【文献】
CARPI. F.(他1名),Electroactive Polymer-Based Devices for e-Textiles in Biomedicine,IEEE TRANSACTIONS ON INFORMATION TECHNOLOGY IN BIOMEDICINE,米国,IEEE,2005年 9月,VOL. 9, NO. 3,pp. 295−318
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1〜請求項17のいずれか1項に記載の圧電基材、請求項18〜請求項20のいずれか1項に記載の圧電織物、又は、請求項21に記載の圧電編物を含む生体情報取得デバイス。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、長尺平板状の圧電体(第1の圧電体及び第2の圧電体)の「主面」とは、長尺平板状の圧電体の厚さ方向に直交する面(言い換えれば、長さ方向及び幅方向を含む面)を意味する。織物の「主面」、及び編物の「主面」についても同様である。
本明細書中において、部材の「面」は、特に断りが無い限り、部材の「主面」を意味する。
本明細書において、厚さ、幅、及び長さは、通常の定義どおり、厚さ<幅<長さの関係を満たす。
本明細書において、2つの線分のなす角度は、0°以上90°以下の範囲で表す。
本明細書において、「フィルム」は、一般的に「フィルム」と呼ばれているものだけでなく、一般的に「シート」と呼ばれているものをも包含する概念である。
本明細書において、「MD方向」とはフィルムの流れる方向(Machine Direction)、すなわち、延伸方向であり、「TD方向」とは、前記MD方向と直交し、フィルムの主面と平行な方向(Transverse Direction)である。
【0014】
〔圧電基材〕
本実施形態の圧電基材は、長尺状の導体と、前記導体に対して一方向に螺旋状に巻回された長尺状の第1の圧電体と、を備え、
前記第1の圧電体が、光学活性を有するヘリカルキラル高分子(A)(以下、単に「ヘリカルキラル高分子(A)」ともいう)を含み、
前記第1の圧電体の長さ方向と、前記第1の圧電体に含まれるヘリカルキラル高分子(A)の主配向方向と、が略平行であり、
X線回折測定から下記式(a)によって求められる前記第1の圧電体の配向度Fが0.5以上1.0未満の範囲である圧電基材。
配向度F=(180°―α)/180°・・(a)
式(a)中、αは配向由来のピークの半値幅を表す。αの単位は、°である。
【0015】
以下、本実施形態の圧電基材の説明において、「長尺状の導体」を、単に「導体」と称して説明することがあり、「長尺状の第1の圧電体」を、単に「第1の圧電体」と称して説明することがある。
【0016】
ここで、第1の圧電体の配向度Fは、第1の圧電体に含まれるヘリカルキラル高分子(A)の配向の度合いを示す指標であり、例えば、広角X線回折装置(リガク社製 RINT2550、付属装置:回転試料台、X線源:CuKα、出力:40kV、370mA、検出器:シンチレーションカウンター)により測定されるc軸配向度である。
なお、第1の圧電体の配向度Fの測定方法の例は、後述の実施例に示すとおりである。
「一方向」とは、本実施形態の圧電基材を導体の軸方向の一端側から見たときに、第1の圧電体が導体の手前側から奥側に向かって巻回されている方向をいう。具体的には、右方向(右巻き、即ち時計周り)又は左方向(左巻き、即ち反時計周り)をいう。
【0017】
本実施形態の圧電基材は、上記構成を備えることにより、圧電感度に優れ、圧電出力の安定性にも優れる。
より詳細には、本実施形態の圧電基材では、第1の圧電体がヘリカルキラル高分子(A)を含むこと、第1の圧電体の長さ方向とヘリカルキラル高分子(A)の主配向方向とが略平行であること、及び、第1の圧電体の配向度Fが0.5以上1.0未満であることにより圧電性が発現される。
その上で、本実施形態の圧電基材は、上記第1の圧電体が、導体に対して一方向に螺旋状に巻回された構成をなす。
本実施形態の圧電基材では、第1の圧電体を上記のように配置することにより、圧電基材の長さ方向に張力(応力)が印加されたときに、ヘリカルキラル高分子(A)にずり力が加わり、圧電基材の径方向にヘリカルキラル高分子(A)の分極が生じる。その分極方向は、螺旋状に巻回された第一の圧電体を、その長さ方向に対して平面と見做せる程度の微小領域の集合体とみなした場合、その構成する微小領域の平面に、張力(応力)に起因したずり力がヘリカルキラル高分子に印加された場合、圧電定数d
14に起因して発生する電界の方向と略一致する。
具体的には、例えばポリ乳酸においては、分子構造が左巻き螺旋構造からなるL−乳酸のホモポリマー(PLLA)の場合、PLLAの主配向方向と長さ方向が略平行な第1の圧電体を、導体に対して、左巻きに螺旋状に巻回した構造体に、張力(応力)が印加されると、径方向に平行に、張力と垂直な円状断面の円の中心から外側方向への電界(分極)が発生する。また、これとは逆にPLLAの主配向方向と長さ方向が略平行な第1の圧電体を、導体に対して、右巻きに螺旋状に巻回した構造体に、張力(応力)が印加された場合、径方向に平行に、張力と垂直な円状断面の円の外側から中心方向への電界(分極)が発生する。
【0018】
また、例えば分子構造が右巻き螺旋構造からなるD−乳酸のホモポリマー(PDLA)の場合、PDLAの主配向方向と長さ方向が略平行な第1の圧電体を、導体に対して、左巻きに螺旋状に巻回した構造体に、張力(応力)が印加されると、径方向に平行に、張力と垂直な円状断面の円の外側から中心方向への電界(分極)が発生する。また、これとは逆にPDLAの主配向方向と長さ方向が略平行な第1の圧電体を、導体に対して、右巻きに螺旋状に巻回した構造体に、張力(応力)が印加されると、径方向に平行に、張力と垂直な円状断面の円の中心から外側方向への電界(分極)が発生する。
これにより、圧電基材の長さ方向に張力が印加された際、螺旋状に配置された第1の圧電体の各部位において、張力に比例した電位差が位相の揃った状態で発生するため、効果的に張力に比例した電圧信号が検出されると考えられる。
従って、本実施形態の圧電基材によれば、圧電感度に優れ、圧電出力の安定性にも優れた圧電基材が得られる。
例えば、本実施形態の圧電基材は、導体に対して、圧電体を右巻きに螺旋状に巻回し、かつ一部の圧電体を左巻きに螺旋状に巻回した構造体を含むものであってもよい。一部の圧電体を左巻きに螺旋状に巻回した場合、圧電感度の低下を抑制し、かつ圧電出力の電圧極性が安定した圧電基材が得られる点から、左巻きの割合は全体(右巻き及び左巻きの合計)に対して50%未満であることが好ましい。
また、本実施形態の圧電基材は、導体に対して、圧電体を左巻きに螺旋状に巻回し、かつ一部の圧電体を右巻きに螺旋状に巻回した構造体を含むものであってもよい。一部の圧電体を右巻きに螺旋状に巻回した場合、圧電感度の低下を抑制し、かつ圧電出力の電圧極性が安定した圧電基材が得られる点から、右巻きの割合は全体(右巻き及び左巻きの合計)に対して50%未満であることが好ましい。
【0019】
特に、ヘリカルキラル高分子(A)として、非焦電性のポリ乳酸系高分子を用いた圧電基材は、焦電性のPVDFを用いた圧電基材に比べ、圧電感度の安定性、及び圧電出力の安定性(経時又は温度変化に対する安定性)がより向上する。
また、前述の特許文献4に記載の圧電性繊維を備える圧電単位では、導電性繊維に対する圧電性繊維の巻回方向が限定されていない上、ずり力を構成する力の起点も力の方向も、本実施形態の圧電基材とは異なる。このため、特許文献4に記載の圧電単位に張力を印加しても、圧電単位の径方向に分極が生じないため、即ち、圧電定数d
14に起因して発生する電界の方向に分極が生じないため、圧電感度が不足すると考えられる。
【0020】
ここで、第1の圧電体の長さ方向と、ヘリカルキラル高分子(A)の主配向方向と、が略平行であることは、第1の圧電体が長さ方向への引張に強い(即ち、長さ方向の引張強度に優れる)という利点を有する。従って、第1の圧電体を、導体に対して一方向に螺旋状に巻回しても破断しにくくなる。
更に、第1の圧電体の長さ方向と、ヘリカルキラル高分子(A)の主配向方向と、が略平行であることは、例えば、延伸された圧電フィルムをスリットして第1の圧電体(例えばスリットリボン)を得る際の生産性の面でも有利である。
本明細書中において、「略平行」とは、2つの線分のなす角度が、0°以上30°未満(好ましくは0°以上22.5°以下、より好ましくは0°以上10°以下、更に好ましくは0°以上5°以下、特に好ましくは0°以上3°以下)であることを指す。
また、本明細書中において、ヘリカルキラル高分子(A)の主配向方向とは、ヘリカルキラル高分子(A)の主たる配向方向を意味する。ヘリカルキラル高分子(A)の主配向方向は、第1の圧電体の配向度Fを測定することによって確認できる。
また、原料を溶融紡糸した後にこれを延伸して、第1の圧電体を製造する場合、製造された第1の圧電体におけるヘリカルキラル高分子(A)の主配向方向は、主延伸方向を意味する。主延伸方向とは、延伸方向を指す。
同様に、フィルムの延伸及び延伸されたフィルムのスリットを形成して第1の圧電体を製造する場合、製造された第1の圧電体におけるヘリカルキラル高分子(A)の主配向方向は、主延伸方向を意味する。ここで、主延伸方向とは、一軸延伸の場合には延伸方向を指し、二軸延伸の場合には、延伸倍率が高い方の延伸方向を指す。
【0021】
以下、本発明に係る圧電基材の第1実施形態について詳細に説明する。
【0022】
〔第1実施形態の圧電基材〕
第1実施形態の圧電基材は、長尺状の導体が内部導体であり、長尺状の第1の圧電体が、内部導体の外周面に沿って一方向に螺旋状に巻回されていることが好ましい。
導体として、内部導体を用いることにより、内部導体の軸方向に対して、第1の圧電体が螺旋角度βを保持して一方向に螺旋状に配置されやすくなる。
ここで、「螺旋角度β」とは、導体の軸方向と、導体の軸方向に対して第1の圧電体が配置される方向(第1の圧電体の長さ方向)とがなす角度を意味する。
これにより、例えば、圧電基材の長さ方向に張力が印加されたときに、ヘリカルキラル高分子(A)の分極が、圧電基材の径方向に発生しやすくなる。この結果、効果的に張力に比例した電圧信号(電荷信号)が検出される。
さらに、上記構成の圧電基材は、同軸ケーブルに備えられる内部構造(内部導体及び誘電体)と同一の構造となるため、例えば、上記圧電基材を同軸ケーブルに適用した場合、電磁シールド性が高く、ノイズに強い構造となり得る。
【0023】
第1実施形態の圧電基材は、さらに、前記一方向とは異なる方向に螺旋状に巻回された長尺状の第2の圧電体を備えることが好ましい。
さらに、第2の圧電体が、光学活性を有するヘリカルキラル高分子(A)を含み、
第2の圧電体の長さ方向と、第2の圧電体に含まれるヘリカルキラル高分子(A)の主配向方向と、が略平行であり、
X線回折測定から前記式(a)によって求められる第2の圧電体の配向度Fが0.5以上1.0未満の範囲であり、
第1の圧電体に含まれるヘリカルキラル高分子(A)のキラリティと、第2の圧電体に含まれるヘリカルキラル高分子(A)のキラリティと、が互いに異なることが好ましい。
これにより、例えば、圧電基材の長さ方向に張力が印加されたときに、第1の圧電体に含まれるヘリカルキラル高分子(A)、及び第2の圧電体に含まれるヘリカルキラル高分子(A)の両方に分極が生じる。分極方向はいずれも圧電基材の径方向である。
この結果、より効果的に張力に比例した電圧信号(電荷信号)が検出される。従って、圧電感度、及び圧電出力の安定性がより向上する。
特に、第1実施形態の圧電基材が、第1の外部導体を備え、かつ圧電体が第1の圧電体及び第2の圧電体を備える二層構造をなす場合、内部導体や第1の外部導体に対して、第1の圧電体及び第2の圧電体の空隙が少なく密着させることが可能となり、張力によって発生した電界が効率よく電極に伝達されやすい。従って、より高感度なセンサーを実現するのに好適な形態である。
【0024】
第1実施形態の圧電基材は、圧電感度、及び圧電出力の安定性を向上する観点から、さらに、内部導体の外周面に沿って螺旋状に巻回された第1の絶縁体を備え、
第1の絶縁体が、第1の圧電体から見て、内部導体とは反対側に配置されていることが好ましい。
例えば、第1実施形態の圧電基材が第1の外部導体を備える場合には、圧電基材を繰り返し屈曲したり、小さい曲率半径で屈曲させると、巻回した第1の圧電体に隙間ができやすく、内部導体と第1の外部導体とが電気的に短絡する可能性がある。その場合、第1の絶縁体を配置することにより、内部導体と第1の外部導体を電気的により確実に遮蔽することが可能となる。また、屈曲して使用される用途においても高い信頼性を確保することが可能となる。
【0025】
第1実施形態の圧電基材は、圧電感度、及び圧電出力の安定性を向上する観点から、さらに、内部導体の外周面に沿って螺旋状に巻回された第1の絶縁体を備え、
第1の絶縁体が、内部導体と第1の圧電体との間に配置されていることが好ましい。
例えば、第1実施形態の圧電基材が第1の外部導体を備える場合には、圧電基材を繰り返し屈曲したり、小さい曲率半径で屈曲させると、巻回した第1の圧電体に隙間ができやすく、内部導体と第1の外部導体とが電気的に短絡する可能性がある。その場合、第1の絶縁体を配置することにより、内部導体と第1の外部導体とを電気的により確実に遮蔽することが可能となる。また、屈曲して使用される用途においても高い信頼性を確保することが可能となる。
【0026】
第1実施形態の圧電基材は、さらに、一方向とは異なる方向に巻回された長尺状の第2の圧電体を備え、
第2の圧電体が、光学活性を有するヘリカルキラル高分子(A)を含み、
第2の圧電体の長さ方向と、第2の圧電体に含まれるヘリカルキラル高分子(A)の主配向方向と、が略平行であり、
X線回折測定から前記式(a)によって求められる第2の圧電体の配向度Fが0.5以上1.0未満の範囲であり、
第1の圧電体と第2の圧電体とは交互に交差された組紐構造をなし、
第1の圧電体に含まれるヘリカルキラル高分子(A)のキラリティと、第2の圧電体に含まれるヘリカルキラル高分子(A)のキラリティと、が互いに異なることが好ましい。
これにより、例えば、圧電基材の長さ方向に張力が印加されたときに、第1の圧電体に含まれるヘリカルキラル高分子(A)、及び第2の圧電体に含まれるヘリカルキラル高分子(A)の両方に分極が生じる。分極方向はいずれも圧電基材の径方向である。
これにより、より効果的に張力に比例した電圧信号が検出される。この結果、圧電感度、及び圧電出力の安定性がより向上する。
特に、第1実施形態の圧電基材が、第1の外部導体を備え、かつ圧電体が第1の圧電体及び第2の圧電体を備える組紐構造をなす場合、第1の圧電体及び第2の圧電体間に適度な空隙があるため、圧電基材が屈曲変形させるような力が働いた際にも、空隙が変形を吸収し、しなやかに屈曲変形し易くなる。そのため、第1実施形態の圧電基材は3次元平面に沿わすような、例えばウェアラブル製品(後述する圧電織物、圧電編物、圧電デバイス、力センサー、生体情報取得デバイス等)の一構成部材として好適に使用できる。
【0027】
第1実施形態の圧電基材は、圧電感度、及び圧電出力の安定性を向上する観点から、さらに、内部導体の外周面に沿って巻回された第1の絶縁体を備え、
第1の圧電体と第1の絶縁体とは交互に交差された組紐構造をなすことが好ましい。
これにより、圧電基材の屈曲変形時において、第1の圧電体が内部導体に対して一方向に巻回した状態が保持されやすくなる。この態様の組紐構造においては、第1の圧電体に張力がかかりやすくなる観点から、第1の圧電体と第1の絶縁体との隙間が無い方が好ましい。
【0028】
第1実施形態の圧電基材において、圧電感度、及び圧電出力の安定性を向上する観点から、第1の圧電体は、内部導体の軸方向に対して、15°〜75°(45°±30°)の角度を保持して巻回されていることが好ましく、35°〜55°(45°±10°)の角度を保持して巻回されていることがより好ましい。
【0029】
第1実施形態の圧電基材において、圧電感度、及び圧電出力の安定性を向上する観点から、第1の圧電体は、単数又は複数の束からなる繊維形状を有し、第1の圧電体の断面の長軸径は、0.0001mm〜10mmであることが好ましく、0.001mm〜5mmであることがより好ましく、0.002mm〜1mmであることが更に好ましい。
ここで、「断面の長軸径」は、第1の圧電体(好ましくは繊維状圧電体)の断面が円形状である場合、「直径」に相当する。
第1の圧電体の断面が異形状である場合、「断面の長軸径」とは、断面の幅の中で、最も長い幅とする。
第1の圧電体が複数の束からなる圧電体の場合、「断面の長軸径」とは、複数の束からなる圧電体の断面の長軸径とする。
【0030】
本実施形態の圧電基材(例えば、第1実施形態の圧電基材)において、圧電感度、及び圧電出力の安定性を向上する観点から、第1の圧電体は長尺平板形状を有することが好ましい。第1の圧電体の厚さは0.001mm〜0.2mmであり、第1の圧電体の幅は0.1mm〜30mmであり、第1の圧電体の厚さに対する第1の圧電体の幅の比は2以上である。
以下、長尺平板形状を有する第1の圧電体(以下、「長尺平板状圧電体」ともいう)の寸法(厚さ、幅、比(幅/厚さ、長さ/幅))に関し、より詳細に説明する。
第1の圧電体の厚さは0.001mm〜0.2mmであることが好ましい。
厚さが0.001mm以上であることにより、長尺平板状圧電体の強度が確保される。更に、長尺平板状圧電体の製造適性にも優れる。
一方、厚さが0.2mm以下であることにより、長尺平板状圧電体の厚さ方向の変形の自由度(柔軟性)が向上する。
【0031】
また、第1の圧電体の幅は0.1mm〜30mmであることが好ましい。
幅が0.1mm以上であることにより、第1の圧電体(長尺平板状圧電体)の強度が確保される。更に、長尺平板状圧電体の製造適性(例えば、後述するスリット工程における製造適性)にも優れる。
一方、幅が30mm以下であることにより、長尺平板状圧電体の変形の自由度(柔軟性)が向上する。
【0032】
また、第1の圧電体の厚さに対する第1の圧電体の幅の比(以下、「比〔幅/厚さ〕」ともいう)は2以上であることが好ましい。
比〔幅/厚さ〕が2以上であることにより、主面が明確となるので、第1の圧電体(長尺平板状圧電体)の長さ方向に渡って向きを揃えて電極層(例えば外部導体)を形成し易い。例えば、主面の少なくとも一方に外部導体を形成し易い。また、長尺平板状圧電体を後述の圧電織物、又は圧電編物にする際に、圧電織物又は圧電編物の主面に電極層を揃えて配置することが容易である。このため、圧電感度に優れ、また、圧電感度の安定性にも優れる。
【0033】
第1の圧電体の幅は、0.5mm〜15mmであることがより好ましい。
幅が0.5mm以上であると、第1の圧電体(長尺平板状圧電体)の強度がより向上する。更に、長尺平板状圧電体のねじれをより抑制できるので、圧電感度及びその安定性がより向上する。
幅が15mm以下であると、長尺平板状圧電体の変形の自由度(柔軟性)がより向上する。
【0034】
第1の圧電体は、幅に対する長さの比(以下、比〔長さ/幅〕ともいう)が、10以上であることが好ましい。
比〔長さ/幅〕が10以上であると、第1の圧電体(長尺平板状圧電体)の変形の自由度(柔軟性)がより向上する。更に、長尺平板状圧電体が適用される圧電デバイス(圧電織物、圧電編物等)において、より広範囲に渡り、圧電性を付与できる。
【0035】
本実施形態の圧電基材(例えば、第1実施形態の圧電基材)において、第1の圧電体が長尺平板形状を有する場合、圧電感度、及び圧電出力の安定性を向上する観点から、第1の圧電体の少なくとも一方の主面の側に機能層が配置されていることが好ましい。
【0036】
前記機能層は、易接着層、ハードコート層、帯電防止層、アンチブロック層、保護層、及び電極層のうちの少なくとも一つを含むことが好ましい。
これにより、例えば、圧電デバイス(圧電織物、圧電編物等)、力センサー、アクチュエータ、生体情報取得デバイスへの適用がより容易になる。
【0037】
前記機能層は、電極層を含むことが好ましい。
これにより、圧電基材を、例えば、圧電デバイス(圧電織物、圧電編物等)、力センサー、アクチュエータ、生体情報取得デバイスの構成要素の一つとして用いた場合に、第1の外部導体と導体(好ましくは内部導体)との接続をより簡易に行うことができるので、本実施形態の圧電基材に張力が印加されたときに、張力に応じた電圧信号が検出されやすくなる。
【0038】
本実施形態の圧電基材(例えば、第1実施形態の圧電基材)において、第1の圧電体と、前記機能層と、を含む積層体の表面層の少なくとも一方は、電極層であることが好ましい。
これにより、圧電基材を、例えば、圧電デバイス(圧電織物、圧電編物等)、力センサー、アクチュエータ、生体情報取得デバイスの構成要素の一つとして用いた場合に、第1の外部導体又は導体(好ましくは内部導体)と、積層体との接続をより簡易に行うことができるので、本実施形態の圧電基材に張力が印加されたときに、張力に応じた電圧信号が検出されやすくなる。
【0039】
本実施形態の圧電基材は、導体が錦糸線であるであることが好ましい。
錦糸線の形態は、綿糸等の短繊維を撚糸した繊維、ポリエテステル糸、ナイロン糸等の長繊維などに対して、圧延された銅箔が螺旋状に巻回された構造を有するが、電気伝導度の高い銅が用いられていることにより出力インピーダンスを低下することが可能となる。従って、本実施形態の圧電基材に張力が印加されたときに、張力に応じた電圧信号が、検出されやすくなる。この結果、圧電感度、及び圧電出力の安定性がより向上する。
【0040】
本実施形態の圧電基材は、導体及び第1の圧電体の間に接着層を備えることが好ましい。
これにより、導体と第1の圧電体との相対位置がずれにくくなるため、第1の圧電体に張力がかかりやすくなり、第1の圧電体に含まれるヘリカルキラル高分子(A)にずり応力が印加されやすくなる。従って、効果的に張力に比例した電圧出力を導体(好ましくは信号線導体)から検出することが可能となる。また、接着層を備えることで、単位引張力当たりの発生電荷量の絶対値がより増加する。
【0041】
本実施形態の圧電基材において、第1の圧電体に含まれるヘリカルキラル高分子(A)は、圧電性をより向上させる観点から、下記式(1)で表される繰り返し単位を含む主鎖を有するポリ乳酸系高分子であることが好ましい。
【化2】
【0042】
本実施形態の圧電基材において、第1の圧電体に含まれるヘリカルキラル高分子(A)は、圧電性をより向上させる観点から、光学純度が95.00%ee以上であることが好ましい。
【0043】
本実施形態の圧電基材において、第1の圧電体に含まれるヘリカルキラル高分子(A)は、圧電性をより向上させる観点から、D体又はL体からなることが好ましい。
【0044】
本実施形態の圧電基材において、第1の圧電体に含まれるヘリカルキラル高分子(A)の含有量は、圧電性をより向上させる観点から、第1の圧電体の全量に対し、80質量%以上であることが好ましい。
【0045】
本実施形態の圧電基材において、さらに、外周に第1の外部導体を備えることが好ましい。
ここで、「外周」とは、圧電基材の外周部分を意味する。
これにより、静電シールドすることが可能となり、外部の静電気の影響による、導体(好ましくは内部導体)の電圧変化が抑制される。
【0046】
本実施形態の圧電基材において、さらに、前記第1の外部導体の外周に第2の絶縁体を備えることが好ましい。
本実施形態の圧電基材が第2の絶縁体を備えることにより、外部からの水や汗等の液体の浸入、ほこりの浸入等を抑制できる。そのため、水、汗、ほこりなどに起因する導体(好ましくは内部導体)と外部導体間の漏れ電流の発生を抑制することが可能となる。その結果、圧電基材を、例えば、圧電デバイス(圧電織物、圧電編物等)、力センサー、アクチュエータ、生体情報取得デバイスの構成要素の一つとして用いた場合に、様々な環境の変動に対しても頑強な、感度が変動しにくい、安定な出力を可能にする。
【0047】
以下、第1実施形態に係る圧電基材の具体的態様Aについて、図面を参照しながら説明する。
【0048】
〔具体的態様A〕
図1Aは、第1実施形態に係る圧電基材の具体的態様Aを示す側面図である。
図1Bは、
図1AのX−X’線断面図である。
具体的態様Aの圧電基材10は、導体としての長尺状の内部導体12Aと、長尺状の第1の圧電体14Aと、内部導体12Aと第1の圧電体14Aとの間に配置された接着層(不図示)と、を備えている。
図1に示すように、第1の圧電体14Aは、内部導体12Aの外周面に沿って、螺旋角度β1で一端から他端にかけて、隙間がないように一方向に螺旋状に巻回されている。
「螺旋角度β1」とは、内部導体12Aの軸方向G1と、内部導体12Aの軸方向に対する第1の圧電体14Aの配置方向とがなす角度を意味する。
また、具体的態様Aでは、第1の圧電体14Aは、内部導体12Aに対して左巻きで巻回している。具体的には、圧電基材10を内部導体12Aの軸方向の一端側(
図1の場合、右端側)から見たときに、第1の圧電体14Aは、内部導体12Aの手前側から奥側に向かって左巻きで巻回している。
また、
図1中、第1の圧電体14Aに含まれるヘリカルキラル高分子(A)の主配向方向は、両矢印E1で示されている。即ち、ヘリカルキラル高分子(A)の主配向方向と、第1の圧電体14Aの配置方向(第1の圧電体14Aの長さ方向)とは、略平行となっている。
さらに、内部導体12Aと第1の圧電体14Aとの間には、接着層(不図示)が配置されている。これにより、具体的態様Aの圧電基材10では、圧電基材10の長さ方向に張力が印加されても、第1の圧電体14Aと内部導体12Aとの相対位置がずれないように構成されている。
【0049】
以下、具体的態様Aの圧電基材10の作用について説明する。
例えば、圧電基材10の長さ方向に張力が印加されると、第1の圧電体14Aに含まれるヘリカルキラル高分子(A)にずり力が加わり、ヘリカルキラル高分子(A)は分極する。このヘリカルキラル高分子(A)の分極は、
図1B中、矢印で示されるように、圧電基材10の径方向に生じ、その分極方向は位相が揃えられて生じると考えられる。これにより、効果的に張力に比例した電圧信号が検出される。
さらに、具体的態様Aの圧電基材10では、内部導体12Aと第1の圧電体14Aとの間に接着層が配置されているため、第1の圧電体14Aに張力がより印加されやすくなっている。
以上のことから、具体的態様Aの圧電基材10によれば、圧電感度に優れ、圧電出力の安定性が優れたものとなる。
【0050】
次に、第1実施形態に係る圧電基材の具体的態様Bについて、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、具体的態様Aと同一のものには同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0051】
〔具体的態様B〕
図2は、第1実施形態に係る圧電基材の具体的態様Bを示す側面図である。
具体的態様Bの圧電基材10Aは、長尺状の第2の圧電体14Bを備えている点が第1の態様の圧電基材10と異なる。
なお、第1の圧電体14Aに含まれるヘリカルキラル高分子(A)のキラリティと、第2の圧電体14Bに含まれるヘリカルキラル高分子(A)のキラリティとは、互いに異なっている。
第1の圧電体14Aは、具体的態様Aと同様に、内部導体12Aの外周面に沿って、螺旋角度β1で一端から他端にかけて、隙間がないように一方向に螺旋状に巻回されている。
一方、第2の圧電体14Bは、
図2に示すように、第1の圧電体14Aの外周面に沿って、螺旋角度β1と略同一角度である螺旋角度β2で第1の圧電体14Aの巻回方向とは逆の方向で螺旋状に巻回されている。
「螺旋角度β2」とは、前述の螺旋角度β1と同義である。
ここで、具体的態様Bにおける「第1の圧電体14Aの巻回方向と逆の方向」とは、右巻きのことである。即ち、圧電基材10Aを内部導体12Aの軸方向G2の一端側(
図2の場合、右端側)から見たときに、第2の圧電体14Bは、内部導体12Aの手前側から奥側に向かって右巻きで巻回している。
また、
図2中、第2の圧電体14Bに含まれるヘリカルキラル高分子(A)の主配向方向は、両矢印E2で示されている。即ち、第2の圧電体14Bに含まれるヘリカルキラル高分子(A)の主配向方向と、第2の圧電体14Bの配置方向(第2の圧電体14Bの長さ方向)とは、略平行となっている。
【0052】
以下、具体的態様Bの圧電基材10Aの作用について説明する。
例えば、圧電基材10Aの長さ方向に張力が印加されると、第1の圧電体14Aに含まれるヘリカルキラル高分子(A)、及び第2の圧電体14Bに含まれるヘリカルキラル高分子(A)両方にずり応力が印加され、分極が生じる。分極方向はいずれも圧電基材10Aの径方向である。これにより、効果的に張力に比例した電圧信号が検出される
以上のことから、具体的態様Bの圧電基材10Aによれば、圧電感度、及び圧電出力の安定性がより向上する。
特に、具体的態様Bの圧電基材10Aが外部導体を備える場合には、圧電体が第1の圧電体及び第2の圧電体を備え、かつ二層構造をなすため、内部導体や外部導体に対して、第1の圧電体及び第2の圧電体の空隙が少なく密着させることが可能となり、張力によって発生した電界が効率よく電極に伝達されやすい。従って、より高感度なセンサーを実現するのに好適な形態である。
【0053】
次に、第1実施形態に係る圧電基材の具体的態様Cについて、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、具体的態様A及び具体的態様Bと同一のものには同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0054】
〔具体的態様C〕
図3は、第1実施形態に係る圧電基材の具体的態様Cを示す側面図である。
具体的態様Cの圧電基材10Bは、第1の圧電体14A及び第2の圧電体14Bが交互に交差されており組紐構造をなしている点が具体的態様Bの圧電基材10Aと異なる。
なお、第1の圧電体14Aに含まれるヘリカルキラル高分子(A)のキラリティと、第2の圧電体14Bに含まれるヘリカルキラル高分子(A)のキラリティとは、互いに異なっている。
図3に示すように、具体的態様Cの圧電基材10Bでは、第1の圧電体14Aが、内部導体12Aの軸方向G3に対し、螺旋角度β1で左巻きで螺旋状に巻回され、第2の圧電体14Bが、螺旋角度β2で右巻きで螺旋状に巻回されると共に、第1の圧電体14A及び第2の圧電体が交互に交差されている。
また、
図3に示す組紐構造において、第1の圧電体14Aに含まれるヘリカルキラル高分子(A)の主配向方向(両矢印E1)と、第1の圧電体14Aの配置方向とは、略平行となっている。同様に、第2の圧電体14Bに含まれるヘリカルキラル高分子(A)の主配向方向(両矢印E2)と、第2の圧電体14Bの配置方向とは、略平行となっている。
【0055】
以下、具体的態様Cの圧電基材10Bの作用について説明する。
具体的態様Bと同様に、例えば、圧電基材10Bの長さ方向に張力が印加されると、第1の圧電体14Aに含まれるヘリカルキラル高分子(A)、及び第2の圧電体14Bに含まれるヘリカルキラル高分子(A)両方に分極が生じる。分極方向はいずれも圧電基材10Bの径方向である。これにより、効果的に張力に比例した電圧信号が検出される
以上のことから、具体的態様Cの圧電基材10Bによれば、圧電感度、及び圧電出力の安定性がより向上する。
特に、具体的態様Cの圧電基材10Bが外部導体を備える場合には、圧電基材10Bの長さ方向に張力が印加されたときに、組紐構造を形成する左巻きの第1の圧電体と右巻きの第2の圧電体にずり応力が印加され、その分極の方向は一致し、内部導体と外部導体の間の絶縁体(即ち、第1の圧電体及び第2の圧電体)における圧電性能に寄与する体積分率が増えるため、圧電性能がより向上する。そのため、具体的態様Cの圧電基材10Bは3次元平面に沿わすような、例えばウェアラブル製品(後述する圧電織物、圧電編物、圧電デバイス、力センサー、生体情報取得デバイス等)の一構成部材として好適に使用できる。
【0056】
以下、本発明に係る圧電基材の第2実施形態について詳細に説明する。
【0057】
〔第2実施形態の圧電基材〕
第2実施形態の圧電基材は、長尺状の導体と長尺状の第1の圧電体とが互いに捩り合わされていることが好ましい。
互いに捩り合わされている態様としては特に限定はないが、同じ旋回軸かつ同じ周回数にて互いに捩り合わされていることがより好ましい。
前記導体と前記第1の圧電体との1m当たりの周回数は、導体の外径(太さ)及び第1の圧電体の外径(太さ)に応じて異なるが、例えば導体の外径及び第1の圧電体の外径が同程度であれば、以下の式で定義される。なお、「外径」とは、前述の「断面の長軸径」と同義である。
周回数(回)=1000(mm)×tanβ3/(πD)
式中、Dは、導体又は第1の圧電体の外径(mm)を表す。πDは、導体又は第1の圧電体の円周長を表す。β3は、旋回軸と第1の圧電体の長さ方向のなす角度(°)を表す。
【0058】
例えば導体の外径及び第1の圧電体の外径が同程度である場合、前記導体と前記第1の圧電体との1m当たりの周回数は、圧電感度、及び圧電出力の安定性を向上する観点から、上記式において、1000(mm)×tanβ3/(πD)(回)(但し、β3=45°±30°)で表されることが好ましく、1000(mm)×tanβ3/(πD)(回)(但し、β3=45°±25°)で表されることがより好ましく、1000(mm)×tanβ/(πD)(回)(但し、β3=45°±20°)で表されることが更に好ましく1000(mm)×tanβ3/(πD)(回)(但し、β3=45°±15°)で表されることが特に好ましい。
これにより、導体及び第1の圧電体が強く互いに密着すると共に、互いに捩り合わせるときに切断しにくくなるため、圧電性と機械的強度を両立することができる。
【0059】
具体的に、導体の外径及び第1の圧電体の外径が同程度である場合、前記導体と前記第1の圧電体との1m当たりの周回数は、上記式を満たす範囲であれば特に限定はないが、例えば、200〜2000回が好ましく、200〜1500回がより好ましく、200〜1000回が更に好ましく、200〜500回が特に好ましい。
【0060】
第2実施形態の圧電基材における第1の圧電体は、単数又は複数の束からなる繊維形状を有することが好ましい。
さらに、第2実施形態の圧電基材における第1の圧電体の断面の長軸径は、圧電感度、及び圧電出力の安定性を向上する観点から、0.0001mm〜2mmであることが好ましく、0.001mm〜1mmであることがより好ましく、0.002mm〜0.5mmであることが更に好ましい。
なお、「断面の長軸径」とは、前述の「断面の長軸径」と同義である。
【0061】
次に、第2実施形態に係る圧電基材の具体的態様Dについて、図面を参照しながら説明する。
【0062】
〔具体的態様D〕
図4は、第2実施形態に係る圧電基材の具体的態様Dを示す側面図である。
図4に示すように、第2実施形態の圧電基材10Cは、長尺状の導体12Bと、長尺状の第1の圧電体14Cとが、同じ旋回軸G4で、かつ同じ周回数にて、互いに捩り合わされている。より詳細には、具体的態様Dの圧電基材10Cでは、第1の圧電体14Cが旋回軸G4に対し、右巻きで螺旋状に巻回されている。
ここで、「右巻き」とは、圧電基材10Cを旋回軸G4の方向の一端側(
図4の場合、右端側)から見たときに、第1の圧電体14Cが旋回軸G4の手前側から奥側に向かって右巻きで巻回していることを意味する。
図4は、導体12B及び第1の圧電体14Cが周回数「3」で捩られている。この場合、
図4中、圧電基材10Cの長さL1あたりの周回数は「3」であり、1周回あたりの第1の圧電体14C間の距離(導体12B間の距離も同義)はL2である。また、
図4中、旋回軸G4と第1の圧電体14Cの長さ方向のなす角度はβ3である。
また、
図4中、第1の圧電体14Cに含まれるヘリカルキラル高分子(A)の主配向方向は、両矢印E3で示されている。即ち、ヘリカルキラル高分子(A)の主配向方向と、第1の圧電体14Cの配置方向とは、略平行となっている。
【0063】
以下、第2実施形態に係る圧電基材10Cの作用について説明する。
例えば、圧電基材10Cの長さ方向に張力が印加されると、第1の圧電体14Cに含まれるヘリカルキラル高分子(A)にずり力が加わり、第1の圧電体14Cに含まれるヘリカルキラル高分子(A)は分極する。このヘリカルキラル高分子(A)の分極は、圧電基材10Cの径方向に生じ、その分極方向は位相が揃えられて生じると考えられる。これにより、効果的に張力に比例した電圧信号が検出される。
特に、第2実施形態の具体的態様Dでは、導体12Bと第1の圧電体14Cの断面積を低減することができ、結果、圧電基材10Cを細くすることができる。そのため、高い屈曲性、しなやかさを付与することが容易となり、特に、後述する圧電織物、圧電編物などの加工に適している。
以上のことから、第2実施形態に係る圧電基材10Cによれば、圧電感度に優れ、圧電出力の安定性も優れたものとなる。
【0064】
以下、本発明に係る圧電基材の第3実施形態及び第4実施形態について説明する。
【0065】
〔第3実施形態及び第4実施形態の圧電基材〕
本発明に係る圧電基材としては、張力が印加されたときに生じる電荷(電界)を電圧信号として取り出す構成に限定されず、例えば、ねじり力が印加されたときに生じる電荷(電界)を電圧信号として取り出す構成であってもよい。
【0066】
第3実施形態の圧電基材10E及び第4実施形態の圧電基材10Fは、
図17〜20に示すように、導体としての長尺状の内部導体12Aと、長尺状の第1の圧電体14Aと、内部導体12Aと第1の圧電体14Aとの間に配置された接着層(不図示)と、を備え、第1の圧電体14Aの外表面に外部導体13を備えている。また、圧電基材10E、10Fでは、第1の圧電体14Aは、内部導体12Aに対して、主配向方向(両矢印E1)に螺旋状に巻回されており、第1の圧電体14Aに含まれるヘリカルキラル高分子(A)の主配向方向(両矢印E1)と、第1の圧電体14Aの配置方向とは、略平行となっている。
【0067】
第3実施形態の圧電基材10Eは、第1の圧電体14Aに含まれるヘリカルキラル高分子(A)がL−乳酸のホモポリマー(PLLA)であり、一方、第4実施形態の圧電基材10Fは、第1の圧電体14Aに含まれるヘリカルキラル高分子(A)がD−乳酸のホモポリマー(PDLA)である。第3実施形態の圧電基材10Eにおけるねじり方向と発生分極方向との関係を
図17、18に示し、第4実施形態の圧電基材10Fにおけるねじり方向と発生分極方向との関係を
図19、20に示す。
【0068】
図17において、圧電基材10Eに螺旋軸を中心軸として矢印X1方向のねじり力が印加されたとき、螺旋状に巻回された第1の圧電体14Aにずり応力が印加され、円形断面の中心方向から外側方向にPLLAの分極が生じる。一方、
図18において、圧電基材10Eに螺旋軸を中心軸として矢印X1方向と反対の矢印X2方向のねじり力が印加されたとき、螺旋状に巻回された第1の圧電体14Aにずり応力が印加され、円形断面の外側方向から中心方向にPLLAの分極が生じる。したがって、圧電基材10Eにおいて、ねじり力に比例した電荷(電界)が発生し、発生した電荷は電圧信号(電荷信号)として検出される。
【0069】
また、
図19において、圧電基材10Fに螺旋軸を中心軸として矢印X1方向のねじり力が印加されたとき、螺旋状に巻回された第1の圧電体14Aにずり応力が印加され、円形断面の外側方向から中心方向にPDLAの分極が生じる。一方、
図20において、圧電基材10Fに螺旋軸を中心軸として矢印X1方向と反対の矢印X2方向のねじり力が印加されたとき、螺旋状に巻回された第1の圧電体14Aにずり応力が印加され、円形断面の中心方向から外側方向にPDLAの分極が生じる。したがって、圧電基材10Fにおいて、ねじり力に比例した電荷(電界)が発生し、発生した電荷は電圧信号(電荷信号)として検出される。
【0070】
次に、本実施形態の圧電基材に含まれる導体、第1の圧電体などについて説明する。
【0071】
<導体>
本実施形態の圧電基材は、長尺状の導体を備える。
本実施形態における導体(例えば内部導体)は、信号線導体であることが好ましい。
信号線導体とは、第1の圧電体から効率的に電気的信号を検出するための導体をいう。具体的には、本実施形態の圧電基材に張力が印加されたときに、印加された張力に応じた電圧信号(電荷信号)を検出するための導体である。
導体としては、電気的な良導体であることが好ましく、例えば、銅線、アルミ線、SUS線、絶縁皮膜被覆された金属線、カーボンファイバー、カーボンファイバーと一体化した樹脂繊維、錦糸線、有機導電材料等を用いることが可能である。錦糸線とは、繊維に銅箔がスパイラルに巻回されたものをいう。導体の中でも、圧電感度、及び圧電出力の安定性を向上し、高い屈曲性を付与する観点から、錦糸線、カーボンファイバーが好ましい。
特に、電気的抵抗が低く、かつ屈曲性、可とう性が要求される用途(例えば衣服に内装するようなウェアラブルセンサー等の用途)においては、錦糸線を用いることが好ましい。
錦糸線の銅箔の断面は、平角線状であることが好ましく、断面が平角線状の銅箔は、銅線を圧延したり、銅箔を細幅にスリットしたりする等により作製することができる。平角線状にすることで、外部から螺旋状に巻付ける圧電体との空隙を減らし、電極を圧電体に密着させることが可能となり、圧電体から発生する電荷変動を検出しやすくなり、張力に対する感度を向上させる際に有利である。
平角線状の断面(好ましくは、矩形状断面)において、厚さに対する幅の比率は、2以上であることが好ましい。
また銅箔が繊維に螺旋状に巻回されている場合、銅箔は屈曲変形時に弾性変形領域の変形に収まり、塑性変形しにくくなるため、金属疲労破壊が起こりにくくなり、繰り返し屈曲耐性を著しく向上させることが可能となる。
また、錦糸線では、銅箔が巻回された繊維は中心に位置する。そのため、繊維は、張力を支える構造材としての機能を有し、繊維の材質、断面積等を適宜選択することで、張力及び歪量を所望の値に設計することが可能となる。また、断面が平角線状の銅箔を用いることにより、円形断面の銅線を用いた場合と比較して、屈曲させたときに、屈曲変形時に塑性変形しにくくなり、かつ繰り返し屈曲耐性が向上する。
また、非常に高い屈曲性、しなやかさが求められる、織物や、編物などへの加工用途(例えば圧電織物、圧電編物、圧電センサー(織物状圧電センサー、編物状圧電センサー))においては、カーボンファイバーを用いることが好ましい。
また、本実施形態の圧電基材を繊維として用いて、圧電織物や圧電編物に加工する場合は、しなやかさ、高屈曲性が求められる。そのような用途においては、糸状、又は繊維状の信号線導体が好ましい。糸状、繊維状の信号線導体を備える圧電基材は、高い屈曲性を有するため、織機や編機での加工が好適である。
【0072】
<第1の圧電体>
本実施形態の圧電基材は、長尺状の第1の圧電体を備える。
第1の圧電体は、光学活性を有するヘリカルキラル高分子(A)を含む圧電体である。
【0073】
(ヘリカルキラル高分子(A))
本実施形態における第1の圧電体は、光学活性を有するヘリカルキラル高分子(A)を含む。
ここで、「光学活性を有するヘリカルキラル高分子」とは、分子構造が螺旋構造であり分子光学活性を有する高分子を指す。
【0074】
上記ヘリカルキラル高分子(A)としては、例えば、ポリペプチド、セルロース誘導体、ポリ乳酸系高分子、ポリプロピレンオキシド、ポリ(β―ヒドロキシ酪酸)等を挙げることができる。
上記ポリペプチドとしては、例えば、ポリ(グルタル酸γ−ベンジル)、ポリ(グルタル酸γ−メチル)等が挙げられる。
上記セルロース誘導体としては、例えば、酢酸セルロース、シアノエチルセルロース等が挙げられる。
【0075】
ヘリカルキラル高分子(A)は、第1の圧電体の圧電性を向上する観点から、光学純度が95.00%ee以上であることが好ましく、96.00%ee以上であることがより好ましく、99.00%ee以上であることがさらに好ましく、99.99%ee以上であることがさらにより好ましい。望ましくは100.00%eeである。ヘリカルキラル高分子(A)の光学純度を上記範囲とすることで、圧電性を発現する高分子結晶のパッキング性が高くなり、その結果、圧電性が高くなるものと考えられる。
【0076】
ここで、ヘリカルキラル高分子(A)の光学純度は、下記式にて算出した値である。
光学純度(%ee)=100×|L体量−D体量|/(L体量+D体量)
すなわち、ヘリカルキラル高分子(A)の光学純度は、
『「ヘリカルキラル高分子(A)のL体の量〔質量%〕とヘリカルキラル高分子(A)のD体の量〔質量%〕との量差(絶対値)」を「ヘリカルキラル高分子(A)のL体の量〔質量%〕とヘリカルキラル高分子(A)のD体の量〔質量%〕との合計量」で割った(除した)数値』に、『100』をかけた(乗じた)値である。
【0077】
なお、ヘリカルキラル高分子(A)のL体の量〔質量%〕とヘリカルキラル高分子(A)のD体の量〔質量%〕は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた方法により得られる値を用いる。具体的な測定の詳細については後述する。
【0078】
上記ヘリカルキラル高分子(A)としては、光学純度を上げ、圧電性を向上させる観点から、下記式(1)で表される繰り返し単位を含む主鎖を有する高分子が好ましい。
【0080】
上記式(1)で表される繰り返し単位を主鎖とする高分子としては、ポリ乳酸系高分子が挙げられる。
ここで、ポリ乳酸系高分子とは、「ポリ乳酸(L−乳酸及びD−乳酸から選ばれるモノマー由来の繰り返し単位のみからなる高分子)」、「L−乳酸又はD−乳酸と、該L−乳酸又はD−乳酸と共重合可能な化合物とのコポリマー」、又は、両者の混合物をいう。
ポリ乳酸系高分子の中でも、ポリ乳酸が好ましく、L−乳酸のホモポリマー(PLLA、単に「L体」ともいう)又はD−乳酸のホモポリマー(PDLA、単に「D体」ともいう)が最も好ましい。
【0081】
ポリ乳酸は、乳酸がエステル結合によって重合し、長く繋がった高分子である。
ポリ乳酸は、ラクチドを経由するラクチド法;溶媒中で乳酸を減圧下加熱し、水を取り除きながら重合させる直接重合法;などによって製造できることが知られている。
ポリ乳酸としては、L−乳酸のホモポリマー、D−乳酸のホモポリマー、L−乳酸及びD−乳酸の少なくとも一方の重合体を含むブロックコポリマー、及び、L−乳酸及びD−乳酸の少なくとも一方の重合体を含むグラフトコポリマーが挙げられる。
【0082】
上記「L−乳酸又はD−乳酸と共重合可能な化合物」としては、グリコール酸、ジメチルグリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシプロパン酸、3−ヒドロキシプロパン酸、2−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、2−ヒドロキシカプロン酸、3−ヒドロキシカプロン酸、4−ヒドロキシカプロン酸、5−ヒドロキシカプロン酸、6−ヒドロキシカプロン酸、6−ヒドロキシメチルカプロン酸、マンデル酸等のヒドロキシカルボン酸;グリコリド、β−メチル−δ−バレロラクトン、γ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等の環状エステル;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、テレフタル酸等の多価カルボン酸及びこれらの無水物;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレングリコール、1,4−ヘキサンジメタノール等の多価アルコール;セルロース等の多糖類;α−アミノ酸等のアミノカルボン酸;等を挙げることができる。
【0083】
上記「L−乳酸又はD−乳酸と、該L−乳酸又はD−乳酸と共重合可能な化合物とのコポリマー」としては、らせん結晶を生成可能なポリ乳酸シーケンスを有する、ブロックコポリマー又はグラフトコポリマーが挙げられる。
【0084】
また、ヘリカルキラル高分子(A)中におけるコポリマー成分に由来する構造の濃度は20mol%以下であることが好ましい。
例えば、ヘリカルキラル高分子(A)が、ポリ乳酸系高分子である場合、ポリ乳酸系高分子中における、乳酸に由来する構造と、乳酸と共重合可能な化合物(コポリマー成分)に由来する構造と、のモル数の合計に対して、コポリマー成分に由来する構造の濃度が20mol%以下であることが好ましい。
【0085】
ポリ乳酸系高分子は、例えば、特開昭59−096123号公報、及び特開平7−033861号公報に記載されている乳酸を直接脱水縮合して得る方法;米国特許2,668,182号及び4,057,357号等に記載されている乳酸の環状二量体であるラクチドを用いて開環重合させる方法;などにより製造することができる。
【0086】
さらに、上記各製造方法により得られたポリ乳酸系高分子は、光学純度を95.00%ee以上とするために、例えば、ポリ乳酸をラクチド法で製造する場合、晶析操作により光学純度を95.00%ee以上の光学純度に向上させたラクチドを、重合することが好ましい。
【0087】
−重量平均分子量−
ヘリカルキラル高分子(A)の重量平均分子量(Mw)は、5万〜100万であることが好ましい。
ヘリカルキラル高分子(A)のMwが5万以上であることにより、第1の圧電体の機械的強度が向上する。上記Mwは、10万以上であることが好ましく、20万以上であることがさらに好ましい。
一方、ヘリカルキラル高分子(A)のMwが100万以下であることにより、成形(例えば押出成形、溶融紡糸)によって第1の圧電体を得る際の成形性が向上する。上記Mwは、80万以下であることが好ましく、30万以下であることがさらに好ましい。
【0088】
また、ヘリカルキラル高分子(A)の分子量分布(Mw/Mn)は、第1の圧電体の強度の観点から、1.1〜5であることが好ましく、1.2〜4であることがより好ましい。さらに1.4〜3であることが好ましい。
【0089】
なお、ヘリカルキラル高分子(A)の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)を用いて測定された値を指す。ここで、Mnは、ヘリカルキラル高分子(A)の数平均分子量である。
以下、GPCによるヘリカルキラル高分子(A)のMw及びMw/Mnの測定方法の一例を示す。
【0090】
−GPC測定装置−
Waters社製GPC−100
−カラム−
昭和電工社製、Shodex LF−804
−サンプルの調製−
第1の圧電体を40℃で溶媒(例えば、クロロホルム)へ溶解させ、濃度1mg/mlのサンプル溶液を準備する。
−測定条件−
サンプル溶液0.1mlを溶媒〔クロロホルム〕、温度40℃、1ml/分の流速でカラムに導入する。
【0091】
カラムで分離されたサンプル溶液中のサンプル濃度を示差屈折計で測定する。
ポリスチレン標準試料にてユニバーサル検量線を作成し、ヘリカルキラル高分子(A)の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を算出する。
【0092】
ヘリカルキラル高分子(A)の例であるポリ乳酸系高分子としては、市販のポリ乳酸を用いることができる。
市販品としては、例えば、PURAC社製のPURASORB(PD、PL)、三井化学社製のLACEA(H−100、H−400)、NatureWorks LLC社製のIngeo
TM biopolymer、等が挙げられる。
ヘリカルキラル高分子(A)としてポリ乳酸系高分子を用いるときに、ポリ乳酸系高分子の重量平均分子量(Mw)を5万以上とするためには、ラクチド法、又は直接重合法によりポリ乳酸系高分子を製造することが好ましい。
【0093】
本実施形態における第1の圧電体は、上述したヘリカルキラル高分子(A)を、1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。
本実施形態における第1の圧電体中におけるヘリカルキラル高分子(A)の含有量(2種以上である場合には総含有量)は、第1の圧電体の全量に対し、80質量%以上が好ましい。
【0094】
<安定化剤>
第1の圧電体は、更に、一分子中に、カルボジイミド基、エポキシ基、及びイソシアネート基からなる群より選ばれる1種類以上の官能基を有する重量平均分子量が200〜60000の安定化剤(B)を含有することが好ましい。これにより、耐湿熱性をより向上させることができる。
【0095】
安定化剤(B)としては、国際公開第2013/054918号の段落0039〜0055に記載された「安定化剤(B)」を用いることができる。
【0096】
安定化剤(B)として用い得る、一分子中にカルボジイミド基を含む化合物(カルボジイミド化合物)としては、モノカルボジイミド化合物、ポリカルボジイミド化合物、環状カルボジイミド化合物が挙げられる。
モノカルボジイミド化合物としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ビス−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、等が好適である。
また、ポリカルボジイミド化合物としては、種々の方法で製造したものを使用することができる。従来のポリカルボジイミドの製造方法(例えば、米国特許第2941956号明細書、特公昭47−33279号公報、J.0rg.Chem.28,2069−2075(1963)、Chemical Review 1981,Vol.81 No.4、p619−621)により、製造されたものを用いることができる。具体的には特許4084953号公報に記載のカルボジイミド化合物を用いることもできる。
ポリカルボジイミド化合物としては、ポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)、ポリ(N,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド)、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルフェニレン−2,4−カルボジイミド、等が挙げられる。
環状カルボジイミド化合物は、特開2011−256337号公報に記載の方法などに基づいて合成することができる。
カルボジイミド化合物としては、市販品を用いてもよく、例えば、東京化成社製、B2756(商品名)、日清紡ケミカル社製、カルボジライトLA−1(商品名)、ラインケミー社製、Stabaxol P、Stabaxol P400、Stabaxol I(いずれも商品名)等が挙げられる。
【0097】
安定化剤(B)として用い得る、一分子中にイソシアネート基を含む化合物(イソシアネート化合物)としては、イソシアン酸3−(トリエトキシシリル)プロピル、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、等が挙げられる。
【0098】
安定化剤(B)として用い得る、一分子中にエポキシ基を含む化合物(エポキシ化合物)としては、フェニルグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールA−ジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA−ジグリシジルエーテル、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ化ポリブタジエン等が挙げられる。
【0099】
安定化剤(B)の重量平均分子量は、上述のとおり200〜60000であるが、200〜30000がより好ましく、300〜18000がさらに好ましい。
分子量が上記範囲内ならば、安定化剤(B)がより移動しやすくなり、耐湿熱性改良効果がより効果的に奏される。
安定化剤(B)の重量平均分子量は、200〜900であることが特に好ましい。なお、重量平均分子量200〜900は、数平均分子量200〜900とほぼ一致する。また、重量平均分子量200〜900の場合、分子量分布が1.0である場合があり、この場合には、「重量平均分子量200〜900」を、単に「分子量200〜900」と言い換えることもできる。
【0100】
第1の圧電体が安定化剤(B)を含有する場合、上記第1の圧電体は、安定化剤を1種のみ含有してもよいし、2種以上含有してもよい。
第1の圧電体が安定化剤(B)を含む場合、安定化剤(B)の含有量は、ヘリカルキラル高分子(A)100質量部に対し、0.01質量部〜10質量部であることが好ましく、0.01質量部〜5質量部であることがより好ましく、0.1質量部〜3質量部であることがさらに好ましく、0.5質量部〜2質量部であることが特に好ましい。
上記含有量が0.01質量部以上であると、耐湿熱性がより向上する。
また、上記含有量が10質量部以下であると、透明性の低下がより抑制される。
【0101】
安定化剤(B)の好ましい態様としては、カルボジイミド基、エポキシ基、及びイソシアネート基からなる群より選ばれる1種類以上の官能基を有し、且つ、数平均分子量が200〜900の安定化剤(B1)と、カルボジイミド基、エポキシ基、及びイソシアネート基からなる群より選ばれる1種類以上の官能基を1分子内に2以上有し、且つ、重量平均分子量が1000〜60000の安定化剤(B2)とを併用するという態様が挙げられる。なお、数平均分子量が200〜900の安定化剤(B1)の重量平均分子量は、大凡200〜900であり、安定化剤(B1)の数平均分子量と重量平均分子量とはほぼ同じ値となる。
安定化剤として安定化剤(B1)と安定化剤(B2)とを併用する場合、安定化剤(B1)を多く含むことが透明性向上の観点から好ましい。
具体的には、安定化剤(B1)100質量部に対して、安定化剤(B2)が10質量部〜150質量部の範囲であることが、透明性と耐湿熱性の両立という観点から好ましく、50質量部〜100質量部の範囲であることがより好ましい。
【0102】
以下、安定化剤(B)の具体例(安定化剤B−1〜B−3)を示す。
【0104】
以下、上記安定化剤B−1〜B−3について、化合物名、市販品等を示す。
・安定化剤B−1 … 化合物名は、ビス−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミドである。重量平均分子量(この例では、単なる「分子量」に等しい)は、363である。市販品としては、ラインケミー社製「Stabaxol I」、東京化成社製「B2756」が挙げられる。
・安定化剤B−2 … 化合物名は、ポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)である。市販品としては、重量平均分子量約2000のものとして、日清紡ケミカル社製「カルボジライトLA−1」が挙げられる。
・安定化剤B−3 … 化合物名は、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルフェニレン−2,4−カルボジイミド)である。市販品としては、重量平均分子量約3000のものとして、ラインケミー社製「Stabaxol P」が挙げられる。また、重量平均分子量20000のものとして、ラインケミー社製「Stabaxol P400」が挙げられる。
【0105】
<その他の成分>
第1の圧電体は、必要に応じ、その他の成分を含有してもよい。
その他の成分としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂等の公知の樹脂;シリカ、ヒドロキシアパタイト、モンモリロナイト等の公知の無機フィラー;フタロシアニン等の公知の結晶核剤;安定化剤(B)以外の安定化剤;等が挙げられる。
無機フィラー及び結晶核剤としては、国際公開第2013/054918号の段落0057〜0058に記載された成分を挙げることもできる。
【0106】
(配向度F)
本実施形態における第1の圧電体の配向度Fは、上述したとおり、0.5以上1.0未満であるが、0.7以上1.0未満であることが好ましく、0.8以上1.0未満であることがより好ましい。
第1の圧電体の配向度Fが0.5以上であれば、延伸方向に配列するヘリカルキラル高分子(A)の分子鎖(例えばポリ乳酸分子鎖)が多く、その結果、配向結晶の生成する率が高くなり、より高い圧電性を発現することが可能となる。
第1の圧電体の配向度Fが1.0未満であれば、縦裂強度が更に向上する。
【0107】
(結晶化度)
本実施形態における第1の圧電体の結晶化度は、上述のX線回折測定(広角X線回折測定)によって測定される値である。
本実施形態における第1の圧電体の結晶化度は、好ましくは20%〜80%であり、より好ましくは25%〜70%であり、更に好ましくは30%〜60%である。
結晶化度が20%以上であることにより、圧電性が高く維持される。結晶化度が80%以下であることにより、第1の圧電体の透明性が高く維持される。
結晶化度が80%以下であることにより、例えば、第1の圧電体の原料となる圧電フィルムを延伸によって製造する際に白化や破断がおきにくいので、第1の圧電体を製造しやすい。また、結晶化度が80%以下であることにより、例えば、第1の圧電体の原料(例えばポリ乳酸)を溶融紡糸後に延伸によって製造する際に屈曲性が高く、しなやかな性質を有する繊維となり、第1の圧電体を製造しやすい。
【0108】
(透明性(内部ヘイズ))
本実施形態における第1の圧電体において、透明性は特に要求されないが、透明性を有していてももちろん構わない。
第1の圧電体の透明性は、内部ヘイズを測定することにより評価することができる。ここで、第1の圧電体の内部ヘイズとは、第1の圧電体の外表面の形状によるヘイズを除外したヘイズを指す。
第1の圧電体は、透明性が要求される場合には、可視光線に対する内部ヘイズが5%以下であることが好ましく、透明性及び縦裂強度をより向上させる観点からは、2.0%以下がより好ましく、1.0%以下が更に好ましい。第1の圧電体の前記内部ヘイズの下限値は特に限定はないが、下限値としては、例えば0.01%が挙げられる。
第1の圧電体の内部ヘイズは、厚さ0.03mm〜0.05mmの第1の圧電体に対して、JIS−K7105に準拠して、ヘイズ測定機〔(有)東京電色社製、TC−HIII DPK〕を用いて25℃で測定したときの値である。
以下、第1の圧電体の内部ヘイズの測定方法の例を示す。
まず、ガラス板2枚の間に、シリコーンオイル(信越化学工業株式会社製信越シリコーン(商標)、型番:KF96−100CS)のみを挟んだサンプル1を準備し、このサンプル1の厚さ方向のヘイズ(以下、ヘイズ(H2)とする)を測定する。
次に、上記のガラス板2枚の間に、シリコーンオイルで表面を均一に塗らした複数の第1の圧電体を隙間なく並べて挟んだサンプル2を準備し、このサンプル2の厚さ方向のヘイズ(以下、ヘイズ(H3)とする)を測定する。
次に、下記式のようにこれらの差をとることにより、第1の圧電体の内部ヘイズ(H1)を得る。
内部ヘイズ(H1)=ヘイズ(H3)−ヘイズ(H2)
ここで、ヘイズ(H2)及びヘイズ(H3)の測定は、それぞれ、下記測定条件下で下記装置を用いて行う。
測定装置:東京電色社製、HAZE METER TC−HIIIDPK
試料サイズ:幅30mm×長さ30mm
測定条件:JIS−K7105に準拠
測定温度:室温(25℃)
【0109】
(第1の圧電体の形状、寸法)
本実施形態の圧電基材は、長尺状の第1の圧電体を備える。
長尺状の第1の圧電体としては、単数若しくは複数の束からなる繊維形状(糸形状)を有する圧電体、又は長尺平板形状を有する圧電体であることが好ましい。
以下、繊維形状を有する圧電体(以下、繊維状圧電体ともいう)、長尺平板形状を有する圧電体(以下、長尺平板状圧電体ともいう)について順に説明する。
【0110】
−繊維状圧電体−
繊維状圧電体としては、例えば、モノフィラメント糸、マルチフィラメント糸が挙げられる。
【0111】
・モノフィラメント糸
モノフィラメント糸の単糸繊度は、好ましくは3dtex〜30dtexであり、より好ましくは5dtex〜20dtexである。
単糸繊度が3dtex未満になると、織物準備工程や製織工程において糸を取り扱うことが困難となる。一方、単糸繊度が30dtexを超えると、糸間で融着が発生し易くなる。
モノフィラメント糸は、コストの点を考慮すれば直接的に紡糸、延伸して得ることが好ましい。なお、モノフィラメント糸は入手したものであってもよい。
【0112】
・マルチフィラメント糸
マルチフィラメント糸の総繊度は、好ましくは30dtex〜600dtexであり、より好ましくは100dtex〜400dtexである。
マルチフィラメント糸は、例えば、スピンドロー糸などの一工程糸の他、UDY(未延伸糸)やPOY(高配向未延伸糸)などを延伸して得る二工程糸のいずれもが採用可能である。なお、マルチフィラメント糸は入手したものであってもよい。
ポリ乳酸系モノフィラメント糸、ポリ乳酸系マルチフィラメント糸の市販品としては、東レ製のエコディア
(R)PLA、ユニチカ製のテラマック
(R)、クラレ製プラスターチ
(R)が使用可能である。
【0113】
繊維状圧電体の製造方法には特に限定はなく、公知の方法により製造することができる。
例えば、第1の圧電体としてのフィラメント糸(モノフィラメント糸、マルチフィラメント糸)は、原料(例えばポリ乳酸)を溶融紡糸した後、これを延伸することにより得ることができる(溶融紡糸延伸法)。なお、紡出後において、冷却固化するまでの糸条近傍の雰囲気温度を一定温度範囲に保つことが好ましい。
また、第1の圧電体としてのフィラメント糸は、例えば、上記溶融紡糸延伸法で得られたフィラメント糸をさらに分繊することにより得てもよい。
【0114】
・断面形状
繊維状圧電体の断面形状としては、繊維状圧電体の長手方向に垂直な方向の断面において、円形状、楕円形状、矩形状、繭形状、リボン形状、4つ葉形状、星形状、異形状など様々な断面形状を適用することが可能である。
【0115】
−長尺平板状圧電体−
長尺平板状圧電体としては、例えば、公知の方法で作製した圧電フィルム、又は入手した圧電フィルムをスリットすることにより得た長尺平板状圧電体(例えばスリットリボン)などが挙げられる。
第1の圧電体として、長尺平板状圧電体を用いることにより、導体に対して、面で密着することが可能となるため、効率的に圧電効果により発生した電荷を電圧信号として検出することが可能となる。
【0116】
本実施形態における長尺平板状圧電体(第1の圧電体)は、第1の圧電体の少なくとも一方の主面の側に配置された機能層を備えることが好ましい。
機能層は、単層構造であっても二層以上からなる構造であってもよい。
例えば、長尺平板状圧電体の両方の主面の側に機能層が配置される場合、一方の主面(以下、便宜上、「オモテ面」ともいう)の側に配置される機能層、及び、他方の面(以下、便宜上、「ウラ面」ともいう)の側に配置される機能層は、それぞれ独立に、単層構造であっても二層以上からなる構造であってもよい。
【0117】
機能層としては、様々な機能層が挙げられる。
機能層として、例えば、易接着層、ハードコート層、屈折率調整層、アンチリフレクション層、アンチグレア層、易滑層、アンチブロック層、保護層、接着層、帯電防止層、放熱層、紫外線吸収層、アンチニュートンリング層、光散乱層、偏光層、ガスバリア層、色相調整層、電極層などが挙げられる。
機能層は、これらの層のうちの二層以上からなる層であってもよい。
また、機能層としては、これらの機能のうちの2つ以上を兼ね備えた層であってもよい。
長尺平板状圧電体の両方の主面に機能層が設けられている場合は、オモテ面側に配置される機能層及びウラ面側に配置される機能層は、同じ機能層であっても、異なる機能層であってもよい。
【0118】
また、機能層の効果には、長尺平板状圧電体表面のダイラインや打痕などの欠陥が埋められ、外観が向上するという効果もある。この場合は長尺平板状圧電体と機能層との屈折率差が小さいほど長尺平板状圧電体と機能層と界面の反射が低減し、より外観が向上する。
【0119】
前記機能層は、易接着層、ハードコート層、帯電防止層、アンチブロック層、保護層、及び電極層のうちの少なくとも一つを含むことが好ましい。これにより、例えば圧電デバイス(圧電織物、圧電編物等)、力センサー、アクチュエータ、生体情報取得デバイスへの適用がより容易となる。
【0120】
前記機能層は、電極層を含むことがより好ましい。
電極層は、長尺平板状圧電体に接して設けられていてもよいし、電極層以外の機能層を介して設けられていてもよい。
【0121】
本実施形態における長尺平板状圧電体(第1の圧電体)の特に好ましい態様は、長尺平板状圧電体の両方の主面の側に機能層を備え、かつ、両面の機能層がいずれも電極層を含む態様である。
【0122】
本実施形態における長尺平板状圧電体(第1の圧電体)において、第1の圧電体と、機能層と、を含む積層体の表面層の少なくとも一方が、電極層であることが好ましい。即ち、本実施形態における長尺平板状圧電体(第1の圧電体)において、オモテ面側の表面層及びウラ面側の表面層の少なくとも一方が、電極層であること(言い換えれば、電極層が露出していること)が好ましい。
これにより、長尺平板状圧電体を、例えば圧電デバイス(圧電織物、圧電編物等)、力センサー、アクチュエータ、生体情報取得デバイスの構成要素の一つとして用いた場合に、導体(好ましくは内部導体)又は第1の外部導体と、積層体との接続をより簡易に行うことができるので、圧電デバイス(圧電織物、圧電編物等)、力センサー、アクチュエータ、生体情報取得デバイスの生産性が向上する。
【0123】
機能層の材料としては、特に限定されるものではないが、例えば金属や金属酸化物等の無機物;樹脂等の有機物;樹脂と微粒子とを含む複合組成物;などが挙げられる。樹脂としては、例えば、温度や活性エネルギー線で硬化させることで得られる硬化物を利用することもできる。つまり、樹脂としては、硬化性樹脂を利用することもできる。
【0124】
硬化性樹脂としては、例えばアクリル系化合物、メタクリル系化合物、ビニル系化合物、アリル系化合物、ウレタン系化合物、エポキシ系化合物、エポキシド系化合物、グリシジル系化合物、オキセタン系化合物、メラミン系化合物、セルロース系化合物、エステル系化合物、シラン系化合物、シリコーン系化合物、シロキサン系化合物、シリカ−アクリルハイブリット化合物、及びシリカ−エポキシハイブリット化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の材料(硬化性樹脂)が挙げられる。
これらの中でも、アクリル系化合物、エポキシ系化合物、シラン系化合物がより好ましい。
金属としては、例えば、Al、Si、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、In、Sn、W、Ag、Au、Pd、Pt、Sb、Ta及びZrから選ばれる少なくとも一つ、又は、これらの合金が挙げられる。
金属酸化物としては、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化ニオブ、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム、及び酸化タンタル、またこれらの複合酸化物の少なくとも1つが挙げられる。
微粒子としては上述したような金属酸化物の微粒子や、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂などの樹脂微粒子などが挙げられる。さらにこれらの微粒子の内部に空孔を有する中空微粒子も挙げられる。
微粒子の平均一次粒径としては、透明性の観点から1nm以上500nm以下が好ましく、5nm以上300nm以下がより好ましく、10nm以上200nm以下が更に好ましい。500nm以下であることで可視光の散乱が抑制され、1nm以上であることで微粒子の二次凝集が抑制され、透明性の維持の観点から望ましい。
【0125】
機能層の膜厚は、特に限定されるものではないが、0.01μm〜10μmの範囲が好ましい。
【0126】
上記厚さの上限値は、より好ましくは6μm以下であり、更に好ましくは3μm以下である。また、下限値はより好ましくは0.01μm以上であり、更に好ましくは0.02μm以上である。
【0127】
機能層が複数の機能層からなる多層膜の場合には、上記厚さは多層膜全体における厚さを表す。また、機能層は長尺平板状圧電体の両面にあってもよい。また、機能層の屈折率は、それぞれが異なる値であってもよい。
【0128】
長尺平板状圧電体の製造方法には特に限定はなく、公知の方法により製造することができる。
また、例えば、圧電フィルムから第1の圧電体を製造方法としては、原料(例えばポリ乳酸)をフィルム状に成形して未延伸フィルムを得、得られた未延伸フィルムに対し、延伸及び結晶化を施し、得られた圧電フィルムをスリットすることにより得ることができる。
また、公知のフラットヤーン製法を用いて第1の圧電体を製造してもよい。例えば、インフレーション成形により得られた幅広のフィルムをスリットして細幅のフィルムにした後、熱板延伸、ロール延伸等による延伸、及び結晶化を施すことにより、第1の圧電体を得ることもできる。
また、公知の異形断面の金型を用いた溶融紡糸により作製した扁平モノフィラメント、好ましくは、断面形状における厚さに対する幅の比が2以上の扁平モノフィラメントに延伸及び結晶化を施すことにより、第1の圧電体を得ることもできる。
ここで、「スリットする」とは、上記圧電フィルムを長尺状にカットすることを意味する。
なお、上記延伸及び結晶化は、いずれが先であってもよい。また、未延伸フィルムに対し、予備結晶化、延伸、及び結晶化(アニール)を順次施す方法であってもよい。延伸は、一軸延伸であっても二軸延伸であってもよい。二軸延伸の場合には、好ましくは一方(主延伸方向)の延伸倍率を高くする。
圧電フィルムの製造方法については、特許第4934235号公報、国際公開第2010/104196号、国際公開第2013/054918号、国際公開第2013/089148号、等の公知文献を適宜参照できる。
【0129】
<第2の圧電体>
第1実施形態の圧電基材は、長尺状の第2の圧電体を備えることがある。
第2の圧電体は、第1の圧電体と同様の特性を有していることが好ましい。
即ち、第2の圧電体は、光学活性を有するヘリカルキラル高分子(A)を含み、
第2の圧電体の長さ方向と、第2の圧電体に含まれるヘリカルキラル高分子(A)の主配向方向と、が略平行であり、
X線回折測定から前記式(a)によって求められる第2の圧電体の配向度Fは0.5以上1.0未満の範囲であることが好ましい。
第2の圧電体は、上記以外の特性においても、第1の圧電体と同様の特性を有していることが好ましい。
但し、第1の圧電体及び第2の圧電体の巻回方向、並びに、第1の圧電体及び第2の圧電体に含まれるヘリカルキラル高分子(A)のキラリティについては、本発明の効果がより奏される観点から、圧電基材の態様に応じて適宜選択すればよい。
なお、第1の圧電体及び第2の圧電体の巻回方向、並びに、第1の圧電体及び第2の圧電体に含まれるヘリカルキラル高分子(A)のキラリティの好ましい組み合わせの一例については、前述の具体的態様で説明した通りである。
また、第2の圧電体は、第1の圧電体と異なる特性を有していてもよい。
【0130】
<第1の絶縁体>
第1実施形態の圧電基材は、さらに、第1の絶縁体を備えていてもよい。
第1の絶縁体は、内部導体の外周面に沿って螺旋状に巻回されることが好ましい。
この場合、第1の絶縁体は、第1の圧電体から見て、内部導体とは反対側に配置されていてもよく、内部導体と第1の圧電体との間に配置されていてもよい。
また、第1の絶縁体の巻回方向は、第1の圧電体の巻回方向と同じ方向であってもよく、異なる方向であってもよい。
特に、第1実施形態の圧電基材が第1の外部導体を備える場合においては、第1実施形態に係る圧電基材が、さらに、第1の絶縁体を備えることにより、圧電基材が屈曲変形する時に、内部導体と外部導体の電気的短絡の発生を抑制しやすくなるという利点がある。
【0131】
第1の絶縁体としては、特に限定はないが、例えば、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)、四フッ化エチレン・パーフロロプロピルビニルエーテル共重合体(PFA)、フッ素ゴム、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ゴム(エラストマーを含む)等が挙げられる。
第1の絶縁体の形状は、導体に対する巻回の観点から、長尺形状であることが好ましい。
<第2の絶縁体>
本実施形態の圧電基材において、外周に第1の外部導体を備える場合、さらに、第1の外部導体の外周に第2の絶縁体を備えていてもよい。
これにより、静電シールドすることが可能となり、外部の静電気の影響による、導体(好ましくは内部導体)の電圧変化が抑制される。
【0132】
第2の絶縁体には特に限定はないが、例えば、第1の絶縁体として例示した材料が挙げられる。
また、第2の絶縁体の形状は特に限定はなく、第1の外部導体の少なくとも一部を被覆できる形状であればよい。
【0133】
(第1の外部導体)
本実施形態の圧電基材は、さらに、外周に第1の外部導体を備えることが好ましい。
本実施形態における第1の外部導体は、グラウンド導体であることが好ましい。
グラウンド導体とは、信号を検出する際、例えば、導体(好ましくは信号線導体)の対となる導体を指す。
【0134】
グラウンド導体の材料には特に限定はないが、断面形状によって、主に以下のものが挙げられる。
例えば、矩形断面を有するグラウンド導体の材料としては、円形断面の銅線を圧延して平板状に加工した銅箔リボンや、Al箔リボンなどを用いることが可能である。
例えば、円形断面を有するグラウンド導体の材料としては、銅線、アルミ線、SUS線、絶縁皮膜被覆された金属線、カーボンファイバー、カーボンファイバーと一体化した樹脂繊維、繊維に銅箔がスパイラルに巻回された錦糸線を用いることが可能である。
また、グラウンド導体の材料として、有機導電材料を絶縁材料でコーティングしたものを用いてもよい。
【0135】
グラウンド導体は、信号線導体と短絡しないように、導体(好ましくは信号線導体)及び第1の圧電体を包むように配置されていることが好ましい。
このような信号線導体の包み方としては、銅箔などを螺旋状に巻回して包む方法や、銅線などを筒状の組紐にして、その中に包みこむ方法などを選択することが可能である。
なお、信号線導体の包み方は、これら方法に限定されない。信号線導体を包み込むことにより、静電シールドすることが可能となり、外部の静電気の影響による、信号線導体の電圧変化を防ぐことが可能となる。
また、グラウンド導体の配置は、本実施形態の圧電基材の最小基本構成単位(即ち、導体及び第1の圧電体)を円筒状に包接するように配置することも好ましい形態の一つである。
また、例えば、前記最小基本構成単位を備えた圧電基材を用いて、後述する圧電編物や圧電織物をシート状に加工した場合、その加工物の対向する片面若しくは両面に、面状若しくはシート状のグラウンド導体を近接して配置することも好ましい形態の一つである。
【0136】
グラウンド導体の断面形状は、円形状、楕円形状、矩形状、異形状など様々な断面形状を適用することが可能である。特に、矩形断面は、導体(好ましくは信号線導体)、第1の圧電体、必要に応じて第1の絶縁体、第2の圧電体などに対して、平面で密着することが可能となるため、効率的に圧電効果により発生した電荷を電圧信号として検出することが可能となる。
【0137】
<接着層を形成する接着剤>
本実施形態の圧電基材は、導体及び第1の圧電体の間に接着層を備えることが好ましい。
なお、「接着」は、「粘着」を包含する概念である。また、「接着層」は、「粘着層」を包含する概念である。
接着層を形成する接着剤は、前記導体と前記第1の圧電体との間を機械的に一体化するため、又は、圧電基材が外部導体を備える場合は電極間(導体及び外部導体間)の距離を保持するために用いる。
導体及び第1の圧電体の間に接着層を備えることにより、本実施形態の圧電基材に張力が印加されたときに、導体と第1の圧電体との相対位置がずれにくくなるため、第1の圧電体に張力がかかりやすくなる。従って、効果的に張力に比例した電圧出力を導体(好ましくは信号線導体)から検出することが可能となる。この結果、圧電感度、及び圧電出力の安定性がより向上する。また、接着層を備えることで、単位引張力当たりの発生電荷量の絶対値がより増加する。
一方、導体及び第1の圧電体の間に接着層を備えない圧電基材では、後述する圧電繊維(例えば圧電編物、圧電織物)などに加工した後もしなやかな性質が保たれるため、ウェアラブルセンサー等にしたときに装着感が良好となる。
【0138】
接着層を形成する接着剤の材料としては、以下の材料を用いることが可能である。
エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、酢酸ビニル樹脂系エマルション形接着剤、(EVA)系エマルション形接着剤、アクリル樹脂系エマルション形接着剤、スチレン・ブタジエンゴム系ラテックス形接着剤、シリコーン樹脂系接着剤、α−オレフィン(イソブテン−無水マレイン酸樹脂)系接着剤、塩化ビニル樹脂系溶剤形接着剤、ゴム系接着剤、弾性接着剤、クロロプレンゴム系溶剤形接着剤、ニトリルゴム系溶剤形接着剤等、シアノアクリレート系接着剤等を用いることが可能となる。
【0139】
−弾性率−
本実施形態における接着剤は、接合後の弾性率が第1の圧電体と同程度以上であることが好ましい。第1の圧電体の弾性率に対して、弾性率が低い材料を用いると、本実施形態の圧電基材に印加された張力による歪(圧電歪)が接着剤部分で緩和され、第1の圧電体への歪の伝達効率が小さくなるため、本実施形態の圧電基材を、例えばセンサーに適用した場合、センサーの感度が低くなりやすい。
【0140】
−厚さ−
本実施形態における接着剤の接合部位の厚さは、接合する対象間に空隙ができず、接合強度が低下しない範囲であれば薄ければ薄い程良い。接合部位の厚さを小さくすることで、圧電基材に印加された張力による歪が接着剤部分で緩和されにくくなり、第1の圧電体への歪が効率的に小さくなるため、本実施形態の圧電基材を、例えばセンサーに適用した場合、センサーの感度が向上する。
【0141】
−接着剤の塗布方法−
接着剤の塗布方法は特に限定されないが、主に以下の2つの方法を用いることが可能である。
【0142】
・加工後に接着剤を配置し接合する方法
例えば、導体(好ましくは信号線導体)及び第1の圧電体の配置;信号線導体及びグラウンド導体の加工、配置;が完了した後に、ディップコートや、含浸等の方法で、導体及び第1の圧電体の界面に接着剤を配置し接着する方法が挙げられる。
また、上記方法により、導体及び第1の圧電体を接合する他、必要に応じて、本実施形態の圧電基材に備えられる各部材間を接合してもよい。
【0143】
・加工前に未硬化の接着剤を配置し、加工後に接合する方法
例えば、予め第1の圧電体の表面に光硬化性の接着剤、熱硬化性の接着剤、熱可塑性の接着剤などを、グラビアコーターやディップコーター等でコーティングし乾燥させ、導体及び第1の圧電体の配置が完了した後に、紫外線照射や加熱により接着剤を硬化させ、導体及び第1の圧電体の界面を接合する方法が挙げられる。
また、本実施形態の圧電基材を、後述する圧電編物や圧電織物に加工する場合も同様の方法により、圧電編物や圧電織物に加工された後に、例えば、導体及び第1の圧電体の界面、圧電基材及び外部導体の界面、を接合又は熱融着してもよい。この場合、圧電編物や圧電織物は、接着剤により各部材間が一体化される前であれば、しなやかな性質が保たれるので、編物や織物の加工が容易となる。
また、上記方法により、導体及び第1の圧電体を接合する他、必要に応じて、本実施形態の圧電基材に備えられる各部材間を接合してもよい。
上記方法を用いれば、接着剤をコーティング乾燥後はドライプロセスでの加工が可能となり加工が容易となる、また均一な塗膜厚が形成しやすいためセンサー感度等のバラツキが少ないといった特徴がある。
【0144】
<圧電基材の製造方法>
本実施形態の圧電基材の製造方法には特に限定はないが、例えば、第1の圧電体を準備して、別途準備した導体(好ましくは信号線導体)に対して、第1の圧電体を一方向に螺旋状に巻回することにより製造することができる。
第1の圧電体は、公知の方法で製造したものであっても、入手したものであってもよい。
また、本実施形態の圧電基材が、必要に応じて第2の圧電体、第1の絶縁体を備える場合、かかる圧電基材は、第1の圧電体を螺旋状に巻回する方法に準じて、製造することができる。
但し、第1の圧電体及び第2の圧電体の巻回方向、並びに、第1の圧電体及び第2の圧電体に含まれるヘリカルキラル高分子(A)のキラリティについては、前述の通り、圧電基材の態様に応じて適宜選択することが好ましい。
また、本実施形態の圧電基材が、第1の外部導体(例えばグラウンド導体)を備える場合、かかる圧電基材は、前述の方法又は公知の方法により、第1の外部導体を配置することにより製造することができる。
なお、導体及び第1の圧電体の間、必要に応じて、本実施形態の圧電基材に備えられる各部材間を、例えば前述の方法により接着剤を介して貼り合わせてもよい。
【0145】
本実施形態の圧電基材は、引張力を印加することで、引張力に比例したずり歪が、ヘリカルキラル(A)に印加され、電圧信号(電荷信号)として導体から検出される。圧電基材に引張力を印加する方法としては、様々な方法があり、圧電基材に直接張力を印加する方法、又は
図21A及び21Bに示すように、平板52に粘着テープ51を用いて圧電基材10を貼り付けて平板付き圧電基材50とし、平板52に押圧力を印加し、平板52に生じる撓み変形を介して圧電基材10へ張力を印加して電圧信号を検出してもよい。なお、
図21Aは、粘着テープ51を用いて平板52を貼り付けた圧電基材10(平板付き圧電基材50)を示す概略図であり、
図21Bは粘着テープ51を用いて平板52を貼り付けた圧電基材10(平板付き圧電基材50)を押圧したときの概略図である。
【0146】
圧電基材10を平板52に貼り付けて機械的に一体化するための方法としては、様々な方法が挙げられる。例えば、
図22に示すように、セロハンテープ、ガムテープ等の粘着テープ51を用いて圧電基材10の一部を平板52に貼り付ける方法、
図23に示すように、エポキシ樹脂等の熱硬化性接着剤、ホットメルト接着剤等の熱可塑性接着剤等の接着剤61を用いて圧電基材10の一部を平板52に貼り付ける方法などが挙げられる。
【0147】
図22における平板付き圧電基材60では、粘着テープ51を用いて圧電基材10の一部が平板52に貼り付けられており、平板52上にFPC(フレキシブルプリント基板)54が配置されており、FPC54上に圧電基材10と導通する銅箔53が配置されている。また、平板付き圧電基材60は、圧電基材10に引張力が印加されて検出された圧電信号を検出して処理する信号処理回路ユニット55を備えている。また、
図23における平板付き圧電基材70では、粘着テープ51の代わりに接着剤61を用いて圧電基材10の一部が平板52に貼り付けられている点以外は、上述の平板付き圧電基材60と同様である。
【0148】
また、圧電基材を貼り付ける対象としては、上述の平板の他、曲面などから構成される電子回路の筐体の内側又は外側等に貼り付けてもよい。
【0149】
図24に示すように、人体の皮膚に粘着テープ51を用いて圧電基材10を貼り付けて固定してもよく、衣服、サポーター等に粘着テープ51を用いて圧電基材10を貼り付けて固定してもよい。また、
図25に示すように、長さ調整のできるベルト56に圧電基材10を配置し、人体の周囲をベルトで締め付けることで圧電基材10を人体の皮膚に固定してもよい。ベルト56に圧電基材10を配置する場合、圧電基材10を粘着テープでラミネートしたものをベルト56の一部として配置してもよい。
図24、25に示す構成では、呼吸、心拍等による胴囲の弛緩収縮が張力として圧電基材に印加され、信号処理回路ユニット55にて電圧信号が検出される。このように人体に圧電基材を固定することで、様々な人体の運動をモニターすることが可能である。例えば、腕周り、足回り、首回り等、人体の円筒状の部位の周囲に配置することにより、円筒状内の筋肉の収縮弛緩に伴う円周長の変化を電圧信号の検出によりモニターすることが可能である。
【0150】
また、
図26に示すように、ヘルメット(又は帽子)57の顎紐58の一部に圧電基材10を配置し、咀嚼等の顎の運動に伴う顎紐の張力の変化を電圧信号として検出してもよい。これにより、咀嚼強度、咀嚼回数等を電圧信号として検出し、モニターすることが可能である。
【0151】
〔圧電織物〕
本実施形態の圧電織物は、織物構造体を備える。
織物構造体は、縦糸及び横糸からなる。
本実施形態の圧電織物では、上記縦糸及び横糸の少なくとも一方が、本実施形態の圧電基材を含む。
従って、本実施形態の圧電織物によれば、本実施形態の圧電基材と同様の効果が奏される。
ここで、織物とは、糸を交錯させて織物構造体を形成することによりフィルム形状に仕上げたもの全般を指す。圧電織物とは、織物の中でも、外部刺激(例えば物理力)によって圧電効果が発現される織物をいう。
【0152】
本実施形態の圧電織物において、縦糸及び横糸の両方は、圧電基材を含んでもよい。
この態様の場合、圧電感度、及び圧電出力の安定性を向上する観点から、縦糸に含まれる第1の圧電体の巻回方向と、横糸に含まれる第1の圧電体の巻回方向とが互いに異なり、かつ、縦糸に含まれるヘリカルキラル高分子(A)のキラリティと、横糸に含まれるヘリカルキラル高分子(A)のキラリティとが同一であることが好ましい。
又は、縦糸に含まれる第1の圧電体の巻回方向と、横糸に含まれる第1の圧電体の巻回方向とが同一であり、かつ、縦糸に含まれるヘリカルキラル高分子(A)のキラリティと、横糸に含まれるヘリカルキラル高分子(A)のキラリティとが互いに異なることが好ましい。
【0153】
糸としては、例えば高分子を含む糸が挙げられる。
高分子を含む糸における高分子としては、ポリエステル、ポリオレフィン等の一般的な高分子が挙げられ、また、前述のヘリカルキラル高分子(A)等のヘリカルキラル高分子も挙げられる。
また、高分子を含む糸の概念には、本実施形態の圧電基材も包含される。
【0154】
本実施形態の圧電織物における織物構造体には特に制限はない。
織物構造体としては、平織(plain weave)、綾織(twill weave)、朱子織(satin weave)等の基本的な構造体が挙げられる。
本実施形態の圧電基材は、圧電織物中の縦糸として用いても横糸として用いてもよく、また、縦糸の一部として用いてもよく、横糸の一部として用いてもよい。
【0155】
本実施形態の圧電織物は、三次元的構造を有する織物であってもよい。三次元的構造を有する織物とは、二次元的構造に加えて織物の厚み方向にも糸(縦糸、横糸)を編みこむことで立体的に仕上げた織物である。
三次元的構造を有する織物の例は、例えば、特表2001−513855号公報に記載されている。
本実施形態の圧電織物では、織物構造体を構成する糸のうちの少なくとも一部が、本実施形態の圧電基材で構成されていればよい。
【0156】
〔圧電編物〕
本実施形態の圧電編物は、編物構造体を備える。編物構造体は、本実施形態の圧電基材を含む。
従って、本実施形態の圧電編物によれば、本実施形態の圧電基材と同様の効果が奏される。
ここで、編物とは、糸でループを作りながら編み合わせて製造されたもの全般を指す。圧電編物とは、編物の中でも、外部刺激(例えば物理力)によって圧電効果が発現される編物をいう。
【0157】
糸としては、例えば高分子を含む糸が挙げられる。
高分子を含む糸における高分子としては、ポリエステル、ポリオレフィン等の一般的な高分子が挙げられ、また、前述のヘリカルキラル高分子(A)等のヘリカルキラル高分子も挙げられる。
また、高分子を含む糸の概念には、本実施形態の圧電基材も包含される。
【0158】
本実施形態の圧電編物における編物構造体には特に制限はない。
編物構造体としては、緯編み(ヨコ編み)や経編み(タテ編み)等の基本的な構造体が挙げられる。緯編みには、平編み、リブ編み、両面編み、パール編み、丸編み等がある。また、経編みには、トリコット編み、アトラス編み、ダイヤモンド編み、ミラニーズ編み等の基本的な構造体が挙げられる。
本実施形態の圧電基材は、圧電編物中の糸として用いればよく、また、糸の一部として用いてもよい。
【0159】
本実施形態の圧電編物は、三次元的構造を有する編物であってもよい。三次元的構造を有する編物とは、二次元的構造に加えて編物の厚み方向にも糸を編みこむことで立体的に仕上げた編物である。
本実施形態の圧電編物では、編物構造体を構成する糸のうちの少なくとも一部が、本実施形態の圧電基材で構成されていればよい。
【0160】
<圧電織物又は圧電編物の用途>
本実施形態の圧電織物又は圧電編物は、少なくとも一部に圧電性が要求されるあらゆる用途に適用することができる。
本実施形態の圧電織物又は圧電編物の用途の具体例としては、各種衣料(シャツ、スーツ、ブレザー、ブラウス、コート、ジャケット、ブルゾン、ジャンパー、ベスト、ワンピース、ズボン、スカート、パンツ、下着(スリップ、ペチコート、キャミソール、ブラジャー)、靴下、手袋、和服、帯地、金襴、冷感衣料、ネクタイ、ハンカチーフ、マフラー、スカーフ、ストール、アイマスク)、テーブルクロス、履物(スニーカー、ブーツ、サンダル、パンプス、ミュール、スリッパ、バレエシューズ、カンフーシューズ)、タオル、袋物、バッグ(トートバッグ、ショルダーバッグ、ハンドバッグ、ポシェット、ショッピングバッグ、エコバック、リュックサック、デイパック、スポーツバッグ、ボストンバッグ、ウエストバッグ、ウエストポーチ、セカンドバック、クラッチバッグ、バニティ、アクセサリーポーチ、マザーバッグ、パーティバッグ、和装バッグ)、ポーチ・ケース(化粧ポーチ、ティッシュケース、めがねケース、ペンケース、ブックカバー、ゲームポーチ、キーケース、パスケース)、財布、帽子(ハット、キャップ、キャスケット、ハンチング帽、テンガロンハット、チューリップハット、サンバイザー、ベレー帽)、ヘルメット、頭巾、ベルト、エプロン、リボン、コサージュ、ブローチ、カーテン、壁布、シートカバー、シーツ、布団、布団カバー、毛布、枕、枕カバー、ソファー、ベッド、かご、各種ラッピング材料、室内装飾品、自動車用品、造花、マスク、包帯、ロープ、各種ネット、魚網、セメント補強材、スクリーン印刷用メッシュ、各種フィルター(自動車用、家電用)、各種メッシュ、敷布(農業用、レジャーシート)、土木工事用織物、建築工事用織物、ろ過布等が挙げられる。
なお、上記具体例の全体を本実施形態の圧電織物又は圧電編物で構成してもよいし、圧電性が要求される部位のみ本実施形態の圧電織物又は圧電編物で構成してもよい。
本実施形態の圧電織物又は圧電編物の用途としては、身体に身につけるウェアラブル製品が特に好適である。
【0161】
なお、本実施形態の圧電編物の具体的態様についての詳細は、圧電デバイスの具体的態様と共に後述する。
【0162】
〔圧電デバイス〕
本実施形態の圧電デバイスは、上記実施形態の圧電織物と、織物構造体の主面に対向する位置に配置された第2の外部導体と、を備える。
又は、本実施形態の圧電デバイスは、上記実施形態の圧電編物と、編物構造体の主面に対向する位置に配置された第2の外部導体と、を備える。
即ち、本実施形態の圧電デバイスは、本実施形態の圧電基材を含む圧電織物を備えるか、又は、本実施形態の圧電基材を含む圧電編物を備える。
従って、本実施形態の圧電デバイスによれば、本実施形態の圧電基材と同様の効果が奏される。
【0163】
(第2の外部導体)
第2の外部導体は、グラウンド導体であることが好ましい。
グラウンド導体の材料には特に限定はないが、例えば、前述の第1の外部導体と同様の材料が挙げられる。
また、第2の外部導体は、一般的に用いられている電極材料を用いることもできる。
電極材料としては、金属(Al等)が挙げられるが、その他にも、例えば、Ag、Au、Cu、Ag−Pd合金、Agペースト、Cuペースト、カーボンブラック、ITO(結晶化ITO及び非晶ITO)、ZnO、IGZO、IZO(登録商標)、導電性ポリマー(ポリチオフェン、PEDOT)、Agナノワイヤー、カーボンナノチューブ、グラフェン等も挙げられる(なお、第1の外部導体の材料と重複する材料を含む)。
なお、本実施形態における第2の外部導体の形状は特に制限されず、目的に応じて、適宜選択することが好ましい。
【0164】
本実施形態の圧電デバイスは、さらに、第2の外部導体と、織物構造体又は編物構造体との間に第3の絶縁体を備えることが好ましい。
これにより、導体(好ましくは内部導体)及び外部導体間の電気的短絡の発生を抑制しやすい構造となる。
【0165】
(第3の絶縁体)
第3の絶縁体には特に限定はないが、例えば、第1の絶縁体として例示した材料が挙げられる。
なお、本実施形態における第3の絶縁体の形状は特に制限されず、目的に応じて、適宜選択することが好ましい。
【0166】
<圧電基材の用途>
本実施形態の圧電基材は、例えば、センサー用途(着座センサー等の力センサー、圧力センサー、変位センサー、変形センサー、振動センサー、超音波センサー、生体センサー、ラケット、ゴルフクラブ、バット等の各種球技用スポーツ用具の打撃時の加速度センサーやインパクトセンサー等、ぬいぐるみのタッチ・衝撃センサー、ベッドの見守りセンサー、ガラスや窓枠等のセキュリティセンサー等)、アクチュエータ用途(シート搬送用デバイス等)、エネルギーハーベスティング用途(発電ウェア、発電靴等)、ヘルスケア関連用途(Tシャツ、スポーツウェア、スパッツ、靴下等の各種衣類、サポーター、ギプス、おむつ、乳幼児用手押し車のシート、車いす用シート、医療用保育器のマット、靴、靴の中敷、時計等に本センサーを設けた、ウェアラブルセンサー等)などとして利用することができる。
また本実施形態の圧電基材は各種衣料(シャツ、スーツ、ブレザー、ブラウス、コート、ジャケット、ブルゾン、ジャンパー、ベスト、ワンピース、ズボン、パンツ、下着(スリップ、ペチコート、キャミソール、ブラジャー)、靴下、手袋、和服、帯地、金襴、冷感衣料、ネクタイ、ハンカチーフ、マフラー、スカーフ、ストール、アイマスク)、サポーター(首用サポーター、肩用サポーター、胸用サポーター、腹用サポーター、腰用サポーター、腕用サポーター、足用サポーター、肘用サポーター、膝用サポーター、手首用サポーター、足首用サポーター)、履物(スニーカー、ブーツ、サンダル、パンプス、ミュール、スリッパ、バレエシューズ、カンフーシューズ)、インソール、タオル、リュックサック、帽子(ハット、キャップ、キャスケット、ハンチング帽、テンガロンハット、チューリップハット、サンバイザー、ベレー帽)、帽子顎紐、ヘルメット、ヘルメット顎紐、頭巾、ベルト、シートカバー、シーツ、座布団、クッション、布団、布団カバー、毛布、枕、枕カバー、ソファー、イス、デスク、テーブル、シート、座席、便座、マッサージチェア、ベッド、ベッドパット、カーペット、かご、マスク、包帯、ロープ、ぬいぐるみ、各種ネット、バスタブ、壁材、床材、窓材、窓枠、ドア、ドアノブ、パソコン、マウス、キーボード、プリンタ、筐体、ロボット、楽器、義手、義足、自転車、スケートボード、ローラースケート、ゴムボール、シャトルコック、ハンドル、ペダル、釣竿、釣用浮き、釣用リール、釣竿受け、ルアー、スイッチ、金庫、柵、ATM、取っ手、ダイアル、橋、建物、構造物、トンネル、化学反応容器及びその配管、空圧機器及びその配管、油圧機器及びその配管、蒸気圧機器及びその配管、モータ、電磁ソレノイド、ガソリンエンジン等の各種物品に配設され、センサー、アクチュエータ、エネルギーハーベスト用途に使用される。
配設方法としては、例えば、圧電基材を対象物に縫い込む、対象物で挟み込む、対象物に粘接着剤で固定する等の各種方法が挙げられる。
例えば、前述の圧電織物、圧電編物、及び圧電デバイスは、これらの用途に適用することができる。
上記用途の中でも、本実施形態の圧電基材は、センサー用途、又はアクチュエータ用途として利用することが好ましい。
具体的に、本実施形態の圧電基材は、力センサーに搭載して利用されるか、又は、アクチュエータに搭載して利用されることが好ましい。
また、前述の圧電基材、圧電織物、圧電編物、及び圧電デバイスは、応力によって発生する電圧を電界効果トランジスタ(FET)のゲート・ソース間に加えることでFETのスイッチングが可能であり、応力によってON−OFFが可能なスイッチとして利用することもできる。
本実施形態の圧電基材は、上述した用途以外のその他の用途に用いることもできる。
その他の用途としては、寝返り検知のための寝具、移動検知のためのカーペット、移動検知のためのインソール、呼吸検知のための胸部バンド、呼吸検知のためのマスク、りきみ検知のための腕バンド、りきみ検知のための足バンド、着座検知のための着座シート、接触状態を判別できる、ぬいぐるみ、ぬいぐるみ型ソーシャルロボット等が挙げられる。接触状態を判別できる、ぬいぐるみ、ぬいぐるみ型ソーシャルロボット等では、例えば、ぬいぐるみ等に局所的に配置された接触センサーによって圧力変化を検出し、人がぬいぐるみ等を「撫でた」のか「たたいた」のか「ひっぱった」のか等の各動作を判別することができる。
また、本実施形態の圧電基材は、例えば、車載用途;振動・音響センシングを利用した自動車ハンドル把持検出用途、振動・音響センシングを利用した共振スペクトラムによる車載機器操作システム用途、車載ディスプレイのタッチセンサー用途、振動体用途、自動車ドア及び自動車ウィンドウの挟まれ検知センサー用途、車体振動センサー用途等に特に適している。
【0167】
本実施形態の圧電基材には公知の取出し電極を接合することができる。取出し電極としては、コネクター等の電極部品、圧着端子などが挙げられる。電極部品は、半田付けなどのろう付け、導電性接合剤等により圧電基材と接合することができる。
【0168】
以下、本実施形態に係る圧電デバイスの具体的態様、及び前述の実施形態に係る圧電編物の具体的態様について、図面を参照しながら説明する。
図5は、本実施形態に係る圧電織物の一例を示す概略図である。
図6は、本実施形態に係る圧電デバイスの平面視での写真である。
本実施形態の圧電編物20は、圧電編物20を構成する糸の一部として、
図1に示す具体的態様Aの圧電基材10を適用した態様である。
図5に示すように、本実施形態の圧電編物20は、圧電基材10と、絶縁性糸16と、が緯編みで編まれており、編物構造体の一部に、具体的態様Aの圧電基材10が用いられている。
図5に示す圧電編物20は、例えば
図6に示す圧電デバイス30を構成する圧電編物20として適用することができる。
図6に示すように、本実施形態の圧電デバイス30は、第2の外部導体としてのグラウンド電極(グラウンド導体)22と、第3の絶縁体としての絶縁フィルム24と、
図5に示す圧電編物20と、をこの順に備えている。また、
図6に示す圧電デバイス30では、圧電基材10に含まれる錦糸線(内部導体)26と、グラウンド導体22とが接続手段により外部回路(不図示)に接続されている。
本実施形態の圧電デバイス30では、圧電編物20に張力が付与されると、圧電基材10に含まれるヘリカルキラル高分子(A)に分極が生じる。分極方向は圧電基材の径方向である。これにより、張力に比例した電荷(電界)が発生する。この発生した電荷は、錦糸線26及びグラウンド導体22を介して取り出され外部回路で電圧信号として検出される。
【0169】
以下、本実施形態に係る圧電基材を備えた力センサーの具体的態様について、図面を参照しながら説明する。
図7は、本実施形態に係る力センサーの概念図である。
本実施形態に係る力センサー40は、第2の絶縁体としての円筒形状のゴム系熱収縮チューブ(以下、単に「収縮チューブ」とも称する)44と、収縮チューブ44の内部に配置された圧電基材10Dと、収縮チューブ44の両端部に配置された一対の圧着端子(取出し電極)46と、を備える。一対の圧着端子46は、本体部46aと、圧着部46bとからなり、中央部に貫通孔46cを有する。圧電基材10Dは、内部導体12Cと、内部導体12Cの周りに一方向に螺旋状に巻回された第1の圧電体14Dと、第1の圧電体14Dの外周面に一方向に螺旋状に巻回された第1の外部導体42(グラウンド導体)と、を備える。
圧電基材10Dにおいては、内部導体12Cの一端(
図7の右端)が、収縮チューブ44の外側に延在して、圧着部46bで圧着されて圧着端子46に電気的に接続されている。一方、第1の外部導体42は、内部導体12Cの一端側から他端側に向かって巻回された後、内部導体12Cの他端(
図7の左端)を越えて延在し、その延在部分が収縮チューブ44内で応力緩和部42aを形成している。
第1の外部導体42は、この応力緩和部42aを経た後、収縮チューブ44のさらに外側(
図7の左端)に延在して、圧着部46bで圧着されて圧着端子46に電気的に接続されている。
応力緩和部42aは、
図7に示すように、たるんだ第1の外部導体42からなる。上記応力緩和部42aにおいては、力センサー40に張力(応力)が印加されたときに、たるんだ部分が延びることで第1の圧電体14Dに過度な力が負荷されるのを抑制する。
また、第1の圧電体14Dは、長尺平板形状の圧電体からなり、両面には機能層としてアルミ蒸着膜(不図示)が蒸着されている。なお、一対の圧着端子46は、力センサー40の出力信号を処理する外部回路等(不図示)に接続されている。
なお、
図7で示した実施形態では、応力緩和部42aとしてたるんだ第1の外部導体42が配置されているが、本発明の実施形態はこれに限定されず、圧電基材10Dの少なくともいずれか一方の端部、或いは両端部に、線状の応力緩和部を接着、糸結び目等の方法等により張力が伝達するように配置することにより応力を緩和する機能を力センサー40に付与してもよい。
このとき線状の応力緩和部には電気的な接続の機能は存在しないが、電気的接続機能は、応力緩和部とは独立に、圧電基材の端部から内部導体及び外部導体を同軸ケーブル等に接続することにより、応力や歪の電圧信号を検出することが可能となる。
このとき応力緩和部の材料及び形態は特に限定されず、例えば、天然ゴム、シリコンゴム、ウレタンゴム等の伸縮性のある弾性材料からなる糸、紐、チューブ等;リン青銅等の金属材料、線状のポリマー等からなるスプリング;等が挙げられる。応力緩和部と電気的接続部とをそれぞれ独立に別の部位に配置することにより、電気的接続部の最大伸長量に起因する応力緩和部の歪量の制限が無くなり、張力センサーとしての最大歪量を増大させることが可能となる。
なお、上述の
図26に示すヘルメット(又は帽子)57の顎紐58の一部に圧電基材10を配置した例では、顎紐58が応力緩和部として機能している。
【0170】
以下、本実施形態の力センサー40の作用について説明する。
力センサー40に張力(応力)が印加されると、圧電基材10Dに張力が印加され、圧電基材10Dの第1の圧電体14Dに含まれるヘリカルキラル高分子(A)にずり力が加わり、このずり力により圧電基材10Dの径方向にヘリカルキラル高分子(A)の分極が生じる。分極方向は圧電基材10Dの径方向である。これにより、張力に比例した電荷(電界)が発生し、発生した電荷は電圧信号(電荷信号)として検出される。なお、電圧信号は、圧着端子46に接続される外部回路等(不図示)で検出される。
また、本実施形態の力センサー40は、同軸ケーブルに備えられる内部構造と同一構造をなす圧電基材10Dを備えるため、電磁シールド性が高く、ノイズに強い構造となり得る。加えて、構造が簡易であるため、例えばウェアラブルセンサーとして、身体の一部に装着して用いることができる。
【0171】
本実施形態の力センサーとしては、圧電基材に張力が印加されたときに生じる電荷(電界)を電圧信号として取り出す構成に限定されず、例えば、圧電基材にねじり力が印加されたときに生じる電荷(電界)を電圧信号として取り出す構成であってもよい。
【0172】
本実施形態の圧電基材、本実施形態の圧電織物、及び本実施形態の圧電編物の用途としては、生体情報取得デバイスも好ましい。
即ち、本実施形態の生体情報取得デバイスは、本実施形態の圧電基材、本実施形態の圧電織物、又は本実施形態の圧電編物を含む。
本実施形態の生体情報取得デバイスは、上記圧電基材、上記圧電織物、又は上記圧電編物によって、被験者又は被験動物(以下、これらをまとめて「被験体」ともいう)の生体信号を検出することにより、被験体の生体情報を取得するためのデバイスである。
ここでいう生体信号としては、脈波信号(心拍信号)、呼吸信号、体動信号、心弾動、生体振戦、等が挙げられる。
生体振戦とは、身体部位(手指、手、前腕、上肢など)の律動的な不随意運動のことである。
【0173】
また、上記心弾動の検出には、身体の心機能による力の効果の検出も含まれる。
即ち、心臓が大動脈及び肺動脈に血液をポンピングする場合、体は、血流と反対の方向に反動力を受ける。この反動力の大きさ及び方向は、心臓の機能的な段階とともに変化する。この反動力は、身体の外側の心弾動をセンシングすることによって検出される。
【0174】
上記生体情報取得デバイスは、各種衣料(シャツ、スーツ、ブレザー、ブラウス、コート、ジャケット、ブルゾン、ジャンパー、ベスト、ワンピース、ズボン、パンツ、下着(スリップ、ペチコート、キャミソール、ブラジャー)、靴下、手袋、和服、帯地、金襴、冷感衣料、ネクタイ、ハンカチーフ、マフラー、スカーフ、ストール、アイマスク)、サポーター(首用サポーター、肩用サポーター、胸用サポーター、腹用サポーター、腰用サポーター、腕用サポーター、足用サポーター、肘用サポーター、膝用サポーター、手首用サポーター、足首用サポーター)、履物(スニーカー、ブーツ、サンダル、パンプス、ミュール、スリッパ、バレエシューズ、カンフーシューズ)、インソール、タオル、リュックサック、帽子(ハット、キャップ、キャスケット、ハンチング帽、テンガロンハット、チューリップハット、サンバイザー、ベレー帽)、ヘルメット、ヘルメット顎紐、頭巾、ベルト、シートカバー、シーツ、座布団、クッション、布団、布団カバー、毛布、枕、枕カバー、ソファー、イス、デスク、テーブル、シート、座席、便座、マッサージチェア、ベッド、ベッドパット、カーペット、かご、マスク、包帯、ロープ、各種ネット、バスタブ、床材、壁材、パソコン、マウス等の各種物品に配設されて使用される。
生体情報取得デバイスが配設される物品としては、履物、インソール、シーツ、座布団、クッション、布団、布団カバー、枕、枕カバー、ソファー、イス、シート、座席、便座、ベッド、カーペット、バスタブ、床材等、被験体の体重がかかる物品が好ましい。より具体的には、乳幼児用手押し車のシート、座席部、車輪、乳幼児の転落を防止するためのストッパー等;車いす用のシート、座席部等;医療用保育器のマット;等が好ましい。
【0175】
以下、生体情報取得デバイスの動作の一例を説明する。
生体情報取得デバイスは、例えばベッド上又はイスの座面上などに配設される。この生体情報取得デバイス上に被験体が、横臥、着座、又は起立する。この状態で、被験体から発せられる生体信号(体動、周期的な振動(脈、呼吸など)、人間の「かわいい」、「怖い」などの感性が原因で変化した心拍数等)によって、生体情報取得デバイスの圧電基材、圧電織物、又は圧電編物に張力が付与されると、これらの圧電基材、圧電織物、又は圧電編物に含まれるヘリカルキラル高分子(A)に分極が生じ、前記張力に比例した電位が発生する。この電位は被験体から発せられる生体信号に伴って経時的に変化する。例えば、被験体から発せられる生体信号が、脈、呼吸などの周期的な振動である場合には、圧電基材、圧電織物、又は圧電編物にて発生する電位も、周期的に変化する。
上記圧電基材、圧電織物、又は圧電編物への張力の付与に伴って発生した電位の経時的な変化を、電圧信号として測定モジュールにより取得する。取得される電位の経時的な変化(圧電信号)は、複数の生体信号(脈波信号(心拍信号)、呼吸信号、体動信号)の合成波である。この合成波をフーリエ変換によって周波数ごとに分離し、分離信号を生成する。生成した分離信号の各々を逆フーリエ変換することにより、分離信号の各々に対応する生体信号をそれぞれ得る。
【0176】
例えば、後述する実施例12に示すように、被験体から発せられる生体信号が心拍信号と呼吸信号との合成波である場合、生体情報取得デバイスの圧電基材、圧電織物、又は圧電編物への張力の付与に伴って発生する電位は、経時的に周期的に変化する。
一般に、人の脈は一分間当たり50〜90回であって周期としては0.6〜3Hzである。また、一般に、人の呼吸は一分間当たり16〜18回であって周期としては0.1〜1Hzである。また、一般に、人の体動は10Hz以上である。
これらの目安に基づき、複数の生体信号の合成波を、それぞれの生体信号に分離することができる。例えば、後述する実施例12の場合、前記合成波を呼吸信号(
図10)及び心拍信号(
図11)に分離することができる。さらに心拍信号から速度脈波の信号(
図12)を得ることもできる。
複数の生体信号の合成波のそれぞれの生体信号への分離は、例えば生体信号報知プログラムを用い、上記フーリエ変換及び上記逆フーリエ変換によって行う。
【0177】
以上のようにして、複数の生体信号の合成波を、複数の生体信号の各々に分離することができる。
【0178】
更に、上記のようにして分離された生体信号の少なくとも1つに基づき、生体信号データを生成してもよい。
生体信号データは、生体信号に基づいて算出されたものであれば、特に限定されない。 生体信号データとしては、例えば、単位時間当たりの生体信号数、過去の生体信号数の平均値などが挙げられる。
【実施例】
【0179】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0180】
<リボン状圧電体(スリットリボン)の作製>
ヘリカルキラル高分子(A)としてのNatureWorks LLC社製ポリ乳酸(品名:Ingeo
TM biopolymer、銘柄:4032D)100質量部に対して、安定化剤〔ラインケミー社製Stabaxol P400(10質量部)、ラインケミー社製Stabaxol I(70質量部)、及び日清紡ケミカル社製カルボジライトLA−1(20質量部)の混合物〕1.0質量部を添加し、ドライブレンドして原料を作製した。
作製した原料を押出成形機ホッパーに入れて、210℃に加熱しながらTダイから押し出し、50℃のキャストロールに0.3分間接触させて、厚さ150μmの予備結晶化シートを製膜した(予備結晶化工程)。前記予備結晶化シートの結晶化度を測定したところ6%であった。
得られた予備結晶化シートを70℃に加熱しながらロールツーロールで、延伸速度10m/分で延伸を開始し、3.5倍までMD方向に一軸延伸した(延伸工程)。得られたフィルムの厚さは49.2μmであった。
その後、前記一軸延伸フィルムを、ロールツーロールで、145℃に加熱したロール上に15秒間接触させアニール処理し、その後急冷を行って、圧電フィルムを作製した(アニール処理工程)。
その後、さらに圧電フィルムをスリット加工機を用いて、スリットする方向と圧電フィルムの延伸方向とが略平行となるように幅0.6mmでスリットした。これにより、リボン状圧電体として、幅0.6mm、厚さ49.2μmのスリットリボンを得た。なお、得られたスリットリボンの断面形状は矩形であった。
【0181】
<糸状圧電体の作製>
ヘリカルキラル高分子(A)として、ポリ乳酸(融点170℃、融解熱38J/g、L−乳酸/D−乳酸のモル比が98.5/1.5(L−乳酸の含有量が98.5モル%)、数平均分子量8.5万)を準備した。
上記ポリ乳酸をエクストルーダー型溶融紡糸機に供給し、溶融混練した。紡糸口金より、紡糸温度225℃で溶融紡糸した後、糸条を冷却し、油剤を付与した。続いて一旦捲き取ることなく、150℃に加熱した熱ローラ間で熱延伸を施し、捲き取った。これにより、糸状圧電体として、総繊度295dtex(♯20番手:長軸径2.7μm)の糸状圧電体(マルチフィラメント)を得た。
【0182】
<リボン状圧電体、糸状圧電体の物性測定>
上記のようにして得られたリボン状圧電体、糸状圧電体について、以下の物性測定を行った。結果を表1に示す。
【0183】
<ポリ乳酸の配向度F>
広角X線回折装置(リガク社製 RINT2550、付属装置:回転試料台、X線源:CuKα、出力:40kV 370mA、検出器:シンチレーションカウンター)を用いて、サンプル(リボン状圧電体、糸状圧電体)をホルダーに固定し、結晶面ピーク[(110)面/(200)面]の方位角分布強度を測定した。
得られた方位角分布曲線(X線干渉図)において、結晶化度、及びピークの半値幅(α)から下記の式よりポリ乳酸の配向度F(C軸配向度)を算出して評価した。
配向度(F)=(180°−α)/180°
(αは配向由来のピークの半値幅)
【0184】
【表1】
【0185】
〔実施例1〕
<圧電基材の作製>
図1Aに示す圧電基材10と同様の構成の圧電基材に、さらに第1の外部導体(グラウンド導体)として銅箔リボンを備えた圧電基材を以下に示す方法により作製した。
まず内部導体(信号線導体)として、明清産業社製錦糸線U24−01−00(線外径0.3mm、長さ250mm)を準備した。なお、用いた錦糸線は、中心線にメタ系アラミド繊維(40番手2本撚り)を用い、圧延銅箔(幅0.3mm×厚さ0.02mm)2本を用いて、中心線が露出しないように、10mm当たり22回、左巻きに螺旋状に2重に巻回して包接した。錦糸線の両端に、電気的接続部及び機械的接続部として圧着端子をかしめて、設けた。
次に、上記のようにして得た幅0.6mm、厚さ49.2μmのリボン状圧電体(スリットリボン)を錦糸線の周りに左巻きに、錦糸線の長軸方向に対して45°の方向を向くように(螺旋角度45°)、錦糸線が露出して見えないよう隙間なく、螺旋状に巻回し、錦糸線を包接した。なお、「左巻き」とは、信号線導体(錦糸線)の軸方向の一端(
図1Aの場合、右端側)から見たときに、信号線導体の手前側から奥側に向かってリボン状圧電体が左巻きで巻回していることをいう。
次に、錦糸線とリボン状圧電体とを機械的に一体化するため、前記リボン状圧電体を巻回した部分に、接着剤として東亞合成社製のアロンアルファ(シアノアクリレート系接着剤)を滴下、含浸させ、錦糸線とリボン状圧電体とを接合した。
次に、幅0.6mmにスリットした接着剤付の銅箔リボンを準備した。この銅箔リボンを、前記リボン状圧電体と同様の方法により、リボン状圧電体の周りに、リボン状圧電体が露出しないよう隙間なく巻回し包接した。
以上のようにして、実施例1の圧電基材を得た。
なお、錦糸線は、
図1A中の内部導体12Aに相当する。リボン状圧電体は、
図1A中の第1の圧電体14Aに相当する。接着剤は、
図1A中不図示だが、内部導体12A及び第1の圧電体14Aの間に配置される。グラウンド導体も
図1A中不図示である。
【0186】
<評価>
得られた実施例1の圧電基材を用い、圧電基材に引張力を印加したときに発生する電荷量(発生電荷量)を測定し、発生電荷量から単位引張力当たりの発生電荷量を算出した。結果を表2に示す。さらに、実施例1については、温度変化による発生電荷量の評価も行った。結果を
図9に示す。
【0187】
(単位引張力当たりの発生電荷量)
実施例1の圧電基材をサンプルとして、チャック間距離を200mmとした引張試験機(株式会社エー・アンド・デイ社製テンシロンRTG1250)にチャックした。
引張試験機で、サンプルに対して、1.5N〜4.5Nの応力範囲で0.2Hzで周期的に三角波状に繰り返し印加し、その時のサンプルの表裏に発生する電荷量をエレクトロメータ(ケースレー社製617)で測定した。
測定した発生電荷量Q[C]をY軸とし、サンプルの引張力F[N]をX軸としたときの散布図の相関直線の傾きから、単位引張力当たりの発生電荷量を算出した。
【0188】
(温度変化時の発生電荷量の評価)
実施例1の圧電基材をサンプルとして、エレクトロメータ(ケースレー社製617)に接続し、さらに熱電対を密着させた状態で、40℃に設定したオーブンの中にセットし、発生電荷量について評価した。
図9は、温度と発生電荷量との関係を示すグラフである。
図9に示すように、実施例1の圧電基材は、常温から10℃程度の温度上昇においてnCオーダーではほとんど電荷の変化がないことがわかった。これにより、実施例1の圧電基材は、焦電性による電荷変動がほとんどないことが確認された。
【0189】
(塑性変形耐性の評価)
実施例1の圧電基材の塑性変形に対する耐性を評価するため、圧電基材を直径1cmのベークライトからなる円柱に2周巻付け、巻付けた後円柱を抜き、円形の形状を保っているか否かを目視観察により評価した。
圧電基材について、円柱を除いた後に経時的な変化がほぼなく円形形状を保っているものはB、ばね性によりスプリングバックし円形形状を保たず元の状態に戻ったものは、塑性変形に対する耐性が高いものとして、Aとして評価した。結果を表2に示す。
【0190】
〔実施例2〕
リボン状圧電体の巻回方向を右巻きとしたこと以外は実施例1と同様の操作を行った。結果を表2に示す。
【0191】
〔実施例3〕
錦糸線とリボン状圧電体とを接合する接着剤を用いなかったこと以外は実施例2と同様の操作を行った。結果を表2に示す。
【0192】
〔実施例4〕
リボン状圧電体の代わりに、上記で作製した糸状圧電体を3本束ねたものを用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行った。結果を表2に示す。
さらに実施例4については、圧電基材に引張応力を印加したときの電圧波形を測定した。結果を
図8に示す。
【0193】
〔実施例5〕
糸状圧電体(3本束ねたもの)の巻回方向を右巻きとしたこと以外は実施例4と同様の操作を行った。結果を表2に示す。
さらに実施例5については、実施例4と同様に、圧電基材に引張応力を印加したときの電圧波形も測定した。
【0194】
−電圧波形の測定−
実施例4、5について、圧電基材に引張応力を印加したときの電圧波形を測定した。
図8は、実施例4の圧電基材に引張応力を印加したときの電圧波形を示すグラフである。
図8に示すように、実施例4の電圧波形は、張力の印加と弛緩に起因して電圧が逆位相となる波形であることが観測された。これにより、実施例4の圧電基材は、ずり力(ずり圧電)により電圧を発生することがわかった。
なお、実施例5の電圧波形は、実施例4の電圧波形に対し、発生する電圧の極性が反転することが観測された(不図示)。これは、実施例4と実施例5では、糸状圧電体が互いに逆方向に巻回されていることに起因すると考えられる(実施例4は左巻き、実施例5は右巻き)。
よって、実施例4、5の圧電基材は、いずれもずり力による圧電性を有しているため、これらの圧電基材はセンサー用途、及びアクチュエータ用途に適用可能であることがわかった。
【0195】
〔実施例6〕
糸状圧電体を3本束ねたものの代わりに、糸状圧電体を5本束ねたものを用いたこと以外は実施例4と同様の操作を行った。結果を表2に示す。
【0196】
〔実施例7〕
糸状圧電体(5本束ねたもの)の巻回方向を右巻きとしたこと以外は実施例6と同様の操作を行った。結果を表2に示す。
【0197】
〔実施例8〕
<圧電基材の作製>
図4に示す圧電基材10Cと同様の構成の圧電基材に、さらに絶縁体としてのセロファンテープと、グラウンド導体としての銅箔リボンとを備えた圧電基材を以下に示す方法により作製した。
まず信号線導体として、明清産業社製錦糸線U24−01−00(線外径0.3mm、長さ250mm)を準備した。
次に、実施例5で用いた糸状圧電体(3本束ねたもの)と同様の糸状圧電体を用いて、錦糸線と糸状圧電体とを、糸状圧電体が右巻きになるように、同じ旋回軸で1mあたり400回転(周回数400)させて捩り合わせ、2本片撚糸とした。
なお、「右巻き」とは、撚糸の旋回軸方向の一端(
図4の場合、右端側)から見たときに旋回軸の手前側から奥側に向かって糸状圧電体が右巻きで巻回されていることをいう。
次に、撚糸の周りに、絶縁体として、幅0.5mm、厚さ50μmのセロファンテープを隙間なく螺旋状に巻回し包接した。
次に、実施例1で用いた銅箔リボンと同様の銅箔リボンを用いて、実施例1と同様の方法により、この銅箔リボンを、前記セロファンテープの周りに、セロファンテープが露出しないよう隙間なく巻回し包接した。
以上のようにして、実施例8の圧電基材を得た。また、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
なお、錦糸線は、
図4中の導体12Bに相当する。糸状圧電体は、
図4中の第1の圧電体14Cに相当する。セロファンテープ及びグラウンド導体は
図4中不図示である。
【0198】
〔実施例9〕
糸状圧電体を3本束ねたものの代わりに、糸状圧電体を5本束ねたものを用い、錦糸線と糸状圧電体とを、糸状圧電体が左巻きになるように、1mあたり333回転(周回数333)させて捩り合わせたこと以外は実施例8と同様の操作を行った。結果を表2に示す。
【0199】
〔実施例10〕
信号線導体と糸状圧電体とを、糸状圧電体が右巻きになるように捩り合わせたこと以外は実施例9と同様の操作を行った。結果を表2に示す。
【0200】
〔実施例11〕
図7に示す力センサー40に備えられている圧電基材10Dと同様の構成の圧電基材を以下に示す方法により作製した。
リボン状圧電体の代わりに、リボン状圧電体の主面の表裏にAl蒸着膜を形成したもの(以下、両面Al蒸着膜付き圧電体とも称す)を用い、この両面Al蒸着膜付き圧電体の周りに、グラウンド導体としての明清産業社製錦糸線U24−01−00(線外径0.3mm、長さ250mm)を、前記両面Al蒸着膜付き圧電体が適度に露出するように巻回したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。結果を表2に示す。
【0201】
実施例11については、以下のようにして、
図7に示す力センサー40と同様の構成の力センサーも作製した。
次いで、上記圧電基材の全体を覆うように円筒状のゴム系熱収縮チューブ(以下、単に「収縮チューブ」とも称する)を配置し、収縮チューブの両端を一対の圧着端子の圧着部で圧着した。これにより、力センサーを作製した。
なお、上記力センサーは、
図7中の力センサー40に相当する。圧電基材は、
図7中の圧電基材10Dに相当する。圧電基材に備えられる錦糸線は、
図7中の内部導体12Cに相当する。両面Al蒸着膜付き圧電体は、
図7中の第1の圧電体14Dに相当する。銅箔リボンは、
図7中の第1の外部導体42に相当する。収縮チューブは
図7中の第2の絶縁体44に相当する。圧着端子は、
図7中の圧着端子46に相当し、圧着部は、
図7中の圧着部46bに相当する。
【0202】
〔実施例14〕
内部導体として、錦糸線の代わりに直径0.5mmのポリウレタン被覆銅線を用い、リボン状圧電体の巻回方向を左巻きとし、かつ錦糸線とリボン状圧電体とを接合する接着剤を用いなかったこと以外は実施例1と同様の操作を行った。結果を表2に示す。
【0203】
〔実施例15〕
リボン状圧電体の巻回方向を右巻きとした以外は実施例14と同様の操作を行った。結果を表2に示す。
【0204】
〔実施例16〕
内部導体として、錦糸線の代わりに直径0.2mmのポリウレタン被覆銅線を用い、リボン状圧電体の巻回方向を左巻きとし、かつ錦糸線とリボン状圧電体とを接合する接着剤を用いなかったこと以外は実施例1と同様の操作を行った。結果を表2に示す。
【0205】
〔実施例17〕
リボン状圧電体の巻回方向を右巻きとした以外は実施例16と同様の操作を行った。結果を表2に示す。
【0206】
〔実施例18〕
内部導体となる錦糸線とリボン状圧電体との間を機械的に一体化するための接着剤は用いず、さらに、外部導体として、幅0.3mm、厚さ30μmの平角断面の圧延銅箔リボン(接着剤なし)を準備し、この圧延銅箔リボンを、螺旋状に巻回されているリボン状圧電体の周りに、リボン状圧電体が露出しないよう隙間なく右巻きに巻回し包接した。これら以外は実施例1と同様の操作を行った。結果を表2に示す。
【0207】
〔実施例19〕
リボン状圧電体の巻回方向を右巻きとした以外は実施例18と同様の操作を行った。結果を表2に示す。
【0208】
〔比較例1〕
糸状圧電体(3本束ねたもの)を、錦糸線と平行に配置したこと以外は実施例4と同様の操作を行った。結果を表2に示す。
【0209】
〔比較例2〕
糸状圧電体(3本束ねたもの)を、錦糸線の周りに、当該錦糸線の一端から、軸方向の長さの半分の位置まで左巻きに螺旋状に巻回した。次いで、糸状圧電体の巻回方向を右巻きにして、前記半分の位置から錦糸線の軸方向の他端まで螺旋状に巻回した。このような巻回方法以外は実施例4と同様の操作を行った。結果を表2に示す。
【0210】
〔比較例3〕
ポリ乳酸からなるリボン状圧電体に代えて、幅0.6mm、厚さ50μmのポリフッ化ビニリデン(クレハ社製PVDF、商標:KFピエゾフィルム、圧電定数d
31=21pC/N、比誘電率ε
33/ε
0=18)からなるリボン状圧電体を用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行った。結果を表2に示す。
さらに、比較例3については、実施例1と同様の方法により、温度変化による発生電荷量の評価も行った。結果を
図9に示す。
【0211】
図9は、温度と発生電荷量との関係を示すグラフである。
図9に示すように、比較例3の圧電基材は、オーブンの昇温に伴い、発生電荷量が大幅に増加することがわかった。より詳細には、比較例3の圧電基材は、発生電荷量がnCオーダーの電荷が発生していることが確認された。即ち、比較例3の圧電基材では、より微弱な、pCオーダーの歪信号(電圧信号)を検出する際には、この程度の温度変化があると、評価する電圧信号が、焦電による電荷に埋もれて、検出が困難になることがわかった。
【0212】
〔比較例4〕
リボン状圧電体の巻回方向を右巻きとしたこと以外は比較例3と同様の操作を行った。結果を表2に示す。
【0213】
表2に、実施例1〜11、比較例1〜4の圧電基材の構成、評価結果の詳細をまとめて示す。
【0214】
【表2】
【0215】
表2に示すように、実施例1〜11の圧電基材は、信号線導体に対して一方向に螺旋状に巻回された圧電体(リボン状圧電体、糸状圧電体)を備えることにより、張力の印加により、圧電性が発現されることがわかった。これは、実施例1〜11の圧電基材では、信号線導体に巻回されている圧電体の配置方向(圧電体の長さ方向)と、ヘリカルキラル高分子(A)の主配向方向と、が略平行となっているため、圧電基材への張力印加により、圧電体に含まれるヘリカルキラル高分子(A)に分極が効果的に生じたためと考えられる。
また、信号線導体及び圧電体が接着剤により接合された実施例3は、かかる接着剤を用いていない実施例2に比べ、より大きな単位引張力当たりの発生電荷量(絶対値)が得られることがわかった。
なお、信号線導体に対して平行に配置された糸状圧電体を備える比較例1の圧電基材は、単位引張力当たりの発生電荷量が観測されなかった。
また、圧電体としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)を備える比較例3、4は、大きな単位引張力当たりの発生電荷量(絶対値)の値が測定されたが、PVDFは焦電性を有しているため、環境変化による圧電出力が不安定になりやすいことがわかった。
より詳細には、
図9に示すように、信号線導体に対して一方向に螺旋状に巻回された圧電体を備える実施例1及び比較例3において、圧電体としてポリ乳酸(リボン状圧電体)を備える実施例1は、圧電体としてPVDF(リボン状圧電体)を備える比較例3に比べ、焦電性による電荷変動がほとんどないため、温度変化に対する安定性に優れることがわかった。
【0216】
〔実施例12〕
(呼吸及び心拍の測定)
実施例12として、実施例1の評価サンプル(圧電基材)を生体情報取得デバイスとして用い、被験者の呼吸及び心拍の測定を行った。詳細を以下に示す。
実施例1記載の同一の構造の長さ20cmの圧電基材を作製した。上記圧電基材を、厚さ50μm、幅5mm、長さ25cmのポリイミド粘着テープ2枚で挟み、外部導体をポリイミドフィルムからなる絶縁体で被覆した。被覆した評価サンプル(センサー)に、長さが調整できるナイロン製の布テープを接合してリング状にし、腹部を締め付け、センサーに印加する張力を調整できるようにした。
上記評価サンプル(センサー)をイスの上に設置した後、被験者(呼吸及び心拍測定対象者)が、センサーの上に着座した。
この状態で、センサーの内部導体及び外部導体の電極を同軸ケーブルに電気的に接続し、引出電極を通じて被験者の生体信号を取り出し、取り出した生体信号を、オペアンプを、AD変換機(National Instruments社製、NI USB−6210)を介してパーソナルコンピュータ(PC)に入力した。
【0217】
PCに入力された信号(電位の経時的な変化;呼吸信号と心拍信号との合成波)について、高速フーリエ変換を行い、1Hz以上の成分を除去して逆フーリエ変換することで呼吸に対応する呼吸信号(
図10)と、5Hz以上15Hz以下以外の信号を除去して逆フーリエ変換することで心拍に対応する心拍信号(
図11)に分離した。さらに心拍に対応する心拍信号を微分することで速度脈波の信号(
図12)を得た。
図10〜
図12中、横軸は時間(秒)であり、縦軸は電位である。
【0218】
〔実施例13〕
ネコのぬいぐるみから綿を取り出し、実施例1と同様にして作製した長さ90mmの圧電基材を、ネコのぬいぐるみの背中内部に接着剤(セメダイン株式会社製のセメダインスーパーX)により固定して背中センサー(接触センサー)とした。また実施例1と同様にして作製した長さ50mmの圧電基材6本の内部導体及び外部導体をそれぞれまとめて接続し、ネコのぬいぐるみの頬部内側から左右に3本ずつ圧電基材を露出させ、髭センサー(接触センサー)とした。それぞれのセンサーには内部導体及び外部導体にそれぞれ接続用のリード線を取り付け、センサー設置後、取り出した綿をぬいぐるみに詰め直した。背中センサーを取り付けたネコのぬいぐるみを
図13に示し、髭センサーを取り付けたネコのぬいぐるみを
図14に示す。
【0219】
背中センサー及び髭センサーに取り付けたリード線からの出力を、バッファアンプを介してカットオフ周波数50HzのCRフィルタに通し、CRフィルタに通した信号を、AD変換機(National Instruments社製、NI USB−6210)を介してパーソナルコンピュータ(PC)に入力した。
PCに入力された信号を
図15、16に示す。
図15に示すように、背中センサーはぬいぐるみの背中を撫でた場合と叩いた場合の電圧出力が大きく異なり、電圧の閾値を設定することで撫でる、叩く等の各動作を判定することができる。また、
図16に示すように、髭センサーはぬいぐるみの髭を撫でた場合と引っ張った場合の電圧出力が大きく異なり、電圧の閾値を設定することで撫でる、叩く等の各動作を判定することができる。
【0220】
2015年12月25日に出願された日本国特許出願2015−255062、2016年5月27日に出願された日本国特許出願2016−106171及び2016年9月5日に出願された日本国特許出願2016−173004の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。