【文献】
DATABASE UniProtKB/Swiss-Prot, Accession No. Q47W67, Definition:Full=Sugar fermentation stimulation
【文献】
PLoS ONE, 2011, Vol. 6, No. 8, e23101
【文献】
Gene Therapy, 2010, Vol. 17, pp. 980-990
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
肺高血圧症は、治療されない場合は通常死につながる、深刻な慢性肺疾患である。この用語は、肺脈管構造における構造変化を特徴とし、かつ肺動脈系の血圧が25mmHg超まで増加する、様々な原因の疾患に適用される[1]。これは、通常、罹患した患者において、ストレス依存性の息切れ及び全般的な能力喪失をもたらす。疾患が悪化すると、形質転換(リモデリング)から生じる血管の狭小化、ならびに血管壁の3つのすべての層、すなわち内膜、中膜、及び外膜の肥厚化が引き起こされる[2]。これは、しばしば、安静時呼吸困難、包括的呼吸不全、及び右心不全を伴ううっ血症候群をもたらし、長期的には心不全をもたらす。肺動脈性肺高血圧症は、診断からの生存期間中央値がわずか約3年である[3]肺高血圧症の特に重度の形態であり、初期には軽度の症状のため、しばしば診断が遅れてしまう。
【0003】
肺高血圧症の機序の調査及び前臨床の治療研究のために、異なる疾患特性を機能させるいくつかの動物モデルが利用可能である。これらは、誘導型モデル(例えば、ハイポキシア、モノクロタリン、または抗原)及び遺伝子導入モデルの両方を含み、好適なモデルの選択は、検査される研究問題に依存する[4]。
【0004】
現在までに、肺動脈性肺高血圧症の様々な形態の可能性のある原因がすべて説明されているわけではない。それにもかかわらず、いくつかの既知の治療的に関連性のある要因が存在する。例えば、特発性肺動脈性肺高血圧症の場合、血管収縮因子の増加した放出が議論される[5〜7]一方で、家族性肺動脈性肺高血圧症の多くの場合、BMPR2[8]またはアクチビン受容体様キナーゼ1(ALK1)遺伝子[9]の変異が考えられ得る原因と見なされている。
【0005】
肺高血圧症または肺動脈性肺高血圧症の治療のための新たな治療的選択肢の開発が緊急に必要とされている。そのような開発は、肺組織への、より具体的には、肺内皮への治療的遺伝子の導入であり得る。肺内皮への特異的かつ効率的な遺伝子導入を可能にするベクターは、先行技術において未だに説明されていない。ウイルスベクターを使用する遺伝子治療は、従来の治療に対して全くまたは適切に応答しない疾患にとって有望な治療選択肢である。このアプローチは、ウイルスがそれらのゲノム中に対応する遺伝子の配列を有するような様式で修飾されたウイルスの手段による、治療される生物への治療的遺伝子の導入に基づく。遺伝子治療アプローチの遺伝子治療レジメンにおいて既に使用されているウイルスベクターは、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルスに基づく。
【0006】
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、それらが比較的安全であると分類されているため、臨床診療における使用のための有望な候補である。AAVベクターは、組織に導入遺伝子を導入し、組織内で遺伝子を安定的にかつ効率的に発現することができる。同時に、これらのベクターは、既知の発症機序を有さない[10]。臨床使用にとって特に重要なのは、特に良く調査されていると考えられる血清型2のAAVベクター(AAV2)である。AAVベクターが導入された後、導入遺伝子は、異なる形態で、例えばエピソーム、一本鎖、または二本鎖DNAとして、形質移入された細胞に組み込まれ得る。DNAのコンカテマー形態もまた、形質導入された細胞において実証されている。
【0007】
AAV2のゲノムは、約4700ヌクレオチド長の直鎖、一本鎖DNA分子によって形成され、両端に末端逆位配列(ITR)を有する。ゲノムはまた、複製領域(rep)及びカプシド領域(cap)と呼ばれる2つの大きい読み取り枠を含む。複製領域は、ウイルス複製の一部として必要とされるタンパク質をコードする。しかしながら、カプシド領域は、ウイルスの正二十面体カプシドを構成する、構造タンパク質VP1、VP2、及びVP3をコードする。
【0008】
しかしながら、遺伝子治療用途を有し、先行技術において既知であるほとんどのベクターのように、上述のAAV2ベクターなどの野生型AAVベクターは、特定の組織に対する十分な特異性を持たず、多種多様な細胞型を感染させる。したがって、野生型ベクターの全身投与は肺組織の不十分な形質導入をもたらし、他の組織の望まれない形質導入のため、治療対象における重度の免疫反応が予想される。特定の器官に対する増加した特異性を有するウイルスベクターの開発における進展は、ベクターを特定の器官に方向付けることができるペプチドリガンドの使用によって過去になされている[11〜12]。ある特定のペプチドリガンドが、脳などの様々な器官に対する「ホーミング」をもたらすことが示されている。
【0009】
文献[13]は、無作為化ペプチドライブラリにおけるAAV2の向性修飾カプシドの選別を可能にする方法を説明する。これらのライブラリから、インビトロで所望の細胞型を特異的に形質導入するベクターが単離され得る。しかしながら、驚くべきことに、この様式で選択されるカプシドは、それらが動物モデルにおいて必要な特異性を欠くために、しばしばインビボでの使用には好適ではないことが見出されている[14]。
【0010】
ウイルスベクターの向性を調節することができ、ひいては適切な細胞または組織特異性を確実にして、肺へのウイルスベクターの標的化された送達を可能にする薬剤が依然として大いに必要とされている。そのようなベクターは、肺の疾患及び/または障害の対応する有効な治療のために、肺組織における治療的遺伝子の特異的発現を可能にする。
【0011】
本発明は、肺への標的化された遺伝子導入のために利用可能なウイルスベクターを作製する。本発明に従うウイルスベクターは、それらのカプシド表面上に、肺の内皮組織上の受容体によってインビボで特異的に認識される、以前に未知のアミノ酸配列を発現する。したがって、本発明のウイルスベクターは、患者への全身投与後、患者の肺組織を特異的に形質導入する。
【0012】
本発明に従うウイルスベクターはまた、軽度の免疫反応しか有さない、肺の内皮細胞における導入遺伝子の強力かつ持続性の発現を可能にするため、ある特定の肺障害及び/または肺疾患の遺伝子治療処置に特に好適である。形質移入後、AAVベクターは、宿生において軽度の免疫反応しか引き起こさず、したがって、遺伝子治療に特に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明において、無作為化AAV2七量体ペプチドライブラリにおける選択によって様々な肺特異的配列が特定された。特定されたペプチド配列ESGHGYF(配列番号2)から開始して、ペプチド配列ESGHGYFがカプシドタンパク質VP1の部分配列として発現される、組み換えウイルスベクターrAAV2−ESGHGYFが調製された。続いて、ベクターrAAV2−ESGHGYFがマウスに対して静脈内投与され、肺内皮組織に対するベクターの特有の特異性がインビトロ及びインビボの両方で観察された。特異性は、以下の実施例に記載するように、CD31で染色することによって実証された。更に、ペプチドのN末端でアミノ酸グルタミン酸(E)とセリン(S)を置換することによって、アラニンスキャンを使用して、これらの2つのアミノ酸が形質導入の特異性に関連性がないことを示すことが可能であった。したがって、コア構造GHGYF(配列番号1)のみが、肺特異性に関与する。
【0014】
したがって、本発明は、ウイルスベクターなどの治療的薬剤を治療される対象の肺に方向付けるのに特に適した様々な肺特異的ペプチド配列を提供する。
【0015】
したがって、本発明の第一の態様は、肺内の内皮細胞に特異的に結合するペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質に関し、このペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列を含む。このペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質は、好ましくは、配列番号2のアミノ酸配列、または2つのN末端アミノ酸のうちの少なくとも1つの修飾によって配列番号2のアミノ酸配列と異なる、配列番号2のアミノ酸配列の変異形を含む。本発明に従うペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質は、好ましくは、肺、特にヒトの肺の内皮細胞に結合する。
【0016】
別の態様において、本発明は、肺の内皮細胞に特異的に結合するペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質に関し、このペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質は、配列番号3、配列番号4、または配列番号5のアミノ酸配列を含む。
【0017】
本開示の文脈において、用語「ペプチド」は、ペプチド結合によって互いに連結される、2〜10個のアミノ酸の連鎖を指す。用語「ポリペプチド」は、ペプチド結合によって互いに連結される、11〜100個のアミノ酸の連鎖を指す。100個より多いアミノ酸を有するポリペプチドは、本明細書において「タンパク質」と称される。本発明に従う特に好ましい一実施形態において、本発明に従う配列番号1もしくは配列番号2の肺特異的ペプチド配列、または配列番号2の変異形は、ウイルスのカプシドタンパク質の一部である。これは、ウイルスのカプシドタンパク質の一部として肺特異的配列が存在することを意味する。そのようなカプシドタンパク質を産生するために、肺特異的ペプチドをコードする対応するヌクレオチド配列が、ウイルスのカプシドタンパク質をコードするウイルスゲノムの領域内にクローン化される。肺特異的配列がカプシドタンパク質の一部として発現される場合、それは、ウイルスベクターの表面にわたる多くのコピーにおいて示され得る。
【0018】
カプシドタンパク質は、好ましくは、アデノ随伴ウイルス(AAV)に由来するものである。AAVは、先行技術において説明される血清型のうちのいずれかであり得、カプシドタンパク質は、好ましくは血清型2、4、6、8、及び9のうちの1つのAAVに由来する。血清型2のAAVのカプシドタンパク質が特に好ましい。
【0019】
AAV野生型のカプシドは、重複cap領域によってコードされるカプシドタンパク質VP1、VP2、及びVP3から構成される。3つのすべてのタンパク質は、同一のC末端領域を有する。AAVのカプシドは、1:1:8の比率で発現される、タンパク質VP1、VP2、及びVP3の60個のコピーを含む。本明細書に記載される肺特異的ペプチドのうちの1つをコードするヌクレオチド配列が、C末端でVP1の読み取り枠にクローン化される(すなわち、3つのすべてのタンパク質において同一である領域内で)場合、理論的には特異的ペプチドのうちの60個がカプシド表面上に見出され得ることが予想さ
れ得る。
【0020】
本発明の文脈におけるAAVベクターが修飾される場合、肺特異的ペプチドコードするヌクレオチド配列は、ゲノムの3′末端でcap領域にクローン化される。肺特異的ペプチド配列をコードする遺伝子は、カプシドタンパク質VP1、VP2、またはVP3のうちの1つのゲノム配列にクローン化され得る。AAV2のカプシドタンパク質は、配列番号6(VP1)、配列番号7(VP2)、及び配列番号8(VP3)において例として説明される。
【0021】
本発明に従う特に好ましい一実施形態において、肺特異的ペプチド配列をコードする遺伝子は、VP1遺伝子、好ましくは配列番号6のAAV2のVP1遺伝子の読み取り枠にクローン化される。この場合、クローン化された配列の挿入は、読み取り枠のいかなる変化にも、翻訳の中途での終了にもつながらないことが留意されるべきである。以上のために必要とされる方法は、当業者に容易に明らかである。
【0022】
AVVの3つのすべてのカプシドタンパク質において、ホーミング機能のためにペプチド配列に挿入され得る部位が特定されている[15〜20]。とりわけ、AAV2のVP1において位置588(R588)で発生するアルギニンは、ペプチドリガンドの挿入のために具体的に提案されている[21〜22]。ウイルスカプシドのこのアミノ酸位置は明らかに、AAV2のその天然受容体に対する結合に関与する。R588は、AAV2のその天然受容体に対する結合を媒介する4つのアルギニン残渣のうちの1つであることが示されている[23〜24]。カプシドのこの領域での修飾は、AAV2の天然向性を弱めるか、またはそれを完全に除去する。
【0023】
したがって、本発明に従うと、配列番号1もしくは配列番号2の発明的肺特異的ペプチド配列(またはそれらの変異形)、または配列番号3、配列番号4、もしくは配列番号5の肺特異的ペプチド配列のうちの1つの発明的肺特異的ペプチド配列が、AAV2のVP1タンパク質のアミノ酸550〜600の領域において挿入された形態で、特に配列番号6のタンパク質で存在することが特に好ましい。更により好ましくは、肺特異的ペプチド配列は、VP1タンパク質のアミノ酸560〜600、570〜600、560〜590、570〜590の領域において挿入された形態で存在する。
【0024】
したがって、配列番号1もしくは配列番号2のアミノ酸配列、またはそれらの変異形(または代替的には、配列番号3、配列番号4、もしくは配列番号5のペプチド配列)は、直後の例として、以下、550、551、552、553、554、555、556、557、558、559、560、561、562、563、564、565、566、567、568、569、570、571、572、573、574、575、576、577、578、579、580、581、582、583、584、585、586、587、588、589、590、591、592、593、594、595、596、597、598、599、または600のVP1タンパク質のアミノ酸のうちの1つ、特に配列番号6のタンパク質に隣接する。配列番号1もしくは配列番号2のアミノ酸配列またはその変異形(または代替的には、配列番号3、配列番号4、もしくは配列番号5のペプチド配列)が、実施例において示すように、配列番号6のVP1タンパク質のアミノ酸588に続くことが特に好ましい。この場合、クローン化の結果である1個以上、及び特に最大5(例えば、1、2、3、4、または5)個のアミノ酸が、位置588のアルギニン残渣と、配列番号1もしくは配列番号2の第1のアミノ酸、または配列番号2の変異形との間に位置することが可能である。同様に、1個以上、及び特に最大5(すなわち、1、2、3、4、または5)個のアミノ酸が、配列番号1もしくは配列番号2の最後のアミノ酸、または配列番号2の変異形の後に位置し得る。
【0025】
VP1について上に示されるカプシドタンパク質のアミノ酸配列中の部位及び領域は、AAV2のカプシドタンパク質VP2及びVP3に類似して適用される。AAV2の3つのカプシドタンパク質VP1、VP2、及びVP3は、N末端配列の長さによってのみ異なり、したがって同一のC末端を有するため、当業者は、問題なく配列比較をして、VP1及びVP2のアミノ酸配列中において上に示されるペプチドリガンドの挿入のための部位を特定するであろう。したがって、VP1におけるアミノ酸588は、VP2の位置R451(配列番号7)及び/またはVP3の位置R386(配列番号8)に対応する。
【0026】
配列番号9は、配列番号2のペプチド配列の導入後の、AAV2のVP1タンパク質の配列の一例を示す。クローン化のため、カプシドタンパク質は、AAV2のVP1タンパク質の天然配列中で発生しない2つの追加のアミノ酸を有する。したがって、配列番号2のペプチド配列は、そのN末端で位置589でグリシンによって、及びそのC末端で位置597でアラニンによって隣接される。更に、天然配列の位置587のアスパラギンは、グルタミンで置換される。
【0027】
したがって、特定の一実施形態において、本発明はまた、
(a)配列番号9のアミノ酸配列、
(b)配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列、または
(c)(a)もしくは(b)に定義されるアミノ酸配列のうちの1つの断片、を含むか、これらからなるカプシドタンパク質に関する。
【0028】
更なる一態様において、本発明は、肺の細胞に特異的に結合し、上述の配列番号1もしくは配列番号2のアミノ酸配列、または配列番号2の変異形(または代替的には、配列番号3、配列番号4、もしくは配列番号5のペプチド配列)を有するペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質を含むウイルスカプシドに向けられる。
【0029】
更に、本発明はまた、上述のペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質をコードする核酸を提供する。上述の本発明に従うペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質を含むカプシドタンパク質をコードする核酸が、同様に提供される。好ましくは、カプシドタンパク質をコードする核酸は、少なくとも80%の配列同一性を有する、配列番号10のヌクレオチド配列またはそれに由来するヌクレオチド配列を含む。そのような核酸を含むプラスミドがまた、提供される。
【0030】
更に別の態様において、本発明は、カプシド及びその中にパッケージングされた少なくとも1つの導入遺伝子を有する、組み換えウイルスベクター、すなわち、遺伝子操作技術の手段によって産生されたウイルスベクターに関し、カプシドは、配列番号1もしくは配列番号2のアミノ酸配列、または2つのN末端アミノ酸のうちの少なくとも1つの修飾によって配列番号2のアミノ酸配列と異なる、配列番号2の変異形のアミノ酸配列を有する少なくとも1つのカプシドタンパク質を含む。あるいは、カプシドタンパク質はまた、配列番号3、配列番号4、または配列番号5のアミノ酸配列を含み得る。組み換えウイルスベクターは、例えば、血清型2、4、6、8、及び9の組み換えAAVベクターであり得る。血清型2のAAVベクターが特に好ましい。
【0031】
異なるAAV血清型は、主にそれらの天然向性によって異なる。したがって、野生型AAV2は肺上皮細胞によりも肺胞細胞に容易に結合する一方で、AAV5、AAV6、及びAAV9は気道の上皮細胞のより大きい形質導入をすることができる。当業者は、細胞の特異性におけるこれらの天然の差を利用して、ある特定の細胞または組織について、本発明に従うペプチドによって媒介される特異性を更に増幅することができる。核酸レベルでは、様々なAAV血清型は高度に類似している。例えば、血清型AAV1、AAV2、AAV3、及びAAV6は、核酸レベルでは82%同一である[25]。本発明に従うウイルスベクターのカプシドは、1つ以上の導入遺伝子を含む。遺伝子操作によってベクターのゲノムに導入されている遺伝子は、導入遺伝子と呼ばれる。導入遺伝子(複数可)は、DNAまたはRNAであり得る。好ましくは、それは、ゲノムDNAまたはcDNAなどの一本鎖DNA(ssDNA)または二本鎖DNA(dsDNA)である。好ましくは、本発明に従う組み換えウイルスベクターの補助によって輸送されるべき導入遺伝子は、ヒト遺伝子である。好適な導入遺伝子は、例えば、患者における機能障害性遺伝子を置換するための治療的遺伝子を含む。それらはまた、対応する標的組織において発現されないか、または不十分な程度にしか発現されない遺伝子であり得る。好ましい一実施形態において、本発明に従うウイルスベクターから発現される導入遺伝子は、一酸化窒素合成酵素(NOS)または骨形成タンパク質受容体2(BMPR2)をコードする遺伝子である。NOSの場合、内皮NOS(eNOS)または誘導型NOS(iNOS)がコードされ得る。eNOSまたはiNOSをコードする遺伝子は、患者における肺障害または肺疾患、特に肺高血圧症または肺動脈性肺高血圧症の治療のために使用され得る。
【0032】
更なる一実施形態において、導入遺伝子は、放射線防護酵素などの放射線防護タンパク質をコードする。癌の治療における放射線治療の主要な制限は、放射線によって誘導される正常な組織に対する損傷であり、これは、放射線用量における減少、治療レジメンの中断、またはこの形態の治療の完全な断念をしばしば必要にする。肺は、治療的に特に関連性のある腫瘍増殖の部位であるが、同時に特に放射線感受性の器官であり、これが、そこにある原発腫瘍がしばしば制限された程度までしか放射線治療によって治療され得ず、びまん性腫瘍増殖が通常放射線治療によって全く治療され得ない理由である。本発明の肺特異的ベクターの援助によって、悪性組織の周りの健康な組織は、放射線防護タンパク質の標的化された発現によって保護され得る。好ましい一実施形態において、健康な肺組織に導入される導入遺伝子は、放射線誘導毒性における重大な因子のうちの1つであるスーパーオキシドアニオンの過酸化水素への転換を触媒する、マンガンスーパーオキシドジスムターゼ(MnSOD)である。本明細書で提案される更なる実施形態は、放射線によって引き起こされるDNA損傷の修復に寄与する、血管拡張性失調症変異(ATM)遺伝子のキナーゼドメインに関与する。更に好ましい一実施形態において、両方の遺伝子は、現在説明するベクターの手段によって、治療を受ける患者に導入される。
【0033】
更なる一実施形態において、導入遺伝子は、ヒトα1アンチトリプシンをコードする。十分な量のα1アンチトリプシンの欠如は、肺気腫または硬変につながり得る遺伝性代謝疾患である、ローレルエリクソン(Laurell−Eriksson)症候群の原因である。α1アンチトリプシンは、血清中のプロテアーゼの活性の調整のために必要とされる。この阻害剤の欠如は、血清中の増加したタンパク質分解、ひいては上に挙げられる重度の続発症につながる。
【0034】
本発明のウイルスベクターは、肺の疾患の治療的処置のための方法における使用に特に好適である。本発明の文脈における肺障害は、特に、肺高血圧症などの肺のすべての種類の血管疾患、肺腫瘍、及びα1アンチトリプシン欠損症(A1AD)などを含む。例えば、本発明に従うベクターを使用する治療に好適な肺腫瘍は、小細胞肺癌(SCLC)、扁平上皮細胞癌、腺癌、及び大細胞肺癌腫を含む。好ましい一実施形態において、本発明のウイルスベクターは、肺高血圧症または肺動脈性肺高血圧症の治療的処置のために使用される。
【0035】
更に別の実施形態において、導入遺伝子は、患者の肺組織に選択的に輸送されることが意図される、腫瘍抑制タンパク質などの抗腫瘍薬剤、または(インターロイキン1〜4、γインターフェロン、p53などの)サイトカインなどの免疫調節剤をコードする。
【0036】
ベクターはまた、アンチセンスRNA、リボザイムなどを肺の内皮組織に輸送するために使用され得る。更に、本発明に従うベクターはまた、血流中の全身投与を意図される分泌タンパク質をコードする導入遺伝子を含み得る。そのような分泌タンパク質は、心血管系の一部である肺毛細血管床を介して、血流中に効率的に堆積し得る。
【0037】
本明細書で使用される場合、用語「対象」は、AAVベクターによって感染させられ得る、任意のヒトまたは動物生物を示す。好ましくは、治療される対象は、ヒト、霊長動物、マウス、またはラットなどの哺乳動物である。好ましい一実施形態において、治療されるべき対象はヒトである。対象への形質移入後、ベクターは、肺内皮の細胞内で導入遺伝子の部位特異的発現をもたらす。
【0038】
導入遺伝子は、発現されるべき導入遺伝子の配列に加えて、適切な細胞の感染後に導入遺伝子の発現を制御する好適なプロモーターなどの、発現に必要な更なる要素を含むウイルスベクター中に、発現カセットの形態で存在し得る。好適なプロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターまたはニワトリβアクチン/サイトメガロウイルスハイブリッドプロモーター(CAG)などのAAVプロモーターに加えて、VEカドヘリンプロモーター、ステロイドプロモーター、及びメタロチオネインプロモーターなどの内皮細胞特異的プロモーターを含む。特に好ましい一実施形態において、本発明に従う導入遺伝子は、発現されるべき導入遺伝子に対する機能的結合によって連結される肺内皮特異的プロモーターを含む。このようにして、本発明に従うベクターの特異性は、肺内皮細胞のために更に増加され得る。本明細書で使用される場合、肺内皮特異的プロモーターは、肺内皮細胞内での活性が、肺内皮細胞ではない細胞内でよりも少なくとも2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、または100倍高いプロモーターである。好ましくは、このプロモーターはヒトプロモーターである。発現カセットはまた、発現されるべき外因性タンパク質の発現レベルを増加させるためのエンハンサー要素を含み得る。更に、発現カセットは、SV40ポリアデニル化配列またはウシ成長ホルモンのポリアデニル化配列などのポリアデニル化配列を含み得る。
【0039】
本発明に従うウイルスベクターは、好ましくは、それらのカプシドタンパク質のうちの1つの一部として、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5のアミノ酸配列を含み得る。あるいは、配列番号2のアミノ酸配列の変異形が使用され得、それは、2つのN末端アミノ酸のうちの少なくとも1つの修飾によって配列番号2のアミノ酸配列と異なる。変異形が、カプシドの一部として、肺の内皮細胞の受容体構造に対するベクターの特異的結合を通信する能力を保持する限り、修飾は、アミノ酸の置換、欠失、または挿入であり得る。したがって、本発明はまた、配列番号2の2つのN末端アミノ酸のうちの1つが変更されている、配列番号2の配列の変異形に及ぶ。したがって、本発明の範囲内にあるこれらの変異形は、配列がGAPまたはBESTFITを使用して比較されるとき、配列番号2に示されるアミノ酸配列に対して85%を超える配列同一性を有する。アミノ酸配列同一性を決定するためのこれらのコンピュータプログラムは、当該技術分野において十分に既知である。
【0040】
配列番号2の配列の変異形は、N末端アミノ酸のうちの1つまたは2つの置換に基づき得、つまり、1つまたは両方のN末端アミノ酸が別のアミノ酸と置換され得る。好ましくは、それにより配列番号2におけるアミノ酸配列の変異形が異なる置換は、保存的置換、すなわち、ペプチドに類似した機能的特性を与える類似した極性アミノ酸によるアミノ酸の置換である。好ましくは、置換されたアミノ酸は、置換されるアミノ酸と同一のアミノ酸の群に由来する。例えば、疎水性残渣は別の疎水性残渣と置換され得、極性残渣は別の極性残渣と置換され得る。保存的置換によって互いに交換され得る機能的に類似したアミノ酸は、例えば、グリシン、バリン、アラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、プロリン、フェニルアラニン、及びトリプトファンなどの非極性アミノ酸を含む。無電荷の極性アミノ酸の例は、セリン、スレオニン、グルタミン、アスパラギン、チロシン、及びシステインである。荷電極性(酸性)アミノ酸の例は、ヒスチジン、アルギニン、及びリジンを含む。荷電極性(塩基性)アミノ酸の例は、アスパラギン酸及びグルタミン酸を含む。
【0041】
アミノ酸が配列番号2の2つのN末端アミノ酸の領域に挿入されているこれらのアミノ酸配列も、配列番号2に示されるアミノ酸配列の変異形と考えられる。そのような挿入は、結果として生じる変異形が肺の内皮細胞に特異的に結合するその能力を保持する限り、原理として実行され得る。更に、本文脈において、配列番号2の2つのN末端アミノ酸のうちの1つが欠損しているこれらのタンパク質は、配列番号2に示されるアミノ酸配列の変異形であると考えられる。これは、代わりに、対応して欠失している変異形が肺の内皮細胞に特異的に結合することを必要とする。
【0042】
本発明によって網羅されるのはまた、例として、修飾アミノ酸を導入することによって、1つまたは両方のN末端アミノ酸で構造的に修飾される、配列番号2に示されるアミノ酸配列の肺内皮特異的変異形である。本発明によると、これらの修飾アミノ酸は、ビオチン化、リン酸化、グリコシル化、アセチル化、分枝、及び/または環化によって修飾されているアミノ酸であり得る。
【0043】
本発明に従うペプチド配列のうちの1つを含むか、または上で定義されるその変異形を含むカプシドを有するウイルスベクターは、肺の内皮細胞に特異的に結合する。本明細書で使用される場合、本発明に従うベクターの「特異的」結合は、全身投与後に主に肺の内皮細胞上または細胞内にベクターが蓄積することを意味する。これは、最初に投与されたベクターゲノムのうちの50%超が肺の内皮細胞内または内皮細胞の区域内に蓄積する一方で、50%未満が他の細胞または組織内(脾臓もしくは肝臓内など)またはその区域内に蓄積することを意味する。最初に投与されたベクターゲノムのうちの60%、70%、80%、90%、95%超、または99%超さえもが、肺の内皮細胞内またはその領域内に蓄積することが好ましい。ベクターの特異的結合はまた、導入遺伝子の発現を介して決定され得る。肺の内皮細胞に特異的に結合するウイルスベクターの場合、導入遺伝子の全発現の50%超が肺の内皮細胞内またはその領域内で発生する一方で、発現の50%未満が他の組織内またはその領域内で観察され得る。しかしながら、導入遺伝子の測定される全発現のうちの60%、70%、80%、90%、95%超、または99%超さえもが、肺の内皮細胞内またはその領域内で発生することが好ましい。
【0044】
当業者は、本発明に従うベクターの肺の内皮細胞に対する特異的結合、及びそのベクターを使用して導入される導入遺伝子の発現を決定することができるであろう。この目的に好適な形質導入及び発現の特異性を測定する方法を、以下の実施例に示す。
【0045】
本発明によると、そのカプシドが配列番号2に示されるアミノ酸配列の変異形を含むベクターが、対応するウイルスベクターの、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するカプシドとの結合活性の、少なくとも約50%の結合活性を有することもまた好ましい。変異形が、そのカプシドが配列番号2に示されるアミノ酸配列を有する対応するウイルスベクターの結合活性の、約60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の結合活性を有することが更により好ましい。ベクターの結合活性は、含まれる実施例に記載されるインビトロアッセイの補助によって測定され得る。
【0046】
好ましくは、ベクターゲノムの分布または導入遺伝子の発現によって決定され得るような、肺の内皮細胞の本発明に従うベクターの結合活性は、肺内皮細胞ではない対照細胞(脾臓細胞または肝細胞など)の結合活性よりも、少なくとも2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、75倍、100倍、150倍、200倍、250倍、500倍、600倍、700倍、800倍、900倍、1000倍、2000倍、5000倍、または10,000倍高い。
【0047】
本発明はまた、本発明に従うペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質を含む細胞、それをコードする核酸、そのような核酸を含むプラスミド、または上述の組み換えAAVベクターに関する。それは、好ましくはヒト細胞または細胞株である。
【0048】
一実施形態において、細胞は、例えば、ヒト対象から生検によって得られ、その後エキソビボ手順においてウイルスベクターを形質移入されている。その後、細胞は対象内に再埋入されても、または他の方法で、例えば、移植もしくは輸注によって対象に供給されてもよい。移植された細胞の拒絶の可能性は、細胞が由来する対象が、細胞が投与される対象に遺伝子的に類似しているときに、より低い。したがって、好ましくは、形質移入された細胞が供給される対象は、細胞が以前に得られた対象と同一の対象である。細胞は、好ましくはヒト肺細胞、特にヒト肺内皮の細胞である。形質移入されるべき細胞はまた、ヒト成体幹細胞などの幹細胞であり得る。本発明によると、形質移入されるべき細胞が、本発明に従うウイルスベクターによってエキソビボで形質移入されている自家細胞、例えば、上述の組み換えAAV2ベクターであることが特に好ましい。細胞は、好ましくは、対象における肺障害または肺疾患を治療するための方法において使用される。
【0049】
別の態様において、本発明は、カプシドタンパク質をコードするプラスミドが使用され、配列番号1もしくは配列番号2のアミノ酸配列、またはその変異形を含む、AAVベクターを産生するための方法に関する。あるいは、ベクターはまた、配列番号3、配列番号4、または配列番号5のアミノ酸配列を含み得る。発現されるべき導入遺伝子を含む組み換えAAVベクターを産生する基本的な方法は、先行技術に十分に説明される[28]。HEK293−T細胞は、3つのプラスミドを形質移入される。第1のプラスミドは、AAVゲノムのcap及びrep領域を含むが、天然に存在する逆方向反復(ITR)は欠損している。このプラスミドのcap領域は、少なくとも1つの修飾カプシドタンパク質をコードする遺伝子、すなわち、本発明に従うペプチド配列を含む遺伝子を含む。第2のプラスミドは、パッケージング信号を構成する、対応するITRによって隣接される導入遺伝子発現カセットを含む。したがって、発現カセットは、ウイルス粒子の組み立ての過程でカプシド中にパッケージングされる。第3のプラスミドは、HEK293−T細胞内でのAAV複製のために必要とされる、ヘルパータンパク質E1A、E1B、E2A、E4orf6、及びVAがその上にコードされる、アデノウイルスヘルパープラスミドである。
【0050】
本発明に従う組み換えベクターの蓄積及び精製を可能にする条件は、当該技術分野において既知である。本発明に従うベクターは、例えば、ゲル濾過プロセス(例えば、Sepharpseを使用)によって精製され、脱塩され、続いて濾液によって精製され得る。他の精製方法は、塩化セシウムまたはイオジキサノール勾配超遠心分離プロセスを更に含み得る。精製は、アデノ随伴ウイルスベクターが投与される対象における可能性のある有害な影響を減少させる。投与されるウイルスは、野生型ウイルス及び複製適格性ウイルスを実質的に含まない。ウイルスの純度は、PCR増幅などの好適な方法によって確認され得る。
更なる一態様において、本発明は、本発明のウイルスベクター、特にAAVベクターを含む薬学的組成物を提供する。この場合のウイルスベクターは、治療的に有効な量で、すなわち、治療される肺機能障害または肺疾患の少なくとも1つの症状を相当に改善するか、疾患の悪化を防ぐために十分な量で、患者に投与される。肺疾患に通常関連付けられる症状は、咳、発熱、胸痛、嗄声、及び呼吸困難を含む。治療的に有効な量の本発明に従うベクターは、言及した症状のうちの1つにおける正の変化、すなわち、罹患した対象の表現型が、肺疾患を患わない健康な対象の表現型に近づくことをもたらす変化を引き起こす。
【0051】
本発明の好ましい一実施形態において、ウイルスベクターの投与は、肺機能障害または肺疾患の完全な、または実質的に完全な治癒をもたらす量で発生する。したがって、薬学的組成物は、治療的に有効な用量の本発明に従うベクターを含む。治療的に有効な用量は、一般的に、治療を受ける対象にとって非毒性である。
【0052】
治療的効果を達成するために投与されなくてはならないウイルスベクターの正確な量は、いくつかのパラメータに依存する。投与されるべきウイルスベクターの量に関連性のある因子は、例えば、ウイルスベクターの投与の経路、肺疾患の性質及び重症度、治療される患者の疾患歴、ならびに治療される患者の年齢、体重、身長、及び健康である。更に、治療的効果を達成するために必要とされる導入遺伝子の発現レベル、患者の免疫反応、及び遺伝子産物の安定性は、投与される量と関連性がある。ウイルスベクターの治療的に有効な量は、一般的知識及び本開示に基づいて、当業者によって決定され得る。
【0053】
ウイルスベクターは、好ましくは1.0×10
10〜1.0×10
14vg/kg(1kgの体重当たりのウイルスゲノム)の範囲で、ウイルスの用量に対応する量で投与されるものの、1.0×10
11〜1.0×10
13vg/kgの範囲がより好ましく、5.0×10
11〜5.0×10
12vg/kgの範囲が更により好ましく、及び1.0×10
12〜5.0×10
12の範囲が更により好ましい。約2.5×10
12vg/kgのウイルス用量が最も好ましい。例えば、本発明に従うAAV2ベクターなどの投与されるべきウイルスベクターの量は、1つ以上の導入遺伝子の発現の強度に従って調整され得る。
【0054】
本発明に従う好ましいAAV2ベクターなどの本発明のウイルスベクターは、例えば、様々な投与の経路、例えば、カプセルまたは液体などでの経口投与のために製剤化され得る。しかしながら、ウイルスベクターは、好ましくは静脈内注入または静脈内輸注によって、非経口投与されることが好ましい。例えば、投与は、例えば、60分以内、30分以内、または15分以内の静脈内輸注により得る。ウイルスベクターが、手術中の肺への注入によって局所投与されることが更に好ましい。注入及び/または輸注による投与に好適である組成物は、典型的に、溶液及び分散液、ならびに対応する溶液及び分散液が調製され得る粉末を含む。そのような組成物は、ウイルスベクター及び少なくとも1つの好適な薬学的に許容される担体を含む。静脈内投与に好適な薬学的に許容される担体は、静菌水、リンゲル溶液、生理食塩水、リン酸緩衝食塩水(PBS)、Cremophor EL(商標)を含む。注入及び/または輸注のための無菌組成物は、必要とされる量のウイルスベクターを適切な担体内に導入し、その後濾過により無菌化することによって調製され得る。注入または輸注による投与のための組成物は、それらの調製後、長期間にわたって保管条件下で安定したままであるべきである。組成物は、この目的のために保存剤を含有し得る。好適な保存剤は、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、及びチメロサールを含む。対応する製剤及び好適なアジュバントの調製は、例えば、“Remington:The Science and Practice of Pharmacy,”Lippincott Williams&Wilkins;21st edition(2005)に説明される。
【0055】
更なる一態様において、本発明は肺障害または肺疾患の治療的処置のための方法に関し、本発明に従うウイルスベクター、好ましくは上述のAAVベクターが対象に投与される。ベクターは、配列番号1もしくは配列番号2のアミノ酸配列、または上述の配列番号2の変異形を有する、少なくとも1つのカプシドタンパク質を有するカプシドを含む。あるいは、ベクターはまた、配列番号3、配列番号4、または配列番号5のアミノ酸配列を含み得る。ウイルスベクターは、肺障害または肺疾患の治療のために有用である導入遺伝子、例えば、治療的遺伝子を更に含む。好ましくは、例えば、静脈内注入または輸注などの全身投与による、治療される対象への投与後、ベクターは、肺の内皮細胞内で遺伝子の特異的発現をもたらす。
【実施例】
【0057】
すべてのデータを、平均値±標準偏差(SD)として決定した。GraphPad Prism3.0 program(GraphPad Software,San Diego,USA)を使用して、統計分析を実行した。一元配置分散分析によって、その後ボンフェローニによる複数比較試験によってデータを分析した。P値>0.05を有意であると見なした。
【0058】
実施例1:AAV2ペプチドライブラリの選択
組織特異的AAV2カプシドの選択のために、無作為表示ペプチドライブラリを調製し、4回選択した。以前に説明された2段階プロトコル[26〜27]を使用して、個々にクローンを発生する、1×10
8個の理論上の多様性を有する無作為X
7−AAVペプチドライブラリを調製した。VP1におけるアミノ酸位置R588に対応する、AAVゲノムにおけるヌクレオチド位置3967で7つの無作為化アミノ酸をコードする縮重オリゴヌクレオチドを、最初に産生した。オリゴヌクレオチドは、配列5′−CAGTCGGCCAGAGAGGC(NNK)
7GCCCAGGCGGCTGACGAG−3′(配列番号
11)を有した。Sequenase(Amersham,Freiburg,Germany)及び配列5′−CTCGTCAGCCGCCTGG−3′(配列番号12)を有するプライマーを使用して、第2の鎖を産生した。二本鎖挿入断片をBglIで切断し、QIAquick Nucleotide Removal Kit(Qiagen,Hilden,Germany)で精製し、SfiI消化ライブラリプラスミドpMT187−0−3でライブラリに結紮した[26]。寒天を含有する150mg/mlのアンピシリン上、代表的な一定分量の、形質転換した電気適格性DH5αバクテリアから増殖したクローンの数によって、プラスミドライブラリの多様性を決定した。ライブラリプラスミドを収集し、QiagenからのPlasmid Preparation Kitを使用して精製した。10枚の細胞培養皿(15cm)中の2×10
8個の293T細胞に
、プラスミドpVP3cm(末端逆位配列を有さない修飾コドンの使用を有する野生型cap遺伝子を含有)[27]、ライブラリプラスミド、及びpXX6ヘルパープラスミド[28]を形質移入することによって、AAVライブラリゲノムをキメラ野生型及びライブラリAAVカプシド(AAV導入シャトル)内にパッケージングし、プラスミド間の比率は1:1:2であった。結果として生じるAAVライブラリ導入シャトルを使用して、細胞培養皿(15cm)中の2×10
8個の293T細胞を、1つの細胞当たり0.5複
製単位の感染効率で感染させた。細胞を、5プラーク形成単位(pfu/細胞)の感染効率で、Ad5(Laboratoire de Therapie Genique,F
ranceによる提供)で重感染させた。48時間後に、上清から最終AAV表示ライブラリを収集した。VivaSpin Column(Viva Science,Hannover,Germany)を使用して上清を濃縮し、以前に説明されたイオジキサノール密度勾配超遠心分離[29]によって精製し、LightCyclerシステム(Roche Diagnostics,Mannheim,Germany)で、cap特異的プライマー5′− GCAGTATGGTTCTGTATCTACCAACC−3′(配列番号13)及び5′−GCCTGGAAGAACGCCTTGTGTG−3′(配列番号14)を使用するリアルタイムPCRによって滴定した。
【0059】
インビボでのバイオパニングのために、ゲノムライブラリの1×10
11個の粒子をFVB/Nマウスの尾静脈中に注入した。粒子に8日間を与え、標的細胞を分布及び感染させた。8日後、マウスを死滅させ、肺を取り除いた。DNeasy Tissue Kit(Qiagen)を使用して、組織の全DNAを抽出した。第1のPCRについてプライマー5′−ATGGCAAGCCACAAGGACGATG−3′(配列番号15)及び5′−CGTGGAGTACTGTGTGATGAAG−3′(配列番号16)を使用し、第2のPCRについてプライマー5′−GGTTCTCATCTTTGGGAAGCAAG−3′(配列番号17)及び5−TGATGAGAATCTGTGGAGGAG−3′(配列番号18)を使用するネステッドPCRによって、ライブラリのAAV粒子中に含まれ、対象の組織内に蓄積していた無作為オリゴヌクレオチドを増幅した。PCR増幅オリゴヌクレオチドを使用して、更に3回の選択のために二次ライブラリを調製した。一次ライブラリ(上記を参照されたい)と同様に、しかし導入シャトルを産生する追加のステップなしで、二次ライブラリを生成した。二次プラスミドライブラリを使用して、形質移入試薬Polyfect(Qiagen)を使用した細胞培養皿(15cm)中の2×10
8個の293T細胞を、1個の細胞当たり25個のライブラリプラスミドの比率で形
質移入した。各回の選択後、いくつかのクローンが配列決定された。適用された選択方法を、
図1に示す。
【0060】
結果:4回の選択後、合計9個のクローンが配列決定された。配列決定は、5個のクローンがペプチド配列ESGHGYF(配列番号2)を有することを明らかにした。他のクローンは、ペプチド配列ADGVMWL(配列番号3)、GEVYVSF(配列番号4)、及びNNVRTSE(配列番号5)を示した。優性クローンESGHGYF、ならびにADGVMWL及びGEVYVSFを含む4つのペプチド配列のうちの3つが、少なくとも1つの疎水性芳香族基を示した。様々な回の選択で得られたペプチドを、
図2に示す。
【0061】
実施例2:組み換えAAVベクターの調製及び定量化
実施例1で濃縮されたクローンを組み換えAAVベクターとして産生し、それらの形質導入プロファイルについて試験した。組み換えAAVベクターを、HEK293T細胞の三重形質移入によって産生した。1%のペニシリン/ストレプトマイシン及び10%のウシ胎仔血清を補った、Dulbecco’s modified Eagle Medium(Invitrogen,Carlsbad,USA)中、37℃、5%のCO
2で
細胞をインキュベートした。形質移入薬剤Polyfect(Qiagen,Hilden,Germany)によって、プラスミドDNAを293T細胞内に形質移入した。形質移入の4日後、細胞を収集し、溶解させ、以前に説明されたイオジキサノール密度勾配超遠心分離の手段[29]によってベクターを精製した。形質移入のために、ルシフェラーゼ遺伝子pUF2−CMV−luc[27]またはGFP遺伝子pTR−CMV−GFP[30]をコードするアデノウイルスヘルパープラスミドとしてpXX6を使用し、対象のAAVカプシドをコードするプラスミドもまた使用した[28]。AAVライブラリから既に選択されているAAVカプシド変異体をコードするプラスミド、及び野生型対照は、修飾pXX2−187[31]またはpXX2[28]であった。更に、アラニンスキャニングのために、ペプチドESGHGYFの修飾変異形をコードする、更なるオリゴヌクレオチド挿入断片を作製した。記載するように、挿入断片をライブラリ挿入断片に処理した(上記を参照されたい)。組み換えベクターを定量化するために、以前に説明されたLightCyclerシステム[32]によって、CMV特異的プライマー5′−GGCGGAGTTGTTACGACAT−3′(配列番号19)及び5′−GGGACTTTCCCTACTTGGCA−3′(配列番号20)を使用するリアルタイムPCRによって、ゲノム力価を決定した。
【0062】
実施例3:インビボでの組み換えAAVベクターの向性の検査
インビボでの濃縮ペプチドの向性の検査を可能にするために、ルシフェラーゼレポーター遺伝子を含む組み換えベクターのカプシド中にペプチドを導入した。変異カプシドを有するベクターを、対照ベクターとともにマウスに注入した。5×10
10個のベクターゲノム(vg)/マウス(1つの注入されたAAVクローン当たり、n=3匹の動物)の用量で、AAVベクターを静脈内投与した。14日目に、イソフルランで動物を麻酔した。1匹のマウス当たり200μlのルシフェリン基質(150mg/kg、Xenogen)の腹腔内注入に続いて、Living Image4.0(Caliper)ソフトウェアを備えるXenogen IVIS200撮像システム(Caliper Lifescience,Hopkinton,USA)を使用して、ルシフェラーゼ発現を分析した。相対光単位(光子/秒/cm2)における発光が最高の強度に達するとき、異なる位置(腹側、背側、外側)での導入遺伝子の発現の、代表的なインビボ生物発光画像を撮影した。その後、動物を屠殺し、対象の器官を素早く取り除き、各器官内の導入遺伝子の発現の画像を直ちに撮影した。その後、器官を液体窒素中で凍結させ、−80℃で保管した。Living Image4ソフトウェアのDLIT選択肢を使用することによって、インビボ発光画像の3次元再構築を得、発光された光を、560〜640nmの5つの異なる波長においてそれぞれ3分間ずつ測定した。ルシフェラーゼ発現を定量化するために、器官をレポーター溶解緩衝液(RLB,Promega,Madison,USA)中でホモジナイズした。100μLのルシフェラーゼアッセイ試薬(LAR,Promega)の添加後、ルシフェラーゼレポーター遺伝子活性の決定を、ルミノメーター(Mithras LB9 40,Berthold Technologies,Bad Wildbad,Germany)において、10秒間隔、各測定間に2秒間の遅延で実行した。Roti NanoQuant protein assay(Roth,Karlsruhe,Germany)を使用して、タンパク質の全量に関して各試料において値を正規化した。
【0063】
結果:ルシフェラーゼレポーター遺伝子を有する組み換えベクターのベクター力価に関する収率は、野生型AAV2カプシドを担持するベクターに匹敵することが見出され、これは、濃縮ペプチドが、カプシド組み立てまたは遺伝子のパッケージングに悪影響を与えないことを示した。14日後の生物発光のインビボでの測定は、ペプチドESGHGYFが、導入遺伝子の強力かつ肺特異的な発現(≦10
5p/秒/cm
2/r)をもたらすことを示した。これらの結果は、外植された器官によってエキソビボで実行した対照実験によって確認された。未選択のライブラリ(CVGSPCG)の無作為に選択された対照クローンは、肺においてではなく、主に心臓において、及び腹部のいくつかの部分において発生する、弱い遺伝子発現をもたらした。野生型AAV2は、肺においてではなく、心臓、肝臓、及び骨格筋における弱い遺伝子発現を引き起こした。生物発光画像の3次元再構築は、肺特異的発現を確認した。ペプチドADGVMWL(配列番号3)もインビボでの選択中に濃縮されたものであるが、これも同様に導入遺伝子の肺特異的発現をもたらしたが、ペプチドESGHGYFよりも弱かった。ADGVMWLルシフェラーゼベクターの投与の14日以内の遺伝子発現は非常に低かったものの、それは、約5×10
4p/秒/c
m
2/rに増加し、ベクター注入の28日後に肺において特異的に観察することができた
。これらの結果は、外植された器官によってエキソビボで実行した対照実験によって確認された。代表的な器官からの組織可溶化液のルシフェラーゼ活性の調査は、野生型AAV2が心臓において低い遺伝子発現(2.9×10
4RLU/mgのタンパク質、
図3A上
部パネルを参照されたい)、及び他の器官においてはより低いレベルの発現を引き起こすことを示した。対照ペプチドCVSGPCGは、心臓において中程度の遺伝子発現(8.7×10
4RLU/mgのタンパク質、
図3A中部パネルを参照されたい)を産生した。
対照的に、肺特異的ESGHGYFカプシドを有するベクターは、肺における強力かつ特異的な遺伝子発現(4.1×10
5RLU/mgのタンパク質、
図3A下部パネルを参照
されたい)をもたらした。心臓及び肝臓において(すなわち、野生型AAV2及びペプチドベクターCVGSPCGが強力な発現をもたらす2つの器官において)、肺特異的ESGHGYFベクターは、およそバックグラウンド信号の発現(約1×10
3RLU/mg
のタンパク質)のみを示した。対照的に、ESGHGYFベクターの肺における導入遺伝子の発現は、野生型AAV2またはCVGSPCG対照ベクターによって媒介された発現よりも200倍超高かった(
図3Bを参照されたい)。
【0064】
結果は更に、ESGHGYFベクターによって媒介された導入遺伝子の肺特異的発現が、長期間にわたって器官特異的なままであることを示した。肺特異的AAV2 ESGHGYFルシフェラーゼベクターの静脈内投与後、導入遺伝子の発現を164日間の期間にわたって測定した。肺領域において発光される放射線を、定量的に決定した。全期間にわたって、導入遺伝子の発現は高レベルで安定し、肺に限定されていた。肺における最も低い発現は7日目に測定され、ピークは42日目に達せられ、放射線は164日目の最終測定までわずかにゆっくりと低下した(
図4)。
【0065】
実施例4:ペプチドESGHGYFのアラニンスキャニング
肺特異性に関する、ペプチドESGHGYFにおける個々のアミノ酸の重要性を調査するために、アラニンスキャニングを実行した。
【0066】
結果:最初の2つのアミノ酸を置換することによって、肺特異的向性は変化しないことが見出された。しかしながら、アミノ酸3〜4または5〜7が交換されると、感染力の完全な喪失(位置3もしくは4)または心臓もしくは骨格筋への特異性の変化(位置5〜7)のいずれかが存在した。
【0067】
実施例5:ベクター分布の分析
静脈内注入されたESGHGYFベクターの導入遺伝子の肺特異的発現が、肺特異的ホーミングに基づくかどうかを確認するために、まず、5×10
10gp/マウスの静脈内投与の4時間後にベクターの分布を調査した。ベクターゲノムの定量化を、リアルタイムPCRによって実行した。まず、組織ホモジナイザー(Precellys24,Peqlab,Erlangen,Germany)及びDNeasy Tissue Kit(Qiagen,Hilden,Germany)を製造業者の説明書に従って使用して、5×10
10vg/マウスの静脈内投与後の様々な時点で、関係する器官から全DNAを抽出した。分光光度計(NanoDrop ND−2000C,Peqlab)を使用して、DNAを定量化した。前述のCMV特異的プライマーを使用する定量的リアルタイムPCRによって、組織内のAAVベクターDNAの分析を実行し、40ngのテンプレートを使用し、全DNAに関して正規化した。
【0068】
結果:リアルタイムPCRによるベクターゲノムの定量化は、ESGHGYFの肺特異的ホーミングを示した。肺において検出され得るベクターゲノムの量(3.8×10
5±
1.9×10
5vg/100ngの全DNA)は、別の器官において実証されたベクター
ゲノムの量よりも約6〜100倍高かった(
図5A)。ベクターホーミングと導入遺伝子の発現との間の直接の相関性を決定するために、5×10
10gp/マウスの静脈内投与の14日後、すなわち、導入遺伝子の発現が決定されたとき(上記を参照されたい)に、野生型AAV2、対照ペプチドCVGSPCG、及び肺特異的ペプチドESGHGYFのベクター分布を測定した。野生型AAV2ベクターによって提供されたゲノムは、主に肝臓及び脾臓から回収され、対照ペプチドを有するベクターのゲノムは、大部分が脾臓から得られた。全体として、脾臓内で検出されたベクターゲノムの量は、検査されたすべてのカプシド変異形において比較的等しく(4×10
3vp/100ngの全DNA)、これは
、導入遺伝子の提供及び発現から独立した、網内皮系内の粒子の非特異的捕捉機序を示す。対照的に、肺特異的ペプチドESGHGYFを有するベクターによって提供されたゲノムの分布データは、高度な特異的蓄積が肺において観察されて、導入遺伝子の発現データに高度に類似した。ペプチドESGHGYFを示す、肺において検出されたベクターの量は、他の器官においてよりも約250倍高く、野生型ベクターまたは対照カプシドベクターを注入した肺においてよりも最大500倍高かった(
図5B)。器官間の同一の分布値が、ベクター投与の28日後に見出された。見出されるゲノムの量についての、3つのベクターカプシド変異形間の直接の比較を、関連性のある量のベクターDNAが検出された3つの組織について、
図5Cに示す。全体的として、このデータは、ESGHGYFベクターによって媒介される導入遺伝子の肺特異的発現が、循環する粒子の組織特異的ホーミングによって達成されることを示す。
【0069】
実施例6:免疫組織化学的検査及び組織学的検査
免疫組織化学的検査を使用して、ペプチドESGHGYF及び/または対照として野生型AAVカプシドを有するrAAV−GFPベクターの静脈内投与の14日後の、肺及び対照器官における細胞レベルでの導入遺伝子の発現を可視化した。動物の肺を、20分間、20cmの水の静水圧下、気管を通して、4%(w/v)のパラホルムアルデヒドによってエキソサイチュで固定し、同一の固定液中、24時間の浸漬を続けた。肺組織をパラフィン内に包埋した。2μmの厚さを有する切片をワックスから取り除き、再水和し、免疫組織化学的検査のために使用した。GFP(A−11122、Invitrogen)またはCD31(AB28364、Abcam,Cambridge,USA)のポリクローナル抗体を使用して、免疫組織化学的手順を実行した。内因性ペルオキシダーゼを、メタノール中、1%のH
2O
2で30分間不活性化した。CD31での染色前に、切片をクエン酸緩衝液(pH6.0)中、100℃で20分間加熱した。PBS中で洗浄した後、PBS、10%のヤギ血清(Vector Lab,Burlingame,USA)及び2%の粉乳(Roth)とともに切片を30分間インキュベートした。原発抗体を37℃で1時間結合させた。PBS中で洗浄した後、二次ビオチン化ヤギ抗ウサギ抗体(Vector Lab)とともに切片を30分間インキュベートした。VECTASTAIN−Elite ABC Kit(Vector Lab)及び3,3′−ジアミノベンジデン(DAB,Sigma−Aldrich,St.Louis,USA)を使用することによって、結合した抗体を可視化した。選択された切片をヘマラムで対比染色した。
【0070】
結果:rAAV−ESGHGYFを注入したマウスの肺において、顕微鏡検査は、肺微小血管系全体にわたる内皮細胞の集中的な染色を示し、大肺血管においてわずかに少ない程度に染色を示した(データ図示せず)。対照的に、野生型AAV2ベクターを注入したマウスの肺組織は、染色を示さなかった。組織特異性を確認するために、野生型AAV2ベクターの注入後に、対照器官(導入遺伝子の高発現を頻繁に実証することが既知である組織)として肝臓を分析した。肝臓において、野生型rAAV2ベクターの投与後に肝細胞染色を観察したが、rAAV2−ESGHGYFベクターの投与後に染色は観察されなかった。CD31染色によって、ベクターを形質導入した肺細胞の内皮系統を確認し、rAAV2−ESGHGYFを注入したマウスの肺の連続切片において、GFP染色によって得られたパターンを確認した(データ図示せず)。
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