特許第6768887号(P6768887)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6768887
(24)【登録日】2020年9月25日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】回路装置
(51)【国際特許分類】
   H04L 1/00 20060101AFI20201005BHJP
   H04L 1/22 20060101ALI20201005BHJP
   B60L 58/10 20190101ALI20201005BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20201005BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20201005BHJP
【FI】
   H04L1/00 A
   H04L1/22
   B60L58/10
   B60L3/00 S
   H02J7/00 P
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-124498(P2019-124498)
(22)【出願日】2019年7月3日
(65)【公開番号】特開2020-10334(P2020-10334A)
(43)【公開日】2020年1月16日
【審査請求日】2019年7月3日
(31)【優先権主張番号】10 2018 210 966.4
(32)【優先日】2018年7月4日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】596107062
【氏名又は名称】フォルクスヴァーゲン アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】VOLKSWAGEN AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヨヘン ユール
【審査官】 吉江 一明
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−545424(JP,A)
【文献】 特開2014−239639(JP,A)
【文献】 特開2003−229875(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0346783(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 1/00
H04L 1/22
B60L 3/00
B60L 58/10
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのバッテリセルに関する少なくとも1つのセル情報を車両(5)の通信システム(2)に適合させるための、前記車両(5)のバッテリ管理システム(1)のための回路装置(10)において、
−第1の処理(110)に従い、前記セル情報に固有であるメッセージ(140)と、検査情報(151)とを生成するための第1の処理素子(21)と、
−少なくとも1つの第2の処理(120)に従い、前記メッセージ(140)と同一のメッセージ(140)を生成するための少なくとも1つの第2の処理素子(22)と、
−少なくとも部分的に、前記第2の処理(120)に従った前記メッセージ(140)及び前記検査情報(151)から構成されており、従って前記第1の処理及び前記第2の処理(120)に固有である出力通知(150)を、前記通信システム(2)に出力するための通信システムインタフェース(30)と、
を備える、回路装置(10)。
【請求項2】
前記第1の処理素子(21)は、前記第1の処理(110)に従った前記メッセージ(140)を基礎とした前記メッセージ(140)に関する検査値として前記検査情報(151)を生成するように構成されており、その結果、前記検査値は、前記第2の処理(120)に従った前記メッセージ(140)も検査するように形成されている、請求項1に記載の回路装置(10)。
【請求項3】
前記出力通知(150)が前記通信システム(2)に対する完全な又は部分的なデータパケット(150)を形成することによって、前記出力通知(150)及び/又は前記メッセージ(140)は通信システム(2)との伝送に適合されており、前記データパケット(150)は、前記通信システム(2)によって及び/又は少なくとも1つの通信加入者によって、前記第2の処理(120)に従った前記メッセージ(140)及び/又は前記データパケット(150)の正確性を検査するために、前記検査情報(151)も有している、請求項1又は2に記載の回路装置(10)。
【請求項4】
前記通信システムインタフェース(30)は、前記通信システム(2)としてのCANバスシステムのためのインタフェースとして形成されており、前記データパケット(150)は、CANバスのテレグラム(150)として形成されている、請求項1から3までのいずれか1項に記載の回路装置(10)。
【請求項5】
前記第1の処理素子(21)及び前記第2の処理素子(22)は、構造的に及び/又は機能的に同一又は同種の集積回路として、特にマイクロコントローラとして形成されており、その結果、前記メッセージ(140)が前記第1の処理(110)及び前記第2の処理(120)に従い冗長的に生成される、請求項1から4までのいずれか1項に記載の回路装置(10)。
【請求項6】
前記第1の処理素子(21)は、前記第2の処理素子(22)に結線されており、これによって前記第2の処理素子(22)に前記検査情報(151)が伝送され、該検査情報(151)が前記出力通知(150)に統合される、請求項1から5までのいずれか1項に記載の回路装置(10)。
【請求項7】
前記第1の処理素子(21)も、前記第2の処理素子(22)も、それぞれ伝送手段(40)に接続することができ、これによって、各処理素子(21,22)が相互に独立して前記セル情報に基づいて前記メッセージ(140)を生成するために、前記セル情報を含む信号が受け取られる、請求項1から6までのいずれか1項に記載の回路装置(10)。
【請求項8】
前記検査情報(151)に基づいた前記メッセージ(140)の検査によって、その都度、前記出力通知(150)の一部分として、該部分のうちの少なくとも1つの部分の誤りが検出された場合には、前記出力通知(150)を破棄するために、セキュリティ機構が設けられている、請求項1から7までのいずれか1項に記載の回路装置(10)。
【請求項9】
少なくとも1つのバッテリセルに関する少なくとも1つのセル情報を車両(5)の通信システム(2)に適合させるための方法において、
a)第1の処理素子(21)による第1の処理(110)に従い、前記セル情報に固有であるメッセージ(140)と、検査情報(151)とを生成するステップと、
b)少なくとも1つの第2の処理素子(22)による少なくとも1つの第2の処理(120)に従い前記メッセージ(140)と同一のメッセージ(140)を生成するステップと、
c)少なくとも部分的に、前記第2の処理(120)に従った前記メッセージ(140)及び前記検査情報(151)から構成されており、従って前記第1の処理及び前記第2の処理(120)に固有である出力通知(150)を、通信システムインタフェース(30)によって前記通信システム(2)に出力するステップと、
を実施する、方法。
【請求項10】
前記第1の処理(110)は、巡回冗長検査によるCRC検査値として前記検査情報を生成することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の処理素子(21)及び/又は前記第2の処理素子(22)及び/又は前記通信システムインタフェース(30)は、請求項1から8までのいずれか1項に記載の回路装置(10)に従い形成されている、請求項9又は10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に車両のバッテリ管理システムのための回路装置に関する。さらに、本発明は、少なくとも1つのセル情報を適合させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術より、バッテリシステムにおいて、セルの監視が実施されることが公知である。この監視は、例えば、温度値及び/又は電圧値をその都度、個々のセルにおけるセル情報として検出し、所定の境界値と比較するために利用される。このようにして、バッテリシステムの安全な動作を保証することができる。
【0003】
この際、このセル情報を、例えば車両のバッテリ管理システム及び/又はバッテリ管理コントローラ(BMC)及び/又は制御装置に伝送するために、セル情報の適合を行う必要があることが多い。例えば、セル情報は、車両のバスシステムを介して伝送され、その結果、セル情報は、このバスシステムに適したデータパケットに統合されなければならない。
【0004】
伝送時に信頼性の高い誤り検出を実施するために、種々の制御方法が公知である。特にこの場合には、安全規格、例えばASIL(Automotive Safety Integrity Level)規格を遵守することが必要とされる。
【0005】
相応に、刊行物、国際公開第2012/048929号(WO2012/048929A1)、独国特許出願公開第102011082937号明細書(DE102011082937A1)及び独国特許出願公開第102009046564号明細書(DE102009046564A1)からは、冒頭で述べたような回路装置及び/又は方法が公知である。
【0006】
もっとも、この公知の解決手段における欠点は、十分に信頼性の高い制御が、高い技術的煩雑度及び/又はコストに結びつくということである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2012/048929号
【特許文献2】独国特許出願公開第102011082937号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第102009046564号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の課題は、バッテリシステムのセルの監視における前述の欠点を少なくとも部分的に除去することである。特に、本発明の課題は、車両のバッテリ管理システム及び/又はBMCにおいてセル情報を適合させ及び/又は制御するための改善された及び/又は廉価な解決手段を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題は、請求項1の特徴を備えた回路装置によって、特に電子装置によって、また、請求項9の特徴を備えた方法によって解決される。本発明のさらなる特徴及び詳細は、各従属請求項、明細書及び図面より明らかになる。ここで、本発明に係る回路装置との関係において記述した特徴及び詳細は、当然のことながら、本発明に係る方法との関係においても該当し、また、その逆についても該当するので、個々の発明の態様についての開示に関しては、常に相互的に参照され、又は、相互的に参照することができる。
【0010】
この課題は、特に、回路装置、とりわけ電子装置によって解決される。ここで、回路装置は特に車両のシステム、例えばバッテリ管理システムの一部であってよい。この場合、回路装置は、例えば複数の電子コンポーネントを有しており、それらの電子コンポーネントは、特に車両内の回路基板に配置されている。
【0011】
さらに有利には、車両が自動車として、特に無軌道陸上車両として形成されており、例えば牽引のために電気機械及び内燃機関を含むハイブリッド車両として形成されている。また、車両を、特に高電圧搭載電源及び/又は電気モータを備えた電気車両として形成することができる。特に、車両を、燃料電池車両及び/又は乗用車として形成することができる。好適には、電気車両の実施形態においては、車両に内燃機関は設けられておらず、その場合、車両はもっぱら電気エネルギによって駆動される。
【0012】
車両は、特に好適には、バッテリ管理システム及び/又はBMCを備えた(再充電可能な)バッテリシステムを有している。バッテリシステムは、例えば、1つ又は複数の(バッテリ)セルを有することができ、それらの(バッテリ)セルは再充電可能に構成されている。セル監視のために、特に、少なくとも1つの監視手段、例えばセルコントローラ及び/又はASIC(特定用途向け集積回路)を、バッテリシステムの個々のセルに(及び/又は個々のセルのために)配置することができる。監視手段は、例えば、各セルのセル電圧及び/又はセル温度をセル情報として検出することができる。例えば、単一の監視手段を複数のセルに対して利用することができ、又は、セル毎に1つの監視手段を利用することができる。各監視手段から、例えばバッテリ管理システム(BMS)へのセル情報の伝送は、例えば、伝送システム及び/又は伝送手段、例えばシリアルペリフェラルインタフェース(SPI:Serial Peripheral Interface)又はローカルインターコネクトネットワーク(LIN:Local Interconnect Network)インタフェースを介して行われ、又は、トランシーバ物理層(TPL:Transceiver Physical Layer)プロトコルに従い行うことができる。さらに、セル情報を他の装置によって、例えば車両の制御装置及び/又はBMCによって評価することも実現することができる。これによって、バッテリシステムの安全な動作を保証することができる。少なくとも1つの(それぞれの)監視手段を、通信システムを介してBMCと通信する、及び/又は、その他の車両と直接通信するセルコントローラとして構成することができる。従って、通信システムを、必要に応じてバッテリCANバスとして形成することができ、また、(各)セルコントローラとBMCとの間の通信経路として利用することができる。BMCによって、例えば、(各)セルコントローラに対するバランシング要求の送信及び/又は保護制御も実施することができる。
【0013】
もっとも、他の装置が通信システム、例えば、車両のバスシステムを介するセル情報の受信を待機することも考えられる。従って、伝送手段乃至伝送システムを介して伝送されるセル情報の、(車両の)通信システムへの翻訳(即ち、適合)も、必要になると考えられる。
【0014】
本発明によれば、少なくとも1つのセル情報(即ち、少なくとも1つのバッテリセルに関する情報)を通信システムに適合させるために、特に車両の通信システムに適合させるために、以下の(電子)コンポーネントのうちの少なくとも1つを設けることができる:
−セル情報に固有であり、特にセル情報を含んでいるメッセージ(特に第1のデータとしてのメッセージ)及び検査情報を第1の処理に従い生成するための第1の処理素子、例えば第1の集積回路及び/又はマイクロコントローラ、
−同一のメッセージ(特に第2のデータとしてのメッセージ)、従って、特に同様にセル情報を含んでいるメッセージを、少なくとも1つの(又はちょうど1つ)の第2の処理に従い生成するための少なくとも1つ(又はちょうど1つ若しくは最大で1つ)の第2の処理素子、例えば第2の集積回路及び/又はマイクロコントローラ、
−出力通知を通信システムに出力するための、通信システムインタフェース、例えば電気的な端子又は他の集積回路及び/又はマイクロコントローラ及び/又はトランシーバ。
【0015】
ここでは、出力通知を、少なくとも部分的に、第2の処理に従った(第2の処理素子によって生成された)メッセージ及び(第1の処理に従った)検査情報から構成することができるので、出力通知は第1の処理及び第2の処理に固有である。換言すれば、出力通知は、メッセージを生成するための第1の処理において生じたデータも、前記のメッセージと同一のメッセージを生成するための第2の処理において生じたデータも有している。それらの2つのメッセージは、通常の場合、同一であって、誤りがある場合にのみ異なっている。しかしながら検査情報は、第1の処理に関連付けられており、例えば第1の処理に従い生成されたメッセージに依存する。従って、第1の処理又は第2の処理における誤りは、検査情報を第2の処理に従ったメッセージと比較することによって検出することができる。従って、第1の処理及び第2の処理に誤りがない場合にのみ、出力通知も同様に誤りがないものとして検出されるという利点が達成される。これによって、複数の処理素子による相互的な監視が実現される。
【0016】
さらに、セル情報は、特に車両のバッテリシステムのセルの電圧及び/又は温度に関する情報を有することができる。例えば、バッテリシステムの監視を保証するために、バッテリシステムの動作中に、セル情報を繰り返し検出することができる。これは、安全性に関連する監視であると考えられるので、例えば通信システムを介するセル情報の伝送は安全規格を満たさなければならない。相応に、伝送システムを介して伝送されるセル情報の、通信システムに対する出力通知への変換も安全規格を満たすべきである。その種の安全規格は、例えばASIL規格であってよいので、上記のセル情報の適合においては、ASIL−C又はASIL−Dに準拠したマイクロコントローラトポロジを使用することができる。安全規格を満たすために、例えば、比較的複雑及び/又はコストの掛かるデュアルコアマイクロコントローラ又はマルチコアマイクロコントローラ又はロックステップマイクロコントローラを使用することが公知である。本発明によれば、必要に応じて、その代わりに2つのシングルコアマイクロコントローラを第1の処理素子及び第2の処理素子として使用することも考えられる。これによって、コストを低減することができる。
【0017】
従って、第1の処理素子及び/又は第2の処理素子それぞれを、マイクロコントローラとして、特にシングルコアマイクロコントローラとして、好適には単一コアマイクロコントローラとして形成することができる。
【0018】
さらに本発明の枠内においては、検査情報をメッセージに関する検査値として、第1の処理に従ったメッセージに基づいて(及び/又は第1のデータに基づいて)生成するように第1の処理素子を構成することができ、その結果、検査値は、第2の処理に従ったメッセージ(乃至第2のデータ)を検査するためにも構成されている。従って、特に、処理素子によって生成される2つのメッセージが同一であって、それによって出力通知の検査情報に基づいて、出力通知の他の部分(即ち、第2の処理に従ったメッセージ)が誤りのないものとして検出されることによって、複数の処理素子による相互的な監視が実現される。特に、誤りがないように制御を行うために、検査値が出力通知の他のデータを、特に第2の処理に従ったメッセージのデータと比較することができる。この比較によって、検査値を第1の処理に従ったメッセージと比較した場合と同一の比較結果が生じた場合には、出力通知を誤りのないものとして検出することができる。それ以外の場合には、出力通知を破棄することができる。
【0019】
任意的選択肢として、出力通知が通信システムに対する完全な又は部分的なデータパケット、特にテレグラムを形成することによって、出力通知及び/又はメッセージを通信システムとの伝送に適合させることができ、この場合には、通信システムによって及び/又は少なくとも1つの通信加入者(例えば車両の制御装置又はBMC)によって、第2の処理に従ったメッセージ及び/又はデータパケットの正確性を検査するために、データパケットが必要に応じて検査情報も有している。例えば、データパケットは、CANバステレグラムであってよい。CANは、コントローラエリアネットワークを表し、本願の場合には、バッテリCAN又は特殊化されたCANなどとも解することができる。これによって、例えば車両の制御装置への信頼性の高い伝送が実現される。
【0020】
好適には、本発明の枠内においては、通信システムインタフェースを、通信システムとしてのCANバスシステムのためのインタフェースとして形成することができ、この場合、データパケットは、CANバスのテレグラムとして形成されている。通信システムインタフェース(又は略して通信インタフェース)を、例えば、CANトランシーバなどとしても構成することができ、これによって通信システムを介する通信が実現される。
【0021】
さらに、回路装置においては任意的選択肢として、第1の処理素子及び第2の処理素子が、構造的に及び/又は機能的に同一又は同種の集積回路として、特にマイクロコントローラとして形成されており、その結果、メッセージが第1の処理及び第2の処理に従い冗長的に生成される。例えば、第1の処理素子も第2の処理素子も、セル情報を(例えばTPL信号として)受信することができ、また、それぞれ復号することができるので、この復号された情報によって、CAN通知のような出力通知を生成することができる。これによって、複数の処理素子の相互的な監視が実現される。
【0022】
さらに、本発明に係る回路装置においては、処理素子のうちの1つが通信システムインタフェースを有することができ、及び/又は、処理素子とは構造的に別個のものであって、出力通知を伝送するために処理素子のうちの少なくとも1つに結線されている通信システムインタフェースを設けることができる。例えば、第2の処理素子のみが第1の処理素子よりも高い複雑性を有するようにすることができ、その結果、ここでは場合によってはさらなるコスト削減が実現される。
【0023】
さらに本発明の枠内においては、任意的選択肢として、第1の処理素子を第2の処理素子に結線することができ、これによって第2の処理素子に検査情報が伝送され、検査情報が出力通知に統合される。例えば、第1の処理素子が、第2の処理素子に電気的に直接接続されており、これによって検査情報の信頼性の高い伝送が実現される。場合によっては、第2の処理素子も検査情報を生成しなければならないということがもはや必要ではなくなる。換言すれば、必要に応じて、第1の処理によって生成された検査情報を、さらなる処理を要することなく、出力通知に直接統合することができる。これによって、第1の処理が第2の処理を検査可能であることが保証されている。
【0024】
さらに任意的選択肢として、第2の処理素子又は通信システムインタフェースが、第1の処理に従った検査情報及び第2の処理に従ったメッセージに基づいて、出力通知を生成するように構成されている。例えば、通信システムインタフェース及び/又は第2の処理素子を、メッセージ及び検査情報からCAN通知を生成することができるようにプログラミングすることができる。これによって、例えば車両の制御装置への信頼性の高い通信が実現される。
【0025】
さらに、本発明の枠内においては、第1の処理素子も、第2の処理素子も、それぞれ伝送手段に接続することができ、これによって、特に処理素子が相互に独立してセル情報に基づいてメッセージを生成するために、セル情報を含む信号が受け取られる。例えば、(第1の処理によって)検査情報を生成するために、メッセージの生成も必要になると考えられる。何故ならば、検査情報は必要に応じて、生成されたメッセージに依存しているからである。従って、より高い安全性が保証される。
【0026】
さらに有利には、回路装置にはセキュリティ機構が設けられており、検査情報に基づいたメッセージの検査によって、その都度、出力通知の一部分として、それらの部分のうちの少なくとも1つの部分の誤りが検出された場合には、出力通知が破棄される。換言すれば、(第2の処理に従った)メッセージ及び(第1の処理に従った)検査情報それぞれが出力通知の一部分であって、この場合には、特に第1の処理に従ったメッセージは、使用されず及び/又は破棄されない。従って、複数の処理素子による相互的な制御を提供することができる。出力通知の破棄及び/又は検査を、例えば、処理素子のうちの1つによって、及び/又は、通信システムインタフェースによって、及び/又は、通信システムの他の通信加入者、例えば車両の制御装置によって行うことができる。
【0027】
同様に、本発明の対象は、少なくとも1つのバッテリセルに関する少なくとも1つのセル情報を車両の通信システムに適合させるための方法である。
【0028】
この方法においては、以下のステップが実施され、特に、連続して又は任意の順序で実施される:
a)第1の処理素子による第1の処理に従い、セル情報に固有であり、特にセル情報に依存するメッセージと、検査情報とを生成するステップ、
b)少なくとも1つの第2の処理素子による少なくとも1つの第2の処理に従い同一のメッセージを生成するステップ、
c)少なくとも部分的に、第2の処理に従ったメッセージ及び(第1の処理素子によって生成された)検査情報から構成されており、従って、第1の処理及び第2の処理に固有である出力通知を、通信システムインタフェースによって通信システムに出力するステップ。
【0029】
これによって、本発明に係る方法は、本発明に係る回路装置に関して詳細に記述した利点と同一の利点をもたらす。さらに、本方法は、本発明に係る回路装置を動作させることに適していると考えられる。
【0030】
1つの他の可能性においては、第1の処理が、巡回冗長検査(略してCRC)によるCRC検査値として検査情報を生成することを含むことができる。これによって、誤り制御における特に高い信頼性を提供することができる。
【0031】
さらに、第1の処理素子及び/又は第2の処理素子及び/又は通信システムインタフェースを本発明に係る回路装置に従い形成することができる。
【0032】
本発明のさらなる利点、特徴及び詳細は、図面を参照しながら本発明の実施例が詳細に記述されている、以下の記載より明らかになる。ここで、特許請求の範囲及び明細書において言及した特徴のそれぞれは、それ自体単独で又は任意の組み合わせで本発明の本質を成すと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明に係る回路装置の概略図を示す。
図2】本発明に係る方法を視覚化するための概略図を示す。
図3】本発明に係る回路装置を備えたシステムの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
後続の図面において、同一の技術的特徴については、異なる実施例においても同一の参照番号を用いている。
【0035】
図1には、少なくとも1つのバッテリセルに関する少なくとも1つのセル情報を車両5の通信システム2に適合させるための、バッテリ管理システム1のための本発明に係る回路装置10が示されている。
【0036】
ここでは、第1の処理110に従いメッセージ140及び検査情報151を生成するために第1の処理素子21を設けることができ、このメッセージ140は、セル情報に固有であり、特に測定値を含む。特に、検査情報151をメッセージ140に依存して生成することができ、例えばメッセージ140の内容(データ内容及び/又は他の内容)に基づいて算出することができる(換言すれば、検査情報151はメッセージ140から形成される)。このために、例えば、先ずセル情報を含む信号が伝送システム50によって受け取られ、続いて復号され、それによってメッセージ140が生成される。メッセージ140は、この場合、例えばアドレス情報及びデータ内容から成るCAN通知を形成している。検査情報151を算出するために、例えばCRCを用いて、メッセージ140の内容を利用することができる。
【0037】
さらに、少なくとも1つの第2の処理120に従い同一のメッセージ140を生成するための少なくとも1つの第2の処理素子22を設けることができる。
【0038】
第1の処理素子21及び第2の処理素子22を、構造的に及び/又は機能的に同一又は同種の集積回路として形成することができ、特にマイクロコントローラとして形成することができる。これによって、第1の処理110及び第2の処理120に従いメッセージ140を冗長的に生成することができる。
【0039】
第1の処理素子21が第2の処理素子22に結線されていることが見て取れ、これによって第2の処理素子22に検査情報151が伝送され、その検査情報151が出力通知150に統合される。例えば、第1の処理素子21は、第1の接続手段23、例えばシリアルインタフェース及び/又はUARTインタフェースを介して、第2の処理素子22に直接接続されている。ここでUARTは、ユニバーサル非同期レシーバ/トランスミッタ(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)を表す。
【0040】
第1の処理素子21も、第2の処理素子22も、それぞれ伝送手段40に接続することができ、これによってセル情報を含む信号を伝送システム50から受け取り、また、それぞれが、セル情報に基づいたメッセージ140の生成を相互に独立して実施することができる。伝送システム50は、例えばTPLプロトコル及び/又はSPIインタフェース(ここでSPIは、シリアルペリフェラルインタフェースを表す)を含み、また、例えば各セルの少なくとも1つの監視手段に接続されている。
【0041】
さらに、処理素子21,22とは別個の、又は、処理素子21,22のうちの一方に統合された通信システムインタフェース30が、通信システム2への出力通知150の出力(参照符号Aを参照されたい)のために設けられている。通信システムインタフェース30は、例えば、バスシステム及び/又はSPIインタフェース及び/又はバッテリCANバスシステムのような第2の接続手段24を介して、第2の処理素子22に直接接続されている。
【0042】
通信システムインタフェース30を、例えば、通信システム2としてのCANバスシステムのためのインタフェースとして形成することができ、この場合、データパケット150は、CANバスのテレグラム150として形成されている。
【0043】
図2に詳細に図示されているように、出力を実施するためには、出力通知150が、少なくとも部分的に第2の処理120に従ったメッセージ140及び検査情報151から構成されるので、その結果、出力通知150は第1の処理及び第2の処理120に固有となる。これによって、処理素子21,22による誤りのない処理の相互的な監視が実現される。
【0044】
さらには、第1の処理110に従ったメッセージ140を基礎としたメッセージ140に関する検査値として検査情報151を生成するように第1の処理素子21を構成することができ、その結果、検査値は、第2の処理120に従ったメッセージ140も検査するように形成されている。
【0045】
さらには、出力通知150が通信システム2のための完全な又は部分的なデータパケット150を形成することによって、出力通知150及び/又はメッセージ140を、通信システム2との伝送に適合させることができる。この場合、データパケット150は、通信システム2によって及び/又は少なくとも1つの通信加入者によって、第2の処理120に従ったメッセージ140及び/又はデータパケット150の正確性を検査するために、検査情報151も有することができる。
【0046】
有利には、検査情報151に基づいたメッセージ140の検査によって、その都度、出力通知150の一部分として、それらの部分のうちの少なくとも1つの部分の誤りが検出された場合には、出力通知150を破棄するために、セキュリティ機構が設けられている。
【0047】
さらに図2によって、本発明に係る方法が視覚化されており、この場合には先ず、第1の処理110に従いメッセージ140及び検査情報151の生成が行われ、続いて、少なくとも1つの第2の処理120に従い同一のメッセージ140の生成が行われ、また、最後に、通信システム2への出力通知150の出力が実施される。この場合、出力通知150は、少なくとも部分的に第2の処理120に従ったメッセージ140及び検査情報151から構成することができ、その結果、出力通知150は第1の処理及び第2の処理120に固有となる。
【0048】
図3には、本発明に係る回路装置10が、車両5のバッテリ管理システム1の一部であってよいことが概略的に示されている。
【0049】
実施形態の上記の説明は、本発明をもっぱら例示の枠内で記述したものである。もちろん、技術的に有意である限りは、本発明の範囲から逸脱することなく、実施形態の個々の特徴を相互に自由に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0050】
1 システム、バッテリ管理システム
2 通信システム
5 車両
10 回路装置
21 第1の処理素子
22 第2の処理素子
23 第1の接続手段
24 第2の接続手段
30 通信システムインタフェース
40 伝送手段
50 伝送システム
110 第1の処理
120 第2の処理
140 メッセージ
150 出力通知、データパケット、テレグラム
151 検査情報
A 出力
図1
図2
図3