(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6768704
(24)【登録日】2020年9月25日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】人工関節の緩衝変化の制御方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/70 20060101AFI20201005BHJP
A61F 2/64 20060101ALI20201005BHJP
【FI】
A61F2/70
A61F2/64
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-555550(P2017-555550)
(86)(22)【出願日】2016年4月15日
(65)【公表番号】特表2018-516636(P2018-516636A)
(43)【公表日】2018年6月28日
(86)【国際出願番号】EP2016058356
(87)【国際公開番号】WO2016169850
(87)【国際公開日】20161027
【審査請求日】2019年3月6日
(31)【優先権主張番号】102015106384.0
(32)【優先日】2015年4月24日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506153712
【氏名又は名称】オットー・ボック・ヘルスケア・プロダクツ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(72)【発明者】
【氏名】サイフェルト、ディルク
【審査官】
細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2015/0018972(US,A1)
【文献】
特表2013−510605(JP,A)
【文献】
特表2002−533161(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/70
A61F 2/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下肢の矯正器具、外骨格又は義肢の人工膝関節において抵抗変化を制御する方法であって、前記人工膝関節は旋回軸線(4)を中心として旋回可能に相互に締結された上部(1)と下部(2)とを有し、前記人工膝関節の屈曲又は伸展に対する抵抗を提供するために、前記上部(1)と前記下部(2)との間に抵抗部(6)が締結され、前記抵抗部(6)には調整器(7)が設けられ、前記調整器(7)に設けられた制御装置(8)のセンサー信号が前記調整器(7)を稼働する場合に、前記調整器(7)により抵抗が変化させられる方法において、前記抵抗が、測定若しくは算出された脚弦(LC)の姿勢(ΦB)及び/又は長さ(LB)、並びに/又はそれらの時間導関数に応じて変化させられ、
前記脚弦(LC)として股回転中心(HR)と足点(FP)との接続線が使用されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記脚弦(LC)の前記姿勢(ΦB)が、下腿角度(ΦS)と膝角度(ΦK)の一部との合計として推定され、又は前記下腿角度(ΦS)、前記膝角度(ΦK)、大腿セグメント長(LT)、及び下腿セグメント長(LS)から算出されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
下腿角度(ΦS)又は大腿角度(ΦT)が、慣性角度センサー(9)により直接測定され、又は大腿(1、10)若しくは下腿(2、5)に取り付けられた位置センサー(9)、及び膝角度センサー(9)により検出されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記脚弦(LC)の前記長さ(LB)が、膝角度(ΦK)、大腿セグメント長(LT)、及び下腿セグメント長(LS)から決定されることを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記抵抗が、前記脚弦(LC)の前記姿勢(ΦB)及び/又は前記長さ(LB)の変化の方向に応じて変化させられることを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記脚弦の姿勢(ΦB)の変化と大腿角度(ΦT)又は下腿角度(ΦS)の変化との商(k)が算出され、歩行状況の評価のために使用されることを特徴とする、請求項1〜5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
脚弦速度の変化と大腿速度(ΦT)又は下腿速度(ΦS)の変化との商(k)が算出され、歩行状況の評価のために使用されることを特徴とする、請求項1〜6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
立脚期又は立脚状態を検出するために、前記下部(2)における力を検出する力センサー(9)が使用されることを特徴とする、請求項1〜7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記抵抗が、更に、前記上部(1)及び/又は前記下部(2)の姿勢又は姿勢の変化に応じて変化させられることを特徴とする、請求項1〜8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記抵抗が、特に前記脚弦(LC)の前記姿勢及び/又は前記姿勢の変化が設定境界値を越えた、又は下回ったときに変化させられることを特徴とする、請求項1〜9の何れか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、下肢の矯正器具、外骨格又は義肢の人工膝関節において抵抗変化を制御する方法に関するものであって、該人工膝関節は旋回軸線を中心として旋回可能に相互に締結された上部と下部とを有し、該人工膝関節の屈曲又は伸展に対する抵抗を提供するために、該上部と該下部との間に抵抗部が締結され、該抵抗部には調整器が設けられ、該調整器に設けられた制御装置のセンサー信号が該調整器を稼働する場合に、該調整器は抵抗を調整する。本願発明による方法は、特に人工膝関節の運動動作又は緩衝動作を制御するために採用されるが、それに限定されず、股関節又は足首関節にも適用できる。
【背景技術】
【0002】
矯正器具、外骨格又は義肢のための人工関節は、関節によって相互に接続されている、上方の接続部を含む上部と下方の接続部を含む下部とを有する。人工膝関節では、通常、上方の接続部には大腿断端又は大腿副木の取り付け手段が設けられ、下方の接続部には義足又は足部を有する下腿管又は下腿副木が設けられている。残存する下腿では、義肢の上部が下腿シャフトに取り付けられ、下部には義足が締結され、矯正器具では、各要素が対応する体肢に締結されている。最も簡単な場合には、上部と下部が単軸関節により旋回可能に相互に接続されている。
【0003】
夫々の一歩行の段階又はその他の動きや行動における様々な必要条件をできるだけ自然に模倣又は支持するために、屈曲抵抗と伸展抵抗を提供する抵抗装置が設けられていることが多い。力が発揮された場合、下部は上部に対して後方へどの程度旋回させ易くするかが屈曲抵抗により設定される。膝関節においては伸展抵抗により下部の前進運動速度は落とされ、伸展停止部位等が形成される。屈曲抵抗は好ましくない屈曲を防ぎ、遊脚期中の最大屈曲を制限する。
【0004】
DE 10 2008 008 284 A1から、上部とそれに旋回可能に設けられた下部とを含み、屈曲角センサー、加速センサー、傾斜センサー及び/又は力センサー等の複数のセンサーが設けられた、整形外科技術の膝関節が周知である。センサー情報によって伸展停止部位の位置を検出する。
【0005】
DE 10 2006 021 802 A1には、上方の結合手段と義足への接続要素とを含む義肢装置を適応させるために、屈曲方向に調整可能な緩衝手段を含む受動的義肢膝関節を制御する工程が記載されている。該適応は、階段を上るときに行われる。その際、義足が低運動量で持ち上げられたと検出され、持ち上げ期において屈曲緩衝値は平面歩行に適度な水準より低く設定される。屈曲緩衝値は、変化の膝角度と下腿に作用する軸力とに応じて高く設定され得る。
【0006】
DE 10 2009 052 887 A1には、抵抗装置とセンサーとを含む、矯正用の又は人工装具の関節を制御する方法等が記載され、関節の使用時に状態情報がセンサーにより提供される。該センサーは、運動量又は力を検出し、検出値のうち少なくとも二つの検出値に関するセンサー情報は数学的演算により結合され、補助変数が算出され、屈曲抵抗及び/又は伸展抵抗の制御は、その補助変数に基づく。
【0007】
緩衝動作の変化を制御するために、従来技術では、センサー情報を定量的評価し、つまり、通常、特定の境界値が到達又は到達されない場合、アクチュエータが稼働又は停止させられ、抵抗装置は増加又は減少させられた屈曲抵抗又は伸展抵抗を提供する。
【0008】
患者は、義肢、外骨格又は矯正器具を様々な環境で使用し得るとともに、階段又は斜面を下がることや様々な速度で平面を歩行し得る。また、患者は荷を運び得、それは義肢又は矯正器具の動作に影響を与える。特に遊脚期後(つまり治療されている脚が接地した後に体重が治療されている脚に移るとき)に、多くの患者はより高い安全性を要求する。しかし、初期の屈曲緩衝(つまり人工膝関節の屈曲に対抗する緩衝)が高過ぎると、股関節中に突発的な荷重が生じ、装着感の悪化と共に義肢又は矯正器具に対する受容性が悪化してしまう。
【0009】
新型コンピューター制御の緩衝装置では、屈曲又は伸展に対する抵抗を精密かつ迅速に適応させることができるが、算出情報又は検出情報の精密さ、処理すべき情報の複雑さ、各実行される運動の検出の信頼性、及び製造の手間という阻害要因がある。
【発明の概要】
【0010】
本願発明の課題は、様々な歩行状況に、確実、迅速かつ費用効率よく適応可能な、心地よく歩行動作を実現させながら最大の安全性を確保する人工下肢関節(特に人工膝関節)の制御方法を提供することである。
【0011】
本願発明の課題は、独立請求項に記載の事項を含む方法により解決される。本願発明の効果的な実施例及び変形例は従属請求項、明細書及び図面に記載される。
【0012】
下肢の矯正器具、外骨格又は義肢の人工膝関節において抵抗変化を制御する方法であり、該人工膝関節が旋回軸線を中心として旋回可能に相互に締結された上部と下部とを有し、人工膝関節の屈曲又は伸展に対する抵抗を提供するために該上部と該下部の間に抵抗部が締結され、該抵抗部には調整器が設けられ、該調整器に設けられた制御装置のセンサー信号が該調整器を稼働する場合に該調整器が抵抗を調整する、本願発明による方法では、抵抗が脚の弦(脚弦)の姿勢及び/又は脚弦長及び/又はそれらの時間導関数に応じて変化させられる。従って、現在実行されている運動を脚弦の姿勢又は脚弦長或いはそれらの組み合わせに基づいて把握するために、脚弦を制御パラメータ又は補助変数として使用する。このようにして、夫々の歩行状況、又は着席、起立、自転車運転、後方歩行等の他の運動のために必要な抵抗変化を適宜に開始させることができる。脚弦の姿勢は、屈曲(例えば立脚期屈曲)又は立脚期伸展に関わらず、脚の向きに関する情報を確実に提供する。また、脚弦の姿勢と姿勢変化無しの脚弦の短縮からは停留中の下降運動という結論が示唆され、脚弦の前方回転は斜面下りを示し、後方回転は例えば着席運動を示す。これらの情報の評価に基づいて、抵抗器の抵抗を各歩行状況に適応させるために、制御装置は調整器を稼働させる。そのために、屈曲抵抗及び伸展抵抗を適切に増加又は減少させる。また、脚弦長から運動の進行を理解できる。脚弦が例えば後方回転しつつ短縮した場合、着席運動の進行を検出又は少なくとも推定できる。従って、これらの情報に基づいて抵抗を調整する。また、脚弦の姿勢又は脚弦長に関する時間導関数も関連する。各運動の速度又は加速を検出して例えば歩行速度が示され、変化させられた抵抗値を各運動期において提供する。本願発明による方法は、人工膝関節における抵抗部の制御のみならず、緩衝される足首関節でも対応する抵抗器を脚弦長及び/又は脚弦の姿勢或いはそれらの時間導関数に応じて変化させることができる。股関節における抵抗部でも同様である。本願発明による方法は、矯正器具、義肢又は矯正器具の特殊型(つまり外骨格)に適用され得る。
【0013】
脚弦としては、股回転中心と足点との接続線が好ましく使用される。股回転中心は、例えば義肢膝関節の場合、整形外科技術者により検出される。また、股回転中心は、旋回軸又は膝軸線と股回転中心の距離と定義される大腿のセグメント長を定める。下腿長は膝軸線と足点の間に定義されている。足点としては、足中心、つまりロールオーバー運動の瞬間回転中心、又は足部或いは義足の足裏位置若しくは地面上の下腿の垂直線終点が定義され得る。矯正器具又は外骨格では、大腿部と下腿部の間の抵抗部を制御する場合、残存する天然の足を接地するための足部は必ずしも必要がない。
【0014】
脚弦の姿勢又は脚弦角度は、検出された下腿角度と因数が割り当てられた膝角度の合計から推定され得る。その因数は0.4〜0.6である。有利には、垂直線に対する脚弦の姿勢は、垂直線に対する下腿角度と膝角度の半角のおよそ合計から推定される。その代わりに、脚弦の姿勢は下腿角度、膝角度、及び下腿セグメント長と大腿セグメント長により算出されても良い。各セグメント長は既知であり制御装置に記憶されている。下腿角度は、位置センサーにより検出され得る。膝軸線を中心とした相対旋回運動を示す膝角度は、大腿の縦延長線と下腿の縦延長線との角度として定義される。その測定は、角度センサーにより実行し得る。
【0015】
下腿角度及び/又は大腿角度は、慣性角度センサーにより直接に測定し得る。その代わりに、位置センサーが他の各セグメントに設けられても良い。ここにおいて、膝角度センサーにより膝角度が検出され、大腿の慣性角度と膝角度の組み合わせにより下腿角度が検出され、又は下腿における位置センサーと膝角度センサーの組み合わせにより大腿角度が検出される。
【0016】
脚弦長は、膝角度と、大腿や下腿のセグメント長により決定され得る。緩衝装置の抵抗が運動速度に応じて変化させられるように、脚弦長又はそれらの経時的な変化からその運動速度に関して結論を引き出す。
【0017】
抵抗部の抵抗は、脚弦の姿勢及び/又は脚弦長の変化の方向に応じて変化させられ得る。例えば、脚弦角度が垂直線に向けて減少し、又は脚弦角度が垂直線から離れて増加することで、特に脚弦長が減縮する場合は、前方回転を斜面下り時の降下する一歩行として検出し得る。脚弦が短縮又は伸展することで、起立運動又は着席運動、降下又は上昇、或いは階段下がり又は階段上がりが実行されるか示される。
【0018】
前方歩行、つまり前方向に進行が行われるあらゆる歩行状況では、脚が前方にロールオーバーする。このようにして、脚の向き、つまり脚弦向きやその変化は、一歩行のための進行パラメータと見做され得る。ヒール・ストライク後に、脚は大抵後方傾斜を有し、すなわち脚弦が垂直線に対して反歩行方向かつ後方に傾斜する。その後、脚は前方にロールオーバーし、脚弦角度は垂直線に向けて減少し、垂直線から拡張し、最後には立脚期の最後に最大の前方傾斜が達成されている。歩行状況をより詳しく区別すれば、歩行状況を評価するために、脚弦の姿勢の変化と大腿角度又は下腿角度の変化との商が算出されることが望ましい。大腿角度又は下腿角度或いはそれらの時間導関数は一歩行時の脚の運動と相関する。平面上の前方歩行では、大腿及び下腿も前方向にロールオーバーする。それは、立脚期屈曲の有無にかかわらず発生する。斜面上の下りでは、大腿角度はほぼ一定になり、階段下りでは、大腿は後方に向かい、つまり角度は垂直線に対して拡張する。その後、検出された歩行状況に応じて抵抗が調整され、例えば階段を下る交互動作の際に屈曲を可能にするために屈曲緩衝は設定角度範囲に関して増加させられ又は減少させられる。
【0019】
歩行状況を識別するためのパラメータとして、特に脚弦の姿勢の変化と大腿角度又は下腿角度の変化との商が算出され使用され得る。特に、抵抗は各期間を示す図の曲線の勾配に応じて変化させられ得る。大腿角度又は下腿角度を脚弦の姿勢又は脚弦角度上に表示すれば、歩行状況は期間図の勾配により区別し得る。勾配は、角度Φ
iと角度Φ
jとの機能的相関による差分商ΔΦ
i、/ΔΦ
j又は微分商dΦ
i/dΦ
jとして又はそれから決定され得、ここで、例えば瞬時的な接線、さもなくばより長期についての割線が採用され得る。抵抗部の動作は勾配に応じて対応する状況に適応され得る。
【0020】
抵抗部又は抵抗の変化は、角度の期間図中の勾配に基づく他に、それらの時間導関数の商、つまり脚弦速度の変化と大腿速度又は下腿速度の変化との商に基づく。
【0021】
また、立脚期又は立脚を検出するために、下部に作用する軸力又は下部に作用するモーメントを検出する力センサーを使用することによって、様々な歩行状況は更に具体的に区別され得る。下部が無荷重又は実質的に無荷重の場合、下肢が現在遊脚期、持ち上げ期、又は接地期にあると考えられ、立脚時又は歩行中の立脚期とは異なる抵抗調整が必要になる。それに対応するセンサーで追加の情報を提供し得る。
【0022】
有利には、抵抗は更に上部及び/又は下部の姿勢又は姿勢変化に応じて変化させられる。上部及び下部は望ましくは大腿及び下腿として機能する。望ましくは、特に脚弦の姿勢及び/又は姿勢の変化が設定境界値を越える又は下回る場合、抵抗が変化させられる。
【0023】
当然、姿勢は、前述の全てのパラメータ又はそれらの何れかのみに応じて変化させられ得る。
【0024】
抵抗部は、例えばアクチュエータであり得、例えば油圧式、空気圧式、磁気流動式、磁気式、電気式、機械式又は電磁気式抵抗部として構成され得る。油圧式又は空気圧式抵抗部では、越流管が閉鎖され、媒体は越流管を通過して伸展室から屈曲室へ流れなくなる。このようにして、伸展室と屈曲室との間の媒体流量は場合によって完全に抑制され得る。機械式抵抗装置では、例えば摩擦は他の屈曲が発生しない程度に増加させられる。電動式抵抗部も同様である。
【0025】
システムにエネルギーを積極的に加えることと、そして逆にシステムからエネルギーを吸収し抵抗部として機能することと、その両方ができるアクチュエータも採用され得る。アクチュエータは、例えば電気モーター、油圧式又は空気圧式ポンプ、或いは圧電式素子として構成され得る。
【0026】
以下、図面を参照して本願発明による実施例を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図2】
図2は角度を有する義肢膝を示す略図である。
【
図4】
図4a〜4cは歩行時の様々な状況を示す図である。
【
図5】
図5は脚の向きに対する大腿角度の様々な例を示す図である。
【0028】
図1には、大腿断端を取り付けるための大腿シャフト10が締結されている上部1を含む義足が示されている。上部1には、下腿部の形状を有する下部2が旋回可能に設けられている。下部2は、上部1の旋回軸線4を中心として旋回可能に設けられている。下部2は、下腿管5を有し、その遠位端には、義足3が締結されている。義足3には、下腿管5に作用する軸力F
Aと、義足3の締結部位を中心として下腿管5に作用する足首運動量M
Aとを検出する装置が収納され得る。
【0029】
下部2の内側又は外面側には、緩衝装置又はアクチュエータ等として構成され得る抵抗装置6が取り付けられている。抵抗装置6は、調整可能な伸展抵抗及び屈曲抵抗を提供するために、上部1と下部2の間に支持されている。抵抗装置6には、モーター、磁石又はその他の抵抗装置6内の各抵抗Rを変化可能なアクチュエータ等の調整器7が設けられている。抵抗装置6が油圧緩衝装置又は空気緩衝装置として構成される場合、調整器7により、越流管路の流量横断面を拡張若しくは減少し、又は流量抵抗を他の方法により変化し得る。また、それは弁の開閉、或いは粘度又は磁気流動的特性を変化させることによって実現され得る。抵抗装置が発電機として作用する電気モーターとして構成される場合、電気抵抗を変化させることによって屈曲又は伸展に対する抵抗の増加又は減少を調整することができる。また、抵抗装置は、屈曲又は伸展に対する機械抵抗、摩擦ブレーキ又は可変の変形抵抗を有するエラストマー要素、或いは単に磁気流動式緩衝装置としても構成され得る。
【0030】
調整器7を稼働又は停止させるために、下部2には、特に下腿ケーシングに収納された制御装置8が設けられている。制御装置8により、対応する稼働信号又は停止信号が調整器7に送信される。調整器7は、センサー情報に基づいて稼働させられ又は停止される。センサー情報は、人工膝関節に設けられた一つ又は複数のセンサー9により提供される。センサー9は、角度センサー、加速センサー及び/又は力センサーであっても良い。センサー9は、ケーブル又は無線送信装置等を介して制御装置8と接続されている。図示の実施例においてセンサー9は特に膝角度センサー又は慣性角度センサーとして構成されている。センサーは、大腿シャフト10、上部1、下部2、下腿管5、又は足部3に設けられ得る。矯正器具の場合、センサーは各対応する副木、関節部又は足部に締結されている。センサー9は体肢自体に締結され得る。
【0031】
センサー9により、踵接地(ヒール・ストライク)から爪先の地面との分離を経て後続のヒール・ストライク(HS)までの一歩行の全周期、つまり遊脚期伸展と遊脚期屈曲とを含む全遊脚期、が監視される。
【0032】
図2の側面図には、大腿シャフト10と、上部1と、膝軸線4を中心として旋回可能に設けられ抵抗部6が内蔵された下部2と、遠位の下腿管5と、それに締結された義足と、を含む義肢膝関節が屈曲した姿勢で示されている。脚弦L
Cは足点F
Pから股回転中心H
Rまで伸びる。脚弦L
Cは股回転中心H
Rと足点F
Pとの接続線であり、実行された運動について脚弦L
Cの向きから結論を出すことができ、特に様々な動き又は歩行状況を区別することができる。足点F
Pは足中心に位置し得る。足点F
Pの他の定義として、回転運動の瞬間回転中心、足首関節の旋回軸線、又は下部2の縦延長線が至る足裏位置がある。脚弦L
Cの姿勢の特性値として脚弦角度Φ
Bが図示され、脚弦L
Cと垂直線Vとの間の角度として定義されている。義肢装置の図示の位置では、上部1は下部2に対してある角度で下部2に対して屈曲している。つまり、脚弦L
Cは後方に傾斜している。従って、垂直線Vに対しては大腿角度Φ
Tもある。下部2が垂直に保持され、上部1が例えば図示の実施例において旋回軸線4を中心として反時計方向に旋回されると、大腿角度Φ
Tは垂直線Vに対して拡張する。大腿角度Φ
Tの基準値は股回転中心H
Rと膝軸線4との接続線である。同時に、それら二点の該接続線に沿った距離は大腿長L
Tを定義する。
【0033】
図2による値に加えて、
図3には膝角度Φ
Kが描画されている。膝角度Φ
Kは、大腿セグメント(膝軸線4と股回転中心H
Rとの接続線で表される)と下部2の縦延長線との間の角度である。義肢装置が最大伸展した姿勢では、膝角度Φ
Kは0である。言い換えれば、下部2の縦延長線は上部1の縦延長線と一直線になり、つまり、足点F
Pが下腿管5の縦延長線の軸上にある場合、膝軸線4と股回転中心H
Rとの接続線が膝軸線4と足点F
Pとの接続線と一直線になる。
【0034】
下腿長L
Sは膝軸線4と足点F
Pの距離と定義される。下腿角度Φ
Sは垂直線Vと足点F
Pと膝軸線4との接続線との間の角度である。図面において、角度Φ
Kで屈曲した義肢膝関節を含む実施例では、下腿角度Φ
Sは前方歩行方向に正に傾斜し、大腿角度Φ
Tは垂直線に対し後方へ向き、脚弦L
Cは角度Φ
Bで後方に傾斜している。脚弦L
Cの長さL
Bは、股回転中心H
Rと足点F
Pとの距離によって定義されている。
【0035】
脚弦L
Cの長さL
Bは既知のセグメント長L
T及びL
Sと、膝角度とから算出し得る。その向き又は脚弦角度Φ
Bは、下部2又は上部1、或いは大腿シャフト10又は下腿管5に設けられ得る慣性角センサー9の他に、下腿角度Φ
Sと重み付けされた膝角度Φ
Kとの組み合わせから概算し得る。その式は、以下のようである。
【0036】
Φ
B=Φ
S+d×Φ
K、
式中、dは0.4〜0.6、特に0.5
長さL
B、脚弦L
Cの向きΦ
B、及び、場合によって、それらの値の時間導関数を知ることを通して、立脚期ロール・オフ運動を立脚期屈曲又は立脚期伸展から独立して追跡し知識を得ることができる。脚弦向き又は脚弦角度Φ
Bの変化により、運動の進行は立脚期でも遊脚期でも追跡でき、それらの値は立脚期動作及び/又は遊脚期動作を緩衝装置設定の調整により制御するために考慮され得る。
【0037】
セグメント角度とも呼ばれ得る大腿角度Φ
T及び下腿角度Φ
Sは、各セグメントに位置する複数の慣性センサーにより測定し得る。それらの値は、代わりに、無関係な各セグメント上の一つのみの慣性センサーと膝角度センサーによって検出される膝角度Φ
Kとにより算出される。
【0038】
図4aには、平面歩行用の脚位置の二つの場面が示されている。左側の描写には、ヒール・ストライクの直後の義肢装置が示されている。図示されていない脚弦角度Φ
Bは大腿角度Φ
Sとほぼ同等であるため、脚弦L
Cの長さL
Bはほぼ最大である。その後の一歩行推移では、前方進行が実行され、義肢装置は全体として前方に回転し、脚弦L
Cは足首関節にも位置し得る足点F
Pを中心として前方に旋回させられ、それゆえに脚弦L
Cは垂直線の前に位置する。
図4aのように、平面歩行における前方進行の広範に渡って、大腿又は大腿シャフト10は脚弦L
Cとともにほぼ伸展した膝関節で前方に移る。膝角度は変化しない。
【0039】
図4bには、下方に傾斜した斜面歩行が示されている。左側の描写には義肢膝関節の増加した屈曲が示され、大腿シャフト10は膝軸線4を中心として旋回され、脚弦L
Cの向きは平面歩行における接地期の向きとほぼ同等である。
【0040】
斜面下りにおいて、その後続の運動推移は、
図4bの右側の描写に示されている。また、ロール・オフ運動は足点F
Pを中心として実行され、脚弦L
Cは足点F
Pを中心として前方に回転し、大腿角度Φ
Sは膝軸線4の周りに屈曲が増加するためほぼ一定の位置で留まり、つまり、大腿又は大腿シャフト10の向きは空間で変化しない又は少しばかり変化し、脚弦L
Cは前方に回転する。
【0041】
図4cには第三歩行状況(つまり階段下り)が示されている。義肢装置の各要素の位置は、左側の描写に示される初期位置において斜面下りに対応する。脚弦L
Cは、後方に傾斜し、つまり垂直線に対して反時計方向かつ後方に傾斜している。階段を下る交互動作の後続の推移では、義肢装置は屈曲させられ、上部1は下部2に対して旋回運動し、膝角度Φ
Kは増加し、脚弦L
Cの長さL
Pは減少する。脚弦L
Cの向きは平面歩行又は斜面下りほど変化せず、つまりそれほど前方に回転しない。従って、垂直線に対する脚弦角度Φ
Bは平面歩行時又は斜面下り時より小さい。
【0042】
図4a〜4cに示される歩行状況においては、前方進行が実行され、つまり脚が前方にロールオーバーする。各歩行状況を区別及び識別するために適したパラメータ又は補助変数は、大腿角度Φ
T又は下腿角度Φ
Sの変化と脚の向き又は脚弦角度Φ
Bの変化との商である。また、特性値としては時間導関数、つまり脚弦L
Cと大腿又は下腿との角速度変化の商が有利であり使用される。
【0043】
図5には、各角度の推移が描画され、曲線aには平面歩行における角度の推移が示され、曲線bには斜面下りにおける脚弦角度と大腿角度の推移が示され、曲線cには階段下りにおける角度の推移が示されている。
【0044】
曲線a、b、cの推移が夫々異なることは明らかであり、特に各曲線推移の勾配kが異なる。勾配kは差分商として特定され得る。その式は以下のようである。
【0045】
k=(Φ
T1-Φ
T0)/(Φ
B1-Φ
B0)
平面歩行の勾配k
1は斜面下りの勾配k
2よりかなり大きい。曲線aによる平面歩行において、大腿角度Φ
Tの変化が脚弦角度Φ
Bの変化に実質的に応じ、勾配はほぼ1であるのに対し、斜面下りの大腿角度Φ
Tがほぼ一定である。従って、斜面下りの勾配k
2はかなり小さくなる。階段下りにおいて、脚弦角度Φ
Bの減少が大腿角度Φ
Tの減少よりかなり小さい。従って、階段下りの勾配k
3は負の値になる。
【0046】
検出された商又は各勾配k
1、k
2、k
3に応じて、抵抗が調整され得る。曲線推移bによる斜面下りの検出において、平面歩行の標準設定は、対応する脚弦角度Φ
Bでの降下、つまり減少した屈曲が発生するように変化させられ得る。
図5に示される曲線cによる負の勾配k
3が検出された場合、階段下りだと仮定し得る。カタパルト効果を回避するために、ゆっくりと降下すること、又は義肢装置の完全なロックを防止することは回避すべきである。
【0047】
角度の代わりに脚弦及び大腿又は下腿の角速度又は角度加速が描画された場合、それに応じて特徴的な期間図が得られる。
【0048】
歩行状況とそれらの運動の進行における区別を検出するために、本願発明による方法では力又は力推移は測定又は評価される必要がない。基本的に、角度のみが測定、算出、又は推定され、緩衝装置設定の変化の基となる。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載の事項を、そのまま、付記しておく。
[1]下肢の矯正器具、外骨格又は義肢の人工膝関節において抵抗変化を制御する方法であって、前記人工膝関節は旋回軸線(4)を中心として旋回可能に相互に締結された上部(1)と下部(2)とを有し、前記人工膝関節の屈曲又は伸展に対する抵抗を提供するために、前記上部(1)と前記下部(2)との間に抵抗部(6)が締結され、前記抵抗部(6)には調整器(7)が設けられ、前記調整器(7)に設けられた制御装置(8)のセンサー信号が前記調整器(7)を稼働する場合に、前記調整器(7)により抵抗が変化させられる方法において、前記抵抗が、測定若しくは算出された脚弦(LC)の姿勢(ΦB)及び/又は長さ(LB)、並びに/又はそれらの時間導関数に応じて変化させられることを特徴とする、方法。
[2]前記脚弦(LC)として股回転中心(HR)と足点(FP)との接続線が使用されることを特徴とする、[1]に記載の方法。
[3]前記脚弦(LC)の前記姿勢(ΦB)が、下腿角度(ΦS)と膝角度(ΦK)の一部との合計として推定され、又は前記下腿角度(ΦS)、前記膝角度(ΦK)、大腿セグメント長(LT)、及び下腿セグメント長(LS)から算出されることを特徴とする、[1]又は[2]に記載の方法。
[4]下腿角度(ΦS)又は大腿角度(ΦT)が、慣性角度センサー(9)により直接測定され、又は大腿(1、10)若しくは下腿(2、5)に取り付けられた位置センサー(9)、及び膝角度センサー(9)により検出されることを特徴とする、[1]〜[3]の何れか一項に記載の方法。
[5]前記脚弦(LC)の前記長さ(LB)が、膝角度(ΦK)、大腿セグメント長(LT)、及び下腿セグメント長(LS)から決定されることを特徴とする、[1]〜[4]の何れか一項に記載の方法。
[6]前記抵抗が、前記前記脚弦(LC)の前記姿勢(ΦB)及び/又は前記長さ(LB)の変化の方向に応じて変化させられることを特徴とする、[1]〜[5]の何れか一項に記載の方法。
[7]前記脚弦の姿勢(ΦB)の変化と大腿角度(ΦT)又は下腿角度(ΦS)の変化との商(k)が算出され、歩行状況の評価のために使用されることを特徴とする、[1]〜[6]の何れか一項に記載の方法。
[8]脚弦速度の変化と大腿速度(ΦT)又は下腿速度(ΦS)の変化との商(k)が算出され、歩行状況の評価のために使用されることを特徴とする、[1]〜[7]の何れか一項に記載の方法。
[9]立脚期又は立脚状態を検出するために、前記下部(2)における力を検出する力センサー(9)が使用されることを特徴とする、[1]〜[8]の何れか一項に記載の方法。
[10]前記抵抗が、更に、前記上部(1)及び/又は前記下部(2)の姿勢又は姿勢の変化に応じて変化させられることを特徴とする、[1]〜[9]の何れか一項に記載の方法。
[11]前記抵抗が、特に前記脚弦(LC)の前記姿勢及び/又は前記姿勢の変化が設定境界値を越えた、又は下回ったときに変化させられることを特徴とする、[1]〜[10]の何れか一項に記載の方法。