【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題は、請求項1の特徴を備えた回路装置によって、特に電子装置によって、また、請求項9の特徴を備えた方法によって解決される。本発明のさらなる特徴及び詳細は、各従属請求項、明細書及び図面より明らかになる。ここで、本発明に係る回路装置との関係において記述した特徴及び詳細は、当然のことながら、本発明に係る方法との関係においても該当し、また、その逆についても該当するので、個々の発明の態様についての開示に関しては、常に相互的に参照され、又は、相互的に参照することができる。
【0010】
この課題は、特に、回路装置、とりわけ電子装置によって解決される。ここで、回路装置は特に車両のシステム、例えばバッテリ管理システムの一部であってよい。この場合、回路装置は、例えば複数の電子コンポーネントを有しており、それらの電子コンポーネントは、特に車両内の回路基板に配置されている。
【0011】
さらに有利には、車両が自動車として、特に無軌道陸上車両として形成されており、例えば牽引のために電気機械及び内燃機関を含むハイブリッド車両として形成されている。また、車両を、特に高電圧搭載電源及び/又は電気モータを備えた電気車両として形成することができる。特に、車両を、燃料電池車両及び/又は乗用車として形成することができる。好適には、電気車両の実施形態においては、車両に内燃機関は設けられておらず、その場合、車両はもっぱら電気エネルギによって駆動される。
【0012】
車両は、特に好適には、バッテリ管理システム及び/又はBMCを備えた(再充電可能な)バッテリシステムを有している。バッテリシステムは、例えば、1つ又は複数の(バッテリ)セルを有することができ、それらの(バッテリ)セルは再充電可能に構成されている。セル監視のために、特に、少なくとも1つの監視手段、例えばセルコントローラ及び/又はASIC(特定用途向け集積回路)を、バッテリシステムの個々のセルに(及び/又は個々のセルのために)配置することができる。監視手段は、例えば、各セルのセル電圧及び/又はセル温度をセル情報として検出することができる。例えば、単一の監視手段を複数のセルに対して利用することができ、又は、セル毎に1つの監視手段を利用することができる。各監視手段から、例えばバッテリ管理システム(BMS)へのセル情報の伝送は、例えば、伝送システム及び/又は伝送手段、例えばシリアルペリフェラルインタフェース(SPI:Serial Peripheral Interface)又はローカルインターコネクトネットワーク(LIN:Local Interconnect Network)インタフェースを介して行われ、又は、トランシーバ物理層(TPL:Transceiver Physical Layer)プロトコルに従い行うことができる。さらに、セル情報を他の装置によって、例えば車両の制御装置及び/又はBMCによって評価することも実現することができる。これによって、バッテリシステムの安全な動作を保証することができる。少なくとも1つの(それぞれの)監視手段を、通信システムを介してBMCと通信する、及び/又は、その他の車両と直接通信するセルコントローラとして構成することができる。従って、通信システムを、必要に応じてバッテリCANバスとして形成することができ、また、(各)セルコントローラとBMCとの間の通信経路として利用することができる。BMCによって、例えば、(各)セルコントローラに対するバランシング要求の送信及び/又は保護制御も実施することができる。
【0013】
もっとも、他の装置が通信システム、例えば、車両のバスシステムを介するセル情報の受信を待機することも考えられる。従って、伝送手段乃至伝送システムを介して伝送されるセル情報の、(車両の)通信システムへの翻訳(即ち、適合)も、必要になると考えられる。
【0014】
本発明によれば、少なくとも1つのセル情報(即ち、少なくとも1つのバッテリセルに関する情報)を通信システムに適合させるために、特に車両の通信システムに適合させるために、以下の(電子)コンポーネントのうちの少なくとも1つを設けることができる:
−セル情報に固有であり、特にセル情報を含んでいるメッセージ(特に第1のデータとしてのメッセージ)及び検査情報を第1の処理に従い生成するための第1の処理素子、例えば第1の集積回路及び/又はマイクロコントローラ、
−同一のメッセージ(特に第2のデータとしてのメッセージ)、従って、特に同様にセル情報を含んでいるメッセージを、少なくとも1つの(又はちょうど1つ)の第2の処理に従い生成するための少なくとも1つ(又はちょうど1つ若しくは最大で1つ)の第2の処理素子、例えば第2の集積回路及び/又はマイクロコントローラ、
−出力通知を通信システムに出力するための、通信システムインタフェース、例えば電気的な端子又は他の集積回路及び/又はマイクロコントローラ及び/又はトランシーバ。
【0015】
ここでは、出力通知を、少なくとも部分的に、第2の処理に従った(第2の処理素子によって生成された)メッセージ及び(第1の処理に従った)検査情報から構成することができるので、出力通知は第1の処理及び第2の処理に固有である。換言すれば、出力通知は、メッセージを生成するための第1の処理において生じたデータも、前記のメッセージと同一のメッセージを生成するための第2の処理において生じたデータも有している。それらの2つのメッセージは、通常の場合、同一であって、誤りがある場合にのみ異なっている。しかしながら検査情報は、第1の処理に関連付けられており、例えば第1の処理に従い生成されたメッセージに依存する。従って、第1の処理又は第2の処理における誤りは、検査情報を第2の処理に従ったメッセージと比較することによって検出することができる。従って、第1の処理及び第2の処理に誤りがない場合にのみ、出力通知も同様に誤りがないものとして検出されるという利点が達成される。これによって、複数の処理素子による相互的な監視が実現される。
【0016】
さらに、セル情報は、特に車両のバッテリシステムのセルの電圧及び/又は温度に関する情報を有することができる。例えば、バッテリシステムの監視を保証するために、バッテリシステムの動作中に、セル情報を繰り返し検出することができる。これは、安全性に関連する監視であると考えられるので、例えば通信システムを介するセル情報の伝送は安全規格を満たさなければならない。相応に、伝送システムを介して伝送されるセル情報の、通信システムに対する出力通知への変換も安全規格を満たすべきである。その種の安全規格は、例えばASIL規格であってよいので、上記のセル情報の適合においては、ASIL−C又はASIL−Dに準拠したマイクロコントローラトポロジを使用することができる。安全規格を満たすために、例えば、比較的複雑及び/又はコストの掛かるデュアルコアマイクロコントローラ又はマルチコアマイクロコントローラ又はロックステップマイクロコントローラを使用することが公知である。本発明によれば、必要に応じて、その代わりに2つのシングルコアマイクロコントローラを第1の処理素子及び第2の処理素子として使用することも考えられる。これによって、コストを低減することができる。
【0017】
従って、第1の処理素子及び/又は第2の処理素子それぞれを、マイクロコントローラとして、特にシングルコアマイクロコントローラとして、好適には単一コアマイクロコントローラとして形成することができる。
【0018】
さらに本発明の枠内においては、検査情報をメッセージに関する検査値として、第1の処理に従ったメッセージに基づいて(及び/又は第1のデータに基づいて)生成するように第1の処理素子を構成することができ、その結果、検査値は、第2の処理に従ったメッセージ(乃至第2のデータ)を検査するためにも構成されている。従って、特に、処理素子によって生成される2つのメッセージが同一であって、それによって出力通知の検査情報に基づいて、出力通知の他の部分(即ち、第2の処理に従ったメッセージ)が誤りのないものとして検出されることによって、複数の処理素子による相互的な監視が実現される。特に、誤りがないように制御を行うために、検査値が出力通知の他のデータを、特に第2の処理に従ったメッセージのデータと比較することができる。この比較によって、検査値を第1の処理に従ったメッセージと比較した場合と同一の比較結果が生じた場合には、出力通知を誤りのないものとして検出することができる。それ以外の場合には、出力通知を破棄することができる。
【0019】
任意的選択肢として、出力通知が通信システムに対する完全な又は部分的なデータパケット、特にテレグラムを形成することによって、出力通知及び/又はメッセージを通信システムとの伝送に適合させることができ、この場合には、通信システムによって及び/又は少なくとも1つの通信加入者(例えば車両の制御装置又はBMC)によって、第2の処理に従ったメッセージ及び/又はデータパケットの正確性を検査するために、データパケットが必要に応じて検査情報も有している。例えば、データパケットは、CANバステレグラムであってよい。CANは、コントローラエリアネットワークを表し、本願の場合には、バッテリCAN又は特殊化されたCANなどとも解することができる。これによって、例えば車両の制御装置への信頼性の高い伝送が実現される。
【0020】
好適には、本発明の枠内においては、通信システムインタフェースを、通信システムとしてのCANバスシステムのためのインタフェースとして形成することができ、この場合、データパケットは、CANバスのテレグラムとして形成されている。通信システムインタフェース(又は略して通信インタフェース)を、例えば、CANトランシーバなどとしても構成することができ、これによって通信システムを介する通信が実現される。
【0021】
さらに、回路装置においては任意的選択肢として、第1の処理素子及び第2の処理素子が、構造的に及び/又は機能的に同一又は同種の集積回路として、特にマイクロコントローラとして形成されており、その結果、メッセージが第1の処理及び第2の処理に従い冗長的に生成される。例えば、第1の処理素子も第2の処理素子も、セル情報を(例えばTPL信号として)受信することができ、また、それぞれ復号することができるので、この復号された情報によって、CAN通知のような出力通知を生成することができる。これによって、複数の処理素子の相互的な監視が実現される。
【0022】
さらに、本発明に係る回路装置においては、処理素子のうちの1つが通信システムインタフェースを有することができ、及び/又は、処理素子とは構造的に別個のものであって、出力通知を伝送するために処理素子のうちの少なくとも1つに結線されている通信システムインタフェースを設けることができる。例えば、第2の処理素子のみが第1の処理素子よりも高い複雑性を有するようにすることができ、その結果、ここでは場合によってはさらなるコスト削減が実現される。
【0023】
さらに本発明の枠内においては、任意的選択肢として、第1の処理素子を第2の処理素子に結線することができ、これによって第2の処理素子に検査情報が伝送され、検査情報が出力通知に統合される。例えば、第1の処理素子が、第2の処理素子に電気的に直接接続されており、これによって検査情報の信頼性の高い伝送が実現される。場合によっては、第2の処理素子も検査情報を生成しなければならないということがもはや必要ではなくなる。換言すれば、必要に応じて、第1の処理によって生成された検査情報を、さらなる処理を要することなく、出力通知に直接統合することができる。これによって、第1の処理が第2の処理を検査可能であることが保証されている。
【0024】
さらに任意的選択肢として、第2の処理素子又は通信システムインタフェースが、第1の処理に従った検査情報及び第2の処理に従ったメッセージに基づいて、出力通知を生成するように構成されている。例えば、通信システムインタフェース及び/又は第2の処理素子を、メッセージ及び検査情報からCAN通知を生成することができるようにプログラミングすることができる。これによって、例えば車両の制御装置への信頼性の高い通信が実現される。
【0025】
さらに、本発明の枠内においては、第1の処理素子も、第2の処理素子も、それぞれ伝送手段に接続することができ、これによって、特に処理素子が相互に独立してセル情報に基づいてメッセージを生成するために、セル情報を含む信号が受け取られる。例えば、(第1の処理によって)検査情報を生成するために、メッセージの生成も必要になると考えられる。何故ならば、検査情報は必要に応じて、生成されたメッセージに依存しているからである。従って、より高い安全性が保証される。
【0026】
さらに有利には、回路装置にはセキュリティ機構が設けられており、検査情報に基づいたメッセージの検査によって、その都度、出力通知の一部分として、それらの部分のうちの少なくとも1つの部分の誤りが検出された場合には、出力通知が破棄される。換言すれば、(第2の処理に従った)メッセージ及び(第1の処理に従った)検査情報それぞれが出力通知の一部分であって、この場合には、特に第1の処理に従ったメッセージは、使用されず及び/又は破棄されない。従って、複数の処理素子による相互的な制御を提供することができる。出力通知の破棄及び/又は検査を、例えば、処理素子のうちの1つによって、及び/又は、通信システムインタフェースによって、及び/又は、通信システムの他の通信加入者、例えば車両の制御装置によって行うことができる。
【0027】
同様に、本発明の対象は、少なくとも1つのバッテリセルに関する少なくとも1つのセル情報を車両の通信システムに適合させるための方法である。
【0028】
この方法においては、以下のステップが実施され、特に、連続して又は任意の順序で実施される:
a)第1の処理素子による第1の処理に従い、セル情報に固有であり、特にセル情報に依存するメッセージと、検査情報とを生成するステップ、
b)少なくとも1つの第2の処理素子による少なくとも1つの第2の処理に従い同一のメッセージを生成するステップ、
c)少なくとも部分的に、第2の処理に従ったメッセージ及び(第1の処理素子によって生成された)検査情報から構成されており、従って、第1の処理及び第2の処理に固有である出力通知を、通信システムインタフェースによって通信システムに出力するステップ。
【0029】
これによって、本発明に係る方法は、本発明に係る回路装置に関して詳細に記述した利点と同一の利点をもたらす。さらに、本方法は、本発明に係る回路装置を動作させることに適していると考えられる。
【0030】
1つの他の可能性においては、第1の処理が、巡回冗長検査(略してCRC)によるCRC検査値として検査情報を生成することを含むことができる。これによって、誤り制御における特に高い信頼性を提供することができる。
【0031】
さらに、第1の処理素子及び/又は第2の処理素子及び/又は通信システムインタフェースを本発明に係る回路装置に従い形成することができる。
【0032】
本発明のさらなる利点、特徴及び詳細は、図面を参照しながら本発明の実施例が詳細に記述されている、以下の記載より明らかになる。ここで、特許請求の範囲及び明細書において言及した特徴のそれぞれは、それ自体単独で又は任意の組み合わせで本発明の本質を成すと考えられる。