【文献】
David W. Burden,Guide to the Disruption of Biological Samples - 2012,Random Primers,2012年,Issue No. 12,Page 1-25
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
(背景)
試料材料の破壊ステップは、無傷の試料に由来する所望の成分(分析物)を、分離、単離、および分析することを伴う分析的調査研究、特に、核酸、RNA、DNA、タンパク質、および他の生化学的分析物などの細胞成分の単離/採取および分析における、最初の根本的なステップの1つである。
【0003】
原則として、生物学的試料を破壊するためには、化学的方法および機械的/物理的方法の両方が利用可能である。化学的方法は通例、例えば、E.coliおよび培養細胞など、多くの試料型に好ましい。グラインディング、シアリング、ビーティング、およびショッキングに依拠する機械的/物理的方法は一般に、化学的処理で効率的に破壊することができない生物学的試料、例えば、多くの微生物、固形組織、固形検体(例えば、種子)などの生物学的試料に使用される。
【0004】
公知の化学的破壊方法は通例、生物学的試料または細胞の構造を破壊して細胞内容物または分析物を放離させるデタージェント、界面活性剤、溶解酵素、またはカオトロープに基づくいわゆる溶解液または溶解緩衝液を使用する。
【0005】
機械的破壊方法または物理的破壊方法は通例、グラインディング力、シアリング力、ビーティング力、およびショッキング力により、生物学的試料の構造を機械的に破壊して、細胞内容物または分析物を放離させる、ホモジナイザー、すり鉢およびすり粉木、超音波処理機、ミキサー、ミル、ならびにボルテクサーを使用する。
【0006】
破壊およびホモジナイゼーション方法の選択は、処理される生物学的試料の種類のほか、単離および分析される細胞成分、ならびにツール、化学反応の選択にも強く依存し、それらの使用方法は、分析のアウトカムに対して、有意な影響を及ぼしうる。
【0007】
固形組織材料はこれまで、通例、上述した機械的破壊技法のうちのいくつかのステップを適用するか、または長時間にわたる化学的(すなわち、酵素的)消化(通例一晩にわたる消化)を適用することにより、ホモジナイズまたは破壊されている。しかし、このような方法は、時間がかかり、適切なホモジナイゼーションおよび十分な溶解を達成するのに、高性能の特殊な混合デバイスを必要とし、これにより、感受性の単離分析物を劣化させることが極めて多い。例えば、ボルテクサーなどの低出力ミキサーによるグラインディングは、固形組織材料をグラインディングするのに有効であることが見出されてこなかった。
【0008】
例えば、溶解緩衝液などの化学的破壊方法の、機械的破壊方法との組合せの使用については、例えば、多様な生物学的試料の破壊における適用のための、多様な化学的破壊方法および機械的破壊方法にわたる広範な概観を提示する、D. W. Burden、「Guide to the Disruption of Biological Samples - 2012」(Random Primers、12号、1〜25頁、2012年)において、極めて一般的に言及されている。この刊行物では、多様な化学的方法および機械的方法のうちの、どの特異的な破壊方法を組み合わせうるのか、またはどの特定の生物学的試料型のためには、どのようにして(例えば、後続の処理ステップにおいて、または同時に)組み合わせうるのかについては明らかにされていない。組織を破断させるための、グラインディングボールの、ボルテクサーを伴う使用についても言及されているが、ボルテクサーは、それらの性能が思わしくないために、組織材料をグラインディングするのに、それほど適さない(それほど有効でない)と指摘されている。
【0009】
所望の分析物を放離させるための、生物学的試料の前処理の分野では、多様なホモジナイゼーション組成物または溶解試薬が公知である。例えば、WO2014/096136A2、EP2447352A1、またはWO1999/33559A1では、溶解酵素および機械的ミリング粒子を含みうる、ホモジナイゼーション媒質について言及されている。これらの媒質の全ては、単一細胞、細胞培養物、微生物、細菌、ウイルス、または胞子の破壊における使用について記載されている。
【0010】
本出願人による国際出願第WO2002/00600A1号は、原核生物、真菌、原虫、または藻類などの微生物中の核酸またはこれらに由来する核酸を単離および安定化させるための方法に関する。この中で、一般に、機械的方法、化学的方法、物理的方法、または酵素的方法を使用することにより、緻密である生物学的試料を、ホモジナイズまたは破壊しうることについて言及している。実施例5では、細菌試料の細胞破壊について記載しているが、この中で、直径を150〜600μmとするガラスビーズを伴い、30Hzの混合速度で、5分間にわたる、ビーズミルの使用により支援される酵素的溶解(リゾチームにより媒介される細胞破壊)を使用して、細菌の細胞壁を破壊することについて言及している。
【0011】
国際出願第WO2011/144304A1号は、身体試料を溶解させるための溶解緩衝液および方法に関する。この中で特許請求されている溶解緩衝液は、少なくとも1つのカオトロピック剤および少なくとも1つの還元剤に加えてまた、少なくとも1つのタンパク質分解性酵素も含む。溶解緩衝液は、ビーズミリング粒子もさらに含む場合があり、この中で記載されている、身体試料を処理するための方法は、身体試料と、少なくとも1つのタンパク質分解性酵素を伴う溶解緩衝液とを含む混合物のビーズミリングを含む。適用は具体的に、呼吸器疾患の診断用に妥当な身体試料に関し、この中で、身体試料は、痰、膿、分泌液、吸引液、洗浄液、スワブなど、流体もしくは半流体の身体試料、または血液、膿、胸膜液、胸膜穿刺液、胃液、胃吸引液、ドレナージ、もしくは穿刺液などの非呼吸器試料を含むように規定されている。溶解緩衝液は主に、呼吸器試料を破壊することを意図し、粘液構成要素を溶解させるための還元剤を、このような試料中に含むことが必須である。
【0012】
本出願人によるEP2166335A1は、高効能ビーズミリングデバイスと、このようなデバイスを使用して、固形組織試料を破壊するための方法とについて記載している。実施例では、機械的に破壊した組織試料を、その後、DNeasyプロトコール(Qiagenから市販されている)に従う、さらなる分析のために、プロテイナーゼKおよびRNアーゼAで処理することについて言及している。
【0013】
WO2005039722A2および対応するUS8,020,790は、特殊なミリング粒子と、さらには指定されていない溶解緩衝液とを使用することによる、生物学的試料の破壊について記載している。
【0014】
Cicconeらは、彼らの学術刊行物である、「A B-cell targeting virus disrupts potentially protective genomic methylation patterns in lymphoid tissue by increasing global 5-hydroxymethylcytosine levels」(Veterinarys Research、2014年、45巻、108頁)において、10mmのガラスビーズと、10mMのトリス、pH8.0、100mMのNaCl、10mMのEDTA、0.5%のSDSとを使用する、DNAブロットアッセイのための組織破壊について記載している。この中で、100ugのプロテイナーゼKが、添加され、タンパク質消化のために、50℃で一晩にわたり静置されている。
【0015】
MannおよびBabbは、彼らの学術刊行物である、「Neural steroid hormone receptor gene expression in pregnant rats」(Molecular Brain Research、2005年、142巻、39〜46頁)において、脳組織試料のホモジナイゼーション方法であって、プロテイナーゼKと、4mmのグラインディングビーズ2つとを含有する溶解緩衝液を使用し、56℃で30分間に続き、−20℃で30分間にわたるタンパク質消化を実行するホモジナイゼーション方法について記載している。
【0016】
上記で示した通り、生物学的試料の同時的破壊のための、溶解酵素と、機械的破壊粒子との特異的組合せは、比較的小型のサイズ(微生物、細胞、ウイルスなど)、または構造的に「弱い」こと(単一細胞、細胞培養物、体液)によって特徴付けられる生物学的構造を呈する生物学的試料材料について記載されているに過ぎない。これに対し、固形組織材料は通例、比較的安定的な細胞構築物、または線維性もしくは膜性構造によって特徴付けられ、例えば、流体試料または半流体試料よりはるかに緻密である。したがって、固形組織材料は、機械的強度または一体性の増強、高密度を呈し、上記の先行技術において記載されている、小型で「弱い」試料材料(例えば、細胞、細胞培養物、微生物、細菌、ウイルス、または胞子)と比較して、はるかに大型で無傷の試料小片/稠密に接合されているか、または緻密である試料小片の形態で提供またはサンプリングされることが極めて多い。このような固形組織材料は、原則として、所望の分析物を破壊および放出するように、完全に異なる形で処理することを必要とすることが自明である。比較的稠密な細胞構造の破壊は、流体試料または細胞培養物試料の破壊より、強い力と、より長い消化時間とを要求する。次いで、強い機械的破壊力または化学的破壊力の適用は、例えば、核酸、DNA、RNA、および他の細胞成分など、極めて感受性なことが多い所望の分析物を損傷するか、または劣化させる危険性をはらんでいる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(発明の説明)
本発明の主題は、組織材料の破壊およびホモジナイゼーションのための、新たな組成物および方法である。
【0024】
本発明の文脈では、「組織材料」または「組織」という用語は、特に、完全な組織試料または無傷の組織試料など、特に、ヒトおよび動物に由来する固形組織試料に関する。「組織材料」または「組織」という用語は、細胞と、完全な臓器との間の細胞構成レベルの中間物のほか、ヒト身体または動物身体の試料であって、このような細胞構成レベルの中間物を含む試料も含む。本発明の意味における固形組織材料は通例、比較的安定的な細胞構築物もしくは細胞構成物、または線維性もしくは膜性構造によって特徴付けられる。通例、このような組織材料は、例えば、単純な細胞培養物または流体試料もしくは半流体試料より硬質であり、はるかに緻密であるか、または稠密に接合されている。したがって、本発明の意味における固形組織材料は、機械的強度または一体性の増強、高密度を呈し、上記の先行技術において記載されている、小型で「弱い」試料材料(例えば、単一細胞、細胞培養物、微生物、細菌、ウイルス、または胞子)と比較して、はるかに大型で無傷の試料小片/稠密に接合されているか、または緻密である試料小片の形態でサンプリングされることが極めて多い。特に、本発明に従う組織材料は、限定せずに述べると、結合組織、筋肉組織、神経組織、上皮組織、および石灰化組織を含む。したがって、本発明の意味における組織は(限定せずに述べると)、例えば、皮膚、筋肉、腱、線維、神経、軟骨、骨、臓器、例えば、腸、胃、肝臓、脾臓、脳、リンパ、骨髄、腎臓、心臓などのほか、尾(例えば、マウス尾など、齧歯動物の尾)などを含む、構成(接合)細胞構築物、線維性組織および/または膜性組織を含む。好ましくは、本発明で使用される組織材料は、生検の結果である。より好ましくは、本発明で使用される組織材料は、例えば、血液、粘膜などの流体試料または半流体試料と比較して固形組織である。さらに、本発明で使用される組織材料は、弱い単一の細胞または細胞培養物と比較して、硬質の固形組織であることが好ましい。
【0025】
本発明の文脈では、「破壊」または「〜を破壊すること」という用語は、サンプリングされ、処理された組織材料の、全てのレベルにわたる破壊であって、組織試料からの、細胞成分または所望の分析物の、それぞれの分析物の個別の検出限界を上回る量、または適切な分析技法による単離、採取、および検出を可能とする量における放離または放出を可能とする破壊を含む。この場合、高度の破壊は、組織試料の、完全なホモジナイゼーションまたは少なくとも部分的なホモジナイゼーションを含む。ホモジナイゼーションは、組織試料を、試料の画分の全部(または少なくともホモジナイズされた部分)が、組成物において本質的に同じであるような状態にすることを意味する。これは、ホモジナイズされた試料を、試料の一部を取り出しても、残りの試料の全体的分子構成は変更を受けず、取り出された画分と同一となるほど十分に、崩壊させ、ミリングし、または切り刻み、次いで、混合することを意味する。好ましくは、本発明の組成物、キット、およびシステム、ならびに方法は、組織材料の破壊および/またはホモジナイゼーションに関する。
【0026】
本発明に従う、組織材料を破壊するための組成物は、
・1または複数の固体破壊粒子と;
・酵素的溶解のための少なくとも1つの酵素と
を含む。
【0027】
好ましくは、本発明に従う、組織材料を破壊するための組成物は、
・1または複数の固体破壊粒子と;
・酵素的溶解のための少なくとも1つの酵素と;
・少なくとも1つの緩衝液と
を含む。
【0028】
より好ましくは、本発明に従う、組織材料を破壊するための組成物は、
・1または複数の固体破壊粒子と;
・酵素的溶解のための少なくとも1つの酵素と;
・少なくとも1つの緩衝液と;
・好ましくは、1Mを下回るかまたはこれと等しいカオトロピック剤の総濃度の、少なくとも1つのカオトロピック剤と
を含む。
【0029】
より好ましくは、本発明に従う、組織材料を破壊するための組成物は、
・1または複数の固体破壊粒子と;
・酵素的溶解のための少なくとも1つの酵素と;
・少なくとも1つの緩衝液と;
・少なくとも1つの消泡剤と
を含む。
【0030】
より好ましくは、本発明に従う、組織材料を破壊するための組成物は、
・1または複数の固体破壊粒子と;
・酵素的溶解のための少なくとも1つの酵素と;
・少なくとも1つの緩衝液と;
・好ましくは、1Mを下回るかまたはこれと等しいカオトロピック剤の総濃度の、少なくとも1つのカオトロピック剤と;
・少なくとも1つの消泡剤と
を含む。
【0031】
さらに好ましい実施形態では、本発明に従う、組織材料を破壊するための組成物は、
・少なくとも1つのカオトロピック剤;
・少なくとも1つのデタージェント;
・少なくとも1つのヌクレアーゼ阻害剤;
・少なくとも1つの消泡剤;
・少なくとも1つの浸透圧安定化剤;
・少なくとも1つの還元剤、
およびこれらの任意の混合物
から選択される、1または複数の作用剤
をさらに含む。
【0032】
さらに好ましい実施形態は、上記で規定された、組織材料を破壊するための組成物であって、1もしくは複数の固体破壊粒子、酵素的溶解のための少なくとも1つの酵素、少なくとも1つの緩衝液、好ましくは、1Mを下回るかもしくはこれと等しいカオトロピック剤の総濃度の、少なくとも1つのカオトロピック剤、および/または少なくとも1つの消泡剤と、
・少なくとも1つのデタージェント;
・少なくとも1つのヌクレアーゼ阻害剤;
・少なくとも1つの還元剤;
およびこれらの任意の混合物
から選択される、1または複数の作用剤と
を含む組成物に関する。
【0033】
上記で規定された、組織材料を破壊するための組成物は、特に、アルコールなどの有機溶媒を、少なくとも1つの溶解酵素の変性をもたらし、したがって、その不活化をもたらす濃度では含まないことが、特に好ましい。例えば、エタノール、プロパノール、および/またはイソプロパノールは、本発明の組成物中に、酵素(特に、下記で規定される溶解酵素、具体的には、特に、プロテイナーゼKなどのプロテアーゼなど)を変性または不活化させる量で存在すべきではない。本発明の組成物は、有機溶媒、特に、アルコール、極めて特に、メタノール、エタノール、プロパノール、および/またはイソプロパノールを含まないことが最も好ましい。
【0034】
本発明の組成物中の組織試料へと、混合力またはミリング力を適用する場合、組織材料の破壊をもたらすために、本発明の文脈における固体破壊粒子は、好ましくは、固体ビーズ、球体、ボール、コーン、シリンダー、キューブ、三角形、矩形、および類似の適切な幾何学的形態のほか、不規則な形状、例えば、いわゆるボールコーンおよびサテライト(土星、惑星またはUFOのような形状をした)の形態の固体粒子を含む。しかし、固体破壊粒子は、放出される細胞成分または分析物を劣化させたり、破壊したりしないように選択すべきである。
【0035】
組織材料の十分な破壊およびホモジナイゼーション、ならびにさらなる単離、採取、および分析のための、所望の分析物の非損傷の放離を達成するために、本発明の固体破壊粒子は、固体の不活性粒子、すなわち、組織材料とも、組成物の試薬のうちのいずれとも反応せず、いかなる場合にも、破壊時に放離する所望の分析物と反応しない材料から作製された粒子であることが好ましい。単離分析物は、不活性の固体破壊粒子に吸着されないか、これらに接着しないことが、特に好ましい。適切な不活性材料は、例えば、不活性金属、鋼、ステンレス鋼、金属酸化物、ガラス(シリカ)、プラスチック、およびセラミックを含む。不活性材料の例は、ZrO
2、SiO
2、Al
2O
3、Fe
2O
3、TiO
2、ジルコニウムシリケート、タンタル、白金などからの金属および合金などを含む。さらなる適切な不活性破壊材料は、市販の不活性破壊粒子から公知である。また、1種または複数種の破壊粒子の混合物を使用する、すなわち、異なる形態の破壊粒子および/または異なる不活性材料から作製された破壊粒子を使用することも可能である。
【0036】
ミリング工程またはグラインディング工程において、摩滅が生じないように、破壊粒子は、十分な硬さを呈することがさらに好ましい。
【0037】
ビーズ、球体、またはボール(いわゆる、ミリングビーズ)、好ましくは、ステンレス鋼製ビーズ、特に、ジルコニウムビーズなどのセラミックビーズが好ましい。特に、鋼製またはステンレス鋼製のボールコーンまたはサテライトなど、不規則な形状のミリング粒子がより好ましい。
【0038】
処理された組織試料を効率的に破壊し、特に、これをホモジナイズするのに十分な破壊力を達成するために、破壊粒子は、好ましくは、相対的に大型のサイズ(微生物または細胞培養物を破壊するために先行技術で使用されるビーズと比較して)であって、100μm〜およそ600μmのサイズを呈するべきである。高い量の、このような小型の粒子は、特に、DNAなど、感受性の分析物を損傷するか、なおまたは破壊するので、破壊力を増大させるために、小サイズのビーズ(100μm〜約600または800μmのビーズ)の量を増大させることは、適切な手法ではない。
【0039】
したがって、本発明に従う破壊粒子は、少なくとも1mm、好ましくは、1mmを超えるサイズを呈することが好ましい。より好ましくは、粒子は、少なくとも1.5mm、より好ましくは、2mmを超える(2mm超)、好ましくは、2.5mmを超えるサイズを呈する。さらに、破壊粒子は、好ましくは、少なくとも3mm(3mm以上)、より好ましくは、少なくとも4mm、より好ましくは、少なくとも5mmのサイズを呈しうる。
【0040】
本発明に従う破壊粒子は、最大で15mm、好ましくは、最大で12mm、より好ましくは、最大で11.5mmのサイズを呈することがさらに好ましい。
【0041】
本発明に従う破壊粒子は、1mmまたは1mmを超える〜15mm、1.5mm〜15mm、2mmを超える〜15mm、2.5mm〜15mm、3mmまたは3mmを超える〜15mm、4mm〜15mmのサイズを呈しうる。粒子はさらに、1mmまたは1mmを超える〜12mm、1.5mm〜12mm、2mmを超える〜12mm、2.5mm〜12mm、3mmまたは3mmを超える〜12mm、4mm〜12mmのサイズも呈しうる。さらに、破壊粒子は、1mmまたは1mmを超える〜11.5mm、1.5mm〜11.5mm、2mmを超える〜11.5mm、2.5mm〜11.5mm、3mmまたは3mmを超える〜11.5mm、4mm〜11.5mmのサイズも呈しうる。粒子はさらに、1mmまたは1mmを超える〜7mm、1.5mm〜7mm、2mmを超える〜7mm、2.5mm〜7mm、3mmまたは3mmを超える〜7mm、4mm〜7mmのサイズも呈しうる。3mmもしくは3mmを超える〜7mmまたは4mm〜7mmのサイズが最も好ましい。
【0042】
規定された破壊粒子のサイズは、それぞれの粒子の2つの反対側の点の間の最長の距離を指し示す。したがって、球形粒子または本質的な球形粒子(ビーズ、ボール、球体)の場合、規定されたサイズは、直径に関する。サテライトまたはボールコーンなど、不規則な形状の粒子の場合、2つの反対側の点の間の最長の距離は通例、このような粒子のボール部分またはボールコーン部分の周囲の「土星様リング」の直径である。
【0043】
破壊粒子のサイズに応じて、1または複数の破壊粒子を使用することができる。極めて大型の粒子の場合、1つの粒子(特に、1つのボールまたはボールコーン)だけで、所望の破壊結果および分析物の保存を達成することができる。1つの破壊粒子を使用することが好ましい。
【0044】
適切な破壊粒子は、1.0〜1.7mmのビーズ、2.8〜3.0mmのビーズ、7/64インチのグラインディングボール(およそ2.8mm)(特に、ステンレス鋼製グラインディングボール)、5/32インチのグラインディングボール(およそ6.0〜7.0mm)、6mmの粒子(特に、ジルコニウムサテライト)、3/8インチのグラインディングボール(およそ9.5mm)、および7/16インチのグラインディングボール(およそ11.1mm)を含む。5/32インチのビーズ、および5mmの本質的に球形の粒子(例えば、ビーズ、ボール、球体)が好ましい。ボールコーンまたはサテライト形の粒子である、形状が不規則な市販の粒子であって、これらもまた好ましい粒子のさらなる例は、以下のサイズを呈する。
【表A】
【0045】
ここで、鋼製ボールコーンの片側は、半球(ボール(A))であり、他の片側は、コーンであり、両者は、中央の傾斜付きフランジで隔てられている(リング(B))。
【0046】
また、異なるサイズの破壊粒子の混合物を使用することも可能である。さらに、本明細書で規定される通り、任意の形態、材料、およびサイズの破壊粒子を混合することも可能である。
【0047】
本発明に従う、酵素的溶解のための酵素は、ヒドロラーゼ(酵素のEC番号分類中のEC3群に従う)の群から選択される。特に、酵素的溶解のための少なくとも1つの酵素は、ペプチダーゼ、プロテイナーゼ、またはタンパク質分解性酵素ともまた称することが多い、プロテアーゼ(EC3.4)の群から選択される。好ましくは、酵素的溶解のための少なくとも1つの酵素は、プロテイナーゼK、コラゲナーゼ、ディスパーゼ、トリプシン、ペプシンの群から選択され、プロテイナーゼKが最も好ましい。
【0048】
酵素的溶解のための少なくとも1つの酵素(タンパク質分解性酵素)に加えて、酵素的溶解のための酵素以外の、少なくとも1つのさらなる酵素を添加することができる。好ましくは、このようなさらなる酵素は、エステル結合に作用するヒドロラーゼであって、酵素クラスEC3.1に従うヒドロラーゼの群から選択される。好ましくは、このようなさらなる酵素として、RNアーゼを添加することができ、RNアーゼAを添加することが好ましい。
【0049】
本発明に従う、少なくとも1つの緩衝液は、組織試料、酵素的溶解のための少なくとも1つの酵素(タンパク質分解性酵素)、および本発明の組成物中の1または複数の任意選択のさらなる作用剤を受け入れるのに適する任意の緩衝液でありうる。特に、緩衝液は、酵素的溶解のための酵素と適合性でなければならず、タンパク質分解性酵素、または組成物の任意のさらなる作用剤の活性を完全に阻害してはならない。好ましくは、例えば、単離された核酸、DNA、RNA、または他の細胞成分などの単離分析物を安定化させる緩衝液を選ぶことができる。適切な緩衝液は、例えば、MES、ビス−トリス、ADA、ACES、PIPES、MOPSO、ビス−トリスプロパン、BES、MOPS、TES、HEPES、DIPSO、MOBS、TAPSO、Trizma、HEPPSOPOPSO、TEA、EPPS、トリシン、Gly−Gly、ビシン、HEPBS、TAPS、AMPD、TABS、AMPSO、CHES、CAPSO、AMP、CAPS、CABSを含むリストから選択される、トリス緩衝液、PBS緩衝液、グッド緩衝液、SSC、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸緩衝液、および生物学的緩衝液を含む。pHを≧6(6と等しいかまたはこれを上回る)とする緩衝液が好ましい。組織材料から放離させることが所望される分析物がDNAである場合は、pHを≧7(7と等しいかまたはこれを上回る)とする緩衝液が好ましい。組織材料から放離させることが所望される分析物がRNAである場合は、pHを≧6(6と等しいかまたはこれを上回る)とする緩衝液が好ましい。特に、上記の生物学的緩衝液のリストによる緩衝液が好ましい。より好ましくは、少なくとも1つの緩衝液は、トリス緩衝液、PBS緩衝液から選択される。
【0050】
カオトロピック剤(またはカオトロープ)は、化学的消化を支援するかまたは増大させるのに有効であり、ヌクレアーゼ活性を低減する一助となる可能性があり、タンパク質を変性させる一助となる可能性があり、これにより、ホモジナイズされたばかりの試料に対して、撹乱を引き起こしうる。本発明に従い、原則として、例えば、ヨウ化ナトリウム、グアニジン塩酸塩(グアニジンHCl、GuHCl)、グアニジニウムチオシアン酸塩(GTC)、グアニジンイソチオシアン酸塩、および尿素など、全ての一般的なカオトロープを使用することができる。本発明では、グアニジニウム塩酸塩が好ましい。カオトロープの添加は、破壊された組織材料が、後続の核酸単離手順、特に、単離核酸分析物を精製するための、シリカベースの樹脂/ゲルを使用する手順を意図する場合に、特に適する。さらに、カオトロープは、放出される所望の分析物が、RNAである場合に、特に好ましい。
【0051】
一般に、カオトロープは、比較的高いモル濃度で使用する。例えば、グアニジン塩は、特に、RNAを単離するためには、通例、6Mの濃度で使用する。ヨウ化ナトリウムもまた、一般に、6Mで使用する。尿素は、9.5Mで使用することが多い。本発明者らは、驚くべきことに、本発明の新たな組成物、キット、およびシステム、ならびに方法は、カオトロピック剤の濃度の有意な低減を可能とし、したがって、少なくとも1つのカオトロピック剤の濃度(カオトロピック剤の総濃度)は、最大で約1M、好ましくは、1Mと等しいかまたはこれ未満(≦1M)であることが好ましいことを見出した。特に、カオトロープを、0.5M〜1Mの(総)濃度で使用することが好ましい。GuHClおよびGTCなどのカオトロープは、毒性であり、したがって、その低減が、安全性の理由で、かつ、このような組成物の使用者を保護するために所望されるので、1Mを超えない、低減された濃度のカオトロピック剤の使用が有利である。さらに、高濃度のカオトロープは、それらのタンパク質変性効果に起因して、プロテイナーゼKの有効性も減殺しうる。したがって、カオトロープの濃度を、特に、1Mを超えないように低減することは、組織試料に対して及ぼす化学的影響を低減し、より穏やかであるか、または穏和な溶解組成物を提供することを可能とする。
【0052】
界面活性剤(デタージェントともまた称することが多い)は、組織試料の溶解を支援することが可能であり、ホモジネートの可溶化を支援しうる。少なくとも1つの界面活性剤の添加は、肝臓または脳など、脂肪性組織を破壊するために、特に好ましい。界面活性剤は、アニオン性界面活性剤およびカチオン性界面活性剤などのイオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤ならびに非イオン性界面活性剤を含む。
【0053】
アニオン性界面活性剤の群は、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、デオキシコール酸ナトリウム、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES、ラウレス硫酸ナトリウム)、およびミレス硫酸ナトリウムを含むが、SDSが好ましい。
【0054】
カチオン性界面活性剤の群は、例えば、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、セチルトリメチルアンモニウムクロリド(CTAC)、塩化セチルピリジニウム(CPC)、塩化ベンザルコニウム(BAC)、塩化ベンゼトニウム(BZT)、5−ブロモ−5−ニトロ−1,3−ジオキサン、ジメチルジオクタデシルアンモニウムクロリド、臭化セトリモニウム、ジオクタデシルジメチルアンモニウムブロミド(DODAB)を含む。
【0055】
非イオン性界面活性剤の群は、例えば、Triton X−100、Tween 20(ポリソルベート20、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)、Brij−35(ポリアルキレングリコールエーテル)、NP−40(ノニルフェノキシポリエトキシルエタノール)、Nonidet P−40(オクチルフェノキシポリエトキシエタノール)を含むが、Triton X−100およびTween 20が好ましい。
【0056】
両性イオン性界面活性剤の群は、例えば、リン脂質である、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、およびスフィンゴミエリンを含む。
【0057】
好ましくは、少なくとも1つの界面活性剤は、上記で規定された、非イオン性界面活性剤の群から選択される。より好ましくは、少なくとも1つの界面活性剤は、SDS、Tween20、およびTriton X−100からなる群から選択される。なおより好ましくは、少なくとも1つの界面活性剤は、Tween20およびTriton X−100から選択され、Tween20およびTriton X−100の両方の組合せを使用することが極めて特に好ましい。
【0058】
本発明に従うヌクレアーゼ阻害剤は、例えば、EDTA、PMSF、ペプスタチンA、ロイペプチン、アプロチニンを含む。好ましくは、少なくとも1つのヌクレアーゼ阻害剤は、EDTAである。
【0059】
さらに、反応混合物中の気泡の形成を低減および防止することが可能であり、したがって、さらなる処理可能性を改善しうる、少なくとも1つの消泡剤(anti−foaming agent(またはdefoamer))を添加することが可能である。消泡剤(anti−foaming agent)は、気泡の形成を防止するのに使用することもでき、既に形成された気泡を破壊するために添加することもできる。原則として、例えば、不溶性の油、ポリジメチルシロキサンおよび他のシリコーン、ある特定のアルコール、ステアレート、およびグリコール(それらが、反応作用剤、組織試料、単離分析物のうちのいずれにも負の影響を及ぼしたり、後続のいかなる単離方法、採取方法、および分析方法を撹乱したりしないことを条件として)など、一般に使用される全ての消泡剤(anti−foaming agent)を使用することができる。好ましい消泡剤(anti−foaming agent)は、ポリジメチルシロキサンである。
【0060】
浸透圧安定化剤を添加して、水を拘束し、類縁の溶質の解離を防止する一助とすることができる。浸透圧安定化剤は、例えば、スクロースまたはソルビトールを含む。
【0061】
浸透圧安定化剤は、細胞の溶解に干渉しうるので、浸透圧安定化剤の存在は、それほど好ましくなく、浸透圧安定化剤を添加せず、これにより、本発明の組成物による組織破壊およびホモジナイゼーションをさらに改善することがなおより好ましい。
【0062】
本発明に従い、また、少なくとも1つの還元剤を添加することも可能である。還元剤は、RNアーゼを還元するので、特に、破壊された組織から単離することが所望される分析物が、RNAである場合に添加することができる。還元剤は、例えば、グルタチオン、ジチオトレイトール、およびβ−メルカプトエタノールを含む。
【0063】
極めて特に、所望の分析物がRNAである場合、本発明の組成物は、還元剤を含み、このような場合、組成物は、RNアーゼを含まないことが好ましい。
【0064】
しかし、還元剤は、所望されない副反応を引き起こす可能性があり、作業工程において不快(例えば、異臭に起因して)であるので、本発明の組成物、キット、およびシステム、または方法へは、還元剤を添加しないことが好ましい。特に、破壊された組織から単離することが所望される分析物が、DNAである場合、還元剤の添加は、回避し、なおまたは除外することが好ましい。
【0065】
したがって、本発明の好ましい実施形態は、本発明に従う組成物であって、
・1または複数の固体破壊粒子と;
・酵素的溶解のための少なくとも1つの酵素と;
・好ましくは、トリス緩衝液およびPBS緩衝液から選択される、少なくとも1つの緩衝液と;
・少なくとも1つのカオトロピック剤、好ましくは、グアニジニウム塩酸塩と;
任意選択で、
・好ましくは、非イオン性界面活性剤の群から選択される、少なくとも1つの界面活性剤であり、好ましくは、Tween20およびTriton X−100から選択される界面活性剤;
・少なくとも1つのヌクレアーゼ阻害剤、好ましくは、EDTA;
・少なくとも1つの消泡剤、好ましくは、ポリジメチルシロキサン;
・好ましくは、スクロースおよびソルビトールから選択される、少なくとも1つの浸透圧安定化剤;ならびに
・RNアーゼの群から選択される、少なくとも1つのさらなる酵素、好ましくは、RNアーゼ
から選択される、1または複数の作用剤と
からなる組成物に関する。
【0066】
本発明の、さらに好ましい実施形態は、本発明に従う組成物であって、
・1または複数の固体破壊粒子と;
・酵素的溶解のための少なくとも1つの酵素と;
・好ましくは、トリス緩衝液およびPBS緩衝液から選択される、少なくとも1つの緩衝液と;
・少なくとも1つのカオトロピック剤、好ましくは、グアニジニウム塩酸塩と;
・好ましくは、非イオン性界面活性剤の群から選択される、少なくとも1つの界面活性剤であり、好ましくは、Tween20およびTriton X−100から選択される界面活性剤と;
・少なくとも1つのヌクレアーゼ阻害剤、好ましくは、EDTAと;
・RNアーゼの群から選択される、少なくとも1つのさらなる酵素、好ましくは、RNアーゼと
からなる組成物に関する。
【0067】
本発明の、さらに好ましい実施形態は、本発明に従う組成物であって、
・1または複数の固体破壊粒子と;
・酵素的溶解のための少なくとも1つの酵素と;
・好ましくは、トリス緩衝液およびPBS緩衝液から選択される、少なくとも1つの緩衝液と;
・少なくとも1つのカオトロピック剤、好ましくは、グアニジニウム塩酸塩と;
・好ましくは、非イオン性界面活性剤の群から選択される、少なくとも1つの界面活性剤であり、好ましくは、Tween20およびTriton X−100から選択される界面活性剤と;
・少なくとも1つのヌクレアーゼ阻害剤、好ましくは、EDTAと
からなる組成物に関する。
【0068】
本発明の、さらに好ましい実施形態は、本発明に従う組成物であって、
・1または複数の固体破壊粒子と;
・酵素的溶解のための少なくとも1つの酵素と;
・好ましくは、トリス緩衝液およびPBS緩衝液から選択される、少なくとも1つの緩衝液と;
・少なくとも1つのカオトロピック剤、好ましくは、グアニジニウム塩酸塩と;
・好ましくは、非イオン性界面活性剤の群から選択される、少なくとも1つの界面活性剤であり、好ましくは、Tween20およびTriton X−100から選択される界面活性剤と;
・RNアーゼの群から選択される、少なくとも1つのさらなる酵素、好ましくは、RNアーゼと
からなる組成物に関する。
【0069】
本発明の、さらに好ましい実施形態は、本発明に従う組成物であって、
・1または複数の固体破壊粒子と;
・酵素的溶解のための少なくとも1つの酵素と;
・好ましくは、トリス緩衝液およびPBS緩衝液から選択される、少なくとも1つの緩衝液と;
・少なくとも1つのカオトロピック剤、好ましくは、グアニジニウム塩酸塩と;
・好ましくは、非イオン性界面活性剤の群から選択される、少なくとも1つの界面活性剤であり、好ましくは、Tween20およびTriton X−100から選択される界面活性剤と
からなる組成物に関する。
【0070】
本発明はさらに、組織材料を破壊するためのキットであって、
・1または複数の固体破壊粒子と;
・酵素的溶解のための少なくとも1つの酵素と;
・好ましくは、トリス緩衝液およびPBS緩衝液から選択される、少なくとも1つの緩衝液と;
・少なくとも1つのカオトロピック剤、好ましくは、グアニジニウム塩酸塩と;
任意選択で、
・好ましくは、非イオン性界面活性剤の群から選択される、少なくとも1つの界面活性剤であり、好ましくは、Tween20およびTriton X−100から選択される界面活性剤;
・少なくとも1つのヌクレアーゼ阻害剤、好ましくは、EDTA;
・少なくとも1つの消泡剤、好ましくは、ポリジメチルシロキサン;
・好ましくは、スクロースおよびソルビトールから選択される、少なくとも1つの浸透圧安定化剤;
・好ましくは、グルタチオン、ジチオトレイトール、およびベータ−メルカプトエタノールから選択される、少なくとも1つの還元剤;
・RNアーゼの群から選択される、少なくとも1つのさらなる酵素、好ましくは、RNアーゼ
から選択される、1または複数の作用剤と;
・任意選択で、組織材料を受け入れるための容器と;さらに、
・好ましくは、アルコール、好ましくは、エタノールおよび/またはイソプロパノールから選択される、少なくとも1つの有機溶媒と;
・組織材料を処理するための指示を伴う小冊子と
を含むキットにも関する。
【0071】
所望の分析物が、RNAである場合、キットは、還元剤を含むことが、特に好ましく、このような場合、キットは、RNアーゼを含まないことが、さらに好ましい。
【0072】
組織材料を受け入れるための容器は、破壊処理において使用される作用剤に対して不活性であり、破損したり、摩滅したりせず、破壊粒子のミリング力またはグラインディング力に耐えるのに十分な機械的安定性を提供し、試料材料、溶解液、および1または複数の選択された破壊粒子を受け入れるのに適するサイズを提供し、なおかつ、組織破壊をもたらすように、挿入された成分の撹拌および運動を可能とするのに適する空間を提供し、破壊粒子により、組織材料のミリングまたはグラインディングをもたらすために使用されるデバイスと共に使用するのに適しうる、任意の適する容器または反応槽でありうる。適切な容器または反応槽(チューブ)は、公知であり、一般に市販されている。
【0073】
特に、少なくとも1つのアルコールなど、有機溶媒の、速やかに破壊および/またはホモジナイズされた組織試料への添加は、下記でより詳細に記載される、後続の精製ステップ、単離ステップ、および採取ステップにおける、放離させた分析物の、シリカ表面への、優れた結合条件をもたらすのに有利である。キットに組み入れるのに適するアルコールは(限定せずに述べると)、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどを含む。エタノールおよび/またはイソプロパノールを添加することが好ましい。上記で説明した通り、有機溶媒は、変性をもたらし、したがって、組織試料を破壊するための組成物の、少なくとも1つの溶解酵素を阻害する可能性がある。したがって、このようなキット中の有機溶媒は、組織破壊のための化合物から分離し、組織破壊を実行した後で添加する。
【0074】
本発明に従うキットについてのさらなる実施形態は、組織破壊のための、上記で規定された組成物のうちのいずれかに対応する、成分(試薬)の組合せと、任意選択で、組織材料を受け入れるための容器と、好ましくは、アルコール、好ましくは、エタノールおよび/またはイソプロパノールから選択される、少なくとも1つの有機溶媒と、組織材料を処理するための指示を伴う小冊子とを含む。
【0075】
本発明に従うキットは、上述した、後続の結合ステップ、精製ステップ、単離ステップ、および採取ステップを実行するのに適する構成要素もさらに含みうる。本発明に従う、組織破壊をもたらすための上述のキットの、カオトロピック剤およびイソプロパノールを含む結合緩衝液との組合せを提供することが、特に好ましい。しかしまた、本発明に従う、組織破壊をもたらすための上述のキットであって、DNAまたはRNAへの結合を実行するための、公知であり、市販されている試験キット、ならびにDNAまたはRNAの精製および分析を実行するための、市販の試験キットと組み合わせた上述のキットを使用し、提供することも可能である。したがって、上述のキットは、例えば、DNeasyキットもしくはRNeasyキット(Qiagenから市販されている)など、市販の試験キットに対応する化合物、またはそれぞれの試験キット自体、ならびに/あるいは適切なシリカベースの膜、カラム(例えば、Qiagenから市販されているQIAampカラム)、またはシリカ磁気ビーズなど、吸収および精製のための材料もさらに含みうる。
【0076】
本発明はさらに、上記で規定された組成物またはキットと、破壊粒子により、組織材料の、機械的なミリングまたはグラインディングをもたらすためのデバイスとを含むシステム(組合せ、キットオブパーツ)にも関する。
【0077】
機械的なミリングまたはグラインディングをもたらすための、このようなデバイスは、グラインディング技法またはビーズミリング技法で使用される、任意の一般的なデバイスであって、例えば、高出力ミキシングミル、高性能ミキサーまたは高性能ミル、高速ミキサー、一般的なビーズミルのほか、一般的な実験室用ボルテクサー、ベンチトップボルテクサー、または一般的な実験室用シェーカー(例えば、水平型シェーカー)などの低出力ミキサーを含むデバイスでありうる。
【0078】
上述の通り、先行技術により、無傷の組織材料を破壊するために、ミリングビーズおよびビーズミルを使用することは、既に公知であった。しかし、組織材料の効率的なホモジナイゼーションを達成するためには、一般に、ビーズミルまたは高出力/高性能ミキサーなど、特化し、かつ、大型であるミリング装置を使用しなければならなかった。本発明は、今や、驚くべきことに、ほぼあらゆる実験室の、標準的な装置に属する、一般的なデスクトップボルテクサーなどの低出力ミキサーによってもなお、組織材料を、効率的、迅速、かつ、完全に破壊またはホモジナイズする可能性を提示した。したがって、組織のミリングまたはグラインディングをもたらすためのデバイスとして、特に、ボルテクサーまたは水平型シェーカーを含む低出力ミキサーが好ましい。特に、ボルテクサーが好ましい。
【0079】
高出力または高性能のミキサーまたはミルは通例、15〜60Hzの周波数で働く。
【0080】
特に、一般的なボルテクサーなどの低出力ミキサーは通例、150〜最大で3200rpmの力で働く。
【0081】
例えば、低出力ミキサーまたはボルテクサーからの、低減された機械的出力を適用することは、放出される分析物の品質を保存し、大きな機械的影響に起因する、分析物の損傷または劣化を回避するために有利である。
【0082】
本発明のさらなる目的は、上記で規定された組成物、キット、またはシステムを含み、本発明の組成物、キット、またはシステムによる破壊が意図される組織材料をさらに含むシステム(組合せ、キットオブパーツ)に関する。このようなシステムの組織材料については、「組織材料」についての上記定義が参照される。
【0083】
本発明はさらに、組織材料を破壊またはホモジナイズするための新たな方法であって、酵素的溶解のための少なくとも1つの酵素を含む溶解液中で、組織材料を、グラインディング、ミリング、またはビーティングすることにより、組織材料を、
・グラインディング、ミリング、またはビーティングによる機械的破壊と
・酵素的溶解による化学的破壊と
の同時的処理に供する方法にも関する。
【0084】
本発明に従う方法は、組織材料のグラインディング、ミリング、またはビーティングを、上記で規定された、1または複数の固体破壊粒子によりもたらすことにおいて特徴付けられる。好ましい実施形態および選択に関しては、上記で規定された実施形態および選択が参照される。
【0085】
本発明に従う方法は、好ましくは、組織材料の破壊を、上記で規定された、組織のミリングまたはグラインディングをもたらすためのデバイスであって、好ましくは、高出力ミキシングミル、高速ミキサー、またはボルテクサーを含む低出力ミキサーなどのデバイスを使用すること、特に、上記で規定された、低出力ミキサーまたはボルテクサーを使用することにより実行するかまたはもたらすことにおいて特徴付けられる。
【0086】
本発明に従う方法は、上記で規定された組成物、キット、またはシステム(組合せ、キットオブパーツ)のうちのいずれかを使用することにより実行することが好ましい。
【0087】
特に、本発明の方法を実行する場合、特に、アルコールなどの有機溶媒は、組織材料を破壊するための組成物中に、少なくとも1つの溶解酵素の変性をもたらし、したがって、その不活化をもたらす濃度で存在しないことが好ましい。上記で規定された通り、例えば、エタノール、プロパノール、および/またはイソプロパノールは、酵素を変性または不活化させる量で存在するべきである。組織材料を破壊する方法を実行する場合、有機溶媒、特に、アルコール、極めて特に、エタノール、プロパノール、および/またはイソプロパノールは、存在しないことが最も好ましい。
【0088】
本発明に従う方法は、特に、
(i)適切な容器(例えば、キットとの関連で、上記で規定された)内の組織材料へと、
a)1もしくは複数の固体破壊粒子、少なくとも1つの緩衝液、酵素的溶解のための少なくとも1つの酵素、少なくとも1つのカオトロピック剤、任意選択で、RNアーゼ、および任意選択で、界面活性剤、還元剤、ヌクレアーゼ阻害剤、消泡剤、もしくはこれらの混合物から選択される、1もしくは複数の作用剤、または
b)上記で規定された組成物のうちのいずれか
を添加するステップと;
(ii)任意選択で、容器を閉止するステップと;
(iii)高出力ミキシングミル、高速ミキサー、またはボルテクサーを含む低出力ミキサーを使用して、好ましくは、ボルテクサーを使用することにより、容器内の組織材料を破壊するステップと;
(iv)ステップ(iv)の混合物を、好ましくは、24℃を上回り、より好ましくは、25〜70℃の間の高温でインキュベートするステップと;
(v)任意選択で、ステップ(iii)および(iv)を反復するステップと;
(vi)任意選択で、結果として得られる混合物を、後続の精製、分離、抽出および/または分析工程ステップのために提供するか;あるいは、代替的に、好ましくは、例えば、失活化に適する試薬の添加および/または結果として得られる混合物の冷却もしくは冷凍により、溶解試薬、特に、溶解酵素を失活化させた後で、結果として得られる混合物を保存するステップと
を含むことによって特徴付けられる。
【0089】
ステップ(iii)に従う、好ましいミリング時間は、約1分間、好ましくは、約30秒間〜約15分間、好ましくは、約30秒間〜約5分間である。高出力または高性能のミキサーまたはミルを使用する場合、ミリング時間は、好ましくは、約30秒間である。特に、ボルテクサーなどの低出力ミキサーを使用する場合、ミリング時間は、好ましくは、約5分間である。
【0090】
ステップ(iv)に従う溶解時間は、好ましくは、4時間、より好ましくは、3時間、なおより好ましくは、2時間、さらにより好ましくは、1時間を超えず、なおより好ましくは、特に、30分間未満など、1時間未満を超えない。ステップ(iv)を反復する(ステップ(v))場合、総溶解時間は、4時間、好ましくは、3時間、より好ましくは、2時間、さらにより好ましくは、1時間を超えないものとし、なおより好ましくは、特に、30分間未満など、1時間未満を超えるべきではない。好ましくは、ステップ(iv)に従う溶解時間(または総溶解時間のそれぞれ)は、少なくとも5分間、より好ましくは、少なくとも10分間である。好ましくは、本発明の方法により、十分な組織破壊は、15分間で完了するように達成することができる。
【0091】
特に、DNAを抽出するために方法を使用する場合、規定された溶解時間が好ましい。
【0092】
組織材料を、本発明の溶解液と、4時間、好ましくは、3時間、より好ましくは、2時間を超えて、さらにより好ましくは、1時間を超えて接触させないことが、特に好ましく、30分間を超えて接触させないことが、なおより好ましい。極めて特に、一晩にわたる消化(少なくとも8時間消化)は、回避される。特に、方法を、DNA抽出のために使用する場合はそうである。
【0093】
本発明の組成物、キット、システム(組合せ、キットオブパーツ)、および方法により、破壊時間およびホモジナイゼーション時間を、1または2時間という短時間まで有意に縮減することができ、特に、約15分間を超えないようにするなど、なおさらに、30分間、なおまたはこれ未満まで縮減することができる。これに対し、一般的な技法は、最小の平均消化時間として、少なくとも150分間(2.5時間)を必要とするが、一晩にわたる消化(少なくとも8時間消化)が通例である。
【0094】
本発明は、特に、核酸、DNA、RNA、miRNA(マイクロRNA)、mRNA、tRNA、rRNAなどを、上記で規定された組織材料から抽出するのに適する。
【0095】
DNA、RNA、およびmiRNAを、組織試料から抽出するために、本発明を使用することは、特に好ましく、DNAの抽出は、極めて特に好ましい。
【0096】
したがって、本発明の方法は、上記のステップ(vi)に後続する、1または複数のさらなるステップであって、
・処理された材料の回収ステップ;
・例えば、溶解作用剤、特に、溶解酵素を不活化すること、例えば、混合物を冷凍することによる、処理された材料の安定化ステップ;
・処理した(かつ安定化させた)材料を保存するステップ;
・例えば、さらなるカオトロープならびに/またはアルコール、特に、エタノールおよび/もしくはイソプロパノールなどの有機溶媒を添加することによる、分析物の結合ステップ;
・例えば、シリカベースの膜、カラム、またはシリカ磁気ビーズベースの技法を使用する、分析物の精製ステップ;
・例えば、溶出技法を使用する、分析物の単離ステップ;
・分析物の濃縮ステップ;
・分析物の回収ステップ;
・精製/単離された分析物の安定化ステップ;
・精製/単離された分析物を保存するステップ;
・分析するステップ、例えば、PCR分析ステップ
を含むステップを含みうる。
【0097】
特に、上記のステップ(vi)から得られる、処理された組織材料を、公知であり、市販されている、精製試験、単離試験、および分析試験における出発材料として使用することも可能であり、市販の試験キットを、さらなる処理のために使用することも可能である。
【0098】
本発明はさらに、本明細書で規定される組成物、キット、およびシステム(組合せ、キットオブパーツ)の使用であって、上記で規定された(固形)組織材料を処理するための使用にも関する。ここで、処理は、好ましくは、上記で規定された破壊および/またはホモジナイゼーションに関するが、また、組織試料の、本発明に従う組成物または混合物への放出または添加も含みうる。
【0099】
本発明は特に、以下の実施形態に関する。
1.組織材料を破壊するための組成物であって、
・1または複数の固体破壊粒子と;
・酵素的溶解のための少なくとも1つの酵素と;好ましくは
・少なくとも1つの緩衝液と
を含み、酵素を変性または不活化させる量でアルコールを含まない組成物。
2.・少なくとも1つのカオトロピック剤、好ましくは、グアニジニウム塩酸塩;
・好ましくは、非イオン性界面活性剤の群から選択される、少なくとも1つの界面活性剤;
・少なくとも1つのヌクレアーゼ阻害剤;
・少なくとも1つの消泡剤;
・少なくとも1つの浸透圧安定化剤;
・少なくとも1つの還元剤;
およびこれらの混合物
から選択される、1または複数の作用剤をさらに含む、実施形態1に記載の組成物。
3.酵素的溶解のための酵素以外の、少なくとも1つのさらなる酵素、好ましくは、RNアーゼをさらに含む、実施形態1または2に記載の組成物。
4.酵素的溶解のための少なくとも1つの酵素が、プロテアーゼ、好ましくは、プロテイナーゼKの群から選択される、前記実施形態のいずれか1つに記載の組成物。
5.組織材料が、ヒトおよび動物に由来する固形組織から選択される、前記実施形態のいずれか1つに記載の組成物。
6.1Mと等しいかまたはこれ未満の総濃度の、少なくとも1つのカオトロピック剤を含む、前記実施形態のいずれか1つに記載の組成物。
7.固体破壊粒子が、少なくとも1mmのサイズを呈する、前記実施形態のいずれか1つに記載の組成物。
8.組織材料を破壊するためのキットであって、
・1または複数の固体破壊粒子と;
・酵素的溶解のための少なくとも1つの酵素と;
・少なくとも1つの緩衝液と;
任意選択で、
・少なくとも1つのカオトロピック剤;
・少なくとも1つの界面活性剤;
・少なくとも1つのヌクレアーゼ阻害剤;
・少なくとも1つの消泡剤;
・少なくとも1つの浸透圧安定化剤;
・少なくとも1つの還元剤;
・酵素的溶解のための酵素以外の、少なくとも1つのさらなる酵素、好ましくは、RNアーゼ;
・少なくとも1つの有機溶媒、好ましくは、アルコール
から選択される、1または複数の作用剤と;
・任意選択で、組織材料を受け入れるための容器と;
・組織材料を処理するための指示を伴う小冊子と
を含むキット。
9.実施形態1から7のいずれか1つに規定の組成物、または実施形態8に規定のキットと、組織材料のミリングをもたらすためのデバイス、好ましくは、高出力ミキシングミル、高速ミキサー、またはボルテクサーを含む低出力ミキサーとを含むシステム。
10.実施形態1から7のいずれか1つに規定の組成物、実施形態8に規定のキット、または実施形態9に規定のシステムを含み、破壊のための組織材料をさらに含むシステム。
11.組織材料を破壊するための方法であって、1または複数の固体破壊粒子と、酵素的溶解のための少なくとも1つの酵素とを含み、酵素を変性または不活化させる量でアルコールを含まない溶解液中で、組織材料を、グラインディング、ミリング、またはビーティングすることにより、組織材料を、
・グラインディング、ミリング、またはビーティングによる機械的破壊と
・酵素的溶解による化学的破壊と
の同時的処理に供する方法。
12.溶解液が、1Mと等しいかまたはこれ未満の総濃度の、少なくとも1つのカオトロピック剤をさらに含む、実施形態11に記載の方法。
13.破壊を、ボルテクサーを含む低出力ミキサーを使用すること、好ましくは、ボルテクサーを使用することにより実行する、実施形態11または12に記載の方法。
14.実施形態1から7のいずれか1つに規定の組成物、実施形態8に規定のキット、または実施形態9および10に規定のシステムを使用することにより実行される、実施形態11から13のいずれか1つに記載の方法。
15.(i)適切な容器内の組織材料へと、
a)1もしくは複数の固体破壊粒子、少なくとも1つの緩衝液、酵素的溶解のための少なくとも1つの酵素、任意選択で、RNアーゼ、および任意選択で、カオトロピック剤、界面活性剤、浸透圧安定化剤、還元剤、ヌクレアーゼ阻害剤、消泡剤、もしくはこれらの混合物から選択される、1もしくは複数の作用剤、または
b)実施形態1から7のいずれか1つに規定の組成物
を添加するステップと;
(ii)任意選択で、容器を閉止するステップと;
(iii)高出力ミキシングミル、高速ミキサー、またはボルテクサーを含む低出力ミキサーを使用して、好ましくは、ボルテクサーを使用することにより、容器内の組織材料を破壊するステップと;
(iv)ステップ(iii)の混合物を、高温でインキュベートするステップと;
(v)任意選択で、ステップ(iii)および(iv)を反復するステップと;
(vi)任意選択で、結果として得られる混合物を、後続の精製、分離、抽出および/または分析工程ステップのために提供するステップと
を含む、実施形態11から14のいずれか1つに記載の方法。
【0100】
以下の実施例は、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明を例示する。
【実施例】
【0101】
ラットの組織試料からのDNAの抽出
【0102】
組織材料:
RNALater(Qiagenから市販されている)で安定化させた、ラット
肝臓:25mg、筋肉:25mg、肺:10mg、腎臓:20mg、心臓:10mg
【0103】
装置:
組織試料を受け入れるための容器
チューブ:2mlスクリューキャップ式チューブ(PP;Sarstedt:スカート付き基部)
【0104】
破壊粒子
ビーズ:5/32インチのボールコーン(ABBOTTBall)、
5mmの球形ステンレス鋼製ビーズ、
ファセットジルコニウムビーズ
【0105】
ミリング/グラインディングをもたらすためのデバイス
A)多様なアダプター:フォームインサート、水平方向および垂直方向のMicrotube Holderを伴うVortex Genie 2(Scientific Industries SI−V524)(VortexD)
B)TissueLyser II(Qiagenから市販されている)
C)TissueLyser LT(Qiagenから市販されている)
【0106】
溶解:
20μlのプロテイナーゼK
4μlのRNアーゼA
200μlのAVE緩衝液、および
40μlのVXL緩衝液(Qiagenから市販されている)
【0107】
結合および洗浄:
265μlのMVL緩衝液、
500μlのAW1緩衝液、
500μlのAW2緩衝液、
50〜100μlのATE緩衝液(Qiagenから市販されている)
【0108】
化学的作用剤についての注記
・プロテイナーゼKは、この濃度のカオトロピック塩中で極めて活性であるが、1Mから0.5Mまでの任意の濃度のグアニジンを使用しうる可能性が高い。
・界面活性剤(デタージェント)としては、Tween20およびTritonX−100が存在するが、他の界面活性剤もまた有効であろう。界面活性剤は、全ての組織に必要なわけではないが、いかなる組織のための工程にも有害ではなく、特に、肝臓または脳などの脂肪組織を使用する場合の結果を改善する。
・化学反応は、カラムベースの手順に制約されず、シリカ磁気ビーズベースの手順も同等に有効である。
【0109】
プロトコール:
1.組織試料を切り出すか、または保存場所から取り出す
【0110】
2.組織試料を秤量し、適切なサイズの薄片(5〜25mg)へと切り、次いで、小片を、2mlスクリューキャップ式チューブ(Sarstedt 72.608+ blue cap 65.716.001)へと入れ、上述した破壊粒子のうちの1または複数、例えば、5/32インチのボールコーン(ABBOTTBall)1つ、または5mmの球形ビーズもしくはファセットジルコニウムビーズのうちのいくつかを添加する
【0111】
3.上記で列挙した溶解試薬および酵素(200μlのAVE/40μlのVXL/1μlのDX試薬/20μlのプロテイナーゼK/4μlのRNアーゼA(100mg/ml))を添加し、蓋を閉める。
【0112】
複数の試料を処理するために、マスターの消化緩衝液ミックスを調製することができる。
【0113】
4.ホモジナイゼーションに伴う処理:
A)適切な2mlチューブアダプターを備えたVortex Genie2:最高速度(3200rpm)で5分間
B)2×24の2mlマイクロ遠心アダプターを備えたTissueLyser II:24Hzで30秒間
C)TissueLyser LT:30〜45Hzで1〜2分間
【0114】
5.Thermoshaker内、56℃および1200rpmで、10分間にわたりインキュベートする
【0115】
注:目視可能な残留組織にかかわらず、破壊後に、インキュベーションを進めた。
インキュベーションの後で、残留組織がなお残っていたら、組織のホモジナイゼーションを再度実行した。
A)Vertical Microtube Holderを伴うVortex Genie2:最高速度(3200rpm)で3分間
B)TissueLyser II:20Hzで15秒間
C)TissueLyser LT:30〜40Hzで45秒間
【0116】
次いで、試料を、Thermoshaker内、56℃および1200rpmで、さらに10分間にわたり、再びインキュベートした。
【0117】
6.チューブを開栓し、265μlのMVL緩衝液(Qiagenから市販されている)を添加し、ピペッティングまたはボルテクシングにより混合する
【0118】
7.ステップ6からの混合物を、QIAamp Mini Spin Column(Qiagenから市販されている)へと適用し、キャップを閉めた後、最高速度(20000×gを超えない)で、1分間にわたり遠心分離し、Spin Columnを、未使用の2ml回収チューブに入れ、濾液を含有する回収チューブを廃棄する
【0119】
8.Spin Columnを開栓し、500μlのAW1緩衝液(Qiagenから市販されている)を添加し、キャップを閉めた後、最高速度(20000×gを超えない)で、30秒間にわたり遠心分離し、Spin Columnを、未使用の2ml回収チューブに入れ、濾液を含有する回収チューブを廃棄する
【0120】
9.Spin Columnを開栓し、500μlのAW2緩衝液(Qiagenから市販されている)を添加し、キャップを閉めた後、最高速度(20000×gを超えない)で、30秒間にわたり遠心分離し、Spin Columnを、未使用の2ml回収チューブに入れ、濾液を含有する回収チューブを廃棄する
【0121】
10.最高速度で2分間にわたる遠心分離(潜在的AW2キャリーオーバーの可能性をなくす)を行い、Spin Columnを、清浄な1.5mlマイクロ遠心チューブに入れる
【0122】
11.Spin Columnを開栓し、100μlのATE緩衝液(Qiagenから市販されている)を添加し、室温で1分間にわたるインキュベーションの後、最高速度(20000×gを超えない)で、1分間にわたる遠心分離を行う
【0123】
12.ステップ11を反復する。
【0124】
A.古典的なプロテイナーゼK消化と比較した、複数の試料型にわたる収量の決定
【0125】
収量の決定
UV−VIS分光光度計(Nanodrop)/DNA特異的蛍光アッセイ(Qubit 2.0);
0.6%のTAEゲル:
20ボルトで18時間
鋳型:同じ容量の溶出物
反応1回当たり12000コピーの内部対照DNA(ICDNA)および溶出物6μl当たり1μlの添加を伴う、QF Pathogen+内部対照DNAアッセイ(QFPathgenmitlCDNA−Assay)
試験結果:
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【0126】
組織型からの核酸の収量は、標準的なプロテイナーゼK消化に対して最大で20倍改善された。全消化時間もまた、プロテイナーゼK消化単独と比較して5分の1に縮減された(いずれの場合も、消化は、試料が、目視により均質と考えられるまで実行した)。
【0127】
平均プロテイナーゼK消化時間(機械的ミリングを伴わない)が、150分間であるのに対し、新たな方法は一般に、30分間未満で、ホモジナイゼーションを達成した。
【0128】
実験はまた、一般の実験室用ボルテクサー(低出力デバイス)上と、高価な高出力ビーズミル内とで、同等の収量を達成しうることも示す。
【0129】
さらにまた、DNAの品質(DNAのサイズ)が、ボルテクサーの使用により改善されることも示された。
【0130】
B.古典的なプロテイナーゼK消化と比較した、実験のための時間および労力
上記で与えた試験条件を適用して、本発明の方法の有効性を、古典的なプロテイナーゼK消化と比較した時間および労力の点で査定した。
【0131】
試験結果
【表5-1】
【表5-2】
【表6-1】
【表6-2】
【0132】
表6についてのさらなる情報:内部対照DNA:ct値=27.37;ct値=27.85(n=4の平均値)
【0133】
新たな方法は、10分間にわたる破壊+10分間にわたるプロテイナーゼK消化で、酵素消化単独より、一晩にわたり(o/n)(8時間を超えて)達成されるより大きな収量を達成しうる。
【0134】
実験はまた、マウス尾など、極めて困難な組織材料に対する、新たな方法の有効性も示す。
【0135】
C.異なる破壊粒子による性能の査定
上記で与えた試験条件を適用して、本発明の方法の有効性を、異なる破壊粒子を考慮して査定した。
【0136】
試験結果
【表7】
【0137】
新たな化学反応は、破壊粒子の特定の形態に制約されない。
【0138】
本発明の組成物によるDNAの品質は、5mmの球形ビーズを使用する場合も、5/32インチのボールコーンを使用する場合も、同等に高かったことが示された。
【0139】
5mmの球形ビーズを使用する場合、破壊は、減殺される傾向にあり、5/32インチのボールコーンによる破壊と比較して、より多くの組織残留物またはより大型の組織残留物が残存した。
【0140】
溶解時間は、本質的に同じであったが、ボルテクサーによる破壊が達成する収量は、使用される組織材料によっては、わずかに低量であった。
【0141】
D.異なる組織型についての査定
上記で与えた試験条件を適用して、本発明の方法の有効性を、異なる組織材料を考慮して査定した。
【0142】
試験結果
【表8】
【表9】
【0143】
本明細書で記載される改善は、軟質の組織材料に対して達成することができ、かつ、マウス尾など、硬質の組織材料に対してもなお達成しうるなど、異なる種類の組織試料に対して達成することができる。
【0144】
E.相乗作用的効果についての査定
上記で与えた試験条件を適用して、機械的溶解と、化学的(酵素的)溶解との組合せの有効性であって、個別の処理と比較した有効性について査定した。
【0145】
試験結果:
【表10】
【0146】
収量は、DNA特異的蛍光アッセイ(Qubit 2.0)により測定される通り、マイクログラム単位である。相乗作用的効果(個別の方法の両方の合計に対するx倍の改善)を見ることができる:
肝臓:10mg 筋肉:10mg
3.87 2.12
【0147】
F.市販の試験キットと対比した改善についての査定
本発明の組成物の有効性を、いくつかの市販の試験キットと比較して査定した。
【0148】
試験結果:
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
【0149】
本発明の組成物は、DNA分解を最小とする〜DNA分解を伴わずに、市販のキットと比較して、時間および労力の改善を伴う、収量の改善(DNA品質の改善)を達成する。