたが、また試験体の一部は、試験体部の滴下または落下なく自己消火を示した。類似の配合物C(硬化促進剤としてHAを含有する)と比較して、配合物D(硬化促進剤としてHA−Iを含有する)については、したがってまた改善された難燃作用が確認できる。
【0172】
まとめると、前記調査は、本発明による化合物HA−Iが、単独の硬化剤としてまたは硬化促進剤として使用される場合に、工業的に慣用の硬化剤/硬化促進剤HAと比較して、他の部分が同等のエポキシ樹脂組成物内で難燃作用の改善をもたらすことを示している。工業的に慣用の硬化剤、例えばHA(実施例AまたはC)ではなく、実施例BまたはDにおける本発明による硬化剤/硬化促進剤HA−Iをエポキシ樹脂組成物内で使用することで、酸素指数の改善がもたらされるだけでなく、スモールバーナー試験において改善された燃焼性が示される。化合物HA−III(実施例E)、HA−IV(実施例F)およびHA−V(実施例G)についても、単独の硬化剤として使用される場合に、工業的に慣用の硬化剤HA(実施例)と比較してより高い酸素指数が測定された。こうして、化合物HA−I(実施例D)と同様に、改善された難燃作用が裏付けられる。
【0173】
6)潜在性(貯蔵安定性)
潜在性(貯蔵安定性)の測定のために、第1表による約20gのそれぞれの配合物を新たに調製し、その後に23℃の温度および50%の相対湿度で(気候室)貯蔵する。動粘度の定期的な測定によって、これらの貯蔵条件下での配合物の架橋(硬化)の進行を把握する。動粘度の測定は、Haake社粘度計[コーン(1°)−プレート法、25℃、せん断速度5.0s
-1で測定]を用いて行う。配合物は、粘度が二倍になるまでは、貯蔵安定(まだ加工に適している)と分類される。
【0174】
第7表: 貯蔵安定性の試験結果
【表21】
【0175】
本発明による配合物は、32日間(配合物A)または30日間(配合物C)の貯蔵安定性を有する、同等の本発明によるものではない配合物と比較してより大幅に高い、少なくとも60日の貯蔵安定性を有する。
【0176】
まとめると、貯蔵安定性の試験は、本発明による化合物を用いると、慣用の硬化剤または硬化促進剤を用いて得られる配合物と比較して明らかにより良好な貯蔵安定性を有する配合物が得られることを示している。