(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記要求受付手段による要求から、前記室内の環境整備に関する措置が取られた後の、当該室内での前記特定の匂いを検知し、当該室内での措置後の分布状態を把握すること、を特徴とする請求項1記載の室内環境管理システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、個々人の快適に対する好みや意識は一定ではなく、また、日々更新される性質のものであることから、例えば匂いセンサからの出力により単純に操作を行なっただけでは、真に快適な環境づくりを行なうことは困難である。
本発明は、従来の単一の匂いを検出して空気清浄器などを動作させる場合に比べ、個々人に対して、より快適な室内環境を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かくして本発明によれば、室内に配置され、複数の匂い分子を検知して匂いを識別する匂いセンサと、匂いセンサが検知できる複数の匂いについて、異なった複数の評価軸で測定する測定手段と、室内に存在する個々人が、測定手段にて測定された複数の匂いをもとに室内における複数の匂いの個々の匂い状況を把握するための、匂い情報を提供する提供手段と、提供された匂い情報をもとに、個々人による快適性向上のための要求を受け付ける要求受付手段と、を備えたことを特徴とする室内環境管理システムが提供される。
ここで、提供手段は、個々人に複数の匂いから特定の匂いを選択させ、匂い情報は、選択された匂いについて、室内での分布状態が個々人に把握できる情報であるようにすることができる。この場合、ユーザが知りたい匂いについて、室内での分布状態を、より容易に把握することができる。
また、要求受付手段による要求から、室内の環境整備に関する措置が取られた後の、室内での特定の匂いを検知し、室内での措置後の分布状態を把握するようにすることができる。この場合、室内の環境整備に関する措置が取られる前と後とで、匂いの分布状態の違いを知ることができる。
さらに、提供手段は、匂い情報以外の室内の環境に関する情報を併せて提供することができる。この場合、温度や湿度など室内の環境に影響を与える他の要素を提供することができる。
そして、室内の環境整備に関する措置を取る空気調和装置をさらに備えるようにすることができる。この場合、空気調和装置により室内の環境整備をすることができる。
さらに、匂い情報以外の室内の環境に関する情報を取得する第2の測定手段をさらに備えるようにすることができる。この場合、匂い情報以外の環境に与える情報を取得することができる。
またさらに、室内の環境整備に関する措置を取る空気調和装置の動作状態を学習する学習手段をさらに備えるようにすることができる。この場合、ユーザが快適と感じる空気調和装置の動作状態を学習することができる。
また、学習手段は、空気調和装置の動作状態と、要求受付手段で受け付けられた要求とを関連させて学習するようにすることができる。この場合、ユーザの要求と空気調和装置の動作状態との関係を把握することができる。
そして、測定手段は、学習の結果から、個々人による快適性向上のための空気調和装置の動作状態をさらに求めるようにすることができる。この場合、ユーザが快適と感じる空気調和装置の動作状態を提示することができる。
また、要求受付手段は、要求として、個々人が感じる匂いの程度を受け付けるようにすることができる。この場合、ユーザが要求を入力するのが、より容易になる。
【0007】
さらに、本発明によれば、室内に配置され、複数の匂い分子を検知して匂いを識別する匂いセンサから、匂いに関する情報を取得する匂い情報取得手段と、匂いセンサが検知できる複数の匂いについて、異なった複数の評価軸で測定する測定手段と、室内の環境整備に関する措置を取る空気調和装置の動作状態と、室内に存在する個々人が、測定手段にて測定された複数の匂いをもとに受け付けた、個々人による快適性向上のための要求とを関連させて学習する学習手段と、を備えたことを特徴とする管理装置が提供される。
【0008】
またさらに、本発明によれば、コンピュータに、室内に配置され、複数の匂い分子を検知して匂いを識別する匂いセンサから、匂いに関する情報を取得する匂い情報取得機能と、匂いセンサが検知できる複数の匂いについて、異なった複数の評価軸で測定する測定機能と、室内の環境整備に関する措置を取る空気調和装置の動作状態と、室内に存在する個々人が、測定機能にて測定された複数の匂いをもとに受け付けた、個々人による快適性向上のための要求とを関連させて学習する学習機能と、を実現させるためのプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来の単一の匂いを検出して空気清浄器などを動作させる場合に比べ、個々人に対して、より快適な室内環境を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<室内環境管理システム1全体の説明>
図1は、本実施の形態における室内環境管理システム1の構成例を示す図である。
図示するように本実施の形態の室内環境管理システム1は、室内の匂いを検出する匂いセンサ10と、ユーザが匂いの評価を行うための端末装置20と、匂いの分析を行う管理サーバ30と、室内の空気質の調整を行う空気調和装置40とを備える。
匂いセンサ10、端末装置20および管理サーバ30は、ネットワーク50を介して接続される。ネットワーク50は、匂いセンサ10、端末装置20および管理サーバ30との間の情報通信に用いられる通信手段であり、例えば、LAN(Local Area Network)やインターネットである。
【0012】
匂いセンサ10は、匂いのもととなる成分を検出する。匂いセンサ10は、室内に配置され、複数の匂い分子を検知して匂いを識別する。
図2は、匂いセンサ10の構成について示した概略図である。
図示する匂いセンサ10は、水晶振動子110と、感応膜120とを備える。
水晶振動子110は、水晶片111と、1組の電極112a、112bとを備える。
水晶片111は、例えば、ATカットにより切り出した水晶の薄片である。そして、水晶片111は、1組の電極112a、112bにより挟持される。
1組の電極112a、112bは、発振回路Hcに接続され、発振回路Hcにより、交流電圧を印加すると、水晶片111に所定の振動数で共振が生じる。この振動数は、共振周波数であり、例えば、水晶片111のカット面、厚み、水晶の弾性率等で定まる。
【0013】
感応膜120は、空気中に含まれ、匂いのもととなる化学成分を吸着および脱着する。この場合、感応膜120は、匂いのもととなる化学成分として、匂い分子を吸着および脱着する。そして、匂い分子が、吸着すると、水晶片111の共振周波数が変化する。これは、水晶片111の振動モードが変化すると言うこともできる。そして、制御装置Sで、この共振周波数の変化量を検出することで、感応膜120に吸着した匂い分子の有無や量を判断することができる。
【0014】
感応膜120として、吸着する匂い分子に選択性があるものを使用することができる。そしてこれにより、この匂い分子に起因する特定の匂いに反応する匂いセンサ10を作成することができる。例えば、エタノールを選択的に吸着する感応膜120を使用することで、酒類の匂いを検出することができる匂いセンサ10を作成できる。また、種々の選択性を有する感応膜120を有する複数の匂いセンサ10を配することで、種々の匂い分子の吸着を行うことができ、種々の匂いを検出することができる。また、1つの匂いセンサ10の中に、複数の感応膜120を設けてもよい。
感応膜120は、水晶振動子110の振動を阻害しにくいことが求められるため、薄膜である。また、特定の匂い分子以外の吸着を阻止するため、感応膜120に、さらにバリヤ層を設けることもできる。
【0015】
なお、感応膜120に匂い分子が吸着した後に、乾燥空気を流すと、匂い分子は、吸着した状態から脱着し、共振周波数は、もとに戻る。つまり、匂い分子を含む空気と乾燥空気とを交互に流すことで、継続的に匂いの検出を行うことができる。
【0016】
端末装置20は、室内の匂いの評価を行うユーザが操作し、ユーザからの匂いの評価を受け付ける。端末装置20では、例えば、匂いの評価を受け付けるアプリ等のアプリケーションソフトウェアが動作し、このアプリケーションソフトウェアを操作することで、ユーザは、評価を入力できる。
端末装置20は、例えば、スマートフォン、タブレット、携帯電話、デスクトップコンピュータ、モバイルコンピュータ等のコンピュータ装置である。
【0017】
管理サーバ30は、管理装置の一例であり、室内環境管理システム1の全体の管理をするサーバコンピュータである。また、匂いセンサ10から送られた匂いに関する情報から、室内の匂いの分布を分析する。
【0018】
端末装置20および管理サーバ30は、演算手段であるCPU(Central Processing Unit)と、記憶手段であるメインメモリを備える。ここで、CPUは、OS(基本ソフトウェア)やアプリ(応用ソフトウェア)等の各種ソフトウェアを実行する。また、メインメモリは、各種ソフトウェアやその実行に用いるデータ等を記憶する記憶領域である。さらに、端末装置20および管理サーバ30は、外部との通信を行うための通信インタフェース(以下、「通信I/F」と表記する)と、ビデオメモリやディスプレイ等からなる表示機構と、入力ボタン、タッチパネル、キーボード等の入力機構とを備える。また、端末装置20および管理サーバ30は、補助記憶装置として、ストレージを備える。ストレージは、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)である。さらに、端末装置20および管理サーバ30は、音を発するスピーカを備えることもできる。
【0019】
空気調和装置40は、室内の環境整備に関する措置を取る装置であり、室内の空気質を調節する装置である。空気調和装置40は、例えば、室内の空気の温度や湿度を調節する装置である。この場合、室内の空気の温度や湿度を調節できる機能を有すれば、その形態は特に限られるものではない。例えば、空気調和装置40は、いわば冷房機能や暖房機能を有し、この機能を使用することで、空気の温度や湿度を調節する。空気調和装置40は、例えば、エアコンディショナ(エアコン)である。空気調和装置40がエアコンディショナである場合、冷房および暖房の双方を行うことができる。また、空気調和装置40は、例えば、ヒータを有する電気ストーブや電気カーペットである。さらに、空気調和装置40には、灯油やガスなどの化石燃料を燃焼させる石油暖房機器やガスストーブ等の暖房器具も含めることができる。また、空気調和装置40は、湿度を調節するための加湿器や除湿器であってもよい。さらに、空気調和装置40は、換気扇、扇風機、サーキュレータなど、室内と室外との間で空気を導入/排出したり、循環させる装置であってもよい。またさらに、空気調和装置40は、空気清浄器やアロマディフューザなど、空気中の匂いやダストを取り除いたり、匂いを付与する装置であってもよい。また、これらの装置を複数組み合わせて使用してもよい。
【0020】
<室内環境管理システム1の動作の概略説明>
図3は、室内環境管理システム1の概略動作の例について示した図である。
まず、匂いセンサ10が、室内の匂いを測定する(1A)。この場合、室内は、例えば、会議室の中である。詳しくは、後述するが、このとき、匂いセンサ10は、複数の匂いを検出する。また、このとき匂いセンサ10は、室内の複数の場所に設置され、各場所における匂いを検出する。
次に、匂いセンサ10は、測定した匂いに関する情報を出力情報として、管理サーバ30に送信する(1B)。出力情報は、ネットワーク50を介し、管理サーバ30に送られる。
そして、管理サーバ30は、匂いセンサ10で測定した匂いを分析し、室内における匂いの分布状態を匂い情報として求める(1C)。この分布状態は、詳しくは後述するが、例えば、匂いの分布状態を表すマップとして作成される。
【0021】
さらに、管理サーバ30は、匂い状態を、ネットワーク50を介し端末装置20に送る(1D)。端末装置20では、ユーザが匂いの分布状態を、見ることができる(1E)。
また、ユーザは、室内の匂いを評価し、端末装置20に入力することができる(1F)。この評価の方法は特に限られるものではない。例えば、快/不快などの二者選択であってもよく、1〜5の5段階評価であってもよい。
【0022】
ユーザの評価は、管理サーバ30に送られる(1G)。そして管理サーバ30は、ユーザが評価を行ったときの空気調和装置40の動作状態を取得する(1H)。空気調和装置40の動作状態は、例えば、管理者が入力することで取得してもよく、空気調和装置40をネットワーク50に接続し、空気調和装置40からネットワーク50を介し取得してもよい。
そして、ユーザの評価と空気調和装置40の動作状態とは、関連付けられて管理サーバ30に記憶される(1I)。つまり、管理サーバ30では、ユーザの評価と空気調和装置40の動作状態との関係を蓄積し、学習する。
【0023】
次に、本実施の形態の室内環境管理システム1の詳細な機能構成および動作について説明する。
<室内環境管理システム1の機能構成の説明>
図4は、室内環境管理システム1の機能構成例を示したブロック図である。
なおここでは、室内環境管理システム1が有する種々の機能のうち本実施の形態に関係するものを選択して図示している。
【0024】
匂いセンサ10は、外部に情報を送信する送受信部11と、匂いを検出する匂い検出部12と、匂いに関する情報を作成する匂い情報作成部13とを備える。
【0025】
送受信部11は、匂いに関する情報を出力情報として端末装置20に対し送信する。送受信部11は、例えば、制御装置Sに対応する。
匂い検出部12は、匂い分子を検出する機能部である。即ち、上述した水晶振動子110、感応膜120、発振回路Hc、制御装置Sに対応する。匂い検出部12は、水晶振動子210の共振周波数を検知する。
【0026】
匂い情報作成部13は、匂いに関する情報を出力情報として作成する。匂いに関する情報は、この場合、例えば、匂いセンサ10により検知された共振周波数を基に作成された振動の情報である。振動の情報は、共振周波数を表す情報であってもよく、匂い分子を検出しているときと匂い分子を検出していないときとの共振周波数の差分を表す情報であってもよい。また、匂いに関する情報は、振動の情報を基に加工された情報であってもよい。例えば、匂い分子を検出していない状態を、0、検出限界上限まで検出している状態を99とし、匂いに関する情報を、100段階の数値として表すようにしてもよい。
また、匂いに関する情報は、匂いについての情報だけでなく、他の情報を含んでいてもよい。例えば、匂いの取得時刻、匂いを取得した匂いセンサ10の固有IDなどを含んでいてもよい。また、匂いセンサ10中に実装されるセンサチップの固有IDなどを含んでいてもよい。
匂い情報作成部13は、例えば、制御装置Sに対応する。
【0027】
端末装置20は、管理サーバ30との間で通信を行う送受信部21と、ユーザの評価を受け付ける評価受付部22と、ユーザに対し匂いの分布を表示する表示部23とを備える。
送受信部21は、管理サーバ30から匂いの分布に関する情報を取得する。また、ユーザによる室内の匂いの評価を管理サーバ30に対し送信する。送受信部21は、例えば、通信I/FやCPUに対応する。
【0028】
評価受付部22は、ユーザによる室内の匂いの評価を受け付ける。ユーザによる評価は、各ユーザである個々人による快適性向上のための要求であると捉えることもできる。よって、評価受付部22は、提供された匂い情報をもとに、ユーザによる快適性向上のための要求を受け付ける要求受付手段として機能する。評価受付部22は、例えば、入力機構に対応する。
表示部23は、管理サーバ30から送られ、室内の匂いの分布を表すマップを表示する。表示部23は、室内に存在するユーザが、管理サーバ30にて測定された複数の匂いをもとに室内における複数の匂いの個々の匂い状況を把握するための、匂い情報を提供する提供手段として機能する。表示部23は、例えば、表示機構に対応する。
【0029】
管理サーバ30は、外部と情報の送受信を行う送受信部31と、空気調和装置の動作状態を受け付ける動作状態受付部32と、複数の匂いの分析を行う分析部33と、空気調和装置の動作状態を記憶する記憶部34とを備える。
【0030】
送受信部31は、匂いセンサ10から匂いに関する情報を出力情報として受け取る。また、端末装置20に対し、匂いの分布状態を送るとともに、端末装置20から、ユーザの匂いの評価を受け取る。送受信部31は、匂いセンサ10から、匂いに関する情報を取得する匂い情報取得手段として機能する。
【0031】
動作状態受付部32は、ユーザが評価を行ったときの空気調和装置40の動作状態を取得する。空気調和装置40の動作状態は、例えば、空気調和装置40が、エアコンディショナであったときは、運転のON/OFF、暖房運転か冷房運転か、強弱等が該当する。また、空気調和装置40が、電気ストーブ、電気カーペット、換気扇、扇風機、サーキュレータであったときは、動作のON/OFF、運転の強弱等が該当する。
【0032】
分析部33は、匂いセンサ10から受け取った匂いに関する情報から、室内の匂いの分布を作成する。また、この匂いの分布は、分析部33で分析することができる匂い毎に作成することができる。分析部33は、匂いセンサ10が検知できる複数の匂いについて、異なった複数の評価軸で測定する測定手段として機能する。この場合、異なった複数の評価軸は、特定の匂いの評価である。そして、これは、1つの感応膜120を利用して検知できる匂いの他、複数の感応膜120を利用して匂いを測定し、分析部33が分析をすることで検知できるものも含まれる。これは、例えば、匂いセンサ10が、タバコ臭を直接測定できる感応膜120を備えていなくても、複数の感応膜120の測定結果から、タバコ臭を測定することができるような場合である。よってこの場合、異なった複数の評価軸として、特定の匂いについて、予め試験等を行い、匂いセンサ10の特性に応じ測定可能であるとして、予め定めておく必要がある。
この分析は、以下に示す匂い検知結果を利用することで行うことができる。
【0033】
図5は、匂い検知結果の一例について示した図である。
図5では、匂いセンサ10による匂い検知結果として、匂いセンサ10により検知された匂いを、主成分分析により二次元マッピングした結果を示している。ここで、横軸は、第1主成分であり、縦軸は、第2主成分である。図では、それぞれをPC(主成分:Principal Component)1、PC2として図示している。
【0034】
図5では、匂いが付着していない衣服、たばこ臭が付着している衣服、室内空気のそれぞれの匂いを、主成分分析した結果を示している。なおここでは、匂いセンサ10として、第一精工株式会社製のnose@MEMSを使用した。この匂いセンサ10では、180種類の感応膜120を有し、種々の匂いを識別できる。
図5で図示するように、匂いが付着していない衣服、たばこ臭が付着している衣服、室内空気については、匂いの匂い検知結果が異なっており、それぞれが区別可能である。つまり、このような匂い検知結果にて、種々の匂いの区別が可能である。そして、この場合は、異なった複数の評価軸は、匂いが付着していない衣服、たばこ臭が付着している衣服、室内空気のそれぞれの匂いになる。
【0035】
図4に戻り、記憶部34は、動作状態受付部32が取得した空気調和装置40の動作状態と、送受信部31が、端末装置20から受け取ったユーザの匂いの評価とを関連させて記憶する。記憶部34は、空気調和装置40の動作状態を学習する学習手段として機能する。
【0036】
送受信部31は、例えば、通信I/Fに対応する。また、動作状態受付部32、分析部33は、例えば、CPUに対応する。さらに、記憶部34は、例えば、ストレージに対応する。
【0037】
<室内環境管理システム1の動作の説明>
次に、室内環境管理システム1の実際の動作例について説明を行う。
図6は、室内環境管理システム1の動作を説明したフローチャートである。
まず、匂いセンサ10の匂い検出部12が、室内の空気中の匂いを測定する(ステップ101)。そして、匂い情報作成部13が、匂いに関する情報である出力情報を作成する(ステップ102)。出力情報は、送受信部11を介して、管理サーバ30に送られ、管理サーバ30の送受信部31が受信する(ステップ103)。
管理サーバ30では、出力情報を基に、分析部33が、室内の匂いの分布を匂い情報として作成する(ステップ104)。
【0038】
図7(a)〜(c)は、室内の匂いの分布を表す匂い情報を、画像として表示した例を示した図である。
ここでは、室内Snの匂いの分布をマップMpとした場合を示している。そして、異なった複数の評価軸として、特定の匂いが存在する室内Snの場所を示している。
このうち、
図7(a)では、室内Snのタバコ臭の分布を示している。また、
図7(b)では、室内Snの加齢臭の分布を示している。さらに、
図7(c)では、室内Snの食べ物臭の分布を示している。なお、ここでは、タバコ臭、加齢臭、食べ物臭の匂いをそれぞれ別々に表示したが、色分けをするなどの方法で、まとめて表示してもよい。また、後述するユーザによる匂いの評価が悪い匂いについて表示するようにしてもよい。即ち、ユーザによる匂いの評価が予め定められたレベルより悪い場合に表示する。
【0039】
なお、ここでは、特定の匂いの有無を表すマップMpを示しているが、特定の匂いの濃度を併せて表示することもできる。例えば、特定の匂いの濃度が小さい場所は、薄い色で表示し、特定の匂いの濃度が大きい場所は、濃い色で表示するなどの表示方法が考えられる。また、特定の匂いとして、ここでは、タバコ臭、加齢臭、食べ物臭を挙げたが、この匂いに関しては、匂いセンサ10の特性に応じ、分析部33が分析することで測定することができる匂いであれば、特に限られるものではない。例えば、香水臭、カビ臭などが挙げられる。
【0040】
図6に戻り、管理サーバ30の送受信部31が、匂い情報を端末装置20に対し送信する。端末装置20では、送受信部21が、匂い情報を受信する(ステップ105)。
端末装置20では、ユーザの操作に応じ、匂い情報を表示する(ステップ106)。これは、端末装置20で、ユーザに複数の匂いから特定の匂いを選択させることで表示される。例えば、メニューやリストの中から選択することができる。そして、ユーザが知りたい匂いを選択すると、例えば、
図7(a)〜(c)に示したようなマップMpが表示される。マップMpを使用することで、匂い情報は、選択された匂いについて、室内での分布状態がユーザに把握できる情報として、ユーザに提供される。
【0041】
またこのとき、匂い情報以外の室内の環境に関する情報を併せて提供するようにしてもよい。室内の環境に関する情報は、例えば、温度、湿度、二酸化炭素濃度、熱中症指数などが挙げられる。このような情報は、室内の環境に影響を与えるものであり、ユーザは、これらの情報についても参照できることが好ましい。温度、湿度、二酸化炭素濃度は、温度計、湿度計、二酸化炭素濃度計を設置することで取得することができる。また、熱中症指数は、温度や湿度から算出することができる。温度計、湿度計、二酸化炭素濃度計などは、匂い情報以外の室内の環境に関する情報を取得する第2の測定手段として機能する。
【0042】
さらに、匂い情報および匂い以外の情報を見ることで、室内の匂い、温度、湿度、二酸化炭素濃度、熱中症指数等について、改善する前と後とを比較することもできる。つまり、次に説明するユーザの評価により、これらの項目を改善する前と後との状態を,マップMpを見ることで、ユーザが把握することができる。これは、ユーザが、評価受付部22による要求から、室内の環境整備に関する措置が取られた後の、室内での特定の匂いを検知し、室内での措置後の分布状態を把握する、と言うこともできる。
【0043】
ユーザは、匂い情報を見るだけでなく、室内の匂いの評価をすることができる。これは、端末装置20を操作することで行うことができる。
図8は、端末装置20でユーザが評価を行うときに表示される画面を示した図である。
ここでは、端末装置20の表示機構20Aに、ユーザが評価を入力する画面を表示した例を示している。図示するように、表示機構20Aには、「室内の匂いについて、評価を入力してください。」のメッセージMe1とともに、1〜5の5段階の評価を入力するラジオボタンRbが表示される。そしてユーザが1〜5の何れかを選択し、ボタンB1を押下すると、評価が受け付けられる。これは、ユーザによる快適性向上のための要求として、ユーザが感じる匂いの程度を受け付ける、と言うこともできる。
【0044】
再び
図6に戻り、ユーザが入力した評価は、評価受付部22が受け付ける(ステップ107)。
この評価は、送受信部21が管理サーバ30に対し送信し、管理サーバ30では、送受信部31が受信する(ステップ108)。
そして、動作状態受付部32が、空気調和装置40の動作状態を取得する(ステップ109)。つまり、動作状態受付部32は、ユーザが評価を行ったときの、空気調和装置40の動作状態を取得する。
さらに、記憶部34が、ユーザの評価と空気調和装置40の動作状態とを関連付けて記憶する(ステップ110)。
【0045】
管理サーバ30では、ユーザの評価と空気調和装置40の動作状態との関係を蓄積し、学習していく。これにより、例えば、管理者は、ユーザの評価がよいときの空気調和装置40の運転状態を把握することができる。そして、室内の空気の状態がよくなるように、空気調和装置40を操作するための基礎データとすることができる。また、この作業を管理サーバ30で行ってもよい。この場合、分析部33が、記憶部34の学習の結果から、ユーザによる快適性向上のための空気調和装置40の動作状態を求める。さらに、室内のユーザや管理者に対し、空気調和装置40の運転に関する通知を、端末装置20を介し、行ってもよい。例えば、換気扇の運転をするように通知する。また、例えば、サーキュレータの運転をするように通知する。さらに、例えば、エアコンディショナによる、冷房、暖房、除湿運転を行うように通知する。また、これらの運転をしても改善されない場合は、空気調和装置40の清掃を行うように通知する。
なお、管理サーバ30が、ネットワーク50を介して、空気調和装置40の操作をリモートで行うこともできる。この場合、ステップ110で学習した結果に基づき、管理サーバ30は、室内の空気の状態がよくなるように、空気調和装置40を制御する。
【0046】
図9は、
図6のステップ110で、記憶部34が記憶する内容を示した図である。
ここでは、空気調和装置40の運転状態として、エアコンディショナ(エアコン)、加湿器、換気扇の運転状態をユーザが評価を行ったときの日時とともに記憶することを示している。ここで、ONは、空気調和装置40が動作しており、OFFは、動作していないことを示す。また、暖房ONは、エアコンが暖房運転で動作していることを示す。
また、このときのユーザの評価と測定データとを記憶することを示している。ユーザの評価は、
図8で説明した1〜5の5段階の評価である。また、ここで挙げた測定データは、タバコ臭、食べ物臭、加齢臭についての匂い情報である。また、測定データとして、匂いの項目ではないが、併せて、室内の温度、湿度についても記憶することを示している。さらに、評価を行ったユーザのIDを評価ユーザIDとして記憶することを示している。
このような形式で、記憶部34が記憶することで、ユーザの評価と匂い情報との関連性を学習することができる。また、ユーザの評価と空気調和装置40の動作状態とを関連付けて学習することができる。そしてこれを基に、例えば、管理者は、室内の匂いに対するユーザの評価を把握することができる。また、ユーザの評価がよいときの空気調和装置40の運転状態を把握することができる。
【0047】
以上詳述した形態によれば、個々人に対して、より快適な室内環境を提供することができる。このとき複数の匂いを使用するため、従来の単一の匂いを使用する場合に比較して、より快適な室内環境を実現できる。
そして、以上詳述した形態によれば、日々更新される学習により、ユーザの好みが反映される。そのため、ユーザが快適とする空気調和装置40の運転状態の精度が向上する。さらに、ユーザの好みだけでなく、匂いセンサ10による匂いの測定結果に基づき、空気調和装置40の操作を行う。そのため、どのユーザに対しても快適な室内環境になることが期待できる。さらに、
図9のようにユーザと関連付けることで、ユーザが変わっても、ユーザに合わせ、室内環境を変更できる。
【0048】
なお上述した例では、管理サーバ30が、匂い情報を作成し、空気調和装置40の動作状態と、ユーザの匂いの評価とを関連させて学習していたが、管理サーバ30で行う処理を、端末装置20で行うようにしてもよい。この場合、管理サーバ30は、不要となる。さらに、匂いセンサ10を端末装置20に組み込むようにしてもよい。
【0049】
また、匂いセンサ10は、
図2に示したものに限られるものではない。例えば、水晶振動子110の代わりに、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor:相補型金属酸化物半導体)センサを用い、CMOSセンサと感応膜とを組み合わせたもの、水晶振動子110の代わりに、圧電素子(ピエゾ素子)を用い、圧電素子と感応膜とを組み合わせたもの、匂い分子が感応膜に吸着したときの表面応力の変化を表面応力センサで検出するものが挙げられる。また、他にも、分子ナノワイヤによる匂い分子の濃縮を利用し、ケモレジスタンスやFET(Field effect transistor:電界効果トランジスタ)で匂い分子を検知するもの、人の嗅覚受容体を模した生体膜を使用し、生体膜に匂い分子が吸着したときの変化をカメラで捉えるもの、MOS(Metal Oxide Semiconductor:金属酸化物半導体)が匂い分子と接触したときに生じる抵抗値の変化を利用して匂いを検出する半導体センサや、半導体センサと空気質センサとを組み合わせたものなどであってもよい。
【0050】
例えば、上述した例では、匂いセンサ10として、第一精工株式会社製のnose@MEMSを使用する場合を示したが、匂いセンサ10として、例えば、株式会社アロマビット製のニオイ識別センサaroma bit、新コスモス電機株式会社製のニオイセンサXP−329IIIR、国立研究開発法人物質・材料研究機構製のMSS嗅覚IoTセンサなども使用できる。
【0051】
<プログラムの説明>
ここで、以上説明を行った本実施の形態における管理サーバ30が行う処理は、例えば、アプリケーションソフトウェア等のプログラムとして用意される。そして、この処理は、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働することにより実現される。即ち、管理サーバ30に設けられたコンピュータ内部の図示しないCPUが、上述した各機能を実現するプログラムを実行し、これらの各機能を実現させる。
【0052】
よって、本実施の形態で、管理サーバ30が行う処理は、コンピュータに、室内に配置され、複数の匂い分子を検知して匂いを識別する匂いセンサから、匂いに関する情報を取得する匂い情報取得機能と、匂いセンサが検知できる複数の匂いについて、異なった複数の評価軸で測定する測定機能と、室内の環境整備に関する措置を取る空気調和装置の動作状態と、室内に存在する個々人が、測定機能にて測定された複数の匂いをもとに受け付けた、個々人による快適性向上のための要求とを関連させて学習する学習機能と、を実現させるためのプログラムとして捉えることもできる。
【0053】
以上、本実施の形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、種々の変更または改良を加えたものも、本発明の技術的範囲に含まれることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【解決手段】室内に配置され、複数の匂い分子を検知して匂いを識別する匂いセンサ10と、匂いセンサ10が検知できる複数の匂いについて、異なった複数の評価軸で測定する測定手段と、室内に存在する個々人が、測定手段にて測定された複数の匂いをもとに室内における複数の匂いの個々の匂い状況を把握するための、匂い情報を提供する提供手段と、提供された匂い情報をもとに、個々人による快適性向上のための要求を受け付ける要求受付手段と、を備えたことを特徴とする室内環境管理システム1。