特許第6768784号(P6768784)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6768784バスバーの電圧を測定するためのシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6768784
(24)【登録日】2020年9月25日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】バスバーの電圧を測定するためのシステム
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/16 20060101AFI20201005BHJP
   G01R 19/00 20060101ALI20201005BHJP
   G01R 19/32 20060101ALI20201005BHJP
【FI】
   G01R15/16
   G01R19/00 A
   G01R19/00 M
   G01R19/32
【請求項の数】6
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2018-502730(P2018-502730)
(86)(22)【出願日】2016年6月28日
(65)【公表番号】特表2018-520361(P2018-520361A)
(43)【公表日】2018年7月26日
(86)【国際出願番号】EP2016065070
(87)【国際公開番号】WO2017012837
(87)【国際公開日】20170126
【審査請求日】2019年6月10日
(31)【優先権主張番号】2182/DEL/2015
(32)【優先日】2015年7月20日
(33)【優先権主張国】IN
(31)【優先権主張番号】1518686.9
(32)【優先日】2015年10月21日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】514266220
【氏名又は名称】イートン インダストリーズ (ネザーランズ) ベスローテン フェノーツハップ
【氏名又は名称原語表記】Eaton Industries (Netherlands) B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アムリテンドゥ ダス
(72)【発明者】
【氏名】アーレント ラマーズ
【審査官】 田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−113542(JP,A)
【文献】 特開2002−131341(JP,A)
【文献】 特開2002−055126(JP,A)
【文献】 特開2014−232053(JP,A)
【文献】 特表2014−508951(JP,A)
【文献】 米国特許第06470283(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 15/00−17/22、
19/00−19/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バスバーのような導体と、前記導体内のAC電圧を測定するための装置と、の組み合わせ体であって、前記装置は、
記導体上に配置された絶縁層と、
記絶縁層上に配置されたコンデンサプレートであって、前記絶縁層は、第1のコンデンサを形成するために、前記コンデンサプレートを前記導体から一定の距離を置いて位置決めしている、コンデンサプレートと、
記コンデンサプレートとグラウンドとの間に電気的に配置された第2のコンデンサであって、前記第1のコンデンサと共に1つの容量分圧器を提供している、第2のコンデンサと、
記コンデンサプレートにおける電圧を測定するための手段と、
記導体内の前記電圧の周波数を測定するための手段と、
記第1のコンデンサおよび前記第2のコンデンサの容量と、測定された前記電圧と測定された前記周波数とに基づいて、前記導体内のAC電圧を計算するための手段と、
含む、組み合わせ体。
【請求項2】
前記導体内のAC電圧を計算するための前記手段は、マイクロコントローラを含み、前記マイクロコントローラは、ローパスフィルタおよび精密全波整流器を介して前記コンデンサプレートに接続されたアナログデジタル変換器入力部を有する、
請求項1記載の組み合わせ体。
【請求項3】
前記絶縁層の温度を測定するための温度センサをさらに含み、
前記導体内のAC電圧を計算するための前記手段は、測定された前記温度を考慮する、
請求項1または2記載の組み合わせ体。
【請求項4】
較正データを記憶するための記憶手段をさらに含み、
前記導体内のAC電圧を計算するための前記手段は、前記記憶手段からの前記較正データを考慮する、
請求項1から3までのいずれか1項記載の組み合わせ体。
【請求項5】
前記組み合わせ体は、高電圧ブッシングである、
請求項1から4までのいずれか1項記載の組み合わせ体。
【請求項6】
AC電圧を計算するための前記手段は、前記絶縁層において測定された前記周波数および温度を、前記AC電圧を計算するために使用する、
請求項3から5までのいずれか1項記載の組み合わせ体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バスバーのような導体と、前記導体内のAC電圧を測定するための装置と、の組み合わせ体であって、前記装置は、
・前記導体上に配置された絶縁層と、
・前記絶縁層上に配置されたコンデンサプレートであって、前記絶縁層は、第1のコンデンサを形成するために、前記コンデンサプレートを前記導体から一定の距離を置いて位置決めしている、コンデンサプレートと、
・前記コンデンサプレートとグラウンドとの間に電気的に配置された第2のコンデンサであって、前記第1のコンデンサと共に1つの容量分圧器を提供している、第2のコンデンサと、
・前記コンデンサプレートにおける電圧を測定するための手段と、
を含む、組み合わせ体に関する。
【背景技術】
【0002】
このような組み合わせ体は、例えば米国特許第5017859号明細書(US 5017859)から公知である。容量分圧器は、導体の電圧を、従来の測定機器を用いて測定するためにより適したレベルまで低減することが知られている。コンデンサを使用することにより、何ら電流が漏れることなく電圧を測定することが可能となる。
【0003】
導体の電圧を測定するために抵抗分圧器を使用することも可能ではあるが、高電圧では構成部品が著しく大きくなり、抵抗器を介して電流が漏れてしまう。
【0004】
容量分圧器を使用すると、コンデンサを介して電流が流れないので、より小さな構成部品を使用することが可能である。しかしながら、コンデンサは、測定すべき電圧の周波数に依存したインピーダンスを有する。周波数が実質的に一定である限り、導体内の電圧を正確に測定することができる。しかしながら、周波数が変化すると測定の正確性が変化してしまう。
【0005】
さらに、米国特許第5017859号明細書(US 5017859)に記載された組み合わせ体によれば、コンデンサプレートと導体との距離は、製造誤差に起因して、または絶縁層の膨張をもたらす組み合わせ体の加熱に起因して、変化する可能性がある。結果として、第1のコンデンサの容量が変化してしまい、電圧測定に対して不利な影響が及ぼされることとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、上述した欠点を軽減すること、またはそれどころか除去することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題は、本発明によれば、上位概念に記載された組み合わせ体において、
・前記導体内の前記電圧の周波数を測定するための手段と、
・前記第1のコンデンサおよび前記第2のコンデンサの容量と、測定された前記電圧と測定された前記周波数とに基づいて、前記導体内のAC電圧を計算するための手段と、
を特徴とする、組み合わせ体によって解決される。
【0008】
導体内の電圧の周波数も測定されるので、周波数の任意の変化に起因した容量分圧器の変化を考慮することが可能となる。
【0009】
導体内のAC電圧を計算するための手段は、まず始めに第1のコンデンサおよび第2のコンデンサの既知の容量と、測定された周波数とに基づいて、それぞれのコンデンサの容量性リアクタンスがどれくらいであるかを求める。容量性リアクタンスについても抵抗と同様の方程式を使用することができる。したがって、コンデンサプレートにおいて測定された電圧と、2つのコンデンサの両方の容量性リアクタンスの間の比とによって、導体内のAC電圧を正確に計算することが可能となる。
【0010】
本発明に係る組み合わせ体の1つの好ましい実施形態では、前記導体内のAC電圧を計算するための前記手段は、マイクロコントローラを含み、前記マイクロコントローラは、ローパスフィルタおよび精密整流器を介して前記コンデンサプレートに接続されたアナログデジタル変換器入力部を有する。
【0011】
マイクロコントローラによって、計算を迅速かつ正確に実施することができる。しかしながら、電圧が正の値だけで変化するようにAC電圧を整流する必要があり、その場合、AC電圧は、ローパスフィルタに供給され、次いで、アナログデジタル変換器に供給され、マイクロコントローラによってさらに処理される。
【0012】
本発明に係る組み合わせ体の別の1つの好ましい実施形態は、前記絶縁層の温度を測定するための温度センサをさらに含み、前記導体内のAC電圧を計算するための前記手段は、測定された前記温度を考慮する。
【0013】
絶縁層の温度が変化すると、絶縁層は、典型的には膨張または圧縮し、これによってコンデンサプレートと導体との距離が変化する。特に、絶縁層が典型的にはエポキシ樹脂である高電圧用途の場合には、温度が大幅に上昇する場合があり、エポキシ樹脂の膨張が相当なものになる。このことにより、温度が上昇すると第1のコンデンサの容量が減少することとなる。
【0014】
第1のコンデンサの容量の変化を考慮するために温度が測定され、方程式または較正データに基づいて、第1のコンデンサの容量の変化が、測定された温度に基づいて考慮される。
【0015】
本発明に係る組み合わせ体のさらに別の1つの実施形態は、較正データを記憶するための記憶手段をさらに含み、前記導体内のAC電圧を計算するための前記手段は、前記記憶手段からの較正データを考慮する。
【0016】
たとえ製造工程が非常に正確であったとしても、類似の組み合わせ体の間にはなお多少の小さなばらつきが存在する。導体内のAC電圧の計算の正確性をさらに向上させるために、製造直後の既知の電圧を用いて組み合わせ体を試験することができる。そこで得られたデータを記憶手段に記憶することができ、これによって、導体内のAC電圧の計算中にこの較正データを考慮することが可能となる。
【0017】
本発明に係る組み合わせ体の1つの好ましい実施形態では、前記組み合わせ体は、高電圧ブッシングである。
【0018】
本発明の上述した特徴およびその他の特徴を、添付の図面に関連して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る組み合わせ体の1つの実施形態の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1には、エポキシ樹脂3に埋め込まれた導体2を有するブッシング1が図示されている。導体2の周りに同心円状にコンデンサプレート4が設けられており、これらの間では、エポキシ樹脂3が絶縁層として機能している。さらに、エポキシ樹脂3の温度を測定するために、エポキシ樹脂3内のコンデンサプレート4の近傍に温度センサ5が埋め込まれている。
【0021】
導体2とコンデンサプレート4とは、第1のコンデンサを形成している。第1のコンデンサは、第2のコンデンサ6に接続されており、第2のコンデンサ6自体は、グラウンド7に接続されている。第1のコンデンサ2,4と第2のコンデンサ6とが、1つの容量分圧器を提供している。
【0022】
コンデンサプレート4の電圧は、バッファおよびローパスフィルタ8の背後にある電子機器を保護するため、さらには任意の高周波ノイズをフィルタリングするために、まず始めにバッファおよびローパスフィルタ8に供給される。
【0023】
測定された電圧をデジタル値に変換するために、コンデンサプレート4の電圧は、その後、精密全波整流器9およびローパスフィルタ10を介してマイクロコントローラ12のアナログデジタル変換器11に供給される。
【0024】
周波数を測定するために、コンデンサプレート4の電圧は、ゼロ公差検出器型の電圧変換器13にも供給され、この電圧変換器13は、マイクロコントローラ12に供給する。
【0025】
エポキシ内部の温度を測定して考慮するために、温度センサ5の信号も、ローパスフィルタ14および増幅器15を介してマイクロコントローラ12に供給される。
【0026】
エポキシの温度を考慮して、マイクロコントローラ12は、コンデンサプレート4上で測定された電圧のデジタル値と、測定された周波数と、第1のコンデンサ2,4および第2のコンデンサ6の既知の容量と、に基づいて、導体2内の実際の電圧がどれくらいであるかを計算することができる。
【0027】
マイクロコントローラ12は、温度センサ5の温度測定値を使用して、ソフトウェアアルゴリズムと、マイクロコントローラに記憶された事前試験データと、を使用して、エポキシ内部の温度の任意の変化に対するエポキシ樹脂の膨張または圧縮に起因した第1のコンデンサ2,4の容量の変化を計算することができる。電圧を正確に測定するために、マイクロコントローラ12は、ソフトウェアアルゴリズムを使用して、計算された新しい第1のコンデンサ2,4の容量に従って、測定された電圧を調整する。
図1